積層セラミックチップコンデンサ - TDK Product Center

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高信頼性 車載用
積層セラミックチップコンデンサ
コアテクノロジーが生み出す“高信頼性”
極寒から酷熱までの広い使用温度範囲、たえずさらされる強い振動や衝撃など、過酷な条件で使用される車載用電子
部品には、耐久性、不良発生率、動作保証期間など、汎用製品よりはるかに高い信頼性が求められます。TDK で
は素材技術、積層技術、焼成技術など、先進のコアテクノロジーを駆使し、エンジンまわりでも使用できる高温保証
タイプ(X8R)、高容量化を実現した C0G 特性タイプや中耐圧タイプ、熱ストレスにも抜群の耐性を発揮するメガ
キャップなど、安全 ・ 安心・快適ドライブをサポートするさまざまな高信頼性の車載用積層セラミックチップコンデ
ンサをシリーズ化して提供しています。
01
高信頼性 車載用積層セラミックチップコンデンサ
各種特性をバランスよく備える積層セラミックコンデンサ
コンデンサ(condenser)は電荷を凝集(コンデン
サで誘電体として機能する酸化アルミニウム膜の比誘電
(capacitor)と呼ばれます。これはどれだけ電荷を蓄え
比誘電率は低誘電率系でも10 ~100 程度、高誘電率系
ス)するという意味からの命名で、英米ではキャパシタ
率は8 ~10 程度です。ところが、セラミックス誘電体の
られるかの指標である静電容量(キャパシタンス)に由
では1000 ~20000 程度にまで及びます。積層セラミッ
来します。コンデンサの静電容量は、対向する電極板の面
クチップコンデンサがコンデンサの主流として使われる
積(S)が広いほど、電極間距離(d)が狭いほど、そして
第1 の理由は、きわめて高い誘電率により、小型でも大き
電極板の間の誘電体(絶縁体)の比誘電率(εr )が高いほ
な静電容量が得られるからです。
ど大きくなります。
静電容量の大きさはコンデンサの特性の1 つにすぎま
電子機器に多用される積層セラミックチップコンデン
せん。静電容量のほかに、温度特性、定格電圧、周波数特性
サは、電極と誘電体をサンドイッチ状に多層積層するこ
など、さまざまな特性があり、用途に応じて各種コンデン
とで、電極面積を大きく確保しています。積層セラミック
サが使い分けられています。どのタイプのコンデンサに
チップコンデンサが開発されたのは20 世紀半ばですが、
も長所と短所があります。たとえばアルミ電解コンデン
電極と誘電体を交互に積み重ねた簡単な積層型コンデン
サは、静電容量において圧倒的にすぐれますが、高周波特
サは、19 世紀半ばにすでに考案されています。誘電体と
性が悪く、寿命が短いという欠点があります。
しては薄くはがした雲母(マイカ)の薄片が用いられた
定格電圧、周波数特性、寿命など、コンデンサに要求さ
ので、マイカコンデンサと呼ばれます。空気の比誘電率は
れるさまざまな特性を最もバランスよく備えているのが
約1 ですが、マイカの比誘電率は6 ~8 もあるので大き
積層セラミックコンデンサです。チップ部品として量産
な静電容量が得られます。
できるのでコストパフォーマンスにもすぐれ、薄層化・
フィルムコンデンサに用いられる各種プラスチック
多層化技術の進歩により、静電容量も電解コンデンサ領
フィルムの比誘電率は2 ~3 程度、アルミ電解コンデン
域に迫っています。
□コンデンサの基本構造と静電容量
電極
電極面積
□各種誘電体とその比誘電率
S
電極間距離
d
誘電体
(絶縁体)
S
静電容量 C=ε0εr
d
電極
電極面積が広いほど大容量。
比誘電率が高いほど大容量。
電極間距離が狭いほど大容量。
ε0:真空の誘電率(8.854×10
εr:誘電体の比誘電率
□各種コンデンサの静電容量範囲
誘電体
比誘電率
空気
1
各種プラスチックフィルム
2〜3
マイカ
6〜8
酸化アルミニウム
8〜10
セラミックス(低誘電率材)
10〜100
セラミックス(高誘電率材)
1000〜20000
F/m)
-12
□各種コンデンサの定格電圧範囲
積層セラミックチップコンデンサ
積層セラミックチップコンデンサ
アルミ電解コンデンサ
アルミ電解コンデンサ
タンタル電解コンデンサ
タンタル電解コンデンサ
フィルムコンデンサ
フィルムコンデンサ
1
pF
10 100
1
nF
10 100
1 10 100 1
μF
mF
10 100
1
F
1V
02
10V
100V
1000V
10000V
高信頼性 車載用積層セラミックチップコンデンサ
エンジン表面の 150℃の高温にも対応できる X8R 特性
積層セラミックチップコンデンサは、CaZrO3(ジル
ン表面は150℃にも達します。このため車載用電子部品
類1:CLASS Ⅰ)と、チタン酸バリウム(BaTiO3)など
安定した特性のものが求められます。その要求に応える
コン酸カルシウム)などを誘電体とする低誘電率系(種
としては、高温対応とともに、広い温度範囲でできるだけ
を誘電体とする高誘電率系(種類2:CLASS Ⅱ)とに大
のがX7R 特性およびX8R 特性の積層セラミックチップ
別されます。大きな静電容量を得るには高誘電率系が有
コンデンサ(高誘電率系)です。
利ですが、やっかいなことに高誘電率系は、温度によって
X7R 特性とは-55~+125℃の温度範囲で容量変化
静電容量の変化率が大きいという短所があります。一方、
率±15%以内、X8R 特性とは-55~+150℃の温度範
低誘電率系は、温度による容量変化率が小さいので、フィ
囲で容量変化率±15%以内というEIA 規格です。前述し
ルタ回路や発振回路など安定した特性が必要されるとこ
たように高誘電率系ですぐれた温度特性を求めるのは困
ろに使われます。このため低誘電率系は温度補償用とも
難ですが、X8R 特性製品の実現はカーエレクトロニクス
呼ばれます。
の発展に必要不可欠です。TDK では材料組成や工程条件
車載電子機器は極寒から酷暑までの環境温度で使用
の改善により、誘電セラミックスの粒子構造の最適化や
されるところが一般の電子機器との大きな違いです。ま
粒径の均一化を図り、125℃対応X7R 特性製品に続き、
た、自動車のエレクトリック化とともに搭載されるECU
150℃対応X8R 特性の積層セラミックチップコンデン
(電子制御ユニット)は数10 個~100 個ほどにも及び、
サを製品化しました。最先端の市場ニーズに応えたX8R
それにともなって多数のワイヤハーネスが車内に張り巡
特性製品の実現により、温度による搭載部位の制約はな
らされるようになりました。ワイヤハーネスの重量は数
くなりました。エンジン制御ユニット、センサモジュー
10kg にも及ぶため、近年、車両重量の軽量化のために
ル、HID、ABS など、各種車載機器において高信頼性のパ
ECU はエンジンルームに置かれるようになっています。
フォーマンスを発揮します。
しかし、走行中のエンジンルームの温度は125℃、エンジ
□DCバイアス特性
( )
( )
□温度特性
Temperature(℃)
( )
□自動車の環境温度
トランク内部(85℃)
エンジン表面(150℃)
車室 (85℃)
エンジンルーム
(125℃~150℃)
03
150℃対応のX8R特性積層セラミックチップ
コンデンサは、
エンジン表面やエンジンまわりの
高温部位で使われる電子機器にも実装できる。
高信頼性 車載用積層セラミックチップコンデンサ
二重のフェールセーフ設計による高信頼性 CEU シリーズ
積層セラミックチップコンデンサは誘電体層と内部
なっていることです。まず外部端子に導電性樹脂層を採
ます。これは多数のコンデンサを並列した等価回路とな
緩和してクラックの発生を抑制します。加えてコンデン
電極をサンドイッチ状に多層積層した構造となってい
用しているので、プリント基板からのたわみ応力も吸収・
るため、1 つのコンデンサの絶縁破壊も回路のショート
サを直列にした内部電極構造により、万一、コンデンサ素
につながります。しかし、たとえば2 つの積層セラミック
体にクラックが発生して片方のコンデンサ部の内部電極
チップコンデンサを直列につなぐと、万一、片方のコン
が絶縁破壊を起こしても、もう片方のコンデンサ部の内
デンサが絶縁破壊を起こしても、回路はショートからま
部電極が絶縁性を保ち、回路のショートを回避します。
この二重のフェールセーフ設計により、CEU シリーズ
ぬがれます。この考え方を取り入れ、2 つのコンデンサを
は安全性確保が何よりも優先される車載用電子機器の
直列接合したのと同等の内部電極デザインとしたのが
電源ラインなどに最適です。また、2 個のコンデンサが
CEU シリーズです。
1 個ですむため、回路基板の省スペース化にも効果的です。
CEU シリーズの特長は二重のフェールセーフ設計と
□積層セラミックチップコンデンサCEUシリーズの内部構造
外部端子電極
Snめっき層
Niめっき層
導電性樹脂層
Cu下地層
直列構造の内部電極
クラック
導電性樹脂電極層が外部からのストレスを
吸収してセラミック素体を保護。
内部電極を直列構造にすることで、クラック
発生時の絶縁破壊を抑制。
04
高信頼性 車載用積層セラミックチップコンデンサ
熱ストレス/基板たわみに抜群の耐性をもつメガキャップ
電子機器の電源では放熱性を高めるためアルミニウム
ンデンサです(TDK では“メガキャップ” という名称で
載電子機器は激しい温度変化にさらされるため、アルミ
メガキャップは熱ストレスや基板たわみに対して、
などの金属基板が多く用いられています。ところが、車
提供しています)。
ニウム基板の伸縮の度合が大きく、搭載された積層セラ
抜群の耐性を有し、3000 サイクルの熱ストレス試験
ミックチップコンデンサに強いストレスが加わって、は
でもクラックの発生はなく、きわめて高い信頼性を保
んだクラックやコンデンサ素体のクラックを発生しやす
持します。2 個のコンデンサを積み重ねて金属キャッ
くなります。
プを取り付けた2 段積みタイプもあります。同容量の
たとえば-55~+125℃の温度変化により、アルミニ
コンデンサを2 個並列に用いる回路などで実装面積を
ウム基板の伸縮は1608 形状(1.6×0.8mm)の積層セ
削減できます。
ラミックチップコンデンサの搭載部で7 μm、4532 形
基板にはんだ接合された積層セラミックチップコン
状(4.5×3.2mm)の 搭 載 部 で は20 μm に も 及 び ま
デンサに交流電流が加わると、セラミックスが電歪効果
す。また、温度変化に加えて走行中の振動や衝撃による基
によって伸縮し、基板を振動させて音を発生することが
板たわみ応力が加わると、クラック発生の危険性はさら
あります。積層セラミックチップコンデンサに特有の
に高まります。この問題を解決するのが、外部端子に金属
“ 鳴き” といわれる問題ですが、この解決のためにもメガ
キャップを取り付けたタイプの積層セラミックチップコ
□メガキャップ
(金属端子付き積層セラミックチップ
コンデンサ)2段積みタイプの構造
キャップはきわめて有効です。
□基板たわみによるストレス軽減
《基板たわみ(2mm)シミュレーション》
ストレス
大
高温はんだ
金属端子
Snめっき層
Niめっき層
Cu下地層
小
電極部分に負荷が集中する
金属端子の使用によって
コンデンサに加わる負荷が軽減される
□熱ストレス試験の比較
汎用タイプ
C3225
はんだ
1000サイクルで
はんだクラックが
発生
端子電極と
はんだの接合部
初期
1,000サイクル後
3,000サイクル後
メガキャップ
CKG32K
金属端子
金 属 端 子 により
応力の緩和
05
高信頼性 車載用積層セラミックチップコンデンサ
TDK の車載用積層セラミックチップコンデンサ
現在の自動車は走るエレクトロニクス機器ともいわれ
コンデンサ。全製品がRoHS により規定されている鉛、
積層セラミックチップコンデンサだけでもECU などに
境配慮型製品です。HEV(ハイブリッドカー)やEV(電
るほど、使用される電子部品の数は年々増加しており、
水銀、カドミウムなどの禁止物質をいっさい含まない環
1000 個以上も使われています。素材技術、プロセス技
気自動車)の本格的な普及に向けて、TDK では積層セラ
術、評価・シミュレーション技術、生産技術、デバイス&
ミックチップコンデンサをはじめとする車載用電子部品
モジュール技術という蓄積コアテクノロジーを結集して
のラインアップをさらに充実させ、安全・安心・快適なド
生み出されるのが、TDK の車載用積層セラミックチップ
ライブを力強くサポートしています。
□TDKの車載用コンデンサ
汎用タイプ
中耐圧タイプ
高誘電率系および
低誘電率系(温度補償用)
各種製品
定格電圧100~630V
X7R、X7T、X7S特性品など
高温度保証タイプ
メガキャップタイプ
150℃保証 X8R特性品
熱や機械的ストレスに強い金属
キャップ付タイプ
CEUシリーズ
導電性樹脂電極タイプ
内部電極直列構造+樹脂電極による
高信頼性タイプ
鉛フリーはんだに対応。
外部端子電極に
導電性樹脂層を挿入
Sn
導電性樹脂層
Ni
Cu
直列構造の内部電極
導電性樹脂電極
CERシリーズ
ESRコントロールタイプ
導電性接着剤実装対応電極タイプ
導電性接着剤に対応した
3元系AgPdCu端子など
AgPdCu
内部電極:
Ni(ニッケル)
母材:Cu(銅)
2013.12.17
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