学校給食用小麦粉について

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学校給食用小麦粉について
平成14年4月より学校給食用小麦粉の取扱いが各都道府県の学校給食会に移
行され、独自に規格を定めてその小麦粉を供給しています。
小麦粉の品質規格について
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静岡県規格の小麦粉の検討は、関係機関のご協力を得て進め、地場産物や本県農林産業に
対する子供達の理解を深め、県内農産物の利用促進と県内食糧自給率の向上を図るため、外
国産小麦(アメリカ及びカナダ産)80%に※県産小麦を20%ブレンドしたものとしてい
ます。
なお、栄養内容の向上を図ることを目的としたビタミン B1 と B2 の強化は、今までの小麦
粉と同様に行っています。(品質規格は表1参照)
※県産小麦について
国内産小麦は外国産小麦に比べて皮部が厚いため、製粉歩留が低く、小麦粉の色も悪く、いわゆる製粉適正
が劣る傾向にあります。☆グルテンの量は少なく、その性質も軟らかいため、ほとんどがめん用粉原料として
使用されています。
本県では、これまで中生種の「農林 61 号」が生産され、学校給食用小麦粉には平成 14 年 4 月∼平成 22 年
3 月需要分まで使用していましたが、
「農林 61 号」の生産は平成 22 年をもって終了することが決定しており、
平成 22 年 4 月需要分(平成 22 年 3 月生産分)から県の新しい奨励品種「イワイノダイチ」を使用すること
になりました。
「イワイノダイチ」は早播きできる早生種で、梅雨前に収穫できます。「農林 61 号」に比べて倒伏しにくく、
耐湿性があり、多収、良質で、製粉性に優れ、灰分が低く、めんに加工した時の色は明るいクリーム色で食感
も良好とのことです。
県産小麦の生産量は、年間 2,000t程度で、畑麦ではなく稲作転換による生産により袋井市(旧浅羽町)、小
笠地区が主な産地となっています。(集約倉庫…掛川市、磐田市、袋井市(旧浅羽町))
☆グルテン
小麦粉中には、特殊なたんぱく質があって、水を加え捏ねるとそれが水を吸収して膨潤したうえ、絡み合っ
て、水に不溶のチューインガム様の粘り気と弾力のある「グルテン」を作ります。このグルテンによりうどん
がつながり、パン特有の細かい海面組織の骨組みができます。しかもこのグルテンの分量と性質によって骨組
みの性質が違うことにより、良いパンができたり、あるいはクラッカー向きになったり、ケーキに適した粉に
なったりします。つまりそれぞれ性格の異なった粉ができるのです。
表1
学校給食用小麦粉(静岡県規格)品質規格
たんぱく
(%)
灰 分
(%)
11.5±1.0
0.48±0.05
最 高
水 分
(%)
14.5
限 度
粒 度
(%)
2.0
最 低 限 度
強化ビタミン
B1(mg)
B2(mg)
0.60
0.30
附・ア たんぱくは 12.6%以上及び灰分は 0.43%未満の数値であっても合格とする。
イ 水分の最高限度は、10 月 1 日から翌年 3 月 31 日までの間については本表の数値に 0.5%を加算する。
ウ ビタミンの数値はいずれも小麦粉 100g 中の量を表したもので、B1はB1塩酸塩としての数値、B2
はリボフラビンとしての数値である。
オ 灰分値はビタミン強化に伴う数値が含められたものとする。
小麦粉の品質確保について
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本会が、製粉工場から購入する小麦粉について、本会が定める「学校給食用小麦粉(静岡
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県規格)品質規格規程」の品質規格を保持するために、財団法人日本穀物検定協会に委託し、
定期的に上記品質規格の確認を実施します。製粉工場には、製粉のロット毎に自主検査(※
ブラベンダーテスト)を義務付けて、小麦粉の品質の確保と向上を図ります。また、必要時
には製パン試験の実施を依頼します。
※ブラベンダーテスト
小麦粉を主原料とするパン等の二次加工製品の品質向上を図り、小麦粉の品質確保と向上を図ることを目的
として実施します。
小麦粉品質試験装置による小麦粉ねり生地の物性値を測定して検定します。
測定方法は次の 3 種類です。
ア)ファリノグラフ
小麦粉を一定の硬さの生地になるまで捏ね上げ、さらに捏ね続ける時の硬さの変化をグラフにより測定
する。
イ)エキステンソグラフ
一定の硬さの生地の伸張度及び伸張抵抗力を測定する。
ウ)アミログラフ
小麦粉の懸濁液を自動的に一定速度で加熱し、生じた糊の粘度の変化を測定する。
パンについて
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パンの製法について
新規格の小麦粉は、旧規格の小麦粉と比較すると、たんぱくの量が低下し、グルテンの性
質が若干異なるため、その特性に対応する製パン方法を検討する必要がありました。
製パン方法の検討については、パン組合,製粉工場の協力を得て、試作・検討を重ねた結
果、原材料の基本配合(表2に記載)を変えることなく、下記の【製パン時の注意点】を守
ることにより、県産小麦ブレンド粉の特性を活かした製品作りが可能になりました。
【製パン時の注意点】 … 旧規格の小麦粉使用時との比較
a)加 水 量: 3∼4%下げる。
b)ミキシング:ミキシング耐性が低下するため、オーバーミキシングに注意する。
(ミキサーの速度を
落として、時間も短縮する。
)
c)生 地 状 態:弾力性がやや弱くなり、重めの状態になる。整形時も、生地が伸びやすくなるので、
モルダー(生地を伸ばして巻く機械)の間隔は広めにする。
(生地を薄く伸ばしすぎな
い。)
d)ホ イ ロ:窯伸びがやや劣る傾向があるので、窯入れの前の最終醗酵時間をやや長め(40∼45 分
→45∼50 分)にする。
【焼き上げ製品の評価】 … 試作・検討時の評価:旧規格の小麦粉使用時との比較
a)色相がやや白い。
b)歯切れが良い。
(サクみがある)…食パンの耳が食べやすく、子供に好まれそう。
c)ソフトな食感でしっとり感があり、味には若干の甘みが感じられる。
d)パンのボリュームはやや小さくなる。
e)ロールパンや変形パンの形がきれいに仕上がる。
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パンの配合比率について
パンの配合比率については、文部科学省の定める基準を基に、県教育委員会が定める基準に
よるものを取扱っています。
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本県の配合基準は、表2に示したとおり文部科学省が定める配合比率の運用範囲(基準パン)
の上限値となっており、砂糖については上限値よりも 1%多い配合になっています。
表2
パンの基本配合割合(対小麦粉率)
材料名
文部科学省
が定める
配合基準
文部科学省が定める配合比率の
運用範囲
基準パン
多様化パン
100
小麦粉
100
静岡県基準パン
の配合基準
100
100
砂糖
3.5
2∼5
10 以下
6
ショートニング
3.5
6 以下
8 以下
6
脱脂粉乳
3.5
3∼4
2∼6
4
食塩
2
2 以下
2 以下
2
イースト
1.5
2∼3
2.5∼3.5
2∼3
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パンの種類及び規格について
県教育委員会が定める基準のパンとして、従来の食パン(角型、山型)及びロールパンに、
「変形パン(11 種類)」が追加されました。
基準のパンの基本配合割合に他の原材料を加えるパン(マーガリン入り、干ぶどう入り等)
は、本会が種類を定め「加工パン」という名称で取扱われます。基準のパンと組み合わせるこ
とにより、様々なバリエーションを組むことができます。
本県における小麦粉の標準使用量は文部科学省の「学校給食の標準食品構成表」に準じて定
められています(小学校:低学年 55g,中学年 65g,高学年 75g、中学校:85g)が、この基
準どおりに実施する場合に、従来の規格では組み合わせに無理が生じていました。(小学校低
学年,中学年はロールパンのみで食パンの規格がなく、中学校で食パンを使用する場合はロー
ルパンとの組み合わせが必要)
この問題について、パン組合と協議を重ねた結果、平成 15 年度 4 月からは食パンの 55g と
65g を規格化しました。
表3
パンの種類及び規格一覧
基
準
変
規格(小麦粉量)
30g
45g
形
の パ
パ ン
ン
種
類
食パン(角型)
食パン(山型)
ロールパン
バターロール型
ねじり型
うさぎ型
キャット型
ナン
うずまき型
リング型
ツイン型
8 の字型
丸型
二つ折型
55g
65g
加工パン規格
マーガリン入り
干ぶどう入り
黒糖入り
くるみ入り
ごま入り
コーン入り
角チーズ入り(二つ折型)
チーズ入り
緑茶粉入り
りんごチップ入り
玄米入り
みかんパウダー入り
メロンパン
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めんについて
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めんの製法について
県産小麦ブレンド粉の特性を活かした製品作りのため、めん組合,製粉工場の協力を得て、
試作・検討を重ねました。
原材料配合割合は、今までの製品の基本配合(表4に記載)を変えることなく、以下の 3
点を開発テーマとして給水量と茹で時間等を見直すこととしました。
①
評判の良い「ソフトめん」の食感が変わらないようにする。
②
「中華めん」と「うどん」の食感を良くする。
③
「ソフトめん」と「うどん」の差別化を図る。(見た目と食感)
なお、不必要な食品添加物は使用せず、喫食日当日に 80℃以上 30 分間の蒸熱殺菌を実施
することにより、安全で安心できる製品を供給するという考え方は今までと同様です。
【製めん時の変更点】 … 旧規格の小麦粉使用時との比較
a)「ソフトめん」については、給水量を少なめにし(30∼32%→30%)
、茹で時間は短くする。
(5∼7 分→4 分)
b)「中華めん」については、給水量を多めにし(30∼32%→32%)、茹で時間は短くする。
(1 分 45 秒→1 分 30 秒)
c) 「うどん」については、全ての工場で切出した麺の太さが一定になるよう、生地の厚みと切刃の番
手を指定した。
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めんの種類及び規格について
県教育委員会が定める基準のめんについて見直しが図られ、献立の多種類化のため「平うど
ん」が追加されました。
表4
めんの種類及び規格一覧
種
類
原材料配合割合(%)
ソフトめん
小麦粉
食塩
水
100
3.4
30
中華めん
小麦粉
かんすい
水
100
1
32
うどん
小麦粉
食塩
水
100
3.4
30∼32
平うどん
小麦粉
食塩
水
100
3.4
30∼32
規
格(小麦粉量)
70g、80g、90g、110g
60g、70g、80g、100g