序章 第 8 章 第1章 教員の日常生活 第2章 第3章 第4章 ・ 第1節 学校で過ごしている時間 第5章 ・ 第2節 家庭での生活時間 第6章 (直井 多美子) 第7章 第8章 第9章 第10章 第11章 資料編 第8章 教員の日常生活 第 1 節 学校で過ごしている時間 小・中学校ともに教員の退勤時刻が遅くなっており、学校にいる時間も増加傾向 にある。また、学校にいる時間は、教職経験年数が短いほど長く、性別では女性 より男性で長い。 【Q3-A∼C (教員) 】 2006年に全国規模としては約40年ぶりとなる の回答がもっとも多かったが、07年調査では「7 教員の勤務実態についての調査が行われ、小・ 時ごろ」になった。退勤の平均時刻は、98年調 中学校教員の残業時間や持ち帰り時間の多さが 査が6時10分、02年調査が6時29分、07年調査 話題となった。とりわけ中学校教員では、勤務 が6時53分、と約10年間で43分遅くなっている。 日1日あたりの残業時間(夏季休業期を除く)は 他方、中学校教員においては、 「8時ごろ」 「8 2 時間強に達している(東京大学『教員勤務実 時半ごろ」の回答が増加した。97年調査では「8 態調査(小・中学校)報告書』2007) 。 時ごろ」以降( 「8時ごろ」+「8時半以降」の%) ところで、この10 年間、あるいは5 年間で教 の回答は16.3 %と2 割に満たなかったのに対し 員の生活時間はどのように変化したのだろうか。 て、07 年調査では39.6 %と約4 割に達した。退 本節では教員の日常生活について、1 日の時間 勤の平均時刻は、97年調査の6時45分から、07 の使い方からその特徴を描いてみよう。はじめ 年調査の7時25分と40分遅くなった。 に学校で過ごしている時間についてみていく。 全体として、教員が学校にいる時間が長くな っている様子がうかがえ、教員の多忙化を裏づ 1)小・中学校ともに教員の退勤時刻が ける結果となった。 遅くなっている まず、出勤時刻についてみてみよう。経年比 較可能な中学校教員について変化をみると、出 から「2時間くらい」が多数 勤時刻が早まっていることがわかる(図 8-1- 教材研究や授業準備に費やす時間(家と学校 1) 。97年調査と比べて、 「1時間前ごろ」 「それ で行う時間の合計。以下、教材研究等の時間) 以上前」の回答が増加し、平均時刻は始業時刻 をみていこう。なお、この項目は07年調査から の38.4分前と97年調査から約10分早まっている。 たずねているため、経年比較はできない。小学 次に、退勤時刻の変化をみると、教員の退勤 校教員、中学校教員ともに「1時間くらい」 「2時 時刻が遅くなっていることがわかる(図 8-1- 間くらい」 「1時間半くらい」の順で回答が多く、 2) 。退勤時刻を経年比較すると、小学校教員で この3 つの選択肢で回答全体の約 7 割を占める は98 年調査、02 年調査においては「6 時ごろ」 112 2)教材研究等の時間は「1時間くらい」 (図8-1-3) 。 図8-1-1 出勤時刻(小・中学校教員/経年比較) 小学校教員 始業5分前 15分前ごろ 07年調査 (n=1,872) 44.2 24.6 (%) それ以上前 1時間前ごろ 30分前ごろ 無答 5.9 不明 1.0 20.4 平均時刻 34.1分前 3.9 中学校教員 97年調査 10.8 (n=938) 34.1 37.4 13.8 0.3 27.9分前 3.6 07年調査 (n=2,109) 21.8 36.8 24.8 11.7 0.7 38.4分前 4.3 注1)小学校の98年調査、 02年調査ではたずねていない。中学校の02年調査ではたずねていない。 注2)平均時刻は、 「始業5分前」を5分前、 「それ以上前」を75分前のように置き換えて、 「無答不明」を除いて算出した。 図8-1-2 退勤時刻(小・中学校教員/経年比較) 5時ごろ 5時以前 5時半ごろ 6時ごろ 22.4 29.9 (%) 7時半ごろ 8時ごろ 8時半以降 平均時刻 7時ごろ 6時半ごろ 小学校教員 98年調査 6.1 (n=1,033) 20.7 2.1 無答 不明 0.4 1.2 8.2 5.0 0.1 6時29分 0.7 6時53分 10.6 5.1 1.5 02年調査 (n=3,468) 26.2 14.2 21.6 17.3 0.5 3.4 07年調査 (n=1,872) 6時10分 3.6 16.7 8.1 19.2 22.6 11.1 11.0 9.1 第 8 章 0.1 1.3 中学校教員 97年調査 (n=938) 5.0 10.0 13.8 20.4 20.6 13.0 10.0 6.3 0.5 6時45分 0.4 02年調査 3.8 8.4 (n=2,891) 16.6 24.1 18.1 15.6 11.9 0.2 7時10分 0.4 7時25分 0.2 1.0 07年調査 (n=2,109) 5.8 11.8 23.4 15.9 19.0 20.6 0.1 2.3 0.7 注)平均時刻は、 「5時以前」を4時30分、 「8時半以降」を8時30分のように置き換えて、 「無答不明」を除いて算出した。 図8-1-3 教材研究等の時間(小・中学校教員) (%) 2時間半くらい 15分くらい ほとんど しない 30分くらい 小学校教員 (n=1,872) 第 1 節 学 校 で 過 ご し て い る 時 間 1時間くらい 10.3 28.9 10.2 31.4 1時間半くらい 16.4 2時間くらい 24.8 平均時間 3時間以上 6.5 10.0 無答 不明 0.9 93.9分 0.7 89.6分 0.3 1.9 中学校教員 (n=2,109) 18.3 22.3 6.0 8.1 0.6 2.5 注)平均時間は、 「ほとんどしない」を0分、 「3時間以上」を180分のように置き換えて、 「無答不明」を除いて算出した。 113 第8章 教員の日常生活 3) 「学校にいる時間」は 教職経験年数別、性別で異なる 07年調査の結果をもとに出勤・退勤時刻、教 材研究等の時間について、属性別にその特徴を にある。中学校教員も同様の傾向といえる。 経験年数の短い教員ほど学校に長くとどまっ ている理由の1 つに、教材研究等に費やす時間 の違いがあげられる。 概観する。まず①教職経験年数別では、経験年 数の短い教員ほど、退勤時刻が遅く、教材研究 ②男性のほうが「学校にいる時間」が長い 等の時間も長い傾向がある。②性別では、男性 次に、性別による出勤時刻、退勤時刻、教材 が女性よりも出勤時刻が早く、退勤時刻は男性 研究等の時間、学校にいる時間の特徴をみて が女性よりも遅い傾向がある。 いく。 表8-1-1をみると男性の出勤時刻が女性より ①教職経験年数の短い教員ほど 早いことがわかる。出勤時刻は小・中学校教員 「学校にいる時間」が長い とも男性の平均が始業の約40分前、女性の平均 表8-1-1は、教職経験年数別に出勤時刻、退 勤時刻、教材研究等の時間の平均を算出し、始 分程度早い。 業を8 時 15 分に仮定した上で、 「学校にいる時 一方、退勤時刻は男性のほうが女性よりも遅 間」 (出勤時刻から退勤時刻までの時間) を求めた くなっている。平均時刻を比べると、男性と女 ものである(詳しい算出方法は表の注を参照) 。 性では小学校教員では14分、中学校教員では12 この表から、経験年数の短い教員ほど退勤時刻 分の差がある。男性は女性よりやや早く出勤し、 が遅く、 「学校にいる時間」が長いことがわかる。 やや遅くに退勤する傾向がある。 中学校教員を例にみていく。全体の平均とし すると必然的に「学校にいる時間」も男性の ては始業の38.4分前(始業を8時15分とすると7 ほうが長くなっている。平均時間をみると、小 時37分)に出勤して、7時25分に退勤し、 「学校 学校教員(男性11時間28分、女性11時間04分) 、 にいる時間」は11時間48分であった。つまり、 中学校教員(男性11 時間56 分、女性11 時間34 1 日の半分は学校で過ごしている計算になる。 分)ともに男性が20∼25分ほど学校にいる時間 ところが、経験年数の短い「5年目以下」の教 が長い。 員では、出勤は始業の44.1 分前(始業を8 時15 教材研究等の時間の平均を比べてみると、小 分とすると7 時31 分)とそれほど変わらないも 学校教員では男女の差はほとんどないが、中学 のの、退勤は7時50分と一段と遅くなり、 「学校 校教員では男性が83.1分に対して女性は101.3分 にいる時間」は12 時間 19 分とさらに長い。一 と20分近い開きがある。しかし、これは教職経 方、教職経験が豊富な「31年目以上」の教員で 験年数の比率において、女性が男性よりも年数 は、出勤が始業の30.8 分前(始業を8 時15 分と の短い人が多いことによるものと考えられ、教 すると7 時44 分)とややゆっくりしたスタート 材研究や授業準備に必要な時間は性差よりも経 であるのに加えて退勤が6 時 44 分と早いため、 験の差によるものが大きいといえる。 「学校にいる時間」は11時間00分と短い。 114 が約30分前となっており、男性が女性よりも10 こうした学校での勤務時間の男女の違いには、 また、教材研究等の時間においても教職経験 家での仕事時間は女性のほうが長いことが原因 年数によって回答が大きく異なっている。教職 としてある(次節を参照) 。なお、この傾向はす 経験年数別に平均を比べると、小学校教員では でに97 年調査、98 年調査でも指摘されている。 「5年目以下」が111.6分と長いが、 「31年目以上」 男性が学校に残って仕事をするのに対して、女 を除き、経験年数が長くなるほど減少する傾向 性は早めに切り上げてその分家庭で長めに仕事 をしている。 男性に比べて家事負担が大きいことが背景とし また、一般的に女性(とくに既婚の女性)は て考えられる。 表8-1-1 出勤時刻・退勤時刻・教材研究等の時間・学校にいる時間の平均 (小・中学校教員/教職経験年数別・性別) 小学校教員 性別 教職経験年数別 全体 (n=1,872) 出勤時刻 (始業時刻の∼分前) 退勤時刻 教材研究等の時間 5年目以下 6∼10年目 11∼20年目 21∼30年目 31年目以上 (n=249) (n=161) (n=491) 男性 女性 (n=738) (n=210) (n=664)(n=1,194) 34.1分前 45.1分前 35.3分前 31.9分前 31.4分前 35.5分前 40.8分前 30.5分前 6時53分 7時35分 7時06分 6時46分 6時44分 6時45分 7時02分 6時48分 93.9分 111.6分 100.4分 94.1分 85.5分 97.0分 92.5分 94.7分 学校にいる時間※ 11時間12分 12時間05分 11時間26分 11時間03分 11時間00分 11時間06分 11時間28分 11時間04分 中学校教員 性別 教職経験年数別 全体 (n=2,109) 出勤時刻 (始業時刻の∼分前) 退勤時刻 教材研究等の時間 5年目以下 6∼10年目 11∼20年目 21∼30年目 31年目以上 (n=336) (n=238) (n=610) 男性 女性 (n=800) (n=113) (n=1,361)(n=742) 38.4分前 44.1分前 40.0分前 36.1分前 38.4分前 30.8分前 41.9分前 32.0分前 7時25分 7時50分 7時38分 7時23分 7時17分 6時44分 7時29分 7時17分 89.6分 103.5分 92.7分 90.5分 82.3分 86.5分 83.1分 101.3分 学校にいる時間※ 11時間48分 12時間19分 12時間03分 11時間44分 11時間40分 11時間00分 11時間56分 11時間34分 注1) 「出勤時刻」では、 「始業5分前を」5分前、 「それ以上前」を75分前のように、 「退勤時刻」では、 「5時以前」を4時30分、 「8時半以降」 を8時30分のように置き換えて、 「無答不明」を除いて平均を算出した。 注2)教職経験年数別、 性別のなかで、 最大値に下線を引いている。 ※ 「学校にいる時間」は、 8時15分を始業時刻と仮定して、 出勤時刻の平均から退勤時刻の平均までの時間を算出したものである。なお、 「8時15分」は文部科学省の委託を受けて東京大学が実施した『教員勤務実態調査(小・中学校)報告書』 (2007) を参考に定めた。 第 8 章 第 1 節 学 校 で 過 ご し て い る 時 間 115 第8章 教員の日常生活 第 2 節 家庭での生活時間 家での仕事時間は小学校75.5分、中学校61.7分と02年調査より微減した。新 聞・読書の時間は約30分と横ばい、テレビ・音楽の時間は約50分とやや減少傾 向にある。睡眠時間の確保は難しく、平均で6時間を下回っている。 【Q3-D∼G (教員) 】 教員の家庭での生活時間はどうなっているだ 時間は増加しているといえる。 ろうか。家での仕事時間、新聞・読書の時間、 テレビ・音楽の時間、睡眠時間の変化をみてい 2)新聞・読書の時間は約30分、 く。前節では「学校にいる時間」が長くなってい テレビ・音楽の時間は約50分 ることを指摘したが、このことは家庭での生活 時間にどのような影響を与えているのだろうか。 子どもたちの活字離れが叫ばれて久しいが、教 員たちは読書にどれくらい時間をかけているの だろうか。 1)家での仕事時間は小学校教員75.5分、 中学校教員61.7分 116 家で、新聞を読んだり、読書したりする時間 (以下、新聞・読書の時間)についてたずねたと 家で学校の仕事(教材研究、事務処理、児童・ ころ、 「30分くらい」 (小学校教員42.4%、中学 生徒への連絡など)に費やす時間(以下、家で 校教員38.3%)がもっとも多く、約10年前の調 の仕事時間)についてたずねた。07年調査では、 査と回答の傾向はほとんど変化がなかった(図 小・中学校教員に共通してもっとも多いのが「1 8-2-2) 。平均時間をみても、97 年調査、98 年 時間くらい」という回答だった(図8-2-1) 。 調査から07年調査にかけて横ばいであった。 つづいて、経年での変化はどうなっているだ 次に、家で、テレビを見たり、音楽を聴いた ろうか。平均時間の推移をみると、小学校教員 りする時間(以下、テレビ・音楽の時間)をた では98年調査(63.4分)から02年調査(84.1分) ずねた。 「1時間くらい」 (小学校教員35.7%、中 にかけて急増したが、その後緩やかに減少し、 学校教員37.0%)の回答がもっとも多い。一方、 07年調査では75.5分となった。中学校教員も同 「ほとんどしない」と回答した人も小・中学校教 様に、97年調査(50.6分)から02年調査(69.8 員いずれも約1割いた(図8-2-3) 。平均時間を 分)にかけて増えて、07年調査に61.7分と減少 みると、97年調査、98年調査から07年調査にか した。 けて10分程度減少していることがわかった。 02年調査に比べて、家での仕事時間は10分程 教員は学校にいる時間の増加にともない、テ 度減ったとはいえ、前節で指摘した退勤時刻が レビなどの娯楽の時間が少なくなってきている 遅くなっていること(p.113、図8-1-2参照。小 ようだ。教員の活字離れは進行しているとまで 学校教員24分増、中学校教員15分増)を考慮す はいえないものの、依然として新聞や本に接し ると、学校と家への持ち帰りをあわせた総労働 ている時間が増えていないことは明らかである。 図8-2-1 家での仕事時間(小・中学校教員/経年比較) 2時間半くらい(%) 15分くらい 2時間くらい ほとんど しない 小学校教員 98年調査 (n=1,033) 1時間くらい 30分くらい 8.8 20.1 平均時間 33.6 16.4 34.0 19.3 21.9 35.3 無答 不明 1.9 1.1 63.4分 5.3 4.9 0.4 84.1分 4.1 0.9 75.5分 13.2 1.4 3.6 02年調査 (n=3,468) 4.1 9.1 1.1 07年調査 11.0 (n=1,872) 7.5 3時間以上 1時間半くらい 17.8 17.6 2.1 3.7 中学校教員 2.0 97年調査 (n=938) 02年調査 (n=2,891) 23.3 18.8 28.1 12.7 4.6 13.9 50.6分 4.3 0.6 69.8分 1.0 12.6 32.1 15.3 16.1 3.5 1.7 07年調査 (n=2,109) 0.6 8.8 16.2 16.6 31.4 13.7 0.5 12.4 61.7分 3.2 3.0 3.0 注)平均時間は、 「ほとんどしない」を0分、 「3時間以上」を180分のように置き換えて、 「無答不明」を除いて算出した。 2時間くらい(%) 2時間半くらい0.0 図8-2-2 新聞・読書の時間(小・中学校教員/経年比較) 小学校教員 ほとんど しない 15分くらい 30分くらい 27.1 39.2 98年調査 7.5 (n=1,033) 07年調査 10.1 (n=1,872) 20.6 0.7 0.1 2.8 1.4 0.2 25.3 42.4 17.0 26.4 38.8 18.2 中学校教員 97年調査 (n=938) 9.4 3時間以上 平均時間 無答 不明 33.4分 4.3 0.4 0.8 0.2 1時間半 くらい 1時間くらい 0.4 3.7 2.6 07年調査 (n=2,109) 13.4 22.8 38.3 20.4 0.2 0.2 0.2 2.8 注)平均時間の算出方法は、 図8-2-1と同様。 1.9 31.5分 33.8分 32.3分 0.0 0.1 図8-2-3 テレビ・音楽の時間(小・中学校教員/経年比較) ほとんど 15分 しない くらい 30分くらい 98年調査 9.5 (n=1,033) 07年調査 (n=1,872) 12.4 7.1 20.2 7.8 1時間くらい 1時間半 くらい 33.4 13.0 26.9 35.7 2時間半(%) くらい 無答 不明 13.5 0.4 1.5 1.5 7.9 第 2 節 家 庭 で の 生 活 時 間 3時間以上 2時間くらい 小学校教員 第 8 章 7.8 0.4 0.5 平均時間 60.2分 48.9分 0.5 中学校教員 97年調査 (n=938) 10.4 5.3 18.7 34.1 14.9 13.6 2.0 07年調査 (n=2,109) 13.0 7.1 25.7 注)平均時間の算出方法は、 図8-2-1と同様。 37.0 8.4 7.8 0.5 0.2 61.0分 0.6 0.2 49.2分 0.2 117 第8章 教員の日常生活 ちなみに本調査ではインターネットやパソコン 徴をみてみよう。 の利用時間についてはたずねていないため正確 第一に、家での仕事時間は、小学校教員では にはわからないが、こうしたICTメディアの利 いずれの年数でも平均で70∼80分の間で、経験 用がテレビなどの時間の変化と関連している可 年数による違いはあまりみられない。中学校教 能性が考えられる。 員においても55∼65分の間が多く、経験年数と の関連は見い出しにくい。 3)睡眠時間は短く、平均で6時間を下回る さて、睡眠時間はどれくらい確保できている のだろうか(図8-2-4) 。 第二に、新聞・読書の時間は、経験年数が長 くなるほど平均時間が長い。小学校教員では「5 年目以下」27.0分に対して「31年目以上」のベ 経年で比較が可能なのは中学校教員のみであ テラン教員では36.2分と約10分長い。中学校教 る。97 年調査では「7 時間くらい」以上( 「7 時 員では経験年数による差はさらに著しく、 「5年 間くらい」+「8時間くらい」+「9時間くらい」+ 目以下」と「31年目以上」では16.8分の差とな 「10時間以上」の%)と回答した人は45.8%に達 したが、07年調査では22.6%と半減し、 「5時間 っている。 第三に、テレビ・音楽の時間は小学校教員で くらい」などの回答が増えた。平均時間では、 は「11∼20年目」が44.9分ともっとも短く、 「5 97年調査の6時間26分から07年調査の5時間57 年目以下」 「31 年目以上」で50 分強となってい 分と29分も減少している。 る。一方、中学校教員では経験年数が長いほど、 教員の睡眠時間の減少は、日本における全体 平均時間も長くなっている。 的な傾向(減少に歯止めがかかったこと)と重 第四に、睡眠時間は、小学校教員では「11∼ ならないばかりか、平均時間が短いことが特徴 20年目」 (5時間59分)がもっとも長く、反対に である。NHK 放送文化研究所が2005 年に実施 「5 年目以下」 「31 年目以上」では短くなってい した「NHK国民生活時間調査」によれば、 「勤 る。他方、中学校教員では「5年目以下」では5 め人」の平日の平均睡眠時間は7時間02分とな 時間43分と全体平均を大きく割り込んでいるが、 っている。これと比べると教員の睡眠時間がい かに短いかがわかる(NHK放送文化研究所『日 「21∼30年目」 「31年目以上」では6時間前後と 15分以上差がある。 本人の生活時間・2005 ─NHK国民生活時間調 査』2006を参照) 。 教員の仕事の多忙化が睡眠時間の減少にも影 響していることが推察される。 ②性別でみる家庭での生活時間 つづいて、性別では家庭での生活時間に違い がでているのだろうか。 第一に、家での仕事時間は女性のほうが長い。 4)家庭での生活時間の平均 表8-2-1では、家での仕事時間、新聞・読書 の時間、テレビ・音楽の時間、睡眠時間の平均 時間を教職経験年数別と性別に分けて示した。 小学校教員(男性71.5分、女性77.9分) 、中学校 教員(男性58.5分、女性67.5分)といずれも5∼ 10分女性が長い。 第二に、新聞・読書の時間、テレビ・音楽の 時間、睡眠時間は小・中学校教員ともに男性の ①教職経験年数別でみる家庭での生活時間 教職経験年数別による家庭での生活時間の特 118 ほうが女性よりもやや長くなっている。 図8-2-4 睡眠時間(小・中学校教員/経年比較) 小学校教員 4時間 以内 5時間くらい 6時間くらい 28.0 48.7 07年調査 (n=1,872) 2.9 8時間くらい(%) 9時間くらい 7時間くらい 無答 平均時間 不明 5時間53分 16.3 0.9 3.1 0.1 中学校教員 97年調査 (n=938) 11.6 41.7 0.0 6時間26分 9.6 35.8 0.9 0.4 07年調査 (n=2,109) 2.8 25.4 49.0 19.7 0.2 5時間57分 2.8 0.1 注1)小学校の98年調査、 02年調査ではたずねていない。中学校の02年調査ではたずねていない。 注2)平均時間は、 「4時間以内」を4時間、 「10時間以上」を10時間のように置き換えて、 「無答不明」を除いて算出した。 注3) 「10時間以上」は、 小学校の07年調査、 中学校の97年調査、 07年調査のいずれにおいても0.0%だったため図から省略した。 表8-2-1 家庭での生活時間の平均(小・中学校教員/教職経験年数別・性別) 小学校教員 教職経験年数別 全体 (n=1,872) 5年目以下 性別 6∼10年目 11∼20年目 21∼30年目 31年目以上 (n=249) (n=161) (n=491) (n=738) 男性 女性 (n=210) (n=664)(n=1,194) 家での仕事時間 75.5分 71.5分 73.0分 78.1分 74.7分 79.6分 71.5分 77.9分 新聞・読書の時間 31.5分 27.0分 26.7分 28.9分 34.5分 36.2分 35.4分 29.4分 テレビ・音楽の時間 48.9分 51.0分 51.4分 44.9分 49.1分 52.9分 53.3分 46.5分 睡眠時間 5時間53分 5時間49分 5時間52分 5時間59分 5時間52分 5時間48分 5時間58分 5時間50分 第 8 章 中学校教員 教職経験年数別 全体 (n=2,109) 5年目以下 性別 6∼10年目 11∼20年目 21∼30年目 31年目以上 (n=336) (n=238) (n=610) (n=800) 男性 女性 (n=113) (n=1,361)(n=742) 家での仕事時間 61.7分 60.3分 56.2分 65.6分 60.9分 60.0分 58.5分 67.5分 新聞・読書の時間 32.3分 25.9分 25.0分 32.5分 35.6分 42.7分 33.4分 30.4分 テレビ・音楽の時間 49.2分 46.7分 47.0分 47.2分 51.6分 55.2分 52.2分 43.8分 睡眠時間 5時間57分 5時間43分 5時間59分 5時間58分 6時間01分 5時間59分 6時間02分 5時間48分 第 2 節 家 庭 で の 生 活 時 間 注1) 「家での仕事時間」 「新聞・読書の時間」 「テレビ・音楽の時間」の平均時間の算出方法は、 図8-2-1と同様。 注2)睡眠時間の平均時間の算出方法は、 図8-2-4と同様。 注3)教職経験年数別、 性別のなかで、 最大値に下線を引いている。 119
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