ドイツの電動パワートレイン、リチウムイオン電池 とインフラ

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ドイ ツ の電動パワートレイ ン 、リチウムイ オン 電池とイ ン フラ 整備の動向 ­ マークラ イ ン ズ 自動車産業ポータル
ドイツの電動パワートレイン、リチウムイオン電池
とインフラ整備の動向
独NRW州政府 e-Mobilityセミナー報告
2010.4.16 No.871
ドイツのノルトライン・ヴェストファーレン(Nordrhein-Westfalen NRW)州経済振興公社の主催で、2010年EV・
HEV駆動システム技術展(EV Japan)の期間中である2010年3月4日に「EV/FCVが世界の自動車産業にもたらす
意義と挑戦」と題したセミナーが終日開催された。この中から5件の講演を報告する。
ドイツ 国家エレクトロモビリティ(e-Mobility)開発計画(NEDP)とは
ノルトライン・ヴェストファーレン(NRW)州はe-Mobilityモデル地域に
[成果]欧州標準となったプラグインハイブリッド/電気自動車用充電プラグ
FORUM 1:車両技術(3件)
FORUM 2:バッテリー&燃料電池技術(2件)
ドイツ 国家エレクトロモビリティ(e-Mobility)開発計画(NEDP)とは
目的: ドイツでは、これまでは燃費規制、排出ガス規制に新世代ディーゼルエンジンで対応してきたが、厳しい
CO2排出規制に対して新技術で段階的に置き換えて、参加企業の市場獲得を支援する。
計画の概要: 参加企業は、e-Mobility開発を迅速に行うため、景気刺激施策の支援を受け、産学連携で開始し
た。政府関係各省が責任を持つ。各省の役割は、情報交換、ネットワーク、技術移転、市場開発である。連邦政府
は、今後10年間にわたり総額25億ユーロを投入する。
開発対象: EVとPHEV。乗用車、小型商用車と二輪車。HEVは、燃費がPHEVより劣るため、短中期対策とする。
EV/PHEVの普及目標: 2020年:100万台、2030年:500万台以上
e-Mobility開発の課題:
・電動化技術(電気駆動、エネルギー蓄積、グリッド・インフラ)
・サプライチェーン(原材料、部品、車両、再生可能電力、インフラ、公共交通機関の連携)
・規格(プラグ、安全性、HMI等)でイニシアティブ確保
・リサイクル(レアメタル、レアアース)
・都市計画法の見直し
電池関連の開発予算:
・リチウムイオン電池研究開発(420百万ユーロ 2008年~2015年)
・電池のエネルギー/パワー密度・寿命・安全性向上、原価低減の研究開発(35百万ユーロ、2009年~2012年)
e-Mobility国家開発計画のロードマップ(2009年8月)
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(出所) 環境省 第2回環境対応車普及方策検討会 公開資料5 「主要国のエコカー戦略」 P.27
注; 表には「リチウムイオン電池」となるべきものが、「チウムイオン電池」となっている箇所があるが源資料のまま。
ノルトライン・ヴェストファーレン(NRW)州はe-Mobilityモデル地域に
NRW州の人口は1,800万人、その内、ライン・ルール地域に1,100万人が住む。州都デュッセルドルフを中心とした
半径500kmにはEUの人口の約3分の1が住み、その購買力はEUの約半分を占める。また、NRW州の企業は、ドイ
ツ連邦で最大の輸出高を産出している。
(出所) 独NRW州セミナー配布資料 「e-モビリティー モデル地域」
NRW州のe-Mobilityマスタープラン(要旨)
自動車産業とエネルギー技術ノウハウが集積するNRW州は、e-Mobilityモデル地域に認定された。2020 年まで
に少なくとも25万台の電気自動車(プラグインハイブリッドから純粋なバッテリー駆動の電気自動車を含む)の普及
を目指し、この成果をNRW州発展のために活用し、必要な自動車産業の構造転換を促していくことがNRW州の目
的である。
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(出所) 独NRW州セミナー配布資料 「e-モビリティー モデル地域」
[成果]欧州標準となったプラグインハイブリッド/電気自動車用充電プラグ
日米欧の主要自動車メーカーは、2009 年初頭、将来の電気自動車の充電プラグの欧州統一規格について基本
合意をした。この合意のベースとなったのが、NRW州に拠点を持つMENNEKES Elektrotechnik 社が統一規格案
として提出した技術革新的な充電プラグである。単相230Vのみならず、定格電流63Aまでの3相400V 接続にも対
応する。
[合意した自動車メーカーと電力会社]
・ダイムラー、BMW、フォルクスワーゲン、Renault- 日産、PSAプジョー・シトロエン、ボルボ、フォード、GM、トヨ
タ、三菱自動車、フィアット。
・ドイツ電力会社のRWE、エーオン、EnBW、フランスのElectricite de France、スウェーデンのVattenfall、イギリ
スのElectrabel、イタリアのEnel、スペインのEndesa、ポルトガルのEDP およびオランダのEssent。
将来のe-Mobility欧州標準充電プラグ
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(出所) 独NRW州セミナー配布資料 「e-モビリティー モデル地域」
[FORUM 1]車両技術
[報告]
電気/ハイブリッド自動車-IKAの研究開発活動(アーヘン工科大学)
自動車の電化、燃料電池と水素-GMの統合アプローチ(GM)
商用車におけるハイブリッドシステム(三菱ふそうトラック・バス)
電気/ハイブリッド自動車-IKAの研究開発活動
アーヘン工科大学 自動車・車両研究所(Institut fur Kraftfahrzeuge IKA) 副所長 Prof. 工学博士 ヤン・ヴェレム・ビアマン氏
冒頭でNRW州のe-Mobilityマスタープランの概要を話しながら、そこでの自動車・車両研究所(IKA)の役割を説
明した。IKAの活動分野は、主にハイブリッド/電気自動車のドライブトレインのコンセプト作り・シミュレーションか
ら設計・製造、試験・検証・ベンチマークと幅広い。企業をスポンサーとする開発プログラムの実施に特徴がある。
ハイブリッド/電気自動車のドライブトレインの研究・開発の歴史は古く、1973年の「IKA Hybrid 1」プロジェクトか
ら始まったと言える。次いで1992年の「IKA Hybrid 2」、1993年にはフォードをスポンサーとする「Ford EHV」、最
近では2008年の「IKA Hybrid 3」と「Ford Motor T」、2009年に「Street Scooter」のプロジェクトが実施されてい
る。
IKAのドライブトレイン開発プロジェクト
IKAは、e-Mobility開発においても、以下のプロジェクトを主導している。
(出所)セミナー配布・公開資料「Electro- and Hybrid Vehicles . R&D Actvities of ika」 P.12
プロジェクト名
プロジェクトの概要
NRW州政府の助成金を活用。
電気自動車のオープン・プラットフォームの設計を目的。
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Street Scooter
後輪近くに2個のモーターを置く後輪駆動方式。
ボディとパワートレインに合わせてスケーラブルな自動車アーキテクチャ。
生産工程を最適化してコスト低減。
2015年までの活動。
CO2排出 54 -100 g/kmを達成する内燃機関/ハイブリッド/電気ポワートレインの
Ford Motor T
コンセプト作り。
仕向け先別にスタイリングを設計できる「Kinetic Design」の研究。
ボディパネル、ドライブトレインモジュールの互換性の確保。
ボッシュ、アウディ等がスポンサーで、連邦政府の助成金を活用。
活動期間は2009年10月~2012年10月。
活動資金は総額 22百万ユーロ。
e-Performance
電気自動車のコンセプト作りと開発を目的。
[重点課題]
・電動ドライブトレインの開発。
・実証車の開発。
・モーター駆動、電池性能、ドライブトレイン構造の長期的な研究。
Verkehrsverbund Rhein-Ruhr (VRR ライン・ルール交通連合)等がスポンサーで、
連邦政府の助成金を活用。
VRR hybridbuses
活動期間は2010年1月~2011年6月。
活動資金は総額 1百万ユーロ。
ハイブリッドバスの応用研究をサポート。
NRW州政府の助成金を活用。
活動期間は2009年10月~2011年12月。
E-Aix
活動資金は総額 19百万ユーロ。
e-Mobilityと公益事業のインフラを基に持続可能な移動(mobility)コンセプトの研
究、開発と実証実験(電気商用車と電動スクーターを使用)。
(出所)セミナー配布・公開資料「Electro- and Hybrid Vehicles . R&D Actvities of ika」から編集
自動車の電化、燃料電池と水素-GMの統合アプローチ
ゼネラルモーターズ・アジア・パシフィック・ジャパン株式会社
燃料電池事業本部(FCA)アジア太平洋地域担当ディレクター ジョージ・P・ハンセン氏
GMは、自社の課題を環境(CO2削減)とエネルギーの多様化(脱石油)と認識し、そのソリューションとして、下図
に示すように、内燃機関(ガソリン/ディーゼルエンジン)と駆動の技術改善のみならず、ハイブリッド車、プラグイン
ハイブリッド車(レンジエキスパンダーE-REV)、電気自動車(電池駆動BEV)、水素燃料電池車の全ての電動化技
術を手掛ける方針である。
GMの先進的自動車推進技術戦略
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(出所)セミナー配布・公開資料「Vehicle Electrification, Fuel Cells and Hydrogen - GM’s Integrated
Approach」 P.2
GMの電動化技術のアプリケーションマップ
(出所)セミナー配布・公開資料「Vehicle Electrification, Fuel Cells and Hydrogen - GM’s Integrated
Approach」 P.16
GMのこれまでのハイブリッド車の実績
GMは、2010年末までにプラグインハイブリッド車の「Chevrolet Volt」、2011年に「Opel Ampera」の生産を開始す
る。プラグインハイブリッド車に関しては、実は1969年に他社に先駆けて「GM XP-883」を商品化したことがある。
下図に示すように、GMは、2001年以降は様々なハイブリッド車を市場に投入してきた。
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(出所)「GM’s Advanced Propulsion Technology Strategy」 WRCC ATC February 6, 2008 公開資料 P.8
(注)Saturn VUE Green Line plug-inはモデル廃止のために現在は販売中止。
自動車の電動化に対する消費者の心配は「充電」と「走行距離」にあるため、GMは、発電専用のエンジンを積んだ
プラグインハイブリッド車を「レンジエキスパンダー(走行距離の延長)車R-REV」のコンセプトで商品化した。
調査の結果、運転者の80%は、毎日の走行距離は50 km以下であることから、Chevrolet Volt/Opel Ampera用の
リチウムイオン電池の仕様を以下のように設定した。
セル個数
220個以上
冷却方法
液冷方式
エネルギー容量
16 kWh (8 kWhが利用可能)
最大出力エネルギー
111 kW以上
最大電圧
360 V
充電時間
3時間 (230 V、16 A)
寿命
10年/24万km
システム重量
180 kg
市販されている燃料電池車 Chevrolet Equinox FC
GMは、プラグインハイブリッド車の先に燃料電池車を位置付けている。既に2007年よりChevrolet Equinox FC/
GM HydroGen4を販売し、現在は4代目となっている。(Equinox FCの参考情報サイト)
(出所)セミナー配布・公開資料「Vehicle Electrification, Fuel Cells and Hydrogen - GM’s Integrated
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Approach」 P.18
商用車におけるハイブリッドシステム
三菱ふそうトラック・バス株式会社
取締役副社長 開発本部長 工学博士 エスリンゲン大学名誉教授 アイケ・ブーム氏
ダイムラーグループにおける三菱ふそうトラック・バスの位置付けは、
・アジアの製造・販売の拠点
・小型トラックの開発拠点
・ハイブリッド技術の開発拠点
である。特に商用車のハイブリッド技術開発における重要性は高く、2008年に川崎市にGlobal Hybrid Centerを
開設している。
これは、三菱ふそうが1973年の電気バスの実用化以来、1995年のCanterコンセプトの発表を経て、2004年のハイ
ブリッドバス「AERO STAR Eco Hybrid」、2006年のハイブリッド小型トラック「CANTER Eco Hybrid」の発売を行
い、800台以上の販売実績をあげたことが評価された結果である。ハイブリッドシステムの効果は、市街地走行での
ディーゼルエンジンの燃費改善(15%~25%)ととらえており、回生ブレーキを使ってのエネルギー回生技術の向上
に力を入れている。小型トラックのCANTER Eco Hybridは、欧州市場に適していると判断している。
ハイブリッド小型トラック「CANTER Eco Hybrid」
ハイブリッドシステムは、モーターとエンジンの双方で駆動可能な2モーター・パラレルハイブリッド方式を採用。発
進時はモーターのみで走行し、車速が一定になるとクラッチをつないでエンジンのみで走行。加速時はエンジンを
モーターがアシストする。ブレーキでの制動(減速)時はモーターが発電機として機能し、発生した回生エネルギー
を電気に変えて電池に蓄え、同時に主ブレーキとして回生ブレーキをかける。
(出所)三菱ふそうトラック・バス株式会社HP「キャンター エコ ハイブリッドのポイント」
CANTER Eco Hybridのハイブリッドシステムの仕様概要
1
3リットル小排気量エ
ンジン
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総排気量[cc]
2,977
最高出力[kW (PS)/rpm]
96 (130) / 3,200
最大トルク[Nm (kgfm)/rpm]
294 (30.0) / 1,700
種類
永久磁石式同期モーター(1個)
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2
薄型ハイパワーモー
ター
定期交換不要のリチ
3
ウムイオン電池パッ
ク
4
最高出力[kW]
35
最大トルク[Nm]
200
種類
リチウムイオン電池
電池セル個数
96(1個の電池セルは 3.6V / 5.5Ah)
容量[Ah]
5.5
総電圧[V]
346
制御用インバーター
(出所)三菱ふそうトラック・バス株式会社HP「キャンター エコ ハイブリッドのポイント」と「主要諸元表」より編集
ハイブリッドシティバス「AERO STAR Eco Hybrid」
2009年度の省エネ大賞を受賞。ハイブリッドシステムは、電気自動車としてモーターのみで駆動する1モーター・シ
リーズハイブリッドを採用。走行にエンジンは使用せず、発電のみに使用。電気自動車としての走行でリチウムイオ
ン電池の充電量が低下した場合には、エンジンで発電機を回して発電してリチウムイオン電池を充電しながら走行
用モーターを駆動して走行する。ブレーキでの制動(減速)時はモーターが発電機として機能し、発生した回生エ
ネルギーを電気に変えて電池に蓄え、同時に補助ブレーキとして回生ブレーキをかける。
(出所)三菱ふそうトラック・バス株式会社HP「エアロスターエコハイブリッドのハイブリッドシステム」
AERO STAR Eco Hybridのハイブリッドシステムの仕様概要
3
5
7
ディーゼルエンジン
走行用モーター
リチウムイオン電池
総排気量[cc]
4,899
最高出力[kW (PS)/rpm]
132 (180) / 2,700
最大トルク[Nm (kgfm)/rpm]
530 (54) / 1,600
種類
誘導交流電動機(2個)
最高出力[kW]
79 x 2
種類
リチウムイオン電池
電池セル個数
パック
704(1個の電池セルは3.6V /
5.5Ah)
容量[Ah]
5.5
総電圧[V]
346
(出所)三菱ふそうトラック・バス株式会社HP「エアロスターエコハイブリッドのハイブリッドシステム」 と「主要諸元
表」より編集
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2010年秋に3代目のCANTER Eco Hybridを発売する。3代目ではインストールコストを50%削減した。コスト低減方
法は以下の3点。
・世界調達(Global sourcing)
・ダイムラーの乗用車部門との共同購入
・システムの改良
しかしながら、このトラックとバスのハイブリッド化の経験から分かったことは、乗用車とトラックの走行用モーターは
共用できないことであった。
また今後は、電池セルを共用化する計画である。
[FORUM 2]バッテリー&燃料電池技術
[報告]
R&Dとリチウムイオンバッテリーの新境地(ミュンスター大学)
e-Mobility実現に向けたリチウムイオン電池材料の開発と課題(三菱化学)
R&Dとリチウムイオンバッテリーの新境地
ミュンスター大学 ミュンスター電気化学エネルギー技術(Munster Electrochemical Energy Technology MEET)
Prof. Dr. マーティン・ヴィンター氏
MEETは、競争力のある電気化学エネルギー技術(リチウムイオン電池、電気二重層キャパシター、エネルギー材
料)を研究開発するミュンスター大学付属の研究所である。2010年9月にMEET Arcades Battery Labが新しく開
設される。
e-Mobility開発計画が開発対象とする電気自動車
MEETは、e-Mobility開発計画が開発対象とするPHEVおよびEV用の次世代自動車用電池の開発を担当する。
(出所)セミナー配布・公開資料「Exciting Opportunities for R&D on Lithium Batteries」 P.8
MEETでは、EVが1回の充電で1,000 kmを走れる電池の開発に取り組む。1,000 kmの走行には180 kWhのエネ
ルギー容量が必要となり、そのために必要な電池重量は以下の通り。
電池の種類
エネルギー密度
必要な重量
鉛蓄電池
30 Wh/kg
6,000 kg
ニッケル水素電池
80 Wh/kg
2,250 kg
リチウムイオン電池
150 Wh/kg
1,200 kg
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次世代リチウムイオン電池
夢の「スーパー電池」
200 Wh/kg以上
900 kg未満
1,500 Wh/kg
120 kg
電池性能向上の方向
必要な電池重量を軽くするためには、下図に示すように、必然的に電池性能を高める(①下図の縦軸方向の正極
(Cathodes)と負極(Anodes)の電位差を上げる、②下図の横軸方向のエネルギー密度を上げる)必要がある。性
能向上を図るためには、材料科学、電気化学、薄膜技術、ナノ技術の4面からの総合的なアプローチが必要と考え
る。
(出所)セミナー配布・公開資料「Exciting Opportunities for R&D on Lithium Batteries」 P.10
次世代黒鉛負極材としてのシリコン黒鉛複合材
MEETは、負極材にシリコン黒鉛複合材を使った次世代リチウムイオン電池を開発する。理論的には、リチウムイオ
ン電池の負極(anode)をシリコンにすれば、約3,500 Ah/kgの充電理論容量の最大値が得られることが分かってい
る。しかしながら、シリコン負極には以下の3つの技術課題があり、このままでは実用化できない。
・膨張(Dimensional Changes):充電時に正極からのリチウムイオンを吸収し負極が膨張(約3倍)する。
・崩壊(Mechanical Disintegration):放充電を繰り返すと、負極材が崩壊しはじめる。
・低放充電回数(Limited Cycling Stability):放充電回数(サイクル)がまだ少ない。
MEETでは、放充電回数(サイクル)を高めるために、ナノ技術を使ってシリコン黒鉛複合材を開発し、実用化の目
処をつけつつある。また、崩壊に対しては、シリコン黒鉛複合材に表面処理を行うことで克服できると考え、開発を
進めている。
MEETはさらに、正極に空気、負極に金属リチウムを使うリチウム空気電池の研究開発も行っている。
シリコン負極の技術課題(3項目)
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シリコン黒鉛複合材の開発
(出所)セミナー配布・公開資料「Exciting Opportunities for R&D on Lithium Batteries」 P.13
シリコン黒鉛複合材の表面処理による崩壊の防止
(出所)セミナー配布・公開資料「Exciting Opportunities for R&D on Lithium Batteries」 P.14
リチウム空気電池(空気-金属リチウム)の可能性
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(出所)セミナー配布・公開資料「Exciting Opportunities for R&D on Lithium Batteries」 P.21
(注)左下の長方形の枠中は商業化済の正極材。負極材は黒鉛。
e-Mobility実現に向けたリチウムイオン電池材料の開発と課題
三菱化学株式会社 フェロー 宇恵 誠氏
リチウムイオン電池は、1991年にソニーが民生用に発売を開始し、1994年からは大量生産が始まって、電動工具
向けを中心に市場規模が1兆円/年に拡大した。電解液に有機溶媒を使う関係で、1996年に火災・品質不良が
原因で大量リコール問題を引き起こし、業界をあげて改善に取り組み、現在の民生用では炭素(負極)/コバルト
(正極)からシリコン(負極)/ニッケル(正極)に移行しつつある。
三菱化学は、社長直轄プロジェクトとして1999年から電池の4部材(正極材、負極材、電解液、セパレーター)の全
てを開発し、電池メーカーへ供給してきた。この実績が評価されて、自動車用リチウムイオン電池の 4部材では、ト
ヨタ(プリウス・プラグインハイブリッド)、いすゞ(エルフ)、三菱ふそう(キャンターエコ・ハイブリッド)に採用されてい
る。
宇恵氏は電解液開発に大きな貢献を果たした。その成果は、2004年10月に米国電気化学会の電池部門技術賞を
受賞した機能分担型電解液である。
国際二次電池展で公開した三菱化学の新技術
(国際二次電池展の取材レポートの関連記事)
部材名
必要な化学技術
正極材
セラミック化学
三菱化学の技術の強み
・レスコバルト正極材
・新製造プロセス
・複合黒鉛負極材
負極材
炭素化学
・天然黒鉛利用技術の改良(天然黒鉛は中国からの輸
入に依存⇒依存度を低下)
電解質・液
有機化学
セパレーター
高分子化学
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・機能分担型電解液(リチウム塩、有機溶媒、添加剤)
・添加剤技術はSaft社が特許を保有⇒総合力で挽回。
・新乾式法による新製造プロセス
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