『児童養護実践研究』第5号 論 文 児 童 養 護 施 設 か ら 児 童 自 立 支 援 施 設 へ 措 置 変 更 さ れ た 児 童 の 背 景 に あ る も の 〜 措 置 変 更 児 童 に 関 す る 全 国 調 査 か ら の 一 考 察 〜 遠 藤 洋 二 ( 関 西 福 祉 科 学 大 学 ) 和 文 要 約 児 童 養 護 施 設 か ら 措 置 変 更 さ れ た 児 童 の 全 国 調 査 を 行 っ た 結 果 、「 入 所 児 童 の 半 数 近 く が 、児 童 養 護 施 設 か ら 措 置 変 更 さ れ た 児 童 が 占 め る 児 童 自 立 支 援 施 設 も あ る 」 、「 措 置 変 更 児 童 の 6 0 % 以 上 が 、「 施 設 不 適 応 」 を 理 由 に 措 置 変 更 さ れ て お り 、一 般 家 庭 か ら 入 所 す る 児 童 と 比 較 し て 非 行 性 は 低 い 」、「 性 的 な 問 題 行 動 を 呈 す る 児 童 も 少 な く な い 」 、「 『 虐 待 → 施 設 不 適 応 → 措 置 変 更 』 と い っ た 文 脈 で 語 ら れ る こ と が 多 い が 、乳 幼 児 期 か ら 児 童 養 護 施 設 で 暮 ら し て い た 児 童 が 、『 思 春 期 の 壁 』を 乗 り 切 れ ず 、不 適 応 行 動 を 呈 し 措 置 変 更 と な る 児 童 が 被 虐 待 高 年 齢 児 よ り 多 い 」 な ど が 明 ら か に な っ た 。 措 置 変 更 そ の も の を 否 定 す る わ け で は な い が 、特 に 児 童 養 護 施 設 で 長 期 間 生 活 し て い る 児 童 の 措 置 変 更 は 、児 童 に と っ て 家 庭 の 再 喪 失 で あ る だ け に 、措 置 変更が真に児童の最善の利益を担保する措置となっているのかなどを慎重な 判 断 し た 上 で 実 施 さ れ な け れ ば な ら な い 。 キ ー ワ ー ド 児 童 養 護 施 設 児 童 自 立 支 援 施 設 措 置 変 更 施 設 不 適 応 1 . 研 究 の 背 景 ( 1 ) 児 童 自 立 支 援 施 設 へ 措 置 変 更 に な っ た 事 例 ( 注 1 ) 浩 二 ( 仮 名 ) は 、 精 神 疾 患 の 母 と 2 人 暮 ら し で あ っ た 。 母 か ら 十 分 な 監 護 を 受 け る こ とができず、幼児期から深夜徘徊等で度々保護されていた。保健師・民生児童委員な ど が 関 わ っ て い た が 状 況 は 改 善 せ ず 、 小 学 校 3年 生 の 時 に 、 母 が 不 在 で 家 に 入 れ な い と 自ら民生児童委員に助けを求めたことをきっかけとして一時保護となり、児童養護施 設に入所することとなった。人間関係の構築が苦手な浩二は、入所直後から他の入所 児童・小学校同級生と度々トラブルを起こし、施設職員・教師から叱責されることも しばしばであった。母や親族からの引き取りの話も何度か浮上したが、その度に立ち 消 え と な り 、 結 局 、 家 庭 引 取 り は 実 現 し な か っ た 。 中 学 校 2年 生 の 時 、 同 級 生 ( 男 児 ) に対して、自らの性器を舐めさせる行為が発生し、児童自立支援施設に措置変更とな -12- 『児童養護実践研究』第5号 った。児童自立支援施設入所後は、大きな逸脱行動は見られないものの、対人関係は 不安定で度々無断外泊し、その間に原動機付自転車・飲料等を窃取したとして逮捕さ れ 、 中 学 校 3年 生 時 に 初 等 少 年 院 送 致 と な っ た 。 浩 二 の 場 合 、 児 童 養 護 施 設 入 所 中 の 問 題行動は施設と学校に限定され、それも他の児童との人間関係上のトラブルが主要因 であった。些細な軋轢によって、身体的暴力を伴う行動化が見られた。施設職員や教 師が介入すると一旦は収まり、反抗的な態度をとることはないが、指導に対して内省 し、それを言語的に表現することも少なった。施設職員は、指導が特に困難な児童と は 認 識 し て い な い も の の 、 職 員 と の 情 緒 的 交 流 は 希 薄 で 、「 何 を し て も 響 か な い 子 」 と の 印 象 が 強 か っ た よ う で あ る 。 達 也 ( 仮 名 ) は 、 若 年 出 産 の 母 ( 父 は 不 詳 ) が 養 育 す る こ と が で き な い と し て 生 後 間もなく乳児院に措置され、そのまま併設の児童養護施設で育った。その間、数か月 間母が引き取ったこともあったが、すぐに養育を断念し施設に戻った経緯もあった。 中学校に入学する頃から、施設職員に対する反抗的な態度が目立ち、中学校でも授業 エスケープするなど、逸脱行動が頻発するようになった。施設職員に対して暴力を振 るうことはないが、無断で外出し、友人宅で寝泊まりするなどを繰り返していた。中 学 校 2年 生 時 に は 、 児 童 相 談 所 が 2回 に 渡 り 一 時 保 護 し 、 生 活 の 立 て 直 し を 図 っ た が 生 活は改善されず、無断外出中にコンビニエンスストアで菓子を窃取したとして逮捕、 観護措置後の審判で児童自立支援施設送致となった。達也は児童自立支援施設入所直 後から落ち着かず、無断外出を繰り返し、原動機付自転車を無免許運転したとして逮 捕され、初等少年院送致となった。達也も当初は、問題行動の発生場所は施設と学校 に限られ、非行性が高い児童とは認識されてはいなかった。しかしながら、施設が定 めるルール違反や特に女性職員への暴言等反抗的な態度が出現し、やがては、中学校 でも授業に出席せず校内をうろつくなど、不適応行動を繰り返すようになってきた。 施設に居場所を無くしたのか、同様に怠学傾向のある友人宅に泊まることもしばしば で 、 そ の 間 に 起 こ し た 窃 盗 ( 万 引 ) 事 件 で 逮 捕 さ れ る 結 果 と な っ た 。 両 事 例 に 共 通 す る の は 、 施 設 外 に お け る 非 行 性 は そ れ ほ ど 高 く な い も の の 、 施 設 や 学 校 で の 不 適 応 行 動 が 措 置 変 更 ( 注 2) の 背 景 に あ る こ と で あ ろ う 。 浩 二 の よ う に 性 的 暴 力 が 発 覚 し た 場 合 、 問 題 は さ ら に 深 刻 で あ り 、「 被 害 児 童 を 守 る た め 」 を 理 由 に 加 害 児 童 が 措 置 変 更 さ れ る こ と が 通 例 で あ ろ う 。 ま た 、 両 事 例 に 共 通 す る こ と は 、「 居 場 所 」 の不安定感である。保護者の監護能力の低さ故に児童養護施設に入所することとなっ たが、保護者は現実的な可能性に関わらず、引き取り要望と拒否を繰り返し、その度 に児童が振り回されることとなる。その結果、児童自身は本来の家庭にも、児童養護 施 設 に も 「 居 場 所 」 を 見 つ け ら れ ず 、「 安 心 で き る 基 地 」 を 喪 失 す る こ と に な っ た の で は な い だ ろ う か 。 本 事 例 を も っ て 、 児 童 養 護 施 設 か ら 児 童 自 立 支 援 施 設 へ の 措 置 変 更 の 現 状 と 課 題 を -13- 『児童養護実践研究』第5号 一般化することはできないし、また、措置変更の適否を判断することも適当とは思わ れない。しかしながら、両事例とも児童養護施設において、いわゆる「思春期の壁」 を乗り越えることができなかったこと、あるいは、本来であれば、児童の最善の利益 を保障するための措置変更が必ずしも十分な効果を生むことなく、結果的に、要保護 性が高く非行性が低い児童が福祉機関の手を離れ、司法、矯正機関に委ねられたこと は 事 実 で あ り 、 こ の よ う な ケ ー ス は 決 し て 稀 で は な い で あ ろ う 。 児 童 養 護 施 設 は 、「 保 護 者 の な い 児 童 、 虐 待 さ れ て い る 児 童 そ の 他 環 境 上 養 護 を 要 す る児童を入所させて、これを養護し、あわせて退所した者に対する相談その他の自立 の た め の 援 助 を 行 う こ と を 目 的 と す る 施 設 」( 児 童 福 祉 法 第 4 1 条 ) で あ る よ う に 、 一 義 的には児童の代替家庭としての役割を担っている。児童養護施設からの措置変更は、 児 童 に と っ て 家 庭 の 再 喪 失 で あ り 、「 捨 て ら れ 体 験 」 の 再 現 と も 言 え る だ け に 、 そ の 意 味 を 慎 重 に 判 断 し た 上 で 実 施 さ れ な け れ ば な ら な い 。 ( 2 ) 措 置 変 更 と 児 童 虐 待 厚 生 労 働 省 が 5 年 ご と に 行 っ て い る 児 童 養 護 施 設 入 所 児 童 等 調 査 に よ る と 、 児 童 自 立 支 援 施 設 へ の 入 所 児 童 の う ち 、 児 童 養 護 施 設 か ら 措 置 変 更 さ れ た 児 童 は 、 1997年 に は 9 . 0 % で あ っ た も の が 、2 0 0 2 年 1 3 . 2 % 、2 0 0 7 年 1 3 . 4 % 、2 0 1 2 年 1 4 . 1 % と 急 増 し て い る( 表 1 )。 問 題 行 動 等 に よ り 児 童 養 護 施 設 入 所 中 に 観 護 措 置 と な り 、 家 庭 裁 判 所 の 審 判 で 児 童自立支援施設送致となった児童の入所経路は家庭裁判所となっていることを考えれ ば 、 そ の 比 率 は さ ら に 高 ま る 。 表1:児童⾃自⽴立立⽀支援施設の⼊入所経路路別児童数 総 数 家庭 乳児院 養護施設 他の児童福 祉施設 里親家庭 家庭裁判所 ファミリー ホ ー ム その他 不詳 1,920 人 1,407 * 173 32 9 227 * 25 47 100 % 73.3% * 9.0% 1.7% 0.5% 11.8% * 1.3% 2.4% 1,657 人 1,082 * 218 48 12 282 * 14 1 100 % 65.3% * 13.2% 2.9% 0.7% 17.0% * 0.8% 0.1% 1,995 人 1,267 * 267 58 23 347 * - 33 100 % 63.5% * 13.4% 2.9% 1.2% 17.4% * 1,670 人 1,018 * 236 49 26 306 6 18 11 100 % 61.0% * 14.1% 2.9% 1.6% 18.3% 0.004 1.1% 0.7% 1997年 2002年 2007年 1.7% 2012年 ※「児童養護施設入所児童等調査(厚生労働省)」から筆者が作成 児 童 養 護 施 設 か ら 児 童 自 立 支 援 施 設 へ の 措 置 変 更 さ れ た 児 童 ( 以 下 、「 措 置 変 更 児 -14- 『児童養護実践研究』第5号 童 」。) が 増 加 し た 背 景 は 定 か で は な い が 、 2 0 0 0 年 に 制 定 さ れ た 「 児 童 虐 待 の 防 止 等 に 関 す る 法 律 ( 平 成 1 2 年 5 月 2 4 日 法 律 第 8 2 号 )( 以 下 、「 児 童 虐 待 防 止 法 」。) に よ り 、 多 く の 被 虐 待 児 童 が 児 童 養 護 施 設 に 入 所 す る こ と が 主 要 因 と 見 る 向 き も あ る 。 つ ま り 、「 児 童 虐 待 防 止 法 の 制 定 に よ り 、 様 々 な 課 題 を 抱 え る 支 援 困 難 な 児 童 が 児 童 養護施設に入所することとなり、児童養護施設が実施する援助の範囲を超えた児童が 児 童 自 立 支 援 施 設 に 措 置 変 更 さ れ る 」 と い っ た 文 脈 で あ る 。 鈴 木 ( 2 0 1 5 ) は 、「 入 所 児 童 の 中 の 反 応 性 愛 着 障 が い の 傾 向 や 、 生 来 的 な 発 達 障 が い のみならず、被虐待による影響で『発達障がい』的傾向を示す子どもが増加する等、 質 的 な 変 化 が 社 会 的 養 護 の 現 場 の 混 乱 に 拍 車 が か か っ て い る 」 と 、 厚 生 労 働 省 ( 2011) は 、「 児 童 養 護 施 設 で は 、 虐 待 を 受 け た 子 ど も は 5 3 . 4 % 、 何 ら か の 障 害 を 持 つ 子 ど も が 23.4% と 増 え て お り 、 専 門 的 な ケ ア の 必 要 性 が 増 し て い る 」 な ど と 、 被 虐 待 児 童 の 増 加およびそれに伴うものも含めた障がい児の増加を、今日の児童養護施設の困難な状 況 の 背 景 に 挙 げ て い る 。 統 計 上 は 入 所 児 童 全 体 に 占 め る 被 虐 待 児 童 の 割 合 は 増 加 し て い る が 、 児 童 虐 待 防 止 法制定以降、児童虐待の範囲は拡大し続けていることを忘れてはならない。例えば、 児 童 虐 待 防 止 法 が 制 定 さ れ て か ら 4年 後 の 2004年 に は 、 保 護 者 の み な ら ず 同 居 人 に よ る 暴力、配偶者間暴力を児童の面前で行う行為も虐待とするといった見直しが行われる な ど 、「 定 義 の 抽 象 度 が 上 が る こ と で 、 そ の 対 象 と な る 子 ど も の 範 囲 は 拡 大 し た 」( 田 中 : 2 0 1 1 )。ま た 、実 務 レ ベ ル に お い て も 、例 え ば 、 「子どものいる所で教師に対して、 理 不 尽 な 要 求 を 行 っ た 行 為 」、「 長 時 間 に 渡 り 、 過 酷 な 球 技 の ト レ ー ニ ン グ を こ ど も に させた行為」を虐待として児童相談所が介入するなど、児童虐待防止法制定以前と比 べて、保護者等による児童に対する広範な権利侵害を虐待として認定する傾向にある ことを考えれば、単純に比較して「著しく増加している」との結論を導き出すことは 適 切 で あ る と は 思 わ れ な い 。 た し か に 、 児 童 虐 待 防 止 法 が 制 定 さ れ た 以 降 、 虐 待 定 義 の 明 確 化 、 通 告 の 義 務 化 、 世論・メディアの関心を背景に、一般市民、関係者からの通告が増大し、児童相談所 が家庭に対して積極的に介入するようになり、過去には家庭や地域社会に埋もれてい た児童虐待を顕在化させ、その結果、被虐待児童が数多く児童養護施設に入所するこ ととなったことは事実である。しかしながら、昨今の児童養護施設の問題をとらえる 枠 組 み と し て 、 被 虐 待 児 童 お よ び 障 が い 児 の 増 加 に 集 約 さ せ て 良 い の で あ ろ う か 。 「 被 虐 待 児 童 ( 支 援 困 難 な 児 童 ) の 増 加 ) → 施 設 に お け る 不 適 応 行 動 → 措 置 変更」といった説明概念は一見して分かりやすいものの、それは、措置変更の要因を 当該児童の行動上の問題(個人病理)とするものに他ならず、児童の逸脱行動を誘発 させる児童養護施設の生活スタイルを含めた援助システム、児童相談所が行う措置の 的 確 性 な ど の 課 題 を 埋 没 さ せ る こ と に な り か ね な い 。 -15- 『児童養護実践研究』第5号 ( 3 ) 措 置 変 更 を め ぐ っ て 児 童 養 護 施 設 等 児 童 福 祉 施 設 か ら 児 童 自 立 支 援 施 設 へ 措 置 変 更 さ れ る 児 童 が 一 定 存 在し、それが児童に重大な影響があるにもかかわらず、これまで、措置変更に関する 研 究 は な さ れ て お ら ず 、 そ の 実 態 も 明 ら か に な っ て い な い 。 措 置 変 更 が 児 童 福 祉 関 係 者 で 議 論 と な っ た も の で 記 憶 に 新 し い も の は 、「 安 全 委 員 会 方 式 」 に 関 す る 論 争 で あ る 。「 安 全 委 員 会 方 式 」 と は 、 田 嶌 ( 2 0 1 1 ) に よ っ て 提 唱 さ れ たもので、児童養護施設内に外部委員を中心とした委員会を立ち上げ、児童の暴力行 為 が 発 覚 し た 場 合 、「 安 全 委 員 会 」 が 介 入 し 、 暴 力 を 振 る っ た 児 童 に 、「 厳 重 注 意 → 別 室移動→一時保護(児童相談所へ要請)→退所(児童相談所へ要請)といったプロセ ス で 対 応 す る と い う も の で あ る 。 「 安 全 委 員 会 方 式 」 に 対 し て 、 北 川 ( 2 0 1 0 ) は 、「 専 門 職 が 持 ち 合 わ せ て い る 権 威 ( authority) が 権 力 ( power) と 変 容 し 、 両 者 の 慎 重 な 使 い 分 け も な さ れ な い ま ま 、 利 用 者 に 対 し て 施 設 職 員 へ の 服 従 関 係 を 陰 に 陽 に 強 い る も の 」 と 、 ま た 、 西 澤 ( 2008) は 、「 措 置 変 更 は 、 生 活 の 場 の 剥 奪 や 大 人 か ら の さ ら な る 見 捨 て ら れ 体 験 と な る 可 能 性 が 大 き い 」。「 目 の 前 に 措 置 変 更 の 可 能 性 が 提 示 さ れ る こ と は 、 身 体 的 な 暴 力 と は 形 を 変 え た 『 権 力 』 の 行 使 と し て 作 用 す る 可 能 性 が 高 い 」 な ど の 批 判 が な さ れ て い る 。 一 方 、 田 嶌 ( 2 0 0 8 ) は 、 安 全 委 員 会 は 、「 被 害 児 を 守 る だ け で な く 、 加 害 児 に も 暴 力 を 振 る わ な い で 生 き て い け る よ う に 援 助 し て い く 方 式 で あ る 」、「 安 全 委 員 会 を 立 ち 上 げ て 以 降 に 、 措 置 変 更 に な っ た 児 童 は 1 名 」 で あ る と 反 論 し て い る 。 安 全 委 員 会 は 、「 児 童 間 の 暴 力 」 に 焦 点 を 当 て 、 児 童 養 護 施 設 内 で 発 生 す る 事 案 に 対 して、外部の協力者が施設職員を支えながら実践場面で関わることで、暴力を振る児 童のみならずそれを生み出す「施設システム」のパラダイム変換を目指すものと思わ れる。児童養護施設における児童間暴力は、攻撃性の高い特別な児童の特殊な行動で あるのではなく、力の強い者から弱い者に対して、有形無形の暴力が継続的に行われ て い る 場 合 が 多 い 。 今 日 の 被 害 者 は 将 来 の 加 害 者 と な る 「 暴 力 の 連 鎖 」、 集 団 の 安 定 を 維持するための意識、無意識の支配構造が、時として職員と児童、年長児と年少児の 間に存在し、それがいわば「施設の文化」として、力を背景とした支配が根付いてい る 例 も 少 な く な い 。 し た が っ て 、 児 童 の 安 心 ・ 安 全 な 暮 ら し を 保 障 す る た め に は 、 顕 在 化 し た 暴 力 行 為 の当事者を集団から隔離するだけでは不十分であり、暴力を誘発あるいは暴力的支配 構 造 を 強 化 し て い る 「 施 設 シ ス テ ム 」 そ の も の に 介 入 す る 必 要 が あ る 。 そ の た め に は 、 施 設 シ ス テ ム の 一 部 を 構 成 し て い る 施 設 職 員 の み で は 限 界 が あ り 、 外 部 か ら の ア プ ロ ー チ は 有 用 と 考 え ら れ る こ と か ら 、「 安 全 委 員 会 」 の 取 り 組 み は 、 施 設 シ ス テ ム を 変 容 さ せ る 一 つ の 方 法 論 と し て 効 果 的 な も の と 思 わ れ る 。 外 部 者 が 児 童 養 護 施 設 に 介 入 す る に あ っ た て は 、 外 部 者 の 職 員 お よ び 児 童 へ の 影 響 -16- 『児童養護実践研究』第5号 力が課題となる。児童養護施設が組織決定をもって外部者を導入すれば、職員につい ては職務の一貫としてそれを受け入れることは可能であろうが、当該組織決定は児童 にとっては無関係なものである。したがって、外部者が児童に対して影響力を行使す る た め に は 、「 安 全 委 員 会 」 が 自 ら の 生 活 に と っ て 意 味 あ る 存 在 で あ る こ と を 児 童 自 身 が 認 識 す る こ と が 必 要 と な る 。つ ま り 、 「 安 全 委 員 会 」が 機 能 す る た め に は 、児 童 が「 安 全 委 員 会 」 を 「 権 威 」 と 認 め る か 否 か に か か っ て い る 。 ホ ー レ ン ・ ベ イ リ ー ( 1 9 8 2 ) は 、「 ケ ー ス ワ ー カ ー の 権 威 は 、 社 会 か ら 与 え ら れ る 権 力から生じるのはもちろんであるが、少なくとも、ワーカーが実際に身につけている あるいは身につけていると思われている知識と専門的技術から生じる」と述べている ように、クライエントと援助者の間には、法的な権限に裏付けされた「社会的権威」 と、援助者の専門性や情緒的関係に裏付けられた「心理的権威」が存在している。特 に援助に拒否的なクライエントに対して援助者は、社会的権威により介入し、クライ エントの意思に関わらず援助者が何らかの影響をクライエントに与えることを示した 上 で 、 援 助 プ ロ セ ス の 中 で 、「 ク ラ イ エ ン ト が 自 分 に と っ て 必 要 な 存 在 と 認 識 す る よ う 努 め る 」、 つ ま り 、 社 会 的 権 威 が 心 理 的 権 威 へ の 変 化 さ せ さ せ て い く こ と に な る 。 児 童 養 護 施 設 の 職 員 は 、 施 設 長 が 持 つ 親 権 代 行 業 務 ( 児 童 福 祉 法 第 4 7 条 ) 、 地 方 自 治 体 か ら 委 託 さ れ た 事 業 の 実 施 主 体 と し て の 公 権 力 行 使 ( 注 3) と い っ た 社 会 的 権 威 を 有 し て い る 。し か し な が ら 、そ れ の み で 児 童 と の 援 助 関 係 が 形 成 さ れ て い る わ け で は な く 、 日常の暮らしの中で愛着や信頼の対象となり、児童から自己の生活に一定の影響力が あ る も の と 認 識 さ れ て い く 、 つ ま り 、「 心 理 的 権 威 」 の 形 成 で あ る 。 施 設 長 か ら 選 任 さ れ た 「 安 全 委 員 会 」 の 第 3 者 委 員 は 、 児 童 に と っ て は 何 ら 関 係 性 を 有 し な い 他 人 で あ る が ゆ え に 、児 童 に 介 入 し よ う と す れ ば 、初 期 段 階 で は 何 ら か の「 社 会的権威」に頼らざるを得ない。そのツールとして利用されているものが「措置変更」 な の で あ ろ う 。 心 理 的 権 威 を 形 成 す る た め に は 、 児 童 と の 一 定 期 間 に わ た る 関 わ り が 不 可 欠 で あ り 、 暴力等で危機的な状況にある児童養護施設においては、緊急的な介入の必要が生じる 場合があるため、児童にとっても分かりやすい枠組みである「措置変更」は、利用し やすいツールであることは理解するものの、援助者としての倫理からは大きな疑問が 残 る 。 そ も そ も 児 童 養 護 施 設 へ の 入 所 は 、 地 方 自 治 体 の 行 政 処 分 に よ り 執 行 さ れ た も の で あり、法律上児童の同意の有無は問われていない。当該行政処分は、親権者や児童の 私権を制限することもあり得るだけに慎重な行使が求められ、行政不服審査や行政訴 訟など、不法、不当な処分に対する救済措置も法的に保障されている。つまり、行政 権 限 の 行 使 に 対 し て 、 実 施 機 関 は 、 一 定 の 責 務 を 有 し て い る 。 し か し な が ら 、「 安 全 委 員会」は、法的位置づけは不明瞭であり、児童の身分に重大な影響を与えるにも関わ -17- 『児童養護実践研究』第5号 ら ず 、 そ の 義 務 と 責 任 は 明 ら か で は な い 。「 安 全 委 員 会 」 は 児 童 相 談 所 も し く は 施 設 長 に 対 し て 「 要 請 ( 勧 告 )」 す る の み で 、 権 限 の 行 使 は 児 童 相 談 所 長 、 施 設 長 が 行 う と の 反論もあるかもしれないが、措置変更という行政処分に対して、法的な位置づけがな い 組 織 が 関 与 す る こ と は 一 般 的 に は あ り 得 な い 。 例 え ば 、 児 童 福 祉 施 設 へ の 措 置 お よ び 措 置 解 除 に 関 し て 、 児 童 相 談 所 運 営 指 針 で は 、 「子どももしくはその保護者の意向が児童相談所の措置と一致しないとき」等におい ては、児童福祉審議会の意見を聞かなければならないとしている。児童相談所長は、 児童福祉審議会の意見を尊重して援助の決定が行うとされているように、児童福祉審 議 会 は 、 行 政 決 定 に 対 し て 一 定 の 影 響 力 を 持 っ て い る 。 こ の よ う な 第 3者 機 関 が 行 政 決 定に影響力を行使するためには、主権者(市民)の代表である議会が条例を制定し、 附属機関としての審議会等を設置することが求められことからしても、施設長が設置 した「安全委員会」が、行政処分である措置に関して介入することは許されないし、 ましては、そのような機関に、首長の補助機関である児童相談所の職員が参加する法 的 根 拠 は な い 。 「 安 全 委 員 会 方 式 」 の 援 助 構 造 は 、 児 童 養 護 施 設 に お け る 暴 力 に 対 処 す る 方 法 論 と しては一定の理解はできるが、児童を防御する仕組み(弁護士代理人の選任など)が 不在であることに加え、一時保護や措置変更など行政処分決定への介入といった点に お い て 、 大 き な 問 題 を 有 し て い る と い え よ う 。 児 童 養 護 施 設 は 、 戦 後 、 児 童 福 祉 法 が 制 定 さ れ た 以 降 、 一 貫 し て 要 保 護 児 童 の 代 替 家庭をとして機能し続けており、被虐待児童を含め、何らかの事情で本来の保護者の 下で養育できない、養育させることが適当でない児童のパーマネンシーを保障する重 要な資源である。元来、家庭基盤が脆弱な入所児童が、代替家庭である児童養護施設 か ら 措 置 変 更 さ れ る こ と は 、「 捨 て ら れ 体 験 の 再 現 」 で あ り 、「 家 庭 の 再 喪 失 」 に 他 な らないだけに、措置変更そのものを否定するものではないが、措置変更が児童の最善 の利益を保障する手段として用いられているかどうかを検証することは、児童養護施 設 の あ り 方 が 問 わ れ て い る 昨 今 に お い て 重 要 な 課 題 で あ ろ う 。 2 . 児 童 養 護 施 設 か ら 児 童 自 立 支 援 施 設 へ 措 置 変 更 と な っ た 児 童 に 関 す る 全 国 調 査 ( 1 ) 目 的 児 童 養 護 施 設 か ら 児 童 自 立 支 援 施 設 へ の 措 置 変 更 は 、 児 童 に 重 大 な 影 響 を 与 え る も のであるにもかかわらず、これまで、全国的な調査、あるいは、措置変更そのものに 関する検証が行われることはなかった。保護者の援助が受けにくい措置変更児童のリ ー ビ ン グ ケ ア の 困 難 性 を 指 摘 す る 向 き も あ る が 、 そ の 実 態 は 明 ら か に さ れ て い な い 。 し た が っ て 、 本 調 査 で は 、 全 国 に お け る 措 置 変 更 児 童 の 動 向 、 実 態 を 明 ら か に す る こ と を 主 た る 目 的 と し た い 。 -18- 『児童養護実践研究』第5号 ( 2 ) 調 査 対 象 児 童 自 立 支 援 施 設 は 、 都 道 府 県 ( お よ び 政 令 指 定 都 市 ) に 設 置 義 務 が 課 せ ら れ て い る 児 童 福 祉 施 設 で あ り 、 全 国 58カ 所 に 設 置 さ れ て い る 。 今 回 の 調 査 は 、 地 方 自 治 体 等 が設置する児童自立支援施設からの措置変更が大半を占める国立施設2箇所、実質的 に は 自 立 援 助 ホ ー ム と し て 機 能 し て い る 1 箇 所 を 除 く 55施 設 に お い て 、 2009年 度 か ら 2 0 1 1 年 度 ま で の 3 年 間 に 児 童 養 護 施 設 施 設 か ら 措 置 変 更 さ れ た 児 童 全 件 を 対 象 と し た 。 ( 3 ) 調 査 方 法 調 査 を 開 始 す る 前 段 階 に お い て 、 全 国 児 童 自 立 支 援 施 設 協 議 会 会 長 に 対 し て 、 調 査 の趣旨を説明し協力を要請するとともに、全国児童自立支援施設協議会施設長会にお い て 、 研 究 協 力 者 が 所 属 す る 児 童 自 立 支 援 施 設 長 か ら 協 力 の 依 頼 を 行 っ た 。 厚 生 労 働 省 が 実 施 す る 「 児 童 養 護 施 設 入 所 児 童 等 調 査 」 、 さ ら に 、 本 調 査 に 類 似 し た先行研究を参考に調査項目を抽出し調査票(案)を策定した後、全国児童自立支援 施 設 協 議 会 会 長 お よ び 研 究 協 力 者 で あ る 児 童 自 立 支 援 施 設 職 員 2名 か ら 意 見 聴 取 を 行 い 調 査 項 目 に 修 正 を 加 え た 。 調 査 票 は 施 設 の 規 模 、 運 営 体 制 、 職 員 体 制 な ど 基 本 属 性 を 尋 ね る A 票 、 対 象 期 間 に 措置変更(児童養護施設から当該児童自立支援施設に入所した)された児童ごとに質 問 に 対 し て 選 択 回 答 す る B 票 に 区 分 し 、 そ れ ぞ れ 個 票 へ 記 入 す る 方 式 を 採 用 し た 。 B票 については、当該児童の児童養護施設に入所から措置変更を経て、児童自立支援施設 を 退 所 す る ま で の 経 過 に お け る 児 童 自 身 ・ 保 護 者 の 状 況 等 に 関 す る 43項 目 の 項 目 に 対 し て 単 一 回 答 を 求 め た ( 記 入 は 職 員 )。 ま た 、 希 望 す る 施 設 に つ い て 、 M i c r o s o f t 社 Excel2007に 直 接 入 力 で き る フ ァ イ ル を 作 成 し 、 暗 号 化 し た 後 電 子 メ ー ル を 通 じ て 送 受 できることとした。さらに、設問に疑義が生じた場合を想定し、電話または電子メー ル で 問 い 合 わ せ が で き る ヘ ル プ デ ス ク を 開 設 し た 。 ま た 、 比 較 検 証 の た め 、 研 究 協 力 者 が 所 属 す る 児 童 自 立 支 援 施 設 を 含 め 3 箇 所 の 児 童 自 立 支 援 施 設 に 対 し て 、 同 時 期 に 家 庭 等 か ら 入 所 し た 児 童 ( 以 下 、「 措 置 変 更 外 児 童 」) に 関 し て 、 同 じ 調 査 票 を 用 い て 調 査 を 実 施 し た 。 ( 4 ) 倫 理 的 配 慮 調 査 票 送 付 の 際 に は 、 倫 理 的 配 慮 を 記 し た 依 頼 文 お よ び 同 意 書 を 同 封 し 、 同 意 書 に 関 し て は 返 送 を 求 め た 。 内 容 は 、 以 下 の と お り で あ る 。 ① 調 査 へ の 回 答 は 任 意 で あ る ② デ ー タ は 個 人 が 特 定 で き な い 状 態 で 収 集 さ れ 、 収 集 さ れ た デ ー タ は 厳 重 に 保 管 す るとともに、研究者および研究補助者以外が取り扱うことはなく、本研究以外の目的 に は 使 用 さ れ な い -19- 『児童養護実践研究』第5号 ③ 収 集 さ れ た デ ー タ は 統 計 的 に 処 理 し 、 施 設 名 が 特 定 で き な い よ う 処 理 す る ④ 収 集 さ れ た デ ー タ は 、 本 研 究 終 了 後 に 破 棄 す る ⑤ 研 究 結 果 は 全 て 全 国 児 童 自 立 支 援 施 設 協 議 会 に 渡 す と と も に 、 要 請 が あ っ た 施 設 に は 送 付 す る な お 、 本 調 査 は 、 筆 者 が 所 属 す る 研 究 機 関 の 倫 理 審 査 委 員 会 の 承 認 を 得 た う え で 実 施 し た も の で あ る 。 ( 5 ) 結 果 ( 一 部 ) と 考 察 調 査 対 象 5 5 箇 所 の う ち 3 6 箇 所 か ら 回 答 を 得 て ( 6 5 . 5 % )、 3 5 1 名 の 措 置 変 更 児 童 に 関 するデータが集約された。なお、当該期間に措置変更児童が存在しない児童自立支援 施 設 に つ い て は 、返 答 さ れ て い な い 可 能 性 が 高 い 。ま た 、非 措 置 変 更 児 童 に 関 し て は 、 3 施 設 か ら 1 6 4 名 分 の デ ー タ が 得 ら れ た 。 表 2 - 1 は 、 養 護 問 題 発 生 理 由 別 児 童 数 で あ る 。 本 調 査 ( 以 下 、 他 の 調 査 と 区 別 す る た め「 措 置 変 更 児 童 調 査 」と す る 。)の 比 較 群 と し て 、同 時 期 の デ ー タ が 存 在 し な い た め 、 厚 生 労 働 省 が 5年 に 一 度 実 施 し て い る 「 児 童 養 護 施 設 入 所 児 童 等 調 査 」 2003年 2月 1日 、 2 0 0 8 年 2 月 1 日 分 お よ び 2 0 1 3 年 2 月 1 日 分 の デ ー タ を 用 い る こ と と す る 。「 児 童 養 護 施 設 入 所 児 童 等 調 査 」( 以 下 、「 入 所 児 童 等 調 査 」。) は 、 児 童 福 祉 施 設 等 に 措 置 委 託 さ れ て い る児童の実態を明らかにして、要保護児童の福祉増進のための基礎資料を得ることを 目 的 と し て 、 お お む ね 5 年 ご と に 国 が 実 施 し て い る も の で あ る ( 厚 生 労 働 省 H P )。 表2-‐‑‒ 1:養護問題発⽣生理理由別児童数 表2-‐‑‒ 2:養護問題発⽣生理理由別児童数 措置変更児童 N =351 度数 % 児童養護施設入所児童等調査 2003/2/1 N =30,416 度数 2008/2/1 N =31,594 % 度数 措置変更児童 N =351 2013/2/1 N =29,969 % 度数 % 度数 1 父の死亡 2 0.6% 231 0.8% 195 0.6% 142 0.5% 2 母の死亡 2 0.6% 681 2.2% 580 1.8% 521 1.7% 3 父の行方不明 5 1.4% 653 2.1% 328 1.0% 141 0.5% 4 母の行方不明 14 4.0% 2,680 8.8% 1,869 5.9% 1,138 3.8% 5 父母の離婚 16 4.6% 1,983 6.5% 1,304 4.1% 872 2.9% 6 父母の不和 3 0.9% 262 0.9% 252 0.8% 233 0.8% 7 父の拘禁 4 1.1% 641 2.1% 563 1.8% 419 1.4% 8 母の拘禁 16 4.6% 810 2.7% 1048 3.3% 1037 3.5% 9 父の入院 1 0.3% 325 1.1% 327 1.0% 180 0.6% 10 母の入院 7 2.0% 1,803 5.9% 1,506 4.8% 1,124 3.8% 11 次子出産 1 0.3% * * * * * * 12 父の就労 4 1.1% 2,093 6.9% 1,762 5.6% 963 3.2% 13 母の就労 9 2.6% 1,444 4.7% 1,293 4.1% 767 2.6% 14 父の精神疾患等 3 0.9% 197 0.6% 180 0.6% 178 0.6% 15 母の精神疾患等 36 10.3% 2,282 7.5% 3,197 10.1% 3,519 11.7% 養護 児童養護施設入所児童等調査 2003/2/1 N =30,416 2008/2/1 N =31,594 2013/2/1 N =29,969 % 度数 % 度数 % 度数 % 35.0% 16,085 52.9% 14,404 45.6% 11,234 38.6% 118 33.6% 6,935 22.8% 8,903 28.2% 9,816 32.8% 3 0.9% 236 0.8% 166 0.5% 124 0.4% 25 7.2% 1,169 3.8% 1,378 4.4% 1,427 4.8% 123 16 父の放任・怠だ 8 2.3% 769 2.5% 654 2.1% 537 1.8% 17 母の放任・怠だ 36 10.3% 2,777 9.1% 3,707 11.7% 3,878 12.9% 18 父の虐待・酷使 31 8.9% 1,522 5.0% 1,849 5.9% 2,173 7.3% 19 母の虐待・酷使 43 12.4% 1,867 6.1% 2,693 8.5% 3,228 10.8% 3 0.9% 236 0.8% 166 0.5% 124 0.4% 棄 児 21 養育拒否 25 7.2% 1,169 3.8% 1,378 4.4% 1,427 4.8% 養育拒否 22 破産等の経済的理由 15 4.3% 2,452 8.1% 2,390 7.6% 1,762 5.9% 経済的理由 15 4.3% 2,452 8.1% 2,390 7.6% 1,762 6.1% 23 児童の問題による監護困難 42 12.1% 1,139 3.7% 1,047 3.3% 1,130 3.8% 児童の行動上の問題 42 12.0% 1,139 3.7% 1,047 3.3% 1,130 3.9% 24 その他 22 6.3% 2,374 7.8% 2,674 8.5% 3,619 12.1% その他 25 7.1% 2,400 7.9% 3,305 10.5% 3,619 12.4% 20 棄 児 25 不詳または欠損値 3 0.9% 26 0.1% 631 2.0% 857 虐待 および 不適切な養育状況 2.9% -20- 『児童養護実践研究』第5号 調 査 項 目 を 、 保 護 者 の 死 亡 、 行 方 不 明 、 離 婚 、 疾 病 等 、 保 護 者 が 抱 え る 何 ら か の 問 題 に よ る も の を 「 養 護 」・ 虐 待 お よ び 放 任 、 養 育 拒 否 な ど 不 適 切 な 養 育 状 況 が 理 由 と す る も の を 「 虐 待 ・ 不 適 切 な 養 育 」・ さ ら に 、「 遺 棄 」・「 養 育 拒 否 」・「 経 済 的 理 由 」・「 児 童 の 行 動 上 の 問 題 」・「 そ の 他 」 に 再 構 成 し た も の が 表 2 - 2 で あ る 。 入 所 児 童 に 占 め る 養 護 事 由 発 生 理 由 を 「 虐 待 ・ 不 適 切 な 養 育 」 と す る も の が 、 2 0 0 3 年 調 査 で は 、 22.8% 、 2008年 調 査 28.2% 、 2013年 調 査 32.8% と な っ て お り 、 年 々 増 加 傾 向 に あ る 。 一 方 、「 措 置 変 更 児 童 調 査 」 で は 、 3 3 . 6 % と な っ て お り 。 児 童 養 護 施 設 に おいて、養護事由発生理由における「虐待・不適切な養育」の比率は年々高まってお り 、「 措 置 変 更 児 童 調 査 」 は 、「 入 所 児 童 等 調 査 」 の 2 0 0 8 年 調 査 と 、 2 0 1 3 年 調 査 の 中 間 時期を調査期間としていることを考えれば、措置変更児童においては、虐待等を理由 に 措 置 さ れ た 比 率 が や や 高 い と 言 え よ う 。 先 に 述 べ た と お り 、 児 童 養 護 施 設 の 入 所 児 童 に 占 め る 被 虐 待 の 割 合 が 極 端 に 増 加 し て い る か ど う か は 明 ら か で は な い が 、「 措 置 変 更 児 童 調 査 」 に お い て も 、「 入 所 児 童 等 調 査 」 に お い て も 虐 待 を 理 由 に 児 童 養 護 施 設 へ 入 所 し た 児 童 が 1 /3を 占 め る 昨 今 に お いて、被虐待児童への支援、家族再統合のための取り組みの強化は、児童養護施設に と っ て 重 要 な 課 題 で あ る こ と は 明 ら か で あ ろ う 。 「 入 所 児 童 等 調 査 」 で は 、「 児 童 の 行 動 上 の 問 題 」 が 養 護 問 題 発 生 事 由 と な っ て い る も の が 3 . 3 % ~ 3 . 7 % と な っ て い る が 、「 措 置 変 更 児 童 調 査 」 で は 、 約 3 倍 の 1 2 . 0 % を 示 し て い る お り 、 措 置 変 更 児 童 の 特 徴 と 言 え よ う 。 「措置変更児童調 表3:養護問題発生事由(児童の問題による監護困難) と 児童養護施設入所時年齢層 のクロス表 児童養護施設入所時年齢層 3歳以上 6歳未満 3歳以下 度数 6歳以上 9歳未満 9歳以上 12歳未満 12歳以上 15歳未満 査 」の 養 護 問 題 発 生 合計 15歳以上 87 69 39 61 47 1 304 28.6% 22.7% 12.8% 20.1% 15.5% .3% 100.0% 4 1 5 15 16 1 42 9.5% 2.4% 11.9% 35.7% 38.1% 2.4% 100.0% 91 70 44 76 63 2 346 26.3% 20.2% 12.7% 22.0% 18.2% .6% 100.0% 事 由 を「 児 童 の 問 題 無 % 児童の問題による監護困難 度数 有 % 度数 合計 % に よ る 監 護 困 難 」と それ以外に分類し、 「児童養護施設入 所時年齢」および「児童養護施設入所期間」とクロス集計したものが表3および表4 である。養護問題発生事由が「児童の問題による監護困難」とは、児童養護施設入所 時 段 階 よ り 、児 童 が 何 ら か 表4:養護問題発生事由(児童の問題による監護困難) と 児童養護施設入所期間(2年区切り) の クロス表 児童養護施設入所期間(2年区切り) 2年以上 4年未満 2年未満 度数 護者の監護能力の範囲を 合計 4年以上 6年未満 6年以上 超 え 、家 庭 内 養 育 が 困 難 と 80 47 29 147 303 26.4% 15.5% 9.6% 48.5% 100.0% 無 % の 行 動 上 の 問 題 を 抱 え 、保 なった児童であることか 児童の問題による監護困難 度数 22 8 5 7 42 52.4% 19.0% 11.9% 16.7% 100.0% 102 55 34 154 345 年 齢 層 」( 表 3 ) は 思 春 期 29.6% 15.9% 9.9% 44.6% 100.0% 前 後 以 降 に 集 中 す る ( 9歳 有 % 度数 合計 % -21- ら 、「 児 童 養 護 施 設 入 所 時 『児童養護実践研究』第5号 以 上 : 7 6 . 2 % ) こ と は 当 然 で あ り 、 必 然 的 に 「 児 童 養 護 施 設 入 所 期 間 」( 児 童 養 護 施 設 入 所 か ら 措 置 変 更 ま で の 期 間 ) が 短 期 間 に な る ( 表 4 )。 表5:養護問題発生事由(児童の問題による監護困難) と 措置変更理由種別 のクロス表 表 5 は 、養 護 問 措置変更理由種別 合計 犯罪(触法) 度数 不良行為 施設不適応 ぐ犯 題 発 生 事 由「 児 童 その他 49 6 181 63 7 306 16.0% 2.0% 59.2% 20.6% 2.3% 100.0% 5 1 33 3 0 42 11.9% 2.4% 78.6% 7.1% 0.0% 100.0% 54 7 214 66 7 348 15.5% 2.0% 61.5% 19.0% 2.0% 100.0% 無 % の問題による監 児童の問題による監護困難 度数 有 % 度数 護 困 難 」の 有 無 と 措置変更理由を 合計 % クロス集計した も の で あ る 。「 児 童 の 問 題 に よ る 監 護 困 難 」 が 「 有 」 で は 7 8 . 6 % 、「 無 」 で は 5 9 . 2 % が 、 「 施 設 不 適 応 」 を 理 由 と し て 措 置 変 更 と な っ て い る 。 つ ま り 、 入 所 時 点 か ら 何 ら か の 行 動 上 の 問 題 を 抱 え て い る 比 較 的 高 年 齢 の 児 童 が 児 童養護施設の暮らしに馴染めないまま、施設内でも不適応行動を呈し、児童養護施設 の 枠 を 超 え 児 童 自 立 支 援 施 設 へ 措 置 変 更 さ れ る 傾 向 を 垣 間 見 る こ と が で き る 。 一 方 で 、 措 置 変 更 児 童 の 4 4 . 6 % が 、 6 年 以 上 児 童 養 護 施 設 に 暮 ら し な が ら 、「 施 設 不 適応」を中核とした逸脱行動を理由に、児童自立支援施設に措置変更されている。つ まり、被虐待体験を背景に行動、人間関係上の問題を持つ児童が児童養護施設に入所 し 、 短 期 間 ( 表 4 : 52.4% が 2年 未 満 ) で 措 置 変 更 に な る 児 童 が 一 定 程 度 い る 一 方 で 、 入 所 時 に 行 動 上 の 問 題 は な く 、 児 童 養 護 施 設 で 6年 以 上 暮 ら し な が ら 施 設 生 活 を 続 け る 中 で 不 適 応 行 動 等 を 呈 し 措 置 変 更 さ れ る こ と も 少 な く な い ( 表 4 : 48.5% が 6年 以 上 ) こ と が 分 か る 。 -22- 『児童養護実践研究』第5号 表 6 - 1 、 表 6 - 2 は 、 措 置 変 更 区 分 ( 措 置 変 更 さ れ た 児 童 ・ 措 置 変 更 外 = 家 庭 か ら 児 童 自立支援施設に措置された児童)と入所・措置変更理由をクがロス集計したものであ る 。 措 置 変 更 外 児 童 に お い て は 、 生 活 環 境 に お け る 不 適 応 ( 家 庭 ・ 学 校 ) が 入 所 理 由 と な っ て い る も の が 11.2% に 対 し て 、 措 置 変 更 児 童 で は 63.2% と な っ て い る 。 暴 力 非 行 や窃盗などの犯罪(触法)行為が入所・措置変更理由となっているものが、措置変更 外 児 童 の 4 3 . 8 % に 対 し て 、措 置 変 更 児 童 で は 1 5 . 7 % に と ど ま っ て い る 。こ の こ と か ら 、 措置変更児童は、措置変更外児童に比べ非行性は低く、児童養護施設での生活状況が 措置変更の大きな理由となっていることが分かる。さらに、措置変更児童において、 措 置 変 更 理 由 と し て 、「 施 設 不 適 校 ( 性 的 暴 力 ) 1 2 . 5 % 、「 性 非 行 」 7 . 7 % と な っ て い る ことから、児童養護施設における性問題が措置変更に一定の影響を与えていることが 明 ら か に な っ た 。 児 童 養 護 施 設 へ の 入 所 理 由 に お い て も 虐 待 を 主 因 と す る も の は 増 加 傾 向 に あ り 、 さ らに、児童養護施設の入所児童のうち被虐待体験の影響も含め障がいを持つ児童の占 め る 割 合 も 高 水 準 で 経 過 し て い る こ と を 考 え れ ば 、近 年 、児 童 相 談 所 、児 童 養 護 施 設 、 児童自立支援施設の実践場面において、児童虐待と発達障がいは中核的なテーマとし て語られていることは不思議ではなく、そのような「支援困難な児童」が増加したこ とにより、児童養護施設から児童自立支援施設に措置変更される児童が増加している と の 見 方 が 一 般 的 と は 思 わ れ る が 、 そ れ は 必 ず し も 実 態 を 説 明 し て い る と は 言 え な い 。 児 童 養 護 施 設 に お け る 児 童 の 揺 ら ぎ を 説 明 す る 枠 組 み と し て 、 こ の 2 大 テ ー マ の み に 焦 点 が 当 て 、児 童 の 逸 脱 行 動 の 要 因 を 被 虐 待 体 験 や 発 達 障 が い に 求 め れ ば 、そ れ は 、 児童自身やその児童を養育してきた保護者の問題としてとらえることができ、児童相 談 所 の 措 置 、 児 童 養 護 施 設 の 養 護 内 容 ま で 検 証 す る 必 要 は な く な る 。 児童養護施設の実践場面において、このように児童の揺らぎの要因を児童自身に内在 する病理ととられ、対症療法にすぎない措置変更に依存している傾向はないであろう か 。 児 童 養 護 施 設 で 児 童 間 の 暴 力 事 案 が 発 生 し た 場 合 、「 被 害 者 を 守 る 」 こ と 理 由 に 、 加 害児童と被害児童を物理的に分離することの必要性は一定程度理解できるものの、児 童 自 立 支 援 施 設 等 へ の 措 置 変 更 が 唯 一 の 方 策 な の か は 疑 問 が 残 る と こ ろ で あ る 。 「被害児童の回復を第一に考え、児童自立支援施設への措置変更をしたケースもあり ま し た 」( 吉 野 : 2 0 1 2 )、「( 児 童 は ) 結 局 、 元 い た 施 設 に 戻 る こ と が で き ず 、 措 置 変 更 と な っ て し ま う 」( 樋 口 : 2 0 1 2 )、 上 記 は い ず れ も 、 児 童 間 性 暴 力 の 事 例 報 告 の 一 部 で あるが、措置変更される児童にとってより良い選択ではなく、ネガティブオプジョン と し て 措 置 変 更 で あ る と 読 み 取 れ る 。 こ の 傾 向 は 、 特 に 性 暴 力 事 案 に お い て 顕 著 で あ る 。 も ち ろ ん 、 性 的 な 被 害 を 受 け た -23- 『児童養護実践研究』第5号 児童と加害児童を同じ生活空間で暮らすことの困難であることは事実であるし、措置 変更そのものを否定するものではない。しかしながら、措置変更される児童の予後も 含めた援助プランを十分に検証したうえで、積極的な選択として児童自立支援施設入 所 決 定 が な さ れ な け れ ば な ら な い こ と は 当 然 で あ る 。 本 調 査 に つ い て は 、 措 置 変 更 さ れ た 児 童 の 児 童 自 立 支 援 施 設 へ の 定 着 度 合 い 、 退 所 時の状況(一般退所・事故退所)などについても調査しており、本論では紙幅の関係 で 言 及 で き な い が 別 の 機 会 で 報 告 し た い 。 3 . 今 後 の 課 題 「 中 2 の 夏 、 登 校 し よ う と し た 私 に 職 員 が 、『 こ れ か ら 児 童 相 談 所 に 行 く よ 』 と 言 っ て き た 。 意 味 が 分 か ら ず 『 は ? 』 と 問 い 返 し た ら 、『 こ れ だ け や っ た ん だ か ら 、 わ か っ て い る だ ろ 』 だ っ て 」、「 一 時 保 護 所 に 入 れ ら れ て 1 か 月 後 、 児 童 自 立 支 援 施 設 に 連 れ て 行 か れ た 」、「 私 は 児 相 も 施 設 も く そ く ら え と 思 う 。 憎 ん で さ え い る 。 私 を た ら い 回 し に し た 大 人 た ち を 、 絶 対 許 さ な い 」。 こ れ は 措 置 変 更 児 童 の 手 記 で あ る が 、 そ の 程 度 は様々であるが措置変更が児童にとって「傷つき体験」である以上、児童自立支援施 設入所がその時点で取りうる最善の選択でなければならない。また、措置変更は不利 益処分であり、処分理由について根拠も含めて説明する義務を、措置権者の児童相談 所 は 負 っ て い る こ と も 忘 れ て は な ら な い 。 今 回 、実 施 し た 調 査 に お い て 、虐 待 体 験 お よ び( ま た は )問 題 行 動 を 有 す る 児 童 が 、 児童養護施設に入所し、比較的短期間に措置変更となる傾向は明らかとなった。この ことは児童養護施設にとって、被虐待児童あるいは障がいを有する児童に対する援助 の方法を見直す必要を示唆するものである。また、それ以上に、児童が児童養護施設 に入所した以降の行動傾向を予測することは極めて困難であるが、ごく短期間で施設 不適応となる児童に関しては、児童相談所が措置決定する際のアセスメントの的確性 に対して問題提起する結果となろう。また、入所措置以降の児童の生活状況を児童相 談 所 自 身 が 積 極 的 に 把 握 し 、児 童 養 護 施 設 と 連 携 、協 働 し た 援 助 体 制 も 求 め ら れ よ う 。 一 方 で 、 乳 幼 児 期 か ら 児 童 養 護 施 設 ( 乳 児 院 ) で 暮 ら し て い た 児 童 が 思 春 期 前 後 か ら生活が不安定となり、施設不適応を中心とした逸脱行動に繰り返し、結果として、 措置変更せざるを得ない状況となる児童は、むしろ、前述した短期間での措置児童よ り多数を占めていることは、児童養護施設の養育環境そのものを再検証する必要があ ることを示している。児童養護施設では、問題行動のある高年齢児に焦点があたりが ちであるが、むしろ、乳幼児期からの発達段階に応じた関わりや養育方法に着目し、 新 し い 潮 流 で あ る 生 活 集 団 の 小 規 模 化 に 即 し た 方 法 論 の 確 立 が 求 め ら れ る 。 ま た 、 援 助 の 連 続 性 も 重 要 課 題 で あ る 。 児 童 養 護 施 設 か ら 児 童 自 立 支 援 施 設 へ の 措 置 変 更 、さ ら に は 、児 童 自 立 支 援 施 設 か ら 元 の 児 童 養 護 施 設 へ の 再 措 置 変 更 も 見 据 え 、 -24- 『児童養護実践研究』第5号 それぞれが持つ情報を共有し、一定の役割分担のもと児童養護施設・児童自立支援施 設・児童養護施設が連携、協働した援助体制の構築も、措置変更が効果的な援助方法 と し て 機 能 す る た め の 重 要 な 要 素 で あ ろ う 。 本 調 査 は 、 措 置 変 更 に 関 す る 全 般 的 な 傾 向 を 把 握 す る た め に 実 施 し て き た も の で あ り、その意味では一定の成果はあったものと思われる。しかしながら、児童養護施設 や児童自立支援施設の実践場面で生かすことができる支援上の課題について十分に明 らかにしたとは言えない。現在、本調査の後追いとして、本調査の対象となった児童 を抽出して質的調査を行っており、当該質的調査の結果も踏まえ、措置変更児童の実 態 と 課 題 に つ い て 明 ら か に し た い と 考 え て い る 。 注 注 1 : 事 例 に つ い て は 、 特 定 を 避 け る た め 、 事 実 関 係 を 歪 め な い 程 度 に 改 変 し て い る 。 注 2: 児 童 は 、 都 道 府 県 お よ び 政 令 指 定 都 市 の 首 長 か ら 権 限 を 委 任 さ れ た 児 童 相 談 所 長 による行政処分(措置)に基づき、児童養護施設等に入所することとなる。措置変更 とは、一旦措置された施設から何らかの事情により、他の施設に再入所することであ り 、 具 体 的 に は 以 下 の よ う な 場 合 が 想 定 さ れ る 。 ① 一 定 の 年 齢 に 達 し た こ と に よ り 、 乳 児 院 か ら 児 童 養 護 施 設 ② 児 童 が 持 つ 障 害 の た め 、 特 定 の 療 育 が 必 要 な た め 、 児 童 養 護 施 設 か ら 障 害 児 支 援 施 設 ③ 児 童 の 問 題 行 動 等 に よ り 、 児 童 養 護 施 設 等 か ら 児 童 自 立 支 援 施 設 等 本 論 に お け る 「 措 置 変 更 」 は 、 特 に 言 及 し な い 限 り 「 ③ 」 を 指 す も の と す る 注 3: A県 社 会 福 祉 事 業 団 が 運 営 す る 児 童 養 護 施 設 に お い て 、 他 の 児 童 か ら 集 団 暴 行 さ れ た 児 童 が 、 施 設 と 県 を 訴 え た 訴 訟 の 判 決 で 、 地 裁 は 、「( 児 童 養 護 施 設 の 長 お よ び 職 員は)実質的には国および公共団体のために公権力の行使たる公務の執行に携わる者 と 広 く 指 す も の と 解 す べ き で あ る 」 と 結 論 づ け た 。 橋 爪 幸 代 ( 2 0 0 8 )「 社 会 保 障 法 判 例 - 県 か ら 委 託 を 受 け た 民 間 養 護 施 設 に お い て 児 童 が負った傷害につき,養育監護行為が公権力の行使であることを認めた上で,県の国 家賠償責任を認めた事例」 『 判 例 研 究 』第 4 4 巻 第 3 号 、国 立 社 会 保 障 ・ 人 口 問 題 研 究 所 、 p p . 2 8 4 - 2 9 1 < 引 用 文 献 > 北 川 清 一 ( 2 0 1 0 )『 児 童 養 護 施 設 の ソ ー シ ャ ル ワ ー ク と 家 族 支 援 』、 明 石 書 店 、 p . 2 1 厚 生 労 働 省 ( 2 0 1 1 )『 社 会 的 養 護 の 課 題 と 将 来 像 – 児 童 養 護 施 設 等 の 社 会 的 養 護 の 課 題に関する検討委員会・社会保障審議会児童部会社会的養護専門委員会とりまと め 』、 p . 7 -25- 『児童養護実践研究』第5号 厚 生 労 働 省 ( 2 0 1 5 )「 児 童 養 護 施 設 入 所 児 童 等 調 査 の 結 果 ( 平 成 2 5 年 2 月 1 日 現 在 ) 」、 2 0 1 6 / 4 / 2 0 h t t p : / / w w w . m h l w . g o . j p / s t f / h o u d o u / 0 0 0 0 0 7 1 1 8 7 . h t m l 鈴 木 崇 之 ( 2 0 1 5 )『 児 童 虐 待 時 代 の 社 会 的 養 護 』、 学 文 社 、 p . 6 1 高 橋 亜 美 ・ 早 川 悟 司 ・ 大 森 信 也( 2 0 1 5 ) 『 施 設 で 育 っ た 子 ど も の 自 立 支 援 』、明 石 書 店 、 p p . 1 1 4 - 1 1 6 田 嶌 誠 一 ( 2 0 1 1 )『 児 童 福 祉 施 設 に お け る 暴 力 問 題 の 理 解 と 対 応 』、 金 剛 出 版 田 嶌 誠 一( 2 0 0 8 ) 「 児 童 福 祉 施 設 に お け る「 施 設 内 暴 力 の 解 決 に 向 け て 」 『 臨 床 心 理 学 』、 金 剛 出 版 、 V o l . 8 , N o 5 , p p . 6 9 4 - 7 0 5 田 中 理 恵 ( 2 0 1 1 )「 社 会 問 題 と し て の 児 童 虐 待 」『 教 育 社 会 学 研 究 8 8 』、 日 本 教 育 社 会 学 会 、 p p . 1 1 9 - 1 3 8 西 澤 哲 ( 2 0 0 8 )「 田 嶌 先 生 の 批 判 に 応 え て 」『 臨 床 心 理 学 』、 金 剛 出 版 、 V o l . 8 , N o 5 , p p . 7 0 6 - 7 1 2 樋 口 純 一 郎( 2 0 1 2 ) 「『 施 設 内 暴 力 』に お け る 児 童 心 理 司 の 対 応 の 実 際 」 『子どもと福祉』 明 石 書 店 、 V o l . 4 , p p . 2 8 - 3 5 ホ ー レ ン ・ ベ イ リ ー ( 1 9 8 2 )『 ケ ー ス ワ ー ク と 権 威 』、 学 苑 社 、 p . 3 2 吉 野 り え ( 2 0 1 2 )「 児 童 養 護 施 設 に お け る 性 暴 力 へ の 取 り 組 み と 課 題 」『 子 ど も と 福 祉 』 明 石 書 店 、 V o l . 4 , p p . 2 2 - 2 7 -26-
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