2008/12/10 SJRMレポート インドムンバイ同時多発テロ (2008 年 11 月 26 日発生) (写真提供:ロイター=共同) BCM事業本部 コンサルティング第二部 1 ムンバイ同時多発テロの概要 1.1 最新状況 2008 年 11 月 26 日午後9時半頃、インドの商業都市ムンバイで、同時多発テロが発生した。 市内の十数か所で 1 時間ほどの間に襲撃があり、外国人 26 人を含む 171 人の死亡、294 人の 負傷者が確認された。この中には、タージ・マハル・ホテルで銃撃に巻き込まれた日本人出張 者2人の死傷者も含まれる。このほかの外国人死亡者には米国人 5 人、ドイツ人、イスラエル 人各 3 人などが含まれる。 最初の襲撃は、11 月 26 日午後9時半頃、ムンバイ市内南部繁華街にある観光名所となって いるレストラン「Cafe Leopold」や 2,000 人以上で混雑するチャトラパティ・シバジ駅で発生 したと見られる。当駅では、2 人の犯人が自動小銃で利用客を乱射し、全犠牲者三割以上にあ たる 65 人が犠牲になった。また、高級ホテルである「タージ・マハル・ホテル」と「トライ デント・ホテル」、ユダヤ人施設「チャバド・ハウス」が攻撃の対象となり、犯人グループは欧 州議会のメンバーなど外国人宿泊客等多数を人質に取った。これらの実行犯に対する制圧作戦 は、11 月 27 日から 29 日朝にかけて実行され、地元警察は同 29 日午前 8 時に「完全制圧」を 発表した。 12 月 5 日現在、事態は流動的でありムンバイ警察は引き続き、高度警戒態勢を敷いている。 特にニューデリー、バンガロール、チェンナイの3空港でテロが発生するとの秘密情報があり、 治安当局も警戒を強めている。 【ムンバイ市内 テロ発生場所】 ① レストラン観光名所「Cafe Leopold」(市内南部繁華街) ② チャトラパティ・シバジ駅(市内ターミナル駅) ③ タージ・マハル・ホテル(高級ホテル) 6 2 ④ トライデント・ホテル(高級ホテル) ⑤ ホテル・オベロイ ⑥ Cama 病院(ムンバイ南部) ⑦ タクシー(ムンバイ市南東部) ⑧ 映画館 4 3 ⑨ オフィスビル・ナリマンハウス(Nariman House) ⑩ ユダヤ人居住施設チャバド・ハウス (発生場所の数字は地図上の数字に対応) 3 Copyright (c) 2008 SOMPO JAPAN RISK MANAGEMENT,INC. All rights reserved 在ムンバイ日本総領事館は、11 月 27 日夕方、ムンバイ在留邦人 268 人と企業の出張者 30 人の安否確認済みであることを発表した。同総領事館は、タージ・マハル・ホテルで銃撃に巻 き込まれた日本人出張者 1 人が死亡、同 1 人負傷者を確認している。タージ・マハル・ホテル の旧館で火災が発生するなど、11 月 27 日朝には現場周辺では外出禁止令が発出された。また、 ボンベイ日本人学校(25 人生徒)をはじめ市内の学校は臨時休校、ムンバイ証券取引所の株取 引も終日停止された。 1.2 テロの特徴・犯人像 治安当局はタージ・マハル・ホテルでパキスタン国籍の過激派1人を拘束した。パキスタン に拠点を置き、北部カシミール地方のインドからの分離・独立を求める国際テロ組織アルカイ ダにつながるイスラム過激派「ラシュカレトイバ」のメンバーという。ラシュカレトイバは国 際テロ組織「アルカイダ」との関連も濃く、アフガニスタンやイラクでの対テロ戦を主導する 米国や、その最大の協力国である英国への敵意は深い。米国や英国のパスポート所持者を人質 に取った今回の犯行とも合致する。「ラシュカレトイバ」の関与が強く指摘されているが、同 27 日には、 「デカン・ムジャヒディン」と名乗る組織から電子メールで「イスラム教徒が不当 に扱われている」などとする犯行声明も出された。しかし、 「デカン・ムジャヒディン」はイン ド国内でも認識されていない新しい組織と見られている。 犯人グループは事件当初は 26 人前後と見られていたが、捜査が進むにつれ 10 人に絞り込ま れたようだ。現在、9 人は射殺され、1 人が拘束されている。犯人グループは、上記 2 つのテ ロ組織のメンバーでパキスタンから来た者や「ホーム・グロウン・テロリスト」と呼ばれるパ キスタン系英国人など、複数の組織の若者で構成されていると見られている。 今回の事件は、10 か所以上もの場所を同時多発的に狙った犯行且つ外国人がよく利用する施 設が標的となったことなど、過去にはあまりなかったケースである。パキスタンのカラチを出 発し、複数のボートで現場近くの海岸に乗りつけた。ホテルの構造も熟知している等、訓練さ れた組織が実施したテロと言える。また、最近のインドのテロでは、仕掛けた爆弾によるテロ が多く、無差別に乱射する今回の事件は異例である。しかし、イスラム過激派が突入し銃を乱 射した 2001 年の国会襲撃事件や、2006 年のムンバイ連続列車爆破事件とも近い。強力な組織 力で準備を重ね、実行に及ぶ手法は、国際的なテロ組織の手法と似通うとの指摘もある。 1.3 テロ発生の理由 インド経済は、90 年代以降、急成長を遂げているが、その恩恵を受けているのは一部の階層 だけであり、イスラム教徒によるインド政治への不満や反発が高まっている。同国では、低カ 4 Copyright (c) 2008 SOMPO JAPAN RISK MANAGEMENT,INC. All rights reserved ースト層、キリスト教徒などに対する公的雇用での優遇措置が取られているが、イスラム教徒 に対しては、約 12 億人の全人口の約 13%を占めているにもかかわらず、ほかのマイノリティー (少数派)と同等に扱われるため、優遇措置の恩恵を与えられていない。同国のイスラム教徒 の多くは、数世代前にヒンズー教徒の低い階層から改宗した人々がほとんどだが、社会の低層 にいたイスラム教徒も、最近では弁護士や医者など社会的地位の高い職業に就く人々が増えて きている。しかし、政治に対する不満をもつ若者がイスラム過激派の活動に走る動きが発生し ている。 ムンバイは、18 世紀半ば以降の約 1 世紀の間続いた英国支配時代から貿易港として、1947 年の独立後はタタなどの有力財閥が拠点を置くなど栄えた。1991 年の経済自由化以降、繊維産 業と映画産業から脱却し、インド最大の株式市場を有し、外国企業の進出も集中するなど、世 界でも活気のある都市として発展を続けた。また、異なる宗教や人種が混在する町である一方、 インドの経済的および社会的な面においても主要都市と言える。しかし、これらの人種や宗教 の多様性が多数派と少数派との間で社会的緊張を生み、暴動に発展する素地ももつ。また、イ スラム教徒の社会進出がかなり進んでいる土地であり、経済的にも社会的にも大きな影響力を もっている。そのような中、これまでもイスラム過激派によるとみられるテロ事件が続発して きた。遡れば 1992∼93 年にかけて、イスラム教徒がヒンズー教徒に対して暴動を起こしたこと があり、多くの犠牲者を出した。また、2002∼03 年にかけて、7 件の爆弾事件が発生し、多く の犠牲者を出した。これらのテロ事件はインドを象徴する建物や公共の交通機関を狙ったもの で、外国権益を直接対象とするものでなかった。 今回の事件は、外国人を狙った犯行のように見えるが、今までとは違い、ムンバイの誰もが 知る象徴的な建物を計画的に狙っているので、結果的に外国人が巻き込まれたともいえる。し かし、外国人を人質に取る方法は、同国内におけるテロ問題の深刻さを示している。なぜなら、 世界との経済的な結び付きを急速に深めるインド経済の中枢ムンバイを直撃したからだ。この 事件は、今後 21 世紀の世界をリードしていくだろう経済大国インドが依然、深刻なテロの脅威 を内部に抱えている現状を浮き彫りにした。 5 Copyright (c) 2008 SOMPO JAPAN RISK MANAGEMENT,INC. All rights reserved 2 最近のインドテロ情勢 2.1 最近のテロ事例 今回の事件の 2 ヶ月ほど前、パキスタンでも高級ホテルを狙った大規模なテロ攻撃が発生し た。9 月 20 日にパキスタンの首都イスラマバードで発生し、60 人以上の死者を出した。市内 で最高級のマリオットホテルに対する自爆による自動車爆弾テロ攻撃である。幸いなことに邦 人への被害はなかった。 <2008年のテロ事例> 2008 年はインド国内で小型爆弾による自爆テロが相次いでいる。5 月には、外国人観光客も 多いラジャスタン州州都ジャイプール(デリーから南西に約 250 キロ)で複数の市場と寺院等 数か所において、爆弾が連続で爆発する事件が発生し、少なくとも 80 名が死亡し、200 名程度 が負傷した。また、7 月はバンガロール、9 月はニューデリー、10 月はアッサム州などで大規 模テロが続いている(下表参照)。 日付 5 月 13 日 7 月 25 日 7 月 26 日 9 月 12 日 10 月 1 日 地域 事件の内容 ラジャスタン州 市場やヒンズー教寺院近くなど7カ所に仕掛けられた ジャイプール 爆弾が爆発(80 人死亡、200 人負傷)。 南部カルナタカ州 バンガロール 小型爆弾が爆発(2 人死亡、数人負傷)。 西部グジャラート イスラム教徒の居住地区にある市場や病院などで 16 発 州アーメダバード の爆弾が爆発(45 人死亡、161 人負傷)。 ニューデリー トリプラ州アガル タラ 市場など5カ所で爆弾が相次いで爆発(22 人死亡、約 100 人負傷)。 爆弾が相次いで爆発(2人死亡、約 100 人負傷)。 グワハティ中心部にある州政府高官のオフィスや、市 10 月 30 日 北東部アッサム州 場、企業などが集中する地区で爆弾が相次いで爆発(64 人死亡、300 人以上負傷)。 <2007年以前のテロ事例> 2007 年における大規模事件としては、ハリヤナ州パニパット付近を走行中の列車がテロによ り炎上する事件(2 月 18 日。67 人死亡、15 人負傷)、アンドラ・プラデシュ州の州都ハイデラ バードで無差別連続爆破事件(8 月 25 日。43 名死亡、50 名負傷)、ウッタル・プラデシュ州の 6 Copyright (c) 2008 SOMPO JAPAN RISK MANAGEMENT,INC. All rights reserved 3 都市の裁判所における同時爆破事件(11 月 23 日。13 名死亡、60 名負傷)等が発生した。 さらに過去を遡ると、2001 年 12 月には国会議事堂が過激派により襲撃された事件、2005 年 10 月にはディワリ祭前でにぎわう市内の市場等 3 ヶ所で起きた連続爆破事件でも多くの犠牲者 が出した。また、実行犯は不詳だが、2006 年 4 月にはオールドデリーにあるイスラム教モスク 「ジャマ・マスジット」で連続爆発事件があった。2006 年 7 月、ムンバイでは通勤ラッシュ時 の列車や駅のプラットフォームを狙った連続爆弾事件で約 200 人が死亡した。 地域 組織名 事件内容 カシミール過激派 市場等連続爆破事件(67 名が死亡、298 名が負傷) (2005 ラシュカレトイバ(Let) 年 10 月) デリー 2 つの映画館で連続して爆発が発生し、1 名が死亡、50 シーク過激派 BKI 名以上が負傷(2005 年 5 月) 市場における自動車爆弾事件(15 名以上死亡、60 名以上 負傷)(2005 年) スリナガル中心部における自動車爆弾事件(9 名死亡、 ジャンム・カシミール州 16 名負傷)(2005 年) カシミール過激派 ヒンドゥー教徒虐殺事件(5 名死亡、9 名負傷) (2005 年) 政治集会襲撃事件(3 名死亡、40 名以上負傷) (2005 年) カルナタカ州 IT 関連施設襲撃事件(2005 年) バンガロール 共和国記念日(1 月 26 日) 、ULFA の創立記念日(3 月 16 アッサム解放統一戦線 アッサム州 日)及び独立記念日(8 月 15 日)の前に起きたテロ (ULFA) (2005 年) アッサム州 ボドランド民族民主戦 カルビ・アングロン郡 線(NDFB) 対立する部族同士の過激派によるとみられる襲撃事件 (100 名以上が死亡) (2005 年) 人民解放軍(PLA)、統一 マニプル州 マニプル解放戦線 非部族民、軍及び治安部隊への襲撃等(2005 年) (UNLF)等の過激派 トリプラ民族解放戦線 (NLFT)、 トリプラ州 要人襲撃等 全トリプラ解放の虎 (ATTF) 7 Copyright (c) 2008 SOMPO JAPAN RISK MANAGEMENT,INC. All rights reserved アンドラ・プラデシュ ナクサライトの大規模集団による警察署、電話交換局、 ナクサライト* 州、オリッサ州、ジャー 鉄道駅等の襲撃が頻発 ※ナクサライトとは、極左 ルカンド州、ビハール州 州都ハイデラバードで無差別連続爆破(43 名死亡、50 思想に基づき、少数部族の 等 名負傷)(2007 年 8 月) 自治確立、部族民及び低カ チャティスガル州 ースト層の利益擁護を掲 治安部隊車両襲撃事件(24 名死亡、3 名重傷) (2005 年) ダンテワラ郡 げて武力闘争を行う過激 ジャールカンド州 反マオイスト派住民虐殺事件(15 名死亡、6 名負傷) (2005 派グループの総称 ギリディー郡 年) など 走行中の列車がテロにより炎上(67 人死亡、15 人負傷) ハリヤナ州パニパット (2007 年 2 月) 3 都市の裁判所における同時爆破(13 名死亡、60 名負傷) ウッタル・プラデシュ州 (2007 年 11 月) 2.2 テロ発生の背景 インドとパキスタン対立の背景を述べるには、独立時まで遡る必要がある。インドで唯一イ スラム教徒が多数派を占めるカシミール地方の領有権を巡って対立する印パは、1947、1965、 1971 年の 3 度に及ぶ戦争を戦い、1998 年には両国は核実験を強行した。90 年代に入ると代わ ってラシュカレトイバなどイスラム過激派が台頭した。2005 年にはカシミール直通バスが運行 を始めるなど、両国の関係も改善したかに見えたが、2006 年 7 月に発生したムンバイにおける 列車爆破テロの犯人をめぐり、両国の関係は悪化していった。 インドにおけるテロ組織の活動を整理しておきたい。 2.2.1 カシミール過激派 インド北西部のジャンム・カシミール州では、カシミール地方のパキスタンへの帰属、同 地方からのヒンドゥー教徒排除等を主張する過激派が活動している。 2006 年には、ヒンドゥー教徒住民虐殺事件やイスラム教導師襲撃事件等の大規模事件が発 生し、観光シーズンには観光客襲撃事件も発生した。2007 年は、大規模な事件は減少したも のの、依然として治安部隊や政党関係者の襲撃事件が発生したほか、7 月には観光客襲撃事 件も発生した。 カシミール過激派の活動は州外にも及んでおり、2006 年のヒンドゥー教の聖地ヴァラナシ における寺院等連続爆破事件、商都ムンバイにおける通勤列車連続爆破事件等の同過激派の 関与が指摘された。2007 年は、デリー等で発生したテロ未遂事件でメンバーが逮捕されてい 8 Copyright (c) 2008 SOMPO JAPAN RISK MANAGEMENT,INC. All rights reserved るほか、11 月にはウッタル・プラデシュ州ルクナウで与党幹部誘拐を計画していたとしてメ ンバーが逮捕されるなど、活動範囲は拡散傾向にある。 2.2.2 北東部州過激派 アッサム州では、従来からアッサム統一解放戦線(ULFA)やボドランド民族民主戦線(NDFB) 等が、インドからの分離独立を掲げて、州政府要人暗殺、組織離脱者殺害、遠隔操作の地雷 を使った治安部隊襲撃等のテロ活動を行ってきた。2003 年 12 月、ブータン当局が同国南部 に設置された、これら過激派のキャンプの掃討作戦を行い、壊滅的な打撃を与えたとされて いた。しかし、その後、ULFA の体制立て直しが進み、2007 年は、ULFA によるとみられる、 地元与党関係者・ヒンディー語話者・治安部隊等を狙ったテロ事件や市場等での無差別爆破 事件が多数発生するなど、その活動が活発化している。 マニプル州では、人民解放軍(PLA)、統一マニプル解放戦線(UNLF)等の過激派が、以前 から治安部隊、他の部族民への襲撃等を行ってきており、2007 年も各種テロ活動を行った。 トリプラ州では、トリプラ民族解放戦線(NLFT)、全トリプラ解放の虎(ATTF)が、引き続 き、散発的にテロ活動を行っている。 2.2.3 ナクサライト ナクサライトとは、極左思想に基づき、貧困層、部族民の利益擁護を掲げて武力闘争を行 う過激派グループの総称。2004 年 9 月には、このうち 2 大グループ(人民戦争派(PWG)と 毛沢東派(MCC))が合併し、マオイスト派を結成した。 インド中部のチャティスガル州、アンドラ・プラデシュ州、ジャールカンド州、ビハール 州等においては、ナクサライトの大規模集団による治安部隊、反対住民への襲撃事件や鉄道 施設等の破壊が多発してる。2007 年は、警察の前哨拠点の襲撃事件やオーケストラ・コンサ ートにおける銃乱射事件などが発生した。また、同年 12 月にはナクサライトのメンバーの指 揮によりチャティスガル州の刑務所からメンバー110 人を含む約 300 人が脱走する事件も発 生した。このほか、ナクサライトは、影響地域内で工業部門を攻撃すると表明する一方(2005 年)、米英によるイラク攻撃に抗議するとして米系飲料会社工場を襲撃したり(2003 年)、印 米原子力合意が実現すればウラン公社による住民被害が大きくなると機関誌で訴えたりして いる(2006 年)。 9 Copyright (c) 2008 SOMPO JAPAN RISK MANAGEMENT,INC. All rights reserved 3 日系企業および各国の対応 3.1 日系企業の対応 今回の事件では、早い段階で各企業は対応を打ち出した(下表参照)。各企業の対応を下表に まとめた。従業員の安否確認は当然として、日本からの出張やインド国内出張の当面の中止を 指示している。また、一部の企業では、帯同家族の帰国を検討している。 企業 海運業 対応例 日本人駐在員と出張中の社員2人の安全を確認。日本からムンバイ への出張を禁止。 化学A ムンバイ支店3人の駐在員は自宅待機、出張者はホテルに待機するよ う指示。出張予定者は全て渡航を中止。 化学B 化学C 化学D 当面、ムンバイへの出張を中止。 現地駐在員に自宅待機を指示。 販売子会社を休業。 金融A 現地行員13人全員の無事を確認。全社員に自宅待機を指示し、店舗 は休業。 金融B 安否確認した上で自宅や支店に待機の指示。 金融C 市場閉鎖で現地営業を見合わせ。従業員の安全を最優先し、当面、 アジア全域への渡航を禁止。 検査機器販売 インドに出張中の日本人社員の無事を確認。現地従業員が出社でき ないため休業。 建設 社員3人の無事を確認。内装工事のため駐在していたが、工事現場は テロの現場に近く、工事を中断。 自動車A 12月1日までインドへの出張は原則禁止。 自動車B 駐在員とその家族、出張者ら250人以上の関係者すべての無事を確 認。工場の操業などは通常通り。 自動車販売 駐在員3人と現地スタッフ約120人の無事を確認。通常勤務。 日本からの出張は当分禁止、インド国内の出張も急きょ取りやめ。 商社A 駐在員6人と家族4人計10人の安全を確認。 ムンバイへの不要不急の出張は当面自粛。 商社B 駐在員2人と出張者3人の無事を確認。 商社C 日本からの派遣社員、出張者、現地スタッフ全員の安全を確認。ム ンバイへの出張は当面見合わせ。 スポーツイベント企画 ツアー中止。 製薬 現地従業員自宅待機。出張中の従業員の帰国とインド出張を当分の 間見合わせ。 電気機器製造A 営業所従業員は自宅待機。 電気機器製造B 出張などで利用する可能性があるホテルで事件が起きたため、安全 を確認できるまで渡航を控える方針。 電気機器製造C 電気機器製造D メディア関連 政府関係機関 ムンバイ郊外の支店休業。 子会社や駐在員事務所を臨時休業。 ムンバイ事務所を(27日)終日休業。 現地事務所での業務を一時見合わせ。 事務所が爆発現場に近く、日本人駐在員3人と現地職員7人が出勤で きない状態にあり、当面自宅待機。 (出典:新聞各紙の情報よりとりまとめ) 10 Copyright (c) 2008 SOMPO JAPAN RISK MANAGEMENT,INC. All rights reserved 3.2 日本人・日本権益に対する脅威 現在までのところ、いずれの過激派組織も日本または日本人を積極的にターゲットとする意 図は有していないとみられている。しかし、2001 年 9 月の米国での同時多発テロ事件以降、日 本は米国に対する強い支持を表明し、イラク復興支援には自衛隊を派遣するなどしており、 「米 国の同盟国としての日本」を巡る情勢は予断を許さない状況にある。 特に、国際世論にカシミール問題等を訴えることを目的とする日本人旅行者誘拐事件等が発 生する可能性や、ナクサライトの影響下にある地域に日系企業が進出する場合には、彼らが企 業攻撃を表明していることに留意する必要がある。 その他、大都市における無差別テロに際して、たまたま居合わせた日本人が巻き込まれる可 能性がある。2005 年中、日本人の多くが居住するデリーでは連続爆破事件が 2 件発生し、また、 IT 産業の視察の多いバンガロールでも無差別テロ事件が発生するなど、その危険性は看過でき ない。 3.3 各国政府の対応 今回の事件直後、潘基文国連事務総長スポークスマン、フラット米大統領副報道官、ブラウ ン英首相など各国の代表が本事件を非難する声明を発表した。米国国務省の報道官は、事件へ の対応で米国当局がインドを支援する用意があることを明らかにした。また、オバマ次期米国 大統領の政権移行チームの国土安全保障担当者は事件を厳しく非難し、テロ対策でインドなど 各国と連携していく方針を強調した。 各国の政府機関もインド渡航者や滞在者に対し、危険情報を発出した。日本外務省は 11 月 27 日付けでスポット情報「ムンバイにおける連続テロ事件発生に伴う注意喚起」、英国外務省 はムンバイに対し、「渡航の是非を検討してください」、米国国務省は「十分に注意してくださ い」相当の警告を発出した。 4 日系企業のテロ対策(SAFETY EYE No.27より抜粋一部改変) これまでインドに限らず海外で日本人や日本企業、日本権益などが被害にあったテロ事件は、 たまたま巻き込まれたケースが殆どである。一方で、アルカイダ等による日本を名指しした声明 も出ており、日本権益が直接的なターゲットになる可能性は、否定できない状況にある。 これら国際テロ組織等によるテロを企業独自で防ぐことは極めて難しいが、少しでもテロに巻 き込まれる可能性やその被害を低減するための措置や対策は講じておくべきである。また、空港 やチェックインにおけるセキュリティチェックは 9.11 同時多発テロ以降、大変厳しくなっており、 駐在員や出張者が係員から不要な誤解を招かない行動をとるなど気をつけるべきである。 11 Copyright (c) 2008 SOMPO JAPAN RISK MANAGEMENT,INC. All rights reserved 4.1 日本本社における対策 4.1.1 情報収集 最も基本かつ重要なのが、日頃からの情報収集と分析である。自社が活動する国や都市で、 過去にどのようなテロ事件が発生し、現在どのようなテロ組織が活動しているのか、などに ついて把握し、対策を考えるべきである。コンサルティング会社やメディアの情報、各国機 関ウエブサイト等から入手することが可能である。 外務省の海外安全ホームページでは、各国の「テロ概要」、タイムリーに発出される「ス ポット情報」など参考になる。また、外国の政府機関などから発出される、アラート情報も 極めて有益である。特に、米国国務省が在外米国人向けに発出しているアラート情報は、テ ロの可能性が有る場合など、その時の情勢を敏感に反映して発出されるため、極めて参考に なる。 下記、参考になる主要なサイトを紹介する。 【外務省、関係団体などのサイト】 ◇ 外務省海外安全ホームページ(http://www.anzen.mofa.go.jp/index.html) ◇ 社団法人海外邦人安全協会(http://www.josa.or.jp/) ◇ 社団法人日本在外企業協会(http://www.joea.or.jp/) 【外国の政府機関等のサイト】 ◇ 米国国務省(http://www.state.gov/) − 特 に 、 Travel Warnings ( http://travel.state.gov/travel/cis_pa_tw/tw/tw_ 1764.html) ◇ 米国 OSAC-Overseas Security Advisory Council-(http://www.osac.gov/) ◇ 英国外務省(http://www.fco.gov.uk/) − 特 に 、 TRAVEL ADVICE ( http://www.fco.gov.uk/servlet/Front?pagename=OpenMa rket/Xcelerate/ShowPage&c=Page&cid=1007029390572) 【テロ組織やテロ事件等に関するデータ・ベース】 ◇ 米国MIPT−Terrorism knowledge Base−(http://www.tkb.org/Home.jsp) 4.1.2 海外現地事業所への情報提供、アドバイス 各海外現地事業所に対して、テロ情勢等に関する情報提供を行い、情勢に応じてセキュリ ティの見直しや強化の指示や対応についてのアドバイスを行う。 4.1.3 発生した場合に備える(駐在員・出張者管理) 世界のどこでテロが発生した場合にも、すぐに安否確認ができるように駐在員や出張者を 12 Copyright (c) 2008 SOMPO JAPAN RISK MANAGEMENT,INC. All rights reserved 日本本社で一元的に管理しておくことが望ましい。情勢の変化に迅速に対応するため、速や かに出張停止等の指示ができるように、事前にその対応手順を定めておくべきである。また、 自社が進出している国やその周辺地域の医療機関などに関する情報なども事前に本社にお いて把握、整理しておくとよい。 4.2 海外現地事業所における対策 4.2.1 セキュリティの強化 • オフィスや工場などの施設のセキュリティの強化、場合によっては、狙われる可能 性の高い施設の周辺からオフィスなどを移転するなどの措置も必要である。 • 例えば、周辺に米国等の在外公館や基地、米国等の代表的な企業の拠点などが在る 場合には、移転なども含めて検討する必要がある。 4.2.2 BCP、バックアップ等 • テロ事件が発生した場合の対応について、事業継続計画(BCP)なども含めて検討 しておく必要がある。 • データのバックアップを数カ所で保管しておくなどの措置も重要である。 4.2.3 出張等に対する留意事項 近年、テロの対象が警備の弱いソフトターゲットへ拡大している傾向にあるが、下記に示 す注意事項を参考にして頂きたい。 1)主なテロの対象 ①空港 ②米国・英国系航空機 ③米国・英国等関係国の政府施設(在外の公館や米軍・英軍施設等を含む) ④米国・英国を代表するような政府系機関・企業等の施設(大使館、航空会社支店・事務所、 有力な銀行、有名ホテル等) ⑤米国・英国人がよく行くレストランやバー等 2)空港等での留意事項 ①空港の滞在時間はできるだけ短くし、速やかに移動する。 ②速やかに出国手続きを済ませて、不特定多数の人が出入りをするエントランスやロビーに は長く滞在しない。 13 Copyright (c) 2008 SOMPO JAPAN RISK MANAGEMENT,INC. All rights reserved ③空港到着時には、速やかに空港施設から離れること。 ④セキュリティチェックには素直に協力し、警備担当者に不審感を持たせない。拘束された 場合、直ちに日本大使館・領事館への通報を要求する。 ⑤航空機内でも同様であり、誤解を招かない行動をとること。不審な行動を行い、日本人が 拘束された例がある。 ⑥米国、英国等の航空会社のカウンター前は十分に注意する。この周辺で滞留することは危 険である。 ■本情報配信についてのご意見、ご質問が ございましたら右記にお問い合わせく ださい。 ■なお本レポートは、複製又はご登録企業 様以外の第三者に再配信することは差 し控えていただくようお願い致します。 発行・編集 (株)損保ジャパン・リスクマネジメント BCM 事業本部 コンサルティング第二部 〒160-0023 東京都新宿区西新宿 1−24−1 エステック情報ビル 27F URL:http://www.sjrm.co.jp Tel: 03-3349-5984 14 Copyright (c) 2008 SOMPO JAPAN RISK MANAGEMENT,INC. All rights reserved
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