З D.脂漏性角化症 dermoscopic findings in seborrheic keratosis

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3
3章
ダーモスコピー
D.脂漏性角化症
dermoscopic findings in seborrheic keratosis
1.comedo-like opening
めんぽう
面皰様開大
脂漏性角化症(21 章 p.384 参照)で病理組織学的にみられる
角栓に対応する.大小さまざまな黒褐色で境界明瞭な貯留物質
を認める(図 3.16, 矢印)
.
2.multiple milia-like cysts
ひりゅうしゅ
多発性稗粒腫様囊腫
脂漏性角化症の偽角化囊腫(pseudohorn cysts)に対応する.
図 3.16
comedo-like opening(面皰様開大)
褐色の病変の中に,若干境界不明瞭な白色点を認める(図
3.17,矢印).外観が稗粒腫(21 章 p.395 参照)を思わせるこ
とからこの名がついた.囊腫型の基底細胞癌や有棘細胞癌など
でもみられることがある.
3.(light-brown)fingerprint-like structures
指紋様構造
初期の隆起の少ない脂漏性角化症で観察される.病変の辺縁
図 3.17 multiple milia-like cysts(多発性稗粒腫
様囊腫)
に淡褐色の境界明瞭な斑を認め,指紋のような模様を伴う(図
3.18,矢印).脂漏性角化症の前駆病変としての老人性色素斑
(16 章 p.293 参照)を反映していると考えられる.
4.cerebriform pattern,brain-like appearance
(with fissure and ridges) 脳回様パターン
脂漏性角化症で著明な乳頭腫をきたした結果,その部位が脳
図 3.18 (light-brown)fingerprint-like structures
(指紋様構造)
図 3.19
回状にみえる状態をいう(図 3.19)
.
cerebriform pattern, brain-like appearance(with fissure and ridges)(脳回様パターン)
E.基底細胞癌
E.基底細胞癌
dermoscopic findings in basal cell carcinoma
1.arborizing vessels
樹枝状血管
真皮乳頭部で拡張した毛細血管を反映して,分枝状ないし稲
妻状で太さの不均一な血管を認める.とくに色素を伴わない白
人の基底細胞癌の診断に有用である(図 3.20)
.ダーモスコー
プを強く当てすぎると,毛細血管拡張がみえないことがあるの
で注意を要する.
2.spoke wheel areas
図 3.20
arborizing vessels(樹枝状血管)
図 3.21
spoke wheel areas(車軸状領域)
図 3.22
leaf-like structures(葉状構造)
車軸状領域
表在型の基底細胞癌でみられる.
表皮の腫瘍病変を反映して,
中央から放射状に伸びる線条を形成する.通常複数個出現し,
それぞれが連絡しあって環状の構造をつくる(図 3.21)
.
3.leaf-like structures
葉状構造
表皮内の病変であった spoke wheel areas の腫瘍細胞がさらに
増殖すると,葉状の構造をとるようになる(図 3.22)
.
4.multiple blue-gray globules/large blue-gray
ovoid nests 多発青灰色小球 / 大型青灰色類円形胞巣
両者は本質的に同一の病態である.真皮内の腫瘍病変を反映
して,白いベールがかかったような青色調の塊が観察される
(図 3.23)
.単一の胞巣を形成した場合は青色母斑と類似する
所見を呈するが,多くは arborizing vessels を伴う点で鑑別可能
である.
図 3.23 multiple blue-gray globules/large blue-gray
ovoid nests(多発青灰色小球 / 大型青灰色類円形胞巣)
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3
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3章
ダーモスコピー
5.ulcer
3
潰瘍
さんしょく
基底細胞癌は蚕食性潰瘍(rodent ulcer)を臨床的に形成しや
すいことが特徴で,ダーモスコピーで初期の潰瘍を観察するこ
とが可能である.
F.血管病変および出血 dermoscopic findings in vascular lesions including hemorrhages
1.red-blue lacunae
赤青色小湖
被角血管腫(21 章 p.408 参照)は肉眼的に黒色調を呈し,基
底細胞癌と鑑別を要することがある.しかし,ダーモスコピー
では,真皮上層で拡張した血管腔を反映して,赤青色調の類円
形構造の集簇がみられる(図 3.24)
.
2.red-bluish to reddish-black homogeneous
areas 赤青━黒均一領域
自覚症状のない血腫は時間の経過とともに黒色調になり,メ
ラノサイト系病変などとの鑑別を要することがある.ダーモス
コピーでは一部に血液を反映した赤色調の部分を認め,出血に
よるものと判断することが可能である(図 3.25).とくに,激
しい運動などで踵部に生じた皮内出血(black heel)は,肉眼
的には母斑細胞母斑や悪性黒色腫と見分けが困難なことがある
が,ダーモスコピーでは赤色調の部分を認め,鑑別は容易であ
る.
図 3.24
管腫
red-blue lacunae(赤青色小湖):被角血
図 3.25 red-bluish to reddish-black homogeneous areas
(赤青━黒均一領域):静脈湖
図 3.26 dotted vessels in paronychium(爪上皮の点状血管)
:
皮膚筋炎
G.その他の疾患
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3.dotted vessels in paronychium
3
爪上皮の点状血管
全身性強皮症や皮膚筋炎といった膠原病では,爪上皮に出血
点や毛細血管拡張を生じることがある.肉眼で判別困難な場合
にはダーモスコピーで容易に観察することができる(図 3.26)
.
4.linear vessels
線状血管
クモ状血管拡張(21 章 p.407)では,放射状に配列する血管
を肉眼よりもさらに詳細に観察することができる(図 3.27)
.
G.その他の疾患
1.皮膚線維腫
図 3.27
拡張
linear vessels(線状血管):クモ状血管
dermoscopic findings in other cutaneous diseases
dermatofibroma
疾患は p.410(21 章)参照.基底層の色素沈着を反映して,
メラノサイト系病変ではないにもかかわらず細かい色素ネット
ワーク(delicate pigment network)を形成する(図 3.28)
.病変
の 中 央 は 線 維 化 を 反 映 し て 白 色 調 に み え る(central white
patch)
.
ゆう ぜい
2.足底疣贅
plantar wart
けい がん
疾患は p.471(23 章)参照.足底疣贅は鶏眼(15 章 p.278 参照)
図 3.28
皮膚線維腫(dermatofibroma)
図 3.29
white fibrous papulosis of the neck
との鑑別をしばしば要するが,足底疣贅では底部付近に点状出
血を認め,ダーモスコピーで鑑別することができる.
かい せん
3.疥癬
scabies
疾患は p.535(28 章)参照.注意深く観察することで,疥癬
トンネルや疥癬虫(トンネルの先端に褐色の三角形構造として
観察される)を同定することが可能である.
4.white fibrous papulosis of the neck
疾患は p.317
(18 章)
参照.ダーモスコピー所見はユニークで,
境界明瞭で白色な homogeneous pattern の小病変として観察さ
れる(図 3.29).