平成 23 年度 社会工学類都市計画専攻 卒業研究最終発表 2012/1/26 地域ハイヒール率からみた界隈性分析 200811371 濵津 桃子 指導教員 1.研究の背景・目的 ②視覚的特徴 原宿は若者の街で知られている.同じ原宿でも, 「おば あちゃんの原宿 大澤 義明 フランス王ルイ14世はハイヒールを履いていた.彼 巣鴨」と知られている巣鴨がある.通 は身長が低いことがコンプレックスであったため,ハイ りの様子を見ると,どちらの通りも店舗が連なり,買い ヒールを履くことで背を高く足を美しく見せていた.現 物客で賑わっているように見える.実際に行くと,前者 在,女性がハイヒールを履く目的はルイ14世と変わら では「若さならではの明るさ」後者では「落ち着きの中 ない.体形を維持する為に日々筋力トレーニングを行う の騒がしさ」を感じる.このような界隈性の質に着目し 努力無しで,ハイヒールを履くだけで簡単に綺麗に見え ハイヒールを用いて数量的に分析をおこなう. る. 2. ③聴覚的特徴 ハイヒールの特徴について ハイヒールの特徴的な"コツコツ"という足音を駅や ①靴の形状 ハイヒールとはかかとの部分が高い靴を指す名称であ デパート等で聞くことがある.これはハイヒールのか る.ヒールの高さによってロー(~3cm),ミディアム(3 かと部分が床とぶつかる衝撃音である.実際にハイヒ ~7cm),ハイ(7~cm)と名称が変わる. (図 1)実際にイン ールを履いて歩くと,空間の広さ,床の材質により, ターネット販売(ロコンド・ゾゾタウン)されている婦 音の大きさ,響き方が異なる 以下(図 3)は音の質,響き方が異なる6つの場所 人靴のヒールの高さは 5~10cm のものが多い(図 2) . を並べたものである. 図 3 音の響き方の違い 3.鉄道3路線におけるハイヒール率 ロー(3cm以下) ミドル(3~7cm) ハイ(7cm以上) ハイヒールを履いている人が多い場所を明らかに 図 1 ヒールの種類 するために,鉄道3路線(JR常磐線,東武野田線, JR山手線)にてハイヒール率調査を行った.各路線 の調査結果を示し,ハイヒールを履いている人がどこ に多いか傾向を明らかにする. ハイヒール率 3-1 ハイヒールを履いた女性の人数 女性の人数 調査 都心部の環状線である山手線,都心部から茨城県に 伸びる放射線である常磐線,千葉県,埼玉県を結ぶ郊 外環状線である東武野田線の特徴の異なる3路線を 選定した. (図 4) 図 2 インターネットによるパンプス販売数 1 JR常磐線 乗り換え駅 東武野田線 都心部 JR山手線 JR山手線 JR常磐線 東武野田線 東京湾 図 5 鉄道3路線ハイヒール率結果 4.分析①JR山手線ハイヒール率と経済活動 図 4 調査実施路線 各駅のハイヒール率は分かったが,その地域に人が集 まり,賑わっているか,経済活動の活発さを分析する. 【調査概要】 各駅商圏 600mにおける各統計データ(平成19年商 場所:鉄道 3 路線(JR山手線,JR常磐線,東武野田線 業統計,平成19年昼間人口,平成17年度国勢調査) 測定内容:各路線各駅を利用する女性の人数,ハイヒー を用いて分析を進める.対象エリア(図6)は人が容 ルを着用している人数 易に歩ける距離,600mとする. 調査人数:合計 2391 人( 山手線 1553 人,常磐線 338 人 , 東武野田線 400 人) 東武野田線:(春日部駅(埼玉県)~流山おおたかの森 (千葉県) 2011.5.25. (水) ,30(月) ,31(火)6.1(水) 2(木) 山手線:(右回り) (各車両計 12 車両) 2011.6.7(月) ,8(火) ,14(月) ,15(火) 常磐線: (上野駅(東京都)~神立駅(茨城県) (上下線)) 2011.6.29(水) 3-2 ハイヒール率調査結果 図 6 駅商圏600m 郊外の環状線である東武野田線は,乗り換え駅である 流山おおたかの森に近づくほど,ハイヒールの割合が高 くなる傾向がある.七光台駅,清水公園駅でハイヒール 4-1 女性,ハイヒールの人数の決定係数 の割合が低くなっているがこの駅の周辺には公園が存在 図7は調査で得られた各駅を乗降する女性の人数 している.一方梅郷駅ではハイヒールの割合が高くなっ とハイヒールを履く人数と各駅商圏600mの年間 ている.都心部から茨城県へ伸びる放射線の常磐線は, 販売額が2千万円以上の店舗数の分布を示した.決定 都心部に近づくにつれてハイヒール率が高くなる傾向が 係数は女性の人数をみるよりも,ハイヒールを履いた ある.都心部の環状線である山手線は,ある地点に向け 人の方が高く,ハイヒールを履く人数を見る方が,説 て高くなるという変化は見られず,全体に高いハイヒー 明力がある事を示す.(図7) ル率を示している.(図 5) 2 1000 800 600 400 200 0 0 20 40 60 80 100 120 140 160 女性の人数 図 7 4-2 年間販売額2千万円以上店舗数 年間販売額2千万円以上店舗数 1200 表 4 開設年度別相関係数 1200 1000 800 店舗分類(店舗数) S29年以前 S30-S39年 S40-S49年 S50-S59年 S60-H6年 H7年以降 600 400 200 0 0 20 40 60 80 100 120 140 160 ハイヒールの人数 年間販売額2千万円以上の店舗数 正の相関 女性の人数 ハイヒールの人数 -0.14 -0.22 0.09 -0.05 0.27 0.17 0.47 0.43 0.59 0.55 0.55 0.57 5.分析②通りのハイヒール率と街のイメージ 11 の通りにて歩行者のハイヒール率と,通りの看板 ハイヒールの人数と強い正の相関関係がある項目は以 下の3点である. 言語調査を行い,まちの関係を明らかにすることを目 ①店舗の売場面積 的とする. 売り場面積が広いほど強い相関関係を示し,その中で 5-1 調査 も売場面積 50-500 ㎡の店舗数が最も高い値を示した. (表 1) 表 1 売り場面積別相関係数 売り場面積(店舗数) 20㎡未満 20-50㎡ 50-500㎡ 500-1500㎡ 1500-3千㎡ 3千㎡以上 新大久保:大久保通り 女性の人数 ハイヒールの人数 0.66 0.48 0.62 0.67 0.71 0.75 0.54 0.73 0.66 0.67 0.63 0.75 池袋:サンシャイン60通り 巣鴨地蔵通り商店街 浅草:仲見世通り 原宿:竹下通り 渋谷:バスケットボールストリート 上野:アメヤ横丁 ②年間販売額 年間販売額が高いほど強い相関を示し,その中でも 2 恵比寿ガーデンプレス 表 2 年間販売額別相関係数 秋葉原:電気街 【調査概要】 女性の人数 ハイヒールの人数 0.23 0.18 0.22 0.21 0.68 0.71 0.77 0.81 場所:11 の通り (最寄り駅名) (大久保通り(新大久保),竹下通り(原宿),バスケッ トボールストリート(渋谷) ,恵比寿ガーデンプレイス(恵 ③店舗の種類 比寿),港南口(品川),飲み屋街(新橋),電気街(秋葉 コンビニエンスストア,衣服、身回品,飲食料品,家 原) ,アメヤ横丁(上野) ,仲見世通り(浅草)) 具、建具、什器の4分類では衣服、身回品の項目が最も 日時:2011 年 12 月 2 日,12 日 強い相関を示した.(表 3) 対象人数:合計 表 3 店舗分類別相関係数 店舗分類(店舗数) コンビニエンスストア 衣服、身回品小売 飲食料品小売 家具、建具、什器小売 4-3 新橋:飲み屋街 図 8 通りのハイヒール率調査場所 千万円以上の店舗数が最も高い値を示した.(表 2) 販売額(店舗数) 200万円未満 200-2千万円 2千万-1億円 1億円以上 品川:港南口 1217 人(ハイヒール内 399 人) 測定内容:各通りを歩行する女性の人数,内ハイヒール 女性の人数 ハイヒールの人数 0.64 0.65 0.72 0.77 0.37 0.37 0.33 0.32 を着用している人数 測定方法:通りにて30分間集計 5-2 負の相関 街のイメージとハイヒール率 街のイメージのデーターは,インターネット調査会社 ①店舗の開設年度数 マクロミルによっておこなわれた「2006「東京・街のイ 店舗の開設年度が昭和39年以前の店舗数が多いほど メージ」を用いる. ハイヒールの人数は減少し,それ以降の場合は正の相関 【調査概要】 を示した. (表 4) 調査方法:インターネットリサーチ 調査対象:東京都在住20歳以上69歳以下の男女(マ クロミルモニタ会員) 有効回答数:計 1032 人 3 調査日時:2006 年 9 月 27(水)~9 月 28 日(木) のようにハイヒールの人を増やすべきか以下に示す. 表 6 は「街のイメージ調査(インターネット調査会社マ (図 10) クロミル) 」で得られたイメージキーワードと通りのハイ ヒール率を示したものである.ハイヒール率の低い秋葉 原・新橋では共通して「男性向け」というイメージがあ る.中間の池袋,渋谷,原宿では共通して「若者向け」 といったイメージがあり,ハイヒール率の高い恵比寿・ 品川では「大人向け」 「都会的な」 「おしゃれ」 「洗練され た」といったようなイメージが挙げられる.「おしゃれ」 を連想させるような, 「イメージがハイヒール率の高い街 である事がわかる. 表 5 街のイメージと通りのハイヒール率 街のイメージ 1 2 3 4 5 活気 男性向け 庶民的 商業が充実 国際的 男性向け 庶民的 大人向け 交通の便が良 活気 庶民的 活気 商業が充実 若者向け 交通の便が良 若者向け 活気 流行の先端 交通の便が良 商業が充実 若者向け 活気 流行の先端 おしゃれ 商業が充実 おしゃれ 大人向け 高級感がある 洗練された 都会的 交通の便が良 都会的 大人向け 商業が充実 活気 最 寄 駅ハ イ ヒ ー ル 率 秋葉原 新橋 池袋 渋谷 原宿 恵比寿 品川 5-3 24 30 40 44 47 51 56 図 10 研究のまとめ 看板の文字とハイヒール率 各通りに面している看板が,日本語表記,外国語表記, 日本語,外国語の両方を使った看板と各通りの看板を 約1cm 3つの種類に分類した.図 9 は各通りの看板文字の割 図 11 合と,通りのハイヒール率を示したものである.ロー ハイヒールの特徴的形状 マ字表記の看板の割合を見ると,通りのハイヒール率 ハイヒールは着地面積が狭く,非常に不安定な靴である. と同じような変化を示している事がわかる.よってロ (図11)そこで.ハイヒールを履いた人が歩きやすい ーマ字の看板の割合が高い地域ではハイヒール率が 環境を整備する事が重要である.以下,ハイヒールを履 高くなる傾向があると言える. (図 9) く人が日常的に歩行時危険を感じる場所を示す. ローマ字 ミックス 日本語 階段 通りのヒール率 100% 100 90% 90 80% 80 70% 70 60% 60 50% 50 40% 40 30% 30 20% 20 10% 10 0% 0 移動の際に多く利用する.ハイヒール歩行時階段だけ ではなく,少しの段差でもバランスを崩しやすい. 排水溝 穴の部分にヒールが挟まり折れる可能性が高い 点字ブロック 凹凸のある地面では,かかとの細いハイヒールは溝には まってしまう. 道路舗装 図 9 看板の文字と通りのハイヒール率 溝でデザインされたタイルはおしゃれでも,溝の幅によ 6.終わりに ってヒール部分がはまり,バランスを崩しやすく非常に 本研究では,ハイヒールを履く人数と経済の活発度 歩きにくい.ハイヒール歩行時危険な4点を改善するこ の関係,ハイヒール率と街のイメージの関係を明らか とによってハイヒールを履いた人が歩きやすい環境クッ にした.ハイヒールを履く人が街に増加すれば,地域 ション性のある歩道を作ることで地域の活性化につなが の経済は活発化し,街のイメージが良くなり,地域の る可能性が高まる. 活性化につながる.これら関係を明らかにしたが,ど 4
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