若い技術者へのメッセージ 1.要旨 江口が入社致しましてから、どんな考え方で仕事に取組んで来たか、何故そのような取組み が出来たのかを、お知らせして、若い技術者が積極的に技術革新へ貢献して下さる事を期待 致します。 2.入社した時の上司の励ましがスタート 入社式が終りましてから、新入社員教育、現場実習が6ヶ月実施されまして、10月1日 に私は自動車車体(板金)の設計部に配属になりました。私の第1希望の職場でした。最初 の挨拶に参りました時に、上司(課長)より「あなたには、現状の設計のやり方を変えて欲 しい。変える事が君の仕事である。その積りで、仕事を実行して欲しい」との言葉を頂きま した。まだ設計の仕事、特に自動車車体の設計を全然知らない私に大変重い課題を頂きまし た。 私はその後の仕事の学習、実習で、現状の問題点を把握する事に注意しながら、スタート を切りました。上司の指示である、現状を変える事こそ本当の業務であると認識して、設計 の仕事に向かいました。仕事への取組み姿勢として今までと違った事をトライする事、新し い技術動向があれば、機械学会の講習会等にも積極的に参加致しまして、上司に報告を致し ました。 3.具体的な車体設計での行動 私はバン型車のフロアーの設計を、図面を書くのが最初の実務となりました。従来の構造 で疑問に思う点は、先輩にどんどん質問を致しまして、明確な答えの返ってこない形状の場 合、私は新しい構造、穴の位置等を設計致しました。理由を考えて、その理由に合うように、 図面化を致しました。その成果は散々なものでした。結局従来の構造には、全て理由があり、 私の図面は大幅な設計変更をする事になりました。 現在よりも開発に余裕がありましたので、設計変更しても全体に影響する事が無かったの で、結果としては問題になりませんでしたが、厳しい実践教育をして頂きまして、骨の底か ら、板金設計の難しさを感じました。現在の教育では、考えられないような有り難い失敗を 体験させて頂きまして、2度と同じ間違えをしないように肝に命じる、有益な教育を受けた わけです。 4.自動車業界は発展途上にありましたので、新しい事が出来ました 自動車業界は、丁度発展途上に御座いましたので、開発部門の強化も急ピッチで実施され、 設計部にも私よりも若い技術者が沢山加入して参りました。私は設計の図面を書く仕事から、 サブリーダーとして、進捗する仕事が多くなりました。設計は今でも総合技術を必要として おりまして、形状、材料、部品メーカーの能力、社内試作部門、生産技術者との打ち合わせ 等で、会議出席が増えて参りました。 薄板構造の車体を構造解析できたらと、自分の材料力学、構造力学の能力の無さを痛感し ておりました時に、現在のCAE、有限要素法が解析手法として、登場して参りました。車 体の構造解析が出来れば、設計の妥当性が直ぐに確認出来るので、私自身CAEを担当した いと思うようになり、異動の申請を致しました。その後、申請して、2年後に異動が認めら れまして、私は構造解析を担当している実験部に移る事になりました。 5.職場異動の考え方 入社した時に頂きました仕事のやり方を変える事こそ、自分の仕事であると認識を致しま して、そのための技術情報の収集、現状の問題点の把握を、実務を通して行い、技術の新し い展開に遅れないように、職場異動も申請して、会社からの対応もして貰いました。管理職 になるまでに私は設計部、実験部、製品企画部の3部を異動致しましたが、全て自分が将来 何をやりたいか考えた中で、上司に異動のお願いを致しました。その申請が受け入れて頂け た事が本当に有り難い事であったと感謝しておりますが、全ての始まりは、自分の考え方、 申請に在った事を強く感じます。 自分が何をしたいか、どうなりたいか、を一生懸命考えて、その通りになった事が良かっ たのと、そのために逃げ場が無くて、それなりに頑張った事も技術者として、良い仕事を担 当出来たと思っております。新しい仕事をする事は失敗する可能性も高くて、現状の延長上 を希望する技術者がその当時は多かったために、私のような行動が容認されたとも思われま す。 若い技術者が自分は何をするか、分からない時は、与えられた仕事を天命と考えて、一生 懸命対応している中で、自分自身が分かってくるように思います。自分の評価は自分で実施 して、周りの評価にあまりに鋭敏にならない事も必要と思います。 6.若き技術者への期待 現在は大変厳しい時代になり、各社とも効率良い展開をする事が当たり前の時代になり、 私のような失敗経験をする余裕が無い時代ですが、このような時代であるからこそ、自分を 自分で鍛えるように、努力して欲しいと思います。そのためには、自分がある目標を作って、 その目標に向かって、努力する毎日が必要と思います。 一日一日を大切にして、自分として、一日どれほど成長したかを、確認する行動の仕方を 身に付けて下さい。一日一日の積み重ねが将来を決めます。飛躍は無いと考えましょう。一 生懸命目標に向かっている事が目標を達成する条件になります。新しい技術、新しい方法が これからも開発、提案されて参ります。自分の頭で考えて、自分が納得して、自分自身の道 を責任を持って行動して下さい。技術を研いて下さい。 7.管理者への期待 私が現在の仕事をしているのは、入社当時の上司の期待の言葉が大きく影響しております。 学校時代の恩師、職場の色々な上司から沢山のご指導を頂きながら、成長して参りましたが、 若い時代に期待を示された事が、その当時の行動を決めました。若い技術者が自分の進むべ き方向を自分から見つけたような感覚で、仕事に取組めるようにする事が、人材育成にも多 大な効果をあげると私は考えております。管理者の皆様には、意識付けを、意欲を高めるフ ォローの仕方を実行して欲しいと願っております。
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