― 目次 勝者に共通する一五の特性 …………… ノードストローム …… 人間を大事にしたアプローチ …………… 勝つ人は、 「人間中心」に考える 勝者とは、いったい何だろう? …… 勝者になるためには、何が必要か? …………… 勝つ人になるための九つの法則 ― 勝つ人とは、どういう人たちだろう? 勝つ人はなぜ、 「この言葉」を使うのか? 第1章 第2章 第3章 ― ― 企業のケーススタディをしてみよう ストーリーを語って人を引きつける …… スーパーに行ったら、周囲を観察してみる …… 1 上質な質問が上質な人生を生み出す …… 76 68 65 71 「真実」につながる問いかけが成功を最大化する …… 人々の足りないものに目を向ける …… 62 23 7 49 24 79 第4章 第5章 人々の不安に目を向ける …… 人間中心に考えるための七つの言葉 …… 一番先にやることの価値 …………… 勝つ人は、 「パラダイム」を壊す ― パラダイムは壊さなければならない …… なぜ、マクドナルドは世界的企業になったのか? …… パラダイム破壊は一人の人間から始まる …… 勝者は現状に戦いを挑む …… 「普通」が「特別」になるためのキーフレーズ …… パラダイムを破壊するための一〇の言葉 …… デマンドをつくり出す …… 一歩ずつ自信をつけていく …………… 勝つ人は、 「優先順位」をつける ― ― ジョンソン・エンド・ジョンソン …… 人はわずか七秒で判断し、判断される …… コミュニケーションの達人がやっている優先順位づけ …… メッセージを何度も変えてはいけない …… やりたい行動に優先順位をつける …… メッセージを届ける相手に優先順位をつける …… 列挙して、人に伝える …… 優先順位づけに役立つ八つの言葉 …… なぜ、 「これで十分だ」では、十分でないのか? …… レクサスに学ぶ「完璧への飽くなき追求」…… 手本を示して完璧をめざす …… パートナーシップは信用を築く …… パートナーシップは大きなパワーを生み出す …… 「相性」がよいと成功に近づく …… 言葉と行動で連帯感をつくり出す …………… 勝つ人は、 「パートナーシップ」を大事にする 完璧を表す一〇の言葉 …… 155 企業のケーススタディをしてみよう 102 189 なぜ「グレート」でもまだ足りないのか? …………… 178 173 161 159 197 183 勝つ人は、 「完璧」をめざす ― 111 135 142 144 132 213 225 223 230 第6章 第7章 ― 206 2 3 91 93 98 88 124 138 175 208 149 第8章 安心感を示すためにパートナーシップを結ぶ …… パートナーシップについて使うべき一〇の言葉 …… 人を突き動かす力 …………… 勝つ人は、 「情熱」を表現する ― 情熱の役割を理解する …… 高度一万メートルの情熱 …… 「死んでからゆっくり眠るさ」…… 情熱をビジュアルで伝える …… 情熱の伝え方が成功のカギを握る …… 情熱が裏目に出てしまうとき …… 情熱を表す七つの言葉 …… 評判と信頼を築く …………… 勝つ人は、 「説得力」がある ― 言葉の使い方を誤ると説得はうまくいかない …… スティーブ・ジョブズが大事なことを三回言う理由 …… AからBに動かす …… 言う・情報を伝える・教育する …… 「何を言うか」ではなく「相手がどう聞くか」が問題である …… 相手の話をとにかく聞く …… 「共通の原則」が賛成を勝ち取る …… 人々が望んでいるものを与えなさい …… シンプルだが、単純ではない …… 説得に効果のある九つの言葉 …… 失敗から学ぶ …………… 勝つ人は、 「粘り強さ」がある ― モチベーションをつくり出す …… 「九時~五時」にとらわれていては大きな成功はない …… 354 「粘り強さ」とは、何があってもけっしてあきらめないこと …… 勝利とは、 「個人的な粘り強さ」がもたらす …… 粘り強さを伝える六つの言葉 …… 358 4 5 292 345 318 314 342 312 311 309 306 349 232 235 287 262 240 258 253 245 248 274 278 271 302 296 323 第9章 第 章 10 第 章 ― 正しい方法で勝利する …………… 理念がなければ、信頼は一瞬にして崩壊する …… 理念を伝えるための一〇の言葉 …… 勝者の楽観主義 …… 勝者と単なる成功者を分けるのは、理念である …… なぜ、理念に基づいた行動が大事なのか? …… 365 ©Monalyn Gracia/Corbis/amanaimages 山中 央 オフィス・カガ 増山雅人 黒川可奈子 (サンマーク出版) 井上新八 367 装 丁 カバー写真 本文組版 翻訳協力 編集協力 編 集 385 384 372 361 勝つ人は、 「理念に基づいた行動」をする 第1 章 謝辞 …………… 11 勝者に共通する一五の特性 ― こう考えたらいい。勝利があまり難しいものでなかったら、勝ってもそれほど気分よ くないじゃないか。 マイク・リヒター (スタンレー・カップ優勝、アイスホッケーの殿堂入り選手) ― 何のおかげで成功できたかって? 三つある。アメリカに来たこと、一生懸命やった こと、ケネディ家の人間と結婚したことだ。 アーノルド・シュワルツェネッガー (俳優・政治家) どのように言ったか、なぜそれを言ったかを紹介しながら、そこから何が学べるかを探っ 業や政治の世界で、偉大な業績を上げた人たちを取り上げ、彼らがどんなことを言ったか、 るが、実際にどうすればいいのかまで教えてくれる本はなかなかない。本書は、現実の企 多くのビジネス書が「有利になる方法」や「好機をつかむ方法」などについて述べてい ン」をこれまでにないやり方で分析している。 本書は、現代アメリカの偉大なコミュニケーターたちの「効果的なコミュニケーショ ― 勝つ人とは、どういう人たちだろう? 393 6 7 勝つ人とは、どういう人たちだろう? 第1章 ていく。世の中とは、人々が成功しようと互いに競い合う場所だ。私はこの本で、ビジネ ス界の内外で成功した人たちの視点から、その考え方や、戦略、言葉の使い方などについ て述べていこうと思う。 まず、みなさん自身について、二つの質問に答えてほしい。 )人生においてぜひ勝利を勝ち取りたいと思うか。 ( 1 この本は、四〇人近い勝者たちとのインタビューをもとに書かれたものだ。勝者たちに ◆人生そのものを愛していること ◆自分の運やツキを信じていること ◆失敗をいとわず、失敗しても立ち上がって再トライする不屈の精神 ◆一緒に働いている人たち、影響を与えたい人たちとのいい関係 ◆人生の冒険を楽しむ情熱 ◆知らないことを知りたいと思う好奇心 ◆人と自然に交わることができる能力 ◆他の人たちが後退したり撤退したりしているときにも、前に進んでいく能力 ◆ビジョンを情熱的に、しかも説得力をもって語る能力 ◆現状に満足せず、さらによりよいものをめざす能力と熱意 ◆重要なものがたくさんある中から、絶対に譲れないものを見極める能力 ◆難問とその解決策を、あらゆるアングルから検証できる能力 ◆今何が欠けているかを知り、それを生み出す能力 ◆何を質問すべきか、それをいつ質問すべきかがわかる能力 ◆あらゆる状況で、 「人間的側面」をとらえる能力 あって「普通の人」にない特性は、以下のようなものだ。 のを要約すると、次のような簡単なチェックリストになる。人並み外れた「勝者」に エンターテインメント界のエリートたちと対話を重ねてきたが、そこから得られたも たって企業や政治の世界のコミュニケーションを研究し、ビジネス、政治、スポーツ、 である。結果をまず考えるというこのやり方は、本書も同じである。私は二〇年にわ するかについて、シンプルな哲学をもっている。投資プロセスを後ろから逆算するの O(最高経営責任者) 、ジム・デビッドソンは、一四〇億ドルのファンドをどう投資 アメリカで最も成功しているすぐれた投資会社の一つ、シルバーレイクの共同CE 【勝利の定義】 勝者に共通する一五の特性 どちらにも「イエス」と答えた人は、さあ、先に進もう。 ) 「普通の人」から「抜きんでた人」に成長するために、どんな努力もいとわないか。 ( 2 8 9 WIN : The Key Principles to Take Your Business from Ordinary to Extraordinary 勝つ人とは、どういう人たちだろう? 第1章 は、それぞれの職業においてトップを極めた人、フォーブス誌やフォーチュン誌で「最も 裕福なアメリカ人」に選ばれた人、会社を偉大な高みにまで引き上げた人、チームを世界 チャンピオンに導いた人などが含まれている。みな世に広く知られ、非常に尊敬されてい る人たちである。彼らとの、何百ページにも及ぶインタビューの記録を読むうちに、彼ら ひ けつ にはそれぞれのキャリアにおいて、共通する態度や姿勢があるということが見えてきた。 企業で仕事をしてきたが、いつも驚くのは、別 本書は、彼らの「成功の秘訣」に焦点を合わせて総合的にまとめ、読者のみなさんがそれ を利用できるようにと考えられている。 これまで何十社ものフォーチュン )の会長兼CEOのトム・ハリソンは、マディソン・アベニ ( Diversified Agency Services ューでも最も創造的マインドをもつ人物の一人だ。彼は「直感的に」、何をいつ言うべき ケ テ ィ ン グ・ コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 会 社、 オ ム ニ コ ム グ ル ー プ の 最 大 子 会 社 D A S 流を、人間関係を築く機会、自分を売り込む機会として活用する。世界最大の広告・マー 勝者は、実際に製品を売っていないときも、自分を売り込んでいる。あらゆる人との交 大の価値を予見してそれを追い求めるから、成功するのである。 ことは無視して、最も大きな価値を人々に届けることに賭ける。簡単にいえば、勝者は最 か 生み出すことが可能になる。自分の強みと人々のニーズが合致する点を見いだし、瑣末な さ まつ わせているために、単なるよりよい新製品というだけでなく、革命的なソリューションを 勝者は、人々のニーズと要望を敏感に感じ取ることができる。焦点を常に外の世界に合 潔く間違いを認めて損失を出すべきだ。私はその潮時を知っている。それだけだ」 でも何とかそれを正そうとするが、それでもうまくいかないときもある。そういうときは い優秀な会社だからじゃない。自分を知っているからだ。何かがうまくいかないとき、誰 こう言った。 「 私 が 五 〇 年 も C E O を や っ て こ ら れ た の は、 我 が 社 が け っ し て ミ ス を し な 世界的メディア王、ルパート・マードックは、マンハッタン六番街のCEOオフィスで りした。 ず、必要なときに正しい行動をとることができなかったために行き詰まったり、破綻した は たん キット・シティなど多くの企業が、リーダーたちが失敗を恐れてぬるま湯から出ようとせ 況に対応する。このことは案外軽視されがちである。リーマン・ブラザーズ、GM、サー 勝者は自分自身をよく知っている。自身の強みと弱みを承知していて、それに応じて状 これから順番に説明するが、まず具体的な例をあげよう。 前述した「一五の特性」は、 「勝つ人になるための九つの法則」の基礎となるものだ。 か運がいいと言った。他の仕事をしたいと思っている勝者はいない。 言った人はいるが、全員が今の仕事ができることに感謝しており、自分は恵まれていると いると言った人はいない。一生懸命働く過程で、何かを犠牲にしなければならなかったと を楽しんでいる。自分のしていることを「おもしろい」と表現し、「仕事」だからやって ない人が非常に多いことだ。こういう人たちは、人生の勝者ではない。勝者は自分の仕事 の会社に移りたい、せめて違うボスの下で働きたいと思っているのに、それを行動に移さ 5 0 0 10 11 WIN : The Key Principles to Take Your Business from Ordinary to Extraordinary 勝つ人とは、どういう人たちだろう? 第1章 かを知っている。 勝者は、相手の不安や感動を効果的に引き出して語らせることができる。相手の話を注 消費者自身がわかっていなく 意深く聞き、聞いたことを正確に復唱し、その中で相手の差し迫ったニーズを明確に語る。 ― たちどころにわかる。ハリソンはこう言う。 「耳と目を全開にして聞くことです。 そして、それらのニーズを満足させる製品が何であるか ― ても 相手の言うことを隅々まで理解すれば、相手のことが考えの中心になります。よく聞かず の音楽は、ショーが終わってもいつまでも耳から離れな のリーダー、ボノは、現代を代表する世界的に有名なロックスターで、 に自分なりに解釈してしまうと、自分が中心になってしまう。多くの人が失敗するのはそ こなんです」 ロックバンドU まぎれもない勝者といえる。U 年』に登場 1 9 8 4 必要なだけの時間と努力をすべて投入する。自分のやっていることや伝えようとしている 勝者はけっしてあきらめないし、敗北を受け入れない。仕事を正しくやり遂げるために るときだ。自分を負かした相手の表情を見るのが、たまらなく屈辱的なんだ」 コナーズの言葉が気に入っている。 「テニスの試合に負けて一番いやなのは、敵と握手す 代の不愉快な記憶に結びつくという人もいる。私は、テニス界の伝説的名選手、ジミー・ 題を拒絶する人もいる。それは、彼らには敗北がまざまざと見えるからである。子ども時 たがらない。なかには、 「 負 け る 」 と い う 言 葉 が 自 分 の 辞 書 に は な い か の よ う に、 そ の 話 か、頭の中に鮮明な画像をもっている。多くの勝者は、敗北が感情に与える影響を説明し する、一〇一号室に連れていかれた人のように、彼らは負けるということがどういうこと の負けをビジュアル化するということだ。ジョージ・オーウェルの『 勝者は負けを嫌う。それ自体は当たり前かもしれないが、際立っているのは、彼らがそ 葉も紹介しよう。 「打たないショットは一〇〇パーセント入らない」 ない。スポーツ好きの人のために、アイスホッケーの名選手、ウェイン・グレツキーの言 はるかに致命的である」 。最後に成功するためには、失敗を忘れて先に進まなければなら インはかつてこう言った。 「忘れることができないというのは、覚えていられないよりも 勝者は、根気強く、長い時間をかけて成功をめざすことを知っている。マーク・トウェ るが、最終的にそれを取り入れるかどうかは相手に任せる。 な言葉で相手に理解してもらおうとする。無理に押しつけることはない。人々をリードす 勝者は人に説教したりしない。むしろ説得する。はっきりと自分の信念を伝え、穏やか るのは、パワーがあることよりも、近寄りやすい魅力と普通の感覚をもっていることだ。 世界中に巨大な支持基盤をもっている点は多くのロックスターも同じだが、彼が勝ってい なコミットメントが、世界中のつらい境遇にある人たちの心をつかむ様子が伝わってくる。 の会話を聞いたり、政策サミットのホストをしたりしているのを見ると、彼の静かで真剣 だ。トーク番組でラリー・キングと話しているのを聞いたり、他の世界的リーダーたちと の勝者にしているのは、彼らの活動が世代をまたいで社会に波紋を広げつづけていること いし、売り上げも何年も衰える気配がない。しかし彼らを単なるロックスターではなく真 2 2 12 13 WIN : The Key Principles to Take Your Business from Ordinary to Extraordinary 勝つ人とは、どういう人たちだろう? 第1章 ことに、情熱をもって取り組む。情熱は人に伝染する。自分が見ているものを相手にも見 させ、想像しているものを想像させ、自分がしていることを相手にもしたいと思わせるの は情熱だ。ただし、相手の関心を引くのは声の大きさではない。一点に集中することによ って生じる「強さ」である。勝者は、派手に燃え上がる「オレンジ色の炎」ではなく、高 熱を持続し的確に効力を発揮する「青い炎」を使う。 勝者は、めったに利益や収益性について語らない。それどころか成功についてさえ語ら すき ま ない。より大きな目的について語る。そして「一緒に語ろう」と人々を誘う。人間のもつ ざ せつ 弱さや欠点を見いだし、それに働きかけ、他の人たちが気づいていない隙間を埋めること 新興技術への投資を専門とする世界的投資ファンドで、総額一四〇億ドルの運用資産を を考える。多くの人が挫折するような困難も承知で、それを乗り越えて進む。 有するシルバーレイクの共同CEO、ジム・デビッドソンは勝者がもつ微妙な差異につい て、的確に説明した。 「華々しい成功を収める人と並の成功者の違いは、問いにどう答え るかではない。意味のある問いを見分けられるかどうかだ。取り組む価値があるのはどの 問題か、問う価値がある質問とは何か、それがわかる人が、実際にビッグな仕事をする」 本書に登場する多くの資産家たちに共通する人生経験が一つある。それは「貧困」であ かて る。現在の彼らの生活ぶりからは想像もつかないが、お金に不自由した経験、ときに日々 の糧にさえ事欠くような体験は、彼らの若き心に傷を残し、成功への不屈の情熱に大きな 影響を与えたことだろう。 「モール・オブ・アメリカ」や「フォーラム・ショップス」な どの巨大ショッピングモールを手がけた、不動産開発業者で億万長者のハーブ・サイモン は、きわめて貧しい境遇で育った。彼が育ったブロンクスの三部屋のアパートは非常に狭 く、中学生まで両親の寝室に置かれた子ども用のベッドに寝ていたという。サイモンは 「お金はあったためしがなかった。母親はお金の心配ばかりしていたから、子どもの私ま でお金の心配をしながら寝ることもあった」と言う。そのサイモンは、二〇〇九年フォー ブス誌の「アメリカで最も裕福な人」で、三一七位にランクされた。 DKのアパートで育ち、家には冷蔵庫も冷凍庫もなかったという。しかし子ども 。 伝説の知将、ノートルダム大学(インディアナ州)のフットボール監督ルー・ホルツは、 地下の できたのはなぜでしょうか」と聞くと、彼は強い口調で、手に力を込めて振りながら「天 わかった。私が「経済的に苦しい境遇で育ったあなたが、これほど目覚ましい成功を達成 ボール界の象徴的存在だというだけでなく、非常にすぐれた話し手でもあるということが 彼の居間で、すばらしいキャリアを示す品々に囲まれて話していると、彼が大学フット ール選抜試合に導いた唯一の監督としても有名だ。 彼が監督した試合のうち、勝利は二四九試合、敗北は一三二試合。六大学を大学フットボ づけたものはない。それは、彼が手製の料理を振る舞ってくれたからでもあるのだが ― の本を書くために、四〇近いインタビューを行ったが、ホルツ監督との対話ほど私を勇気 時代のこの試練は、常にベストをめざすという彼の信念に大きくかかわっている。私はこ 1 14 15 WIN : The Key Principles to Take Your Business from Ordinary to Extraordinary 勝つ人とは、どういう人たちだろう? 第1章 は人間を、ありきたりのことをさせるためにこの世に送り出したわけじゃない」と言った。 人生に起こることの一〇パーセントは偶然で、九〇パーセントは、その偶然にどう 対処するかなんだ。価値あることを成し遂げた人の多くは、逆境を乗り越えた人たち だ。私は子どものときから苦しいなんて思わなかった。貧しいと思ったことはないし、 貧乏を嘆いたこともない。いいかい、誰かが苦労していたって、ほとんどの人たちは 気にも留めないよ。それどころかそれを見て喜ぶ人もいる。 バスケットボールの伝説的名選手ジェリー・ウェストは、さらに貧しい境遇で育った。 ウェストバージニア州にある人口五〇〇ほどの鉱山の貧しい集落に生まれた。その生い立 ちは悲劇的とさえいえる。彼は子ども時代のことを語りたがらなかったが、逆境を乗り越 えて勝利をつかんだ彼のストーリーは、多くの人を鼓舞することになると説明すると、次 のように話してくれた。初めはどのような状況でも、トップにまで上り詰める可能性があ るということが、彼の話から読み取れる。 俺の家族は、ただ生きていくだけで大変だった。家にたった二五セントの現金さえ ないこともあった。大げさに言っているんじゃない。父親に仕事がない間は、お金は まったく入ってこない。車など乗ったことはなかった。家族で遊びに行ったこともな い。どこに行くにも走っていった。映画『フォレスト・ガンプ』を見て、まるで自分 や のようだと思ったよ。両親は教育をほとんど受けていなかったし、俺も学校に行く手 段はなかった。しかしバスケットボールは好きだった。子ども時代は痩せて小さかっ たから、自分にバスケットの能力があるなんて知らなかった。俺に与えられたのは、 やるべきことをきちんとやる習慣と豊かな想像力、それに俺を見いだしてくれた一人 の人間。それだけだ。だが成功するにはそれで十分だった。 みなさんは、NBAの公式ロゴをよく見た 一四年間で一四回オールスターに選ばれ、引退後に殿堂入りするほどの成功を収めるた めに必要なものは、たったそれだけだった! ことがあるだろうか。ロゴには一人の選手のシルエットが浮き出ている。あれがジェリ 近代ラスベガスをつくり上げたとされる億万長者スティーブ・ウィンは、貧しい境遇で ー・ウェストだ。 育ったわけではない。しかし父親が急死したとき、二一歳の大学生だった彼に残されたの は、一〇万ドル以上の借金と、毎週赤字を生むばかりのビンゴパーラーだけだった。この 時代の彼に関する記録はほとんど残されていない。そこで私はウィンに直接尋ねた。「破 き ぜん 産宣告するか、父親の借金を無視するということは考えなかったのですか」。彼はしばら く私の顔を不思議そうに見て、それから柔らかな、しかし毅然とした声で答えた。 16 17 WIN : The Key Principles to Take Your Business from Ordinary to Extraordinary 勝つ人とは、どういう人たちだろう? 第1章 父は亡くなる前日の夜、私に必要な情報を書き残し「大丈夫だ。何もかもうまくい く。ところでフランクおじさんに一万五〇〇〇ドル、別の人に一万ドルを借りている ので、それも払ってほしい。ちゃんと書いておけ」と言ったんです。私はベッドの横 に座って、父親の言ったことをメモしました。 翌日父の心臓は止まってしまいました。私は二一歳になったばかりで、一〇歳にな る弟もいました。うちには現金もなく、私にとって人生で最大のピンチでした。しか し父親が借金を払えと言ったとき、そのとおりにしようと思いました。父親は約束を たがえるような人間じゃなかったから、私も当然そうすべきだと思ったんです。正直 であることは特別なことでも、誇るようなことでもありませんよ。正直でなかったら、 恥じ入るべきです。 私は翌年の初めまでに、父親のパートナーに七万八〇〇〇ドルを返し、他の借金も 一年以内に返却しました 彼のこの強 靭な精神と高潔さが、倍の年齢の銀行員の心を動かし、ラ きよう じん わずか二一歳の若者が、父親の残した一九六三年当時で一〇万ドルの借金を、たった一 年で返済した! スベガスでビジネスを始めるための資金が借りられたのである。そして彼は現在、世界で 六一六番目に裕福な人だ。 もう一つ、近代ストックカーレースの生みの親アンディ・グラナテリの例を紹介させて ほしい。彼のチームは一九六〇年代後半と一九七〇年代に、人気のインディアナポリス五 〇〇で自ら設計に協力したエンジンを使って優勝した。彼は自動車の発明家としても有名 で、彼自身多くの記録をもつドライバーでもある。しかし彼が最もよく知られているのは、 STPのCEOおよびスポークスマンとしてである。彼のおかげでSTPはディズニーや コカ・コーラと同じように有名になった。彼の車への飽くなき愛情は、数億ドルもの資産 を築くことに結びついた。しかし彼の財政状態は、最初からそんなにバラ色だったわけで はない。彼の生い立ちは本人も認めているとおり、きわめて悲惨なものである。 ぶ 私は本当に飢えるということがどんなものかを知っている。まさに映画『怒りの葡 どう 萄』のストーリーそのものだ。人々はポンコツ車に荷物を積み込んでカリフォルニア に向かうんだが、そこには仕事なんかない。あんなつらい思いは二度と味わいたくな い。私が太っているのは二度と飢えたくないからさ。空腹で死にたくないから、いつ も腹いっぱいにしておきたいんだ。 インタビューしたとき、グラナテリの体重は一三五キロを超えていた。その後ダイエッ トを始めて五〇キロほど減らしたという。勝者たちの多くは、お金によって自由を買うこ とができるという点に賛成するが、グラナテリは、お金があってもしみついた恐怖からは 自由になれないことを知っている。 18 19 WIN : The Key Principles to Take Your Business from Ordinary to Extraordinary 勝つ人とは、どういう人たちだろう? 第1章 私は本書で、 「コミュニケーションの力なくして勝者となることは不可能だ」というこ とを読者のみなさんに伝えたいと思っている。勝者はみな言葉を大事にして、言葉の使い 方に磨きをかける努力をしている。本書では勝者の成功の過程を紹介し、分析していく。 より大事なことは、みなさんがそこから得られる教訓を、人生や仕事において「普通の 人」から「抜きんでた人」になるために生かして使うことだ。 (有効な言葉) 』では、ビジネス、政治、個人の視点 二〇〇七年の『 Words That Work で、特定の言葉や文章のもつ力について探った。二〇〇九年の『 What Americans Really ( ア メ リ カ 人 は 何 を 本 当 に 求 め て い る か )』 で は、 ア メ リ カ 人 と は ど ん な Want · · · Really 人たちで、人生に何を求めているかについて解説した。本書では、世界で最も成功してい る人たちに共通する特徴と、言語面での強みについて述べていきたいと思っている。勝者 をめざす人は誰でも、これらのコミュニケーションの秘訣を学んで活用することができる。 言葉を効果的に使うことがどれほど起業家やCEOの成功において大事か、あるいはマ ーケティングの成功やすぐれた企業文化育成に力を発揮するかについて述べている本は、 他にもあるだろう。しかし本書はビジネスだけでなく、政治、スポーツ、エンターテイン メントまで、幅広い分野の人々を対象にしている。さまざまな世界の最も抜きんでた人か らその偉大さを学び取ることができる。 私はそれぞれの世界で最も成功している人たちの特質を抜き出すことから始めた。それ らの特質が明らかになれば、それらに結びつく効果的な言葉を紹介して、比較的容易に一 般的な場面で使える秘訣をお伝えできると思ったからだ。 しかし言葉そのものだけでなく、 「コミュニケーションのスタイル」もまた、成功をも 』で伝え たらすうえで重要だということにすぐに気がついた。それが『 Words That Work きれなかったことだ。つまり言葉が「実際にどのようなメッセージとして伝わるか」とい うことである。 「ランツの教訓」には具体的なポイントが書かれていて、すぐに日々の暮らしに役立てら れるようになっている。どれもみな「勝つ人になるための九つの法則」に直接かかわるも のである。この「九つの法則」には、ボスとの一対一の会話から、何百人の聴衆や、何百 万人に届くメディアを前にしての公式プレゼンテーションまで、あらゆるレベルで成功を マーカーを準備して、 「 勝 つ 人 に な る た め の 九 つ の 法 則 」 を 学 ぶ 旅 に、 私 と 一 緒 に 出 か 収めるための重要な行動がまとめられている けよう。 20 21 WIN : The Key Principles to Take Your Business from Ordinary to Extraordinary 勝つ人とは、どういう人たちだろう? 第1章 第2章 WIN : The Key Principles to Take Your Business from Ordinary to Extraordinary 第2 章 勝つ人になるための九つの法則 ― 勝者になるためには、何が必要か? ― 大きな山に登ってみてやっと、登るべき山がまだたくさんあるのだということがわか ネルソン・マンデラ (南アフリカの政治家) る。 ― すぐれたビジネスリーダーはビジョンをつくり出し、それを明快に表現し、情熱的に 擁護し、ひたむきにその達成に突き進む。 ジャック・ウェルチ (ゼネラル・エレクトリック社、元会長兼CEO) 何者かになりたいという人と、何事かを成し遂げたいという人には、大きな違いがあ る。アメリカ人の九五パーセントは何者かになりたいと思っていて、そういう人たち がさまざまな問題を引き起こし、何事かを成し遂げたいと思っている残り五パーセン ― トの人たちが、その問題を解決しなけりゃならない。この本が九五パーセントの人た ちでなく、その五パーセントの人たちについて書かれていることを望むよ。 ロジャー・アイレス (フォックス・ニュース創業者・CEO) フォックス・ニュースCEO、ロジャー・アイレスは、「何事かを成し遂げたいと思っ 23 勝つ人になるための九つの法則 ■ランツの教訓 1 ■ 1 コミュニケーション 勝者はプロセスだけでなく結果に注目する。自分についてくればよりよい結果 がもたらされることを、目に見える形で説明する。たとえば、 「健康管理」では なく「健康」について語る。 「健康管理」は単に手段にすぎず、健康こそがよい 結果だからだ。 「健康管理」は人ごとのようで、役人言葉のイメージだが、 「健康」 は人間の望ましい状態を意味する。 2 人間的側面をとらえる能力 勝者は価格や収益性のことだけでなく、クオリティ・オブ・ライフの実現とい う「人間にとっての価値」を人々に届けることを考える。よりよい結果は、数字 の羅列によってではなく、 「人間を理解すること」によってもたらされる。人々 のニーズにこたえることで、持続可能な関係が生じる。勝者はそのことを知って いて、ニーズにこたえるようなサービスや製品を作り、それを「消費者」のよう な漠然とした「マス」にではなく一人ひとりに提供する。 3 技術ではなく「体験」に注目する 勝者は、製品の向こう側にある顧客のニーズがわかる。たとえば人々が求める ものは、iPhone やブラックベリーの本体ではなく、それが提供する便利で簡単 なアプリである。それらのアプリは、人々の暮らし方、働き方を変え、個人的世 界における体験を変化させる。勝者はそのことを、 誰でもわかる普通の言葉を使っ て説明する。 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 22 ている人は、組織全体の五パーセントほどしかいない」と卓見を述べたが、この本はその 五 パ ー セ ン ト の 人 々 の た め に 書 か れ て い る。 そ し て、 そ の 五 パ ー セ ン ト の う ち の ご く わ ずかの、何かを実際に成し遂げた人の教訓と経験を取り上げて紹介している。この人たち が「勝者」である。みなさんが彼らの仲間入りをするのに、この本が役に立てばうれしく 思う。 勝者とは、いったい何だろう? 勝者は、並の人々とは少々違う考え方をする。 「 彼 ら は 脳 の 配 線 が 違 う ん だ よ 」 と、 ト ム・ハリソンは言った。 「DNAが違うんだ。たとえば先方に障害物があるとする。普通 の人はそれをどうやって取り除こうか、それとも避けて通ろうかと、障害物ばかり見てい る。ところが勝者はそんなときも、道の先にある目的地を見つめているんだ」 飛躍の法則』 (日経BP社)の中で、「よい企業がどのようにして偉大 ジム・コリンズと彼の研究チームは、二〇〇一年に刊行されたベストセラー、『ビジョ ナリーカンパニー な企業になるのか」という問いの答えを追求している。まず一四三五の企業をリストアッ プし、その中から最もすぐれた一一社を絞り込んだ。これら「偉大な企業」リストに入る 条件とは、まずまずの業績だったのが、あるとき転換点を迎え、その後は目覚ましい業績 を上げていることだ。具体的にいうと「株式運用成績が一五年にわたって市場並み以下の 状態が続き、転換点の後は一変して、一五年にわたって市場平均の三倍以上になった」と いう基準を満たした企業である。 コリンズたちはそれらの企業に関する書籍、記事、ケーススタディ、年次報告書、財務 分析など、延べ九八〇年分を丹念に調べた。上級管理職や役員たちとの面接は八〇回に及 んだ。また五〇人以上のCEOの履歴、職歴も調べた。さらに企業の給与システム、報奨 制度、レイオフ、企業所有形態、マスコミ報道についても調査した。また各企業の飛躍に テクノロジーが果たした役割についても調べた。つまり、企業の成長に関係するあらゆる 要素を調べたのである。 その結果何がわかったか。コリンズは、よい企業がすぐれた企業に飛躍する「魔法の瞬 間」というものは見当たらなかったと結論づけている。それよりも特徴的だったのは、会 企業のCEO、 社の揺るぎないコミットメントと、リーダーたちが優先事項を明確に掲げて、真に重要な ことにフォーカスしていたことだった。二〇年以上、フォーチュン 企業の上級副社長の地位まで上る だが、それだけでは勝者とはいえない。勝者はさらにその上を行く。勝利とは、株式運 く」人である。 「一番重要なことにフォーカスし」 、それに「何度でも挑戦し」、「そのたびに向上してい 私から見ても、コリンズのこの結論はまさにそのとおりだと思う。成功する人というのは、 各企業のエグゼクティブ、ハリウッドの大物、ワシントンの実力者たちとつきあってきた 1 0 0 24 25 2 用成績が市場平均を超えることや、フォーチュン 5 0 0 WIN : The Key Principles to Take Your Business from Ordinary to Extraordinary 勝つ人になるための九つの法則 第2章 ことではない。そういう人たちは「成功者」で、すぐれた「リーダー」であり、称賛に値 するだろう。しかし「並外れた人」とはいえない。普通に成功している会社もリーダーも 我が国では珍しくない。しかし「並外れた」という形容詞がつけられる会社や人はそう多 くない。 「勝利」とは、今まで誰もやらなかった偉大なことを成し遂げることである。製品やプロ セスに、ときには人々の暮らしに、変革を起こすことである。死後もその仕事の影響がず っと存続することである。マネジメントの大家、トム・ピーターズは二〇〇三年のインタ ビューで次のようなことを指摘した。 ジム・コリンズが「偉大な企業」と呼んだ企業は、たしかによい業績を上げた。そ れは否定しない。しかしそれらの会社は、人々を新しい世界へ連れていったわけでは ない。だがマイクロソフトの場合、会社が五〇年後にまだ栄えているかどうかはたい した問題ではない。世界の最も重要な業界において、最も重要な時期に、人々の認識 に新しい枠組みを生み出したことが偉大なんだ。私に言わせると、それこそがリーダ ーシップであって、あごひげが五メートルになるまで会社が栄えていることではない。 勝利とは、新たな道を切り開き、世の中に新しい枠組みを紹介し、人々がその後に従っ てくるということだ。長期にわたってダラス・カウボーイズのオーナーだったジェリー・ ジョーンズは、彼のチームをもり立ててよい評判をつくるためなら、それこそどんな努力 もいとわなかった。たとえば彼に「ポールに登ってカウボーイズのために旗を振ってはど うでしょうか」と提案したとしたら、彼はよく考えて、それが悪趣味なことでなく、観客 の思い出づくりに貢献し、チームのためになると思えば、おそらくそうするだろう。彼は、 試合を見に来たファンが必ず満足して帰るように、できるかぎりのことをする。だからこ そ二〇一〇年の、 「スポーツ・パーソナリティ・オブ・ザ・イヤー」に選ばれた。彼のよ うな勝者は、これまであったものを改良するのではない。まったく今までのものと違うす ぐれたものを発明する。 最初のステップは、発想の仕方を変えることだ。あなたが大学四年生だとすると、今の 一番の関心事は給料のいい職を見つけることだろうか。職探しのエージェンシーもあるし、 職はそのうち見つかるだろう。しかし、 「いい職を得ること」が何よりも大事なのだろう か。それより、 「いい仕事を生み出すこと」を先に考えるべきではないか。私がこんなこ とを考えるようになったのは、アムウェイ創業者のリッチ・デヴォスに会ってからだ。彼 は私に、大学で講演をしたときの話をしてくれた。 博士号をとった母校のミシガン州立大学で講演をしたことがあります。講演の後、 会場の学生たちに話しかける時間をもらったので、私はこう言いました。「みなさん の多くは、卒業したらいい職に就けるだろうかと心配していると思いますが、そんな 26 27 WIN : The Key Principles to Take Your Business from Ordinary to Extraordinary 勝つ人になるための九つの法則 第2章 心配はやめて、自分でビジネスを起こしたらどうですか」。すると、会場から大きな 拍手がわいたのです。反響があまりに大きかったのでびっくりしました。どうやら学 生たちは、自分でビジネスを起こすということを、今までまったく考えていなかった ようですね。大学ではそういうことを全然教えないのでしょうか。自分の足で歩くの ではなく、他人に頼って生きるように教えているのでしょうか。 『エンターテイメント・トゥナイト』の司会を三〇年の長きにわたって務めたメアリー・ ハートは、仕事は「姿勢」がすべてだと考えている。 「 朝 起 き た と き か ら、 幸 せ で 前 向 き な気分になれる性格なんです。自分の中に応援団がいるんです。この仕事をもらえてラッ キーだと、いつも思っています。すべてが本当にありがたいと思います。初めて仕事をも らったときの気持ちで毎朝出勤しています。そうすると、毎日のショーが日々新しい情熱 をかき立ててくれるんです」 「成功は人と共に始まり、人と共に終わる。多くの人の心に訴えかけるには、相手を深く 理解していなければならない」と言ったのは、ギブソン・ギターのCEO、ヘンリー・ジ ャスキヴィッツだ。彼は、有名なエレキギター「レス・ポール」の売り上げが落ちていた 不況期にCEOに就任し、ギブソン社を再建した人物である。デジタル技術と家庭用電子 機器が目覚ましい発展を遂げたために、音楽業界は自らの顧客が競合相手となるという難 しい立場に追い込まれていた。ジャスキヴィッツは、ビジネスセンスの鋭さに加え、対人 関係の能力においても、周囲から一目置かれていた。二〇年もCEOを務めている彼には、 顧客を暖かい毛布で包み込むような雰囲気がある。 人々の意を無視してパラダイム・シフトを起こそうとしてもうまくいきません。そ んなパラダイム・シフトには意味がないからです。広い視野をもって全体を理解しな くては。私の知っているすぐれた人物でそういうことができる人は、自分のために製 品を作っています。スティーブ・ジョブズが新しい製品を作るのは、自分がそういう ものを欲しくてしかたがないからですよ。つまり自分と消費者が一体になっている。 彼も消費者の一人なので、消費者が何を欲しがっているかがよくわかるんです。 私も、自分が弾きたいと思うギターを作ります。キャンディストアにいる子どもと 同じで、大好きなものに手を伸ばすんです。そういう直感的なつながりが、顧客との のぞ 間になくちゃいけない。市場調査をして統計学に頼っていたのでは、失敗ばかりする はめになります。そんなものから得られる情報は、覗き穴から世間を見るようなもの で、現実のほんの一断片でしかないんです。今起きていることを本当に理解したいな ら、それを自分の両手で抱き抱えてみなくては。 ざ せつ ときには避けがたい事態によって、成功への道が妨げられることもある。出来の悪い上 司、労働環境の悪化、一時的な仕事上の挫折などである。しかし勝者たちは、それらを失 28 29 WIN : The Key Principles to Take Your Business from Ordinary to Extraordinary 勝つ人になるための九つの法則 第2章 敗の言い訳にしない。それどころか前に進むための教訓にする。ファッションブランドの ジェイクルーのCEOは、歯に衣着せない物言いで有名な、非常に愉快な人だが、次のよ うなことを言った。 ボスをもつなら、やる気満々で基準が高く、正直で率直な人間がいい。「昔の自分 あいさつ を思い出せ。偉そうにするな」って言った人がいるが、俺が仕事を始めたころ、偉そ うなボスたちがいたのを思い出すよ。こっちが挨拶しても返事もしない。話を聞いて もくれない。そういうボスはたいてい、自分に自信がなく、自己愛が強くて、見栄っ 張りで、エゴイストなんだ。 勝者たちは言い訳というものを一切しない。この本で紹介するのは真正の勝者で、彼ら は実にさわやかで魅力的だ。長寿ラジオ番組のホスト、ドン・アイマスは自分らしさを貫 き通して問題提起をしながら、四〇年間もこの番組の人気を保ってきた。「ラジオでの自 分はふだんどおりの自分で、みんながそれを知っている。私生活で言わないことをラジオ で言ったりしない。それで人々と心がつながるのだと思う」と彼は言う。 勝者は変化を起こすために存在し、現状を根本的に考え直す。したがって、それができ る力とスキルがなければならない。彼らはまず、一緒に働く人たちの心をつかみ、鼓舞す ることから始める。変化を理解できずに恐れる人たちの反対にもめげない。動きを抑え込 もうとする批判者を説き伏せる。 「心をつかむ能力」 「鼓舞する能力」「めげない能力」「説 き伏せる能力」のすべてが必要である。 これは大変そうに聞こえるが、それほど難しいわけではない。勝者の大部分は生まれつ きこれらの特質を備えているが、自分がもって生まれた能力だけでは満足しない。勝者は けっして現状に満足せず、それをもっとよくしようとする。つまり生来の才能も、長い道 のりの出発点にすぎないのである。 生来の才能は、もって生まれたのでなければ、何年にもわたる訓練の結果身につけるこ とができる。普通の人でも、これから紹介する「九つの法則」を生き方に取り込んでいけ ばいい。また、必ずしも九つ全部もっている必要もない。ただし、より多く身につければ、 仕事でも市場でも勝利につながりやすくなる。 それでは、その「勝つ人になるための九つの法則」とは何だろうか。 【勝つ人になるための九つのP】 「人間中心」に考える People-Centeredness 「パラダイム」を壊す Paradigm Breaking 「優先順位」をつける Prioritization かんぺき 「完璧」をめざす Perfection 30 31 1 2 3 4 WIN : The Key Principles to Take Your Business from Ordinary to Extraordinary 勝つ人になるための九つの法則 第2章 5 6 7 8 「パートナーシップ」を大事にする Partnership 「情熱」を表現する Passion 「説得力」がある Persuasion 「粘り強さ」がある Persistence 「理念に基づいた行動」をする Principled Action 「人間中心」に考える(第3章) People-Centeredness みなさんがどういう人で、どんな仕事をしているか私は知らないが、みなさんの仕事が ル・ゲイツや、いつも自分の世界に没頭しているといわれるスティーブ・ジョブズなどは、 れる。ただこういう才能は、成功するために不可欠というわけではない。社交下手のビ 感によって人々と気持ちのつながりをもつことができ、それによって容易に成功を収めら 成功しているコミュニケーターの多くは、チャーミングでカリスマ性がある。彼らは共 である。 の暮らしをよりよいものにするために製品やサービスを考え出して提供しようということ 何かを贈りたいという気持ち、つまり、人間という存在に足りないものを見いだし、人々 長い旅の途中にあるいくつかのゴールポストにすぎないからだ。彼らが語るのは、人々に ったに売り上げや収益性のことを口にしない。成功についてさえ語らない。利益も成功も、 はなくて、何を言わなかったかにある。ビジネスの世界でも、最も成功している人々はめ 多くの偉大なイノベーターの言葉から得られる最も重要な教訓は、彼らが何を言ったかで えて語っているのか、それとも単に自分の利益のことを語っているのかがわかる。近年の いうことだ。聞いている人々は、使われる言葉によって、話し手が本当に人々のことを考 葉に重点を置くか」という問題である。何かを言うということは、別のことを言わないと これがどういう意味なのか、言葉の面から考えてみよう。多くの場合、これは「どの言 たちにとって、どういう意味があるのか?」と。 必ず次のような主要な問いに戻って考える必要がある。「それで、これは実際に一般の人 た。コミュニケーション、製品の開発、あるいは企業目標など、どんな決断をするときも、 重要な原則を学び、理解し、それに熟達して勝者となっていくのを、うれしく見守ってき すことはまずできない」ということを教えてきた。そして何十年にもわたり、人々がこの 「人々が何を求めているのかに真摯に耳を傾けて理解しようとしないかぎり、目的を果た しん し 私は自分を、人間の行動に関する専門家と考えている。選挙の候補者や企業家たちに、 「人間」にかかわっているということだけは確かだ。 1 どれだろう。 いる最も成功した人を思い浮かべてみてほしい。彼らの生き方を表しているものは、右の これら九つのPは、簡単に使える「コツ」のようなものではない。みなさんのまわりに 9 32 33 WIN : The Key Principles to Take Your Business from Ordinary to Extraordinary 勝つ人になるための九つの法則 第2章 その明らかな例外である。彼らは社交能力における弱点を、自分の代わりに心を語ってく れる「製品」を開発することによって克服したのである。ジョブズをよく知る、あるすぐ れたCEOは次のようなことを言った。 私はジョブズを崇拝している。世界を変えたという意味で、あれほどの規模の偉業 を達成した人物は他にいない。ああいう人間が我が国にはもっと必要なんだ。だけど ジョブズは人づきあいが得意じゃない。人に会っても挨拶もしないからね。いつも自 分の世界に入り込んでいる。それでも私は、これほど多くの人に与えたインパクトの 大きさを思えば、これまでのどのビジネスリーダーよりも尊敬すべき人物だと思う。 く ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズのように人づきあいの苦手な勝者たちは、トーマ ス・エジソンやヘンリー・フォードなどの卓越した発明家の流れを汲むといえる。彼らは いずれも、神経質で怒りっぽい性格で有名だ。しかし、人々の生活を改善することに献身 的に努力し、それを成し遂げた。 エンターテインメントの世界では、有名なオプラ・ウィンフリーやマーサ・スチュワー トが例にあげられる。二人ともプライベートな人間関係は、複雑でトラブルが多かったよ うだが、卓越したコミュニケーション能力によって人々から崇拝され、ポップカルチャー に大きな影響を与えている。この生きがたい世の中で、不安を抱えて心のよりどころを求 すべ める多くの女性たちに慰めを与えている。彼女たちは、住む場所、経済状態、人種などに かかわらず、多くの中間層の中年女性たちの生活に欠けている何かを満たす術を心得てい るのである。オプラの「ブッククラブ」は、本という商品を売ろうとしているのではなく、 人々に「心の平安」つまり人間を中心に考えるソリューションを提供しようとしている。 マーサ・スチュワートは、レシピのようにどこでも買える消費財を売っているのではなく、 「 質 の 高 い 生 活 」 の た め の 信 頼 に 足 る ソ リ ュ ー シ ョ ン を 提 供 し て い る。 そ れ は マ ー サ 自 身 がそのソリューションを信じているからであり、女性たちはマーサを信じている。 さて、次の問いに答えてほしい。 「自分は何を売っているのか」 「自分は何をめざしているのか」 先を読みつづける前に、まずそのことをよく考えてみよう。 もしそれらの答えが単に「もの」 (製品、医療、政治家への立候補など)であるなら、 「だから、何なのだ」ということ、つまり他の人にとってそれがどんな意味をもち、何の 役に立つのかというところまで、あなたは自分の考えを煮詰めていない。しかしそこに、 それが人々にもたらす恩恵(仕事が楽になる、家族とのよい時間が過ごせるようになる、 生活の質が向上する、信頼できる政府など)が含まれているのであれば、あなたはすでに 「勝者への道」に一歩足を踏み出しているといえる。 勝者は、恐れや感動など、何が人々の心を動かすのかを知っていて、それに働きかける。 偉大なコミュニケーターの仕事とは、人々の人生に欠けているものを見いだして、それに 34 35 WIN : The Key Principles to Take Your Business from Ordinary to Extraordinary 勝つ人になるための九つの法則 第2章 働きかけることだ。勝者は私たちに「この現実が変えられるかもしれない」ということを 想起させてくれる。 私が広告やマーケティングで、 「ポジティブで感動的で希望に満ちたアプローチ」を主 張するのはそういう理由である。人間を中心にしたアプローチは、問題に目を向けてそれ を管理するのではなく、人の痛みに目を向けてそれを解消することに注目する。政治にお いても同様である。昨今の有権者たちは、容赦のないネガティブな攻撃を拒絶するように なってきている。二〇〇九年のマサチューセッツ州の選挙戦で、共和党のスコット・ブラ ウンが発したメッセージのうちで一番よかったのは、敵陣営に向かって「過去の出来事を 攻撃するのはやめようじゃないか。私はブッシュでもチェイニーでもない。それより未来 のことを考えよう」と言ったことだ。マサチューセッツ州はたしかにブッシュに批判的だ が、それでも人々はそんなことより、この選挙が自分たちの今日や明日にどう影響するの かを知りたがっていた。本人は過去にこだわりたがるが、まわりの人にとってそれはどう でもいいことで、とくに候補者にそんなことを望んでいない。有権者が知りたいのは候補 者の可能性であって、過去ではないのだ。政治家が自分たちのためによりよい未来を考え 章では、人々の生活を大きく変化させる人や製品について述べる。勝者たちはもの 「パラダイム」を壊す(第4章) Paradigm Breaking てくれることを望んでいる。 2 第 ( )従来のやり方に固執しない姿勢。 である。パラダイムを壊す人の特徴は次の三つだ。 ごとを「改良」するのではない。ゲームをすっかり変えてしまう「ゲームチェンジャー」 4 ( 2 ◦少しずつの変化よりも、大胆なアプローチのほうがよいが、「革命的」という物々し い言い方は避けること。人々は革命的・急進的なリーダーや思想を拒絶する傾向があ には、イノベーションだけでは不十分だ。 生活の質の制約を取り払って、まったく新しい生き方を可能にしてくれる。そのため 訴える力がある。とくに医学、科学、テクノロジーなどの領域でのブレイクスルーは、 「 」という言葉で表されるなら、ブレイクスルーは「 great 」である。「ブレイク good スルー」という言葉には、既知のものを改良する「イノベーション」より、いっそう 「イ ◦ ノベーション」と「ブレイクスルー」には大きな違いがある。イノベーションが ないからなのだと人々に確信させる必要がある。 現状を捨てて新たな世界に踏み込むのは、単によいことだからではなく、それしか道は )以下の例のようなコミュニケーションスキルを使って、人々を新しい方向に導く。 ( )明確な目的をもって改革を実行すること。 1 3 36 37 WIN : The Key Principles to Take Your Business from Ordinary to Extraordinary 勝つ人になるための九つの法則 第2章 るからだ。それでも人々は、政治や経済に、今よりもう少し速やかで根本的な変化を 望んでいる。大胆なアプローチというのは、ものごとが安全でたしかな方法で変わる ということを人々に明確に告げることだ。そういうリーダーは、目的を見据えて先頭 に立ってしっかりした足取りで歩いていく。 パラダイムを壊すことは、ほとんどの人にはできない。壊すことがなぜ必要かをきちん と説明できる人はさらに少ない。パラダイムを壊すには、言葉を駆使して、人々の懐疑、 疑問、ときにあからさまな敵意を乗り越えなければならない。人々はものごとを変えたい と思う半面、変化に反発する。誰でも未知のものに対し、喜んで受け入れる気持ちと恐れ る気持ちの両方をもつからだ。コミュニケーションの達人は、新しい製品やアイデアを、 人々の負担になる重荷ではなく、みなが当然手にするべき「よりよいもの」として世の中 「優先順位」をつける(第5章) Prioritization に位置づける方法を知っている。 3 た ビジネスや政治の世界で抜きんでる人たちは、組織の一員であれ個人であれ、「優先順 位づけ」に長けている。つまり「したほうがいいこと」と「絶対にすべきこと」の違いを 知っている。それに応じて、どんな言葉をいつ使うかの判断ができる。コミュニケーショ ンを成功させるうえで何よりも重要なのは、ものごとの優先順位を見極めて、それを効果 的に明確に表現できることだ。 最初にすべきことは、自分の行動に優先順位をつけ、目標に完全にフォーカスできるよ うにすること。ビル・ゲイツはブッククラブを主宰したりはしないし、オプラ・ウィンフ リーはプログラミングをしたりしない。一人で何もかもができるわけではない。マイクロ ソフトは、誘惑に負けてマイクロチップを製造したりしない。ペンティアムプロセッサー ひつ す は、インテル社に製造させた。マイクロソフトは単に「一番重要なこと」にフォーカスし ただけではなく、 「必須のもの」だけを追求してきた。 次に行うべき優先順位づけは、言葉に関してである。近ごろは、聞く側がますます注意 散漫になって、話に集中できる時間が短くなってきているが、言葉の重要性は今も昔も変 わらない。 「自分が何を言うかより、相手がそれをどう聞くかのほうが大事」という言葉 があるが、それには「何を言うかよりも、何を言わないかのほうが大事」だとわかってい なければならない。たとえば、熟練のコミュニケーターは、何かのポイントを証明するに は根拠が必要だということを知っている。しかし、根拠が多すぎるのは少なすぎるよりも 悪い。聞いている人が、話し手が何かを無理やり信じ込ませようとしていると感じると、 その後は話を聞かなくなる。簡潔さこそが肝心だ。メールやツイッターの時代には、長々 としゃべればしゃべるほど人の耳に届かなくなる。 38 39 WIN : The Key Principles to Take Your Business from Ordinary to Extraordinary 勝つ人になるための九つの法則 第2章 相手によい第一印象を与えるチャンスは一度しかない。最初に何を言うかがそ の後の話全体の印象を決める。それだけではなく、第一印象がどのような枠組み を形づくるかによって、目的を果たすことが難しくなることもあれば、堅固な土 台ができることもある。 どんな目的で話をするのであれ、その最初の一文、最初に伝える考え、最初の 印象は非常に重要だ。たいていの人は、話をどのように締めくくるかばかりを一 生懸命考えるが、それは賢いやり方ではない。多くの場合、最初につまずいてし まうと、聞き手は締めくくりもろくに聞いてくれない。 何事も完璧をめざす気持ちがないと、抜きんでることはできない。「月をめざそう。ダ 「完璧」をめざす(第6章) Perfection 最初の言葉は、最後の言葉以上に重要である くなき追求」は、BMWやメルセデスのキャッチフレーズをしのぐ。この場合の「完璧」 において抜きんでることができる。たとえば、レクサスのキャッチフレーズ「完璧への飽 ビジネス戦略に関しても、完璧をめざすことによって、同様の商品がひしめき合う市場 に容赦なく完璧を求めるからだ。 クの女王」になれはしない。オプラはテレビショーでも雑誌でも、自分のすることすべて 六時間働くこともいとわない。並のゲストが並の言葉を語っても、オプラのような「トー 自分の仕事に情熱をもっている人間は、最善を尽くすためにそれが必要であるなら、一 でやるのと、やりたくてやるのとでは大違いだ。 ざすだけの心の強さは生まれてこない。仮に一日一六時間働いたとしても、それを義務感 双方が高め合うからだ。自分がやっていることに燃えるような意欲がなければ、完璧をめ この章でこれからお話しするように、情熱と完璧をめざす気持ちは重なる部分が多い。 命としている。 に欠ける。勝者は、完璧というのは不可能だと認めながらも、常に完璧をめざすことを使 メでもまわりの星の一つくらいにはなれるから」という耳にやさしい格言は、少々力強さ 4 ■ランツの教訓 2 ■ とは、消費者にとっての価値、つまり、聞いたり、見たり、経験したり、知ったりする価 40 41 WIN : The Key Principles to Take Your Business from Ordinary to Extraordinary 勝つ人になるための九つの法則 第2章 値が最大だという意味だ。また、ラスベガスの、スティーブ・ウィンのホテルに行ってみ れば「完璧」という言葉の意味がわかるだろう。中に足を踏み入れた人は、一瞬にして華 やかさと優雅さに包まれる。床のタイルから部屋の装飾など隅々に至るまで、どんな趣味 ぜいたく の人にも、妥協を知らない完璧さが感じられる。 「ウィン」という名前が無条件に高品質、 価値、贅沢さといったものを想起させるには、それだけの理由がある。 贅沢品を富裕層に販売する仕事にかぎらず、どんな仕事であっても、完璧さを追求する ことが重要だ。そうしなければ、競争相手がそれをする。 5 えい ち 「パートナーシップ」を大事にする(第7章) Partnership 誰一人完全な人間はいない。あなたに無限の叡智と無尽蔵のリソースが備わっていて、 未来を予言してくれる水晶玉までもっているというなら、人の手を借りる必要はないだろ う。そうでないかぎり、誰にもパートナーが必要だ。 オプラは二〇一〇年初めに、新しいテレビネットワークについて尋ねられたとき、それ を成功させるためには支援チームをつくることが何より重要だときっぱり答えた。「難し いのは、この仕事にふさわしい創造的エネルギーとシナジーをもつメンバーを集めること。 適切な人をバスの中の適切な位置に座らせ、乗っていてはいけない人をバスから降ろすこ とよ」 。巨万の富をもつとされるオプラでさえ、他者の知恵と努力を借りずに何かを成し 遂げることはできない。彼女はアリストテレスの「全体は部分の総和に勝る」という考え 方を実践している。 パートナーシップが長続きするためには、正直であることと、オープンなコミュニケー ションが何より大事である。それがないと信頼も尊敬も長続きしない。またパートナーシ ップのバランスも必要だ。一人が思い切ったリスクをとりたがるなら、相手は少し慎重な 人がいい。一人がきちんとしたことが苦手なら、相手はきちんとした人がいい。正しいバ ランスの上に築かれたパートナーシップはうまくいき、いい面が最大化し、悪い面が最小 化する。女性は対立よりも協調を好むため、女性を含むことには明らかな利点がある。大 「情熱」を表現する(第8章) Passion 企業のトップに上り詰めた女性たちはみな、パートナーシップスキルに秀でている。 6 自分の仕事やコミュニケーションに情熱を込められない人は、勝者にはなれない。トッ プにいる人たちがどのように情熱を表現しているかに注目してみると、話の中で次の三つ のポイントが押さえられていることがわかる。 ( )自分自身や自社の製品に自信をもっていることを伝えている。 ( )常に結果やソリューションを踏まえてメッセージを伝えている。 ( )最後に明快な行動の呼びかけを行っている。 42 43 1 2 3 WIN : The Key Principles to Take Your Business from Ordinary to Extraordinary 勝つ人になるための九つの法則 第2章 0 0 0 0 情熱を表現するのは言葉だけではない。効果的に情熱を伝えるには、そのスタイルや話 しぶりにも注目しなければならない。相手が何を聞いたかより、どう聞いたかのほうが重 要だからだ。たとえば次のようなことに注意しよう。 ◦声の 大きさと情熱の表現は別物だ。情熱を表そうと大声で叫ぶのは最悪である。たと え言っていることが正しくても、どなられて気分のいい人はいない。実際、最も情熱 的で説得力のある人は、一番大事なところで声を落とす。 誰も信じていない「絶対性」や「確実性」を意味する言葉を使わない。「けっしてな 「い つも必ず」 「誰でもみんな」 「いつまでもずっと」などの言葉を使わない。つまり、 ◦ い」などと言うと、人々は頭の中でその例外を探そうとする。例外が見つかった瞬間 にこっちの負けだ。 ◦情熱 は「明快」でなければ伝わらない。医者たちは、仕事に情熱をもっているのだろ うが、コミュニケーションに関しては実にお粗末だ。確実に伝えようとしてやたらに 専門用語を並べ、相手を混乱させる。明快ではっきりしたコミュニケーションだけが、 情熱を伝えることができる。 情熱とは力強さでもある。顧客へのサービスに力強さが最も感じられる会社は、物流世 界最大手のフェデックスと、バドワイザービールで有名なアンハイザー・ブッシュだろう。 フェデックスは「パープル・プロミス(紫の約束) 」 を 全 従 業 員 に 徹 底 し て い る。 こ れ は あてさき 簡単にいうと、 「すべての顧客にフェデックスで最上の体験をしてもらう」ということで、 その点でUPSと差をつけようとしている。ドライバーは何があっても品物を確実に宛先 に届ける。届かないなどということはありえない。 何十年もの間、アンハイザー・ブッシュの社訓には、ビールを売ることは書かれていな かった。その代わりに、友人をつくることが書かれていた。この話はあまり知られていな いが、上級エグゼクティブたちは会社から特別の小遣いをもらって、レストランやバーで 知らない人にビールをおごっていた。ただ大事なのはビールそのものではなく、そこから 始まる会話や仲間づくりである。ビールというのは、材料と発酵プロセスの価値以上の意 味をもっていて、家族や友人と一緒に飲まれて初めて価値がある。そういう人間関係づく りの経験を提供することが、どんな宣伝文句にも勝る、というわけだ。たしかにこの会社 のエグゼクティブたちは、コミュニケーション能力が非常に高い。彼らはビールを人にお ごることによって、自社の製品に対する情熱を示すのである。この伝統は、会社が外国に 買収されてから失われてしまったが、今もエグゼクティブたちはビールによる友人づくり を続けている。 44 45 WIN : The Key Principles to Take Your Business from Ordinary to Extraordinary 勝つ人になるための九つの法則 第2章 7 「説得力」がある(第9章) Persuasion 勝者たちは、人に説教したりしない。人を説得する。なぜ彼らの考えを受け入れるべき 章で詳しく説明するが、大事なのは何を言うかではなく相手がどう聞くか なのかを明快に説明する。それによって相手は、自分自身でその結論に到達したかのよう に感じる。第 ◦拒絶 ◦意見の相違 ◦ニュートラル ◦賛成 ◦行動 こちらが何を言っても、何をしても反対する人。 こち らの言うことに反対したり、疑問を抱いたりする。だがあまり強 いものではないので、説得次第ではニュートラルにもっていける。 どち らにも傾く可能性がある人。こういう人たちが一番多い。彼らの 支持が得られないと、経営者は有利な機会を逃してしまう。 賛同 してくれる人。しかし自ら進んで応援してはくれない。聞き手の 中で最も重要であり、彼らの存在が勝敗を左右する。 説得 も動機づけもいらない。個人的な忠誠心があるか、リードされる ことを好む人たちで、指示さえすれば言ったとおりにしてくれる。 「粘り強さ」がある(第 章) Persistence 勝利というのは、一回限りのゲーム、製品、パフォーマンスではない。長期にわたって 10 「理念に基づいた行動」をする(第 章) Principled Action 仕事でどんなに成功しても、人生でしくじったらどうだろう。裕福で非常に成功してい る人々と話をしていて、彼らの悲惨な家庭状況を知ると、財をなしたことも、高い地位に 9 ない。私が聞きたいのは、どうすればできるかだ」 さしいことではない。そんなとき、勝者はこう言う。 「なぜ難しいかという話は聞きたく いつも正しい判断をするとはかぎらない。最悪の状況にあって粘り強さを表現するのはや た。タイガー・ウッズは私生活に問題を抱えた。つまり崇拝の的になっている者たちでも、 行など、数知れず挫折を経験している。トヨタは技術的な欠陥に速やかに対処できなかっ までどこまでも努力する。非常に成功している人たちはたいてい、破産、病気、約束不履 勝者はけっしてあきらめない。けっして負けを受け入れない。仕事を完璧なものにする トは、つかの間の成功にすぎないが、常にチャートの一位にある会社は業界を征する。 返すこと」であり「今よりさらにすぐれた結果を達成すること」である。一回限りのヒッ 成功する術を知っているのが、本当の勝者だ。勝利とは「すぐれたパフォーマンスを繰り 8 五つの特徴によって分類し、それぞれにどう対処するかを説明する。 を土台にしてこちらの信念を共有してくれるまで相手を導くことだ。この章では、相手を である。説得において一番大事なのは、まず相手がすでに信じていることに言及し、それ 9 46 47 11 WIN : The Key Principles to Take Your Business from Ordinary to Extraordinary 勝つ人になるための九つの法則 第2章 上り詰めたことも、いかほどのことかと思ってしまう。仕事で勝者となるために、私生活 における勝利を投げ捨てたことになる。 最終章では、真の勝者を定義するために、最も重要な法則について述べようと思う。成 功を収めるために、モラル、人間性、品位などを放棄した人たちを見ていく。勝利は、重 要な一部であっても人生のすべてではない。それらの人たちは一時的に偉業を成し遂げた が、その方法を誤ったために、最後には惨めに失敗した。 この後の章からは、以上の「九つの法則」のそれぞれについて、それらがなぜ重要なの か、なぜ大企業のリーダーや中小企業の経営者たちに見逃されがちなのかを説明していこ うと思う。すべての勝者がこれらの特徴を全部備えているわけではないことも理解しても らいたい。一定の状況において望ましい結果を出すためには、これらのうち一つか二つが あれば十分なのだ。しかし、これらの基本的な特質の多くを備えていない勝者はいない。 第3 章 人間を大事にしたアプローチ 勝つ人は、 「人間中心」に考える ― あの人が握手するのを数え切れないほど見てきた それでもどうやってやるのか、僕にはよくわからないんだ、ヘンリー その右手の使い方がね でも左手の使い方についてはわかる 彼はそれについちゃ天才だ ひじ 相手の肘のあたりに左手を置く あるいは上腕のあたりにふれる。今彼がやっているみたいにね それが、相手に興味があるときの基本的なしぐさだ 相手に会って光栄だと思っている もし手をもう少し上のほうに、たとえば相手の肩に置くときは なれなれしくしているわけじゃなく 一緒に笑いたいときとか、ちょっとした秘密をもらすときだ そして、相手のことをあまり知らないけれど、気持ちを共有したいというときは 相手の手を両手でしっかりと握る ― 映画『パーフェクト・カップル』(一九九八年)オープニングシーンより 彼の気持ちは、君とどういう握手をするかでわかるよ、ヘンリー 48 49 WIN : The Key Principles to Take Your Business from Ordinary to Extraordinary 勝つ人は、 「人間中心」に考える 第3章 一章分まるごと読める﹁サキ読み﹂ ﹁立ち読み﹂のサービスをご利用いただき︑ ありがとうございました︒ お読みいただきました書籍の タイトル・本文は︑本サービス掲載時のものです︒ 実際の刊行書籍とは︑一部異なる場合がございます︒ あらかじめご了承ください︒ 株式会社 サンマーク出版 / p j . o c . k r a m n u s . w w w / / : p t t h
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