秦王ー コニファー類

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門1 コニファー類
一般的には欧米で改良された
最近、住宅地の風景が変わってきた。数年
街並み景観が変わった、ということは、庭
庭園用の針葉樹群を指す。特
前までは、密生した生垣が整然と刈り込まれ、
に対する日本人の意識が変わったことでもあ
庭の木々も葉群を茂らせた、緑豊かな、落ち
る。これまでに多くの人が指摘したように、
ため、狭い庭でも使いやすい。
着いた街並みが作られてきた。住宅地の典型
日本の住宅の庭は、周囲を塀や生垣で囲い込
モミ属、トウヒ属、マツ属、ホ
的形態であり、またそれが望ましい住宅地の
み、道からは庭の内部が見えない作りになっ
ソイトスギ属、クロベ属、ビャ
風景と考えられてきたのである。ところが、
ていることが多かった。庭は、あくまで建物
近頃作られる新しい住宅地では、生垣をはじ
の内部から眺めるように作られていたのであ
葉の色は豊富で、緑をはじめ、
めツバキ、サザンカ、キンモクセイなどの常
る。つまり、庭に対する眼指は、庭の内側の
黄緑、黄、青緑、四緑、銀青
緑広葉樹が姿を消し替わり一に落葉高木やコニ
みに止まって、外部へそそがれることは稀で
ファ一類(注1)が植栽され、ウッドフェンス
あり、同様に外部から内部への眼指は、ほと
円錐形、円筒形等の立性タイ
の前に色とりどりの草花類が植え込まれた、
んど閉ざされていたことになる。そのために、
プの他、球形、半球形、盃形、
イングリッシュガーデン(注2)風の庭を見
意地の悪い見方をすれば、ついこの間まで
かけることが多くなってきたのである。
我々は、庭の外周部の囲いが連なる景観を、
花木の色どりはあるとはいえ、基本的には
街並みとして見ていた、ということになる。
ニファーだけで構成したコニ
樹木の緑が主体となった、整然とした街並み
皮肉にもいかに美しい庭の囲いを作るか、と
ファーガーデンも作られてい
に対し、草花の花の色が鮮やかな、木々の樹
いうことに力を注いでいたのである。その結
形も変化に富んだ街並みが次々に現れたこと
果として、囲いの材料としての化粧ブロック
注2イングリッシュガーデン風
により、住宅地の風景が一変してしまったの
やフェンス、そして生垣が、外構・植栽にお
18世紀の自然風景式庭園以
である。変化は、新しい住宅地だけにとどま
いて極めて大量に使われ、街並みの構成要素
らず、古くからの落ち着きを見せる住宅地に
としても重要な役割を果たしていた。
に倭性のドワーフコニファーは、
生長が遅く樹形も美しく整う
クシン属など多くの属を含み、
品種は一千種以上といわれる。
色など多彩な色を持つ。形状
もバラエティに富み、円柱形、
ほふく二等の這性タイプがあ
る。このような変化に富んだ
色彩と形態を組み合わせ、コ
るのを見る。
降、イギリスで作られた様々
なスタイルの庭園を総称した
ものとしてイングリッシュガー
おいても、現れている。門廻りやアプローチ、
住み手の意識の変化に伴って、庭の在り方
デンとよばれる。日本では、そ
フェンスや塀の上にまで、草花が植えられ、
もまた変わり、今や庭の作りも外部に向けて
の中のコテージガーデン(田舎
麗麗が飾られているのを目にする。時には、
花を飾り、装飾品(注3)を置くようになっ
生垣の裾に植栽されていた潅木を抜いて、パ
た。建物の中からだけではなく、道路からど
て帯状に細長く作られた花壇)
ンジーやサフィニヤなどに植え替える家もあ
のように見えるかということを意識した庭の
が、低木や草花を組み合わせ
る。
作りも広がってきた。欧米風のフロントガー
家風の庭)、とボーダーガーデ
ン(園路や壁、生垣などに沿っ
た花の美しさによって好まれ、
これらをイングリッシュガー
このように、街の至るところで草花が見ら
デンの形を真似たともいえようが、形だけで
デンということも多い。ここ
れるようになったことによって、街並みは大
はなく、住み手の意識にも変化が生じたとす
では道路沿いに作られたボー
きく変貌した。変化をもたらせたかーデニン
れば、これは極めて大きな庭そのものの変化
グは、ブームとさえいわれているが、新しい
であると、いうことができよう。それはよう
住宅地のみならず、既成の古い住宅地にまで
やく庭そのもが街並みの中で見えてきたこと
庭園装飾品の略。飾り鉢やト
ガーデニングの影響が及んでいることは、単
でもある。
レリス、小さな彫刻、ベンチ、
に一過性の流行現象とばかりはいえない、根
閉されていた庭を、他者の眼指に晒すこと
強く、また広がりをもつ人々の意識の変化そ
は、庭が街に、社会に向けて開かれることを
の総称。
のものの現れと見ることができる。
意味する。庭は多くの他者の眼指を受けるこ
44
家とまちなみ38−1998.9
ダーガーデンという意味。
注3 装飾品
人形、巣箱といった庭園のち
ょっとしたポイントとなる物
とによって、プライベートな存在ではありな
要に迫られているように思う。それは、生垣
がら、街や社会にとってセミパブリックな存
という「緑」しか見えなかった視野の中に、
在としても位置付けられることになる。また、
庭とそこに植えられた多様な植物が現れてき
他者の眼指を意識し始める時、庭はそれ自体
たことが大きく影響している。今までとは違
の美しさを保たねばならず、住み手は生活の
った視点から植栽が見られるようになったの
中で絶えず意識せざるを得ない。開かれた作
である。住宅まわりの植栽の見直しをするた
りの庭が、そのように他者の眼指によって磨
めにここでは仮に「遠景」「中景」「近景」と
かれ、より美しさを増していくのであれば、
いう三つの視点を設定し、それぞれに植栽の
須長一繁
庭が連なって作り上げる街並みも磨かれてい
見え方と考え方を整理してみよう。
(すなが かずしげ)
(株)草樹舎代表取締役・
くであろうことは、想像するに難くない。
街に新たな風景を作りはじめている、ガー
デニングをテーマとした庭は、人々が庭で花
造園家
(1)遠景としての植栽
1950年東京生まれ。
街並みにおける植栽
1987年草樹舎設立。戸建
の苗を植え、雑草を抜き、潅水、施肥と続く
前述したように、宅地内の植栽は、街並み
住宅団地の景観計画、外
庭仕事に汗を流すなかで、作り上げていくも
景観に極めて大きな影響を与える。一つの街
構・植栽設計をはじめ、個
のである。内からの眼指と、外からの眼指が
区が見渡せる位置、あるいは街路を中心に左
そこで交差する時、人もまた他者との関係性
右に二つの街区がパースペクティブに見通せ
園、大学キャンパスの計
を獲得しコミュニケーションが芽ばえる。街
る位置に立った時、「緑」のボリュームが街並
画・設計などにたずさわ
並みの風景の中に、常に人の姿が見えている
み景観の印象を大きく左右することは、体験
る。最近は造園と園芸の融
こともまた、新しい風景といえるのかもしれ
的にもよく知られているところである。人の
ない。
アイレベルにおける緑の見え方、見える量は
まえて薗芸が人の心と身体
緑視率(注4)という考え方で測定すること
を癒やす園芸療法ガーデン
ができる。この方法では宅地のフロント部分
の設計手法の研究、環境共
(接道部)に門塀やブロック塀、フェンスが建
生と庭の関係について興味
ち、カーポートの屋根や時に建物がまるまる
人住宅庭園、寺院の日本庭
園、大型観賞温室の内部造
合したフラワーガーデンや
ユニバーサルデザインを踏
を深めている。
主な仕事としては『善光
住宅まわりの植栽は、宅地内に限定された
見える場合には緑視率は低くなり、見る人は
寺東庭園』『新潟県都市緑
狭い領域を対象とする。それにもかかわらず、
うるおいに欠けるという印象を受ける。これ
化植物園観賞温室』『信州
街並み景観に与える影響は極めて大きい。街
に対し、植栽が多く見えて、建物や構造物が
路樹を備えた、幹線や準幹線道路を除く街路
隠れている場合には緑視率は高く、人は緑が
においては、ほとんど街並み景観を支配する、
豊かでうるおいを感じる街並み、という印象
といってもよいほどである。
を持つ、という。
短期大学キャンパス』『和
佐の里園芸療法ガーデン』
『みずきが丘』『あすみが丘』
『京成ローズタウン舞浜』
等。
このため建売住宅団地では宅地内植栽は、
このように、街並みにおける「緑」は、景
街全体の景観計画に関わる「緑」の重要な要
観的要素であると共に見る人の心理にも影響
素として、プライベートな植栽というよりも、
を及ぼす存在であり、緑玉率を高めるために
パブリックな「緑」として扱われることが多
はフロント部分の生垣や門廻りに植栽される
く、そのためには生垣とシンボルツリーとい
シンボルツリーが最も効果的であった。それ
う形態は極めて都合がよかったのである。生
は見えがかりの、緑量の問題であったともい
垣は「緑」の結界として街並み=社会と私的
えるだろう。
空間を仕切り、街並み=社会には「緑」を提
もちろん、実際には単に緑量だけの問題で
供すると共に、私的空間のプライバシーを守
はなく、景観的統一性や花や実、紅葉による
るという論理が作り上げられた。こうして生
季節感を表現する植栽が行われてはいたが、
垣とシンボルツリーによる緑豊かな街並み景
総体的にみれば、あくまで計画論の中の一ア
観の確保と、生垣の樹種をそろえることによ
イテムとしての「緑」が中心となっていたよ
る景観的統一が共にはかられ、街づくりにお
うに思われる。
ける植栽の決定版として、多くのニュータウ
街並みに対する「緑」としては、生垣は際
ンで用いられていった。
立った効果を上げたが、ガーデニングをテー
時が移り、「緑」の時代から「花と緑」の時
マとした外構や植栽を行おうとする場合には、
緑の割合がどの程度見られる
代になった現在、庭の囲いであり、また街並
あえて生垣を無くすことも多い。それは草花
かを測定する。軽量が25%以
み景観の重要な構成要素であった生垣が減少
が主役であって、「緑」はそれを引き立てる役
注4緑視率
人の視界に映る緑の量を測っ
た割合。35ミリカメラで街並
みを写し、写真の画像の中に
上であれば、緑に対する満足
度が高く、それ以下であると
し、あるいは姿を消していく状況の中で、
割であり、必ずしも庭を隠す機能は必要とし
我々は植栽について改めて見直しをはかる必
ないからである。このような変化はこれまで
ない印象を持つ。
家とまちなみ38 1998,9
45
満足が低下してうるおいが少
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写真1 ゆったりとした敷地で、手入れの行き届いた 写真2,3 イングリッシュガーデン風の植栽。落葉高木、コニファー、草花類が植栽され、道路に向かって開
植栽が落着いた街並みをつくり出している。 かれた庭の作りとなっている。
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写真6.7 生垣で囲まれ、庭はうかがえない。しかし緑量のある庭木と生垣が、街並みにうるおいを与えている。
翻
園.
写真13 建物と外構要素が目立っているため、緑視率
写真11.12 緑園が多く、緑視率の高い街並み。
がやや低い街並み。
署,
・藩……嘆嚢麟
継蓑
写真17.18 葉の色合いの異なるコニファーを組み合わせた庭が、建物とうまく調和している。色彩は花だ
けではなく、葉の色も生かすと常に変化が楽しめる。
写真19.20 緑を背景にした花は、美しさが引き立つ。
アプローチの足元廻りには、ハープなど植えると香り
による演出もできる。
46
家とまちなみ38
1998.9
写真4 古くからの住宅
地で、花鉢やハンギング
バスケットを飾っている
家がある。背景のヒマラ
ヤスギや焼丸太が花の色
を引き立てている。
『閣轟鞭欝
写真5既存の樹木を抜いて、道路に面してプランターに植えた花を飾っている家。
勘謬
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、綴
写真8 生垣で道路と仕切りながらも、道路に向けて
草花や装飾品を飾っている。
写真9.10 道路に向けて開かれた庭。テラスやデッキも視線を騒ぎることなくしつらえている。通る人も思
わず立ち止って草花を見たくなるほど、美しく手を入れている。
ノ
ノチづ・.
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グ
獺
』\
写真14 生垣を使わず、コニファー類を中心とした
植栽。道路からの視線は、庭が見え隠れする程度。道
路沿いの芝生地は、住み手が草花を植えて愉しむこと
ができるよう空けてある。街並みに対しての緑量は、
写真15.16 「何となく洋風」パターンの植栽と街並み。建物との調和は意識していない。
生垣よりも多く感じる。
写真21 草花の葉が持つ微妙な色合いの違いと形態
の違いを、極めて巧みに寄せ植えしており、ガーデニ
ングの技術レベルは非常に高い。近景的演出の見本と
写真22 環境共生住宅の庭には、雨水を利用するため
のマニュアルポンプと、花台を兼ねた堆肥庫が設置さ
れている。生ゴミからできた堆肥や落葉をストックし
いえよう。
ておくために設けてある。
家とまちなみ38
1998.9
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のように、生垣とシンボルツリーさえ植栽す
によって花の色や葉の色も変えることが前提
れば良いという画一的な植栽から自由になる
となる。
ことでもあり、また一方では個々にどのよう
このような植栽が、例えばイギリスあるい
な植栽がふさわしいのか、その都度工夫しな
は北ヨーロッパ風のハーフティンバーとレン
くてはならない状況になったことを示すもの
ガタイル貼りの建物まわりに植えられるとし
でもある。
たら、どちらの方が建物のデザインと調和し
建売住宅における植栽は、ややもするとこ
やすいか、ということである。要するにイギ
うした遠景の視点からのみ考えられてきたの
リス風であろうと、スペイン風であろうと、
日本のトウヒに似るが、造園
に対し、今や別の視点から植栽を見直す動き
建物の持つイメージと植栽が調和しているこ
木やクリスマスツリーとして
が現れてきた。
とが大事な点である。また特に地域イメージ
注5 ドイツトウヒ
ヨーロッパ中部から北部の原
産。日本には明治時代に渡来。
は、ドイツトウヒの方が多く
を持たない建物においても、外壁の色彩や外
利用される。環境の適応力が
強く、寒冷地から暖地まで植
栽域は広い。マツ科。
(2)中景としての植栽
建築とガーデンデザイン
構の作りと調和させることは当然のことであ
る。
中景という視点とはいうものの、ことさら
植栽にこれまで以上にイメージを喚起する
新しい視点ではない。日常、ごく当たり前の
力、ガーデニングを愉しむための舞台作りが
で中木として使われる。冷涼
ように描く住宅と外構、植栽の立面図的な見
期待されており、そのためには樹形や花、葉
な気候を好み、関東以北での
え方である。遠景の視点が計画的であり、植
の持つ色彩、そして樹種の選択とその組合せ
栽の量的な面が中心となるのに対し、中景で
を行う植栽のデザインを欠かすことはできな
て咲く。芳香があり、それが
は、デザイン的、植栽の質的な面が主題とな
い。それはまた、庭が街並みの中に姿を現し.
好まれて植栽される。白花、
る。
てきたことによって、ガーデンデザインの一
注6 ライラック
ヨーロッパ原産のモクセイ科
利用が多い。4月∼6月目淡
い紫色の小花を円錐状に集め
八重などの品種がある。和名
近頃は、建売住宅も輸入住宅を含め、多様
部としても機能しなければならない役割をも
リラは映画や歌で有名。日本
なデザインや外壁の色彩が現れ、変化に富ん
荷なうことになった。植栽は内部からの視線
では札幌のライラック祭が名
だ建物が見られる。当然の如く、外構や植栽
と外部からの視線を共に受け、やがて住み手
高い。
のおいてもそれらに調和したデザインが求め
が植えるであろう草花類が、より美しく引き
られる。今までの定型的な植栽に変わって、
立つ背景となることもまた必要な役割りであ
はムラサキハシドイ、仏名の
注7 セイヨウシャクナゲ
ヒマラヤ、中国の雲南省など
建物とデザイン的な整合性を持つ植栽が必要
の原産。イギリス、オランダ
とされるようになってきたのである。それは
中景としての植栽を、このように副え直す
植栽に「何となく洋風」というようなあいま
とすれば、必要とされる樹種も今までとは比
リスでは巨大な半球形になり、
いなイメージではなく、より具体性を持った
較にならない広がりの中から選択しなければ
極めて見事な花を見せ、庭園
イメージを作り出すことが望まれている、と
ならない。造園樹木に限らず、園芸植物を含
に多く植栽されている。日本
いうことがいえるだろう。
めて植物を使いこなす知識とセンスが求めら
具体例を挙げよう。何となく洋風パターン
れる時代になったのだともいえる。
などで品種改良され、世界的
に広まり愛好者も多い。イギ
には大正時代に渡来したもの
の、夏の高温多湿に合わず普
る。
及しなかった。現在では耐暑
として典型的な例としては「シンボルツリー
性の品種が作り出され、使用
(ハナミズキ)、生垣(カイズカイブキ)、中木
(3)近景としての植栽
類(キンモクセイ・サザンカ・ヤブツバキ)
ここでは近景を、門から玄関までのアプロ
リス風の庭園にはよく合う。
潅木類(ツツジ・サツキ)、地被類(フッキソ
ーチ沿いの植栽のように、手を伸ばせば触れ
ツツジ科。
ウ・タマリュウ・アイビー)」。
られる近さにおける植栽とする。植物は間近
これに対し、イングリッシュガーデン風の
で見ると、花の花弁の数や、葉の緑の鋸歯の
中国、ヒマラヤ、アフガニス
植栽としては、イギリスの気候や庭園からの
状態、香りの有無まで詳細に見ることも感じ
タン原産のヒノキ科ニイ歳霜
イメージとして次のような樹種が選択される。
ることもできる。近景としての植栽とは、そ
ビャクシン属の一品種。枝は
「高木類(ドイツトウヒ(注5)・エゴノキ)、
のような見え方を、どのように演出するか、
中木類(コニファー類数種・ライラック(注
ということでもある。中景での植物の見え方
青色又は青緑色、冬は茶色と
6))、低木類(セイヨウシャクナゲ(注7)・
では、ある程度のまとまりのある群落の花の
なる。グランドカバーとして
ビヨウヤナギ・シモツケ・ブルーカーペット
色が問題になるのに対し、近景では一株一株
(注8)・フィリフェラオーレア(注9))、地
の花の色や、斑の入り方が気になってくる。
例も多くなっている。花は4
月目5月で花色は豊富。イギ
注8 ブルーカーペット
横に伸びてハイビャクシンに
似た形状となる。葉の色は灰
利用される。
注9 フィリフェラオーレア
被類(ラベンダー(注10)・マーガレット
このような細かな差異は、植物学では品種と
ヒノキ科ヒノキ属のサワラの
(注ll)・タツタナデシコ・ギボウシ・アガパ
いう区分によって分類され体系化されている。
仲間。黄金色の葉が好まれて、
ンサス(注12))、他にツル植物として(クレ
植栽をこのように、花の色の調和や葉の色
マチス(注13)・モッコウバラ(注14)」等
の組合せ、香りによる演出などに合わせて選
はオウゴンヒヨクヒバ。
である。もちろんこの場合、建物の外壁の色
択し、デザインすることになれば、必然的に
48
家とまちなみ38 1998.9
低木あるいは刈り込んでグラ
ンドカバーとして利用。和名
品種を指定しなければ思いどおりの表現をす
ることはできない。それは造園的な植栽の構
成の中に、園芸的な知識、感覚を含み込んで
はじめて作り出すことができる表現である。
間の五感に対応する“好み”が強く影響する
注10ラベンダー
場面である。
地中海沿岸フランス、イタリ
このような植栽についての考え方は、住宅
ア、スペイン原産。シソ科の
常緑小低木。ハーブ類の中で
地の風景が、また庭のあり方が変わる中では、
は最も名が知られており、強
例えば、よく知られている球根植物である
必然的に求められる考え方であり、要は「緑
い芳香を持つ。品種は多く、
スイセンにも、昔から見知っているニホンズ
と花」を総体的に組み合わせ、デザインする
イセンの他にも極めて多くの品種が作り出さ
姿勢が求められているということなのである。
は紫系を中心にピンク、白、
れている。花の形と咲き方によって、12もの
さらに、植栽される植物は、生き物である
緑などがある。目照とともに、
グループがあり、またそれぞれに細かな違い
ことを忘れてはならない。植物は生き、生長
丈も30cm程からIm位まで、
葉の色も変化に富む。花の色
アルカリ性で肥沃でない⊥を
好む。花は5月∼9月に開花
によって多くの品種に分かれている。一輪ご
し、開花、結実というサイクルを持つ。この
との花が大きな、淡い黄色のものが欲しいの
サイクルを持続させるために、地下部に思い
ドライフラワーなど広く利用
か、真っ白な大輪のものが欲しいのかは、品
の他大きな広がりと深さが必要な根を持ち、
される。
種を指定することによって選択することがで
生存に必要な水分、養分を吸収している。植
きる。このように、同じスイセンとはいいな
物の生育基盤としての土壌について、我々は
北アフリカ、カナリー諸島原
がら、色や形、咲き方が異なるため、ここで
改めて考えてみる必要がある。
産。キク科。非耐寒性多年草
は何をどのように見せたいのか、という演出
造成地の土壌は、植物にとって多くの場合
の意図がポイントとなる。
劣悪な環境である。樹木類以上に園芸種の草
住宅まわりの植栽に、こうした品種を指定
花類は、土壌の良し悪しに生育状況が左右さ
ば関東以北でも楽しめる。元
するような園芸的要素が取り入れられるよう
れることが多く、そのためガーデニングを愉
来切花として利用されること
になったのは、イングリッシュガーデンの影
しもうとする場合には、土壌の改良は不可欠
ると見映えがする。白、淡紅、
響である。多くの花を組み合わせて植栽する
となる。今まであれば、既存土壌をすき取り、
黄色がある。
手法は、今までの日本の植栽手法には見られ
残土として搬出処分し、畑土などの良質土を
ないものであった。また花の色彩を白や黄色、
客土として敷き込むことが、一般的な土壌の
オレンジや青などでまとめて見せる色彩の演
改良でもあったわけだが、そろそろこのよう
出もイギリスの庭から学んだものである。
な手法を変える時期を迎えたのではないか。
する。香料、入浴剤、ポプリ、
注11 マーガレット
で、霜に当たると枯れやすい
が、4月中旬から7月頃まで
咲くため、一・年草として扱え
が多かったが、花壇に群植す
注12アガパンサス
北アフリカ原産。ユリ科常緑
性宿根草。関東以西では戸外
でも生育し、6月∼7月に清
涼感のある薄紫色の花を咲か
近景の植栽では、間近に花を見ることがで
残土処分と良質土の採取という、環境に対し
きるからこそ、そうしたディテールにわたる
て二重の負荷を負わせる手法ではなく、既存
植栽の演出が求められる、ともいえるのであ
の土壌を時をかげながら改良する方法を選択
し、丈夫で育てやすい花であ
することを考えるべきであろう。特に、ガー
る。
ろう。
デニングを多くの人々が愉しむ環境であれば、
十分具体性を持つ話である。環境共生という
テーマでは、今や標準的な装備ともいえる生
ゴミを堆肥にする機器も、ガーデニングとい
せる。花茎は60cm∼lmに
伸びる。半日陰程度でも生育
注τ3クレマチス
中国産のテッセン、日本産の
カザグルマなどの交配種で、
イギリスを中心に品種改良さ
れ、広まった。品種も多く、
これまで遠景・中景・近景という、三つの
うコンセプトによってはじめて生き、作られ
視点から植栽を考えてきた。しかし、実際は
た堆肥は土に戻される。住み手が少しずつ土
多彩であり、花期も5月∼6
住宅まわりという狭い領域のことでもあり、
を豊かに変え、そして草花や野菜を育てる。
月の一・期咲き、四季咲きなど
それぞれの視点ごとに設計を行うわけではな
まさに土作りこそがかーデニングの基本であ
く、三つの視点を複合しながら植栽のデザイ
ることを思い出すべきである。
ンを進め、具体的な樹種、品種、仕様に落と
また雨水も地下への浸透だけではなく、庭
し込んでいくものである。この三つの視点と
への散水や鉢物への潅水などに積極的に利用
は、言葉を替えれば次のようにもいえるだろ
をはかりたい。社会的なコストを増大させる
の一つとして栽培しやすく、
う。遠景の視点とは、社会的な視点であり、
上水をやみくもに使うのではなく、屋根に降
フェンスなどに絡められてい
緑量という面から環境や街並み景観を踏まえ
った雨水をちょっとした工夫で利用すること
た植栽の考え方であり、中景とは美的要素を
などは、すぐにでもできる事柄であり、ガー
で栽培されるが、生長は早く、
中心とした、建物や外構と植栽との調和を重
デニングを愉しみながらさりげなく環境に対
時に樋を伝って2階の屋根ま
視する見方といえよう。ここでは樹形、色彩
する配慮をすることが、生活の中で行う環境
でに伸びることがある。
のバランスとイメージの整合性がはかられな
共生といえるのではないだろうか。
花色は白、紫、薄紫、紅など
がある。キンポウゲ科の落葉
ツル植物。
注14モッコウバラ
中国原産。江戸時代に渡来し
た常緑ツル植物。原種のバラ
ることが多い。花は5月に咲
く。黄色種が多い。関東以西
ければならない。近景は植栽におけるディデ
ールであり、感性に基づく花や葉、実や木肌
などの質感、色彩、手触り、香りをはじめ人
家とまちなみ38 1998.9
49