Ⅱ 選挙運動

Ⅱ
選挙運動
選挙運動とは … ①特定の選挙において
②特定の候補者を当選させるために
③選挙人に働きかける行為
スポーツにルールがあるように、選挙にも一定のルールがあります。選挙運動に従事
する者は、そのルールを守り、明るい選挙を行わなければなりません。
□ 候補者が行う選挙運動
候補者が行う選挙運動には、次に掲げるようなものがあります。
① 選挙事務所の設置
② 選挙運動用ハガキの使用
③ 選挙運動用ポスターの掲示
④ 新聞広告
⑤ 街頭演説及び連呼行為
⑥ 選挙運動用自動車及び拡声機の使用
⑦ 個人演説会
⑧ 幕間演説
⑨ 個々面接
⑩ 電話による選挙運動
■ やってはいけない選挙運動
以下に掲げるものは全く禁止されている選挙運動です。
① 戸別訪問
② 署名運動
③ 飲食物の提供
④ 気勢を張る行為
⑤ 選挙後のあいさつ行為
⑥ 人気投票の公表
以下に詳細内容を記載しますが、その方法、あるいは数量や規格等については選挙の種類
によって異なるので注意が必要です。
-8-
1 選挙運動の期間
【い
み】
選挙期日の告示があり、立候補の届出を済ませると同時に選挙運動が開始され、原則とし
て投票日の前日まで選挙運動はできます。
【かんどころ】
選挙運動ができる期間は立候補の届出をしてから投票日の前日までです。
(法 129)
立候補を決意したら直ちに選挙運動に着手したいのは人情です。しかし、立候補届出前の
選挙運動(事前運動)は禁止されており、選挙運動の準備行為のみ可能です。
(P5 Ⅰ5参照)
ただ、そのような行為とあわせて投票獲得の意図があるときは、事前運動となります。
例外として、次の選挙運動は、投票当日でもできます。
(法 132 143 ⑤ ⑥ ⑦)
(1)投票所から 300 ㍍以上離れた区域に選挙事務所を設置すること。
(2)
(1)の選挙事務所を表示するために、その場所でポスター、立札及び看板の類を通
じて 3 個、並びにちょうちんの類 1 個を掲示すること。
(3)選挙運動用ポスター(5 号ポスター)をそのまま掲示しておくこと。
【たとえば】
◇ 投票日前日は、午後 12 時まで選挙運動ができますが、街頭演説や選挙運動用自動車上
での連呼行為には制限があり、午後 8 時以降はできません。
◇ 投票日に、特定候補者を支持している団体等が、自動車等で棄権防止を呼びかけるこ
とは、特定の候補者の当選に資するためと認められ、違反となる場合が多いといえます。
◇ 選挙運動期間中、適法に掲示したポスターを投票日に貼りかえることはできません。
(ただし、投票日の前日までは貼りかえることができます。
)
2 選挙運動を禁止される人
【い
み】
選挙運動は本来、自由に行えるものですが、適正な選挙の管理執行上、次に掲げる者は選
挙運動が制限されています。
【かんどころ】
(1)公務員の選挙運動の禁止(法 135 136)
① 選挙事務関係者
選挙長・投票管理者・開票管理者(関係区域内)
ただし、選挙立会人、投票立会人及び開票立会人には、この
制限はありません。
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② 特定公務員
次の者は、在職中、選挙の種類また職務の区域に関係なく選
挙運動が禁止されます。
・選挙管理委員会の委員及び職員
・裁判官 ・検察官
・会計審査官
・公安委員の委員
・警察官
・収税官吏及び徴税の吏員
③ 一般職に属する公務員
次の公務員は、国家公務員法、地方公務員法、教育公務員特
例法等により政治的行為(選挙運動含)が禁止されています。
・一般職の国家公務員※1
・一般職の地方公務員(一定の地域内※2)
・国立学校・公立学校の教育公務員
※1 顧問、参与、委員、会長、評議委員等で臨時または非常勤の者を除く。
※2 その職員の属する地方公共団体の区域。例外として、地方事務所の職
員については所管区域
(2)その他の者の選挙運動を禁止(法 137 の 2 137 の 3)
① 未 成 年 者
満 20 歳未満の者。ただし、選挙運動のための労務に使用する
ことは差し支えありません。選挙運動と労務の区別は、社会
常識によって判断するよりほかありませんが、一般的には選
挙事務所での湯茶の接待やハガキの宛名書きのように単純労
務であり、演説や連呼行為のように選挙人に直接働きかける
行為は、たとえ与えられた原稿をそのまま読み上げるに過ぎ
ないものであっても選挙運動となります。
② 選挙犯罪者
選挙権、被選挙権を停止されている者
【たとえば】
◇ 市長、助役は特別職の公務員であるため一般の選挙運動は自由ですが、その地位を利
用して※3 選挙運動をすることはできません。
◇ 選挙運動用ポスターに知事を推薦人として記載することは、単に推薦人として通常の
方法で記載する限り、差し支えありません。
◇ 推薦状等に単に職名を通常の方法で記載するだけでは直ちに地位利用とはいえません。
◇ 未成年者を単に選挙運動用自動車の運転手として使用することは差し支えありません。
◇ 学校の校長がPTA会長に投票の取りまとめを依頼する行為は違反であり、また依頼
を受けた会長が児童、生徒の父兄に投票を依頼する行為は学校長が会長に依頼した内容
いかんにおいては、学校長と共謀であると認められ、違反となります。
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※3 地位利用による選挙運動の禁止
「地位利用」とは、公務員等がその地
位にあるがために、特に選挙運動を効果
豆 知 識
的に行い得るような影響力または便益
公務員等
国または地方公共団体の
労務または業務に従事する身分的
契約関係にある者をいい、その職務
内容が単なる労務の提供であろう
と、常勤、非常勤であろうと、また
一般職、特別職であろうとすべて含
まれます。
を利用する意味であり、その職務上の地
位と選挙運動または選挙運動類似行為
が結びついて行われる場合をいいます。
これに該当する場合を例示すると次
のとおりです。
ア 補助金・交付金の交付、融資の斡
旋、物資の払下げ、契約の締結、事
業の実施、許可、認可、検査、監査
その他職務権限を有する公務員等
教 育 者
学校教育法に規定する学
校(幼稚園、小中学校、高校、大
学等)の教員で国立、公立はもと
より私立の学校の職員も含まれ
ます。なお、専修学校、各種学校
の教員等は含まれません。
が、関係者や関係団体に対し、その
職務権限に基づく影響力を利用すること。
イ 公務員等が部下または職務上の関係ある公務員等に対し、職務上の指揮命令
権、人事権、予算権等に基づく影響力を利用すること。
ウ 官公庁の窓口で住民に接したり、各戸を訪問する公務員等がこれらの機会を
利用して住民に働きかけること。
「地位利用による選挙運動類似行為」の例
ア ○○県○○部長が、職務上の関係ある団体に対し、特定候補者の推薦決議を
するように干渉すること。
イ ○○県○○部長が、職務上関係のある出先機関、関係機関に投票の割当てや
ポスター貼りを指示すること。
ウ ○○県○○部長が、外郭団体及び所属職員等に特定候補者の後援会に参加す
ることを要請すること。
エ 外郭団体、関係団体等の発行する広報・機関紙を用いて特定候補者のための
記事を掲載し、またはさせること。
オ 公有管理する橋梁、公営住宅、電柱等に選挙運動用ポスターを掲示すること
を許可するに際して、特定候補者のみに有利または不利になるようにすること。
「教育者の地位を利用する選挙運動」とは
教育者が、その地位に伴って有する児童、生徒、学生に対する影響力を利用して
行う選挙運動をいいます。直接、児童、生徒等を選挙運動に従事させる場合はもち
ろん、これらの者の両親あるいはPTA等に働きかける場合も含みます。
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3 選挙運動のための事務所・自動車・拡声機等
【い
み】
選挙運動を行うためには、運動の場所的中心として選挙事務所が必要であり、また選挙人
に対して事務所の存在を知らせることは大いに意義があります。しかし選挙運動費用の軽減
等の趣旨から一定の制限が加えられています。
【かんどころ】
(1)選挙事務所を 1 か所設置できます。
選挙事務所を設置した候補者または推
薦届出者は、直ちに文書で、市長及び市
豆 知 識
立札・看板の類
議会議員選挙にあっては市選挙管理委員
会に届け出なければなりません。
また、選挙事務所を異動したときも、
設置と同様に直ちに届け出なければなり
ません。この場合、1 日につき 1 回を超
えて異動することはできません。
選挙事務所には、その表示のために、
ポスター、立札、看板の類(350cm×100cm
以内)を通じて 3 個、ちょうちん(高さ
85cm×直径 45cm 以内)1 個を掲げること
立札…一般にその構造上、独立して立てる
かまたは施設や物件等に立てかけ
られるもの
看板…施設や物件等に比較的固定的にと
りつけられるもの
したがって同一のものであっても、その
使用の場所や方法によっては、立札と
も、看板ともみられるのであって、結局
は個々具体の場合について常識的に判
断しなければなりません。「類」とはプ
ラカード、横断幕等であってその使用方
法からみて、立札、看板に類するものと
認められるものを言います。
ができます。
(2)選挙運動用自動車を 1 台使用できます。
使用できる自動車については制限があるので注意が必要です。また選挙運動用自動
車には、表示旗が交付されますので、これを掲出しなければなりません。
自動車には、ポスター、立札及び看板(273cm×73cm 以内)並びにちょうちん(高
さ 85cm×直径 45cm 以内 1 個)を掲げることができます。
乗車できる人数は、候補者、運転手(1 人に限る)のほか、乗車用腕章をつけた運
動員 4 人までで、この腕章は街頭演説の
時も使えます。走行中の自動車の上では
選挙運動はできませんが、連呼行為及び
停止している車上での選挙運動のための
演説はすることができます。
(3)選挙運動用拡声機を 1 台使用できます。
1 台とはマイク 1 個とスピーカー1 個及
びこれに必要な増幅装置をいい、交付さ
れた表示旗を掲出しなければなりません。
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豆 知 識
連 呼 行 為
短時間に同一の内容の短い文言を連続
して繰り返し呼称することです。連呼でき
るのは個人演説会の会場、街頭演説の場
所、選挙運動用自動車の車上(午前 8 時∼
午後 8 時までの間のみ)に限られます。
【たとえば】
(1)立体感を伴うもの
既設の構築物に取り付けた結果そのように
千曲明選挙事務所
きませんので注意が必要です。
千曲明選挙事務所
千曲明選挙事務所
は通じて 3 個までとされており、次のものは使用で
○○市議 会議員 候補者
◇ 選挙事務所を表示するポスター、立札、看板の類
なるものはやむを得ないが、当初からそのよう
に作られた場合、円筒形のものや、裏側に木枠
を設ける等により立体感を出していると認め
千曲明選挙事務所
られる場合は使用できません。
(2)数個のポスター、立札、看板の類を利用して
千曲明選挙事務所
全体として別の効用をもたせるものや、数個を
あわせて 1 つの効用を有するものは使用できま
千曲明選挙事務所
せん。
(3)立札、看板の類の照明
① 文字の部分を切り抜いて夜間のみ
裏側から照明する場合
② 電燈を点滅させる場合
③ 上下、左右を交互に点滅させる場合
単なる照明程度であれば差し支
えありません。
単なる照明以上の効果を出す場
合には電光による表示に該当し
禁止されます。
点滅させない場合でも単なる照
明の態様をこえるものであるか
ら使用できません。
④ 豆電球等でフチどる場合
◇ 休憩所その他これに類似する設備は、選挙
運動のために設けるものであれば、選挙運動
員、労務者の用に供すると、選挙人のために
設けるとを問わず、一切禁止されます。
◇ 自転車、原動機付自転車、リヤカー等の使
用は自由ですが、立札、看板、ポスター等を
取り付けて使用することはできません。
◇
自動車に取り付けて使用できるポスター、
立札、看板の類には数・記載内容の制限はあ
りませんが、規格内のものを 2 枚並べて 1 の
看板として使用する場合等は、この 2 枚を合
わせた大きさが規格内でなければなりませ
ん。
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豆 知 識
選 挙 事 務 所
選挙事務所とは、特定候補者の選挙運
動に関する事務を取り扱うところです。
選挙運動に関する事務を取り扱うと
は、ある程度、継続的かつ各種の事務を
総合的に取り扱うことをいい、単に 1 回
限り演説の打合わせをするとか、選挙運
動用文書図画を保管するにすぎないよ
うな場合には、それらの場所は選挙事務
所とはいえません。
しかし、名称が選挙対策本部等になっ
ていても、その実質が特定候補者のため
の選挙運動に関する事務を取り扱って
いるようなものは、選挙事務所に該当し
ます。
◇ 映画館等で「○○候補者がおりましたら表玄関まで・・・」というようなアナウンス
を計画的に繰り返し行えば、特定候補者の選挙運動と認められる場合があります。
◇ 選挙事務所を表示するため、
事務所の 2 階から懸垂幕をたらす場合、
規格制限
(縦 350cm
×横 100cm)以内のものであれば差し支えありません。
4 文書図画による選挙運動
【い み】
文書図画による選挙運動は、選挙人の視覚に訴
豆 知 識
えて自分の主義主張を伝達する重要な手段です
文 書 図 画
が、これによるものは、特に認められたもののほ
一般的には物体に記載された意思の
表示で、文字その他の発音符号によって
表示されたものを文書といい、象形によ
って表示されたものを図画といいます。
選挙運動のための文書図画の範囲は
社会通念上のそれよりはるかに広く、書
籍、新聞、雑誌、名刺、書状、ポスター、
看板、ちょうちん、プラカードはもちろ
ん、スライド、映画、ネオンサイン、電
光文字、通路等に書かれた砂文字、磁気
ディスク等に記録された情報をディス
プレイ表示したもの等すべて文書図画
に含まれます。
かは禁止されています。
これは文書による選挙運動が、演説による運動
に比べて、多くの経費を要することから、ポスタ
ー貼りの競争が行われたり、各種の印刷物が配ら
れたりすることになると費用も増し、選挙が金に
よって支配されるおそれがあるからです。
【かんどころ】
(1)配布できるもの
① 通常ハガキ
頒布できる文書図画は、特定の通常ハガキのみです。頒布の方法は、
「候補者用通
常葉書使用証明書」を選挙運動期間中に、郵便局に提示して差し出します。
(郵便ポ
ストへ投函しても配達されませんので注意が必要です。
)
選挙の種類
知
枚
事
県 議 会 議 員
数
選挙の種類
45,000 枚 市
枚
数
長
8,000 枚
8,000 枚 市 議 会 議 員
2,000 枚
(2)掲示できるもの
① 選挙事務所を表示するため、その場所において使用するポスター、立札、看板の
類(350 ㎝×100cm 以内。通じて 3 個)及びちょうちんの類(高さ 85cm×直径 45cm
以内。1 個)
② 選挙運動のための自動車に取り付けて使用するポスター、立札、看板の類(273cm
×73 ㎝以内。数の制限なし)及びちょうちんの類高さ 85cm×直径 45cm 以内。1 個)
③ 候補者が使用するたすき、胸章及び腕章の類
候補者が身に着けて使用する限り数、規格、記載内容に制限はありません。
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④ 個人演説会で開催中使用するポスター、立札、看板の類(273cm×73 ㎝以内 数
の制限なし)及びちょうちんの類(高さ 85cm×直径 45cm 以内 1 個)
⑤ 選挙運動用ポスター
ポスターの規格はタブロイド型(長さ 42 ㎝×幅 30 ㎝以内)で記載内容には制限
がなく、演説会の告知、政策の宣伝や直接投票依頼のため等に使用できますが、そ
の表面に掲示責任者及び印刷者の住所、氏名が記載または印刷されていなければな
りません。また、掲示は、市選挙管理委員
会が設置する公営ポスター掲示場に限られ
ます。
豆 知 識
ポスターの掲示
⑥ 個人演説会告知用ポスター
規格は長さ 42 ㎝×幅 10 ㎝以内で、知事
選挙に限り公営ポスター掲示場に貼って使
用することができ、選挙運動用ポスターと
合わせて作成し掲示することもできます。
個人演説会告知用のものですから、単に政
策のみを記載したり、候補者の氏名のみを
記載することはできません。
掲示する際は、居住者または管理者
あるいは所有者の承諾を得なければ
なりません。
特に国、地方公共団体が所有または
管理するものに掲示することはでき
ません(ただし、橋梁、公営住宅等は
承諾を得れば可能)
。したがって、公
道に支柱を用いてプラカードをたて
てこれにポスターを貼付して掲示す
ることはできません。
(3)掲載できるもの
① 新聞広告
候補者は選挙運動期間中 2 回に限り、有料で新聞広告ができます。
(法 149④)
ア 掲載方法
広告スペースは横 9.6 ㎝、縦 2 段組以内で記事下に限られ(色刷り不可)
、広告
原稿は立候補届の際交付される「新聞広告掲載証明書」を添えて新聞社へ提出し
ます。
イ 他の広告との関係
上記に掲げた新聞広告以外は一切禁止されているほか、あいさつを目的とした
有料広告も禁止されており、違反したときは処罰されます。
② 選挙公報
選挙管理委員会が発行し、各世帯へ配布します。
(4)禁止を免れる行為
選挙運動期間中は、いかなる名義であっても、前述以外の文書図画を頒布または掲
示することはできません。
また、文書図画の頒布または掲示の禁止を免れる行為として、著述、演芸等の広告
等で、候補者の氏名やシンボルマーク、政党その他の政治団体の名称、または候補者
を推薦し、支持しもしくは反対する者の名を表示する文書図画を頒布し、または掲示
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することができません。
ただし、これは禁止を免れる目的でない文書図画の頒布、掲示まで禁止するもので
はなく、例えば、医者が候補者となった場合、従前から掲示されている医院の立看板
はそのまま掲示しておくことができます。
(法 146① 243)
【たとえば】
◇ ポスターの貼り方は 1 枚 1 枚が独立したポスターであれば、それを何枚並べて貼って
も構いません。しかし数枚組み合わせて始めて一つの意味を表すような使用方法は許さ
れていません。
千
曲
太
郎
◇ 選挙運動のためにアドバルーン、ネオンサイン等による表示、スライドまたはプロジ
ェクタ等の方法による映写をすることはできません。しかし、看板を照明するために電
灯を利用したり、看板の文字を夜光塗料で書いたりすることは差し支えありません。
◇ 選挙運動のために回覧板その他の文書図画または看板(プラカード等含む)の類を多
数の者に回覧させることは禁止されています。例えば、選挙運動用自動車以外の自動車
に候補者の氏名を記載したポスターを掲示して走行することはできません。
◇ 病院の待合室等に「○○先生の当選を祈る」というビラを掲示することは投票を得る
目的のために掲示されたものとして違反になります。
(会社の事務室等であっても同様)
◇ 居住者の承諾を得ないで塀にポスター(政治活動用)を貼った場合、その家の人が勝
手にポスターをはがしても選挙妨害にはなりません。
◇ 候補者がその著述した書籍について新聞またはポスター等を使用して広告した場合、
純粋な書籍の広告ではなく、禁止を免れる行為として行ったと認められる場合は違反と
なります。
◇ 選挙運動用ハガキを候補者から預かって、自分の名前でその候補者の推薦文を記載し、
候補者を通してこれを郵送することは差し支えありません。
◇ 選挙運動期間中、候補者の氏名または候補者の推薦届出者、その他選挙運動に従事す
る者、もしくは候補者と同一戸籍内にある者の氏名を表示した年賀状、寒中見舞状、暑
中見舞状、その他これに類似するあいさつ状を候補者の選挙区内に頒布したり掲示した
りすることは、脱法文書とみなされて選挙運動の目的の有無にかかわらず処罰されるこ
とになりますので十分注意が必要です。類似するあいさつ状には、転退任あいさつ状や
開店あいさつ状のように社会観念として通常行われているものも含まれます。
◇ 単に事務連絡のために使用する場合には、FAX、ハガキ、書状であっても文書頒布
の制限は受けません。事務連絡とは、選挙事務所や個人演説会場の借入れの交渉、応援
弁士の依頼、開票立会人等に就任してもらうことの交渉等をいいます。
◇ 候補者を激励するため、候補者に手紙を出すことはできます。
◇ 新聞広告の内容については制限がなく、また数名の候補者が連名で広告することもで
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きます。ただし、連名で広告した場合、回数は各人につき 1 回と数えられ、スペースも
1 人分のスペースしか使えません。
◇ 選挙運動のために頒布できる文書図画は選挙運動用ハガキに限られるので、街頭演説
の場所等で候補者の経歴、政見等を記載したビラ、チラシ等を配ることはできません。
◇ ポケットティッシュ等に候補者の氏名を入れて、街頭で配布することはできません。
5 言論による選挙運動
【い み】
候補者の人物、政見を有権者によく知らせることが選挙運動の本旨であるので、言論によ
る選挙運動については、特に弊害のあるもの以外は制限しないことが建前となっています。
【かんどころ】
(1)禁止されているもの
① 放送施設の利用
② 候補者以外のものが開催する演説会
③ 戸別訪問
(2)方法等について制限されるもの
① 個人演説会
公営施設及びその他の施設を使用して行う個人演説会の開催は候補者に限られ、
開催回数については、制限がありません。
公営施設とは、学校、公民館、県・市が管理する公会堂及び市選挙管理員会の指
定する施設をいい、候補者 1 人につき同一施設で 1 回(5 時間以内)は無料です。
開催しようとする場合は、開催予定日の 2 日前までに市選挙管理委員会に申し出る
ことが必要です。
なお、公営施設以外の施設(各区管理の公民館、民間の会議場等)を使用する場
合は、施設の管理者の承諾を得ればよく、その他特段の手続きは要しません。
個人演説会の開催中演説会場外に掲示するものは知事選挙を除き、ポスター、立
札または看板(273cm×73cm 以内のもの)を通じて 2 個、ちょうちん(高さ 85cm×
直径 45cm 以内のもの)1 個を掲げることができます。演説会場に掲示する文書図画
の表面には、掲示者の住所、氏名を記入し、演説が終了したら、直ちに撤去しなけ
ればなりません。
② 街頭演説
街頭で選挙運動をすることは、候補者はもとより、第三者が候補者のために演説
することも自由ですが、選挙管理委員会が交付する標記を掲げ、運動員は腕章をつ
けなければなりません。
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また街頭演説の時間は午前 8 時から午後
8 時までの間に限られます。なお、長時間に
わたり同一の場所にとどまって演説するこ
とのないよう努めなければなりません。
③ 連呼行為
連呼行為は、個人演説会の会場、街頭演
説の場所及び選挙運動用自動車の車上にお
いてする場合は認められています。なお、
豆 知 識
街頭演説と腕章
街頭演説を行う場所において選挙
運動に従事する者は、候補者 1 人に
ついて 15 人に限られ、これらの者は
立候補の際に選挙管理委員会から交
付される「腕章」を着用しなければ
なりません。
(内訳は、乗車用腕章 4
枚と街頭演説用腕章 11 枚)
学校、病院、診療所、療養施設の周辺にお
いては、静穏を保持するように努めなければなりません。
(3)禁止されないもの
まくあい
① 幕間演説
映画、演劇等の幕間、青年団、婦人会の集会、会社・工場の休息時間等に、そこ
に集まっている者を対象として候補者、運動員または第三者が選挙運動のため演説
することを幕間演説といいます。
幕間演説は自由に行えますが、あらかじめ聴衆を集めておいて、そこに出向いて
選挙運動の演説をすることはできませんし、公共の建物等禁止されている場所もあ
ります。
② 個々面接
スーパー、電車、バスの中あるいは道路等でたまたま知人等に会ったときに、そ
の機会を利用して選挙運動をすることをいうもので、自由に行うことができます。
③ 電
話
電話による選挙運動は自由に行えます。ただし、候補者、総括主宰者等が計画的
に電話による選挙運動を指示した場合は、この費用は選挙運動費用に算入すること
になります。
なお、電話を使って投票依頼する者は、選挙運動員とみなされ、報酬を支給する
ことはできません。
【たとえば】
◇ 個人演説会では、候補者本人はもとより、候補者以外の者でも演説することができま
す。また録音送致を使用して不在の候補者や応援者の演説を聞かせることも差し支えあ
りません。
◇ 第三者が 2 人以上の候補者の合同演説会を催すことは禁止されています。
◇ 街頭演説を行う場合は、標旗を掲げなければならないため、複数の場所で同時に街頭
演説をすることはできません。
◇ 国、地方公共団体の所有しまたは管理する建物(公営住宅以外)の中では、選挙運動
の演説を行うことはできません。
(ただし、公営施設の個人演説会を除く)
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また、電車、バス等の交通機関の中、停車場、
鉄道地内及び病院、診療所その他の療養施設で
豆 知 識
公共の建物での選挙運動
は何人も選挙運動の演説はできません。ただし、
電車の中で会った友人に投票を依頼することは、
単なる個々面接であり、行うことができます。
◇ 自宅や庭先、会社等に訪ねてきた人に、口頭
で投票を依頼することは差し支えありません。
◇ 選挙人を路上へ呼び出して投票を依頼するこ
とはできません。
◇ 通行頻繁な場所に 10 名くらい立ち、通行人に
対して小さな声で「○○候補に投票願います」
ということは、個々面接の限度を超えていると
国または地方公共団体の所有し、
または管理する建物(公営住宅以外)
の中で選挙運動のための演説及び連
呼行為をすることはできません。し
かし、これらの建物が公営施設使用
の個人演説会場となっている場合に
は、差し支えありません。
この公共の建物での演説等の禁止
は何人も、どのような名義をもって
するを問わず、選挙運動のために行
うことを禁止するものであり、幕間
演説として演説することも禁止され
ます。
考えられます。
◇ 有線放送電話による投票依頼は一戸一戸を呼び出して行う場合は差し支えありません。
しかし、有線放送電話には、いろいろの種類があり、送信の内容を二戸以上に同時に知
らせる結果となるものは使用できません。
6 戸別訪問の禁止
【い み】
戸別訪問とは、候補者または運動員が選挙人の家を訪ねて、投票を依頼したり、または投
票を得させないように依頼するような行為であり、これらの行為はすべて行うことができま
せん。
(法 138① 239)
【かんどころ】
戸別訪問は必ずしも選挙人の居宅を訪れる場合に限らず事務所、勤務先等を訪問した場合
も含まれます。1 戸しか訪問していない場合でも数戸を訪問する目的をもっていた場合は、
戸別訪問に該当します。
訪問とは必ずしも居宅内に入らなくても、軒先で面接する場合や訪問相手が不在であって
も、あるいは面会を拒絶された場合も訪問になります。
【たとえば】
◇ 選挙運動のために、戸別に演説会の開催または演説を行うことについて告知すること
や、戸別に特定の候補者の氏名または政党その他の政治団体の名称を言い歩く行為も、
戸別訪問に類似する行為とみなされて禁止されています。
(法 138②)
◇ 選挙人宅付近の路上へ、選挙人を連続して順次呼び出して投票の依頼を行えば、戸別
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訪問に該当します。
◇ 2 人以上の者が、それぞれ 1 戸ずつ訪問するとしても、相互に意思を通じて行えば戸
別訪問になります。
◇ 候補者が自己の居宅の所在地以外の区域の町内会の常会や部落会等の機会を利用して、
連続出席して「よろしく頼む」旨のあいさつをする行為も戸別訪問になります。
◇ 他の用件で選挙人宅を訪問した際、付随的に投票依頼する場合でも、連続してこのよ
うな機会を利用する目的で行われれば、戸別訪問になります。
7 飲食物の提供の禁止
【い み】
選挙運動に関して飲食物を提供することは、それがいかなる名義のものであっても、原則
として禁止されています。
(法 139 243)
【かんどころ】
投票依頼の目的があるかどうかに関わらず、例え
ば候補者が、選挙運動員や労務者に対して慰労のた
めに飲食物を提供する場合とか、第三者が選挙運動
の激励のために、いわゆる陣中見舞として候補者等
に飲食物を提供する場合も禁止されます。しかし、
湯茶及びこれに伴い、通常用いられる“お茶うけ”
豆 知 識
飲
食
物
料理、弁当、酒、ビール、ジュー
ス、菓子、果物等何ら加工をしなく
てもそのまま飲食に供し得るものを
いいます。
程度の菓子(せんべい、まんじゅう等)の提供は許
されています。
(1) 弁当の提供(法 139 197 の 2 令 109 の 2 129)
① 選挙の事務所における弁当の提供は立候補の届出後から投票日前日までの間に、運
動員と労務者に対して、選挙事務所で食事するための弁当及び携行するための弁当は
提供できます。応援弁士は運動員に、運転手は労務者に含まれますから弁当は提供で
きますが、陣中見舞いにきた選挙人等には、提供できません。
② 提供できる弁当の数は、候補者一人あたり 45 食に、告示から投票日前日までの日数
を乗じて得た数の範囲内です。弁当の価格については、市選挙管理委員会が告示した
弁当料の範囲内でなければなりません。
(H15.9.1 選管告示第 12 号)
(2)茶菓子等の提供
① 湯茶に伴い通常用いられる程度の菓子とは、例えば、せんべい、まんじゅう等「お
茶うけ」程度のものといえます。酒、サンドイッチなどは、もちろん菓子ではないか
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ら提供することはできませんが、菓子であっても高価な菓子は、ここにいう菓子には
含まれません。みかんやりんご程度の果物や漬物等も、通常用いられる程度をこえな
い限り、ここにいう菓子に含まれます。
【たとえば】
◇ 選挙事務所開きに酒、ビール等を振舞うこと
は飲食物の提供として禁止されます。
◇ 生の野菜や米は、そのまま食べられないので
それ自体、飲食物とはいえないが、しかし候補
者、運動員が投票を得るために選挙人に提供す
れば、利益供与となり買収行為となります。
◇ 運動員が飲食物の材料を持ち込み、加工して
提供した場合、材料を持ち込んだ運動員同士が、
自己の飲食に供するのは差し支えないが、第三
者に提供すれば違反となります。
◇ 立候補の届出前または投票当日においては、
選挙運動そのものが認められていないので、弁
豆 知 識
陣中見舞
候補者の選挙運動を激励するため
選挙事務所へいわゆる『陣中見舞』
と称して現金を持っていくことは禁
止されていません。
「現金」=「買収」
というイメージがありますが、候補
者が選挙区内の者に現金を贈ること
は絶対に許されませんが、選挙人が
支持する候補者の当選を期するため
に現金を持参することは差し支えあ
りません。
ただし、酒を持参することは、
「飲
食物の提供」となり禁止されていま
す。
当の提供はすべて禁止されています。
8 気勢を張る行為の禁止
【い み】
何人も、選挙運動のために気勢を張る行為をすることは禁止されます。
【かんどころ】
選挙人の耳目を集めるために、自動車を連ねたり、隊伍を組んで往来したりすること、サ
イレンを吹き鳴らすことチンドン屋を雇ってけん騒にわたる行為をすることはできません。
9 署名運動・人気投票の公表の禁止
【い み】
選挙に関し、投票を得る目的で選挙人に対し、署名運動をすること及び選挙に関する事項
を動機として公職に就くべき者を予想する人気投票の経過及び結果を公表することは禁止さ
れています。
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【かんどころ】
戸別訪問と同様、投票を依頼する趣旨の署名を収集することはもちろん、誰々には投票し
ないという趣旨の署名を収集することもできません。
また、署名収集の方法については署名簿を回覧して行う場合とか、街頭で署名を求める場
合、その他の方法のいかんを問いません。
人気投票の結果の公表とは、人気投票の最終の結果を公表するもの(経過公表を含む)で、
これを多数人の知り得る状態におくことで、新聞、雑誌、ラジオ、演説、ポスター、ビラ等
により公表することはすべて禁止されます。
【たとえば】
◇ 選挙運動期間中であっても、投票依頼等の目的のない署名運動を行うことは何ら差し
支えありません。ただし、条例の制定や解職等の直接請求のための署名収集は、一定期
間禁止されます。
◇ 選挙運動期間中に駅頭で「○○中学校移転反対」の署名を集める場合、それがある候
補者のスローガンと一致し、事実上署名を集めることがその候補者の選挙運動ともなる
ような場合は、署名運動禁止規定に該当します。
◇ 自治会が、その支持している候補者について、得票予想のアンケートを会員に対して
行い、その結果を自治会報に発表する等の行為は禁止されます。
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