付録 国際企業、海外企業からの募金活動のヒント・・・・・・・・・・ 82 付録 国際企業、海外企業からの募金活動のヒント 国際会議の成功は、その財政基盤がしっかりしているかどうかにかかっていると言っても 過言ではない。 最も重要なことは、主催者が募金の目標額を達成する強い決意と責任感を持つことであ る。「他力本願」な心構えや労を惜しむ気持ちを捨て、自分の努力で目標を達成するのだと いう強い決意が必要である。イギリスの著名な PCO である Sarah Storie-Pugh 氏は、国際会 議への寄付について、“Contributions by industry is now an act of purchase.” (寄付とは、 産業界にとって、いまや何かを購入する行為である)と言っている。 従来、募金活動は主に国内企業、団体を対象に行われてきた。しかし、国際会議が海外 で行われている場合には、国際企業、開催国以外の企業の寄付を受けているケースが多い ことが分かる。日本で開催される国際会議にも、もっと多くの国際企業からの寄付があり得る のではないだろうか。ここでは、国際企業、海外企業からの募金活動のヒントを述べる。 なお国際企業から獲得する資金や物品の支援は、通常「スポンサーシップ」(企業協賛) に該当する内容で、一般的な「寄付」や「募金」とは異なる。以下でも、主にスポンサーシップ 獲得についてまとめている。 国内の個人や企業から、国際会議に対する「寄付金」を得る場合には、特定公益増進法 人に指定されている JNTO の「寄附金募集・交付金交付制度」(課税優遇措置あり)が利用 可能か、相談されたい。 (1) 調査・分析 次の項目については、事前に十分調べておく。 ・ 過去に当該国際会議のスポンサーとなった企業名。 ・ 当該会議のメインテーマがどのような企業にとって魅力があるのか。 ・ 当該会議の参加者にスポンサー企業の製品を購入する権限や影響力はあるのか。 ・ 当該会議の組織委員会のメンバーはスポンサー企業に影響力のある人たちか。 ・ 当該会議と同時期に、競合する会議、イベントが行われるか。 ・ スポンサー企業にとって、魅力的なプログラムか。 ・ 依頼するタイミングが、スポンサー企業側の予算編成時期に適合しているか。 (2) 活動スケジュール ほとんどの国際企業は最低6~12 ヶ月前には次年度(暦年)の予算編成を終える。したが ─ 82 ─ 付録 って、国際会議の募金活動は、最低でも 1 年半前から始めたい。2 年~2 年半前から開始で きれば理想的である。 �期 内容 24~30 ヶ月前 調査・分析、スポンサーシップ総合計画書作成(目標額設定)、関連学会 誌の購読契約、ファーストアナウンスメントの作成 18~24 ヶ月前 国際企業向け募金趣意書(英文)の作成(会議ホームページからアクセス 可能にする)、初期コンタクト、主要企業への電話コンタクトから開始 12~18 ヶ月前 主要スポンサー企業の決定と契約、前回会議でのプロモーション(アニュ アルイベントの場合) 9~12 ヶ月前 他のスポンサー企業と契約、実行予算の作成 9 ヶ月前 会議登録料金の最終決定、実行予算の作成 6~9 ヶ月前 スポンサー用マニュアルの作成 6 ヶ月前 スポンサー用マニュアルの配布 0~6 ヶ月前 スポンサー企業との最終コミュニケーション (3) スポンサー企業のリサーチ 有力なスポンサー企業を見つけ出す方法として下記のようなリサーチを行う。 ・ 展示会ガイドブックのチェック ・ 国内外の学会(協会)誌のチェック ・ 国際本部からの情報 ・ 組織委員からの情報 ・ インターネット ・ 新聞、雑誌 スポンサー企業の中で国際会議への支援を決めるキーパーソンを見つけ出すことが大切 である。そのためには積極的に国際本部の役員や前回会議の主催者からの情報、国内組 織委員の国際ネットワークなどを活用する。 (4) 国際企業向け募金趣意書(英文)の特徴 国 際 企 業 向 け 募 金 趣 意 書 は 、 「 Sponsorship Prospectus 」 あ る い は 「 Invitation Prospectus」 と呼ばれるもので、日本国内で使われている募金趣意書とは内容が異なる。 主な点を列挙してみよう。 ─ 83 ─ 付録 <国際企業向け Sponsorship Prospectus の内容> ① 会議名、開催地、開催日 ② 会長(組織委員長)の挨拶 (Invitation from the Congress President) ③ プログラム委員長の挨拶 (Invitation from the Scientific Committee Chairperson) こ れには、 セ ッ ショ ン の形成(Session Types)、参加者カテゴ リ ー(Categories of Participants)、予定論文数(Expected No. of Papers)、論文採用基準(Criteria for Selecting Papers) 、 基 調 講 演 者 ( Keynote Speakers ) 、 論 文 締 切 日 ( Abstract Deadlines)などをできるだけ盛り込む。 ④ 組織委員名 (Committee Members) ⑤ 主催国際団体、主催国内団体の概略 (The Society of XXX) ⑥ 過去の会議の基本情報 (Previous Congresses XXX-XXX) 過去の会議の基本情報には、開催年(Year)、開催地(Venue)、参加者数(No. of Participants)、採用論文数(No. of Accepted Papers)、展示会スペース(Exhibition Net Square Meters) などを記載する。さらに、できれば各会議について参加者数上 位国 10 位くらいまでを列挙する。 ⑦ 会議主催者(国内)の情報 (Congress Administration) と財務に関する基本方針 (The Policy of Handling the Financial Outcome) すべての共同主催者(財団など)の情報や、事務局及び PCO の連絡先、登録料の情 報も入れる。 財務に関する基本方針には、赤字や黒字が出た場合の対策を具体的に記述する。 日本国内で使用されている募金趣意書のように全体収支予算を記載する必要はない。 ⑧ 暫定プログラム (Preliminary Congress Program) できるだけ詳しくプログラム内容を記載する。展示会についても開始日、時間を入れる (仮であっても良い)。 ─ 84 ─ 付録 ⑨ メインテーマ (Main Topics) ⑩ 社交行事 (Social Events) ⑪ 開催地(都市)の情報 (City) 開催地の情報には、人口、地図、空港からの距離・時間・交通手段、市内の交通手段、 市内のホテル部屋数、開催都市のホームページ、気候、通貨、ビザ、セキュリティ、そ の他特記すべき規制などを記載する。 ⑫ 開催場所の情報 (Venue) 会議が開催されるホテルや会議場の情報を入れる。地図、見取図、ホームページなど を記載する。 ⑬ スポンサー募集 (Sponsorship Items) 以下に示すような具体的なスポンサー項目に希望金額を入れて募集案内を行う。希 望金額は、スポンサー項目のコストにとらわれず、国際会議としての付加価値を考慮 して「売れる」価格を設定する。項目の例を下記に示す。 <スポンサー項目> ・ サテライトシンポジウム (Satellites) ・ ブレックファーストミーティング(Breakfast Meetings) ・ 講師への助成金 (Educational Grants) ・ 社交行事 (Social Events) ・ セカンドアナウンスメント(Second Announcement) ・ ファイナルプログラム(Final Program) ・ ウェブサイト(バナー広告等)(Website) ・ コングレスバッグ(Congress Bag) ・ 名札用ストラップ(Lanyards) ・ コーヒーブレイク(Coffee Breaks) ・ ランチ、ディナー(Lunch, Dinner) ・ 案内看板 (Signposting) ・ ポスターボード (Posterboards) ・ 発表者スライド受付ルーム運営 (Speakers’ Room) ─ 85 ─ 付録 ・ 交通費(Transportation Fee) ・ ビジネスセンター運営 (Business Center) ・ サイバーカフェ (Cibercafe) ・ ノート、ペン(文房具)(Notepads, Pens, etc.) ・ メッセージセンター (Message Center) ・ AV 機器 (AV Equipment) ・ ワークショップ (Workshops) ・ VIP 車両 (VIP Cars) ・ ホスピタリティスイート (Hospitality Suites) ⑭ スポンサーカテゴリー (Categories of Sponsors) スポンサーシップの額に応じてスポンサーを A、B、C、などのクラスに分ける。そして、 レベルに応じて主催者側から受けられる便宜供与に変化をつける。 例えば、大口スポンサーには、次のような便宜が図られる場合もある。 ・ 一定の金額につき1名の、会議への無料登録 ・ 一定の金額以上に、バッグにスポンサー名の印字 ・ スポンサーボードへのロゴの掲示(サイズは金額で変化) ・ 主な印刷物でスポンサー名の露出 ・ ファイナルプログラムに無料広告掲載 ・ 展示スペースの無料提供 ・ 会議開催前に参加者リストの提供 ・ 会議ホームページにロゴ掲載 ・ 1日あたり2時間以内の小会議室使用権 ⑮ 展示会情報 (Technical Exhibition) 展示会に関する詳細情報を掲載する。内容としては、日程、1平米当たりのスペース レンタル料、フロアープラン、申込用紙、展示規約、過去の会議における出展者リスト などがある。 ⑯ 市内の宿泊施設 (Hotels in the City) 市内のホテルの部屋数、オフィシャルトラベルエージェント(指定旅行代理店)の情報 などを載せる。 ─ 86 ─ 付録 ⑰ 重要日程表(Key Dates) セカンドアナウンスメントの発行予定日、抄録の締切日、展示申し込み締切日、一時 登録締切日、サテライトシンポジウムの日程等を記述する。 (5) 募集状況の確認と活動強化 スポンサー募集における工程表を作成し、節目ごとに目標額(割合)を設定して、達成度 を確認しながら活動を続ける。目標に達していない場合は、アプローチする企業の幅を広 げる、便宜供与内容を見直すなどの修正を加えながら、活動を強化していかねばならな い。 ─ 87 ─ 付録 【参考資料 20】 募金趣意書パンフレット(Sponsorship Prospectus)の例。ビジュアルを多用したり、デザイ ン性を重視したりするなど、目をひく工夫がこらされている。 ─ 88 ─ ��会�誘致����� ������成����ン��ション������ 平成 27 年(2015 年)12 月 改訂版 企画・発行 日本政府観光局 コンベンション誘致部(MICE推進担当) 〒100-0006 東京都千代田区有楽町 2-10-1 東京交通会館 10 階 TEL: (03)3216-2905 FAX:(03)3216-1978 URL: http://mice.jnto.go.jp ©日本政府観光局(JNTO) 禁無断転載・複製
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