給湯設備

◆◇ 給湯設備 ◇◆
1.給湯設備の概要
給湯設備は給水設備と同様に、必要な水量(湯量)
、使用目的に適
した水圧、衛生的に安全な水質、これらに加えて適温の湯を建物内
の給湯必要箇所に供給することが目的である。
2.湯の性質
=設備豆辞典=
【比体積】
単位重量当たりの体積。
単位は〔m3/kg〕
。
【逃がし管】relief pipe
膨張管に同じ。ボイラの焚き始めの
湯の膨張量を逃がすために設ける。
ボイラから膨張タンクへ至る管。
水は4℃の時に比体積が最小になり、その値は1ℓ/kg である。水
は熱せられ温度が上昇すると、比体積が大きくなり膨張する。この
膨張を吸収するために、加熱装置には大気に開放された逃がし管(膨
張管)
、膨張タンク、あるいは膨張量を排出する逃がし弁を設置する
必要がある。
3.使用温度
湯の使用温度は、使用用途、季節、使用者の状況によって異なっ
てくる。
湯の使用温度
4.給湯温度
=設備豆辞典=
【レジオネラ菌】Legionella
レジオネラ属に属する真正細菌の
総称であり、グラム陰性の桿菌。レ
ジオネラ肺炎(在郷軍人病)等多く
のレジオネラ症を引き起こす種を
含む。少なくとも 46 の種と、70 の
血清型が知られている。通性細胞内
寄生性菌である。
1976 年にアメリカ合衆国ペンシル
ベニア州米国在郷軍人会の大会が
開かれた際、参加者と周辺住民 221
人が原因不明の肺炎にかかり、一般
の抗生剤治療にも関わらず 34 人が
死亡した。
給湯温度は、使用温度より高い温度で供給し、水と混合して使
用温度とする。 なお、給湯温度はレジオネラ菌の発生を防ぐため、
50℃未満としてはいけない。
給湯温度
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5.給湯量の算定
給湯量の算定は、人員による算定方法と器具数による算定方法
があるが、一般的には人員による算定を行い、必要に応じて器具数
による算定によりチェックを行う。
① 1日の使用湯量 Qd(ℓ/d)
Qd =N×qd
N :対象人員
qd:1日1人当りの使用湯量(ℓ/d・人)
② 時間最大使用湯量 Qh(ℓ/h)
Qh=Qd×qh
qh:1日の使用量に対する最大値の割合
用途別給湯量(温度 60℃)
5.給湯方式
=設備豆辞典=
【汽水混合式】蒸気と水を直接混合
させることによって、温水を作る方
式。ミキシングバルブで混合させる
方式と開放タンク内にてサイレン
サーを用いて混合させる方式があ
る。
給湯の方式は、
建物内の必要箇所ごとに小型給湯器を設置する局所
給湯方式と、機械室に大型の給湯ボイラ、貯湯タンクなどを設置し、
配管により建物全体に給湯を行う中央式給湯方式に大別される。方式
の選択にあたっては、建物の用途・給湯量・使用目的・保守管理の方
法などを検討の上、決定する必要がある。
(1)局所式給湯方式
局所式給湯方式は、使用目的などによって、次の4つの方式に分類
される。
① 瞬間式局所給湯方式
② 貯湯式局所給湯方式(一般用)
ミキシングバルブでの混合
③ 貯湯式局所給湯方式(飲料用)
④ 汽水混合式給湯方式
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=設備豆辞典=
【熱損失】
ここでは給湯配管表面からの熱放
出のことをいう。
局所式の各方式には、中央式と比較して次のような共通した特徴
がある。
(イ)給湯の箇所数が少ない時は、配管や給湯器の規模が小さく、維
持管理が容易で、設置費も比較的安価である。
(ロ)用途に応じた必要箇所で適温の湯が比較的簡単に得られる。
=設備豆辞典=
【使用水頭】
使用時に機器にかかる水圧。
(ハ)配管が短いので熱損失が少ない。
(ニ)給湯箇所の増設が必要な場合、比較的簡単に対応できる。
(ホ)大規模建物では給湯熱源が点在するので、維持管理が面倒であ
る。
(へ)排気を必要とする給湯熱源の場合は、構造および意匠上の制約
=設備豆辞典=
【混合水栓】mixing faucet
浴室・洗面・台所流しなどに用いら
れる湯と水を混合して吐水する水
栓金具。
を受ける。
(ト)簡易ボイラなど使用水頭が 10m未満の機器の場合、湯・水に差
圧を生じ、混合栓やシャワーなどで使用に不便をきたすことが
ある。
① 瞬間式局所給湯
この方式は、洗面所・浴槽・シャワー・各種流しなど、独立した
箇所に給湯熱源を設置し、即座に所要の湯を供給することができる。
瞬間湯沸器はガス弁の前後にかかる水圧の差によってガス弁を開閉
する方式をとっているので、水圧が不足であるとガス弁の作動が不
完全となるので、注意が必要である。
図 42.瞬間式局所給湯方式
② 貯湯式局所給湯(一般用)
この方式は、最大負荷時の給湯量を充足する量を貯湯する加熱器
を設置し、配管により所要各所へ給湯する。瞬間式では給湯量・給
湯範囲などが無理な程度の規模の用途、例えば給湯箇所の比較的多
い邸宅・食堂の厨房・工場・寮の浴室などに適する。
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=設備豆辞典=
【サイレンサー】silencer
一般的には消音装置のことを言う
が、給湯設備では、蒸気を直接水中
に噴射させて温水を作る装置のこ
とを言う。蒸気噴出時に発生する騒
音を軽減させる工夫がされている。
③ 貯湯式局所給湯(飲料用)
この方式は、飲料用・湯茶用として湯沸室・食堂などに、加熱温度
が 90℃程度のガスまたは電気の貯湯式湯沸器を設置するものである。
図 43.飲料用湯沸器(日本イトミック)
④ 汽水混合式局所給湯
この方式は、蒸気と水を混合させて湯を作る方式で、サイレンサー
を用いて開放式タンクの中へ蒸気を噴射させ水を加熱する方式と、ミ
キシングバルブを用いて蒸気と水を混合して温水を作る方式がある。
蒸気量が多量に得られる工場や病院で多く用いられ、装置が簡単で、
設置費が比較的安価である。
図 44.汽水混合用ミキシングバルブ
(2)中央式給湯方式
中央式給湯方式は、器具の給湯栓を開くとすぐに適温の湯が必要な
量だけ供給できるようにする必要があり、全配管の循環系統を完全に
バランスさせるように計画することが大切である。また、加熱方法、
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=設備豆辞典=
【同時使用率】
複数ある器具が同時に使用される
確率。この数値によりおおもとのボ
イラや配管などの装置容量が決め
られる。
配管方法、循環方法および供給方法などによって、次のように分類
される。
① 加熱方式
・直接加熱方式
・間接加熱方式
② 配管方式
・単管方式
・複管方式
=設備豆辞典=
【ストレージタンク】
ストレージタンク自体は本来貯槽
全てのことであるが、建築設備では
貯湯タンクをストレージタンクと
呼んでいる。
材質の多くは、SUS444、SUS304L、
SUS316、ステンレスクラッド鋼、
SS400、チタンなどである。
③ 循環方式
・重力方式
・強制方式
④ 供給方式
・上向き配管供給方式
・下向き配管供給方式
中央式の各方式には、局所式と比較して次のような共通した特徴
がある。
(イ)加熱装置が他の設備機器と同じ機械室(ボイラ室)に設置され
ているので、保守管理がしやすい。
(ロ)燃焼機器が大型なので、比較的安価な燃料が使用できる。
(ハ)貯湯タンクの容量により、瞬間的な過負荷のときでも、湯量・
温度とも安定供給ができる。
(ニ)加熱装置の容量を、器具の同時使用率を考慮することにより、
小さく出来る。
(ホ)装置が大規模かつ複雑となるので、設置費が高価である。
(へ)使用機器によっては、有資格者を必要としたり、定期点検を必
要とする場合がある。
(ト)機器・配管など装置全体からの熱損失が大きい。
① 加熱方式
●直接加熱方式
加熱器と貯湯タンクが一体となっているか、または、循環配管の
みで繋がっているタイプのものである。比較的小規模の建物に使用
される。
●間接加熱方式
加熱器と貯湯タンクは分離設置され、貯湯タンク内にはコイルを
有し、間接的に熱交換されるタイプのものである。熱媒体は蒸気ま
たは高温水が一般的で、大規模な建物に用いられている。
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図 45.直接加熱方式
図 46.間接加熱方式
② 配管方式
=設備豆辞典=
【ラインポンプ】
直線配管の途中に取付けられるよ
うに、ポンプの吸込口と吐出口が一
直線上にある構造のポンプで、電動
機(モーター)がポンプの上部にあ
る立軸構造なので取付スペースを
有効に使うことができる。
●単管方式
加熱装置と器具の配管距離が短い場合や、長時間にわたり湯を連
続使用する厨房および湯沸室などの系統は、返湯管を設けないこの
方式を用いることが多く、設置費を安価に抑えることができる。
●複管方式
中央式大規模給湯に多く用いられ、適温・適量の湯の供給が可能
であるが、設置費は割高である。
③ 循環方式
●重力式
温水の温度差による自然循環力を利用した方式であるが、配管を
比較的太くしておく必要があり、小規模建物向きの方式である。
●強制式
給湯循環ポンプを用いて強制循環させる方式で、大規模な設備に
おいては大半がこの方式である。循環ポンプにはラインポンプを用
いる事が多い。
④ 供給方式
●上向き配管供給方式
=設備豆辞典=
【空気溜り】
配管の途中などで空気や気泡が集
まっている部分。
器具の給湯栓への流水方向と、配管内の空気の抜ける方向とが同
じなので、最上部の給湯栓から空気が抜けやすく、好ましい方式で
ある。ただし、最上部での圧力不足や給湯管に余裕がないときに下
層部で多量の湯を使用すると、上部の給湯栓の湯の出が悪くなった
り、逆に空気を吸い込む場合もあるので、下部に厨房や浴場がある
場合は、別系統にするなどの配慮が必要である。
(図 47)
●下向き配管供給方式
大規模ビルの場合に多く用いられるが、空気抜きを立管の最上部
からとり、横主管には空気溜りができない程度の勾配をとり、各系
統の流量が均等になるような配管を行う必要がある。また、循環水
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=設備豆辞典=
【リバースリターン】
reverse return
直線配管の途中に取付けられるよ
うに、ポンプの吸込口と吐出口が一
直線上にある構造のポンプで、電動
機(モーター)がポンプの上部にあ
る立軸構造なので取付スペースを
有効に使うことができる。
量のバランスが取りにくい場合には、リバースリターン方式の配管
が用いられる。
(図 48)
図 47.上向き配管供給方式
図 48.下向き配管供給方式
6.高層建築の給湯方式
給水設備と同様に、圧力を一定圧以下に抑えるために、系統をわ
ける方法か減圧弁を設ける方法が用いられている。減圧弁の取付位
置によっては、空気溜りができ、ウォーターハンマーの発生の原因
となることもあるので注意が必要である。また、貯湯タンクの設置
位置によって、貯湯タンク分散式(図 49)と貯湯タンク集中式(図
50)に分類され、集中式は保守管理面では有利であるが、上層系統
の機器に高い圧力がかかるし、配管延長も長くなるので、比較的割
高となる。
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図 49.貯湯タンク分散式
図 50.貯湯タンク集中式
7.機器と材料
=設備豆辞典=
【アルゴン溶接】
溶接とは、金属を溶かして金属同士
を接合する方法。 大気中で金属を
溶かすと大気中の酸素と、高温で活
性化された金属が反応してしまい、
健全な溶接部が得られない。
一般的な棒溶接では、溶接時の高
温で溶接棒からガスが発生し、溶融
金属を大気から遮断し金属の酸化
を防ぎながら溶接を行う。
これに対し、アルゴン溶接は溶着
金属そのものの成分の溶接棒を用
いる。 タングステン電極の周りか
ら保護ガス(アルゴンガス)を放出
し、大気から溶融金属を遮断し溶接
を行う。
電極が細く、非常に精密な溶接を
行うことが可能で、棒溶接では溶接
出来ない金属も溶接することが可
能である。 ステンレス製品の重要
部分、アルミの溶接方法として多用
される。
1.管材料
給湯配管の材料として使用されるのは、耐熱用硬質塩化ビニルライ
ニング鋼管、ステンレス鋼鋼管、銅管、耐熱用硬質塩化ビニル管、架
橋ポリエチレン管、ポリブデン管などが使用される。
銅管を使用する場合には、配管内の流速があまり速くならないよう
にしなければ潰食が生じることがある。
太いステンレス鋼鋼管の接合は、アルゴン溶接による接合となり、接
合には熟練を要する。
2.伸縮継手
配管材料は、配管内を通る流体からの熱の影響で加熱され膨張し、
長い直線配管などには伸縮継手などを設けて、その膨張量を吸収しな
ければ、管・継手・弁類などに大きな応力が発生し、配管が座屈した
り、水漏れなどが発生する。
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図 51.銅管の応力による断面変形
図 52.銅管の応力による破損
スイベルジョイントは、
配管に3つ以上のエルボを設けることによ
ってその応力を逃がしていたが、頻繁に膨張収縮が起こると、ネジ部
の緩みなどからの漏水の可能性があるため、
近年はこの配管方法を用
いる事は減ってきた。 近年は、下記のような伸縮継手の使用が当た
り前となっている。
図 53.伸縮継手(スリーブ形)
図 54.伸縮継手(ベローズ形複式)
配管の固定は、ローラー形などを用いルーズにする事で、伸縮に対応
させる。
図 55.配管の支持
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◆二級建築士対策問題◆ 【給湯設備】
問題 1 給湯用燃焼器具に関する用語とその説明の組合せとして、最も適当なものは、次のうちどれ
か。
A.開放形燃焼器具
B.半密閉形燃焼器具
C.強制排気形燃焼器具(FE 式)
D.強制給排気形燃焼器具(FF 式)
ア.燃焼空気を室内から取り入れ、発生する廃ガスを室内に放出する。
イ.内蔵したファンを用いて、給排気筒等により屋外と直接給排気を行う。
ウ.燃焼空気を室内から取り入れ、発生する廃ガスを煙突や排気筒により屋外に排出する。
エ.燃焼空気を室内から取り入れ、発生する廃ガスを内蔵したファンを用いて、排気筒により屋外に排
出する。C
A
B
C
D
1.
ア
ウ
エ
イ
2.
ア
エ
ウ
イ
3.
イ
ウ
エ
ア
4.
ウ
エ
ア
イ
5.
ウ
ア
エ
イ
回答:1
ア(A) イ(D) ウ(B) エ(C)
問題 2 給水・給湯設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.一般的な事務所ビルにおける1日の在勤者1人当たりの給水量は、60∼100ℓ程度として計画する。
2.中央方式の給湯循環ポンプは、配管内の湯を強制的に循環させるもので、湯の温度低下を防ぐため
に設ける。
3.バキュームブレーカは、逆サイホン作用によって汚水が逆流するのを防止するために設ける。
4.飲料用の受水槽を建築物内に設置する場合、原則として、周囲及び下部に 60cm以上、上部に 100
cm以上の保守点検スペースを設ける。
5.ウォーターハンマーの発生を防止するためには、管内流速を速くする。
回答:5
管内流速を速くするとウォーターハンマーが発生しやすい。 防止する為には、管内流速
を遅くする必要がある。
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