国際交流基金関西国際センター日本語教育シンポジウム 「ひらく・つなぐ・つくる日本語教育の現場」 2008 年 3 月 8 日 分科会3「インターネットでつくる」資料 2 「日本語コースのための IT 活用」 角南北斗(ウェブデザイナー) コースで活用する IT ツールとして理想的なのは、そのツールの利用場面を考慮に入れつつ、利 用者の日本語能力や IT リテラシーの程度に合わせたものを個別に開発することです。それには 当然費用も時間もかかるわけですが、そんな余裕がないから IT ツールは一切使わない・・・と してしまうのはもったいないです。最近は無料 Web サービスが充実しているので、ちょっと試し てみることをオススメします。 「無料=使えない」という時代は終わり、思いつくことの大筋は全て無料ツールでできる、と言 っても過言ではないようになりました。無料であるということで、導入や維持にお金がかからず、 気楽に始められて、いつでもやめることができます。また、現代は学習者にあたる人たちが日常 的に Web サービスを利用している時代でもあります。先入観を持たず、まず教師自身がこうした ものにチャレンジしてみることが、IT ツールの活用の大切な第一歩です。 IT ツールが教育に本格的に活用できる時代だからこそ、ニーズにあったものを選ぶことが大切 です。教師から学習者に情報を提供するサイトを用意するなら、ブログが最も手軽で良いでしょ う。写真や動画も扱うなら Flickr や YouTube が便利です。また、コンテンツを関係者(教師間 や学習者間)で協働的に作り上げるのが目的なら、Google ドキュメントを使うことで、文書共 有のためのインフラを整える必要がなくなります(表1を参照)。 また、何かしらの IT ツールを導入したら、その効果を検証することも大切です。たいていの場 合うまくいかない要素があるはずなので、ツールを変えたりワークフローを変えたりする必要が 出てきます。それでも、オーダーメイドでイチから開発したものを使うのに比べ、無料サービス なら変えることに対するコストを低く抑えられるでしょう。 そうしたことを繰り返すことで、ツールに対するノウハウを蓄積することができます。最も大切 なのは、この「ノウハウの蓄積」です。やりたいことにあわせて無料ツールが選べる、という状 態になってはじめて、自前でツールを開発する必要性も明確になり、無駄を最小限に抑えながら 効果を最大限に引き出すツール(環境)を作り出せると言えます。 確かに、無料 Web サービスの利用には「何事も自分で解決する」という姿勢が求められます。で もそれを過度に恐れることはありません。同じサービスを使っている人たちがブログなどに書い た情報を探したり、mixi などのコミュニティや OK Wave(http://okwave.jp)のような Q&A サイ トで質問したりすればいいのです。Web の疑問は Web で解決することで、その過程がまた IT 活 用力を上げる要因になるのです。 表1:無料Webサービスの一例 サービス名 サービス名 説明 FC2ブログ http://blog.fc2.com 無料ブログサービスは多数ありますが、FC2ブログはアク セス制限など多機能な割に、管理画面が使いやすくオス スメです。 Seesaaブログ http://blog.seesaa.jp テキスト情報提供型 livedoor Wiki http://wiki.livedoor.com マルチメディアコンテン ツ共有型 協働作業型 ほとんどの無料ブログサービスは、画像以外のファイルを アップロードすることができません。Seesaaブログは、PDF やWord・Excelのファイルなどをアップロードできる数少な いサービスです。 livedoor Blogは、それ単体では画像ファイル以外はアッ プロードできませんが、同じアカウントでlivedoor Wikiを利 用することができます。Wikiというシステムはホームペー ジとして使うのは難しい部分がありますが、そこに好きな ファイルをアップロードすることができます。Wikiにファイル をアップロードし、ブログからそれにリンクを張るという使い 方をすると便利でしょう。 Flickr http://flickr.com 写真を投稿したり、投稿された写真をグループにまとめて 閲覧したりできるサービスです。学習者に各自写真をアッ プロードしてもらって教室でみんなで見たり、教師側がアッ プロードした写真を学習者が各自で見たりするのに使えま す。 You Tube http://jp.youtube.com こちらは動画の投稿・共有サービスです。これまで非常に 技術的なハードルが高かった動画の配信や共有が簡単 に行なえます。 Google ドキュメント http://docs.google.com インターネット上で作成・編集・共有できるWord、Excel、 PowerPointです。PCで作ったそれらのファイルをアップ ロードすることもできます。複数人で同時に編集できるの で、みんなでスライドを作ったり、予定表に書き込んだりで きます。 掲示板、ファイルのアップロード&共有、Webページの作 成が可能な統合サービスです。全体の容量が大きくはな いので、そうした機能を少しずつ短期間だけ使いたい場 合に向いているといえます。 Googleグループ http://groups.google.co.jp 表2:無料サービス選びの勘所 多言語対応 日本発のサービスには日本語オンリーのものが多いですが、Google関連は多言語対応 になっているものが多いです。利用者の日本語能力とWebサービスへの慣れ具合を考 慮に入れることが大切です。 アクセス制限 関係者のみ閲覧可能な状態に設定できるサービスは、あまりありません。制限の方法 も、アカウントを持っていて管理人が許可した人だけが見られるタイプ(Google系)と、パ スワードを知っている人なら誰でも見られるタイプ(FC2ブログなど)があります。サイト全体 をまとめてアクセス制限をかけるタイプと、ページごとに制限の適用を変えられるタイプの ものがあります。 保存性 保存期間が無期限なものは多いですが、その容量には差があります。特に写真や動画 を扱う場合は注意しましょう。 機能と構成要素 各機能の使い勝手が良いかを、利用者(学習者)の視点だけでなく、運営者(教師)の 視点でも考慮しましょう。機能が充実していると使いにくくなる傾向があるため、多機能で あることが良いとは限りません。不要な機能は使わない・表示させないことが可能かどう かもポイントです。
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