資料1 国際電力パートナーシップ(IEP)における技術ロードマップの公表について 2009 年 12 月 18 日 電気事業連合会 電気事業連合会は、デンマーク・コペンハーゲンにおいて開催(12/7∼18)され ている国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)の会期中に、同会場において、 日本、米国、欧州、カナダ、オーストラリアの電気事業者団体で構成する国際電力 パートナーシップ(IEP)としてワークショップを開催し、IEP による初めての成 果である技術ロードマップ「電気事業における 2050 年に向けた低炭素化への取り 組み」を公表いたしました。 この技術ロードマップは、先進国における技術普及見通しに活用するだけではな く、途上国への技術提供・支援のガイドラインとしても利用し、今後、電力業界と してのセクター別アプローチに役立ててまいります。 <ワークショップの概要> 1.日 程 2009 年 12 月 15 日(火) 2.場 所 デンマーク・コペンハーゲン(ベラセンター) 3.出席者 電気事業連合会、米国エジソン電気協会(EEI)、欧州電気事業者 連盟(Eurelectric)、カナダ電気協会(CEA)、豪州エネルギー協会 (esaa)、各国の産業界・政府関係者・NGO など 60 名程度 4.概 1 2 要 テーマ(説明者) 主な内容 IEP ならびにロードマップ ・IEP 設立の経緯と目的の説明 の概要(欧州) ・利用可能な技術による 2020 年までの排出量削減は 限定的であるが、技術の拡大と電化促進により低炭 素化社会の実現を目指す 各国の低炭素化に向けた取 ・電力システムの再構築を含めた取り組み(オーストラリア) り組み(オーストラリア、 ・技術開発と電化促進による取り組み(カナダ) カナダ、欧州、日本、米国) ・2050 年カーボンニュートラル宣言(欧州) ・需要側の効率向上と電化促進への取り組み(日本) ・利用可能な技術の拡大による低炭素社会実現(米国) (参考)国際電力パートナーシップ(IEP:International Electricity Partnership)の概要 設立目的 先進国における気候変動問題、特に気候変動枠組条約(UNFCCC)会合に向けた意 見交換、先進国の電力セクターにおける共通認識の確認と共同発信、気候変動の 観点からの電力セクターとしてできることの探求(2008 年 10 月設立) メンバー 電気事業連合会、米国エジソン電気協会、欧州電気事業者連盟、カナダ電気協会、 豪州エネルギー協会および各団体に所属する電力会社など テーマ セクター別アプローチ、途上国への技術移転、技術ロードマップ、社会全体での 低炭素化など地球温暖化対策を中心とした各国の電力セクターに共通する事項 -1- <参考> 「電気事業における 2050 年に向けた低炭素化への取り組み」概要 1.要約 電気は我々の現代社会において不可欠なものである。実際に、日々の生活にお いて、電気を使わずにもたらされているものを探すのは困難である。医療、交通、 製造、情報、通信技術などの多くの分野における恩恵は、電気によってもたらさ れている。地球上における社会活動において、電気は経済成長を促進させ、生活 環境を向上させる手段として不可欠なものとなっている。 この報告書は、オーストラリア、カナダ、EU、日本、アメリカにおける電力 セクターの現状と電力の発送電分野における技術について分析したものである。 米国ジョージア州のアトランタにて、2008 年 10 月に開催された国際電力首脳 会議において、各電力の首脳たちは地球規模での将来の低炭素社会実現を目指し、 先進的電力技術を推進するための国際電力パートナーシップ(IEP)を設立した。 その中で、各電力の首脳たちは、電気が気候変動に対する解決策となり得ること を確信している。適切な移行期間があれば、新技術によって、全ての CO2 排出 源からの排出量を安定化させるという目的が達成可能になり、より積極的に技術 を適用していけば、2050 年までに CO2 排出量を 60∼80%削減可能であること に合意した。 この声明に沿った形で、この報告書においては低炭素社会実現に必要な技術や 政策について分析している。 本分析においては、2050 年までに低炭素社会を実現するために ・先進的な発変送電技術を通じて ・確かな低炭素エネルギー社会を実現する手段として、先進的な電力利用を顕 著に増加させることで ・現状維持シナリオと比べて、長期的に安価なエネルギーコストで ・以下の分野における実質的な投資へのインセンティブを与える政策をもたら す必要がある – 再生可能エネルギーの拡大、CCS、原子力の普及 – 最適な送配電ネットワーク – 電気自動車、ヒートポンプ、その他の効率的な電気利用技術の実用化 – 社会経済におけるエネルギーの効率的利用の普及 しかしながら、2025∼2040 年には大きな排出量削減が期待されるものの、 2020 年までの排出量削減は限定的であり、必要な技術が商業的に普及できる期 間を考慮した政策における時間軸が重要である。 2.序章 気候変動における科学的見地による時間軸と、適正な技術普及に要する時間軸 の双方を考慮することが必要である。科学的な削減目標の達成は、2050 年までの 発電における低炭素化と同時に、他の運輸、産業などにおける実質的な削減を伴 うことにより可能となる。また、電力はこれら他産業における実質的な削減にも 貢献することが可能である。 -2- 3.科学的見地 2005 年の化石燃料燃焼による CO2 排出量は地球全体の排出量の 85%であり、 IPCC によれば、今後 20 年間に温室効果ガス排出のピークを迎え、2050 年まで に 60∼80%削減することにより、大気中の温室効果ガス濃度を 450∼500ppm に 安定させ、地球全体の平均温度上昇を 2∼3℃に抑制することが可能としている。 4.各国の電力構造(日本のみ抜粋) 日本全体の電力消費量は急速な景気後退に伴い減少している。原子力や火力、 水力などのエネルギー源を組み合わせてバランスを保ちながらエネルギーのベス トミックスに取り組んでいる。 5.エネルギーの将来 IEA による World Energy Outlook 2009 における 450ppm シナリオによると、 発電における CO2 排出原単位は 2007 年と比べて 2020 年までに世界全体で 23% 削減する必要があり、2010∼2030 年の期間に、再生可能エネルギーを中心に累 計 66,000 億ドルの追加投資が必要である。 6.削減に向けた政策オプション 削減に向けた政策には、①エネルギーの多様性確保、②エネルギー安定供給、 経済性、環境保全の同時達成、③国情による違いの認識、④国民の理解とコスト 回収が重要である。また、MRV(計測、報告、検証可能)な政策であること、国 情に応じた目標設定、削減に向けた取り組みの手段として、自主目標、規制、経 済的手法などがあり、それらの組み合わせも必要である。 7.電力の低炭素化に向けたロードマップ(日本のみ抜粋) 日本については、電力業界として 2020 年度の 10 社計の CO2 排出原単位 0.33kg-CO2/kWh を目標とする。供給面では、2020 年度までに原子力を中心と する非化石エネルギー比率 50%、再生可能エネルギーではメガソーラーへの取り 組みや太陽光発電の新たな買取制度への協力、化石燃料利用の高効率化に取り組 む。需要面では、ヒートポンプの導入拡大など電化の推進に積極的に取り組み、 低炭素社会の実現を目指す。 8.消費側の効率向上 ヒートポンプ、電気自動車(プラグインハイブリッドを含む)等を活用する。 9.他セクターへの電化効果 他セクターにおける高効率電化機器の普及促進により、社会全体における CO2 排出削減が可能となる。発電における原単位の低減により、さらなる削減も期待 される。 10.再生可能エネルギー 経済性や環境面、社会的受容面から利用可能なエネルギーと期待されるエネル ギー源との間にはギャップが存在する。バイオマス、地熱、太陽光、水力、風力 発電について技術的進歩が期待される。 -3- 11.クリーン石炭技術 今後も世界における主要なエネルギー源として期待される石炭のクリーン、か つ効率的な利用に向けた IGCC、A-USC、流動床燃焼などの技術開発に取り組ん でいる。また、技術利用に必要な人材育成も重要である。 12.CCS 温暖化問題における解決策の一つとして期待される CCS については、地質構 造、移送手段などの国情を加味することが必要である。また、2020 年までに実現 することは困難であり、商業的に世界に普及するまでには技術確立から更なる年 数を要する。 13.原子力 原子力は、ライセンス、建設、運転、廃棄物管理、廃炉などにおいてリスクや 未知領域が存在するものの、エネルギーの安定供給の面から、発電における低炭 素の取り組みの重要な位置を占めている。短期的には、運転中のプラントの更な る活用と寿命延長が鍵となる。 14.天然ガス技術 世界で急速に普及しているガスコンバインドサイクルプラントは、様々なメリ ットがある。 15.送配電技術 今後も安定供給に向けた効率的な送配電網の構築が重要であり、分散型電源な どのもたらす影響、需要パターンに対応した送配電網の構築、運用が必要である。 今後もこの分野への投資が必要であると同時に、ソフトウェアとハードウェアを 適切に組み合わせつつ、効率的な運用を行うスマートグリッドによる総合的な運 用が重要である。 16.結論 以上の技術を活用することにより、2050 年までに低炭素社会を実現することは 可能である。しかしながら、2020 年までの排出量削減は限定的であり、2025∼ 2040 年において大きな排出量削減が期待される。 以 -4- 上
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