定年後も安定した生活を目指した制度設計

高齢者雇用事例編
事事例⑧
東京経営者協会 実務シリーズ
No 2012-A-008
NOK株式会社
定年後も安定した生活を目指した制度設計
1.企業の概要
会社名
NOK株式会社
設 立
1939 年 12 月 2 日
従業員数
41,210 名(連結/2010 年度末)3,400 名(個別/2010 年度末)
主要な事業内容
シール製品・工業用機能部品・油空圧機器・プラント機器・原子力機器・合成
化学製品・エレクトロニクス製品・その他の製造・仕入・輸入・販売並びに機
械器具設置工事等上記に付帯する業務
資本金
23,335 百万円(2009 年度末)
売上高
498,932 百万円(連結/2010 年度) 228,828 百万円(個別/2010 年度)
定年制度
60 歳定年制
2.再雇用制度の概要と現状
2006年に再雇用制度を導入。再雇用の基準を設けているが、厳しい基準ではなく、
「心
身ともに健康であること」のみである。契約は1年更新であり、雇用終了年齢は高齢法
に従い段階的に引き上げている。再雇用者の現状は以下のとおりである。
(2011年12月現在)
再雇用先
①
人数
NOK単体
133名
② 生産子会社
20名
③ 出向先(役員)
10名
④ 海外現地法人出向
5名
1
再雇用の①から④の区分けは本人の希望と会社からの要請により決まる。
「②生産子会社」への再雇用は、定年前に一般職であった社員が多く、定年後、居住
地と同じ地域の子会社で勤務する。
「③出向先(役員)」とは、定年後も出向先で役員として仕事をし、役員退任後は原
則として65歳まで顧問として再雇用される。
「④海外現地法人出向」への再雇用は、会社からの要請により決定する。
●定年退職者数の推移
年度
2006
人数(人) 116 人
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
83 人
108 人
108 人
110 人
127 人
126 人
127 人
注:2011 年度~2013 年度は見通し
3.処遇と職務内容
処遇はいくつかのパターンに分かれている。
1つは、会社側の要望により再雇用されるパターンである。例えば、型技術者など高
度な技術・技能を有した者が対象となる。その場合は月給制で、30~40万円/月が目安
である。賞与も支給される(2ヵ月/年)が、業績等により支給されない場合もある。
2つ目は、本人が再雇用を希望し、定年前と同じ仕事を継続する場合であり、事務系・
製造系のいずれでも日給制で10,000~15,000円/日である。
3つ目は、本人が再雇用を希望し、定年前とは異なる仕事をする場合であり、時給制
でおおよそ1,000円前後である。
賃金は個人別に設定しており、地域性も影響するため、金額はおおよその目安である。
(a)会社側の要請による再雇用
賃金:月給制
30~40万円/月
賞与:支給されることがある(2ヵ月/年)
(b)本人が再雇用を希望し、職務も定年
賃金:日給制
前と同じ仕事を継続
10,000~15,000円
賞与:なし
(c)本人が再雇用を希望し、定年前とは
賃金:時給制
異なる仕事
賞与:なし
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おおよそ1,000円前後
再雇用者のうち、会社側の要請により再雇用される者の割合は2割程度である。本人
が希望し、定年前と同じ職務を継続する場合の割合も2割程度であり、本人が希望する
が定年前と異なる職務に就く場合の割合は6割程度である。
再雇用後は会社側の要請で再雇用される社員も含めて評価制度は適用していない。
職務内容については、定年前と同じ仕事を継続できる場合や、本人が過去に経験した
仕事の場合もあれば、またそのようなことは考慮されずに事業所で用意できる仕事に従
事するケースもある。例えば、定年前に交替勤務に従事していた場合、定年後も引き続
き交替勤務をする場合もあれば、本人の希望により定年後は交替勤務から外れることも
ある。後者の場合は(c)の時給制が適用される。組織の年齢構成がいびつなため、職
務内容は本人の希望だけで決定すると、現役の育成に影響するため会社が調整をする。
また、定年を迎えた事業所での再雇用が原則であるが、定年前に転勤をしていて、定
年後は地元に戻ることを希望するケースも多く(定年前と異なる事業所勤務を希望)、
その場合には人事部門が事業所間に入り調整を行う。
労働時間・日数は、個別に本人と職場での面接により決定している。そのためフルタ
イム勤務の人もいれば、短時間勤務や短日勤務の人もいる。製造現場での勤務の場合は、
原則フルタイムであるが、交替勤務がない現場では短時間・短日勤務も可能である。
4.再雇用までのステップ
●55歳時
4月1日現在で55歳の社員を対象にライフプランセミナーを実施する。退職金・年金制
度、再雇用制度の説明を行う。
●57歳時
定年退職の2年前の年度には、本人と部門長との個別面談を実施し、再雇用の希望を
調査する。
●定年1年前
定年1年前に再度面談を行い、最終意思確認をする。
5.企業理念
NOKでは労使で「会社で雇用されている間だけでなく、退職後も安定した生活を送れ
るように」という基本思想を掲げており、現役の時から定年後の生活基盤が築けるよう
に福利厚生が充実している。
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また、年金受給年齢引き上げを見越して、2000年に企業年金を手厚くした制度に見直
しを行った。そのためか再雇用を希望する人が少なく、毎年、再雇用される人の割合は
定年退職者の3~4割程度である。
6.今後の課題
再雇用後、モチベーションが低下する人はあまりいない。そのような人はそもそも再
雇用を希望しないと思われる。また、高齢者を再雇用することによって新卒採用に影響
することもない。
しかし課題はいくつかある。1つは再雇用者への現場での対応の仕方である。定年前
の職位は再雇用後には影響しないため、管理職でも一般職でも同じ労働条件になる。そ
のため現場では、定年前に職位が高かった再雇用社員への対応に戸惑いを感じていると
いうことである。
2つ目は、海外に生産を移管していることから、国内の生産比率が低下し、日本での
仕事が減少していくことである。その一方で定年退職者は毎年生じるため、国内での職
務提供をどのようにしていくかという課題があり、今後労使で取り組んでいく予定であ
る。
【これまでの高齢者雇用事例編(実務シリーズ)発行一覧】
A-1
ニレコ㈱
希望者全員を再雇用
-高いモチベーションで若手の教育と技能伝承-
A-2
東レ㈱
殖産会社等を活用した再雇用制度
A-3
凸版㈱
再雇用後も人事考課を実施し、やる気を高める
A-4
日本テトラパック㈱
再雇用者にも定年前と同じ評価制度を適用
A-5
化学製品製造業 A 社
2 つのタイプの再雇用で運用
A-6
野村證券㈱
原則、希望者全員再雇用
A-7
東京ガス㈱
セカンドライフ支援制度
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