地学 第8講 小出良幸 私たちとは何か:難しい問題を解く方法 http://ext-web.edu.sgu.ac.jp/koide/chigaku/ E-mail: [email protected] ▼ 私たちとは、いった何なのか 1 問い:私たちとは何か Where Do We Come From? What Are We? Where Are We Going? プランク点 10 65 density (g/cm3) 10 45 ▼ 大きいものと小さいもの 1 大と小の織り成すもの 最小のもの:素粒子(クォーク)のレベル 原子のレベル 原子1.7×10-24g 水分子3.1×10-22g 人間 6×10 4g 地球 6×1027g 太陽 2×1033g ブ ラ ッ ク ホ ρ ー R2 ∝ 10 2 7 g/ cm ル の 領 域 星のレベル 太陽系 1034g 球状星団 1039g 銀河 1040g 銀河団 1048g 泡構造 1049g 宇宙 1056g 10 25 中性子星 2.4×1033g クォークのレベル 10 ▼ 「私たちはどこにいるのか」:階層として要素 還元的に 1 自分と他のとの違い 2 星のレベル 地球・惑星・小天体 太陽系・星(恒星) 1M◎=1.99×1023g 星団 質量は 109 M◎、星の数 102~106 個 銀河 質量は 1010~1012 M◎、星の数 1011 個 銀河群 質量は 1011~1013 M◎、銀河の数 10~103 個 銀河団 質量は 1015 M◎、銀河の数 103~105 個 超銀河団 質量は 1016 M◎、銀河の数 104~106 個 クォークのレベル クォーク 10-35g 原子核 1.7×10 -- 10 85 筋 道 た き て っ ▼ 「私たちは、なにからできているか」:つくっ ているものを要素還元的に 原子のレベルから素粒子のレベルの話 クォークとは 2 大から小の関係 ・クォークのレベル ・原子のレベル ・星のレベル ど た の 宙 宇 2 定義:「私たち」とは ・「私」の意味 ・「私たち」の意味 3 定義:「何か」とは 特徴をしらべ、由来(起源)を明らかにすることで ある。 4 命題:「私たちとは何か」 最小のサイズの課題:「自分を知ること」 最大のサイズの課題:「宇宙を知ること」 白色矮星 2.8×1033g 5 原子のレベル 人類 地球 太陽 10 -15 星のレベル 現在の宇宙 10 -35 10 -35 10 -25 10 -15 10 - 10 5 10 15 10 25 size (cm) 3 大と小の連結 ▼ 第 2 回レポート 天動説で困ることを考えなさい。 天動説とは、地球の周りを他の天体が回っていると いう考え方である。 11 月 24 日 24 時(締切り厳守) レポートには、氏名、学生番号、テーマを忘れない ようにしてください。 地学 第8講 小出良幸 私たちとは何か:難しい問題を解く方法 http://ext-web.edu.sgu.ac.jp/koide/chigaku/ E-mail: [email protected] ▼ 私たちとは、いった何なのか 1 問い:私たちとは何か 昔からある、非常に一般的で、まだだれもその答えを出してない課題である。 もしかすると、人類永遠の問題かもしれない。 画家のポール・ゴーギャンの絵画に 「われわれは何処から来たのか、われわれは何者か、われわれは何処にいくのか」 という作品がある。 Pau l Gauguin, French, 1848–1903 Where Do We Come From? What Are We? Where Are We Going? D'ou venons-nous? Que sommes-nous? Ou allons-nous? 1897–1898 Oil on canvas Image: 139.1 x 374.6 cm, Framed: 171.5 x 406.4 x 8.9 cm Museum of Fine Arts, Boston: Tompkins Collection 36.270 http://www.mfa.org/artemis/fullrecord.asp?oid=32558&did=500 フランス後期印象派の画家ポール・ゴーギャン 1848 年、パリに生まれ。ゴーギャンは父親の仕事の関係で幼少期をペルーで過ごした。パリに戻り株式 仲介人の仕事につき、仕事の合間に絵画を描きはじめる。当初は趣味程度であった。1876 年にサロンで初 めての展覧会を開いた後、創作活動に没頭していく。その後ゴッホに出会い一緒にアルルのスタジオで創 作活動をするが、精神を病んだゴッホの耳切り事件後、アルルを後にした。ヨーロッパの退廃した空気に 疲れたゴーギャンは自由と活気を求めて妻と 4 人の子供を残して 1891 年タヒチ島に渡り、そこで現地の 13 才の少女を愛人にして創作活動を始めた。 彼の不朽の名作"D'ou venons-nous? Que sommes-nous? Ou allons-nous?"(Where Do We Come From? What Are We? Where Are We Going?)は、彼の作品の中で最も大きな絵画であり、人間の生と死を表わしている。 ゴーギャンはこの作品を描き終えたのち友人に作品を説明する手紙を送っており、その手紙も一緒に展示 されている。それによると、この作品は右から左に見るべきであり、右側の 3 人の子供を連れた女性は生 の始まりを表わし、真ん中のりんごをもぎ取ろうとしている女性は青年期の象徴で、左に座り込んでいる 女性は死に近づいている人間の様子を表わすものだという。この作品が完成した後、ゴーギャンは山で服 毒自殺を図るが失敗に終り、苦しみののち再び描く意志を取り戻し、この作品に最後の手入れを施して満 足のいくものを仕上げたのである。西洋化の進むタヒチを離れてマルティニーク島で最期の時期を過ごし たゴーギャン。 多くの人が、この言葉のような内容に悩んだのである。そして、その答えはまだ、出ていないのである この講義では、この難題にどう取り組むかを挑戦してみる。そして、限定された条件で、還元論的に考 えれば、ある種の答えが出せることを示す。 2 定義:「私たち」とは 「私たち」とは、「私」が含まれているグループ全体のこと。 ・「私」の意味 「私」は、日常的に使うときは、はっきりしている。物質としてみると明瞭なものがある。人、人間と しての形のある自分自身である。これ以上、小さくすると自分自身でなくなる。また、自分の肉体以上に は、自分を拡大できない。 「私」とは、自分自身以上でも、自分自身以下でもない。 ・「私たち」の意味 次に、「私たち」という複数になると、見方により、「私たち」の範囲やグループはいろいろと変化して いく。 さまざまな階層を 経ながら「私た ち」が拡大する 宇宙 自分 図 私たちの拡張 「自分自身(単数の私) 」→ 「私たち、日本人」→ 「私たち、ヒト・人類」→ 「私たち、動物」→ 「私たち、生物」→ 「私たちの地球・惑星」→ 「私たちの太陽系」→ 「私たちの銀河」→ 「私たちの宇宙」 というように、「私たち」という対象は、拡大していくと、さまざまなものと、捉えることができる。 「私たち」には、最小の「私」から、最大の「私たちの宇宙=この世」まで、さまざまな階層がある。 「私たち」とは、そのすべてを指しうる。 「私たち」が指す範囲を限定していけば、もしかすると、 「私たちとは、なにか」という課題に答えが出 るかもしれない。 3 定義:「何か」とは 「何か」とは、何か。 「私たちとは、なにか」という課題で、「何か」意味するところは、「私たち」について「知りたい」と いうことである。そうすると、今回の講義のテーマ「私たちとは、何か」につながる。 「私たち」について「知ること」とは、「私たち」の「素性」を明らかにすることである。 素性とは、 特徴をしらべ、由来(起源)を明らかにすることである。 特徴とは、「私たち」と「私たち」以外の「他のもの」の間の共通性と違いを明らかにすることである。 共通性とは、その階層のものがすべて持つ普遍的な属性、違いとは、 「私たち」だけがもつ特異な属性で ある。 つまり、「私たちとは、何か」とは、「私たち」の特異性と普遍性を記述することである。 もうひとつ、由来(起源)とは、 「私たち」の歴史を知ることである。 4 命題:「私たちとは何か」 最小のサイズの課題:「自分を知ること」 ↓ 最大のサイズの課題:「宇宙を知ること」 サイズに応じた学問体系を用いれば、 「私たち」について、現在の人類が持っている知識を得ることがで きる。 サイズが最小の命題である「自分を知ること」は、自然科学で扱う内容ではなく、哲学、心理学など人 文科学で扱う学問体系である。 ある程度の大きさになると、地質学、惑星科学、天文学、宇宙科学などなど、自然科学の分野で取り扱 えるものとなる。 自然科学で扱えるものとなると、論理と証拠による手法が通じるので、客観的に多くの人にわかる答え が得られる可能性がでてくる。 ▼ 「私たちは、なにからできているか」:つくっているものを要素還元的に あるものを調べるとき、自分構成しているより小さなものへと、追求を続けていくことで特徴を表すこと ができることがある。たとえば、ヒトである「自分」が他人とは違うはず。ものは、より小さなものが集ま ってできている。 「自分をつくるもの」を突き詰めていくと、最小のものへとたどり着くはずである 原子のレベルから素粒子のレベルの話 最小の「自分」=生物 地球 現在生きている生物種で名前がついているもの約 200 万種 1 個 約 1000 万種、かつて生きていた生物種約 20 億種と推定 ↓ ↓ 有機物 岩石・地層(大気・海洋・生物) 多種 多種 ↓ ↓ 分子 鉱物 多種 約 4000 種 ↓ ↓ 原子 原子 元素は 106 種発見、そのうち安定に存在するもの 91(89)種、同位体種は約 280 種 ↓ ↓ 素粒子 素粒子 300 種以上 ▼ 「私たちはどこにいるのか」:階層として要素還元的に 1 自分と他のとの違い 自分を知るひとつの方法として、自分の特徴を知る方法があるといった。自分の特徴は、似たような他の ものと比べることによって見つけられる。自分を他と比べたとき、違いがないときだってざらにある。 2 星のレベル 地球・惑星・小天体 「惑星」:惑星は多数あるが、地球は唯一である。 太陽系・星(恒星) 1M◎=1.99×1023g 「太陽系」:太陽系は多数見つかっているが、私たちの太陽系は唯一である。 星団 質量は 109 M◎、星の数は 102~106 個 銀河 質量は 1010~1012 M◎、星の数は 1011 個 「銀河」:多数あるが、私たちの銀河はひとつである。 銀河群 質量は 1011~1013 M◎、銀河の数は 10~103 個 銀河団 質量は 1015 M◎、銀河の数は 103~105 個 超銀河団 宇宙がまだすべて見えてないので数は不明、質量は 1016 M◎、銀河の数は 104~106 個 ▼ 大きいものと小さいもの 1 大と小の織り成すもの 最小のもの:素粒子(クォーク)のレベル クォークとは 素粒子の一種で、物質の基本的な構成要素となる。 いくつか集まって、陽子や中性子などの原子を構成する基本的な粒子を形成する。 u(up), d(down), s(strange), c(charm), b(bottom), t(top)の 6 種ある。 1963 年にモデルの提唱者の一人であるゲルマンにより、ジェイムズ・ジョイスの小説「フィネガンズ・ウ ェイク」一節で"Three quarks for Muster Mark"(マーク大将のために三唱せよ)から命名。クォークと は鳴き声のことで、当初クォークが 3 種あると考えられたことから命名。 身近なもの:原子のレベル 原子が集まって構成しているもの。 大きなもの:星のレベル 天体が集まってつくられている構造。 クォークのレベル ビックバン 素粒子 星のレベル 最大のもの:宇宙 これらの構成物は、やはり、自然を構成している ものである。小さいが自然の一部といえる。自分も 自然から構成されている。自分の中にも自然がある R : 25m M : 1041~1043kg 宇宙 原子 R : - ~10- m M : 10- ~10- kg 2 大から小の関係 この世のありとあらゆるものを、一つのグラフで 表現することができる。この世のものは、でたらめ にあるのではなく、階層や構成物の性質によって区 分できる。 ・クォークのレベル ・原子のレベル ・星のレベル これは、階層をまたがってなんらかの規則性があ ることを示している。自然の中には、階層を越えた より普遍的な規則がありそうである。 また、宇宙(最大の自然)と素粒子(最小の自然) に強い因果関係がある。それは、最大で唯一の自然 である宇宙が始まるときに、その因果関係が見つか る。 超銀河団とボイド R : 23m D : 24m M : 1036kg 岩石・鉱物・ 有機物 銀河団 R : 22m D : 23m M : 1035kg R : - ~102m M : 10- ~1010kg 生命 銀河群 銀河 R : 21m D : 22m M : 1031~1033kg R : 20m D : 22m M : 1030~1032kg R : 17m D : 19m M : 1029kg 星団 人類 R : 0m M : 101kg R : 6~107m M : 1012~1027kg 小天体 (惑星) 地球 R : 6m M : 1024kg R : 10~1011m D : 16m M : 1019~1022kg 星 太陽 R : 8m M : 1020kg 原子のレベル プランク点 10 クォークのレベル クォーク 10-35g 原子核 1.7×10 -- 85 筋 道 た き て っ ど た の 宙 宇 10 65 density (g/cm3) 10 45 原子のレベル 原子1.7×10-24g 水分子3.1×10-22g 人間 6×10 4g 地球 6×1027g 太陽 2×1033g ブ ラ ッ ク ホ ρ ー R2 ∝ 10 2 ル の 領 域 g/ 7 cm 星のレベル 太陽系 1034g 球状星団 1039g 銀河 1040g 銀河団 1048g 泡構造 1049g 宇宙 1056g 10 25 中性子星 2.4×1033g クォークのレベル 白色矮星 2.8×1033g 10 5 原子のレベル 人類 地球 10 -15 太陽 星のレベル 現在の宇宙 10 -35 10 -35 10 -25 10 -15 10 - 10 5 10 15 10 25 size (cm) 3 大と小の連結 「この世」最小のもの素粒子と、最大のもの宇宙が、ビックバンという宇宙の起源で共通性がある。 これは、非常に不思議なことである。学問も、宇宙の創生を考える分野と素粒子の分野は、非常に密接 な関係がある。 宇宙と素粒子にも、フラクタル的関係があるのかもしれない。 ▼ 第 2 回レポート 天動説で困ることを考えなさい。 天動説とは、地球の周りを他の天体が回っているという考え方である。 11 月 24 日 24 時(締切り厳守) 人の考えではなく、自分で考えて、自分自身の考えを述べること。レポートは資料や参考書を見ないよ うに!!レポートはメール(携帯の E-mail でも可)の提出でもかまいません。紙でのレポートは、各回の 講義の最後に小出に出してください。なおレポートには、氏名、学生番号、テーマを忘れないようにして ください。
© Copyright 2024 Paperzz