2009 カテーテル関連尿路感染予防 ハウツーキット

IHI
改善開始キット:カテーテル関連尿路感染予防
ハウツウガイド
皆さん。こんにちは。特定非営利活動法人日本感染管理支援協会
の土井英史でございます。いつもホームページをご覧いただきあり
がとうございます。
さ て 、 こ の 度 米 国 の IHI ( The Institute for Healthcare
Improvement)が、新しいケアバンドルである『改善開始キット:カ
テーテル関連尿路感染予防
ハウツウガイド』を公表しましたので
掲載いたします。
2009年11月に CDC がカテーテル関連尿路感染予防策のガイ
ドラインを公表しましたが、このガイドラインと合わせてお読みい
ただくと、どちらの内容ともに補い合って大変良く分かりやすいと
思います。
是非、臨床現場でお役立てください。
改善開始キット:
カテーテル関連尿路感染予防
ハウツーガイド
The Institute for Healthcare Improvement (IHI)は、世界中で医療における改善
を率先する非営利団体である。患者のケアの改善のための見込みの高いコンセプト
を開拓し、これを行動に移すことにより、変化の促進に一役かっている。何千とい
う医療機関が IHI の画期的取り組みに参加している。
Scientific Partners
How-to Guide: Prevent Catheter-Associated Urinary Tract Infections
下記のいくつかの団体がサイエンティフィックパートナーおよびアドバイザーと
して協力いただいた。
APIC
Centers for Disease Control and Prevention
Infectious Diseases Society of America
Society for Healthcare Epidemiology of America
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How-to Guide: Prevent Catheter-Associated Urinary Tract Infections
カテーテル関連尿路感染予防のために
米国の病院における病院獲得の感染(HAI)の奨励数は、年間で 170 万件と見積
もられており、99,000 人の死亡につながっているとされている。 尿路感染は、
年間の全 HAI のおよそ 40%を占めている。これら病院獲得の尿路感染の 80%が、
留置型導尿カテーテルに由来するものである。 急性期病院にナーシングホーム
を加えて考えると、年間の CA-UTI の症例数は 100 万件を超えるとみられている。
Klevens RM, Edwards JR, Richards CL Jr, et al. Estimating health care-associated
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米国では、年間で 500 万本近くの導尿カテーテルが留置されている。 入院患者
全員のうち 12%から 25%の患者が入院中に導尿カテーテルの留置を受け、そのな
んと半数は適切な適応理由なしに留置されている。ある研究では、必要のない導
尿カテーテル留置を受けている患者の主治医のほとんど 40%が、患者に導尿カテ
ーテルが留置されていることについて認識していなかったことが報告されている。
Weinstein JW, Mazon D, Pantelick E, et al. A decade of prevalence surveys in a tertiarycare center: trends in nosocomial infection rates, device utilization, and patient acuity.
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カテーテルの留置期間が、尿路感染の発症のリスクと直接関係があることはすで
に確立された事実である。カテーテルが留置されている場合、ある1日の尿路感
染を発症するリスクは 3%から 7%である。カテーテル留置が1週間継続すれば、
細菌尿のリスクは 25%にまで加算される。1ヶ月だと、リスクはほぼ 100%にまで
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How-to Guide: Prevent Catheter-Associated Urinary Tract Infections
跳ね上がる。細菌尿になった患者のうち、10%が UTI の症状(発熱、排尿障害、
切迫感、頻尿、恥骨上の圧痛)を呈し、最大 3%が菌血症を発症する。
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Saint S, Lipsky BA. Arch Intern Med. 1999.
潜在的インパクト
CA-UTI のコスト面での負担はさまざまである。ほとんどの情報源によると、CAUTI が発症すると入院期間が半日から1日延長されることが示唆されている。
年間で 100 万症例を超える発症がある状況では、留置型カテーテル由来の院内感
染 UTI の年間コストは 424 百万ドルから 451 百万ドルであると CMS では計算して
いる。CA-UTI の寄与コストについての各病院からの報告では、1症例につきか
かるコストは 500 ドルから 700 ドルと見積もられている。CA-UTI に引き続き二
次的に菌血症が発症すれば、1症例あたりのコストは 2500 ドルから 3000 ドルに
まで上昇する。
Saint S. 2000.
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costs. Am J Med. 2002 Jul 8;113 Suppl 1A:5S-13S.
2008 年 10 月 1 日から、CMS は、CA-UTI を含め病院獲得の予防可能な合併症への
支払いを排除することを意図した新しい規則を発効させる。この新しい規則のも
とでは、入院中に患者が CA-UTI を発症しても(すなわち入院時点ではなかった
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How-to Guide: Prevent Catheter-Associated Urinary Tract Infections
CA-UTI を発症しても)、病院はこの合併症があたかも存在していなかったのご
とくの償還金しか支払ってもらえない。CMS の選択した 10 種類の病院獲得の合
併症のなかで、CA-UTI はそのコストが高くまた数が多いことから、また受け入
れられているエビデンスベースの予防ガイドラインにより合理的に予防が可能な
ことから、高い優先順位がつけられている。
さまざまな病院環境においてさまざまな介入措置(看護師や医師の教育、コンピ
ューター上の抜去警告、ナース主導型のプロトコール、サーベイランスとフィー
ドバック、コンドーム型カテーテル、閉鎖式システム、抗菌剤カテーテル等)が、
多くの前向き研究で検討されている。これらの研究においては、CA-UTI は 46%か
ら 81%削減が達成されている。
Schumm K, Lam TB. Types of urethral catheters for management of short-term voiding
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Saint S, Elmore JG, et al. The efficacy of sliver alloy-coated urinary catheters in
preventing urinary tract infection: A meta-analysis. Am J Med. 1998;105:236-241.
最近(ジョントコミッション、APIC、米国病院協会と協働で)SHEA-IDSA の発表
した急性期病院における医療関連感染防止のための対策概要では、CA-UTI 削減
の重要性について強調している。具体的には、この概要中では、感染制御と予防
の米国の臨床専門家によるエビデンスのレビューに基づいた最新の勧告がまとめ
られている。
Lo E, Nicolle L, Classen D, et al. Strategies to prevent catheter-associated urinary tract
infections in acute care hospitals. Infect Control Hosp Epidemiol. 2008 Oct;29 Suppl
1:S41-50 http://www.shea-online.org/about/compendium.cfm
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How-to Guide: Prevent Catheter-Associated Urinary Tract Infections
カテーテル関連尿路感染の予防:4つのケア要素
侵襲的デバイスに関連する感染の予防は、いくつかの主要な要素を軸としている。
すなわち、こうしたデバイスの使用は適切な適応理由に限ること、デバイスの挿
入やケアを適切に行うこと、迅速に抜去することである。留置型導尿カテーテル
も例外ではない。侵襲性のより低い一般内科病棟や一般外科病棟で使用されてい
るにもかかわらず、留置型カテーテルは患者に対し相当の感染リスクを呈するも
のである。
カテーテル関連の尿路感染を予防し削減するための方法は多く研究されており、
そのうちのいくつかは数十年前にさかのぼるものである。年月を経るにしたがい、
勧告のなかには変わってきたものもある。たとえば、カテーテルの定期的な洗浄
はかつては推奨された対策であったが、現在では回避するべきプラクティスであ
ると考えられている。したがって、各施設は、自施設のポリシーやプラクティス
が、もっとも最新のエビデンスベースの勧告に沿ったものであるかどうかを確実
にすることが不可欠である。
このハウツーガイドでは、すべての患者に対し画一的に推奨されている十分なエ
ビデンスのある勧告に焦点をあてている。CA-UTI のリスクの予防や削減のため
には、すべての患者について以下の4つのケア要素が推奨されている。
1- 不必要な導尿カテーテルを回避する。
2- 導尿カテーテルの挿入は無菌テクニックで行う。
3- 推奨されているガイドラインに基づいて導尿カテーテルを維持管理する。
4- 毎日導尿カテーテルの必要性をレビューし、必要がなくなったら迅速に
抜去する。
SHEA-IDSA の概要に加え、これらのプラクティスは CDC、英国 NHS、その他頻繁
に引用される研究で一般に推奨されているものである。
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How-to Guide: Prevent Catheter-Associated Urinary Tract Infections
Pratt RJ, Pellowe CM, Wilson JA, et al. Epic 2: national evidence-based guidelines for
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at: http://www.cdc.gov/ncidod/dhqp/gl_catheter_assoc.html# . Accessed December 1,
2008. N.b. An update to CDC guidelines is expected in early 2009.
これら4つの要素を実施するには、医師、看護師、病院経営管理、感染予防専門
家、泌尿器ケア専門家等、学際的なアプローチが必要である。APIC では、この
ハウツーガイドとともに利用することのできる CA-UTI 排除ガイドを最近発表し
ている。この APIC の包括的ガイドは、CA-UTI 改善チームにおいて不可欠の役割
をになう ICP にとってすばらしい情報源である。CA-UTI の状況改善にはチーム
ワークが必要であり、ひとつの部門だけで達成できるものではない。
1. 不必要な導尿カテーテルを回避する。
導尿カテーテルを含め、侵襲的デバイスは絶対的に必要な場合を除いて使用する
べきではない。研究によると、留置型導尿カテーテルを入れている入院患者の
21%もが、挿入のための適切な適応理由がないにもかかわらず留置を受けており、
なんと 41%から 58%もの留置カテーテルが、結局不必要であったことがわかって
いる。
Saint S, Lipsky BA. Arch Intern Med. 1999.
Jain P, Parada JP, David A, Smith LG. Overuse of the indwelling urinary tract catheter in
hospitalized medical patients. Arch Intern Med. 1995;155:1425-1429.
患者にとって留置型カテーテルは快いものではなく、あるひとつの研究では、半
数近くの患者が「気持ちが悪い」、または「痛い」としていた。カテーテルが留
置されていると、体の動きが大きく制限されることがあり、このことはひいては
リハビリテーションや回復を阻害しかねない。 Saint は、こうしたカテーテル
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How-to Guide: Prevent Catheter-Associated Urinary Tract Infections
を「一点拘束具」と記述している。動きが制限されることは、患者にとって不満
のもととなるだけでなく、DVTや褥瘡等の合併症のリスクを上げることもある。
Saint S, Lipsky BA, et al. Urinary catheters: what type do men and their nurses prefer?
J Am Geriatr Soc. 1999;47:1453-1457.
Saint S, Goold SD, Lipsky BA. Indwelling urinary catheters: The one-point restraint? Ann
Intern Med. 2002;137(2):125-127.
適切なカテーテル挿入の明確な基準がすべての施設で設置されているべきであり、
その基準が満足された旨の確認が、留置型導尿カテーテルの挿入に先立って要求
されるべきである。挿入基準が満足されない場合、代替措置を評価し使用するべ
きである。CDC、SHEA-IDSA、NHS(および Wong and Saint による著作)からの勧
告では、導尿カテーテルの適応理由として以下を挙げている。
一定の手術のための周術的使用
急性尿閉や尿閉塞の管理
失禁患者の褥瘡治癒における補助的手段としての使用
例外として、快適さの改善のために患者が要請した場合(SHEA-IDSA)や、
終末期ケアにおける患者の快のため(CDC)
各施設は、適切なカテーテル挿入について明確な基準を採用するべきである。こ
の挿入基準は上記に基づいたものであり、対象となる患者群の必要に応じて種々
の調整を加えるものとするべきである。
挿入基準を適用するにあたっては、留置型導尿カテーテルのオーダーはすべて、
挿入に先立ち基準を満たしているかどうかの評価をすることを要求するべきであ
る。挿入基準が満たされない場合には、代替手段を主治医と相談する権限を看護
スタッフに付与し、そうすることを期待するべきである。例外的な状況があれば
これを書き留めておき、後で挿入基準の調整に使用するべく研究するべきである。
留置型カテーテルの代替手段としては以下のものがある。
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How-to Guide: Prevent Catheter-Associated Urinary Tract Infections
 尿閉や排尿閉塞のない男性患者ならば、体外コンドームカテーテルを使用
することで、細菌尿や有症候性 UTI のリスクを減らすことが示されている。
こうしたカテーテルは留置型カテーテルよりも不快感がより少なく、動き
の制限も少ないことが患者から報告されている。
 間欠的に1日に数回カテーテルを挿入することでも感染リスクは同様に下
げることができるかもしれないし、また患者の動きへの制限も少なくてす
み、必要以上に留置型カテーテルが放置されないようにすることができる。
Lo E, Nicolle L. 2008 Oct.
Saint S, Lipsky BA. Arch Intern Med. 1999.
Lau H, Lam B. Management of postoperative urinary retention: a randomized trial
of in-out versus overnight catheterization. ANZ J Surg. 2004;74:658-661.
Saint S, Kaufman SR, et al. Condom versus indwelling urinary catheters: a
randomized trial. J Am Geriatr Soc. 2006 Jul;54(7):1055-1061.
尿閉がないかどうかのアセスメントは、超音波デバイスで膀胱を病室でチェック
するとよい。尿閉がみつかったら、カテーテルを安全に留置することができるが、
膀胱内の尿が少量であったり、なかったりする場合には、導尿カテーテルを挿入
する前に別の代替的対策を開始してもよい。膀胱超音波デバイスを用いることで、
カテーテル留置を 30%から 50%減少させることができることが研究で示されてい
る。膀胱超音波デバイスは使用も簡単であり、費用効率が高く、患者にとってな
んらのリスクも呈さず、さらに使用されても不快感がより少なくてすむ。看護ス
タッフは、カテーテルの挿入に必要な時間(15-20 分)よりも少ない時間で(23 分)、ベッドサイドでこの診断的手技を効果的かつ正確に行うことができてい
る。
Stevens E. Bladder ultrasound: avoiding unnecessary catheterizations. MEDSURG
Nursing. Aug 2005;14(4):249-253.
Sparks A, Boyer D, Gambrel A, et al. The clinical benefits of the bladder scanner: a
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Moore DA, Edwards K. Using a portable bladder scan to reduce the incidence of
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10
How-to Guide: Prevent Catheter-Associated Urinary Tract Infections
専門家のなかには、術後の尿閉は一過性のものである場合があることからも、そ
れ特有のプロトコールが必要ではないかという意見もある。膀胱スキャンと間欠
的カテーテル挿入はこうした症例ではメリットがあり、留置型カテーテルの挿入
の回避につなげることができるかもしれない。
病院は導尿カテーテルの留置本数と挿入時に正しい適用理由のあった本数を計測
し、不必要なカテーテルがどの程度留置されているのかを知るべきである。最近
行われた研究で、解答病院の 56%がどの患者に導尿カテーテルが留置されている
かをモニタリングするためのシステムがなかったことがわかっている。このこと
は、挿入基準の有用性や遵守の評価に役立てることができ、またどの分野におい
て適切な使用について臨床スタッフを教育するべきかを特定するためにも使うこ
とができる。
Saint S, Kowalski, CP et al. Preventing hospital-acquired urinary tract infection in the
United States: a national study. Clin Infect Dis. 2008 Jan 15;46(2):243-250.
カテーテルが使用される本数が減れば、看護スタッフの時間や資源という点にも
影響がある可能性があることを考慮することが大切である。カテーテルを留置し
ていない患者は、トイレの必要性についてのアセスメントを行うのに定期的なチ
ェックが必要となるかもしれない。このトイレの必要性というのは、一般的な転
倒原因でもある。至便のためにカテーテルを留置することは常に回避するべきで
あり、看護スタッフは、感染、動きの制限、尿道への傷害等、あらゆるカテーテ
ルにまつわるリスクについてよく教育されているべきである。
施設としては、どこで導尿カテーテルがもっともよく挿入されているかを評価す
るべきである。というのも、そうすることで、まずどこで挿入基準のテストや実
施を行えばよいか、またどこに教育がもっとも必要かを特定することになるから
である。ニュージャージー州病院協会が最近行った抗菌耐性協働プロジェクトで
は、70 件の参画病院からデータが集められたが、カテーテルの大半は看護ユニ
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How-to Guide: Prevent Catheter-Associated Urinary Tract Infections
ットでは挿入されていなかったこと、すなわち、37%が救急救命室で、29%が手術
室で挿入されていたことが判明した。
Slideset: Antimicrobial Resistance Collaborative Data Submission Update, courtesy of
Andrew Sylvester, NJAH, from Antimicrobial Resistance Collaborative Learning Session
3 – February 14, 2008.
»
改善につなげるために、何を変えていけばよいのか?
 公表されているガイドラインに基づき、適切なカテーテル挿入のための基
準を策定する。
 挿入の前にかならず挿入基準が満足されていることを確認することを必要
事項とする。
 上記の確認の一助として、カテーテル挿入基準チェックリストを用いる。
ひとつの例として、http://www.hps.scot.nhs.uk/haiic/ic/CAUTIPreventionBundle.aspx を参照するとよい。
 挿入基準が満足されていない時にはカテーテルの挿入を決行しないよう、
また代替手段について相談するために主治医に連絡をするよう、看護スタ
ッフやその他の臨床スタッフに権限を与え、またそうすることを期待する。
 記録が行いやすいフォーマットで、カテーテル挿入パックのなかにチェッ
クリストを含んでおく(医療記録に貼りやすいようなステッカータイプや、
小さなカードタイプのもの等)。
 コンピューターのオーダー入力システムにカテーテルの挿入基準を組み込
み、オーダー時には必要性を記録することを要求する。
 救急救命室等カテーテルが頻繁に挿入される部署に、留置型カテーテルに
代わる代替手段が十分に在庫されているようにする(間欠挿入型カテーテ
ルや体外コンドームカテーテル等)。
 ルーチンの入院アセスメントを修正し、導尿カテーテルが留置されている
かどうかのチェック、また留置されている場合にはその必要性の確認のチ
ェックを含めるようにする。このチェックは看護ユニットへの患者到着の
12
How-to Guide: Prevent Catheter-Associated Urinary Tract Infections
時に行うべきである。挿入基準を満たさない場合には、カテーテルは抜去
するべきである。
 挿入基準を満たさない挿入の症例を見直す。こうすることにより、挿入基
準や定義を改善でき、またさらなる教育や改善の機会をとらまえることが
できる。
 入職時と継続教育(年次コンピタンシーチェック等)の一環として、導尿
カテーテルの挿入、基準、代替手段についてスタッフを教育する。
2. 無菌テクニックで導尿カテーテルを挿入する
患者によっては、入院中に留置型の導尿カテーテルの使用を必要とするものもい
る。こうした場合には、カテーテルの挿入はトレーニングを受けたスタッフのみ
が、無菌テクニックで行う。CDC も SHEA-IDSA も、挿入については以下の基本的
要素を挙げている。
a- カテーテル挿入の直前に適切な手指衛生を行う(CDC や HWO のガイドライ
ンにしたがって行う)。 How-to-Guide for Hand Hygiene
b- 無菌テクニックと滅菌装置でカテーテルを挿入する。具体的には以下を使
用する。
·
手袋、ドレープ、ガーゼ
·
尿道口の洗浄に滅菌溶液または生体消毒液
·
挿入に単回使用の滅菌潤滑剤の分包
c- 尿道に傷をつけないように、排尿が適切にできる限りでもっとも径の小さ
なカテーテルを使用する。
理想的には一箇所に適切な挿入用品をすぐに使える状態に準備することで、すべ
ての要素を完全に遵守する可能性を高めることができる。必要物のみすべてを揃
えた標準キットやパックを使えば、物品を探したり引き出したりするのにかかる
スタッフの時間を節約することになる。
13
How-to Guide: Prevent Catheter-Associated Urinary Tract Infections
患者にカテーテルが必要であることが決まった場合に使用するべきカテーテルの
種類を検討した研究が複数存在している。シリコンカテーテルとラテックスカテ
ーテルを比較した初期の研究では、これら2つの材質の間に違いを見つけていな
い。また、抗菌剤(ニトロフラゾンや銀合金)カテーテルは、細菌尿の削減によ
い効果をもたらしているが、有症候性 CA-UTI については結論はでていない。臨
床現場では、各施設のポリシーや勧告を参照にして、カテーテルを選択するべき
である。
Rupp, M, Fitzgerald T, et al. Effect of silver-coated urinary catheters: efficacy,
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Brosnahan J, Jull A, Tracy C. Cochrane Database Syst Rev. 2004;(1):CD004013.
チェックリストがあれば、挿入時にスタッフにとって有用なツールとなるだろう
し、また遵守状況を評価するためのデータ収集のツールとしても使用できる。ス
コットランドでは、保健省(ヘルス・プロテクション・スコットランド)がカテ
ーテル使用の適応理由と挿入のテクニックを記載した挿入チェックリストを作成
している。
http://www.hps.scot.nhs.uk/haiic/ic/CA-UTIPreventionBundle.aspx
スタッフの教育とトレーニングは基本的要素である。各施設は、導尿カテーテル
を挿入する可能性のあるすべての臨床スタッフ(看護師、医師、レジデント等)
をトレーニングし、そのコンピテンシーを確認するべきである。経験のあるスタ
ッフを雇用したからといって、そのスタッフが以前に受けたトレーニングが適切
であった、また正しいテクニックを身につけていると仮定してはならない。教育、
トレーニング、コンピテンシー評価には、施設全体で一貫した標準的素材を用い
14
How-to Guide: Prevent Catheter-Associated Urinary Tract Infections
るべきである。定期的な再トレーニングやコンピテンシーの評価は、カテーテル
の挿入は行ってもあまり頻繁に行うことのないスタッフとって特に重要である。
»
改善につなげるためには、何を変えていけばよいか?
 カテーテルと必要なすべての物品を含んだ標準的な挿入キットを作成する、
あるいは業者に話してキットの内容を必要なものに変更する。
 挿入チェックリストに適切なテクニックを記載する(基準とテクニックの
両方につき1枚のチェックリストで対応する)。
 チェックリストは小型にし(インデックスカードやステッカー)、参照し
やすいよう、また記録しやすいように、導尿カテーテルキットのなかに入
れておく。
 ひとりひとりの患者につき、毎回チェックリストの項目がすべて満足され
るよう、「オール・オア・ナッシング」的なアプローチをとる。
 特に救急救命室や手術室等の使用頻度の高いエリアにおいて、常に十分な
物品が揃っているように、標準キットの在庫補充の責任を割り振る。
3. 推奨されるガイドラインに基づいてカテーテルの維持管理を行う
留置型導尿カテーテルの維持管理には、一貫性が鍵となる。この分野におけるエ
ビデンスは確立しており、専門家団体(CDC、SHEA-IDSA、NHS)の意見も一致し
ている。病院の最前線における課題は、どの患者にも、どの日でも、どのシフト
でも、どの臨床スタッフでも、十分な維持管理が信頼性高く行われるよう、その
ためのプロセスを設定することである。
適切な手指衛生は基本的なケアの基準であり、患者のケアを行う前後に行うべき
である。カテーテル挿入部位やカテーテル一連のシステムに触る時には、必要に
応じての手袋の使用を含め、 標準予防策を用いるべきである。カテーテルの維
持管理は、ルーチンの維持管理と、回避するべきプラクティスとに分けることが
できる。
15
How-to Guide: Prevent Catheter-Associated Urinary Tract Infections
a. ルーチンの維持管理
 滅菌で、継続して閉鎖した排尿システムを維持する。
 カテーテルが動かないよう、また尿道の牽引をしないよう、カテーテルを
正しく固定する。
 採尿バッグは常に膀胱よりも下の位置に置く。
 尿の流れが遮られないようにする。
 採尿バッグは、患者ごとに別の容器を使って定期的に空け、排尿コックが
容器に触れないように気をつける。
これら5つの項目を頻繁にチェックし、理想的にはシフト中少なくとも一度
は記録するべきである。また、スタッフへの注意喚起として、既存の看護記
録用紙(アセスメント用紙やフローシート)に含めるとよい。
カテーテル留置中は、尿道周囲は、CA-UTI 予防のために生体消毒剤で洗浄し
ない。ルーチンの衛生管理(毎日の沐浴中の尿道口表面の洗浄)が適切であ
る。
尿検体を採取するためには無菌テクニックで行い、サンプリングポートを消
毒剤で拭いてから、滅菌し臨時でポートから尿を引く(カテーテルと排尿チ
ューブの間の接続をはずすのではない)。大量の検体が必要な場合には、排
尿バッグから無菌的に検体を採取する(SHEA-IDSA 概要)。
施設によってはルーチンのケア(毎日のケア)に「バンドルアプローチ」を
行っており、必要要素をチェックリストに組み入れ、オール・オア・ナッシ
ング的に遵守を測定している。ひとつの例として、スコットランド保健省
(ヘルス・プロテクション・スコットランド)のプロジェクトの例が挙げら
れるが、ここでは「維持管理バンドル」が策定されている。
http://www.hps.scot.nhs.uk/haiic/ic/CA-UTIPreventionBundle.aspx
16
How-to Guide: Prevent Catheter-Associated Urinary Tract Infections
最近行われた抗菌剤耐性協働プロジェクトで、ニュージャージー州病院協会
は、上記の要素をすべて網羅した留置型カテーテルバンドルを策定している。
b. 回避するべきプラクティス
最近のガイドラインで、特にルーチンで行われてきたプラクティスについて、
避けるべきプラクティスがあることに注意喚起している。こうしたプラクテ
ィスは、実際感染のリスクや他の合併症のリスクを上昇させるものであり、
以下のものがある。
 カテーテルの洗浄(カテーテル閉塞の場合を除く)
 排尿チューブとカテーテルの接続をはずすこと
 カテーテルを(閉塞や感染がないにもかかわらず)ルーチンで交換するこ
と。採尿システムを交換しなければならない場合には、無菌テクニックで
行う。
ルーチンで行うべきプラクティスと、回避するべきプラクティスについてすべて
のスタッフや医師を教育することが、まず最初の基本的ステップである。勧告の
なかには過去に比べて変わったものもあるため、このことは特に数年の経験のあ
るスタッフに対していえることである。なので、何を行うべきか、何を行うべき
でないかについて教育するだけでなく、各勧告を支える理由付けを説明すること
が重要である(説明がある方が、教えられた情報が身につきやすい)。また、カ
テーテル留置患者のケアを時に行うようなスタッフについては、勧告内容を頻繁
に用いないために何が必要とされているかを忘れがちなため、定期的に再教育を
行うことにメリットがあるだろう。こうした場合により重要なことは、記憶にた
よって実行しなければならないようなシステムを作らないことである。すなわち、
チェックリスト、注意書き、強制的手段等により、必要条件を満たすようなシス
テムを設定することが重要である。
17
How-to Guide: Prevent Catheter-Associated Urinary Tract Infections
»
改善につなげるためには、何を変えていけばよいか?
 シフトごとにルーチンで行う維持管理のための5つの項目を確認し、実施
を記録する(既存の記録システムに追加するとよい)。
 すべての必要なケア用品(手指衛生製品、排尿のための個別の容器、尿道
口ケアのための衛生物品)が、ケア地点に、またはその近くに常に装備さ
れている状態にしておく。
 記録のための用紙等は目につきやすく、すぐに使えるように、ベッドサイ
ドに置いておく。
 適切なケアについて患者と家族を教育し、スタッフに確認するよう奨励す
ることにより、プロセスに患者や家族を関与させるようにする。有用な参
考資料として、CDC から文書がでている。
http://www.cdc.gov/ncidod/dhqp/pdf/guidelines/CA-UTI_tagged.pdf
 5つのルーチンの維持管理のためのケア項目についてスタッフに注意喚起
し、記録の必要性を思い出させるため、コンピューターシステム中で警告
機能を使用する。
 物品のチェックやルーチンの補充についての責任を割り振る。
 検体収集のための物品は一箇所にまとめておくか、標準的なキットにして、
ケア地点またはその付近に置いておく。
4. 導尿カテーテルの必要性は毎日レビューし、迅速に抜去する
「カテーテル留置の期間は、感染発生のもっとも重要なリスクファクターであ
る。」
上記はSHEA-IDSA概要の勧告からの引用であり、問題の要である。留置型カテー
テルの使用が必要であれば、もっとも重要な対策はできるだけ早く抜去すること
である。このことは、過去30年間に行われてきたさまざまな研究でもよく報告さ
れている。
Lo E, Nicolle L. 2008.
Saint S, Lipsky BA. Arch Intern Med. 1999.
18
How-to Guide: Prevent Catheter-Associated Urinary Tract Infections
Platt R, Polk BF, Murdock B, Rosner B. Risk factors for nosocomial urinary tract infection.
Am J Epidemiol. 1986;124:977-985.
Shapiro M, Simchen E, Izraeli S, Sacks TO. A multivariate analysis of risk factors for
acquiring bacteriuria in patients with indwelling urinary catheters for longer than 24 hours.
Infect Control. 1984;5:525-532.
Garibaldi RA, Burke JP, Dickman ML, Smith CB. Factors predisposing to bacteriuria
during indwelling urethral catheterization. N Engl J Med. 1974;291:215-219.
このリスクファクターは重要であるにもかかわらず、病院の調査で、Saint と
Kowalski は、回答した病院の 74%がカテーテルの留置期間のモニタリングを行っ
ていないことを発見し、また Jain と Parada は 47%の患者において継続したカテ
ーテルの留置は正当なものではなかったことを発見している。
Saint S, Kowalski. 2008.
Jain P, Parada JP.1995.
留置期間をモニタリングしていないことが、必要以上に長く導尿カテーテルが留
置されている理由のひとつかもしれない。もうひとつの理由は、非常にシンプル
なものかもしれない。すなわち、主治医の方がカテーテルが留置されていること
を忘れてしまう、というものである。医師、レジデント、医学生を対象として行
われたある調査で、28%が担当している患者にカテーテルが留置されていること
を知らなかったという結果がでている。さらに、41%の場合にカテーテルの留置
が不適正であったことについても認識していなかった。
Saint, Wiese, Amory, et al. 2000.
基本的な対策を実施してもCA-UTIの率がまだ高い場合には、特別のアプローチと
してカテーテルの必要性を提起的に見直すことが、SHEA-IDSA概要で推奨されて
いる。CA-UTIやその他の病院獲得の感染に対し焦点があてられていることや、懸
念が増加していることからも、また、「ゼロ感染」を目指す病院や施設が多い背
景をもってしても、カテーテルの必要性は、導尿カテーテルを留置している患者
すべてについて(適切な挿入と同じ基準を用いて)毎日見直すべきものである。
このことは、「率は低い」ながらも発生している多くのCA-UTIの予防や、できれ
ば完全排除にむけての重要な第一歩となるかもしれない。
19
How-to Guide: Prevent Catheter-Associated Urinary Tract Infections
カテーテル留置期間を短縮するのに成功をおさめた対策を、毎日の留置の必要性
の見直しとともに実施するべきである。こうした対策には、自動的に出される停
止オーダー、挿入の記録を含む、強制的な更新オーダー、患者記録に組み込んだ
標準的注意喚起、コンピューターのオーダーシステムにおける警告等がある。あ
る退役軍人病院では、挿入の記録を行うことと、カテーテル挿入の72時間あとに
自動的に停止オーダーが出るようにすることで、平均の留置期間を3日間短縮す
ることができた。ある台湾の病院では、5つあるICUを対象に2年間の研究を行
い、このなかで、看護師が医師に対し毎日カテーテル留置について注意喚起する
等させた結果、カテーテル留置期間は7日から4.6日まで短縮され、CA-UTIは
1000カテーテル使用延べ日数あたり11.5から8.3まで減少し、抗生物質の使用が
減ったことからおよそ69%のコスト削減が可能となっている。また別の研究では、
単純な書面の注意喚起だけで、介入群のカテーテル使用を7.6%減らすことに成功
している。
Cornia PB, Amory JK, et al. Computer-based order entry decreases duration of indwelling
urinary catheterization in hospitalized patients. Am J Med. 2003 Apr 1;114(5):404-407.
Huang WC, Wann SR, et al. Catheter-associated urinary tract infections in intensive care
units can be reduced by prompting physicians to remove unnecessary catheters. Infect
Control Hosp Epidemiol. 2004 Nov;25(11):974-978.
Saint S, Kaufman SR, et al. A reminder reduces urinary catheterization in hospitalized
patients. Jt Comm J Qual Patient Saf. 2005 Aug;31(8):455-462.
これらの簡単な対策で、人間の行動におけるもっとも信頼性の低い要因である記
憶への依存を取り除くことができる。毎日カテーテルの必要性を見なおすことと
一緒に行えば、ほとんどの病院で、導尿カテーテルの留置期間を大きく短縮でき、
ひいては関連する感染のリスクを大きく減少させることができるはずである。
»
改善につなげるためには、何を変えていけばよいか?
 シフト開始時の看護アセスメントのなかにカテーテル留置の必要性の見直
しを組み込み、留置基準が満たされなければ主治医に連絡することを要件
とする。
20
How-to Guide: Prevent Catheter-Associated Urinary Tract Infections
 留置基準が満たされず、抜去が禁忌でない場合には(プロトコールで定
義)、導尿カテーテルを抜去できるような看護プロトコールを策定する。
 挿入の48時間から72時間後に自動的に停止オーダーが出されるようにし、
留置を継続するには適応理由が更新オーダーに記録されることを条件とす
る。
 患者記録には注意喚起を組み入れ、カテーテル留置継続にはそれなりの適
応理由を主治医が記録しなければならないようにする(付録のSHEA-IDSA
概要のCA-UTI文書を参照)。
 カテーテルが留置されていることを医師に知らしめ、継続留置には理由の
記録が必要であることを示す警告を、コンピューターのオーダーシステム
に組み込む。
21
How-to Guide: Prevent Catheter-Associated Urinary Tract Infections
チームを結成する
IHI では、患者のケアの改善のために、学際的なチームアプローチをとることを
推奨している。改善チームのメンバーはさまざまな職種からなるべきであるが、
その心はひとつであるべきである。異なる職種のスタッフをひとつにまとめるこ
とで、ケアチームのすべてのメンバーが患者アウトカムに対して責任を負い、同
じひとつの目標に向かって協力できるというメリットがある。
プロセスに関係する人は全員を対象とし、あらゆる方面からの支援と協力をとり
つけるようにする。たとえば、看護スタッフをいれないチームは必ず失敗すると
いっていい。看護スタッフの率いるチームは成功するかもしれないが、力を欠く
ことが多い。やはり、医師もチームの一員でなければならない。
優秀なチームメンバーをチームに引き入れ維持するためのヒントとしては、問題
の定義と解決にデータを用いるということ、十分に地位が高く、チームの行って
いる仕事に直接の信用を目に見えて付与できるような院内のチャンピョンを獲得
すること、プロジェクトに協力したがらない人を説き伏せるのではなく、プロジ
ェクトに協力することを積極的に示しているスタッフと協力すること等が挙げら
れる。
またチームは、このプロジェクトを実際に行っている患者ケアエリアで活動的に
仕事をしている、権威のある人物からの奨励や支援を必要とする。こうしたチャ
ンピョンとなる人物を特定することで、チームの成功への動機付けも増幅される。
対策を講じても改善が十分に迅速に感じられない時に、チャンピオンが、医師を
含むすべての臨床スタッフに対して問題を再度確認することで、目標に向けて全
員が横道にそれることなく邁進することができる。
導入した対策は、終局的には確立したものとなる。が、新しいエビデンス等の変
更が発生した場合には、すでに策定したプロセスを再度見直す必要がでてくる。
22
How-to Guide: Prevent Catheter-Associated Urinary Tract Infections
「プロセス責任者」、すなわちプロセスが機能することを確認する現在また将来
の責任を負う担当者を特定することで、プロジェクトの長期的成功を継続させる
ことができる。
目標を定める
改善には目標の設定が必要である。明確で確固たる意図なくしては、施設が改善
をなすことはできない。目標には時間的期限を設け、測定可能なものとするべき
である。また、影響を受ける対象となる患者群も具体的に定義するべきである。
目標に関係者の同意を取り付けることも欠かせないし、目標の達成に必要な人や
資源の割り当ても重要である。
CA-UTI 削減のために適切となる目標の例として、「予防対策の実施遵守を高め
ることにより、1年以内に CA-UTI 率を 50%削減する」というような簡素なもの
が挙げられる。
不明瞭ではない焦点の定まった目標がある方が、チームの成功率は上昇する。数
値的な目標を設定することで、目指すところが明確化され、変更を行うための緊
張感を出すのに一役買い、測定の方向づけができ、最初の変更を的を絞ったもの
とすることができる。目標が定まったら、目標から意図的に、または知らず知ら
ずのうちに逸れてしまわないよう注意する必要がある。
23
How-to Guide: Prevent Catheter-Associated Urinary Tract Infections
改善モデルを利用する
プロジェクトを前進させるために、IHI としては改善モデルを利用することを推
奨している。プロセス改善協会の開発した改善モデルは、改善のスピードアップ
のために使える簡便ながら強力なツールであり、何百という医療機関がさまざま
な医療のプロセスやアウトカムを改善するために使って成功してきている。
このモデルは2つの部分から構成されている。
1) 明確な目標を設定し、2) 変更が改善につながっているかどうかを知るため
の測定方法を策定し、3) 改善につながる可能性の高い変更を特定するための、
改善チームの指針となる3つの基本的課題
実際の職場における、変更の小規模なテストを行うための PDSA(Plan-DoStudy-Act)サイクル。すなわち、テストを計画し、試行し、結果を観察し、
学習したことに基づき行動するサイクルである。これは科学的な方法であり、
行動に結びつけるための学習に用いられている。
実施: ある変更の小規模テストを行い、各変更から学習し、いくつかの PDSA
サイクルを通じて変更を精錬した後で、その変更をより大規模に実施することが
可能となる。たとえば、カテーテル留置の時の挿入チェックリストを1人の患者
で使用することから始める等である。
拡大: パイロット規模での患者群を対象としたひとつ、あるいは複数の変更を
実施して成功できたら、次にその変更を病院内の別の部門や他の病院へも拡大す
ることができる。
改善モデル Model for Improvement ( www.IHI.org)により詳細を記載している
ので参照されたい。
24
How-to Guide: Prevent Catheter-Associated Urinary Tract Infections
PDSA ワークシート
サイクル:
1
日付:
1/10/09
プロジェクト: カテーテル関連尿路感染の削減
Act
Plan
Study
Do
今回の PDSA サイクルの目的:
導尿カテーテルの継続的必要性に関
する基準を用いてナースが行う抜去できるかどうかの判断がドクターのそ
れと合致し、ナース主導型のプロトコールの基礎とすることができるかど
うかを試験する。
計画: 導尿カテーテルの継続的必要性に関する基準リストを作成し、数人の患者のアセスメントに
おいてテストする。
課題: 上記基準を用いるナースは、カテーテルが抜去できるかどうかについてドクターと意見が合
うか?ナースはカテーテル抜去を推奨することをためらわずに行えるか?ドクターはナース主導型
のカテーテル抜去プロトコールを承認するのにやぶさかでないか?
予測: ナースとドクターは、基準が明確に適用できる患者には意見の合意をみると思われる。テス
ト期間中に意見の一致がみられれば、ナースもドクターもプロトコール設定について依存はないと
思われる。
変更/テストを企画する –誰が、何を、いつ、どこで:
何を: カテーテル留置患者を2人基準を用いてアセスメントを行い、抜去についてのナースの推奨と
ドクターの決定とを比較する。
誰が: スタン(ナース)、マーガレット(ドクター)
いつ: 南内科ユニット
いつ: 明日の日中シフト
データ収集を計画する –誰が、何を、いつ、どこで:
誰が: スタン
何を: 基準を用いたナースの推奨とドクターの決定をみる。
いつ: 明日の日中シフト、患者のアセスメントを行うかたわら行い、またドクターとのディスカッシ
ョン中にもデータ収集を行う。
いつ: 南内科ユニット
実行: 変更テストを実施する。データを収集し分析を開始する。
スタンは導尿カテーテル留置患者2人を特定し、患者 A は継続的な必要性の基準を満たしており、
患者 B は満たしていないと判断した。すなわち、患者 B はカテーテルを抜去することができるとし
た。マーガレット(ドクター)がスタンとともにこの判定について協議し、患者 B のカテーテルの
抜去について意見の一致をみた。患者 B のカテーテル抜去のオーダーが出された。
データ分析を完了する:
このサイクルの結果は予測とどのように一致し、またどのように違っていたか?
このサイクルで得た新しい知識を要約する:
ナースとドクターはこれら患者におけるカテーテルの継続について意見の一致をみた。他のナース
やドクターをまきこんだより規模の大きなテストを行い、基準が明確で理解できるかどうかを確認
する必要がある。
行動: このサイクルの結果実施する行動を列挙する:
25
How-to Guide: Prevent Catheter-Associated Urinary Tract Infections
ナースの推奨とドクターのオーダーの一致をモニタリングしつつ、他のナースに基準の使用につい
てトレーニングを行いテストをさらに継続する。
次のサイクルの計画をたてる(変更の修正、別のテスト、実施のサイクル等):
南病棟の日中シフト勤務のナース全員 で 3 日間基準をテストする。基準の使用についてはスタンが
ナースのトレーニングにあたる。マーガレットは他のドクターとの連絡係を務め、まだテスト段階
であることを伝える。
26
How-to Guide: Prevent Catheter-Associated Urinary Tract Infections
プロジェクトを開始する
一夜にしてすべての予防要素を実施したり、すべての CA-UTI をなくしてしまう
ことは無理である。できたとしたら、きっと何かが抜けているとしか思えない。
プログラムを成功させるには、周到な計画、プロセスが成功するかどうかを判定
するための試験、必要に応じた修正、再試験、注意深い実施が必要である。

チームおよび対象となるエリアを選択する 。ひとつの看護ユニットか
ら開始するのがベストであることが多い。場所の選択を簡単にするに
は、導尿カテーテルがもっとも頻繁に使用されているのはどこかを判
定するとよい。
現在の状況を把握する。現在不必要ナカテーテルを計数しているか?

挿入されたカテーテルの見直しを毎日行うようなプロセスがあるか?
なければ、スタッフと協力して変更への準備を開始する。

感染管理部門に連絡する。自施設のカテーテル関連尿路感染の率を知
り、施設から規制機関への報告頻度についても学ぶ。

試験を開始する前に、適切な挿入テクニックを遵守するために必要な
装置や物品が、ケア地点にすべてそろっているかどうかを確認する。

教育プログラムを開始する。中心となる原理をスタッフに教えること
で、多くの人が変更のプロセスに心を開いてくれる。

カテーテル使用を回避することについてのエビデンスや理論的理由付
けをスタッフに示す。
27
How-to Guide: Prevent Catheter-Associated Urinary Tract Infections
変更を試験する
現行のプロセスを研究しどのように変更していくかを決め、影響される当事者を
教育したら、次のステップは CA-UTI 予防のために各変更事項の試験(ケア要
素)を開始することである。

カテーテル挿入時に、まず1人の患者に対して挿入チェックリストを
使用することから開始する。

患者のケアを行うナースひとりひとりと話をして、毎日の維持管理の
手順をきちんとでき、基準を使ってカテーテルの継続的必要性につい
てアセスメントを行えるようにする。

教育と実践で齟齬がないように、シフトごとに同じアプローチが実施
されるように確認する。

フィードバックを処理し、提案を改善に組み込む。

プロセスを精錬しより信頼性を高めるために、さらに PDSA サイクルを
行う。

パイロットユニットで CA-UTI の削減が達成できたら、同じ変更を他の
ユニットへも拡大し、最終的には院内の導尿カテーテルの使用されて
いるすべての部署にまで拡大する。
28
How-to Guide: Prevent Catheter-Associated Urinary Tract Infections
付録 A:推奨される測定指数
ある変更を行った時に、それが改善につながっているかどうかを知る唯一の方法
は、測定を行うことである。 IHI では、このいくつかの測定指標を策定しており、
改善プロジェクトの進捗状況を確認するために、必要に応じてこれらのうちのい
くつか、あルイは全部を用いることを推奨している。
測定指標を選択するにあたっては、以下のアドバイスを参考にするとよい:
1. できる限り、他のプログラムのためにすでに収集している測定指標を用い
る。
2. 選択した測定指標はそれがもたらす結果の有用性と、結果を得るために必
要な資源を勘案して評価する。前者を最大限とし、後者を最小限とするよ
うに努める。
3. 測定計画には、プロセスとアウトカムの両方の測定指標を含めるようにす
る。
4. ここに記載されていない測定指標を用いてもよいし、また自施設の環境に
あわせて、記載されている測定指標を適宜修正してもよい。
5. 測定結果を院内で貼り出すことは、チームの動機付けの継続にも、進捗状
況の周知徹底にも非常によいやり方である。チームが有用であると思い、
結果をみることで高揚されるような測定指標を含むようにする。
アウトカム指標
1. カテーテル関連有症候性尿路感染の率
分子:
有症候性 CA-UTI の症例数
分母:
カテーテル使用延べ日数
計算:
頻度:
1000 をかけて、1000 カテーテル使用延べ日数あたりの率を
計算する。
毎月
サンプリング
& 測定のヒン
ト:
この指標は通常場所別、種類別に報告される。例:看護ユニ
ット別(内科、外科等)、ICU 別(内科 ICU、外科 ICU、外傷
ICU、熱傷 ICU 等)
導尿カテーテルの利用の多いユニットからデータの収集を開
始するのが有用であろう。
29
How-to Guide: Prevent Catheter-Associated Urinary Tract Infections
資源:
この指標は CDC の NHSN Manual
で用いられており、SHEA-IDSA Compendium でも推奨され
ている。
2. 不必要な導尿カテーテルや不必要なカテーテル使用留置日数
これらは代理のアウトカム指標として機能し得る。すなわち、これらの指標
の数値を減らすことで CA-UTI の率を減らせることが、これまでのエビデンス
で示されている。不必要なカテーテルの測定はプロセスの記録から判定され
るため、以下のプロセス指標についての章に定義を記載した(プロセス指標
1-5 を参照)。
プロセス指標
これらのプロセス指標は、このハウツーガイドに含まれている焦点分野に基づき、
使用することが提案されているものである。CA-UTI 削減のために施設がとるこ
とのできるすべての測定指標を反映しているわけではない。こうしたプロセスを
実施している施設は、改善努力の評価にとってこれらの指標が役に立つと考える
であろうが、また各施設の内容にあわせて定義の修正を行うべきものである。
これらの指標は記録に基づいて判定されるものであるが、プロセスは完了される
ことはされても、記録が残されていないこともある。また、患者のプライバシー
や現実性を考えれば、直接の観察はかならずしも常にできるものではない。しか
し、医療ケアチーム全体で標準的ケアが行われるためには記録をとることは非常
に重要であり、記録が抜けているからといって、ある患者の医療記録を測定指標
の対象からはずす理由にはならない。
これらの測定指標を使用したり、IHI に報告することは要件として求められてい
るものではない。以下に記載するプロセス指標はあくまで提案されているもので
ある。自施設の改善目標にあった指標を選択するとよい。
30
How-to Guide: Prevent Catheter-Associated Urinary Tract Infections
1. 不必要な導尿カテーテル(適切な挿入の基準を満たさない導尿カテーテ
ル)
分子:
挿入の時に適切な適応理由が記録されることなく挿入された
新たな留置型導尿カテーテル の本数
挿入基準には少なくとも以下を含むべきである:

特定の手術の周術期の使用

重症患者の排尿量のモニタリング

急性尿貯留や尿閉塞の管理

失禁患者の褥瘡の治癒に役立てるため

例外として、患者の快適さを改善するため(SHEA-IDSA)、また
は終末期ケアの不快感をやわらげるため(CDC)
計算:
各病院は、それぞれのニーズにあわせて上記の挿入基準に項
目を追加したり、あるいは修正したりするとよい。また、挿
入基準はポリシーや手順書内に定義するとよい。
新たな留置型導尿カテーテルを挿入した患者の記録で、レビ
ューされた記録の数
分子を分母で割り、パーセンテージで報告する。
頻度:
少なくとも毎月一度
サンプリング
& 測定ヒント:
改善プロジェクトの最中は毎週報告すると有用かもしれな
い。
改善努力が焦点をあてているユニット、または導尿カテーテ
ルの利用が多いユニットの患者データの収集から開始する。
分母:
毎週1日上記ユニットの新たに導尿カテーテルを留置した患
者全員の記録に目を通して無作為にサンプルを収集する。週
ごとにレビューの曜日や時間をずらす。
患者が重複して数えられないよう確認しながら、最近入院し
た患者(直近 72 時間以内や前回のレビューの後等)のみの
記録をレビューする。
分子に数えるために適応理由の記録が行われなければならな
い時間帯(挿入の時の4時間以内等)を明記する。理想的に
は、適応理由の記録は挿入時に行われるべきである。挿入か
ら1日以上たってから書かれた適応理由は含めないこと。
31
How-to Guide: Prevent Catheter-Associated Urinary Tract Infections
挿入の適応理由の記録があるかないかにかかわらず、新たに
留置型導尿カテーテルを挿入された患者は全員を分母に数え
る。適切な適応理由の記録されていない患者は分子に数え、
改善機会を反映するものとなる。
救急救命室での留置型導尿カテーテルの挿入が多ければ、救
急救命室における不必要な挿入のパーセンテージを知るため
に救急救命室だけ別個に測定することを検討する。
この指標は反対から、すなわち適切な留置型導尿カテーテル
の使用という観点からも報告することができ、この場合に
は、分子は挿入時に挿入基準を満たす適応理由が記録されて
いる患者となる。
2. 無菌テクニックで挿入された導尿カテーテル
分子:
無菌テクニックの記録のある患者記録や患者用紙の数
記録されている無菌テクニックには少なくとも以下が含まれ
ているべきである:

挿入直前の手指衛生

挿入中の以下の項目の使用:

手袋、ドレープ、ガーゼ

尿道口の洗浄用の滅菌溶液または生体消毒液

挿入用の単回使用の滅菌潤滑ゼリー分包

カテーテルのサイズ
計算:
新たに留置型導尿カテーテルを挿入した患者記録で、レビュ
ーされた記録の数
分子を分母で割り、パーセンテージで報告する。
頻度:
少なくとも毎月一度
サンプリング
& 測定ヒント:
改善プロジェクトの最中は毎週報告すると有用かもしれな
い。
改善努力が焦点をあてているユニット、または導尿カテーテ
ルの利用が多いユニットの患者データの収集から開始する。
分母:
データは、患者の医療記録や、チェックリスト、ステッカ
ー、カテーテル挿入キットに入っている用紙等その他のデー
タ収集用紙に記録するところから収集できる。こうしたデー
タ収集用紙を永久的な医療記録の一部とするかどうかの決定
は、各施設で行わなければならない。
32
How-to Guide: Prevent Catheter-Associated Urinary Tract Infections
患者記録を用いる場合には、毎週1日上記ユニットの新たに
導尿カテーテルを留置した患者全員の記録に目を通して無作
為にサンプルを収集する。週ごとにレビューの曜日や時間を
ずらす。
患者が重複して数えられないよう確認しながら、最近入院し
た患者(直近 72 時間以内や前回のレビューの後等)のみの
記録をレビューする。挿入テクニックは挿入時に記録される
べきものである。
情報資源:
挿入テクニックについての記録がない場合には、その患者は
分母に数えるが、これらの患者は分子には入らず、改善の機
会を反映するものとなる。
CDC、WHO How-to-Guide for Hand Hygiene
3. 推奨されるガイドラインに沿った導尿カテーテルの維持管理
導尿カテーテルを留置しており、推奨されるプラクティスの
分子:
実施が毎日記録されている患者の数
毎日の記録には少なくとも以下が含まれているべきである:

以下の確認:

滅菌の、継続的に閉鎖している排尿システム

カテーテルが正しく固定されている

採尿バッグの一が膀胱よりも下

尿の流れが遮られていない

採尿バッグが定期的に空けられている
分母:
レビューした導尿カテーテル留置患者の記録の数
計算:
分子を分母で割り、パーセンテージで報告する。
頻度:
少なくとも毎月一度
サンプリング
& 測定ヒント:
改善プロジェクトの最中は毎週報告すると有用かもしれな
い。
改善努力が焦点をあてているユニット、または導尿カテーテ
ルの利用が多いユニットの患者データの収集から開始する。
毎週1日上記ユニットの導尿カテーテルを留置した患者全員
の記録に目を通して無作為にサンプルを収集する。週ごとに
レビューの曜日や時間をずらす。
33
How-to Guide: Prevent Catheter-Associated Urinary Tract Infections
記録は毎日行われるべきである(ポリシーで求められている
場合にはより頻繁に)。カテーテルが留置されている間は毎
日維持管理の記録がなされるべきである。これは、「オー
ル・オア・ナッシング」指標である。
4. 導尿カテーテルの必要性の毎日の評価
分子:
導尿カテーテルを留置しており、継続したカテーテルの必要
性が毎日記録されている患者の数
適応理由には少なくとも以下が含まれているべきである:

特定の手術の周術期の使用

重症患者の排尿量のモニタリング

急性尿貯留や尿閉塞の管理

失禁患者の褥瘡の治癒に役立てるため

例外として、患者の快適さを改善するため(SHEA-IDSA)、また
は終末期ケアの不快感をやわらげるため(CDC)
分母:
各病院は、それぞれのニーズにあわせて上記の挿入基準に項
目を追加したり、あるいは修正したりするとよい。また、挿
入基準はポリシーや手順書内に定義するとよい。
レビューした導尿カテーテル留置患者の記録数
計算:
分子を分母で割り、パーセンテージで報告する。
頻度:
少なくとも毎月一度
サンプリング
& 測定ヒント:
改善プロジェクトの最中は毎週報告すると有用かもしれな
い。
改善努力が焦点をあてているユニット、または導尿カテーテ
ルの利用が多いユニットの患者データの収集から開始する。
毎週1日上記ユニットの導尿カテーテルを留置した患者全員
の記録に目を通して無作為にサンプルを収集する。週ごとに
レビューの曜日や時間をずらす。
記録は毎日行われるべきである(ポリシーで求められている
場合にはより頻繁に)。カテーテルが留置されている間は毎
日維持管理の記録がなされるべきである。これは、「オー
ル・オア・ナッシング」指標である。
記録がない場合や記録された適応理由が基準を満たさない場
合には、その患者は分母に数えるが、これらの患者は分子に
は入らず、改善の機会を反映するものとなる。
34
How-to Guide: Prevent Catheter-Associated Urinary Tract Infections
5. 不必要な導尿カテーテル留置日数
分子:
継続的必要性の適応理由が記録されていない、または記録さ
れている適応理由が基準を満たさない期間の導尿カテーテル
留置日数
適応理由には少なくとも以下が含まれているべきである:
特定の手術の周術期の使用


重症患者の排尿量のモニタリング

急性尿貯留や尿閉塞の管理

失禁患者の褥瘡の治癒に役立てるため

例外として、患者の快適さを改善するため(SHEA-IDSA)、また
は終末期ケアの不快感をやわらげるため(CDC)
頻度:
各病院は、それぞれのニーズにあわせて上記の挿入基準に項
目を追加したり、あるいは修正したりするとよい。また、挿
入基準はポリシーや手順書内に定義するとよい。
レビューした記録から拾った留置型導尿カテーテル使用延べ
日数
1000 をかけて、1000 カテーテル使用延べ日数あたりの率を
計算する
少なくとも毎月一度
サンプリング
& 測定ヒント:
改善プロジェクトの最中は毎週報告すると有用かもしれな
い。
改善努力が焦点をあてているユニット、または導尿カテーテ
ルの利用が多いユニットの患者データの収集から開始する。
分母:
計算:
毎週1日上記ユニットの導尿カテーテルを留置した患者全員
の記録に目を通して無作為にサンプルを収集する。週ごとに
レビューの曜日や時間をずらす。
記録は毎日行われるべきである(ポリシーで求められている
場合にはより頻繁に)。カテーテル留置期間中、毎日記録が
ある場合のみ分子に数える。これは、「オール・オア・ナッ
シング」指標である。
情報資源
カテーテル使用延べ日数に関する勧告については、 CDC
NHSN Manual を参照のこと。
35
How-to Guide: Prevent Catheter-Associated Urinary Tract Infections
36
“膀胱バンドル”
• 無菌挿入と正しい維持管理こそもっとも重要な要素である
• 膀胱の超音波チェックで導尿カテーテルの留置を回避できること
がある
• 患者によってはコンドームカテーテルや間欠カテーテルが適切に
使用できる
• 本当に必要ではいかぎり、留置型カテーテルは使用しない!
• 注意喚起や停止オーダーを用いて、カテーテルの早期抜去を促
進するのが望ましい
著:Sanjay Saint, MD, MPH
アン・アーバー退役軍人メディカルセンターディレクター
ミシガン・メディカルスクール、内科教授