古城裕嗣氏のレクチャーノート - MBF:丸の内ブランドフォーラム

MBF
(株)シマノ 本社訪問
150123
<訪問の目的>
シマノは自転車レースの世界では知らない人がいない、世界のトップ中のトップブランド。
1973年に生まれたDURA-ACEは世界チャンピオン、ルイ・コスタなどの勝利に貢献する
自転車の心臓部にあたるコンポーネント。 今回この「隠れた世界チャンピオン」ブランド
の現場を訪ね、新装成った工場見学と役員の皆さんとの懇談をおこなう。
シマノ本社@堺
<会社概要>
・創業:1921年、・設立:1940年、・資本金:356億円、・従業員数:本社1,129人、連結12,967人(日本人は1割)
・主な事業:自転車部品、釣具、冷間鍛造品、ロウイング関連用品の開発・製造・販売
・連結子会社:48社、27カ国、49拠点
売上比率
・売上高:3160億円(海外8割)、・営業利益:610億円(利益率=19.3%)
<シマノ側対応メンバー>
*渡会 専務取締役(開発担当)
*神保 企画部次長
*津崎 取締役部長(人事/広報担当)
*江原 課長(広報部広報課、進行役)
バッテリー
MTC受付
Manufacturing Technology Center
ロビー展示
MTB用XTRシリーズ
9070-Di2(電動シフト)
MBF
(株)シマノ 本社訪問
150123
■ 会社沿革
・1921年:島野庄三郎が島野鉄工所を創業、フリーホイール生産に着手
*地元堺は昔から刀・鉄砲など金属加工業で栄えた地域、シマノの始まりは借り物の旋盤1台
・1970年:釣具事業部発足
・1973年:DURA-ACEシリーズ発表、シンガポール工場設立(海外初)
・1988年:DURA-ACEを使用した選手がジロ・デ・イタリアで優勝
・2006年:Life Creation Space OVE(Opportunity, Value, Ease)が南青山にオープン
・2009年:ライフスタイルギア事業部発足、ロウイング用品発売開始
島野庄三郎
<ミッション> 人と自然のふれあいの中で新しい価値を創造し、健康とよろこびに貢献する
<ビジョン> 心おどる製品を創り出す
<チームシマノ> モットー=「厳和」(和して厳しく)
フリーホイール
OVE南青山
■ 工場見学:鋳造、鍛造、機械加工、接着、塗装、などの工程をVIDEO付で見学(撮影・録音禁止につき割愛)
■Q&A
Q: 以前、冷間鍛造をモノにされた元専務の松本さんは、『ええもん始末して血の小便出してなんぼや』とお話
されたが、その精神は今も生きているのか、また新人教育とかは?
A: 新入社員教育ではまず「言葉」を教え、設計のプロになってもらう。その後自転車好きになってくれれば・・・。
ウチは昔からトップが『こんなもんあったら絶対ええよな、いくらかかってもええから早くやれ』とか言ってきた。
だから感動を早く見つけたモン勝ち。今も『早くとなりの高い山に登れ』と常々言っている。
Q: ツール・ド・フランスとかのレースの現場にいる価値は?
A: 1972年からヨーロッパのレースに参加、当時はファーイーストから来たよそモンとして、相手にされなかった。
現在は若い人にも“情熱クリエーション”としてレースに行かせている。
Q:私は個人的にロードバイクに乗っていて、自転車博物館の中村館長による講習会を2回受けているが、CM
とかのプロモーション活動が少ないのでは?
(株)シマノ 本社訪問
MBF
150123
■ Q & A~続き
A:当社はB2Bが基本なので、B2CがCMを打つのとは違う。トップチームに信頼される実績を積むのが第一。
ヨーロッパに入った当初は「何しに来た」状態だったが、『モノが語ってなんぼのモンや』でCMはやり過ぎ。
Q: DURA-ACEも世代が何代目かになっているが、新製品のサイクルは?
A: 各カテゴリーにグレードがいくつかあって、その各々が4~5年サイクル程度。
Q: トップ選手向けのギアとOVEとのギャップが大きいように感じるが・・・
A: 一般大衆はツール・ド・フランスに縁遠い、むしろ安いほうが良い。それをより高く良いモノに目が向くように
アンテナショップであり、自転車文化に触れてもらう場。(“散走”の提案)
Q:私もロードレースに出たりしているシマノファンですが、“チームシマノ”とは?(海外が主なようですが・・・)
A:実は1994年頃会社が急成長して、社長がシンガポール工場に行った時に、従業員に“Your Company”と
言われてショックを受けた。そこで世界中で求心力を高めるべく“チームシマノ”として理念・行動規範を定め
繰り返し言い続け、最近定着してきた。 精神は「厳和」(和して厳しく、必殺仕事人)
Q:AUDIに勤務時代、「AUDIのロゴを自分の腕に彫れるか?」と問われた。それぐらい自社のブランドに惚れ
込まないとダメ、との事だったが、シマノでは?
A:日本で刺青は・・・、しかしシマノの青い制服のままで街をうろついたり、飲み会に行ったりしているので、皆
誇りは持っているようだ。
Q:カメラを始めたのはなぜ?
A:自転車や釣りを楽しむために必要であるなら、カメラだってやる。鮎釣りの時の水中の様子や釣上げた時の
感動を残したいとの思いから始めた ⇒ ライフスタイルギア(作れない部品は買ってくるが自前で設計開発)
Q:自転車の前後に子どもを乗せて走っているが、もっと楽に乗れる3人乗りとかはない?
A:電動バイクも今のレベル(高い・重い・短距離)ではダメだが、もう少し良くなる余地はあると思う。
Q:OVEを南青山につくったのは、女性ターゲットだから? また最初の海外工場がシンガポールなのはなぜ?
A:表参道・赤坂・銀座とか候補地はあるが、どんなコミュニケーションで何を勉強したいか、が重要で南青山に
決めた。特に女性を意識したわけではないが、結果的にそうなった面もある。
また工場は市場に近い&得意技がある、でロケーションを決めている。
MBF
(株)シマノ 本社訪問
150123
■ Q & A~続き
Q:全員が同じベクトル・価値観を共有しているように感じたが、どのように教育されているのか?
A:全員に“価値創造”と刷り込み、チームシマノとして採用時にも選別。(タフさも必要)
その後シマノコンピテンシーマトリックスでレベルアップ、また海外の販売店に派遣して育てる。
Q:工場を見学すると、デザインと製造が一体化していると見えたが・・・
A:組織は分かれているが、チームシマノで協力して価値創造しているから、そう見えたのかも。
Q:チームシマノのイベントとか仕掛けは?
A:①広報誌「スイング」(年10回発行)を全世界で皆で作る ⇒ 知らないことを知る
②海外からの研修生には本社近くの記念館でシマノDNAを学んでもらい、販売店訪問も実施
Q:トップエンドの顧客に対してのプライシングは?
A:シマノの場合、ハイエンドだけでなくエントリーでも高い評価を得ている ⇒ 合理的な値付け
*昔からの値付けの哲学:「 これええけど高いなあ~」 ⇒ 買わない
「これ高いなあ、けどええなあ~」 ⇒ 買う
絶妙のプライシング“うなって買わせる”
Q:レーシングチームを持ったことでのメリット・デメリットは?(楽天でも野球チームを持っているが・・・)
A:シマノの場合プロモーションではなく、開発へのフィードバック+レース文化を身近に感じること。
また社内のモチベーションアップにもつながる。
Q:話を聞けば聞くほど共感!マツダと共通点“走る歓び、所有する喜び”・・・自転車での所有の喜びとは?
A:自転車を抱いて寝る人もいるし、磨く人は多い。釣り具も準備やSTELLA(リール)を眺めながら酒を飲むとか。
Q:丸の内あたりでツーキニストが増えてきているが、どう捉えていますか?
A:4~5年前からロハスブーム、それ以前からMTBとかが徐々に拡大しており、この傾向は続くだろう
<感想>
以前松本元専務のお話を聞いて、シマノはコテコテの関西系かつ体育会系の会社で、工場もさぞや油ま
みれで汚いだろうと想像していたので、あまりの綺麗さにビックリ。 無人のAGFやAGV、ロボットが活躍
しているだけでなく、見学通路も完備。 でも津崎さんの関西弁の話を聞いて、本質は不変と安心しました。