博士(工学)塚田雅人 学位論文題名 Study on Ultrafast Photonic ATM Switches using O ptical S hort Pul ses ( 短 光 パ ル ス を 用 い た 超 高 速 光ATMス イ ッ チ の研 究) 学位論文内容の要旨 21世 紀 の マ ル チ メ デ イ ア 通 信 ネ ッ ト ワ ー ク に お いては 、音 声の よう な比 較的 低 速 (64Kbit/s)な 信 号 か ら ハ イ ビ ジ ョ ン TVの よ う な 高速信 号( 150Mbit/s)ま でを 一 元 的 に 扱 え る 交 換 シ ス テムが 期待 され てい る。 その 際、 中継 系交 換機 1台当 たり に 要 求 さ れ る 処 理 能 カ は 、 lTbiUsを 越 え る と 予 想 さ れ て い る 。 速 度 の 異 な る 情 報 を 一 元 的 に 扱 う た め に は 、 非 同期 転 送 モ ー ド (ATM)と 呼 ば れ る 通信 方式 が有 効で あり 、現 在実 用化 に向 けて電気ATMスイッチが開発されている。 し かし なが ら、 電気 スイ ッチ にお いて lTbiびsを越える大容量化を実現することは、 帯 域制 限、 熱の 問題 等の ため 非常 に困 難で ある。 そこ で、 大容 量化 に向 けては光の 高 速、 広帯 域性 を利 用し た光 信号 のま ま交 換処理 を行 う光 スイ ッチ が有 効である。 よ っ て 、 光 ATMス イ ッチ を研 究開 発す るこ とが 、将 来の通 信ネ ット ワー クの 構築 に 向 けて 重要 とな る。 この 必要 性に 応え るた め、本 研究 では テラ ビッ ト級 の情報を交 換 処 理 可 能 な 光 ATMスイ ッチ を提 案し 、そ の動 作特 性に関 する 種々 の実 験及 び数 値 解 析を 行っ た。 本 論 文 は 、 超 短 光 パ ルスを 用い た種 々の 光ATMス イッチ の提 案に 基づ きそ れら の 動 作 特 性 及 ぴ 実 現 性 を 明 確 に した 一 連 の 研 究 の 結 果 を 述 べ たも の で あ る 。 本論 文は 6章 から構 成さ れて いる 。 第1章で は、 本研究 の背 景と 目的 を述 べる 。 第 2章 で は 、 本 研 究 を進 め る う え で 基 本 技 術 と な った 、ATMスイ ッチ 及び 超高 速 光 信 号 処 理 技 術 に つ い て詳細 に述 べる 。ATMス イッ チに関 して は、 動作 原理 及び バ ッ ファ 配置 によ るス イッ チ構 成法 につ いて 述べる 。超 高速 光信 号処 理技 術について は 、 超 短 光 パ ル ス 生 成 法 、 光 制 御 型 光 ス イ ッ チ 、 高速同 期技 術に つい て述 べる 。 第 3章 で は 、 セ ル 多 重型 光 ATMス イ ッ チ の 構 成 法 及び実 現性 つい て述 べる 。本 ス イ ッ チ に お け る セ ル コ ーダで は、 電気 ATMセル のデ ー夕部 分は 超短 光パ ルス を用 い て 超高 速光 セル に変 換さ れア ドレ ス部 分は 半導体 レー ザの 直接 変調 によ り光セルに 変 換 さ れ る 。 ま た 、 セ ルデコ ーダ にお いて は、 元の 電気 ATMセ ルに 変換 され る。 こ こ で 、 2の 逓 倍 の 原 理を 用い た多 重及 び分 離回 路の セルコ ーダ 及び セル デコ ーダ ヘ の 適用 につ いて 論じ る。 これ らの 回路 がハ ード量 及ぴ 光パ ワー 損失 の低 減に有効で あ るこ とが 明ら かになった。加えて、23Gbit/s光セルの多重、分離実験によりその実 現 性を 示す 。ま た、 本ス イッ チに おけ る光 セル選 択回 路で は、 各々 の出 カのアドレ ス と一 致し た光 セル のみ が超 高速 光ハ イウ エイか ら抽 出さ れ、 バッ フん によってス ル ープ ット 制御 され る。 ここ で、 セル の選 択機能 を有 する 光バ ッフ ァ回 路について 論 じる 。光 ツリ ー型 スイ ッチ と光 フん イバ ループ メモ りの 組み 合わ せに より出力光 セ ルの スル ープ ット 制御 が可 能で ある こと を明ら かに した 。さ らに 、ビ デオ信号分 配 実験を行 い、スイ ッチング システム 全体の実 現性について論じる。25Gb it/s 光セル 化 さ れ た2チャ ネ ルの 映 像 信号 を 選 択す る デモ ン ス トレーシ ョンの良好 な結果と セ ル デ コ ー ダ に お け る ク ロ ス ト ー ク の 数 値 計 算 か ら 本 ス イ ッ チの 可 能 性を 示 す。 第 4章 では 、 ビ ット 多 重型 光 ATMスイ ッ チの 構 成 法及 び 実現 性 つ いて 述 べ る。 本 ス イ ッ チは 主 と して ビッ ト多重回 路、スタ ーカプラ 、光セル 選択回路か らなる。 こ こ で、光セ ル選択回 路におい て数lOOGbiゾsか らlT biびs の高速光信号列から所望の信 号 を 選 択す る た めに 、 3次 の光 非 線 形効 果 を用 い た 光制御型 光スイッチ の適用に つ い て 論 じる 。 タ イミ ング 設定回路 と非線形 ループミ ラー型光 スイッチの ような光 制 御 型 光 スイ ッ チ によ り光 セルの選 択が可能 であるこ とを明ら かにした。 また、光 セ ル 選択及び 入カバッ フんに関 する動作 確認実験 として55Gbit/s信号 の選択実 験及び3 セ ル 分 の容 量 を 有す るバ ッファリ ング実験 を行い、 それらの 結果及びパ ワーペナ ル テ イ の 数値 計 算 から 本ス イッチの 可能性を 示す。さ らに、非 線形ルプミ ラー型光 ス イ ッ チ を用 い る 際に 生じ るチャネ ル間クロ ストーク について 詳細に論じ 、本スイ ッ チ に お いて は チ ャネ ル間 ク口スト ークを十 分低減で きること を数値計算 により明 ら か にした。 第 5章 で は 、 光 時 分 割 多 重 技 術 ( OTDM)と 波 長 多 重 技 術 (WDM)を 用 い た 光 ATMス イ ッチ の 構 成法 及 び実 現 性 につ い て述 べ る 。本 スイッチ は主として ビット多 重 回 路 、ス タ ー カプ ラ、 光セル選 択回路か らなる。 ここで、 光セル選択 回路にお い て 光時分割 多重及び 波長多重 されたlTbit/s級 の高速光 信号列から 所望の信 号を選択 す る た めの 構 成 法に つい て論じる 。光制御 型光スイ ッチ及び 波長分波器 と光ゲー ト ス イ ッ チの 組 み 合わ せか らなる高 速波長フ イルタを 用いて光 セルの選択 が可能で あ る ことを明 らかにし た。また 、光セル 選択に関 する動作確 認実験と して1lOGbi t/s ( 55Gbit/s信号X2波長)の選択実験を行い、その結果及びチャネル間ク口ストーク と 波 長 クロ ス ト ーク を考 慮したパ ワーベナ ルテイの 数値計算 から本スイ ッチの可 能 性 を示す。 第 6章では、 本研究を 総括する 。 学位論文審査の要旨 主査教授大塚喜 副査教授大塲良 副査教授山下幹 副査教授伊藤精 弘 次 雄 彦 学 位 論 文 題 名 Study on Ultrafast Photonic ATM Switches using Opt ical Sho rt Pulse s (短光パ ルスを用いた超高速光A T M スイッチの研究) 21世 紀 の マ ル チ メ デ ィ ア 通 信 ネ ッ ト ワ ー ク に お い て は、 音声 のよ うな 比較 的低 速(64k bit/s)な 信 号 か ら ハ イ ビ ジ ョン TV の よう な高 速信 号( 15 0 Mbi t/s) ま でを 一元 的に 扱え る 交 換 シ ス テ ム の 開 発 が 期 待 され てい る。 その 際、 中継 系交 換 機1台当 たり に要 求さ れる 処 理 能カ は 、1Tb it/s を 越え ると 予想 さ れて いる 。 速度 の 異な る情 報を 一元 的に 扱う ため には 、非 同期 転送 モード(A TM )と呼ばれる通信方式 が 有効 で ある 。大 容量 化の ため には 電気 AT Mス イッ チに 比べ て、光の高速、広帯域性を利用 し 、か つ 、光 信号 のま ま交 換処 理を 行う 光ATMスイ ッチ が有 効である。この要請に応えるた め 、本 論 文で はテ ラビ ット 級の 情報 交換 処理 可能 な光 AT Mス イッチを提案し、その動作特性 に 関 す る 種 々 の 実 験及 び数 値解 析を 行い、 その 成果 をま とめた もの であ る。 第1章 は、 本研 究の 背景 と目 的を 述 べて いる 。 第2章 では 、本 研究 を進 める うえ で 基本 技術 とな った A TMスイ ッ チお よび 超高 速光 信号処 理 技術 に つい て詳 細に 述べ てい る。 AT Mス イッ チに 関し ては 、動作原理およびバッファ配置 に よる ス イッ チ構 成法 につ いて 述べ てい る。 超高 速光 信号 処理 技 術に 関し ては 、超 短光パ ル ス 生 成 法 、 光 制 御型 スイ ッチ 、お よび高 速同 期技 術に ついて 述ぺ てい る。 第3章 では 、セ ル多 重型 光ATMスイ ッチ の構 成法 と実 現性 につ い て述 べて いる 。本 スイッ チ にお け るセ ルコ ーダ では 、電 気ATMセル のデ ータ 部分 が超 短光パルスを用いて超高速光セ ル に変 換 され 、ア ドレ ス部 分は 半導体レーザの直 接変調による光セルに変換される。また、 セ ルデ コ ーダ にお いて は、 元の 電気 AT Mセ ルに 変換 され る。 2 の 逓 倍の 原理 を用 いた 多重お よ び分 離 回路 のセ ルコ ―ダ とセ ルデ コ― ダヘ の適 用を 論じ 、こ れ らの 回路 がハ ード 量と光 パ ワ一 損 失の 低減 に有 効で ある こと を明 らか にし た。 本ス イッ チ にお ける 光セ ル選 択回路 - 208 − では、それぞれの出カのアドレスと一致した光セルのみが超高速ハイウエイから抽出され、 バッフんによってスループット制御される。光ツリ一型スイッチと光フんイバループメモ りの組み合わせにより出力光セルのスループット制御が可能であることを明らかにした。 さらに、ビデオ信号分配実験を行い、スイッチングシステム全体の実現性について論じて いる。25 G bit/ s光セル化された2チャネルの映像信号を選択する良好ナょデモンストレーシ ヨン結果とセルデコーダにおけるクロストークの数値計算から本スイッチの可能性を示し た。 第4章では、ビット多重型光ATMスイッチの構成法および実現性について述べている。本 スイッチは主として、ビット多重回路、スターカプラ、および光セル選択回路からなる。 光セル選択回路において、数1 00 G bit/ sから1Tb it/s の高速光信号列から所望の信号を選 択するために、3次の光非線形効果を用いた光制御型光スイッチの適用について論じ、タ イミング設定回路と非線形ループミラー型光スイッチを組み合せた光制御型光スイッチに より、光セルの選択が可能であることを明らかにした。また、光セル選択および入カバッ フんに関して、55 G bit/ s信号の選択実験と3セル分の容量を有するバッフんりング実験を 行い、本スイッチの可能性を示した。さらに、非線形光スイッチを用いる際に生じるチャ ネル間クロストークについて詳細に論じ、本スイッチのチャネル間クロストークを十分低 減できることを数値計算により明らかにした。 第5章では、光時分割多重技術(O TDM) と波長多重技術(WD M)を用いた光ATMスイッチの構 成法および実現性について述ぺている。本スイッチは主として、ビット多重回路、スター カプラ、および光セル選択回路からなる。光セル選択回路において、光時分割多重および 波長多重されたlTbit/s級の高速光信号列から所望の信号を選択するための構成法につい て論ずるとともに、光制御型光スイッチ、波長分波器および光ゲートスイッチの組み合わ せからなる高速波長フィルタを用いて、光セルの選択が可能であることを明らかにした。 第6章では、本研究において提案し、かつ、その実現性が実証された光ATM スイッチの有 用性を総括し結論を述べている。 これを要するに、筆者はテラビット級の容量を有するA TMスイッチの実現に向けて、短光 パルスを用いた光AT Mスイッチが有効であることをスイッチング実験とスイッチング特性の 解析から実証したものであり、通信工学および光工学の進歩に寄与するところ大なるもの がある。 よって、著者は北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。 ― 209ー
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