1 EntryNo. 63 子宮内避妊具から Actinomyces israelii が検出された一例 ◎上岡 奈未 1)、船田 雄太 1) 橋本市民病院 LSI メディエンス検査室 1) 【はじめに】骨盤内腹膜炎と子宮内避妊具(IUD)の関連はよ 扁平上皮 1+と複数菌感染が疑われ BV スコアも 7 と細菌性 く知られている。放線菌が起因菌との報告が多数あるが分 膣症も疑われた。IUD の培養からは S. constellatus, B. 離例は非常に少ない。今回は長期来装着されていた IUD よ thetaiotaomicron, P. micra が優位に検出された。また目的菌 り Streptococcus constellatus, Bacteroides thetaiotaomicron, に放線菌が挙げられており炭酸ガス延長培養 4 日目に羊血 Parvimonas micra と共に Actinomyces israelii が検出された症 液・チョコレート寒天培地より A. israelii が検出された。同 例を報告する。 定は MALDI Biotyper にて良好なスコアであった。嫌気性培 【症例】48 歳 ・女性。平成 27 年 11 月下旬に下腹部痛及 養では他の嫌気性菌にマスクされ A. israelii の分離は困難で び発熱を訴え、近医産婦人科を受診するも経過観察になっ あった。 一般演題 ていた。症状が持続する為、前医を受診。CT にて左卵巣腫 【まとめ】IUD を長期間装着した場合に A. israelii が骨盤内 大を認め骨盤内腹膜炎が疑われ、平成 27 年 12 月 8 日当院 腹膜炎を引き起こすことは知られているが分離例は非常に 紹介受診となった。10 年来使用している IUD が原因による 少ない。本症例では A. israelii 以外の嫌気性菌も感染に関与 骨盤内腹膜炎を疑い、入院当初 CTRX が点滴投与されたが しており嫌気性培養での分離培養は困難であったが炭酸ガ 嫌気性菌主体の炎症と考えられたため ABPC/SBT に変更し、 ス培養の日数を延長することで分離することができた。ま その後軽快退院された。平成 28 年 1 月上旬に骨盤内腹膜炎 た MALDI Biotyper により迅速な同定が可能であった。 が再燃し 1 月 18 日外来受診。17 日間 ABPC/SBT 内服によ 連絡先:0736-34-8568 り改善。現在も外来フォローアップ中である。 【微生物学的検査】IUD のグラム染色ではグラム陽性球菌 2+、グラム陽性桿菌 2+、グラム陰性桿菌 3+、白血球 3+、 2 EntryNo. 77 クリプトコッカス胸膜炎治療中に発症した肺ノカルジア症の一例 ◎黒田 亜里沙 1)、中井 依砂子 1)、森崎 隆裕 1)、幸福 知己 1)、大沼 健一郎 2) 一般財団法人 住友病院 1)、国立大学法人 神戸大学医学部附属病院 2) 【はじめに】Nocardia属は土壌などの自然界に生息する好 【細菌学的検査】喀痰のグラム染色では、多数の好中球に 気性のグラム陽性桿菌である。主に免疫不全患者に対し、 取り囲まれる様に分岐したグラム陽性桿菌をごく少量認め 肺や脳、皮膚などに日和見感染を引き起こす。今回我々は、 た。Ziehl-Neelsen 染色陰性、Kinyoun 染色陽性を確認し、 クリプトコッカス胸膜炎と気管支喘息治療中の患者の喀痰 Nocardia属を疑った。好気培養4日目、血液寒天培地および から、N. asiaticaを検出した症例を経験したので報告する。 BCYE-α寒天培地にシワのある白色のコロニーを認めた。薬 【症例】77歳男性。既往歴は脳梗塞、副鼻腔炎、胸膜炎、 剤感受性試験による簡易同定を実施したところ、IPM、 肺炎。気管支喘息とネフローゼ症候群に対してステロイド TOBに感性、KMに耐性を示したのでN. asteroidesと推定し 治療中であり、7年前より慢性的な胸水を認め、これまでに た。菌種同定を神戸大学医学部附属病院に依頼したところ、 数回胸腔穿刺を実施されていた。20XX年12月に施行された 16S rRNA遺伝子解析によりN. asiaticaと同定された。 胸水培養からCryptococcus neoformansが検出されFLCZで治 【考察】今回クリプトコッカス胸膜炎治療中に発症した肺 療していたが、翌年9月に肺炎と胸水増加の為入院となった。 ノカルジア症という比較的稀な症例を経験した。免疫不全 入院当日に採取された喀痰のグラム染色でノカルジアを疑 患者では多彩な日和見感染を起こし得るので、注意深く検 うグラム陽性桿菌を認め、ST合剤4錠/日の投与が開始され 査を進める必要があると感じた症例であった。 た。一旦軽快傾向となったが食思不振に加えて緑膿菌によ る肺炎を併発した為、10月7日にIPMに変更となった。その 後改善を認め、10月17日にST合剤2錠/日に再び変更し、1月 27日退院となった。 150 連絡先:06-6443-1261(内線 6040) 3 EntryNo. 66 当院で経験した 3 例のノカルジア症について ◎永田 めぐみ 1)、中矢 秀雄 1)、夏目 聖子 1)、澤 夏海 1)、平城 均 1)、横井 豊彦 1) 関西医科大学附属滝井病院 1) 当院入院。一時軽快退院したが、12 月 19 日左大腿部の疼 在するグラム陽性好気性放線菌で、一般に免疫機能の低下 痛が悪化し入院となった。左大腿部穿刺液より した患者に種々の感染症を引き起こす。今回、当院で経験 N. farcinica を検出した。IPM/CS+AMK で治療開始となり、 した 3 例のノカルジア感染症について報告する。 現在も継続加療中である。 【症例 1】70 代男性。既往歴:特になし。現病歴:2014 年 【細菌学的検査】3 例ともグラム染色にて Nocardia を疑う 2 月 12 日近医にて血尿・蛋白尿を指摘され当院に入院。急 分岐したグラム陽性桿菌を認めた。Kinyoun 染色にて弱抗 速進行性糸球体腎炎の診断にてステロイド治療が開始され 酸性を確認し、臨床へ報告を行った。37℃、5%炭酸ガス培 た。その後 3 月 31 日左顔面に発赤、腫脹、排膿を認め、 養にて、培養 2 日目以降に血液寒天培地に Nocardia を疑う CTRX、CLDM が処方された。膿培養より N. brasiliensis を コロニーを確認、IPM、KM、TOB の薬剤感受性試験と 検出、ABPC/SBT へ変更され、5 月 30 日に軽快退院となっ た。【症例 2】80 代男性。既往歴:大腸癌、肺非結核性抗 45℃での発育性によって簡易同定を行った。 【まとめ】いずれもグラム染色にて早期に Nocardia の関与 酸菌症。現病歴:2015 年 4 月 25 日より咳、痰が持続し、 が疑われることを臨床へ報告することができた。 近医を受診。肺炎の診断にて LVFX が処方された。5 月 Nocardia 属菌は通常の細菌に比較して発育が遅いため検出 7 日に肺炎の悪化により当院入院となり、痰培養より N. には注意が必要である。グラム染色で見逃さないことが迅 asteroides を検出した。IPM/CS+ST 合剤が処方され、7 月 速な治療へつながることが再認識できた。 8 日に軽快退院となった。【症例 3】60 代男性。既往歴: 最後に菌株を精査頂きました千葉大学真菌医学研究センタ 関節リウマチ。現病歴:近医にて左下肺野の肺炎を指摘さ ーの亀井克彦先生に深謝致します。 れ CAM を処方されたが症状が改善せず 2014 年 11 月 27 日 連絡先:06-6992-1001(内線 3120) 4 一般演題 【はじめに】Nocardia 属菌は土壌や水など自然界に広く存 EntryNo. 72 舌癌患者から検出した Trichosporon asahii による深在性真菌症の 1 例 ◎前田 和樹 1)、大友 志伸 1)、江後 京子 1)、小原 和子 1)、村瀬 幸生 1) パナソニック健康保険組合 松下記念病院 1) 【はじめに】Trichosporon sp.は Cryptococcus sp.と並び担子 様真菌と報告し、抗真菌薬である MCFG の投与が 4 日間行 菌系酵母に分類され、キャンディ系抗真菌薬である MCFG われたが症状の改善が認められなかった。その後に採取さ や CPFG による効果が期待できずブレイクスルーを起こす れた血液培養からも本菌が検出され、ブレイクスルーであ 代表的な菌種として知られている。本菌の症例報告の多く ることが強く疑われた。最終的に菌種同定し、T.asahii と臨 は血液疾患患者や化学療法中の患者での発症が多い。感染 床へ報告できたのは初回の血液培養が陽性となって 4 日後 が成立すると血行性に全身の臓器へ伝播される。そのため、 であった。その後、MCFG から VRCZ へと変更後され本菌 死亡率が Candida sp.や Aspergillus sp.と比較して高く、70~ 種の検出はなくなった。 80%との報告もあり予後が極めて不良な深在性真菌症であ る。今回我々は、MCFG によるブレイクスルーを経験した 【まとめ】一般病院では、真菌の同定検査には血液培養陽 ので報告する。 性後から最短でも 3~4 日の期間を要する。血液培養から酵 母様真菌を検出した際に MCFG が投与される頻度は高く、 【症例】74 歳、男性。既往歴は喘息、舌癌、誤嚥性肺炎。 早急な菌種同定と各種ガイドラインで推奨される VRCZ の 現病歴は舌癌の再発と診断され化学療法中の患者であった。 投与が望まれる。検出早期に本菌を推定するためには、 血液培養からは T.asahii の他に Staphylococcus epidermidis まず形態学的に Candida sp.と区別し、さらに類似した分節 や Fusobacterium varium が検出されており、感染源は舌癌 型分生子を産生する Geotrichum sp.などと鑑別する必要が により一部切除された口腔内であると考えられた。発熱に ある。発表では本症例の反省点を踏まえ、形態やコロニー よって、敗血症を疑い血液培養が施行され、翌日に好気ボ 性状の特徴について報告する。 トルが 2 セット陽性となった。グラム染色の形態から酵母 06-6992-1231 内線(3228) 151 5 EntryNo. 26 肺腺癌術後に合併した Aspergillus nidulans による肺膿気胸の一例 ◎佐子 肇 1)、齋藤 晴子 1)、吉川 裕之 1)、大江 則彰 1) 独立行政法人 国立病院機構 刀根山病院 1) 一般演題 【はじめに】肺アスペルギルス症は近年増加傾向にあり、 胸も出現し、低酸素状態から 8 月 15 日心肺停止による悪化 起因菌の多くは Aspergillus fumigatus 次いで A.niger および を認め永眠された。【考察】本症例に最も特徴的であった A.terreus である。今回我々は肺腺癌術後に合併した のは左胸腔膿瘍および喀痰から、極まれな A.nidulans を分 A.nidulans によるアスペルギルス膿気胸の一例を経験したの 離したことである。本菌は通常の環境下で肺内の定着など で報告する。【症例】患者は 75 歳、男性、喫煙歴 20~ が考えられるが、先行疾患として肺癌の術後歴があり嚢胞 50 歳まで 100 本/日(BI:3000)。腹部大動脈瘤のフォロー中 性変化により感染が拡大したと考えられた。本症例は全身 に胸部 CT で、肺陰影を指摘された。2004 年に肺腺癌(Stage 性の免疫能低下として高齢、糖尿病、慢性腎臓病、間質性 IB)のため左下葉を切除し 2014 年で外科フォローを終了し 肺炎があり左肺胸部の感染防御能低下状態に肺アスペルギ たが、2013 年 5 月頃から肺線維化の進行を認めた。間質の ルス症が続発したと考えられた。本菌の同定は、ポテト・ 陰影は軽度で、術後の悪化傾向を認め対側にも進行してい デキストロース寒天培地を用いた培養過程でのコロニーの た。2015 年 2 月に労作時呼吸困難(MRC4)が緩徐進行し、 発育速度および色調、形態学的性状として分生子柄の長さ、 5 月頃から発熱および咳嗽を認め、6 月に左肺炎を指摘され 分生子柄基部が L 字形に曲がる足細胞およびヒューレ細胞 当院再入院。左肺の嚢胞性変化が強く、内部に一部球菌様 (厚膜細胞)が決めてとなった。抗真菌薬感受性は ASTY(極 所見もあり、ロセフィン投与を開始したが、気胸を認めた 東製薬)を応用したところ、ITCZ の MIC は 0.125μg/ml の ためオメガシンに変更。6 月 9 日に左胸腔ドレナージ開始 感受性域であった。血清診断ではアスペルギルス GM 抗原 し、7 月 3 日に開窓術施行した。提出された左胸腔膿瘍お 2.2(+)、β-D-グルカン 44.7pg/ml、CRP3.43mg/dl の上昇から よび喀痰の細菌培養から A.nidulans を検出した。治療はイ 起因性が強く疑われた症例と考えられた。 トラコナゾール(ITCZ)経口投与を開始した。しかし右肺気 連絡先:06-6857-4488 内(2265) 6 EntryNo. 59 両側眼窩先端症候群を来した副鼻腔真菌症の一例 ◎竹川 啓史 1)、奈須 聖子 1)、内藤 拓也 1)、仁木 真理恵 1)、野村 菜美子 1)、野上 美由紀 1)、﨑園 賢治 1)、老田 達雄 1) 独立行政法人 神戸市民病院機構 神戸市立医療センター 中央市民病院 1) 【はじめに】副鼻腔真菌症の中には、病変が眼窩や頭蓋内 【微生物学的検査】生検時に採取された検体を、サブロー に急速に浸潤するものがあることが知られている。今回 デキストロース寒天培地を用い 25℃で培養を実施した。同 我々は、Scedosporium boydii による副鼻腔真菌症から眼窩 時に検体から抽出した DNA を用いた ITS 領域の PCR、増 先端症候群を来したと考えられる症例を経験したので報告 幅産物の塩基配列解析、BLAST 検索を行い S. boydii と同定 する。 された。培養 5 日目に白色の綿毛状コロニーが確認され、 【症例】60 歳男性。平成 2X 年 12 月から頭痛を認め、前医 コロニーの掻取り標本で隔壁のある菌糸、分生子柄の先端 で鼻中隔膿瘍として手術を含めた入院加療をするも増悪。 に 1 個~少数の分生子が形成されていた。分生子は基部が 平成 2X 年 3 月 3 日に精査、加療目的で同日当院転院とな 切断されたような形で、褐色から黒褐色を呈した卵円形で った。入院時の CT で副鼻腔真菌症が疑われ、L-AMB が投 与された。2 日後に鼻内内視鏡下生検が行われ、左上顎洞 あり、S. boydii と推定された。分離菌の MIC(μg/ml)は、 CLSI M38-A2 に準拠し、AMPH-B:4, 5-FC:>64, FLCZ:32, 内に真菌塊、前頭蓋底に膿汁を認め付近の軟部組織ととも MCZ:1, MCFG:>16, ITCZ:1, VRCZ:0.5 であった。 に培養検査に提出され、培養検査と並行して遺伝子検査が 【考察】 起因菌が S. boydii であることが判明したことで、 実施された。6 日目に真菌塊、生検材料の遺伝子検査で S. 適切な抗真菌薬治療と外科的処置が実施された。近年では boydii を検出し L-AMB が中止となり VRCZ が投与された。 Scedosporium spp.による新興真菌感染症も増加しており、適 10 日目に歯齦部切開、開頭によるデブリードメントが行わ 切な真菌検査が必要と考えられる。 れ VRCZ 投与は継続された。徐々に頭痛、嘔気が軽快して 連絡先 078-302-4321 内線 3574 きたため、4 月 10 日点滴による加療は中止され VRCZ 内服 へ変更され、4 月 13 日リハビリ目的で前医に転院となった。 152 7 EntryNo. 8 当院における抗酸菌培養の現状 ◎吉田 未来 1)、伊藤友里 1) 社会医療法人 愛仁会 千船病院 1) 中 391 件、40.7%であり、小川培地のみの依頼が 556 件、 57.9%とまだまだ多くを占めていた。培養陽性判定となっ 市では 36.8 と 2 倍以上も高い状況にある。そのため大阪市 たものは全依頼中 79 件、8.2%で、併用依頼 391 件中では では、H23 年度からの 10 年間で大阪市の結核罹患率を半減 30 件あった。そのうち小川培地で陽性を示したものは させる「第 2 次大阪市結核対策基本指針」を策定し、抗酸 16 件あり陽性率は 4.1%、感度は 53.3%、液体培地で陽性 菌陽性患者の早期発見を求めている。当院でも少しでも早 を示したものは 27 件で陽性率は 6.9%、感度は 90.0%であ く結果返却が行えるように 2014 年度より抗酸菌培養検査に った。また、陽性判定に要した平均日数は小川培地で 33 日、 おいて MIGIT 法(液体培地)の導入を行ってきたが、小川 液体培地で 16 日であった。 培地のみの依頼が多く液体培地を併用した依頼はあまりさ 【考察】陽性率、所要日数、感度ともに液体培地が優れて れていない。そのため、当院としても臨床側に液体培地の おり、液体培地の有用性が期待できる結果となった。しか 有用性を示し、併用依頼がより迅速かつ感度の向上に繋が し、併用依頼の培養陽性検体 30 件中 3 件は小川培地のみで っているかを調査した。 陽性となっていること、また、液体培地では菌種の同定は 【対象】2014 年 4 月から 2015 年 10 月までの抗酸菌培養の できないこともあり小川培地との併用は必要であると考え 全依頼 961 件及び液体培地と小川培地を併用した抗酸菌依 る。現在当院では、小川培地と液体培地を自由に選択依頼 頼 391 件を対象とした。 できるようにしているが、併用率は低い。今回の結果より、 【方法】小川培地と液体培地の併用率、それぞれにおける 今後我々は、抗酸菌培養をより迅速に高感度に結果報告す 陽性になるまでの所要日数及び陽性率・感度を調査した。 るために、小川培地と液体培地の併用依頼の推進に努めて 【結果】小川培地と液体培地の併用率は全依頼数 961 検体 いきたいと考える。(連絡先:06-6471-9541) 8 EntryNo. 39 非結核性抗酸菌の薬剤感受性結果について ◎松本 朋子 1)、藤江 茂人 1)、橘 美希 1)、島田 一彦 1)、吉田 弘之 2) 株式会社 兵庫県臨床検査研究所 1)、国立大学法人 神戸大学医学部附属病院 2) 【はじめに】 【結果】 非結核性抗酸菌(Non tuberculous mycobacteria:NTM)症は M.avium の感受性率(株数)は、SM 4%(2)、EB 0% 近年増加傾向であり、中でも肺 Mycobacterium avium (0)、KM 4%(2)、RFP 60%(34)、LVFX 53%(30)、 complex(MAC)症は難治例や再発例も認められる感染症 CAM 100%(57)、TH 2%(1)、AMK 4%(2)であった。 である。肺 MAC 症の治療効果を推測できる薬剤感受性検 M.intracellulare の感受性率(株数)は、SM 90%(19)、 査は、クラリスロマイシン(CAM)を除き確立されていな EB 29%(6)、KM 29%(6)、RFP 100%(21)、LVFX いのが現状であるが、検査センターにオーダーされ実施さ 90%(19)、CAM 95%(20)、TH 0%(0)、AMK 71% れる抗酸菌薬剤感受性検査は NTM でも抗結核薬の結果が (15)であった。また、以前は近隣の施設から抗酸菌の薬 返却されるケースもあり問題となっている。今回我々は、 剤感受性結果に CAM が無い、結果が全て耐性で困ってい 社内検査に NTM の薬剤感受性試験を導入し、その後の結 るなどの問い合わせが多く、外部委託先の臨床に沿わない 果をまとめたので報告する。また、実際に問い合わせの多 対応の問題点が明らかになった。依頼重視の外注業務のあ い、外部委託の問題点も合わせて報告する。 り方を考えさせられるものであった。 【対象および方法】 【考察】 2014 年 4 月から 2016 年 1 月までに薬剤感受性試験の依頼 NTM 症の治療には CAM、RFP、EB などが使用されている。 があった M.avium 57 株、M.intracellulare 21 株を対象とした。 今回の結果から CAM の感受性結果はほぼ良好であったが 薬剤感受性試験はブロスミック NTM(極東製薬工業株式会 RFP や EB では菌種により耐性の場合も多く、今後の動向 社)を使用し、判定基準は添付の参考判定カテゴリーを用 を注視する必要があると考える。 いた。 連絡先 079-267-1251 153 一般演題 【はじめに】日本の結核罹患率(人口 10 万人対の新登録結 核患者数)は、H26 年度において 15.4 であるのに対し、大阪 9 EntryNo. 99 第一種感染症指定医療機関における感染症対応病棟検査室の運用 ◎山田 幸司 1)、奥村 敬太 1)、今西 唯 1)、大長 洋臣 1)、谷野 洋子 1)、井上 弘史 1)、由木 洋一 1)、小森 敏明 1) 京都府立医科大学附属病院 1) 【背景】2014 年に西アフリカでのエボラ出血熱の爆発的な に1回程度着脱トレーニングをおこなった。 流行があり、本邦においても疑似症例の発生があった。当 【問題点】機器のメンテナンスに費やす労力は少ないが、 院は第一種感染症指定医療機関であり、第一種感染症に対 試薬交換時のコストが大きな負担となっている。特に血液 応するため 2014 年 11 月に感染症対応病棟の病室の 1 室を ガスの電極や溶液は、使用頻度に関わらず定期的に交換が 感染病棟検査室として運用を開始した。運用開始後から検 必要である。また、防護具の着脱は対象スタッフ全員が毎 査機器のメンテナンスなどのハード面の維持と、対象スタ 月トレーニングできるわけではなく、安全な脱衣のレベル ッフに対する防護具着脱訓練等の訓練を 1 年間継続して実 を維持することが困難であった。 施したので報告する。 【改善点】血液ガスに関しては、機器内の溶液を抜き、休 【検査機器】感染症対応病棟の陰圧管理された病室に安全 止状態にすることでコストを 1/4 に抑えることが可能であ キャビネットを設置した。キャビネット内に、生化学:ド る。防護具の着脱トレーニングは 2 名 1 組のバディ制にし、 ライケム 7000Z(フジフィルム)、血球計数:Microsemi 着脱トレーニングの指導を受けた 2 名が翌月には指導役に LC-661(HORIBA)、凝固検査:CG02N(A&T)、線溶 なることで個人の着脱レベル維持に繋がっている。 系:cobas h232(ロッシュ)、血液ガス:ABL80(ラジオメ 連絡先:075-251-5654 一般演題 ーター)を配置し、定期的なメンテナンスと測定トレーニ ングを実施した。 【防護具の装備】防護具装備は 2 パターンに分け、検査担 当者はフル装備、介助者は基本装備とした。着衣時の相互 チェック、脱衣時の介助手順マニュアルを作成し、1 カ月 10 EntryNo. 82 Helicobacter cinaedi の薬剤感受性に関する検討 ◎佐々木 千鶴 1)、太田 亜紀子 1)、小林 悦子 1)、飛田 征男 2)、川端 直樹 3)、水野 幸惠 1) 福井県立病院 1)、福井大学医学部附属病院 2)、市立敦賀病院 3) 【はじめに】Helicobacter cinaedi はヒトの腸管に棲息す 菌株で目視判定可能な十分な発育が認められた。感受性結 るグラム陰性のらせん状桿菌である。近年血液培養からの 果はペニシリン系、マクロライド系、キノロン系薬剤にお 分離報告が増加し、抗癌剤治療中や透析中等の易感染患者 いて高い MIC を示し、カルバペネム系、テトラサイクリン のみならず免疫正常者からの分離報告まで散見される。本 系、アミノグリコシド系薬剤では低い MIC が得られた。セ 菌は発育が遅く、分離・培養が困難な例も多い。薬剤感受 フェム系薬剤では第 3 世代に比べ第 4 世代の CFPM の MIC が 性は比較的良好とされているが、薬剤感受性試験の方法に 低い傾向にあった。また、MIC と MBC で著しく乖離した薬 ついての規定はなく、遊走性が強いためディスク等での判 剤は認められなかったが、多くの薬剤で MBC が 1 管程度高 定も困難である。今回、本菌の薬剤感受性試験方法と薬剤 い値を示した。【考察】今回実施した薬剤感受性試験方法 感受性の傾向について検討を行ったので報告する。【対象】 は簡便で良好な発育が認められ、各薬剤の MIC を推定でき 当院で保存していた由来の異なる H.cinaedi た。測定菌株数を増やし、薬剤の測定濃度範囲を広げて検 6 株を対象と した。【方法】感受性測定にはドライプレート栄研(DP31、 討を行う必要があるが、今回の検討で得られた成績は DP34)を用い、液体培地はストレプト・ヘモサプリメント栄 Tomida らの改良レビンタール培地を用いた方法(Microbiol 研を添加したミューラーヒントンブイヨンを使用した。 Immunol.2013)と類似した傾向であった。現在 H.cinaedi の 35℃微好気環境で 72 時間培養後、最小発育阻止濃度 感受性は多くの薬剤で比較的良好と言われているが、いく (MIC)を目視にて判定した。また MIC 以上のウェルより菌液 つかの薬剤において耐性傾向にあることが示唆され、薬剤 の一部をヒツジ血液寒天培地(極東製薬)に接種し 35℃微好 感受性試験に関する規定やブレイクポイント等が設定され 気環境で 72 時間培養後、発育の有無を確認し最小殺菌濃度 ることが望まれる。 (MBC)とした。【結果】今回実施した測定方法は、すべての 154 連絡先:0776-54-5151(内線 2619) 11 EntryNo. 34 過去 5 年間の Salmonella spp.におけるナリジクス酸耐性及び ESBL の年次別推移 ◎平田 舞花 1)、岡本 咲季 1)、藤川 康則 1) 大阪市立総合医療センター 医療技術部 1) 【はじめに】Salmonella spp.のフルオロキノロン系低感受性 採用した場合ではフルオロキノロン系に対する感受性は全 や ESBL など、耐性菌の増加は近年臨床上問題となってお てが中間又は耐性と判定された。また、NA 感性株のうち り、CLSI M100-S23(以下 S23)ではチフス菌および腸管外 13 株は中間耐性と判定された。ESBL スクリーニング陽性 Salmonella のフルオロキノロン系に対する判定基準が引き 株については 2011 年から順に 0%(0/26)、4%(1/21)、 下げられた。今回、当院で分離された Salmonella spp.を対 0%(0/20)、7%(2/26)、13%(3/22)の計 5.2%(6/115)だった。内 象にフルオロキノロン系に対する薬剤感受性結果の動向と 訳については ESBL 産生 4 株、AmpC 産生 1 株 、ESBL 及 ESBL について調査したので報告する。 び AmpC 産生は 1 株だった。うち、1 株については ESBL 【対象】2011 年 1 月~2015 年 12 月に大阪市立総合医療セ かつ NA 耐性を併せ持つ株だった。 ンター、十三市民病院、住吉市民病院で血液及び糞便から 【考察】チフス菌及び腸管外 Salmonella に対しての薬剤感 分離された Salmonella spp.115 株。 受性試験の実施は NA スクリーニング試験だけでなく、低 【方法】自動分析装置(マイクロスキャン WalkAway96、 濃度域におけるフルオロキノロン系の MIC 値測定が必要と Neg シリーズ)に加えて、当院仕様の MIC プレート(極東)で 示唆された。また、ESBL スクリーニング陽性株の年次別 NA 及びフルオロキノロン系などの MIC 値を測定した。 推移は年々増加傾向が見られ、ESBL かつ NA 耐性を併せ 持つ株も 1 株検出した事から、今後耐性菌の出現動向を注 視していく必要があるといえる。 ディスク(栄研化学)、ESBL/AmpC 鑑別ディスク(関東化学)] 連絡先:06-6929-3418 一般演題 ESBL 産生株については CLSI の基準に従いスクリーニング を実施し、陽性株については ESBL 確認試験[ESBLs 確認用 を実施した。 【結果】NA 耐性株は 17 株(14.7%)あり、S23 の判定基準を 12 EntryNo. 103 MALDI-TOF と薬剤耐性遺伝子の同時解析による薬剤耐性菌迅速報告の試み ◎大沼 健一郎 1)、中村 竜也 1)、矢野 美由紀 1)、楠木 まり 1)、吉田 弘之 1)、中村 正邦 1)、林 伸英 1)、三枝 淳 1) 国立大学法人 神戸大学医学部附属病院 1) 【目的】当院では MALDI-TOF MS (Bruker 社、以下 MALDI)を使用し、血液培養陽性検体の培養液から直 接菌種同定を行っている。しかし、薬剤感受性結果 や耐性因子の有無については翌日以降の報告であり、 MALDI による迅速同定が十分に活用されていない。 今回、MALDI 解析用の前処理後の菌液を用いて、 mecA 遺伝子、nuc 遺伝子および基質拡張型 β ラク タマーゼ(ESBL)をコードする CTX-M 遺伝子を検出 し、MRSA および ESBL 産生菌の迅速報告の可能性に ついて検討した。 【方法】 2014 年 12 月から 2016 年 2 月までに血液 培養陽性となった 158 検体(グラム陽性球菌 n=105、 グラム陰性菌 n=53)を用いた。培養ボトルは BacT/Alert (ビオメリュー社) を使用し、前処理に は MALDI Sepsityper kit(Bruker 社)を用いた。菌 種同定は MALDI にて行い、薬剤感受性は Walk Away 96plus(ベックマンコールター社)にて測定した。 ESBL 産生確認はダブルディスクシナジー法により行 った。前処理後の菌液を4℃で保存後、DEPC 水で 20 倍希釈し遺伝子検査の検体とした。遺伝子検出に は全自動遺伝子解析装置 GENECUBE(東洋紡社)を使用 した。mecA、nuc、CTX-M 遺伝子の有無を、菌種同定 および薬剤感受性結果と比較した。 【成績】mecA 遺伝子の有無とセフォキシチンもしく はオキサシリン感受性の一致率は 105/105 (100%)で あった。nuc 遺伝子と同定結果の一致率は 102/105 (97.1%)であった。nuc 遺伝子と同定結果が不一致で 2 株と S.epidermidis あったものは、S.hominis 1 株であった。CTX-M 遺伝子と ESBL 産生の一致率は 53/53(100%)であった。 【結論】MALDI 前処理後の菌液から mecA、nuc 遺伝 子および CTX-M 遺伝子を精度よく検出できた。 MRSA や ESBL 産生菌の迅速報告に有用であり、治療 や感染対策に貢献できる可能性が示唆された。 連絡先:078-382-6327 155 13 EntryNo. 50 母体を救命し得た劇症型溶血性レンサ球菌感染症(分娩型)の1症例 ◎杉野 翔太 1)、中本 博道 1)、川口 浩一 1)、鈴木 恭子 1)、玉置 達紀 1)、宮本一雄 1)、尾﨑敬 1) 紀南病院 1) 【はじめに】劇症型溶血性レンサ球菌感染症は5類感染症 【細菌学的検査】入院時の羊水、便培養からは病原菌を認 で、年間 100~200 例の報告がある。その中で分娩型の発生 めず、血液培養ボトルよりグラム陽性のレンサ球菌が検出 頻度は稀であるが、発症すると激烈な経過を辿り高い致死 された。羊血液寒天培地で β 溶血を示すコロニーが発育し、 率を示す。今回我々は、母体を救命し得た分娩型の劇症型 レンサ球菌抗原キット(イワキ)で A 群凝集、 一般演題 溶血性レンサ球菌感染症の1症例を経験したので報告する。 VITEK2(シスメックス)で Streptococcus pyogenes と同定さ 【症例】33 歳女性、妊婦。【既往歴】経妊経産を1回。 れた。後日、菌株の遺伝子検査を国立感染症研究所へ依頼 【主訴】悪寒、発熱、下腹部痛。【現病歴】来院1週間前 したところ、血清型は T1、M1 型、発熱毒素遺伝子は に 39 度の発熱を認めるが、一晩で解熱し咽頭痛が発生して speA、B、F が陽性、speC が陰性であった。【考察】分娩 いた。来院当日に再度発熱を認め、在胎 39 週で当院受診。 型の劇症型溶血性レンサ球菌感染症は母児ともに 50%前後 【来院時検査結果】WBC 9400/μl、CRP 2.97 mg/dl。胎児心 の致死率に達する。本症例は、早期に抗菌薬や γ グロブリ 拍 160bpm。【経過】発熱より尿路感染症等を疑い ABP ン製剤が投与され、血液透析も導入したことが母体救命に C が投与され入院となった。数時間後、自然分娩に至った 繋がったと考える。本病態は初期症状に咽頭痛や発熱など が、羊水は泥状に混濁し娩出後に自己心拍を認めず死産で を認めることが多い。特に妊娠後期の検査で溶血性レンサ あった。分娩後、血圧が 84/42mmHg に低下しショック状態 球菌が検出された場合、分娩型の劇症型溶血性レンサ球菌 となり、DIC と急性腎不全も発症。敗血症性ショックと診 感染症に留意し早急な結果報告の必要がある。 断され血液培養が採取された。治療として MEPM 【謝辞】菌株の解析をしていただきました国立感染症研究 、γ グ ロブリン製剤等が投与され、持続血液透析も開始された。 所 池辺忠義先生に深謝いたします。 連絡先:0739-22-5000(内線 2211) 患者の容態は徐々に回復し、産褥8日目に退院となった。 14 EntryNo. 67 Clostridium difficile 感染症診断における toxin B 遺伝子測定の有用性 ◎小川 将史 1)、奥田 和之 1)、笠井 香里 1)、西本 瑛紀子 1)、東 良子 1)、香田 祐樹 1)、角坂 芳彦 1)、蔦 幸治 2) 関西医科大学附属枚方病院 臨床検査部 1)、関西医科大学 病態検査学講座 2) 【はじめに】Clostridium difficile(CD)は抗菌薬関連下痢症の 【結果】 対象患者のうち、CD トキシン陽性は 33 名、CD 主な原因菌であり、その診断には毒素の検出が重要である。 トキシン陰性・遺伝子陽性は 67 名、どちらも陰性は 54 名 イムノクロマトグラフ(IM)法による毒素の検出は迅速かつ であった。遺伝子陽性患者のうち臨床症状より CDI と考え 簡便であるが、標準検査法である細胞毒性試験と比較して られ、治療のため抗菌薬が投与されたのは 8 名で、内訳は 感度が劣るため、当検査部では IM 法が陰性であっても、 MNZ と VCM が各 4 名であった。また、遺伝子が陽性であ 培養で菌の発育が認められた場合には real time PCR 法を用 った 67 名のうち、2 名は後に採取された便で CD トキシン いてコロニーより直接 toxin B 遺伝子の有無の検索を行って が陽性となった。 いる。今回、IM 法陰性かつ遺伝子検査陽性であった患者に 【考察】 CD は感染対策上重要な菌に位置付けられており、 ついて調査し、若干の知見を得たので報告する。 迅速な対応が必要と考える。今回の調査により、CD トキ 【対象及び方法】2013 年 1 月~2015 年 12 月の期間中に シンのみでなく毒素遺伝子の検索結果についても報告する Clostridium difficile 感染症(CDI) 診断目的で CD トキシンの ことで、適切な CDI の診断に貢献できると思われる。しか 検査依頼があり、培養により CD の発育を認めた当院入院 し一方で、臨床医からの検査結果の解釈に関する医師から 患者 154 名を対象とした。IM 法は C.DFF QUICK CHEK コ の問い合わせもあることから、臨床側と積極的にコミュニ ンプリート(アリーアメディカル株式会社) 、real time PCR ケーションを図りながら検査報告する必要がある。 法は KATO らの報告によるプライマー(NK104,NK105)を用 (連絡先 072-804-0101) いライトサイクラー(ロシュ・ダイアグノスティックス株式 会社)で行った。培養には CCMA 培地(日水製薬)を用い 48~96 時間嫌気条件で培養した。 156 15 EntryNo. 86 迅速検査における Clostridium difficile 毒素陰性時の検査対応と報告方法 ◎谷野 洋子 1)、児玉 真衣 2)、山田 幸司 1)、木村 武史 1)、小森 敏明 1)、藤友 結実子 2)、中西 雅樹 2)、藤田 直久 2) 京都府立医科大学附属病院 臨床検査部 1)、京都府立医科大学附属病院 感染症科 2) 【はじめに】 Clostridium difficile 感染症(CDI)の検査とし 中止したのは 2 症例のみであった。一方、TC 結果報告後に て、便検体から直接 EIA 法が一般的に用いられているが、 抗菌薬投与開始もしくは治療が行われなかった 25 症例のう 毒素検出の感度が低いことが課題であった。当検査室では ち、TC による毒素陽性は 12 症例、陰性は 13 症例であった。 2014 年 5 月より glutamate dehydrogenase(GDH)陽性、toxin TC を実施した場合の検体受付から最終報告までの検査所要 A/B 陰性の検体については培養行い(toxigenic culture:TC)、 時間は約 5 日間であった。 発育コロニーより毒素産生の確認を実施している。今回、 【考察】 迅速検査にて GDH 陽性、toxin A/B 陰性であっ 2014 年 5 月~2015 年 12 月の間、当検査室に提出された た症例の 53%が TC にて毒素陽性となったことから、TC の CD トキシン迅速検査検体のうち、C.DIFF QUIK CHEK コ 実施は毒素検出率の向上という面で一定の効果を上げてい ると考えられる。しかし、TC は菌の培養を行うため結果報 A/B 陰性となり TC を実施した 46 症例を調査対象とし、 告までに時間がかかり、TC の結果が判明する前に治療のた TC 実施による治療方針への影響、毒素検出数と検査所要時 めの抗菌薬が投与されている症例が約 42%存在した。 間を調査したので報告する。 TC にて毒素が陽性となった場合は主治医に連絡するなどの 【調査結果】 46 症例中、TC 結果報告前に CDI に対する 対応を行っているが、陰性の場合は特に対応は行っておら 抗菌薬投与(VCM、MNZ)が開始されていたものは 21 症例 ず、不適切治療につながる可能性がある。今後、毒素陽性 であった。この中で TC によって毒素陽性が確認できたの 患者への対応のみならず、治療中止の指標として陰性患者 は 12 症例、陰性は 7 症例、菌の発育が認められず検査を実 への介入も視野に入れる必要があると考えられた。 施できなかったものが 2 症例あった。毒素陰性であった (連絡先:075-251-5654) 一般演題 ンプリート(アリーアメディカル)にて GDH 陽性、toxin 7 症例の抗菌薬使用中止について調査したところ、治療を 16 EntryNo. 24 Roseomonas mucosa によるカテーテル関連菌血症および化膿性脊椎炎の 1 症例 ◎池町 真実 1)、山本 剛 1)、前田 義久 1) 西神戸医療センター 1) 【はじめに】Roseomonas 属は,自然環境中に生息するブドウ 血液加寒天培地上に白色の小集落が発育し,培養 2 日後には 糖非発酵性グラム陰性桿菌であり,免疫不全者において,敗血 ムコイド状のピンク色コロニーを MicroScanNENC1J を用い 症や呼吸器感染症,骨軟部組織感染症,などの報告例があるが, 同定したが,菌名の同定はつかなかった,後日 MALDI-TOF 本邦では稀少である.発育が緩慢で自動機器での同定が困難 MS を行ったところ,Score Value 2.42 で R. mucosa と同定さ で正確な同定結果を得るには他の同定検査が必要になる.今 れ,16s- rRNA にて R. mucosa と同定した.薬剤感受性はオプ 回我々は, Roseomonas mucosa によるカテーテル関連菌血症 トパネル MP(極東)で測定し,カルバペネムを含む β-ラクタ 及び化膿性脊椎炎の 1 症例を経験したので報告する. ム系薬はすべて耐性で,AMK,LVFX および MINO は感受性 【症例】61 歳,男性.既往歴:アルコール性肝硬変,アルコール を示した.【考察】 R. mucosa 感染症は,感染源として中心静 依存症,HCC.現病歴:20XX 年 1 月より腰痛認め他院受診.坐 脈カテーテルとの関連が指摘されているおり,今回の症例も 骨神経痛と診断され,脊柱ブロック注射施行した. 中心静脈カテーテルが感染源となり菌血症を起こしたと考 入院日当 日朝に腰痛,両下肢のしびれ,食欲低下が認めたため,午前中 えられる.自動同定機器では同定ができなかったが,コロニー に当院整形外科受診し精査加療を目的に入院となった.入院 の性状や発育時間から, R. mucosa を疑い,早急な対応と治療 時身体所見及び検査所見:体温 36.9℃,WBC 0.9mg/dL, 5800/μl, CRP MRI 検査で脊椎炎を疑い,中心静脈カテーテルの 方針の決定に役立った.【まとめ】 R. mucosa によるカテー テル関連菌血症および化膿性脊椎炎を起こした希少な症例 留置及び肝性脳症もあるため CTRX+LVFX で治療を開始 を経験した.今回のように従来法では同定困難な菌種におい した.【細菌学的所見】血液培養が 99 時間後に 2 セット中 ては,質量分析装置の普及により正確で迅速な結果報告が可 1 セット(好気)で陽性となり,グラム陰性小桿菌が検出され 能となると考える. た.37℃,7%CO2 条件下で 24 時間培養したところ,5%ヒツジ 連絡先-078-997-2200 157 17 EntryNo. 18 Bordetella holmesii による化膿性関節炎、蜂窩織炎、菌血症の一症例 ◎江上 和紗 1)、水谷 文子 1)、大沼 健一郎 2)、山本 剛 3)、中村 竜也 2) 地方独立行政法人 神戸市民病院機構 神戸市立医療センター西市民病院 1)、国立大学法人 神戸大学医学部附属病院 2)、西神戸医 療センター 3) 【はじめに】Bordetella holmesii は易感染性宿主において菌 定されたが、形態学的に誤同定を疑い、精査を神戸大学へ 血症.感染性心内膜炎.百日咳様の呼吸器感染症などを起こす 依頼し質量分析機器にて Score Value 2.216 で B. holmesii と ことが知られている。近年、健常人では化膿性関節炎の報 同定された。 告例もある。本菌は自動同定機器で同定が困難であるが、 【経過】初診時に CEZ 2g/日×2 回および CCL 500mg×3 一般演題 コロニー性状などで菌種推定を行い、質量分析法や遺伝子 回/日, 6 日間投与を行ったところ、症状の改善と炎症反応の 検査を用いることで菌種同定ができる。今回、我々は基礎 陰性化(WBC 10,720/μL. CRP 0.1mg/dL)を認めた。左足外 疾患のない成人で B. holmesii による化膿性関節炎と蜂窩織 果蜂窩織炎及び左足化膿性関節炎と診断し終診となった。 炎を伴う菌血症例を経験したので報告する。 【考察及びまとめ】今回、我々は B. holmesii による菌血症 【症例】患者は 40 代、女性。X-1 日昼頃から左足外果周囲 および化膿性関節炎を発症した希少な症例を経験した。本 に発赤.腫脹.熱感および圧痛を認め、受診日午後に症状が悪 菌は自動機器で同定した場合 A. lwoffii と誤同定されたとい 化したため当院救急外来を受診。来院時の検査所見で WBC う報告もある。菌の形態やコロニー性状および生化学的性 15,000/μL.CRP 1.1mg/dL と高値であり、蜂窩織炎と化膿性 関節炎を疑い精査加療となった。 状の確認を行い、必要に応じて質量分析法による同定や遺 【細菌学的検査】血液培養は 66.5 時間と 71.2 時間後に好気 適切な治療に繋がると考える。 伝子検査を行うことにより正確な同定が行うことができ、 連絡先:078-576-5251 ボトル2本が陽性となり、グラム陰性桿菌を認めた。羊血 液寒天培地を用いて 37℃.5%CO2 条件下で培養を行い 48 時間後に灰白色の微小集落が確認された。VITEK を用い て同定を行った結果 Acinetobacter sp. /Moraxella group と同 18 EntryNo. 23 グラム染色所見が迅速な対応を可能とした髄膜炎菌性髄膜炎の1症例 ◎久米 賢 1)、山本 貴久 1)、藤原 美樹 1)、原田 薫 1)、板野 渚 1)、朝山 真哉 2) 特定医療法人 三栄会 ツカザキ病院 1)、ツカザキ病院 神経内科 2) 【はじめに】Neisseria meningitides による侵襲性感染症は Meropenem の投与は開始されていたため継続、飛沫感染対 5 類感染症に指定されている。N.meningitidis は、ヒトにの 策を現場に指示していただくように連絡した。翌日、チョ み寄生し、くしゃみや咳などの飛沫感染により伝播する感 コレート/血液寒天培地にて白色集落を形成。院内の同定 染対策上重要な菌種であり、感染拡大を防ぐ目的で、迅速 キット ApiNH を実施するも不確定であり、(株)兵庫県臨 な対応が求められる。今回、グラム染色で N.meningitidis を 床検査研究所への外注検査で質量分析バイテック MS にて 推定し、感染対策が迅速かつ的確に実施できた症例を経験 N.meningitidis が確定された。また、同時に進めていた薬剤 したので報告する。 感受性の結果も感受性は良好な菌であった。1 月 4 日には 【症例】19 歳男性、大学生、海外渡航歴なし。2016 年 保健所への届出も完了し、後日菌株提供の依頼があった。 1 月 1 日の夕方より体調不良、39 度の発熱、22 時頃より頭 【まとめ】N.meningitidis による髄膜炎は、急激に症状が悪 痛と嘔吐が出現し、翌 2 日の 2 時頃に救急搬送。前病院に 化する場合もあり、早期に的確な治療が不可欠となる。今 て頭部 CT と血液培養が施行され、髄膜炎・脳炎疑いにて 回、年末年始の休日の中、検体の保存から検査までを迅速 当院に転院となった。来院時の身体所見は意識レベルの低 下と項部硬直を認め、末梢白血球は 207×102μL、髄液は かつ適切に行え、起因菌を推定・報告し、感染対策にも貢 白色混濁し、細胞数 4864/3、髄液タンパク 386 mg/dl、髄液 ム染色を行える技術を習得しておくことは、とても重要で 糖 8mg/dl、髄液クロール 116mEq/l であり、細菌性髄膜炎が あると思われる。 疑われた。 ツカザキ病院 0792728574 【細菌学的検査】採取した髄液よりグラム陰性双球菌を認 め、形態から N.meningitidis が推定されたため主治医に報告。 158 献できたと思われる症例を経験した。検査室の全員がグラ 19 EntryNo. 98 血液および髄液より Campylobacter fetus が分離された一例 ◎香田 祐樹 1)、奥田 和之 1)、小川 将史 1)、西本 瑛紀子 1)、笠井 香里 1)、東 良子 1)、角坂 芳彦 1)、蔦 幸治 2) 関西医科大学附属枚方病院 1)、関西医科大学 病態検査学講座 2) 【はじめに】Campylobacter fetus (C.fetus)は微好気性のグラ が検出されたとの連絡より Campylobacter spp. を疑い、当 ム陰性らせん状桿菌で家畜に流産を起こす病原菌である。 初 AZM、CAM が投与されていたが、MEPM に変更し、 ヒトに対しても腸管外感染症を起こす菌であり、免疫不全 20 病日後に軽快退院となった。【微生物学的検査】入院時 者での敗血症、髄膜炎及び心内膜炎の主な起因菌となるこ 採取の血液培養は好気ボトルのみ陽性となり、グラム陰性 とが知られている。今回、血液培養および髄液より C. らせん状桿菌を認めた。48 時間後、37℃で炭酸ガス培養し fetus が分離された症例を経験したので報告する。【症例】 たチョコレート寒天培地及び羊血液寒天培地に透明なS型 54 歳、男性、既往歴にアルコール性肝障害。数日前から不 コロニーを認めた。また、変法カンピロバクター培地にて 明熱及び頭痛が続くため他院を受診し入院となった。翌日 に不穏出現により入院継続困難と判断され、当院受診とな 37℃微好気培養を実施したところ同様の菌の発育を認めた。 馬尿酸試験は陰性であり、羊血液寒天培地で 42℃微好気培 った。来院時、発熱と頭痛は継続し意識障害が認められた 養で菌の発育を認めなかった。Api ヘリコにて同定を試み ため即日入院となり、原因精査のため血液及び髄液検査を たが有意な菌の判定は得られなかったため、PCR 法により 実施した。血液検査では CRP5.5 mg/dL と軽度上昇を認めた C. fetus と同定した。髄液の培養検査でも同様の菌が検出さ が、髄液検査では細胞数 17/μL (単核細胞 15,多核細胞 れた。【まとめ】今回、C. fetus による敗血症及び細菌性髄 膜炎を経験した。基礎疾患としてアルコール性肝障害はあ るが侵入門戸は不明であった。グラム陰性らせん状桿菌の 細胞数 537/μL(単核細胞 127,多核細胞 410)、髄液蛋白 同定には生化学性状検査のみでは判定に苦慮する事もあり、 75mg/dL、髄液糖 48 mg/dL となり、細菌性髄膜炎と診断さ 遺伝子検査による同定で迅速な診断に結び付ける必要があ れた。治療は、前医より血液培養でグラム陰性らせん桿菌 ると考えられた。(連絡先-0728040101) 20 EntryNo. 79 血液培養より Edwardsiella tarda が検出された3症例 ◎太田 亜紀子 1)、佐々木 千鶴 1)、小林 悦子 1)、水野 幸惠 1) 福井県立病院 1) 【はじめに】 Edwardsiella tarda は、通常は爬虫類や魚類な た。また、入院 3 日目に 39.8℃の発熱がみられたため、再 どから分離されるグラム陰性桿菌である。ヒトへの感染は 度血液培養 2 セットが採取され、各々培養 5 日目および 稀であるが、腸管感染、創傷感染、敗血症などが知られて 8 日目に 同菌が検出された。 おり、敗血症例では死亡率が高いとされている。今回 なお、いずれの症例においても検出された E.tarda の薬剤感 我々は、血液培養より本菌が検出された 3 症例を経験した 受性は良好だった。 ので、若干の文献的考察を加えて報告する。 【考察】 今回経験した 3 症例のすべてが急性胆管炎を呈し 【症例 1】 70 代女性。右側腹部~腰背部痛を主訴に当院を ており、うち 1 例では胆汁からも本菌が検出されているこ 受診。急性閉塞性胆管炎の診断のもと CPZ/SBT による治療 とから、胆道系への感染が菌血症および敗血症の原因と推 が開始された。来院時の血液培養 2 セットのうち 1 セット 定される。また、治療開始後の症例において血液培養が陽 より、培養 2 日目に E. tarda が検出された。 性となるまでに 5~8 日を要したことから、本菌を想定した 【症例 2】 50 代男性。他院で急性閉塞性胆管炎の診断のも 検査時には十分な培養期間を設定すべきと考えられる。さ と MEPM による治療が開始され、その後当院へ搬送。入院 らに、今回検出されたすべての株において既報と同様に薬 時の血液培養より、培養 8 日目に E. tarda が検出された。 剤感受性が良好であったにもかかわらず、3 症例のうち また、前医の血液培養および胆汁培養からも同菌 が検出さ 2 症例では治療開始後の血液培養からも本菌が検出されて れた。 いることから、本事象と敗血症例における高死亡率との関 【症例 3】 80 代男性。脱力感を主訴に当院を受診。急性閉 連の有無を今後の検討課題としたい。 塞性胆管炎の診断のもと MEPM による治療が開始された。 連絡先:0776-54-5151(2619) 来院時の血液培養より、培養 2 日目に E. tarda が検出され 159 一般演題 2 )、髄液蛋白 75 mg/dL、髄液糖 75 mg/dL であり、頸部硬 直も認めなかった。5 病日目に再度髄液検査が実施され、 21 EntryNo. 74 胆汁から分離した硫化水素産生を示した Salmonella Paratyphi A の 1 症例 ◎山下 貴哉 1)、山木 陽平 1) 地域医療振興協会 市立奈良病院 1) 【はじめに】 Salmonella enterica subsp. enterica serovar 所に転帰報告をした。 Paratyphi A (以下 S.Paratyphi A)はパラチフス(網内系、 【微生物検査】6 月 5 日採取の胆汁検体は膿性であった。 構造に伴う菌血症・腸管病変)の原因菌である。経口摂取 BTB ・血液寒天培地、HK 半流動培地を使用し 37℃24 時間 後、通常 1~2 週間の潜伏期間の後に発熱を主体として発症 培養を実施した。発育菌を腸内細菌用確認培地に接種した する。本菌は 2 類感染症に分類され保健所への届け出が義 結果、TSI(-/AH2S)、LIM(-)にて Salmonella を疑い SS 寒 務づけられている。我々は胆汁より硫化水素を産生する 天培地の追加培養を行った。同定感受性は VITEK2 S.Paratyphi A を分離した 1 症例を経験したので報告する。 (sysmexビオメリュー社)にて実施、S.Paratyphi A を同定した。血 清型検査にて O2 群に凝集を認め、直接での H 抗原の凝集 【症例】 43 歳フィリピン出身の女性、2015 年 5 月 27 日 一般演題 心窩部痛、嘔気を主訴として当院消化器内科を受診。発 を認めなかったが、鞭毛増強にて H:a 凝集を示した。 熱・炎症反応は共に認めなかったが、腹部触診にて圧痛を 【まとめ】今回分離した S.Paratyphi A は硫化水素産生を認 呈した。5 月 29 日に腹部超音波検査実施、胆嚢部に結石お めたバリアント型であった。患者への問診によりフィリピ よび底部壁肥厚が見られた。胆嚢結石症と診断され、内服 ン在住時、幼い頃に腸チフス罹患の事実があった。今日ま 処方で経過観察となった。嘔気の改善が見られず 6 月 5 日 で胆嚢中に本菌を保菌していた可能性が高い。胆汁の細菌 PTGBD(経皮経肝胆嚢ドレナージ)の実施となったが胆嚢 検査を実施する際は Salmonella も目的菌として考慮する必 腺筋腫症、慢性胆嚢炎にて PTGBD 不可のため腔鏡下胆嚢 要があると示唆された。 摘出術が行われた。術後の胆汁培養にて S.Paratyphi A を分 連絡先;市立奈良病院 細菌検査室 0742-24-1251(代表) 離した。抗生剤治療にて改善され 6 月 29 日に軽快退院とな った。その後、便培養が3回陰性であることを確認し保健 22 EntryNo. 78 血液培養検出状況と MALDI-TOF MS を用いた血液培養直接同定の報告 ◎船田 雄太 1)、上岡 奈未 1) 橋本市民病院 LSI メディエンス検査室 1) 【はじめに】MALDI-TOF MS による血液培養陽性 ボトルからの直接同定は迅速に同定結果が得られ、 抗菌薬使用に大きく貢献していると思われる。当院 の血液培養の検出状況と直接同定の結果について報 告する。 【方法】ラボを開設した 2015 年 10 月から 2016 年 1 月までに細菌検査室に提出された血液培養 478 件 を血液培養自動分析装置 BD BACTEC FX40 にて好 気ボトルと嫌気ボトルそれぞれ培養期間を最長 5 日 間で行った。また、期間内に陽性となった血液培養 ボトルには直接同定を行い、MALDI のスコアとし て、2.000 以上で菌種レベル、1.700~1.999 を属レベ ル、1.699 以下を同定不能とした。同定不能と出た ボトルについては後日発育したコロニーから同定を 行った。 【結果】10 月から 1 月の 4 か月間で陽性は 84 件 (18%)となり、E.coli が 25 件(30%)と最も多く、次い で CNS が 15 件(18%)、S.aureus が 11 件(13%)、 160 Streptococcus 属が 6 件(7%)となった。直接同定の結 果としては、E.coli と S.aureus は菌種レベル一致率 が 100%の結果が得られた。CNS と Streptococcus 属 はそれぞれ菌種レベル一致率が 37%、31%と低く、 属レベルで止まる結果が多く見られた。その他検出 された腸内細菌では菌種レベル一致率が 83%となっ た。また、酵母様真菌も 3 件検出されたが、直接同 定ではすべてのボトルが同定不能の結果となった。 【まとめ】検査室では直接同定法で種レベル・属レ ベルまで同定できたものを報告している。MALDITOF MS の導入によって血液培養陽性時に高い割合 で菌種を報告でき、より早く適切な抗菌薬投与を可 能にしている。一方でラボ開設から間もないためn 数が不十分な菌種があり今後更なる検討の必要性が あると考える。また、血液培養陽性時に耐性菌の有 無まで臨床に報告できないなどの課題もある。 連絡先:0736-34-8568 23 EntryNo. 56 中心静脈カテーテル関連血流感染に対する培養検査方法の検討 ◎改田 幸子 1)、畑中 重克 1)、河村 美里 1)、久保 繁美 1)、大橋 有希子 1)、檜山 洋子 1)、谷川 崇 1) 府中病院 1) 【目的】中心静脈カテーテル(以下、CVC)関連血流感染 性とした。定性培養は GAM 半流動高層培地(日水製薬) を診断するための CVC 先端培養を実施する場合は、半定量 に CVC 先端を入れ培養し、菌の発育の認められた時点で平 培養または定量培養が有意とされている。当院では CVC 先 板培地に再培養を行った。上記の対象実施期間に提出され 端の定性培養を実施していたが、この方法では正確に た検体数、血液培養とセットで提出された割合、血液培養 CVC 感染を捉えているとは言い難い。そこで、IDSA のガ の結果を対象とした場合の感度、特異度を比較した。 イドラインを参考に、当院での CVC 先端培養ガイドライン 【結果および考察】総件数は、第一期では 353 件、第二期 (①CVC 先端の長さを統一②血液培養と同時依頼 では 129 件と大幅な減少が見られたが、血液培養とセット ③CVC 留置期間により定量、半定量を区別)を作成し、若 干の知見を得たので報告する。 で提出された割合は第一期では 190 件(53.8%)、第二期 【対象】定性培養の実施期間 2012 年 1 月 1 日から 12 月 を対象とした場合の感度は第一期:75.4%、第二期:53.3%、 31 日(以下、第一期)と、定量、半定量培養の実施期間 特異度は第一期:73.0%、第二期:94.9%(p<0.05)であ 2014 年 1 月 1 日から 12 月 31 日(以下、第二期)に提出さ った。感度は対象前後で変化はなかったため、培養陰性の れた CVC 先端培養を対象とした。 場合に、CVC 感染を完全には否定できないと考えられる。 【方法】定量培養は TSB(BD)に CVC 先端を入れ滅菌注 一方、特異度が有意に上昇したことで、菌の発育が見られ 射器で内腔を 3 回洗浄し、血液寒天培地(BD)に 1ml 接種 た場合には、CVC 感染をより強く疑える可能性が示唆され し、72 時間培養後に集落数を数え、100CFU/ml 以上で陽性 た。 とした。半定量培養は血液寒天培地に CVC 先端を 5 回以上 連絡先:0725-43-1234(内線:1816) では 69 件(53.5%)と、変化はなかった。血液培養の結果 一般演題 回転させ、72 時間培養後に集落数を数え、15CFU 以上で陽 24 EntryNo. 4 尿一般検体での尿培養検査の経時的な菌量変化とその有用性 ◎京坂 渉平 1)、山内 衛 1)、中村 純造 1) 独立行政法人 地域医療機能推進機構 大和郡山病院 1) 【初めに】 【結果】 当院の尿培養検査は尿一般検査の検査結果により、培養 採取直後から3時間までは採取容器及び保存方法によっ 検査の依頼が入るのが現状である。 て結果が大きく解離することはなかった。 尿の提出方法は、滅菌容器または尿コップで提出される。 4時間以降の検体も冷蔵保存の場合、発育はなかったが、 本来は採尿後すぐ検査するのが望ましいが、当院の現状で 室温保存した両検体ともに3時間後の検体に発育しなかっ は行えていないため、採取直後からの菌量変化を経時的に たGPCが培養された。その後12時間経過した検体は4 調べ、検体として使用できる最大時間を確認するため検討 +までGPCが増加した。 したのでここに報告する。 菌液を混ぜた両検体ともに5時間経過すると大きく増加 【方法】 がみられた。 健常者尿を滅菌容器及び尿コップにとり、冷蔵、室温の 【考察】 4パターンで 1 時間後から5時間後までの各時間、12時 尿検体の長時間放置はやはり検査結果に影響を与えるこ 間後、24時間後の尿をそれぞれ24時間培養にかけ検討 とが分かった。採尿から3時間までには培養を行うのが望 した。 ましい。 また健常者尿を用いて当院の尿培養検査で検出頻度の高 現状では採尿後ただちに検査が行えていない現状を考え、 い2菌種(GPC:Enterococcus faecalis 、GNR:Escherichia 再採尿が可能な患者に関しては取り直しをお願いし、無理 coli)でマックファーラー1の1/2相当の菌液を作成し尿 な場合を考慮し検尿で細菌が出ている場合、冷蔵保存する 10mlに菌液を10μℓ 入れ上記方法と同様の時間で培 養を行った。 などし細菌の増殖を防ぐ対策を考えていかなければならな いと感じた。 161 25 EntryNo. 27 グラム染色における喀痰洗浄効果の検討 ◎眞下 佑太 1)、林 由紀子 1)、海崎 佳史 1) 福井県済生会病院 1) 一般演題 【目的】 を標記し、その傾向を分析した。 喀痰洗浄は、口腔および上気道の常在菌を除去し、起炎菌 【結果および考察】 を選択するための方法として有用とされている。現在当院 喀痰洗浄により、市中・院内肺炎疑いのグループでは、洗 では、喀痰洗浄を実施せずに検査を行っているが、その有 浄前の染色像に扁平上皮・常在菌を認めたものでは、洗浄 用性からも導入を検討している。そのため今回、喀痰の洗 後にそれぞれの数は、80%以上減少している傾向があった。 浄前後でグラム染色を実施し、その所見にどの程度の変化 扁平上皮・常在菌の除去により、鏡検における炎症像がよ をもたらすか、常在菌数、扁平上皮数、白血球数を用い検 り鮮明になると考えられた。一方、誤嚥性肺炎疑いのグル 討した。 ープでは、洗浄後の扁平上皮数・常在菌数の変化率に傾向 【方法】 はなかった。扁平上皮数・常在菌数の著しい減少がないこ 2014 年 7 月~2015 年 12 月に提出された喀痰 41 件(検体抽 とは、市中・院内肺炎疑いグループと異なり、誤嚥性肺炎 出条件として、肉眼的所見;Miller&Jones 分類M2~P3、 を疑う材料になると考えられた。 患者背景;採取3日前まで抗生剤投与無、臨床所見より肺 【結語】 炎疑い)を対象とした。これらを市中・院内肺炎疑い、誤 今回行った検討から、喀痰の洗浄を実施することは、グラ 嚥性肺炎疑いのグループに分け、洗浄前後のグラム染色所 ム染色による肺炎の起炎菌推定の手助けになると考える。 見について、フィブリン析出部の白血球数 200 個あたりの 今後も、引き続き多くの症例の検討を行い、その効果を分 常在菌数・扁平上皮数をカウントし、変化率【変化率(%) 析していきたい。 =(洗浄後カウント数-洗浄前カウント数)/洗浄前カウン 福井県済生会病院 検査部 0776-23-1111 ト数×100】を算出した。また、変化率をグラフ化したもの 26 EntryNo. 71 ECLIA 法及びラテックス免疫比濁法によるシクロスポリン測定の基礎的検討 ◎佐藤 亜紀子 1)、和田 哲 1)、磯貝 好美 1)、堀端 伸行 1)、大石 千早 1)、大石 博晃 1)、赤水 尚史 2) 和歌山県立医科大学附属病院 中央検査部 1)、公立大学法人 和歌山県立医科大学 第一内科教室 2) 【はじめに】シクロスポリンは、T 細胞によるサイトカインの産生を阻 た CV%は、ECLIA 法:2.35~4.88%、ラテックス免疫比濁法: 害することにより強力な免疫抑制作用を示す。臓器移植後 7.24~20.55%。3)希釈直線性:10 段階希釈した結果、良好 の拒絶反応の抑制や自己免疫疾患の治療に広く用いられて な直線が得られた。4)検出限界:2.6SD 法で ECLIA 法: いるが、腎毒性や細胞毒性などの副作用が報告されている。 13.90ng/mL、ラテックス免疫比濁法:21.25ng/mL。5)対照法と さらに、有効治療濃度域や安全域が狭いことから、 の相関(n=40):ECLIA 法:y=0.9413x-31.80、r=0.9662、 シクロスポリンの血中濃度をモニタリングすることは不可欠である。今 ラテックス免疫比濁法:y=0.8854x-65.62、r=0.9640。6)前処理の 回、ECLIA 法及びラテックス免疫比濁法と測定原理の異なる 測定者間差:2 濃度(n=5)を 3 名の測定者で検討したところ、 2 試薬の検討を行う機会を得たので報告する。 差はみられなかった。 【方法・対象】ECLIA 法は、測定機器が cobas e411(ロシュ)、 【考察】基本的性能は 2 試薬とも良好であり、CLIA 法との 測定試薬がエクルーシス試薬シクロスポリン(ロシュ)を用いた。ラテックス免疫 相関も良好であった。ECLIA 法は検出感度が良く、測定者 比濁法は、測定機器が JCA-BM6050(日本電子)、測定試薬が 間差が少なく安定した結果を得られると思われた。また、 セディア-シクロスポリン(積水メディカル)を用いた。対照とした CLIA 法 は、測定機器がアーキテクトi2000SR(アボット)、測定試薬が タクロリムスと同じ前処理液・操作であるため、測定者の訓練が容 アーキテクト・シクロスポリン(アボット)を用いた。対象は当院中央検査部 に血中シクロスポリン測定依頼のあった検体を用いた。 がると考えられた。ラテックス免疫比濁法は、前処理操作に遠心 【結果】1)同時再現性(n=20):コントロール試料の CV%は、 臨床に報告できる。また、汎用生化学自動分析装置で測定 ECLIA 法:3.57、2.60%、ラテックス免疫比濁法:2.72~ が出来るため、24 時間対応で測定しやすいと思われた。 10.26%。2)日差再現性:コントロール試料を最大 30 日間測定し 連絡先:073-447-2300(内線 2389) 162 易で、さらに用手での前処理による検査過誤の軽減につな が不要であり、短時間で測定可能なため迅速に測定結果を
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