JR東日本 E7系新幹線電車

JR 東日本 E7系新幹線電車
生産本部 技術部
図 1 製品外観
1 はじめに
コンセントが配置されている.
JR東日本では,2014年度末の北陸新幹線金沢開業に
バリアフリー設備として,7・11号車に車いす対応の
合わせ,E7系新幹線電車の開発を行った.この車両は
腰掛を配置し,各座席手すり部に座席番号を示す点字名
30‰勾配区間,電源周波数が50/60Hzの2周波対応など,
板が設置されている.
線区条件に対応可能な構造とし,
「高い安全性・信頼性」
,
「さらなるお客さまサービスの向上」を追求した車両と
客室照明は新幹線では初めて全車LED照明を採用し,
省エネ化,メンテナンスフリー化を図っている.
なっている.
内装構造は,アルミ複合パネルを用いた天井,アルミ
形材を用いた荷物棚(グランクラス車はハットラック構
2 構造および特徴
造)
,およびアルミ一体プレスの側パネル(グランクラ
2.1 車体
ス車はFRP)で構成されている.
2.1.1 基本構造
編成は12両固定編成(10M2T)とし,運転最高速度
は275km/hである.
車体はアルミダブルスキン構体による気密構造とし,
先頭部長さを9.1mとしている.
2.1.2 客室設備
客室は12号車にグランクラス車,
11号車にグリーン車,
1 ~ 10号車に普通車が配置されている.
腰掛配列は,グランクラス車が2列+1列,グリーン車
が2列+2列,普通車が3列+2列であり,シートピッチは
図 2 グランクラス車
それぞれ,1300mm,1160mm,1040mmとし,各座分の
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JR 東日本 E7 系 新幹線電車
すべての洋式トイレにはベビーベット,ベビーチェア,
温水洗浄機能付き暖房便座が設置され,1・3・5・9・12
号車に配置された女性専用トイレにはチェンジングボー
ドも設置している.7・11号車の車いす対応トイレは改
良型ハンドル形電動車いす対応となっており,また便器
とは独立したオストメイト設備が設置されている.
図 3 グリーン車
図 6 多機能トイレ
多目的室は改良型ハンドル形電動車いすが利用可能な
大きさとし,2人掛のソファーベッドを設置している.
図 4 普通車
2.1.3 出入台設備
各出入台には配電盤スペースを設け,12号車の出入台
には四季をモチーフにした高級感のある朱色の飾り板を
設置している.
図 7 多目的室
各部には触知図または点字名板を設置し,出入台には
防犯カメラが配置されている.
出入台照明はLEDによるダウンライトを使用してい
る.
内装構造はアルミ複合パネルを主に使用し,配電盤枠
およびトイレ・洗面台はアウトワークされたものを車体
図 5 12 号車出入台
へ組み込むモジュール構造を基本としている.
奇数号車にサニタリースペース(7・11号車は車いす
対応)
,6号車に車掌室,7号車に多目的室,3・7号車に公
2.2 ぎ装
衆電話,7・12号車には車販準備室・GA準備室を配置し
2.2.1 床下機器
床下機器レイアウトは,主要機器である主変圧器・主
ている.
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変換装置・高圧機器箱をM2系に,主変換装置,補助電
表示灯が点滅することで側引戸の開閉のタイミングを案
源装置補助整流装置をM1系に共通配置した.
内する.
床下中央部には,主変圧器,主変換装置,補助電源装
2.2.4 運転室
置,空調装置,連続換気装置,ブレーキ制御装置,水揚
装置を基本配置とし,パンタグラフ搭載号車には補助電
運転士腰掛位置は車体中心から偏心させ,斜め後ろに
動空気圧縮機を配置している.
助士用腰掛を設けた.運転士前面には速度指示計,その
車端部には汚物タンク,蓄電池箱,接触器箱,補助電
右方に車両情報表示器2台を配置している.非常通報等
動空気圧縮機,制御回路ツナギ箱等を設置した.
のブザーについては,運転士足元左に取付した.背面に
JR東日本の新幹線電車の床下スペースは,着雪防止,
走行抵抗の低減などの観点から,側面・下面ともカバー
は運転中に基本的には扱わない機器を配置した.
また,運転室内の照明,テーブル灯については長寿命
で覆う構造が採用されている.これらのカバーは,これ
化のLED方式を採用している.
までボルトでの固定が主であったが,E7系では開閉す
ワイパアームの停止位置は,走行時の先頭部の気流解
る頻度が高い部分については,ラッチ錠で固定する方式
析を実施し流線に沿った位置とすることで,騒音低減を
を採用し,メンテナンス作業の容易化を図った.
図っている.
図 8 側カバー
図 9 運転室
2.2.2 屋上機器
2.3 主要システムおよび機器
2.3.1 主回路および補助回路装置
屋上は,騒音防止のために極力突起部分をなくした平
滑化構造としている.屋根上には低騒音パンタグラフ,
主回路システムは,M1車,M2車の2両1ユニットを基
低騒音ガイシ・空気管ガイシ,保護接地スイッチ(EGS)
,
本としている.主変圧器と主変換装置は50/60Hz併用を
静電アンテナ,FMラジオアンテナ,直ジョイント,3分
可能としている.
岐ジョイント等を配置した.
補助回路システムは50/60Hzに対応するため,補助回
転機類の電源供給を交流440V-60Hzの三相方式とし,編
2.2.3 室内機器
成引通しによる並列同期運転を可能とすることで,冗長
客室内には,前後位の内妻仕切上部にフルカラー
性を向上させている.蓄電池にはニッケル・カドミウム
LEDを用いた案内情報表示器と客室防犯カメラを,内妻
蓄電池を採用し,メンテナンスコスト削減を図っている.
仕切パネルには対話型非常通報装置を,側天井部にスピ
2.3.2 車両情報管理装置
ーカを設置した.
車側には車側灯,側面行先表示器,座席指定表示器を
車 両 情 報 管 理 装 置 に はS-TIMS(Shinkansen Train
設置した.側面行先表示器は,E5系と同様にフルカラ
Information Management System)を搭載した.従来同様
ー LEDを用いるとともに,文字サイズを拡大し,表示
の力行・ブレーキの編成制御,機器の遠隔開放,サービ
機能の多機能化と視認性の向上を図った.
ス機器制御等の機能のほか,北陸勾配制御機能や補助回
また,側出入口部にはバリアフリー対応として,発光
路システムの三相並列同期運転の制御機能が追加されて
手すりを側出入口の柱キセ内部に設け,側引戸開閉時に
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いる.
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JR 東日本 E7 系 新幹線電車
2.3.3 保安装置
2.4.3 軸箱装置,軸箱支持装置
北陸新幹線区間はDS-ATCであるが,無線ATCシステ
軸受は実績のある油浴潤滑式円筒ころ軸受とし,軸箱
ムの機能も有する.また,北陸区間を走行するため,
支持装置は支持板方式であり,2枚の支持板で軸箱を側
50/ 60Hz双方の区間に対応した信号処理を可能とし,周
ばりに支持している.
波数切換を自動的に行う構成としている.
2.4.4 車体支持装置
2.4 台車
車体支持装置はボルスタレス支持方式であり,けん引
2.4.1 基本構造
装置は一本リンク方式である.自動高さ調整装置は,作
電動台車はDT211,付随台車はTR7010//TR7010Aと
動油無しタイプとした.走行時の左右振動軽減のため,
称する.空圧方式の基礎ブレーキ装置を採用することで,
グランクラス車両にはフルアクティブサスペンション
構造の簡素化による軽量化と保全性の向上を図ってい
を,その他の車両にはセミアクティブサスペンションを
る.また,新規開業区間の貯雪式高架橋における排雪走
装備することで乗り心地の向上を図っている.
行を考慮して,強化型排障装置を搭載した.
2.4.5 基礎ブレーキ装置
基礎ブレーキ装置は空圧式キャリパを採用することで
構造の簡素化と軽量化を図っている.また,中央締結式
ブレーキディスクと等圧式ライニングを採用すること
で,ディスクとライニングの偏摩耗防止と局部的な温度
上昇を防止している.
図 10 DT211 台車
図 12 付随台車基礎ブレーキ装置
(小泉貴洋,木元裕勝,堀口健一郎,横山大雅 記)
図 11 TR7010A 台車
2.4.2 輪軸,駆動装置
車軸は中ぐりタイプ,直径860mmのブレーキディスク
付車輪とし,中央締結式のブレーキディスクを採用した.
M軸は,はすば歯車方式の駆動装置と,歯車形たわみ軸
継手(WN継手)を採用した.T軸は車輪ディスクの他に1
軸1ディスクの軸マウントディスクを搭載した.
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電動空気圧縮機
サービス機器他
セキュリティ
そ トイレ
の
他
洗面所
業務室等
空気調和装置
保安装置
制御方式
ブレーキ方式
ブレーキの種類
車両情報管理装置
側出入口
主
要
機
器
−
−
−
●● ●●
>
●● ●●
⑦
●● ●●
⑧
260km/h (車両性能:275km/h)
5号車
6号車
7号車
8号車
●● ●●
⑥
−
共用
女性用
共用
女性用
共用
女性用
小便所
−
−
−
普通車
9号車
−
−
普通車
−
−
CI23系
普通車
−
−
普通車
−
−
共用
女性用
共用
女性用
小便所
−
−
乗務員室
車いす対
応多機能
トイレ
小便所
車いす
対応
多目的室
車販準備室
−
−
共用
女性用
共用
女性用
小便所
−
MH1133系 C1200E系
−
普通車
AU219 床下準集中形空気調和装置×2
DS-ATC(デジタル),RS-ATC(無線)
VVVF制御方式
回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ
常用,非常,緊急,耐雪,抑速
MH1133系 C1200E系
−
−
普通車
片引戸 (片側数1∼10号車2枚,11∼12号車1枚)
−
−
普通車
●● ●●
⑩
●● ●●
⑪
○○ ○○
金沢→
⑫
−
−
−
−
−
普通車
10号車
車いす
対応
車いす対
応多機能
トイレ
−
−
−
−
−
グランクラス車
12号車
行先案内表示器(大型フルカラーLED),座席指定表示器(3色LED),車内案内表示器(フルカラーLED),自動放
送装置,FM車内輻射装置,座席コンセント(全席),公衆電話(3,7号車),セミアクティブ動揺防止制御装置(1
∼11号車),フルアクティブ動揺防止制御装置(12号車)
共用
女性用
女性用
小便所
GA準備室
MH1133系 C1200E系
−
グリーン車
11号車
凡例:連結器(+:密着) 車軸(○:T軸,●:M軸)
●● ●●
⑨
対話形非常通話装置(客室・洋式便所)・客室カメラ,デッキカメラ,通路カメラ
−
共用
女性用
小便所
MH1133系 C1200E系
−
−
−
普通車
普通車
4号車
●● ●●
⑤
電動台車: DT211(3.04),付随台車: TR7010/TR7010A
パンタグラフ
主電動機
主変圧器
主変換装置
補助電源装置
補助整流装置
2号車
1号車
3号車
●● ●●
<
④
台車形式(歯車比)
●● ●●
③
約540(空車時)
○○ ○○
②
最高運転速度
号車
車種
形式
客室区分
定員(人)
編成質量(t)
連結面間距離
車 車体長さ
体 車体幅
寸 屋根高さ
法 床面高さ
台車中心間距離
編成
←東京
①
表 1 主要諸元表
洋式便所:清水空圧洗浄排出方式
(全洋式便器洗浄機能付き暖房便座)
小便所 :清水空圧洗浄重力排出方式
オストメイト(多機能トイレに設置)
気密押さえ装置付
応荷重・滑走再粘着,遅れ込め制御付
低騒音シングルアーム式(一体可動すり板)
強制風冷三相かご型誘導電動機 定格300kW
1次25000V・2次1500V・3次400V 50/60Hz
3相電圧型3レベルPWMインバータ
3相電圧型PWMインバータ方式,単相変圧方式
3相全波整流方式
回転式
1195(50Hz)/1435(60Hz)ℓ/min以上
冷房:37.21kW×2 暖房:20kW×2
パンタグラフ折りたたみ高さ:4480mm
12両編成(10M2T)
図 13 編成図
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