室蘭地域マリンビジョン概要図(PDF:1773KB)

室蘭地域マリンビジョン計画書
目
Ⅰ.地域の概況
次
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Ⅱ.地域マリンビジョンの「対象地域」の見直し
Ⅲ.地域の課題と目指す姿
Ⅳ.構想実現に向けての取組
Ⅴ.フォローアップ計画
1
・・・・・
4
・・・・・・・・・・・・・・・
5
・・・・・・・・・・・・・・
24
・・・・・・・・・・・・・・・・
33
Ⅵ.マリンビジョン計画策定に関する活動記録
・・・・・・
資料
・室蘭地域マリンビジョン協議会会則
・室蘭地域マリンビジョン協議会名簿
平成27年3月
改訂
室蘭地域マリンビジョン協議会
-0-
35
室蘭地域マリンビジョン計画書
Ⅰ.地域の概況
地域名
漁港名
追直漁港(衛生管理流通拠点漁港、都市漁村交流拠
室蘭地域
点漁港:3 種)、イタンキ漁港(1 種)、室蘭港(国際
拠点港湾)
地域の概況
室蘭地域(室蘭市)は、道央圏の南西部、内浦湾の東部に位置し、北海道の中では比較的温暖
かつ少雪な地域である。しかし、三方を海に囲まれた沿岸部は、春から夏にかけて海霧が発生す
ることが多く、秋には好天が続くが、冬にかけて強い季節風が吹き、地震や津波の影響も受けや
すい地域である。
また、交通面では、平成 10 年供用の白鳥大橋により北海道縦貫道と直結し、自家用車で札幌
と約 2 時間、鉄道では約 1 時間 40 分で結ばれるなど、高い利便性を有している。
室蘭市の人口は 94,535 人(H22 国勢調査)であり、昭和 45 年の 162,059 人(国勢調査)をピーク
に減少傾向にある。市の産業構造は、就業面ではサービス業を中心とする第 3 次産業及び鉄鋼業
を中心とする第 2 次産業が主体である。第 1 次産業のウェイトは低い(漁業 0.4%)ものの、沿岸漁
業及び沖合底引き漁業により水産物供給基地としての役割を果たしている。また、室蘭市の観光
資源は、白鳥大橋や「北海道の自然百選」に第 1 位で選ばれた地球岬をはじめとする断崖絶壁の
室蘭八景、イルカ・クジラウオッチング、工場夜景などであり、年間約 106 万人(平成 25 年)の
観光客が訪れている。
室蘭市の漁業の歴史は古く、松前藩の室蘭場所として、岩礁地帯のコンブ、砂浜地帯のホタテ
ガイ、来遊するニシンやサケなどを対象にして沿岸漁業が営まれ、かつては捕鯨も行われていた。
その後、沖合底びき網漁業が発展し、ホタテガイ養殖、刺し網、ウニ・コンブ採取漁業等の沿岸
漁業が営まれるようになり、現在はスケトウダラを中心とする沖合底びき網漁業とホタテガイ等
の養殖漁業による生産が主力を占め、漁獲量約 21,000 トン、漁獲高約 28 億円(平成 24 年)の
生産をあげる水産物供給基地となっている。
室蘭市には、大平洋に面する第 3 種追直漁港及び市街東側に位置する第 1 種イタンキ漁港のほ
か、室蘭港西端の港口部の南北には絵鞆漁港区、崎守漁港区が位置しており、漁港の地勢や漁業
種類に対応した機能を分担及び連携することで、地域の多様な水産業を支えている。
うち、追直漁港は、室蘭市の中心市街地の南端に位置し、地区人口は 1,085 人(H24 港勢調査)、
太平洋に臨む漁港である。昭和 26 年に漁港の指定を受け、昭和 30 年代から沖合底びき網漁業を
営む漁船と漁獲量の増大に伴い、昭和 37 年に第 3 種漁港に指定され、道内でも有数の漁港とし
て着々と整備が進められてきた。現在は、北海道内でも数少ない沖合底びき網漁業の基地である
ほか、全国的ないか釣り漁業の陸揚・休憩基地、沿岸漁業の拠点としての役割を担っている。ま
た、サケのつかみどりなどのイベントが行われる「さかなの港町同窓会」や、釣り、親水護岸での
水遊び、室蘭八景の景観を楽しむ場として、都市住民との交流基盤としての役割も果たしている。
さらに、平成 25 年 4 月には、つくり育てる漁業、都市住民の海とのふれあいの場の創出等、水
産業の諸情勢の変化や課題への対応を目的とした人工島「通称Mランド」が供用を開始した。
一方、漁場との関連では、漁港付近の海面にホタテガイ養殖漁場が広がっているほか、漁港水
面を利用してクロソイ養殖、マツカワやホッキガイの放流、ナマコやエゾバフンウニの中間育
成・放流、魚礁や産卵礁の設置が行われている。
イタンキ漁港は、東室蘭駅の南1キロ余りに位置し、地区人口は 500 人(H24 港勢調査)、刺網
-1-
漁業、タコ篭漁業、採貝藻漁業の地元船利用を主とした第1種漁港である。
室蘭港の漁港区のうち絵鞆漁業区は、白鳥大橋の南側基部に近い絵鞆半島の西端部の市街地に
位置し、地区人口は 2,555 人(H24.12 月末、住民基本台帳)、ホタテ養殖漁業(稚貝・成貝)、採
貝藻漁業、刺網漁業の地元船利用を主とした漁港区である。漁港区東側の白鳥大橋までの間には、
海洋レジャー基地のエンルムマリーナ、室蘭市立水族館、日帰り温泉施設、観光拠点の道の駅が
連続している。室蘭港崎守漁港区は、室蘭港の北西端に位置し、地区人口は 355 人(H24.12 月末、
住民基本台帳)、ホタテ養殖漁業(稚貝)、カニ篭漁業、刺網漁業の地元船利用を主とした漁港区
である。
-2-
位置図
●
崎守漁港区
(室蘭港)
●
絵鞆漁港区
(室蘭港)
●
イタンキ漁港
(第1種)
●
追直漁港
(第3種)
写真等
(2013 年 11 月、室蘭市撮影)
追直漁港
(第3種)
絵鞆漁港区
(室蘭港)
イタンキ漁港
(第1種)
崎守漁港区
(室蘭港)
-3-
Ⅱ.地域マリンビジョンの「対象地域」の見直し
○ 対象地域の変更
~「室蘭追直地域マリンビジョン」から「室蘭地域マリンビジョン」へ~
・現行のマリンビジョンは、第3種の追直漁港に特化した内容である。
・室蘭市には追直漁港の他に、太平洋に面する第1種のイタンキ漁港、噴火湾に面する国際
拠点港湾の室蘭港の絵鞆漁港区及び崎守漁港区が存在する。
・主力の魚種は、追直漁港では沖合底びき網漁業によるスケトウダラ漁やサケ定置網漁業、外
来船によるイカ釣り漁、ホタテガイ等の養殖漁業など、イタンキ漁港では刺網漁業によるス
ケトウダラ漁、室蘭港ではホタテガイ養殖及び沿岸漁業となっており、漁港の機能や面する
海域等に応じて主力の魚種も異なっている。さらに、各漁港でウニ、ナマコ、コンブ等の水
揚げが行われている。
・漁業者は、複数の漁港を相互に補完・連携しあって水揚げ、出荷を行うほか、各地区が共同
で漁場の維持管理作業を行うなど、4つの地区とそれに関わる人々が一体となって地域の水
産業を支えている。
・そこで、地域の水産振興ならびに、地域の将来像との整合の点からも、対象地域を室蘭地域
全体とすることが必要である。
<都市の将来像との整合性>
◎ 室蘭市の将来像
「海と科学技術のサークル都市室蘭」
(第 5 次総合計画、H20 策定)
◎ 都市計画マスタープラン(目標年 H34)
・室蘭市の将来都市構造は、白鳥大橋でつながれたサークル状の都市構造を十分に生かし、多
様な都市機能を一極に集中させるのではなく、各地区が特性や役割を踏まえた機能を担い、
互いに連携していくことを目指す。
<室蘭地域のイメージ>
伊達市
登別市
室蘭市
漁業者 水産物
崎 守
イタンキ
絵 鞆
追 直
噴火湾
漁業者 漁船 水産物
大平洋
◎1市、1漁協の室蘭地域で、役割分担、連携しあう「みなと」「ひと」「まち」
4つの地区(イタンキ、追直、絵鞆、崎守)に囲まれた室蘭地域
3つの水産を支える動き(資源=水産物、漁船、漁業者)
2つの強み(都市のスケールメリットと機能補完)
1つの市と漁協のある都市・室蘭
-4-
Ⅲ.地域の課題と目指す姿
1.地域の課題
室蘭地域の水産に関する課題は、次のとおりである。
1)漁業、養殖業の課題
○
室蘭地域の漁業は、沖合底びき網漁業と刺し網漁業等の沿岸漁業、ホタテガイやクロソイ
等の養殖漁業を中心として営まれており、平成 25 年 4 月には追直漁港の人工島(通称Mラ
ンド)がホタテガイやケガニ等の陸揚げの拠点として供用を開始した。
○ 室蘭地域の漁業生産量は、室蘭追直地域マリンビジョンに取り組んだ平成 18 年以降、ほぼ
横ばいで推移しているが、生産額はやや減少傾向にある。その主要因として、漁獲量の大
半を占める沖合底びき網漁業のスケトウダラ漁の魚価低迷傾向が挙げられる。具体的には、
室蘭地域のスケトウダラ漁は、漁獲制限(TAC)が定められている中で比較的恵まれた資
源量に支えられ、安定した漁獲量を維持しつつも、魚価の低迷が地域全体の生産額に影響
を及ぼしている。
○
地域の漁業が漁獲対象とする主な魚種の資源は、スケトウダラ、マダラ、カレイ類が高水
準、ケガニ、キチジは低水準にある。このため、資源管理型漁業を積極的に推進するとと
もに、エゾバフンウニ、マツカワ、ナマコ、ホッキガイの中間育成・放流への継続的な取
組やサケのふ化放流、クロソイの養殖の拡充など、つくり育てる漁業への積極的な取組が
必要とされている。
○ 養殖漁業の主力であるホタテガイは、平成 18 年以降の成貝生産量が 400 トン内外で推移し
ており、生産額は単価の向上に伴い増加傾向にある。また、平成 24 年度よりブランドホタ
テ「蘭扇」及び韓国向け 2 年貝の出荷を開始した。しかし、養殖可能な静穏海域と経営体
数が限定されるため、増産は容易ではない状況にある。また、稚貝養殖は道東地域へ出荷
し、出荷先のホタテガイ漁業を支えているため、今後とも安定的な生産・出荷が必要であ
る。
○ 漁協組合員数は 95 人(平成 25 年)で、平成 18 年以降 8 人減少し、緩やかな減少傾向にあ
る。また、39 歳以下の漁業者の割合は 24%(平成 25 年)、40~59 歳の割合は 33%、60 歳
以上の割合は 43%(H18 は 40%)となっており、全道平均に比べて若い漁業者の割合が高
く、高齢漁業者の割合が低いものの、高齢化が進行している状況にある。そのため、将来
にわたって安定的に漁業・養殖業を営んでいくためには、漁業後継者の育成・確保が不可
欠な状況にある。
2)水産物流通・加工の課題
○
追直漁港に陸揚されるスケトウダラは、ほとんどが釧路方面へ出荷・加工されている。近
年の日本海におけるスケトウダラの資源量減少が顕著な中で、比較的安定した道南太平洋
海域の果たす役割は重要である。
○
また、漁港整備と併せて、生産から流通、出荷まで一貫した衛生管理、鮮度管理を行うと
ともに、鮮度保持に有効な新たな輸送や保管の技術を活用するなど、安心・安全な水産物
を供給する体制や実施方策が必要である。
○ さらに、魚価の維持向上を図るため、畜養による出荷対策(需給調整)、室蘭産のブランド化
(蘭扇等)、輸出促進(ホタテ 2 年貝ほか)、活〆の普及啓発等、各種の流通対策への取組も求
められている。
○ 漁協では、平成 18 年に事務所併設の売店を開設し、サケの山漬けなどの販売が好評な状況
-5-
にあるものの、水産加工への取組による特産品の開発並びに、直売所の設置による水産物
の販売への取組が課題となっている。
○
一方、地元の水産物を食べられる場所が少ないことや、地域の水産に関する情報不足が地
域マリンビジョン検討会においても主要課題として挙げられており、販売促進の観点から
も地域の顔を見える水産物の流通及び、地域の食との連携強化、水産関連情報の発信が求
められている。
3)まちづくりの課題
○
地域と水産業の交流機会として、追直漁港で開催されている「さかなの港町同窓会」をは
じめ、室蘭地域では「むろらん港まつり」や「スワンフェスタ」に加え、地区や商店街主
催の催事など、港や海に関連する各種イベントを開催し、地域の水産物の広報・PR、販
売等を行っている。これらイベントの充実等に地域の水産(団体、人)が関わりを持ち、
地域内外の人々が楽しむことができるようなハード・ソフト面の工夫が必要である。
○
その一方で、多極型の都市構造の中で、開催するイベント、地区、主催団体等が複数存在
することにより、情報共有や連携協力体制の構築が課題となっている。
○
また、小中学校等における海や漁業に関する体験や学習、給食や料理教室等を通じた魚食
推進の取組についても、地域の水産業への理解の深まりや地産地消、後継者の育成・確保
を進める上で継続的な実施が重要である。
○
登別や洞爺湖など道内有数の観光地の狭間にある室蘭は、観光地としての知名度は相対的
に低いものの、イタンキ漁港から絵鞆漁港区にかけての沿岸一帯の自然景観をはじめ、工
場夜景や3大グルメなどが観光資源として知られているほか、白鳥大橋など特徴的な構造
物や歴史的な建造物の見学が新たな観光資源として着目されつつある。それぞれの観光資
源のジャンルは異なるものの、室蘭固有の各種の観光資源と上記の各種イベントや水産業
との連携による新たな観光資源のネットワークづくりが課題となっている。
○ 室蘭地域の各漁港は市街地に接しているため、津波災害を想定した場合、漁港からの避難に
とどまらない背後地区を含めた防災計画を策定することがまちづくりの観点からも有効か
つ必要である。さらに追直漁港については、外来漁船や大型漁船に対応し、漁協事務所や荷
捌き所が存在するなど、拠点的機能を有するため、被災後の事業継続計画についても策定す
ることが必要である。
4) 漁港整備・利用の課題
○
追直漁港では、クロソイ養殖やエゾバフンウニの中間育成等が行われているほか、Mラン
ドの整備に伴い、ホタテガイの蓄養並びに計画的な出荷基地として機能を開始しており、
つくり育てる漁業の拠点としてのさらなる整備拡充が求められている。
○
同時に、安心・安全な水産物の供給、活力あるホタテガイ当年貝・越冬貝供給のための整
備、就労環境のための改善を図る整備も求められている。
○
また、現港区における沖合底びき網漁船等の漁船の安全な出入港・係留の確保、外来いか
釣り漁船の基地としての役割も求められている。
○
現港区では、屋根付き岸壁の整備を計画しているが、日の出町の室蘭地方卸売市場の移転
更新を検討中(水産機能の追直への配置の可能性)であることを踏まえ、市場の計画等の
決定状況に応じて、屋根付き岸壁の詳細な構造や動線、附帯施設等の配置を含む背後の用
地利用を検討する必要がある。
○
その他の漁港及び漁港区(イタンキ、絵鞆、崎守)では、就労環境や作業効率、衛生管理
等、漁業生産に不可欠な施設の整備水準の向上を図るための施設整備が必要である。特に
-6-
イタンキ漁港では、就労環境や衛生管理に対応した岸壁の整備、港内静穏度や航路埋没、
飛砂への対策が必要である。絵鞆漁港区では港外からの越波、船だまりの静穏度の他、水
中荷さばき場や作業場など各種施設の老朽化への対策が必要な状況にある。
2.目指す姿
1)理念
■室蘭地域マリンビジョンの理念
~都市の漁港むろらん~
コンパクトで活発なものづくりのまち室蘭の強みを活かして、規模や役割の異なる4つの漁
港が補完・連携しあい、水産業と人々の交流を通じた漁港と地域の一体的な活性化ならびに、
地域産業の振興を図る。
うち、追直漁港については、増養殖支援や漁業の生産・流通加工、水産関連の研究、人々の
交流、販売、防災対応等、各種基盤の集積を活用した先進的な整備及び取り組みを進め、室蘭
地域の水産業振興の拠点として、地域を牽引する。
イタンキ漁港ならびに、室蘭港(絵鞆漁港区、崎守漁港区)については、室蘭地域の東西の
異なる操業海域における沿岸漁業や養殖漁業の前線基地として、衛生管理や防災対応を含む各
地区の取り組み及び、そのために必要な漁港の施設整備を進め、室蘭地域全体の水産基盤の整
備水準の向上ならびに水産業の振興を支えていく。
それらの実現に向け、室蘭の都市の財産(人+技術)を活かして、多様な機関や団体、市民
の連携・協働により、室蘭地域の水産業とそれを支える人々をつくり育てていく。
■計画の目標期間
計画を実現化する期間を概ね 10 年とし、ビジョンの目標年を平成 36 年(2024 年)とする。
-7-
■将来の目標指標
現行の内容
今後、概ね 10 年間を計画期間とする目標指標を次のとおりとする。
漁業では、概ね過去 5 ヵ年平均程度の生産を見込むが、追直漁港のいか釣外来船の受入体制強
化による陸揚量の増加を加えた生産量を目標とする。また、漁業経営体数は、減少傾向が見込ま
れる中で、後継者や新規就業者の育成を勘案して 55 経営体を目標とする。
このほか、衛生管理や新たな技術を活用した販路や輸出の拡大、水産関連の各種活動の継続並
びに情報の発信による地域及び広範な取引先との関係強化等を通じて、地域の活性化を図ること
を目標とする。
将来の目標指標の設定
現状
将来予測(平成 36 年)
最近 5 ヵ年平均
20,787 トン
最近 5 ヵ年平均
3,054,646 千円
基準年:平成 24 年
60 経営体
21,000 トン
項目
漁業生産量
漁業生産高
漁業経営体数
増減率
3,000,000 千円
55 経営体
0.92
<上記設定の背景及び根拠>
1)漁業生産量
室蘭地域の漁獲量の 7 割以上を占める沖合底びき網漁業のスケトウダラについては、資源
保護のための漁獲可能量(TAC)が定められているため、不漁による減少以上に増加は見込
めない情勢にある。そのため、これまでのマリンビジョンにおいても計画当初の現状(H10 年
代)の 20,339 トンに対し、将来予測(H27)を 20,546 トンの目標設定としていた。
そこで、現行と同様に過去 5 ヶ年平均の生産量にイカ釣り外来船の受入体制強化を加えた
値を目標とした。
2)漁業生産高
主力のスケトウダラの単価は緩やかな低下傾向にあったが、近年比較的安定傾向にあり、
過去 5 ヵ年の平均生産額は 30 億円を上回っているが、直近 3 年(H22~24)では 30 億円に
達していない状況にあるため、過去5カ年平均の生産高を目標とした。なお、平成 26 年度よ
り取組を開始した“浜の活力再生プラン”
(水産庁の施策)では、室蘭地域において収入向上
とコスト削減により今後 5 年間で漁業所得の 10%以上向上を目標としており、生産高の目標
指標については、諸情勢に影響し上下することなどを勘案し、漁業所得の目標達成などによ
り評価する場合がある。
3)漁業経営体数
経営体数の増減として、後継者及び新規就業者育成の可能性を勘案した結果、後継者なし
での減少が 10 経営体、新規就業者の育成が 5 経営体と見込んだ値を将来予測とした。
-8-
2)室蘭地域マリンビジョンの「計画体系」の見直し
・これまでの取組状況、検討会での意見交換等を受けて、現行の計画体系を以下のように見直す。
<
現行の体系
3つの「構想」
>
<
取り組み項目
3つの「構想」
(2)調査研究の推進
漁
業
振
興
(3)環境との調和
(4)漁協経営の効率化
◆1
見
直
し
・
追
加
(1)衛生管理の徹底
加
工
振
興
水
産
物
流
通
・
(2)活魚出荷への取組
(3)水産加工への取組
計
画
体
系
の
(4)販売戦略の構築
(5)流通・加工を支える漁港の整備
(1)多彩なイベントの開催
ま
ち
づ
く
り
推
進
室
蘭
地
域
マ
リ
ン
ビ
ジ
ョ
ン
取り組み項目
(2)調査研究の推進
(3)環境との調和
(4)漁業生産を支える人と場の確保
◆1
(1)衛生管理の徹底
加
工
振
興
水
産
物
流
通
・
(2)活魚出荷への取組
(3)水産加工への取組
(4)販売戦略の構築
(5)流通・加工を支える漁港の整備
◆
(1)海や漁業との多彩なふれあい交流 ◆2
ま
ち
づ
く
り
推
進
2
(2)地域の顔が見える食の提供
(3)海や漁業とのふれあい
>
(5)漁業生産を支える漁港の整備
(5)漁業生産を支える漁港の整備
室
蘭
追
直
地
域
マ
リ
ン
ビ
ジ
ョ
ン
訂
(1)つくり育てる漁業の展開
(1)つくり育てる漁業の展開
漁
業
振
興
改
◆
2
(4)観光のネットワーク化
(5)まちづくりを支える漁港の整備
◆2
(2)地域の顔が見える食の提供
◆2
(3)観光のネットワーク化
(4)安全・安心な漁業地域づくり
◆3
(5)まちづくりを支える漁港の整備
-9-
<計画体系の見直し・追加事項の説明>
◆1:見直し: 漁業振興構想の「漁協経営の効率化」
・現行の構想内容は、室蘭漁協と室蘭機船漁協の合併時期(H18.4 月合併)及び、新た
な漁協事務所及び併設売店を新設した時期の内容。
⇒漁協経営及び事務処理の効率化が主な取り組み項目:現時点でこの項目は達成。
・漁業経営の合理化では、沖底船を6隻から5隻に減船し、5隻中の4隻は平成 20 年
以降の新造船で、省エネ・省コスト化にも対応。
⇒主力の沖合底びき網漁業の効率化も進展。
・一方、地域の漁業経営においては、漁業者の高齢化の進展や、後継者・就業者の不足
への対応が急務な状況。
≫そこで、取組項目を「漁業生産を支える人と場の確保」へ変更する。
・取組項目の小項目の案
⇒
①人材の確保・育成
②漁業生産の場づくり
◆2:見直し: まちづくり推進構想の「多彩なイベント開催」と「海や漁業とのふれあい」の統合
・現行の2つの項目は、イベントの開催及び各種主体による体験や学習、交流等の活動
として、
「海や漁業との多彩なふれあい交流」の1項目に統合する。
◆3:新規追加: まちづくり推進構想に「防災」に関する取組項目の追加
・北海道 MV21 改訂のポイントである「防災」について、都市型漁港の室蘭地域では、
まちづくりの一環として取り組むべき項目。
≫そこで、新規の取組項目として「安全・安心な漁業地域づくり」を追加する。
・取組項目の小項目の案
⇒
①漁港地区の防災計画づくり
→地区毎の津波避難計画、追直では業務継続計画(BCP)
- 10 -
3)方向性の検討について~検討会におけるワークショップの結果~
後述する将来像の検討に資するため、検討会では現行の計画体系に基づき、3つの構想別にワ
ークショップを開催して、意見交換及び方向性を導き出した。その上で、3つの構想別の方向性
と改訂後の取組項目との関連性を検証した。
 「漁業振興構想」及び「水産物流通・加工振興構想」については、各1テーブルの意見交換
を行い、得られた問題点・課題、意向や必要な方策等をもとに方向性を抽出した。
 「まちづくり推進構想」については、3つのテーマを設定したテーブル毎にワークショップ
形式で一定の方向性のとりまとめを行った。
室蘭地域マリンビジョンの計画体系(現行)
3つの「構想」
取組項目
(1)つくり育てる漁業の展開
漁
業
振
興
WS の設定
1テーブル
(2)調査研究の推進
(3)環境との調和
(4)漁協経営の効率化
(5)漁業生産を支える漁港の整備
室
蘭
追
直
地
域
マ
リ
ン
ビ
ジ
ョ
ン
(1)衛生管理の徹底
加
工
振
興
水
産
物
流
通
・
1テーブル
(2)活魚出荷への取組
(3)水産加工への取組
(4)販売戦略の構築
(5)流通・加工を支える漁港の整備
(1)多彩なイベントの開催
ま
ち
づ
く
り
推
進
(2)地域の顔が見える食の提供
(3)海や漁業とのふれあい
(4)観光のネットワーク化
(5)まちづくりを支える漁港の整備
- 11 -
1テーブル
1テーブル
1テーブル
(1)「漁業振興構想」の方向性抽出
・意見交換から抽出された方向性と改訂後の取組項目との関連性を以下に示す。
○漁業振興構想
方 向 性
計画体系の「取り組み項目」
(1)つくり育てる漁業の展開
漁業者主体の漁業を目指す
開発・作業コストがかからない無給餌型のホタテ以外の養殖対
象種の選定(事業化の可能性検討)
(2)調査研究の推進
都市の強み(商業・育児施設等)を活かした漁業就業者の確保
日常の漁業活動と同様に、各地区で相互に協力し、人材を育
成
(3)環境との調和
調査研究(ナマコ等)の推進
(漁業者主体の操業を目的として継続)
「浜のかあさん」活動の継続
(漁業活動や環境に関心ある市民の参加)
(4)漁業生産を支える人と
場の確保
女性の就労環境の改善
(施設整備)
衛生管理及び鮮度保持に対応
(施設整備)
(5)漁業生産を支える
漁港の整備
各港での整備水準の向上
高齢者が操業できる安心・安全な漁場づくり
(環境・施設の整備)
(2)「水産物流通・加工振興構想」の方向性抽出
・意見交換から抽出された方向性と取組項目との関連性を以下に示す。
○水産物流通・加工振興構想
方 向 性
計画体系の「取り組み項目」
(1)衛生管理の徹底
海水氷などを用いた輸送手段・技術の導入
市場の更新時、生産者から市場まで一貫した衛生管理対応
(2)品質向上と鮮度保持
への取組
ホタテ出荷時の省エネ化
(使い捨ての発泡ケースからリサイクルポリパンの使用)
ホタテの韓国輸出を契機に、海外向けの輸出を促進
(生産力の増大、作業の効率化)
(3)水産加工への取組
付加価値と鮮度を生かした活〆の普及啓発と販路拡大
一次加工を中心とした小規模な加工場整備
(4)販売戦略の構築
提供先のニーズに対応した魚(クロソイ)の提供
ヤヤンコンブ等、少量未利用資源のPRや利用
(室蘭のイメージアップ)
(5)流通・加工を支える
漁港の整備
- 12 -
(3)「まちづくり推進構想」の方向性抽出
・
「地域の顔が見える食の提供」
、
「イベント開催、学習、交流」、
「観光ネットワーク化」の3
テーブルで示された方向性と取組項目との関連性を以下に示す。
○まちづくり推進構想
方 向 性
計画体系の「取り組み項目」
(1)海や漁業との多彩な
ふれあい交流
多種多様な室蘭産の魚のおいしさのさらなる周知
(室蘭産の魚のおいしさを)知ってもらうための活動や取組
(2)地域の顔が見える食の
提供
一般者向け(教育・観光の視点)の新たなイベント、各種活動を
支える市民等の協力、・新たな売り物やブランドづくり
食の提供ツールとして重要なイベントの積極的な展開
(B級、sea級グルメ提供)
(3)観光のネットワーク化
一般者でも作りやすい料理レシピづくり、HP等での公開
関係者間の風通しを良くする
(異業種交流で協力体制づくり)
(4)安全・安心な漁業地域
づくり
観光ネットワークを強化するため、メディアや海・港関連の各種
団体との連携を強化
魚や漁港と関連のある食や沿岸一帯の景観を室蘭の観光資
源として活用・発掘・創造
(5)まちづくりを支える
漁港の整備
上記観光資源の情報の発信・PR
(観光の視点として、食と学びの関係も重要)
・3テーブルのWSより抽出した方向性を3色に色分け。
・新規追加の防災(安全・安心な漁業地域)の議論は行っていない。
- 13 -
4)将来像
(1)漁業・養殖業
○
追直漁港の主要漁業種類である沖合底びき網漁業は、主力魚種であるスケトウダラにおけ
る漁獲可能量(TAC)制度と漁獲努力量(TAE)制度のもとに操業が行われて資源の維持・増大
が図られ、安定的に営まれている。
○
沿岸漁業では、平成25年度供用の人工島(以下、通称のMランドで表記)を活用して、
背後の静穏海域ではホタテガイの蓄養施設やウニ、ナマコ等の定着性資源の漁場が形成さ
れ、時化に左右されない安定的で計画的な出荷がなされている。また、大型で高品質なホ
タテガイ稚貝の育成・出荷により、道東地域等のホタテガイ漁業の振興に貢献していると
ともに、活力が高く衛生管理が徹底されたホタテガイの出荷により、
「蘭扇」及び海外輸出
向けの 2 年貝をはじめとする室蘭産のホタテガイの知名度の向上及びブランド化が進んで
いる。
○
Mランドの静穏度確保に資する外郭施設の背後小段等では、栽培水試や臨海実験場等の研
究協力による採介藻漁業の漁場が形成され、高齢漁業者の安心な就労及び水産資源の持続
の両立を可能とする環境整備が図られている。
○
養殖漁業では、作業コストのかからない無給餌型の養殖対象種の研究・選定が進み、事業
化が図られている。
○
追直漁港現港地区では、岸壁と製氷・貯氷施設の整備及び誘致活動によってイカ釣り外来
船が多数入港し、スルメイカ陸揚量の増加や入港漁船へのサービス等により地域経済の活
性化が図られている。
○
各地区共通の課題である冬期や強風時の就労環境改善及び衛生管理に対応した屋根付き施
設や防風施設の整備が進み、室蘭地域全体の漁港整備水準が向上し、女性や高齢者も働き
やすい環境が実現している。
○
漁業収入の増大、快適な就労環境の形成、計画的な蓄養殖作業の実現、子供たちへの漁業
教育等を通じて、代替わりによる後継者の育成が図られるとともに、新規就業者を育成す
る体制が確立され、漁業の後継者及び就業者が安定的に確保されている。
○
漁業者の高齢化に対応して、漁港への近接性や静穏な漁場環境を確保したいわゆるシルバ
ー海域が拡充され、生涯漁業に関わることが可能となっている。
○
ものづくり、リサイクルのまち室蘭の力を活かした藻場の造成と子供たちの体験学習、植
樹活動、海岸・漁港の清掃などの活動により、海の環境の保全・創造が図られている。
○
この結果、子供たちから高齢者まで、水産業を支える人々が生き生きと活躍する「都市の
漁港・室蘭」が実現している。
(2)流通・加工
○
Mランドの供用により、静穏海域を利用したホタテガイなどの蓄養殖が拡充され、
「室蘭市
の特産品」として市民や来訪者に親しまれている。
○
また、追直漁港では、室蘭産の水産加工品を製造する漁協直営の水産加工場ならびに水産
加工品や新鮮な水産物を販売する直売所が開設され、特産品や加工品を求める市民や観光
客が訪れている。
○
生産から流通まで、一貫した衛生管理により安心・安全という付加価値が付けられ、室蘭
産の水産物の知名度が高まり、消費者に広く浸透している。
○
漁港や市場における鮮度保持や衛生管理、付加価値の向上に資する処理方法(活〆等)へ
の取組、物流企業における新たな航路の開設や輸送手段の開発、水産関連企業等による新
- 14 -
技術を活用した製氷や施氷方法の開発について、室蘭地域の水産業や施設整備等との連携
が進み、国内外への販路拡大が図られている。
○
漁港から出荷の際、ポリパン(※1)等のリサイクル可能な容器の利用が進み、省コスト化省
資源化が図られている。
○
出荷調整に有効な蓄養施設や長期保管の可能な冷凍・冷蔵施設が導入され、需要や価格の
変化に対して、適切に対応することが可能となっている。
○
衛生管理や鮮度保持に対応した施設整備は、地域の水産拠点である追直漁港から整備が進
み、他の地区においても室蘭地域全体としての施設整備水準の向上を目指した整備や更新
が進められている。
○
この結果、
「安心・安全な水産物を国内外に届ける室蘭地域」が実現している。
※1:魚の出荷時に使用するプラスチック製の魚箱で、洗浄及び繰り返しの使用が可能。
(3)地域社会
○
「室蘭さかなの港町同窓会」をはじめとする、室蘭産の水産物の販売・PR を目的とした漁
港を活用したイベントが継続的に開催されており、市内外の人々が多数来訪し、賑わって
いる。それらイベントは、漁業者、漁協、行政のほか、市民団体やボランティアによって
支えられ、活発な活動と連携が継続している。
○
また、体験漁業や海とのふれあい、海藻教室、サケ放流などの港ふるさと体験学習や学校
の総合学習に多くの児童生徒や家族連れが参加し、子供を含めた市民が室蘭の漁業、海や
水産物への理解を深めている。
○
市内の各学校で室蘭産の水産物を使った「ふるさと給食」や市内外における料理教室やレ
シピ提供による食育活動も盛んに行われ、魚食の普及に貢献している。
○
さらに、地域の商工会や飲食店などが主体となり、市内外の様々なイベントで室蘭産の水
産物が提供されているほか、地元飲食店で浜の料理が提供されるなど、漁港と背後地域の
漁業者と水産物による連携が進んでいる。
○
ホタテ養殖等のつくり育てる現場を見せる水産業観光に取り組み、自然景観や工場夜景、
三大グルメとの連携がなされ、室蘭の観光資源の1つとなっているとともに、室蘭の水産
業の広報・PRが図られている。
○
漁港と港湾が連担する室蘭地域の特性を活かして、室蘭港におけるイベントや活動団体と
マリンビジョン協議会との相互の情報の発信、共有、連携協力等が図られている。
○
加えて、いか釣り外来船団の誘致活動が進み、追直と中央地区の連携が強化されている。
○
漁港の地区毎に減災計画が策定され、都市型漁港の安全や安心が確保されているとともに、
追直漁港に市場や流通・荷さばき機能が付帯する場合には、市場等の業務継続計画(BCP)
が策定され、災害に強い漁業地域が形成されている。
○
こうした多彩な交流や災害に強い地域を支える基盤として、交流機能や安全・安心を強化
した漁港施設、各種研究機関、市場及び水産加工・直売の施設等が大きな役割を果たして
いる。
○
室蘭の水産全般に関する情報がインターネット等によって高頻度に発信され、室蘭産の魚
のPRや地域の水産業への親しみ、付加価値の向上、販路の拡大に貢献している。
○
この結果、海や水産物、港への理解が深まり、魚食文化がさらに浸透し、
「水産交流のまち・
室蘭」が実現している。
- 15 -
5)構想
(1)構想の計画体系
室蘭地域マリンビジョン計画は、Ⅲ.2.2)で取組項目を見直した下記の計画体系に基づき、水
産業を核とした地域の活性化を目指すものである。
<室蘭地域マリンビジョンの計画体系>
3つの「構想」
取
組
項 目
(1)つくり育てる漁業の展開
漁
業
振
興
(2)調査研究の推進
(3)環境との調和
(4)漁業生産を支える人と場の確保
(5)漁業生産を支える漁港の整備
室
蘭
地
域
マ
リ
ン
ビ
ジ
ョ
ン
(1)衛生管理の徹底
加
工
振
興
水
産
物
流
通
・
(2)品質向上と鮮度保持への取組
(3)水産加工への取組
(4)販売戦略の構築
(5)流通・加工を支える漁港の整備
(1)海や漁業との多彩なふれあい交流
ま
ち
づ
く
り
推
進
◆2
(2)地域の顔が見える食の提供
◆2
(3)観光のネットワーク化
(4)安全・安心な漁業地域づくり
(5)まちづくりを支える漁港の整備
- 16 -
(2)構想の内容
①漁業振興構想
【つくり育てる漁業の展開】
○水産関連の研究機関との連携
室蘭地域には4つの水産関連の研究機関が存在する。
うち、追直漁港に位置する道立栽培水産試験場及び北海
道大学臨海実験所では、栽培漁業や海草類に関する研究
ならびに、展示・見学等に対応した普及啓蒙活動を継続
するとともに、漁協との情報交換や共同研究等の連携や
新たな技術の導入や開発を行うことで、つくり育てる漁
室蘭地域の主な水産関連研究機関
○北海道立栽培水産試験場
(追直漁港新港地区:H18.4.1 開所)
○北海道大学臨海実験所
(追直漁港現港地区、H24.6.1 開所)
○市立室蘭水族館
(祝津、S28 開館)
○国立大学法人室蘭工業大学
(水元、S24 新制大学化)
業を展開していく。
また、絵鞆漁港区に近接する市立室蘭水族館では、希少な魚種等の受入・研究・飼育等を通
じて、市民と水産業振興との接点となる役割を活かしつつ、室蘭地域の漁業振興を支援してい
く。国立大学法人室蘭工業大学では、高度な技術と研究体制を活かして、地域のつくり育てる
漁業の推進に資する共同研究や協力を進めていく。
○資源管理への取組
現行の各種魚種における資源管理については、資源量確保及び安定的な漁獲の維持に不可欠
なため継続を基本としつつ、種苗調達が困難な状況のナマコにおける噴胆協(※2)など地域全体
の連携による調達や禁漁期間設定による捕獲サイズの大型化など、漁協や漁業者の主体的な取
組を含めて進めていく。
また、TAC 対象魚種であるスケトウダラ等各種魚種については、資源の水準に合わせた漁獲
を行うなど、資源管理に努めていく。
※2:噴火湾胆振海区漁業振興推進協議会
○種苗の中間育成・放流資源管理への取組
エゾバフンウニについては、現行と同様に追直漁港の水面を利用して中間育成を行うととも
に、大型種苗の放流を追加し、資源の安定及び増大を図っていく。ホッキガイについては、現
行と同様に放流事業を継続する。マツカワについては、第7次栽培漁業基本計画(H27~H31)
における栽培漁業の目標「えりも以西太平洋海域における広域的な取組の中心に据え、放流効
果の実証と資源増大を促進する」ことを踏まえ、現行の放流事業を継続する。
このほか、サケのふ化放流については、現行と同様にチマイベツ川の漁協施設で継続的に実
施する。
○養殖業への取組
ホタテガイ養殖については、成貝の養殖における追直、イタンキ、絵鞆、崎守の各地区の漁
業者、漁場、作業場、漁港施設等を横断的かつ一体的に活用して、平成 24 年度より出荷を開
始したブランドホタテ「蘭扇」および、輸出向けの好調な 2 年貝の生産量の増大を図る。稚貝
の養殖については、現在各地区で養殖している道東向け稚貝の品質と出荷量の確保を継続す
る。
クロソイ養殖については、生残率向上の課題に対して、給餌方法等、養殖技術の改良を進め、
養殖事業を軌道にのせ、室蘭市の魚として地域内外での定着・普及を図る。また、栽培水試と
の協力連携を進め、新たな養殖魚種の開発に取り組んでいく。
- 17 -
【調査研究の推進】
○海底面の活用可能性
漁港の海底面やMランド背後の静穏域の海底面に海藻が付着しやすい基質を配置し、海藻類
の増殖を図り、ナマコ、ウニ等の増殖に寄与するなど、海底面の活用の可能性について検討を
進める。検討にあたっては、前述の水産関連の研究機関との情報交換や共同研究を行うなどし
て、早期の漁場化に努める。
【環境との調和】
○漁港施設における海藻類付着増殖機能
別項の海底面の活用可能性と同様に、漁港施設に海藻類の付着増殖機能を付加して、港内環
境を改善する方法や漁場としての活用方法の可能性について検討を進める。
○陸域における環境保全活動
漁協女性部や市民団体等との協働による植樹活動や漁港・海岸の清掃を継続的に実施し、環
境保全に努める。
【漁業生産を支える人と場の確保】
室蘭地域の漁業生産活動は、水産物の取り扱い、漁港利用、作業等の各面において、複数の
地区を横断的に利用して成り立っている。一方、各地区で漁業者の高齢化が進行し、イタンキ
地区を除き後継者の不足が生じつつある。さらには網はずしや出荷作業等を担う陸上作業の就
業者確保についても、厳しい就労環境の影響により今後確保が困難となる懸念がある。
○人材の確保・育成
漁業者の高齢化や減少に対応し、漁業生産を支える人材を確保・育成するため、室蘭地域及
び各地区の連携協力を図りながら後継者の育成を進める。
主に青少年に対しては、現在も実施している室蘭地域における水産業に関する学習や漁業体
験を継続及び対象者(対象校)を拡大し、漁業就業の動機付けを図る。
また、室蘭地域内外から漁業就業を目指す方の発掘として、道立漁業研修所等複数の漁業就
業支援機関等による漁業就業支援活動を活用し、室蘭地域の都市や水産業の特徴や優位性を活
かした就業促進策を講じる。さらに、地域においては、漁協を主体として新規就業者に対する
指導漁家の確保・育成、複数の漁業種類への就業研修、住宅や漁業活動に必要な機器等取得へ
の支援、組合員資格要件の見直しなどに取り組む。
○漁業生産の場づくり
漁業生産を支える場については、今後の漁業生産を支える重要な戦力である高齢者や女性の
就労に配慮した漁港における施設や設備面(トイレ、休憩、水回り等)における環境改善を図
る。また、高齢漁業者が生涯漁業に携われるよう、漁港の近隣または静穏な海域で優先的に採
介藻漁業等に就ける漁場の確保・新設を進める。
【漁業生産を支える漁港の整備】
○Mランドの機能強化
追直漁港では、Mランドを効率的で衛生管理が図られたホタテガイ養殖漁業等の支援基地と
して活用を進めるため、物揚場の静穏度改善ならびに陸側の静穏海域拡大を図り、漁業生産の
増加やブランド価値の向上、新たな静穏海域での藻場造成(漁場づくり)を図る。また、沖合
底びき漁船、地元沿岸漁船の基地として、現港区の屋根付き施設の整備及び静穏度の向上など
による漁港機能の充実を図る。
○製氷・貯氷施設の新設
入港要請の高いイカ釣り外来船の係留施設が現港区に完成し、製氷・貯氷施設の新設に伴う
- 18 -
機能の高度化を図ることで、外来船に対する利便性を向上させ、外来船誘致活動と併せて陸揚
量の増加につなげていく。
○イタンキ漁港、室蘭港漁港区の整備水準の向上
これまでに示した漁業振興構想の内容の実現に向けては、室蘭地域全体における多様な連
携・補完が不可欠なため、追直漁港以外の漁港や漁港区においても各種取組による効率的な効
果出現に必要な施設整備水準の向上を図っていく。
イタンキ漁港では、冬期のスケトウダラ刺網漁業の網外し作業をはじめとする就労環境改善
を図るため、屋根施設等の整備について検討していくほか、港内静穏度の向上及び航路の漂砂
対策、イタンキ浜からの飛砂対策を進め、漁港機能の向上を図っていく。
室蘭港絵鞆漁港区では、上屋や水中荷さばき場の老朽化や狭隘化による作業効率や就労環
境、衛生面の支障が顕在化しているため、各施設の利用規模や配置の見直し、衛生管理面への
配慮等、施設の更新に向けた検討を進めるとともに、船だまり内の静穏度確保や西護岸からの
越波対策、物揚場の浸水対策についても検討を進め、漁港区の生産機能の向上を図っていく。
②水産物流通・加工振興構想
【衛生管理の徹底】
○衛生管理に向けた取組
追直漁港においては、主要魚種における衛生管理計画(案)を立案した段階にあることを受
けて、屋根付き施設等の整備と併せて、衛生管理計画を実施し、消費者に安心・安全な水産物
を供給する。あわせて沖合底びき網漁業(スケトウダラ、スルメイカ)の漁港内の作業ルール
を作成・実行する。このため、衛生管理計画・マニュアル等について漁協・漁業者が研修会等
を行い、鮮度保持・衛生管理意識を高めていく。また、追直漁港ほかにおけるホタテガイ出荷
時等の衛生管理に必要な海水滅菌装置の導入を進める。
さらに、現港区に製氷・貯氷施設を整備し、地元漁船やいか釣り外来船に供給し、水産物の
鮮度保持を図っていく。
イタンキ漁港、絵鞆漁港区、崎守漁港区においては、施設の整備状況に合わせて可能な範囲
で衛生管理に取り組むこととし、施設の新設・更新が進んだ場合には取り組み内容を見直して
いく。
上記と並行して、室蘭地方卸売市場においても、目標年までに更新等が見込まれるため、市
場においても目標とする衛生管理レベルの設定やそれに対応するための対策等の検討、研修会
等を行い、室蘭産の水産物の付加価値及び鮮度向上を図る。
○輸出の増大に向けた取組
ホタテガイやスケトウダラについては、海外輸出量及び輸出国の増大を図ることに対応し
て、HACCP 手法を取り入れた衛生管理に取り組むための取扱や管理方法について、漁協・漁業
者が研修等を行う。
【品質向上と鮮度保持への取組】
○鮮度保持の向上
新たな技術を活用した製氷・施氷並びに、新たな輸送手段(航路や輸送車両等)との連携や
連続性を活かして、鮮度保持の向上と出荷の範囲や量の拡大を図る。
活魚出荷に有効な活〆を普及啓蒙させるため、漁業者の活〆技術の向上や市場等関係者への
啓発等、活〆に関する情報発信を進める。
- 19 -
○効率的な出荷体制の確立
活ホタテの出荷については、Mランドの静穏海域(拡大)を活用して、需要の多寡や天候の
良否に左右されない出荷前の蓄養体制を確立する。また、蘭扇や韓国向けの輸出の増大に対応
するとともに、鮮度保持や販売戦略構築と併せて輸出の促進を図る。また、ホタテガイの市場
出荷時の発泡スチロール箱利用をポリパンリサイクル箱へ切り替え、コスト削減と衛生管理を
両立させる。
室蘭市の魚「クロソイ」の活魚出荷については、出荷数量の安定化を図るため、販売先(特
にお得意先など)のニーズに対応した出荷形態の構築に取り組んでいく。
スケトウダラの韓国向け出荷(発泡箱詰め)は、韓国の水産物輸入規制状況を確認しつつ、
今後の継続・増大に対応するため、船上での発泡詰めや低温管理等の衛生管理や鮮度保持の向
上を図り、相手国の要請に対応した出荷体制の構築を進める。併せて、東アジアを対象に輸出
の増加に取り組んでいく。
○直売所での活魚販売
現在、漁協においては事務所併設の売店でサケの山づけ等を販売し、売店の認知度も高まっ
ている。そのような効果を活かしつつ、今後、現港区に直売所を開設して、加工品や活魚等の
販売に取り組んでいく。
【水産加工への取組】
○水産加工場の建設
室蘭地域に水産加工業者が極めて少ない現状を踏まえ、漁協では、追直漁港現港区内に水産
加工場を建設し、室蘭産の水産加工品を新たな特産品として販売・出荷する。
加工場及び漁協では、少量未利用資源や型崩れ等で出荷不可能な魚等の活用の可能性につい
て検討を進める。
【販売戦略の構築】
○特産品、ブランド品の開発・販売
漁協では、平成 18 年に新設した追直漁港の漁協事務所併設の売店で、サケの山づけ等を販
売し、地域の特産品として認知度が高まっている。このような実績を踏まえ、今後、現港区に
開設する水産加工場の産品や活魚等を加えた直売所を開設して、室蘭産水産物の付加価値を高
めた特産品の販売や新規の特産品、ブランド品目の開発に取り組んでいく。
○地域の食との連携強化
室蘭地域の食との連携をさらに高めるため、室蘭地域の飲食店とタイアップして魚料理コン
テスト等を実施し、料理のレパートリー及び消費の拡大を図る。また、地域内での水産物消費
拡大(魚食推進)のため、漁協、市場、店舗等で協議する機会を設け、市場機能を活かしつつ、
室蘭産の鮮度を最大限活用するための地域内での流通販売体制の高度化を図る。
室蘭市の魚「クロソイ」についても、生産量の安定化と併せて知名度の向上を図るべく、旬
や出荷先のニーズに対応した流通体制の強化を図る。
○地域の水産情報の発信
室蘭地域で今捕れている魚をはじめ、別項に示した流通・加工に関する取り組み等、室蘭の
水産全般について、インターネット(ブログ等)により高い頻度で情報を発信し、販売・消費
の促進並びに、親しみの向上を図る。
○「室蘭産」をアピールした出荷
現在、水産物出荷用の発泡箱には“室蘭追直港”のシール貼付があり、スーパーや飲食店、
通販商品には、
“室蘭産”の表示やシール貼付があるものの、
「室蘭産」の統一表示は存在しな
- 20 -
い状況にある。そこで、漁場、漁港、市場ともに室蘭にあることを活かして、「室蘭産」水産
物のキャッチフレーズやロゴマークを作成し、それらを示したシールなどを出荷箱に貼付して
PRとイメージアップを図る。作成方法には一般公募型なども考えられる。
○高品質な稚貝出荷による地域連携の強化
一方、ホタテガイ当年貝・越冬貝は、道東方面に出荷・販売され、出荷先のホタテガイ漁業
を支える役割を果たしており、今後ともその役割を継続的に果たしていくために、大型の健苗
貝の確保に努め、品質の向上と販売数量の拡大を図る。
【流通・加工を支える漁港の整備】
○Mランドの機能拡充
追直漁港Mランドは、ホタテガイ稚貝・成貝の出荷基地であり、出荷前の貝を静穏海域に仮
置きすることにより、時化による影響を受けず、計画的な作業と出荷が可能となる。そのよう
な機能を拡充するための静穏度のさらなる改善及び静穏域の拡大を図る。また、Mランド 1 階
での作業は、雨・雪・直射日光から水産物を守り、就労環境の改善にも資するものとして、有
効活用が図られているが、荒天時に取水海水が濁る等の課題があることを受け、取水機能の改
善や滅菌海水設備等の整備について現港地区における整備との関係を考慮して衛生管理や鮮
度保持の環境整備を進める。
○各地区における流通機能高度化
追直漁港現港地区においては、既定計画の屋根付き施設の整備を進める中で、屋根付き施設
背後への配置が見込まれる荷さばき施設や製氷・貯氷施設、冷凍・冷蔵施設、水産加工場、直
売所等については、現在検討中の卸売市場の動向が決定した段階で、施設配置及び動線計画の
検討を進める。
また、イタンキ漁港及び室蘭港(絵鞆漁港区、崎守漁港区)においては、室蘭地域としての
衛生管理や流通機能の高度化に対応するために必要な施設の整備・更新等を進めていく。
③まちづくり推進構想
【海や漁業との多彩なふれあい交流】
○多彩なイベントの開催
室蘭さかなの港町同窓会は、平成 26 年で第 21 回目を向かえ、これまで各種の工夫のもとに
地域の一大イベントとして定着し好評を博している。そこで、今後とも室蘭地域の水産物のP
R活動ならびに、B 級、sea 級グルメ等の新たな売り物や内容の充実を図り、継続的に開催し
ていく。また、飲食店とのタイアップによる魚料理コンテストの実施に向けた取り組みをはじ
め、室蘭地域の漁港や港湾におけるイベントとの連携や情報共有を図り、水産物の提供や販売
を通じて積極的に参加することで、室蘭産の水産物のPR及び魚食の推進を図る。
○海や漁業とふれあう体験や学習
これまでも継続的に進めてきた学校における総合学習や体験型学習等の各種の体験・教育活
動は、水産業の学習の一環として重要であるため、総合学習時間の減少等への対応や受入側の
準備等の負担軽減等の課題解消を図りつつ、関係者との調整の下に今後とも継続する。うち、
レコサール(※3)体験教室は、地元企業の環境への取組と昆布の成長観察を一体とした学習とし
て平成 20 年から平成 23 年まで実施したが、今後とも磯根資源の育成等に有効な地場のリサイ
クル素材がある場合、その活用による同種の学習の実施に取り組んでいく。
※3:石油精製時に脱硫される硫黄を使った中性の新素材で、主にコンクリート配合材料として使
用。JX 日鉱日石エネルギー(株)室蘭製油所で製造していたが、平成 23 年に製造を停止した。
- 21 -
○いか釣り外来船団との交流
追直漁港ではいか釣り外来船の入港要請が高く、漁港整備の進展にあわせて、その基地とし
ての機能の充実を図り、漁船誘致を促進する計画である。このため、中央地区の商店街・飲食
店情報の船団への提供を継続するほか、船団の歓迎イベントの開催を検討する。このような取
組により、追直地域と中央地区の活性化を図っていく。
【地域の顔がみえる食の提供】
○関わる人が見える水産関連情報の発信
室蘭地域で陸揚げされる魚に関する認識の低さについては、マリンビジョン取り組み当初よ
り課題とされ、本改訂時においても認識の低い状況がワークショップで指摘された。そこで、
「室蘭産」の魚とそれに関わる人を軸とした話題づくりや情報発信に取り組み、室蘭産の魚、
関わる人、地域住民の顔が見える・繋がる関係を構築し、認知度と親しみを高め、消費や販路
の拡大を図るための取り組みを進めていく。
具体的には、飲食店組合による魚料理コンテストの開催やインターネット(ブログ等)によ
る日々の水産関連の話題(捕れた魚、関わる人、イベント、商品等の紹介)の情報発信を実施
する。
○ご当地グルメの開発
室蘭地域には既に3大グルメが存在し、地域の内外にも知名度の向上が図られてきている。
一方、室蘭産の水産物を使用した「たこのかき揚げ」がイベント等で sea 級グルメとして好評
であるほか、ホタテガイ養殖のPRとしてホタテカレーの販売の検討も進められている。
そこで、室蘭地域として、イベント等で好評な「たこのかき揚げ」の飲食店等での提供をは
じめ、漁協女性部の監修や地域性を付加したネーミングによるホタテカレーの作成など、新た
なご当地グルメの開発及びそれらのレシピ公開等に取り組んでいく。
○直売所や料理を通じた魚食の推進
漁協で計画する水産加工場での新たな特産品の開発、直売所での加工品、活魚等の販売、室
蘭市の魚「クロソイ」などの販売を通じて、「室蘭産」の魚の知名度を高めていく。
また、これまでも継続的に進めてきた漁協女性部による地元食材を使った料理教室の実施や
料理レシピの提供などを継続し、室蘭の水産物及び水産業のPRを図っていく。このほか、小
学校での地元食材を使った給食を継続的に実施していくなど、魚食や地産地消運動を推進して
いく。
【観光のネットワーク化】
○みなと関連イベントのネットワーク化
室蘭地域では追直漁港における室蘭さかなの港町同窓会をはじめ、室蘭港の本港や祝津絵鞆
地区などにおいても港関連のイベントが開催されている。そこで、漁港や港湾関連のイベント
開催に当たっては、開催情報等の共有に加え、開催主体や支援体制の連携・協力、メディアを
活用した広報体制や集客力を強化する(例:祝津絵鞆地区では道の駅みたらやエンルムマリー
ナ(みなとオアシス)
、市立室蘭水族館との連携など)。
○「水産業観光」への取り組み
室蘭地域の水産業を観光資源とするため、養殖現場の見学・体験(ホタテガイやクロソイの
養殖作業の見学・餌やり、コンブ干し等)ならびに、Mランドや大黒島など特徴的なスポット
を含む沿岸海域を漁船等で巡るなど、“学びと食”の要素を取り入れた新たな「水産業観光」
を企画し、モニターツアーや“公共施設の見学を取り入れた観光ツアー(※4)”と連携した取り
組みを進める。
- 22 -
さらに、MV協議会は、室蘭地域の観光と海洋、魚、漁港等の水産資源との関連づけの強化
を図るため、前述のイベント関連以外にも室蘭の観光活動に取り組む各種の団体等と相互に情
報交換や広報PR等の連携を進める。そのための初動的な取り組みとして、室蘭の観光案内図
等に漁港や港湾の位置や名称、代表的な魚種の図示等を働きかける。また、そのような案件が
円滑に実行できる人的交流を含む連携体制づくりを推進する。
※4:室蘭では白鳥大橋主塔見学と工場夜景&B 級グルメツアー実施(H24.11 月)の実績あり
【安全・安心な漁業地域づくり】
○漁港地区の防災計画づくり
平成 23 年の東日本大震災における津波では、追直漁港で 1.5mの浸水があったほか、各漁港
で物揚場や漁港用地等への浸水や養殖施設の流出等、多大な被害を受けた。また、平成 24 年
11 月末には暴風雪により室蘭地域全体が長時間にわたり停電し、生活や産業活動に多大な影響
が生じた。
室蘭地域全体が海に囲まれた地形環境にあること、漁港が市街地に存在すること、追直漁港
については室蘭市地域防災計画における防災拠点(指定地方公共機関備蓄集積拠点)に指定さ
れていること等を踏まえると、地域全体、地区、漁港が一体となった地区単位の防災計画を策
定しておく必要がある。
そこで、漁港の防災上最もリスクが高いと考えられる最大級の津波に対応した津波避難計画
を立案するとともに、漁業者及び地域住民の合同避難訓練の実施を行う(室蘭市で実施中)。
また、避難計画の立案においては、陸上避難とともに漁船等海上避難の基本ルールの設定等、
地域共通及び地区独自の計画の立案を進める。
さらに、追直漁港については、防災拠点であるとともに地域の拠点的漁港として漁協本部も
海岸部低地にあることを踏まえ、津波による被災後の早期の漁業や流通活動等の復旧を図るた
めの事業継続計画(BCP)を策定する。
【まちづくりを支える漁港の整備】
○防災機能施設の整備
安全・安心な漁業地域づくりに不可欠な防災機能を有する施設整備として、追直漁港では漁
港及び市街地の津波の流出入に対応して津波漂流物防止柵を既定計画で定めており、今後、市
場機能の検討結果を受けて具体的な配置等の検討を進める。その他の地区においても、漁港を
含む地区の防災に不可欠な施設について検討を進める。さらに、津波来襲に備えるための一般
者や来訪者対応の避難誘導案内(表示や音声等)の検討を進める。
○観光・交流機能施設の整備
追直漁港では、これまでに親水護岸等やMランドに海や漁業とのふれあいの場、交流の場を
整備してきたことを踏まえ、今後、追直漁港以外の各港においても、必要に応じて観光・交流
機能に配慮した施設整備の検討を進める。
- 23 -
Ⅳ.構想実現に向けての取組
取組の内容
今後、概ね 10 年間を計画期間とする取組内容は、以下のとおりである。
表中の実施時期の○印は主に新たに取り組む時期を示し、→印は取組内容を継続する時期、黄
色着色は後述する“特に重点的に取り組む事項”を示している。
1.漁業振興構想
実施時期
項
取組内容
目
つ
く
り
育
て
る
漁
業
の
展
開
水 産 関 連 研 究 機 関と
着手
短
中
長
時期
期
期
期
継続実施
→
→
→
の連携強化
ハ タ ハ タ 産 卵 場 の設
継続実施
→
→
→
実施主体
具体的内容
漁協、栽培水試、 増養殖、藻場造成、流通高度化、
臨海実験所等
水産文化等の相互連携
北海道
既設置の産卵礁に加え、産卵場
定等
の藻場造成、藻場での生育状況
のモニタリングによる資源量
の増加
ナマコ中間育成・放流
エ ゾ バ フ ン ウ ニ 中間
継続実施
継続実施
→
→
→
→
→
→
噴火湾胆振海
禁漁期間設定による自然産卵
区漁業推進協
数増大、捕獲サイズの大型化、
議会、漁協
5 万粒の種苗放流
漁協
従前の 50 万粒に加え、大型種
育成・放流
苗 50 万粒の放流を実施
ホッキガイ放流、漁獲
放流は継
管理、漁場再生
続実施、
の制限による漁獲管理、有害生
他 H26~
物駆除等の漁場再生
マツカワ放流
継続実施
○
→
○
→
→
→
漁協、漁業者
えりも以西栽
放流継続に加え、漁獲量や殻長
放流の継続的実施
培漁業振興推
進協議会
クロソイ養殖
継続実施
→
→
→
漁協、漁業者
畜養施設の整備、生残率の向上
を図り、出荷を拡大
新 た な 養 殖 魚 種 の開
継続実施
→
→
→
漁協、栽培水試
発
サケふ化放流
無給餌型の魚種等、新たな養殖
魚種の開発
継続実施
→
→
→
漁協
室蘭漁協千舞別さけ・ますふ化
場で 500 万尾の放流
の調
推査
進研
究
ナマコ、ウニ等が生息
環
境
と
の
調
和
海 藻 や 魚 介 類 が 生息
継続実施
→
→
→
可能な漁港
国、市、漁協、 漁港の海底面を利用した藻場
研究機関
増殖
継続実施
→
→
→
国、市、漁協
漁
業
生
産
を
支
え
Mランドの静穏度向上と併せ
し や す い 護 岸 等 の整
て生物増殖機能を付加し、漁場
備
として活用
浜のかあさん、お魚増
継続実施
→
→
→
漁協女性部
やす植樹活動
る
人
と
場
の
確
保
やナマコ、ウニ等の水産生物の
漁業就業者の確保・育
住民や市民団体との連携強化
による実施継続
H27~
○
○
→
成
漁協、市
漁業就業支援活動による地域
内外への新規求人の実施
新規就業者に対する指導や支
援体制の構築、実施
- 24 -
青 少 年 向 け の 学 習や
継続実施
→
→
→
教育委員会
体験の実施
学校での水産業関連の学習や漁
業体験の実施による動機付け
高 齢 や 女 性 の 漁 業就
H27~
○
○
○
漁協、国、道
業 者 に 配 慮 し た 環境
地域全体の就労環境水準の向
上を推進
整備
シルバー海域の拡充
H27~
○
○
○
漁協
既存の漁場のシルバー海域の
拡大及び、漁港整備に伴う静穏
域など新たな海域設定
整漁
備業
生
産
を
支
え
る
漁
港
の
M ラ ン ド の 特定漁港 継続実施
機能強化
い か 釣 り 外 計画
来船対応
→
→
→
国
静穏域拡大による蓄養機能の拡
漁場整備
充及び定着性資源の増大
継続実施
→
→
→
国
いか釣り船係留施設、製氷・貯
(追直)
地 域 全 体 の (イタンキ、
氷施設の整備
継続実施
→
→
→
国、道、市
就労、作業効率、衛生管理等、
漁港整備水
絵鞆、
地域全体の漁業生産の水準向
準の向上
崎守)
上に必要な施設の整備
2.水産物流通・加工振興構想
実施時期
項
取組内容
目
衛
生
管
理
の
徹
底
漁 港 の 衛生 管 理の 実
着手
短
中
長
時期
期
期
期
継続実施
○
○
→
施
実施主体
具体的内容
国、市、漁協、 日常の衛生管理及び輸出増大
仲買
に向けた衛生管理研修会の実
施、沖合底びき網の作業ルール
の作成・実施、衛生管理計画の
実施
市 場 の 衛生 管 理の 実
H27 以降
○
→
市、仲買
施
衛 生 管 理や 鮮 度保 持
市場更新後の衛生管理レベル
の設定、衛生管理研修会の実施
H27 以降
○
→
漁協
に必要な設備導入
製氷・貯氷施設、冷凍・冷蔵施
設、滅菌海水設備の設置(追直
ほか)
品
質
向
上
と
鮮
度
保
持
へ
の
取
組
ホ タ テ ガイ 蓄 養の 拡
継続実施
→
→
→
漁協、漁業者
大
室蘭港内とMランド陸側の蓄
養範囲及び畜養体制の拡充
蘭扇や輸出向け 2 年貝の出荷の
増大
クロソイ蓄養
継続実施
→
→
→
漁協、漁業者
浮体式係船岸での蓄養
販売先のニーズに対応した出
荷形態の構築
ホッキガイの畜養
H27 以降
○
○
漁協、漁業者
畜養施設の導入を図り、活での
保管による出荷調整や直売所
での販売
ス ケ ト ウダ ラ 輸出 の
H27 以降
○
○
→
漁協
継続・拡大
船上の発泡箱詰めの衛生管理
や鮮度保持の向上により、韓国
のほか東アジアを対象に輸出
を増加
新たな出荷・流通技術
H27 以降
○
→
→
の活用
漁協、室工大
製氷・施氷の新技術を活用した
活魚出荷の拡大
- 25 -
活〆の普及啓蒙
H27 以降
○
○
→
漁業者、仲買
活〆の技術向上と啓発及び、そ
れら情報の発信
リ サ イ クル 容 器の 使
H27 以降
○
○
→
用
へ
の
取
組
水
産
加
工
販
売
戦
略
の
構
築
水産加工場の建設
H27 以降
○
○
漁業者、漁協、 活ホタテ市場出荷時のポリパ
仲買
ンリサイクル箱への切替
漁協
現港区に建設し、水産加工品を
新たな特産品として販売
少量未利用資源等の活用検討
新たな特産品、ブラン
H27 以降
○
○
○
漁協
ド品の開発・販売
水産加工場の産品や活魚等、蘭
扇や山づけに続く新たな室蘭
産の特産品やブランド品の開
発、販売
加工品販売
継続実施
→
→
→
漁協
漁協売店でのサケの山づけ等
の販売を、今後直売所で販売
漁協直売所
H27 以降
○
○
漁協
地域の顔が見える食の提供の項目と重複
地 域 の 食と の 連携 強
H27 以降
○
→
→
飲食店、漁協
加工場に直売所を併設する等
して、加工品、活魚、鮮魚を販
売
地域の飲食店とのタイアップ
化 ( 魚 料理 コ ンテ ス
地域の顔が見える食の提供の項目と重複
ト)
による魚料理コンテストの開
地 域 の 食と の 連携 強
漁協、市場、店
市場機能と室蘭産を活用した
舗、飲食店
地域内流通販売体制強化に向
H27 以降
○
→
→
化(地域内流通体制の
強化)
けた関係者協議の実施
地 域 の 水産 情 報の 発
信
催
H27 以降
○
→
→
漁協、市、市場、 SNS やブログで室蘭の水産情報
地域の顔が見える食の提供の項目と重複
室 蘭 産 のキ ャ ッチ フ
H27 以降
○
→
→
を高頻度で発信(登別との連携
で実施)
漁協、市、市場、 室蘭産水産物をPRするため
レーズやロゴの作成
の共通のロゴマークやキャッ
チフレーズの作成、そのシール
の作成・貼付
長期保管や出荷調整
H28 以降
○
○
漁協
冷凍・冷蔵施設の設置により、
スルメイカ等の一過性多獲魚
種の出荷を調整
ホ タ テ 稚貝 出 荷の 高
H27 以降
○
→
→
漁協
品質化
流
通
・
加
工
を
支
え
る
漁
港
の
整
備
め、大型の健苗貝を確保
M ラ ン ド の 特定漁港 継続実施
機能拡充
各地区にお
育成篭への収容枚数上限を定
→
→
→
国
静穏域拡大による出荷調整機
漁場整備
能の充実、衛生管理や鮮度保持
計画
に必要な清浄海水取水施設及
(追直)
び滅菌海水設備の整備
継続実施
→
→
→
国、漁協
屋根付き施設等、衛生管理型の
ける流通機
漁港施設整備
能高度化
製氷・貯氷施設、冷凍・冷蔵施
設、加工場や直売所等の整備(追
直)
- 26 -
3.まちづくり推進構想
実施時期
項
取組内容
目
海
や
漁
業
と
の
多
彩
な
ふ
れ
あ
い
交
流
室 蘭 さ かな の 港町 同
着手
短
中
長
時期
期
期
期
継続実施
→
→
→
窓会
実施主体
具体的内容
実行委員会(漁
これまでの開催に加え、B 級グ
協、市)
ルメ等の内容充実やMランド
活用の検討
地 域 の 各種 イ ベン ト
H27 以降
○
→
→
及 び そ の関 係 団体 と
漁協、市、観光
道の駅や、港湾等でのイベント
協会
開催の情報共有、広報等の連携
の連携強化及び、水産
及び、水産品の提供・販売など
のPR
積極的な参加
地 域 や 北海 道 の水 産
H27 以降
○
→
→
に関する研修の開催
漁協、市、青年
異業種を対象とした漁港や水
会議所、研究機関
産に関する勉強会の開催
総合学習受入
継続実施
→
→
→
漁協
小中学校生を対象に実施
体 験 プ ログ ラ ムの 整
継続実施
→
→
→
市、漁協、栽培
水産出前教室、漁業体験学習、
水試、企業
浜辺のふれあい教室、写生大会
備
(小学校の漁港遠足)など体験
プログラムの実施
海藻教室
継続実施
→
→
→
市、室蘭臨海実
小中学校での出前教室の実施
験所
栽 培 水 試及 び 臨海 実
継続実施
→
→
→
験所による展示・見学
サケ放流体験
継続実施
→
→
→
栽培水試、臨海
港町同窓会等、視察、学習の受
実験所
入
漁協
町内会や子供たちによるチマ
イベツ川への稚魚放流
リ サ イ クル 素 材活 用
H27 以降
○
→
→
型の学習
市、地域企業、 水産資源育成型の学習への地
水試、漁協等
域産業のリサイクル素材活用
の検討
い か 釣 り船 団 との 交
継続実施
→
→
→
流
地
域
の
顔
が
み
え
る
食
の
提
供
地 域 の 食と の 連携 強
H27 以降
○
→
→
市、漁協、商店
船団への情報提供、船団歓迎イ
街、飲食店
ベントの実施検討
飲食店、漁協
地域の飲食店とのタイアップ
化 ( 魚 料理 コ ンテ ス
販売戦略の構築の項目と重複
ト)
地 域 の 水産 情 報の 発
信
H27 以降
○
→
→
による魚料理コンテストの開
催
漁協、市、市場、 SNS やブログで室蘭の水産情報
を高頻度で発信(登別との連携
販売戦略の構築の項目と重複
地 域 水 産品 利 用の ご
H27 以降
○
→
→
で実施)
地域企業、漁
既存のご当地グルメのPR・販
当地グルメのPR・開
協、市、観光協
売促進及び、イベント向けの
発・販売
会
「タコのかき揚げ」の一般販
売、ホタテカレーの地域性付加
等の実施
飲 食 店 での 室 蘭の 魚
継続実施
→
→
→
の提供
漁協、市場、飲
市の魚「クロソイ」をはじめ、
食店
室蘭産の魚をPR
市内全小中学校の給食で秋さ
ふるさと給食
継続実施
→
→
→
市、漁協
料理教室
継続実施
→
→
→
漁協女性部
けやホタテを使用
住民及び児童生徒に地域水産
物を使った料理教室
- 27 -
料理レシピ提供
継続実施
→
→
→
漁協女性部
地元食材を使ったレシピの考
案・提供及び、新聞や室蘭市広
報誌、インターネットへの掲載
漁協直売所
H27 以降
○
○
漁協
して、加工品、活魚、鮮魚を販
販売戦略の構築の項目と重複
観
光
の
ネ
ッ
ト
ワ
ー
ク
化
み な と 関連 イ ベン ト
H27 以降
○
→
→
のネットワーク化
水 産 業 観光 へ の取 り
H27 以降
○
→
→
組み
加工場に直売所を併設する等
売
市、漁協、観光
漁港、港湾のイベント情報の共
協会、報道機関
有、支援体制の連携協力
市、観光協会、 養殖現場、Mランドや大黒島と
漁協、市場
魚食を組み合わせた水産業観
光ツアーの実施及び受入体制
構築
更新後の卸売市場見学会(住
民、クルーズ客船乗客等)
観光関連資料への漁港や水産
物の表示
業
地
域
づ
く
り
安
全
・
安
心
な
漁
漁 港 地 区の 防 災計 画
港
の
整
備
ま
ち
づ
く
り
を
支
え
る
漁
防災機能
H27 以降
○
○
→
づくり
漁協、市、道、 地区毎の津波避難計画の検討、
国
策定
追直漁港の事業継続計画の検
討、策定
施設の整
備
特定漁港漁 継続実施
→
→
→
国
場整備計画
追直における津波漂流物防止
柵、橋梁の整備
(追直)
(イタンキ、絵
H27 以降
○
○
○
国、道、市
鞆、崎守)
観 光 交 流機 能 施設 の
イタンキ、室蘭港における防災
機能施設の整備検討
H27 以降
○
○
○
国、道、市
整備
観光・交流に配慮した施設整備
の検討
注:計画期間は、平成 27 年から平成 36 年とし、短期(平成 27~29 年)、中期(平成 30~32 年)、
長期(平成 33~36 年)に区分して実施時期を示した。
- 28 -
特に重点的に取り組む事項
前述の取組内容については、項目数が多い上、分野や実施主体も多岐にわたっている。いず
れの取組も地域の水産業の持続的発展に不可欠で、優劣を付すことは望ましくないと考えられ
る。
しかし、網羅的に示された状況では、ややもすると取組のメリハリに欠けたり、重点が曖昧
になる懸念がある。
そこで、各種取組の中でも特に重点的に取り組む事項を3つの構想別に抽出して以下に示す
とともに、取組内容を総括した一覧表に整理して示した。
≪特に重点的に取り組む事項≫
文中、下線太字箇所が特に重点的な取組内容を指す。
1.漁業振興構想
・これまでも継続的に進めてきたエゾバフンウニの中間育成及び放流、ナマコ・ホッキガイ・
マツカワの放流など、資源管理型のつくり育てる漁業への取組を推進する。
・ブランド力や輸出拡大の進展が期待される活ホタテの生産量を増大させるなど、各地区が
一丸となって魚価や付加価値の向上を図るための取組を進めていく。
・漁業生産に関する各種取組の効率的な効果発現を図るため、就労環境や衛生管理等、地域
全体の漁港の整備を進めていく。
・室蘭地域の都市及び自然のメリットを活かして、漁業生産の持続的発展に不可欠な漁業の
後継者や新規就業者の確保、豊かな漁場の確保に向けた取組を進めていく。
2.水産物流通・加工振興構想
・衛生管理の徹底及び鮮度保持の向上に有効なソフト・ハードの取組を進めていく。
・鮮度保持技術等、流通の高度化に対応した鮮魚の出荷拡大、海外への輸出拡大を含む販
路の拡大を図る。
・上記と併せて、室蘭地域の水産情報を内外へ積極的に発信して、室蘭産の水産物の出荷
の範囲及び量を拡大するための取組を進めていく。
3.まちづくり推進構想
・地域の水産業のPRと交流を推進するため、漁港と港湾の連携協力による各種イベントの
情報共有や支援体制の強化、ご当地グルメの開発・販売、漁業の現場の見学や体験を取り
入れた水産業観光への取組を進めていく。
・また、太平洋と噴火湾に囲まれ、市街地と直結した各地区の特性を踏まえ、安全・安心な
漁業地域の形成に不可欠な防災計画づくりを進めていく。
- 29 -
≪取組内容の総括表≫
・最重点課題を含む取組内容を黄色で表示。取組種別の「新規」は、現行のマリンビジョンになかった内容で、現在取り組んでいる事柄も含む。
1)漁業振興構想
取組項目
大項目
小項目
取組内容の主な具体例
(1)つくり育てる漁 ○水産関連研究機関との連携
業の展開
○資源管理への取組
○種苗の中間育成・放流資源管理
・栽培水産試験場等、複数の研究機関を追加し、連携を強化
・ナマコ捕獲サイズの大型化等、漁協や漁業者主体の取組
・エゾバフンウニの大型種苗放流を追加
・ナマコ、ホッキガイの放流
・マツカワ稚魚の放流
○養殖業への取組
・蘭扇及び輸出向け 2 年貝の生産量の増大
・クロソイの養殖事業の安定に向けた研究
(2)調査研究の推進 ○海底面の活用可能性(ウニ、ナマコ等 ・海藻類増殖に向けた海底面活用の可能性検討及び、研究機関との連
の増殖)
携による早期の漁場化
○新たな養殖魚種の開発
・無給餌型の養殖対象種の事業化可能性研究
(3)環境との調和
○漁港施設における海藻類付着増殖機能 ・漁場としての活用方法の可能性検討の追加
○陸域における環境保全活動
・漁協女性部と市民団体との連携強化(植樹、アクリルたわし普及、
漁港・海岸清掃など)
(4)漁業生産を支え ○人材の確保・育成
・地域内外一般者:室蘭の特性や優位性を活かした漁業就業支援活
る人と場の確保
動、住宅等の生活支援
・地域青少年:漁業の学習・体験による漁業就業の動機付け
○漁業生産の場づくり
・高齢者や女性の就労環境に配慮した施設や設備の改善
・高齢者向け漁場(シルバー海域)の確保、新設
(5)漁業生産を支え ○Mランドの機能強化
・静穏域拡大によるホタテガイ蓄養及びウニ、ナマコ等の定着性資
る漁港の整備
源の増大、藻場造成
○地域全体の漁港整備水準の向上
・就労環境、作業効率、衛生管理等、地域全体の漁業生産に関わる
施設整備水準の向上に必要な施設の整備
○イカ釣り外来船の利便性向上
・イカ釣り外来船の係留施設の整備、製氷・貯氷施設の整備
- 30 -
取組種別
重点課題 新規:○
継続
最重点
最重点
最重点
最重点
最重点
重点
継続
○
継続
重点
継続
最重点
取組の主体
各研究機関、大学、漁協
漁協、噴胆協ほか
漁協
漁協
えりも以西栽培漁業振興推進協議会
漁協、漁業者
市、漁協、栽培水試
国、市、漁協、研究機関
漁協、栽培水試
国、漁協、研究機関
漁協
○
市、漁協
継続
最重点
最重点
最重点
○
○
市(教育委)
、漁協
国、道、漁協
漁協
国、漁協
最重点
○
国、道
重点
国、漁協
2)水産物流通・加工振興構想
取組項目
大項目
(1)衛生管理の徹底
小項目
○衛生管理に向けた取組
取組内容の主な具体例
取組種別
重点課題 新規:○
・沖底の作業ルールの作成・実施を含む衛生管理計画の実施
最重点
・漁協、漁業者の衛生管理研修、実施
最重点
・更新後の市場の衛生管理レベルの検討、設定
・HACCP 手法を取り入れた衛生管理研修
・新たな製氷・施氷技術の導入(実験等)
・上記の活用による鮮魚出荷の範囲・量の拡大
・活〆技術の向上、市場等関係者への啓発、活〆取組の情報発信
○効率的な出荷体制の ホタテガイ蓄養 ・室蘭港内及びMランドにおける蓄養機能の活用・拡大(出荷調整)
確立
・鮮度保持と併せた輸出の拡大
・市場出荷時のリサイクル箱への切替
クロソイ蓄養 ・販売先のニーズに対応した出荷形態の構築(出荷の安定)
○直売所での活魚販売
・直売所の開設、活魚の販売
(3)水産加工への取 ○漁協直営の水産加工場
・水産加工場の建設、水産加工品の製造・販売
組
・少量未利用資源等の活用検討
(4)販売戦略の構築 ○特産品・ブランド品の開発・販売
・直売所の開設
・山づけ、蘭扇に続く新規商品の開発・販売
○地域の食との連携強化
・魚料理コンテスト開催(飲食店組合タイアップ)
(3.(1)(2)と共通)
・地域内流通販売体制の強化に向けた協議・検討
・室蘭産水産物の旬の情報発信や出荷先のニーズへの対応
○地域の水産情報の発信
・室蘭で捕れた魚や水産関連の情報を、ブログ等で高い頻度で発信
(親しみの向上、豊漁魚種紹介による販売促進等)
(3.(2)と共通)
○室蘭産をアピールした出荷
・室蘭産水産物のキャッチフレーズやロゴの作成
・上記のシール等を貼付した水産物の出荷
○長期保管、出荷調整
・冷凍・冷蔵施設設置による一過性多獲魚種(スルメイカ等)の出荷調整
○高品質な稚貝出荷による地域連携強化 ・道東出荷の稚貝の品質向上と販売数量の拡大
(5)流通・加工を支え ○Mランドの機能拡充
・静穏海域の拡大による出荷調整機能の充実
る漁港の整備
・衛生管理や鮮度保持に必要な取水改善と滅菌海水設備の整備
○各地区における流通機能高度化
・屋根付き施設等、衛生管理型の漁港施設整備
・流通機能向上に資する製氷・貯氷施設、冷凍・冷蔵施設、加工場、
直売所等の整備(追直)
○輸出の増大に向けた取組
(2)品質向上と鮮度 ○鮮度保持の向上
保持への取組
- 31 -
○
取組の主体
漁協
漁協、漁業者
最重点
重点
最重点
最重点
重点
最重点
最重点
重点
重点
継続
重点
重点
継続
重点
重点
重点
重点
最重点
○
○
○
○
○
重点
重点
重点
継続
最重点
最重点
重点
重点
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
市、市場
漁協、漁業者
室工大、漁協、国
漁協、市場
漁業者、漁協、市場
漁協、漁業者
漁協、漁業者、市場
漁協、漁業者、市場
漁協、漁業者、市場
漁協
漁協
漁協
漁協
漁協
飲食店組合、市、漁協
市、市場、商工会
漁協、漁業者、市場
漁協、市場、市、国
市、漁協
市、漁協、市場
市、漁協
漁協、漁業者
国
国、漁協
国、道、市
漁協
3)まちづくり推進構想
取組項目
大項目
小項目
(1)海や漁業との多 ○多彩なイベントの開催
彩なふれあい交
流
○海や漁業とふれあう体験や学習
○イカ釣り外来船団との交流
(2)地域の顔が見え ○関わる人が見える水産関連情報
る食の提供
の発信
○地域の水産物を活用したご当地
グルメのPR・開発・販売
○直売所や料理を通じた魚食の推
進
(3)観光のネットワ ○みなと関連イベントのネットワ
ーク化
ーク化
○「水産業観光」への取り組み
(4)安全・安心な漁業 ○漁港地区の防災計画づくり
地域づくり
(5)まちづくりを支 ○防災機能施設の整備
える漁港の整備
○観光・交流機能施設の整備
取組種別
重点課題 新規:○
・港町同窓会の継続(B 級グルメ等内容充実)
継続
・魚料理コンテスト(飲食店組合タイアップ)
(3.(2)と共通)
重点
○
・漁港・港湾等のイベントとの連携、情報共有、水産物の提供・販売
重点
○
・異業種対象の漁港や水産に関する勉強会(マリンナレッジサークル等)
重点
○
・総合学習や体験型学習の継続(水産業教育)
継続
・リサイクル素材活用型の学習の実施検討
継続
・商店街・飲食店情報提供の継続
継続
・魚料理コンテスト(飲食店組合タイアップ) (3.(1)と共通)
重点
○
・ブログ等で室蘭で捕れた魚や水産関連の情報を高い頻度で発信(漁業者・ 最重点
○
関係者の登場による親しみ向上、販売促進) (2.(4)と共通)
・sea 級グルメ「タコのかき揚げ」の一般販売、ホタテカレーの室蘭地域 最重点
○
性の付加等、新たなご当地グルメ開発及びレシピの公開
・直売所での販売を通じて「室蘭産」の知名度向上
重点
・漁協女性部による料理教室開催や料理の監修・開発、レシピの公開
重点
・ふるさと給食の継続(魚食の推進)
継続
・漁港・港湾等のイベント情報の共有、支援体制の連携協力、メディア活
最重点
○
用による広報強化(特に祝津絵鞆地区や室蘭港本港との連携)
・養殖現場の見学・体験、Mランドや大黒島クルーズ、魚食や3大グルメ
最重点
○
を組み合わせた“学びと食”の新たなツアーの実施
・卸売市場の更新後、見学会等の開催
重点
○
・観光案内図等、観光関連資料への漁港や水産物の表示
重点
○
・地区毎の津波避難計画(漁船等の海上避難含む)
最重点
○
・追直漁港における事業継続計画
最重点
○
・追直漁港における津波漂流物防止柵の整備
重点
・イタンキ、室蘭港における防災機能施設の整備の検討
重点
○
・一般者や来訪者対応の避難誘導案内(表示や音声等)の検討
重点
○
・就労環境改善や衛生管理と併せて、必要に応じて観光・交流機能に配慮
継続
○
した施設整備の検討(特に追直以外の各港)
取組内容の主な具体例
- 32 -
取組の主体
実行委員会(漁協、市)
飲食店組合、市、漁協
市、漁協、観光協会
室工大、漁協、市
市(教育委)
、漁協
市(教育委)、地域企業、漁協
市、漁協、商店街、飲食店
飲食店組合、市、漁協
漁協、市場、市、国
漁協女性部、飲食店、市、観光協会
漁協
漁協女性部
市(教育委)
、漁協
市、漁協、観光協会、報道機関
市、観光協会、漁協
市、市場
市、観光協会
漁協、市、道、国
漁協、市、道、国
国
国、道
国、道
国、道
Ⅴ.フォローアップ計画
フォローアップ
計画全体については、室蘭市が事務局となって「室蘭地域マリンビジョン協議会」を定期的
に開催し、経済情勢、市財政状況等を勘案して進捗状況を評価し、必要な計画の見直しを行う。
また、具体的な計画の内容については、「室蘭地域マリンビジョン検討会」を通じて策定する。
さらに、計画の実効性を確保するため、事務局は検討会メンバーによる3つの構想の柱に沿
った検討部会を適宜開催し、個別テーマについて議論を深めてビジョンの実現に取り組んでい
く。3つの検討部会にはそれぞれ部会長を定め、協議会に参画する。なお、検討会メンバーは
必要に応じて増減する。また、ビジョンへの取組については市民に広報し、マリンビジョンの
浸透を図っていく。
【フォローアップ体制】
<協議会>
職名
委員の所属等
協議会会長
室蘭漁業協同組合
協議会副会長
一般社団法人登別室蘭青年会議所
代表理事組合長
理事長
(まちづくり振興部会長)
協議会委員
室蘭市 副市長
〃
室蘭漁業協同組合
代表理事副組合長
〃
室蘭商工会議所 専務理事
〃(漁業振興部会長)
室蘭漁業協同組合
〃(水産物流通・加工振
室蘭水産物商業協同組合 理事長
専務理事
興部会会長)
オブザーバー
北海道開発局室蘭開発建設部
〃
北海道胆振総合振興局産業振興部
〃
北海道立栽培水産試験場
〃
室蘭漁業協同組合
〃
国立大学法人室蘭工業大学
水産課
地域共同研究開発センター
<検討部会>
検討部会名
職名
構成メンバーの所属等
漁業振興部会
部会長
室蘭漁業協同組合
メンバー
北海道立栽培水産試験場
専務理事
〃
北海道大学室蘭臨海実験所
〃
国立大学法人室蘭工業大学
〃
北海道開発局室蘭開発建設部(築港課、室蘭港湾事務所)
〃
北海道胆振総合振興局産業振興部(水産課、水産技術普及指導所)
〃
室蘭市(農水産課)
オブザーバー 行政関係者
水産物流通・
部会長
室蘭水産物商業協同組合
加工振興部会
メンバー
株式会社室蘭魚市場
〃
室蘭市水産物卸売協同組合
〃
株式会社AS物流
- 33 -
〃
北海道立栽培水産試験場
〃
国立大学法人室蘭工業大学
〃
北海道開発局室蘭開発建設部(築港課、室蘭港湾事務所)
〃
北海道胆振総合振興局産業振興部(水産課)
〃
室蘭市(農水産課、中央卸売市場、産業振興課)
オブザーバー 行政関係者
まちづくり
部会長
一般社団法人登別室蘭青年会議所
推進部会
メンバー
室蘭漁業協同組合
理事長
〃
室蘭商工会議所
〃
一般社団法人登別室蘭青年会議所
〃
室蘭浜町商店街連合会
〃
室蘭中央三丁目商店街振興組合
〃
大町商店会
〃
室蘭中央飲食店組合
〃
一般社団法人室蘭観光協会
〃
特定非営利活動法人羅針盤
〃
蘭西七町連合町会
〃
室蘭まちづくり放送株式会社
〃
北海道立栽培水産試験場
〃
室蘭小学校校長会
〃
室蘭中学校校長会
〃
国立大学法人室蘭工業大学
〃
北海道開発局室蘭開発建設部(築港課、室蘭港湾事務所)
〃
北海道胆振総合振興局産業振興部(水産課)
〃
室蘭市(経済部農水産課)
オブザーバー 行政関係者
※室蘭地域マリンビジョン検討会に参加の団体を記載。なお、取組内容によって新たな団体の参
加を予定。
- 34 -
Ⅵ. マリンビジョン計画策定に関する活動記録
室蘭地域マリンビジョン計画の策定にあたっては、現行計画策定時より継続している室蘭追直
地域マリンビジョン協議会及び同検討会を開催し、計画書を策定した。
さらに、検討の経緯を市民に知らせるため「室蘭地域マリンビジョン通信」を作成し、室蘭市の
ホームページに掲載した。
地域マリンビジョン策定に関する活動記録
年月日
平成 26 年
12 月 22 日
平成 27 年
1 月 19 日
平成 27 年
2 月 18 日
平成 27 年
2 月 23 日
平成 27 年
2 月 27 日
~3 月 18 日
平成 27 年
3 月 26 日
平成 27 年
3 月 27 日
活動項目
備考
第 1 回室蘭追直地域マリンビジョン協議会 ○地域マリンビジョンの改訂
第 1 回室蘭追直地域マリンビジョン検討会 ○北海道マリンビジョン 21 の改訂
○現行計画の評価と今後の方向性
○改訂作業スケジュール
第 2 回室蘭追直地域マリンビジョン検討会 ○グループによる検討(ワークショ
ップ:まちづくり検討、加工・流
通検討、漁業振興検討)
第 3 回室蘭追直地域マリンビジョン検討会 ○地域マリンビジョン内容の見直し
○重点的取組事項の選択と取組方法
○グループによる検討(ワークショ
ップ:情報発信の内容)
第 2 回室蘭追直地域マリンビジョン協議会 ○地域マリンビジョン内容の見直し
○構想別の取組内容及び重点的な取
組事項
室蘭地域マリンビジョンのパブリックコメ ○対象地域、計画体系、理念、フォ
ント(意見募集期間)
ローアップ計画の改訂案、構想別
の取組内容及び重点的な取組事項
の案を市HP等で公開
第 3 回室蘭追直地域マリンビジョン協議会 ○室蘭地域マリンビジョン及び同概
(書面総会)
要版の報告
第 4 回室蘭追直地域マリンビジョン協議会 ○室蘭地域マリンビジョンの概要報
報告会
告
○室蘭地域マリビジョン協議会の会
則・組織体系の改訂
○フェイスブックを活用した地域水
産業のPRの手法(事例紹介)
○鮮度保持実験、模擬輸送実験(結
果報告)
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