攻撃力の非対称性に基づく外集団攻撃

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攻撃力の非対称性に基づく外集団攻撃
先制攻撃ゲームを用いた最小条件集団実験
三船恒裕(高知工科大学)
キーワード:外集団攻撃,最小条件集団,先制攻撃,内集団バイアス
序論
後,衝立で囲まれた PC の前に座り,課題を開始した。
人々は内集団に対して協力し,外集団に対しては攻撃
最初の課題は「絵画の好み課題」であり,参加者は画面
する。この傾向は集団間を区別する合理的な理由が存在
上に表示される 2 枚の絵のどちらが好きかを回答し,2
しない最小条件集団においても示されたことから内集団
つの集団に分類された(最小条件集団)
。その後,3 条件
バイアスと呼ばれ,これまでに多くの研究がなされてき
全てを含む先制攻撃ゲームの手続きが説明された。PC
た。しかし,近年では人々が実際に示す内集団バイアス
を用いた練習時に各自が経験する条件が知らされ,本番
は内集団への協力によって生じ,外集団への攻撃はほと
の課題が 1 回のみ実施された。
事後質問紙に回答した後,
んど生じないことが示されている(e.g., Mummendey &
報酬を受け取り,実験室を退室した。
Otten, 1998; Yamagishi & Mifune, 2016)
。では,外集
結果
団攻撃が生じるのはいかなる状況なのか。
本研究では先制攻撃ゲーム(Simunovic, Mifune, &
各条件の攻撃率を Figure 1 に示す。対数線形分析の結
。
果,交互作用効果が有意であった(χ2(2) = 8.66, p < .05)
Yamagishi, 2013)を用い,外集団攻撃が生じる要因を
攻撃効率の条件ごとに内外差を分析したところ,不利条
探る。先制攻撃ゲームとは二人一組で行う経済ゲームで
件でのみ,外集団への攻撃率が内集団への攻撃率を有意
ある。2 人はそれぞれ 800 円を元手とし,PC 画面上の
。その他の条件
に上回っていた(χ2(1) = 7.09, p < .01)
ボタンを押すか押さないかを 30 秒以内に決める。ボタ
における内外差は有意ではなかった(ps > .14)
。
ンを押すと自身の元手から 100 円が差し引かれ,相手か
らは400 円が差し引かれる。
ボタン押しは
「早い者勝ち」
で決まり,両者が押しても早い方のボタン押ししか効果
を持たない。したがって,相手がボタンを押すと予測す
るならば自身が先に押したほうが得だが,相手は押さな
いと予測するならば自身も押さないほうが得である。
三船ら(Mifune, Hizen, Kamijo, & Okano, 2016)は
個人間と集団間で先制攻撃ゲームを実施した。この研究
によって自分よりも相手の方が攻撃の効率が大きい場合
に攻撃率が高まる可能性が示唆されている。本研究では
相手が自分よりも効率の高い攻撃力を持つ場合に,特に
外集団に対して攻撃率が高まる可能性を,最小条件集団
を用いて検討する。
方法
参加者:学生 222 人(男性 157 人、女性 65 人)
デザイン:相手に対する攻撃の大きさによる 3 条件
(被
験者間配置)
。平等条件:ボタンを押した場合、お互いに
相手から 400 円減る。不利条件:自分は相手を 400 円減
らせるが、相手は自分を 800 円減らす。有利条件:不利
条件の逆。
ボタンを押した側が減るのは全条件で100 円。
手続き:参加者は受付で実験専用の ID を配布された
Figure 1 各条件の攻撃率
考察
本研究の結果,相手の方が自分よりも強い攻撃ができ
る場合,相手よりも先に攻撃する傾向が内集団よりも外
集団に対して高い頻度で生じることが示された。今後,
この外集団攻撃をもたらす心理メカニズム(直感 vs. 熟
慮など)を明らかにする実験を実施する必要がある。
引用文献
Mifune et al. (2016). PLoS ONE, 11, e0154859 /
Mummendey & Otten (1998). Eur. Rev. Soc. Psychol.,
9, 107-143 / Simunovic et al. (2013). J. Exp. Soc.
Psychol., 49, 1120-1123 / Yamagishi & Mifune (2016).
Curr. Opin. Psychol. 7, 39-43