Coyle et al.

6/9/2004:第 11 章 発注処理と情報システム
第 11 章
発注処理と情報システム
Ⅰ 情報システムをめぐる最近の問題
Ⅱ 情報システムの体系と目的
Ⅲ 情報の質
1) 情報の入手可能性
2) 情報の正確性
3) 通信の有効性
Ⅳ ロジスティクスにおける情報の配置
Ⅴ 最新のロジスティクス情報技術
1) バーコード
2) EDI
3) データ管理
4) 人口知能・エキスパートシステム
5) リモ−トアクセスと通信
Ⅳ ロジスティクス情報システムの概念
Ⅶ 注管理システム
1) 発注と補充サイクル
2) 発注処理の対費用効果
3) 発注処理システムの例
4) 調査と人口知能システム
5) 環境の精査
6) 予測
Ⅷ 意思決定支援システム
1) データベースの重要性
2) 各種のモデリング法
3) ロジスティクスにおけるコンピュータ・アプリケーション
4) 人工知能/エキスパート・システム
Ⅸ 報告とアウトプットシステム
Ⅹ 新しい情報技術への適応
まとめ
研究のための設問
学修の目的
以下の課題に応えられるよう、本章を読み進めてもらいたい:
− 情報システムにおける最近の課題について論じなさい。
− 情報システムの構築方法と必要な専門知識を修得しなさい。
− 良質なロジスティクス情報がなぜ重要なのか、理解しなさい。
− 現在使用されている革新的なロジスティクス情報技術について論議しなさい。
− ロジスティクス情報システムと重要なモジュールまたはそれを構成するサブシステム
の概念について理解しなさい。
− 発注サイクルと全体的な発注管理プロセスについて記述しなさい。
− 新しい情報技術を利用する場合、理解し取り組まれなければならない課題を予期せよ。
(1)
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LOGISTICS PROFILE : KELLOGG COMPANY
小売業者の発注とメーカーの生産・出荷をリンクするロジスティクス情報システムのソ
フトウェア企業である LogiCNet 社はメーカーとしてははじめて加工食品メーカーのケロ
ッグ社と業務提携した。LogiCNet 社の会長兼 CEO は次のように語っている。「数ヶ月のテ
スト期間を経たシステムの運用開始は、消費者向けパッケージ商品産業における流通資源
計画開発の一里塚である。これは世界最初の顧客駆動型の連続補充プログラム(CRP)で
ある。サプライヤ駆動型の CRP は多いが、弊社の製品は顧客駆動型として最初のものであ
る。」メリーランド、ヴァージニア、ワシントン DC に 158 店舗をもつ巨大な地域スーパー
マーケット・チェーンの Giant Food 社は、この情報システムのもとでメーカー(ケロッグ
社)と協働する最初の食料雑貨小売業者である。
すべての関連企業間で計画と運営業務の同期化を可能とする小売業者−メーカー情報ネ
ットワークの業界標準を目指す LogiCNet 社のような企業は少数である。全体的な目標は在
庫と費用を削減して、効率を高めた無駄のないサプライチェーンの構築にある。こうした
サプライチェーンの構築は、小売業の在庫計画をメーカーのロジスティクス・生産業務計
画と同期させることによって実現できる。この考えは、タイトなサプライチェーン構築が
不必要な在庫を減らして費用を引き下げるという考え方に由来する。加工食品産業の場合、
小売業者とメーカーの情報システムを同期させることは、業界全体で1年間に在庫で 500
億ドル、在庫維持費用で 120 億ドル、輸送で 60 億ドルの経費節減をもたらすと推定される。
加工食品産業ではこれまで、主に加工食品のサプライチェーンに着目してきた。このサ
プライチェーンの構成企業は個々に非能率な流通システムの改善に努力を払ってきた。
LogiCNet 社との提携がうまくいけば、ケロッグ社と Giant 社の情報システムは、製造と物
流を店舗販売に同期させるのに役立つであろう。今日、消費者向けパッケージ商品の場合、
リードタイムの 90%は倉庫での保管時間と推定されている。その主な理由は、メーカーが
十分な販売データをもっていないところにある。そのため、メーカーは過去の経験に基づ
いて需要を予測し、サプライチェーンに商品を「プッシュする」だけである。
POS データは、LogiCNet 社のデータベースを通して卸売業者に毎日フィードバックさ
れる。その結果、卸売業者はどんな商品が売れているか、どんな商品を製造し出荷する必
要があるかを 8 週間前にメーカーに示すことができる。本質的に、適切なデータベースを
共有し、意思決定支援システムをうまく利用している Giant 社とケロッグ社のような企業
は、在庫パイプラインを毎日モニターして、消費者の需要を店舗毎や地域毎に集計し、輸
送、保管、製造への衝撃を決定することができる。高度な情報が利用できれば、メーカー
は、市場ニーズを予想して資材調達と生産スケジューリングを改善できるはずである。
出所:Joseph Bonney, "Kellogg Goes Live with LogiCNet," American Shipper (May 1994) 62, and
Joseph Bonney, "LogiCNet Signs Giant Food Chain," American Shipper (February 1993) : 28. 使用許
(2)
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諾済
多くの企業は今日、効率的なロジスティクス管理が費用効率を全体として高めるための
前提条件であり、製品価格を引き下げて競争力を強化するための鍵であると見ている【1。さ
らに、先進的な多くの企業はマーケティング部門の責任者を中心に、ロジスティクスを、
差別化のためのユニークな手段の一つであると考えている。第1章のLogistics Profileで述
べたBectonディキンソン社はその好例ある。企業の間では、情報技術の進歩にともなって、
情報システム部門が企業組織全体の効率的な業務遂行にとても重要であると考えられるよ
うになったのである【2。(訳注=「アーキテクチャ」コンピュータ・システムの論理的構造
全般)
[leading edge technologies] 最先端技術
また、ミシガン州立大学が行った最近の研究では、先発企業leading edge firmが情報技
術を巧みに利用することによって競争力を高め、競争優位の維持に使っていると指摘する【3。
電子データ・インターチェンジ(EDI)、高度な発注管理と輸送管理システム、バーコード・
システム、無線周波数(RF)能力のようなプロセス・オートメーションは、今日では特に
有用であると考えられている技術である。これらの技術は総費用の削減とサービス向上に
役立つことが明らかになっているけれども、その成否は、統合化システムを開発してサプ
ライチェーン・プロセス全体の管理に必要な情報を提供できるか否かにかかっている【4。
デビッド・グロスDavid Glossによれば、「ロジスティクス情報システムは、ロジスティ
クス活動を管理、統制、計測するためのハードとソフトを結合したものである。ロジステ
ィクスは、サプライチェーン全体を横断して行われる活動であると同時に、個々の企業内
でも行われる。ハードウェアとしては、コンピュータ、入出力装置、通信チャネル、バー
コード・RF装置のような補助技術、記憶媒体がある。ソフトウェアとしては、ロジスティ
クス活動のためのシステム・プログラムとアプリケーション・プログラムがある【5。」
[customer needs] 顧客ニーズ
顧客のロジスティクス・ニーズを充足するのに、効果的な情報管理が役立つ。企業は、
適時納品、品切れ回避、発注状況、貨物の追跡と移動促進、発注の簡便化と完遂、顧客の
取り込みと戻り荷獲得機会の創出、生産代替のようなロジスティクス要素を優先すべきで
1
この議論の部分は次から引用したC. John Langleyjr., "Information-Based Decision Making in Logistics
Management," International Journal of Physical Distribution and Materials Management 15, no. 7 (1985) : 41-42.
2 F. Warren McFarlan, "Information Technology Changes the Way You Compete," Harvard Business Review 62, no. 3
(May-June 1984) : 98-103.参照
3 Donald J. Bowersox, PatriciaJ. Daugherty, Cornelia L. Droge, Dale S. Rogers, and Daniel L. Wardlow, Leading
Edge Logistics: Competitive Positioning for the 1990's (Oak Brook, IL: Council of Logistics Management, 1989).
4 David J. Gloss, "Positioning Information in Logistics," Chapter 31 in The Logistics Handbook (New York: The Free
Press, 1994): 699-713. 参照
5 Gloss, "Positioning Information in Logistics", 699.
(3)
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ある【6。これらの活動はロジスティクス管理者の管掌業務であり、それがうまく完遂できる
かどうかは、意味のある情報が正確な形でタイムリーに提供されるか否かに大きく依存す
る。ロジスティクス部門は顧客ニーズの充足に深く関わっており、第一級の情報システム
はロジスティクス部門の使命遂行を容易にする。
本章では、最初に情報システム一般に関連した多くの現代的問題について述べ、次に大
がかりな情報技術投資によって影響を受ける企業の機能領域について述べる。続いて、情
報システムの体系と目的に注目し、情報の質と関連した多くの話題に触れる。今日使用さ
れているいくつかの重要な情報技術について簡潔に述べた後、ロジスティクス情報システ
ムの概念を強調して述べる。この部分は、ロジスティクス情報システムを構成する特定の
要素・モジュールを更に深く議論するための雛型として役に立つ。本章は結びで、新技術
への適応に関する将来と常に存在する仕事を展望する。
Ⅰ
情報システムをめぐる最近の問題
コンピューターサイエンシズ社(CSC)による「情報システム管理の決定的な問題」調
査年報 1995 年版は、あらゆる企業が経験する激しい競争圧力と「より良い顧客サービスに
対する要請」を引用する。結果として、企業目標を実現するために、企業は情報システム
(I/S)への支出を増やしたり、能力のない情報システム部門幹部を交替させるなどして、
情報技術の利用をさらに推進しようとしている【7。
[key issues] 重要な問題
この調査年報の中で、CSCは 1995 年における情報システム関連問題トップ 10 を発表し
ている。表 11-1 は、その項目と関心ありと回答した企業の割合を示したものである。最も
関心が強かったのは「情報システムを企業目標と連携させること」であり、回答者の 57.5%
がこれを主要な関心事とした。以下、「機能横断的なシステムを構築すること」、
「データを
組織化して利用すること」、「ビジネス・リエンジニアリングの実行(1994 年調査では第一
位であった)
」、「人的I/S資源の改善」となっている。1994 年の調査と比較してランクを大
きく上げた項目は、「顧客・サプライヤとの連携」
(第 16 位から第 7 位に)
と「情報技術
(I/T)
管理研修」(第 18 位から第 11 位に)であった【8。リエンジニアリングの遂行がランキング
を下げたことに関して、CSCのConsulting & Systems Integration本部長は、「リエンジニ
6
例えば、Bernard J. LaLonde, Martha C. Cooper, and Thomas G. Noordewier, Customer Service: A Management
Perspective (Oak Brook, IL: Council of Logistics Management, 1988): 37-70.を見よ。
7 Computer Sciences Corporation, Critical Issues of Information Systems Management for 1995 (Cambridge, MA:
Computer Sciences Corporation, 1995).
8 Computer Sciences Corporation, "Linking Technology to Corporate Goals Replaces Reengineering as Top Concern
in 1995 CSC Survey," CSC News Release (Cambridge, MA: Computer Sciences Corporation, March 27, 1995): 1.
(4)
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アリングは確かに第一位でなくなったけれども、それは依然として競争圧力の高まりの中
で企業が取る一般的な方策である」ことを示唆する。彼の感想では、多くが実行局面に入
っているリエンジニアリング・プロセスの次に取るべき方策は、リエンジニアリングの効
果をさらに高めるために機能横断的なシステムの構築を優先させることである。この機能
横断的システムの構築を重視する傾向は、当分の間続くはずであるという【9。
表 11-1 TOD 情報システムの問題:1995 年(北米での調査)
問題
回答率(%)
1. 情報システムと企業目標の連携
57.5
2. 機能横断的情報システムの制度化
55.5
3. データの組織化と利用
54.9
4. ビジネス・リエンジニアリングの実行 52.3
5. I/S 人的資源の改善
49.1
6. Enabling change and nimbleness すばやさ
48,8
7. 顧客・サプライヤとの連結
46.2
8. 情報アーキテクチャの創出
45.3
9. 陳腐化したシステムのアップデート
43.7
10. システム開発プロセスの改善
43.1
出所:Computer Sciences Corporation, Critical Issues of Information Systems Management for 1995,
CSC News Release (Computer Sciences Corporation: Cambridge, MA, 1995), page I H. Copyright (c)
1995 CSC. All rights reserved. 使用許諾済
訳者注:http://www4.ocn.ne.jp/~htgifu/CONT-E.html
1.リエンジニアリングとは
「リストラ」(Restructuring)は事業の再構築という意味で、業績の悪い部分を削って業績のよい部門に
経営資材を集中させる経営改善の手法。
こ れ に 対 し て「 リ エ ン ジ ニ ア リ ン グ 」と は 、職 種 別 ・ 機 能 別 で は な く 、仕 事 の 流 れ か ら
み て 業 務・組 織・戦 略 を ゼ ロ か ら 根 本 的 に 再 構 築 す る 手 法 、つ ま り 既 存 の 業 務 の 流 れ( プ
ロ セ ス )を 根 本 的 に 見 直 し 、必 要 な 機 能 だ け に 絞 っ て 業 務 を 徹 底 的 に 再 設 計 す る こ と 。
きわめて劇的で大胆な経営改善の考え方であり、リエンジニアリングが成立すれば
●従来の部分的な改革では実現できなかった大きな飛躍ができる
●ムダの徹底的な排除が可能
などのメリットが考えられる。
80 年 代 に 衰 退 の 一 途 を た ど っ て い た は ず の 米 国 企 業 の 多 く が 90 年 代 に 入 り 力 強 く 復 活
したが、この要因のキーワードの一つがリエンジニアリングであるといわれている。
リ エ ン ジ ニ ア リ ン グ を 一 言 に 要 約 す れ ば 、I T( 情 報 技 術 )を 最 大 限 に 活 用 す る こ と に よ
ってビジネス・プロセスを根源的に見直すことであり、単なるコンピュータ化ではな
い。
何かのマニュアルを熟読したからといってすぐさまリエンジニアリングの極意を習得
で き る わ け で は な く 、リ エ ン ジ ニ ア リ ン グ の「 公 式 」は 存 在 し な い 。経 営 プ ロ セ ス の 無
駄の排除をねらった「一からの見直し」は個々の企業の創造力にゆだねられている。
2.リエンジニアリングの留意点
リ エ ン ジ ニ ア リ ン グ を 成 功 さ せ る た め に は「 原 点 に 還 っ て ゼ ロ か ら 自 社 を 見 直 す 」と い
う思想を出発点に、次のことに留意しておく必要がある。
● 大 改 革 を 行 う と き こ そ リ エ ン ジ ニ ア リ ン グ の 実 施 が 必 要 で あ る 。コ ス ト 削 減 や 品 質 向
上などの部分的な改善にとどまらず、現在の業務の流れをすべて見直し、再構築する。
● 会 社 の 現 在 の 姿 で は な く 、あ る べ き 将 来 像 を 見 据 え 、そ こ か ら 実 行 し な け れ ば な ら な
いことを決定し、そのやり方を決めていく。
9
Computer Sciences Corporation, "Linking Technology to Corporate Goals Replaces Reengineering as Top Concern
in 1995 CSC Survey."
(5)
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● 問 題 意 識 を 持 ち 、あ る べ き 将 来 像 の 実 現 に 向 け て 組 織 を 引 っ 張 っ て ゆ く ト ッ プ の 強 固
なリーダーシップが成功の絶対条件。
● リ エ ン ジ ニ ア リ ン グ で は 、例 え ば「 注 文 書 の 受 領 」と い っ た 個 々 の 業 務 で は な く 、処
理や加工した商品を顧客に渡すまでの一連の流れや作業のプロセス全体に焦点を当て
る。
● 今 ま で に 築 い て き た 組 織 や 手 続 き に と ら わ れ ず に 、あ る べ き 姿 を 実 現 す る た め 全 く 新
しいやり方を創造することになる。
●市場や顧客のニーズに合わせながら絶えず変革を継続していくことが重要。
[critical business processes]
決定的に重要な業務
また、企業にとって最も決定的な業務は何かをたずねた結果も、この調査で報告されて
いる。結果は表 11-2 のとおりである。重要度が高い上位三つの業務はすべて、ロジスティ
クスとサプライチェーン・マネジメントに関連している(顧客サービス、発注処理、納品
/ロジスティクス)。第 4 位と第 5 位(販売、会計/請求書発行/財務)はロジスティクス
と相互に作用しあう重要なものである。したがって、重要度が高い上位五つの業務はすべ
て、ロジスティクスおよびサプライチェーン・マネジメントときわめて重要な関係がある。
これらの業務は情報システム能力によって収益性が高まり、顧客サービスの改善に向けて、
会社として積極的に資金助成すべき業務である。
表 11-2 決定的に重要な業務(北米の回答)
ビジネス・プロセス
回答率
1. 顧客サービス
48.4%
2. 発注処理
38.8
3. 納品/ロジスティクス
27.7
4. 販売
24.4
5. 会計/請求書発行/財務
22.6
出所:Computer Sciences Corporation, Critical Issues of Information Systems Management for 1 995,
CSC News Release (Computer Sciences Corporation: Cambridge, MA, 1995), page 3H. Copyright (c)
1995 CSC. All rights reserved. 使用許諾済
Ⅱ
[designing information systems]
情報システムの体系と目的10
情報システムの設計
IBM 社は、統一的かつ効果的な方法で、ロジスティクス・チャネルを関わるすべての企
業の情報を統合するために、諸企業に多くの資源を提供してきた。その目的は、設計シス
テムと実行システムを補助する CIL/IS(Computer Integrated Logistics/Information
Systems=コンピュータ統合ロジスティクス情報システム)体系を利用して、資源利用を改
10
本節の主要な部分は下記に含まれているIBM Corporation, Computer Integrated Logistics: CIL Architecture
in the Extended Enterprise (Southbury, CT: IBM Corporation, U.S. Transportation Industry Marketing, 1991) : 6-7.
(6)
6/9/2004:第 11 章 発注処理と情報システム
善し、より良い顧客サービスを提供し、企業間情報フローの効果を高めることである。
CIL/IS の目的は、顧客の付託に対して望ましい資源配分水準で首尾一貫した満足感を与え
るために、エンド・ツー・エンドの輸配送管理ならびに在庫管理に必要な情報を統合・管
理し、かかる情報へのアクセスを提供することである。
図 11-1 は情報システムの構築プロセスを示したものである。それは既存の企業や組織の
寸見から始める=事業モデル(a)。これは、組織全体を示し、そして各機能を一般的に記述
したものである。組織の必要条件、目標、目的と決定的な成功要因の決定につづいて、ビ
ジネスプロセス・モデル(b)は、企業の各領域が行うものを示す。データ・モデル(c)は、
ビジネスプロセスを支援するために必要なデータとデータ・フローである。
(7)
6/9/2004:第 11 章 発注処理と情報システム
着目すべき特定のプロセスに関する決定に続いて、詳細なプロセス記述(d)とデータ記
述(e)のステップを完了しなければならない。プログラマないしソフトウェア設計ツール
を活用して、アプリケーション・プログラム(f)とデータベース記述(g)が生み出される。
最後に、システム・プログラマはなすべき仕事を見て、それはシステムプラットフォー
ム(h)を構築するオペレーション・システムをサポートするだけでなく、プログラマの仕
事を助けるツール、便利な設備(convenience)と能力をもつ。
構築処理に関与しているのは次のような人々である:
(8)
6/9/2004:第 11 章 発注処理と情報システム
◎ 設計者。プロセスを設計したり、ある種のプロセスについて、EDI の使用といった若干
の規格と規則を特定化することに携わる。設計者は、プラットフォーム(ワークステーシ
ョンないしメインフレーム)の物理的なデータ必要条件の大きさとテクノロジーの利用者
同士をリンクするネットワークを特定化する。
◎システム・プログラマ。ハードウェアとシステム・ソフト製品を組み立てる。
◎データ・マネージャ。どんなデータが存在するか、それがどこに保存されているか、そ
れはどのように使われるかということを記述するために、ディレクトリないし収納庫を構
築するデータベース製品を使う。アプリケーションプログラマは、業務アプリケーション
コードを書くにあたって、このシステム・プラットフォームとデータベースを使う。
最初の情報システムが完成すれば、システム・プラットフォームとデータベース構造が
できあがり、ビジネスプロセス・モデルとデータ・モデルの規律 discipline が理解され、次
のビジネス部門情報システムは先に開発されたものと統合されるので、その後のシステム
構築はより簡単になる。
Ⅲ
情報の質11
情報の質は三つの観点から見ることができる。
第一は、最良の決定を下すのに必要な情報の入手可能性である。
第二は、情報の正確さである。
第三は、種々の情報伝達方法の効率である。
1) Availability of Information
[relevance of information]
情報の入手可能性
情報の重要性
残念なことに、ロジスティクス管理者は、効果的な決定を下すのに必要な情報を必ずし
も与えられていない。もっとも一般的な理由はおそらく、多くの管理者が、自らの情報ニ
ーズを認識せず、したがってそのニーズを概念化して、言葉で表現するのに戸惑うという
点にある。これは、ニーズについて必ずしも正常な理解をもたない、あるいはそれを適格
に表現できない多くの顧客の場合と類似している。
正しい情報が与えられないもう一つの理由は、責任を持って情報を確保しなければなら
ないスタッフが自ら必要と判断したり、提供するのに都合がよいまたは費用効果がよいも
11
本節は下記から引用Langley, "Information-Based Decision Making in Logistics Management," 41-42.
(9)
6/9/2004:第 11 章 発注処理と情報システム
のだけをロジスティクス管理者に提供するということである。こうした情報はロジスティ
クス管理者が本当に必要とするものと全く異なることがしばしばある。
ロジスティクス管理者は、情報システムや技術、管理についてもっと多くを知る必要が
ある。それに加えて、(企業経営情報システム部長、情報職員部長等のような)多くの情報
システム管理者が、ロジスティクス管理とビジネス全般をもっと良く理解することから得
られる利益は大きい。このことは、これらの部門の管理者がお互いのニーズと能力をよく
知り、そして敏感になる双方向研修プロセスが必要であることを意味している。
2) Accuracy of Information 情報の正確性
ロジスティクス管理者にとって利用可能な情報には不満な点が多く、そのため管理意思
決定の最適化が損なわれる傾向がある。多くの企業は企業環境と競争環境が現在とは非常
に異なる何年も前に開発された原価計算と経営管理システムを使用しているので、こうし
た事態が時々起こる。これらのシステムの多くは生産費情報をゆがめ、ロジスティクス管
理者が最善の決定をするのに必要な情報をもたらさない。
たとえば、多くのロジスティクス管理者は保管、輸送、在庫管理といった業務を簡素化
するために、機器とシステムに対する設備投資を推進した。その結果、総ロジスティクス
費用の人件費が大幅に減少した。そのような場合、多くの標準原価計算システムで行われ
ているように、直接労働時間に基づいて間接費を配分するならば、物流部門は少ない額の
間接費しか配分されないために、管理意思決定にあまり役に立たない【12。種々の産業と規
制グループの対外報告の必要性からではなく、企業全体、その各部門、重要なプロセスが
もつ情報ニーズを満たすためには、各企業における会計慣行を修正する必要がある。
小売業者にとってデータが正確性であるいことは決定的に重要であり、そのような小売
業者は不正確なデータを日常的に提供するサプライヤに罰金を課したりする。これらの小
売業者のあるものは、「3 ストライキ・アウト」プログラムを導入した:3 回以上不正確な
データを提供したサプライヤに対して、「優先サプライヤ」の指定を取り消す。正確なデー
タの必要性を示すもう一つの例は、セルフストアチェーン(do-it-yourself chain)による量
販店mass merchantのそれである。メーカーが南京錠の1箱に誤ったラベルをつけたため
に、箱ごと購入したにもかかわらず、買い手のコンピュータは錠前 1 個を販売したものと
判断した。データが不正確なために、在庫量と在庫払拭期間が誤って計算され、高コスト
を招いてしまった例もある【13。
12
Robert S. Kaplan, "Yesterday's Accounting Undermines Production," Harvard Business Review 62, no. 4
(July-August 1984): 95-101.
13 例 え ば 次 を 参 照 : Douglas M. Lambert and Howard M. Armitage, "Distribution Costs The
Challenge," Management Accounting (May 1979): 33-38; John L. Boros and R. E. Thompson,
"Distribution Cost Accounting at PPG Industries," Management Accounting (January 1983) : 54-60;
(10)
6/9/2004:第 11 章 発注処理と情報システム
あるロジスティクス文献は、ロジスティクス・ニーズに対応した会計実務のカスタマイ
ズの必要性を訴えている【14。この領域には大きな進歩が見え始めている。活動基準原価計
算(ABC)導入への動きは、この問題が注目されていることの証左である。
3) Effectiveness of Communication 通信の有効性
管理者には情報を効果的に伝える必要がある【15。したがって、情報は受け手が理解でき
る言語で伝達する必要がある。さもなければ、受け手が情報を認識することは難しくなる
からである。また、情報が受け手にとって予想外のものであって、受け手がそのような情
報が無視するならば、コミュニケーションは妨げられる。これは選択的認識の問題である。
最後に、情報が人の価値に合致し、受け手の管理決定に直接関係する場合にのみ、コミュ
ニケーションは成立する。要するに、コミュニケーションが効果的であるためには、受け
手が知覚できるもの、受け手が知覚すると期待されるもの、受け手が知覚したものに基づ
いて行おうとするものに関する知識が必要である。発信者がこれらの条件のいずれか一つ
でも見逃すならば、コミュニケーションは難しくなろう。
Ⅳ
ロジスティクスにおける情報の配置
[critical information flows] 決定的な情報フロー
Glossによれば、ロジスティクス情報システムは、計画(調整)と運用という 2 種類の活
動の流れを処理するものである【16。それぞれの流れにおける重要な活動は、図 11-2 に示さ
れている。調整フローを構成する活動には、企業全体を通したスケジューリングと必要量
計画に関連した活動が含まれている。運用フローの活動は、納品、在庫配分、補充品出荷、
顧客発注の開始と追跡に関連する。補充発注は、工場から物流センターに再供給するもの
である;顧客発注は、物流施設から顧客が指定する場所まで製品を輸送することと関連す
る。どちらの例においても、発注を完了させるには、発注、受注処理、受注品出荷準備、
and Howard M. Armitage, "The Use of Management Accounting Techniques to Improve Productivity
Analysis in Distribution Operations," International Journal of Physical Distribution and Materials
Management 14, no. 1 (1984): 41-51. ロジスティクスを専門的に論じているわけではないが、次も参照
Robin Cooper and Robert S. Kaplan, "Measure Costs Right: Make the Right Decisions," Harvard
Business Review 66, no. 5 (September-October 1988) : 96-103.
14 Joseph Bonney, "More Logistics Tools Than They Can Use," American Shipper (October 1994):58.
15 経営管理通信一般の問題は次の文献で効果的に論じられているPeter F. Drucker, Management: Tasks,
Responsibilities, Practices (New York: Harper & Row, 1974).。本段は特にその第 38 章から引用した, "Managerial
Communications," 481-493.
16 本節の一部は次から引用した。Gloss, "Positioning Information in Logistics," 699-707.
(11)
6/9/2004:第 11 章 発注処理と情報システム
受注品出荷という一連の活動が必要である。これらの活動については、本章後段で詳細に
論ずる。図 11-2 に示したような在庫管理担当者の役割は、調整活動と調和をとりながら運
用活動を確実に実行することである。これは、発注完了プロセスにおける製品の流下と情
報の遡上との同期化である。
二つの流れが果たす役割を認識することが重要な反面、Glossは、将来必要とされる三種
類の変化を示唆する【17:第一は、二つのフローの間で重要なデータ交換が存在することを
確める(確実にする)ことである。現在、計画活動と運用活動のために異なるデータが使
用されることは異常でも何でもない。第二は、調整活動を運用モジュールに組み込むニー
ズである。この一例は、当初の出荷場所で在庫切れが生まれる時、顧客の発注に対して物
流施設を変更させることである。第三の変化は、図 11-2 に示したように、これらの流れを
柔軟で非線形と考えることである。これは、全体的なロジスティクス・ニーズに対して追
加的な多方面性と反応性を提供する。
図 11-3 は、荷主、荷受人、輸送業者を関係づけるロジスティクス情報フローの例を示し
ている。このロジスティクス・チャネルを効果的に機能させるために、情報システムの全
体的なアーキテクチャは、関係企業それぞれの情報システムを一つの中心システムにリン
クさせ統合するものでなければならない。
17
Gloss, "Positioning Information in Logistics," 706-7.
(12)
6/9/2004:第 11 章 発注処理と情報システム
[proprietary versus shared data]
専用データ対共有データ
実際問題として、各企業の情報システムは、専用データと共有データ両方をサポートし
ている【18。社内管理に必要な専用データは、業務遂行上正当なニーズを持つ内部の社員だ
けがアクセスできる。共有データは、契約または関係者全てが同意する標準約款を通して、
知るニーズを有する顧客、ロジスティクス・サプライヤ等との適切な情報インタフェース
を通して利用可能である。データは他企業のデータベースに物理的に保存されるが、その
他の企業も適切なデータベース管理技術を利用して、必要なときにアクセスできる。
Ⅴ
最新のロジスティクス情報技術
表 11-3 は、重要な情報技術それぞれについて、ロジスティクスに敏感な米国のベンチマ
ーク企業による利用割合の調査、すなわち優れた成果をもたらす最善の慣行に関する調査
18
さらに詳しくは次を参照。IBM Corporation, Computer Integrated Logistics: CIL Architecture in the Extended
Enterprise (Southbury, CT: IBM Corporation, U.S. Transportation Industry Marketing, 1991): 9-11.
(13)
6/9/2004:第 11 章 発注処理と情報システム
の結果を示したものである【19。これらの技術の各々については、以下の節で論議する。
表 11-3 重要な情報技術
技術
ベンチマーク米国企業の割合
バーコード
59%
EDI
58
ハンディ機器によるデータ入力
36
光学スキャナー
34
CD-ROM 保存
32
人口知能/エキスパートシステム 18
オンボードコンピュータ
11
無線 (RF) ID
NA
NA = not asked.
出所: Dale S. Rogers and Richard L Dawe, "Using Information Technology to Improve Logistics
Competencies," 1994 Council of Logistics /Management Annual Conference Proceedings (Oak Brook,
IL: Council of Logistics Management, 1994): 79-87.
1) Bar Coding
バーコード
第8章で詳述するバーコードは、最も普通に使用される自動認識技術である。この技術
は今後さらに発展する余地が大きいが、現時点でもロジスティクス情報システムの重要な
構成要素である。バーコードに関する決定的に重要な問題は、種々のバーコード記号ない
し標準が利用されており、それらの間には必ずしも互換性がないという点である。共通性
がもっとも大きいバーコード標準の一つは UCC/EAN-128 である。サプライチェーンの中
を能率的かつ効果的に製品を流す場合、バーコード技術の整合性またはインタフェースの
標準化が重要になる。今日、情報システムの管理に従事する人々にとって、この点はプラ
イオリティーの高い問題である。
2) Electronic Data Interchange (EDI)
Emmelhainzによると、「EDIは機械処理可能な構造化されたフォーマットでの、組織
間・コンピュータ間におけるビジネス・データの交換である。EDIの目的は、諸企業のコン
ピュータをリンクさせることにより、データのダブル入力を回避し、情報フローの速度と
精度を改善することにある【20」 図 11-4 はEDIと従来の紙ベースシステムを対比させたも
のである。EDIを利用すれば、ロジスティクス情報をタイムリーに入手できるだけでなく、
質と量の両面においてデータの信頼性は高まり、業務の労働集約度は低くなる。
19
Richard L. Dawe and Dale S. Rogers, "Using Information Technology to Improve Logistics Competencies, 1994
Council of Logistics Management Annual Conference Proceedings (Oak Brook, IL: Council of Logistics
Management, 1994) : 84.
20 Margaret A. Emmelhainz, "Electronic Data Interchange in Logistics," Chapter 33 in The Logistics Handbook (New
York: The Free Press, 1994) : 737.
(14)
6/9/2004:第 11 章 発注処理と情報システム
したがって、EDI の利点をすべて活かすために、ロジスティクス・チャネルを構成する
企業は、コンピュータによる相互通信能力を開発しなければならない。すなわち、EDI が
効果をあげるには、買い手と売り手のコンピュータ・システム同士が直接通信できねばな
らない。図 11-5 は、買い手と売り手を結ぶ主な情報フローを示したものである。この図は、
企業のロジスティクス・システムにおける計画、分析、取引活動システムの関連を示した
ものである。この図は、輸送、保管、情報システム・サービスの第三者サプライヤーを含
める必要があるとき、拡張することができよう。
(15)
6/9/2004:第 11 章 発注処理と情報システム
[successes] 成功
EDI の導入によって著しい成果を収めた企業には以下のものがある:
◎ Super-Valu Stores, Inc.は、荷送状等の書類の手書きを止めたことから週 5 千ドル∼6
千ドルの経費を節減し、さらに荷送状と発注伝票をチェックする要員が不要になったこと
から人件費が年間 60 万ドル削減できると見込んでいる【21。
◎ McKesson Corporation(大手薬品卸売業者)はEDIを通して製品バーコード情報を受け
取ると同時に起動する顧客発注処理システムを導入した。これにより、標準的なドラッグ
ストアの発注時間は 50%∼75%短縮された【22。
◎ スウェーデンのVolvo Transport ABは、EDIにより年間 2,800 万ドルの過剰在庫を削減
できると見ている【23。
◎ 倉庫情報ネットワークシステム(WINS :Warehouse Information Network System)は、
本社と倉庫(自家用・営業用を問わず)の間に情報リンクを張るEDIアプリケーションであ
る【24。
[EDI standards]
EDI 標準
EDIの進歩は早く、ペーパーレス電子通信網の確立に大きく貢献した。しかしそこには、
重要な領域でなお課題が残されている。一つは、現在EDI標準として、専用と一般の 2 つの
形式が普及していることである。バーコードを開発するのに多くの方法があるのと同様に、
今日、複数のEDI標準が使用されている。北米で最も一般的に使われる標準はANSI XI2 で
ある。図 11-6 は、伝統的なペーパーフォーマットとANSI XI2 フォーマットを示したもの
である。ロジスティクス管理者にとって重要な国際標準は、国連と国際標準化機構が共同
21
The Wall StreetJournal, March 6, 1987.を参照。
Logistics Data Interchange: An Emerging Competitive Weapon for Shippers (Lexington, MA: Mercer
Management Consulting, 1987) : II-10.
23 Logistics Data Interchange, II-5.
24 Logistics Data Interchange, II-7.
22
(16)
6/9/2004:第 11 章 発注処理と情報システム
開発したUN/EDIFACTである【25。
政府による通信システムの規制緩和、伝送媒体としての光ファイバーの急成長、人工知
能/エキスパート・システム(後述)の発達は、EDI コストをさらに引き下げ、サービスの
多様化を推進し、品質の改善を促すはずである。逆に、コスト削減圧力と顧客サービス面
からの圧力は、EDI システムの導入を促進するはずである。
最後に、多くの EDI アプリケーションは、サードパーティーの付加価値通信網(VAN)
を利用して、情報伝達することもできる。ヨーロッパと日本で成功をおさめたこの概念は、
米国企業にとっても情報ネットワーク構築にますます重要になっている。
3) Data Management
データ管理
表 11-3 で示したように、データの入力と保存のために、いくつかの新しい技術が使用さ
れている。光学スキャナーのような携帯型データ入力装置が今日普及している。また、
CD-ROM は、データの保存管理の重要な技術として出てきている。
[image processing] 画像処理
もう一つの革新的な技術は画像処理であり、重要書類を電子画像化して保存できるよう
になった。写真は電子化されてコンピュータに保存され、必要に応じてモニターに映し出
したり、他の記憶媒体にバックアップをとることができる。光ディスクは、一つの書類を
構成する数千バイトのデータをエンコード(記号・符号化)するのに用いられる。この技
術は、多くの顧客から納品証明書の発行を要請される運送事業者によりしばしば使われる。
荷受人署名を電子パッド上に置くことにより、署名の複製が自動的にデジタル化され、将
来のリファレンスのために保存される。署名のコピーは、納品証明書を発行するために必
要に応じて簡単にダウンロードできる。
4) Artificial Intelligence/Expert Systems
25
人口知能/エキスパートシステム
Emmelhainz, "Electronic Data Interchange in Logistics," 740-41.
(17)
6/9/2004:第 11 章 発注処理と情報システム
人工知能(AI)とエキスパート・システムは今日、ロジスティクスにおいてますます一
般的になった。人工知能は、「人間が考えてはじめてできることを機械にさせる」コンピュ
ーターサイエンスの一部として【26、さらに、「人が行なうことをコンピュータが代わって実
行すること」【27として記述されてきた。エキスパート・システムは、「熟練者を模倣するコ
ンピュータプログラムである;エキスパート・システムは、熟練者が開発・獲得した方法
と情報を使って、熟練者と同じ精度に問題を解決し、予測し、適切な処置をアドバイスす
ることができる。」【28
ロジスティクスにおけるエキスパート・システムについては、本章後段のロジスティク
ス情報システムの意思決定支援コンポーネントの中で、詳しく言及する。
5) Remote Access and Communications リモ−トアクセスと通信
[RF technology]
RF 技術
リモートアクセスとロジスティクス通信に対する装置とシステムの利用は最近増加して
きた。たとえば、電磁波を利用した無線通信(RF)によって、「ユーザーは情報を端末から
ベースステーションまで転送し、そこからホストコンピュータまで転送することができる。
端末は固定局であったり、フォークリフト搭載、作業員携帯であったりする【29。遠隔地に
ある端末との通信は基地局の送受信機を通して行われる。本質的に、これらのシステムは、
ロジスティクス業務を遂行する中でドライバまたはオペレータを助けるための「オンボー
ドコンピュータ」として役に立つ。
「無線通信システムは、狭帯域または拡散スペクトル(spread-spectrum)伝送のいずれか
を使う。拡散スペクトル伝送が異なる複数の周波数を横断して行われる反面、狭帯域伝送
は、一定の周波数帯に沿って行われる。無線通信システムは、在庫アイテムを識別するた
めのバーコードシステムと組み合わせることによって、データをただちに中継し、『リアル
タイム』で在庫ファイルを更新することができる【30」。 その結果、発注ピッキングの品質
と出荷の正確性は大幅に向上した。たとえば、マイクロソフト社はワシントン州レドモン
ドで実際にそれを経験した。保管製品を追跡するためのRF依拠バーコードシステムを構築
することにより、在庫把握の正確性は 95%から 99%強まで高まった【31。
[satellite tracking] 衛星による追跡
26
Digital Equipment Corporation, Systems Manufacturing Technology Group, "What is AI Anyway?" working paper
(May 1982): 1.
27 James M. Masters and BernardJ. LaLonde, "The Role of New Information Technology in the Practice of Traffic
Management," The Logistics Handbook (New York: The Free Press, 1994): 490.
28 Michael Ham, "Playing by the Rules," PC World (January 1984): 34.
29 James Aaron Cooke, "Technology Ups the Ante in the Technology Game," Traffic Management (April 1994) : 66.
30 Cooke, "Technology Ups the Ante in the Technology Game," 66.
31 Cooke, "Technology Ups the Ante in the Technology Game," 65-66.
(18)
6/9/2004:第 11 章 発注処理と情報システム
リモートアクセスのもう一つの形態は衛星による貨物追跡である。通信は、実際に「二
つの軌道周回衛星によって容易になった。一つはドライバと発送(配車)係との通信に、
他の一つは車両追跡に利用されている。トラック運転手と配車係の双方向通信は、第一の
衛星を経由して行われる。第二の追跡衛星は貨物の現在位置を特定する。トラック配車係
は、貨物追跡衛星からトラックの運転席に置かれた通信端末までの、信号長を測定するこ
とによってトラックの位置を決定することができる【32。」
Ⅳ
ロジスティクス情報システムの概念
ロジスティクス情報システムは、次のように定義されるかもしれない:計画、実行と統
制の目的のために、ロジスティクス管理者に提供する人、機器、手続きの間で関連情報を
相互交換する構造【33。
図 11-7 は、ロジスティクス情報システム(LIS)、ロジスティクス環境の諸要素とロジス
ティクス意思決定プロセスの関係を示したものである。この図は、ロジスティクス情報シ
ステムを構成する 4 つの主要なサブシステムないしモジュールを示している:発注管理、
研究と知能、意思決定支援、報告・成果。これらのシステムは全体として、ロジスティク
ス管理者に、計画、実行と統制という基本的な管理機能に対してタイムリーで正確な情報
を提供するはずである【34。これらのモジュールについては個々に本章後段で論ずる。
32
Cooke, "Technology Ups the Ante in the Technology Game," 66.
この定義は次で示唆されたマーケティング情報の定義から引用した。Philip Roller, Principles of Marketing,
3rd ed. (Englewood Cliffs, NJ: Prentice-Hall, 1986) : 87.
34 ロジスティクス情報システムの興味深い議論については次を見よ。
Alan J. Stenger, "Information Systems in
Logistics Management: Past, Present, and Future," Transportation Journal 26, no. 1 (Fall 1986): 65-82. この議論で、
ロジスティクス情報は四つのグループからなる:取引システム、短期スケジューリング、在庫補充システ
ム、フロー計画システム、ネットワーク計画システム
33
(19)
6/9/2004:第 11 章 発注処理と情報システム
Ⅶ
発注管理システム
発注管理システムは、発注情報を買い手から売り手に伝達する主要な手段である。企業
のロジスティクス部門にとって非常に重要な発注処理システムは、企業全体の経営情報シ
ステムを構成する要素の中でも最も重要なものの一つである。最近、発注管理システム全
体の代替・更新に強い関心をもつ企業が多くなった。種々の方法が商業的に利用できる中
で、SAP アメリカ社の発注管理システムは多くの法人顧客が使用している。
効果的な発注管理は業務効率と顧客満足を高める鍵である。図 11-8 は、主な発注管理機
能を示している。発注管理を正確かつ完全な形でタイムリーに実行できれば、その他の企
業活動領域との調整もうまくいく。加えて、顧客は、安定したリードタイムと発注間隔を
予測できるだろう。顧客ニーズの理解をもっとも重視することにより、企業は、顧客が競
争相手より優れていると評価する発注管理システムを設計することができる。企業の発注
管理能力は競争優位の確立に貢献する。
(20)
6/9/2004:第 11 章 発注処理と情報システム
ロジスティクス部門は、個々の発注に関するタイムリーで正確な情報を必要とする;そ
のため、発注処理をロジスティクス部門に担当させる企業が多くなってきた。こうした動
きは、ロジスティクス・プロセスだけでなく組織全体からしても望ましいものである。
[order processing functions]
発注処理機能
図 11-9 は、主要な発注処理機能の一覧である。発注処理の全領域は、今日利用可能な、
強化されたコンピュータと情報システム技術の主要な受益者であった。多くの企業におい
て、発注処理の領域は、新しい技術進歩を利用する革新者になった。
1) Order and Replenishment Cycles
発注と補充サイクル
[order cycle] 発注サイクル
顧客向けの商品出荷に対しては一般に発注サイクルという表現を、在庫量の維持に対し
ては資材管理の場合と同様に補充サイクルという表現を用いる。基本的に、ある企業の発
注サイクルは、受注企業の補充サイクルである。簡単化のために、以後の議論において発
(21)
6/9/2004:第 11 章 発注処理と情報システム
注サイクルという表現を使う。
[lead time activities] リードタイム活動
上述したように、リードタイムまたは発注サイクルは四つの主要な活動(要素)から構成さ
れる。すなわち、発注、受注処理、受注品準備、受注品出荷である。これらの活動は図 11-10
に示されている。この図の矢印は、情報と商品の流れる主な方向を示している。
伝統的に発注サイクルには、発注がなされてから、顧客に納品されるまでに行われる活
動だけが含まれる。バックオーダーや急送 expediting のような特殊な活動は、発注サイク
ル全体の長さに影響する。返品、クレーム処理、運送状の処理といったその後の活動は発
注サイクルのテクニカルな部分ではない。
a) Order Placement.
発注
発注送達時間は郵便で数日、電話で数分、EDIで即時といった具合である。企業は経験
的に発注送達システムとプロセスが発注サイクル全体の長さを短縮し、可変性を十分抑え
るためのもっとも大きな機会を提供することを学んだ【35。
[order placement methods]
発注法
表 11-4 は食品流通業において、雑貨産業が種々の小売・卸売企業からどのようにして
発注を受けているかについて、1993 年に研究した結果を示している。この表からわかるよ
うに、食料雑貨小売業者、食料雑貨商/卸売業者、会員制ホールセールクラブで発注の約
40%がEDIを利用している。1988 年に同様の研究で 17%と報告されたことからすると、増
加している【36。
表 11-4 米国加工食品産業の受注方法
電話
Fax Mail EDI 自動補充 その他
加工食品小売業
20% 25%
5% 39%
3%
8%
加工食品卸売業・物流業
18
28
3
41
2
8
量販店/ホールセールクラブ
15
29
3
40
3
10
医薬品小売
16
33
8
29
0
14
食品サービス
22
57
3
12
0
6
備考:上記数値は種々の受注法の割合を示す。
出所:数値は以下の資料の図から読み取ったものである
Logistics Benchmarking Survey Results (Washington, DC: Grocery Manufacturers of
America, Inc. and Cleveland Consulting Associates, 1993): 15. Used with permission.
35
Roy Dale Voorhees, John C. Coppett, and Eileen M. Kelley, "Telelogistics: A Management Tool for the Logistics
Problems of the 1980s," Transportation Journal 23, no. 4 (Summer 1984): 62-70.を見よ。
36 Cleveland Consulting Associates, Inc., 1993 Logistics Benchmarking Survey Results (Washington, DC: Grocery
Manufacturers of America, Inc. and Cleveland Consulting Associates, 1993): 14.
(22)
6/9/2004:第 11 章 発注処理と情報システム
表 11-4 を全体的に見て、最新の方法を活用すれば発注機能を効率化する機会が十分と考
えられる。これまでのところ、医薬品小売と飲食物提供サービス会社において、EDI の利
用が低調であっただけでなく、CRP 等の自動補充システム導入にもあまり積極的でなかっ
た。これら証明済技術は今後いっそう真剣に利用することになると考えられるので、この
点は将来の課題である。ケロッグ社による LogiCNe 社製のロジスティクス情報システムの
利用に関する上述の議論は、この種の概念と関係する例である。
ロジスティクス管理協議会による 1988 年の調査によると、発注処理のためのEDIのよう
なコンピュータネットワークシステムを導入する主な産業には、加工食品、製薬、自動車
がある。これに対して、その導入が遅れている産業には、化学製品、製紙、衣料/繊維が
ある。衣料/繊維業界におけるクィックレスポンス戦略に向けた最近の動きから推測する
と、この部門の数字は現在かなり高くなっていよう【37。
b) Order Processing.
発注処理
[processing] 処理
発注処理業務には、顧客の信用チェック、販売記録への書き込み、在庫部門への発注伝
達、運送書類の準備がある。これらの業務の多くは、電子データ処理装置を効果的に利用
することにより、同時に遂行される。コンピュータと情報システム技術の進歩により、こ
れらの業務に要する時間は大幅に短縮された。
c) Order Preparation.
発注準備
[picking and packing] ピッキングと包装
出荷準備プロセスは、取扱商品の属性等の要因によって、非常に単純な手動作業であっ
たり、複雑で高度に自動化された作業であったりする。出荷準備に必要な時間は、発注サ
イクル全体を短縮する際の重要なボトルネックになっている例がいくつか見られる。した
がって、出荷準備プロセスとその戦略を完全に理解することは有用である。
d) Order Shipment.
発注品出荷
[transportation] 輸送
発注品出荷時間は、発注品がトラック・船舶等に荷積みされてから、買い手が指定する
目的地で荷卸し・納品されるまでの時間である。発注品出荷時間の計測・統制は、一車積
み輸送サービスの場合、利用する運送業者の能力次第で、難しくなることがある。荷受人
サイドで適時納品率を高める一つの方法は、事前出荷通知(ASN)を荷送人に求めること
である。荷送人としても、納品の正確な時間と場所を記した納品証明(POD)書を運送事
37
Bernard J. LaLonde, Martha C. Cooper, and Thomas G. Noordewier, Customer Service: A Management
Perspective (Oak Brook, IL: Council of Logistics Management, 1988).
(23)
6/9/2004:第 11 章 発注処理と情報システム
業者に求めることがある。多くの運送事業者は、情報技術を利用して、荷送人のこうした
要請に応じて顧客サービスの向上に努めてきた。加えて、運送事業者は必要なときに、顧
客が荷物を簡単に追跡できるようにするとともに、これらの顧客に輸送時間やサービス水
準等の要約を報告する。
[example] 例
米国の主要自動車メーカーは、迅速かつ信頼できる LTL 貨物納品サービスを提供するた
めに、自己運送/契約運送統合システムと部品の配置・発注に関わるコンピュータ・シス
テムを確立した。このシステムにより、全米 18 箇所にある物流センターから、ほとんどの
ディーラーに翌日配送される。部品のおよそ 80%は「合鍵方式 passkey operation」で夜間
に納品される。ディーラー施設の鍵をもつ運転手は、セキュリティ保護が徹底した場所に
納品をする。夜間納品には、主要道路とディーラー施設の昼間混雑による遅延がないとい
う利点がある。
[third-party services] サードパーティー・サービス
最近の輸送環境変化により、時間に即応する能率的なロジスティクス・サービスを利用
できる機会が増えてきた。各輸送手段の能率向上には目覚しいものがあるが、顧客に対し
てもっと高い付加価値をもつサービスを提供できる余地も残されている。また、ロジステ
ィクス・サービスのサードパーティ・プロバイダが増えてくるとともに、リアルタイム情
報の入手可能性が優先事項であると認識されるようになってきた。FedEx Logistics
Services、UPS Worldwide Logistics、Roadway Package System 等の企業は、このタイプ
の非常に革新的な技術を開発した。
e) Length and Variability of the Order Cycle.
発注サイクルの長さと可変性
伝統的に発注/補充サイクルの長さが注目されてきたけれども、最近では、このプロセ
スの可変性ないし首尾一貫性に関心が集まっている。顧客の要求を満たすことが重視され
ている現在の状況を反映して、顧客が指定した時間と場所への配送を最優先事項とする傾
向が見られる。
顧客サービスに関するある画期的な研究は、発注サイクルを構成する個々の業務要素を
遂行するために必要な相対的時間と同様に、発注サイクル全体を遂行するために必要な時
間に関連する一連の疑問に言及している【38。1 つの重要な発見は、発注サイクル時間全体
の最大部分は、メーカーが顧客から発注を受ける前か、発注品が出荷された後にあること
であった。言い換えると、メーカーにとっていくぶん外部的であり、メーカーの統制がき
きにくい活動が全発注処理期間の半分以上を占めるのである。
[example] 例
この現象はアンダーセン・コンサルティングによる最近のデータが裏付けている。それ
38
BernardJ. LaLonde and Paul H. Zinszer, Customer Service: Meaning and Measurement (Oak Brook, IL: Council
of Logistics Management, 1976): 119.
(24)
6/9/2004:第 11 章 発注処理と情報システム
は図 11-11 に示されている。この例では、発注伝達と顧客への輸送に要する平均総時間(7.0
日)は、発注編集/登録、ピッキング伝票生成およびピッキングのような内部に集中する
活動に要する平均時間(5.1 日)より多い。また、諸ステップの遂行に要する平均時間と 95%
百分位数時間の間に大きな違いがある。このような現実から、多くのメーカーは受注機能
を重視して、顧客が簡単に発注できるファックス、無料電話、EDI のような処置をとるこ
ととなった。また、メーカーは顧客が指定する場所に発送貨物を適時到着させることに強
い関心をもつようになった。
発注サイクルを構成する諸業務要素の時間短縮によって、メーカーの計画時間が延長さ
れたり、買い手の発注サイクルが短縮されたりする。メーカーは発注サイクル時間構成要
素の時間短縮を確認した場合、おそらく計画時間の延長として短縮された時間をシステム
の中に吸収するか、発注サイクルを短縮してその便益を顧客と共有するか、どちらかを選
択することができる。競争市場にあるメーカーにとって、かかる時間節約の便益をできる
だけ顧客に帰着させことが不可欠かもしれない。
[safety stock impacts] 安全在庫への衝撃
発注サイクル期間の可変性は、当該製品の購入者が抱える安全在庫の水準にも影響する。
発注サイクルの可変性が大きくなるとき、必要な安全在庫水準も増加する。逆に言えば、
発注サイクルの可変性が小さくなるとき、顧客は安全在庫を削減するかもしれない。いず
れにせよ、発注サイクルの可変性は顧客が抱える安全在庫の水準と直接結びついている。
発注サイクルの安定性と信頼性が向上するにともない、サイクル時間の短縮という形で
改善がなされるのが理想的である。図 11-12 は、発注サイクルを構成するほとんどの業務
活動の時間と可変性を減らす前と後の違いを示している。個々の活動の改善を別としても、
総発注サイクル時間と可変性は大きく減少している。
(25)
6/9/2004:第 11 章 発注処理と情報システム
2) Cost-Effectiveness of Order Processing Alternatives
発注処理の対費用効果
[cost of alternatives] 各種発注処理の費用
図 11-13 は、データ通信コストが通信量の増加にともなってどのように変化するかを示
したものである。顧客とメーカー間の通信量が少量であれば、コストが最小の通信手段は
郵送になる。この通信法は固定費が安いので比較的安価である。他方、通信量が多くなれ
ば、ファックスや EDI の利用が有利になる。これらの方法はきわめて高い水準の固定費が
かかるけれども、通信単位個々の限界費用は小さいので、通信量が多くなれば有利になる。
さらに、手作業的色合いの濃い通信システムは時間がかかって不安定であり、進歩したシ
ステムに比べてミスも出やすい。このように、さまざまな発注処理法の対費用効果を評価
するには、利用可能な個々の選択肢、関連する固定費と可変費、結果としてもたらされる
(26)
6/9/2004:第 11 章 発注処理と情報システム
顧客サービス水準を十分に分析する必要がある。
3) Example of an Order Processing System 発注処理システムの例
図 11-14 は米国の特定消費財メーカーが使用している発注処理システムのフローチャー
トである。これは発注処理システムの典型的な事例である。この企業は情報処理機能を一
ヶ所に集中させており、ロジスティクス担当副社長がこれに強い影響力を持っている。彼
は、企業全体の大きな情報システムに対して全責任をもつわけでは必ずしもないけれども、
システムの設計と運用のために、発注処理およびその他のロジスティクス情報に関連した
十分な情報を提供する。
[order cycle] 発注サイクル
(27)
6/9/2004:第 11 章 発注処理と情報システム
この図で、ネットワーク傘下の販売代理店やブローカーは、22 ヶ所の地区営業所の 1 つ
に発注書を直接発送する。地区営業所のコンピュータ端末は中央本部のホストコンピュー
タとリンクしている。発注書を受信した中央本部のメインフレーム・コンピュータは受注
処理を開始する。そして、信用チェックをした後、工場、倉庫、配送センターに出荷を指
示する。その後、製品が顧客宛に出荷される。請求書と荷送状のサイクルは、情報が出荷
場所から発信されることをもって始まる。この情報発信は出荷後ただちに行われる。
この特別な企業は、発注を受けた時点ではなく、発注品をピックアップして出荷する時
点ではじめて、特定顧客からの発注に在庫を割り当てる commit。その結果、特定の顧客発
注に対してその優先度に応じて、安定的に在庫を割り当てる能力を確保する。
[proactive stance]
先を見越した姿勢
この企業は、現在の効率的な発注処理システムに満足する一方で、販売代理店が社内で
使用する携帯型データ入力装置の提供を予定している。この種の革新は、順調に稼動して
いるシステムに対して、追加的な利益をもたらしそうである。加えて、この企業は、顧客
のニーズを予測し、在庫配分を受注した時点で決定する能力を向上させることによっても、
利益を得ることができる。在庫管理と受注完遂に関するより先を見越した姿勢への動きは、
この企業とその顧客にとって利点が多い。最終的に、ケロッグ社が採用したような情報に
依拠した補充システムに向かうことが望ましい。
4) The Research and Intelligence System 調査と人口知能システム
上述したように、ロジスティクス管理者は互いに関連する三つの異なる環境、すなわち(1)
マクロ環境ないし外部環境、(2)企業の流通チャンネルによって特徴づけられる企業間環境、
(3)ミクロ環境ないし企業内環境に関心を払うべきである。LIS の調査・人工知能システム
は環境を調査し、ロジスティクス領域だけでなく企業の全領域にも利用できる実態把握と
結論をもたらす。
5) Environmental Scanning
環境の精査
[approaches] 方法
ロジスティクス管理者は、4 通りの方法で環境を適切に精査するかもしれない【39。
◎自由な観察:管理者が特に目的を意識しない場合の一般的な情報開示
◎条件つき観察:多かれ少かれ明白に認識された領域ないし情報タイプに対する直接的な
開示、積極的な調査を含まない。
39
Philip Kotler, Marketing Management: Analysis, Planning, and Control, 5th ed. (Englewood Cliffs, NJ:
Prentice-Hall, 1984) : 192.
(28)
6/9/2004:第 11 章 発注処理と情報システム
◎非公式調査:情報を得るための比較的限定された非構造化努力
◎公式調査:特定の情報を得る熟考した努力― 通常、予め確立した計画、手順または方法
論にしたがう―
環境精査プロセスを不規則的・規則的・継続的なものに類型化することもできる。
(1) 不規則的:歴史的事象に着目し、基本的に受け身のものである。
(2) 規則的
:基本的に前触れ的なものであり、顧客調査のような方法がこれであ
る。
(3) 継続的
:顧客諮問委員会の利用のような、一般的に長期間継続し、進行中の
プロセスを表す【40。
[monitoring the environment]
環境の監視
ロジスティクス管理者は、環境精査の結果を最大化するために、いくつかの重要な情報
源を一つの包括的なモニタリング・システムに含めるべきである。最初の情報源は、社員
特にロジスティクス従業員である。たとえば、Account executives は、ロジスティクス管
理者の要請に応じて、戦略的価値をもつ顧客関連情報や市場競争に関する情報を集めるの
に格好の立場にある。フリートドライバーも、荷積み場に関する価値ある情報を必要に応
じて提供することができる。ベンダー、顧客、運送会社、倉庫管理者のようなチャネル・
パートナーは、価値ある第二の環境情報源である。彼らは、求められれば、自らの環境観
察と認識を喜んで共有するであろう。第三に、企業内部の諸部門や外部コンサルタント企
業は、何らかの形で環境をモニターし、評価しなければならない。このプロセスの中で外
部の諸企業に選択的に助力を求めることは、客観的かつ完全に環境を精査し、評価するこ
とにつながる。
6) Forecasting
予測
[integration with production scheduling] 生産スケジューリングとの統合
企業はロジスティクス領域に需要予測の責任をもたせることがある。図 11-15 は、売上
げ予測と生産スケジューリングを統合した一つの事例を示したものである。
40
Liam Fahey and William R. King, "Environmental Scanning for Corporate Planning," Business Horizons 20, no. 4
(August 1977): 61-71.
(29)
6/9/2004:第 11 章 発注処理と情報システム
最初のステップは、需要、価格、季節変動、入手可能性、取引、販売促進のような諸要
因の 3 ヵ年時系列データを使って、伝統的な方法(移動平均、Box-Jenkins 法、回帰分析
等)で、無効1年間の需要を予測することである。第二のステップでは、ブランドと製品
管理者がこの予測をチェックして必要な変更を加える。こうして、向後1∼3年間の市場
総生産必要量を算出する。第 3 のステップでは、12 ヵ月間の総生産スケジュールを作成し
て、上で求めた総生産必要量を各製造施設に割り当てる。ロジスティクス機能は、最終製
品需要を必要生産投入のタイミングと入手可能性と調整するために、最終的な短期生産ス
ケジュール策定における責任の一端を担う。つまり、生産資材の入手可能性を判断し、さ
らに調達時期を最終製品に合わせて調整する。
予測法は目的によって異なる:
◎ 長期予測は通常 3 ヵ年以上を予測期間とし、長期計画と経営戦略を検討する際に利用す
る。それは、製品ラインまたは部門別の売上高や、1期間1トンあたりまたは1期間 1 ド
ルあたりのスループット能力等々の広い観点から行われる。長期予測は顧客需要を越えて、
生産能力や望ましい在庫資産水準のような他の重要な経営資源についても行われるかもし
れない。
◎期間が1∼3ヵ年の中期予測は予算と販売計画の検討に利用される。この場合も長期予
測と同様に、起用以外の要因についても行われるかもしれない。需要予測は現在製品ファ
ミリないし製品ライン水準ごとに金額でなされることが多い。複数年予測の場合の初年は
月ごとに予測され、その後は四半期ごとの予測になるかもしれない。
◎ 短期予測は、オペレーショナルなロジスティックス計画にとって、最も重要である。そ
れは、次の数ヵ月、場合によっては 1 年以上の期間における需要を投影するものである。
この場合は、限られた期間における実際の出荷アイテムごとの数量予測が必要とされる
(30)
6/9/2004:第 11 章 発注処理と情報システム
【41
。」
[need for item-level forecasts] アイテム別予測のニーズ
ロジスティクスは発注対応過程に広く関与しているので、アイテム別の需要を適時正確
に予測する必要がある。Ayersが示唆しているように、「他の知性で統計学的に過大評価さ
れた予測を乗り越える方法を持つことは重要である【42」。これは、ロジスティクス情報シス
テムの調査・知性成分の他の要素の実行の成功を追加的に強調する。それはまた、タイム
リーなPOSデータで予測に依拠する情報を補足する必要があることを示唆する。本章の
Logistics Profileで述べたケロッグ社の例は、これを完遂する方法の詳細を提供している。
全体として、予測目的のための情報収集に関わる活動の多くは、調査・知性システムの
一部である。逆に言えば、予測モデルと生産スケジューリングに対する二者択一的方法の
必要性は、以下の節で述べる LIS の意思決定支援能力に大きく依拠している。
ON THE LINE
Computers Rank as Highly as Planes at Federal Express
フェデックスはコンピュータを航空機と同等に見ている。
フェデックス社を創業しておよそ 21 年後、フレデリック・スミスは彼が最初に愛したも
の(飛行機)と同じくらいコンピュータは重要になったと見ている。
「絶対におそらくもっ
と重要である」とスミスは言う。当時夜間の航空輸送を最初に始めた企業も今や、その輸
送力よりもコンピュータ化された情報サービスを誇っている。その背景には、フェデック
スが積荷と配給について数百社に提供する情報が恐ろしい価値をもつ事実がある。この種
の情報はコストのかかる在庫を減らし、ビジネス・プロセスを速め、効率を高めて利益を
増やすことができるからである。創業以前から彼はそのような可能性を認識していたが、
その実現のために技術が重要な役割をはたすとは考えていなかった・・・・と言う。
フェデックスのコンピュータ・システムは現在実業界で最も忙しく、アクセスがもっと
も容易なシステムの一つである。1 日で 2000 万回以上の業務が処理され、8 万人の顧客が
接続する。同社が毎日動かしているおよそ 200 万個のパッケージと書類すべての位置が、
輸送中6回記録される。
スミスがいまだ企業のトップに座っている 1 つの理由は、彼が技術の進歩についていっ
41
これらの記述はAllan F. Ayers, "Forecasting: Art or Reality," Transportation & Distribution (June 1994) : 29-34.
に見られる。
42 Ayers, "Forecasting: Art or Reality," 30.
(31)
6/9/2004:第 11 章 発注処理と情報システム
たことにある。「航空会社は、ピストンからターボプロップ、ジェットへと進まねばならな
かった」とスミスは言う。彼はヴェトナム戦争の勲章をもつ退役海兵隊員であり、飛行通
である。彼のオフィスはクリッパー船の模型で一杯である。同社の 500+ジェットはコンピ
ュータ時代のクリッパー船であるという彼の信念のあらわれである。スミスは、彼自身の
優しいコンピュータ技術を同社の Power-Ship 3システムで顧客に送るテストをした。
Power-Ship 3はピックアップを指示し、荷札を印刷し、オペレータの援助なしで貨物を追
跡するオフィスのデスクトップ・コンピュータとプリンタである。
「建物の上に人がいる、saying『Has the old man put it together yet and turned it
on?』」と彼は言った。このシステムは、前版の仕分け用 Power-Ship 2 と最近広告された貨
物追跡ソフトとともに、多くの顧客が電子接続できるようにする大きな努力の結果である。
フェデックス社は電子接続により顧客の出荷量を増やせることがわかったので、すべて無
料で提供される。また夏までに、個々のマシンではなく、顧客のコンピュータ・システム
全体を通して使われるソフトウェアを提供したいとしている。自動車メーカー、衣料品通
信販売業者、人工関節メーカーも、期限に遅れた発注を捌くためにメンフィス国際空港の
フェデックス第一ハブ付近の倉庫に予備の製品をもっている。
第一テネシー銀行はメンフィス・ハブの通りを隔てた向かい側に小切手分類所を設置し、
連邦準備銀行より速いことを誇った。そのようなロジスティクスの価値がビジネスの中に
埋め込まれるようになった反面、一般の世界からは少しも理解されない。しかしスミスの
場合それでOKなのである。「あなたが食品雑貨店へ行った場合、卵がそこにどうやって着
いたかなどには関心がなかろう。しかし、卵を売り捌く人々にとってこれは大きな関心事
である」と彼は言う。そこで、あなたが彼らの製品やサービスに新たな価値を加える新し
いタイプのロジスティクス・ソリューションを業としている人々のところに行って話をす
るならば、かれらは理解する。理解しない人々は死ぬ運命にある。」
出所:Evan Ramstad (Associated Press), "Computer Ranking as Highly as Planes at Federal Express,"
Knoxville News Sentinel (January 25, 1995): CI-C4. Used with permission of Associated Press.
◎RF-ID(Radio Frequency Identification Number)
自動認識技術のひとつで、IC を組み込んだプレートやタグをものや場所などに取り付け、
そのものの判別や、位置確認を行うもの。非接触型でしかもデータの読み書き、更新がで
きるという特質があり、最近急速に発展している。データキャリアのリード・ライト方式
には、電磁誘導・RF(ラジオ周波数)電波・マイクロ波の 3 つある。
(http://www.btr-komatsu.co.jp/abbre/abbre-r.html)
◎Cross-Docking
クロス・ドッキング。商品保管の機能を持たず、仕分け、転送だけを行う小売業の物流施
(32)
6/9/2004:第 11 章 発注処理と情報システム
設。効率的に行うには、メーカーでのパレット構成変更、発注、ANS などの EDI データ転
送が必要となる。転送単位がパレット、ケースの違いにより、パレット・クロスドッキン
グ、ケース・クロスドッキングに分かれる。(EDI 用語集)
◎CIM(Computer Intergrated Manufacuturing)
コンピューター統合生産。
◎事前出荷明細(通知)ANS(Advanced shipping Notice)
予め納品データを電送しておくこと。出荷の際にバーコードでスキャンして電送する。こ
の情報によって、納入先は検収を簡略化し、また後行程の計画を早めに作成できる。商品
を出荷する場合、到着前にその出荷内容を知らせる事で、到着時の荷受所、保管場所の確
保、クロスドッキングなどができ、荷受作業を効率化する事ができる。(EDI 用語集)
◎SKU(Stock Keeping Unit)
在庫管理の商品単位。QR では、色、サイズが異なれば別々の SKU として扱う。(EDI 用
語集)
◎ナローバンド
概ね 128kbps以下の速度を持つ「低速な」通信回線のこと。特に、電話回線を通じたイ
ンターネットへのダイヤルアップ接続のこと。CATVインターネットやADSLなどの高速・
大容量な回線を指す「ブロードバンド」の対義語として最近になって使われるようになっ
た用語で、伝統的なアナログモデムやISDN回線などがこれに該当する。ADSLなどのブロ
ードバンド接続が普及するにつれてナローバンドからの移行が進んでいる。しかし、全国
どこでも利用できるナローバンド接続は依然として重要な通信インフラである。
◎スループット throughput
コンピュータが処理を行なう速度。ハードウェアデバイス、CPU、バス、メモリ、デバ
イスドライバ、OS、アプリケーションなど、コンピュータシステムで関連し合うすべての
要素を通して、最終的に処理がどれほどの速度で行なわれるかを指す。
◎スループット会計
スループット(T)
その企業(生産システム)が、販売を通じて(生産ではない)発生 さ
せるお金。 (= 売上 − 真の変動費)
[スループットレート
その企業(生産システム)が、販売を通じて発生させる単位時間あ
たりのお金 = (最大でも)制約資源での単位時間あたりのお金の発生レート]
◎「在庫とは、企業が製品に加工して販売するために購入した品目で、これには最終製品、
(33)
6/9/2004:第 11 章 発注処理と情報システム
仕掛品、原材料が含まれる。在庫は、購入価格で評価し、伝統的な原価計算実務が、仕掛
品が生産プロセスを進むにつれ、直接労務費、間接費の配賦を行うのとは異なり、付加価
値原価を含まない。」
APICS Dictionary
Ⅷ
意思決定支援システム
「LISを構成する第三の主要な部分は、意志決定支援システム(DSS)である。それは、
意思決定者が定義困難な多くの変数をもつ非構造化問題を解決するためにデータと分析モ
デルを提供するコンピュータ依拠双方向システムである【43。」本質的に、DSSは管理者が良
い決定を下すのを助けるよう設計されたコンピュータ志向ツールの集合体である。本節で
は、ロジスティクス・データベースの重要性について述べると同時に、モデリング・アプ
ローチや種々のロジスティクス・コンピュータ・アプリケーション、人工知能/エキスパ
ート・システムに関する情報を提供する。
1) Importance of the Database データベースの重要性
ロジスティクス管理者が意思決定するために最も頻繁に必要とする情報を含む包括的デ
ータベースのニーズは、DSS概念の土台に支えをする。表 11-5 は、1975 年から 1993 年に
おけるロジスティクス・データの電子化傾向が確認される【44。
表 11-5 ロジスティクス・データの電子化
ロジスティクス・データの要素
輸送
Shipping open order files
Shipped manifest/船荷証券
運送業者ファイル
運賃支払い
運賃率
出荷スケジュール
積替え回数
保管
荷役コスト
保管コスト
在庫
在庫水準
Purchasing open order files
発注削除ファイル
バックオーダー
電子化割合
1975
1982
84
85
49
55
57
53
51
56
45
36
34
51
35
30
30
31
29
28
84
93
51
71
41
69
74
74
43
1987
89
70
64
62
61
57
35
42
39
94
80
71
75
1992/3
92(2)
74(2)
69(2)
67(2)
65(2)
62(2)
40(2)
41(2)
40(2)
93(3)
89(2)
80(1)
80(2)
Omar Keith Helferich, "Logistics Decision Support Systems," Computers in Manufacturing: Distribution
Management (Pennsauken, NJ: Auerbach, 1983) : 1.
44 Craig M. Gustin, "Logistics Information Systems: Progress Made During the Last Decade," 1993 Council of
Logistics Management Annual Conference Proceedings (Oak Brook, IL: Council of Logistics Management, 1993) :
166-67.
(34)
6/9/2004:第 11 章 発注処理と情報システム
65
29
7
92
60
28
24
83
60
34
50
売上げ予測
維持コスト
品切れコスト
顧客
名称と所在地
与信制限
外部市場データ
製品
発注マスターファイル
製品明細
製造コスト
包装コスト
平均電子化率
67
38
10
97
72
25
89
94
71
41
58
72
43
15
97
77
33
90
94
70
45
64
69
43(2)
18(2)
97(3)
79(3)
32
93(3)
92(3)
71
48(2)
67
(1) 1992 年 3 月と 1987 年の有意差(Z95% = 1.96)
(2) 1992 年 3 月と 1982 年の有意差(Z95% = 1.96)
(3) 1992 年 3 月と 1975 年の有意差(Z95% = 1.96)
出所:Craig M. Gustin, "Logistics Information Systems: Progress Made During the Last Decade," 1993
Council of Logistics Management Annual Conference Proceedings (Oak Brook, IL: Council of Logistics
Management, 1993): 166. Used with permission.
データ収集の優先権を確立した後、データ・ファイルを、管理者の問い合わせに応ずる
と同時に、種々のタイプの分析にも利用できるよう、計画を立てるべきである。使用する
データベース管理法は、最初に個々のデータ要素間の論理的関係を識別し、次に論理的デ
ータベースの中でこれら諸要素を再構成しなければならない。このように、リレーショナ
ル・データベース管理の用語は今日の産業界において、非常に一般的かつ記述的になって
いる。
2) Types of Modeling Approaches 各種のモデリング法
第 12 章で詳しく述べるが、一般にモデルは最適化、シミュレーション、ヒューリスティ
ックに三分類される。簡単に言うと、最適化法は「最善の」解を探索するもの、シミュレ
ーション・モデルはロジスティクス・ネットワークの働きを再現するもの、ヒューリステ
ィック技術は最適解を提供するものではないが、大きな問題の定義に対応するものである。
表 11-6 は、それぞれのロジスティクス機能領域とロジスティクス時間軸(戦略的、戦術
的、運用中)における意思決定の内容をあらわしたものである。この表は、事実上すべて
のロジスティクス領域で、3 つの時間軸に対応した重要な決定を必要とすることを示してい
る。ロジスティクス・モデリングは柔軟で有能な方法を必要とする。上述の方法は、表 11-6
に記されたような諸問題の分析に役立つ。
表 11-6 ロジスティクスの意思決定
意思決定の
内容
予測
戦略的
・長期
・新製品
・人口統計のシフト
ネットワーク ・工場・DC の立地
意思決定の性質
戦術的
・6-12 ヶ月
・季節変動
・マーケティング衝撃
・営業倉庫----利用と割当て
(35)
業務運用
・12-16 週間
・販売促進
・トレンド
・顧客再配分
6/9/2004:第 11 章 発注処理と情報システム
設計/分析
生産計画
・調達の代替
・生産ミックス
・必要施設
・施設立地
・資材と技術の代替
・在庫の配置
・偶発計画
・生産ミックス
・偶発計画
・在庫 vs. 時間外
・作業チーム計画
資材調達計画
・備蓄と契約
・購入
・分析者不足
・在庫水準
・物流計画
・資材リリース
生産スケジュ ・経済分析−専用回線 vs. ・6-12 ヶ月スケジューリング ・日次/週次生産スケジュー
ーリング
複合生産
リング
輸配送
・車両規模と構成
・運送人との契約
・日次/週次出荷と納品計画
・施設立地
・請求書発行
出所:Richard F. Powers, "Optimization Models for Logistics Decisions,", Journal of Business Logistics
10, no. 1 (1989): 108. 掲載了承済み.
3) Computer Applications in Logistics
ロジスティクスにおけるコンピュータ・アプリケーション
[logistics activities] ロジスティクス活動
オハイオ州立大学が 1993 年に行ったロジスティクスにおける職歴パターン研究の一部と
して、「新しい情報技術」を利用する業務に関する質問があった。表 11-7 はその結果をまと
めたものであり、明らかに、情報技術の利用が劇的に増加したことを示している。1996 年
までにもっとも強く情報化が進むと期待された領域として、保管、発注登録、在庫管理が
回答された。回答は、リストされたほとんどの業務活動に関して、新技術の利用によって
影響を受ける業務の数は、1993 年から 1996 年にかけて約2倍になったことを示している。
表 11-7 新しい情報技術を使った取引のメジアン割合
業務
1990 1993 1996
輸配送
11% 28% 57%
保管
16 36 69
調達
10 20 47
受発注登録
24 40 67
顧客サービス
15 24 45
在庫管理
23 39 68
国際通信
7 16
38
出所:James M. Masters and Bernard J. LaLonde, The 1993 Ohio State University Survey of Career
Patterns in Logistics (Columbus, OH: The Ohio State University, 1993). 使用許諾済
企業がロジスティクスのコンピュータ化を進めるにあたって、最初に日常的に反復する
業務を自動化する傾向がある。発注登録と在庫管理はこの例である。これに対して、混載、
運送業者の選択と評価というように、判断や選択の余地が大きい業務の自動化は後れる傾
向がある。
全体的にロジスティクス情報を効果的に管理する上で、現代のコンピュータ技術は必須
である。企業は、経営情報システムと同様に、可能であればコンピュータ技術をロジステ
ィクス情報システム能力と統合することに非常に熱心である。この統合傾向は持続し、加
速するだろう。
(36)
6/9/2004:第 11 章 発注処理と情報システム
4) Artificial Intelligence/Expert Systems
人工知能/エキスパート・システム
上述したように、最近人工知能とエキスパート・システムに多くの注意が向けられるよ
うになった。実際、エキスパート・システムの人工知能訓練は、ロジスティクス管理実務
の多くの分野の中にすでに存在する。人工知能とエキスパート・システムは、問題を解決
して予測し、可能な処理を提案し、そして人間の能力に匹敵する精度でアドバイスする推
定能力があることから、利用可能と評価されている【45。図 11-16 は、電話問合せに対する
カスタマー・サービス代理店の回答をエキスパート・システムによって構造化する方法の
一例である。
図 11-16 顧客サービス代理店に適用できるエキスパート・システムの例
ABCカタログ・アドバイザーにようこそ
顧客はどの製品を必要としていますか?
>>電球です。
電球はどんな用途に使いますか?
>>フラッシュ(写真発光体)です。
写真発光体の純正メーカーはどこですか?
>> Beckman Instruments です。
ベックマン写真発光体のモデル番号はいくつですか?
>>わかりません
フラッシュは、「プロ用」と「シリーズ 5000」のどちらですか?
>>わかりません
フロアモデルとデスクトップモデルのどちらですか?
>>デスクトップです
アドバイス:モデル No.4367 が顧客のニーズにもっとも適しています。
単価は 1.67 ドルです。
450 個の在庫があります。
この必要条件を満たす他の電球も見ますか?
>>いいえ
顧客は注文を望みますか?
>>■
出所: Mary Kay Alien and Oman Keith Helferich, Putting Expert Systems to Work in Logistics
(Oak Brook, IL: Council of Logistics Management, 1990): 22-24. 使用許諾済
[general approach]
一般的方法
エキスパート・システムは、管理技術をキャプチャーして洗練し、そして蔓延させるた
めの経済的・実際的な方法を提供する。このシステムは、専門家が運用上の問題を分析し
解決するために利用する質問と回答を文書に記録するフレームワークを提供する。これに
より、企業は専門家がもつノウハウを多くの従業員に身に付けさせ、ネットワークを通し
て整合性、精度、生産性を改善する。また、組織の最も重要な資源である知識をより効果
的に管理することができる。
要するに、エキスパート・システムの開発は、人間の思考プロセスを理解して、コンピ
45
Ham, "Playing by the Rules," 34.
(37)
6/9/2004:第 11 章 発注処理と情報システム
ュータ化することである。エキスパート・システムの開発者がその思考プロセスを十分に
理解するならば、人がなすのと同じタイプの決定をなすようコンピュータに指示すること
ができる。人々がどのように決定するかを観察することによって、決定規則と、ロジステ
ィクス管理者の行為を案内する発見的方法(ヒューリスティクス)を認識することが可能
である。
[inventory management] 在庫管理
在庫の管理と統制はエキスパート・システムが最も大きい注目されてきた部門である。
たとえば、Federal-Mogul社はLOGIXと呼ばれる包括的な在庫/MRPインタフェースエキ
スパート・システムを導入した。このシステムは、注文、予測、包装、発注登録と受取り
優先順位といった多様な活動をサポートする【46。故メアリー・レイAlien少佐は、サクラメ
ントの空軍ロジスティクスセンターで在庫を管理する 441 の決定規則を識別したのち、一
つのエキスパート・システムを米国空軍向けに開発した【47。その導入により、15.1%∼17.7%
の範囲で成果が改善され【48、試験前の実行で、このエキスパート・システムは単一アイテ
ムに 60 万ドルの誤りを見つけた【49。
[examples]
例
エキスパート・システムの他の成功例は、以下の通りである【50:
◎ ディジタル・イクイップメント・コーポレーション(DEC)は、仕掛品(WIP)在庫
を追跡するためにエキスパート・システムを使う。このシステムでは、利用可能なワ
ークステーションが常に仕掛品を処理しており、ニーズがあるとただちに、製品と部
品が発注される。そのシステムにより、DEC の WIP サイクルは 36 日から 5 日に短
縮された。加えて、DEC は全米各地に製品を配送する別のエキスパート・システム
を使い、輸送費用を 20%減らした。
◎ CSX社の子会社である Sea-Land Service 社は、顧客サービス代表店の意思決定を一
貫したものにすることによって、船舶のルーティングとスケジューリングを助けるた
めにエキスパート・システムを開発した。そのシステムも各貨物の自動追跡とルート
の誤りの大幅削減に貢献した。
Ⅸ
報告とアウトプットシステム
46
Mary Kay Alien and Omar Keith Helferich, Putting Expert Systems to Work in Logistics (Oak Brook, IL: Council
of Logistics Management, 1990) : 47-62
47 Mary Kay Alien, The Development of an Artificial Intelligence System for Inventory Management (Oak Brook, IL:
Council of Logistics Management, 1986).
48 Alien, The Development of an Artificial Intelligence System for Inventory Management, 185.
49 Alien, The Development of an Artificial Intelligence System for Inventory Management, 128.
50 これらの要約は次から直接引用した。Alien and Helferich, Putting Expert Systems to Work in Logistics,
xvi-xviii.
(38)
6/9/2004:第 11 章 発注処理と情報システム
報告とアウトプット・サブシステムはロジスティクス情報システムの第 4 の主要部分で
ある。多くのロジスティクス管理者はほとんどの報告や他の形式のアウトプットが効果的
に伝えられていないと信じている。その結果、多くの優れた考えや多くの注目に値する調
査結果、多くの管理上の勧告は、適切な連絡が無いために気づかれないままに終わってい
る。
報告は、計画、運用と統制のような目的に役に立つかもしれない。たとえば、プランニ
ング報告は、売上げの傾向と予測、その他の市場情報、コスト要因の経済予測のような情
報を含むかもしれない。プランニング報告は過去と将来の情報を含んでいる。
業務報告は、手持ち在庫、調達と輸配送のオーダー、生産のスケジューリングと管理、
輸送といった内容を管理者と監督者に知らせる。これらの報告は一般的に、管理者がリア
ルタイムで入手できる情報を含んでいる。
統制報告は該当期間中の費用情報と業務情報をまとめ、予算支出と実際支出を比較し、
直接輸送費を提供するかもしれない。それは業務の方法と戦術を戦略的に転換するための
基礎として役立つ。
[effectiveness of reports and outputs]
報告とアウトプットの有効性
伝えられた情報が人の価値に合い、管理者の意思決定に直接応答する場合にのみ、コミ
ュニケーションがなされることを思い出しなさい。実際の商習慣において、報告とアウト
プットに含まれる情報に対する人々の期待を成型することは不可欠である。効果的なビジ
ネス通信の古くからの要点−−簡潔さ、例外の報告、問題の核心に達すること−−を取り
込むことも重要である。人々には、効果のないコミュニケーションを扱う時間も傾斜もな
い。企業のロジスティクス部門において、適切な報告とアウトプットを通した高品質のコ
ミュニケーションは、例外的事例でなく標準的事例でなければならない。
根底にある情報が管理プラニング、業務、統制に関連するかどうかに関係なく、コミュ
ニケーションの効果は企業のロジスティクス部門がその使命を果たす方法に影響する。
Ⅹ
新しい情報技術への適応
多くの企業では、効率、効果、差別化をもたらす情報技術を求めて、厳格な調査が進行
中である。本章で論じた方法のほかに、クライアント・サーバー、ネットワーク統合、グ
ループウェアが重要な技術である。グループウェアは、人々の相互作用を強化する発育盛
りの情報技術である。グループウェアの例は、電子メール、テレビ会議、電子掲示版、Lotus
Notes、インターネット等々である。これらは、ファックスとボイスメールのような既存技
術へのありがたい追加である。
[challenges and opportunities]
手ごたえのある仕事と機会
革新技術への動きに見られるように、手ごたえのある仕事と機会に不足はない。以下の
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考察は、上述のような新情報技術に適応するプロセスにとって重要である。
◎ ロジスティクス・チャネル全体の情報必要条件と同様に、顧客とサプライヤの情報必
要条件を科学的・直観的に理解することも重要である。満たすべきニーズによって左右
されるが、情報技術の柔軟性と適用可能性が必要である。上述したように、LogiCNet
社と運命を共にするというケロッグ社の決定は、真に顧客駆動型の連続補充プログラム
もとうとする方針に立脚している。
◎重要なロジスティクス活動間の調整と統合の不十分であれば、実行が遅れることを認
識する必要がある。たとえば、調整活動とロジスティクス業務の同期化ができなければ、
不整合と長い発注サイクルが生ずる。
◎ロジスティクス組織の戦略が機能志向からプロセス志向に変化することを見ることは
重要である。プロセス志向の強調は、意味があるプロセスの計測、プロセス・フィード
バック、プロセス知識を保証するだろう。
◎必然的に、初期の実行努力は、たとえば、将来の発注、予測、目標生産計画に関連し
たデータが貧弱であったり、将来のデータが入手不可能であったり共有されないことか
ら、損害を受けるかもしれない。
◎円滑で完全な実行を約束するには、組織が必要な財源をもつことは重要である。新技
術の受入れに対する従業員の意欲も、このプロセスにとってきわめて重大であろう。企
業間では最近、従業員が積極的に変更を受け入れられるようデザインしたビジネス戦略
を開発する傾向が見られる。
◎ロジスティクス管理者と情報技術者との相互作用とチーム努力を促す機会を創出する
ことが、企業にとって必要である。ロジスティクス管理者は、情報システムの芸術性と
科学性についてのもっと多く知る必要があり、その反面情報システムの専門家は、ロジ
スティクス・プロセスの管理者が毎日直面している問題をもっと深く洞察しなければな
らない。
タイムリーで正確なロジスティクス情報を持つことに戦略的な価値があることを、企業
は認識しなければならない。企業は、ロジスティクス情報システムが企業全体にとって戦
略的に重要であると考えねばならず、そして、新製品や資本支出に関する戦略を開発する
のと同じように、ロジスティクス情報戦略を開発する必要がある。
SUMMARY
まとめ
ロジスティクス情報が時に応じて入手・利用できることは、全社的な費用効率と市場で
競争できる価格を設定する能力の前提条件と認識されてきた。
◎企業全体とロジスティクスの目標実現に資するために、情報システムへの支出を増やし、
情報システム幹部を取り替え、情報技術にてこ入れしている。
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◎情報システム構築プロセスの諸ステップに従えば、結果として作られたシステムが意図
した目標を満たす可能性は高まる。
◎いくつかの要因が情報の品質に大きく影響する。そのような要因として、正しい情報が
利用可能であること、正確な情報を有すること、効果的に通信される情報を有することが
ある。
◎ロジスティクス情報は、ロジスティクス調整と業務活動を同期し、そして両者を統合す
るために必須である。
◎革新的な新情報技術は、ロジスティクス・プロセスにおいていっそう一般化してきた。
そのようなものとしてバー・コーディング、EDI、データ管理、人工知能/エキスパート・
システム、リモート・アクセスと通信がある。
◎ロジスティクス情報システムは、発注管理、調査と知能、意思決定支援、報告とアウト
プットに関連したモジュールないしサブシステムから構成されている。
◎ロジスティクス・プロセスを新しい情報技術に影響を与える刺激的な機会とする人々と
企業には、機会と同様に多くの難問が待っている。
STUDY QUESTIONS
研究のための設問
1. 今日情報システムに関連した最も一般的な問題は何か?
企業にとって最も関心のあ
るものは何か?
2. 情報システムを構築するのに、「情報システム・アーキテクチャ」をどのように使うこ
とができるか、論議しなさい。
3. ロジスティクス情報の「品質」とは何を意味するか?
4. 調整と業務活動の違いを述べなさい。これらの 2 つの活動を統合することがなぜ重要な
のか?
5. ロジスティクス・プロセスにとって特に有益で重要なものとして、どんな情報技術があ
るか?
6. EDI とは何を意味するか?どのようにして、EDI はロジスティクス・チャネルの買い手
と売り手に便益を与えることができるか?
7. 人工知能とエキスパート・システムを定義しなさい。
8. ロジスティクス情報システムを、その目的と構成部分の観点から論じなさい。
9. 発注について主な代替案にはどんなものがあるか?
どれが将来普及しそうか?
10.ロジスティクス情報システムの調査・知能サブシステムの目的は何か?
このサブシス
テムによってどんな活動が実行されるか?
11.意志決定支援システムを定義せよ。意志決定支援システムにはどんな一般的モデリン
グ・アプリケーションが含まれているか?
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12.主要なモデリング方法とは何か(複数)、それらの違いは何か?
13.革新的な新ロジスティクス情報技術を実装する企業が直面する重要な難題とは何か?
Case 11-1 : PENINSULA POINT, INC.
近年、Peninsula Point 社は、男女の現代ファッション・アパレルのマーチャンダイザー
として大きな成功をおさめた。同社は高品質のカタログを発行し、将来の顧客に発送する。
顧客は、メールないし無料電話で発注する。顧客層は子供のいない共働きの若年夫婦であ
る。彼らは Land's End、Orvis、L. L. Bean のような競争企業からも、カタログを受け取
る。
服飾業界の競争は激しいけれども、通販会社は成長している。忙しくて小売店で買い物
できない人々は、通販を魅力的な選択肢と見る。カタログを見て服飾品を購入することは、
社会のある部分ではある種のプレステージを持つように思われる。
この種の企業の中で、同社は最高の品揃え、品質、顧客サービスを提供すると考えられ
ている。同社の 2 つの重要な顧客サービス要素は、タイムリーな受注・梱包・出荷と、「顧
客にやさしい」返品手順である。同社は顧客を悩ませることなく返品を受けつける。この
慣行は高価であるけれども、高水準の管理に対する関心が高まりつつある。
同社では販売商品をいっさい生産していない。その代わりに、季節性の高い消費者のニ
ーズに応ずるために、韓国、香港、台湾、シンガポールのメーカーと契約している。同社
は、海上輸送と国内内陸トラック輸送を組合せて、ラベルが貼付されタグが付けられる前
の商品をコンテナロードで、ナッシュビル(テネシー)の中央物流センターまで輸送する。
その後で、UPS が個人顧客全員に出荷をする。
同社幹部は自分自身がロジスティクス・ビジネスに従事していると考えている。彼らは、
企業のロジスティクス能力が市場で好評を博するための鍵であると感じている。しかしな
がら、管理者を悩ますに問題は、消費者の嗜好と製品の愛顧が時として販売シーズン中に
非常に速く変化してしまうことである。唯一市場ニーズの変化に素早く反応する能力だけ
がマーケット・リーダーとそうでないものを分ける。
Case Questions
事例の質問
1. Peninsula Point 社にとって重要なロジスティクス情報システム(本章で論じたような)
の構成要素をどのように考えるか?
あなたは、企業のロジスティクス情報システムを改
善するためにどんな提案をするか?
2. Peninsula Point 社が将来成功するには、どんなマクロ環境要因が決定的に重大である
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か?
どのようにして、企業はこれらの要因に取り組むロジスティクス能力を開発するこ
とができるか?
Case 11-2 : SEA-TAG DISTRIBUTING COMPANY
卸 売 り 食 料 雑 貨 企 業 の 利 ざ や は 圧 搾 さ れ て お り 、 マ イ ケ ル ・ マ ク ビ ー ( Sea-Tac
Distributing 社ロジスティクス担当副社長)には原価を引き下げ、顧客サービスを改善する
圧力がかかっている。Sea-Tac 社は創業 4 年でしかないけれども、Seattle-Tacoma 地域卸
売り食料雑貨市場の約 11%のシェアを誇り、同業社の中で総収益第 4 位である。同社は市
場競争に果敢に取り組んでおり、利用可能な最新技術は積極的に導入する意欲が強く、非
常に進歩的であると考えられる。
ロジスティクス副社長は製品の受領、保管、配給に関する全ての活動に責任をもち、同
社の中央コンピュータ・システムを直接支配している。Sea-Tac 社は、販売する食料雑貨製
品を 2 つの物流センターのどちらかで受け取り、それらの施設から顧客の倉庫ないし店舗
まで直接配送をする。同社は 12 台のトラックをもち、もっぱら顧客に製品を届けるために
使っている。
同社のあらゆる購入活動は購入副社長の責任で行われる。彼は 8 名の有資格バイヤーチ
ームを頼りにしており、各バイヤーは特定クラスの食品雑貨に専門的に扱う。各バイヤー
は実質的に、個々のベンダーとあらゆる販売条件(価格、信用条件、ロジスティック責任)
について交渉する全権限を持つ。同社の製品ライン SKU 数が 3,000 を上回っており、購入
機能は同社にとってきわめて重大である。
同社は購買部門とロジスティクス部門を統合していないけれども、両部門の副社長は 2
つの部門間で高度な調整が行われていると思っている。同社の他の副社長はマーケティン
グと金融をそれぞれ統制している。マーケティング担当副社長は製品ラインの販売促進と
販売にあたっている。これは、主に同社の効果的な広告プログラムと 10 人の取引(アカウ
ント)幹部の努力を通して行われている。彼らは取引の重要性を勘案して、週に1∼2度
個々の顧客に電話を入れる。顧客は同社の発注登録社員に直接電話して、すべて発注する。
財務担当副社長はロジスティクス担当副社長にいろいろな費用関連情報を提供する。残念
なことに、マクビーは提供された平均原価データに基づくロジスティクス決定に満足して
いない。
Case Questions
1. 本章の内容に基づいて、原価を引き下げ、サービスを改善するのに資するために、あな
たはロジスティクス担当副社長にどんな提案をするか?
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2.あなたは勧告を完成させるにあたり、どんな追加情報を望むか?
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