2016 年第 3 四半期見通し 2016 年 7 月 July 2016 債券市場レビュー 市場見通し 今回のプルデンシャル・フィクスト・インカム(以下、PFIM) 四半期見通しでは、チーフ・インベストメント・ストラテジス トのロバート・ティップ(Robert Tipp)が、最近の市場イベン トに影響を与え、そして世界的に債券利回りの歴史的低下を導 いた要因を大局的に概観します(4 ページ)。 チーフ・エコノミストでグローバル・マクロエコノミック・ リサーチの責任者であるユルゲン・オデニウス(Jürgen Odenius)が、中国と欧州の動向が広範囲に暗雲をもたらして いる世界経済の安定状況を検証します(7 ページ)。また、英 国の欧州連合離脱(Brexit)の経済的影響についての直近の 見通しも示します(9 ページ)。 セクター別展望 投資適格社債 (10 ページ) 投資適格社債市場には強気の見方 をしていますがこれは、拡大したスプレッド水準、米国経済 の安定的な成長、量的緩和の影響に基づくものです。世界的 な逆風のため、リスクプレミアムは高水準に保たれる可能性 があります。 グローバル・レバレッジド・ファイナンス(11 ページ)レバ レッジド・ファイナンス市場に対して強気の見方をしていま す。米国のハイイールド債では、デュレーションが中期ゾー ン、BB 格、かつコモディティ関連以外のクレジットを選好し ています。投資家は利回りの高い商品を求めており、欧州中 央銀行(ECB)による社債の買い入れ、デフォルト(債務不履 行)と損失率が低水準にとどまる見通しであるため、欧州の ハイイールド債のスプレッドは引き続き魅力的とみられま す。 エマージング債券 (13 ページ)Brexit 後の当セクターの回 復力の強さは、高い利回りとスプレッドを、特に英国へのエ クスポージャーが比較的小さい市場で求めている投資家にと って、いかに魅力的であるかを浮き彫りにする結果となりま した。ボラティリティが上昇する時期もあるでしょうが、そ うした時期は引き続きエクスポージャーを拡大する好機とみ られます。 地方債(15 ページ)魅力的な課税債相当利回りや、良好な需 給環境が市場を支えるとみられるため、やや強気なスタンス を取っています。 グローバル金利(16 ページ)PFIM のファンダメンタルズに関 する見方の多くは変わっていません。つまり、米国のリスク プレミアムが世界的にみて大きすぎるとみられますが、英国 の国民投票後の市場の変動が大きかったため、米国でのデュ レーションを縮小しました。金利は低水準でレンジ内の動き を続けるとみられますが、市場では不確実性が定着してしま い、金利は上下どちらにも大きく変動する可能性がありま す。そのため PFIM では、今後発生する可能性のある投資機会 に基づく選別的スタンスを採用しています。 モーゲージ債(17 ページ)PFIM はモーゲージ債セクターに対 する見通しを変更し、現在ではスワップ・スプレッドに対し てモーゲージ債をオーバーウェイトとしています。 証券化商品(17 ページ)最優先トランシェの債券に対して非 常に強気の見方を維持しています。日本と欧州のマイナス金 利によって、投資家は高格付けの債券でより高い利回りを求 めるとみられるため、AAA 格 CMBS と CLO のスプレッドは縮小 する可能性があります。GSE クレジット・リスク・メザニ ン・キャッシュフローに対して強気の見方を維持していま す。一方、CMBS や CLO のメザニン・トランシェに対してネガ ティブです。 Page 2 債券市場見通し G10 経済担当のリード・エコノミス ト、エレン・ガスケ(Ellen Gaske, PhD, CFA)は、米国経済に関する強 弱交錯したデータの公表後、予想さ れる米連邦準備制度理事会(FRB)の 金融政策を、 The Fed’s Moving Targets.(「FRB の動く目標」) と いう表題のレポートで検証していま す。 スポットライト:エネルギー 関連のハイイールド債を アンダーウェイトにする理由 エネルギー・セクターの社債はスプレッドと利回りの高さが喧 伝されていますが、資本構成が崩れたり、原油価格が大幅に上 昇してもデフォルトに陥る企業が現れるなどかなりの問題が発 生しているため、投資機会はほとんどありません(12 ペー ジ)。 CEEMA(中東欧・中東・アフリカ)担 当シニア・エコノミストのジャンカ ルロ・ペラッソ(Giancarlo Perasso)とエマージング債券ポート フォリオ・マネジャーのトッド・ピ ーターセン(Todd Petersen)は最近 のコモディティ市場でのボラティリ ティの高まりにアフリカ諸国はどう 対応しているかについて、Africa’s エマージング市場のボラティ リティ ― トレーダーの 悪夢、投資家の味方 エマージング債券のトレーダーになるよりも投資家になる方が 長期的恩恵が大きいことは明らかです。セクターのボラティリ ティが高いことが、ファンダメンタルズに基づく価格を大きく 下回る水準までの大幅な値下がりに度々つながり、忍耐強い投 資家には妥当な購入機会が提供されることになります(14 ペー ジ)。 Commodity Response.(「アフリカ 諸国のコモディティ動向への対 応」)という表題のビデオで解説し ています。 最近のレポートとビデオ PFIM のウェブサイト PrudentialFixedIncome.com.では、 PFIM の投資専門家による市場の見方をレポートやビデオ でご覧いただけます。 シニア・インベストメント・オフィ サーでマネージング・ディレクター であるマイケル・コリンズ(Michael Collins, CFA)は、現在のクレジッ ト・サイクルがどんな点で過去のサ イクルと共通している(「韻を踏ん でいる」)か、またどんな点でニュ アンスが明確に異なっているのか を、The Global Credit Cycle: What Inning Are We In (Or, What Game Are We Even Playing)? (「グローバル・クレジット・サイ クル:今は何イニング目なのか(ま たは、どのようなゲームが展開され ているのか)?」)という表題のレポ ートで考察しています。 Page 3 債券市場見通し に底を打ったあと、コモディティ価格のラリーが続き、米連邦準 経済環境はさえないものの、 債券市場にとっては追い風 備制度理事会(FRB)による利上げペースの市場見通しがさらに低 下したため、米ドルの上昇はかなり抑えられました。日銀と欧州中 央銀行(ECB)によるマイナス金利政策(NIRP)と積極的な資産買 い入れプログラムが強化されたため、日本国債とドイツ国債の価格 は量的緩和に牽引されて大幅に上昇しました(利回りは低下)。同 様に長期英国債の価格も、国民投票で「離脱」が支持されるという 歴史的な結果が引き起こした景気減速懸念のために大幅に上昇しま した。これらに後れをとったとはいえ、米国債利回りも、米国の成 長率の鈍化を示すデータがいくつか明らかとなったのに加えて、世 界的な金利低下トレンドのために低下しました。 今回の四半期見通しの序論の部分はいつもより詳細さにやや欠 けるかもしれませんが、これは意図的なものです。相互に関連 する、あまりにも多くの大局的トレンドを詳細に分析する必要 があるものの、それぞれが(『不思議の国のアリス』に出てく る)ウサギの穴の迷宮のようだからです。この傾向は、各国経 済や個別セクターに多数見出されます。しかしながら、結局の ところ PFIM の債券市場に関する全般的な見通しに変化はあり ません。低利回りに惑わされないようにすべきでしょう。最近 のように先の読めない時期には、安定的な利回りを追求する債 券投資戦略によって、中長期的にみて適度なリターンが期待で きるとみられます。背景はひどいものですが、債券市場は引き 続きいたるところに投資機会があります。 年初来の株式市場のリターンは全般にレンジ内の動きとなりま したが、欧州と日本での株価の推移から判断すると、ECB と日 銀によるマイナス金利政策と積極的な資産買い入れプログラム は、これら地域の金融機関に悪影響を与えている可能性があり ます。 Brexit:世界的現象が表面化した一例 「悪くはなかった」第 2 四半期 英国の国民投票によって Brexit が支持された詳細な原因や、 Brexit によってどんな影響が見込まれるかについての議論が 延々と続く可能性がありますが、詳細な点にこだわり過ぎると、 背景となっている世界的な動きを見失う可能性があります。世 界的にみると、経済成長率が低すぎ、有権者が富の分配に不満 を持っていて、政策立案者がこうした状況をどのように改善し たらいいのか途方に暮れているのは、英国に限ったことではあ りません。その結果、有権者は抗議行動を起こし、政治的な分 裂によって、国内だけでなく国際的にも緊張が高まっています。 各国の国内情勢を見ると、米国でトランプ大統領候補への支持 が拡大し、欧州全域で国家主義者/ポピュリスト(大衆迎合的) 政党が勢力を伸ばし、カタロニアやスコットランドのように分 離独立を目指す動きが活発化しています。国際的に見ると、先 行する英国に続き、多数の EU 諸国が離脱について当然検討する ことになるとみられます(これまでのところ具体的な発言は、 チェコの大統領が国民投票を行うべきである、という自らの見 解を公表しただけにとどまっています)。 2016 年第 2 四半期は、下のセクター別リターンの表と 5 ページ の「チャートに見る四半期」に示したように、第 1 四半期半ば セクター別のパフォーマンス グローバル総合 米国総合 米国債 地方債 モーゲージ担保証券 (エージェンシー債) CMBS 米国投資適格社債 投資適格長期社債 米国レバレッジド・ロ ーン 米国ハイイールド債 ハードカレンシー建て エマージング債 現地通貨建てエマージ ング債(ヘッジあり) エマージング通貨 欧州投資適格社債 欧州レバレッジド・ロ ーン 欧州ハイイールド債 トータル・リターン(%) 2016 年 2016 年 第2四 2015 年 2014 年 2013 年 2012 年 年初来 半期 2.89 8.96 -3.15 0.59 -2.60 4.32 2.21 5.31 0.6 6.0 -2.0 4.2 2.10 5.37 0.8 5.1 -2.8 2.0 2.61 4.33 3.3 9.1 -2.6 6.8 1.11 3.10 1.5 6.2 -1.5 2.6 2.24 3.57 5.52 5.92 7.68 9.06 1.0 -0.7 -4.61 3.9 7.5 15.73 0.2 -1.5 -5.68 9.7 9.8 12.41 2.86 4.23 -0.4 2.1 6.2 9.4 5.88 9.32 -4.6 2.5 7.4 15.6 5.02 10.31 1.2 7.4 -5.3 17.4 2.06 6.01 -2.2 3.2 -4.2 8.9 0.34 1.57 5.81 4.08 -7.61 -0.6 -7.03 8.4 -2.04 2.4 7.45 13.6 1.63 2.60 3.6 2.1 9.0 10.8 1.90 4.00 1.3 9.1 24.8 5.1 後述する経済情勢や各セクターに関する議論では、マクロ、ミ クロ経済への影響に言及しますが、我々が直面している経済お よび政策を取り巻く環境の全体像は厳しいものとなっています。 成長率とインフレ率が低水準にとどまり、多くの国で財政赤字 と政府債務残高が高水準となり、多様な構造的機能不全が浮上 しているため、主要中央銀行がマイナス金利を導入し積極的に 債券を購入するなど対応を強化しているにもかかわらず、状況 が改善しつつあるとはとても言えないようです。要するに、あ まりにも多くの構造問題が立ちはだかっています。 出所:バークレイズ。ただし、エマージング債は JP モルガン、ハイイールド 債はメリルリンチ、担保付きシニア・ローンはクレディ・スイス。パフォー マンスは 2016 年 6 月 30 日現在のものです。インデックスの名称については 後述のインデックスの記載をご覧ください。過去の運用実績は将来の運用成 果を保証するものではなく、信頼できる指標となるものでもありません。イ ンデックスに直接投資することはできません。 Page 4 債券市場見通し 今後もほぼ現状維持の見通し 110 100 90 80 70 60 50 40 前回の「2016 年第 2 四半期見通し」や、金利見通しに重点を置 いた複数のレポート(「The Totally Mad World of Low Rates (異常な低金利の世界)」等)で PFIM がたびたび指摘してき ましたように、世界経済の動向は引き続き同様です。あらゆる 景気刺激策にもかかわらず疑念を継続すべきで、世界経済はさ えない状態が続き、マイナス金利政策と積極的な量的緩和は当 分続くとみられます。こうした経済環境を背景に、金利は極め て低い水準にとどまるとみられますが、一時的にボラティリテ ィが高まるようなことが何度か起こるのは避けられないとみら れます。特に、流動性が低下する夏の間に高まる可能性が高い とみられます。しかし長期的にみると、債券市場に対して長期 的スタンスで臨んでいる投資家は引き続き恩恵を受けることが できるとみられます。 米ドル貿易加重指数 U.S. Dollar Trade Weighted Index West Texas Intermediate Crude Spot Price 原油スポット価格(WTI、指数化) 出所:ブルームバーグ 4.5 3.5 要点:債券の投資リターン、とりわけ比較的利回りが高い セクターの債券のリターンについては、引き続き上振れす 2.5 ると予想しています。さらに、市場のボラティリティによ って、アクティブ運用では通常よりも多い投資機会が得ら 1.5 れるとみられます。 0.5 2016 チャートに見る四半期 イールドカーブは、目覚ましいブル・フラットニング(強気市 場でのフラット化)のトレンドを維持しました。 米国 30 年国 債利回りは年初来で約 74bps 低下しましたが、さらに大幅に低 下したのは Brexit の影響を受けた英国債でした(英国 30 年国 債の利回りは 1%強の下落となりました)が、年初の利回り水 準の低さを考えるとさらに信じ難いのは、ドイツ 30 年国債と日 本 30 年国債がそれぞれ 76bps と 113bps 低下したことでした (期末の利回りはそれぞれ 0.40%と 0.14%になりました)。 日本 10 年国債利回り 米国 U.S. 30 年国債利回り 30-yr Treasury Yield 30-yr Gilt Yield 英国 30 年国債利回り 2018 Longer Run フェデラル・ファンド金利予想 16 年 6 月 出所:FRB 為替変動の影響を調整すれば、株価指数は比較的レンジ内の動 きとなりました。しかし、欧州と日本ではイールドカーブがブ ルフラット化したため、金融機関は悪影響を受けました。 3.5% 3.0% 2.5% 2.0% 1.5% 1.0% 0.5% 0.0% ドイツ 30 年国債利回り 30-yr Bund Yield 30-yr JGB Yield 2017 フェデラル・ファンド金利予想 15 '15 年9月 Fed Funds Forecast September Fed Funds Forecast December15'15 フェデラル・ファンド金利予想 年 12 月 Fed Funds Forecast March '1616 年 3 月 フェデラル・ファンド金利予想 Fed Funds Forecast June '16 120 110 100 90 80 70 60 50 40 S&P 500 500 指数 S&P Index MSCI EM 新興国株価指数 MSCI Equity Index TOPIX Bank Index 銀行 東証業種別株価指数 株 出所:ブルームバーグ コモディティ価格は第 1 四半期半ばに底を打って以来の上昇を 続け、米ドルは FRB による利上げ見通しが引き続き低下してい るため、比較的レンジ内での動きとなりました。 Page 5 東証株価指数(TOPIX) TOPIX Index Euro STOXX 50 Index ユーロ・ストックス 50 指数 Euro STOXX Bank Index ユーロ・ストックス銀行指数 出所:ブルームバーグ 債券市場見通し 投機的格付けの社債やエマージング債券などのハイイールド債 のスプレッドは大きく縮小しましたが、これは経済情勢が「ま ずまず」だったことと、少しでも高い利回りの金融商品を積極 的に求める動きが市場で活発化したためでした。 bps 950 800 650 500 350 200 BofA メリルリンチ・ハイイールド・スプレッド BofA ML High Yield Spread JP Morgan モルガン EMBI EMBI グローバル・ディバーシファイド・スプレッド J.P. Global Diversified Spread 出所:ブルームバーグ Page 6 世界経済見通し 米国のコアコア CPI と総合 CPI マクロ経済の安定性に影を 落とす Brexit と中国の リスク 6 5 4 3 2 6 月下旬の Brexit ショックが起きるまでの第 2 四半期は、中国 の大規模な信用拡大、予想よりも良かった欧州の第 1 四半期 GDP、予想よりやや堅調に推移した日本経済などを受けて世界経 済への懸念が後退していました。連邦準備制度理事会が金利引 き上げへの模様眺めを続け、通貨戦争も明らかな休戦状態に入 ったことで、ドル高の勢いと為替市場のボラティリティが低下 しました。それらを背景に、リスクテイクの意欲が高まり、金 融市場は第 1 四半期の急落から反発に転じました。しかし、 Brexit ショック(9 ページで詳述)により欧州政治の複雑さが 浮き彫りになり、欧州連合(EU)の成長見通しに暗雲が漂う事 態となっています。さらに、中国の信用拡大が先細りする可能 性があり成長減速の要因となりそうです。Brexit に端を発する 一連のリスク回避行動は、グローバル金融システムの中の過剰 流動性によりボラティリティが高まることへの明確な警告です。 米国―景気回復の後期サイクル 米国では、5月の非農業部門雇用者の伸びが失望を呼び、景気 後退の懸念が再燃しました。しかし、民間部門のレバレッジに は、家計であれ非金融企業であれ伸び過ぎの兆候はなく、法人 レバレッジだけが増加を続けています。同時に、民間の設備投 資は歴史的に低い水準に留まっています。過剰な生産能力とレ バレッジの明らかな欠如は、近い将来の不況の確率が依然低い ことを示唆しています。1 労働市場の引き締まりが続くと、非農業部門雇用者によって把 握される雇用の伸びが鈍化し始めます。しかし、賃金上昇圧力 はこれまでは顕在化していません。フィリップス曲線(賃金上 昇率と失業率の関係)はフラットのままです。しかし、失業率 の低下がまだ賃金には認識可能なインパクトを与えていないと はいえ、生産性上昇率の極めて低い伸びが続き、付随して単位 労働コストの上昇圧力が高まってきているため、この関係には 今後変化が生じてくるでしょう。世界金融危機の最中に、企業 は名目賃金をあまり引き下げることができませんでした。その 事実が、その後の穏やかな賃金上昇を説明しています。しかし、 市場均衡賃金が支払い賃金を超え始めているため、名目賃金は 今後上昇する可能性があります。この観点からインフレ率急騰 の可能性は除外できませんが、その可能性は多くが認めるよう に極めて低いでしょう。 尚、ニューヨーク連邦準備銀行が運営するモデルは 2016 年 5 月時点で わずか 7%の確率を推定しています。 1 1 0 -1 -2 -3 コアコア Sticky CPI CPI 総合 CPICPI Headline 出所:アトランタ連邦準備銀行、ヘイパー・アナリティクス ユーロ圏―金融政策の有効性が限界に到達 世界金融危機が始まってから 8 年余りが経過し、ユーロ圏経済 はついに金融危機の間に起こった国内総生産(GDP)の減少を回 復しました。しかし、各国のパフォーマンスには大きなばらつ きがあります。現在、アイルランドとそれに続くドイツの GDP は金融危機以前の水準を大きく上回っています。スペインは金 融危機以前をやや下回る水準ですが、イタリアとポルトガルは 未だ 10%から5%下回っており両国の経済の硬直性を示してい ます。GDP が金融危機以前のレベルから 25%以上低い水準に低 迷しているギリシャは、通貨統合により課された制約に従わな い政策を取った場合に直面する困難な状況を示唆しています。 緩慢な経済回復は、部分的にはレバレッジ解消の進展が遅く不 均一であることを反映するものです。ユーロ圏の GDP ギャップ が 2018 年以前に解消する可能性は低いでしょう。低い経済ダ イナミズムと過剰生産能力が、欧州中央銀行(ECB)の事実上 2%の消費者物価指数目標の達成努力を妨げ続けています。2 成長とインフレがともに低い水準に留まり続けることで、ECB が採用する異常な金融政策―最も顕著なのがマイナス預金金利 と量的緩和の組み合わせーの有効性に疑問が生じています。具 体的には、堅調な債券需要から 10 年物ドイツ国債利回りが第 2 四半期にマイナスとなり、社債が値上がりしています。しかし、 主要国の国債利回りが同四半期に低下傾向だった反面、周辺国 の国債利回りは ECB による大規模な債券買い入れにも拘わらず ほとんど変化しませんでした。インフレ目標が手の届かない所 にあるため、ECB は現在の有効期限である 2017 年 3 月を越えて 債券買い入れプログラムを延長する可能性が高いと思われます。 2 エネルギー価格の安定化により、これまでのような CPI 引き下げ効果は 欠落していくことが見込まれます。しかし、コアインフレ率は 1%以下 に留まり、顕著な上昇には長期間を必要とする可能性があります。 Page 7 世界経済見通し 各国別の ECB の債券買い入れと財政赤字の比較(対 GDP 比、%) 12 10 中国―短期的な回復と長期的な課題 8 % of GDP 流動性およびその他の懸念から国債買い入れプログラムを加速 することを日銀は控えていますが、インフレを再燃させること の困難を考えると一段の政策的緩和の可能性が残っています。 6 4 2 0 ECB Bond Purchases (annualized) ECBGovt の国債買い入れ(年換算) Fiscal Deficit (2016) 財政赤字(2016 年) 出所: IMF、PFIM 日本―苦戦するアベノミクス 欧州と同じく、日本はインフレを再燃させ成長を刺激するため の苦戦を続けています。日銀が目標とする消費者物価指数(生 鮮食品を除く)は第 2 四半期に再び反落し、コアインフレ率は 1%をわずかに下回って推移しています。これも欧州と同じです が、経済の主要セクターでレバレッジが高止まりを続け、成長 見通しに影を投げかけています。1 月後半に日銀が導入したマ イナス預金金利―全面的ではなく段階的ーは、ECB が約 18 カ月 前に行った政策を部分的に見習ったものですが、それを受け突 然の円高が始まりました。各国の金融当局が金利引き下げに走 る現在の局面で、為替レートを通じた金融政策が有効ではない ことが明白に示唆されたものです。3 第 2 四半期の中国経済は安定に転じました。ドルは当初の上昇 から若干下落しましたが、人民元の大幅な切り下げの懸念は沈 静化しました。この展開は短期的には間違いなくポジティブで すが、中国の根本的な課題を隠すものでもあります。成長が明 らかに安定した主要な理由は過大な信用刺激策です。第 1 四半 期中に、年間 GDP の 10%に相当する信用刺激策が、社会融資総 量(TSF)という名の下、さまざまな形で中国経済に投入されま した。この信用刺激策はオランダの経済規模に匹敵し、それが 年間を通して持続された場合はイタリアに匹敵するものです。 この巨大な信用刺激策は、そのペースが持続不可能であること を示しています。同様に、人民元為替レートはドルに対し着実 かつ整然と下落を続け、より重要なことは、実効貿易加重通貨 ベースで約5%下落しました。 中国の社会融資総量総額(対 GDP 比、3 カ月移動平均) 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 日銀の量的緩和プログラムは迅速に進められています。現在ま でに、日銀はすべての国債の 3 分の 1 以上を保有しています。 プログラムの規模はすでに GDP の 35%を上回っていますが、日 本の政府債務残高の規模からして追加的量的緩和の余地があり ます。 人民元建ておよび外貨融資 RMB + FX Local Government 地方政府 Off-Balance Credit オフバランスのクレジット Corporate Bond 社債 Total TSF 各国の量的金融緩和政策の規模(対 GDP 比、%) 出所:中国国家統計、ヘイパー・アナリティクス、PFIM 40% 35% しかし注目すべき点は、この大規模な政策支援により成長がか ろうじて安定していることです。信用膨張の大半は、借り換え とおそらく損失に対するファイナンシングに利用されたことが 読み取れます。最終的には包括的な構造改革の必要性、特に多 大な過剰設備を持つ国有企業にとっての必要性をこの観察は強 調しています。当局は改革戦略の最終決定段階にあり、今後の 執行が鍵となるでしょう。 30% 25% 20% 15% 10% 5% 0% 出所:OECD 3 TSF(社会融資総量)総額 OECD 経済見通し 2016 年第 1 四半期参照 Page 8 世界経済見通し 英国の EU 離脱(Brexit)―見通しは曇っているが、 Brexit – 世界経済見通しを曇らせているが、 マクロ経済への影響は対処可能か マクロ経済への影響は管理可能か 6 月 23 日の英国国民投票で下された重大な Brexit 支持により大きな不確実性が生じ、それによって、再び世界経済の見通しに暗 雲が立ち込めました。喧伝される最悪のシナリオに陥るのではなく、ここでは議論のための枠組みをいくつか提供しようと試みま す。結論としては、マクロ経済への影響は、限定的とは言えないまでも対処可能であろうというものです。 PFIM の基本シナリオは、Brexit 決定により生まれた不確実性により、英国経済が完全な景気後退ではないにせよ、短期的には停 滞することを想定しています。しかし、付随する波及効果は全体的に抑制されたものになると思われます。もちろん、英国経済の 停滞は短期的にはユーロ圏に間違いなく波及し、EU 市場へのアクセスが不利になることで中期的には貿易が結果として打撃をこ うむるでしょう。 もう一つ明確なことは、英ポンドが外国為替市場で新たな平衡を見出しつつある中、イングランド銀行が危機に備えて待機してい ることです。カーニー総裁は金融緩和の可能性を示唆しました。GDP の約 7%という歴史的水準に近い経常赤字、外国直接投資 (FDI)の流入減速や資金撤退の可能性を背景に、英ポンドは軟調なトレンドが続くと思われます。 しかしながら、英ポンドの全般的な下落が金融セクターの大規模な混乱と全面的な金融不安を引き起こすほどの規模ではないと、 少なくとも基本シナリオでは想定しています。とはいえ、スイス、スペイン、アイルランドの銀行は、英国に高いエクスポージャ ーを持っています。 EU からの加盟国のさらなる離脱の可能性は、PFIM の比較的楽観的な見通しにとってもう一つの大きなリスクです。そのような可 能性についての懸念は、Brexit 投票の直後に欧州数カ国の反 EU 政党が国民投票の実施を要求したことから高まりました。さらな る離脱を排除することはできませんが、その可能性は少なくとも短期的には低いと思われます。 EU 圏東部の経済は、バルト諸国、中央ヨーロッパ、あるいは南東欧であろうとも、すべて地政学的安定を求めて団結していま す。さらに、クリミアの併合とウクライナ東部の侵攻は、多くの人にとって安定の大切さを思い知らせました。人々の地政学的安 定への願望は、これらの国々にある EU の機能最適化と主権回復への願望をしのぐ可能性があります。 %GDP of Own 対 比率GDP 欧州周辺国における EU 離脱を求める動きは、同時にユーロの放棄と新しい自国通貨の導入に繋がります。このような動きになる と、ECB の債券買い入れプログラムは間違いなく終了し、過去最低水準近くまでの金利が低下した最近の債券市場の活況は消滅す ることになります。また、いかなる周辺国による新通貨発行の動きであっても結果的に深刻な不況をもたらすであろうことから、 それをめぐる公開の論議は活発ですが実現の可能性 は低いと思われます。 外国銀行の英国への最大債権額 40% そうは言うものの、欧州の政治は分裂傾向にあり、 30% Brexit 国民投票に拘わらず、政治的リスクが周辺国 グロス・エクスポージ Gross ャー exposures と中核国ともに増大しています。オーストリア、ド Net exposures 20% ネット・エクスポージ イツ、オランダを含む中核国では、反 EU 政党の人 ャー 気が高まっています。周辺国では、スペインの 6 月 10% 26 日の再総選挙が再びハング・パーラメント(どの 政党も単独過半数が取れない状態)の結果となりま 0% した。イタリアではレンツィ首相が、政治的安定性 を強化するための政治改革と関連する憲法改正の法 -10% 案通過に彼の政治生命を賭けています。これらの改 革に関する国民投票はこの秋に予定されています。 レンツィ首相が辞任に追い込まれた場合、早期選挙 と反 EU 政党“五つ星運動”が勝利するリスクがあ 出所:BIS、ヘイパー・アナリティクス Source: BIS, Haver Analytics ります。 Page 9 2016 年第 3 四半期セクター見通し 点から見ると、銀行のバランスシート強化を目的とする新規制 により、銀行の自己資本比率および信用度は劇的に改善されて います。 事実、すべての大手米国銀行が FRB の最新ストレス テストに合格し資本還元計画の承認を受けましたが、欧州銀行 2 行の米国部門は不合格となりました。 米国および欧州の投資適格社債 米国の投資適格社債の第 2 四半期のリターンは 3.57%と好調で した。世界的な逆風にも拘わらず米国経済が穏やかとはいえ堅 実に成長したことが、投資家の利回り需要を高めました。米国 社債インデックスのスプレッドは同四半期中に 10 bps 縮小し、 PFIM はこのような背景から産業セクターでは現在、自動車、化 米国債に対して 99 bps の超過リターンが得られました。 学、健康保険関連、紙、および医薬品の一部を選好しています。 多国籍企業やドル高の悪影響を受ける輸出企業よりも、米国を 欧州の投資適格社債のリターンも第 2 四半期は 1.57%のプラス 中心に事業を展開する発行企業に引き続き焦点を当てています。 となりました。ECB の債券買い入れプログラムは、Brexit 投票 また、魅力的なスプレッド水準と、産業セクターと比べ相対的 を巡る不確実性とボラティリティの高まりにもかかわらず強力 にイベントリスクへの高い抵抗力を持つ、マネー・センター・ なテクニカル・サポートを提供しました。 バンクを中心とする金融セクターも推奨しています。エネルギ トータル・ ーと金属/鉱業セクターでは厳選した投資機会を探し続けていま スプレッドの変化 OAS リターン す。残存期間の短い低格付けの社債を引き続きオーバーウェイ 2016 年 Q2 年初来 Q2 年初来 トしていますが、レベニュー債(歳入担保の地方債、課税対象) 6 月 30 日 も格下げリスクが低いことから選好しています。しかし、この 米国投資適格社債 3.57 7.68 -9 -10 155 セクターの流動性は総じて高くありません。 欧州投資適格社債 1.57 4.08 7 3 136 欧州投資適格社債 バークレイズ米国社債インデックスおよびバークレイズ欧州社債インデ ックスのデータを示しています(ヘッジなし)。出所:バークレイズ、 2016 年 6 月 30 日現在。過去の運用実績は将来の運用成果を保証するも のではなく、信頼できる指標となるものでもありません。インデックス に直接投資することはできません。 第 2 四半期の欧州の投資適格社債リターンの主な牽引役は、 ECB の新規債券買い入れプログラムでした。ECB はまた、経済 成長が軌道に乗るまでは金融緩和を続けることを保証しました。 米国投資適格社債 米国の投資適格社債は、グローバルな量的緩和(現在では欧州 投資適格社債も ECB の買い入れプログラムの対象)の中、投資 家がより高い利回りと米国社債市場の比較的安定した基調に注 目した結果、第2四半期も活況を続けました。同四半期の社債 発行額は過去最高となりましたが、米国および米国以外の投資 家、特に日本の投資家からの需要が強く消化は順調でした。 米国経済成長の恩恵を受ける米国消費関連セクターのファンダ メンタルズは全般的に堅調を維持しましたが、コモディティ、 エネルギー、金属/鉱業セクターのほとんどの発行企業は、バ ランスシート強化を目指し本格的な修復モードに入りました。 これらセクターが発行した 500 億ドル近くの社債が、当四半期 中に投資適格格付けから非投資適格格付けに格下げされました。 その他の産業セクターでは、低金利を背景にデット・ファイナ ンスによる M&A と自社株買いの意欲が高まり、レバレッジは微 増を続けました。もっとも、自社株買いは減少の傾向にあるよ うです。 米国金融セクターの社債は、Brexit に関する英国の国民投票の 悪影響を受ける欧州の成長鈍化などによる世界経済の成長減速 や、FRB の金利引き上げ意欲が再び後退したことにより銀行収 益が圧迫される懸念が広がり、第 2 四半期は弱い動きとなりま した。欧州の他の国に EU 離脱の機運が広がった場合、経済や市 場の混乱がさらに広がる可能性があります。しかし、債券の観 ボラティリティは、6 月下旬の Brexit に関する英国の国民投票 前とその直後に上昇しましたが、市場では行き過ぎた急落との 見方が急速に広まり欧州社債は軒並み反発に転じました。新規 発行市場は英国国民投票から 1 週間以内に再開し、魅力的な利 回りを提供するいくつかのリバース・ヤンキー債(米国の投資 適格企業が欧州で発行する債券)は、根強い利回り物色に支え られ大きく値上がりしました。当四半期の終了時点で、英国社 債のスプレッドは最も拡大した時点から大幅に縮小はしました が引き続き割安で、一方、銀行セクターは、劣後債とイタリア の銀行を筆頭に出遅れています。 欧州社債の新規発行は第 2 四半期も記録的なペースを続け、リ バース・ヤンキー債の発行企業(主に米国企業)は超低金利の英 国と欧州市場で大量の新規発行を行っています。投資家の新規 発行への需要は極めて強く、ECB が毎月 50 億から 100 億ユーロ の社債を買い入れると見込まれることもあり、テクニカル面で は堅調な状況が続いています。加えて、概して保守的な企業経 営、エネルギー価格の下落、ユーロ安、直近までの限られた件 数の M&A などに支えられ、ファンダメンタルズも好調です。 短期的にみると PFIM の戦略はおおむね変更はありません。 PFIM は割安(売られ過ぎ)と考えられる銘柄、または魅力的な ディスカウント(コンセッション)で発行される新規発行銘柄 への投資機会を追求しています。ドル建て債に比べ大幅なディ スカウントで取引され、スプレッドが知名度不足を補って余り ある水準にあるリバース・ヤンキー債に注目しています。PFIM は欧州金融セクターのアンダーウェイトを続け、周辺国の銘柄 Page 10 2016 年第 3 四半期セクター見通し より北欧の発行企業を推奨しています。ユーロ圏の産業セクタ ーでは、送配電事業や空港運営会社などの健全なバランスシー トを持つ規制対象企業を選好しています。ハイブリッド証券に ついては、高格付けで安定した業態の公益企業が発行する特定 の銘柄群に魅力があると考えますが、通信業界などにみられる 格付けを引き上げるために発行されたハイブリッド証券は避け ています。 トータル・ リターン グローバル・ポートフォリオでは、欧州のスプレッド・リスク のオーバーウェイトを維持していますが、その中でリバース・ヤ ンキー債発行企業を現在オーバーウェイトしています。PFIM が 欧州銘柄への直接エクスポージャーを引き下げる決定をした理 由は、ECB による社債買い入れが発表された後、多くのクレジ ットのスプレッドが大幅に縮小したからです。金融セクターで は、米国のマネー・センター・バンクのオーバーウェイトを維 持し、欧州の銀行をアンダーウェイトします。また、引き続き 残存期間の短い BBB 格の社債とレベニュー債を選好します。同 一企業または類似の信用格付けの企業が発行した米国社債とユ ーロ社債に関しては、引き続き両債券間の価格のずれと利回り 格差に着目していきます。 米国と欧州の両方の市場において、スプレッドは魅力的で縮小 する余地があると考えていますが、ボラティリティは引き続き 高水準で推移するとみています。主なリスクとしては、世界経 済の減速、マイナス金利を含む中央銀行の政策の有効性、 Brexit に関する英国国民投票の影響、大量の新規発行、流動性 の低下、米国における企業のイベントリスクなどが挙げられま す。 見通し: 拡大したスプレッド水準、米国経済の安定的な成 長、量的緩和による需給環境への好影響を考慮し、社債市 場に強気の見方を維持します。世界的な逆風のためにリス クプレミアムは高水準に保たれる可能性があります。引き 続き米国のマネー・センター・バンクを選好します。 グローバル・レバレッジド・ ファイナンス 英国国民投票で Brexit 支持となった場合、広範なリスクオフ 行動を招くと当初見られていましたが、投票後の全般的なセン チメントは、米国と欧州のレバレッジド・ファイナンス市場は 予想以上に高い回復力を維持しているというものでした。欧州 の不透明感は相対的に安定している米国への追い風となってい ますが、魅力的な利回りとスプレッドを求める投資家の限られ た選択肢として、米国と欧州の両市場とも好感されているとみ られます。両市場とも英国国民投票後の売り圧力による下落局 面で買い手が現れましたが、投げ売りは少なく、安値での取引 は殆どありませんでした。 スプレッドの 変化 OAS 2016 年 Q2 年初来 Q2 年初来 米国ハイイールド債 5.88 9.32 -84 -74 621 欧州ハイイールド債 1.90 4.00 -8 -20 500 米国レバレッジド・ ローン 2.86 4.23 -39 -61 L+581 欧州レバレッジド・ ローン 1.63 2.60 -5 19 L+536 6 月 30 日 出所:バンクオブアメリカ・メリル・リンチ、クレディ・スイス、2016 年 6 月 30 日現在。過去の運用実績は将来の運用成果を保証するもので はなく、信頼できる指標となるものでもありません。直接インデックス に投資することはできません。欧州のリターンはユーロをヘッジ。 米国のハイイールド債およびレバレッジド・ローン 米国ハイイールド債市場は、第 2 四半期も再び力強く上昇し、 コモディティ銘柄と市場の CCC 格セグメントがリード役となり ました。 当四半期のこのセクターの好調なパフォーマンスにもかかわら ず、エネルギーおよび金属/鉱業関連の銘柄がデフォルト(債 務不履行)の大半を占める状況が続きました。ディストレスト 債務交換を含む市場全体の年初来デフォルト率は、2016 年 6 月 末現在 4.7%ですが、J.P.モルガンによれば、上記 2 セクター を除くと 6 月末現在のデフォルト率はわずか 0.53%に低下しま す。「フォーリン・エンジェル(投資適格格付けから投機的格 付けに格下げされた企業)」に関しては、市場は旧投資適格社 債 1,613 億ドルを 2016 年年初から現在までに吸収しています が、これは 2009 年に作られた 1,502 億ドルの記録を上回るも のです。 CCC 格セグメントをサポートする全般的なリスクオン選好に加 え、市場構成では BB 格セグメントの拡大によりそれ以下の低格 付け債券の比率が低下していることがテクニカルな追い風にな っています。発行市場でも、低格付け債券(B 格のスプリッ ト・レーティングおよびそれ以下)の新規発行は過去 10 年間で 最低の水準にあります。全体の新規発行水準は年間を通じて上 昇していますが、2016 年年初来の新規発行額は 1,520 億ドルに 留まっており、2015 年央までの 1,830 億ドルを大きく下回って います。そうは言うものの、現在の魅力的なリファイナンス環 境を背景に、年後半に新規発行市場が活発化する兆しも見えて います。 第 2 四半期の CCC 格の極端なアウトパフォーマンス、および地 政学的リスクとポピュリスト感情の高まりを受けて世界経済の 成長見通しを引き下げたことをベースに、CCC 格をサポートす るファンダメンタルズが今後はこれまでのように強くはないと PFIM は考えています。また、ハト派スタンスの中央銀行は市場 Page 11 2016 年第 3 四半期セクター見通し のテクニカル要因の一段の好転を意味しますが、この低金利環 境では BB 格への恩恵になると考えています。これらの要因を考 慮し、PFIM は CCC 格から BB 格へ推奨を変更します。また、 2016 年になってからの原油価格の回復にも拘わらず、以下に詳 述するように、エネルギー・セクターのアンダーウェイトを継 続します。 米国レバレッジド・ローンはハイイールド債と同じような動き となり、第 2 四半期は低格付けローンが大きくアウトパフォー ムしました。当四半期中にパフォーマンス格差が拡大したのは、 潜在的価格上昇の余地が大きい低格付けローンの購入資金を調 達するため、投資家が高格付けのローンを額面近くや額面以上 で売却したからです。新規発行市場も同様な動きで、第 2 四半 期の新規発行は増加しましたが、年初来の発行額 1,350 億ドル は 2015 年中央までの発行額 1,800 億ドルを依然下回っていま す。CLO(ローン担保証券)の組成は 240 億ドルで、前年同期 を 56%下回りました。レバレッジド・ローンのデフォルト率は 2016 年 5 月末時点で 3.4%で、第 1 四半期末の 2.8%、2016 年 初めの 2.0%から上昇しています。 欧州ハイイールド債およびレバレッジド・ローン 英国国民投票後の劇的な売り局面が当初懸念されていましたが、 欧州ハイイールド債市場は期中のボラティリティをこなし、第 2 四半期に再び堅実なリターンを達成しました。英国国民投票 後の安定は、ECB による継続的な投資適格社債買い入れ、年初 来のポジティブな資金流入、限定的な新規発行などのテクニカ ルな市場サポート要因を強調しているようです。 国民投票後の市場が売り圧力に押され下落して始まった時、投 資家は、ECB による社債買い入れのトリクルダウン(浸透)効 果を思い起こし安値での購入に動きました。スプレッドが全体 的に拡大し 500 bps を上回ると、このセクターのファイナンシ ング環境の改善、有利な為替レート、限定的なエネルギー・エ クスポージャーなどが注目され、デフォルト予想がスプレッド に織り込まれた水準より低くなるとの期待も高まりました。ム ーディーズによると、欧州ハイイールド債のデフォルト率は、5 月末時点の 2.7%が 2016 年末までに 1.9%に低下すると見込ま れています。 年初の低調なスタートを受け、2016 年前半の欧州レバレッジ ド・ローンは米国レバレッジド・ローンをアンダーパフォーム しましたが、CLO(ローン担保証券)組成の需要復活を背景に第 2 四半期に盛り返した模様です。 エネルギー・セクターのハイイールド債をアンダーウェ イトする理論的根拠 エネルギー・セクターのハイイールド債のスプレッドは、2009 年以来最大の原油価格回復と歩調を合わせ今年は顕著に縮小し ました。しかし、PFIM はコモディティ関連以外のクレジット市 場のラリーへの参加を選択しています。PFIM は原油価格が今後 レンジ内で推移することを予想しており、また原油市場が一定 の均衡を見出し始めることを想定してスプレッドが急速に縮小 したことで、エネルギー・セクターはすでに好材料を完全に織 り込んだと見ています。エネルギー・セクターのスプレッドの 多くが、原油価格が現在よりずっと高かった 1 年前と比べより 低い水準に正常化しただけのことです。 現在は、セクターのほぼ 66%が 7%以内のスプレッドで取引さ れています。原油価格が 10 ドル以上高く、ハイイールド・イン デックスの平均利回りが 150bps 低かった 1 年前には、これが 44%でした。エネルギー・セクターが提供するスプレッドと利 回りは一見魅力的ですが、資本構成の破綻や原油価格が大幅上 昇してもデフォルトになる企業などのノイズが多く、投資機会 は殆ど見出せません。 ハイイールド債の市場スプレッドのインプライドデフォルト率 と超過プレミアムを見ると、次の表に示すように、市場は短期 的なデフォルトの確率を正確に織り込んでいるようです。第 2 四半期末の直前、市場全体のデフォルト率は 3.8%(ディスト レスト債務交換を含むと 4.8%、年初来のデフォルトの 85%は コモディティ銘柄)まで徐々に上昇し、2016 年内に 6%前後に 達すると予想されています。市場全体の最近の平均回収率 40% と現在のスプレッド 621bps を前提に試算したバリュエーショ ンは合理的だと考えられます。 ハイイールド・インプライド・デフォルト率 第 2 四半期末時点での資金流出は増加傾向にありますが、年間 では引き続き資金流入が上回っており、ECB の社債買い入れは 今後もハイイールド市場の需要に好影響を与えるでしょう。新 規発行も 2015 年央までの水準を下回ったままで、今後の供給 が増加する兆候は殆ど見られません。 英国国民投票に先立ち、BB 格、B 格、および CCC 格の各セグメ ントは等しく順調なパフォーマンスでしたが、投票後は CCC 格 だけが売り込まれました。今後はリスク選好の復活に伴い、BB 格が先行してアウトパフォームし、その後を低格付け債が追う 展開を PFIM は予想しています。 現在のスプレッド +621 - ヒストリカル・リスクプレミアム +300 =デフォルト損失を相殺するための現在の超過スプレッド ÷ (1-回収率) =インプライド・デフォルト率 +321 (100%-40%) 5.4% 全体的に適正なバリュエーション しかし、より詳しく観察すると、ハイイールド市場には極めて 不合理な価格付けが存在し、機会とリスクの両方を提供してい ます。市場全体の 20%を合計して占めるエネルギーとコモディ ティのスプレッドから、投資家は同セクターのリスクを過小評 価していると PFIM は考えます。エネルギーのスプレッドは、2 Page 12 2016 年第 3 四半期セクター見通し 月以降 1,100 bps 以上縮小し 831 bps になりましたが、次の表 にある通り、これはエネルギー・セクターの短期的デフォルト 率 6.6%を予想しています。同セクターのデフォルト率は、 14%(ディストレスト債務交換を含むと 20%)に上昇し、回収 率も予想された水準を大きく下回る 20%(コモディティ関連以 外の銘柄の回収率は 46%)まで下落しています。したがって、 現在の 20%のデフォルト率、および多くのクレジットにとって 原油 50 ドルの価格帯は依然として厳しい水準であることを根拠 に、エネルギー・セクターのデフォルト率が現在のセクター・ スプレッドの予測する水準を大幅に上回って行くと PFIM は考 えています。 見通し:強気。米国のハイイールド債では、デュレーショ ンが中期ゾーン、BB格、かつコモディティ関連以外のク レジットを選好します。ファンダメンタルズはやや悪化し ていますが、低/マイナス金利、ゆっくりとした世界経済 の成長、ECBが牽引する投資適格社債のスプレッド圧縮、 穏やかな新規発行などのテクニカル要因がサポート要因で す。米国のレバレッジド・ローンは、オポチュニスティッ クな資金調達やリプライシングが増加してきており、短期 的には価格上昇を抑制することになりそうです。欧州ハイ イールド債のスプレッドは、低いデフォルト率と低い損失 率が予想される状況で引き続き魅力的です。ECBの社債買 ハイイールド・インプライド・デフォルト率 - エネルギー 現在のスプレッド +831 - ヒストリカル・リスクプレミアム +300 =デフォルト損失を相殺するための現在の超過スプレッド ÷ (1-回収率) +531 =インプライド・デフォルト率 い入れが魅力的な環境を提供しています。 エマージング債券 (100%-20%) 6.6% ディストレスト債務交換を含めたエネルギーのデフォルト率は20%、今後も 同水準を 継続する見通し 市場の残り 80%も不合理な価格で取引されており、魅力的な投 資機会を提供しています。第 2 四半期末の直前、コモディティ 関連以外のハイイールド・セクター全体のデフォルト率は、JP モルガンによればわずか 0.42%で、回収率はコモディティ銘柄 や市場全体の長期平均値を大幅に上回る 46%となっています。 2 月初めからのスプレッド縮小はわずか 152 bps で、現在のス プレッド 578 bps はコモディティ関連以外のセクターの短期的 デフォルト率 5.1%を予想しています。最近のデフォルト率は 0.42%であり、PFIM では当面デフォルト率が 2%をかなり下回 って推移すると見込んでいるため、ハイイールド市場の大部分 は依然構造的に割安に放置されていると判断します。 エマージング債券は力強い基調で第 2 四半期を終えました。こ れは魅力的な利回りとスプレッドが得られる数少ない分野の一 つであった上、Brexit が英国国民投票で支持された環境下でも 相対的にはほとんど影響を受けなかったためです。 トータル・ リターン 第2 年初来 四半期 エマージング・ハ ードカレンシー建 て債券 エマージング・現 地通貨建て(ヘッ ジあり) スプレッドの変化 OAS/利回り 第2 四半期 年初来 2016 年 6 月 30 日 5.02% 10.31% -22 -27 388 2.06% 6.01% -19 -81 6.33 エマージング通貨 0.34% 5.81% 18 -113 3.87 エマージング社債 3.77% 7.80% -25 -33 395 ハイイールド・インプライド・デフォルト率 - 除くコモディティ 現在のスプレッド +578 . 出所:J.P.モルガン、2016 年 6 月 30 日現在。過去の運用実績は将来 - ヒストリカル・リスクプレミアム +300 の運用成果を保証するものではなく、信頼できる指標となるものでもあ りません。直接インデックスに投資することはできません。 =デフォルト損失を相殺するための現在の超過スプレッド ÷ (1-回収率) =インプライド・デフォルト率 PFIMの予想デフォルト率はずっと低い。 コモディティ関連以外のハイイールド債は引き続き割安。 図表データ出所: J.P. モルガン +278 (100%-46%) 5.1% ほかのスプレッド・セクター同様エマージング債券も、Brexit 支持が判明した直後には圧力を受けましたが、スプレッドと利 回りが拡大したことによって、すぐに投資家を引き付けること ができるようになりました。英国国民投票翌日の昼頃までに、 エマージング通貨は下落分の半分程度の戻りとなり、ハードカ レンシー債券の大半はドル建て価格では前日と同じ水準にまで 戻しました(ただし、米国債の大幅な値上がり(利回りの低下) のためにスプレッドは前日比で拡大したままでした)。 Brexit を支持した投票後に下落した通貨は、買いの機会を提供 している可能性があります。この見方にはいくつかの前提条件 があります。具体的には、米国経済が現在のように緩やかとは Page 13 2016 年第 3 四半期セクター見通し いえ拡大軌道に乗っていて、Brexit の英国国民投票の結果が FRB の利上げを抑制することを前提としています。 欧州のエマージング諸国に対する Brexit の英国国民投票の影 響については、貿易、送金、EU の資金、海外直接投資を通じた 初期のマクロ的影響は今後 1、2 年間は管理可能であるという見 方がコンセンサスとなっているようです。英国国民投票に続い て、政治的結束に関する議論が活発化しましたが、CEE(中央お よび東ヨーロッパ)諸国が EU から離脱する強い動機付け要因は ないとみられます。むしろ欧州のエマージング諸国は、EU に加 盟することによる恩恵が負担よりも大きいと考えられます。 CEE 諸国通貨は引き続き圧力を受ける可能性が高いとみられ、 この地域の銀行セクターは一時的な流動性不足に陥る可能性が ありましたが、CEE 諸国はこうした一時的な問題に対処できる だけ十分に大きなバッファーを持っていると PFIM では考えて います。ユーロ圏の成長率が実際に減速し、各国が成長率を高 めるために財政政策を利用した場合には、財政赤字はわずかに 拡大するとみられます。1 つの明るい側面としては、他の地域 とは異なり、欧州債務危機以来、多くの CEE 諸国で負債依存度 が低下している点を挙げることができます。特に、負債依存度 の低下が最も顕著だったのがハンガリーでした。これらの国々 は金融政策の支援によって成長することができましたが、成長 の大半は信用創造の拡大によるものではありませんでした。 ハードカレンシー建て債券では、アフリカ、中近東、ラテン・ アメリカ諸国の債券は、コモディティ市場が回復し、中国経済 に対する懸念が後退したためアウトパフォームしました。パフ ォーマンス上位の国には、エクアドル(+10.0%)、カメルー ン(+8.9%)、イラク(+12.4%)が含まれますが、ハンガリ ー(+1.72%)やリトアニア(+1.4%)などのディフェンシブ な石油輸入国はアンダーパフォームしました。アルゼンチン (+10.3%)も際立った好パフォーマンスを示しました。これ は、マウリシオ・マクリ大統領の経済政策に対する高い評価の ため投資マインドが高まり、160 億ドル以上の新規発行の影響 を圧倒したためです。世界のエマージング債発行市場で第 2 四 半期に発行が活発化し、ソブリン債、エマージング社債の新規 発行額は 1,460 億ドルとなりました。 現地通貨建て債券でも、ラテン・アメリカ諸国とアフリカの債 券がアウトパフォームしました。ブラジルの現地通貨建て債券 (ヘッジあり)のリターンは+5.2%となりました。これはイン フレ率が反落に転じ、今後金融緩和政策が実施されるための市 場環境が整ったとみられるためです。ジルマ・ルセフ大統領の 弾劾手続きが開始されたことも、市場に好感されました。ペル ーの現地通貨建て債券(ヘッジあり)のリターンは+7.9%とな りましたが、これはインフレ率の低下と中道右派のペドロ・パ ブロ・クチンスキ氏が大統領に選出されたことがリターンを押 し上げたためです。 エマージング通貨では、全体の指数のリターンは小幅でしたが 個別通貨についてはかなりの大きな変動がありました。ブラジ ル・レアル(+13.7%)とロシア・ルーブル(+7.4%)は貿易 収支の改善と投資マインドの向上、今後利下げが実施される見 通しであることからアウトパフォームしました。ポーランド・ ズロチ(-5.8%)やその他の東欧通貨は、Brexit に対する懸念 からアンダーパフォームしました。メキシコ・ペソ(-6.2%) は資金フローと、マクロヘッジに同通貨が使われたことから引 き続きアンダーパフォームしました。 エマージング市場のボラティリティ – トレーダーの悪夢、 投資家の味方 エマージング市場とボラティリティは、しばしば切っても切り 離せないものとみなされています。 両者の関係は、どんな原因 でリスクが生じているかにかかわらず非常にやっかいなものだ と考えている投資家もいます。リスクを生み出す要因としては、 全てのリスク資産に影響する全般的なリスク回避の動き、エマ ージング諸国のファンダメンタルズに関係するリスク要因、悪 材料に関してニュース報道が原因となったリスク(実際に経済 活動に影響を及ぼす、及ぼさないにかかわらす)があります。 エマージング債セクターは今年これら 3 種類のリスクを全て経 験しています。つまり、Brexit、ブラジルの政治的混乱、ベネ ズエラでの抗議行動などの要因がエマージング資産の価格に影 響を及ぼしました。2008 年の金融危機後の投資環境では、ブロ ーカー・ディーラー各社が従来ほどリスクを抱え込もうとしな くなったため、価格の変動性が増幅され、買い方または売り方 が一方的に市場を支配し、これに真正面から対抗してリスクを 取る投資家がいなくなるという一方的な動きが頻繁に起こるよ うになりました。 価格のボラティリティが一時的に高まる時期がしばしば訪れた ため、短期投資中心のトレーダーにとっては特に厳しい投資環 境になりました。これらのトレーダーはリスク環境の変化を認 識すると同時にポジションを解消したり積み増したりするため です。こうした環境ではビッド・オファーのスプレッドが拡大 し、価格のギャップが生じ、市場で新たな決済価格(需給が均 衡する価格)を決定するのが困難な状態がたびたび発生します。 しかし、長期的な視点に立てる投資家にとっては、こうした変 則的な市場は、ファンダメンタルズが健全な資産を割安な価格 で購入できる好機を提供してくれることになります。 しかし適切な投資タイミングはどのように決まるのでしょう。 市場で投資行動を行う適切な時期を定めるのが難しいことはよ く知られていますが、数年間にわたるリスクとリターンの関係 からみて魅力的な投資機会を見つける際に有益ないくつかの要 因があります。第一に、エマージング市場資産のように利回り が比較的高い資産クラスの場合、平均回帰性が比較的強いとい う傾向があり、これは長期投資を行っている投資家にとっては 恩恵となります。仮にエマージング・マーケット・ボンド・イ Page 14 2016 年第 3 四半期セクター見通し ンデックス・グローバル・ディバーシファイドがピークを付け た 2008 年にこの指数に投資したとすると、ある時点で損失率 は 30%近くに達したとみられます。しかし、受け取ったクーポ ン(金利)を、指数の下落局面で値下りして利回りが上昇して いた指数に再投資していたとすると、全ての損失を 1 年以内に 取り戻すことができたとみられます。言うまでもなく、下落局 面でエクスポージャーを拡大した場合には、リターンははるか に良くなったと考えられます。しかも 2008 年は例外的な年で はなく、1990 年代初め以来、エマージング・ハードカレンシー 建て債券が大幅に下落した全ての局面において、その後同様に 反発したことが何回かありました。平均回帰性の影響は、ボラ ティリティに対するキャリー収益の比率が高い資産クラスの場 合に最大になり、現地通貨建て債券(ヘッジあり)の場合もか なり影響がありますが、エマージング通貨についてはあまり影 響がありませんでした。 国ごとの投資のタイミングを決定するのはより困難です。これ は個別のクレジットの平均回帰性は市場全体に比べて小さいた めです。こうした状況では、各国のファンダメンタルズの推移 だけでなく転換点を迎える可能性についても評価することが極 めて重要です。将来の政治的な変化の可能性について信頼性の 高い先見性のある見通しを持つことは非常に有益です。例えば、 アルゼンチンはキルチネル政権下では、マクロ経済政策の失敗 と、競争力の欠如のために 2011 年と 2012 年に劇的にアンダー パフォームしました。しかし同国は、2015 年の選挙でより市場 志向型の政府が生まれるという見方が日を追うに従って強まっ たため、2014 年と 2015 年にはパフォーマンス上位国の一つに なりました。同様にブラジルは 2016 年には際立ったパフォー マンスを示しましたが、これはルセフ大統領が職務停止となり、 より正統的なミシェル・テメル氏が大統領代行に就任したため です。PFIM ではこれらの政策の変化に対する理解に基づいて、 これらの国々をオーバーウェイトとしていますが、これが PFIM の顧客のポートフォリオに十分な恩恵をもたらしています。 それぞれの場合で市場のボラティリティが価格の急落につなが り、ファンダメンタルズに基づく価値を債券価格が下回ったこ とから、忍耐強い投資家には恩恵を享受できる投資機会となり ました。市場が足固めするには時間がかかるため、こういった 投資機会の恩恵は直ちに明らかになるとは限りませんが、それ でもトレーダーよりも投資家になる方が長期的に大きな恩恵を 享受できることは明白です。 この見方によって PFIM のポートフォリオはどのような影響を 受けるのでしょうか? G3(米国、欧州、日本)の低金利が続く 世界では、エマージング市場での平均回帰性が今後も支配的な 特徴にとどまると PFIM では引き続き考えています。このため、 Brexit のような種類のシナリオまたは FRB の政策に対する懸念 に関連した市場全体の下落は、購入時期に関する PFIM の判断 を生かす機会になる可能性が高いとみられます。個別国に関し ては、ファンダメンタルズおよび投資家の投資マインドに影響 を及ぼす政治および経済政策の変化に引き続き注目しています。 国に対する公的信用供与による支援、例えばスリランカ(承認 済み)、モンゴル(承認待ち)に対するものや、ベネズエラの 政権交代の可能性は、こうした変化の前兆となる可能性があり ます。 見通し: 強気。Brexitの投票結果後のエマージング債券 セクターの回復力の強さは、高い利回りとスプレッドを、 特に英国へのエクスポージャーが比較的小さい市場で求め ている投資家にとって、いかに魅力的であるかを浮き彫り にする結果となりました。ボラティリティが上昇する時期 もあるでしょうが、そうした時期は引き続きエクスポージ ャーを拡大する好機とみられます。 地方債 AAA 格の地方債はイールドカーブ全般で米国債をアウトパフォ ームし、30 年物の米国債に対する地方債の利回りレシオは第 2 四半期初めの 102.7%から期末には 87.4%に低下しました。堅 調なパフォーマンスはミューチュアル・ファンドからの安定的 なネットの資金流入(第 2 四半期にほぼ+190 億ドル、年初来で は+330 億ドル)に加えて供給が対処可能な水準(第 2 四半期に 1,190 億ドル、年初来で 2,190 億ドル)にとどまったためでし た。第 2 四半期のリターンも投資適格地方債で+2.61%、ハイ イールド地方債で+5.10%とともに引き続きプラスとなり、年 初来リターンは投資適格地方債で 4.33%、ハイイールド債で 7.98%となりました。プエルトリコ債のリターンは第 2 四半期 に反発して、広範なハイイールド地方債指数をアウトパフォー ムして、+7.82%となり、年初来のリターンは+8.36%となりま した。長期の課税対象地方債の第 2 四半期のリターンは +6.56%と長期社債インデックスと同程度でしたが、年初来リ ターンは+12.35%と長期社債インデックスを下回りました。 プエルトリコ債の第 2 四半期の上昇は、「プエルトリコ監視・ 管理・経済安定化法(PROMESA)」が第 2 四半期後半に連邦議 会を通過したことに牽引されました。PROMESA の成立によって 7 人の委員から構成される連邦監視委員会が創設され、自治領 であるプエルトリコの財政状況を広範に監視することになって います。PROMESA の重要な条項の中には、訴訟の一時中断条項 がありますが、これは自治領政府と債権者の間の交渉のための 環境を整えることを目的とした制度です。また集団行動条項も 盛り込まれていて、債権者団の 3 分の 2 以上の多数が賛成すれ ば債務の再建計画を決定できることになっています。また PROMESA には次のような文言も盛り込まれています。いかなる 債務整理でも、「憲法を適用する場合同様に、法律上の相対的 優先順位または先取特権を尊重しなければならない」。この法 律の成立は、債務の再編のための明確な枠組みがこの法律によ って提供されるため、債権者からおおむね好意的に受け取られ Page 15 2016 年第 3 四半期セクター見通し ているようです。プエルトリコ憲法では、一般財源保証(GO) 債保有者に対する返済は最優先とすることが定められているに もかかわらず、自治領政府は GO 債の利払いと自治領が保証して いる債務返済で 7 月 1 日にデフォルトとなりました。新聞報道 等によると、不履行となった自治領政府による債務返済負担額 は総額 9 億 1,100 万ドルで、これには GO 債の利払い分 7 億 8,000 万ドルが含まれるとみられます。 信用状況に関係する別のニュースとしては、ニュージャージー 州最高裁が、2011 年年金改革法で生活費調整の支払いが停止さ れたことに対する異議申し立てに対して、州側に有利な判決を 下しました。ムーディーズによれば、州側に不利な判決が下さ れた場合には、年金積立不足額が 33%増加し、ファンディング 比率は 51%から 41%に低下するため、格下げにつながった可 能性があったとみられます。イリノイ州では、政治的な手詰ま り状態のために、州債の格付けはさらに引き下げられて、現在 では Baa2 および BBB+となり、見通し(アウトルック)はネガ ティブ(弱含み)となっています。2016 および 2017 会計年度 の予算が編成できていないため、財政不均衡が続き、審議に入 れない法案が増加しています。2016 会計年度の最終日にイリノ イ州議会は暫定予算を可決しましたが、これによって 12 月まで は資金が供給されることになりました。 今後については、第 2 四半期に堅調にアウトパフォームしたに もかかわらず、免税債に対する需要が今後も堅調に推移すると みられることが、特に世界的な低金利環境下では、地方債市場 を支える環境を提供するとみられます。供給は管理可能な水準 にとどまるとみられますが、供給の拡大によって値下りした場 合には魅力的な購入の機会になるとみられます。ここ数年地方 債関連の報道で注目された問題含みの地方債に対する懸念が解 消されたわけではありません。政治的な手詰まり状態にあるこ とがイリノイ州と州債に依存している同州の財政に、引き続き 重くのしかかるとみられます。そのため格付けがさらに引き下 げられる可能性も否定できない状態にあります。これら州債の 信用状況に関する問題がどんな結末を迎えたとしても、より広 範な地方債市場にとってのシステミック・リスクにつながるこ とはないと PFIM では引き続き考えています。課税対象地方債 は社債と同様なパフォーマンスを示し、企業による M&A の動き が続くようであればアウトパフォームする可能性もあると予想 しています。 見通し:魅力的な課税債相当利回りや、夏の間の良好な需 給環境が市場を支えるとみられるため、やや強気のスタン スを取っています。 グローバル金利 先進国の金利は第 2 四半期のほとんどの期間に緩やかな下降線 に沿って低下しましたが、英国国民投票で予想に反して Brexit が支持された後、過去最低水準に向けて下落が加速しました。 世界各国の金利では、ゼロ金利に向けて、またはそれを越えて 下落する動きが広がりました。この現象はドイツ国債市場に最 も典型的な形で表れました。ドイツ国債 10 年国債利回りは、四 半期の大半の期間ゼロ近辺で変動したあと低下して、マイナス になりました。一方、日本 20 年国債の利回りはゼロに向けて急 落しました。リスク選好気運が再び高まれば利回りが反発する 可能性もありますが、大規模な金融緩和を含む需給環境面での 強い追い風は続き、マイナス金利環境がさらに顕著になる可能 性があるとみられます。 米国では英国の国民投票の影響で 10 年債利回りが 31bps 低下 したため相当なブル・フラットニングが起こり、2 年債と 10 年 債の利回り格差は 11bps 縮小しました。米国のタームプレミア ム(期間長期化に伴う利回り上乗せ幅)は世界的にみると引き 続き比較的高い状態にありますが、英国国民投票後の動きが大 幅だったため PFIM は全般的な長期デュレーションに対するエ クスポージャーを減らしました。ただ、米国のイールドカーブ はさらにフラット化することを想定しています。世界経済に逆 風が吹いていることから、10 年物米国債利回りの変動レンジは 1.25% - 1.75%の範囲になるとみています。 5 月の非農業部門雇用者増加数が 3 万 8,000 人と予想外の低水 準にとどまったため、米国の金融政策は既に流動的になってい て、英国の国民投票の結果のために、2016 年中は FRB による利 上げは棚上げにされる可能性が高いとみられます。国民投票後、 市場が想定する年末時点のフェデラル・ファンド(FF)レート は 65bps まで低下し、今回の利上げサイクルでの利上げは残り 1 回にとどまる可能性が高いことを示しています。 英国への Brexit 支持の影響はまだ明確とは言えませんが、長 期金利の低下と英ポンドの下落によって、EU 離脱による予期せ ぬ悪影響が軽減される可能性があるとみられます。イングラン ド銀行は依然としてかなりの金融緩和オプションを温存してお り、銀行に対する追加的な直接信用供与、量的緩和の開始、政 策金利引き下げなどが可能です。 これら以外の地域では、日銀が 7 月に金融をさらに緩和する可 能性があるとみられます。日銀は円ドル・レートが 100 円から 125 円の範囲で変動することは容認するとみられますが、100 円より円高になる場合には介入が必要になる可能性があります。 英国国民投票前にすでに緩和バイアスがかかっていたコモディ ティ輸出国の中央銀行、例えば、ノルウェー銀行、オーストラ リア準備銀行、ニュージーランド準備銀行は、ここにきて、よ り緩和的な金融政策を実施する必要に迫られている可能性があ ります。 Page 16 2016 年第 3 四半期セクター見通し 第 2 四半期が終った時点で、PFIM は米国では引き続きスワッ プ・スプレッド拡大(ワイドナー)に投資価値があるとみてい ます。スワップ・スプレッドが逆転してマイナスになっている ことや、ポジティブ・キャリーとなっていることは、世界経済 の状況を考えると例外的とみられます。また米国ではタームプ レミアムが比較的大きく今後縮小する可能性が高いため、カー ブ・フラットナーも選好しています。逆に日本国債市場ではタ ームプレミアムが小さすぎるとみられるため、イールドカーブ 上の 20 年物と 30 年物の間のスティープナーを選好しています。 見通し: 選別的スタンス。PFIMのファンダメンタルズに 関する見方の多くは変わっていません。つまり、米国のタ ームプレミアムが世界的にみて大きすぎるとみられます が、英国の国民投票後の利回りの低下幅が大きかったた め、米国のデュレーションに対するオーバーウェイトを縮 小しました。金利は低水準でレンジ内の動きを続けると考 Brexit を支持した国民投票とそれに続く 6 月末の市場ボラティ リティの急上昇の際にも、モーゲージ債はよく持ちこたえてモ ーゲージ債のオプション調整後スプレッド(OAS)の上昇は数ベ ーシス・ポイントにとどまりました。LIBOR(L)に対する OAS の時価総額加重平均は L+52 で横ばい、米国債(T)に対する OAS も T+39 で横ばいでした。 四半期末時点でモーゲージ債のスプレッドはスワップ・レート と比較して魅力的な水準にとどまりました。最近の市場債券利 回りの低下と季節的に住宅の購入が増加する傾向があるため、 夏場にはプリペイメントは増加するとみられますが、FRB によ る再投資も増加すると PFIM では予想しています。こうした背 景からモーゲージ債のパフォーマンスは、米国債と同じ方向に 変動し、米国債が上昇した場合には純投資の買いからも恩恵が 期待できるとみられます。 PFIM では、現在のスプレッドの水準でモーゲージ債に対して短 期的にはさらにポジティブの見方をしています。また、引き続 き連邦住宅金融抵当公社(FHLMC、フレディマック)債を戦術的 に売買し、受け渡しの対象として特定のモーゲージ・プールを 指定する取引に対して、指定しない取引(TBA)は減らし、クー ポン・レートが比較的低い債券に重点を置いています。長期的 にみると、モーゲージ債のスプレッドのパフォーマンスは低金 利環境では、流動性の高いスプレッド商品に対する需要と FRB によるモーゲージ債再投資プログラムに左右されるとみられま すが、同プログラムは市場の予想よりも長期間続く可能性があ るとみられます。 えられますが、市場では不確実性が定着してしまい、金利 は上下どちらかにも大きく変動する可能性があります。そ のためPFIMでは、今後発生する可能性のある投資機会に基 づく選別的スタンスを採用しています。 モーゲージ債 モーゲージ債は第 2 四半期に米国債をアンダーパフォームして リターンは 1.11%となり、セクターの年初来リターンは 3.10%に上昇しました。 見通し:スワップ・スプレッドに対してモーゲージ債をオ 同四半期の初めにはモーゲージ債のパフォーマンスは好調でし たが、これは米国の銀行や海外投資家からの大量の買い切り注 文が入ったためでした。FRB もモーゲージ債保有分のプリペイ メントが活発化したため、再投資を増加させました。プリペイ メントの絶対水準は第 2 四半期には増加しましたが、予想は下 回り、2015 年の水準以下にとどまりました。「住宅ローン借り 換え促進プログラム」は今年末に終了し LTV(ローン資産価値 比率)に基づいた持家支援プログラムに取って代わられる可能 性があります。政府による追加的な支援プログラムのプリペイ メント速度に与える影響は取るに足らないものである、と PFIM では予想しています。 6 月上旬にはモーゲージ債のスプレッドが再び拡大しました。 これは米国の雇用者増加数がさえなかったことを受けて質への 逃避の動きがあったことと、近い将来に FRB が利上げを実施す るという予想が市場で後退したためです。実際、世界経済が減 速していることを示す指標の発表が続き、政治的リスクが拡大 していることから FRB は 2017 年を通して金融政策を据え置く 可能性があると考えている市場参加者もいます。その場合、FRB がモーゲージ債再投資プログラムを予想以上の長期間にわたっ て継続する可能性が高まることになります。 ーバーウェイト。 証券化商品 証券化商品の第 2 四半期のパフォーマンスは好調で、年初の不 振から回復しました。とはいえ、このセクターは引き続き他の 市場の影響を受けました。この点は、第 1 四半期後半に株式市 場が上昇し、ECB が社債の買い入れを発表したことを受けて、 このセクターのスプレッドが縮小したことに表れています。第 3 四半期はスプレッド商品のパフォーマンスが季節的にさえな いという傾向があるため、短期的にやや警戒感を持っています。 なお、通常は年間で最大の超過リターンが期待できる第 1 四半 期のパフォーマンスが今年は低迷したため、例外的な展開とな っています。米国以外の先進国(特に日本)の市場で利回りが マイナスになっていることが、米国のスプレッド商品の魅力を 引き続き高める効果をもたらしています。また、こうした需給 環境から、高格付けの中期物の資産、とりわけ AAA 格の CMBS と CLO のスプレッドの縮小が期待できます。 Page 17 2016 年第 3 四半期セクター見通し 非エージェンシー住宅モーゲージ: 非エージェンシー住宅モ ーゲージ債の相場は第 2 四半期に力強く上昇しました。スプレ ッドは 2015 年下半期の水準に戻り、2006 年/2007 年に発行さ れたシニア・レガシー債で L+250-275 となりました。現在のス プレッドの水準でラリーは短期的にみるとほぼ終了したとみら れますが、需給環境による下支え効果は引き続き堅調です。こ れは(金融危機前に発行された)レガシー非エージェンシー住 宅モーゲージ債残高の約 15%が毎年部分償還され、機関投資家 からも安定的な需要があるためです。ファンダメンタルズも改 善しつつあります。住宅が経済の中で好調な部門である状態が 続いていて、さらに改善する余地があるとみられ、これがこの セクターのファンダメンタルズの改善にとって追い風になると みられます。住宅価格は過去 1 年間で 5%程度上昇しました。 総合的に考えて、スプレッドの縮小から生じる超過リターンを 期待するというよりは、一定の金利収入を得ることを期待して、 非エージェンシー住宅モーゲージの保有を続けることを PFIM では推奨します。比較的最近に発行された証券としては、信用 リスク移転証券のスプレッドが第 2 四半期に大幅に縮小しまし た。この市場を下支えしているファンダメンタルズ要因は引き 続き評価していますが、現在のスプレッドの水準では、このセ クターの市場ベータに対するエクスポージャーを減らすために、 スプレッド・デュレーションを低下させることを推奨します。 CMBS: CMBS の相場も第 2 四半期に反発して、スプレッドは第 1 四半期の 173bps の高水準から 110bps に大幅に縮小しました が、その後四半期末にかけてやや拡大しました。市場でのスプ レッドのボラティリティが大きいことや、価格変動に法則性が 見出しにくいことから、資本構造最上部でも、このセクターの 個別案件ごとの投資家層がいかに薄いかが明らかです。しかし、 スプレッドが 110bps から 115bps でも、AAA 格の CMBS は社債や エージェンシーCMBS の代替投資対象として魅力的であると PFIM では考えています。メザニン CMBS のスプレッドも縮小し ましたが、クレジット・カーブの傾斜は急なままでした。この ような急な傾斜は、CMBS の対象資産となった多くの債権の引き 受け基準の劣化を考えれば妥当と考えられます。証券化商品を 対象としたヘッジファンドに組み入れられているメザニン CMBS (特に BBB-格の債券)についても、ファンドの償還や解約が続 くようであれば、清算する必要が生じる可能性があるため、 PFIM では懸念を持っています。第 1 四半期のボラティリティに 対する最も特筆できる反応は、第 2 四半期に CMBS の組成がほ とんど中止されたことでした。コンデュイット型 CMBS の第 2 四半期の発行額は 70 億ドルと前年同期の 165 億ドルから減少 し、第 3 四半期の CMBS の発行額も同様な低水準になるとみら れます。この需給環境要因が第 2 四半期のスプレッドの縮小に つながりました。しかし、2006、2007 年に組成された大量の CMBS の償還が 2016 年下半期に集中するため、スプレッドが引 き続きある程度安定的に推移すれば、CMBS の発行は増加すると みられます。全体的にみれば、CMBS のスプレッドは現在の水準 で安定的に推移するかまたは徐々に縮小するとみられます。こ れは、米国以外の先進国市場で金利がゼロまたはマイナスにな っているため、海外から高格付け証券化商品への投資資金が流 入するとみられ、これが発行額の増加分を十分に吸収してくれ るとみられるためです。 CLO: AAA 格のローン担保証券(CLO)のスプレッドは L+150170 で、債券セクターの中で最も魅力的な投資対象の一つであ ると PFIM では引き続き考えています。AAA 格 CLO には、35%以 上の信用補完があり、セクター分散も効いているため、最近の エネルギー、コモディティ、小売りセクターに関する信用上の 懸念に対する強力な保護となっています。 ABS: マクロ経済環境の改善によって、ABS セクターではスプ レッドは縮小し、信用状況と流動性が改善しました。ベンチマ ークのクレジットカードや自動車ローンのスプレッドは 510bps 縮小して、3 年物クレジットカード ABS では L+40bps、1 年物プライム自動車ローン ABS では L+25bps となりました。5 年物シニアレンタカーABS のスプレッドは 30bps 縮小してスワ ップ(s)+140 となりました。これらのファンダメンタルズが 健全なセクターではキャリー収益を獲得することが可能で、平 均残存期間は減少するものの予想スプレッドが現在の水準近く のレンジ内にとどまるとすれば、リターンを拡大することも可 能と予想しています。 学生ローンについては、ムーディーズが 最近、(金融危機前に組成された)レガシー連邦政府保証民間 学生ローンプログラム(FFELP)債の格付けの新たな基準を公 表しました。フィッチも同様な基準を適用することを最近明ら かにしました。間近に迫った問題は、ローン返済のペースが遅 いことで、そのため債券が法律で定められた償還日までに完全 に償還できない可能性が生じています(ただし、米国政府がロ ーン段階で保証しているため、最終的に償還される可能性は非 常に高いと考えられます)が、その場合、格付けの引き下げに つながるとみられます。この債券はほとんど取引されていませ んが、気配値に基づくスプレッドはやや拡大しています。 FFELP 債のスプレッドの拡大は、今後もリスク要因にとどまる とみられます。これは、今後の格付アクションが厳しいものに なった場合、格付けに基づいて投資対象証券に制限がある投資 家が、売却を余儀なくされる可能性があるためです。英国では ノンコンフォーミング RMBS 2.0 のスプレッドが Brexit 直後に 25-50bps 拡大しましたが、その後数日で 10-35bps に回復しま した。このセクターに対するエクスポージャーはこれまで避け てきましたが、これは Brexit のリスクがスプレッドに適切に は反映されていないと PFIM では考えているためです。シニア 債のファンダメンタルズは健全であると考えられますが、英国 の住宅市場、とりわけ大ロンドン地区については、国民投票と 印紙税改正後不透明感が高まりました。そのためこれらより投 資価値の高い他の証券化商品があると PFIM では考えています。 リスク・リテンション規制: リスク・リテンション規制は CLO と CMBS 市場でともに切迫した問題になりつつあります。CLO 市 場はこの挑戦への対応では先行していますが、欧州議会議員が Page 18 2016 年第 3 四半期セクター見通し 最近、リスク保有比率(発行者に保有が求められる比率)が (20%まで)引き上げられる可能性があることを明らかにした ため、引き続き欧州での CLO の発行にとっては脅威となる可能 性があります。CMBS 市場については、リスク・リテンション基 準に適合した最初の証券化商品が第 3 四半期に発行されるとみ られます。現在の見通しによれば、リスク・リテンション規制 基準では、債権者がリスクを保有することの補償のために、債 務者にスプレッドを 10-20bp 上乗せすることを求めることにな るとみられます。これは債務者が負担するコストと考えられる ため、債券のスプレッドにはほとんど影響しないと PFIM では みています。 見通し:最優先トランシェの債券に対して非常に強気の見方を 維持しています。これら債券はさまざまなシナリオにおいて健 全なファンダメンタルズに基づくリターンを提供するとみられ ます。日本と欧州のマイナスの金利によって、投資家は高格付 けの債券でより高い利回りを求めるとみられるため、AAA格の CMBSやCLOのスプレッドは縮小する可能性があります。GSEクレ ジット・リスク・メザニン・キャッシュフローに対して強気の 見方を維持しています。一方、CMBSやCLOのメザニン・トラン シェに対して弱気の見方を維持しています。 Page 19 2016 年第 3 四半期セクター見通し 留意事項 1 データの出所(注記のある場合を除く):プルデンシャル・フィクスト・インカム 2016 年 6 月現在 プルデンシャル・フィクスト・インカムは、1940 年投資顧問法に基づき米国で登録している関連投資顧問会社であるPGIM インクおよびプルデンシャ ル・ファイナンシャル・インクを通して事業を行っています。欧州および一部のアジアの国においては、プルデンシャル・フィクスト・インカムは PGIM フィクスト・インカムとして事業を行っています。プルデンシャル・フィクスト・インカムはニュージャージー州ニューアークを本社とし、次の 事業も含みます。(i) ロンドンのPGIM リミテッドにおけるパブリック債券部門、(ii) 東京のプルデンシャル・インベストメント・マネジメント・ジ ャパン株式会社(PIMJ)、(iii) シンガポールのPGIM(シンガポール)プライベート・リミテッド。プルデンシャル・ファイナンシャル・インクは、 英国を本拠地とするプルーデンシャル社とはなんら関係がありません。 本資料は、経済状況、資産クラス、有価証券、発行体または金融商品に関する資料作成者の見解、意見及び推奨を示したものです。本資料を当初の配 布先以外の方(当初の配布先の投資アドバイザーを含む)に配布することは認められておりません。またプルデンシャル・フィクスト・インカムの事 前の同意なく、本資料の一部または全部を複製することや記載内容を開示することを禁止いたします。本資料に記載されている情報は、現時点でプル デンシャル・フィクスト・インカムが信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報の正確性、完全性、および情報が変更されない ことを保証するものではありません。本資料に記載した情報は、現時点(または本資料に記載したそれ以前の日付)における最新の情報ですが、予告 なく変更されることがあります。プルデンシャル・フィクスト・インカムは情報の一部または全部を更新する義務を負うものではありません。また、 情報の完全性または正確性について明示黙示を問わず何ら保証または表明するものでなく、誤謬についての責任を負うものでもありません。本資料は 特定の証券、その他の金融商品、または資産運用サービスの勧誘を目的としたものではなく、投資に関する判断材料として用いるべきではありません。 どのようなリスク管理技術も、いかなる市場環境においてもリスクを最小化または解消できることを保証することはできません。過去のパフォーマン スは将来の運用成績を保証するものではなく、また信頼できる指標となるものでもありません。投資は損失となることがあります。本資料に記載され ている情報や本資料から導出した情報を利用したことにより(直接的、間接的、または派生的に)被り得るいかなる損失ついても、一切責任を負いま せん。プルデンシャル・フィクスト・インカムおよびその関係会社は、それぞれの自己勘定を含め、本資料で示した推奨や見解と矛盾する投資判断を 下す可能性があります。 本資料はそれぞれのお客様の置かれている状況、投資目的、あるいはニーズを考慮しておりません。また、特定のお客様もしくは見込み客に対して特 定の証券、金融商品、または投資戦略を推奨するものでもありません。いかなる証券、金融商品、または投資戦略についても、これらが特定のお客様 もしくは見込み客にとって適切であるかどうかに関する決定は下しておりません。本資料に記載された証券または金融商品についてのご判断はご自身 で行ってください。 利益相反: プルデンシャル・フィクスト・インカムおよびその関連会社が、本資料で言及した有価証券の発行体との間で、投資顧問契約や他の取引関 係を結ぶ可能性があります。時にはプルデンシャル・フィクスト・インカムおよびその関連会社や役職員が、本資料で言及した有価証券や金融商品を ロングもしくはショートするポジションを保有する可能性、およびそれらの有価証券や金融商品を売買する可能性があります。プルデンシャル・フィ クスト・インカムの関連会社が、本資料に記載する推奨とは無関係の異なる調査資料を作成して発行することがあります。営業、マーケティング、ト レーディングの担当者など、本資料作成者以外のプルデンシャル・フィクスト・インカムの従業員が、本資料に表示する見解とは異なる市場に関する コメントもしくは意見を、口頭もしくは書面でプルデンシャル・フィクスト・インカムのお客様もしくは見込み客に提示する可能性があります。利益 相反もしくはそのおそれについて、詳しくはプルデンシャル・フィクスト・インカムのフォーム ADV第2A 部をご覧ください。 情報提供については、英国では、PGIM インクの間接子会社である PGIM リミテッドが担当しています。PGIM リミテッドは英国金融行動監督機構(FCA) の認可を受けており、FCA の規制が適用される他(登録番号 193418)、欧州経済領域(EEA)内の様々な法域でも正式に認可を受けています。本資料 は PGIM リミテッドが FCA の金融行為規制ソースブックに基づき、機関投資家や適格機関投資家向けに作成したものです。一部のアジア諸国では、シ ンガポール金融管理庁(MAS)に登録し、その認可を受けた同国の投資運用会社である PGIM(シンガポール)プライベート・リミテッドが担当してい ます。日本では、国内の登録投資顧問会社であるプルデンシャル・インベストメント・マネジメント・ジャパン株式会社が担当しています。香港では 香港証券先物取引委員会に登録しているプラメリカ・ファンド・マネジメント・リミテッドが証券先物条例スケジュール 1 パート 1 で定義された機関 投資家を対象に提供を行っています。PGIM、Prudential 、PGIM のロゴ、およびロック・シンボルは、プルデンシャル・ファイナンシャル・インクお よびその関係会社のサービスマークであり、多数の国・地域で登録されています。 © 2016 Prudential Financial, Inc. and its related entities. 各セクターのパフォーマンスは下記インデックスを参照しています: 米国投資適格社債:バークレイズ米国社債インデックス 欧州投資適格社債:バークレイズ欧州社債インデックス(ヘッジなし) 米国ハイイールド債:BofA メリルリンチ米国ハイ・イールド・インデックス 欧州ハイイールド債:メリルリンチ欧州通貨建てハイ・イールド・インデックス 米国優先担保付きローン:クレディ・スイス・レバレッジド・ローン・インデックス 欧州優先担保付きローン:クレディ・スイス・ウエスタン・ヨーロピアン・レバレッジド・ローン・インデックス:(全ての通貨に対するヘッジ なし) 米ドル建てエマージング・ソブリン債:JP モルガン・エマージング・マーケット・ボンド・インデックス・グローバル・ディバーシファイド 現地通貨建てエマージング債(ヘッジなし): JP モルガン国債インデックス - エマージング・マーケット・グローバル・ディバーシファイド・ インデックス Page 20 2016 年第 3 四半期セクター見通し エマージング社債:JP モルガン社債エマージング・ボンド・インデックス・ブロード・ディバーシファイド エマージング市場通貨:JP モルガン・エマージング・ローカル・マーケット・インデックス・プラス 地方債:バークレイズ米国地方債インデックス 米国国債:バークレイズ米国国債インデックス MBS:バークレイズ米国 MBS – エージェンシー固定金利インデックス CMBS:バークレイズ CMBS: ERISA 適格インデックス 米国総合インデックス:バークレイズ米国総合インデックス 2016-1077 Page 21 2016 年第 3 四半期セクター見通し 留意事項 2 本資料はプルデンシャル・フィクスト・インカムが作成した"3rd Quarter Outlook "をプルデンシャル・インベストメント・マネジメント・ジャパン 株式会社が翻訳したものです。 本資料は、特定の金融商品の勧誘または販売を目的としたものではありません。過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。 本資料に記載されている市場動向等に関する意見等は本資料作成日時点でのプルデンシャル・フィクスト・インカムの見解であり、事前の通知なしに 変更されることがあります。 本資料は、プルデンシャル・フィクスト・インカムが信頼できると判断した各種情報源から入手した情報に基づき作成していますが、情報の正確性を 保証するものではありません。プルデンシャル・フィクスト・インカムは、米国SEC 登録投資顧問会社であるPGIM インクのパブリック債券運用部門で す。 原文(英語版)と本資料の間に差異がある場合には、原文(英語版)の内容が優先します。詳細は原文(英語版)をご参照ください。 “Prudential”、PGIM ロゴおよびロック・シンボルは、プルデンシャル・ファイナンシャル・インクおよびその関連会社のサービスマークであり、多 数の国・地域で登録されています。プルデンシャル・インベストメント・マネジメント・ジャパン株式会社は、世界最大級の金融サービス機関プルデ ンシャル・ファイナンシャルの一員であり、英国プルーデンシャル社とはなんら関係がありません。 プルデンシャル・インベストメント・マネジメント・ジャパン株式会社 金融商品取引業者関東財務局長(金商)第392 号 加入協会 一般社団法人 日本投資顧問業協会、 一般社団法人 投資信託協会 PIMJ201607270552 原文(英語版)につきましてはウェブサイト (http://www3.prudential.com/fi/pdf/prudential-fixed-income-market-outlook-3Q16.pdf) をご参照ください。 Page 22
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