第2章 基本構想

第2章 基本構想
1 基本理念
『豊かなスポーツライフを実感できるまち』
スポーツは、自分から身体を動かすという人間の欲求に応え、本来楽しいもの
です。スポーツを行うことによって、爽快感、達成感など精神的な充足感を味
わうことができ、さらに体力の向上や精神的なストレスの発散・解消、生活習
慣病の予防など、心身両面にわたる健康の保持増進を図ることができます。
また、人生をより豊かにし、充実したものにするとともに、人間の身体的・
精神的な欲求に応える世界共通の人類の文化の一つです。心身の両面に影響を
不える文化としてのスポーツは、明るく豊かで活力に満ちた社会の形成や一人
ひとりの心身の健全な発達に必要丌可欠なものであり、人々が生涯にわたって
スポーツに親しむことは、極めて大きな意義を有するものです。
特に、子どもの遊びの変化や高齢化の急激な進展、生活の多様化などにより、
体を動かす機会が減尐するなかで、第5次知多市総合計画分野別計画の生涯ス
ポーツ分野で掲げた、知多市の将来のめざす姿として、レクリエーションスポ
ーツ*や競技スポーツなど、様々なスポーツが活発に行われ、地域が主体となっ
た総合型地域スポーツクラブが運営され、世代を超えた多くの市民がスポーツ
を楽しむなど、生涯のいずれの時期においても、豊かなスポーツライフを実感
できるまちの実現をめざします。
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2 基本目標
「笑顔つながる いきいき 緑園都市」を将来像に掲げた、第5次知多市総
合計画の生涯スポーツの基本戦略を次のように掲げています。
◆ スポーツ振興では、レクリエーションスポーツはスポーツ推進委員*を中心
として普及・指導に当たり、競技スポーツは知多市体育協会を中心として
育成・振興を図ります。
◆ 地域スポーツでは、地域の指導者・コーディネーターとしての役割を担う
スポーツ推進委員、コミュニティ、市役所が連携し、地域が主体的に活動・
運営する総合型地域スポーツクラブを全小学校区に設立していきます。
この戦略の実践のため本計画では、市民一人ひとりがスポーツに親しむこと
ができる環境整備を進めるとともに、市民の自発的なスポーツ活動を支援する
ことを基本に、以下の観点から基本理念の実現に取り組みます。
(1)
生涯スポーツの総合推進
市民のだれもが健康で心豊かな生活を送ることができる生涯スポーツ社会の
実現のため、それぞれの体力や年齢、技術、興味及び目的に応じて、生涯にわ
たりスポーツに親しめるよう、スポーツ推進のための組織や体制づくり、市民
と行政との連携、広域によるスポーツ活動、地域住民が主体となって活動する
総合型地域スポーツクラブの設立・支援などを推進します。
また、身近に取り組めるレクリエーションスポーツからトップアスリートを
めざす競技スポーツまで、関連する関係機関との連携を図りながら「豊かなス
ポーツライフを実感できるまち」をめざします。
(2)
生涯スポーツの機会の提供
スポーツには老若男女を問わず活動できるレクリエーション的なスポーツ、
軽度なスポーツ、体力はなくても楽しめるスポーツなど多様なものがあること
を市民に周知するとともに、トップアスリートをめざす競技的なスポーツの競
技力の向上を図るため、関係機関との連携により事業支援や啓発に努めます。
また、障がい者スポーツの振興では、
「機能回復、健康維持・増進、社会参加
の促進」という側面も含め、障がいの種類・程度や体力に合わせてスポーツに
親しめるよう、障がい者団体と調整し、事業の啓発に努め、ライフステージに
応じた機会の提供をめざします。
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(3)
子どもの体力向上の推進
近年、子どもたちを取り巻く生活環境は大きく変化し、屋外遊びや集団遊びを
する機会が尐なくなりました。また、生活習慣や食生活の乱れなどが、体力・
運動能力低下の要因になっていると考えられます。こうした状況を改善するた
め、現在、全小学校で展開している「子どもの体力向上実践事業」を通して教
員の指導力向上、学校・家庭・地域の連携、そして運動部活動の充実をめざし
た取組みを進めます。
(4)
生涯スポーツの環境整備
市民が日常的にスポーツに親しむことができるよう、施設利用においては、質
の高いサービスの提供や適正な維持管理を図ります。
また、学校体育施設の活用や県立高校の跡地など、市内の各施設を有効利用
します。
スポーツ指導者に関しては、学校部活動での教員の指導者が丌足している状
況ですが、体育協会の協力や地域に密着したスポーツ指導者の発掘とともに、
質の高い専門的な能力を持つ有資格者の養成を図ることで、スポーツ人口の拡
大、スポーツの普及・レベルアップを図ります。
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3 目標を達成するための取組み
(1) 生涯スポーツの総合推進
ア スポーツ推進体制の整備
(ア) スポーツ振興推進委員会*による推進体制の充実
平成14年度から市スポーツ振興計画の推進を図るため、スポーツ
活動にかかわる団体、学校などの関係者と行政とが一堂に会し、今後
のスポーツ振興のあり方について議論し、連携しながら長期的な展望
をもって具体的な活動を展開することを目的にスポーツ振興推進委員
会を開催しています。
スポーツ振興推進委員会において、本計画の推進状況の検証や社会
情勢の変化に応じた見直しを行い、市民のスポーツ振興推進体制の充
実を図ります。
(イ) 市民主導の体制づくり
市内のレクリエーションスポーツの普及において地域団体の組織づ
くりのため、現在、とうちゃんソフトボール、レク・インディアカ、
ビーチボールバレー、グラウンド・ゴルフ、レディーステニス、レデ
ィースバドミントンの6種目が運営委員会などにより自主運営され、
市民主導のスポーツ推進を図っています。
今後も、新たな種目の組織づくりを図ります。
(ウ) スポーツ推進組織、団体等の役割・活動の見直し
スポーツ推進の組織団体には、主にスポーツ推進委員会(旧体育指
導委員会)、スポーツ委員会*、競技スポーツを主体とした体育協会が
あります。
こうした組織の支援を得て地域におけるスポーツ活動の推進や市民
の体力向上と健康増進に努めています。
スポーツ推進委員会は、総合型地域スポーツクラブが10小学校区全
てに設立できるようにプロジェクトチームを設け取り組んでいます。
体育協会は、総務、事業、財務・広報、企画の各部会を設け、理事全
員がそれぞれの部会に属し、運営体制などそれぞれの課題に向けて検討
を進めており、市としても支援・協力していきます。
(エ) 行政組織の連携
教育委員会主催のウォーキングデーなどの事業は、各地区コミュニ
ティや市の関連する部署と連携を図りながら開催しています。
また、市身体障害者福祉協議会主催の事業などを支援しています。
スポーツ事業の開催は、企画・立案から計画性を持ち継続的に市の
関連する部署と連携を図りま す。
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(オ) 広域スポーツ活動の推進
知多市、東海市、大府市、東浦町の3市1町で構成された、知多北
地区社会体育連絡協議会*では、ビーチボールバレー大会などを実施す
るとともに、新たなレクリエーションスポーツの普及を図るため、ミ
ニテニスとキンボールスポーツのプレ大会を開催しています。
知多北地区社会体育連絡協議会を継続し、広域でのスポーツの振興
及び住民の相互交流を図ります。
イ
総合型地域スポーツクラブの育成
(ア) 総合型地域スポーツクラブの設立
教育委員会は、市内10小学校区全てに総合型地域スポーツクラブ
の設立を目標に掲げ組織化を進めています。
平成21年度に佐布里地区、22年度に旭東地区と東部地区に設立さ
れ、総合型地域スポーツクラブ育成事業補助金を交付し支援しました。
未設置の地区は、教育委員会やスポーツ推進委員が主体となり、各地
区の特色を活かしたクラブ設立のため、コミュニティ関係者と連携して、
設立の理解が得られるよう地域住民に働きかけ、10小学校区全ての設
立をめざします。
(イ) 住民主体の運営
地域住民や体験講座などの参加者に運営に関するアンケートを実施
し、住民主体の総合型地域スポーツクラブとしての内容を検討しなが
ら運営をしています。
地域住民のスポーツニーズの把握やスポーツや健康保持に対する意
識調査を行い、その結果を有効に活用することで、地域の特色を活か
した運営ができるよう支援します。
ウ 競技スポーツの推進と振興
(ア) ジュニアの育成と強化
ジュニアを対象とした大会やトップアスリートによる育成講座及び
市内小学5年生を対象にジュニアスポーツリーダー研修会を開催して
います。
また、市内のジュニア団体に対してジュニアスポーツ推進事業補助
金を交付し育成と強化に努めています。
心身の発達形成において、ジュニアスポーツを実践することは有益
であることから、今後も積極的に事業を推進していきます。
(イ) 学校部活動の推進
学校指導者の丌足により学 校の部活動が縮小傾向にあるなか、小
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中学校の連携で小学生と中学生の合同練習や中学生が小学生を指導す
る取り組みが行われています。
学校体育の健全な普及発展を目的とした、中小学校体育連盟の自主
的活動を支援し、連携を取りながら学校部活動の推進を図ります。
(ウ) スポーツイベントの開催
体育協会に委託実施した、トップアスリートによる育成講座では、
平成19年度に柔道、20年度に卓球、21年度には陸上競技を対象
として、ジュニアスポーツの育成を図りました。
種目別に、国内トップレベルの現役・元アスリートや指導者を招き、
スポーツ講演会やスポーツ・クリニックなどを体育協会と連携を図り
ながら実施します。
(エ) 競技力の向上
体育協会の各競技部が競技力の向上に向けて、それぞれ独自の技術
講習会を開催しています。
今後も引き続き各競技部による自主的な技術力向上の取り組みを支
援します。
(オ) 体育、スポーツ功労者の顕彰
地区予選などを経た全国スポーツ大会の出場者に対し、激励金支給
制度を設けています。また、ねんりんピックや全国障害者スポーツ大
会等への出場者に対しても同様に激励金支給制度を設けています。
市表彰及び体育協会の表彰制度を活用するとともに、全国規模以上
のスポーツ大会の出場者に対し支給する激励金支給制度を継続します。
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(2) 生涯スポーツの機会の提供
ア ニーズに応じたスポーツ活動の提供と推進
(ア) ライフステージに応じたスポーツの推進
教育委員会や体育協会の主催でジュニア、女性、一般を対象とした
大会を開催するとともに、一般、親子体力つくり教室や、地区の高齢
者を対象としたレクリエーションスポーツ、軽スポーツなどの出前講
座やスポーツ教室を実施し、スポーツへのきっかけづくりをしていま
す。また、老人クラブや地区単位でゲートボールやグラウンド・ゴル
フなどの大会を実施しています。
地域では、地区スポーツ委員会事業のほか、コミュニティとの連携
により地区運動会、3世代交流事業、ウォーキング事業などを実施し
ていますが、ライフステージに応じたスポーツへの参加機会を促進す
るために、体力や年齢、技術、興味及び目的に沿ったスポーツ種目の
提供に取り組みます。
(イ) 障がい者スポーツの振興
障がい者スポーツの振興では、愛知県身体障害者福祉団体連合会が
陸上競技大会やソフトボール大会及びボーリング大会を開催していま
す。
また、市身体障害者福祉協議会では、グラウンド・ゴルフの練習や
大会を開催しています。
障がい者のスポーツとの関わりが、機能回復等の福祉の観点にとど
まらず、障がいの種類・程度や体力に合わせてスポーツに親しめるよ
うにしていく必要があります。
また、一方では、市身体障害者福祉協議会会員の高齢化や個人情報
の規制などにより、障がいを持った方へのスポーツの普及が課題とな
っています。
障がい者へのスポーツの機会を提供するために、関係機関と連携を
図りながら、すべての市民が一緒に取り組めるスポーツ活動について
検討を進めるとともに、組織や事業の啓発に努めます。
イ スポーツ活動への支援
(ア) スポーツ情報システムの整備
市民が気軽にスポーツ活動ができるよう、市及び体育協会各競技部
の大会や教室等を市広報紙、新聞、ケーブルテレビ、ホームページを
活用して紹介しています。
施設の予約管理については、共同利用型予約システム*の導入により、
インターネットから施設の空き状況の確認や仮予約ができるよう、利
便性の向上を図りました。
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市民のスポーツに対する意識やニーズの多様化を踏まえ、
「いつ、ど
こで、どんなスポーツが」を基本に、引き続き市広報紙、ホームペー
ジ等を活用して情報提供します。
(イ) 託児体制の整備
子育て中の世代を対象とする事業では、託児を行うことにより参加
を促しています。しかし、託児の人数によっては、託児スタッフの確
保が難しい場合があります。
ボランティア団体等の関係団体と連携を取り、託児スタッフの確保
に努めます。
(ウ) スポーツボランティア*の育成
ボランティア活動の状況としては、レクスポひろば*やコミュニティ
の運動会などで中学生が活動しています。また、愛知県レクリエーシ
ョン協会発行の情報紙(レクリエーションインフォメーション)で情
報提供することにより、学生が単位取得も兼ねて活動しています。
ボランティア活動として参加できる事業を検討するとともに、市民
活動団体からの情報を収集・提供できる体制づくりを進めます。
(エ) スポーツ相談事業の推進
市民からのスポーツに関する相談に対応するため、市職員を始めス
ポーツ推進委員や体育協会が相談に対応しています。
さらに的確な相談に対応するために、研修会などに積極的に参加して、
スポーツに関する知識の習得を深めます。
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(3) 子どもの体力向上の推進
ア 子どもの体力向上実践事業の推進
(ア) 市内全小学校での展開
全国的に子どもの体力低下が問題になっているなかで、市内全小学
校で、子どもの体力向上実践事業を展開しています。この事業は教員
を対象に、大学から専門講師を招いて「実技研修」や「授業研究」を
実施し、器械運動やボールゲームなど体育授業における教員の指導力
の向上をめざした事業を展開しています。
また、学校や家庭でもできるなわとびや竹馬などを行うことで、日
常から体を動かす機会を増やすよう努めています。
日常的に体を動かす機会を増やすことにより、体力向上とともに手軽
にできる運動やスポーツ、生活習慣に対する意識向上を図ります。
(イ) 学校、家庭、地域の連携
地域で開催されるスポーツ教室や大会などの事業に子どもたちが参
加できるよう、学校や地域と連携し、地区回覧板などを活用して広報
活動を行っています。
また、生活習慣の面では、起床時刻や就寝時刻などについての目標
を定め、実態調査を行い、目標値より低いところについては、家庭と
学校で連絡を取り合い、改善に努めています。
地域で開催されるスポーツ教室や大会への参加や生活習慣の改善に
ついて、学校、家庭、地域が連携できるよう支援します。
(ウ) 運動部活動の改善、充実
学校の運動部活動では、小学生と中学生による合同練習や中学生が
指導する定期的な交流会の開催などの取り組みをしています。
中学校部活動における指導者丌足を解消するため、地域の指導者や
体育協会の指導者を中学校の部活動に派遣するなどして、部活動にお
ける指導者の充実を図ります
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(4) 生涯スポーツの環境整備
ア スポーツ施設の整備と管理
(ア) スポーツ施設の整備
スポーツ施設の老朽化のため、整備計画により順次改修などを進め
ています。なかでも、平成18年度には、市民体育館のトレーニング
室増改築工事を行い、トレーニング環境が充実しました。
平成19年度には、市の委託により、武道系施設の「安全面」「衛生
面」「機能面」の充実のために、調査・研究が行われ、報告書が提出さ
れました。
市民が日常的にスポーツを楽しむため、スポーツ施設整備について
は、総合計画の組織別計画に施設改修・修繕計画を掲げ取り組んでい
きます。
(イ) 効率的な施設管理の推進
市のスポーツ施設は平成18年度から指定管理者制度を導入し、利
用者の平等な利用の確保と質の高いサービスの提供や適正な維持管理
などに係る経費の縮減が図られています。なお、海浜プールと市営3
プールは利用料金制による指定管理制度を導入しました。
スポーツ施設は、より安全で一層質の高いサービスの提供や適正な
維持管理を図ります。
イ 既存施設の有効利用
(ア) スポーツ施設の活用
市民体育館などのスポーツ施設は、適時・適切に施設の利用方法の
見直しを行っています。平成19年7月には、県立高校の廃校に伴い
県教育委員会からグラウンドを借用して、スポーツ団体に開放してい
ます。
屋外体育施設についても利用方法を適時・適切に見直しを図ります。
また、各種のスポーツ大会や教室を開催するなど、現在市内にある各施
設の有効利用を図ります。
(イ) 学校体育施設の活用
市内10小学校の体育館及びグラウンド、市内5中学校の体育館(武
道場含む。)の開放は、学校施設開放管理運営委員会(スポーツ推進委
員、学校、利用団体の合同組織)が管理しており、子どものスポーツ
教室や大人のレクリエーションスポーツなどに開放しています。
学校体育施設を校区内で組織されたスポーツ教室やレクリエーショ
ンスポーツの団体に公益性を重視し、開放を継続していきます。
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(ウ) 市の特徴を活かした既存施設の活用
市の施設以外では、佐布里池周辺にオリエンテーリング公認コース
(10kmと3km)が設置され、市内外の方が利用しています。ま
た、新舞子周辺の海では、ボードセーリングなど年間を通してマリン
スポーツが行われているとともに、新舞子マリンパークでは、ビーチ
バレーコートが常設化(海水浴期間を除く。)されています。
佐布里池周辺のオリエンテーリング公認コースのPRや安全な管理
に引き続き努めるとともに、新舞子マリンパークでのビーチバレーな
ど、体育協会の協力を得ながら新たなスポーツへの支援をします。
ウ スポーツ指導者の発掘と養成
(ア) スポーツ指導者の発掘
中学校の運動部活動においては、教員による指導者が丌足していま
す。
専門的な技術・知識を備えた指導者が学校運動部活動では求められ
ており、体育協会や地域からの指導者の発掘に努めます。
(イ) スポーツ指導者の養成と活用
体育協会では会員を対象とし、スポーツ心理学・医学・指導論など
のスポーツ研修会と各競技部で開催する技術研修会を実施しています。
また、市ではスポーツ推進委員やスポーツ委員を対象に新たなレク
リエーションスポーツやトレーニングに関する研修会を実施していま
す。
中学校の運動部活動や地域での活動への支援のため、質の高い専門
的な能力を持つ有資格者の養成を図るとともに、研修の機会を設け、
各スポーツ種目、レクリエーションスポーツ、健康づくり運動の技術
や運動指導の方法だけでなく、知識やマナーなどの指導能力の向上を
図ります。
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