医用画像情報学演習 Screen-detected Lung Cancer : A Retrospective Analysis of CT Appearance <Introduction> 低線量 CT(LDCT)を用いた肺癌スクリーニングは,世界中の調査研究で行われ無症候性 のリスクある個人で早期肺癌を検出するというコンセンサスがある.当施設は多施設国際 早期肺癌のアクションプログラム(I - ELCAP)の一環であり,初回のベースライン LDCT と,年間リピート LDCT は 4500 例以上行われている.集団検診で発見した肺癌は,一般的 な肺癌の形態,組織,予後が異なることが議論され未解決問題もある.我々は集団検診で 発見した肺癌を,形態的特徴と生物学的特性をレトロスペクティブに分析した. <Materials and Methods > Study Participants I - ELCAP の一環として我々は 2003 年 9 月から肺癌のスクリーニングを実施している. 登録基準は,年齢 50 歳以上,10 年間以上の喫煙歴,事前に癌がない(nonmelanotic 皮膚 癌を除く),一般的に健康(肺癌が発見された場合,さらに治療を受ける)である.この分 析の時点で 4782 人が登録していた.女性 2630 人(55%)と男性 2152 人(45%).倫理委 員会より承認され,書面によるインフォームドコンセントを参加者から得た. CT Scans スクリーニング CT は低線量(40-60 mAs,120 kV,1 mm-1.25 mm の Axial)で 4-64 列を 使用した.画像条件は縦隔(Window Level 50 HU,Width 350 HU)と肺野(Window Level -700 HU,Width 1500 HU)とした.放射線科医 1 名(経験 7-30 年の胸部放射線科医)によって 読影され,疑わしいとみなす全結節は主任研究員(HCR)によって再検討された. Screening Protocol I - ELCAP プロトコルによるとベースライン CT の結果では,非石灰化結節≧5 mm または 非充実性結節≧8 mm の場合,陽性と考えられた.陽性結果を持つ人のフォローアップ期間 は結節の特徴によって決定された.オプションとして(1)充実性結節≧15mm の迅速生検, (2)一部充実性と非充実性の結節≧15mm には 1 ヶ月の thin-slice LDCT と抗生物質を, (3) 充実性結節≧5 mm には 3 ヶ月の thin-slice LDCT を,を含む.年間リピートスキャン結果 は新しい結節が検出されるか,既存の結節が増大した場合,陽性と考えた. Analysis of Lung Cancers 肺癌症例のレトロスペクティブ分析では,患者の人口統計,喫煙歴,検出時期,CT での 出現,組織学,治療,およびステージの評価である.病変の辺縁は,平滑,分葉,または スピキュラとした.基礎となる血管が明瞭で不透明度がスリガラスの density で構成され たときに腫瘍の性状は非充実性とした.腫瘍がスリガラスと充実性の要素の両方で構成さ れたとき一部充実性とした.以上でない場合,結節は充実性とした.フォローアップは結 節のサイズ,性状,辺縁が変化した場合に評価した.結節のサイズが増大した場合,成長 速度は以下の式(12)を用いて算出した. Ti x log2 / 3 x log(Di / DO)(Ti):interval time(Di):初期の直径(DO)最終的な直径 ベースラインで存在しくフォローアップで見られた癌は,罹病の癌と考えた.ベースライ ンで癌が存在し,見直し中にも存在した癌は有病率の癌と考えた.PET は術前病期分類のみ 少数患者で行われた. <RESULTS> 84 例からの合計 86 肺癌が確認され,全体的な肺癌の検出率は 1.79%であった. Histology 癌 n=2 は最近診断され,CT ガイド下生検の結果は非小細胞肺癌(NSCLC)であり,利用でき なかった.NSCLCs n=8 のうち,気管支癌(BACS)n=10,腺癌 n=53 であった.我々は女性 2 例と男性1例に典型的なカルチノイド腫瘍 n=3 を発見した. Time Point of Diagnosis 癌 n=26(30%)は初回ベースライン CT から診断され,n=17(20%)は 1 ヶ月のフォロー後 に,n=16(19%)は 3 ヶ月のフォロー後に、n=23(26%)は年間リピートスキャンにて診断 された.造影 CT より癌 n=4(5%)はベースライン n=2 後に,1 ヶ月のフォローn=1 後に,1 年間中 n=1 に診断された.癌 n=9(10.4%)がベースラインで見られなかった.これらの癌 n=7 は、年間リピート CT(罹病の癌で新たな結節が見られた.癌 n=2 はレトロスペクティブ に見られ,サイズが増加していた(有病の癌) .罹病 n=2 は,小細胞癌(進展型 1、限局型 1) であった.全癌 n=86 のうち,92%(n=79)は、有病率の診断と考えられ,8%(n=7)は罹病 の診断と考えられた.全体的な有病率は 1.61%(4782 中 77),腫瘍の有病率は 1.65%(4782 中 79),罹患率は 0.20%(3365 中 7)であった. CT Morphology 平均腫瘍サイズは 20×15mm(中央値 18×13mm,範囲 6-56mm)であった.充実性 n=52(61%), 非充実性 n=14(16%),一部充実性 n=20(23%)であった.組織学的に BAC と証明された癌 n=10 は,非充実性 n=5,一部充実性 n= 4,充実性 n=1 であった.腺癌 n=53 のうち,非充実性 n=9(17%),一部充実性 n=15(28%),充実性 n=29(55%)であった.辺縁の中で最も頻繁 に観察されたのはスピキュラ n=35(40.5%)であり,平滑 n=34(39.5%),分葉状 n=17(20%) であった. Growth Rate フォローは癌 n=63 が可能で,スキャンの間隔は 1-40 ヶ月であった.フォロー間隔が 3 カ 月未満は 23 例あり,このタイムラインは成長速度の計算には短すぎると考え分析には含まれ ていない.したがって成長速度評価のためのフォロー画像は癌 n=41 利用可能であり,間隔の 中央値は 9 カ月(範囲、3-40 ヶ月)であった.これらの腫瘍 n=41 のうち,n=35 がサイズの 増加,n=1(ステージ 3B 大細胞癌)はサイズと density(一部充実性から充実性に)が増加, n=4 は変化なしであった.増大する腫瘍 n=36 のうち,女性 n=25,男性 n=11 であった.平均 倍加時間(DT)は 259 日(中央値、134 日)であった.女性では平均 DT が 313 日(中央値、 156 日)であり,男性では平均 DT が 137 日間(中央値、92 日)であった.14 例では DT100 日 未満であり,15 例では DT100-400 日であった.腫瘍 n=7 は 400 日を超え,すべて女性であり 腺癌 n=5,BAC(n=2)であった. Stage at Diagnosis 75 例の外科的ステージングでは,55 例(68%)がステージⅠ,5 例がステージⅡ,7 例が ステージⅢ,8 例がステージⅣであった.小細胞癌 n=5 のうち限局型 n=2,進展型 n=3 であっ た. Treatment ほとんどの癌 n=62 (73%)は外科的に切除した. 8 例(9.3%)は化学放射線療法を受け た.5 例(6%)が化学療法のみを受けた.5 例(6%)が切除と化学療法の組み合わせによっ て治療された(全 NSCLCs).1 例(1.1%)は放射線治療された.小細胞肺癌の 1 例(1.1%) が切除,化学療法,および放射線の組み合わせで治療された.腺癌 n=1 は,経過観察した。 NSCLCs n=2 で手術が予定されて,放射線治療 n=1 はステージⅣの癌に計画された. <DISCUSSION> LDCT を使用してのリスクある個々のスクリーニングは,無症候性で早期肺癌ステージでの 発見と治癒できる可能性がある.症候性で検出された肺癌の 70%は上葉(他文献)にあった. 当研究では集団検診で発見した肺癌の 63%であった.症候性で検出された肺癌は右肺(他文 献)で一般的に 1.5 倍である.我々の研究では右:左への比率は 1.1:1 であった.結節サイ ズは性質の予測因子として信頼できず,結節サイズに大きな幅があると当研究でわかった. 結節の性状は重要な特徴であり一部充実性結節は悪性であることが最も疑わしいことがわか っている.この特徴は当研究の集団検診で肺癌の 23%に存在していた.最も一般的に特異性 が少ないのは充実性の癌である(当研究で最も多い結節) .結節の辺縁は強く成長に関連して いると思われる:不均一な成長速度を示唆する分葉状は悪性結節の 1/3(他文献)に認めた. 当研究では集団検診の肺癌 40%(研究対象集団の 2.0%)は平滑な辺縁であった.悪性腫瘍 のうち最も特異的な辺縁は解剖学的構造に沿って放射状の拡張(スピキュラ)であり 90%の 悪性指標となる.当研究で肺癌の 40%に発見した. 当研究で男性は女性より喫煙のレベルが高く,性別分布が均等であるにもかかわらず,多 くの癌は女性であった.男性と女性の喫煙に対する反応の違いは他文献で述べられている. 肺癌スクリーニングは女性により多くの肺癌をもたらすという(他論文)報告がある.女性 肺癌は男性肺癌とは異なる取扱が必要になる.なぜなら長い DT の癌,およびほとんどの腺癌 は女性で診断されたためである.女性の喫煙者と元喫煙者を考慮する際に過剰診断の議論は さらに重要である. 肺癌スクリーニングで重要な未解決問題は,死亡率への影響である. BAC と腺癌は最も一 般的に過剰診断に関連付けられる.当研究で発見された腺癌 n=9 はステージⅡまたはⅢであ り,腺癌 n=5 がステージⅣであった.腺癌 44 例中 3 例は診断後 17 カ月未満に肺癌で死亡し た.一方,当研究の純 BAC 患者は,すべて順調であった(全患者がステージⅠでありまだ生 存している) .特に腺癌と BAC の区別,および潜伏腫瘍を発見するために,より多くの生物学 的情報が必要となる. 肺癌に最も容易に利用できる生物学的マーカーは成長速度である.集団検診の肺癌は特に 女性(他論文)で,一般の肺癌よりも長い DT であるという報告がある.過剰診断になりやす い癌は,以前は DT が 400 日(他文献)を超えるとして定義されている.この定義では,我々 の肺癌 n=7(8.3%)は全女性に過剰診断となると考えられる。これは文献に記載された 27% と 57%より低い.集団検診の肺癌にて高悪性度に成長する小細胞肺癌であるが,時間バイア スの議論でこの癌は,スクリーニング検査(他文献)で見逃しを示唆している.我々は小細 胞癌 n=5 を発見しそのうち 3 例は診断後 9 ヶ月以内に死亡した. LDCT にて中枢病変または気 管支内病変を非造影で容易に見逃している. 現研究の主な制限は,集団検診と非集団検診の肺癌との比較を可能にするコントロール群 の欠如である.当研究の技術的な限界は,成長速度を評価する測定者に依存されることであ る.コンピュータ支援検出プログラムは非充実性の結節を除外する.なぜならシステムが確 実に正常肺と早期スリガラスの density を区別することができないからである.コンピュー タ支援検出アルゴリズムの今後の発展は,より客観的な測定に有用かもしれない. <CONCLUSIONS> LDCT を用いたスクリーニングにて早期に治療可能な段階で肺癌を検出した.当研究で発見 した肺癌は,一般的な肺癌として記載されている位置,サイズ,または CT の描出に関しては 違いがない.しかし性別分布(主に女性),組織(大部分は腺癌や BAC)および成長速度が異 なった.これらの要因の組合せにより過剰診断を回避することができるのではと考えられる. 特に女性の成長しない,もしくは成長速度が遅い非充実性癌の治療には注意が必要である. また集団検診で発見されたほとんどの肺癌は外科的に切除可能であった.
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