密封装置 1 密封装置の分類 密封装置の目的:軸受部からの漏れを防止するとともに、外部からのごみや水分の浸入を防ぐ 部について記載 2 1 オイルシール (構造) オイルシールは、回転軸や固定軸から流体を密封し、ごみを防ぐ目的で使用されます。 JISでは、ばね入り外周ゴム、ばね入り外周金属、ばね入り組立て、ばね入り外周ゴム ちりよけ付き、ばね入り外周金属ちりよけ付き、ばね入り組立てちりよけ付きの6種類が 規定されていますが、各メーカよりこれ以外のタイプが販売されています。 オイルシールの構造 名 称 各 部 の 働 き リップ先端部 リップ先端部はくさび状をなし、先端部を軸表面に押し 付けて、流体を密封します。 ダストリップ ダストリップは補助的に付けられたダストの侵入を防止 します。 ばね リップ部の押し付け力を高め、その押し付け力を維持す る役割 はめあい部 ハウジング穴に固定するとともに、オイルシール外面と ハウジング内面との接触面の漏れを防止します。 金属環 オイルシールとハウジング穴とのはめあい力を維持す る役割と、シールリップを定められた位置に保持します。 3 オイルシール (密封機構) 密封機構 オイルシールのリップ先端部はくさび状の断面形状になっており、スプリング力とオイルシー ルのシメシロによって軸表面を押し付けて流体を密封しています。 リップ先端部と軸との接触幅は0.2~1mm位で非常に小さい。 オイルシールの向きを逆に取付けると漏れが発生し密封機能を発揮しません。 リップ先端部の大気側に液体を落とすと、液体側に吸込まれる作用が見られます。 これは、リップ面にポンピング現象が起こっていると言われています。 接触部の拡大図 4 2 オイルシール ゴム材質 (ゴム材質の特徴) ニトリルゴム (NBR) アクリルゴム (ACM) シリコンゴム (VMQ) フッ素ゴム (FKM) 60~80 50~90 60~80 50~80 耐油性 ◎ ◎ ○ ◎ 耐アルカリ性 ○ × × △ 耐酸性 ○ △ △ ○ 耐水性 ○ △ △ ○ 耐候性 △ ◎ ◎ ◎ 耐摩耗性 ◎ ◎ ○ ◎ -40~120 -60~150 -60~225 -20~250 耐油・耐熱・対候 性は優れている。 耐アルカリ・耐水 性は劣る 耐熱・耐寒・耐候 性が最も優れて いる。耐アルカリ・ 耐水性は劣る 耐熱・耐水性に優 れている。 かたさ(デュロメータ) 使用温度範囲(℃) 鉱油系の油に耐 油性があり、広く 使用される 特 徴 ◎:耐性があります。 ○:特定の場合を除き耐性があります。 △:特定の場合を除き耐性がありません。 ×:耐性がありません。 オイルシール 5 (取り付け部) 軸の仕上げ 1.表面粗さが粗いとも摩耗しやすくなるので、0.8~2.5μRzとします。 2. 軸の仕上げは、機械加工目のない研磨仕上げとします。 (旋盤の加工のような目がねじ状になっていると漏れが発生します。) 3.オイルシールのリップが接触する表面は、軸の摩耗防止のため硬度30HRC 以上とします。 オイルシールの偏芯 軸の回転中心とリップ内径の中心の狂いがあると漏れが発生します。 左図はNOK製オイルシール S型T型の振れの許容値を示します NOK HPより 6 3 オイルシールの組立 オイルシールを組み込み時に、傷が入ったり、変形すると必ず漏れが発生します。 組立時に傷・変形しないよう治具を使って組立してください。 リップ部の防止 1.軸にオイルシールを挿入するとき、軸端で傷を作らないように、軸端には必ず 面取りをします。 2.キー溝、油穴がある場合は、治具を使用して傷が付かないようにします。 (治具が取付けができないところは、角部にアールを付けて傷防止します。) 3.リップ部には、潤滑油かグリスを塗布して滑りを良くして軸を挿入します。 Ra3.2 治具 7 オイルシールの組立② 良 い 例 悪 い 例 組み込み治具 治具の径が小さい 押す位置が悪い 傾くと外形がむしれる 8 4 オイルシール (グリスの場合のオイルシールの向き) 油の時向き グリスの時の向き 油側 グリス側 大気側 大気側 グリスの場合は液圧が掛かったときに 漏れるようにオイルシールを取付けます。 漏れないとグリスの圧力でオイルシール が外れます。 9 Oリング (密封機構) 溝の中で圧縮してシールするものをスクイーズタイプ(つぶし代を与える)のシールと 呼んでいます。スクイーズタイプのシールの代表がOリングです。 密封原理 Oリングは、押しつぶすことにより発生する応力によって密封しています。 流体圧力が作用すると、Oリングは反対側の溝の壁に押し付けられ、接触面の 圧力が上昇して漏れを防止します。 シールをさせるためには、取付けたときにある程度のつぶし代があればよく、理論的 には、いくらかでもつぶし代があれば良いことになる。しかし実際は理論的な平面 が得られにくいのでカタログ値のつぶし代が必要です。 10 5 Oリング (材質) JISには、一般工業用(シリーズG)、精密機器用(シリーズA)、一般機器で 運動用(P)、固定リング用(G)及び真空フランジ用(V)の5種類が規定され ています。 運動用は、ねじれ防止のため固定用に比べて径が太くなっています。 材料別種類 材料別 種類 材料の記号 備 考 ニトリルゴム(NBR) 1種A又は1A 耐鉱物油用で硬さA70のもの ニトリルゴム(NBR) 1種B又は1B 耐鉱物油用で硬さA90のもの ニトリルゴム(NBR) 2種又は2 耐ガソリン用 スチレンブタジェンゴム(SBR) エチレンプロピレンゴム(EPDM) 3種又は3 耐動植物油用 シリコーンゴム(VMQ) 4種C又は4C 耐熱用 フッ素ゴム(FKM) 4種D又は4D 耐熱用 11 Oリング (バックアップリング) バックアップリング 流体の圧力が高い場合、Oリングが変形してはみ出し現象が起こります。 油圧などの高圧を使用するときには、これを防止するためバックアップリングを 使用します。 バックアップリングは、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)で 製作されており、エンドレス・バイアスカット・スパイラルの 3種類があります。エンドレスが耐圧が高い。 バックアップリング 12 6 Oリング (組立) Oリングを組立てる時は、オイルシールと同じように傷を付けると必ず漏れが発生します。 装着時に穴の角部での噛みこみ、ねじ部による傷と等による傷防止が必要です。 Oリングには、油又はグリスを塗布して滑り易くして組立てます。 13 メカニカルシール JISでは、『メカニカルシールの基本構造は、シール面の摩耗に従い、ばねなどに よって軸方向に動くことができるシーリング、及び動かないメイティングリングからな り、軸にほぼ垂直な相対的に回転するシール端面において流体の漏れを制限する 働きをもつもの』と定義されています。 高速回転している機械部品に、流体を送るときに使用します。 軸とともに回転するリングを回転環、回転しないリングを固定環と言います。固定環 とケーシングの間のシールと、回転環と軸との間のシールを2次シールと言います。 主要構成材料 摺動材:カーボン、シリコンカーバイト、超硬合金 二次シール材:NBR、FKM、FFKM、PTFE 金属材:SUS316、チタン、 14 7 非接触シール 非接触シールとは、軸などの運動用とケーシングなどの静止側の双方が、固体 接触しない範囲すきまを極力少なくすることによって漏れ量を少なくするか、 あるいは漏れを止める密封装置を言います。 下図に非接式シールの種類を示します。 15 非接触シール (ラビリンスシール) ラビリンスの原理は、シール流体が高圧側から狭いすきまを通って広いすき まに入る過程で、エネルギーを消失させるものである。いわゆるラビリン ス効果といい、この繰り返しによって、圧力を漸次減少させていく。簡単 なものから、まさに迷路(ラビリンス)のように複雑なものもある。 アキシャルラビリンス ラジアルラビリンス ラビリンスすきま 軸径mm 密封効果を増すためにラビリンス 通路のすきまは、運転中に接触し ない最小すきまが望ましい。 すきまmm ラジアル方向 アキシャル方向 ~ 50 0.2~0.4 1.0~2.0 50~200 0.5~1.0 3.0~5.0 16 8 非接触シール (ねじシール) ねじシールは、ビスコシールと呼ばれ、回転時の流体粘性によるポンピング 作用を利用したシールです。 流体の回転方向により、右ねじにするか左ねじにするかを決めます。反対に すると、漏れが発生します。 回転時の漏れ量は、ラビリンスよりも少ないことが可能ですが、停止時は密 封作用がありません。 17 非接触シール (油溝、フリンガー) 1.油溝 油溝形式は、軸とハウジングとの小さなすきまに数本の溝によって密封作用を行う。 溝幅3~4mm、深さ4~5mm、通常3本以上つけます。 油溝だけでは効果が薄いのでラビリンスやフリンガーと併用することもあります。 2.フリインガー 軸に取り付いた回転体の遠心力によって油漏れを防止します。 フリンガー 油溝 ハウジング側だけに溝 ハウジング・軸に溝 18 9
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