救えなかった苗木の逆 行物語 超高校級の切望 ︻注意事項︼ このPDFファイルは﹁ハーメルン﹂で掲載中の作品を自動的にPDF化したもので す。 小説の作者、 ﹁ハーメルン﹂の運営者に無断でPDFファイル及び作品を引用の範囲を 超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁じます。 ︻あらすじ︼ 全てを失ってもなお希望を捨てなかった苗木は気がつけば始まりの教室にいた。 だから苗木は今度こそ救うと決めた。 歪んだ希望はそれでも前に進む。 愛しい︵憎い︶絶望とのゲームに勝利するために。 目 次 プロローグ ││││││││││ 入学式 ││││││││││││ イキキル︵非︶日常① │││││ イキキル︵非︶日常② │││││ イキキル︵非︶日常③ │││││ イキキル︵非︶日常④ │││││ イキキル︵非︶日常⑤ │││││ イキキル︵非︶日常⑥ │││││ イキキル︵非︶日常⑦ │││││ イキキル︵非︶日常⑧ │││││ イキキル︵非︶日常⑨ │││││ イキキル︵非︶日常⑩ │││││ 閑話① ││││││││││││ 週刊少年ゼツボウマガジン︵非︶日常① 98 週刊少年ゼツボウマガジン︵非︶日常② 102 週刊少年ゼツボウマガジン︵非︶日常③ 110 週刊少年ゼツボウマガジン︵非︶日常④ 118 週刊少年ゼツボウマガジン︵非︶日常⑤ 126 週刊少年ゼツボウマガジン︵非︶日常⑥ 133 140 1 11 20 28 35 49 42 59 66 73 82 90 │ 週刊少年ゼツボウマガジン︵非︶日常⑦ 装甲勇者よ大地に ︵非︶日常編③ │││││ 新世紀銀河伝説再び 立て 装甲勇者よ大地に ︵非︶日常編④ │││││ 新世紀銀河伝説再び 立て 装甲勇者よ大地に ︵非︶日常編⑤ │││││ 新世紀銀河伝説再び 立て 装甲勇者よ大地に 装甲勇者よ大地に ︵非︶日常編⑥ │││││ 新世紀銀河伝説再び 立て 新世紀銀河伝説再び ︵非︶日常編⑦ │││││ 装甲勇者よ大地に 装甲勇者よ大地に ︵非︶日常編⑧ │││││ 新世紀銀河伝説再び 立て ! 週刊少年ゼツボウマガジン︵非︶日常⑧ 週刊少年ゼツボウマガジン︵非︶日常⑨ 週刊少年ゼツボウマガジン︵非︶日常⑩ 装甲勇者よ大地に 閑話② ││││││││││││ 新世紀銀河伝説再び ︵非︶日常編① │││││ 立て 新世紀銀河伝説再び 203 210 216 224 232 立て 装甲勇者よ大地に ︵非︶日常編② │││││ 新世紀銀河伝説再び 立て 196 ! ! ! ! ! ! ! 178 ! ! ! ! ! ! 183 189 ! 147 154 163 171 ! ! │ 立て ︵非︶日常編⑨ │││││ 装甲勇者よ大地に ︵非︶日常編⑩ │││││ 新世紀銀河伝説再び 立て 閑話③ ││││││││││││ オール・オール・アポロジーズ︵非︶日常 編① │││││││││││││ オール・オール・アポロジーズ︵非︶日常 編② │││││││││││││ オール・オール・アポロジーズ︵非︶日常 編③ │││││││││││││ オール・オール・アポロジーズ︵非︶日常 編④ │││││││││││││ オール・オール・アポロジーズ︵非︶日常 編⑤ │││││││││││││ 疾走する青春の絶望ジャンクフード︵非︶ 閑話④ ││││││││││││ 編⑩ │││││││││││││ オール・オール・アポロジーズ︵非︶日常 編⑨ │││││││││││││ オール・オール・アポロジーズ︵非︶日常 編⑧ │││││││││││││ オール・オール・アポロジーズ︵非︶日常 編⑦ │││││││││││││ オール・オール・アポロジーズ︵非︶日常 編⑥ │││││││││││││ オール・オール・アポロジーズ︵非︶日常 286 294 300 307 259 266 273 279 313 328 321 238 252 245 ! ! ! 日常編① │││││││││││ 疾走する青春の絶望ジャンクフード︵非︶ 日常編② │││││││││││ 疾走する青春の絶望ジャンクフード︵非︶ 日常編③ │││││││││││ 疾走する青春の絶望ジャンクフード︵非︶ 日常編④ │││││││││││ 疾走する青春の絶望ジャンクフード︵非︶ 日常編⑤ │││││││││││ 疾走する青春の絶望ジャンクフード︵非︶ 日常編⑥ │││││││││││ 疾走する青春の絶望ジャンクフード非日 常編① ││││││││││││ 疾走する青春の絶望ジャンクフード非日 常編② ││││││││││││ 閑話⑤ ││││││││││││ 常編⑦ ││││││││││││ 疾走する青春の絶望ジャンクフード非日 常編⑥ ││││││││││││ 疾走する青春の絶望ジャンクフード非日 常編⑤ ││││││││││││ 疾走する青春の絶望ジャンクフード非日 常編④ ││││││││││││ 疾走する青春の絶望ジャンクフード非日 常編③ ││││││││││││ 疾走する青春の絶望ジャンクフード非日 384 390 397 405 412 426 419 334 341 348 354 362 369 377 校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せ 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高 た理由⑤ │││││││││││ 校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せ 校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せ 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高 校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せ 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高 校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せ 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高 た理由④ │││││││││││ た理由⑧ │││││││││││ 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高 472 校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せ た理由③ │││││││││││ た理由⑦ │││││││││││ 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高 466 校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せ た理由② │││││││││││ た理由⑥ │││││││││││ た理由① │││││││││││ 460 校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せ 433 440 447 454 校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せ 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高 480 た理由⑨ │││││││││││ 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高 校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せ た理由⑩ │││││││││││ 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高 校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せ た理由⑪ │││││││││││ 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高 校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せ た理由⑫ │││││││││││ 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高 校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せ た理由⑬ │││││││││││ 桜 の 下 に は 希 望 が 埋 ま っ て い る ① 桜 の 下 に は 希 望 が 埋 ま っ て い る ② 528 桜 の 下 に は 希 望 が 埋 ま っ て い る ③ 536 桜 の 下 に は 希 望 が 埋 ま っ て い る ④ 543 桜 の 下 に は 希 望 が 埋 ま っ て い る ⑤ 550 桜 の 下 に は 希 望 が 埋 ま っ て い る ⑥ 556 桜 の 下 に は 希 望 が 埋 ま っ て い る ⑦ 562 487 496 504 510 518 │ 桜 の 下 に は 希 望 が 埋 ま っ て い る ⑧ 568 桜 の 下 に は 希 望 が 埋 ま っ て い る ⑨ 575 閑話⑥ ││││││││││││ おいでよ動物の国① ││││││ おいでよ動物の国② ││││││ おいでよ動物の国③ ││││││ おいでよ動物の国④ ││││││ おいでよ動物の国⑤ ││││││ 631 623 617 611 604 597 桜 の 下 に は 希 望 が 埋 ま っ て い る ⑩ 582 590 おいでよ動物の国⑥ ││││││ おいでよ動物の国⑦ ││││││ おいでよ動物の国⑧ ││││││ おいでよ動物の国⑨ ││││││ おいでよ動物の国⑩ ││││││ 閑話⑦ ││││││││││││ 機械少女は希望の夢を見るか① │ 機械少女は希望の夢を見るか② │ 機械少女は希望の夢を見るか③ │ 機械少女は希望の夢を見るか④ │ 機械少女は希望の夢を見るか⑤ │ 機械少女は希望の夢を見るか⑥ │ 機械少女は希望の夢を見るか⑦ │ 727 720 713 706 699 693 687 679 672 664 656 648 640 │ 機械少女は希望の夢を見るか⑧ │ 機械少女は希望の夢を見るか⑨ │ 機械少女は希望の夢を見るか⑩ │ 閑話⑧ ││││││││││││ スコアガール① ││││││││ スコアガール② ││││││││ スコアガール③ ││││││││ スコアガール④ ││││││││ スコアガール⑤ ││││││││ 785 779 772 766 760 752 746 740 733 狂っていたのだろう⋮⋮他の子供達も殺して、笑いながら自分の喉を切り裂いた。 それが偽りの平穏の限界だった。朝日奈さんが2人を殺した。狂ったように、いや 子供達がある程度成長して、誰かが子供の一人を殺した。 と葉隠君に犯されたらしい。最初の子は十神君の子だった。 疑心暗鬼のストレス解消とばかりにボクが見ていないところで朝日奈さんは十神君 ボクも応えた。 朝日奈さんは不安を誤魔化すようにボクを求めてきた。その気持ちがわかったから、 そこから狂い始めたのかもしれない。 づけさせた。 死んだことを聞かされ、ボクらは学級裁判を行わないために発見した葉隠君に死体を片 も二人の事件のクロであるセレスさんも大神さんも霧切さんも、そして⋮⋮腐川さんが た戦刃さんも不二咲さん改め不二咲君も不二咲君を殺した大和田君も石丸君も山田君 死んでしまった。舞園さんも舞園さんを殺した桑田君も、江ノ島さんのフリをしてい 皆死んだ。 プロローグ 1 ただ一人生き残ったボクは、卒業する事もなく過ごしているうちに見つけた脱出ス このタイミングで思い出すなんてホント、どこまで不運なんだよアンタ イッチ。それを使い記憶を取り戻したボクの前に彼女は現れた。 ﹂ ﹁あはははは ! ﹂ ﹂ その通りだぜ ! ? やけに落ち着いてんなぁ ! ﹁⋮⋮江ノ島さんは絶望なの ﹁ん ﹁戦刃さんも ? ﹂ ? なんだ、そもそも最初からこの計画は狂っていたんだ。 守るためのシェルターに絶望が紛れてしまっていたのか。 江ノ島さんはキャラをコロコロ変えながら自分が絶望であることを認めた。希望を たかしら ﹁⋮⋮ええ、はい。姉さんも私も、姉妹そろって絶望です⋮⋮。それで、それがどうかし ? ﹂ 超高校級のギャルで、彼女のフリをしていた戦刃さんは彼女の姉だ。 江ノ島盾子。 ! なんだい苗木君﹂ ? ﹁ボク一人じゃ殺し合いなんて起きない。ボクをここから出してよ﹂ ﹁ん ﹁江ノ島さん﹂ プロローグ 2 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮は ﹂ けどそれが少しかわいくて思わず笑ってしまった。 ﹂ ﹁⋮⋮バカじゃないのあんた。外には絶望しかないよ ﹂ だって、外には希望が残ってる﹂ の学園にきた奴が出てっても殺されるのがオチだって 何を根拠に言ってんだよ ﹁それは違うよ ﹁はあ ﹁江ノ島さんがボクらに殺し合いをさせたのは、その映像を外に見せる為じゃないの ! ! ﹂ ? く他の超高校級は戦刃さんには絶対勝てない。それなのにそれをしなかった⋮⋮。 ボクらを絶望させるためなら裏切り者を名乗るだけでも十分のはずなのに。 ﹁⋮⋮⋮根拠としては薄いけどまあ正解ですね。それで、だからなんだと言うんです ? 前に進まな ! いけない以上希望は残っている ﹂ きゃならない。例えどれだけ絶望に満ちていようと、絶望するために希望を持たなきゃ ﹁ボ ク が 唯 一 の 生 き 残 り だ か ら、ボ ク だ け は 希 望 を 捨 て ち ゃ 駄 目 な ん だ ﹂ そう。江ノ島さんがボクらを殺す気ならあまりにも回りくどい。大神さんはともか 思わせるためじゃないの 残された希望のボク達を殺し合わせることで、外に残った人たちに希望なんて無いって ? ? !? 今更あんたみたいな運だけでこ ボクの言葉に江ノ島さんはキャラ作りも忘れてキョトンとほうける。こんな状況だ ? ! 3 ! 江ノ島さんはボクの言葉にうつむきプルプル肩を震わせる。怒っているのだろうか 最高 絶望的に希望 ねえなんでそんなに ! 狂ってる 最高だよ苗木 希望にすがりつくの ! ! ⋮⋮ 絶望的なまでに絶望に染まらないの ﹂ ? ﹁⋮⋮ぷぷ、うぷぷぷ⋮⋮アーハッハッハ に狂ってるよあんたは ? 聞いて、私すごいこと思いついたの ﹂ にも女子より小柄な僕では江ノ島さんを振り払うことは出来ない。 ﹁ねえ苗木 ! ﹁私ね、死ぬことが最大の絶望だと思ってた。でもそれってさ、それで終わりじゃない ﹁そんなこと、興味ないから離してよ⋮⋮﹂ ! ﹂ あんた 必要だって。絶望には希望が必要なんだ﹂ わたし ずっと絶望を味わっておけそう⋮⋮⋮あんたも言ってたじゃん ? ぬるりと江ノ島さんの赤い舌がボクの首筋にはう。蛞蝓が這うような感触は首筋か !? 絶望するには希望が もう味わえない⋮⋮それより、絶望的に大嫌いな希望しか考えないあんたと居た方が ? 江ノ島さんは大笑いしながら呆然としているボクを押し倒してきた。ふりほどこう ! ! 当然だ、ボクは彼女達絶望の存在理由を否定した。殺しにしてもおかしくない。けど ? ﹁⋮なっ⋮⋮くっ プロローグ 4 むぐ⋮⋮ぐん⋮⋮ ﹂ ら頬へと移動し僕の唇を無理矢理開き舌が侵入してくる。 ﹁ん ! 手錠の鎖は長くて、十分取りにいける⋮⋮⋮⋮。 不意に視界の端にボールペンが移る。江ノ島さんは⋮⋮眠っている。 ﹁⋮⋮⋮あ﹂ 朝日奈さんの時もそうだったな。まさか2人の女性から襲われる経験をするとは。 隣では一糸纏わぬ生まれたままの姿の江ノ島さんが満足そうに眠っている。 江ノ島さんの手の代わりに手錠がはめられていて、ベッドの足と繋がれていた。 数えるシミもない天井を眺めているうちに江ノ島さんの行為は終わった。右手には ﹁うぷぷぷ⋮⋮⋮⋮﹂ ボクの手首を掴んでいた手が片方離れ、僕のパーカーのジッパーに手をかける。 ﹁ん、むぅ⋮⋮﹂ ﹁んぐ、ちゅむ⋮⋮じゅるぢゅる⋮⋮はむ、んむぅ﹂ !? 5 ﹁⋮⋮⋮おえぇ ﹂ き抜き手の肉が少し抉れた。 ボクの部屋にこれ見よがしに脱出スイッチがあった。鍵はなかったので無理矢理引 う絶望を与えるためにわざと殺されたんだろう。 たぶん江ノ島さんは起きていた。僕に殺されるという絶望と、僕には人を殺したとい 腕に残っている。 肌を破った時の感覚が、肉を千切っていく感覚が、骨にあったときの固い感覚がまだ 胃の中の物を全て吐き出しても不快感が消えない。 持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。 悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気 気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い 気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持 ! どいかもしれない。 殺し合う様子を見せられていたんだ。もうしかしたら僕の記憶にある頃よりもっとひ この先には江ノ島さんが絶望に染めた世界が待っている。最後の希望である僕達が ﹁⋮⋮⋮⋮外、か⋮⋮﹂ プロローグ 6 不 思 議 な こ と に 僕 は ま だ 絶 望 し て い な い。確 か に ボ ク は 江 ノ 島 さ ん の 言 う と お り 狂っているのかもしれない。 それでも、狂っていたとしても、ボクの希望が誰かに感染して、希望が広がるなら僕 希 望 は狂っていたっていい。 ボクは前に進むんだ。 ﹂ スイッチを押し、光が扉の向こうから溢れてくる。その時 ﹁⋮⋮⋮ん⋮⋮あれ ? ここは⋮⋮教室 ? ? 所。 ﹁⋮⋮入学案内 ﹂ 殺し合い生活が始まる際記憶を失い、その頃のボクにとって初めての教室に思えた場 ﹂ 終わり。この世界が終わり次の世界が始まる合図だった。 やがて世界は飴細工のようにドロドロに溶け混ざり合う。それが始まり。あるいは ボクの視界はぐるぐると歪み始めた。 ﹁⋮⋮え ? 7 これは、夢なのだろうか ﹂ ﹂ ? あの時と同じメンツ。あの時と同じ言葉⋮⋮⋮。 ﹁うん。今日、希望ヶ峰学園に入学する予定の⋮新入生だよ﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮うん。君たちも ﹁オメーも⋮⋮ここの新入生か そしてそこには⋮⋮彼らの姿があった。 そう一人で結論づけながらボクは玄関ホールに向かう。 いな人種が生まれている時点で神様なんて居ない。 いな⋮⋮ならもっと早く助けてくれても良かったろう。江ノ島さんみたいな、絶望みた にいって居てほしい人たちがいたら、ボクは神様だって信じるかもしれない。いや、な これが現実なら、思っているとおりなら、ボクは行かなくてはならない。もし、そこ ﹁⋮⋮⋮行かなくちゃ﹂ だとしたら随分とたちの悪い悪夢だ。頬を抓ると痛みを感じた。 ? ? ﹁これで15人ですか⋮⋮キリが良いし、これで揃いましたかね﹂ それは大変だ ! 遅刻は目をつぶろう ﹂ ! もしれません﹂ ﹁うむ ! ﹁⋮⋮⋮はじめまして。苗木誠って言います。いつの間にか眠ってたみたいで、貧血か プロローグ 8 ﹁⋮⋮アンタ、この状況でそんなこと気にすんの ﹂ 遅れてきたクラスメイトくんの為にもさ ﹂ ! ? 外に記憶を持つ者は居ないみたいだ。 キーン、コーン⋮⋮カーン、コーン⋮ マイクテスッ、マイクテスッ 校内放送、校内放送⋮ 大丈夫 聞こ ? ﹄ ! ボ ク キ ミ 江ノ島さん⋮⋮よくわからないけど、やり直しらしい。 ? 希望が負けた上で絶望が死んだからかな ? 見ているよね 皆が去った後、ボクはカメラのレンズと目を合わせる。 皆が玄関ホールから去っていく。 皆が戸惑う中、前回と同じように十神君が真っ先に動いた。それに続くように次々に 館までお集まりくださ∼い⋮⋮って事で、ヨロシク ﹃えー、新入生のみなさん⋮⋮今から、入学式を執り行いたいと思いますので至急、体育 ! そして前と同じように、﹃それ﹄が始まった。 えーっ、ではでは⋮﹄ ﹃あー、あー⋮⋮ えてるよね ! あの時と同じようにノイズだらけの画面に浮かぶシルエット。 ? ! 自己紹介が終わった後の話し合いからするに、前とおんなじらしい。そして、ボク以 変わらないな。本当の顔合わせの時と、そしてあの時と同じ紹介文を聞く。 ﹁それより改めて自己紹介しない !? 9 プロローグ 10 殺 し 合 い 救っ て ボ ク キ ミ じゃあ仕切り直しと行こうか。今度はちゃんと殺してみせる。だから、希望と絶望の 愛し合いをもう一度始めよう。 入学式 ここも前と同じか。 苗木は体育館の中に入りそんな風に冷めた感想を抱く。 ﹂ ﹂ 人数分の椅子が並べられただけの形だけの入学式。まあ、本当はあと一人生徒が居る 苗木君、それは何ですか のだが。 ﹁あれ ﹁トロフィー﹂ ? ﹁オーイ、全員集まった∼ それじゃあ、そろそろ始めよっか ﹂ !! ﹁えい﹂ の上に着地する。と、同時に みを浮かべた熊のぬいぐるみはビヨーンという効果音とともに壇上から飛び出し壇上 〝それ〟は、左半身がかわいらしい白く可愛らしい笑みを浮かべ、右半身が邪悪な笑 !? た。苗木の記憶にある通りの言葉が聞こえる。 舞園は苗木が片手で弄っているトロフィーを不思議そうに見ていた時、それは起き ﹁それは分かるんですけど、なんでそんなものを ? ? 11 ﹂ 苗木がトロフィーを投げる。それは放物線を描きながらくるくると回転し運良く先 いきなり何すんのさ 端が熊の右目に突き刺さる。 ﹁ぎゃー ! しょ ﹂ ﹁ごめん、ボクの才能がどの程度か確かめたくてさ。ほら、ここって才能を鍛える場所で ! 対応する。 ﹁全くもう まだ校則を教えてないから見逃すけど次はないからね ﹂ ? なのだッ ﹂ !! ﹂ ボクは〝モノクマ〟だよ。キミたちの⋮この学園の⋮学園長 ! ﹂ いきなり何を言ってるのさもう。ていうか才能示した後に ! 才能育てるここから帰りたいってどういう事 !? ﹁駄目に決まってるでしょ ? ﹁ヌイグルミじゃないよ いぐるみと平然と話していると言う意味が込められていることだろう。 皆が呆然とする中思い出したように千尋が呟く。この喋ってるには苗木に対してぬ ﹁⋮⋮⋮ぬ、ぬいぐるみと喋ってる⋮⋮⋮﹂ ﹁肝に銘じるよ﹂ ! 右目にトロフィーが突き刺さったまま抗議してくる熊に苗木は悪びれもせず笑顔で ? ﹁学園長、自主退学させてもらっても良いですか 入学式 12 ﹂ 作った人に謝れよ ﹁いや、学園長があまりにも不快なデザインで⋮⋮﹂ ﹁ええ∼⋮⋮謝れ、考えてくれた人に謝れよ ﹁ごめんねモナカちゃん﹂ ﹁え ﹂ いや⋮⋮ま、進行も押してるから細かいことはいっか ﹂ !! 起立、礼 オマエラ、おはようございます ﹂ ︶のやりとりは緊張感もなく、あまりに自然でこの場においては恐怖を感じ るほど不自然だった。 ﹂ ﹁ご静粛にご静粛に⋮えー、ではではっ ﹁おはようございますっ ! ? ﹁おはよう、モノクマ﹂ ! 2人︵ ! ? ﹂ ﹁ん ? どうかした ﹁え ? があるが。 ! 〝世界の希望〟に他なりません そんな素晴らしい希望を保護する為、オマエラには⋮ まるオマエラの学園生活について一言⋮えー、オマエラのような才能溢れる高校生は、 ﹁では、これより記念すべき入学式を執り行いたいと思います まず最初に、これから始 返せる方が変なのだ。もっとも石丸は変に律儀で、苗木は異常なのだという明確な違い モノクマの挨拶に反応したのは苗木と石丸だけだった。まあ普通、この状況で挨拶を !! ! ? ! 13 ! ﹂ 〝この学園内だけ〟で共同生活を送ってもらいます すようにね みんな、仲良く秩序を守って暮ら ! それがオマエラに課せられた学園生活なのです 一生ここで暮らしていくのです ﹂ 一生ここで⋮ ﹂ ! ﹂ ﹂ 人のせいにしないで欲しいな﹂ ﹂ ﹁キミがカメラ⋮⋮おっとと、目を壊すから前が見えないんだよ ? だからそれで視界が直るはずもないのだが。 ﹂ 苗木はそう言ってトロフィーをモノクマから引っこ抜く。まあ突き刺さっていたの ? ! ﹁ねえモノクマ、さっきからどこを見て話してるの 腐川や舞園達が慌てるのを見ながら苗木は一つ気になっていたことを尋ねる。 ﹁そ、そういう心配じゃなくて⋮ し ﹁あぁ⋮心配しなくても大丈夫だよ。予算は豊富だから、オマエラに不自由はさせない ﹁何て⋮言ったの ! ? !! ﹁えー、そしてですね⋮その共同生活の期限についてなんですが⋮期限はありませんっ まあやり直している以上同じ事を繰り返すのは仕方ないことだが⋮⋮⋮。 苗木は呆れたようにため息をつく。 ﹁またか⋮⋮⋮﹂ ! ? ! ! ﹁はぁ 入学式 14 だから、汚れた世界の心配なんて、もう必要ないから ﹁あ、ついでに今のボクが視界をシャットアウトされてるのと同じくここも外の世界と ﹂ シャットアウトされてますから ねっ ! るつもりだが。 ﹂ ﹂ ﹁それで ﹁⋮ん ﹂ ﹂ ! ぐわかった。 ﹁それは卒業と言うルール 前は偽って過ごしてただけで本性 オマエラには、学園内での〝秩序〟を守った共同生活が義 奴もいるかもかもしれないがそれは初対面に対するもの。付き合いの長い苗木にはす モノクマの言葉に全員が顔色を変える。ポーカーフェイスを気取っているつもりの ? ﹁話は終わりなの はこれなの ﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮こいつ性格変わってね ﹁おーい、モノクマ こっちが素なの されていて、確かに汚れた世界といってもいいだろう。まあそれでも苗木はここから出 汚れた世界。苗木はそれが比喩でも何でもないことを知っている。外の空気は汚染 !! ? ﹁ああ、はいはい⋮⋮次は出る方法を話しますよ∼﹂ ? ? ? ? ? 15 務付けられた訳ですが⋮もし、その秩序を破った者が現れた場合⋮その人物だけは、学 ﹂ ﹂ 園から出て行く事になるのです。それが﹃卒業﹄のルールなのですっ ﹂ なるのは一つだけ⋮⋮それは⋮人が人を殺すことだよ⋮﹂ さっきは人のせいにするなって言ったくせにっ ﹁ボク学園長の目を壊したけどそれは秩序を破ったことにならないの ﹂ !! な⋮⋮さっきも言った通り、オマエラは││﹂ ﹁うぷぷ⋮こんな脳汁ほとばしるドキドキ感は、酒や人間を襲う程度じゃ得られません ゆらりと苗木は三日月のような笑みを無意識に浮かべモノクマに近づいてゆく。 ﹁最悪の手段で最良の結果を導けるよう、せいぜい努力してください﹂ は。だが、理解と納得は全くの別物である。 苗木の目がスッと細まる。理解していたことだ、この台詞を再び聞くことになること けがここから出られる⋮⋮それだけの簡単なルールだよ﹂ ﹁殴殺刺殺撲殺斬殺焼殺圧殺絞殺惨殺呪殺⋮殺し方は問いません。誰かを殺した生徒だ その場の全員を包み込む悪意。 人を殺す、人が人を殺す。何でもないことのように放たれた言葉は明確な形を持たず ゾクリと場の空気が軋む。 ﹁残念ながらなりません ﹁で ﹁あ、認めた ! ! ? ! ? 入学式 16 ﹂ 今、イライラしてるんだ﹂ 苗木くんたら何度僕の言葉を遮る気 ﹁ねえモノクマ⋮⋮﹂ ﹁んもお ﹄ ﹁少し黙ってくれるかな ﹃ !? でもさあ、ボクに手を出すのはルール違反だよ﹂ しく﹂ そんな周囲を苗木は不思議そうに見ていると大和田が苗木を押しのけた。 ﹁⋮⋮おい、テメェちょっとどいてろ﹂ ﹁じゃ、話の続きと行きますか⋮⋮﹂ にそれすら削がれる。 ように消え去りそれがまた恐怖を周囲に植え付け、しかしその中性的で可愛らしい笑み 苗木はそう言って何時も通りの笑みを浮かべる。先程までの不快感や嫌悪感は嘘の ? ? ﹁わかってるよ。だから抗議しただけ。話を止めてごめんね それじゃあ、続きをよろ ﹁⋮⋮⋮うぷ、うぷぷぷぷ⋮⋮怖い怖い。怖いねえ。キレると手が着けられないって奴 て拳を構える者と警戒の視線を向ける者に分かれた。 周りから音が消え、数名が苗木から距離を取るように後退り、残った者は苗木に対し その声はあまりにも平坦で、それでいて耳に通る。 !? ? ! 17 ﹂ テメェの悪ふざけは度が過ぎたッ それってキミの髪型の事 ﹁オイコラ、今更謝ってもおせぇぞ ﹁悪ふざけ⋮ ﹂ ? ! ﹂ !! ﹂ ﹂ ラジコンだかヌイグルミだか知らねぇが⋮バッキバキに捻り潰 ﹂ でなきゃ力ずくでも⋮ 学園長への暴力は校則違反だよ∼ッ してやんよっ ﹁キャー 今すぐ俺らをここから出せッ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹂ ! !! 知っている苗木の対応が遅れたことにより、軽傷者一名の爆発となった。 かったはずの爆発だが忠告したはずの霧切の警戒が別に向いていたのと、爆発する事を 苗木は大和田からモノクマを奪い放り投げる。本来の歴史において負傷者を出さな ﹁はあ、こういう事が続いたらやだな﹂ 明らかに警戒した霧切と目が合う。霧切はモノクマを見ていない。 モノクマはピコーンピコーンと機械音を立て始める。苗木がチラリと霧切を見るが ! !? ﹁捕まえたぞ、コラァ 雄叫びとともに大和田は跳躍してモノクマに向かって一直線に迫る。そして││ ﹁があぁぁぁあああッッ !! ? !! ﹁おい⋮今更シカトかぁ⋮ !? ﹁るせぇ !! ! ﹁⋮⋮⋮いった﹂ 入学式 18 ﹁だ、大丈夫ですか ﹂ 手を握ってくれたのは役得と喜ぶべきかそれとも痛いと抗議するべきか。 爆炎が飛び散る範囲に腕が残り軽い火傷を負う苗木。すぐに舞園が駆け寄ってきて !? クマがいた。 苗木が顔をしかめながら振り返るとそこには目の損傷もしていない新品状態のモノ ﹁⋮⋮⋮捏造しないでよモノクマ﹂ ﹁舞園さんの手は柔らかくてはかわいいなぁ﹂ 19 イキキル︵非︶日常① 苗木は火傷でズキズキ痛む手を応急処置にもならないが潤しておこうとなめている なかモノクマは何事もなかったかのように話を再会する。 ﹁思わぬアクシデントで苗木くんが傷つきましたが⋮苗木くんに免じて特別に警告だけ ﹂ にしましょう、今後は気をつけてね。校則を破るものを発見した場合はグレートな体罰 を発動させちゃうからね ﹂ ﹁モノクマ、保健室使いたいんだけど ﹂ ? ﹁そ、そんな無茶苦茶だよ モノクマは額に血管を浮かび上がらせ爪を立てながら叫ぶ。 ! ! もう、仕方ないなあ。開放しとくよ⋮⋮﹂ ? でもそんなの苗木には関係ないことだ。 だ。 それもそうだろう。この中の誰かが自分のことを殺そうとするかもしれない状況なの 苗木が辺りを見回すと皆が皆、疑いと敵意のこもった視線を全員に向けていた。まあ モノクマはそう言って体育館から出て行った。保健室を開けに行ったのだろう。 ﹁え イキキル(非)日常① 20 火傷、そろそろ無視できないくらい痛みを発してきた あの⋮⋮ごめんなさい、私はちょっと﹂ ﹁この中に治療できる人居ない んだけど﹂ ﹁そ、そんな ? ﹂ ﹁私も、普通の怪我なら応急処置ぐらいできるけど⋮⋮えっと、ツバつけとけば治るかな ! 21 島はうんうんと頷くと苗木の左手を掴み歩き出した。 霧切と江ノ島が数秒見つめ合い、霧切が苗木をチラリと見てから引き下がった。江ノ ﹁りょーかい⋮⋮行くよ苗木﹂ ﹁⋮⋮お願いするわ﹂ ﹁⋮⋮⋮えっと⋮⋮﹂ 近づく。 そして霧切がやれやれと肩をすくめ、江ノ島がしかたないなぁ、と言いたげに苗木に ﹁んじゃ、私がやってあげるよ⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮仕方ないわね││﹂ うな顔をするだけだった。ただ一人桑田は女子に囲まれている苗木を睨んでいたが。 他の面々も他人とかかわらないために無視するか、治療できないのか申しわけなさそ 苗木の言葉に舞園と朝日奈が反応したが2人は出来ないらしい。 ? でも盾子ちゃん手慣れてるね﹂ ﹁ほい、お終い。ま、跡は残んないっしょ。よかったね﹂ ﹁良かったね苗木 ﹁そりゃあね、自分の怪我は自分で治さないと戦場で置いてけぼりじゃん ﹁戦場って、軍人みたいなこと言ってますね⋮⋮﹂ 分の正体を隠す気はあるのだろうか まあ前回の苗木も気づけなかったのだが。 ﹂ 今何でもって⋮⋮あ、いや。うん、じゃあ私のことを殺さないでね 苗木はそう言って笑う。 ﹁そうかな ﹂ ﹁なにそれ、苗木が私を守るって、頼りなくね ? ﹂ それだけ 殺させないという言葉に江ノ島はポカンと苗木を見つめ、それからクスリと笑った。 ? ? 舞園は冗談だと思って笑っているが苗木は呆れたように江ノ島を見る。こいつは自 ? ! ﹁ありがとね江ノ島さん。お礼に、ボクに出来ることなら何でも頼んでよ﹂ ﹁⋮⋮ん で良いから﹂ ? ﹁⋮⋮⋮うん。わかった。江ノ島さんを殺さないし、誰にも殺させない﹂ イキキル(非)日常① 22 ? ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ 苗木も江ノ島と同じように笑っていると舞園が羨ましそうに見ていると⋮⋮⋮ ﹁どうしたの舞園ちゃん﹂ ﹁⋮⋮⋮えい﹂ 真っ赤っか ﹂ 苗木は何を思ったのか冷蔵庫から輸血パックを取り出し放り投げる。 ﹁青春してま│││うわぁぁぁ !? ﹂ ! ﹁は ﹂ ? せっかく電子生徒手帳を持ってきてあげたのにさ やっぱあげない ! 当たってさ﹂ ﹂ ﹁あ ん ま り だ よ ﹂ ﹁は ﹂ ? ﹁⋮⋮いや、だから﹂ ﹁は ﹁でも謝るなら考えてあげても││﹂ ? ! ! ﹁いや、そろそろモノクマが来るかと思って当たってくれないかな∼て投げたら運良く ﹁何をするのさ それはビヨーン飛び出してきたモノクマに当たり破裂してモノクマを紅く染めた。 ! 23 ﹁⋮⋮⋮はい、電子生徒手帳です﹂ ﹁ん。はい、江ノ島さんと舞園さん、それと朝日奈さんも⋮﹂ 苗木は落ち込むモノクマから電子生徒手帳を受け取ると3人に配る。全員に行き渡 ると示し合わせたかのように全員が電子生徒手帳を起動した。 耐久性も抜群で10トンくらいの重さな そして苗木の電子生徒手帳には苗木誠と浮かぶ。 詳しい校則もここに書いてあるから確認してね﹂ ﹁完全防水で水に沈めても壊れない優れもの ら平気だよ ! 共同生活の期限はありません。 ︽1︾生徒達はこの学園内だけで共同生活を行いましょう。 苗木は早速校則を確認する。まあ、内容は前回と変わらないのだろうが。 ﹁はいはい⋮⋮﹂ ! 特に行動に制限は課せられません。 ︽4︾希望ヶ峰学園について調べるのは自由です。 他の部屋での故意での就寝は居眠りとみなし罰します。 ︽3︾就寝は寄宿舎エリアに設けられた個室でのみ可能です。 夜時間は立ち入り禁止区域があるので注意しましょう。 ︽2︾夜10時から朝7時までを〝夜時間〟とします。 イキキル(非)日常① 24 ︽5︾学園長ことモノクマへの暴力を禁じます。 監視カメラの破壊を禁じます。 れてはいけません。 やはり前回と同じだ。前回と違うのはもらうタイミングと場所だろう。 ︽7︾なお、校則は順次増えていく場合があります。 そして前回同様舞園が挙手をし恐る恐る尋ねる。 ﹂ 使ったサバイバルじゃなくて、頭を使ったサバイバルが見たいんだよ﹂ ﹁性格悪 ﹂ 武器を それと卒業する前に見つかったらアウトかな﹂ ﹁校則の6番の項目なんですけど、これってどういう意味だと思いますか ﹂ ﹁殺すとこを見つかるなって事でしょ ﹁何で ﹂ ? ﹁例 え 話 だ か ら 落 ち 着 い て ⋮⋮ モ ノ ク マ は そ れ が 面 白 く な い ん じ ゃ な い か な ﹁そんなことしないよ ﹁例えば大神さんや大和田君、この二人なら何も考えずに殴り殺せるよね ? 索してみようよ ﹂ ﹁⋮⋮えっとさ、モノクマの性格が悪いのと校則もわかった事だし、そろそろ学園内を探 ! ? ! ? ? ﹂ ︽6︾仲間の誰かを殺したクロは〝卒業〟となりますが、自分がクロだと他の生徒に知ら 25 ! ﹁⋮⋮そうだね。幾つかの班に別れて探そうか。一人で動くのは危ないし﹂ あの子のそばなら安心だもん ﹂ ﹂ ﹂ ﹂ 朝日奈の言葉に苗木が肯定すると朝比奈は立ち上がり保健室の出口に向かう。 ﹁私は大神ちゃんと回ってみるね ﹁⋮⋮⋮確かに﹂ 私 ﹁それじゃ江ノ島さんも行こうか﹂ ﹁へ ﹁お二人と一緒に行きます 連絡事項だ ﹁そっか、じゃあ⋮⋮⋮﹂ ﹁君たち ! ﹁調査の結果を話し合うことになった ﹁⋮⋮⋮うい∼ッス﹂ ﹁うん。わかったよ﹂ ﹂ ! ! 僕は朝日奈君に声をかけてから向か 食堂に集まりたまえ 朝日奈君が居ないようだね。よし ? ﹁わかりました﹂ おや ! ! 行こうか。と言う前に保健室の扉を開け石丸清多夏が入ってきた。 ! ﹂ 安全だろうな。彼女と朝日奈が前回のように親友になれば。 ? ﹁殺させないって約束したしね。舞園さんはどうする ? ! ? ? ﹁うむ ! イキキル(非)日常① 26 おう ﹁はい ﹂ ﹂ ﹁おっけー﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮じゃあ、ボクたちも行こうか ﹂ 石丸はそう言うと朝日奈を探しに保健室から出て行った。 ! ! ? 27 イキキル︵非︶日常② 食堂にはまだ来ている者は居ない。どうやら苗木達が一番乗りのようだ。 ﹂ ﹁ところで、苗木君⋮⋮﹂ ﹁ん、何 ﹂ いことがあるんです﹂ ﹁⋮⋮ボクに これも前回と同じか。チラリと隣をみると江ノ島と目が合う。 根黒六中の⋮二組の⋮⋮⋮﹂ ? 別に二人きりでなくとも話すようだ。 ﹁苗木君って、ひょっとすると六中じゃないですか ﹁やっぱり 私も同じ根黒六中だったんです 懐かしいやりとりだ。 四組にいたんですけど、知ってます ! ? ! 中学の頃から有名人の舞園を知らない同中の生徒は居ないだろう。 ﹂ ﹁えっと、あのですね⋮⋮自己紹介の続きになっちゃうんですけど。苗木君に確認した ? ﹁うん知ってる﹂ ! ﹁そうだね。六中の恩返し待ちなんて言われたこともあるよ﹂ イキキル(非)日常② 28 ﹂ ﹁ところで恩返し待ちって⋮⋮⋮鶴のことですか 何それ、苗木鶴になんかしたの ? ﹂ ? ﹁私は超高校級の助手になっちゃお ﹂ 苗木が前回を思い出し苦笑する中舞園はその言葉を言いはなった。 あ、この流れは。 ﹁そんなことありませんよ⋮⋮⋮⋮よーし、勇気付けられたらお礼に⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮大袈裟だよ﹂ れた﹂ ﹁そうですよ。苗木君は優しいんです。こんな状況でも、苗木君が居たから元気でいら を読みとれても真意までは読みとれないようだ。 苗木はその視線には気づいたが意味には気づけなかった。前回の経験から人の感情 苗木の過去を話す舞園を、江ノ島は羨ましそうに見つめる。 ﹁⋮へえ、昔から優しいんだね﹂ ﹁それで鶴の恩返しにちなんで恩返し待ちって呼ばれてたんです﹂ ﹁昔学校に鶴が迷い込んでさ。それを野に返したのがボクなんだ﹂ くる。 そして話に入れない江ノ島は除け者にされたと感じたのか、二人の会話に入り込んで ﹁鶴 ? 29 ! ﹁へ ﹂ 君達が一番乗りだったか ﹂ 私も精一杯、手伝いますから、一緒にここから出ましょうね 舞園はアイドルっしょ ﹁今から苗木君の助手です ﹂ ﹁⋮⋮⋮そうだね﹂ ﹁苗木君と舞園君と江ノ島君 神の拳に耐えていた。 何期生かの超高校級の誰かが作った合金なのだろうか ? 廊下や教室の鉄板がビクともしないのも前回と同じようだ。そういえばあの鉄板、大 話の内容は前回と同じ。霧切が遅刻しているのも前回と同じ。 からすぐ石丸に続くように他の面々も食堂に集まってきた。 石丸が食堂に入ってきて先に来ていた三人に感心したように笑いかけてくる。それ ﹁まあさっき石丸君が呼びに来てからすぐ向かったしね﹂ ! ! ? と、その時だった。 ? ! ! ﹁あとの問題は食料ですな﹂ みたいだね﹂ ﹁ボクらは保健室にいたけど、一通りの薬品は揃ってるみたいだったよ。輸血も出来る イキキル(非)日常② 30 じゃ、そう 前回と違い舞園が確認していないため山田が食料問題を深刻そうに話した時。 食料は毎日自動で追加されるからね。安心してください ! の建物が希望ヶ峰学園の校舎であることを説明。 葉隠はなおもこの状況を学園の催しと思っている発言をした。 ﹁それにしても、これで一つわかったことがあったね﹂ ! ﹁ですわね﹂ な、何がわかったっていうのよ⋮ ? んだ。黒の挑戦みたいにね﹂ ﹁どうでもいいよ。だって、結局黒幕を暴かなきゃまた同じ事が起きるのかもしれない ﹁ど、どうでも良いって事たぁねえだろ﹂ ﹁⋮⋮ま、今はそんなことどうでも良いからさ、黒幕について話し合おうよ﹂ 後周囲の反応を見る。皆、ただ黙り込んでいた。 苗木はセレスの言葉、仕草を真似るように被せて喋る。セレスは苗木をチラリとみた ﹁﹁逃げ場のない密室に閉じ込められたと言うことが紛れもない事実だという事が⋮﹂﹂ ﹁あ、あんたら何言ってんの ﹂ その後は前回と同じく遅刻してきた霧切が希望ヶ峰学園の見取り図を持ってきてこ 唐突に現れたモノクマが食料問題について話し唐突に消えていった。 いうことで⋮⋮﹂ ﹁ダイジョーブ ! 31 ﹃ ﹄ ﹂ かもしれないよ ﹂ 賛成だ ! ? ﹂ ! ﹁その前に一つ提案があるのですが﹂ きない。 な訳ではないが几帳面な石丸のことだ、就寝時間に起きていればまず間違いなく集中で 苗木がチラリと時計をみるともう間もなく夜時間が迫っていた。別に出歩きが禁止 ﹁でも、話し合いをするには時間が心許ないね﹂ ﹂ ! ﹁⋮⋮⋮まあね。じゃあどんな犯人なのか考えようか。犯人像が浮かべば対策がねれる かし、犯人がこの学園にいない可能性もあるではないか ﹁つまり苗木君は今後このようなことがないように犯人を捕まえようと言うんだね。し 苗木が霧切を見つめていると石丸が顎に手を当てながら言葉を発した。 そのものなんだし︶ ︵⋮⋮⋮きっかけがあれば思い出せそうだね。それもそっか、彼女の才能は彼女の本質 し何も思い出せなかったのか頭を押さえて顔をしかめるだけだった。 苗木の言葉に大半の者が首を傾げ、霧切だけがその言葉に過剰な反応を示した。しか ﹁ !? ? ﹁うむ イキキル(非)日常② 32 ﹁それって夜時間に出歩き禁止のルールでもつけるの ﹂ ? ﹂ ? ﹂ ? ガチャ ﹁困惑してるかな 特別に開ける方法を教えて││﹂ ガタガタ音を立てるだけであかない。ここも前回と同じ。 ルームの扉にふれる。 そしてその場で今回の会議はお開きとなった。苗木は自分の部屋に戻るとシャワー ﹁そうですか。では⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮考えとくよ﹂ ろは誉めてあげます。なんならナイトの一人にしてあげましょうか ﹁ああそうそう。苗木君、私の言葉を遮るのはいただけませんが、私の意を理解するとこ 行くと言って食堂の出口に向かった。 苗木の言葉に無言の肯定をする一同。セレスは満足そうに笑うとシャワーを浴びに ﹁所詮口約束だけど気休めにはなるよね り怯える生活なんて耐えられませんもの﹂ ﹁⋮⋮ま、いいでしょう。苗木君が言ったように、夜時間に制限を設けるのです。夜にな ﹁ごめんごめん。セレスの考えてることがなんとなくわかってさ﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮苗木君、人の言葉をとらないでくださいまし﹂ 33 ? ﹁ん、何か言ったモノクマ ﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮何でもない⋮⋮⋮いや、所詮は偶然だ ﹂ ﹁ドアノブをひねりつつ上に持ち上げるようにしながらやったら開いたよ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁何通りか試そうとしたけど一発目で当たるとはね﹂ ﹁⋮⋮⋮ツイてるね∼、あ∼つまんね﹂ ﹁それもそっか てないよ﹂ ﹂ ﹂ ﹁自室のシャワールームの建て付けが悪かったり殺し合いに巻き込まれてる時点でつい ? ! ? がなる。 モノクマはそう言うと来たときと同じように唐突に消えた。それと同時にチャイム ! い夢を。おやすみなさい⋮﹄ ! と⋮⋮本当に色々とあり疲れていたのでベッドで横になり眠りについた。 今頃石丸が画面に向かっておやすみなさい と叫んでいることだろう。苗木も、色々 間もなく食堂はドアをロックされますので、立ち入り禁止となりま∼す。ではでは、良 ﹃えー、校内放送でーす。午後10時になりました。ただいまより夜時間になります。 イキキル(非)日常② 34 イキキル︵非︶日常③ 苗木は希望ヶ峰学園制服を着た自分の後ろ姿を見ながら辺りにも視線を送る。 もう一人の自分がいる時点で現実ではないし、そもそも今この景色を見れるはずもな ﹁ああ、夢だねこれは﹂ い。そこは希望ヶ峰学園の中庭だった。 懐かしい。世界がまだ平和だった頃の記憶。色んな才能に囲まれ、気に入られ鍛えら ﹂ ﹂ れたり手伝わされなりしたので大抵のことは人並みに出来る器用貧乏になったっけ。 苗木、こっちこっち この頃は楽しかったな。 ﹁おーい ﹁ん ﹁おまたせ﹂ ! 葉隠に超高校級のパシリだべ などとからかってきたこともある。 ││そういえば色んな人に頼まれ事してたっけ││ された日の記憶だという事がわかった。 みると夢の中の苗木が江ノ島と合流していた。記憶を探ると、これは荷物持ちをやら ? ! ! 35 ﹂ と、景色が切り替わる。さすが夢、時間などという概念は存在しないようだ。 ﹁江ノ島さん、こんなに買うの ﹁ん∼、まあね﹂ そしてそんな江ノ島を観察しているうちに│││ 悲しんでいるのか、喜んでいるのかぼんやりとわかるようになっていた。 校級の手伝いをしているうちに苗木は何時しか人が楽しんでいるか、苛立っているか、 苗木が江ノ島に抱いた感想はまさしくそれだった。超高校級の同級生に囲まれ、超高 つまらなそうに笑う人だ。 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ね﹂ ﹁ほ ん と 単 純 だ よ ね。か わ い い 人 が 着 た 服 を 着 た っ て か わ い く な れ る 訳 じ ゃ 無 い の に ﹁この服はきっと今から流行るんだろうな﹂ ? ﹁んで 記憶の旅はどうだった ? ﹂ 再び景色が変わる。今度は教室だ。苗木は自分の席に座っていた。 い車の中の人物までは再現してないようだ。 苗木は車の後部座席に座りながら呟く。夢は所詮記憶の再現。苗木の記憶していな ﹁あるいはここで気づけてれば、今とは違った未来があったかもね﹂ イキキル(非)日常③ 36 ? ﹂ ﹁あの時江ノ島さんに襲われて、途中で抵抗やめた理由がわかったよ﹂ ﹁うぷぷ。苗木ったら自覚してなかったんだ ﹁うるさいな。夢の中の幻のくせに﹂ ﹁さすがDT﹂ ﹂ ﹁そ れ は 違 う よ ⋮⋮⋮ っ て、ど う な ん だ ろ なってるのかな ? ﹁記憶が戻る時走馬灯みたいに一気にきたからね。おかげで思い出せたよ、その気づけ かった﹂ れる場面にあっている。現状を変えられるかもしれない場面にあって、結局気づけな ﹁あんたの失敗はやり直したところで無くならないよ。だってあんたは、何度も止めら よりは仲のいいというだけの相手と、しかも襲われる形で経験するものではない。 普通を自称する苗木に取ってそれは好きな人とするべきもので、嫌いではないし他人 江ノ島の言葉に苗木は真剣に考え込む。なにせ初体験だ。 ? まき戻っているし経験は無かったことに ﹁仕方ないじゃないか。今まで無縁だったんだし﹂ ﹁しかし初恋に気づくのが襲われた後ってどうなのよ﹂ れた夢の登場人物でしかない。 苗木の机に座り見下ろしてくるのは江ノ島だった。だがそれは苗木の記憶から作ら ? 37 わ た し なかった場面を⋮⋮⋮どうせならその失敗ごと無くせるまで過去に戻れれば良いのに﹂ 寝言で呟いたりしただけでバレるかもよ ﹁ヤッホー苗木くん。魘されてたみたいだけど大丈夫 ﹂ ? たように冷や汗を流す苗木だったがすぐに表情を作る。 ついでに生のモノクマも居た。一瞬、夢の中の江ノ島の言葉が蘇り背中に冷水を流し ? ﹂ ﹁ま、過去なんて振り返っても仕方ないっしょ。ささっと起きなよ、本物の江ノ島盾子の 恐ろしさも知ってるでしょ ﹂ ? 苗木はモノクマの朝の放送を聞きながら目を覚ます。 ﹁あんたがそう言う私を望んだからでしょ ﹁⋮⋮⋮夢の中の江ノ島さんは親切なのに﹂ ? ﹁え 苗木くん童貞じゃなかったの ﹂ ? 反抗期 ? 反抗期なの ? ? ﹁⋮⋮⋮⋮⋮ッチ、ウザイなコイツ﹂ ﹁⋮⋮⋮苗木くんグレた ﹂ ﹁しかも逆レ○プって⋮⋮うぷぷ、恥ずかしいねぇ﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮まあね﹂ ? ﹁初体験の押し倒されたトラウマを夢で見てただけだよ﹂ イキキル(非)日常③ 38 苗木は頭をかきながら起きあがるとパーカーとブレザーを着る。何度話しても無視 ﹂ されたので諦めたのかモノクマは何時の間にか居なくなっていた。 ﹂ ﹂ ﹁⋮⋮聞かれてないのか ﹁何が ﹁うひあ ? か もその初めての相手のこと好きだったとか ﹂ ﹁ところで聞かれてた事って抵抗しなかったって事 苗木くんたらヘタレなの それと ? ﹁ねえモノクマ﹂ から。 正確には半分正解で半分不正解といったところか。何せ初めての相手は別人なのだ 苗木が苦々しげに表情を歪めればモノクマはますます愉快そうにしていた。 ﹁図星なんだ﹂ ﹁⋮⋮⋮この時ほど校則を煩わしく思ったことはないよ。今すぐ殴りたい﹂ ? ? ? ラであるのだからカメラなんて必要ないだろうに。それとも録画機能は無いのだろう 振り返るとカメラを持って興奮しているモノクマが居た。モノクマの目自体がカメ ﹁おお可愛らしい悲鳴と表情。これは高く売れるぜハァハァ⋮⋮﹂ !? ? 39 ﹁なぁに ﹂ ﹁この世界の全てが思い通りに行くとして、その先に待つのは何かな ││絶望、だよ││ ﹁⋮⋮⋮⋮そんなの決まってるよ﹂ 赤い目を輝かせながら笑うモノクマ。 ﹂ ﹁⋮⋮だから何時もつまらなそうだったんだね﹂ ﹂ この時ばかりは、モノクマの可愛らしい右半身もおぞましく見えた。 ? ? くいかなくても絶望すると思うんだよね﹂ ﹁こっちの話し。でもさあ、たとえ話だけど、うまくいくことが当たり前の人って、うま だが苗木は落ち着いた様子で呟くだけだった。 ﹁ん ? ゆらりと三日月のように裂けた口で紡がれる言葉はモノクマを数秒停止させるには ││ボクが君を絶望させるよ││ 木の笑顔が歪んだ形で反射していた。 苗木はそこで言葉をくぎり顔をモノクマの左目に近づける。ガラス製の赤い目に苗 ﹁じゃあさ⋮⋮⋮﹂ ﹁ま、そうでしょうね。何せそれは今までと全く違う未知なんですから﹂ イキキル(非)日常③ 40 十分の威力があった。 ﹂ ⋮⋮そんな言葉が出るうちじゃ、キミは真実に モノクマはそう言い残して、今度こそ居なくなった。 はたどり着けないよ。でもま、楽しみにしてあげましょう ? ﹂ ! ﹂ ! ! 苗木は再びため息をつき舞園の部屋に向かった。 うではないか ﹁うん、やはり朝の挨拶はいいッ 実に爽やかな気分だ。では今日も一日、お互い頑張ろ 石丸にあった。 ﹁おはよう、苗木くん 苗木はため息を一つつくと部屋から出て舞園の部屋に向かおうとすると⋮⋮ ! ﹁⋮⋮⋮ボクがオマエラを閉じ込めた 画を完膚なきまでに破綻させて絶望させる。その上で君を必ず殺す﹂ ﹁ボク達を閉じ込めて、外に出れないように念入りにここを封鎖して、手の込んだ君の計 41 イキキル︵非︶日常④ ﹁おはよう舞園さん﹂ ﹂ 苗木が舞園の部屋に行くと舞園は笑顔になり出迎える。 ﹂ ﹁あ、苗木君。ちょうどよかった ﹁⋮⋮⋮何か頼みたいことでも ! ﹂ ﹁私も、これから出かけようと思ってたんです。よかったら付き合ってくれませんか ﹁良いよ。どこに行くの ﹂ ﹂ ? ? まあ前回の記憶から、何のために出かけるのか知っているのだが。 ? ﹁えっと⋮その⋮⋮どこかに、護身用になる武器はないかと思って⋮﹂ ﹁護身用 ? おかないと面倒なことになりそうだ。 姉に殺させるか人質で裏切り者にした鬼に殺させるか⋮⋮早い内に味方を増やして があるだろう。 まあ現状ではそれは有り得ないが、苗木が彼女の計画を邪魔し続ければ何らかの接触 ﹁だって、私達をここに閉じ込めた人がいつ襲ってくるかわからないじゃないですか⋮﹂ イキキル(非)日常④ 42 ﹁⋮⋮⋮あの ﹁はい﹂ ﹂ ﹁ああごめん。考え事⋮⋮それで、身を守る道具が欲しいんだよね ? と同じにしたほうが先も読みやすい。 ﹂ 本当にエスパー何じゃないかと何度思ったことか。 ﹁冗談です。ただの勘です﹂ そしてやってきたのは体育館前。 ﹁これじゃあ護身用にしても⋮ちょっと⋮﹂ ついた。 ﹂ 苗木はショーウインドウから全体に金箔が張られた模擬刀を取り出す。手に金箔が ! まあ使わせるつもりは無いが念のため。 声に出したっけ ﹁体育館前のショーウインドウですね。行きましょう ﹁あれ ? うん、本当に懐かしい言葉だ。 ﹁エスパーですから﹂ ? ﹂ ならやっぱり体育館前のショーウインドウにあった模擬刀何か良いだろうな。前回 ? 43 ﹂ ﹁確かに⋮⋮⋮でも金箔剥がせば使えそうだな。なかなか頑丈だし⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮わかるんですか 彼等彼女等も絶望の被害者だ︵ただし希望厨は除 ? ﹁ん あ、モノクマメダル⋮⋮⋮﹂ く︶。見つけ次第殺すというのは間違っている気がする。 その時苗木はどうするのだろう その先輩ともいずれ対峙することになるだろうが。 ﹁⋮⋮まあね、昔先輩に少しだけ教わったんだ﹂ ? ﹁⋮⋮それ、集めてるんですか ﹂ ﹁これっていうか⋮⋮これで取れるものかな﹂ ! ﹁⋮⋮ありがとね舞園さん﹂ お役に立てて何よりです。ところで、それどうしますか ﹂ 果たして目当てのものが出るのかと。これから起こるであろうコロシアイの予防線。 意図せずモノクマメダルを三つも手に入れた苗木は考え込む。 ! ? ﹁じゃあ私、二枚見つけたので苗木君にあげますね ﹂ ちょうどよかった、これでモノモノマシーンが扱える。 入っているのを見つける。 苗木が模擬刀の使い方について考えているとトロフィーの一つにモノクマメダルが ? ﹁はい ? イキキル(非)日常④ 44 ﹁持って帰るよ﹂ あとで金箔剥がして護身用にするために。 ありがとう⋮ございます⋮苗木君が味方になってくれるなら ? 怖い顔をして、爪噛むのも良くないですよ に応えることが出来なかった。 ﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹂ ﹁な、苗木君 ﹁⋮⋮⋮ん ﹁どうしたんですか ? ? ﹁ああ、ごめん⋮⋮﹂ ? ? いらいらして爪を噛んでいたらしい。 ﹂ 心の底から自分を信頼してくれているからだろう。でも苗木は守れなかった。信頼 出来るような気になったのは、これが嘘偽りのない彼女の本心だからだろう。 舞園はそう言って笑った。心が安らぐ笑顔。この笑顔を見ていると本当になんでも ⋮もう、護身用の武器なんていりませんね﹂ ﹁苗木君が私を⋮ですか 流石に相手が大神や大和田だったら守れる自信は無いが。 ﹁まあ今すぐ必要ってわけでもないし、そうなったらボクが舞園さんを守るよ⋮⋮﹂ ﹁⋮そうですか。あとは⋮⋮⋮ここにはもう護身用になりそうなものは無いですね﹂ 45 苗木はすぐに笑みを浮かべて誤魔化す。 ﹁あの⋮⋮じゃあ、武器探しも終わりましたし、せっかくだからもう少しお話しませんか ﹂ どんなに苦しくても、辛くても。それが 泳ぎ続けなくちゃいけない⋮本当に、そんな感じの世界なんです﹂ は、少しでも気を緩めれば、すぐに置いていかれちゃう。息継ぎなしで、水中を全力で いようと⋮夢を叶える為には、ずっと夢を見続けなくちゃいけないんです。あの世界で と夢を見続けなくちゃいけないんです⋮それが悪夢であろうと⋮起きていようと、寝て ﹁夢は追い続ければいつかきっと叶う⋮私もそう思いますけど⋮でも、その為にはずっ ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ 当になんでも⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮私は夢を叶える為に、今までなんでもしてきました⋮嫌な事も含めて⋮本 ﹁子供の頃の夢を叶えるなんて凄いよね﹂ を目指した。 ついでに家庭事情も⋮⋮⋮。テレビの中で活躍しているアイドルに憧れて、アイドル 苗木は取り留めもない話しをして、そして前回と同じく、舞園の夢の話しを聞く。 ﹁いいよ﹂ ? ﹁⋮⋮それでも舞園さんは夢を追うんでしょ ? イキキル(非)日常④ 46 ﹂ 舞園さんの夢であり、希望なんだから﹂ ﹁はい ﹂ あげたいよ﹂ ﹁⋮⋮ お腹へっちゃってさ。舞園さん、何か作れないかな ﹁こっちの話。じゃあ何が何でもここから出なきゃね﹂ ﹁⋮⋮はい﹂ ﹁じゃ、ご飯にしない ﹁ラー油が得意です﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ? そしてモノモノマシーンにモノクマメダルを入れてダイヤルを回す。 その後舞園と食事をとり別れた苗木は購買部に来る。 は過去の再現だ。 苗木は舞園の仮面のような笑みを見て、早い内に対策しなくてはと焦る。このままで ? ? ﹁うふふ、冗談ですよ﹂ ﹂ ﹁良いねそれ。自分の怠慢を才能のせいにして勝手に絶望して死んだバカ共に聞かせて ! 47 ﹁⋮⋮えっと⋮⋮⋮ワイヤーに⋮⋮サバイバルナイフ 同時に厄介なアイテム。 何でもあるな⋮⋮⋮ていうか両 なぜこのタイミングで出てくる。今の苗木自身には必要がなく、しかしとても役立ち 苗木は最後の一つを見て一瞬だけ顔をしかめ、しかしすぐに顎に手を当て考え込む。 方武器系統⋮⋮次は、げ、ダブった⋮⋮⋮⋮いや、まだ持ってないけどさ﹂ ? 苗木の手には、嘗ての苗木が記憶を取り戻す原因となったアイテムが存在した。 ﹁⋮⋮⋮脱出スイッチ、どうしよっかなこれ﹂ イキキル(非)日常④ 48 イキキル︵非︶日常⑤ ﹂ 苗木は模擬刀の金箔を取りながら使いやすくしているとモノクマが突然現れる。 ﹁ヤッホー苗木くん、何してんの ﹂ ! ﹂ ﹂ ﹁学園長への暴力は校則違反だよ ﹁はあ ! ? モノクマは爪を立て叫ぶが苗木は一つ上の幸運の先輩のように冷めた目でモノクマ ? ﹂ ﹁キミが下品な発言しようとしたからボクの才能である幸運が発動したんじゃないかな ﹁何するのさ モノクマはジタバタ暴れて鞘を引っこ抜いた。 に入る。 苗木が鞘の金箔を取っていると手を滑らせ鞘から抜けた模擬刀の柄がモノクマの口 ﹁あ﹂ ﹁ほほう、これはまさしく金た││﹂ ﹁金箔取ってんの。金箔は本物だから集めて出た後売るつもり﹂ ? 49 を見下ろす。 ﹁話聞いてなかった ボクの意図しない事故なんだ。だから、ボクは悪くない﹂ もういいよ、お休み ﹂ 苗木の言葉は正論なので悔しそうな声を出し唸るモノクマ。 ﹁ぬぐぐ⋮⋮﹂ ? ! いっそシャワー室で眠ろうか どはやはりカメラに写るし部屋の中では常に監視されてるのだ。 普段はなるべく脱衣場やカメラの死角になる場所などで過ごすが、部屋に入るときな 朝になり部屋のカメラを見つめる苗木。 一つして眠りについた。 モノクマはイライラしながらどこかに消えた。苗木は金箔を取り終えてから欠伸を ﹁ちえ ! ﹁グッモニーンッだぞ、苗木くん ﹂ と、その時来客のインターホン鳴り響く。 狙われるのは勘弁願いたい。 現状間違いなく警戒されてるんだ。 ﹁⋮⋮いや、やめた方がいいか﹂ ? ! イキキル(非)日常⑤ 50 ﹁おはよう石丸クン﹂ ﹂ ﹁では、おじゃまするぞ ﹁ちょ、まっ ﹂ ! ﹁ど、どうしたの石丸クン ﹂ 苗木は慌てて机の上に置いておいた脱出スイッチをシーツの下に放り込む。 ! ﹂ 流石だな、苗木くん ﹂ ! くれたまえ ﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮わかったよ﹂ ﹁では、僕はこれで失礼するぞ 人の話を聞かない奴だ。 ﹂ ﹂ だから、すぐに食堂に集まって ! 他の皆にも知らせて回らねばならないのでな ! ﹁そして、今日をその記念すべき最初の日にするのだッ 前回の記憶がなければまず解読できない言い回しだがな。 ﹁その通りだ ﹁⋮⋮えっと、1人で荒波に耐えられないなら支え合うために親睦を深めようって事 ? た。 苗木は金箔を剥がした模擬刀を腰にさし、コキコキ首を鳴らしてから食堂に向かっ ! ! ! ? もそう思うだろ ﹁いくら荒波にもまれようとも、両足をしっかりと着いていれば倒れる事はない⋮⋮君 ? 51 食堂に集まり話した会話は前回と全く同じ。 セレスと江ノ島が言い争いになったり黒幕の正体がジェノサイダー翔なんじゃない かと見当違いな推理を不二咲がして、朝日奈が助けが来ると言う希望的観測をする。 ﹂ 現状黒幕について話すことは無意味と知っている苗木は1人で考え事をしていると。 ︵⋮⋮│希望的観測、か。良い響きだな⋮⋮︶ ﹁⋮アハハハハハハハハハハハハハハッ !! ﹂ と、その時モノクマが突然やってきた。 ﹂ ﹁おはようモノクマ。蜂蜜いる マジですか ! ? 役の強さを引き立てることしか出来ないことに命を懸けてるのに評価されない損な役 ﹁引き立て役。必ず遅れてやってくるヒーローが来るまで市民を必死に守ってるのに悪 ? 多機能だなこのヌイグルミロボット。 ⋮⋮さて、お前等。警察にはどんな役割があるか知ってる ﹁犯罪者を捕まえる﹂ ! ﹁そうじゃなくてさあ。アニメとか特撮でだよ﹂ ﹂ 苗木は蜂蜜の入った小瓶を渡すとモノクマは片手を瓶に突っ込んで舐める。無駄に ﹁うほほ ! ﹁⋮ああ∼、うまい イキキル(非)日常⑤ 52 回り﹂ ﹂ モノクマは小瓶をひっくり返し飲みきると苗木に返す。 ﹁うんうん。苗木くんたらわかってるじゃな∼い 微妙に蜂蜜が残っている。 そんなことにはさせない ﹂ ﹁⋮ていうかさぁ、そんなに出たいなら、殺しちゃえばいじゃーん ! 人の死に関しては熱くなるんだね苗木クンたら﹂ ﹁ふざけるな ﹁あらん ! ﹁笑うトコ ﹂ ﹁アッハッハッハ ﹂ 苗木は自分でも熱くなりすぎたかと内心舌打ちする。 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ? !! ﹂ ? 連続殺人鬼さんよぉ に、まだ芝居だと思っているのだから。 ﹂ ? ! ドイツ人 ! ﹁つーか何の用だぁ 変な名前 ? !? ﹁⋮レンゾクサツジンキー ﹂ ﹂ 葉隠の言葉に江ノ島が呆れたように言う。当然だろう。苗木という怪我人が出たの ﹁⋮アンタ、まだ言ってんの ﹁徹底した芝居っぷりに感心してるんよ﹂ ? ! ! 53 ﹂ ﹁オメェの正体はわかってんだよ⋮ ﹁無視無視⋮﹂ ﹁無視すんな、コラァ ﹂ ﹁学園生活が開始して数日経った訳ですが、まだ、誰かを殺すような奴が現れないよね モノクマは大和田の言葉を無視して話を続ける。 ﹁はいはい、それでは話を戻して⋮﹂ ! ﹂ ! ﹁足りないものってなんだ ﹁⋮ずばりど││﹂ ﹁動機だね﹂ ﹂ ﹂ ボクって働き者のクマだよね∼♪冬 苗木が声を被せるとモノクマは落ち込んで何故かあった小石を蹴る。 ﹂ ピコーン、閃いたのだ 場所も人も環境も、ミステリー要素は揃ってる ﹁何を言われようとボクは誰も殺さないし、誰も殺させない⋮ ∼ オマエラ、ゆとり世代の割にガッツあるんだね⋮でも、ボク的にはちょっと退屈ですぅ ! !! のに、どうして殺人が起きないかと思ったら⋮そっか、足りないものが1つあったね ! ﹁⋮ショボーン﹂ ? ! ﹁あ、わかった ! ! ﹁まあ、と言うわけで皆さんの動機を作りました ! イキキル(非)日常⑤ 54 どういう意味だッ 眠の失敗なんてしないね﹂ ﹁動機だぁ⋮⋮ ﹁話変えんな、コラァァ ﹂ ﹂ ﹁ところでさ、オマエラに見せたい物があるんだ !! ﹂ ルとかじゃないよ だってば ﹂ ﹂ ホントに、そういうのじゃないんだからッ その言葉に周囲の全員の目つきが変わる。 特にセレスと舞園の目つきがヤバい。 ﹁学園内のある場所に行けば、その映像が見られるよ どうしてこんな事をするの あなたは私達に何をさせたいの ﹂ ? あなた 学園の外の映像なん !! ﹁⋮⋮だったら、すぐに確認してみましょう。でも、その前に聞かせてもらえる は何者なの ? ける。 ? ゾクリと苗木の背に冷や汗が流れる。 ││絶望⋮それだけだよ⋮⋮││ ﹁ボクがオマエラに⋮させたい事 あぁ、それはね⋮││﹂ モノクマの言葉に霧切が真っ先に応え、そして問い詰めるような視線をモノクマに向 ? ? ! ! ! ﹁オマエラに見せたいのは、ちょっとした映像だよ⋮あ、違うよ。18禁とかアブノーマ ! ! ? 55 モノクマを通し絶望的に絶望を与えたくて溜まらないと言いたげな笑みを浮かべる 彼女の姿を幻視する。 謎、知りたければ好きにして。ボクは止めないよ﹂ それともこの悪寒は、彼女 ﹁後の事が知りたければ、オマエラが自分達の手で突き止めるんだね。この学園に潜む そう言えば、彼女は結局ただの絶望の1人なのだろうか が真の⋮⋮⋮ ﹁⋮⋮まあいっか﹂ ? ﹂ 苗木は食堂から出て行こうとすると舞園も慌ててついてくる。 ﹁あ、苗木君。1人は危ないですよ⋮⋮﹂ ﹁あの、苗木君。ある場所がどこかわかるんですか ? 迷わず歩く苗木に舞園が不思議そうな顔で尋ねてくる。 ﹁⋮⋮⋮あ、そうか 視聴覚室 ﹂ ! ル箱を見つける。 苗木が視聴覚室の扉を開けると、各々の名前が書かれたDVDが入っているダンボー ﹁そういうこと⋮⋮⋮﹂ ! ﹁まあね、映像が見られる場所なんて限られてるよ﹂ イキキル(非)日常⑤ 56 ﹁私、皆を呼んできますね ﹁いよっ⋮⋮と ﹂ ﹂ 苗木は模擬刀の柄を掴み引き抜く。 すぐに、舞園は食堂に向かって走り出した。 ! ﹁何やってんのさ苗木クン ﹁⋮⋮⋮ちえ﹂ これ以上やったらお仕置きだよ ﹂ と音を立て模擬刀がモニターにめり込む。モニターに足をかけ模擬刀を引 ! き抜き次のモニターを破壊しようとすると⋮⋮。 ﹂ ベキ ﹁とう ! ! モノクマが飛び出して模擬刀に叩かれる。 ! ﹁⋮⋮⋮あなたはもう見たの ﹂ ﹁見てないよ。だって、動機として用意された映像だよ 分の中に殺意を造りたくないもん﹂ 霧切は1つだけ破壊されたモニターと苗木を見比べて、しかし何も言わずに見送っ ? ? 霧切の問いに苗木は目をそらしながら応える。 本物の確信もないのに見て、自 苗木は模擬刀を鞘に収めて視聴覚室から出る。丁度他の皆が来るところだった。 ! ズガン ! 57 イキキル(非)日常⑤ 58 た。苗木は苗木で購買部に潜んで舞園が来るのを待つことにした。 イキキル︵非︶日常⑥ 購買部で暇をつぶしていると後ろで誰かが駆ける音が聞こえてきた。 振り返れば丁度、舞園が開きっぱなしのドアの影から現れドアの影に消えるところが 見えた。 苗木は購買部にあったうさぎのストラップをトカゲの剥製の口に押し込んでから舞 園の後を追った。舞園が居たのは、前回と同じ教室。 ﹁舞園さん﹂ ﹂ 苗木が俯いている舞園に呼びかけると舞園は幽鬼のように蒼白くなった顔を上げて ﹁⋮⋮⋮苗木、君⋮⋮﹂ 苗木を見つめる。 ﹁⋮⋮どうして⋮ですか⋮⋮﹂ 私達が、何をしたって言うんですか ! ﹁⋮⋮⋮﹂ ﹁どうして私達がこんな目に⋮⋮ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ふと、苗木の頭にベッドの中に隠した脱出スイッチが過ぎる。 ! 59 ここで使うべきか でもさ、国民的アイド いや、記憶がないせいで起こる殺人なんて、これ以外にもある。 一時の感情で使うべきではない。 ││嘘だ││ ﹁落ち着いて舞園さん。助けはすぐ来るよ﹂ ﹁だから、ね 落ち着いて。ボクが守るから﹂ ││これも嘘││ 出せるわけ無いよ﹂ ルの舞園さんの家族や、同じ国民的アイドルグループのメンバーにただの犯罪者が手を ﹁その慌てよう、家族か、同じアイドルグループでも写ってたの ? ? 吐き気を押し殺し笑みを浮かべ苗木は舞園を落ち着かせようとする。 ││守れなかったくせに││ ? ﹂ !? ﹁⋮⋮約束してください。苗木君だけは何があってもずっと私の味方でいて⋮⋮﹂ つける。本心を隠して、不安を押し殺して。 守りたかった、守れなかった⋮⋮今度は取りこぼさないために、苗木は笑顔の仮面を 涙目の舞園を見て、腹部に刺さった包丁と血に染まった制服が脳裏に過ぎる。 ﹁││ッ ﹁苗木⋮⋮君﹂ イキキル(非)日常⑥ 60 ⋮⋮げえぇ⋮⋮﹂ ﹁当たり前だよ。何があってもボクは舞園さんの味方だよ⋮⋮﹂ ﹁おえ⋮⋮ ﹁げほ、ごほ ﹂ それでも胸の中の異物感が消えない。 舞園と別れた後、苗木はトイレに駆け込み胃の中の物を残さず吐き出す。 ! 自室に戻った苗木はシーツの下の脱出スイッチを引き出しにしまい、代わりに引き出 苗木は口元を拭って自室に向かった。 ﹁⋮⋮⋮行くか﹂ させなくてはならない。 手に入れた二度目のチャンスだ。三度目があるとは限らない。だから、今度こそ成功 田にも殺人の罪を与えてしまった。 一度目は何も出来なかった。隣で起きていることを知らず彼女の凶行に気づけず、桑 苗木は両頬を叩いて気を入れ直す。 ︵⋮⋮ひどい顔だな⋮⋮⋮︶ 口の中を濯ぎ蒸せた苗木はそのまま顔も洗い鏡に映った自分の顔を見つめる。 ! 61 しに閉まっていたものを取り出した。 それから食堂に向かう。 ﹁あ、苗木⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮む﹂ ﹂ さっき厨房に入ってたけどすぐに出てったよ ﹁⋮⋮朝日奈さん、大神さん。舞園さんを見なかった ﹁舞園ちゃん ﹂ ? ? ﹁⋮⋮⋮舞園さん 何か、用 ﹂ ちょうどよかった⋮⋮﹂ でも、これから起こるコロシアイは違う。手に届く。だからこそ失敗はしない。 阻止することなど出来ないのだから。 やはり止められなかったらしい。まあ、当然だ。あの映像は本物で、苗木にはそれを か確かめたが、いない。部屋にいるのだろう。 苗木はお礼を言い微笑むと食堂から出て行った。念のため舞園が他の場所にいない ﹁⋮⋮⋮そっか、ありがとね﹂ ? ? ! 今度こそコロシアイを止めてみせる。 ? ﹁あ、苗木君 イキキル(非)日常⑥ 62 舞園は顔を蒼くして、まるで怯えるように周囲を見回し中で話がしたいと言い出し た。 断る理由もないので苗木は舞園を部屋に招いた。それにしても大した名演技だ。前 回の記憶が無ければ騙されていた。 ﹂ ? ﹂ ? ど、誰もいませんでした﹂ ? ﹁な、苗木君のせいじゃありません ⋮⋮⋮みんなを疑うって訳じゃないんですけど、で に気づかないなんて﹂ ﹁そう、無事でよかったよ。ごめんね 守るなんて言ってそんな危ない目にあってるの ﹁⋮しばらくしたら収まりました。後で、恐る恐るドアを開けて、確認してみたんですけ ﹁⋮⋮⋮どうなったの そのままじっとしていたんですけど﹂ 開きはしなかったんですけど⋮でも、その揺れは⋮どんどん酷くなって⋮私は怖くて、 ﹁誰かが無理矢理⋮ドアを開けようとしているみたいでした。鍵をかけておいたんで、 本当に名演技だ。聞いているこちらも緊張しそうなほど緊迫感に満ちている。 ﹁さっき⋮⋮部屋で横になってたら⋮⋮急に部屋のドアが、ガタガタと揺れ出して⋮﹂ ﹁変な事 ﹁ごめんなさい⋮ちょっと変な事があって⋮﹂ 63 ! ﹂ も⋮⋮ちょっと心配で⋮⋮もし夜時間の間に、あんなことがあったらどうしようって ⋮⋮﹂ ﹂ 悪いですよ⋮⋮⋮あの、じゃあ提案なんですけど、一晩だけ部屋を交換しても ﹁⋮⋮見張ってようか 同じだ。 らえませんか ﹁そんな ? と、ちょうどタイミングよく夜時間を報せる放送が流れた。 すれば良いのだから。 ここで断っても別の手で殺人が行われては意味がない。桑田がここに来るのを阻止 ﹁それで舞園さんが安心するならボクは構わないよ⋮⋮﹂ 怖いくらい前回と同じ。過去とはいえ、薄ら寒さを感じる。 ? ! ベッドで数分横になり、頃合いを見計らって外に出るとちょうど隣の部屋で扉が閉ま お互いの鍵を交換して苗木は舞園の部屋に向かう。 ﹁ありがとうございます。これ、私の部屋の鍵です﹂ の鍵﹂ ﹁じゃあ部屋は交換するって事で、ボクは舞園さんの部屋に行くよ⋮はい。ボクの部屋 ﹁大変。夜時間になっちゃいましたね⋮﹂ イキキル(非)日常⑥ 64 る音が聞こえた。 ﹂ ? 困惑したような舞園の声の後、水の垂れるような音と共に床に鮮血が落ちた。 ﹁⋮⋮え 苗木が無言で扉を閉めると同時に、舞園が振り返り包丁を持って突進してきた。 は背を向けたまま肩を震わせていた。 苗木はそのまま舞園のネームプレートがつけられた自分の部屋の扉を開ける。舞園 苗木は手紙を破り自分の部屋に向かうとネームプレートは取り替えられていた。 か﹄ 部屋を間違えないようにちゃんとネームプレートを確認してくださいね 舞園さや ﹃2人きりで話したい事があります。5分後、私の部屋に来てください。 桑田の部屋のドアを隙間には手紙が挟まれていて、苗木はその手紙を抜き取り開く。 苗木はそう呟いて桑田の部屋に向かう。 ﹁⋮⋮⋮ついてるな﹂ 65 イキキル︵非︶日常⑦ ﹁⋮⋮な、なんで⋮⋮どうして苗木君が⋮⋮ ﹂ 舞園は顔を蒼くして、包丁から手を離し後ずさる。 ? 瞳孔は開き瞳は揺れ涙が溢れている。呼吸も不規則でまともに酸素も取り込めてい ないだろう。 ﹂ ﹁⋮⋮いっ⋮⋮た﹂ ? は今回追い詰められたのでこの行動に移ったが、失敗した心境は 決まってる、安堵だ。 殺さずに済んだ。取り返しのつかない事にならなくて良かった。 ? 普通の精神の人間は追い詰められない限り人を殺すという選択肢に走らない。舞園 舞園はその場でペタンと膝を突く。 僅かに先端が手の甲から飛び出しているがそれ以外傷はない。 れた苗木の右手に刺さっているだけだ。 だが苗木は短く唸っただけで一向に倒れない。見ると包丁は細い糸に雁字搦めにさ ﹁⋮⋮え イキキル(非)日常⑦ 66 ﹂ 人を殺す覚悟を決めるより、覚悟を崩す方がよっぽど簡単だ。 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮舞園さん、保健室行こっか ﹁⋮⋮⋮はい﹂ ﹁手伝ってくれてありがとね舞園さん⋮﹂ ⋮⋮だから、邪魔しに来て⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮ な ん で ⋮⋮ な ん で 何 も 言 わ な い ん で す か 気づいてたんですよね 私の嘘に ? に比べればマシだろう。 まあ、締め付けが緩くて僅かに貫通させてしまったが、ワイヤーを巻かなかった場合 たいに手にワイヤーを巻いて鎖帷子の代わりにしたりして⋮⋮﹂ ﹁そうだね。それと朝日奈さん達に舞園さんが厨房に入ったのを聞いたから、さっきみ ! 手を握ろうとするがうまく動かない。治癒とリハビリには時間がかかりそうだ。 保健室についた苗木は止血剤と包帯を使い、舞園にも手伝ってもらい治療する。 冷静に物事を考えられているのかすら怪しいところだ。 ない足取りで苗木の後についてきた。 苗木は血が吹き出ることを恐れて包丁を抜かずに提案すると舞園はふらふらと覚束 ? 67 そういう趣味 ﹂ ﹂ ﹁なら、罵ってくださいよ、蔑んでくださいよ、詰ってくださいよ⋮⋮﹂ ﹁え ? ﹂ ! ﹂ ? それって、本当は殺したく ? 論でもそれは確かな殺意だ。 も殺意を持つことは誰でも出来る。例えそれが追い詰められた結果出た苦し紛れの結 心の底から人殺しを望むのは、ジェノサイダー翔や絶望達のような異常者だけだ。で ﹁そんなの⋮結果論です⋮⋮私は一度は殺そうとした⋮⋮﹂ ないって思ってたんでしょ だって舞園さんはボクを殺さずに済んで安堵したんでしょ ﹁ボクは許すよ。罪を擦り付けられそうになっても、右手を貫かれても、ボクは許す。 んだって身勝手にも安心してる⋮⋮許されて良いはずがないんですよ ﹁私は、人を殺そうとした⋮⋮その罪を、苗木君に被せようとして、なのに殺さなくてす 苗木が場を和ませようと冗談を言うと舞園は怒声を上げる。 ﹁ふざけないでください ! ? このままじゃ自殺しかねない。あるいは一線を越える⋮⋮殺人を犯した方がまだ安 だ。 そしてそういう殺意を抱いた者が一線を越えられなかった後に残るのは、自己嫌悪 ﹁私は⋮⋮許されちゃいけない⋮⋮⋮﹂ イキキル(非)日常⑦ 68 定したかもしれない。 所に依存する。 ﹁⋮⋮⋮舞園さん﹂ !? ﹂ ? ﹂ ? 苗木から距離は取らない。 苗木の後悔も一瞬、舞園は直ぐに正気に戻り顔を赤くして口元を押さえる。それでも やりすぎた。 舞園は落ち着くどころか目をトロンととろけさせ、虚ろな目で苗木を見つめていた。 ﹁⋮⋮ふぇ ﹁⋮⋮ぷは⋮⋮⋮落ち着いた である江ノ島の真似をして相手を貪るように舌を入れる。 キスの経験は、それなりにある。うまいとは言えないが現状苗木の最後のキスの相手 苗木は唐突に舞園の唇を奪う。 ﹁苗木く⋮⋮⋮んむ ﹂ 幼い頃からの夢で、汚い事も嫌な事もして手に入れた場所だから、舞園は自分の居場 それはある種の依存だ。 ﹁⋮⋮⋮はい﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮舞園さんは、夢が大切なんだね。人を殺しても良いって思えるほど﹂ 69 ﹁⋮⋮な、なな⋮⋮な、何を⋮⋮﹂ ﹁舞園さんはさ、やっぱり外に出たいの ﹂ ? 辛い ﹂ ﹁⋮⋮⋮それは⋮⋮でも、そのせいで私は人を殺そうと﹂ ﹁⋮⋮苦しい ? です﹂ ? ﹁⋮⋮え ﹂ ﹁怖いでしょ その手に残った感覚が⋮⋮な ? 甘い、甘い⋮⋮抗えぬ毒を⋮⋮⋮ 人の心を犯し、侵し、塗り替える毒を。 苗木は毒を出す。 ら、忘れればいい。欲望に身を任せて、今だけは別の夢を見て⋮⋮﹂ さっきの事を思い出すのが。辛いでしょ 視して考えつく最低な方法で舞園から殺意を無くそうとする。 自己嫌悪に苛まれながら、頭のどこかで別の自分が脱出スイッチを使えと叫ぶ声を無 苗木は左手で舞園の手首を握ると引き寄せ耳元で囁く。 ﹁その苦しみから一時だけ逃れる方法なら知っているよ ﹂ ﹁⋮そう、ですね⋮⋮外に出れないことも、さっきのことを思い出しても、苦しくて辛い ? ? ? ﹁苗木⋮君⋮⋮⋮﹂ イキキル(非)日常⑦ 70 その毒を吸った舞園は、一切の抵抗をしなかった⋮⋮⋮⋮。 夜12時。苗木はれっきとした自室に戻りため息をはく。 ﹂ なぜよりにもよってあの手段を選んだ。血が足りなくて頭がうまく回らなかったと は言えあれは無いだろう。 愛の力で殺意を削ぐ、まるで主人公だね ﹁うぷぷ。みーちゃったみーちゃった♪﹂ ﹁⋮⋮モノクマ⋮⋮﹂ ﹁苗木くんたらやる∼ ! むしろ、苗木くんの言葉一つで自分の命すら捨てそうだよ﹂ でもこれで舞園さんはもう二度と、苗木くんの命令がない限り殺しなんて しないだろうね ! モノクマはそう言って唐突に消えた。 かしも程々にね∼﹂ ﹁⋮⋮⋮ま、苗木くんのちょっとした絶望顔がみれたし良しとしましょう。んじゃ、夜更 ﹁⋮⋮⋮うるさいな、少し黙れよ﹂ ! ﹁確かにね 苗木の言葉にモノクマはゲラゲラ笑う。 ﹁依存対象を自分に変える奴が主人公なんて、随分胸糞悪そうなストーリーだね﹂ ! 71 苗木は自分の体のにおいをかぐと、まだ彼女の甘い香りが残っているような気がし た。 苗木は今夜は悪夢を見るなと確信しながら眠りについた。 だが現状脱出スイッチを使うわけにもいかない。 ﹁⋮⋮はは⋮⋮最低だなボクは﹂ イキキル(非)日常⑦ 72 イキキル︵非︶日常⑧ ﹃オマエラ、おはようございます 朝です││﹄ ﹂ ていたら唇と唇が触れ合っていただろう。 ﹁⋮⋮舞園さん、なんでいるの ﹁苗木君、鍵はきちんと閉めないと駄目ですよ ﹁みんなを信じてるからね﹂ ? のだ、気配はともかく殺気を感じれば目を覚ます。 ﹁⋮⋮じゃあ、これからも鍵は開けておくんですか ﹂ ちなみに舞園に言った言葉は半分正解で半分嘘だ。誰かが来ても、あんな経験の後な ? ? 何故か無断で侵入した舞園に叱られた。 ﹂ そして眼前には満面の笑みの舞園の顔があった。もし何時ものように上体を起こし ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁おはようございます苗木君♪﹂ 朝の放送を聞きながら苗木は目を開く。 ︵⋮⋮もう朝か︶ ! 73 ﹁まあ、うん⋮⋮﹂ それに鍵を開けておいた方が標的がこちらに向くかもしれない。 ﹂ 枕下のナイフを確かめてから舞園の肩に触れると舞園は素直に退いてくれた。 ﹁じゃあ、これから毎朝起こしに来ますね ﹁暫く貧血が続くだろうし、頼むよ﹂ ﹁はい♪﹂ 苗木が立ち上がりパーカーとブレザーを着て立ち上がると舞園が右手に抱きついて ! くる。歩きにくいことこの上ない。何故抱きついてくる⋮⋮⋮。 ﹂ ﹁転んだら大変ですもん﹂ ﹁声に出てた ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁エスパーですから⋮⋮﹂ ? ﹁∼∼♪﹂ ﹁じゃ、頼むね﹂ まあ確かに貧血気味でまだ頭が冴えない。転ぶよりはましか。 本当に、何か超能力でも持っているのではないだろうか。 ﹁冗談です。ただの勘です﹂ イキキル(非)日常⑧ 74 苗木に頼られたことが嬉しいのか舞園はギュッと腕を抱く力を強くして鼻歌を歌い む 仲が良いな﹂ だした。苗木はベッドの下からニヤニヤ見てくるモノクマを睨んだ後部屋から出て行 く。 ﹁おはよう2人とも ? ﹂ ! ﹁おはよう あれ、苗木。眠そうだね ﹂ ? ﹂ ﹁不健全ではないか⋮ ﹁我は女だが⋮ ? 男女が⋮1つの部屋に泊まるなど⋮ ! ﹂ ﹁私もあの映像見て怖くてさ、さくらちゃんに無理言って、泊まってもらったんだ﹂ ﹁貧血気味ってのもあるし、昨日は直ぐに眠れなくてね﹂ ! 回は羨ましい。 底冷えするような冷笑だが桑田は気づかず顔を赤くしていた。そのおめでたさが今 気づき笑みを向ける。 と、苗木が殺気を感じ振り向くと桑田が鬼のような形相で睨んでいた。舞園も桑田に それで良いのか風紀委員。 ﹁そうか。苗木君、鉄分をしっかり取りたまえ ﹁苗木君が貧血らしくて、肩を貸しているんです﹂ ! 75 ! ﹁し、失礼した⋮ ﹂ まだ揃っていないな⋮ ﹂ は、舞園を殺した後で寝付けなかったのだろう。 ﹁おや はい、苗木君あーん⋮﹂ ﹁十神君が来てないね⋮⋮﹂ ﹁嘘ですね。右手、怪我してますもん﹂ ﹁⋮⋮1人で食べれる﹂ ﹁寝坊でしょうか ? どっかのアイドルのせいでな。 そこの二人 まだ揃ってないのに食事を始めるとは何事か ﹂ ﹂ ば超高校級の野球選手だ。朝練もあり早起きが身についていてもおかしくない。前回 それにしても、桑田が居るのは予想外だった。前回は居なかったが⋮⋮⋮考えてみれ はない。自分の非礼を心から詫びている。 石丸は大神に謝罪する。大神を男と言ったことで逆鱗に触れることを恐れて⋮⋮で ! ? ! まあ言うだけ無駄だろう。 と、石丸の言葉に逆に怒る舞園。別に苗木は今、腹減ってないんだが。 ! ? 苗木は仕方なく舞園が差し出した朝食を食べる。 ! ﹁十神君を待ってて苗木君がお腹空かせたらどうするですか ! ﹁む イキキル(非)日常⑧ 76 ﹁⋮⋮どうした 何かあったか ﹂ ? 舞園は十神の声に反応を示さず苗木に食事を与えているが。 ながらも現れた十神にホッと周囲が安堵するのがわかる。 と、そのタイミングで十神がやってきた。コロシアイ学園生活という状況の中、遅れ ? しれない。石丸は現状誰かを疑うことはないだろう。朝日奈、単純。山田、二次元にし 嫉妬に忙しい。大神は⋮⋮不明だ。現時点で黒幕と繋がって居なければ疑ってるかも 誰も死んでない時点で葉隠はいまだイベントと思っているだろうし、桑田は疑うより そして恐らく腐川辺りに警戒されているはずだ。 恐ろしいな。今、苗木は黒幕だけでなく生徒全員とは言わずとも霧切や十神、セレス。 ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ 舞園は十神と苗木を交互に見た後包丁を取ろうと背に回した手を引っ込めた。 にしていた包丁︵苗木の血液付き︶を取り出そうとしたので小声で止める。 苗木の挨拶にふん、と鼻を鳴らし目を合わせない十神に舞園が苗木に言われて護身用 ﹁ストップ舞園さん﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁話しかけるな﹂ ﹁おはよう十神君﹂ 77 か興味ないからこそアイドルと仲のいい平凡な人間という漫画みたいな状況の苗木の 観察に忙しそうだ。 ﹁それにしても、一晩で随分仲良くなってるのね﹂ 私と苗木君は仲良しです♪﹂ ﹁別にそういうわけじゃ││﹂ まあおそらく学級裁判についての報告だろう。 イベントだ。 と、そのタイミングでチャイムが鳴り響き校内放送が流れる。苗木の記憶になかった ﹃あー、あー。校内放送、校内放送です。全員体育館に集合して下さい﹄ 田からの殺気が増えた。 霧切の探るような言葉に苗木が反応したがその前に舞園が首に手を回してくる。桑 ﹁はい ! ﹂ ! 生き残りたくば、殺した後も殺したことをバレないようにしろという言葉。そして、 級裁判の詳細の解説をした。 体育館に集まるなり訳の分からないモノクマの言葉を聞かされる。が、その後漸く学 ね。クマと同じぐらい危険な匂いを孕んでるからね ﹁今日オマエラに、素敵な学園システムをお知らせします。システムって良い響きだよ イキキル(非)日常⑧ 78 ﹂ 卒業する際に卒業する生徒以外皆殺しと言う事実。 同様江ノ島が歩み出る。 ﹂ ﹁アンタの言ってる事って⋮⋮無茶苦茶じゃない ﹁んあ ﹂ そんな事言う人には罰が下るよ !! ﹁うるせーんだよッ なんて言われようと私は絶対に参加しねーからッ ﹂ ! 木は舌打ちを一つして歩き出す。 不意に聞こえた舞園の声で意識を江ノ島達に向けると既にそこまで進んでいた。苗 ﹁あ、モノクマさんが踏まれた﹂ た。 苗木は周囲に目を走らせると、注意してみれば板の質が違う床を見つけることが出来 前回と同じ、彼女だけが最終的に待つ罰を知らない予め決められた言い争いをする。 !! ! ﹂ 学級裁判に参加しないですとっ ﹂ ! ﹁私はぜってーやんねーからな 罰⋮⋮ ﹁なんとっ ﹁は ? ! ! ? ﹁暗くてコワーイ牢屋に閉じこめられちゃったり⋮⋮しちゃうかもね⋮﹂ ? ﹂ モノクマの説明は続き、話がオシオキという名の処刑についての説明になった時前回 ﹁ちょ、ちょっと待ちなさいよ ! 79 ﹁苗木君 ﹂ 苗木は近づきながら思考する。彼女をどうやってその場から動かすか ﹁学園長ことモノクマへの暴力を禁ずる。校則違反だね⋮⋮﹂ ﹁ッ ⋮⋮⋮あ⋮⋮﹂ ﹁召喚魔法を発動する ﹂ 槍は無理だ。となるとやはり彼女自身その場から退いてもらうほか無い。 ど。超高校級達との生活の記憶が戻った苗木なら一般人の攻撃程度なら避けられるが 敢えて言おう、苗木誠は非力である。女子に二度も押し倒されるという経験をするほ ? 付いてこようとした舞園に止まるように指示すると舞園は笑顔で立ち止まる。 ﹁はい﹂ ﹁舞園さん⋮⋮ステイ﹂ ? ! グングニルの槍っ ﹂ !! モノクマの叫びと苗木の叫び、そして転ぶような体勢で︵実際転んでいる︶迫ってく !? ﹂ ﹁助けて ﹂ ! ﹁ッ ! ほどけた靴ひもを踏んでしまったようだ。 モノクマの言葉に慌てて駆けだし、しかし足に何かが引っかかりガクリと倒れる。 ! ﹁うわあ イキキル(非)日常⑧ 80 81 る苗木に江ノ島が気づいたのはほぼ同時。 江ノ島は女子高生とは思えぬ反応速度で飛び退き苗木が江ノ島の代わりにモノクマ にのしかかりその上スレスレを槍が通過した。 グングニルの槍による負傷者、0人。 ⋮⋮苗木⋮⋮君 ﹂ イキキル︵非︶日常⑨ ﹁⋮⋮⋮え ﹁こ、こら 退きなさい苗木くん ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ 無視なの ﹁江ノ島さん﹂ ﹁あれ無視 ﹂ ボクは男に抱きつかれる趣味は無いの∼ ﹂ ﹂ おーい⋮⋮⋮それと苗木くん、江ノ島さんは校則違反を犯した ﹁くう。可愛いと有名な苗木くんに押し倒される日が来るとは﹂ 苗木はムクリと起きあがるとモノクマはハァハァ息を荒く興奮している。 ! 江ノ島は目の前で倒れている苗木を見て呆然と眺める。 ? ﹂ ? モノクマはそう言うと壇上の中に消えていった。 ボクが本気だってことはわかったでしょ ﹁⋮⋮やっぱどうでもいいや。コロシアイは殺す相手が多い方がいいし、それにこれで ! ? それを助ける苗木くんは⋮⋮ んですよ ! ! ? ! ? ? ﹁⋮ボクは イキキル(非)日常⑨ 82 今の苗木っちがすっ転んでなかったら、どうなってたんだべ いやいや、だっておかしいべ⋮⋮死んだら⋮⋮え ﹂ ﹂ これ、ドッキリじゃなかったの ? 後に残されたのは沈黙。耳に痛いくらいの沈黙を破ったのは葉隠だった。 ﹁⋮⋮あ、あれ ﹁え かよぉ ? 覚の興味を持たない奴ら以外初めて見た死に近い光景は心を揺するには十分すぎる。 霧切や苗木のように死を近くで見てきたか、十神のように目の前の死にすらゲーム感 だ。 のか。理解することは死を身近に感じることなのだから、理解したがる奴の方が異常 端に花が添えられていようと結局は人の死など他人事。いや、理解しようとしていない 自身も整理したいのだろう。それは当然だ、どんなにニュースで流れていようと、道 石丸は顔を蒼くしたまま呟く。 ﹁と、とりあえず皆自室に戻ろう。頭の中を整理したほうがいい﹂ 冷静なのは十神と霧切、そして苗木とハナから興味のない舞園ぐらいだ。 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ だが、ここにいる全員が人が死ぬかもしれない瞬間を目の当たりにしている。 葉隠は放っておいて平気そうだな。前回と同じだ。前回と違い死者は居ないが。 !? ? ﹁苗木か江ノ島が貫かれていただろうな、そこの槍に⋮⋮﹂ ? 83 ﹁⋮⋮⋮うん⋮⋮﹂ 石丸の言葉に江ノ島はふらふらと歩く。多くの者が死にかけた故に頭が回らないの だろうと思っているが苗木だけは目を細め歩き出した。 ﹁ちょっと江ノ島さんと話してくる。舞園さんは自分の部屋に戻ってて﹂ 苗木の言葉に舞園は拗ねたような表情を見せ、しかし逆らうことはせずに大人しく ﹁⋮⋮⋮はぁい﹂ ﹂ 従った。そんな舞園にセレスが話しかける。 ﹂ ﹁よろしいのですか ﹁何がですか ? ﹂﹂﹂ れませんから距離感というものを│││ッ ﹁﹁﹁ ﹂ !? 舞園がセレスの喉元に包丁を突きつけたからだ。 私、苗木君に言 ﹁あら、そうでしたの。でも苗木君みたいな平凡な男性はその気になってしまうかもし ﹁何言ってるんですかセレスさん。私たちは別に付き合ってませんよ⋮﹂ ﹁彼を女性のところにいかせて、浮気ではないですか﹂ ? セレスはそれ以上言葉を紡ぐことが出来なかった。 !? ﹁私のことはどうぞ好きなだけ。でも苗木君の悪口は止めてくれます ? イキキル(非)日常⑨ 84 われてるのでクロになるわけには行かないんです﹂ それは言外に、苗木をこれ以上侮辱すれば殺すと言っている。 殺意の宿らない目で、それが当然のことのように⋮⋮⋮。 絶望的なまでに絶望を欲する絶望中毒者。それが江ノ島盾子。むくろに取って最愛 実の妹である。 自分を殺そうとしたのは、黒幕⋮⋮本物の江ノ島盾子だ。そして苗字こそ違うものの 江ノ島盾子⋮⋮⋮に、扮していた戦刃むくろは自室のベッドに座りながら考え込む。 舞園は周囲をグルリと見回してから苗木の言葉通り自分の部屋に向かった。 ⋮⋮⋮⋮バカを除いて。 ﹁⋮⋮ブラック舞園ちゃんも良いな﹂ を向ける。 笑顔のまま人を殺そうとしていた舞園に周囲は理解できない何かを見るような視線 舞園は笑みのまま包丁をしまった。 ﹁いえ、わかってくれれば良いんですよ﹂ ﹁も、申し訳ありません⋮⋮﹂ 85 予定と違う⋮⋮盾子ちゃんが、私を⋮⋮︶ の妹に裏切られた。 ︵⋮⋮何で⋮⋮ ﹁はあ ﹂ ﹂ これが絶望⋮⋮盾子ちゃんが、欲しがってた⋮⋮⋮︶ ﹁⋮⋮あ⋮⋮盾子ちゃん﹂ ﹁ジュン・コチャン⋮⋮誰それ ﹂ ﹁うぷぷ。足りない頭で何か考え事 ︵⋮⋮絶望 むくろの中に渦巻く感情は⋮⋮⋮絶望。 ? ﹁あ、あの⋮⋮ごめんね。怒ってる ? ﹂ ? ? ? としたんだよね ﹂ ﹁盾子ちゃんは、絶望したかったんだよね 私のこと、大好きだから⋮⋮私のこと殺そう むくろの言葉にモノクマは首を傾げる。いちいち動きが生物臭い。 ? ? ? はぁ、とため息を吐き肩を落とすモノクマ。 ﹁⋮⋮⋮⋮どんだけ残念なんだよ﹂ て﹂ ﹁⋮⋮大丈夫だよ、私⋮⋮怒ってないから。ごめんね、ちゃんと殺されてあげられなく ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ イキキル(非)日常⑨ 86 ﹁じゅ、盾子ちゃん⋮⋮ ﹂ ? それは認めましょう。でもさあ、お姉ちゃんが後一歩で死ぬとこ ? 殺すから、ちゃんと殺すから⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮ま、待って盾子ちゃん⋮⋮私、何か怒らせるような事した だ、誰か殺せばいいの た。 ? 謝るから、待って⋮⋮ キチンと学級裁判も 江ノ島から関係を絶たれた今、むくろは江ノ島を演じることなど出来るはずもなかっ ﹁⋮⋮⋮苗木⋮⋮君⋮⋮⋮﹂ ・ ﹁江ノ島さん、少し良い ﹂ むくろはモノクマが消えた場所と扉を交互に見てから扉に向かって歩き、扉をひらい モノクマは姿を消す。 と、その時だった。不意に部屋のインターホンが鳴りむくろの意識が一瞬それた瞬間 ﹁そ、そんな⋮⋮だって、盾子ちゃんの事一番理解できるのは私だけで⋮⋮﹂ お仕置きもするけどね﹂ ﹁いやだから別に良いって⋮⋮コロシアイするなら勝手にやれば ? ? ? どうでもいいよ﹂ で思ったんだよね⋮⋮ああ、これは松田君殺した時には及ばないなって⋮⋮だからもう を味わおうとしたよ ﹁飽きたんだよ。姉妹とか、そう言う関係に⋮⋮そりゃあね、ボクも肉親殺した時の絶望 87 た。 ﹁⋮⋮⋮えっと⋮⋮入って良いかな 苗木誠。 ﹁⋮⋮⋮⋮上がって﹂ ﹂ る⋮⋮わかることが出来れば、また一緒に⋮⋮︶ ︵⋮⋮ちゃんと⋮⋮絶望しなきゃ⋮⋮⋮そうすれば、盾子ちゃんの考えてることがわか 苗木は間違いなくあの中で一番の友人だ。それを殺せば絶望出来るだろう。 部屋の奥に入っていく苗木の後ろ姿を見ながらむくろは指を鍵爪のように曲げる。 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮じゃ、お邪魔します﹂ 子生徒だ。 彼は覚えていないだろうが、二年間の生活の中、江ノ島以上に笑顔を向けてくれた男 ? 獲物を狩る肉食獣のように全身に前進のための力を入れる。 ﹂ ! る。 いざその力を解放しようとした瞬間、見計らったかのように苗木がクルリと振り返 ﹁っ ﹁あ、そうだ江ノ島さん﹂ イキキル(非)日常⑨ 88 ﹂ そして、むくろがよく知る笑顔で話しかけてくれる。 ﹁怪我とかしてない ﹁⋮⋮⋮うん、大丈夫だよ﹂ ? 89 んできた。 一番最初に出会ったクラスメートというのもあるのか、苗木はそれからよく自分に絡 内を歩いている内に迷ったという間抜けな理由でさ迷っていた苗木に出会った。 戦場の癖で学園の構造を把握しようと歩き回っている内に迷ったむくろに、単に学園 他に目を向け始めたのは、今でも思い出せる。二年前、高校の入学式。 た。 そんな白い絶望でも家族だから、むくろはずっと信じて、彼女だけを見てついていっ 巣を埋めるように、意味も主張も目的もなく破壊する。 子供が蜻蛉の羽をむしり蜘蛛の巣に放るように、蟻の巣を見つければ周辺の蟻を潰し ろは知っている。江ノ島盾子に邪気など無い、無邪気そのものだ。 外の世界の希望に縋っている者達は江ノ島盾子を邪悪な精神の持ち主と言うが、むく 妹の盾子はむくろに取って汚れ無き太陽。 そ う 妹 か ら 教 わ っ た。だ か ら 自 分 を そ う い う も の だ と 認 識 し て 今 ま で 生 き て き た。 戦刃むくろに取って世界とは絶望を振りまく場所。 イキキル︵非︶日常⑩ イキキル(非)日常⑩ 90 軍人という肩書きで関わってくる者は手合わせを願う大神だけだったが、苗木はまる で普通の女子高生に接するように接してきた。 苗木を通して、クラスメートとも話す機会が増えた。苗木が居なければ、そんな生活 をしていなかったと思う。だから苗木を観察して、ある時気づいた。 苗木は江ノ島とまるで真逆の存在だ。 困ってる人に手をさしのべ頼まれていないことに手を貸す。見返りも打算も報酬も 無く人のために行動する。 人の害となることをする江ノ島とは面白いくらい正反対。そのくせ彼は江ノ島とい る時が一番楽しそうだった。 その光景は、むくろには二つの太陽が存在しているように見えた。 本来ならどれほど求めても届かない太陽。その片方は自分のそばに居てくれた。で ﹂ も、もう突き放された⋮⋮⋮。 ﹁江ノ島さん 普段は身長が低いことを気にしているため、相手を気遣っている時にしか見れない行 どうしてもこうなる。 と、感傷に浸っていると苗木が下からのぞき込むように首を傾げていた。身長差から ? 91 動だ。 ﹁⋮⋮何でも、ないよ⋮⋮さっきは助けてくれてありがとね﹂ ﹂ ﹁別に良いよ。ボクにもボクの目的があって、そのためにやってることだから﹂ ﹁⋮⋮目的 いや、それなら自分を助けた理由は 舞園はともかく自 自身のことはほとんど考えることはない。つまり計画というのも誰かの為 誰かを外に出す手伝いとか ? ? ﹂ ああ、今回の事件の黒幕を絶望させるの﹂ ? ﹁⋮⋮⋮え ? ﹁ん ﹂ あんな口約束のために下手したら自分自身が貫かれていたかもしれないのに。 相変わらず律儀な性格だ。 ﹁⋮⋮ああ﹂ ﹁それにほら、誰にも殺させないって言ったし⋮⋮﹂ 分は外に出たいと彼に縋った記憶はない。 ? ? 動する。いや、多少は考えているのだろうがそれは相手の助けとなることばかりで自分 先程述べたよう彼は見返りも打算も報酬も求めない⋮⋮悪く言えば何も考えずに行 それはまた、むくろが知る苗木にはなんとも似つかわしくない単語だ。 ? ﹁⋮⋮ところで⋮⋮⋮目的って イキキル(非)日常⑩ 92 ││絶望⋮⋮ ││苗木は盾子ちゃんを絶望させられるの べていた。 苗木の言葉に顔を上げ反応するむくろ。苗木は何時ものように優しげな笑みを浮か ? ? それはもう、相当念入りに準備したと思うんだよね﹂ ? だって、死って言うのは絶望だからね﹂ ﹁いや殺すよ ? ﹁ボクは絶望するなんて持ってのほかだけどね⋮⋮⋮だからボクらに絶望を与えようと ﹁⋮⋮絶望⋮⋮⋮﹂ の絶望も見れず、この先の絶望も見ることが出来ないって言うのは相当絶望的だよね﹂ ﹁死んだらその先は存在しない。希望を抱くことも絶望することも出来ない⋮⋮ボクら ﹂ ﹁⋮⋮⋮絶望 ? ﹁⋮⋮こ、殺すって⋮⋮そこまでしなくても⋮⋮⋮⋮﹂ 相当な絶望だと思うんだ﹂ ﹁だからさ、そんな準備も全て無駄になって、誰1人死なずに逆に殺されたら、それって り全員の動機になるそうなことを調べたりと準備は念入りにしていた。 閉じ込めたのは苗木達自身だが、記憶を奪ったり人質になる人間を予め襲っておいた ような奴だよ ﹁希望ヶ峰学園を乗っ取って、ボクらを閉じ込め、ボクらの友人家族を同時に人質にする 93 している黒幕をより深い絶望に沈める。ボクらの希望の為にね⋮⋮﹂ ││ああ⋮⋮羨ましいな⋮ 妹のことを誰よりも理解しているのは自分だけだと思ってた。 自分が妹の理解者だと思ってた。絶望を与えられるのは自分だけだと思ってた。 でも苗木は、記憶を失っても江ノ島盾子の事を自分以上に、おそらく世界の誰よりも 理解していた。 世界の誰にも与えられなかった絶望を与えようとしている。 希 望 と 絶 望 羨ましい。妹を理解してあげられる苗木が。苗木に理解してもらえる妹が⋮⋮。 ﹂ それに比べ、二つの太陽が互いを飲み込み合う事を知りながら、見ていることしか出 来ない自分が酷く情けない。 ﹂ ﹁⋮だからさ、江ノ島さん。手伝ってくれないかな ﹁⋮⋮⋮⋮え ? ど、むくろに取って同じくらい暖かな太陽が⋮⋮。 手の届くはずのない太陽が、再び手を差し伸べてくれた⋮⋮。それは妹ではないけれ だからその言葉に耳を疑った。 ? から手を貸してくれないかな ﹂ ﹁黒幕がどれほど強大な存在かわからないからさ、ボク1人じゃ不安なんだよね⋮⋮だ イキキル(非)日常⑩ 94 ? 私、やるよ ﹂ ﹂ ⋮⋮苗木の望みを、じゅん⋮⋮黒幕を絶望させるよ 私に出 ﹁い、いいの⋮⋮⋮私が手伝って⋮⋮⋮﹂ やる 頑張る ﹁⋮⋮う、うん⋮⋮⋮よろしくね﹂ ﹁うん ﹁江ノ島さん、そろそろ自分の部屋に戻って﹂ ウィッグ越しに頭を撫でてやると身を捩らせた。 チラリと下を見ると膝に頭を乗せた江ノ島が気持ちよさそうに眠っている。苗木が 苗木は自室で時計を確認する。 ﹁⋮⋮⋮そろそろ夜時間か﹂ の知らない笑みになっていることに気付かずに⋮⋮⋮。 その希望が暗く、昏らく、真っ黒に染まっていることに気付かず。苗木の笑みが自分 という希望に縋る。 むくろは苗木が示した、まだ妹に絶望を与えることが、妹のために動くことが出来る ! ! ﹁うん。お願い⋮⋮﹂ ﹁うん ! 来ることなら何でも言って⋮⋮何でもするから ! ! ! ! 95 ﹁⋮⋮わかった﹂ 苗木の声に江ノ島はムクリと起き上がり部屋を出て行った。そしてタイミングを見 ﹂ ⋮⋮⋮ところで苗木君、彼女からいろいろ聞き出さな 計らったかのようにモノクマが現れる。 ﹁たってますね ﹂ ビンビンにたってるね ﹂ ﹁⋮⋮フラグが ﹁うん くて良いの ﹂ ﹁ま、いいや。ほいプレゼント ﹁プレゼント ? ﹂ ! る。 実際、苗木は霧切さえ残っていれば皆がこの学園の秘密にたどり着けると確信してい ためだ。 外で見ている連中にも、絶望の裏切り者の情報があったから勝てただけと思わせない ﹁⋮⋮⋮ふうん﹂ ﹁ボク達の力で勝つことに意味があると思うんだ﹂ ている。理由は知っているからと言うのもあるし⋮⋮ そう、苗木は江ノ島⋮⋮むくろがこのコロシアイ生活の秘密を話そうとしたのを断っ ! ! ? ! ? イキキル(非)日常⑩ 96 ﹂ ﹁この動機じゃ殺人が起きそうにないからね。止めた苗木くんに特別賞 らお金じゃないよ、モノクマメダルだよ 時計を確認する。夜時間まで後10分。 中身を確認すると確かにモノクマメダルが百枚ほど入っていた。 ! あ、残念なが ! 庫などが。 浮き輪ドーナツ × 苗木は大量の浮き輪ドーナツを、どこに捨てるか考えることにした。 ﹁⋮⋮だぶりすぎ﹂ 50。 何か役立つものが出て来れば良いのだが⋮⋮⋮⋮。例えば、脱出スイッチを隠せる金 モノクマが消えた後、苗木は購買に向かう。 ﹁じゃ、そう言うことで﹂ 97 閑話① ﹁⋮⋮小学校、ですか ﹂ ﹂ ? ﹂ ? ﹁他の先生は ﹂ を持つ者達だ。普通の教師では手に負えなくてね﹂ ﹁いや、実は超小学生級と言う超高校級候補を集めたクラスを作ったのだが、仮にも才能 ﹁⋮⋮えっと、何でボクが ﹁ああ。少しの期間で良い、頼まれてくれないか 苗木は学園長室で霧切仁と二人きりで学園長命令を聞き、首を傾げた。 ? ﹁狛枝先輩も幸運ですけど﹂ 級に囲まれても平然と過ごしていける運以外一般人、適任だと思ってね﹂ る才能を持つ者もいなくはないが我が強いからね、苗木君なら我は強くなくても超高校 ﹁断られてしまったよ。今は自分のクラスで手が一杯だと。まあ、超小学生級に対抗す ? 君らは卵とはいえ超高校級候補だ。この世の希望なんだ。ああ、そんな君 苗木は仁に言われたとおり狛枝が教鞭を震う姿を想像する。 ﹁⋮⋮⋮想像してみたまえ﹂ ﹃良いかい 閑話① 98 ? たちの教育係に任命されるなんてボクはなんて幸運なんだろう。こんなゴミクズみた いな才能に救われるなんて。 ﹂ ああ、ごめん。ボクばっかり話し込んじゃって。ボクみたいな凡人が君たちに教えら れる事なんてないし、自習でいいよ﹄ ﹁それに彼は、色々と問題のある生徒だから﹂ ﹁⋮⋮わかりました。ボクに出来ることなら、頑張ります と、張り切って言い切ってしまったが果たして⋮⋮。 ﹂ ? ﹁違うからね ﹂ ﹁避妊しないからそうなるんだよ﹂ ﹁悩み事って言うか⋮⋮⋮子供ってどうやって育てるのかなぁ⋮⋮って﹂ 聞こえてきた声に振り返ると江ノ島盾子が片手を振って話しかけてきた。 ﹁あ、江ノ島さん﹂ ﹁うぷぷ、苗木、何か悩み事 そもそも苗木は年下の扱いなど知らない。妹はいるがそこまで年は離れていないし。 ! 99 !? そして苗木は江ノ島と別れて小学校に向かう。 高校生が珍しいのか生徒達がチラチラ見てくるのは落ち着かないが話しかけられる ことなく目的のクラスについた。 ガラ ﹁おじゃましまーす﹂ ﹁あ、靴ひもが﹂ ﹂ ヒュン ﹁ん ! ﹁おっしい ハズした、ちゃんと作れよな蛇太郎 ﹂ ! ﹁いや⋮⋮待て皆。先生じゃないぞ ﹂ ﹁ご、ごめん。ボクちんが作るの下手だったから⋮⋮⋮﹂ ! 顔を上げてみてみると木槌がユラユラ揺れていた。ちょうど、苗木のデコ付近に。 ると、頭の上で何かが通過する音が聞こえた。 扉を開けた時靴ひもが解けているのに気づいた苗木はしゃがみ込み結び直そうとす ? ? ﹁ホントだ∼。女の子みたいな顔してるのじゃ∼﹂ ﹁あらあら本当ですわ。これまたキャワイイお兄さんですね﹂ 閑話① 100 聞こえてきた声に顔を向けると、カラフルな髪の色の5人が興味深そうにこちらを見 ていた。 えっと⋮⋮よろしくね ﹂ ? ? 授業を見る担任ということですか ? ﹁お、やりぃ 授業が無くなるのか ﹂ ! ごめんなさい⋮⋮ボクちんみたいな奴とは話したくないよね⋮⋮無視して ? ですし﹂ ! ほんの僅かな間の、平穏な日常。 と、これが苗木と超小学生級との出会い。 ﹁わ∼い モナカの仕事が楽になるのじゃ∼♪﹂ ﹁⋮⋮優しくしてくれなければ誰でも良いです。見るからにそっち方面も私より疎そう くれて良いです﹂ ﹁は、話す ! ﹁ううん。ただ話して、日常生活を見て学園長に報告するだけだよ﹂ ﹁面倒 ﹂ ﹁あ、え っ と ⋮⋮⋮ 今 日 か ら 少 し の 間 君 た ち の 面 倒 を 見 る こ と に な っ た 苗 木 誠 で す。 101 週刊少年ゼツボウマガジン︵非︶日常① 朝。 その日は何時もより早く起きたのに目を開けると満面の笑みの舞園の顔があった。 ﹁おはよう舞園さん﹂ ﹁おはようございます苗木君♪﹂ 相変わらず近い。 舞園 ? ﹂ 苗木はくぁ、と欠伸して舞園に挨拶すると舞園も笑顔で挨拶を返す。 ﹂ ? ? ﹂ ﹁おはよう舞園。何朝っぱらから男の部屋に上がり込んでんの 夫 にしてください⋮⋮﹂ ﹁ふふ。江ノ島さんったら⋮⋮そっちこそノックもせず何です ? スキャンダルとか大丈 欲求不満なら別の相手 ? ? と舞園は数秒相手を見つめ、どちらも笑顔になる。 苗木がぐしぐし目元を擦っていると今度は江ノ島が部屋の中に入ってくる。江ノ島 ﹁江ノ島さん ﹁おっはー苗木⋮⋮あれ 週刊少年ゼツボウマガジン(非)日常① 102 ﹁﹁あぁ いた。 ﹂﹂ ﹁ところで苗木、これ何 ﹂ 間二人は再び見つめ合い何か悟ったのか今度は仲間に向けるような笑みを向けあって 苗木はそんな残念な二人に冷めた視線を送った後、自分のせいかと頭を抱える。その 主人の命令に二匹の犬はあっさり臨戦態勢を解いてその場に座り込んだ。 ﹁﹁わん﹂﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮お座り﹂ 舞園がダンスで鍛えた足に、江ノ島が軍人として鍛えた全身に力を込めた。が⋮⋮ 互いに挑発しあった後、ナイフと包丁を抜き構える。 ? ⋮⋮今、何か聞き捨てならない言葉を聞いたような ﹁浮き輪ドーナツ⋮⋮﹂ その名も浮き輪ドーナツ。 置かれていた。 二人が見ている先には⋮⋮⋮というか部屋全体に大量の浮き輪サイズのドーナツが ? 江ノ島が周囲を見渡しながら尋ねると舞園も思い出したかのように部屋を見回す。 ﹁私が今日の一時に来たときはもうこの状況でしたね﹂ ? 103 ドーナツでありながら浮き輪として使える不思議なドーナツ。水に浸かっても味が 落ちない。 ﹁それはわかるんですけど⋮⋮⋮﹂ ﹁ま、その話は置いといてさ。朝食にしようよ⋮⋮﹂ ﹁はい﹂ ﹁うん﹂ 部屋に出た苗木は自分の匂いを確かめる。大量のドーナツが置かれた部屋で一晩過 誰もいませんね﹂ ごしたせいか身体から甘い匂いがする。 ﹁あれ 遅れてすまない ﹂ ! そして暫くすると石丸がやってきた。 ﹁おはよう ! ﹂ 紛れた空間に閉じこめられた﹄に変わったのだ。 ような場所で落ち着けるわけもない。皆の心境は﹃外界と隔離された﹄から﹃殺人鬼の 人こそ死んでこそ無いものの、だからといって包丁振り回した不審者がいるのと同じ ﹁ま、昨日あんなことがあればね⋮⋮﹂ ﹁めずらしい﹂ ? ﹁⋮⋮早いな、君達は。それに比べ僕は⋮⋮ ! 週刊少年ゼツボウマガジン(非)日常① 104 ﹂ ﹁まあ仕方ないよ。あの後じゃ、誰かが殺されないために自分を殺すかもしれないって 考えちゃうし昨日はなかなか寝付けなかったんじゃない ﹁その通りだ⋮⋮苗木くんは、よく寝付けたな﹂ ﹁ボクは皆がそんなことしないって信じてるからね﹂ どの口が言う ? ? ! 互いに信頼しあうことが第一だったのだ 君に一つ、教え 僕は、僕は自分が恥ずかしい そうだ、皆を信じなければ皆から信じられな に言うと突然泣きはじめた。 散々﹃犯人は君なんだ﹄と言ったこの口ですが と、内心問答を押し殺し笑顔で石丸 ? 疑心暗鬼は不安を呼ぶ ﹁苗木くん い ! ! ﹁⋮⋮⋮あ∼、うん﹂ られたよ﹂ ! のだろう。朝日奈はまだ眠そうに目を擦っている。 と、継いで大神と朝日奈も現れる。先ほどの言い方からしてまた同じ部屋に止まった ﹁すまぬ。朝日奈を起こすのに手間取った﹂ ﹁おふぁよう∼﹂ 合えた二年間の記憶があればコロシアイなど起きなかったのだろうし。 苗木は熱く語る石丸に若干引きながらも石丸の言葉に同意する。実際、お互いを信じ ! 105 ﹁⋮⋮⋮ん ⋮⋮んん ﹂ ? ﹂ ? 何苗木君にいやら⋮⋮羨ましいことしてるんですか ﹂ ﹂ !? ⋮⋮⋮。 ⋮⋮あれ、苗木 ﹁そこ代わって⋮⋮今すぐ﹂ ﹁⋮⋮⋮んあ ? ﹂ その、寝ぼけてて⋮⋮苗木から美味しそうなドーナツの匂いもして さ⋮⋮悪気はないんだホントごめん ! ﹁あ、あはは⋮⋮あ、でも柔らかくてツルツルでモチモチしてて白玉みたいで美味しかっ ﹁ボクはドーナツでも、ましてや食べ物でもないんだけどね⋮⋮﹂ ! ﹁ご、ごご、ごめん を見る。そして、自分が何かしたのか思い出したのか顔を赤くして距離をとった。 二人の殺気に反応して目が覚めたのか、それでもマイペースにん∼と伸びをして苗木 ? !? 覚 が し た。柔 ら か い も の が 朝 日 奈 の 唇、硬 い も の が 歯 だ と 気 づ い た の は 数 瞬 遅 れ て 苗木が戸惑っていると頬にプニッとした柔らかいものも、継いで硬いものが当たる感 ﹁⋮⋮⋮かぷ﹂ ﹁⋮⋮えっと⋮⋮朝日奈さん。何かよう クンクン匂いを嗅ぎながらフラフラと⋮⋮苗木の下までやってくる。 不意に朝日奈は寝ぼけ眼のまま鼻をヒクヒク、まるで犬のように動かしはじめた。 ? ﹁なああああ 週刊少年ゼツボウマガジン(非)日常① 106 たよ ﹂ ! 故に、一致団結する必要が││ ﹂ ! ? ターを眺めるとモノクマの顔が映った。 石丸が話を始めようとした瞬間放送が流れる。皆一気に緊張した面持ちになりモニ ﹃キーン、コーン⋮⋮カーン、コーン⋮﹄ ! ﹁皆、昨日見た事の心の整理はついたかね モノクマは、本気で僕らを殺そうとしている な。 と、暫く朝日奈が俯いていると他の生徒も集まりだした。十神は⋮⋮⋮言わずもが 苗木は朝から頭が痛くなった。 ﹁断る﹂ ﹁舐めるだけでも﹂ ﹁やだ﹂ ﹁⋮⋮あの、一回噛ませ│﹂ を見つめていた。 苗木の言葉にシュンとする朝日奈。苗木の両隣では江ノ島と舞園がジッと苗木の頬 ﹁ご、ごめん⋮⋮﹂ ﹁そんな感想求めてないよ﹂ 107 ﹃えー、皆さん。体育館に集まってくださ∼い。大切なお話がありま∼す それだけ言うと放送が終わった。 ﹄ ! ﹂ 一同顔を見合わせ、行かなければ何が起こるかわからないという理由で体育館に向か うことにした。 ﹁⋮⋮で、大切な話ってラジオ体操 ﹁そんなわけ無いでしょ白玉くん﹂ ﹂ ? た ﹁⋮⋮世界が広がった ﹂ ? お礼いわなきゃ﹂ が邪魔ばっかりするから、範囲を広げれば邪魔しきれなくなるかな∼ってね ﹁うぷぷぷ。本当は学級裁判の後に広げるつもりだったんだけどね ﹂ どっかの誰かさん まあ前にも︵性的に︶食べられたことはあるが⋮⋮⋮と言うかあれ、まさか見られて 見ていたようだ、苗木が朝日奈に︵物理的に︶食べられるところを。 ラジオ体操を終え苗木がモノクマに尋ねるといきなり人を白玉呼ばわりしてきた。 ﹁誰が白玉だ ! ﹁どこの誰だろうね ? ! ? ? ﹁オマエラに、世界が広がったことを教えてやろうと思ったんだよ﹂ 週刊少年ゼツボウマガジン(非)日常① 108 ﹂ ! モノクマはそう言って壇上の中に消えていった。 ﹁白々しいね、白玉だけに 109 週刊少年ゼツボウマガジン︵非︶日常② ﹁⋮⋮二階、か﹂ 苗木は頭を押さえながら呟く。 ﹂ 思い出すのはマスクを被った謎の⋮⋮⋮と言うか江ノ島に殴られた記憶。 ﹁苗木君 ﹂ 前回のルートではモノクマの言っていた通り学級裁判の後に広がっていたが⋮⋮⋮。 広がった世界と言うのは学園の索敵範囲が広がったという事。 ﹁ああ、ごめん。ボクらも探索に行こうか﹂ ? ? 苗木は一度部屋に戻り浮き輪ドーナツを舞園と江ノ島に手伝ってもらいながら運ぶ。 ちゃんとしたプールだった。 ﹁⋮⋮うん。前回と同じ﹂ まではついてこなかった。 苗木はそう言って電子生徒手帳を使い更衣室を空ける。さすがに二人も更衣室の中 ﹁⋮⋮⋮プール。浮き輪ドーナツを捨てておく﹂ ﹁最初はどこを見ます 週刊少年ゼツボウマガジン(非)日常② 110 ﹁何ここ天国 ﹂ 朝日奈はプールに浮いた大量の浮き輪ドーナツを見て目を輝かせる。そういえば彼 と、最後の浮き輪ドーナツをプールに放るとそのタイミングで朝日奈が入ってきた。 !? 苗木 これ苗木の ありがとー ! ﹂ !? 苗木大好き ﹂ 女はドーナツが好きだったな。今朝も、ドーナツの匂いに釣られて苗木に噛みついてき ね ! たわけだし。 ﹁ね ! ﹁いらないから上げるよ﹂ ﹁本当 !? 朝日奈はモゴモゴと浮き輪ドーナツを食べながら手を振って苗木達を見送った。 ﹁うん。ふぁいふぁ∼い﹂ ﹁じゃ、ボクは他の場所も見てくるよ﹂ まあ前回散々味わっているから、それこそ今より成長した状態も。 をする。が、苗木は思ったより頬を赤らめていない。 それを見た舞園と江ノ島は自分の胸を見下ろし、再び朝日奈の胸を見て悔しそうな顔 ﹁﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂﹂ に押し当てられ形を変える。 朝日奈はよっぽど嬉しいのか苗木に抱きついてくる。その際豊満な胸が苗木の背中 ! ! 111 次に訪れたのは図書室。 前回より来るのが遅れたためか、誰もいない。 苗木はジェノサイダー翔の資料を見つける。 ﹁⋮⋮⋮お、あったあった﹂ 前回と同じだ。この学園に潜んだ殺人鬼についての資料。まあジェノサイダー翔は どうでも良いか。 次に苗木が探したのは手紙。 あれ でも私たち⋮⋮﹂ ﹂ 内容は、希望ヶ峰学園廃止について。 ? ? たのだろうか ﹂ ? 苗木はそう言って男子トイレに入ると隠し部屋の中に入る。 ﹁と、その前にトイレ⋮⋮⋮﹂ 苗木は手紙をポケットに入れ歩き出した。 ﹁⋮⋮さて、そろそろ食堂に向かおうか まあ、確かに本の内容が変わるわけでもないが⋮⋮⋮。 ? そう言えば、自分達はこの学園にとどまっていたはずだが誰も図書室を利用しなかっ ﹁深く気にしなくても良いんじゃない ? ﹁⋮⋮廃止 週刊少年ゼツボウマガジン(非)日常② 112 ここの資料を持って行くことは簡単だが⋮⋮⋮⋮。 どうせ何時かは彼女が見つける。 ﹁メモだけで良いか⋮⋮⋮﹂ そして彼女自身、それを誰かに話すようなことはしなかった。黒幕がどう動くかわか らなかったからだ⋮⋮。 まあ見張りに2人を男子トイレの前に立てておけば大丈夫だろうが⋮⋮。 ﹂ と言うか高校生活の記憶を取り戻している苗木にはここで手に入れられる情報にそ れほど価値を感じない。 ﹁いきなり頭たたかれるのは勘弁だしね⋮⋮﹂ 新しい発見はあったか ! どうだった !! 調査お疲れ様だったな ! 全員の視線が集まる中、石丸が代表して手紙とメモを取り読み始める。 苗木はそう言って手紙とメモを机におく。 ﹁ボク等はこんなものを見つけたよ﹂ 倉庫が解放されていたことを話す。 石丸の言葉を筆頭に、二階に図書室とプールがあったことを説明し、石丸も大浴場と ﹁諸君ッ ? 113 ﹂﹂﹂ ﹁な、なんと ﹁﹁﹁ 希望ヶ峰学園が閉鎖しているだと !? ﹂ !? ﹂ !? ﹁つい最近スカウトされたばかり⋮⋮⋮だよな ? ﹁失礼な ﹂ まってるわ ! ﹂ ﹂ ﹁ど、どうせモノクマが用意したんでしょ⋮⋮⋮私たちを混乱させるために、そうに決 ﹁それに⋮⋮この﹃ここから出てはいけない﹄と言うメモは一体⋮⋮﹂ 峰学園が閉鎖など理解できない。 それはそうだろう。つい最近、希望ヶ峰学園に来るように言われ、それなのに希望ヶ 不二咲と大和田の言葉に無言の肯定を示す。その顔はどこか暗い。 ﹁﹁﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂﹂﹂ ? だって僕たち⋮⋮⋮﹂ 苗木の言葉を十神が補足すると今度は十神に視線が集まる。 ﹁⋮⋮ああ、あの埃まみれの。憶測だが一年は放置されていたようだったぞ﹂ ﹁図書室⋮⋮﹂ ﹁な、苗木君。これをどこで 石丸の言葉に全員驚愕の表情を浮かべる。 !? ﹁ど、どういうことぉ 週刊少年ゼツボウマガジン(非)日常② 114 ! ﹂ この場合はクマを幽霊みたいに ﹂ ? ﹁で、でたー ん ? って叫びそうなもんだけど﹂ ﹁なにさ、何なのさ。人を幽霊みたいに ﹁普通クマも幽霊も出たらでたー !? ﹂ ﹁それでさ、ボクが混乱させるために用意したなんて言うけどね⋮⋮失礼クマー ﹁⋮⋮⋮クマ ﹁熊野権現に誓って、ボクの用意したものじゃありません⋮⋮﹂ それは本当のことだろう。 彼女達がここから出てはいけないなど言うはずもない。 ﹂ !? ﹂ ﹁じゃ、じゃあ誰が用意したって言うのよ ! ? 何で私たちがここから出ちゃいけないなんて書くのよ !? ﹁そりゃあオマエラの中の誰かじゃない ﹁はあ ﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮まあそんなことどうでも良いじゃん。とにかく、それはボクの仕業じゃない﹂ ﹁熊野権現は、く、クマの神じゃないわよ⋮﹂ ﹂ と両手を振り上げ怒るモノクマだが苗木の言葉に落ち着いたのか背を向け ﹁⋮⋮⋮⋮それもそうだね﹂ ガーッ ! モノクマはテトテト歩きながら机の上に立つ。 る。 ! !? ? ! 115 ﹁さあ それはオマエラの誰かに聞きなよ。応えが聞けたらだけどね。うぷぷぷ⋮﹂ ﹂ !? ? ﹂ ﹁⋮⋮三人目﹂ ﹁⋮え ﹁アナタには幾つか聞きたいことがあるのよ。抵抗しないでくれると約束するならどく ? ? ﹁⋮⋮何でもないよ。それで、何かよう ﹂ 二年間の差があっても超高校級には及ばず押さえつけられる。 一般人。 殺気に反応できようと、苗木は所詮超高校級達と二年間過ごしていようと、所詮は元 ﹁⋮⋮霧切⋮⋮さん ﹂ 夜時間になり眠っていると殺気を感じ枕下に隠したナイフを手に取る。 ﹁⋮⋮⋮ッ 近では、鍵をかけたら次の日には扉に刃物後がついていそうだが。 苗木達も立ち上がり自室に帰る。例にならって苗木は部屋に鍵をつけずに眠る。最 石丸の言葉で、探索結果の報告会はお開きになった。 ﹁⋮⋮と、取り敢えず。今日は解散にしよう﹂ モノクマは意味深な言葉を残し姿を消した。 ? ﹁動かないで﹂ 週刊少年ゼツボウマガジン(非)日常② 116 わ﹂ ﹁単刀直入に聞くわ。苗木誠、アナタは何者 ﹂ 苗木は握られた手首を解しながら上体を起こす。 霧切は苗木の言葉を聞き苗木の上から退く。 ﹁⋮⋮⋮そう﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮霧切さん相手に抵抗なんてしないよ﹂ 117 ? 週刊少年ゼツボウマガジン︵非︶日常③ ﹁⋮⋮⋮何者、ねえ⋮⋮ボクの事を警戒する必要なんてないと思うけど﹂ 霧切の言葉にそれもそうかと納得する苗木。 ﹁それをこれから確かめるのよ﹂ 苗木本人としては彼女とは仲良くしたいのだが、それは彼女の性質もあり難しいだろ う。 ﹂ ? ﹁⋮⋮何でそこ ﹂ ﹁どうしたの苗木君 ? ﹂ そして霧切の後に付いていき、固まる。 苗木の言葉に霧切は頷くと歩き出す。苗木もベッドから降りて霧切の後に続く。 ﹁⋮⋮⋮そうね﹂ ﹁場所を変えよう。ここはカメラがある﹂ ﹁⋮⋮何 ﹁タンマ﹂ ﹁アナタは最初から│││﹂ 週刊少年ゼツボウマガジン(非)日常③ 118 ? ﹂ ﹁トイレには監視カメラがないもの。かと言ってアナタを女子トイレに入れるわけには いかないでしょ いや、間違ってはない。間違ってはないのだが⋮⋮⋮。 と、男子トイレの前で真顔で応える霧切。 ? ﹂ !? !? お母さんか霧切さんは。 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁伸ばさない﹂ ﹁は∼い﹂ ﹁返事は一回﹂ ﹁はいはい⋮⋮﹂ ﹁いいからいきましょう﹂ される理由がわからない。 前回も二年間の記憶でも何度か言われた台詞だが相変わらず唐突すぎて生意気扱い 何が ﹁ええ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮生意気よ﹂ ﹁脱衣場とかでも良いんじゃ﹂ 119 口に出したら絶対に怒られるようなことを考えて、口に出さないようにしたが頬を抓 られた。 ﹂ ? ﹂ ﹁何か失礼なこと考えなかったかしら ﹁いひゃいいひゃい﹂ しかしどっちにしろ怒られた。 教訓。探偵をなめてかかるな。 ? てよく後をついてきたんだけど中学に入ってからは漫画についてやアニメ、アイドルに 名前はこまるって言うんだけど仲は⋮⋮まあ普通かな。昔はお兄ちゃんお兄ちゃんっ 抽選で選ばれた超高校級の〝幸運〟で家族構成は両親妹を合わせた四人家族。妹の 共に認める平凡な男子高校生。コンプレックスは童顔で小さいこと。 ルグループと聞かれれば真っ先に人気ナンバーワンのアイドルグループと応える自他 ﹁うん。ボクの名前は苗木誠。これといって特出した趣味も才能もない。好きなアイド うだ。 脱衣場に移動して、霧切は再度尋ねてくる。立ち位置は出口側。逃がす気は皆無のよ ﹁それじゃあ教えてもらえるかしら 週刊少年ゼツボウマガジン(非)日常③ 120 ついて話す時以外は話さなくなったかな﹂ ﹂ ? ﹂ ? ? でるところを見たからだね﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮私の才能は、ネットに乗ってるのかしら ﹁⋮⋮ネットには乗ってないね﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹂ ﹁名前を知ってるのは超高校級は基本的にネットで調べられるから。後は、名前で呼ん ﹁⋮⋮どうしましょう、説得力が全くないわ﹂ ﹁自分からしなかったのは⋮⋮⋮ボクって人見知りなんだよね﹂ ず、自己紹介されていない相手の名前を知っていた理由は何 ﹁⋮⋮言い方を変えましょう。まず最初に、アナタが玄関ホールで自分から自己紹介せ 自分のプロフィールで話は終わりだと言わんばかりに笑みを見せる。 苗木が話を逸らそうとしていたと思ったのか霧切が睨むように言うが苗木は笑顔で ﹁もう話したよ ﹁アナタの妹自慢は良いからアナタについて話して﹂ 言ったときは不穏だったけど今頃彼氏の1人ぐらいは出来てるんじゃ││﹂ ﹁あ あ、で も 本 当 に か わ い く て ね。大 き く な っ た ら お 兄 ち ゃ ん の お 嫁 さ ん に な る っ て ﹁⋮⋮⋮それは、一般的に仲のいい兄妹だと思うけど﹂ 121 矛盾はない。 指摘できる矛盾はないがだからといって納得できるかは別だ。どうせなら自分の才 能も思い出せたら良いのだが。 ﹂ ﹂ ﹁次に、アナタはあの時モノクマを掴んだ大和田君にモノクマを投げろと叫んでいたわ ね。あれは何故かしら ﹁ピーピー音が鳴ってたら誰だって爆弾だと思うと思うんだ⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮江ノ島さんを助けた時、アナタは何で槍が来るとわかったの ﹁わざわざ動機として用意された映像だよ あるい それを見て誰か人を殺そうとする人が現れ それとも黒幕自身なの ? たら困るじゃないか﹂ ﹂ ? ? ﹁⋮⋮⋮⋮ 単 刀 直 入 に 聞 く わ。ア ナ タ は 黒 幕 の 手 先 は、私達の味方なのかしら ﹂ その際転んだおかげで助かった。ほら、ボクって超高校級の幸運だから﹂ ﹁ボクは江ノ島さんがモノクマを踏んだ時、爆発すると思って止めようとしただけだよ ? ? 味方とは聞こえが良いが⋮⋮苗木は多くの仲間を処刑と言う手段で殺してしまって 苗木に向けてきた。苗木は頬をポリポリかき答えに迷う。 霧切の目は嘘偽りは許さないと言わんばかりに、かつて何度も見たことのある視線を ? ? ? ﹁モノクマが動機を用意した時、アナタは何故モニターを破壊したの 週刊少年ゼツボウマガジン(非)日常③ 122 いる。 あ、ごめん。ちょっと嫌な事を思い出して﹂ どうしたのかしら⋮⋮⋮﹂ 目の前の彼女も、信じきれず見殺しにした⋮⋮⋮。 ﹁苗木君 ﹁⋮⋮⋮え ? に見つめてくる。 ﹂ ﹂ ああ、本当に⋮⋮人のこと言えないお人好しというか⋮⋮。 ﹁⋮⋮私、何か聞いちゃいけないことを聞いてしまったかしら ﹁⋮⋮大丈夫だよ。敵か味方⋮⋮だよね ﹁ええ﹂ ﹁⋮⋮ボクが何と言っても、どの道疑わしいでしょ ﹁⋮⋮⋮⋮そうね﹂ ﹁だから勝手なことを言うね﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ? のだろう。 返答を疑うが話せなど、自分がどれだけ身勝手なことを言っているのか自覚している 霧切は苗木の言葉に、しかし顔をしかめたりはしなかった。 ? ? ﹂ 無意識に胸元の布を握りしめていた苗木に霧切が怪訝そうに、しかしどこか心配そう ? 123 ﹂ ﹁ボクは霧切さんを信じるよ﹂ ﹁⋮⋮⋮え そんなこと信じられるとでも﹂ ? どれだけ疑っても、敵視しても⋮⋮構わない。ボクが勝手にそうした ? ⋮⋮⋮。 このやり直しで何度も浮かべた本心を隠すための笑みではなく、本心からの笑みを 苗木はそう言って微笑む。 いだけだから﹂ ﹁言ったでしょ ﹁⋮⋮アナタ、何を言っているかわかってるの もボクは君を疑わないし、裏切らない。利用してくれても構わないよ﹂ ﹁霧切さんがボクのことをどれだけ疑っても、敵視しても、信じた結果死ぬことになって ? ﹂ ﹁あ、苗木君ここに居たんですね﹂ ﹁⋮⋮⋮舞園さん 苗木が部屋に向かっていると舞園に出会う。舞園は叱るような口調で言う。それほ ? ? ﹁部屋に行ったら居なかったから心配したんですよ ﹂ 苗木も暫くその場にとどまった後、部屋に戻るために歩き出した。 霧切は短く呟くと脱衣場から出て行った。 ﹁⋮⋮⋮そう﹂ 週刊少年ゼツボウマガジン(非)日常③ 124 ﹂ ど心配してくれたのだろう。だが待ってほしい。今、何時だと思っている。夜中の一時 だ。 ﹂ ﹁⋮⋮まさか、毎日こんな時間からボクの部屋に ﹁はい ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ! ? 125 週刊少年ゼツボウマガジン︵非︶日常④ ﹁⋮⋮眠い﹂ アイドルに見つめ続けられる中で寝れるほど図太い神経をしているわけではない苗 おっはー 昨日はドーナツありがとね。また頂戴﹂ 木は結局寝不足になりながら朝食に向かう。 ﹁あ、苗木 !! 今日もかわいいね﹂ ﹁⋮⋮⋮食べ終わったんだ﹂ ! ! ﹁ええ そんなことないよ⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮あ、あの∼⋮⋮舞園ちゃん ﹂ ﹁うるさいですね﹂ ﹁あぽ ﹁⋮挨拶﹂ ﹁おはようございます桑田君♪﹂ 舞園は桑田を不快そうに見ていたが苗木の言葉に笑顔を作り挨拶する。その笑顔に ? ! ? ﹂ ﹁朝日奈さんたら食いしん坊なんですね﹂ ﹁おいっーす舞園ちゃん 週刊少年ゼツボウマガジン(非)日常④ 126 桑田はあっさり悩殺された。 ﹂ ? ﹁あれ 十神クンはともかく⋮⋮石丸クンがいないね ﹂ ? ﹁⋮⋮⋮モノクマ﹂ ? ﹁はいはい﹂ ﹁アッサムってある ﹁そこにあるよ﹂ ﹁ありがと﹂ ﹂ そして大神の言葉に前回を思い出した苗木は厨房に向かう。 苗木の言葉に律儀に説明してくれるやす⋮⋮セレス。 ﹁すぐに戻ってくるはずだ。我らは、ここで待つとしよう﹂ ﹁石丸君でしたら、遅刻魔の十神君を呼びに、部屋まで迎えに行きましたわ﹂ ? 擁護してあげたい気分になる。 舞園の言い分もあるのだろうが二年間共に過ごし彼の本心を知る苗木としては、彼を ﹁⋮⋮⋮⋮桑田クンも悪い人じゃ無いんだけどね﹂ ⋮⋮﹂ ﹁大 嫌 い で す。華 が あ る っ て だ け で 芸 能 界 に 入 っ て や っ て い け る つ も り の あ ん な 男 ﹁⋮⋮舞園さん、そんなに桑田君が嫌いなの 127 苗木は茶葉の中からアッサムの瓶をとり牛乳を温める。その間にお湯も沸かす。 お湯が沸騰してきたら茶葉がヒタヒタになるまでお湯に浸す。 ミルクにはカゼインが含まれていて、直接ミルクで茶葉を開かせると完全に開ききら 苗木誠殿⋮⋮おお、ミルクティーを造っておいでか。手伝いますぞ⋮⋮﹂ ないため、熱湯で完全に開いておくのが最良である。 ﹁おや しかならないのでお帰りいただいた。 ﹁えーーーー ﹂ ! ﹁⋮⋮お待たせ﹂ て注ぎ込む。 匂いを確認してスプーンで軽くかき混ぜてから暖めておいたカップに茶こしを使っ 開かせておいた紅茶を入れ蓋を閉める。だいたい三分から四分程立ち、蓋を開ける。 牛乳は沸騰させると匂いが強くなり紅茶の匂いを消してしまう。そのため沸騰前に ﹁⋮⋮⋮⋮⋮これくらいで良いかな﹂ !? ﹂ 二年間の記憶があるならともかく、それがない山田に手伝ってもらっても正直邪魔に ﹁⋮⋮ふむ。お言葉に甘えて﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮必要ないからいいよ。休んでて﹂ ? ﹁何で何もせず戻ってきてやがるこのブタがぁぁ 週刊少年ゼツボウマガジン(非)日常④ 128 ﹁ほ、ほら ﹂ !? 苗木誠殿が入れてくれたんですよ ﹂ ﹂ ! ﹂ ? それは⋮光栄だけど遠慮しておくよ﹂ ? セレスは不満そうな顔をしたがそれ以上は言わなかった。 ﹁そうですか⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮Bランク としてわたくしの下に来ませんか ﹁なかなかの腕ですわね。ますます欲しくなりましたわ。どうでしょう、Bランク騎士 かってニッコリ微笑む。 それは、思わず出てしまった一言のようだ。口元をおさえ目を見開いた後、苗木に向 ﹁⋮⋮おいしい﹂ セレスはカップを受け取り一口飲む。 苗木の言葉に大人しくなる2人。山田は心からの安堵の吐息をはいた。 ﹁﹁そういうことなら⋮⋮⋮﹂﹂ ﹁二人とも落ち着いて、ボクが勝手にやったことだから﹂ ﹁ぶひ ﹁ちょっと豚狩ってくる﹂ ﹁前にテレビの企画で、一度だけですけど﹂ ? ! ﹁舞園、チャーシューって作れる 129 ﹂ 妙なことになったぞ⋮⋮ ﹂ 苗木が残りのカップを皆に配っていると慌てた様子の石丸がやってきた。 ﹁おい、諸君 どうしたん ? ! ! ﹂ ? ? ﹁まったく、ゆっくり読書も出来ないのか⋮﹂ 場所を探させている。十神の態度を見て殺しにかかるかもしれないから。 苗木は図書室で本を読んでいた十神にそう言って笑いかける。舞園と江ノ島は別の ﹁朝は集まって朝食って約束だから、呼びにきたよ﹂ ﹁⋮⋮⋮お前か、何のようだ ﹂ 苗木は紅茶をこぼさぬように、二階の図書室に向かった。 居場所ならわかっているし。 ﹁うん﹂ ﹁⋮⋮苗木君、紅茶持って行くんですか なっているかもしれないので全員で散策することになった。 遅刻している十神を呼びに行ったのだが何の反応も無かったそうだ。最悪の事態に その様子に全員に緊張が走り、石丸の話を聞く。 ﹁へ ? ﹁おはよう十神君﹂ 週刊少年ゼツボウマガジン(非)日常④ 130 ﹂ ﹁ま、黒幕暴くのも諦めて思惑通り踊ってる十神クンには、馴れ合いすら我慢できない か﹂ ﹁⋮⋮⋮なんだと 君は黒幕の提示したゲームに大人しく従おうとしている。君が蹴落とし ? ﹁ッ 貴様⋮⋮ 十神について多少知っているようだがあまり調子に⋮⋮⋮いや、やめ ! ﹂ ? ﹂ ? ﹁友達のお金持ちと西洋かぶれに何度も淹れさせられてね、ムキになって淹れ方をマス ﹁しかしお前、誰かにならったのか はずがない⋮⋮とか、考えいてもおかしくないんだよなあ。 それに、十神なら俺が死ぬはずがないと思っている=俺が飲むものに毒が入っている まあそれもそうか。 ﹁そんな事をするなら俺が飲まなくなる可能性も出てくる挑発などするものか﹂ ﹁毒が入ってるかも、って考えないの ﹁⋮⋮ほう、なかなか美味いじゃないか﹂ り飲む。 十神はふん、と鼻を鳴らして苗木が持っている紅茶に気づくと奪い取るように受け取 ておこう。噛みついてくる蟻にいちいち怒りを向けていることこそ道理に合わん﹂ ! てきた兄弟姉妹が見たらなんて言うんだろうね﹂ ﹁事実でしょ ? 131 ターしちゃった﹂ 奴がいるのか﹂ 素直に人を認めることは出来ないんだろうか 苗木は素直に感心しながら食堂に戻った。 なったものだ。 出来ないんだろうなぁ。性格上⋮⋮本当、よく二年でこの性格が僅かとはいえ丸く ? ﹁ふん。お前みたいな平凡な奴が通う学校に通うような小金持ちにも味の違いがわかる 週刊少年ゼツボウマガジン(非)日常④ 132 ﹂ 週刊少年ゼツボウマガジン︵非︶日常⑤ 朝の朝食の集まり。 珍しく十神も来ている。 ﹁おい苗木、お前はコーヒーを入れられるか うん大抵のことは一通り出来るよ⋮⋮﹂ ? 十神はどの世界線でも上から目線のようだ。仲良くなるのは苦労しそうである。 ﹁この部分だけは評価してやる﹂ ﹁⋮⋮やはり美味しいですわね﹂ 苗木は厨房に入り昨日と同じ茶葉を使い、コーヒーはコピ・ルアクを作る。 ﹁はいはい⋮⋮﹂ ﹁わたくしはロイヤルミルクティーをお願いしますわ﹂ ﹁なら入れてこい﹂ まではいかなくてもどこぞの食で競う学校を卒業できる程度の実力ならある。 せ大した才能がないなら役立つ技能を身につけろといろいろやらせてきて、超高校級と 何せ超高校級に囲まれて生活していたのだから。とくに西洋かぶれと金持ちがどう ﹁え ? 133 突然何言ってやがんだ ﹁しかし惜しいな﹂ ﹁ああ ﹂ ? ﹂ ? ﹁それがどうした ﹂ ! ? ﹁ふざけんじゃねえぞ ﹂ ﹁おいお前ガチで誰か殺す気じゃねえだろうなあ ﹂ 十神の言葉に桑田が顔を青くしながら聞くが十神はコーヒーを飲み答えない。 ﹁そ、それって人を殺すって事か ﹁これほどの腕を持ちながら、俺が勝者になる以上これから先は無いのだから﹂ ? !? ﹂ ﹁てめえ ﹁ひ ﹂ 大和田がバン お、俺は別にそんなつもりは⋮⋮﹂ 不二咲ちゃん脅かさないでよ ﹁ちょっと大和田 ﹁な ﹂ ! 不二咲はまだ震えている。 十神はそう言って立ち上がると食堂から出て行く。大和田も何も言えず見送った。 ? ! ! ! !? !? ﹁ほれみろ、馴れ合いに適さないのはお前も同じだろ ﹂ と机をたたき立ち上がるとその音に驚いて不二咲がビクッと震える。 ﹁ふざけてはいないさ。馴れ合うつもりがないだけだ﹂ 週刊少年ゼツボウマガジン(非)日常⑤ 134 ﹂ ﹁ああ、怯えちゃって。大和田怖かったもんね﹂ ﹁俺のせいかよ ﹂ 葉、必ず守るべき男の約束。 ﹁平和だねえ﹂ ﹁そうですね﹂ ﹂ ﹁ここまで平和だと暇が生まれる。ボクも身体鍛えようかな ﹁あ、ならあたしが手伝ってあげよっか ﹂ 良い響きだな。と、苗木は大和田達を観察する。大和田の今を形作った兄が残した言 男の約束。 ﹁男の⋮⋮約束 ﹁悪かったよ。もう怒鳴らねえ。男の約束だ⋮⋮﹂ 保護欲を刺激されるが、その正体は⋮⋮⋮まあいいや。 涙目になってふるえる不二咲。 ﹁ご、ごめんね⋮⋮⋮ボクが臆病だから﹂ ﹁あんたのせいでしょ⋮﹂ !? ? トレーニング器具があるのは更衣室だが女子は男子更衣室に入れない ﹁いえいえ私が⋮⋮﹂ ﹁待ちたまえ ! ? ? 135 ! ﹂﹂ ここはボクが﹂ ﹁﹁は 逃げたな。 ﹁⋮⋮⋮失礼した ﹂ だって苗木も怖いもん。 は出来ない。 苗木はそそくさと去っていく石丸の背を見ながら心の中で呟く。しかし責めること ! ? ﹂ ﹁はい ﹁⋮⋮なら、私は護身術でも教えてあげようかしら ﹂ ﹁うん ! ﹁⋮⋮霧切さん 私達の苗木君にようですか ﹂ ? 疑ってんなら近づかなきゃ良いじゃん﹂ ? ﹁﹁﹁⋮⋮⋮苗木︵君︶ ⋮⋮⋮あれ ! ﹂﹂﹂ ﹁それを決めるのは苗木君よ⋮⋮⋮﹂ ﹁はあ ﹂ ﹁近くで彼を観察したいのよ。信用にたる人物かどうか⋮⋮﹂ ? 苗木の言葉に嬉しそうな顔をする2人に加え、霧切が現れる。 ? ! ﹁じゃあ身体作りは舞園さん。戦闘技術は江ノ島さんにお任せするよ﹂ 週刊少年ゼツボウマガジン(非)日常⑤ 136 ? 3人は睨みあった後苗木に向かって振り向くが、苗木の姿はどこにも無かった。 その頃苗木は。 ﹁⋮⋮ん わかりやすくないか ﹂ ? 少し胸が苦しくなる。 ! と音を立て桑田のグローブにボールが収まる。 ! ﹂ ! と派手な音が響き苗木の手からグローブが吹き飛ぶ。 ! 苗木が全力で投げた為、桑田も本気で投げたらしい。リハビリも兼ねて久しぶりの バン 程度の速度しか投げられないか⋮⋮⋮ね ﹁ああ、確かに遅えな。ウチのチームの平均速度だ。あいつら何で素人でも投げられる ズバン ﹁それに全力だしても、これくらいだし⋮⋮⋮ね ﹂ そりゃ、そう言ったのは君自身だからね⋮⋮⋮。と、誰かと自分の記憶の齟齬を感じ ? ﹁そうでもないよ。グッと握ってほいって投げるとか、よくわかんないこと言ってたし﹂ ﹁へえ、その友達ってのは教えるのがうまいんだな﹂ 体育館で桑田とキャッチボールをしていた。 ﹁休み時間友達につき合わされたから⋮⋮ね⋮とと⋮﹂ ﹁⋮っと、苗木なかなか上手いじゃん﹂ 137 大丈夫か ﹂ キャッチボールをした苗木には当然取りきれるハズもない。 ﹁わりい苗木 ? うん⋮⋮⋮まあ⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮え ﹂ ? 苗木はグローブをつけ直しキャッチボールを再開する。 ﹁⋮⋮⋮⋮うん。わかった﹂ ん怒ってると思うんだ。だから、謝りたいから話の場を作ってくれないか ﹂ ぶち切れる。だから超高校級なんかになれたのかもな⋮⋮それでよ、舞園ちゃんもたぶ ﹁俺さ、なんか野球好きみたいだわ⋮⋮軽い気持ちでやってる奴いたらたぶんぜってえ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ミュージシャンになりたいとか言ったせいなんだろうけど﹂ ﹁いやなんか舞園ちゃんに避けられてるみたいでさ⋮⋮⋮って、多分俺が軽い気持ちで ? ﹂ 仲を取り持ってくれとでも言うのだろうか⋮⋮⋮。 突然何だ ﹁え ﹁⋮⋮⋮苗木、お前さ⋮⋮舞園ちゃんと仲良いよな﹂ ﹁⋮⋮な、何とか⋮⋮手は痺れるけど﹂ ! ? ? ﹁わりんだけどさ、今度話させてくんね 週刊少年ゼツボウマガジン(非)日常⑤ 138 ? その頃⋮⋮⋮。 ﹁そういえば霧切さん。何であなたから苗木君の匂いがするんですか ﹁あなたに教える必要はないわ﹂ ﹂ ? 139 週刊少年ゼツボウマガジン︵非︶日常⑥ ﹁⋮⋮お腹減ったな﹂ 苗木は空腹を感じ立ち上がる。 昼に桑田とキャッチボールしたから、カロリーを消費したのだろう。 ﹁⋮⋮何かないかな﹂ ﹂ 苗木は外に出て軽く摘まめるものを探しに行く。 ﹁⋮⋮セレスさん、何してるの だろうか ﹂ ? ﹁いや、ボクは夜食を取りに来ただけだから⋮﹂ うです ﹁何という訳では⋮⋮少々、夜の散歩をしていただけですわ。苗木君も、お暇でしたらど ? 夜時間の外出禁止は彼女も提案しようとしたことだ、夜時間になるまでの時間つぶし ちょうど同じく外を出歩いていたらしいセレスと出会った。 ? ﹁あら、こんばんは﹂ 週刊少年ゼツボウマガジン(非)日常⑥ 140 ﹁そうですか ﹁苗木⋮ では、ごきげんよう﹂ ﹂ いいところに来たな ﹂ オメェによぉ、頼みがあんだけどよぉ⋮⋮ !! ﹂ にも前回でも全く知らないのだ。サウナで仲良く⋮⋮汗塗れの男が⋮⋮⋮いや、これ以 これは良い機会かもしれない。苗木は、この二人が仲良くなった経緯を二年間の記憶 をする立会人にされるようだ。 どうやら、前回と同じようにどちらが根性のある男か決めるため、サウナで我慢大会 ﹁おうっ、苗木よぉ⋮ちっと立会人になれや⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮頼み ! 見つかってしまった。 ﹁おおっ、苗木くん 苗木は無言で引き返そうとするが⋮⋮⋮。 そこには睨み合う石丸と大和田の姿が。 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ 苗木はセレスと別れ、食堂に来る⋮⋮⋮。 セレスはそう言って笑顔で去っていった。 ? ? ! ! 141 上考えるのはやめよう。 まず大丈夫だろうけど妨害行為は禁止。公平にする ﹂ サウナの前で腰にタオルを巻いた苗木の言葉に石丸と大和田は頷く。 するよ﹂ ため、どちらかが服を着るというのも無しね⋮⋮危ないし。温度の調整はボクの判断で ﹁じゃ、ルールはボクが決めるね ? 待ちたまえ、苗木くんもサウナに入るのかね ﹁⋮⋮⋮ん ? ? ﹁感覚が鈍感に 何かの病気か ﹂ ? 苗木は自分の身体の調子を確認する。汗は出ている。だが、苦しいとは感じない。 そして一時間。 んなものだろう。 苗木はそう言ってサウナの中に入る。暑いとは感じるが⋮⋮まあ入ったばかりはこ ﹁⋮⋮⋮精神的なものだと思うけど⋮⋮⋮﹂ ? ナにとどまるぐらいなら出来るよ﹂ したですんでるんだ。火傷の時も本当にはそこまで痛みを感じてなかったんだ。サウ ああ、心配しなくても大丈夫。最近感覚が鈍くてね、掌貫かれてもチクッと ﹁そうだよ ? 週刊少年ゼツボウマガジン(非)日常⑥ 142 苗木の方がまだ涼しそうにし ある意味では限界を判断できず危険かもしれない⋮⋮⋮。 俺も同意見だごら﹂ ! ? ﹂ !? たまえ ﹂ ﹁⋮⋮聞き捨てならねーなぁ⋮⋮﹂ 何か始まった。 と、苗木は石丸と大和田を見る。この二人はあれだろうか ? ! るのだろうか ? 言い合いをして仲を深め ﹁いい加減妙な格好で暴力に身を任せたり珍走したりするのは根性がない証拠だと認め ﹁あ ﹁負け犬ほど⋮⋮よく吠える⋮﹂ ﹁ふん⋮⋮まだまだ涼しいぜ﹂ る。 苗木はそう言ってつまれた石に水をかける。すぐに蒸気があがり湿気と温度も上が ﹁じゃ、温度上げるね⋮⋮﹂ ﹁お⋮おー⋮⋮ ﹁ふん、僕だって、寒いくらいだ⋮⋮﹂ てるぜ﹂ ﹁オイオイ、優等生さんには限界なんじゃねーかぁ⋮⋮ 143 ﹁自分の物差しで語ってんじゃねーぞゴルァ⋮俺にはチームを引っ張ってく責任があん ﹂ だ⋮⋮死んだ兄貴から引き継いだ大事なチームをよぉ⋮⋮⋮正直、俺んちは自慢できる ような家庭環境じゃねぇ。そんな中、兄貴は頼れる、憧れの存在だった⋮﹂ ﹁そうか⋮キミは兄を⋮⋮﹂ 生半可な根性でできるかよ ! ﹂ ﹁俺だって苦労して、考えて、今を選んでる⋮⋮ま、天才さまにゃわからねー悩みかもな﹂ 石丸は大和田の主張を聞き、感心したように目を見開く。 ﹁俺の肩にはチームの存続っつー責任があるんだ ! ﹁意味が分かんねーな⋮⋮﹂ ﹂ 総理大臣の⋮⋮﹂ ? ! ﹁⋮⋮その通りだ﹂ ﹁スゲーじゃねーか ﹂ を見て、大和田は石丸を見る。 苗木は今気づいたように、石丸からかつて聞いた事を言うと石丸は驚いたように苗木 ﹁⋮⋮石丸君の祖父ってさ、もうしかして石丸寅之助 ! た。 大和田の言葉に石丸は立ち上がり反論する。急に立ったからか、鼻血を垂らしてい ﹁そんなモノと一緒にするのはやめてくれ ! ﹁僕は天才なんかじゃない⋮⋮天才なんてこっちから御免被る 週刊少年ゼツボウマガジン(非)日常⑥ 144 ﹁彼は天才だった⋮⋮それ故挫折を知らず、世の中をなめていたのだろう⋮⋮汚職事件 ﹂ 暑苦しいが⋮⋮二人の強い絆を見た気がする。 ﹂ 僕が未熟なばかりに⋮⋮﹂ それを感じないという事は、こういうことが起こ ! るかもしれないという事⋮⋮すまない ! ﹁痛みや苦しさは身体の危険信号だ ﹁⋮⋮⋮苦しくはないよ⋮⋮だけど、なんか身体が動かなくてさ⋮⋮⋮﹂ ると苗木が床に伏していた。 何時の間に過去の暴露会になったのか、大和田が苗木から過去の話を聞こうと振り返 ﹁⋮⋮苗木、オメーも過去を聞かせ⋮⋮おい、どうした !? 僕は必ず、 を起こし、それを口火に一気に転落していったよ⋮⋮彼の残した借金は今でも僕ら家族 を苦しめる ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹂ だから天才など努力知らずの怠け者と一緒にしないでくれ 努力した者が報われる国を作ってみせる ﹁わかったか ﹂ ﹂ その言葉を聞き大和田が涙を流しながら石丸の肩を力強くたたく。 ! キミは僕のために泣いてくれているのか ﹁テメーも大変だったんだな ﹁ ! ! なるほど、二人はこのような経緯で仲良くなったのか。 ! ! ! ! 145 ﹁オメェは悪くねえ 無理言って手伝わせた俺の責任だ⋮⋮⋮﹂ ﹂ ﹂ ﹁⋮⋮二人の⋮せいじゃない⋮⋮よ⋮⋮﹂ ! ﹁苗木くん⋮⋮⋮苗木くん !? シャワー室はともかくここなら流れるはずだ ﹂ ! ! まずは水だ ! ﹁苗木ぃぃぃぃぃ ﹂ ﹁落ち着け ﹁おう ! まだアンテナがしなびているぞ ! る。 ﹂ ﹁待ちたまえ苗木くん ! ﹁⋮⋮⋮⋮水に濡れてるんだから当然だよ﹂ ! もう少し休憩していきたまえ 石丸の言葉に大和田は苗木を抱え、シャワーを水にして苗木の火照った身体にかけ ! ﹁⋮⋮⋮だいぶ、楽になった⋮⋮部屋に戻るよ﹂ 週刊少年ゼツボウマガジン(非)日常⑥ 146 週刊少年ゼツボウマガジン︵非︶日常⑦ ﹁色っぽい ﹂ ﹁はい。頬を上気させて、息も荒くて⋮⋮﹂ はぁはぁと興奮したように言う舞園。 と、苗木はふと桑田の事を思い出した。 ﹁舞園さん。今日、桑田君と話してあげられるかな 何言ってんだ、兄弟 ﹂ ! ﹁ギャッハッハ ! そして何時ものように江ノ島と合流し食堂に向かう。 苗木の言葉に舞園は一瞬だけ嫌そうな顔をしたがすぐに笑顔になった。 ? ? ﹁⋮⋮⋮⋮苗木君の頼みなら﹂ ﹂ 苗木が目を覚ますとうっとりした表情の舞園が居た。 ﹁おはようございます。昨日の夜の苗木君は色っぽかったですね⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮おはよう舞園さん﹂ 147 ﹁ハッハッハ 君こそ冗談はよしたまえ、兄弟よ ﹂ ! ﹂ ? ! ﹂ ﹁君には感謝しているぞ。昨日はありがとう。よし、君のことも兄弟と言わせてくれ ﹁おお、そりゃいい ﹁遠慮しとくよ﹂ ﹁⋮⋮む、そうか﹂ だろうか だとしたら嬉しい誤算だ。 ﹂ と、気軽に接してくる二人。同じくサウナで根比べをして、こちらに友情を感じたの ﹁気が変わったら何時でも言えよ﹂ ! ! 顔で手を振ってきた。 桑田の声に反応して振り向いた大和田が苗木を見て笑顔で片手をあげる。石丸も笑 ! ﹂ ﹂ ﹁⋮⋮⋮桑田君、後で少しだけお話ししましょう﹂ を見ている。昨日の話を聞きにきたのだろう。 苗木が既視感を抱いていると桑田が恐る恐る話しかけてきた。その際チラリと舞園 ﹁な、なあ苗木⋮⋮あの二人何があったんだ と、食堂に入るなり二人の男が仲良く肩を組む姿が目にはいる。 ! お⋮⋮あ、ああ ﹁え ? おぅ、苗木じゃねえか ﹁ん ? 週刊少年ゼツボウマガジン(非)日常⑦ 148 ? ﹁苗木おはよー。あの二人が仲良くなった理由しってるの ﹂ ? ﹁男って単純﹂ ! ﹁⋮⋮⋮苗木君⋮⋮﹂ ﹁新しい動機かな⋮⋮とりあえず行こっか﹂ ! 江ノ島さん !? 苗木が言うと江ノ島も立ち上がり苗木の後に付いて来る。 おかげで舞園ちゃんと仲直り⋮⋮⋮ふぁ ナンデ ﹂ !? ﹁うん⋮﹂ ﹁おう苗木 ! 君は、至急、体育館までお集まりくださーい。えまーじぇんしー、えまーじぇんしー ﹄ ﹃えー、校内放送。校内放送⋮まもなく夜時間となりますが、その前に⋮オマエラ生徒諸 やってくる江ノ島の頭を撫でていると放送が鳴った。 その日の夜、苗木が夜時間も近づいてきたので朝来る舞園と違い最近、夜になると 固まり二人に気づけ⋮⋮⋮。 秘密を吐露して桑田も苗木と絆を感じたのだろう。良い傾向だが桑田、後ろの殺気の 朝日奈の呆れた言葉に桑田は苗木の肩をつかみ頭をぐしぐし撫でてくる。 ﹁男ってのはそれぐらい単純な方が良いんだよ。な、苗木 ﹂ ﹁昨日、二人で根比べしながら自分の過去を語り合って仲良くなったんだ﹂ 149 ! ﹁ああ⋮⋮⋮﹂ い。 ﹂ これも違う気がする⋮⋮⋮。 ﹂ ﹂ 恋人ではな 苗木、どういう事だよ まさか、お前⋮⋮超高校級のプレイボーイなのか 私は⋮⋮⋮﹂ では妹を一緒に絶望させてあげるための仲間 ﹂ よく頭を撫でてもらっている。これだ ﹁これだじゃないよ⋮⋮﹂ ﹂ 苗木の言葉に首を傾げる江ノ島。 ﹁⋮⋮ ? 俺だってモテてんだからなぁぁぁ 桑田はプルプル震え、やがて⋮⋮⋮ ﹁ちくしょおぉぉぉ ! ! ? !? 外に出たタイミングで桑田が話しかけてきて、江ノ島を見て固まる。 ﹁お、おい ﹁え、違うよ ﹁江ノ島さん、まさか苗木の彼女なのか ﹁いや、別にそういうわけじゃ⋮⋮﹂ ! と、そこで江ノ島は固まる。自分は果たして苗木のなんなのだろうか !? ! と、涙目で走り去った。 ! ? ? ? ﹁⋮⋮⋮ペット 週刊少年ゼツボウマガジン(非)日常⑦ 150 ﹂ ﹁桑田君、何に泣いてたの ﹁⋮⋮素が出てるよ﹂ ﹁あいつ何泣いてんの ﹂ ? ? ﹁うーむ、いきなり全員集めるとは、いったいどういう要件か﹂ ﹂ ﹁前回の動機で殺人が起きなかったから、新しい動機じゃないかな 怖いこと言わないでよ ! だった││ ﹁でも苗木クンが正解なんだよね∼ ﹂ とモノクマが壇上の上に姿を表す。苗木の言葉を肯定して⋮⋮⋮。 ﹁今日は苗木クンの言う通り、クロが現れないので⋮⋮⋮新しい動機を用意したよ ﹁出たわね⋮﹂ ビヨーン ! ﹂ ! ! ﹁な、苗木があんなこと言うから ! ﹂ 石丸の言葉に苗木が答えの知る答えを言うと朝日奈が責めるように叫ぶ。と、その時 ﹁ちょっと ! ﹂ 体育館に移動する途中舞園とも合流し、どうやら苗木達が一番最後だったようだ。 本当に残念だなコイツ⋮⋮⋮。 ﹁⋮⋮さあ⋮⋮⋮ね⋮⋮﹂ ? 151 回、ボクは独自の調査により、オマエラのそんな思い出を集めてみましたー という訳 ﹂ ﹁人間生きていれば誰しも、恥ずかしい思い出や知られたくない過去ってあるよね どこかの青い狸を連想させる間延びした声でモノクマは封筒を数枚取り出す。 ! モノクマはそう言っている間に苗木は自分の分の封筒を取る。 今 恥ずかしい思い出や知られたくない過去がかかれた封筒∼ ﹁確かに苗木クンのせいだね。苗木クンがボクの邪魔ばっかりするんだもん で今回のテーマはこちら ﹂ ! ﹂ 恐る封筒を開き、硬直した⋮⋮。 ﹁ど、どうして⋮ ﹁どうして⋮知っているんだ⋮ッ みんな思わず声を上げていた。 ﹂ !? がら、怪文書をまいちゃおうかな∼ キャー、ハズカシイー ﹁⋮⋮⋮ねえモノクマ、ボクの白紙なんだけど﹂ ! ﹂ い思い出を、世間にバラしちゃいまーす人がたくさんいる所で、街宣カーでも転がしな ! ? ﹁タイムリミットは24時間でーす それまでに、クロが出ない場合は⋮この恥ずかし そんな苗木にモノクマは呆れながら全員分の封筒を配り終える。そして、全員が恐る ! ? ! ﹁もう苗木クンたらせっかちなんだから⋮⋮はいはい、並んで並んで﹂ 週刊少年ゼツボウマガジン(非)日常⑦ 152 !! ﹂ ﹁ああ、苗木クンはさっき言ったようにボクの邪魔ばっかりする悪い子ですから、何を公 開されるかはその時まで教えてあげません ﹂ ! ! ﹂ ? ﹂ ! ﹂ ? モノクマが苗木の記憶の秘密を知っているとは思えない ? と、不意に視線を感じ振り向くと十神が疑わしげな目で苗木を見ていた。 ﹁⋮⋮ん が⋮⋮⋮。 現状知られたら困ること モノクマはそういい残して姿を消した。 ﹁うぷぷ。この秘密が知られた時、苗木クンが絶望するのかしないのか、楽しみだよ﹂ ﹁⋮⋮ 現状知られたら困ることだよ ﹁そこまで言うなら大ヒント。苗木クンのは知られたくない過去でも思い出でもない、 苗木の言葉にモノクマは頭から湯気を出し両手をバタバタ振り上げる。 ﹁ムキー ﹁⋮⋮⋮器ちっちゃ﹂ 153 週刊少年ゼツボウマガジン︵非︶日常⑧ ﹂ 夜時間をとうに過ぎた時間、苗木はベットから起きあがると護身用の模擬刀を腰に差 し立ち上がる。 ﹁苗木君⋮⋮どこか行くんですか 居るとは。 ﹁なら私も﹂ ﹁舞園さん、ハウス﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮はい﹂ 残念アイドル、これは売れる ! ずいぶんと不満そうな声だったが大人しく自分の部屋に戻った。 ﹁どっかの軍人を彷彿させる残念ぷりですな ﹂ ﹂ 部屋の外にでると舞園がいた。今日はこないように言ったのだが、まさか部屋の外に ? 失礼な、ボクは森生まれの森のくまさんだよ ! ﹁モノクマ、ゴーバックヘル﹂ ! ああ、女の子追いかけ回す﹂ ﹁地獄に帰れって ﹁森のくまさん ? ! ﹁⋮⋮うん、ちょっとね﹂ 週刊少年ゼツボウマガジン(非)日常⑧ 154 ﹁苗木クンは本当に失礼な性格だよね ﹁うわーん 絶対友達少ないね ! ﹂ ﹂ ! ︶を流しながら走り去った。無駄に多機能なロボットを ぼっちじゃないもーん モノクマは目からオイル︵ ! だろうか ﹁んな ﹂ そして数分後、男子更衣室の扉が開き不二咲が入ってくる。 ︵⋮⋮あ、来た︶ あるいは、この時点で知っていたのか⋮⋮。 ? 子だと思っていた不二咲に男子更衣室で待つように言われ事に疑問を持たなかったの 暫くしてやってきたのはジャージ姿の大和田だった。しかし今更ながら、この男は女 ﹁⋮⋮まだいねえか﹂ 板を何度か叩き、外してから中に隠れる。 まだ誰も来ていないことを確認して苗木はロッカーの中の二段目と一段目を分ける そう、男子更衣室だ。 言い負かした苗木は去っていく姿を見送り自分も目的の場所に向かう。 ? ! ﹁現状ボッチの君に心配される必要はないよ﹂ 155 !? ぼ⋮僕⋮本当は男なんだ ﹂ ! あの様子から察するに知らなかったようだ。 ﹁お、驚かせてごめんなさいっ ﹁マ⋮マジかよ⋮﹂ ﹁う⋮うん⋮﹂ ! は⋮﹂ ﹂ ? そいつを知られちまったら⋮オメェ どうして急に、秘密を打ち明ける気になった 二人の会話を見守りながら、苗木は静かに息を整え模擬刀の柄を握る。 ﹂ ﹁で、でもよ⋮どうしてだ ﹁え ? ﹁だってよ⋮ずっと守り通してきた秘密なんだろ ? ? ﹂ ! ﹂ ! 本当に強ぇーなら、秘密を言ってみろっつーのか モノクマにどんな秘密をバラされてもさ﹂ ? ﹁⋮⋮⋮⋮だから⋮言えっつーのか ? ら、きっと、へっちゃらだよね ﹁変わらなきゃいけないと思うんだ。ボクは弱いから。でもさぁ、大和田クンは強いか 過去を隠している大和田には、その言葉が刺さったのだろう。 その言葉に大和田の肩がふるえる。 ﹁⋮⋮ 壊してさ ﹁そ、そうだけど⋮⋮でも⋮⋮変わりたいんだ。何時までも嘘に逃げている弱い自分を 週刊少年ゼツボウマガジン(非)日常⑧ 156 ﹂ ﹁え⋮ ﹂ ﹁皮肉か⋮ オレが強いって⋮ そいつは⋮皮肉かよ⋮﹂ ? ? ? ﹂ ﹂ ﹂ じゃあ⋮オレはどうすりゃよかったんだ オレへの当て付けか して、全部を台無しにすりゃ⋮⋮よかったってのか ﹁オレに⋮どうしろっつーんだ ﹁どう⋮したのぉ ﹁なんで⋮オレに言った ? その目に宿るのは、嫉妬と殺意。 !! ﹁強い⋮強いんだ⋮﹂ 兄貴よりもだぁぁぁぁッ ! 秘密をバラ ? 走馬燈、死の直前に見る過去の記憶⋮⋮⋮死が近づいている証拠。だが⋮⋮ 能力が優れているからではなく走馬燈だ。 大和田が振り下ろしたダンベルは、千尋には止まって見えたろう。それは千尋の潜在 ﹁オメェよりも⋮ ﹂ 大和田は持ち上げていたダンベルを握る手に力を込める。 ﹁そうだよ⋮オレは強ぇーんだ⋮﹂ ﹁ぼ、僕はただ⋮大和田クンに憧れてて⋮強い、大和田クンに憧れてて﹂ ? ? ? ? ﹁ひ、皮肉なんかじゃないよ⋮だって大和田クンは⋮本当に強い人だし⋮⋮﹂ ? 157 ﹁ッ ﹂ ギャリン と金属音を響かせ死がそれる。 ﹂ ? ﹂ ? ﹂ ﹁⋮⋮え ﹁早く ﹂ ﹁不二咲クン、石丸クンを呼んできて⋮⋮﹂ ﹁な、苗木クン⋮⋮ 意識を現実に戻すと、模擬刀を斜めに構える苗木の姿があった。 ! !! 苗木は模擬刀を構えたまま大和田と睨み合う。 苗木の言葉に不二咲は立ち上がり更衣室から出て行く。 ﹁あ、う⋮⋮うん ! ! ﹂ ? む。 ドン ﹂ !! と大和田が消え、次の瞬間には目の前に現れ苗木の腹に大和田の拳がめり込 ﹁があぁぁぁぁぁっ ﹁殺して隠せるなんて、ずいぶんやっすい秘密だね﹂ ﹁オレは⋮⋮知られるわけにはいかねぇんだ⋮⋮あの秘密を⋮⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮邪魔 ﹁⋮⋮邪魔、すんじゃねえよ⋮⋮﹂ 週刊少年ゼツボウマガジン(非)日常⑧ 158 ! ﹁⋮⋮ッハ⋮⋮カ⋮⋮ ﹂ 何がわかる オレは兄貴の作ったチームを守らなきゃならねーんだ ﹂ 悲鳴すら上げられない。一瞬の浮遊感の後背中に激痛を感じ、壁に激突したことに気 ! ! づく。手の力は消え模擬刀が床に落ちた。 ﹁テメェに ! ﹂ ﹁⋮こ⋮の⋮⋮げんに⋮⋮⋮しろ ﹁ぐ ﹂ ﹁なあ教えてくれよ⋮⋮オレはどうすりゃよかった⋮⋮ ﹂ 一瞬の力の緩みを利用して拘束から逃げると直ぐに模擬刀を拾い構える。 苗木は首を絞めることに集中しすぎて無防備になっている脇腹に膝を打ち込む。 !? ! だが大和田の力は緩まない。 ギリギリと閉まる大和田の掌に苗木の爪痕が刻まれていく。 ﹁⋮⋮が⋮⋮ぐ⋮⋮﹂ ではなく、苗木を黙らせるための首絞め。 グチャグチャになった大和田が取った行動はこれまで己の武器として使ってきた拳 い。 それは今まで兄の死の真相を偽っていた大和田に取って、生き方の否定に他ならな 嘘の否定。 ! ? 159 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮さあ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹂ ﹁その相談する相手を間違えたって顔やめてくんない ﹁⋮⋮⋮やめだ、馬鹿らしい﹂ 大和田はそう言ってその場に座る。 どちらも無事か ﹂ 地味に傷つくんたけど⋮⋮﹂ それもそうか、これは衝動殺人。一度放った殺意が無効化された以上、大和田はこれ ? ? ! !? 以上何も出来ない。 苗木くん ! ﹁話は不二咲くんから聞いた。何故だ、何故だ兄弟 ﹁お兄さんの⋮⋮ ﹂ ﹂ そんなことして、お兄さんが喜ぶと思っているのか ﹂ ﹁テメェに兄貴の何がわかる わからん 石丸の言葉に三人はガクリとずっこける。 ﹁うむ ! コイツは自信満々に何を言っているんだろうか ? ! !? ? ﹂ ﹁⋮⋮知られたく、無かったんだよ。兄貴の死の真相を⋮⋮知られるわけには﹂ !? ﹁⋮⋮⋮よお、兄弟﹂ と、そこへ石丸と、石丸の後ろに隠れた不二咲がやってきた。 ﹁兄弟 週刊少年ゼツボウマガジン(非)日常⑧ 160 ! ﹂ ﹁⋮⋮そうだろう﹂ ﹁すまねえ、兄弟 ﹁謝るのは僕ではなく苗木くんだ ﹁すまねぇな、苗木﹂ 一件落着だな兄弟 ﹂ ﹁いいよ、結局死んでないから﹂ ﹁うむ ﹂ ﹂ ﹂ そんな君を育てたお兄さんの人物像も、自ず 今の君を見て、お兄さんは喜ぶのか ! じゃないんじゃないかな﹂ ﹁まあ、確かに⋮⋮すごく仲がいいよね。でも、同性愛の割合って結構高いって聞くし変 話す話題が見つからなかったからか、不二咲は大和田と石丸を眺めて呟く。 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮あの二人、すごく仲良いね﹂ ﹁気にしないで。ボクが好きでやっただけだから﹂ ﹁あの、苗木クン⋮⋮さっきはありがとぉ﹂ そのまま大和田と石丸は涙を流しながら互いを抱き合う。なんとも暑苦しい光景だ。 ! ! ! ﹁迷惑かけたな、兄弟 ! ! ! ﹁だが君のことなら多少わかるつもりだ と見えてくる。もう一度聞くぞ兄弟 ! ﹁⋮⋮⋮⋮⋮喜ばねえよ、むしろ⋮キレてぶん殴ってくるに決まってらぁ﹂ 161 ﹂ ﹁⋮⋮⋮そっかぁ⋮⋮変じゃ、ないんだ⋮⋮﹂ ﹁ん 週刊少年ゼツボウマガジン(非)日常⑧ 162 ? だ、誰にやられたんですか ﹂ 週刊少年ゼツボウマガジン︵非︶日常⑨ その包帯は !? ﹁苗木君 !? ﹂ !? 石丸も過去の失敗を話した。 大和田も憑き物が落ちたような顔で自身の過去と後悔を話し、不二咲も秘密を話し、 昨晩、苗木達は男子更衣室でお互いの秘密を話し合った。 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁おーす、苗木。って、何その包帯 苗木の言葉に大人しく従う舞園。そして、次にやってきたのは江ノ島。 ﹁⋮⋮⋮はい﹂ ﹁これは命令﹂ ﹁で、でも⋮⋮﹂ ﹁何でもないよ、気にしないで﹂ を見て絶叫する。 朝になり、苗木にハウスを命じられていた舞園がやってきて苗木の首に巻かれた包帯 ! 163 苗木だけは、何が晒されるのかわからないため話せなかったが。 ﹂ ﹁しかし不二咲、オレの事を強ぇとか言ってたが、オメェも十分強いと思うぜ﹂ ﹁そ、そうかなぁ⋮⋮﹂ ﹂ ﹁うむ。不二咲くんは強い心の持ち主だ ﹁違いねえ ! ﹂ ! ﹂ ? ﹂ ? だ﹂ ﹁確かにあの三人は秘密の公開に否定的だったな。それで、どうする ﹂ ﹁現状、秘密をバラされて困りそうなのは十神君とセレスさん、後は腐川さんだと思うん ﹁ふむ ﹁とりあえず、ボクから提案があるんだ﹂ 照れ臭そうにというか照れ臭いのだが。 大和田の言葉に照れ臭そうに笑う苗木。 ﹁⋮⋮⋮照れ臭いよ﹂ ! 勇気を持った男だ ﹁確かにな、苗木くんは正直言ってしまえば兄弟より遥かに弱い。しかし立ち向かえる ﹁な、苗木クンもかっこよかったよぉ⋮⋮﹂ ! ﹁おう、男の中の男だな兄弟 週刊少年ゼツボウマガジン(非)日常⑨ 164 ﹁ボクらで明日の夜、モノクマによる公開まで動向を見はるって言うのはどう ﹁そうだね⋮⋮﹂ と、言うわけで朝食を終えた苗木は図書室に来ていた。 ルアック・コーヒーを入れたら滞在の許可があっさり下りた。 ﹂ ﹁⋮⋮⋮苗木﹂ ﹁はい ﹂ 側を記した書物を読んでいた苗木を呼び掛ける。 ﹁苗木、お前は何者だ 係だ ﹂ ﹂ ﹂ お前は黒幕の内通 あいにく仲間でもなんでもない。黒 これは、お前と黒幕が手を組み作ったゲームなんじゃないか 者じゃないのか ﹁質問は一つにしてほしいな。ボクと黒幕の関係 ? 幕がボクを特別視しているのはボクが江ノ島さんの公開処刑を邪魔したからじゃない ? ? ? ﹁⋮⋮⋮モノクマは、黒幕は確実にお前を特別視している。お前と黒幕はどういった関 ? ? ﹁その質問は二人目だね。ボクのプロフィールでも話せばいい ﹂ 十神はパタンと読んでいた本を閉じ、知っただけで命を狙われる第二次世界大戦の裏 ? ? ? ﹁⋮⋮⋮ふむ。では僕は大神くんにも声をかけておこう。数は多い方がいいだろう 165 かな ﹂ ﹂ ﹁奴は邪魔ばかり、と言っていた。あれ以外にもあるんじゃないのか ﹁ ﹂ ﹁当然だ。今回の動機、お前にはデメリットが少なすぎる﹂ 苗木がケラケラ笑うと十神は忌々しげに顔をしかめる。 ﹁十神君はボクを随分と疑ってるんだね ? ﹂ ? ? ? ﹂ ? ﹁黒幕の人間性を殺すんじゃなく、文字通り息の根を止めるって意味﹂ ﹁⋮⋮⋮殺意、だと 殺意を持ってることかな﹂ ﹁でもボクと黒幕は繋がってないんだよね。敢えて言うなら、ボクだけが黒幕に明確な 性が少ない。 大和田も不二咲も、死後や学級裁判の後秘密をバラされていた。だが苗木はその可能 まあ言われてみれば確かにそうだ。 ﹁そうだ﹂ ﹂ がお前を殺したとしても、お前は封筒を奪われても秘密を知られることがない﹂ ﹁俺を含め、お前以外全員が封筒で弱味を渡されている。だが、お前は白紙。例えば誰か ? ﹁逆に他の皆は死んだ後もバラされる可能性があるって 週刊少年ゼツボウマガジン(非)日常⑨ 166 ﹁お前は黒幕が何者か知っているのか ﹂ ? ﹂ ? ﹁⋮⋮⋮了解﹂ ﹃えー、オマエラ。体育館に集まってください ! 終えた十神が立ち上がっていた。 言っちゃうよ 今ならまだ間に合うよ ? ﹂ ﹁うぷぷぷ。よく集まったねそれじゃあ言うよ ﹁さっさと始めろ﹂ ? ? プロジェクト﹄というタイトルの資料を閉じ立ち上がる。視界の端ではコーヒーを飲み 夜時間も近くなり、流れた放送を聞き苗木は書庫の奥に眠っていた﹃カムクライズル 去の暴露会だよ∼。うぷぷぷ﹄ 恥ずかしい思い出と知られたくない過 ﹁⋮⋮⋮⋮苗木、コーヒーがなくなった、新しいのを入れてこい﹂ うけど ﹁何者か知らなくても殺し合いをさせようとしている相手に殺意を抱くのは普通だと思 167 体育館に集まった生徒達を見てモノクマが念を押すが十神が催促するので落ち込み ながら始めることにした。 ロも増えたんだ ﹂ ﹁それじゃ最初は朝日奈さん。なんと、朝日奈さんは中学一年の頃体重が1ヶ月で1キ ﹂ ! ﹂ ラブレターが来て断ったが実は間違いで入ってただけだった ﹂ ジャムを12歳まで薬莢づまりだと思ってた﹂ その昔、虎の赤ちゃんを猫だと思って育ててた ﹂ ! らんだだけの気がする。 ﹁く ﹂ ﹁大和田くん⋮⋮うぷぷ。自分のお兄さんを殺した ﹁え ﹁むぅ⋮⋮﹂ ﹁大神さん ﹁どういう女子だべ﹂ ﹁⋮恥ずかしい﹂ ﹁江ノ島さん ! ! ﹁⋮⋮ッチ﹂ ! ! ! ! ? ﹂ 朝日奈はモノクマの声に顔を赤くして唸るが、多分それは太ったと言うより一部が膨 ﹁うう∼ ! ﹁石丸くん 週刊少年ゼツボウマガジン(非)日常⑨ 168 ﹁あれは事故だ ﹂ 手にグロい火傷の跡がある﹂ ﹁よせ兄弟、オレが殺したようなもんだ⋮⋮﹂ ﹁霧切さん 小学四年生まで夜トイレにいけなかった ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁桑田くん ﹂ ﹂ ﹂ 好きだねえ﹂ ! ﹂ ぷぷ 五人前の巨大餃子を30分で完食した ﹁うぐぐ⋮⋮﹂ ﹁セレスさん ﹂ 人魂騒ぎを起こして正体が蛍だった ﹁うるせえビチクソがぁぁぁ ﹁十神くん 存在自体が恥 ﹁⋮⋮⋮ふん﹂ 二重人格のもう一つはジェノサイダー翔 ﹂ ﹁葉隠くん ﹁あれま ﹂ ﹁腐川さん ﹁ひぎぃ ﹂﹂﹂ 男のクセに女の格好をしている﹂ ﹂﹂﹂ ﹁不二咲くん ﹁﹁﹁なっ ! ! ! ﹁﹁﹁ええええええ !? ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !? ! ! 169 ﹂ ? ﹂ ﹂ 三次元に恋したと思ったらニューハーフだった﹂ ﹁別に恥ずかしくありませんけど 皆いろんな過去があるらしい。 ﹁もう三次元など信じるものかぁぁぁ ﹁あ、そう⋮⋮⋮山田くん ? 苗木くんは今 ﹂ 部屋に脱出スイッチ ! るって⋮⋮。 ﹂ ﹁それじゃあ最後に苗木くん。うぷぷ⋮⋮なんと を置いているのです ! ! というか仮にも連続殺人鬼の正体がわかったのに不二咲の性別の方が重要視されて ! ! ! 私のこともう良いの ﹁あ、あれ ? 中学時代ぬいぐるみにマコト君という名前を付けてかわいがってた ﹁舞園さん ! 週刊少年ゼツボウマガジン(非)日常⑨ 170 部屋に脱出スイッチを置いているのです 週刊少年ゼツボウマガジン︵非︶日常⑩ ││苗木くんは今 ││ ! 疑、不安、不満、様々な視線にさらされ苗木は頭をかきながらため息を吐く。 モノクマのその言葉にざわついていた体育館が静まり返り、苗木に視線が集まる。懐 ! 苗木くんはきっと捜査中に見つけ、言い出すタイミングを見計らって ﹁苗木、説明してもらおうか﹂ ﹂ ﹁ま、待ちたまえ いただけだ ! ﹂ モノクマさんが動機として苗木くんの持つ脱出スイッチとやらを選んだなら、 ! 最低でも1日以上前に手に入れたのに話さなかったことになりますが ﹁あら ? 苗木は引き出しから取り出した脱出スイッチを十神に投げ渡す。 ﹁えっと⋮⋮あったあった。はい⋮⋮﹂ 十神達も顔を見合わせた後苗木の部屋に向かう。 苗木ははぁ、とため息を吐いて歩き出す。舞園と江ノ島、大和田達が慌てて後を追い、 ﹁⋮⋮⋮脱出スイッチなら確かに持ってるよ。ほしいなら上げる﹂ ? 171 ﹁⋮⋮わかりやすい脱出スイッチですわね﹂ ﹂ ﹁ガチャガチャの景品だしね﹂ ﹁苗木くん、ふざけてますの ﹁⋮⋮⋮お∼い、モノクマ﹂ ああ、購買の⋮⋮では本当にガチャガチャの景品なのですね﹂ 苗木くんがモノモノマシーンで引き当てたくせに使ってくれないんだよ ? クマがヌッと姿を現す。 ﹁そ う だ よ ﹁モノモノマシーン ? ﹁⋮⋮⋮何 ﹂ ? ? ﹁ガチャガチャとは何だ ﹂ ﹁⋮⋮おい、苗木。お前に聞きたい事がある﹂ セールスマンのように絡んでくる。 モノクマの肯定にセレスが呆れたように呟く。モノクマはそんなセレスに押し売り ﹁でもそれは脱出スイッチですよ﹂ ? ね﹂ ﹂ セレスの言葉に苗木はそりゃ当然の反応だよな、と思いながらモノクマを呼ぶとモノ ﹁はいはい﹂ ? ﹁モノクマの言ってる脱出スイッチってこれだよね 週刊少年ゼツボウマガジン(非)日常⑩ 172 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ まあ、御曹司には馴染みのないものか。 ﹂ ﹂ ガチャガチャやってる御曹司なんて見たことない。むしろ中身すべてを買いそうだ。 ﹂ ﹁ところでモノクマ⋮⋮﹂ ﹁なぁに ﹁この脱出スイッチを使ったら外に出れるの ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮そんな訳ないじゃーん。ボクはそんなに甘くありません ? ﹁いいよ﹂ ﹁聞かれたことだけに答えてほしいんだけどさ﹂ ? ﹂ ? モノクマはトボトボと歩きながら消えた。 ﹁⋮⋮⋮ショボーン﹂ ﹁聞かれたことだけに答えてってば。君いつも余計なこと言うから﹂ ﹁ん ﹁モノクマ⋮﹂ ﹁でも付け足すなら⋮⋮﹂ 思った、と呟き十神もフンと鼻を鳴らす。 苗木の言葉にモノクマは苗木を数秒見つめた後何時もの調子で答える。苗木はだと ! 173 ﹂ ﹂ ﹁大丈夫です。私が苗木君に手出しをさせませんから ﹁⋮⋮ッチ、くだらん﹂ ﹁わ、私の秘密はどうでも良いの ﹂ ﹂ ﹂ ﹁そういえばモノクマ、気になること言ってなかったか どうでも良いのね ﹁えっと、やめた方がいいよぉ⋮⋮校則違反で殺されちゃう﹂ ﹁⋮⋮その時はモノクマを原形とどめないレベルで破壊する﹂ ! ! ﹂ ﹁はあ、成る程。確かにその玩具の名前に脱出スイッチとつければ、苗木君は脱出スイッ チを持っていることになるわね﹂ ﹁完全に遊ばれましたわ﹂ ﹂ ﹂ ﹁ここで苗木に注意を集めるメリットがわからんが、取り敢えず気に食わん奴だ﹂ ﹁僕は君を信じていたぞ、苗木くん ﹁おめー何言ってんだ ﹁むむ、見える。見えるべ、モノクマの群と戦う黒髪ショートが見えるべ ﹁えっと、疑っちゃってごめんね苗木 ! ﹁苗木誠殿はモノクマに嫌われておるようですな。夜は気をつけた方が良いですぞ ! ! と、不意に桑田が思い出したように言う。苗木は何で余計なこというかな、と腐川を ? ? ? ? ﹁たくモノクマのヤロー﹂ 週刊少年ゼツボウマガジン(非)日常⑩ 174 見ると、他の面々も腐川を見る。 ﹂ ? ﹂ ! わ、私 は ア イ ツ の 好 き に さ せ る 気 な ん か ! 証明の手間が省けたのは、苗木の幸運だろうか 皆揃ってお前なんか会ったことな それはそれで興奮⋮⋮できるわきゃねえだろいじめカッコ悪 ちょっちひどくなーい 根暗の裏には朗らかさ、何時も元気なジェノサイダーで∼す♪﹂ ﹂ ﹁パンパカパーン ﹂ ﹁ふ、腐川ちゃん ﹁ま、マジか 何この反応 !? ? いっていじめかしらん ﹁あ ら ら ん ﹂ ? ! いは ? ? ? ! ? 頭をぶんぶん降った腐川の三つ編みの先端が鼻先をかする。 ⋮⋮⋮へぶし ﹁な、な な、何 で そ ん な 目 で 見 る の よ ぉ ぉ と、桑田の言葉に全員の視線が腐川に向く。その殆どが恐怖を浮かべた視線で。 ﹁⋮⋮⋮な、なあそれってジェノサイダー翔の事だよな ﹁そんなこと言うはずないだろう。妄想も大概にしろ⋮⋮﹂ ⋮⋮﹂ ﹁で、で で で も 私 は あ い つ を キ チ ン と 抑 え て ⋮⋮ そ、そ し た ら つ き 合 っ て く れ る っ て ﹁そういえば言っていたな、お前、自分の中には殺人鬼がいると﹂ 175 ﹁だ、だめだ 何言ってるか全然わからないよ ﹂ ! 実績があるのだが皆はそれを知らない。 まーくんが私に話しかけてくるなんて明日はグングニルの槍でもふるの ﹂ ? ﹁ねえジェノサイダー⋮﹂ ﹁あらん ﹁君は人を殺したい ﹂ ジェノサイダーは密閉空間という学園に一年過ごしても殺人を行わなかったという ジェノサイダーにはやはり二年間の記憶があるようだ。 ! ねぇ⋮⋮そういやオジサマはどこ てか何でこんな狭い部屋に集まってんの ﹂ ﹂ ? ﹂﹂﹂ ! ﹂ !? ﹁信じるよ。ボクは⋮⋮⋮﹂ 片手をあげ止める。 ジェノサイダーの殺気に江ノ島、舞園、大和田、石丸、大神などが反応したが苗木が ﹁﹁﹁ なら⋮⋮まーくんが最初に殺されてみるかしら ﹁あたしはぁ、ホントはんな約束したくはなかったんだ。信頼できねえとか言い出すん と、苗木が言った瞬間右目の眼前に銀色に光る鋏が止まる。 ? ? ﹁あたしとしては是非萌えるアートを造りてえが、あのオヤジと約束しちまったんだよ ? ? ﹁⋮⋮えっと、取り敢えず人は殺さないって事で良いのかな 週刊少年ゼツボウマガジン(非)日常⑩ 176 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮ゲラゲラゲラ ﹂ あんた誰よ まーくんってそんなに素敵な笑み作れたっけ !? ﹂ ﹂ ﹂ ! ﹂ くしゃみがキーみたいだし﹂ ? 半数以上の肯定が出たため、否定組は意見を飲み込んだ。 と、思いの外皆腐川を閉じ込めるなどの意見を出すことが無かった。 ﹁⋮⋮⋮俺は⋮⋮ま、いっか。コショウ持ち歩けば﹂ ﹁ま、兄弟が言うなら﹂ ﹁苗木くんの意見に賛成だ ショウをもって歩けば良いんじゃない しきは罰するなんて空気になるのは嫌だしね。それに、ジェノサイダーが不穏ならコ ﹁ボクは信じて良いと思うけど⋮⋮ここで誰かを閉じこめて、一度そうすることで疑わ ﹁苗木君はどうするんですか ﹁⋮⋮⋮って、言ってたけどどうする ⋮⋮あ、あれ ﹁ま、残念ながら約束だからね、我慢の限界が来るまでは殺さねーよ⋮⋮⋮⋮えくし 素敵な、の部分に若干皮肉を感じたがジェノサイダーは鋏をしまった。 ? ! ? ? ? ! 177 閑話② 苗木が小学生達に懐かれるのは早かった。 元々人当たりがよく、本当の意味で優しく、理不尽な期待はせず、誉めてくれて、気 味悪がらず、どんな生まれも気にしない。 終わり ﹂ 彼等の中で大きくなりすぎて、失った時大きな穴をあけた。 ﹁⋮⋮え ? ﹁⋮⋮じゃあ、最後の授業に﹂ ﹁⋮⋮⋮今日だ﹂ ﹁⋮⋮わかりました。何時からですか ﹂ 彼等との時間は、思いの外楽しかったのだが。 学園長室で超小学生級達の教員係は終わりだと告げられた苗木は思わず固まる。 ﹁ああ、急にすまないな﹂ ? ? 霧切仁のその言葉に苗木はようやく察した。 ﹁違う、そうじゃない⋮⋮もう、終わりなんだ﹂ 閑話② 178 今日で終わりなのではなく、今日から終わり。もう、行くなと言われていることを。 ﹁ほら早くしろよ ﹁ま、待ってよ大門くん ! ﹂ ⋮⋮⋮あれ 苗木の奴来てねえぞ ? ﹂ ? る。 ﹁いっちばーん ! 苗木が来てから見るようになった光景だ。彼らは、苗木に早く会いたくて走ってい 先頭を走る大門と、それを追いかけるクラスメート達。 ! ﹂ せめてお別れの挨拶ぐらいしたかったなと思いながら⋮⋮⋮。 霧切仁の言葉に、苗木はしぶしぶ頷いた。 ﹁⋮⋮⋮はい﹂ ﹁いや、君の幸運は僕らが保護すべき希望なんだ。わかってくれ⋮﹂ ﹁⋮⋮実際、ボクは何の才能もありませんよ﹂ に通っている奴⋮⋮と認識しているからね﹂ ﹁そうだ。特に彼等は、苗木君達を自分たちと同じく才能を持ってない奴のくせに本科 ﹁⋮⋮⋮予備学科生達の暴動⋮⋮ですか﹂ ﹁悪いとは思っている。だが、パレードが激化してきてね﹂ 179 ﹂ ﹁はぁはぁ⋮⋮⋮ほ、本当だね﹂ ﹁遅刻でしょうか ﹁珍しいな⋮⋮﹂ ﹁じゃ、久し振りに罠を仕掛けるのじゃ∼ ﹂ ﹂ しばらくしてドアが開き││ ﹁くぶ ﹁おっしゃあ ﹂ ﹂ に思いながらもどうせ来てないならと、彼が初めて来た時と同じ罠を仕掛ける。 普段なら生徒達より早く来ている苗木だが、その日は何故か来ていなかった。不思議 ! ? ﹁⋮⋮⋮苗木お兄さんは ﹂ ﹁⋮っぐ、クソガキどもめ﹂ の別人だと気づく。 見事に引っかかり大門が喜びの声を上げるが新月が入ってきた男が苗木より高身長 ﹁⋮⋮⋮おい、苗木さんじゃないぞ ? ! !? ? ﹁もうこない。今日からオレがお前等の担任だ。甘やかされると思うなよ⋮⋮﹂ 閑話② 180 ﹂ その日の放課後、五人はまだ帰らず教室で話していた。 ﹁⋮⋮⋮苗木、何でこないんだよ﹂ ﹂ ﹁ぼ、ボクちん達のこと、嫌いになっちゃったのかな ﹁んなことあるわけねえだろ ? 八つ当たりの言葉を⋮⋮ 顔を青くして震える4人を見てモナカは呟く。奪われた怒りを晴らすための、ただの ﹁酷いこと⋮⋮やさしい⋮⋮やさしいのだけは⋮⋮﹂ ﹁ぼ、ボクちんのせいなんだよ⋮⋮やっぱり⋮⋮⋮﹂ が出来なかったから⋮⋮﹂ ﹁期待に、応えられなかったから 苗木さんと会わせることで、何か変化を期待してそれ ﹁⋮⋮お、オレっちが悪いから⋮⋮だから、苗木も⋮⋮﹂ 引き離して⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮どうして大人達はモナカ達に酷いことするんだろ、やっとあえた大切な人からも モナカの言葉に全員がモナカを見て固まる。 ﹁﹁﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂﹂﹂ ﹁⋮⋮⋮来ないんじゃなくて、来れないのかも﹂ ﹁あの人に限ってそれはないだろ⋮それに、何も言わずに来なくなったのも不自然だ﹂ ! ? 181 ﹁こんな世界から、バイバイしたいよね ││うぷぷ││ ﹂ ﹂ ? ﹂ !? ﹁それは⋮⋮バッチですか ﹂ ﹁あ、うん⋮⋮あぁ、割れちゃってる﹂ ﹁苗木君大丈夫ですか パキーンと音を立て苗木は持っていた物を落として割ってしまう。 ﹁⋮ッ !? ? 苗木はそう言いながら、割れてしまった超小学生級達とお揃いのバッチを眺めた。 ﹁うん。バッチ⋮⋮⋮希望の戦士の証なんだって﹂ 閑話② 182 新世紀銀河伝説再び 装甲勇者よ大地に立て ︵非︶日常 ! ! ﹂ ! がら少女は表情を消す。 へ届ける絶望を邪魔して自分の絶望を邪魔してくる彼に憎しみより愛しささえ覚えな 自分の予定を、コロシアイを、自分が見たい、誰かが絶望した顔を見る予定を、世界 だが少女の中に失望などない。そもそも期待などしていないのだから。 ﹁最っ高 コロシアイは、いまだに起きていない。起きる前に止められている。 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮こんなの⋮⋮﹂ 少女の予定は1人の行動のせいで狂ってしまった。 ﹁⋮⋮こんなの⋮⋮⋮﹂ 本来の予定と大きく変わってしまった。 せれば五回も邪魔されている。 また、彼に邪魔された。人が死ぬ瞬間を三回も、クロを見破った際のお仕置きを合わ 黒幕の少女はカメラ越しに眠っている少年を眺める。 編① 183 ﹁しかしどうなってんだかね、苗木の奴﹂ 彼女が知る限り彼は幸運だけで選ばれた、彼の自負するとおり人より前向きなのが特 徴の童顔チビだった。 確かに人の心情を察することにたけていたがそれは付き合いの長い相手に対してで、 ほぼ初対面になってるはずの今の仲間達の心境を察せる筈がない。何よりアイツは人 の善意を疑わない。 ﹂ ? 少女はポツリと呟く。 ﹁でも、本質は変わってない﹂ に一番適応した人格になったわけだから幸運なのか不運なのかは知らないが。 の幸運のくせについてない彼ならそんな確率にあってもおかしくない。まあ、この環境 記憶をいじるような行為だ。人格に影響を与えても何ら不思議ではない。超高校級 ある意味ではこれが一番の有力候補だ。 ﹁頭いじって性格変わっちゃったかな の幸運ならあり得るかもしれないがだとしたら反応がおかしい。 絶望的なまでに万能な自分が失敗するなど絶望的な確率であり得ない。あるいは彼 処置したのは自分だ。 ﹁まさか記憶操作が効いてない⋮⋮⋮訳ないか﹂ 新世紀銀河伝説再び!装甲勇者よ大地に立て!(非)日常編① 184 そ う、苗 木 の 本 質 ⋮⋮ お 人 好 し は 変 わ っ て い な い。彼 の 行 動 原 理 は 今 も な お、全 員 揃ってここから出ること。 ﹁⋮⋮ま、信頼関係は上々﹂ こいつらが、自分たちが生き残るために苗木を見放し 今彼に信頼を置いている者は多い。それこそ、絶望的に退屈なはじめの一年のように ⋮⋮⋮。 もしそんな彼がクロになれば その時はこいつらと苗木はどんな顔をするのだろうか⋮⋮⋮。 ? 優秀だから、ずるする必要が出てきたんだよ﹂ ? ? 最近では舞園が部屋にいることもなれたつもりだが、別の要因でも合ったのだろうか 昨日は妙な寒気を感じた。 入れても構わないだろう。 外の世界にはいまだ人間は数を減らしこそすれうじゃうじゃいる。1人くらい招き 少女はそう言って笑いながら画面に映った少年を撫でる。 秀だからだよ ﹁うぷ、うぷぷ⋮⋮⋮ちょっとずるだけど、テコ入れの準備をしなきゃ。これも苗木が優 たら ? 185 ﹁おはよう苗木くん 舞園くん 江ノ島くん ! ﹂ ! ﹁⋮⋮朝日奈がいねーな 何時もならいるのに﹂ ﹁⋮⋮⋮十神くんと腐川くんは欠席か﹂ ? 込んでくる影があった。 ﹂ ﹁呼ばれて飛び出て邪邪邪邪ーーん ﹁呼んでない呼んでない ﹂ ! ﹂ やってきたのはジェノサイダー。連続殺人鬼の姿に一同の顔が青くなる。 ! ! ﹁な、何でジェノサイダー状態なんだべ ﹂ 石丸が時間を確認して周囲を見渡しため息をついた時だった。食堂に勢いよく飛び ﹁十神くんは殺人鬼を警戒してるんじゃないかな ﹂ 桑田の言葉に大神が説明すると、苗木はああ、あれを見たのかと1人納得する。 ﹁朝日奈なら、腹が痛いと言って部屋で休んでいる﹂ ? よりだ。 前回は、この時期に大和田が死んでしまい脱け殻のようになっていたが元気そうで何 食堂に向かうと石丸の朝一番元気のいい挨拶が聞こえてくる。 ﹁おはよう石丸クン﹂ ! ﹁この学園って素敵。あたしみたいな殺人鬼がどうどうとしてられるんだから ! 新世紀銀河伝説再び!装甲勇者よ大地に立て!(非)日常編① 186 隠してんなら切り刻むけど ﹂ ? ﹁おはようジェノサイダー﹂ ごめん、見てないな﹂ ﹁おっはーまーくん。ねえ白夜様はどこ ﹁十神クン ? ﹁じゃーね 待っててダーリン ﹂ ﹂ ﹁山田くんはそう言って100%死にそうだけどね﹂ ﹁アイツがいなければボクの生存率は10%はあがるのに ! グがぶちまけられた。 ﹁⋮⋮何のつもりだよモノクマ﹂ ﹁それはボク特性のドレッシングさ 置きだよん♪﹂ ﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮あ、意外と美味い﹂ ﹁え ! モノクマは慌ててどこからか瓶を取り出し口に含む。 ? 何時も何時もボクに酷いこという苗木くんにお仕 苗木がそう言って朝の野菜をパリパリ食べていると突然野菜に真っ黒なドレッシン ﹁えーーー ﹂ 所を尋ねるが部屋から直行できた苗木は見ていないというと大人しく引き下がった。 唯一ジェノサイダーに挨拶したのは苗木1人。ジェノサイダーも苗木に十神の居場 ? ! !? ! 187 ﹁ぶへえ ゲロマズ なんて事だ、このボクが間違いを起こすなんて⋮⋮⋮うっ、うう。 ! ﹁モノクマ⋮⋮﹂ 今まで何も間違えたことがないのに⋮⋮﹂ ! と肩に手を起き声をかける。 失敗はめげちゃいけない ﹂ ﹂ やめ、おかし⋮⋮おかしいから さあ、一緒に笑おう いや、嘲笑い方 ちょ、間違うって⋮⋮ぶふ ﹂ さあ、散策だ散策だ ! ! ﹁そう言うときは⋮⋮⋮笑えばいいと思うよ﹂ ﹂ ﹁新しく世界が広がったよ∼ が良い ! あは どうせない出口を探して絶望する ! ﹁⋮⋮⋮そうだよね ﹁あっはっはっは げほげほ ﹂ すげえ絶望と殺意渦巻く笑い方 は、だめ苦しい⋮許して ﹁⋮⋮うわ ﹁で、モノクマ﹂ ﹁⋮⋮⋮急に冷静になりやがった﹂ ! ! ﹁作り笑いだし。それで要件はそれだけ ! ! ! ! ! 苗木の言葉にモノクマはふう、と息を整えゴホンと席をする。 ? ! ! どうやら二つのドレッシングを入れ間違えたらしく、落ち込むモノクマに苗木はポン ﹁なにさ﹂ 新世紀銀河伝説再び!装甲勇者よ大地に立て!(非)日常編① 188 ! 新世紀銀河伝説再び 編② 装甲勇者よ大地に立て ︵非︶日常 それにしてもこの学園は、何故階段の位置が疎らなのだろうか ! 希望ヶ峰学園は大きな組織で 階を進む度に階段を探すというのはかなり面倒くさい。 すし﹂ ﹁複雑にすることでテロに備えているんじゃないですか 声に出してないはずだが⋮⋮。 ﹁エスパーですから﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ 最近の舞園は勘の良さがあがっている気がする。 ? ! ﹂ ? ﹁ああ、うん⋮⋮⋮﹂ ﹁苗木、早く行こ ケラケラ笑う舞園に苗木は引きつった笑みを浮かべた。 ﹁いやですね。私如きが苗木くんの思考を理解しきる筈がありませんよ﹂ 苗木の心情全て読みとれるまで鋭くならなければ良いが⋮⋮。 ? 189 江ノ島に催促され苗木は希望ヶ峰学園の三階に上がった。 最初に入ったのは娯楽室。そこには先客のセレスがいた。 ﹁学生達の休憩所のような場所らしいですわね⋮﹂ ﹁退屈しのぎには事欠きませんわね﹂ 補足があるニョロよ ﹂ 私こんな写真撮ってませんよ ﹁ピロリロリーン ﹁⋮⋮⋮あれ ! 江ノ島とセレスが反応して写真を覗き込んだ為モノクマと話す者は居なかった。 セレスの言葉にモノクマが現れたが舞園が苗木の開いたページを見て呟いた言葉に ? ! ﹁お、お∼い、無視しないでよ﹂ ? ﹁なに、モノクマ⋮⋮﹂ ﹂ アイドルの特集らしく舞園の写真が乗っていた。 苗木は雑誌の一冊を取る。 ﹁それに、見てください⋮雑誌類も充実しているようですわよ﹂ 苗木も何度もやらされたそのゲームを目で追っていく。 舞園の言葉にセレスは説明するように娯楽室に置かれているモノを指さしていく。 ﹁普通の学校では考えられませんね。オセロに将棋⋮ダーツやビリヤードまで⋮﹂ ﹁そんな教室があるんですね﹂ 新世紀銀河伝説再び!装甲勇者よ大地に立て!(非)日常編② 190 1人、苗木だけがモノクマに向き直る。 のものが⋮⋮おっとっと 意外と親切 何でもないよ∼ 補足はそれだけだからバイバイッ ! ﹂ !! ﹂ ? ﹂ ? ﹂ ? ん ﹂ ﹁ですから、単なるライブならともかく雑誌のインタビューで着る服を忘れたりしませ れただけでしょうに﹂ ﹁舞園さんが、雑誌に載っている衣装を着たことがないと言っているんです。どうせ忘 ﹁ど、どうしたの 不意に名前が呼ばれたので振り返ったら三人の少女が苗木を見ていた。 ﹁ん、呼んだ ﹁苗木君1人でも良いですよ ﹁⋮⋮⋮同列なんですね、その三名﹂ ﹁ですから、私はこの衣装を着たことは神や仏や苗木君に誓ってありえません﹂ るのか。 いや、絶望なら、正体が露見した時の絶望を味わうため敢えて⋮⋮という可能性もあ ? 結構ヒントを残してくれていたんだな。 ! ﹁うんうん実はね、ここの雑誌は追加されないんだよね。ボクがそうしたくても、雑誌そ 191 ! ﹂ ⋮⋮⋮なるほど、雑誌に載るタイプの才能を持った生き残りが居たら、もう少しはや めに気づけたのか。 ﹂ ﹁忘れてる⋮⋮か、確かにね﹂ ﹁え 苗木の言葉に江ノ島と舞園が続く。 ﹁OK﹂ ﹁はい﹂ ﹁こっちの話。それより次の場所に移動しようか ? 見てください、この充実した設備 ! ﹂ ! る桑田が居た。 ﹁おお苗木殿 アート精神をくすぐられますぞ 考え事をしながら移動していると興奮している山田とピカソの再来の絵を描いてい ﹁と、ここは美術室だね⋮⋮⋮﹂ だがいずれ動くだろう。 なっている時点で硬直状態とは判断されなかったためか今は何も起きていない。 本来口火を切るはずの事件を止め、継いで起こるはずの事件も止めた。起こりそうに と。 苗木は三階の廊下を歩きながら考える。この先、硬直状態が続けばどうなるのか⋮⋮ ? ! 新世紀銀河伝説再び!装甲勇者よ大地に立て!(非)日常編② 192 ﹁あ、そ⋮⋮﹂ 苗木は興味なさそうに言って、思い出したようにポケットからガチャガチャのカプセ ルを取り出した。 ぶー子のフィギュア 何故に ﹂ ﹁じゃあこれ上げる。せいぜい絵の題材にしてね﹂ ﹁こ、これはぁ !? !? ﹂ 顔で写る三人。苗木は舞園達に見つからないうちにポケットに閉まった。 奇声上げられたら迷惑なのだよ。せめて寄宿舎で叫んでよね モノクマは⋮⋮現れない。 ﹁だからね ﹂ 写真に写っているのは大和田と桑田、そして不二咲の三人。鉄板がない窓の教室で笑 苗木は床に落ちている写真を拾う。 ﹁あったあった﹂ 監視している黒幕が奇声を上げてる山田に注意を奪われていれば良いのだが。 苗木は奇声を上げる山田と別れて美術倉庫に入る。 ﹁うひょーーー ﹁モノモノマシーンで引いたんだけどいらないから上げるね﹂ ! ! ﹁も、申し訳ないでござる﹂ ! 美術室に戻るとモノクマに叱られている山田が居た。 ! 193 お気の毒様だ。 最後にやってきたのは物理室。巨大な機械が置かれている。 ﹂ ! 確かこれは⋮⋮ ﹂ ? ﹂ ? ﹂ ? ﹁そうだね、だいたい見て回ったし﹂ ﹁あの、そろそろ戻りませんか 持っていることを前回のように動機として使われる可能性もある⋮⋮⋮。 これはどうするべきか、また悪用されてはたまったものではない。とはいえ隠して 舞園が見つけてきたアニメのキャラクターが書かれたデジカメを見て苗木は考える。 ﹁これは⋮⋮⋮イタカメ ﹁苗木君、見てくださいデジカメがあります﹂ い浮かんだ。 しかし火星、か⋮⋮何故かじょうじと鳴く黒人もビックリな真っ黒マッチョの姿が思 ただの、ではないだろう。 ﹁ただの空気清浄機だよ。火星にも住むことが出来る﹂ ﹁⋮⋮⋮本当は ﹁タイムマシーンなのです 新世紀銀河伝説再び!装甲勇者よ大地に立て!(非)日常編② 194 朝日奈さん。腹痛は大丈夫ですか ﹂ 舞園の言葉に苗木も頷き一階の食堂に向かう。 ﹁あれ ? ﹁あれ ﹂ ﹂ 体調悪いんじゃなかった ﹁⋮もう大丈夫なのか ﹂ ? !! ことを報告するように ﹂ ﹁とりあえずさ、調査の報告会をしよう ! 休んでいた朝日奈くんの為にも各々見つけた プールに放置していた浮き輪ドーナツも数日で無くなってたし。 本当に好きだなドーナツ。 ﹁う、うん⋮⋮ドーナツ食べたら元気になってきた﹂ ? ? ﹁朝日奈ッ 食堂に来ると大神が腹痛で休んでいると言われていた朝日奈が居た。 ? 195 ! 新世紀銀河伝説再び 編③ ﹂ 装甲勇者よ大地に立て ︵非︶日常 三階の散策の結果、娯楽室、美術室、物理室。 そこで発見した事を各々報告する。 ! ! ﹂ ﹁舞園ちゃんだ ﹁⋮⋮⋮は ﹂ ﹂ 何言ってんだ、これはボタンだよ﹂ ? ﹁舞園さんの制服にボタンなんてないけど ? ﹁⋮⋮あん ﹁⋮⋮⋮桑田くん、何で舞園さんに目が三つあるの ﹂ 苗木は絵をまじまじ眺めるがどうみても舞園には見えない。 自信満々に答えた桑田に舞園は冷ややかな視線を向ける。 ? ! 描かれている。 桑田が取り出した絵はまるでピカソのようなよく分からないごちゃごちゃした絵が ! ! 俺美術室で絵を描いて見たぜ ﹁ほら、見てくれ ? ﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮ピカソ 新世紀銀河伝説再び!装甲勇者よ大地に立て!(非)日常編③ 196 ? ﹁⋮⋮⋮あれ ﹂ ﹂ ! いだろう。 ﹂ ﹁ところで朝日奈さん⋮⋮﹂ ﹁ん ﹁朝日奈さんは腹痛で寝てたんだよね ﹁う、うん⋮⋮そうだけど⋮⋮﹂ ﹁え ⋮⋮あ ﹂ ﹂ 苗木の言葉に自分の右足をみて慌てて下ろす。 !? ﹂ 外にでたいセレスだが、第三の動機が無い以上今はまだデジカメに固執することは無 苗木はセレスが預かると言い出す前に所有権を手に入れておく。 ﹁じゃあボクがもらうね、そのうち役に立つかもしれないし﹂ ﹁って、うわ。すっげえ汚れてるんですが⋮⋮もうイラネーヨ﹂ 苗木がカメラを見せると山田がスライディングで苗木からカメラを奪い取る。 ﹁これ僕のじゃねーかっ ﹁あ、そういえばこんなカメラを見つけたよ﹂ にしても、下手すぎる。いや、別の意味では上手いんだが。 ? ﹁朝日奈さんって、嘘つくと右足の踵をあげる癖があるの知ってた ? ? ? ? 197 ﹁⋮⋮ふつう、嘘の癖を言って確認させるものですがよく分かりましたね﹂ と、セレスが感心したように言う。 実際苗木はここにいる全員の嘘をついた時の癖を知っているのだが、それは別に言う 必要もないだろう。 ﹂ ? ﹁見た ﹂ ﹁⋮⋮⋮女の子の幽霊﹂ ﹁幽霊って⋮あの幽霊の事 ﹂ !? ? ? 部屋を出た直後に変な音が聞こえて⋮⋮音が聞こえたお風呂場にいって⋮⋮半開きに くってさ、お腹すいてドーナツでもないよ食べようかと倉庫のドーナツ漁りに行こうと ﹁さくらちゃん⋮⋮苗木⋮⋮⋮⋮あのね、昨日の夜の事なんだけど、なんだか⋮寝付けな ﹁ボクも信じるよ。だから、教えてくれない、その話⋮⋮﹂ ﹁我は信じよう﹂ ない。 朝日奈の言葉に山田と桑田が顔を青くするが朝日奈自身顔を青くして、一向に否定し ﹁は、はは⋮⋮冗談だろ ﹂ ﹁⋮⋮実は、昨日見ちゃったんだよね﹂ ﹁では朝日奈さん、話してくれます 新世紀銀河伝説再び!装甲勇者よ大地に立て!(非)日常編③ 198 なってたロッカーの扉をあけたら⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ 苗木がチラリと桑田達をみるとガクガク震えていた。こういう話は苦手なのか 外だな⋮⋮。 女の子だったよ﹂ ﹁きゃあああああああああああッ ﹂ ﹂ ! !! ゆ、ゆ、ゆ、ゆ、幽霊なんて ﹁あ、あ、ありえねーって⋮ ! 証拠がねえ ﹁見間違いに決まってるって ! ど﹂ !? 意 って⋮⋮⋮不二咲クンは何か知ってるみたいだけ ? ちょうど出て行こうとしていた不二咲は恐る恐る振り返った。 急に話を降られ不二咲はビクッと肩をふるわせる。 ﹁え ﹂ ﹁じゃあ確かめればいいんじゃない そうであるように、あなたの心理状態が見せた幻影でしょう⋮﹂ ﹁⋮幽霊なんて、非現実的すぎますわ。何かの見間違いに決まってます。大抵の場合が ! ﹂ ﹁青白い光に包まれた人影がボウッと⋮⋮すぐに尻餅ついて逃げちゃったけど、あれは ? 199 ﹂ そういえばあの女の子不二咲に似てたかも ﹁あ ﹂ つけだろうが ! ! ﹂ ! 今の推理は間違っている ﹂ 幽霊見たから不二咲がすでに死んでるなんて⋮⋮全部こじ ! 不二咲くんは生きている ﹁その通りだ ! ﹁⋮⋮あ、あの⋮⋮えっと⋮⋮﹂ ! ﹁いやいやありえねーって じゃあ実は不二咲千尋殿はすでに幽霊 ﹁え ! 苗木はオロオロする不二咲に近づいてゆき、ドン と壁をたたく。ビクッと肩をふる ! ? 新世紀銀河伝説再び!装甲勇者よ大地に立て!(非)日常編③ ﹁知ってることを話してくれるかな ﹂ 不二咲は顔を赤くしてモジモジと頷く。 ﹁⋮⋮あ、う⋮⋮うん⋮⋮わかったよぉ⋮⋮﹂ ﹁じゃ、じゃあ⋮⋮脱衣場までついてきてくれる ﹂ わせる不二咲に苗木は笑顔で顔を近づけ問いかけた。 ! 苗木が笑顔で言うと、食堂にいた全員も不二咲の後に続いて歩き出した。 ﹁OK。行こっか皆﹂ ? ? ﹂ そして脱衣場に集まった一同の前で、不二咲はロッカーの扉をあける。 ﹁⋮⋮⋮パソコン 200 ? 中を覗き込んだ朝日奈は中にあった物を見て首を傾げる。 そこにあったのは図書室にあった壊れたノートパソコンだった。 ﹄ ! 何これ⋮⋮⋮﹂ ? ひぃ と悲鳴を上げ苗木の後ろに隠れた。 山田がウンウンと頷いていると不二咲がイイ笑顔で凄む。もともと小心者の山田は ﹁⋮⋮僕の子に近づかないでね山田クン﹂ ﹁ふーむ、それにしても、ご主人タマですか⋮そうですか、これはこれは⋮萌えますな﹂ いたんだ⋮﹂ ﹁うん。名前の由来はそれだよ⋮⋮人工知能プログラムアルターエゴ。ここに置いてお る人格を演出する為に作られたものを指す場合が多い⋮﹂ ﹁アルターエゴ⋮⋮〝別人格〟という意味ですわね。創作の分野などで、意図的に異な ﹁これは⋮⋮アルターエゴだよ﹂ ﹁あれ ディスプレイいっぱいに不二咲の顔が映し出された。 ﹃来てくれたんだね、ご主人タマ 複数のアイコンが浮かび、左端にあるアイコンをクリックすると││ 不二咲はそう言ってパソコンのスリープモードを解除する。 ﹁僕はこれを直して、あるプログラムを入れたんだ﹂ 201 ! ﹂ ﹁僕はこの子にパソコンのハードディスクにあったファイルの解析を頼んだんだ。これ がビックリするくらい厳重でさ⋮⋮⋮どれくらい進んだ カタカタと音を立てながら不二咲はキーボードを弄る。 ? ・ ﹂ ? ﹁まだ⋮⋮⋮か、うん。わかった、それでいいよ﹂ ・ ﹁ええ、まだ出来ないわ﹂ ﹁⋮⋮⋮ボクが信用できない ﹁私も同じようにさせてもらうわ﹂ と、苗木が言うと霧切も手を挙げる。 ﹁⋮⋮じゃあ、ボクの部屋のドアを開けとこっか、どうせ鍵もかけてないんだし﹂ ﹃任せて。ウェブカメラに怪しい人が写ったら叫ぶから大丈夫だよ﹄ ﹁じゃあ引き続きお願い。黒幕にも気をつけてね﹂ ﹃もう少しかかりそうかな⋮⋮﹄ 新世紀銀河伝説再び!装甲勇者よ大地に立て!(非)日常編③ 202 新世紀銀河伝説再び 編④ ﹂ 装甲勇者よ大地に立て ︵非︶日常 なんだかんだで、私ってお手柄じゃない !? ! ! 手柄 ﹂ ﹁タッタラタタッター 朝日奈の活躍により、彼女のレベルが上がった で⋮⋮何がお ! !? ため全員がビクッと身体を震わせる。 ﹂ ﹁オマエラ、ずいぶん上機嫌じゃん。何か良いことでもあったん 卑怯だぞ、独占取材を要求する ﹁別になんでもないよ﹂ ﹁⋮内緒話 ﹂ ! ﹁だ、大体⋮あんたに関係ないでしょ ﹂ モノクマがしつこく聞いてこようとするが山田が全力で拒否する。 ﹁却下、却下、超却下 !! ? ﹂ この学園の秘密を暴けるかもしれない作業を行っているアルターエゴの近くで現れ と、モノクマが現れた。 ? ! 脱衣場から出た朝日奈がルンルンと鼻歌でも歌いそうなほど上機嫌で叫ぶと⋮⋮ ﹁スゴくない !? 203 ! ﹂ ﹁関係って⋮あの関係 関係だって ﹂ ﹁どういう⋮関係よ⋮ ﹁いやらしい ﹂ ﹁あんたが先に言ったんじゃん ﹂ ? 戻ってて ﹂ ﹂ という訳だからさ⋮ほらほら 男子は食堂にでも と不思議そうな顔をしたが、すぐにセレスの意図に気づいた。 そうなんだって 私達はこれから、ゆっくーりお風呂に入るんだから ﹁そ、そうそう⋮ !! !! ! ? ﹁⋮⋮ふーん、ところで苗木くん﹂ ! ! ばれた朝日奈は一瞬え セレスは舞園と江ノ島の言葉を完全に無視してモノクマに嘘を告げる。急に名を呼 ﹁そこで朝日奈さんが勝って、それで喜んでいただけですわ﹂ ﹁あたしも苗木なら別に⋮⋮﹂ ﹁私は苗木君と一緒でも良いんですけどね﹂ 入るか、じゃんけんで決める事になったのです﹂ ﹁ですが困った事に、お風呂は男女別に別れていませんでしたので⋮男女どちらが先に ﹁⋮へ ﹁わたくし達は、久し振りに大きなお風呂で羽を伸ばそうと相談していただけですわ⋮﹂ 朝日奈はモノクマに噛みつかんばかりに叫ぶがモノクマは朝日奈の怒気を受け流す。 !! ! ? ! ? 新世紀銀河伝説再び!装甲勇者よ大地に立て!(非)日常編④ 204 ﹁ん ﹂ ﹁美術倉庫でさ、ボクの持ち物盗んだでしょ ﹂ ﹁拾ったんだ。だからあれはもうボクのだよ﹂ 返せ どうせ苗木くんが持ってても意味ないでしょ ほらほら、女子が入るからいったいった ﹂ それって絶対おかしいよね ﹁そうだね、じゃあ食堂で待ってよっか﹂ ⋮おかしくない ﹁あ、明日は一番風呂をとるべー ﹂﹂ ﹁だってさ、これって覗きのチャンスじゃん ﹁﹁ ﹂ ! ﹂ そんな大チャンスを逃そうっての !! だがモノクマの言葉は予想外のものだった。 モノクマの言葉にギクリと震える男子達。 ﹁ちょーっと待った ? ! ﹂ モノクマの言葉に苗木はハンと馬鹿にしたような笑みを浮かべる。 ﹁なんて奴だ 何時まで居るの ﹁むぐぐぐ⋮⋮﹂ ﹁もう ! ﹁意味があるかはボクが決める﹂ ! ! ! ! 苗木とモノクマが睨み合っていると朝日奈が苗木の背を押した。 ! ﹁いや、何衝撃受けたような顔してんの二人とも﹂ ﹂ !? ? ? !? ? 205 モノクマの言葉に桑田、山田の二人が漫画などで雷が落ちる表現がなされそうな顔を する。苗木はそんな二人に呆れたような顔を向ける。 ありませんぞ 男のロマンって奴ですよ⋮ ﹂ ﹂ ﹁素直に、ボクの言う事を聞いておいた方がいいと思うよ⋮こんなチャンスは、そうそう ﹁うぐ ﹂ そのような行為認め⋮⋮﹂ ! ﹁わりい、石丸 ﹁待ちたまえ 桑田がプルプル震える。 ﹁男の⋮⋮ロマン⋮⋮﹂ ! ! ! ﹂ ﹂ ﹂ ﹂ 桑田、テメェ⋮⋮そんなに覗きたいのか ﹁馬鹿やろう ﹁ ﹁ああん それを覗かず何が男だ ﹁大和田、お前⋮⋮それでも男か ! ﹁兄弟 ﹂ から放たれる肘は石丸の意識を奪うのには十分だったようだ。 当然風紀に厳しい石丸が叫ぶが桑田によって気絶させられる。野球で鍛えられた肩 !? !? ﹁女が、入ってるんだぞ ! !? !? !? これは、男の覚悟を試す試練だ﹂ ? ! 新世紀銀河伝説再び!装甲勇者よ大地に立て!(非)日常編④ 206 ﹁男の⋮⋮覚悟だと﹂ 桑田の言葉に大和田が揺れる。 いや、揺れるなよ何やってんだお前。 ﹂ ﹁悪いことだってのは分かってる。けど、そこに女が居るんだ だろ ﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮っち、分かったよ。俺も行く﹂ ! ﹂ ? ﹁お つまり苗木も興味あんだな ﹂ !? 無いんだよなぁ。 ﹁興味はあるけど覗く意味が⋮⋮﹂ 男なら行かなきゃダメ 苗木の呟きを聞いた桑田が我が意を得たりとばかりに苗木の肩をつかむ。 ? ﹁健全な男の子としてそれはどうかと思うけど﹂ ﹁うん。僕女の子の裸には興味ないから﹂ ﹁⋮⋮⋮不二咲くんは、いいの 女居ない歴=年齢だ。興味もあるのだろう。 そういえば大和田は、女子に告白する際緊張から怒鳴ってしまい連戦連敗。つまり彼 大和田の言葉に苗木は目を見開いて驚いた。 ﹁行くの !? ! 207 今現在一番のプロポーションを持つ朝日奈の成長した裸体を何度も見た記憶のある 苗木からしたら一々覗く価値もない。 ﹂ ? ﹁枯れてんな苗木⋮⋮﹂ ﹂ ? 子と怒った様子の女子達が入ってきた。 ﹁あら、苗木君達は来なかったんですのね﹂ こいつらにも見習ってほしいよ ! ﹁まあね﹂ ﹁全くもう ﹁わるかったべ﹂ ﹁﹁す、すまねえ⋮⋮﹂﹂ ! ﹁ごめんなさい⋮⋮﹂ ﹂ その後食堂で気絶した石丸と不二咲と共に男子の帰りを待っていると、ボロボロの男 苗木はシュンとする不二咲を不思議そうにみる。 ﹁どうしたの不二咲くん ﹁⋮⋮そ、そっかぁ⋮⋮﹂ ﹁そりゃ、まあ⋮⋮﹂ ﹁あの、苗木クンも女の子の裸に興味あるの 新世紀銀河伝説再び!装甲勇者よ大地に立て!(非)日常編④ 208 朝日奈にジロリと睨まれ畏縮する三人。何でも、話し合いをしているうちに女子が上 がって鉢合わせしたらしい。 前回苗木は普通に覗けたが⋮⋮これは人が多い故起きた悲劇なのか、幸運がその場に ﹂ 居なかったから起きた不運なのか⋮⋮。 と、そこへモノクマが現れる。 ﹁⋮⋮にょほほ。これもまた青春 ﹂ 気になっちゃう ﹂ うぷぷ、だったら体育館に行ってみなよ。そこに ﹁ふふん。青春を楽しんでいる皆にプレゼントを用意したよ﹂ ﹁プレゼント ﹁おやおやおやぉ ? プレゼントを置いといたからさ⋮迷わず行けよ、行けばわかるさ ? ? モノクマはそう言って姿を消した。 !! ! 209 新世紀銀河伝説再び 編⑤ ﹁きっと、また動機ね⋮⋮﹂ 装甲勇者よ大地に立て ︵非︶日常 ﹂ ! まだ殺人は起きてないし大丈夫だべ やだよ⋮もう行きたくないよぉ⋮⋮﹂ ﹁で、でもよ ﹂﹂﹂ ﹂ !? ? 他の面々も渋々と体育館に向かう苗木達の後を追った。 霧切はそう言って歩きだし、苗木達も体育館に向かった。 ても⋮⋮﹂ ﹁今はアルターエゴが手がかりを探してくれているんだもの、耐えましょう。何があっ 舞園も髪を弄っている所から考えるに動揺しているようだ。 葉隠のその言葉に顔をしかめる大和田、何時の間にか起きた石丸、そして不二咲。 ﹁﹁﹁ッ ! ! ﹁⋮また 山田の言葉に霧切が呟くと周囲の空気がピリピリしたものに変わる。 ? ! ﹁な、なんですか⋮今度は何を企んでいるのですか⋮ 新世紀銀河伝説再び!装甲勇者よ大地に立て!(非)日常編⑤ 210 体育館にはすでに先客がいた。 ﹂ ? ? ﹁全員揃ったね﹂ ! ﹁⋮じゃあ、そろそろね﹂ ﹂ 霧切が呟いたのと同時に何時ものようにモノクマが壇上からビヨーン ﹂ じゃあ、さっそく始めようか !! くる。 ﹁オマエラ、全員集まったみたいだね ﹂ ﹁さっさと言え。次はどんな動機を用意したんだ ﹂ 絶対負けないんだから⋮ ? ! ﹁何をされようとも、我らは屈せぬぞ﹂ ﹁そうだよ⋮ ﹁アホアホアホアホアホ ! ﹁うぷぷ⋮そんなに構えなくたっていいって⋮﹂ ! ! と飛び出て 一人の先客である腐川はジェノサイダーから元に戻り大人しくなっている。 先に来ていた十神は相変わらず傲慢にこちらを見下している。それに引き替えもう むんだぞ﹂ ﹁お前等が遅れたのは、二足歩行を忘れたからか いいか、右足と左足を交互に出して進 ﹁十神クン、早かったね ﹁お前等に待たされるとはな⋮銃器の使用が認められていたら迷わず撃っていたぞ﹂ 211 モノクマは身構える生徒達を見て馬鹿にしたように笑う。 ﹂ アーッ ﹁今回はね、趣向を変えてみたのです。今までオマエラを追い詰めるような、北風ピュー ﹂ ﹂ どう ピューばかりだったけど⋮たまには、暖かい太陽も必要だと思った次第です ハッハッハ モノクマは何が可笑しいのか爆笑しながら両手を広げる。 もうウッハウッハでしょ もし卒業生が出た場合のプレゼントにします ひゃっくおくえーん 100億 ! ? そして、ドサドサ札束が壇上の上に積み重なっていく。 円だよ ﹁⋮少なすぎるな﹂ ! ﹁その通りだ 人の命は尊いのだぞ ! ﹂ ﹁⋮人の命は金では買えぬのだからな﹂ ﹁だ、だけどさ⋮今更、お金なんかの為に仲間を殺したりしないよッ ! ﹂ ﹁お金⋮確かに動機としては定番中の定番ね。ミステリー世界でも、現実世界でも⋮﹂ らすれば100億円など端金か。 十神は100億円を見てふん、と下らなそうに鼻を鳴らす。まあ超高校級の御曹司か !? ﹁ひゃっくおくえーん !! !! つまりは金、モノクマの用意した動機。 ? !! !! ﹁そんなこんなで、今回ボクが用意したのは⋮⋮これでーすッ 新世紀銀河伝説再び!装甲勇者よ大地に立て!(非)日常編⑤ 212 !! ﹁つーか、100億円なんて額⋮リアルな話、実感沸かねーし⋮﹂ ﹁え ﹂ あんなゴミいらないけど ﹁⋮⋮⋮ゴミ ﹂ ? ﹂ ? ﹁うぷぷ。さっそく険悪な空気ができて何よりだよ。ま、せいぜい清く正しい共同生活 外にそんな金は使わないが。 否定はしない。ゴミにも劣る紙でも金は金。もっとも苗木なら誰かを助けるため以 ﹁どんな手段で手に入れようと、お金は使える以上お金ですわ﹂ ﹁ゴミだよ。いや、人の命を奪って手に入れたお金なんてゴミにも劣る﹂ ? ? ﹁⋮⋮苗木くんもお金がほしいんですの つまりあれはただの紙以下の価値しかない。ぶっちゃけゴミだ。 る。 の残っている場所に向かうのにあんな荷物持ってたら間違いなく野垂れ死ぬか殺され 今の世界で金が使える所など限られているだろうに。そして学園から出てまだ文明 各々の感想を言う中苗木はジッと札束の山を眺める。 ﹁すげーな不二咲⋮⋮﹂ ﹁えっとぉ⋮⋮五年もあれば集められるかなぁ﹂ ﹁んなもんの為に人を殺せるかってんだ﹂ 213 を心がけるんだねー ﹂ お金なんかの為に仲間を殺す人なんて⋮いないよね⋮ モノクマはその不吉な言葉と金を残して去っていった。 ﹁だ、大丈夫だよね⋮ ﹁誰か⋮いるんじゃないの⋮ お金に困ってる人が⋮ッ ﹂ !! ﹁や、山田は⋮ ﹂ コミックやDVD買う金に困っとらんわ 山田はどうなのよッ ﹂ ﹁僕は売れっ子同人作家様ですぞ ﹁じゃ、じゃ、じゃあ⋮ッ ﹂ ﹁よせ、金なんかの為に疑心暗鬼になるなど、醜い事この上ない⋮﹂ ﹁み、み、み、醜い ﹁もう⋮⋮そんな時間なんだ⋮⋮﹂ と、その時夜時間を知らせる放送が流れる。 ﹁起こさせないよ。絶対にね⋮⋮﹂ ゲームなんだからな﹂ ﹂ ﹂ ﹁心 配 な ど 無 用 だ。ど ち ら に せ よ、起 き る 時 は あ っ さ り 起 き る も ん だ。そ れ が ⋮ こ の !? ! !? 腐川は誰も彼も疑ってかかっているようだ。ほんと、ネガティブな奴だ。 !! ! ? ﹁わたくしはギャンブルで10億以上稼いだ身です。生活には不自由していませんわ﹂ ? ? ! ? ﹁俺に言わせれば端金だが、他の奴らはどうだろうな⋮⋮﹂ 新世紀銀河伝説再び!装甲勇者よ大地に立て!(非)日常編⑤ 214 ﹁解散する前に、もう一度言っておくけど⋮今晩から、私と苗木君の部屋は開けっ放しに しておくわ。アルターエゴに異変があった時の為にね⋮だけど、ドアが開いてるからっ て、無闇に私の部屋に近付かない方がいいわよ。私は返り討ちにしちゃいそうだし、苗 木君の部屋には⋮⋮⋮﹂ !! いいか 金の事なんか考えんじゃねーぞ 霧切はチラリと舞園を見る。どうやらいろいろ知られているようだ。 ﹂ ! ﹂ ﹁⋮とにかく、今日のところは部屋に帰んべ では解散 わかったら、解散だべ ﹁うむ ! ! ! ! 215 新世紀銀河伝説再び 編⑥ 装甲勇者よ大地に立て ︵非︶日常 ! ! 次の日、苗木は脱衣場に来ていた。 ﹁はぁはぁ⋮⋮⋮﹂ ﹂ ﹁⋮⋮なぁにをしてるのかな山田くん ﹁ひい ? 苗木の声に荒い息遣いでロッカーを覗き込んでいた山田がビクリッと肩をふるわせ !? ﹂ ﹁⋮⋮⋮ま、その前にセレスさんをどうにかすればいいか﹂ はない。 アルターエゴに執着するのは一人で済んだ。とはいえ結局利用できることに代わり 話し平穏な一日を過ごした苗木は不意に無表情になり考える。 石田︵笑︶の誕生もなく、何時ものように舞園と江ノ島の相手をして大和田や石丸と ﹁平和って素晴らしい﹂ 新世紀銀河伝説再び!装甲勇者よ大地に立て!(非)日常編⑥ 216 恐る恐る振り返る。 ⋮⋮﹂ ﹂ ﹁な・に・を・してるのかにゃ∼この豚は﹂ ﹁⋮⋮⋮も、もしかして怒ってます ﹁⋮⋮⋮舞園さん、江ノ島さん。皆を呼んできて﹂ ﹁はい﹂ ﹁うぃー⋮⋮﹂ ﹂ 肉を削ぎ落としていく拷問法は知ってる 苗木の言葉に舞園と江ノ島はその場から去っていった。 ﹁ねえ山田くん 今すぐ痩せさせてあげようか ﹂ ﹂ ﹁オタクってさ、太ってる人多いよね 太ってるとオタクになりやすいのかなぁ ﹁な、何故突然そのような話を ? ? 太るので││﹂ ﹁うん。別にそう言う意図で言ったんじゃないのはわかる ﹂ 時間が増えるのであって⋮⋮太ってるからオタクになるのではなくオタクになったら ﹁ご、誤解ですぞ苗木誠殿。オタクは必然的に外に出るより動かずアニメや漫画を見る ? ? ? ? ? ? なら、 ﹁な、なぁんだ、苗木誠殿でしたか⋮⋮脅かさないでください、てっきり霧切響子殿かと 217 ﹁あわ、あわわわ⋮⋮⋮﹂ 苗木はニッコリと中性的でかわいらしいとご近所に評判だった顔で笑みを作る。優 ﹂ しげなその笑みとは裏腹に山田の顔はみるみる青くなっていった。 ? ﹂ ﹂ ﹂ ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめん ﹁⋮⋮⋮苗木君、何をしたの なさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい ! ﹁と、とりあえずストップ ﹂ その僕が惚れたなんて⋮そん まさかとは思うけど、山田っち⋮⋮惚れたとか言わねーよな ﹂ ﹁ハハハ⋮魔界の冷酷殺人マシーンと言われた僕ですよ な⋮⋮え、ウソ⋮⋮じゃあ、これって恋 !? ? ? ! で、つい⋮⋮﹂ ﹁そ、それは⋮えっーと⋮彼女と話しているのが⋮その⋮思いのほか楽しくて⋮そ、それ ﹁⋮⋮山田君。私は昨日脱衣場で、アルターエゴを勝手に使わないように言ったはずよ﹂ に吹く風、素知らぬ顔でやってきた霧切達を出迎えた。 全力の謝罪をする山田を見て霧切は若干引いたような顔で苗木を見るが苗木はどこ ﹁こういう事はしないようにって、叱っただけだよ ? ? !! ﹁ひいーー ﹁呼ばれて来たけど⋮⋮山田君。また貴方なの 新世紀銀河伝説再び!装甲勇者よ大地に立て!(非)日常編⑥ 218 娘さんを僕にください と短い悲鳴を上げた。 ﹂ いろんな意 山田はハッとした顔になり不二咲に勢いよく振り返る。その鬼気迫った表情に不二 咲はヒッ 山田クンに僕の半身であり息子であるアルターエゴは渡せない ﹁お義母さん ﹂ ﹁いやだ 味で ! ! ! ! ﹂ ? ! ⋮⋮⋮⋮ ﹁訳ねーだろうがぁぁぁぁぁ ﹂ そ う、衣 食 住 も 保 証 さ れ た こ の 環 境 に お い て、彼 女 は 文 句 な ど あ る は ず も な い 彼女は常に、この学園で送る生活を受け入れるよう、皆に言いつけてきた。 視点は代わりセレスティア・ルーデンベルク。 すごすごと引き返していく山田を見送った後、苗木達も部屋へと帰っていった。 ﹁策は考えてある⋮大丈夫よ⋮⋮﹂ ﹁忠告だけで大丈夫なのか かもしれないわ、行きましょう﹂ ﹁⋮⋮はあ、とにかく山田君。もうこんな事はしないでね。皆も、長居すると感づかれる ついでに山田、お義父さんだと思うぞ。不二咲はその見た目でも男だから。 ! ! 219 唐突に叫ぶセレス。そこに人が居たり、或いはその声が誰かに聞かれたりしたら監禁 生活にとうとう精神がやられたのかと思うところだが生憎、そこは彼女の部屋で、防音 もしっかりしているため彼女の声が誰かに聞かれることはない。 100億円⋮⋮その金があれば、長年の夢を叶えられる。それを手に入れここから出 るためなら人だって殺そう。 いる。となると苗木 苗木は脱衣場に集まった面々を見回しながら思う。 始まったか。 命を賭けた賭事は何度もやった。直接手を下すか下さないかの違いでしかない。 ようですし﹂ ﹁少々危険な賭ですが、これにかけてみますか⋮⋮幸い、彼は山田君から恐れられている 舞園や江ノ島なら匂いで気づきそうだが匂いなら誤魔かせる。 ? 自分でも勝てそうなのは苗木と不二咲。しかし不二咲は常に石丸や大和田がそばに 操りやすそうなのは山田。 ﹁⋮⋮問題は、誰をどう使うか⋮⋮ですわね﹂ 新世紀銀河伝説再び!装甲勇者よ大地に立て!(非)日常編⑥ 220 アルターエゴがなくなった。見知らぬ人間や山田が近づいたら悲鳴を上げるように 言っておいたにも関わらずだ。 ﹂ ? ﹂ ? ﹂ !? ﹁十神ぃ⋮⋮いくら何でも聞き逃せねーぞ﹂ ﹁苗木が内通者なわけないじゃん﹂ ﹁苗木君を疑っているんですか ﹁当然だ。お前はただ運で選ばれた凡人のくせに有能すぎる﹂ ﹁ボクはいろんな人にその可能性を疑われてるけどね﹂ スムーズに進める為に、黒幕から送り込まれた内通者が⋮﹂ ﹁前から思っていたんだ。俺達の中には内通者がいるんじゃないかとな⋮このゲームを ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ 奪った。そうは考えられないか ﹁こ の 中 に 黒 幕 側 の 人 間 ⋮ つ ま り は、黒 幕 の 内 通 者 が い て ⋮ そ い つ が ア ル タ ー エ ゴ を ﹁⋮⋮え 最初から大神だけを見ていた苗木以外は気づいてない。 十神の言葉を肯定するように苗木が呟くと一瞬、大神の肩が揺れる。本当に一瞬で、 ﹁だろうね⋮⋮例えば、黒幕の内通者とか⋮⋮⋮﹂ ﹁簡単だ、黒幕や山田以外のここにいる誰かが犯人なんだ﹂ 221 ﹁その通りだ それはダメだよぉ⋮⋮﹂ 苗木くんが殺し合いをさせたいモノクマの内通者ならあの時││﹂ ﹁い、石丸クン ! 十神の言葉に何名かが反論したが十神は興味なさそうに聞き流す。 ﹁⋮⋮む﹂ ! と、その時夜時間を知らせる放送が全員の耳にはいる。 仕方なく、探索は明日からになり各々が部屋に戻った。 セレスはうまく行っているとほくそ笑む。 後は山田をうまく拐かして⋮⋮⋮。 ﹁やあセレスさん。こんな時間に、夜時間の出歩きを禁止した本人がどこにいくの ? だった。 ﹁な、何かご用ですの ﹂ ? ? ﹁⋮⋮⋮⋮⋮セレスさん、ボクとゲームしない モノクマに道具を用意してもらったし 扉を開け初めて顔を合わせたのは目的の山田ではなく、笑顔で声をかけてきた苗木 ﹁⋮⋮⋮苗木⋮⋮君⋮⋮⋮﹂ ﹂ ﹁相手が何者であれ、この場で壊してないって事は壊す気はなかったって考えようよ﹂ 新世紀銀河伝説再び!装甲勇者よ大地に立て!(非)日常編⑥ 222 さ﹂ 苗木はそう言って裏に白と黒の半々で色を塗られ、黒の部分にモノクマの左目のマー クがついたトランプのデッキを二組見せる。 ﹁上等だよこのチビがぁぁぁぁ ﹂ ﹁ああ、ごめん。負けるのが怖かった ! ﹂ ﹁お断りしますわ。わたくしは小腹がすいたので倉庫に向かおうとしただけですの﹂ 223 ? 新世紀銀河伝説再び 編⑦ 装甲勇者よ大地に立て ︵非︶日常 ! 柄なのだから。 ﹂ ? ギャンブラーのわたくしに、運だけの苗木君が運と記憶力の勝負を ﹂ ? ﹁神経衰弱﹂ ﹁⋮⋮⋮は ﹁そうだけど ? ﹁正確には命も視野に入れた⋮⋮かな。勝者は敗者に何でも命令できる﹂ た。これにはセレスもポーカーフェイスを崩し目を見開いていた。 セレスが退屈そうに言うと、苗木は何でもないことかのように命を賭けると言いだし ﹁じゃあ命を賭けよう﹂ ﹁話になりませんわ。その下らない勝負に見合った報酬があるなら別ですけど⋮⋮﹂ ? ﹂ まあ、余計な時間を食わなくてすんだと前向きに考えよう。前向きなのが唯一の取り のセリフがまさかの一つだけで終わってしまった。 想像以上に簡単に勝負に乗ってくれたセレス。おかげでせっかく考えていた挑発用 ! ﹁それで、どういった勝負をなさいますの 新世紀銀河伝説再び!装甲勇者よ大地に立て!(非)日常編⑦ 224 ﹁⋮⋮⋮ですが、敗者が勝者を殺してクロになれば関係ないことですわ﹂ ﹁それもそっか⋮⋮⋮お∼い、モノクマ﹂ ﹁はいはいなんでしょう﹂ セレスの言葉に同意した苗木は顎に手を当て数秒考えるとモノクマを呼ぶ。モノク ﹂ マは何処からともなく現れそれを見たセレスが飼い慣らされてると呟いた。 ﹂ ﹁ボクたち二人に新ルールをつけてくれない ﹁はにゃ るって⋮⋮﹂ ﹂ ﹁⋮⋮⋮おもしろそうだからいいよ∼ ﹁だってさ ! ﹁いやいや、ボクたちは超高校級だよ 普通の神経衰弱なわけないよ⋮⋮⋮﹂ 苗木はそう言って、二つのトランプデッキからカードを無造作に置く。104枚の ? ﹁そんなもの、知ってますわ﹂ ﹁それじゃあルールについて説明するね﹂ 負を受けることにした。 モノクマの了承に苗木が微笑むとセレスは胡散臭げに苗木を見たが、ため息を吐き勝 ? ﹂ ﹁こ の 勝 負 で 勝 っ た 者 が 出 し た 命 令 を 破 っ た 時 点 で、敗 者 は 問 答 無 用 で お 仕 置 き に な ? ? 225 カードが並べられたテーブルと苗木を交互にみる。ルールを説明しろと促しているの だろう。 ﹁じゃ、よく聞いてね。ちょっと複雑で、馬鹿にはわかんねーと思うから﹂ いた。これが超高校級の幸運なのだろうか ? ハートの8を引く時も、クローバーの8の2枚目を引く時も苗木は一発で引き当てて もう一枚のクローバーの8を引いた苗木を見てセレスは薄ら寒さを感じる。 ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ には⋮⋮⋮もう一つクローバーの8を取るんだ﹂ ﹁普通の神経衰弱ならこれで手に入れるけど、これは得点にならない。得点にするため た。苗木はさらにもう一枚とるとそれはハートの8。 苗木は無造作に一枚のカードを取る。カードをひっくり返すとクローバーの8だっ ②カードを手に入れるには数とマークで揃える⋮⋮⋮例えば││﹂ ﹁①この神経衰弱にはトランプデッキを二つ使う。 てる時点で挑発に乗っているがセレスはあえてその部分は忘れることにした。 だが、我慢した。賭事において相手の挑発に乗るのは馬鹿のすることだ。ゲームに出 ビキリとセレスの額に青筋が浮かぶ。 ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ 新世紀銀河伝説再び!装甲勇者よ大地に立て!(非)日常編⑦ 226 ﹁③得点は引いたカードの数ではなく、カード自体の数。 ④エースは14点。つまりは合計416点になるわけだね。 ⑤ジョーカーは一枚だけなら残ったカードの位置をシャッフル。 ﹂ ⑥ジョーカー二枚で手持ちのカードをシャッフル。二人だけだから入れ替えるわけ だよ。 ⑦イカサマはバレた時点でアウト。 ﹂ ⋮⋮ そ れ じ ゃ あ ジ ャ ッ ジ は ボ ク が や り ま し ょ ー う ⑧連続で引けるのは五回まで。これまでで質問は ﹁⋮⋮⋮ありませんわ﹂ ﹁ル ー ル を 守 っ て 楽 し く ゲ ー ム あ、ところでお二人は相手に何を命令するの ! ? ます﹂ !? 敵を殺し、服従の姿勢を示せと言えば跪いて足をなめる。そういう、本物の奴隷になれ ﹁そういう意味ではありませんわ。わたくしが殺せと言えばその命と引き替えにしても ﹁奴隷 はあはあ、そんな年からハードなプレイを⋮⋮﹂ ﹁わたくしは別に内緒にするような事ではありません。苗木君には奴隷になってもらい ﹁ボクは内緒﹂ 元気に手を挙げたモノクマはふと気になったのか首を傾げながら二人に尋ねてくる。 ? ! 227 と言っているのです﹂ ﹁いいよ﹂ 苗木のあっさりとした言葉にセレスはまた動揺していた。 勝つ自信があるのか、自分の命などどうとも思っていないのか⋮⋮⋮。 レディファーストでセレスさんから引いてね∼﹂ ! ﹁⋮⋮⋮こちら、でしょうか ﹂ ! ﹂ ? ﹂ 苗木、ポイント11。先制点を取られたがまだ勝負は始まったばかりだ。 ﹁っ ﹁確か、こっちだっけ 苗木がめくったカードはハートのジャック。 ﹁じゃ、ボクの番だね﹂ ジャックはジャックだったがクローバーのジャックだった。 ? モノクマが腹立たしい。 セレスは一枚のカードをめくる。ハートのジャックだった。ジャックの格好をした ﹁では遠慮なく⋮⋮﹂ ﹁それじゃあ 新世紀銀河伝説再び!装甲勇者よ大地に立て!(非)日常編⑦ 228 3、7 2、5 1、2 2 1、ジャック 3、2 2 3、10 2、9 × 苗木はそう言ってエースとキングを引く。 ﹁やだなセレスさん、まだ終わってないよ﹂ +0=156 +14+13=220。 ﹁往生際が悪いですわね﹂ 残りカード6枚。 ﹂ 1、9 × 1、10 × ﹁苗木君、足をなめるときはキチンと歯磨きをしてからにしてくださいね 4、3 2、ジャック 0、3 3、クイーン 2、4 2、4 0、クイーン × 2、キング 0、6 1、5 1、キング 4、6 × 一時間半後。 2、8 1、7 × セレスの持ち札エース 合計点203点。 2、8 苗木の持ち札エース 合計点156点。 ﹁⋮⋮杞憂でしたわね﹂ 残りのカード10枚。 × × × × すでに半分近くの得点を手に入れている。 × × × × × × × × × × × × × × × × ? 229 ﹂ ﹁だってまだ、ジョーカーは出てないよ ﹁ッ ﹂ ? ⋮⋮幸運 ? もし苗木がここでジョーカーを引けば⋮⋮いやいや、待て。そんな都合のいい幸運 その言葉に動揺し、セレスは6とクイーンを引く。再び苗木のターンだ。 !? ﹂ !? も。 ﹁⋮⋮苗木君、提案があります﹂ ﹁断る﹂ ﹁この勝負引き分けって事にしませんか んから﹂ ? ﹁できる範囲で何でもしますから許してください、舐められるところは全部舐めますか ﹁嫌だ﹂ もう毎朝ミルクティーを作れなんて言いませ 苗木の命令を一つ聞かなくてはいけない。それが自分と同じ奴隷になれというもので 苗木がジョーカーを引く確率は5分の1、その確率でセレスは負ける。負けたら⋮⋮ 苗木はタイミングよくジョーカーを引きセレスは冷や汗を流す。 ﹁な ﹁お、早速ジョーカー⋮⋮﹂ 新世紀銀河伝説再び!装甲勇者よ大地に立て!(非)日常編⑦ 230 ら許してください﹂ ラスト⋮⋮ジョーカーだった。 そう言って苗木が引いた2枚目のカードは、ゲラゲラ大口を開けて笑うモノクマのイ ⋮⋮﹂ ﹁ま あ ボ ク の 命 令 は そ ん な に 身 構 え る も の じ ゃ な い よ。人 を 殺 す な、そ れ だ け だ か ら みにしている。 顔を青くするセレスと対照的にモノクマはワックワクドッキドキと先の展開を楽し ﹁ボクは悪くない﹂ ﹁堪忍してください⋮⋮わたくしが悪かったです﹂ ﹁もう遅い﹂ 231 新世紀銀河伝説再び 編⑧ 装甲勇者よ大地に立て ︵非︶日常 ! ! ふふ。こんな所で出会うなんて運命感じちゃいますね ﹂ 苗木はセレスと別れ自室に戻る途中、苗木の部屋に向かっていた舞園と出くわす。 ! ? あ 別に苗木君の恋愛についてどうこう言うつも ! ﹁苗木君⋮⋮⋮﹂ ﹁大丈夫だよ。ボクは舞園さんを捨てたりしない﹂ いない。苗木の言葉によっては苗木と会っていた女を刺しに行くつもりだろう。 これでその手に持った包丁がなければかわいいのだが。それと殺気は苗木に向いて 拗ねたように頬を膨らませる舞園。 との関係を切りたいんじゃないかと勘ぐっちゃいます⋮⋮﹂ りはありませんし権利も無いのはわかってます⋮⋮でも、その⋮⋮内緒で行かれると私 ﹁苗木君⋮⋮女性と会ってましたね ? と、不意に舞園は鼻をヒクヒク動かし眉をしかめる。 こんな所も何も自分の部屋の前だしそもそも学園に閉じこめられているのだが。 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁あ、苗木君 新世紀銀河伝説再び!装甲勇者よ大地に立て!(非)日常編⑧ 232 ﹂ というか今関係を切ったら話したことがあると言うだけで標的にしそうだし。 まだ殺して良い人数が定められていない状況で⋮⋮⋮。 ﹁今日はたぶん、お客さんが来るから舞園さんは部屋に戻ってくれるかな ﹁⋮⋮はい﹂ 転がる。 ? ﹂ ? ﹁とりあえずセレスさんが朝までこなかったらモノクマの勝ち、夜時間の間に来たらボ 苗木の言葉にモノクマが笑うと苗木は寝返りを打つ。 ﹁うぷぷぷ⋮⋮それを言われちゃあねえ⋮⋮﹂ ﹁ルールは破ってないよ ﹁にしても苗木くん。イカサマするなんてやるねえ﹂ モノクマはテトテト歩きながらベッドの上に登る。 苗木が誰もいない部屋で呟くとモノクマが現れる。 ﹁ボクは気づかないに賭けてみようかな﹂ ﹁ねえモノクマ、何時に気づくと思う ﹂ 苗木も今はアルターエゴが居ないので扉を閉め、しかし鍵を開けた状態でベッドに寝 戻った。 舞 園 は 大 人 し く 戻 る よ う な の で 頭 を 撫 で て や る と ス キ ッ プ し な が ら 自 分 の 部 屋 に ? 233 クの勝ちでどうかな ﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮その賭けに勝った場合は ﹂ ﹂ ﹂ 後、100億円は燃やしてくれない ﹁⋮⋮⋮殺人の邪魔をしない⋮⋮で、どうかな ﹁次の階を開いてくれる ﹁じゃ、来るまで寝て待つとしようか﹂ ﹂ 弱など集中力を使うゲームをしたのだ、眠くなって当然だろう。 好きなの ﹂ ? ﹁モノクマ、来たら起こして﹂ ﹁⋮⋮⋮前々から思ってたんだけどさ、キミってボクの事嫌いなの ﹁⋮⋮⋮殺したいぐらい大好きだよ﹂ 苗木はそう言ってすぅすぅと規則正しい寝息を立て始めた。 仮にも黒幕が操るロボットの目の前でだ⋮⋮⋮。 ﹁⋮⋮⋮殺したいぐらい大好きだよ⋮⋮か﹂ ? 苗木はふぁ、と欠伸をして目をこする。元々普段なら寝てる時間で、なおかつ神経衰 ? ? ? ? ? ﹁⋮⋮⋮ま、良いでしょう﹂ ? ﹁苗木君が勝ったら 新世紀銀河伝説再び!装甲勇者よ大地に立て!(非)日常編⑧ 234 黒幕の少女はモノクマに内蔵されたカメラから送られる苗木の寝顔を見ながら苗木 の言葉を復唱する。 最初の動機で起こるはずだった殺人を止め、見せしめに殺されるはずの少女を助け、 嫉妬から殺されるはずの少年を庇い、今回も唯一殺人を行いそうだった少女に先手を打 ち、さらには動機まで消せと要求してきた。 こちらの計画を端から端まで潰す気らしい。 それは随分と⋮⋮⋮絶望的な⋮⋮。二年だぞ、二年間も準備したこの殺し合いを潰す ? 全部全部全部全部全部全部全部全部全部ぜぇんぶあんたが変えてくれたんだよぉ、苗 ﹁全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部 る。その時生き残っている数も⋮⋮そう、そのはずだった。 正直言って、この殺し合い生活が続けばいずれ自分の正体がバレることも予測してい 彼女にとって唯一未知なのは絶望だった。 予想できない未来は何時以来だろう。絶望的に有能で未来予知の如き分析力を持つ 興奮したようにビクビク身体を震わせ幼子のように涎を垂らす。 少女は自分の身体を抱き締めながら先に待つ未知を想像し、想像できない先に絶望し ﹁⋮⋮想像しただけで⋮⋮たまんなぁい⋮⋮﹂ 235 木ぃ⋮⋮﹂ 未 知 ⋮⋮ 人 は 未 知 に 恐 怖 す る と い う。だ が 彼 女 の 中 に 恐 怖 な ど と 言 う 感 情 は な い。 あるのは絶望。 絶望的なまでに絶望を愛する彼女は今まさに絶望を与えている苗木に絶望的なまで 溺愛していた。絶望をくれる彼が愛おしい。 絶望を愛する彼女だからこそ、無償の愛を与えてくれていた彼より殺意という愛を、 死という終わりを与えようとしてる彼の方が愛おしい。 少女が来たのは一面モニターだらけの部屋。そこに映る、ゴスロリの少女の姿を確認 と、そこで少女は突然無表情になりモノクマ操作室から出る。 ﹁⋮⋮⋮私もあんたのこと⋮⋮殺したいぐらい愛してる﹂ しく、悍ましい笑みを浮かべる。 の相手と結ばれた新婦のように幸せそうな、殺しを楽しむ異常者のような、初々しく、美 未来を想像しながらうっとりと、まるで初めて恋を知ったばかりのように純真で、運命 き続ける苗木が与える未知を想像しながら、そんな彼が絶望するという想像も出来ない 絶望に見初められたことに気づかず、あるいは気づいても変わらず先を信じ希望を抱 少女は再び画面を見つめる。 ﹁⋮⋮私も⋮⋮﹂ 新世紀銀河伝説再び!装甲勇者よ大地に立て!(非)日常編⑧ 236 して忌々しそうに舌打ちする。 賭は彼の勝ちのようだ。いや、思い返せば彼も最初は気づけず後から考えれば違和感 に気づける手段を取っていた。まあそれは彼が全員の人となりを覚えていてこその話 だが⋮⋮。 少しでも彼女に、それこそ道端の変わった石程度の興味を持ってれば予測できた、勝 ﹁他人に興味持たなかったってのも考え物ね﹂ てた賭だがまあどうでも良い。約束通り苗木を起こすとしよう。 再び彼の寝顔が待つ直ぐ隣の部屋に向かうだけなのに彼女はどこか楽しそうだった。 アタシが ﹂ 待ち望んでいる 期待しているのだ、彼が自分の計画を無茶苦茶にしてくれるのを⋮⋮⋮ 期待 ? ? それは希望を持つ者の特権のはず。希望 ﹁⋮⋮は ? ? 彼女はそんな自分に絶望した。 ? 237 装甲勇者よ大地に立て ︵非︶日常 4で52。 新世紀銀河伝説再び 編⑨ トランプの数は13 ! ! 二つのデッキで104枚。ジョーカーを含めると106枚⋮⋮あの時流し目で確認 × したため正確ではないが104枚だったはず。 ﹂ ! ﹂ ! ﹂ ? ﹁おい 起きろよゴラァ ! ﹂ 苗木はむにゃむにゃと呻きながら全く起きる気配がない。 よ﹂ ﹁あ、セレスさん。聞いてよ∼、苗木くんたら起こすように頼んでおいて起きないんだ ﹁⋮⋮⋮何をしてますの シーツを引き寄せる苗木が居た。 セ レ ス が 苗 木 の 部 屋 に 入 る と 苗 木 を 起 こ そ う と し て い る モ ノ ク マ に 鬱 陶 し そ う に ﹁ほらほら、さっさと起きる ﹁⋮⋮ふぁ⋮⋮むにゃむにゃ⋮あと三年⋮⋮﹂ ﹁苗木君 新世紀銀河伝説再び!装甲勇者よ大地に立て!(非)日常編⑨ 238 ! ﹁⋮⋮⋮るさいな⋮⋮⋮﹂ ﹂ ﹂ セレスも苗木を起こそうとするが苗木はシーツで頭を隠す。 起きる気がないのだろうか ﹁良いからさっさと│││ ﹁⋮⋮うー⋮⋮ヤダ⋮⋮﹂ ﹁さっさと起きれやアンテナチビ ? 木に床に押し倒された。 ﹂ 文句を言おうとしたセレスだったがダン ﹁な、なにを││ひっ さったナイフを見て顔を青くする。 ! !? ﹁⋮⋮っ﹂ ﹁ボクさあ、今とても眠いんだ⋮⋮﹂ 不思議と、セレスの心臓が早鐘をうった。 苗木は気怠げに、そして冷たい瞳でセレスを見下ろす⋮⋮。 ﹁ねえ⋮⋮﹂ と頬をかすめかねない位置で床に突き刺 もシーツが抵抗無く引けたためバランスを崩し倒れた。慌てて体制を直すより早く、苗 無理矢理起こそうとするセレスはシーツを引っ張りモノクマが転げ落ちる。セレス !? ! 239 苗木はそう言いながらゆっくりとセレスの喉を指で撫でる。そこにナイフを通らせ たら間違いなくセレスが死ぬことになる動脈や気道を皮膚の上から撫でられゾクゾク とくすぐったいようなもどかしさを感じた。 吊り橋効果、恐怖による動悸を興奮による動悸だと勘違いすることを差す。 セレスが高鳴る胸を押さえているとモノクマがひょっこり現れる。 ﹁⋮⋮普通に吊り橋的なあれだと思うけど、あるいはセレスさんが潜在的なMか⋮⋮﹂ ﹁な、なんなんですのこの胸の高鳴りは⋮⋮﹂ ら自室に戻った。 息を立て始める。セレスはソッと苗木をおろすと赤くなった頬を隠すように抑えなが セレスが返事をすると苗木は糸の切れた操り人形のようにセレスの上で崩れ再び寝 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁⋮は⋮⋮ひゃ、ひゃい⋮⋮っ﹂ 力が抜けていった。 眠りを邪魔され、気分が悪いのか底冷えするような瞳に見つめられセレスの身体から ﹁黙れ﹂ 新世紀銀河伝説再び!装甲勇者よ大地に立て!(非)日常編⑨ 240 そうだ思い出した おいクソグマ ! ﹂ ? さっきの勝負は無効だよ ﹁モノクマさん、レディの部屋に無断で現れるのはどうかと思いますよ ああ ! ﹁レディは普通男の部屋に勝手に入らないと思うけどね﹂ ﹂ ﹁男 の ⋮⋮ 部 屋 なぁ ? ﹂ ﹂ モノクマはその言葉にコテリと首を傾げた。 ﹁何で ﹂ ﹁何でって⋮⋮ルール違反してただろうが ﹁ルール違反 ﹂ ? ﹁うぷぷ。気づいた 勝負の途中で気づいたら別だけど勝敗が決したい そう、このルールはイカサマを禁止するルールではなくイカサマ を牽制するだけのルール何だよね ! ? まさか⋮⋮⋮。 何を言っているんだこいつ⋮⋮ルールにキチンとイカサマは禁止と⋮⋮⋮いやまて、 モノクマの言葉に今度はポカンと固まるセレス。 ﹁⋮⋮⋮は ﹁だから、苗木くんが何時そのルールを破ったのさ⋮⋮﹂ ! ? !? ? ﹁⑦イカサマはバレた時点でアウトじゃねえのか ﹂ モノクマの言葉に自分が何をしに苗木の部屋に向かったか思い出し豹変して叫ぶ。 !? ! 241 ﹂ ま指摘しても遅いんだよ ﹁ぐっ ﹂ ! ﹁ん ﹂ ﹂ ﹂ ? ﹁⋮⋮⋮苗木君は、内通者ですか ? ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ? る。 イカサマに気付けない方が悪いというこのゲームにおいてそれは致命的なミスであ イカサマを見逃した。 苗木を素人となめてかかり、初めからジョーカーを抜いているはずがないと思い込み だがセレスはゲーム中、それに気付けなかった。 たジョーカーと。 ようするに苗木はすり替えていたのだ。最後、カードを捲るふりをして隠し持ってい がら仕舞っている時に枚数が足りない事に気づいた。 揃わなかったのだ。ギャンブラーに取ってトランプは商売道具なので数をそろえな の片づけをしていた時である。 セレスが苗木のイカサマに気づいたのは眠いと言って帰った苗木を見送りトランプ !? ﹁⋮⋮一つ、聞いて良いですか 新世紀銀河伝説再び!装甲勇者よ大地に立て!(非)日常編⑨ 242 セレスの単刀直入の質問にモノクマは俯きプルプル震え始める。 ﹂ それは動揺しているようにも、怒っているようにも⋮⋮ ﹁うぷぷ⋮⋮⋮アーハッハッハッハッハッハ 笑っているようにも見えた。 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁でも実際そうじゃない 苗木君の殺人がバレないような言い方﹂ ? 苗木くん、君たちの行動先読みするの得意そうだし⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮それにしても大袈裟ではありません それは数回も殺し合いが起きると言う事だから。 の待ち望んでいることでありながら、しかし先延ばしになってほしいことなのだろう。 本当につまらそうだ。クロになったら卒業まで行くという言葉は、誰かの卒業は黒幕 モノクマは何処にあったのか小石を蹴る。 ていうか苗木君がクロになったらたぶん卒業まで行きそうなんだよねぇ﹂ そうだけどまだ一度も殺し合いが起きてない今内通者にするのはもったいない⋮⋮⋮ ワ心の中に侵入してボクの下までやってきて、確実にボクを殺す⋮⋮それはそれで面白 ﹁残念だけど⋮⋮⋮非常に残念だけど違うんだよね。苗木くんを内通者にしたらジワジ カーカードのように笑っていた。 実際モノクマは笑っていた。我慢が決壊したのか腹を抱えて大口を開けて、ジョー ! 243 ? ﹂だ⋮⋮ ﹂ その通りだ。苗木は金に困っている葉隠ではなくここに残り適応しようと言い続け ﹂ !? ? ! ていたセレスの下へやってきて釘を刺したのだ。 ⋮⋮⋮はっ ﹁オマエの次の台詞は﹁彼には未来でも見えているのでしょうか ? モノクマはケラケラ楽しそうに笑い来た時と同様、唐突に姿を消した。 ﹁彼には未来でも見えているのでしょうか 新世紀銀河伝説再び!装甲勇者よ大地に立て!(非)日常編⑨ 244 新世紀銀河伝説再び 編⑩ 何時も朝は一緒だと思ったのだけど﹂ もっとも首を傾げたいのは霧切も一緒なのだが⋮⋮⋮。 ﹁苗木君は ﹄ 装甲勇者よ大地に立て ︵非︶日常 ﹂ 高級料理をプレゼントするよ 朝の放送の直ぐ後、モノクマからの呼び出しがかかる。 ﹃えー、皆さん体育館に集まってくださーい 霧切は不審に思いながらも仕方なく体育館に向かう。 ﹁あ、霧切さん。おはようございます⋮⋮⋮どうしたんですか ﹁⋮⋮あら、舞園さん⋮⋮⋮﹂ ! しに行ったんですけどいなくって﹂ ? ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁いえ、苗木君が寝た頃を見計らってお邪魔させてもらっているだけです﹂ ﹁待って⋮⋮あなた、普段は一緒に寝てるの ﹂ ﹁普段はそうなんですけど、昨日の夜に自室で眠るように言われてしまって⋮⋮朝起こ ? ! ! 舞園と鉢合わせた霧切が周囲を見回すと舞園が不思議そうに首を傾げた。 ? ! 245 結 局 話 は 長 続 き せ ず 無 言 で 体 育 館 に 向 か う 二 人。ま だ 誰 か が 来 て い る 様 子 は 無 い。 二人が一番乗りのようだ⋮⋮⋮と、思い扉を開けると先客がいた。 焚き火を棒でつつく苗木とモノクマが。 何してんの ﹂ 室内で火遊びとは何事だ ﹁な、苗木⋮⋮ ﹁そうだぞ 火事になったらどうする ﹂ !? ﹁とうとう地の文にまで干渉し始めたかこのクマは⋮⋮﹂ ? 苗木は焚き火を弄りながら呆れたように呟く。 ﹂ ﹁おおい、んなことよりうまい飯食わせてくれる話はどうなったんだ ﹁あたし的にはモノクマの話でご飯三杯はいけるけどね ! ﹂ ﹁⋮⋮うぷぷ。大和田くんが石丸くんに突っ込みだって。萌えますな⋮﹂ 込みをして大和田が呆れたように石丸に突っ込み。 朝日奈はその異様な光景に霧切と舞園も思っていたこと口に出し石丸はズレた突っ ! ? ﹁いやそうじゃねーだろ⋮⋮﹂ ! ? 霧切が唖然と、舞園さえポカンとしていると他の面々をようやくやってきた。 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ 新世紀銀河伝説再び!装甲勇者よ大地に立て!(非)日常編⑩ 246 ﹂ 桑田は飯を食いに来たつもりのようだ。それと腐川は現在ジェノサイダーになって いた。 ﹁⋮⋮⋮これだ ﹁熱っ ﹂ 向かっていった。 と、不意に苗木は叫びながら棒を振り上げる。焚き火の中から何かが飛び出し桑田に ! だ⋮⋮。 ﹂ なんとか落とさずキャッチした桑田は飛んできた物体を見る。新聞でくるまれた何か 野球選手の本能かつい受け止めてしまった物体の思わぬ熱さに落としそうになるが !? ﹂ ? ﹂ ? でも無駄にするのは大変よくない よって、焼 ! ⋮⋮。 ﹁お金でも動かないならいらないよね ? モノクマの言葉に全員の視線が焚き火に集まる。燃料は木の葉ではなく、お札だった ﹁⋮⋮⋮⋮⋮へ ﹁やだなぁ、ちゃんと高級料理だよ⋮⋮何せこれ、100億円で焼いた芋だし﹂ ﹁高級料理はどうなったべ はたしてそれは⋮⋮新聞紙をまくると中から紫の芋が出てきた。 ﹁⋮⋮⋮⋮焼き芋 ? 247 き芋をすることにしました ﹂ ﹁焼き芋ねぇ⋮⋮何で焼いたって一緒だろ ﹂ ? ! うめえ ﹂ 桑田はぼやきながら焼き芋を二つに割った。 ! ! ﹂ ? 祖父の実家の御近所さんには焼き芋のマコちゃんっ ! ﹁ダメです あげません ﹂ ! ﹁へ ⋮⋮⋮熱っぁ ﹂ !? それらは全て見事に皆の手元に向かっていっていたのだがセレスだけは位置的に難 ? ﹁あ⋮⋮﹂ の芋を焚き火の中から出していく。 葉隠が物欲しそうな顔をしたがモノクマによって拒否された。苗木は黙々と全員分 ! ﹁あ、あのよ⋮⋮捨てるんなら少しぐらい﹂ 苗木は新しいお札を焚き火に放り込む。まるでバブル時代の成金だ。 ﹁⋮⋮⋮何で知ってんの⋮⋮⋮火力が弱くなってきたな﹂ て呼ばれてたらしいよ いる苗木くんにお願いしました ﹁うぷぷぷ。焼き加減は秋に祖父の家で焼き芋をすると言う極めて普通の人生を歩んで ﹁見事な黄金色だ⋮⋮﹂ ﹁甘 新世紀銀河伝説再び!装甲勇者よ大地に立て!(非)日常編⑩ 248 大丈夫 ﹂ しかったのか顔面に焼き芋が直撃してしまう。 ﹁ご、ごめん !? 冷やしてきた方が⋮⋮﹂ ? ちなみに理由としては山田が何らかの方法でアルターエゴを取っていかないか不安 来ない以上隠しておく意味がなくなったからだろう。 朝食代わりの焼き芋会の後、セレスがアルターエゴの場所を全員に伝えた。殺しが出 ﹁ボクは絶望なんてしないよ﹂ 頼が大きいほど大きな物になるから⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮あっそ、精々今のうちに仲間を信頼しておくんだね、裏切られた時の絶望は信 ﹁あつつ⋮⋮⋮だから何度も言ってるじゃん。起こさせない、絶対にね﹂ 階が解放されるよ⋮⋮⋮⋮はぁ、何時になったら殺人が起きるのかなぁ﹂ ﹁⋮はふはふ⋮⋮⋮あ、そうそう。結局この動機でも殺人起きなかったからまた新しい ﹁ご心配には及びませんわ⋮⋮﹂ ﹁セレスちゃん顔赤いよ ﹁⋮⋮な、なんとか⋮⋮はふぅ⋮﹂ ! 249 で隠したら思ったより大事になり言い出すタイミングを逃したと言っておいたら全員 納得していた⋮⋮⋮⋮山田ェ。まあ、前科があるから仕方ないか⋮⋮⋮。 そしてその日の夜苗木は体育館前のホールに来ていた。 すでに始まっていることを確認すると体育館前のホールから去る。 アルターエゴ発見後、その日はそのままお流れとなった。まだ四階の探索はしていな い。だからこそ、今だ。 苗木は学園長室に来ると徐にドアノブを蹴る。 さすがに一発では壊れないので何度も何度も何度もガンガンとドアノブを蹴り数分 後にドアノブが外れ扉が力なく開く。 ﹁お前どういうつもり⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ! ﹁我は決めたのだ⋮もう引かぬ、もう媚びぬ、もう省みぬと⋮⋮﹂ ﹁応えろよ。どういうつもりだよ 約束が違うじゃないか﹂ た。おかげで苗木は何の危険もなく目的の物を見つけられた。 再び体育館前のホールに来るとモノクマと大神の戦いが最終局面に差し掛かってい 苗木は目的の物を見つけると学園長室から出て行く。 ﹁⋮⋮⋮さて⋮⋮鍵と⋮⋮78期生のプロフィールは⋮⋮あったあった﹂ 新世紀銀河伝説再び!装甲勇者よ大地に立て!(非)日常編⑩ 250 ﹁ふーんあっそ、でも忘れた訳じゃ無いよね ﹂ ! 人質のこと﹂ ? 苗木の言葉は誰に聞かれることもなくモノクマと大神の争いの音にかき消された。 ﹁そもそも道場自体潰れてるんだけどね⋮⋮⋮﹂ うちに殺せなくなるという板挟み。 とはいえ彼女も大変なのだろう。道場を守る義務があり、しかしここで過ごしている 人質が居るのは全員同じ事なのだが⋮⋮。 ﹁ッ 251 閑話③ ﹁⋮⋮絶望病 ﹂ ﹂ ? ﹂ ? ﹁⋮⋮な、何してるの不二咲くん﹂ る姿が目に映った。何かというか明らかに女子のスカートの中を撮ろうとしている。 苗木がそう言って不二咲に話しかけると、不二咲が床に伏しながら何かを激写してい ﹁⋮⋮精神に異常か⋮⋮想像できない⋮⋮ね 命の危険は無いらしいが手洗いうがいをするように言い残し去っていった。 病にかかったためらしい。その代わりとして雪染が連絡に来たらしい。 苗木達は雪染の言葉にとりあえず頷いておいた。何でも担任がこないのは、その絶望 常をきたすみたい。皆も気をつけてね ﹁そうなんだよね∼⋮⋮昔、超高校級の医者が偶然作っちゃった病気で、発熱と精神の異 ? がでている。 いろいろとおかしい⋮⋮⋮まさかと思いおでこに手を当てると熱かった。完璧に熱 不二咲は鼻血を吹きながら無表情で言うが、おかしい。 ﹁⋮⋮⋮別に、何もしていない﹂ 閑話③ 252 ﹁まさか、これが絶望病 ﹂ !? ﹂ ? ﹂ ? と⋮⋮。 ! ? ﹁失礼します﹂ どうした ? ﹁⋮⋮な、なんだその目は⋮⋮くっ、わかっている。保険委員のくせに病にかかるとは何 普段はおどおどしているのに何処か凛とした雰囲気をまとっていた。 保 健 室 に 入 っ た ら 出 迎 え て く れ た の は 一 個 上 の 学 年 の 罪 木 だ っ た が 何 か お か し い。 ﹁む ﹂ 命に危険はないかもしれないが黒歴史として残るだろう。別の意味で危険だ⋮⋮ 苗木は頭を抱えながら保健室に向かう。なんだあれは、あれはないだろ⋮⋮。 ﹁⋮⋮⋮ごめん、保健室で休んでくる﹂ せいか彼の周りに砂が浮いている気がする。 十神は現在目の回りに隈を作り背には巨大な砂で出来た瓢箪を背負っている。気の たい。お前の格好の方が不思議だ 十神は言葉を途中で疑問系に変えた苗木を不思議そうに見る。だがあえて突っ込み ﹁どうした ﹁冷静に観察している場合じゃないよ十神⋮⋮くん ﹁なるほど、普段おとなしい不二咲がこれとは⋮⋮恐ろしい病だな﹂ 253 事だ と言いたいのだろう いいさ、好きなだけ詰るがいい、さあ ? ﹂ ! ﹂ ? したらどうする気 ﹂ ﹁どうしたのかしらボーッとして。そこまで調子が悪いのに教室に来て、私に風邪を移 ば扉をあけた朝日奈と⋮⋮腐川が居た。 そして昼飯でも食いに行こうとベッドから立ち上がった瞬間声をかけられる。見れ ﹁⋮⋮あ、朝日奈さん ﹁あら、起きていたの苗木君⋮⋮﹂ 苗木が起き上がり時計を確認するとすでに昼になっていた。 ﹁⋮⋮ん、よく寝た﹂ 寝よう、寝て忘れよう。寝て起きればきっといつもの皆が待っている。 ところは見なかったふりをした。 苗木は罪木を無視して保健室のベッドで横になる。無視されて罪木が興奮している ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ! ? ﹁⋮⋮⋮あの、ごめん。二人とも熱を計らせてくれないかな ﹂ ﹁別に好感度をあげたいから来たのではないもの。元気ならそれでいいのよ⋮⋮﹂ ﹁姫、ここは正直に心配したと言った方が好感度があがるかと﹂ 閑話③ 254 ? ﹁それは私達に触れたいと遠回しに言ってるのかしら じゃない﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ 疑うまでもなく絶望病だ。 ﹁ヘクチ ﹂ セクハラね、死んだ方がいいん 心にグサグサ刺さる言葉に苗木はさっさとこの場から去ることにした。 ? ⋮⋮⋮。 ﹂ ﹁おや、どうした苗木 ﹁あれ ﹂ ﹂ まともになってる⋮⋮だと ﹁ッ ﹂ サイダーはどうなっているのだろう 元々精神は異常だから何の変化もなかったり とらその時腐川がくしゃみをして苗木は反射的に振り返る。絶望病によってジェノ ! ? ﹁⋮⋮あ、す、すまない。蜘蛛をみるとどうも⋮⋮﹂ だった。鎖は蜘蛛の巣の蜘蛛を粉砕して壁に突き刺さる。 と、その時ジェノサイダーの瞳が緋色に光り苗木の頬を何かがかすめる。それは鎖 ﹁え ? !! ? !? ? 255 ﹁ア、ウン⋮⋮⋮キヲツケテネ﹂ 苗木は直ぐに逃げ出した。 もう今日は帰りたい⋮⋮。と、思っていると誰かにぶつかった。 ﹁ッチ、気をつけろ﹂ ﹂ ﹁あ、すいません⋮⋮気づかなくって﹂ ﹂ ﹁誰が気付けないほどの極チビだ ﹁言ってませんけど ! ﹂ ! のにヤケに突っかかってきた。 ﹂ 終里先輩は女⋮⋮って、弐大先輩 ﹁漢なら身長のことなど気にするなぁぁぁ ﹁え ﹁お前も漢なら漢だぁぁぁ ﹂ ぶつかった相手は終里。普段なら身長など気にしないどころかそもそも小さくない !? !? 訳が分からない。苗木はとりあえず逃げ出した。 ! ? ﹁おう、苗木⋮⋮⋮﹂ 花村はいつも通りだったらしい。学食を頼みにカウンターに行くと⋮⋮。 ﹁前かがみですね⋮⋮﹂ 閑話③ 256 ﹁大和田くん⋮⋮いつも通りだ﹂ ⋮⋮何言ってんだお前。ま、いいや⋮⋮⋮おーい、大和田マヨラースペシャルく ? ﹁ああ ⋮⋮⋮ん、苗木⋮どこ行くんだ ﹂ ? ﹁⋮⋮っは ﹂ ﹂ ? 話しかけちゃって⋮⋮その、魘されていたから心配で﹂ ! 全く変な夢を見てしまった。 良かった、何時もの罪木だ。 ﹁ごめんなぁい ﹁罪木⋮⋮先輩﹂ ﹁あ、あの∼⋮⋮⋮大丈夫ですか 苗木が飛び起きるとそこは保健室だった。 ! ほんと、何なのだろうこの悪夢は⋮⋮夢なら早く覚めてほしい。 苗木はあんことマヨネーズだらけの丼を見て口を押さえた。 ﹁見てるだけで気分悪く⋮⋮⋮﹂ !? ﹁宇治銀時丼ひとつ⋮⋮うわ、そんな犬の餌食ってんのかよ﹂ れ﹂ ﹁あ 257 ﹂ ﹂ ﹁■■■■、■■■■、■■■■■■■■■﹂ 何ですか ? ごめんなさい、私の勘違いでした⋮⋮﹂ ボク何か言ってました ﹁⋮⋮はへ ﹁え ﹁あ、あれぇ⋮⋮ ? ? オールフィクション しかし、罪木は確かに聞いた気がしたのだ、苗木が⋮⋮ 苗木は立ち上がると保健室から出て行った。 ? ? と呟いていたのを。 ﹃大 嘘 憑 き﹄﹃絶望病を﹄﹃無かったことにした﹄ 閑話③ 258 オール・オール・アポロジーズ︵非︶日常編① 舞園が桑田に殺され、江ノ島がモノクマに殺され、桑田が処刑され、不二咲が大和田 に殺され、大和田が処刑され、石丸が山田に殺され、山田がセレスに殺され、セレスが 処刑され⋮⋮⋮その全てを無かったことにして苗木はこの先を考える。 ﹂ すでに歴史は大きく変化している。 今日は四階の探索と行こう さて、どうなるか⋮⋮。 ﹁よし ! ﹂ ? ﹁⋮⋮⋮わたくしには命令しませんのね﹂ スの扱いに困っていた。 苗木は何時ものごとく付いてきている2人に行動を命じ、何故か付いてきているセレ うする ﹁江ノ島さん、モノクマとお話ししてて。舞園さんは付いて来て⋮⋮⋮セレスさんはど かう。苗木も、学園長室以外は散策してないのを思い出し四階に向かった。 石丸の言葉に全員が面倒そうに、しかし新しい情報を得られる可能性を信じ四階に向 ! 259 ﹁⋮⋮じゃ、付いて来ていいよ﹂ ﹁あら、そんな下手に出て言う事を聞いてもらえるとでも ﹂ ﹁⋮今日のセレスさんなんかウザイな﹂ ﹁はぅ ﹂ ? ﹂ ﹁じゃあ、まあ⋮⋮付いて来て﹂ ﹁はい ? ﹂ ? ﹂ ! ﹁私とセレスさん⋮ あとついでに山田君⋮⋮﹂ その写真には舞園とセレス⋮⋮あとついでに山田が写っていた。 セレスと舞園はその写真を見て驚きの声を上げる。 ﹁え ﹁⋮⋮これは そして苗木は花にも目をくれず床に落ちていた写真を拾うと舞園達に渡す。 そして苗木達がやってきたのは机の上に花が置かれた異様な雰囲気の職員室である。 苗木の言葉にセレスは嬉しそうに付いてくる。なんか、すごく不気味である。 ! ﹂ 情でうっとり苗木を見つめてくる。 苗木が呆れたように言うとセレスは突然ビクビクと痙攣する。そして恍惚とした表 ! ﹁それで、結局どうする気ですか オール・オール・アポロジーズ(非)日常編① 260 ? ﹂ ﹂ ﹁わたくし達が写ってますね⋮⋮あとついでに山田君﹂ 苗木は呆れながら苦笑する。 ﹁山田クンに何か恨みでもあるの ﹁これは、モノクマの合成ですかね ? 苗木が江ノ島の頭を撫でると頬を染め嬉しそうな顔をする。素が出てきている。 ﹁あ⋮⋮⋮えへへ⋮⋮﹂ ﹁うん。お疲れ様﹂ ﹁あ、あの⋮⋮苗木君⋮私頑張ってモノクマと話してた⋮⋮んだけど﹂ ﹁それじゃあ次の場所に行こっか﹂ きた。廊下を削りそうな勢いでこすり苗木の前で止まる。 苗木がそう言って職員室から出て指笛を吹く。三秒もしないうちに江ノ島が走って ﹁んじゃ、次行こうか﹂ 実際、この写真は合成ではない。 つまりほぼ合成の確率は少ないと言う事だろう。 わ﹂ 合成なら作ったのはそれこそ超高校級の合成加工師と名乗る者でもおかしくないです ﹁⋮⋮⋮わたくしはそう言うのに詳しいですが、その視点から言わせてもらえばこれが ? 261 そして次は近いと言う事から学園長室がどうなっているか見てみる。 ﹁⋮⋮⋮うわぁ﹂ そこには沢山のモノクマが踊っていた。クネクネと人間の女がやっていれば色っぽ い動きで踊っている。 ﹁何あれ⋮⋮⋮﹂ ﹁誰かが学園長室の鍵を壊したんだよね。全く誰がやったのやら﹂ けだ。 ﹁⋮⋮踏むのはありなの ﹁⋮⋮⋮ッチ﹂ ﹁江ノ島さんの件を忘れたの ? はい⋮⋮﹂ ? ﹁⋮⋮うん﹂ ﹁ ﹁ちょっと待っててね⋮⋮﹂ 女が居るだろう。 ﹂ 苗木は舌打ちしてその場から去る。次に向かったのは音楽室。ここにはおそらく彼 ? ﹂ 学園長であるモノクマに攻撃できない以上学園長室に入ることが出来ないと言うわ ﹁⋮⋮⋮⋮そんなに学園長室に入れたくないんだね﹂ オール・オール・アポロジーズ(非)日常編① 262 ﹁ ﹂ た。 舞園とセレスは不思議そうに、江ノ島は気配で気づいたのか不満そうな顔をしてい ? ﹁⋮⋮そうでしょうね。それじゃあ、アナタは何を見つけたの ﹁う∼ん、まだ教えるわけには行かないんだよなぁ⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮なら私は二階⋮⋮﹂ ﹁二階の隠し部屋なら知ってるから交換にならないよ﹂ ﹂ 霧切はそう言って不満そうな顔をする。怒っているのがヒシヒシと伝わってくる。 ﹁⋮⋮私のこと、信じてるって、裏切らないって言ったくせに﹂ 苗木の言葉に霧切は眉をしかめた。苗木が話す気がないと理解したのだろう。 ? ﹁学園長室に昨日の夜に侵入したのはボクだよ﹂ ﹁⋮⋮⋮そう⋮⋮ところで苗木君、何か私に隠していることはないかしら﹂ ﹁ボク一人だよ﹂ 彼女は苗木に気づくと苗木の後ろを見る。 音楽室の中にいたのは霧切。 ﹁やあ、霧切さん﹂ ﹁苗木君⋮⋮﹂ 263 ﹁⋮⋮アナタは嘘つきね⋮⋮もういいわ、さようなら⋮⋮﹂ 突き放したような言葉を残して霧切は去っていった。 やーい ふられてやんの﹂ 罪悪感を感じながら苗木も音楽室から出ようとすると。 ﹁やーい ! だが。 モノクマがからかうよう現れた。まあからかうようと言うかからかってきているの ! マジで ちえ、家族だけじゃなくそっちを人質にすれば良かった﹂ 好きな人が居るし﹂ ﹁え ﹂ ? 聞いて聞いて その人クマをみると直ぐに逃げちゃうようなクマ嫌いなの ﹁キミには無理だよ。彼女を人質にするのは、キミだけは絶対出来ないよ ﹁え ﹁⋮⋮⋮さあね﹂ セレスちゃん ! 苗木が薄く笑い学園長室から出て行った。 ﹂ 江ノ島ちゃん ! 次に来たのは化学室だ。とても薬臭い。 舞園ちゃん 吸して落ち着いてから聞いてね ﹁あ、苗木 ! いったん深呼 ? ? ! ﹁まずはあなたから落ち着いてくださいな﹂ ! ! ? ? ﹂ ﹁別にフられるも何もボクは霧切さんに恋愛感情なんて抱いてないよ⋮⋮ボク既に別に オール・オール・アポロジーズ(非)日常編① 264 ﹁保健室や倉庫にもなかったサプリメントが勢ぞろいなの ﹂ ビタミン、ミネラル、アミノ ﹂ ! ! あのプロドルメンXまで 海外製の超高級プロテインですか 酸、クレアチン⋮⋮な、な、なんと ﹁プロドルメンX !? ! ﹂ 感謝通り越して拝んじゃうよ。幸あれ、幸あれ⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮何で知ってんの舞園さん﹂ ようするに勘か。 宝の山だね ﹂ ! ﹁エスパーですから﹂ ﹁すごいよ ﹁⋮⋮ふえ ﹁毒もあるけど﹂ ! ? ﹁何か役に立ちそうな薬はないかなぁ⋮⋮⋮⋮忌村静子特性記憶力倍増薬 ? !? 265 ﹂ オール・オール・アポロジーズ︵非︶日常編② ﹁それでは報告会だ まあ仕方ないか。 そらされた。 食堂に集まり何時もの報告会をする一同。苗木がチラリと霧切を見るとぷいと目を ! え﹂ ﹁相変わらずってことね⋮﹂ ﹁残念だが四階からも脱出は出来ないようだな⋮⋮ふむ、他には ? でも毒薬もあったみたい⋮⋮﹂ ! かれていない。彼女のことだ、思い出す道具は一つくらい用意していることだろう。そ 苗木はチラリと瓶を眺める。記憶力をあげるとは書かれているが思い出す薬とは書 しかし、黒幕の用意した⋮⋮か。 のだから当然か。 朝日奈が毒があることに落ち込んでいる。黒幕が用意した殺人道具を見てしまった ﹁化学室にいろんなサプリや栄養剤が置かれてたよ ﹂ ﹁今回も窓には鉄板が打ち付けられていたな。俺や大神で試したがやっぱビクともしね オール・オール・アポロジーズ(非)日常編② 266 してそれは既に苗木が持っている。 これはここから先のことを覚えることは出来ても過去を思い出す効果はない。 大方誰かが脱出スイッチを使った後にこの薬を発見し期待し誰かに飲ませた後の絶 望でも見るために置いておいたのだろう。 ﹂ ﹂ 記憶力⋮⋮⋮仮に学級裁判が行われたらやはり多くのことを覚えておいた方がいい。 後で飲んでおくか。 いっそ、カラオケ大会でもしよう ﹁後は音楽室とかあったね。ストレスたまったら舞園さんの歌でも聴く ﹁それはいいな ! ﹁うんうん それいいね ﹂ ! なんとなしにこの言葉が出てしまうとは。 ﹁⋮⋮退屈、ね⋮⋮﹂ それにしても⋮⋮⋮ しかも彼女は乗り気だし。 ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ ! 彼女の歌を、某ガキ大将のような歌を思い出したのだ。 最初の一年、世界がまだ平穏で退屈な毎日だった頃クラス全員で行ったカラオケでの 石丸が大声で苗木に同意し、苗木は顔を青くして朝日奈を見る。 ! ? 267 平穏をだれより望んでいる自分が、平和な時代を退屈などと好意的ではない解釈をす るなど、人は変われば変わるものだ。 苗木、お前何か知らないか ﹂ ﹁そういえば、モノクマが学園長室前で踊っていたな。確か鍵が壊されたとか⋮⋮おい ものは得られなかったよ ﹂ ﹁調べるのは自由だからね、鍵を壊すなって校則もないもの。ま、今知ってる情報以上の ? 嘘ではない。苗木と皆では知っている情報に差異があるだけだ。 ? ﹂ ? ﹂ レぬように殺す作戦を練れるかもしれん﹂ ﹂ 苗木君は殺人などしない ﹁苗木がんなことするかよ ﹁そうだぞ ! ! しているぞ﹂ ﹁あって数日のお前にそんなことが分かるのか ? ! 容赦ないな⋮⋮⋮と、苗木は苦笑する。 俺は内通者より、そいつの方を危険視 ﹁まあ、明らかに内通者が行う行為でないな。だが自分だけが知る情報を使い誰にもバ ﹁苗木が嘘、何で マがあそこまで入るのを拒むとは思えん。あるいは、苗木が俺達に嘘を付いているか﹂ ﹁なんだつまらん。ま、大方お前がまともに探せなかったのだろう。でなければモノク オール・オール・アポロジーズ(非)日常編② 268 ﹂ ﹂ それも仕方ないことだとは納得しているが現状の十神に危険人物扱いされたくはな い。 ﹂ ﹁そういえば情報処理室の鍵があかなかったよね。彼処、何があるんだろ ﹁さあ ﹁ついでにそこの鍵も壊しておけば良かったものを⋮⋮何なら、今からやるか ﹁⋮⋮ん∼、それは無理っぽいね﹂ でたぁぁ ﹂ ! ﹂ ﹁むぐぐぐ⋮⋮﹂ 利品。だからボクは返さないし、ボクは悪くない﹂ ? ! ﹁ボクは校則に従い自由に調べてただけですよ これだって調べるうちに手に入れた戦 ﹁苗木くん、ボクの部屋から盗んだものは今すぐ返しなさい。先生、怒ってないから︵怒︶ ち込んでいるようだ。 突然のモノクマの登場に山田が叫び全員がモノクマを見る。モノクマはどうやら落 ﹁うわ ! ﹁もっと早く追加してれば良かったよ﹂ を破壊するのが禁止になっていた。 苗木がそう呟いた瞬間電子生徒手帳が震える。見てみれば校則に鍵のかかったドア ? ? ? 269 ああ やっぱり苗木くんが持ってたんだね ﹁あ、そうだモノクマ。この写真について知らない ﹁んむ ! ﹂ ﹂ !? ? 鬱陶しい。 ﹁これはね∼⋮⋮まあ、合成ではないよ﹂ ﹂ モノクマに手を出してはいかん ﹂ と目を輝 ? ﹁おい待てよ、俺らはんな写真撮った覚えねえぞ﹂ ﹁ああぁぁぁぁ ﹁落ち着け兄弟 ﹁⋮⋮⋮チィ﹂ ﹁そうそう、そこのホモ眉毛の言う通り﹂ ﹁モノクマ⋮⋮重い、さっさとどけバカデブス﹂ かせた。 苗木の言葉に江ノ島が指を立て感心したように言う。朝日奈も本当だー ﹁バカ⋮デブ⋮⋮ブス⋮⋮揃ってる﹂ ! クマじゃないんだよね∼﹂ ﹁苗木くんたら悪口を心得てるね∼。でも、ボクはその程度の悪口で怒るほど心の狭い ! ! !? ﹂ 苗木が机に二枚の写真をおくとモノクマが苗木の背をよじ登り机の写真を見て叫ぶ。 ? ﹁覚えてないのとやってないのは別なんだよね∼。モロコシヘッドには難しかった オール・オール・アポロジーズ(非)日常編② 270 ﹂ ﹁お前何だか、動物園の檻にいたらパンダ見れなかった客が妥協して見そうな見た目し ﹂﹂﹂ てるよな︵笑︶﹂ ﹁﹁﹁⋮⋮⋮ ﹁⋮⋮いや、それどうなんだべ お前はあぁぁぁぁ 妥協して見にこられる動物なん !? ﹂ 望 ﹂ 絶 望 ボクが園から出て行くレベルで必要ない存在だってのか 言う事欠いてまさかの妥協だと て価値があるわけねぇだろ こんな侮辱を受けたのは初めてだよ 絶 ﹁めちゃくちゃブチぎれていらっしゃるでござる ! ﹁え え ﹂ ? ﹁⋮⋮不二咲くん⋮⋮﹂ ? ﹁⋮⋮そろそろ頃合いだものね ﹂ ﹁⋮⋮⋮そうだな、そうしよう﹂ な。まあいいや、ところで皆、混浴しない ? ﹂ ﹁⋮⋮⋮こういう時は⋮⋮良いねその被害妄想、まさしく理解不能だ、と言えばいいのか !? ! ! ! ﹁な、なな、なななな、な、何でそこまで⋮⋮的確にクマを傷つける台詞が言えるんだよ どうせ笑っているのだろうと誰もが思ったが⋮⋮⋮。 苗木の言葉に全員が首を傾げ葉隠も呆れたように言うとモノクマがプルプル震える。 ? ? 271 ? ﹁へ ﹂ 見る。 ? ﹁あれはボクからのプレゼントだからね。ボクの不利になることは無いよ﹂ ﹁⋮⋮あの中に知られたら困る情報はあるの ﹂ クマを剥がしてから行くから先に行っててと言うと全員が居なくなった後モノクマを 苗木の言葉に全員が不二咲を見て苗木が言いたかったことを理解する。苗木はモノ ? 苗木はモノクマを背中から下ろして脱衣場に向かった。 ﹁⋮⋮だと思った﹂ オール・オール・アポロジーズ(非)日常編② 272 ﹄ このノートパソコンに元からあった学園のファイルが オール・オール・アポロジーズ︵非︶日常編③ ﹃み ん な、来 て く れ た ん だ ね やっと開けるようになったんだよ ざわっと全員の顔つきが大なり小なり変わる。 校生達を隔離し、共同生活を送らせる⋮﹄⋮そんな計画がね﹄ みたところ、この学園ではある計画が進行中だったみたいなんだ。﹃希望ヶ峰学園に高 ﹃じゃあ、解析したファイルから抽出した情報を僕なりに纏めて話していくね。調べて そして、不二咲が判明した事実について尋ねる。 うに笑う。 主人による不二咲に誉められたことが嬉しいのかアルターエゴはどこか照れくさそ ﹃えへへ⋮⋮﹄ ﹁ううん。よく頑張ったよアルターエゴ﹂ ﹃待たせちゃって、ごめんね﹄ づいたアルターエゴが笑顔で話しかけてくる。 苗木も到着し、不二咲がロッカーを開け中のアルターエゴを起動すると不二咲達に気 ! ! 273 まあその計画は進行中どころか完了しているのだが。それともこういうのは隔離し た共同生活が終わるまで進行中と言うのだろうか そして未来に繋ぐ希望のために超高校級同士で子孫を残すようにも言われていたな。 によっては、学校内で一生を過ごさなければならないって⋮﹄ ﹃しかも、その共同生活も、ただの共同生活じゃなくって⋮隔離される高校生達は、場合 ? ﹁え⋮ ちょっと待って じゃあ、私達が閉じ込められてるのって⋮犯罪組織とか、異常 ! ﹁でも それっておかしくありません 運動系や文系はともかく私や江ノ島さんみたい ? 十神が言うと不二咲は再びキーボードを操作し続きを促す。 ﹁⋮⋮続きを話せ﹂ たらどうやって応援するんだ。 それはそうだ。一般に出てこないアイドルを応援する奴が居るはず無い。居たとし にメディアによって左右される才能の隔離なんて﹂ ? ﹁希望ヶ峰学園自体が仕組んだ事⋮⋮ということですわ﹂ 者の仕業じゃなくて⋮﹂ ? 園の事務局だったらしいんだよ﹄ ﹃とんでもない計画だよね⋮しかもね、そんな計画を立てたのは他でもない希望ヶ峰学 ﹁同じだ⋮我らの置かれた状況と⋮﹂ オール・オール・アポロジーズ(非)日常編③ 274 ﹃でね、そんな計画を立てられた原因は、一年前に起きたある事件にあるらしいんだ。そ の事件については⋮⋮こんな風に書いてあったよ⋮⋮人類史上最大最悪の絶望的事件 だって﹄ 絶望した者が誰かを絶望させて連鎖的に広がり、世界を飲み込む戦争に発展した事 件。 ﹂ 主義も宗教も領地も、何を主張するでも何を奪うでもなく殺すために殺す畜生にも劣 る絶望的な光景。 思い出すだけで胸くそ悪い。 ﹁人類史上最大最悪の絶望的事件⋮⋮ ﹂ そんな話聞いたこともないが﹂ ﹁なんだべ、その大げさな名前の事件は⋮ ? ﹁そしてその学園を舞台に持ち上がった計画がそこに俺達を隔離して一生の共同生活を 件と呼ばれる事件が起き⋮その事件のせいで、希望ヶ峰学園は閉鎖に追い込まれた﹂ ﹁なるほどね⋮繋がってきたわ⋮つまり、今から一年前に、人類史上最大最悪の絶望的事 追い込まれたらしいんだ﹄ よ。だってその事件のせいで⋮希望ヶ峰学園は教育機関としての機能を失って、閉鎖に ﹃その一年前の人類史上最大最悪の絶望的事件って、かなり悲惨な事件だったみたいだ ﹁⋮⋮一年前だと ! ? 275 送らせるという計画か﹂ 霧切と十神は納得がいったというような反応をしていたが他の面々は困惑していた。 な ﹂ ﹂ ﹁でもさ、どうして希望ヶ峰学園の事務局は、私達を閉じ込めるような計画を立てたのか は⋮。 不二咲はすぐにそれらの質問をキーボードに打ち込んでいく。だが、帰ってきた答え ﹁それに、人類史上最大最悪の絶望的事件とは、一体どんな事件なのだ ? ? ﹁黒幕ですと ﹂ それと、もう一つ大事な事がわかったんだ⋮とても大事な事⋮⋮多分、黒 さすが僕の天使 幕の事だよ⋮﹄ ! !? だ。つまり、すべてを仕組んだ黒幕は、その学園長って可能性が高いんだ。ちなみに、そ る計画を立てた希望ヶ峰学園事務局、その事務局の責任者が、希望ヶ峰学園長だったん ﹃黒幕の正体まではわからなかった⋮でもね、手掛かりなら見つけたよ。僕達を隔離す ! ﹃あ、待って それ以上のヒントはここには用意されていない。 わからない。それが答えだった。 いで⋮⋮役立たずで、ごめんね⋮⋮﹄ ﹃ごめん⋮それ以上の事はわからないんだ⋮これ以上の情報は、もうここにもないみた オール・オール・アポロジーズ(非)日常編③ 276 の学園長は三十代後半の男性で今も、この学園内にいる可能性が高いみたいだよ⋮⋮﹄ ﹂ ﹁ど、どうしたの、霧切ちゃん ﹂ そして、それ以上の情報を得られることはなかった。 ﹁⋮⋮⋮⋮私が見つけないといけない⋮⋮そんな気がするの⋮﹂ いなんかさせるんだ ﹂ ﹁それにしても、希望ヶ峰学園事務局ってのは何を企んでるんだ ? ? ﹁人類史上最大最悪の絶望的事件だよね ﹂ ﹁⋮⋮⋮モノクマってさ、本当に希望ヶ峰学園事務局が操ってるのかな ﹂ なんで、俺らに殺し合 ﹁私が⋮⋮捜す⋮⋮⋮学園長は⋮私が必ず捜してみせる⋮必ずよ⋮⋮﹂ るか。 何処かに残している可能性もある。せっかく鍵を手に入れたのだからその内探してみ 相手は絶望なのだ、殺した後骨を犬に配ってる可能性もあるし、あるいはこの学園の 長はどこに行ったのだろう アルターエゴの言葉に霧切が滅多に見せないほどの動揺を見せた。そう言えば学園 ﹁学園長が、この学園の中に !? ? ﹂ ﹁一年前の事件が全ての元凶とか言ってけどよー、誰か知ってる奴いるか !? 苗木が呟くと全員の視線が苗木に集まる。 ? ? ? 277 でも知らないなら隠蔽されたのかも。 ﹁これは推測なんだけどさ、人類史上最大最悪の絶望的事件が希望ヶ峰学園を閉鎖に追 い込むほどの事件なら普通ニュースになるよね 理矢理集めたのがボクらだとしようか。これだと、殺し合いをさせる意味がないよね ﹂ ? まあどっちにしろそれほど希望ヶ峰学園にとって大打撃ならなんとか持ち直そうと無 ? 蠱毒じゃないんだし生き残った生徒が全員分の才能持ってる訳じゃないんだ﹂ ? ﹂ ? ﹁⋮⋮ふむ。どのみち現状では分からないことだらけだ。よし いいのかそれで風紀委員ェ⋮⋮。 放っておこう ! ﹂ 学園長の人となりを知っている苗木からしたら、学園長を疑ってほしくないのだ。 我ながらよくもまあ、こんなにポンポンと嘘が出てくるものだと感激する。 ない だったボク達を狙って、それを守るために立てた計画をその何者かに利用されたんじゃ ﹁こ れ っ て さ あ、希 望 ヶ 峰 学 園 を 閉 鎖 に 追 い 込 ん だ 何 者 か が 希 望 ヶ 峰 学 園 に 入 る 予 定 が一番強い毒を持っているってことになるのよ﹂ ﹁蠱毒⋮⋮さ、皿の入った坪に毒虫を大量に入れ殺し合わせる邪法よ。最後残った毒虫 ﹁⋮⋮孤独 オール・オール・アポロジーズ(非)日常編③ 278 ! オール・オール・アポロジーズ︵非︶日常編④ ﹂ ﹂ 何で皆ボクを見るの ﹂ 苗木達はアルターエゴの報告を聞き終え脱衣場の外に出るとドキドキしているモノ クマと出くわした。 ﹁胸がドキドキ⋮ドキドキ⋮﹂ ﹁どうしたのモノクマ、発情期 ﹁怒りで、胸が、怒気怒気してんの ﹁⋮⋮誰だよモノクマ怒らせたの⋮⋮ん ? ﹂ ! 前からじゃないか﹂ ? 脳内メモにインプットしとけよ。ボクは、やられたらやり返す子なんだよ。 ! メニワ・メオ⋮ハニワ・ハオ⋮﹂ ﹁ムカー ﹁頭が沸いてる 怒りで頭が沸く沸くしてんの 苗木クンの悪口の才能にも嫉妬はすれど、怒ってはいません⋮⋮ワクワク、ワクワク⋮ ﹁今回は苗木クンは関係ないよ。それに、オマエラだけで淫らな混浴を楽しんだ事にも、 で全員から見られた。 苗木が怒っているらしいモノクマを見て全員を責めるように見ると似たような視線 ? ! ? 279 モノクマはそういって何処かに消えた。 ﹁目には目を、歯には歯を⋮⋮⋮ねぇ⋮⋮ボクの部屋の鍵でも壊すのかな 苗木の言葉に朝日奈は呆れたように言った。 ﹁やっぱり怒らせている自覚はあったんだ⋮⋮⋮﹂ している。まあ、彼女に堪えているかは知らないが。 ﹂ 苗木は悪意無き暴言ではなく悪意ありきの暴言だ。人を苛つかせている事など自覚 ? に手をかける。 ﹁⋮⋮⋮随分なご挨拶ね﹂ ﹁⋮⋮霧切さん⋮⋮﹂ ? 扉を開けた向こうにいたのは霧切だった。霧切は苗木のナイフを見た後ついて来る ﹁⋮⋮⋮二人でお風呂に入らない ﹂ 敵意や殺意は感じないが⋮⋮。苗木はナイフを取るとそっと扉の前に立ちドアノブ 苗木は自室で眠ろうと横になっていると扉の向こうから誰かが来た気配を感じる。 と、その時夜時間の放送が流れる。 ﹁でもま、妥協してたら希望はもちろん絶望も出来ないし怒らせるのは十分か﹂ オール・オール・アポロジーズ(非)日常編④ 280 マジで ﹂ ﹁⋮⋮⋮別に構わないわ﹂ ﹁え ? ? ﹁ 背中を流しているのよ。お祖父様が友人と入った時は背中を流してやれって﹂ ﹁⋮⋮ところで何この状況﹂ ﹁⋮⋮そう⋮⋮⋮﹂ まあ苗木はそれぐらいで嫌ったりはしないが。 本 当 に 残 念 な 女 だ。苗 木 が 普 通 の 感 性 の 持 ち 主 な ら 好 き に は な れ な い 相 手 だ ろ う。 ﹁いく⋮⋮江ノ島さんに鍛えてもらってるんだけど手加減してくれなくてね﹂ ﹁⋮⋮随分と生傷があるのね﹂ 九どころか十割で苗木の責任なのだが。 湯船につかりながら苗木は何故こんな事になっているのか考える。いやまあ、十中八 そして浴場。 ? ﹂ ように促す。風呂と言う事は、カメラの無い場所に来いと言う事だろう。 ﹂ ? ﹁なんてね﹂ ﹁⋮⋮え ﹁そういえばお風呂に入ってなかったし、どうせなら本当に入ろっか 281 ? ﹁⋮⋮⋮たぶんそれ同性前提なんだろうけど﹂ ﹂ というかこれ学園長にバレたら半殺しにされそうなんだけどな。比喩ではなくマジ で。 ﹁⋮⋮⋮それで、何を聞きたいの それに、私が聞 ﹁霧切さんの才能はネットに載ってないし学園長は熊だって事しか⋮⋮﹂ ﹁私の才能と学園長について⋮⋮﹂ ? ? ﹂ ? というか霧切の裸も何度か見ている。別につきあっていたわけではない。例えば風 ドキマギ⋮⋮⋮しない。 濡れてるせいで張り付くような感覚に加えお湯でほんの少し火照った身体に苗木は ﹁⋮⋮ああ、うん⋮⋮まあ﹂ た手よね ﹁人には嘘を付くとき、それぞれのクセを出しやすい。アナタが朝日奈さんに使ってい と霧切の腕が首に回され肌が触れあう。 逃げ道がなくなった。いや、嘘を付くという手段もあるのだが⋮⋮と、その時ヒタリ よ﹂ きたいのモノクマではなく⋮⋮そうね、モノクマを学園長とするなら前学園長について ﹁ネットには載ってなくてもあなたなら知っているんじゃないかしら オール・オール・アポロジーズ(非)日常編④ 282 邪を引いた彼女のお見舞いに部屋や保健室に行った時汗を拭く彼女と出くわし、例えば プールの更衣室が苗木が通りかかった時に壊れて、例えば大浴場で女子使用中の札を立 てかけ忘れて、逆に苗木が忘れて入ってきた彼女と出くわして⋮⋮⋮。 ﹂ そんな苗木だからこそ平静を保ち昔指摘された自分の嘘を付く時のクセを思い出す。 ﹁ねぇ、知ってる苗木君。動悸や呼吸なんかは誤魔化せないのよ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹂ ? ﹂ ? ﹁絶縁の言葉を言いに希望ヶ峰学園に来たんでしょ ありがとう⋮⋮だいぶ思い出せた ﹁霧切仁⋮⋮⋮霧切さんのお父さんだよ。霧切さんはこの人に││﹂ ﹁前学園長は 偵にも飲ましてやりたいものだ。いやダメだ、時間がたてば同じになる。 うわぉ、そうなのか。そりゃ良いこと聞いた。是非とも霧切の爪の垢を煎じてその探 ﹁そう。一般人を巻き込むなんて探偵の風上にも置けないわね﹂ ﹁とある探偵のせいでね﹂ 私が探偵として何度か挑戦したあれね。アナタも経験あるの ﹁⋮⋮⋮ 探 偵 ⋮⋮ そ う。お か げ で 思 い 出 し た わ。ア ナ タ が い つ か 言 っ て い た 黒 の 挑 戦、 ﹁⋮⋮⋮⋮霧切さんの才能は探偵。超高校級の探偵だよ﹂ ﹁それじゃあ、知ってることを話してちょうだい。聞くことだけでも良いから﹂ ? 283 ? わ﹂ ﹁⋮⋮そっか﹂ ﹂ ﹁⋮⋮⋮アナタは、どうしてそれだけ知っているの ﹁⋮⋮⋮黒幕だから、とか ﹂ ? そこには鬼がいた。包丁を持った鬼が⋮⋮⋮。 ? ⋮⋮ナニをしてたんですか すでにし終わったんですか ﹂ ? ﹂ ? ﹁なら今からせいぜいかまってもらいなさい﹂ いていることから霧切も怖かったのだろう。 霧切はそう、と呟くと舞園の横を通り過ぎる。通り過ぎた後安堵の溜息をこっそり吐 ﹁⋮⋮⋮⋮それは⋮⋮苗木君が私にもかまってくれるなら別に﹂ いう関係になったら困るのかしら ﹁⋮⋮別に彼に少し話を聞いただけよ。他意はないし、アナタは仮に苗木君と私がそう ? ﹁いやですね。落ち着いてますよ∼。で、ナニをしているんですか風呂場で抱き合って ﹁⋮⋮ま、舞園さん、落ち着いて﹂ ﹂ と、霧切が呟いた時苗木は悪寒を感じ大浴場の入り口に振り向く。 ﹁⋮⋮少しぐらい、私に本当の事を話してくれても良いじゃない﹂ ? ﹁⋮⋮ナニを⋮⋮しているんですか二人とも⋮⋮ オール・オール・アポロジーズ(非)日常編④ 284 ﹁⋮⋮霧切さん、アナタひょっとして良い人ですか そうしますね ﹂ ! こうでは霧切が着替え出て行く姿がぼんやり映った。 舞園はそう言うと大浴場に入ってきて扉を閉めさらに鍵を閉める。曇りガラスの向 !? 舞園はとてもかわいらしい満面の笑みでそう言った。 ﹁保証しかねます♪﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮お、お手柔らかに﹂ ﹁それじゃあ苗木君⋮⋮霧切さんの匂いが取れるまでたっぷりじっくり⋮⋮﹂ 285 ﹂ なんかツヤツヤしてるね ﹂ ﹂ オール・オール・アポロジーズ︵非︶日常編⑤ ﹁は いいえ何でも ﹂ ? ﹂ ﹁おっはよー舞園ちゃん。あれ ﹁ふふ。そうですか ﹁朝会った時からこうなんだよね⋮⋮舞園あんた何したの ﹁逆に苗木くんはげっそりしているな。何があった ? と呟き舞園は笑みを浮かべる。ふと苗木は霧切を見つけた。前回で ﹂ ? ﹁いやまあ、霧切さんのせいじゃないよ⋮⋮⋮原因はボクにあるわけだし﹂ ら謝罪した。 霧切は昨日のことを思い出し、あの後どうなったのか想像したのか赤くなり俯きなが ﹁⋮⋮⋮⋮そ、そう、その⋮⋮ごめんなさい﹂ ﹁想像しているとおり、かな⋮⋮﹂ ﹁ねぇ苗木君、ほんと、すごくやつれてるけど何があったの は大神の秘密を黙っていると怒って苗木が帰るまで食堂には来なかったのだが⋮⋮。 ? ? ? ? ? ﹁⋮⋮⋮ナニを⋮⋮﹂ オール・オール・アポロジーズ(非)日常編⑤ 286 ﹁でも、私があの時舞園さんに怯えず止められていたら﹂ 怯えないこと﹂ ? ﹂﹂﹂ !? ﹂ ? ﹁おお ﹂ ﹁そりゃ殺すよ﹂ どうすんの ﹁まあ大したことではないんだけどさ、全員を信用している苗木君は裏切り者がいたら ﹁スリーサイズ以外の話ならしてあげても良いよ﹂ ﹁苗木君ちょっとお話ししようぜ﹂ ているのかモノクマも別に突っかからない。 突然のモノクマの登場とそれに驚かない唯一の生徒苗木。もはや当たり前にもなっ ﹁﹁﹁ ﹁誰がダンナだエロクマめ﹂ ﹁昨日はお楽しみでしたなダンナ﹂ すんじゃないかと思えるぐらい怖い。 あれは怖い。どれぐらい怖いかというと大神経由で出会ったとある格闘家も逃げ出 霧切は昨日の鬼︵舞園︶の鬼気を思い出し首を振る。 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮無理ね﹂ ﹁⋮⋮できるの 287 ! ﹁嘘だけどね﹂ とシャドーボクシングを始める。苗木は西瓜を ﹁⋮⋮⋮てめぇ、屋上に来い。久々にキレちまったぜ。前歯へし折ってやる﹂ モノクマはその場でシュッシュッ 持ってくるとモノクマの前に持ってくると西瓜が見事に割れる。 ! ﹂ 苗木は一番大きなかけらを取りセレス以外の全員に配る。 ﹁はい皆⋮⋮﹂ ﹂ ! ? ﹂ ? 苗木の言葉にセレスは恍惚とした表情で西瓜を食べる。苗木は勉強になったとセレ ﹁⋮⋮は、はい⋮⋮﹂ ﹁床に伏して食べなよ。あ、手は使わずに﹂ ワクしている。 首を傾げる一同と困惑するセレス。モノクマだけはシャドーボクシングを止めワク 苗木は一番小さなかけらをセレスに渡⋮⋮⋮さず皿に乗せて床に置く。 ﹁冗談だよ、ほら⋮⋮﹂ 苗木の言葉にセレスはビクビクと震えた。 ﹁はふぅ ﹁後で皮でも食べてれば ﹁⋮⋮あの、わたくしには オール・オール・アポロジーズ(非)日常編⑤ 288 スを観察していた。 ﹁む ﹂ 喜んでいるのか ﹁良いんだ ならば良し ? ﹂ ! ! ﹁ふむふむこっちだね⋮⋮﹂ ﹁もう少し左⋮⋮あ、そこじゃない ﹂ ﹁右と見せかけて⋮⋮そのまま右だ﹂ れてたは通じないからね﹂ ﹁⋮⋮⋮あ、そうそう。今夜は夜時間前に体育館に集まってね。一応放送はするから忘 仲が悪いんだか良いんだか⋮⋮⋮。 苗木とモノクマは石丸の悪口をこそこそ言い合う。 ﹁アホか彼は⋮⋮﹂ ﹁真面目バカって言うんだよねああいうの⋮⋮﹂ ﹁キミは実にバカだなぁ﹂ 石丸の意外と言えば意外な言葉に朝日奈は思わず叫んだ。 !? ? ﹁むふふ。苗木クンたら人の喜ばせかたを知ってるねぇ⋮⋮﹂ 289 ﹁⋮⋮⋮⋮何を、してるのかしら ﹁﹁西瓜割も知らないの ﹂ 霧切さんたら遅れてるぅ﹂﹂ モノマシーンの景品のゲームをやりながらモノクマに指示を飛ばす苗木がいた。 体育館に来た霧切達が見たのは棒を持ち目隠しをしてフラフラ歩くモノクマとモノ ? そのまま前 ﹂ ! ﹂ ! ﹂ ! ﹁とりゃあ ﹂ に向かって飛んでいく。 モノクマは勢い良く棒を振り下ろすが床を叩きその衝撃でクルクル回りながら苗木 ! ! ﹁ああ、おしい ﹂ 霧切は意外と乗り気な皆を眺めながら一人なんとなく疎外感を感じる。 ﹁⋮⋮⋮⋮私がおかしいのかしら﹂ ﹁愚か者め、周りに惑わされすぎだ﹂ ﹁い、いきすぎよ⋮⋮ ﹁良いぞ、そのまま進むがよい﹂ ﹁右にずれすぎだぞモノクマ ! 霧切はモノクマと苗木を睨みつけながら言うと二人はゲームと西瓜割を再開した。 ﹁ハモらせないで腹立たしい﹂ ? ﹁⋮⋮もうちょい右、右だよー オール・オール・アポロジーズ(非)日常編⑤ 290 ﹁危ないなぁ﹂ ﹂ 苗木はゲーム機で棒をはたくとゲーム機は砕け棒は逆回転し⋮⋮⋮西瓜に当たって 西瓜を割った。 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮これが、幸運の力か ﹁え そうだけど ﹂ ? ﹂ ? ﹁君達を呼んだのはね∼∼⋮⋮⋮⋮あれ 何だっけ ﹂ ? ﹂ ? ﹁さっきボクに覚えておいてとか言ってたね⋮⋮⋮勘弁してよ。ボクの黒幕説が広まっ ﹁苗木クン知らない に体勢を直し着地すると呆れたように溜息を吐く。 モノクマは首をコテリと傾げ、ステージに腰掛けていた苗木がずっこけ落ちる。直ぐ ? モノクマと苗木のやり取りに十神の額に青筋が浮かぶ。 ﹁や∼∼ね∼∼⋮⋮﹂ ﹁あらあら聞きましたナエ様、最近の若い子は冗談を直ぐに本気にしますわ﹂ ﹁⋮⋮⋮俺は帰らせてもらうぞ﹂ ? ﹁で、お前はわざわざ西瓜割の為に俺たちを呼び寄せたのか モノクマが心底驚いたような動作をした。周りも似たような反応だ。 ﹁あ、ボス戦中だったのに⋮⋮⋮﹂ ! 291 ﹂ ? ﹂ あのね⋮⋮内通者の正体は大神さくらさんです ﹂ ! そんなことある訳ないじゃん ﹁どうせモノクマの嘘に決まっている ﹁そうだよ ! ﹂ ! ちゃうじゃないか⋮⋮内通者について話すんでしょ ﹂ そうだったそうだった 今なんつった ﹁ああ ﹁え ! ﹁内通者は大神さくら⋮そう言ったんだ﹂ ? ! 絶対違うよ さくらちゃんより苗木の方が百倍怪しいよ ! ﹂ ? ﹂ ! ﹂ ? ﹁⋮⋮⋮つまらねーの。じゃあ後は煮るなり焼くなり、殺すなり殺されるなり好きにす ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ねえねえ今どんな気持ち ﹁人質になった仲間達を見捨てて少ししか仲良くしてない浅い友情を取った大神さん。 ﹁さくらちゃん ﹁良いのだ、朝日奈よ⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮自覚してるけどこうも直球に言われると傷つくな﹂ ! 石丸も距離を取ってるし大和田も無意識にか不二咲と大神の間に立っていた。 のプレイを始めながら各々の反応を確かめるが疑っている割合の方が多い。 モノクマの言葉に数秒の静寂の後、疑いの視線が大神に集まる。苗木は新しいゲーム ! ? ﹁違うよ オール・オール・アポロジーズ(非)日常編⑤ 292 れば﹂ せば﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮あ、死んだ⋮⋮⋮ステータスの振り分け間違えた。まいっか、使えないなら消 ﹁いや⋮⋮苗木は関係ない。我だ、我が⋮⋮内通者だ⋮⋮﹂ ﹁そういうことしてるから怪しまれるのよ﹂ 苗木は片手でゲームをやりながら片手を振りモノクマを見送った。 ﹁お休み∼苗木ク∼ン﹂ ﹁お休みモノクマ﹂ 293 ﹂ オーガが黒幕の手先だったんかッ ﹂ オール・オール・アポロジーズ︵非︶日常編⑥ ﹁ま、マジなんかッ ﹁すまない⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮テメェ⋮⋮﹂ ﹁い、今までずっと⋮⋮騙してたの⋮ッ !? が庇うように大神のそばに立つ。 モノクマの告発により大神に敵意などが含んだ視線が向けられる。一人、朝日奈だけ !? !? のですぐ量産できるだろうし。 ていうかモノクマ壊されてもその辺の床をツルハシで叩けば何故か部品が出てくる だから何の意味もないけどね﹂ ﹁ぶっちゃけ量産機のモノクマと戦ったって黒幕からしたら端末が一つ減る程度の痛手 ﹁見て⋮⋮いたのか⋮⋮﹂ ﹁人質がどうこう言ってたしね⋮⋮それに、この前モノクマと戦ってたしね⋮⋮﹂ それで、仕方なく黒幕の良いなりに⋮⋮﹂ ﹁ち、違うんだよ⋮きっと⋮さくらちゃんは操られてただけで⋮何か、理由があって⋮⋮ オール・オール・アポロジーズ(非)日常編⑥ 294 ﹁本当に黒幕を裏切ったというなら、答えてみろ。黒幕とは何者なんだ ﹁知らないだと 怪しいな﹂ ﹂ ? まあそれはそうだ。 ! ﹁なあ苗木っち⋮⋮⋮苗木っちはモノクマと繋がってんのか ﹁ボクがモノクマと組んだら真っ先に黒幕を殺すけどね﹂ ﹂ ? 線を向けられている。 妨害している光景を見たことのない者や一定の友情を築いていない者達から疑いの視 り続けていた。そしてやはり苗木にも十神や腐川、葉隠と朝日奈、山田と言った殺人を 苗木はゲームをしながらはたして真面目に話を聞いているのか不安になる態度を取 ﹁モンスター15匹操れるからちょうど良いと思って﹂ ﹁おい待て、何故ゲームをしながら俺の名が出てくる﹂ ﹁あ、トガミが死んだ ﹂ ﹁甘いな苗木。それだけじゃこいつが黒幕を裏切った理由としては弱い﹂ ﹁まあ相手は黒幕だからね。モノクマを通して会話していてもおかしくないよ﹂ 十神の言葉に朝日奈が突っかかるがまあ聞く耳を持つはずもない。 ! ? ﹁ホントなんだって⋮信じてあげてよ ﹂ ﹁それは⋮⋮すまんが我も知らんのだ﹂ 295 葉隠の言葉に苗木は昼間と同じように殺すと言う。しかし今度は冗談だよとは言わ ない。 葉隠達は気づかなかったが霧切や大神、十神は憎悪や憤怒、殺意に満ちた顔で殺すと ﹂ ﹂ 苗木っちの教え子はニートになるべ ﹂ ﹂ ﹂ 宣言するより明確な殺意を感じさせながらも日常のように紡がれる殺意の表明の方が 遥かに恐ろしいのだと理解した。 ﹂ 見えた ﹁なんなら占ってみれば ﹁よ、よし⋮⋮むむむ ? ⋮⋮⋮苗木っちにはブラコンの妹が居るべ ﹁な、何関係ないこと占ってんのよ ﹁おっかしいな⋮⋮もういっちょ ! ? ﹁⋮⋮⋮⋮⋮ところで大神さん、これからどうするの ! ! ⋮⋮﹂ ﹁黒 幕 に 戦 い を 挑 み、差 し 違 え て で も 倒 し て み せ る。そ れ が ⋮⋮ 我 の 責 任 の 取 り 方 だ ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁黒幕を倒す﹂ は苗木の予想通りの言葉を口にした。 苗木は答えは知っているけど、と大神を見るとやはりというか案の定というか、大神 ? ! !? ! ﹁ほ、ほんとに繋がってねえんだな オール・オール・アポロジーズ(非)日常編⑥ 296 ﹁ちょ、ちょっと待ってよ 差し違えても⋮⋮って ! ﹂ ! ﹂ ? ﹂ ! ﹂ ? 墓の前に立って誇 朝日奈さんと大神さんが仲がいいのなんて周知の ? 事実。結局黒幕の下につく前に報復として殺されたらどうすんだ ? 朝日奈さんが死んだらどうすんの ﹁﹃お前が﹄じゃないよ。内通者なんて死のうが生きようがどうでもいい奴じゃなくて、 Mを白々しく流す。 ピタリと時が止まったかのような静寂の中、苗木のゲーム機がボスを倒した際のBG ﹁お前、それで死んだらどうするんだ 覚悟を感じたのか無言で大神を見つめる。だが⋮⋮苗木は笑う。 大神の言葉に朝日奈は心配そうに大神を見て、大和田や石丸、不二咲や霧切も大神の だ。だからせめて、この命と引き替えにしてでも⋮⋮ かった。軽蔑されるのではないか、嫌われるのではないかと思うと⋮それでこの結果 ﹁⋮⋮⋮ 怖 か っ た の だ。我 も せ め て 朝 日 奈 に だ け は 話 そ う と 思 っ た ⋮⋮ だ が、出 来 な だけでも話せばあるいはこうはならなかっんじゃないの ﹁なーんかかっこいいこと言ってるけどさ、そもそもせめて大親友︵笑︶の朝日奈さんに 朝日奈に睨まれた。 大神の言葉に朝日奈は慌てるが苗木は棒読みで拍手を送る。当然といえば当然だが ﹁わー、かっくいいー﹂ 297 らしげに﹃我はやったぞ﹄なんて言うのかよ﹂ ﹁⋮⋮違う、我はそのようなつもりでは⋮⋮ただ、皆を救うために⋮⋮ と、苗木は朝日奈を指さす。 救われない存在がそこにいる﹂ ﹂ ﹁わかってないな大神さん。肉体なんて救われる必要ない。少なくとも君が死ぬことで ! パン ﹂ ﹂ と乾いた音が体育館に響き渡り苗木の頬に紅葉が刻まれる。 ﹁な、苗木君 ﹂ ﹁⋮⋮この、ビチクソがぁぁ ﹁││っ ﹁﹁﹁くぅん⋮⋮⋮﹂﹂﹂ ﹁うっさい﹂ すぐさま舞園、セレス、江ノ島が反応して包丁やナイフなどを取り出すが ! ! ! ! ││﹂ い。いやいや良いんだよ。別に責めてない⋮⋮ただ、そういう考えは嫌いだなって話│ ら誰にも何も言われないし、あるいは疑ってすまなかったと謝ってくれるかもしれな ら世界中戦争だらけ。君はボク達に対する贖罪という逃げ道に逃げてるだけ。死んだ ﹁結局君は単純な力を強さと履き違えているだけなんだ。戦ってこの世が平和になるな オール・オール・アポロジーズ(非)日常編⑥ 298 ﹂ 苗木が不機嫌そうに三人を睨むと捨てられた子犬のような顔をしておとなしくなっ た。 ﹁⋮⋮さいてー⋮⋮いこ、さくらちゃん ﹁⋮⋮む﹂ ﹁朝日奈さんの怒りが他の人に向くよりはましだよ⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮すまない、汚れ役を押し付けて﹂ 朝日奈は体育館から出て行き、大神は去り際に苗木に振り返る。 ! 299 オール・オール・アポロジーズ︵非︶日常編⑦ ﹁なあ苗木⋮⋮⋮﹂ 何桑田くん⋮⋮﹂ ﹁ふん⋮⋮⋮﹂ だ。 さすが体育会系の超高校級に喧嘩の超高校級、不良生徒を相手にしてきた超高校級 苗木は桑田達を眺めながら呟く。 ﹁⋮⋮やっぱり三人とも鍛えてるね﹂ 員で風呂にはいることになりそうだ。 苗木が言うと大和田や石丸、不二咲もついてくる。山田や葉隠、十神を除いた男子全 ﹁そういばシャワー浴びてなかったな。そろそろ夜時間だし⋮⋮うん。良いよ﹂ ? で手を止め振り返る。 ﹂ 苗木はレベルが上がりすぎたモンスターを削除していると桑田が話しかけてきたの ﹁ん ? ﹁⋮⋮一緒に風呂でも入らねえ オール・オール・アポロジーズ(非)日常編⑦ 300 大和田は桶に汲んだお湯を頭から被る。 ﹂ 力は強さと別モンだってよ⋮⋮﹂ ? あれは良い言葉だったぞ ﹁さっきお前も言ってたろ ﹁うむ ! ﹂﹂﹂ ? ﹂ !? ﹂ !? ﹂ ? ﹁⋮⋮⋮なあ苗木はよ、黒幕について何か知ってんじゃねえか 体を洗い終わり四人は湯船に浸かると桑田が話を切り出す。 ﹂ ? 木は全く反応を示さない。 を小さくする不二咲は大抵の男が道を踏み外してしまいそうな色気を出していたが苗 桑田の言葉に苗木が振り返るとタオルで身体を隠す不二咲が居た。顔を赤くして身 ﹁それだけ ﹁⋮⋮⋮不二咲くんが居るね﹂ ﹁⋮⋮⋮お前の後ろを見てみろ﹂ ﹁ところで何で皆向こう向いてるの 三人とも普段の髪型が髪型なだけに別人のような印象を受ける。 苗木が三人に振り返ると水により髪がストレートになった石丸、大和田、桑田が居た。 ﹁﹁﹁は ﹁誰だお前等 ﹁俺には難しくてよくわかんなかったけどな﹂ ! 301 ﹁⋮⋮何でそう思うの ﹂ 苗木はその言葉に四人を見つめる。 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁だから知ってることを話しちゃくれねえか﹂ ﹁ボクたちは信じてるけどぉ﹂ ﹁確かに、あれでは朝日奈くんが疑っていても文句は言えないぞ﹂ ﹁モノクマと仲良いからよ﹂ ? 信用してくれるのは嬉しいが話すわけにはいかない。何せ自分でも荒唐無稽な話だ と思ってるし。 ﹁ッ 本当か ﹂ ﹂ ﹁だ、誰なんだ ! しすぎて他のチームとつぶし合いになっちまったこともあるしな﹂ ﹁⋮⋮⋮まあそりゃ確かに。俺のチームでも別のチームが攻めてくるって身構えて警戒 な﹂ ﹁⋮⋮⋮ あ く ま で 心 当 た り と い う わ け か。確 か に 余 計 な 混 乱 を 生 む の は 得 策 で は な い ﹁⋮⋮⋮⋮言えない⋮⋮確信もないし⋮⋮﹂ !? !? ﹁⋮⋮心当たり程度なら、ね﹂ オール・オール・アポロジーズ(非)日常編⑦ 302 ﹁そーゆーもんか⋮⋮﹂ ﹂ ﹁お、良いじゃねえか、のった ! ﹂ ﹂ ? ﹁そうだよ。これ、皆には秘密でお願い﹂ はビクッと身体を震わせ俯く。 不二咲の言葉に苗木は目を細め不二咲を睨むように見る。その冷たい視線に不二咲 ﹁それは⋮⋮その⋮⋮⋮⋮⋮⋮黒幕が苗木君にとって特別だから⋮﹂ ﹁⋮⋮じゃあ、ボクは何で黙っているんだと思う ﹁黒幕ってさ⋮⋮本当は誰か確信してるんじゃないの﹂ 三人がサウナ室の中に消えた後不二咲が苗木に向かって声をかける。 ﹁⋮⋮⋮⋮ねえ苗木君﹂ そして石丸の提案に大和田と乗り気な桑田がサウナ室の中に入っていった。 苗木を見つめた後石丸はうん、と頷く。 ﹁なになに、おもしろそーじゃん﹂ ! こうじゃないか ﹁⋮⋮わかった。深く聞かないでおこう。ところで兄弟、久々にサウナで根性比べと行 石丸の言葉に脳筋の二人は納得するが不二咲はジッと苗木を見つめる。 ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ 303 ﹁⋮⋮う、うん⋮⋮⋮一つ聞いて良い 苗木君は、その特別な人を殺すの ﹂ ? ﹁⋮⋮⋮辛く、ないのぉ ボクが殺る﹂ ﹂ ﹁そうだね、彼女は殺さなくちゃ⋮⋮⋮ボクがやらなくてもいずれ誰かがやる。だから ? ? キミが呼ぶなんて珍しい﹂ ﹁⋮⋮⋮ねえ、モノクマ、居る ? ﹁なになに 基本的に苗木くんしか呼んでくれないから暇なんだよ。何のようかな ﹂ 後性別は⋮⋮⋮まあ良いか﹂ ﹁え、えっと⋮⋮⋮モノクマって女の人なの ? 不二咲の質問にモノクマは適当に答える。まあそう簡単に答えるはずもないか。 ﹁ボクは人じゃなくてクマだよ ? ? ﹂ ? おいてビクッと震える。 自室に戻った不二咲がモノクマを呼ぶとヒョッコリ現れる。不二咲は自分で呼んで ﹁なにかな ﹂ 苗木はそう言うと湯船から上がり大浴場から出て行った。 ﹂ ? ? 特別な人が見る最後の人間になれるって言うのは、それは幸せなことだと思う けどな ﹁何で ? オール・オール・アポロジーズ(非)日常編⑦ 304 ﹂ というか答えたら黒幕が無能すぎる。 ﹂ ? ? 思う ﹂ ﹁それはまた絶望的な光景だね アドレナリンが染み渡るよ ﹂ ! ? ﹂ ? だからこそ理解した。この二人の間に割ってはいるなど誰にも出来ないと。 そんなある種運命めいたものを感じる。 鏡像と実像のように正反対で同じ。S極とN極のように引き合う。この二人からは 悪意のない邪気の固まりと悪意だらけの正気。 てもうまく説明できないが、それでも似ているという感想を持つ。 モノクマと苗木が仲が良く見える理由。この二人は似ているんだ。何処が、と言われ その言葉に不二咲はああ、そうか。と理解した。 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮愛する人を殺すのも、殺されるのもきっと最高の絶望だと思うよ﹂ ﹁その片方が君自身だったら だが何故かモノクマを見ていると本心なのだと確信できてしまう。 モノクマはゲラゲラ笑う。生憎ロボット越しではそれが本心なのかは解らないはず ! ﹁あ、ごめん⋮⋮あのさ、モノクマは相手を特別に思ってる二人が殺し合ってたら、どう ﹁それ二つ目だよ ﹁あの、一つ聞いて良い 305 ﹁んで 質問はもう終わり ﹂ ﹁モノクマは、苗木君のこと、好き ? ﹂ モノクマはそういい残して去っていった。 ? ? ﹁殺したいぐらい愛してるよ﹂ オール・オール・アポロジーズ(非)日常編⑦ 306 オール・オール・アポロジーズ︵非︶日常編⑧ ﹁何やってんの苗木くん ﹂ ? ﹁お、なになに ﹁えい﹂ 使うの ? ﹂ ﹂ !? 使っちゃうの ? ﹂ 苗木はモノクマを無視して毒薬の瓶を一つ取り出す。 ﹁学園長ってボクなのに ﹁モノクマには聞いてないよ﹂ ﹁これにすれば ﹁ど∼れ∼に∼し∼よ∼か∼な∼が∼く∼え∼ん∼ちょ∼う∼のいうとおり﹂ 棚の毒薬の前に立つと指を一本立てる。 モノクマはそう言いながら苗木の後に続き化学室の中にはいる。苗木は薬の入った ﹁どっかで聞いたような台詞⋮⋮⋮﹂ ﹁今ナレーションがボクのマイブーム﹂ ? 的の物があるからだ﹂ ﹁早朝、苗木誠は普段連れている二人を連れず一人で化学室に来ていた。ここに彼の目 307 ? ﹁ぎゃあああ 口の中が粉っぽい スピーカーが壊れたらどうすんの ! ﹂ !? 苗木はそう言うとトイレに向かい瓶の中に残った粉を洗い流す。そしてタオルで拭 ﹁⋮⋮う∼ん。一応中は洗っておくか﹂ どうせ毒の効かないロボットなのだから飲ませるだけなら校則違反にはならない。 ひっくり返しモノクマの口の中に捨てた。 モノクマは毒薬を取った苗木が殺人を実行すると思ったのか興奮するが苗木は瓶を ! くと再び化学室に戻り懐から別の瓶を取り出す。 ﹂ ? ﹁また 今度はどういう賭け その瓶を使うんだろうけど⋮⋮﹂ ? で、どうかな ﹂ ﹁この瓶を大神さんが取って飲んだらボクの勝ち、それ以外の瓶を取ったら君の勝ち、 ? ﹁ねえ、モノクマまた賭をしよう﹂ る。それを空の瓶の中に入れ棚に戻す。 バネロより遥かに辛い世界一辛い唐辛子だ。ご丁寧に青の食紅を混ぜ紫色に変えてい 苗木の言葉にモノクマは引いたような声を出す。キャロライナ・リーパー、それはハ ﹁うわ⋮⋮﹂ ﹁キャロライナ・リーパーの粉末﹂ ﹁何それ オール・オール・アポロジーズ(非)日常編⑧ 308 ? ﹂ ﹁⋮⋮正気 率だよ あ、それと報酬は前回 その沢山の瓶の中から、誰がとって誰が飲むか当てるなんて天文学的な確 ? ﹁ボクはその天文学的確率で希望ヶ峰学園に入学した幸運だよ ? ﹂ ? ﹂ ? 二回目の賭事が始まった。 ? なんか暗いね、何かあった ? もっとも、苗木はそんな場の空気を呼んでおきながらあえてかき回すように明るい様子 苗 木 が 食 堂 に 来 る と 既 に 全 員 が 集 ま っ て い た。昨 日 の こ と も あ り 雰 囲 気 は 暗 い。 ﹁おはよー。あれ ﹂ 苗木はクククと喉を鳴らしモノクマもうぷぷぷと笑う。こうしてモノクマと苗木の ﹁万が一ボクが負けたらね﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮賭けに負けたら、本当に誰か殺すんだよね かく直した学園長室のドアの破壊。この二つを見逃してほしい﹂ ﹁モノクマを襲った件で一つ⋮⋮後は、これから行うであろう監視カメラの破壊とせっ ﹁三つ 則違反を三つ見逃して﹂ と同じで上階の解放かボクが殺人を行うか⋮⋮後、追加でボクが勝ったら大神さんの校 ? 309 を振る舞う。 ﹁普段雌を連れてるお前が現れないから死んだと思ったが、生きていたか﹂ ﹁かませが生きてるのにボクが死ぬはずないじゃん﹂ ﹁だ、そうだぞ桑田﹂ ﹂ 大神さん来てないね 全く遅刻なんて⋮⋮﹂ ? ? 際に苛立っているのだろうが。 ﹁ふん。まあいい⋮⋮それより、貴様は大神についてどう思う ﹁すごい筋肉だよね﹂ ﹁馬鹿にしてるのか⋮⋮﹂ ﹂ 十神は苗木にバカにされたことを感じ取り苛立ったように顔をゆがませる。まあ実 ﹁⋮⋮⋮貴様﹂ 校級︵笑︶の十神くんでも﹂ ﹁ああ、確かに大神さんに一人で対面したら一方的に殺されるもんね。全ておいて超高 ﹁あいつが来ていたら、俺の方がここにはいない⋮⋮﹂ ? 真っ先に学級裁判で死ぬクロもカマセと言えばカマセだが。 苗 木 は 十 神 に 対 し て 言 っ た が 十 神 は 何 故 か 桑 田 に そ の 言 葉 を 流 し た。ま あ 確 か に ﹁俺 !? ﹁あれ オール・オール・アポロジーズ(非)日常編⑧ 310 ﹁え、今更気づいたの ﹂ ? と愚痴る苗木。ちなみにこのハ モンスターズでも全ての種族の中で必ず一体は同レベルになると洗脳が解 しかも怒りの力とかでレベルが二倍になるんだよ けるってハメキャラがいて苦労したよ﹂ ! ﹂ ? バランスは大事だよ。あ、ちなみにボクはバカじゃないからね。 ? ﹂ !? ﹂ ! ﹁まあ大神さんが本当に裏切っていたとしてもだからどうしたって話なんだよね、人の 苗木は何時になく毒を吐く。おかげで朝日奈からはものすごい形相で睨まれていた。 ﹁俺は馬鹿じゃねーべ ﹁いやいや、野球さえ出来れば勉強なんて必要なかったんだから仕方ないだろ﹂ ﹁まあ、確かに俺は馬鹿だけど﹂ ﹁飛び火した 点を取る自信がある﹂ 少なくともテストで葉隠君と山田くんと桑田くんと朝日奈さんと大和田くんより高い ﹁命がけのゲームだよ ﹁ゲームバランスって⋮⋮そんな馬鹿げた理由で メキャラは初代トガミだったりするのだがあえて言わないでおいた。 ? る。戦え ﹁⋮⋮まあ、フェアじゃないよね。一人だけ知ってるとかゲームバランスがおかしくな ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ 311 罪は消えない。背負うか放るか⋮⋮ま、大神さんみたいのは自分の罪を馬鹿みたいに死 ﹂ 罪を背負わずヘラヘラしてる方が最低だよ と、朝日奈のビンタ⋮⋮⋮ではなく拳が苗木の顔面を捉える。 ぬまで背負うんだろうけど﹂ ゴス ﹁罪を背負うのが馬鹿みたいってなに⋮⋮ ⋮⋮そんなこと言えるあんたこそ⋮⋮死ねば良いんだよ ! ? ! ﹂ ず気絶したことを確認すると朝日奈に報告する。 ﹂ ﹂ ﹁一度ならず二度までも苗木君の柔らかい頬を ﹁殺す ﹁調子乗ってんじゃねえぞ水泳牛 ﹁﹁﹁⋮⋮⋮﹂﹂﹂ ﹁⋮⋮三人とも、苗木君が起きた時何言われても知らないわよ ! 霧切の言葉に三人はおとなしくなり、霧切はふぅ、とため息をはいた。 ? ! ! ﹁段々この三人の扱い方がわかってきたわね﹂ ﹂ 朝日奈は苗木に向かって叫ぶが霧切が苗木の頬をツンツンつつく。何の反応も示さ ﹁きゅう⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮朝日奈さん、聞こえてないみたいよ。気絶してるもの﹂ オール・オール・アポロジーズ(非)日常編⑧ 312 オール・オール・アポロジーズ︵非︶日常編⑨ ﹁⋮⋮じゃ、今日は三人ともおとなしくしててね﹂ 昨日、自分が気絶した後朝日奈に襲いかかりそうだったと霧切から聞いた苗木は舞園 達におとなしく待機するように言って食堂に向かう。 今度は集まりが悪いね⋮⋮﹂ 今回ばかりは止まらないかもしれないから当然の処置だ。 ﹁やっはろー。あれ 仲良くダウンしたのだろう。 単純な奴らのことだ。桑田辺りが昨日の夜にサウナでリベンジだ とでも言って三人 苗木が食堂に顔を出すと珍しく石丸達などが来ていない。まああの馬鹿⋮⋮もとい ? ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁ボクの顔に何か付いてる ? 朝日奈が睨んできたので笑みを向けるとふん、と投げやりな返答が帰ってくる。嫌わ ﹁目と鼻と口⋮⋮﹂ ﹂ 活した経験があれば行動を先読みすることぐらい容易い。 山田はまた寝坊だろうし、不二咲はおそらくアルターエゴの所によってる。二年間生 ! 313 れたものだ、当然だが。 ﹁あ、集まりが悪いわね⋮⋮﹂ そして新たに腐川がやってきた。 これで現在食堂に居るのは朝日奈と腐川と葉隠と苗木。来る順番とまだ始まってい ないこと以外は前回と同じだ。 しょ 気をつけなさいよ﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁む、無視してんじゃないわよ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ こっちは忠告してやってるのに ﹂ ! ? ど﹂ ﹂ あ、あんたは良いわよね。大神と友達で⋮⋮どうせ裏切られるんでしょうけ ﹁いい加減にしてよ ! パンパカパーン ! 何時も元気なジェノサイダー 何これ ! ブルの上にあった胡椒が倒れる。 ﹁ハッケヨ⋮⋮ハクショーイ ! とうとう朝日奈が腐川の言葉に我慢の限界がきたのか掴みかかる。そして⋮⋮テー ! ないわよ ﹁そう、あくまで無視するのね⋮⋮えひ、えひひ⋮⋮ここまで無視されるとおかし⋮⋮く ! ﹁と、当然よね。裏切り者が居るんだもの⋮⋮朝日奈、あんたあいつと仲良かったんで オール・オール・アポロジーズ(非)日常編⑨ 314 どういう状況 アタシ襲われてる ﹂ いくらアタシがかわいいからって女に襲われる趣 ? ﹁ありゃん ﹂ ﹁はいそこまで⋮⋮⋮﹂ かる⋮⋮⋮が。 ジェノサイダーはそう言って太ももに括り付けていた鋏を抜き取り朝日奈に切りか 味はねえっての ? ! ぎゃあああ 辛い ! 寧ろ熱い ﹂ ジェノサイダーが振るった鋏は朝日奈ではなく苗木の掌に突き刺さる。 ? ! ﹁えい⋮⋮﹂ ﹁ッ !? 口の中がものすごく辛い もはや痛いぃぃぃぃぃ 勝手にやったことだもん﹂ ﹁⋮⋮⋮べ、別に助けてなんて頼んでないもん⋮⋮⋮﹂ ﹁ボクも頼まれてないよ !? 切り裂き赤い粉末が長い舌にかかりゴロゴロのたうち回る。 は ! ﹁そして胡椒﹂ ﹁ぶえーくしょい !? 腐川に戻った後キッチンにかけていく。水を飲みに行ったのだろう。 ! ﹁⋮⋮ごめん⋮⋮ムキになって、ありがと﹂ ? ﹂ そして苗木がジェノサイダーに向かって小瓶を投げるとジェノサイダーは反射的に ! 315 朝日奈の言葉にも苗木が笑みを返すと流石に罪悪感を感じたのかうつむいて謝罪す る。 ﹂ ﹁⋮⋮⋮保健室﹂ ﹁ん く、治療には苦戦していた。 体育系の部活でも︵当たり前だが︶手が貫かれるような怪我をするなどあるはずもな 保健室で朝日奈に消毒してもらい包帯を巻いてもらう。 ﹁⋮⋮⋮うん﹂ ﹁保健室で看てあげる。それでチャラ⋮⋮﹂ ? ﹁俺に対しても失礼だべ﹂ ﹁くたばれ海栗頭⋮⋮いや、そげぶ先輩に失礼だったね。というか海栗に失礼だった﹂ 邪魔しないで欲しいべ﹂ ﹁うんうん。良かったべ、目の前で人が死んだら寝付きが悪くなっちまう。俺の安眠を ﹁そうだね⋮⋮ありがと⋮⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮はい、これで貸し借りなしね﹂ オール・オール・アポロジーズ(非)日常編⑨ 316 ﹂ ﹂ 折角ためたヘイトが減ってる と焦る。 と、その時保健室のドアが開き鬼が⋮⋮もとい大神が入ってくる。 ﹁さくらちゃん⋮⋮ ﹁⋮⋮苗木よ、その傷は ﹁私を庇って⋮⋮﹂ ﹂ 大神と朝日奈を見て、苗木はあれ ﹁ぐぬぬぬぬぬぬぬぅ⋮⋮ ? ? !? ﹂ !! ﹂ !! ! 前回と同じではないか。 ﹁葉隠よ⋮貴様等が憎いのは我のはずだ⋮狙うなら、何故我を狙わん ﹂ ﹁お、お、俺は別に⋮⋮オーガを憎んでる訳じゃ⋮⋮﹂ ﹁何故だぁぁぁあああああッ ﹁この前も言ったじゃん。親しいものが狙われるって﹂ !! ﹂ 大神の叫び声に葉隠は腰を抜かす。朝日奈の代わりに傷ついたというのにこれでは ﹁ひぃぃぃぃぃぃッ だぁぁああああああッ ﹁お⋮のれ⋮⋮我のせいだ⋮⋮我が不甲斐ないばかりに⋮⋮なんて⋮事だ⋮⋮なんて事 いが。 いやまあ、結局ジェノサイダーと取っ組み合いになってる時点で仕方ないかもしれな ? !! 317 ﹁苗木 もう、見直してそんした ﹂ 苗木の言葉に朝日奈は険しい顔で苗木を睨む。 ! ﹂ ? 何の騒ぎ⋮⋮ ﹂ ⋮⋮⋮⋮苗木君、暫く手袋をした方がいいわ。あの三 ? ﹁な、苗木君。びっくりしたー⋮⋮﹂ 苗木が脱衣場に入ると不二咲がアルターエゴと話していた。 ﹁やあ不二咲くん﹂ ﹁うーん、流石にそれは﹂ ﹃何とかならない、ご主人タマ⋮⋮﹄ ﹁風呂⋮⋮﹂ ﹁どこ行くの ﹁そうさせてもらうよ⋮⋮﹂ 人、何をしでかすか﹂ ? 金取りから逃げ延びてきただけありものすごい逃げ足だ そして葉隠は足をもつれさながら全速力で保健室から逃げたして言った。さすが借 ﹁た、た、た、た、た、た⋮⋮助けてぇえええー ! ! ﹁⋮どうしたの オール・オール・アポロジーズ(非)日常編⑨ 318 ﹁どうした ﹂ ? ﹁あるよ﹂ ? ︾ ? ネットワークも監視されてるかもしれないもんね﹄ ! ﹁じゃ、行ってくる﹂ を折りたたんで服の中にしまう。 データを作らせておく。その約束をアルターエゴが了承すると苗木はノートパソコン を取っておけば別の端末でも復活できたはずなのだ。ならばあらかじめバックアップ 前回アルターエゴは破壊されてしまったが、アルターエゴはデータだ。バックアップ ﹃えへへ⋮⋮﹄ ︽良し、いい子だ︾ ﹃うん バックアップをする事を約束できる ︽ネ ッ ト ワ ー ク に 繋 げ て も 良 い け ど、真 っ 先 に ど こ か の サ ー バ ー か 端 末 を 乗 っ 取 っ て 苗木は不二咲に退いてもらいキーボードを打つ。 ﹁ちょっと失礼﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮え ﹂ いって⋮その意志は尊重してあげたいけど、そんな場所⋮⋮﹂ ﹁あ、う ん ⋮⋮ ア ル タ ー エ ゴ が ネ ッ ト ワ ー ク に 接 続 し た い っ て 言 う ん だ。役 に 立 ち た 319 オール・オール・アポロジーズ(非)日常編⑨ ﹁う、うん⋮⋮気をつけてねぇ﹂ 320 オール・オール・アポロジーズ︵非︶日常編⑩ ﹂ ﹁江ノ島さ∼ん﹂ ﹁え うん⋮⋮いいよ⋮⋮﹂ ﹁ちょっと聞きたいんだけど、サバイバルに役立つ本教えてくれない ﹁ありがと。じゃ、戻ろっか⋮⋮ ﹂ これで多少不自然だがトイレの前に護衛をおけた。後ろから殴られるのは勘弁願う。 苗木は江ノ島に本を渡しトイレの中に入る。 ﹁ちょっと持ってて。トイレ行ってくる﹂ 苗木は本を抱えて江ノ島と共に歩き、思い出したように立ち止まる。 ? ﹂ 苗木は直ぐにやってきた江ノ島の頭をなでてやると嬉しそうな顔をする。 ﹁⋮⋮⋮♪﹂ ﹁うん呼んだ呼んだ﹂ 苗木が二階で江ノ島の名を呼ぶと唐突に江ノ島が現れる。 ﹁⋮⋮呼んだ ? 江ノ島は苗木の言葉に従い図書室で適当な本を見繕ってくれる。 ? ? 321 ﹁⋮⋮資料はなくなってるか﹂ まあ別に興味ないから良いんだけど。 苗木はアルターエゴにケーブルを繋ぐ。 ︽それじゃあ任せたよ︾ 頑張るよ﹄ に笑った。 ごほげほ ! ﹁ううん。待ってないよ⋮⋮﹂ がは、ごほ ! と、その時⋮⋮⋮ !? ﹁さくらちゃん 開けて 江ノ島さん ﹂ ! 開けてよ ! ﹂ ! でも鍵がかかってる部屋のドア壊すのは⋮⋮﹂ ﹁やれ ﹁え ! 三階につくと娯楽室の前で叫びながらドアを叩く朝日奈が居た。 ! 木は顔を見合わせ音が聞こえた三階に向かう。 叫び声が聞こえ続いてドサッと何かが床に倒れるような音が聞こえた。江ノ島と苗 ﹁がああああッ ﹂ それを聞き苗木がカメラ付近を撫でるとアルターエゴは意味を察したのか嬉しそう ﹃うん ! ﹁お待たせ江ノ島さん﹂ オール・オール・アポロジーズ(非)日常編⑩ 322 ? ﹁頭を撫でて上げる﹂ ﹂ ! ﹂ ? ﹂ !? ﹂ ? ﹂ ? 江ノ島が戸惑うように何かを言い掛けたが苗木が黙らせる。朝日奈は皆を呼んで来 ﹁え ﹁息臭い黙れ﹂ ﹁⋮⋮あの、苗木君⋮⋮ ﹁さくらちゃん⋮⋮死んじゃったの 苗木は大神に触れそうつぶやくと朝日奈がよろける。 ﹁え ﹁⋮⋮⋮死んでる⋮⋮⋮﹂ く。そこには倒れている大神と床に散らばった紫の粉があった。 苗木は蹴られた衝撃ではずれかかったドアをどけ、椅子をずらすと娯楽室の中を覗 ﹁ま、そもそも娯楽室に鍵なんてないから誰が壊しても同じなんだけどね⋮⋮﹂ ﹁えへへ⋮⋮⋮﹂ ﹁よくできました﹂ だったのか予想外の手応えに一瞬だけバランスを崩すも直ぐに立て直した。 江ノ島は勢いそのままドアを蹴りつける。が、扉の向こうに椅子があったのが予想外 ﹁えい 323 なきゃと、ふらふら娯楽室から出て行った。 ﹁ねえ苗木君。大神さん⋮⋮﹂ ﹂ ﹂ ﹁うん生きてるね。倒れた時テーブルの角に頭ぶつけて気絶してるみたい﹂ ﹁⋮⋮⋮だよね﹂ ﹁江ノ島さんからみた感想は ﹁えっと⋮⋮放っておいても大丈夫だよ み、水 ﹂ 着させる。よくよく見れば青と赤の粉が混ざっているようだ。 苗木は素が出てきている江ノ島の言葉を聞き、床に散らばった紫の粉を指でこすり付 ? ? ⋮⋮││││ッ !? ! ﹂ ? ﹁連れて⋮⋮来たよ⋮⋮﹂ でまたモノモノマシーンを使おう。と、考えた時⋮⋮。 苗木はモノクマからモノクマメダルを受け取るとパーカーのポケットに入れる。後 ﹁おお、どうもどうも﹂ ﹁は∼い。ちえ、苗木くんの勝ちだね。はいこれモノクマメダル﹂ ﹁モ∼ノ∼ク∼マ 何の疑いもなく苗木の指を舐めた瞬間口を押さえてどこかにかけていった。 ﹁あ、あ∼ん ? ﹁はい江ノ島さんあ∼ん﹂ オール・オール・アポロジーズ(非)日常編⑩ 324 ﹁おわッ オ、オーガ !! ﹂ !? ナンマイダナンマイダ なんと言うことだ ﹁ま、マジかよ⋮⋮﹂ ﹁くっ ﹁ひいー ! ﹂ ﹂ ﹂ 江ノ島さんも居るとのことでしたが⋮⋮⋮﹂ ﹁そんな⋮⋮ ﹁と、とうとう人が死んじゃったの ! ! ? ﹂ !? を渡すと涙目になりながら飲み干した。 口元を押さえる。苗木がモノモノマシーンの景品の一つであるミネラルウォーター ﹁ッ 次に霧切は床の粉を舐め│││ ると場の空気が凍る。 皆が大神を死んだと決めつける中霧切が大神の首筋に触れ脈を確認し、その事を告げ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮大神さん、生きてるわよ﹂ ﹁ひろいへにあっは⋮⋮﹂ ﹁あら ! ? ! ﹂ ﹁そうか⋮大神さくらが殺されたのか﹂ ﹁あらぁ⋮こりゃ死んじゃってますね﹂ 325 ﹁あ、ありがとう⋮⋮これは唐辛子ね⋮⋮わざわざ食紅を混ぜて色を変えて⋮⋮こんな ことをする人は1人だけよ﹂ ﹁それはいったい﹂ ﹁アナタに決まってるじゃない苗木君﹂ ﹁そうです。ボクが毒薬の入った瓶の中身をキャロライナ・リーパーに変えました﹂ ﹁⋮⋮⋮えげつないわね﹂ って怒っ 苗木の言葉に霧切は顔を青くして引いていた。そりゃそうだ、世界一辛い唐辛子を飲 ませるのだから。 ! ﹂ その毒薬に偽装した唐辛子とやらは誰かが殺人を行おうとした結果ではなく大 神の自殺しようとした結果そこに散らばっているというのか ? ﹁⋮⋮⋮⋮ッチ、つまらん﹂ を決めた自殺がこんなギャグで終わるなんて絶望的だよね∼﹂ ﹁そうです。大神さんは自殺しようとして、結局失敗してるのです それにしても、覚悟 を起こさないっけ。 十神が信じられないというように叫ぶ。そういやこいつは人が自殺するなんて考え !? ﹁なに た朝日奈さんが偽の証拠を用意して道連れ計画を立てそうだったから﹂ ﹁だってこうでもしないと大神さん責任感じで自殺した挙げ句皆のせいだー オール・オール・アポロジーズ(非)日常編⑩ 326 ! ﹁はにゃ ﹂ のか ? ﹂ ? ﹂ ? ﹁どうぞどうぞ﹂ ﹁あ、じゃあその遺書ボクにちょうだい 筆跡確認する時に使うから﹂ ﹁あのかませ眼鏡のせいでボクが本物の遺書を出す暇もないよ。ああ、やだやだ⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮意外。正直十神くんは外に出るまで警戒する必要があると思ったのに﹂ 十神はふん、と鼻を鳴らして娯楽室から去っていった。 ﹁⋮⋮⋮え ﹁こんな馬鹿のいるゲームなど馬鹿らし過ぎて出来やしない﹂ ﹁⋮⋮十神、まだそんなことを⋮⋮﹂ ﹁まさか⋮⋮このゲームの根本を否定する馬鹿が居るとはな。ああ本当に馬鹿らしい﹂ あ⋮⋮⋮うん﹂ ﹁え ? ﹁おい朝日奈。お前はこの現状を見て、苗木の言うように偽の証拠を用意しようとした 327 ? 閑話④ 皆が飲み、食 ﹁ランキングが思ったより集まったので、もう少し引き延ばすことになったらしいよ﹂ ﹂ 苗木は浴衣を着ながらモノクマに話しかける。 ﹁へえ、じゃあ今日は何すんの ﹁夏も終わりが近づいてきたし、ちょっと遅いけど夏祭り⋮⋮﹂ 夏祭り。 そこに差別は存在しない それは希望ヶ峰学園の予備学科と本科の蟠りがほんの一時消える催し い、踊る ! も起きないだろうか⋮⋮。 どいつもこいつも間抜けな顔だ。ああ、平穏だ平凡で絶望的、何かと予想外のことで と、浴衣姿の江ノ島はアイスピックでたこ焼きを突き刺しあむ、と食べる。 ! ? ﹁ま、原作じゃどうなのか知らないけど﹂ ! ﹁やあ江ノ島さん。奇遇だね⋮⋮﹂ 閑話④ 328 起きた。 不意に声をかけられ振り向くとモノクマのお面をつけた苗木が居た。 ﹂ ﹂ 別に珍しくもないでしょ、同じクラスなんだから﹂ ﹁苗木が話しかけてくるなんて予想外﹂ ﹁うん ﹂ ﹁他のクラスメートは誘わないの ﹁江ノ島さんこそ戦刃さんは ? ? ? そらく彼処にいるのだろう。 ? ﹁あれ 彼処の綿飴、大和田くんじゃない ﹂ ? ﹂ ? 苗木は綿飴を友達割引で2つ購入し片方を江ノ島にわたし片方をとる。 ﹁ん ﹁あはは。言えてるね⋮⋮それにしても毎回祭りの度に思うんだ﹂ ﹁ほんとだ、あの髪型なんだから焼きトウモロコシやってりゃ良いのに﹂ ? 苗木の言葉に江ノ島は笑みを浮かべ祭りを回ることにした。 ﹁⋮⋮ふ∼ん。いいよ。おもしろそうだし⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮なら二人で回らない ﹂ 苗木が周囲を見渡すと遠くの方で人だかりが出来ていた。そこは射的の屋台だ。お ﹁知らなーい、その辺で射的やってんじゃない ? 329 つまり、これを溶かして元の大きさに戻せば精々ザラメ数個分。それに三 ﹁食べれば嫌でもわかるけど、綿飴って砂糖を溶かして糸状に伸ばして綿っぽくしてる だけでしょ ﹂ ﹂ ! ﹂ 悪いけどあたし貞操は大事にしてるんだよね﹂ 手をつかみ屋台の隙間を通り林に隠れる。 ﹁急にどうしたの ? ﹁別にそういう事じゃないよ⋮⋮あれ⋮⋮﹂ ﹂ 江ノ島の言葉に苗木は呆れたように笑う。と、不意に何かに気づいた苗木は江ノ島の ﹁メタい発言はよしなって﹂ ﹁番外編だからって作者が両方出してんでしょ﹂ ﹁双子かな そのまま移動していると両手に花の予備学科の先輩がいた。 ﹁ふぁ、眠い∼﹂ ﹁まかせろ ﹁日向君、頑張れ 江ノ島も苗木の言葉に同意した。それに賛成だと何処からか聞こえた気がする。 ﹁ああ、確かに絶望的ぼったくりだよね⋮⋮﹂ 百円。綿飴機を動かす電気代を考慮しても、あの店は酷いぼったくりだ﹂ ? ! ? ﹁おかしいな∼、苗木お兄ちゃんの匂⋮⋮姿が見えた気がしたんだけどにゃ∼ ? 閑話④ 330 苗木が指差した先にいたのはカラフルな髪の集団。年はおそらく小学生ぐらいだろ う。 ﹂﹂﹂﹂ ﹂ ﹁今度はあっち捜してみるのじゃ∼﹂ ﹁﹁﹁﹁おー ﹂﹂﹂﹂ ﹁そしておごってもらうのじゃ∼ ﹁﹁﹁﹁おぉぉおおお ﹁⋮⋮⋮ねえ苗木、何であたし誘ったの ﹂ いなくなったのを確認すると戻り、再び屋台を見て回る。 苗木はその小学生達を呆れた目で見送った。 ﹁⋮⋮⋮あいつら﹂ ! ! ! 遅れて爆音が響いた。 ﹁⋮⋮⋮花火﹂ ? ﹁⋮⋮⋮これ、明滅を利用した洗脳だね﹂ ﹂ ﹁へえ、確か超高校級の花火師のはずだけど、くだらないことするね⋮⋮ん で平気なの ? ボクたち何 江ノ島はチョコバナナを食べながらふーん、と呟く。と、その時空が明るく光り数秒 ﹁だって番外編じゃないと江ノ島さんとデート出来ないもの﹂ ? 331 ﹁綺麗だと思ってもそれに執着する価値観がないんでしょ。あたしもあんたも⋮⋮あた しは今、花より団子﹂ 江ノ島はそう言ってチョコバナナの二口目を食べる。 あんた本当にあたしのこと大好きね ﹂ ﹁ボクは花火より江ノ島さんの方が綺麗だと思うしね﹂ ﹁あはは ! ﹁ん ﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮苗木﹂ ﹁そりゃね、この世界全てを敵に回しても愛してるって言えるよ﹂ ! るとニヤニヤ笑っていた。 ? ことを全て水の泡に変えるから⋮⋮﹂ ﹁うん。任せてよ。キミを殺して、キミの創った絶望的世界も元に戻す。キミのやった ﹁そんなにあたしが好きならさ、ちゃんとあたしを絶望させてよ ﹂ 呼びかけられ振り向いた苗木の口の中にチョコバナナが差し込まれる。江ノ島を見 ﹁あげる﹂ ? に話す。異常な会話でありながら通常な雰囲気に、誰もがその異常に気づけない。 と、二人はそれこそ青春の一ページのような、互いに意識している男女の会話のよう ﹁うぷぷ。あの世からその光景が見れたらほんと、絶望的だねえ﹂ 閑話④ 332 ﹁時に江ノ島さん。食べかけを人に押しつけるのは良くないと思うよ﹂ ﹁うわ、絶望的な対応﹂ 333 疾走する青春の絶望ジャンクフード︵非︶日常編① ﹁グ・リ・コ⋮⋮﹂ タンタンとモノクマと苗木は寄宿舎の一階のタイルを踏みながら歩く。 ﹁チ・ョ・コ・レ・ー・ト﹂ ﹂ グリコをしていた。そして一人と一匹は寄宿舎をぬけ学園にたどり着く。ちなみに ﹂ ! 苗木の勝ち。 パチパチパチ ! そして、レバー捻り出て来たのは⋮⋮。 ﹂ モノクマはカプセルを開け中身を掲げる。はたしてそれは、○と ﹁糊付けされたバッチ∼ バッチだった。一度割れたのか、糊でつけられた後がある。 ﹁あ∼、こりゃゴミだね﹂ × ! ﹁それを決めるのはボクだよ﹂ を重ねたような 苗木はモノモノマシーンのある購買部に到着すると早速モノクマメダルを投入する。 ﹁ワー ! ﹁来ましたモノモノマシーン 疾走する青春の絶望ジャンクフード(非)日常編① 334 ﹁舞園さんと江ノ島さんとセレスティアさんの部屋を調べるといいよ﹂ ﹁⋮⋮⋮人間は弱い生き物なんだ。現実から、目を逸らしちゃうほど﹂ ﹁ああ、知ってたのね﹂ ﹂ ? ﹁申し訳ねえ ほんますまんかった ﹂ ! ﹂ 大神を怪我させた張本人である葉隠と腐川が大神に謝罪する。大神本人は気にして ﹁わ、悪かったわね⋮⋮⋮﹂ ! 健室での就寝の許可を貰って休んでいたのだ。 保健室のベッドで横になっていたのは頭に包帯を巻いている大神だ。特例として保 ﹁ああ、すまん。迷惑をかけた﹂ ﹁さくらちゃん⋮⋮大丈夫 苗木達は食堂ではなく保健室に集まっていた。 そして翌日。 苗木はふっと陰のある笑みを浮かべモノクマが同情したようにポンと足を叩いた。 ! そう言ってバッチを受け取り再びレバーを回す。 ⋮⋮またモノクマパーカー ! ﹁⋮⋮五着か。最近何故かパーカーが減ってきてるしちょうど良いや﹂ ﹁モノクマパーカー⋮⋮⋮モノクマパーカー 335 ないと片手を振った。 ﹁いやー、良かった良かった。これで一件落着だね⋮⋮⋮ん 何かな皆 ﹂ ? ﹂ 日奈に顔を向ける。 ﹁さくらちゃん助けてくれてありがとね。手段はともかく⋮⋮それと、ごめん﹂ と朝 誰が、何時、どの瓶を何のために使うかなんて び、瓶の中身代えてたくせに﹂ ﹁ボクは預言者や占い師じゃないんだぜ ﹁⋮⋮なんか言うことないの ? わかるわけないじゃん。だから、ボクは悪くないから、ボクは謝らない﹂ ? ? 苗木がケラケラ笑っていると朝日奈がおずおずと話しかけてくる。苗木はん ﹁⋮⋮あのさ苗木⋮⋮﹂ ! 大神はそう言って朝日奈を見る。 ! ﹂ ? 我とケンイチロウはそのような関係では⋮ ! ﹁我が死んだら悲しむ者がいる。中にも外にもな﹂ ち、違う !? ﹁大神さん外に恋人でもいるの ﹁な ﹂ ﹁お前には世話になったな⋮⋮おかげで我は取り返しのつかぬ事をせずにすんだ﹂ どうなるかと思ったけどね﹂ ﹁まあ自分でヘイト集めてただけだし。朝日奈さんとジェノサイダーが喧嘩したときは ? ﹁あ、あんたねえ 疾走する青春の絶望ジャンクフード(非)日常編① 336 ﹁へ え、恋 人 と 聞 い て 真 っ 先 に 想 像 す る の は そ の ケ ン イ チ ロ ウ っ て 人 な ん だ。覚 え と こー﹂ 苗木は大神の言葉にケラケラ笑う。 ﹂ ! ﹂ ? ﹂﹂﹂ !? と首を傾げている。 ? ﹁ああ なるほど⋮⋮﹂ ﹁自分を入れ忘れてるよ﹂ がらあれ 大神の言葉に動揺が走る。唯一動揺しなかったのは苗木だけ。江ノ島は指を折りな ﹁﹁﹁ いう事だ﹂ ﹁⋮⋮⋮我が知っていることは2つ。一つは、この学園にいる生徒は15人ではないと 言うことは、答えられなくても良いと言うことだろう。 十神は苗木をギロリと睨んだ後大神に知ってることを応えろと尋ねる。知る限りと ﹁黙れ。おい、大神、さっさと話せ⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮ツンデレ ﹁信用してほしければ現状でお前が知る限りの情報を話せ﹂ ﹁あんたまだ ﹁ふん。暢気なものだな。あいにくと、俺は大神を全面的に信じたわけではない﹂ 337 ! ﹁15人じゃないって⋮⋮⋮なんだそりゃ﹂ ﹁16人目がいる。何者かは知らんがおそらく黒幕と間違いなく繋がっている⋮⋮ある いは黒幕自身かもしれん﹂ ﹁⋮⋮黒幕は学園長ではないかもしれんのか⋮⋮﹂ 大神の言葉に難しい顔をする一同。ついこの間アルターエゴから黒幕は学園長の可 能性が高いと言われ、早速それを否定されたのだ。完全な否定ではないが。 ﹁⋮⋮何々 ﹃大神さくらは知っている情報の肯定否定は出来ても自分から教えること と、そこまで言い掛けた瞬間全員の電子生徒手帳が震える。 のだ。黒幕は、我らの体にあることをしている。そのあることとは⋮⋮﹂ ﹁うむ。内通者として幾度となく黒幕とやりとりした結果我はある事実を知るに至った ﹁⋮⋮まあこの際それは置いておこう。次は何だ⋮⋮﹂ 疾走する青春の絶望ジャンクフード(非)日常編① らしたら負けても絶望が味わえるのだからどちらでも良いのだろう。 苗木はこりゃまた抜け道だらけと校則だな、と電子生徒手帳を眺める。まあ向こうか 神さんがカクカクシカジカと教えることが出来ないのか﹂ を禁ずる﹄⋮⋮⋮⋮つまり、ボクらが質問してこれはこうかと尋ねることは良くても大 ? そう言ってヒョッコリモノクマが現れる。よく見ると何か持っている。それは、アル ﹁うぷぷぷ。危ない危ない。後少しでネタバレされるところだったぜ﹂ 338 ターエゴだ。 ﹂ ﹁あ、アルターエゴ ﹁僕の天使 ﹂ !? ﹂ パソコンを床にたたきつけた。 ﹁ぬぁぁぁあああああ ! ﹂ ﹂ いけど、ネットに繋ぐのは見過ごせないよ だから壊してやった ハッ ﹁よくも⋮⋮⋮よくも僕の天使おぉぉぉぉ ﹁⋮⋮⋮うわぁ、キモ﹂ アーッハッハッハッ ! ﹁新しい階層が解放されたよ。早速頑張って探しなさいな﹂ える。そしてモノクマは思い出したように言う。 山田はこのままではモノクマに攻撃を加えてしまいそうなので慌てて大神達が押さ ! ! ? ﹁ふいー、すっきり。あのね、ノートパソコンの中のデータはボクのプレゼントだから良 た山田をかわしその上に立つと一仕事終えたように額を腕でこする。 モノクマは砕けたノートパソコンを何度もがんがん蹴り、止めようとタックルしてき こーしてこーしてさらにあーしてやる ﹂ それを見て制作者の不二咲とストーカーの山田が悲鳴を上げる中モノクマはノート !? ﹁こんなものー ! !? 339 疾走する青春の絶望ジャンクフード(非)日常編① 340 言いたいことを言い終えたモノクマはそのまま消えていった。 ﹂ 疾走する青春の絶望ジャンクフード︵非︶日常編② ﹁では、探索を始めよう ﹂ ? ﹁⋮⋮お前も来たか﹂ ﹁十神くん⋮⋮﹂ ? ﹁これまた凄惨な場所だな。一体何があったのか⋮⋮﹂ ﹁これが人類史上最大最悪の絶望的事件って奴じゃない ほら、希望ヶ峰学園の生徒な 壁には銃痕や切り傷、そして一面に広がる血。床には人型の白線。 匂いと形容するような匂いが立ちこめてきた。 苗木が教室の中に入ると人間の血と脂と涙と唾液と硝煙など全て含めて死と絶望の ﹁ま、いっか今更⋮⋮﹂ 二年目は別段教室に入る理由もなく、図書室などしか行っていない。 かった。周りに圧倒されてそんな余裕もなかったから。 苗木は5ーCと言う立て札を見ながら呟く。最初の一年はよく希望ヶ峰を見ていな ﹁そう言えば、希望ヶ峰学園って全部で何年何組あるんだっけ 何時もの様に石丸が切り出し詮索が始まる。今回苗木は一人で行動していた。 ! 341 ﹂ ら類い希なる才能の持ち主達が一気に死んだわけだし﹂ ﹁おしい ﹂ ﹁あったあった ! そ の 辺 は 無 修 正 だ か ら グ ロ 映 画 で 耐 性 つ け た つ も り の 奴 で も 吐 く か も ね。 つけなよ ? ﹂ ? 部道場に来ると大神と霧切が居た。 ﹁あ、やあ大神さん、霧切さん﹂ 苗木は十神の言葉に了解しDVDを懐にしまい次の場所に向かう。 ⋮⋮⋮﹂ ﹁後 で 見 れ ば い い。参 加 を 自 由 に し て 途 中 退 席 も あ り に し て な。お 前 が 持 っ て い ろ ﹁これ、どうする モノクマはそう言うと居なくなった。言いたいことはそれだけだったようだ。 ﹂ うぷぷぷ ! ﹁肝心な部分は編集しといたらボクにとっては安心だからね。でも、見せるときは気を ? 希望ヶ峰学園至上最大最悪の事件のDVD∼⋮⋮⋮はい、苗木くん﹂ てるけどねと思いながらモノクマに振り向くもなにやらゴソゴソ何かを探していた。 十神の言葉に苗木が適当なことを言うとモノクマが現れ否定する。苗木は内心知っ ! ﹁くれるの 疾走する青春の絶望ジャンクフード(非)日常編② 342 ﹁苗木か⋮⋮﹂ ﹁ここ、武道場 ﹁そうかな ﹂ ﹂ ﹁なかなか風情があるわね⋮⋮﹂ 開なのは確か色葉田田田とかいう植物学者が品種改良した桜だったか。 苗木はロッカーの木札を差し入れして遊んだ後さくらに目を向ける。室内なのに満 ﹁そのようだな﹂ ? ﹂ ? 大神はふっ、と懐かしそうに笑った。桜、果たして外に残っているのだろうか ﹁我の名はこの花から来ている。毎年、道場の皆と見に行ったものだ⋮⋮﹂ ﹁意外ね。大神さん、そういうのを知っているの ﹁ほう。ならば、ここから出れたら我が日本の桜の名所を案内してやろう﹂ ﹁私は海外の暮らしが長かったから、こういう日本的な風景が新鮮なの⋮﹂ ? 壁や天井にペンキで青空が描かれている。制御パネルを見てみると前回と変わらな そして次は植物庭園。 た。 不覚にも桜の木の下に生きた人間を埋めているモノクマヘッド達を想像してしまっ ? 343 い。 ﹁苗木っち、気をつけるベ。植物に気を許すと人間狩りが始まるベ と、その時。 ﹁うむ。不思議でならない﹂ 大和田と石丸がツルハシを持ってやってきた。 ﹁ほら、ここに暮威慈畏大亜紋土って彫り込まれてんだろ ﹂ ﹂ 苗木はモノクマフラワーを見上げながら無性に何かを花の中に入れたくなってきた。 はモノクマフラワー。 葉隠の言葉に桑田は呆れたように言う。それにしても、相変わらずデカい花だと苗木 ﹁だからねーってんなの﹂ ! あったのだ。なるべく誰にも知られたくない内容の⋮⋮⋮。 苗木はツルハシをしばらく見つめた後、植物庭園を後にする。少し確かめたいことが まあ覚えがないのではなく覚えてないが正しいのだが。 者はいないそうだが﹂ ﹁まことに不思議だ。兄弟には覚えがないし、兄弟のチームでも希望ヶ峰学園に入った ? ﹁おい、妙なもん見つけたぞ﹂ 疾走する青春の絶望ジャンクフード(非)日常編② 344 苗木がやってきたのはナマモノと書かれた扉、生物室。 前回、この扉は開かなかった。予想としてはこの生物室に中にあるものがあったから だと予想している。そして予想が正しければ今は何もないはず。果たして⋮⋮ ﹁⋮⋮⋮鍵がかかってる﹂ ﹁苗木くんなら開けるための鍵を持ってるけどね﹂ ﹂ それと 苗木の呟きに答えたのは唐突に現れたモノクマ。もちろん苗木は全く驚いている様 子はない。 ﹂ ﹁ねえモノクマ、ここが閉まってる理由って、ここに見せたくない何かがあるの も理由なく閉めてるの ﹁うぷぷぷ。さあねー、想像してみたら 皆、一通り探索が終わったろ 食堂に集合だ ﹂ ! 出し開けようとした時⋮。 ﹁おーい ! ﹁⋮⋮⋮ッチ﹂ ? 生物室、前回この中身は見ていないが、何かがある予感がしていた。懐から鍵を取り モノクマは答える気が無いらしく、さっさと行ってしまった。 ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ ? ? ? 345 石丸の声が聞こえさすがに現れなければ不審がられるかとあきらめ鍵をしまい食堂 ﹂ に向かって歩き出した。途中、舞園や江ノ島達と出会う。 ﹁苗木君。何か見つかりました ﹁⋮⋮ああ、あの血だらけの。何があったんでしょうね ? ﹂ ﹂ ﹁どうしました ? ﹂ ? うるさい。 いつか見た光景と違うのは扉が壊れているかいないかだけ。後音楽の音量がヤケに モノクマ達がダンスを踊っていた。 苗木が四階に差し掛かると何やら音楽が聞こえ、学園長室に続く通路の陰から覗くと んだろ ﹁⋮⋮いや、あそこ⋮⋮モノクマの奴、何で扉が直ってるのに学園長室の前に集まってる ? ﹁⋮⋮⋮⋮ん 望ヶ峰学園内の話。つまりあそこの教室が事件の始まりの場所なのだろう。 苗木が人伝に聞いただけの話。希望ヶ峰学園至上最大最悪の事件が起こったのは希 何となくだが想像できている。 ﹂ ﹁出口は相変わらず無いみたい。それと、気になる教室を見つけた﹂ ? ﹁ロクな事じゃないのは確かだよね⋮⋮﹂ 疾走する青春の絶望ジャンクフード(非)日常編② 346 ﹁苗木君、そろそろ行かないと石丸君に文句言われちゃいますよ ﹂ ? 園長室には近づけないのだから気にしておくだけですませておこう。 オートで動いているとはいえモノクマはモノクマ。ああしてたむろされた時点で学 ﹁ああ、うん。そうだね⋮⋮⋮﹂ 347 疾走する青春の絶望ジャンクフード︵非︶日常編③ ﹁それでは報告会だ。と言っても、まず最初にはあの教室がでてくるだろうが⋮⋮﹂ 石丸の言葉に全員が表情を強ばらせる。見たのだろう、あの血と脂の匂いが立ち込め る教室を⋮⋮。 ﹂ ! ﹂ ? あ、や⋮⋮そんな感じなのかなぁって⋮⋮﹂ ? いから探索するルートが変わったのだろうか ! ね﹂ ﹁おいなんだくれよんだいもんって、暮威慈畏大亜紋土だ ﹂ ﹁後 は く れ ⋮⋮ く れ ⋮⋮⋮ く れ よ ん だ い も ん の 名 が 彫 ら れ た ツ ル ハ シ が あ っ た こ と だ というか何正体バラしかけてるんだこの残念は。 ? そう言えば朝日奈はあの教室を見たのか。前回は見ていないはずだが、生き残りが多 ﹁え ﹁江ノ島ちゃんそんな匂い知ってんの ﹁匂いもまるで戦場みたいだったよね﹂ 葉隠は見てなかったらしい。 ﹁な、なんじゃそら 疾走する青春の絶望ジャンクフード(非)日常編③ 348 ﹁ああそうそれそれ⋮⋮﹂ 大和田の言葉にまた首を傾げることになる一同。 本来あるはずのない物がある。いや、モノクマが用意したと言えばそれまでなのだが あのモノクマが動揺させるためだけにそんな見つからない可能性もある小さな証拠を 残すとは思えない。 ﹁﹁﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂﹂﹂ 葉隠は明らかに考えていたらしく全員が冷めた目を葉隠に向ける。 ! では僕、擬人化の題材に⋮⋮﹂ は無かったけど﹂ ﹁桜 ﹂ ﹁後は開かない生物室だね。B級映画なんかじゃキメラが居たりするけど⋮⋮⋮あるい 方、想像していたキャラの服装を大神に着せた姿を思い描いてしまったのだろう。 苗木がそう言って大神を指すと山田が血涙でも流しかねない形相で睨んできた。大 ? !? ﹁桜の擬人化なら名前として持ってる人をモデルにすれば ﹂ ﹁後は武道場だね。と言っても、ここは満開の桜があったって事以外は特に変わった物 ﹂ 俺がんなこと考えるわけねえって⋮⋮ けだから大きめの文字を書いても誰にも気づかれないからね葉隠くん ? ﹁な、何言ってんだ苗木っち ! ﹁他にはでっかい花のある植物庭園があったね。まあ、壁や天井に青空が画かれてるだ 349 ﹂ は拷問の末不死身になった男が封じられてるとかあるいは幽霊だったり﹂ ﹁お、おっそろしいこと言ってんじゃねえよ ﹁いやいや、ここは希望ヶ峰学園だよ 不死身の実験ぐらいあってもおかしくないって。 ﹁だいたい、何が不死身だ。そんなものあるわけがないだろう﹂ ! 弄りたくなったのだ。 別にこの程度で彼女が不機嫌になるはずもないがちょっとしたいたずら心で彼女を めの声で言う。 話の趣旨がだいぶずれるなか、苗木はカメラを見ながら希望という単語をあえて大き れても復活したり。まさしく希望の宝箱だね﹂ それに人間の肉体は神秘に満ちているんだ。成長が止まったり、一生植物状態って言わ ? 子込むとか﹂ ? ﹁⋮⋮⋮確かに不死身になっちまいそうだべ﹂ ﹂ ﹁不死身の人間なんて居るわけないじゃん馬鹿じゃないの ﹁おめーが言ったんだろ ! ﹂ 死したらAEDで復活させるを繰り返す。もしくは、全身に先の尖っていない螺子を螺 ﹁失血死しないように輸血しながら足の先からゆっくり少しずつ切っていく。ショック ﹁いやでも思わず不死身になる拷問ってなんだべ﹂ 疾走する青春の絶望ジャンクフード(非)日常編③ 350 ﹁⋮⋮うまく話を逸らしているみたいだけど彼処には何があるのかしら と、葉隠を諫めながら霧切が話しかけてきた。 ﹂ さすがに彼女を誤魔化すのは無理のようだ。 ﹁想像だけどね⋮⋮⋮多分死体﹂ ﹁なぜそういう想像に至ったのかしら ﹂ ? ? 五階ばかりに気を取られて気づかなかったがそうなのか⋮⋮とはいえ、二度も ? わね﹂ ﹁⋮⋮⋮あるいは、誰かが学園長室の鍵を持っていてそれに警戒している可能性もある 扉を破壊されたなら当然三度目を警戒するだろう。不思議なことでもない﹂ ﹁ほう ね、学園長室の前で﹂ ﹁そう言えば、五階の話ではありませんがまたモノクマさん達がたくさん踊ってました だ。もっとも、確信に近い憶測であるが。 苗木の言葉に十神も納得する。生物室は覗いたことが無いので、こればかりは本心 ﹁⋮⋮いや、黒幕の性格を考えれば確かにありそうだな⋮⋮﹂ る場所って想像だけどね⋮⋮﹂ 体って元セイブツでありイキモノであり、ナマモノじゃん ま、正確には死体を保管す ﹁黒 幕 の 性 格 的 に ナ マ モ ノ と イ キ モ ノ と セ イ ブ ツ を か け て る と 思 う ん だ よ ね。で、死 ? 351 ﹁校則があるわけだしな。校則をつけた後にも壊されたかと言って、不自然と言うほど でもないがやはり何かあるのではと思ってしまうな﹂ 何かある、か⋮⋮。 確かに気になる。霧切は慌てていて戦刃のプロフィールだけを取っていたが苗木は 78期生全てのプロフィール、つまり本物の江ノ島盾子のプロフィールもすでに苗木の 手の中、今更何を気にしているのだろう ? 物事を深く考え込もうとすると決まって脳内に文字が浮かんでは消えていく。彼女 は何を隠している ? ﹂ ? 十神は呆れたようにため息を吐き、だがちょうど良いかと呟きナイフを手に取ると刃 くわけがないだろう。というか、その言い方だと景品として持っているのか⋮⋮﹂ ﹁あんなモノをやっているのはお前ぐらいだろう。それにわざわざ今日開いた五階にお ﹁モノモノマシーンの景品を誰かが捨てたのかな 腐川が机の上に置いたのはナイフだ。苗木が持っているのとは少し違うが⋮⋮。 いざ浮かんだ文字を組み込もうとしていると腐川の声に現実に引き戻される。 ﹁あ、あたしはこれを見つけました﹂ り■■■ん ﹃し﹄﹃ん﹄﹃う﹄﹃か﹄﹃ょ﹄﹃り﹄﹃け﹄ 疾走する青春の絶望ジャンクフード(非)日常編③ 352 をも持ち持ち手を苗木に向ける。 ﹂ ? 後のメンバーは視聴覚室に向かった。 あの教室、という単語で想像したのか桑田と山田と不二咲と朝日奈は食堂に残った。 認める。最初から見る気のある奴だけついてこい﹂ の名は希望ヶ峰学園史上最大最悪の事件、だそうだ。見に来るかは自由だし途中退席も ﹁モノクマ曰く、あの教室で何が起こったかこのDVDに記録されているらしい。事件 苗木はそう言って懐からモノクマから渡されたDVDを取り出す。 ﹁これだよね﹂ ﹁では、そろそろDVDを見るとするか、苗木⋮⋮﹂ る舞園も居るし前回のように寝込みを襲われることはないだろう。 前回と同じく苗木が預かることになってしまった。まあ、今回は深夜部屋にやってく ﹁お前が持っていろ。刃物の管理にはなれているのだろう 353 疾走する青春の絶望ジャンクフード︵非︶日常編④ 視聴覚室に来た苗木達は早速モノクマから渡されたDVDを写す。 ﹂ モノクママークのカウントダウンの後、14人の少年少女が映される。 ? ﹂ ? ﹃おい、お前等 ﹄ あんなモノを送りつけて、脅しのつもりか ﹃あ、あの映像本物なの ﹃な、なんで僕たちが﹄ ﹃こんな夜中に有り得な∼い﹄ ? ! ﹄ 苗木が呟くなか、モニターに映った映像はドンドン進んでいく。 ﹁ああ、うん⋮⋮彼、殺し合いになったら傷一つなく生き残りそうだなって﹂ ﹁⋮⋮苗木君 んな服を着ているのかわからないが残った髪の異様に長い男を見て、苗木が固まる。 と、映像の中に新たな三人が加わる。と言っても内二人はモザイクがかかっておりど 違ってルール無用のな⋮⋮﹂ ﹁あるいは、俺達のようにコロシアイをさせられたのかもしれんぞ。それも、俺たちと ﹁⋮⋮これって、彼らが殺されたという事かしら 疾走する青春の絶望ジャンクフード(非)日常編④ 354 !? ﹃うんうん ﹃はぁ ﹄ 何言ってんのよあんた、頭おかしいんじゃないの﹄ いことから悪ふざけにつきあわされたと思っているのだろう。 そして謎の人物の言葉に一人の少女が反応する。とはいえそこまで焦った様子がな と呟く中、全員が映像に気を取られていた。 映像のなかでモザイクがかかった人物の変声機越しのような声を聞き苗木がポツリ ﹁あ、懐かしい台詞﹂ ﹃生徒会の皆さん。今からあなた達には殺し合いをしてもらいます﹄ だったらむしろおかしい。 いうか話からして脅しの材料となる映像を見せられて集められたようだからやる気 集められた少年少女達は集められた理由は知らなくともやる気ではないらしい。と ! う。何故か 死んだから⋮⋮。 ⋮⋮⋮あらん !? 頭を銃弾で撃ち抜かれて。 ? ﹁ひいいぃぃぃいいいい 皆して面白い映像みてるじゃないのー ? ﹂ と、生徒会長らしき男が叫ぶがおそらく少女はその言葉を途中しか聞けなかったろ ﹃呑まれるな、我々生徒会がここで動揺したらこいつらの思うつぼだ﹄ ? ﹁⋮⋮⋮何故付いてきたんだこいつは。おい、学園の何処かにある俺の眼鏡のスペアを !? 355 良い条件 んじゃ、行ってきまーす ﹂ ! 探してこい。見つけられたらくれてやる﹂ ﹁うほ ! そして、再び映像に視線を向ける。 ﹁まあ、スペアなどどこにも無いがな⋮⋮﹂ をとばす。報酬がお気に召したのかあっという間に去っていった。 気絶しジェノサイダーへと変わった腐川に十神は呆れたようにため息をはくと命令 ! 優柔不断なあんたたちの為にいいもの持ってきた ! れたくない過去が乗っているのだろうか ﹃他にも、金に家族に秘密に私怨にちょめちょめ、いろんな意味で激重、ダメ押しの動機 ? 密が収められたと思われるビデオテープが入っていた。これは、第二の動機と同じ知ら アタッシュケースの中の一つには、○○の秘密と書かれた恐らく生徒会メンバーの秘 ﹃今のあんたらに一番必要な物だよーん﹄ ﹃そ、それは﹄ タッシュケースを持ってくる。 教 卓 の 人 物 が 淡 々 と 説 明 す る な か 別 の モ ザ イ ク が 脳 天 気 な 様 子 で 台 車 に 乗 っ た ア よー﹄ ﹃どうもー■■■■■ちゃんでーす ﹃あなたたちの選べる選択肢は二つ、私の言う通りに殺し合うか、私に殺されるか﹄ 疾走する青春の絶望ジャンクフード(非)日常編④ 356 の塊。これ、どうしちゃおうか ﹄ 日本刀、銃、クナイや手裏剣、果てはチェーンソーまで選り取り見取り。 ﹃なんなのコレ﹄ ﹃落ち着くんだ、殺し合いなんて馬鹿げてる、僕らは希望ヶ峰学園の生徒会だ ﹃そうだよ私たちは仲間ジャン、仲間同士で殺し合う必要なんてないよ﹄ ﹄ ガラガラと音を立て、教卓の上に置かれていた鞄から大量の凶器が出てくる。 ? 数週間経っている俺たちはまだ1人も死んでないの ? ﹄ !? 母を呼びながら刀を振るう少女。手から落ちた写真はカメラからではよく見えない ﹃お母さんが⋮⋮お母さんがね、お母さんが、母さんが母さんが母さんが⋮⋮⋮﹄ ﹃何を、何をしているんだ と、画面の中で小柄な生徒が先程の眼鏡の女子に刀で背後から貫かれていた。 ら。そんな、罪悪感が薄くなる動機を用意して後は誰かが誰かを殺せば簡単⋮⋮﹂ くない過去があるから、欲しいモノがあるから、何時自分を殺しに来るかわからないか ﹁人に人を殺させる方法なんて簡単だよ。罪悪感を消せばいい、夢があるから、知られた というのに﹂ ﹁殺し合い、か。実際起きるのか 秘密のビデオテープを眺めていた。 と、生徒会長の言葉に生徒会の一面が同意する中、一人の眼鏡をかけた少女がジッと ! 357 が母親の写真なのだろう。 ﹁⋮⋮こいつも自分を殺しに来るかもしれない、そういう正当な理由が出来た殺意は、止 まらない﹂ 苗木の言葉を証明するように、画面が目まぐるしく変わり次々人が人を殺す映像が映 る。大丈夫だと良いながら少女を刺す大男、その大男に死体を投げつけられ倒れ、首を 絞められるが少女の死体からナイフを抜き大男の首を刺し死体を何度もナイフで刺す 男。 心中しようとしている男女の男を貫き先程殺した少女から奪った スコップを持ち追いかけてくる少女を槍で貫きお前のことが好きだったと叫ぶ男は、 カップルだろうか ﹄ 男の後ろに先程の少女がチェーンソーを持って近づいていく。 せなかったのだろう。が、その一線を越えてしまえば残るのは後悔。狂ったように笑う 自分は好きな人を嫌々殺したのに、互いに愛する者同士で殺し合おうとした二人が許 スコップで槍を打ちつけ倒れた男の下敷きになった女にも槍を突き刺す。 ? ! ﹃やだ、やめ⋮⋮助け││ ﹄ ﹃悪くない悪くなない俺は、悪くないいい ! ﹄ ﹃わ、私だだだって⋮⋮死にたくなないい⋮仕方ないじゃない⋮⋮﹄ ﹃だっ、だっ、だずげでええええええっ 疾走する青春の絶望ジャンクフード(非)日常編④ 358 ! その光景を表すなら、絶望。 それ以上に相応しい言葉は見つからないだろう。何時の間にかその場に残っていた のは苗木と十神、霧切と大神。誰一人として⋮⋮訂正、苗木以外で平静を保っている者 は居ない。 全員が顔を青くする中、苗木が見つめているのは長髪の赤目の男。彼はいまだに誰に も何もされていない。 ﹄ そういえば希望ヶ峰学園のスレに、印象に残らずそこにいても気づけないという才能 を持った生徒が居ると書かれていたが⋮⋮⋮。 と、再び画面が切り替わり眼鏡の男子が映る。 ﹃⋮⋮⋮⋮⋮﹄ ﹃うわあぁぁぁあ ﹄ のか銃を下ろし⋮⋮チェーンソーに火を入れる。 銃を持っている相手に臆することなく淡々と告げる男。眼鏡も異様な気配を察した ﹃アナタでは僕には勝てません﹄ ﹃な、何だお前⋮⋮﹄ 狂ったように笑った男は、そこで漸く長髪の男に気づき慌てて銃を向ける。 ﹃やった、生き残った。ざまあみろ⋮⋮うひゃひゃひゃひゃ⋮⋮うえ ! 359 ! 大ぶりのチェーンソーをかわした長髪の男はそのまま眼鏡の男の腹に掌底をたたき 込んだ。 眼鏡の男は壁まで吹き飛び窓ガラスを割り倒れていく。そして眼鏡の男にとって不 ﹄ 運なことに床で跳ねたチェーンソーがちょうど倒れた先の首あたりにあった。 いぎゃあぁぁぁああああいいいああああ !! 苗木くん予想はずしてやんの ﹂ ! ﹂ ! と、苗木は突然やって来たモノクマに何時もの用に冷静に話しかける。 ﹁かすり傷でも傷は傷だよ ﹁かすり傷だからノーカンで﹂ ! を見つけ苗木は目を細めた。 そこで映像が途切れスタッフロールが流れる。その中に、カムクライズルと言う文字 であろう誰かに何かを問いただすように。 男は頬の血を拭いカメラ見る。苗木達ではない、リアルタイムでこの映像を見ていた 銃を撃ったのは、首と胴体が別れた先程の眼鏡の少年。 が響き弾丸が男の頬を掠る。 長髪の男は教室から去ろうとする。が、不意に立ち止まり振り向こうとした時、発砲音 柔らかな果肉をミキサーにかけるような水っぽくグロテスクな音と叫び声が響く中、 ﹃っひ││ !? ﹁うっぷっぷ 疾走する青春の絶望ジャンクフード(非)日常編④ 360 ﹂ 自分の歌が聴かれるのが恥 ? ? ﹁ところでモノクマ、なんでBGMが﹃翼をください﹄なの ずかしかったのか居なくなっとる⋮⋮﹂ ﹁その頃エヴァン○リオンにハマっててね∼⋮⋮⋮ありゃ 361 疾走する青春の絶望ジャンクフード︵非︶日常編⑤ ﹁カムクラプロジェクト、ねえ⋮⋮﹂ 苗木は視聴覚室から帰ってくると図書室で見つけた書類を開く。 人工的に作る万能の天才⋮⋮。あの長髪の男はまず間違いなくカムクラプロジェク トの被験者だろう。 ﹁呼びましたか ﹂ ﹁さてと、おーい雌い⋮⋮セレスさ∼ん﹂ する警戒心も減るか⋮⋮⋮。 いやいや、警戒しろよ十神。まあ苗木という明らかに怪しすぎる奴がいれば霧切に対 警戒されていないのだろう。 まあ前回と違い死体の前で平気な顔していると言う光景がないわけだから、そこまで ﹁⋮⋮そういえば霧切さん。今回は鍵取られてなかったなあ﹂ 確信していた。 まあこれだけなら格闘技もこなせる諜報員の可能性もなくはないが苗木は何となく ﹁人から気づかれない印象操作に、人一人を壁際まで吹き飛ばす格闘技術⋮⋮﹂ 疾走する青春の絶望ジャンクフード(非)日常編⑤ 362 ? 苗木が本を閉じ廊下に出て脱衣場に入り名を呼ぶと、セレスが唐突に現れる。 別にそれぐらい構いませんが⋮⋮﹂ ? は未知という。だが苗木にはそのどちらも当てはまらない。 未知とは無限の可能性だ。それを希望と呼ばすに何と呼ぶ 苗木はシャッターの鍵を開け持ち上げると二階に向かった。 ﹁さあて、それじゃあ行くとしますか⋮⋮﹂ ? この先は苗木にも未知の領域。ある者は人は未知に恐怖するといい、ある者は絶望と うど良い頃合いだろう。 苗木は寄宿舎の階段前に立ちシャッターを見ながら呟く。時刻は9時15分。ちょ なぁ⋮⋮﹂ ﹁に し て も、ボ ク が 言 え た 義 理 で も な い け ど 前 回 の 霧 切 さ ん っ て 本 当 に 怪 し か っ た よ ﹁じゃ、九時までにお願いね⋮⋮﹂ ﹁ るだけ取っといて﹂ ﹁⋮⋮舞園さんと江ノ島さん誘ってさ、麻雀でもしてモノクマからモノクマメダル取れ 363 ﹁⋮⋮うわ﹂ そこはまるで廃墟のような有様だった。確か、ここで人類最強決定戦が行われたのを 苗木は見ている。 あれは凄かった、炎のような闘気を纏った大神と底冷えするような殺意を纏った戦刃 の闘い。ぶっちゃけあれを観戦した唯一の存在である苗木はまあ、ある意味運が良かっ たのだろう。 ちなみにここ、本来の苗木達の部屋である。 ﹂ ﹁何かないかな∼、具体的には日記とか⋮⋮⋮ん 音無涼子の記憶ノート れ松田さん ⋮⋮あれ、こ ? 恋の人物だったはず。なんかムカついてきたな、髭でも描いてやろうか⋮⋮。 ページをめくっていくと男の顔が描かれたページを見つける。確か江ノ島盾子の初 ? ? て真っ先に一階に部屋を移していたがああいうのは希有な例だろう。 部屋の中に入るとワリと中は無事だった。まあ葉隠なんかはすぐに部屋を駄目にし が崩れることはなかった。 数時間後、漸く人が通れる程度の隙間が出来たのでその隙間を通る。運良く瓦礫の山 掘り起こせば⋮⋮⋮﹂ ﹁江ノ島さんの部屋は∼⋮⋮⋮うわ、通路が瓦礫に埋まってる。ま、いっか。とりあえず 疾走する青春の絶望ジャンクフード(非)日常編⑤ 364 と、その前にもう少し探しておくかと引き出しなどを開けていくともう一つノートを 見つけた。 だ。 ただろう。特に霧切が死んだシーンを見せられれば。次は、普通に殺されている場合 活を見せられること。まあ、今回は苗木のせいで起きていないが前回は相当絶望してい 学園長の現状は二つの可能性がある。一つは生かされこの学園で起きる殺し合い生 ノートを懐にしまい苗木は瓦礫の隙間を通り、学園長の個室を目指す。 ﹁さてと、次は学園長を探さなきゃね﹂ 木は確かな希望を感じた。 誰よりも愛しい少女の絶望という名の幸福を他でもない自分で与えられることに苗 ミの望みを叶えてあげられる﹂ ﹁あったあった。良かった良かった、これでキミに最高の絶望を与えてあげられる。キ 恐らく松田夜助の最終的目標。 とはいえ運便りで、だからこそ︽幸運︾らしい苗木はそれを見つけることが出来た。 部分以外は読んでいないだろう。 それは記憶の制御に関するレポート。だが、飽きっぽい彼女のことだ。どうせ必要な ﹁⋮⋮なる程、これを使ったのね﹂ 365 ﹁おっじゃましま∼す⋮⋮⋮居ないね﹂ 返事しなきゃ秘蔵のお酒飲んじゃうよ∼⋮⋮﹂ 苗木は学園長の個室に入り辺りを見回すが誰もいない。 居ないの∼ ? 当然、誰かが苗木の声に反応するはずもなく、苗木は酒瓶を一つ取ると中身を口に含 ﹁学園長∼ ? まず∼⋮⋮大人ってなんでこんなの平気な顔して飲めるのかな﹂ み⋮⋮。 ! のが一番だ。 苗木は呆れ半分嬉しさ半分といった顔で隠し部屋にはいる。やはり家族は仲が良い さんの名前を⋮⋮あ、開いた。本当に娘好きだなあの人⋮⋮﹂ コー⋮⋮うん。開かないね。というかあの人、妻一筋とか言ってたし⋮⋮んじゃ、霧切 ﹁⋮⋮⋮希望ヶ峰⋮⋮は、違うか⋮⋮じゃあ、黄桜公一⋮⋮も違う。大穴狙いで年下サイ にそれらしいプログラムを見つけた。どうやらパスワード式だ。 押しても引いてもビクともしない。なので再び部屋を探索。するとパソコンの画面 叩くと他の壁と音が違う。見つけた⋮⋮⋮。 不意に隙間のある壁を見つける。 そして学園長を探してゴミ箱やベッドの下を探し、最後に壁をコンコン叩いていくと 直ぐに吐き出し口元を拭った。 ﹁ぺっ 疾走する青春の絶望ジャンクフード(非)日常編⑤ 366 ﹁ここにも居ないか。まさか、本当に殺されたのかな ⋮⋮ん ﹂ ? ﹁白骨死体 ﹂ ネ ク ロ マ ニ ア パカッと蓋を開けると中の人物と目があった。まあ、目玉、無いんだけど。 不意に苗木は楽しげな包装が施されたプレゼントボックスを見つける。 ? た。 そこそこ交友もあった訳だし花でも添えた方が良いのだろうか た⋮⋮。 骨を放るとカラカラ子気味の良い音を立てる。そして、苗木はふとある写真を見つけ んてどうでも良いか。ボクは探偵じゃないんだし﹂ ﹁まあ、いっか⋮⋮死因は⋮⋮頭蓋に罅が入ってるけどそこまで酷くない。まあ、死因な ? 引きこもり生活⋮⋮外界と隔離してまだ数ヶ月の間、苗木は割と学園長と話してい ﹁⋮⋮花でも添えてあげるべきか﹂ だがこの状況から考えて間違いなく学園長の遺骨だろう。 霧切曰わく当たるも八卦、当たらぬも八卦程度の、葉隠の占いよりマシ程度の的中率 ﹁⋮⋮⋮男性の骨だよね。それも成人をとっくに越えた⋮⋮﹂ ど死体に詳しい霧切の仕事に付き合わされた経験から骨の特徴を読みとる。 苗木は前回の殺し合い生活で実は超高校級の死体愛好家ではないかと疑っていたほ ? 367 と苗木の言葉に抗議するように重なり合っていた骨が崩れ床に当たる。 ﹁なる程、学園長はロリコンだったのか⋮⋮⋮﹂ カラン 苗木は霧切仁の骨をプレゼントボックスに戻しながらため息を吐く。 ﹁はあ、こんな時にこまるが居ればな⋮⋮﹂ 再びカランと音を立てる。これは抗議なのか感謝なのか⋮⋮⋮。 ﹁冗談冗談⋮⋮⋮ロリ切さんと学園長の写真か⋮⋮ちょうど良いから持って帰ろう﹂ ! なんか入りにくいな⋮⋮﹂ ? 幽霊が⋮⋮。 ? ﹂ ? 何とか起き上がりベッドの上によじ登り、苗木は静かに目を閉じた。 にも気づけなかったようだ。 床を這いながらベッドに向かう苗木。苦しみを感じなくなってしまった分、体の変調 ﹁そ、そういえば⋮⋮前回熱だしたっけ⋮⋮⋮﹂ 不意に苗木はバタリと倒れる。身体にうまく力が入らない⋮⋮。 ﹁⋮⋮⋮⋮ありゃ 彼女がここにいればあるいは学園長から色々聞けたかもしれないのに。 苗木こまる。彼女は、﹃本物を見る﹄事が出来るのだ。何が ぐいぐい押し込みながら漸く蓋を閉じると先程呟いた妹の名をもう一度呟く。 ﹁あれ 疾走する青春の絶望ジャンクフード(非)日常編⑤ 368 ﹂ 疾走する青春の絶望ジャンクフード︵非︶日常編⑥ ﹁苗木君が消えた ﹂ ? 苗木くんどこにいんの ﹂ 仕方ないなぁの○太くんは⋮⋮﹂ ? ﹂ ﹁苗木くんの話してたよね 誰かがボクを呼んでいる ﹁貴様も知らんのか﹂ ﹁はっ ! ? ﹂ ﹁⋮⋮苗木君どこに行っちゃったんだろぉ﹂ ﹁探した方が良くねえか ? ? ﹁不二咲君と兄弟の意見には賛成だが⋮⋮どこを探す モノクマも見つけられんのだぞ モノクマは十神の言葉に突然訳の分からないことを言い立ち去った。 !? ? ﹁何をしにきたのかしら と、その時突然モノクマが現れる。苗木が居ないので全員がギョッとする。 ﹁苗木くんの話してた ﹁⋮⋮ふむ。では朝食が終わった後散策に⋮⋮﹂ ﹁はい⋮⋮⋮苗木君の部屋に行ったんですけど蛻の殻で⋮⋮﹂ 朝食のため食堂に集まった一同、舞園達が切り出した言葉に全員が困惑していた。 ? 369 ﹂ ﹁⋮⋮⋮舞園さん、アナタ、苗木君の匂いを追えるのよね これかしら ﹂ ? それ俺ももらったぞ⋮⋮﹂ ? ﹂ ﹁どうせ手がかりがないんだ。取りあえず2日だ。それ以上行方がわからなかったら本 再び黙り込む一同。十神ははぁ、とため息を吐いた。 ﹁単純に考えて、カメラの無いところなのでしょうがそれだけじゃね⋮⋮﹂ わけだ⋮⋮﹂ ﹁どうやら、最初からまくつもりだったようだな。これで、手がかりが完全になくなった 置く。 霧切がテーブルの上に香水の瓶をおくと次々に様々な人物が香水をテーブルの上に ﹁そういえばもらいましたな﹂ ﹁ぼ、僕もぉ﹂ ﹁僕もだ﹂ ﹁ん ? ﹁普段ならともかく、苗木君は最近香水をしてて⋮⋮⋮﹂ たような視線が舞園に向く。 石丸の言葉に皆が黙り込む中、霧切が出来れば言いたくない言葉を言うと全員の呆れ ? ? ﹁香水 疾走する青春の絶望ジャンクフード(非)日常編⑥ 370 ﹂ ? 格的に探すぞ﹂ 1日ではないのですか ? ﹂ ? 本人に関わりがある動機は二つだけで、その内一つはすでに聞いている。 ﹁ふむ⋮⋮﹂ 苗木の場合両親と妹だった。 の場合は家族ではなく信用におけるとある人物だったが⋮⋮。 DVDに、何か映ってなければ或いはと思ったが内容は十神と同じようなモノ。十神 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮これは普通か﹂ い。だが、その事を抜いても怪しすぎる。 苗木誠の両親のどちらかが元十神一族の者がいる会社に勤めていてもおかしくはな そこ居る。追放された元十神一族が誰かに聞かせたりするのだ。 苗木誠と言う人物は、怪しすぎる。十神家の事情を知る者は、実を言うと一般にそこ 十神は視聴覚室に来ていた。目的の物は、苗木の名が書かれたDVD。 ﹁そうだな⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮なら、今日は解散 ﹁1日だけならまだ慌てる必要もないだろう⋮⋮﹂ ﹁2日 371 結局手がかりは無しだ。 ﹂ ﹂ だが残念だったな、このDVDには大した手が ﹁あら、苗木君を探す必要がないと言っておきながら手がかり探し かりはない﹂ ﹁⋮⋮そういうお前も同じ用件だろう ? ﹁⋮⋮⋮そう⋮⋮ところで十神君。アナタから見て、苗木君はどんな存在かしら ? ? この男、探偵だと言わなければ絶対に気づかなかったと確信できる。 ? さて、十神は夜時間が近づいてきた時間に、体育館に来ていた。 う 分たち一族について知っていても不思議ではないと思ったのだろう。しかし何故だろ 十神が思い出したように言うが霧切は特に何の反応も見せなかった。十神家なら自 族⋮⋮名は確か霧切﹂ ﹁なんだ、お前探偵だったのか⋮⋮⋮そういえば聞いたことあるな、表に出ない探偵の一 ﹁⋮⋮⋮謎だらけ、探偵としては興味深い存在なのだけど﹂ 命を単純に終わらせるという素直な意味とも思えん﹂ を話しているのかもわからん。アイツは黒幕を殺すなどと言っていたが今では黒幕の ﹁訳の分からん奴だ⋮⋮人を信じているのかいないのか分からんし、本音と嘘のどちら 疾走する青春の絶望ジャンクフード(非)日常編⑥ 372 モノクマから苗木が見つかったか聞くためだ。 おい⋮⋮﹂ ? ﹁モノクマが動かなくなった ﹂ 大神が食事を取りに行き、葉隠が分解を進めていくと爆弾を見つける。 モノクマはかなり複雑で、分解には時間がかかり結局朝になってしまった。朝日奈と とは思わなかったが⋮⋮。 ンに興味がわき、メダルを一枚もらいやった結果の景品だ。まさかこんな形で役に立つ そして、不二咲にノートパソコンを渡す。何時だったか苗木が言ったモノモノマシー ﹁お前はモノクマのプログラムを読み取れ﹂ 十神は工具セットを葉隠に渡し、不二咲に向かって歩く。 ﹁こいつを解体するぞ⋮モノクマの構造を知るチャンスだ⋮それと⋮⋮﹂ 確かに動かなくなっている。 た。 十神が集めた理由を話すと霧切はモノクマを軽く押す。モノクマはあっさりと倒れ ? すぐさま他の生徒たちを呼びに行った。 十神が呼びかけるが何の反応もしないモノクマ。不審に思いモノクマに触れ、十神は ﹁⋮⋮おい、聞きたいことがある⋮⋮⋮ 373 不二咲もプログラムの解析を始め、しかしそれほどのことをしても黒幕から何の接触 もない⋮⋮。 ﹁⋮⋮さらな││﹂ ﹁もう少し、攻勢をかけてみましょう﹂ よし、行くぞ皆 ﹂ 十神が顎に手を当て、提案を出そうとするが霧切に先に言われ数秒固まる。 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁黒幕の正体を突き止める為に学園長室に向かうのだな ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ 学園長室前につくと大量のモノクマが倒れていた。 ! ﹂ ? かどうか調べる﹂ ﹁⋮⋮大和田の言うことにも一理あるな。腐川、ツルハシを取ってこい。その間に開く ﹁鍵は開いてんのか うだ。とは言え、進まないことには始まらない。 オートなのだから黒幕が居なくなっても動いているはずだが、まるで誘われているよ ! ﹁黒ま││﹂ 疾走する青春の絶望ジャンクフード(非)日常編⑥ 374 ﹁あ、あの⋮⋮せめて鍵がかかってるか確認してからでも良いんじゃ⋮⋮﹂ ﹂ ! ﹁⋮⋮⋮へ ﹂ ﹁な、なな、なぁ ﹂ ﹁むう⋮⋮﹂ ﹁マ、マジかよ⋮⋮ ﹂ ﹂ ﹁ぬわぁんだこれわー !? ? ! ﹂ ﹂ ﹁う、うそ ﹁ひい ﹁ぶひー ! ! ﹁⋮⋮人が、死んで⋮⋮﹂ !? !? ﹂ そして、学園長室の扉を開け一同が見た物は⋮⋮⋮⋮⋮⋮死体。 ﹁腐川は無駄足になったか。まあ、どうでも良いがな⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮開いてるわね﹂ 手をかける。 そんなに腐川が近くにいるのが嫌なのかと、霧切は呆れながら学園長室のドアノブを ﹁は、はい ﹁さっさと行け、時間がもったいない﹂ 375 ﹁⋮生徒、ではなさそうですわね﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ 学園長室の中に居たのは⋮⋮いや、あったのは二人の人間の死体。どちらも三十代後 ﹁じょ、冗談だべ⋮⋮こんな、人が死んで⋮⋮﹂ 半といったところか。白と黒のナイフで胸を一突きされ、手を握りあった状態で鉄の棒 が二人の掌を離れることがないように固定している。 ﹂ ? ﹁思い出した、こいつ等は、苗木の両親だ⋮⋮⋮﹂ と、十神が死体を見つめながら呟き、目を見開く。 ﹁⋮⋮⋮見覚えがあるな、この二人は⋮⋮⋮﹂ ﹁違うわ﹂ ﹁⋮⋮こ、この男ってひょっとして学園長 疾走する青春の絶望ジャンクフード(非)日常編⑥ 376 疾走する青春の絶望ジャンクフード非日常編① いい加減にしろよ ⋮⋮⋮はにゃ ! 夢か⋮⋮﹂ ? ﹁⋮⋮あれ そう言えばボク、どうやって持ってきてたんだろ ﹂ ? いや、手品なんてやった記憶はない。 ? 体調は快調。酒は百薬の長とはよく言ったものである。 背骨をボキボキ鳴らしながら伸びをする。 ﹁⋮⋮⋮ま、いっか⋮⋮そろそろ戻らないと﹂ 実は自分は超高校級の手品師なのだろうか た時から自分は何処からともなく景品を取り出していた。 今にして思えば前回も今回もプレゼントとしてモノモノマシーンの景品を渡してい ? 仕方ないので苗木はパーカーを脱ぎ変わりのモノクマパーカーに着替えた。 熱を出して眠っていたせいか、パーカーが汗でベットリする。 ﹁ふにゃ⋮⋮そういえば学園長の個室に泊まったんだっけ﹂ ⋮⋮。 苗 木 は グ シ グ シ と 目 を こ す り な が ら 周 囲 を 見 渡 す。こ こ は、苗 木 の 部 屋 で は な い ! ﹁⋮⋮むにゃむにゃ⋮⋮⋮もうお腹いっぱいだよ⋮⋮⋮お腹いっぱいって言ってるだろ 377 おとう おかあ ﹁義父さんと義母さんって⋮⋮確かですか 鉄の棒。 ﹁鶴橋って、誰⋮ ﹂ ﹂ ! 戻ってきた。 ? ああ、アタシと根暗は知識とあるモノしか出来ないんだよね。だから根暗が日頃 ﹁アナタ、ひょっとして腐川さんと記憶を共有してないの ? ためてる白夜様との妄想は知らねえけど白夜様にして欲しくてためてる知識は知って ﹁ん ﹂ 全員が漸く平静を取り戻し始めた瞬間、ジェノサイダー化した腐川が何も持たずに ? ﹂ 目立った外傷は胸に刺さったナイフと両掌を固定するように二人の手を貫いている 平静を取り戻し死体に近づく。 学園長室で見つけた死体に動揺する一同。舞園の言葉に十神と霧切は呆れながらも ﹁今なんか、漢字がおかしかった気が⋮⋮﹂ ﹁ああ、苗木のDVDに映っていた⋮⋮⋮﹂ ? 白夜様の匂い追ってたらすんげぇもの見ちゃった ? ﹁今頃帰ってきたか。ツルハシならいらんぞ⋮⋮﹂ ﹁おろろ 疾走する青春の絶望ジャンクフード非日常編① 378 んだよね。さあ 白夜様、アタシを好きなだけ罵って ! ﹂ ! ﹂ かに殺れる前に一回くらい刺しときゃ良かった ﹁何の話 ま、一度刺してんだけどね ﹂ ? ! ﹁そっちじゃないわ。死体って、何のこと ﹁む うむ⋮⋮任された ﹂ ! ﹂ ずその場に残る。そして霧切と十神を先頭に残りのメンバーが植物庭園に向かい見つ 十神はすぐさま命令を出し、石丸と大神はその命令を正しいと判断したのか何も言わ ﹁わかった⋮⋮﹂ ? ﹁現場の監視を頼みたい。他の奴らはついてこい﹂ そして、十神はチラリと死体を見てから今度は大神と石丸を見る。 ! ? 植物庭園に死体が落ちてたのよ ! その言葉に周囲の人間は再び固まる。 ﹁死体っていったら死体だろ ﹂ ﹁だから、そこの巨乳スイマーに襲われたアタシが反撃した時まーくんが庇って⋮⋮﹂ ? ! ﹁つーかここにいないの一人だけって事は、植物庭園の死体はまーくんのなの くそ、誰 始まり死後六、七時間経っていた。 十神は心底鬱陶しそうに舌打ちして学園長室を見て回る。死体は関節の死後硬直が ﹁⋮⋮⋮⋮ッチ﹂ 379 けた。見つけて⋮⋮しまった。 床に横たわっていたのは覆面をかぶった人物。その胸に、先ほどの死体と同様ナイフ ﹂ !! ﹂ ﹂ ⋮⋮血は、まだ乾いていないわ﹂ ﹁つーかさ、そいつ誰なの その覆面剥がしちゃえばいーじゃん ! ? つーかさぁ ! ! ﹁体のラインを見る限り男の人みたいだけど⋮⋮⋮﹂ ﹁ゲラゲラゲラゲラ ﹁おい、待て⋮⋮﹂ ﹂ ﹁脈 も 呼 吸 も 止 ま っ て い る わ ね。胸 に 刺 さ っ た ナ イ フ の せ い で 服 が 赤 く 染 ま っ て い る ﹁直ぐに調べるぞ。ただし⋮⋮慎重に慎重を重ねろ、何があるかわからんぞ﹂ う。だがだからといって皆の心が晴れるわけではない。 この場においてさすが超高校級の殺人鬼と言うか、ジェノサイダーだけは陽気に笑 だから言ったじゃーん 死体が落ちてるって﹂ が突き刺さり両掌は鉄の棒で床に縫いつけられている。 ﹁な、何だよこれ ﹂ ﹁ていうか、こいつ誰だ ﹁ま、また死体 !? ﹁ゲラゲラゲラゲラッ ! ? !? ﹁覆面被ってるからわかりませんな⋮⋮﹂ 疾走する青春の絶望ジャンクフード非日常編① 380 ジェノサイダーの行動を十神が咎める︵しゃれではない︶が遅く、ジェノサイダーの 手は覆面を掴んでいた。そして、次の瞬間⋮⋮ ついた。 ﹂ 目も眩むような光りと耳をつんざくような轟音⋮⋮⋮死体が爆発して上半身に火が ! 苗木君とは匂いが違いますし⋮⋮でも、つけてる香水は⋮⋮⋮﹂ ! らない。黒幕候補としかな⋮⋮﹂ ﹁貴様等、大神の言葉を忘れたか 十六人目の高校生⋮⋮俺達はそいつについて何も知 ﹁あ、あの十神白夜殿⋮⋮⋮どー考えてもそれは⋮⋮﹂ 傾げる。ここにいないのは苗木だけのはずなのだ。 特に取り乱した舞園の言葉に十神は落ち着くように促すが葉隠を含んだ数名が首を ﹁落ち着け、俺は苗木だとは一言も言っていないぞ﹂ ﹁そ、そんな そして気づき顔を青くした。 桑田の言葉に十神が否定し、全員が周囲を見渡す。 ﹁いや、大神と石丸以外でここ居ない人間を考えれば良い﹂ ﹁こ、これじゃあ誰なのか⋮⋮⋮﹂ 急いで霧切が水をかけるが顔は完全に焼けて誰かわからない。 ﹁⋮⋮っ ! 381 ? 黒幕が黒こげって何の冗談だべ ﹁黒幕って⋮⋮⋮﹂ ﹁ありえんだろ ﹂ ! が動かなくなったことを見るにやはり⋮⋮﹂ ﹁だが大神の言葉を聞き、最後の一人の高校生の可能性も考えていたはずだ。モノクマ ﹁け、けどよ⋮⋮黒幕って学園長なんじゃ⋮⋮﹂ ﹁で、でもぉ⋮⋮それならモノクマが動かなくなった理由が説明できるよね⋮⋮﹂ ! ﹂ ? ﹂ そうだ、腐川が吹っ飛ばされて│││﹂ ! ていきものすごい速度で居なくなった。元気そうで何よりだ⋮⋮。 朝日奈が腐川が吹き飛ばされたことを思い出し叫ぶが腐川が霧切の手から鍵を奪っ ﹁かしこまりました白夜様 ! ﹁は ﹁⋮⋮⋮ふむ。おい腐川、何処が開くか探してこい﹂ ど学園長室の鍵でしょうね﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮おそらく、生物室、情報処理室、寄宿舎の二階⋮⋮後はもう意味をなさないけ ﹁何処の鍵だ 察すると鍵が落ちていた。 霧切はそういって死体に近づく。そして、死体の近くで何かが光ったのを見つけて観 ﹁取りあえず、死体を調べてみましょう⋮⋮﹂ 疾走する青春の絶望ジャンクフード非日常編① 382 誉めてくださった ﹁よ、四階の情報処理室の鍵が開きました⋮⋮﹂ びゃ、白夜様があたしを誉めて うへ、うへうひひひひ⋮⋮﹂ ! ﹁そうか、良くやったな腐川﹂ ﹁ ﹁行くぞ、四階だ⋮⋮⋮﹂ !? 大和田と桑田が見張りに立候補し、今度こそ四階に向かった。 ﹁もう一人は俺がやるよ﹂ ﹁んじゃ、俺に任せろ。兄弟もやってるしな﹂ ﹁待て、念のためここにも見張りをおいておくぞ﹂ 悦に浸っている腐川を放置して、一同は情報処理室に向かおうとするが⋮⋮。 !? 383 疾走する青春の絶望ジャンクフード非日常編② 一同は情報処理室に来ていた。罠がある可能性もあるが開けないことに始まらない。 霧切がそっとドアノブに手をかけ慎重にひねり、感覚を確認しながらドアを開く。 ﹁情報処理室とは名ばかりの管理室と言ったところか﹂ の自家発電も⋮⋮ ﹂ 充電器を持ってるのぉ ﹂ ﹁どうやらこれで確定したようだな﹂ 部屋なのだ。黒幕以外が使う必要はないだろう。 山田を呆れた目で見た後、霧切はポツリと呟く。学園内部を監視する目的で作られた ﹁ここが黒幕の部屋なのね﹂ まさか、僕の夜 中に入り目に飛び込んできた光景は、壁一面に複数のモニターがあるという奇妙な部 ﹂ 屋。しかも、その中に映されている映像は全て学園の映像だった。 ! ﹁つまりこの部屋は僕達を監視する目的の部屋であるわけですな。は ﹁自家発電 ? ! ﹁いえいえ、不二咲千尋殿にはまだ早いですぞ﹂ ? !? ﹁監視カメラの映像⋮か⋮ 疾走する青春の絶望ジャンクフード非日常編② 384 ﹁え 何が⋮⋮ ? ﹂ ? 事は奴こそが黒幕だったんだ﹂ ﹁じゃあ黒幕って死んじゃったの ﹁そのようだな⋮⋮﹂ 本当に死んじゃったの ﹂ !? ﹁⋮⋮っていってもよぉ。何を調べりゃ良いんだ ﹂ を繋いで、電波を受信させる。 ﹁霧切っちもテレビっ子だな ﹂ 葉 隠 の 言 葉 に 特 に 反 応 も 示 さ ず テ レ ビ の 電 源 を つ け た 霧 切 は 映 っ た 映 像 に 戸 惑 う。 ? ! ﹁⋮⋮⋮⋮これは、どういう事かしら ﹂ 霧切はそう言ってテレビを指さす。テレビの横には室内アンテナが有り、霧切はそれ ﹁そうね。取りあえず、外の情報かしら⋮⋮﹂ ? ことをしたのか調べるべきと判断したのだ。 黒幕が居ない以上ここから逃げるのは簡単だ。ならば、黒幕が何を目的にこのような だと言い出していたが、十神はここに残るべきだと言う。 十神の言葉に当然といえば当然だが辺りがざわめく。葉隠などはここから出るべき !? は16人目の高校生という事だ。そしてそいつが死になにも起こらなくなったという ﹁さっきの植物庭園の死体だ。こんな部屋の鍵を持っていたという事はあの死体の正体 385 テレビに映された映像は明らかにこの部屋の監視カメラの映像だったからだ。 ﹁妙ね。室内アンテナとしか繋げていないのに⋮⋮⋮他のチャンネルも同じね﹂ ﹁⋮え ﹂ ﹁ギャッハッハ ﹁2日ぶり∼﹂ ﹂ ﹂ ﹂ テメーラ、久しぶりじゃん 苗木 ﹂ ﹁もしかして、このテレビ自体にしかけがあるなかもしんーぞ⋮﹂ ﹁﹁⋮え ﹂ ﹂﹂ ? ﹁はぁぁぁぁああぁぁぁああああっ ﹂﹂ ? ﹂ ﹁仕掛けってどういう仕掛け ﹁アナログ電波が映るとか ﹁それはわかんねーけど﹂ ﹁⋮は ﹂ ﹁﹁⋮は ? ﹂﹂ ﹁⋮あれ ? ﹁モ、モノクマ !? ! ? ? ? ? ﹁な、なんで⋮だって黒幕は死んで⋮⋮そうじゃなかったら苗木が⋮死んでるはずじゃ﹂ ! ! !? ﹁﹁⋮あれ 疾走する青春の絶望ジャンクフード非日常編② 386 何時の間にか情報処理室に紛れ込んだのか、苗木とモノクマが当然のようにそこにい ﹂ ﹂ た。身元不明の死体がある以上どちらかが死んでいるはずなのに。いや、と言うことは ﹁そっか⋮もうそんなに⋮⋮⋮経ってたっけ ﹂ ? ﹁まさか、その為に⋮死んだフリをしていたとでも言うのか⋮ ﹂ ﹁趣味悪いね。あ、ちなみにボクは絶望がなくなり希望に満ちた時の表情が好きだよ﹂ ? 瞬間の顔⋮⋮それが見たかったんだよね﹂ ﹁うぷぷ。それだよそれ、オマエラのそんな顔が好きなんだよね⋮希望が絶望に変わる が尋ねるとモノクマがニィと笑みを浮かべる。まあ基本笑ってるが。 モノクマと苗木の何時も通りのやりとりに戸惑いからなんとか平静に戻った朝日奈 なかったよね ﹁あ、あのさ⋮⋮相変わらずみたいだけど、その⋮モノクマさっきまで動いてないし現れ E﹂ ﹁てかさ、キャラが変わってることに関して苗木くんにとやかく言われたくないんだZ ? ! やはり黒幕は16人目の高校生ではなく学園長という事だろうか ﹂ 訳わかんねー事言ってんじゃねーじゃん てかモノクマのキャラ変わってない このオレが死んだ ボク死んでたの !? ? ? ﹁ギャッハッハッハ ﹁⋮⋮え ? ﹁もちろん変わるさ⋮⋮変わって当然クマ。あれから、二年も経つんだしな⋮⋮﹂ ? ! 387 ﹁苗木くんとは趣味が合わないなぁ⋮⋮﹂ モノクマががっかりしたように言う中、苗木はモニターの一つを眺め顔色を変える。 ﹁モノクマ、あそこに映ってるの⋮⋮﹂ ﹁ああ、ちょっと授業参観について話そうと呼んだら殺されちゃったんだよね﹂ ﹂ 苗木が見つめていたのは学園長室の映像。そこに映っている両親の姿を見てモノク ねえねえねえねえねえねえ ? ! マに尋ねるとモノクマはケラケラ笑う。 ねえねえ絶望したぁ ? ふうん。そう言うところは昔のまんまか⋮⋮うぷぷ。今回は見逃し ? モノクマはそう呟いてドサリとその場に倒れる。 そしてすぐさま別の個体が現れた。 ﹁ところで苗木くん。このテレビを見てどう思うっすか ﹂ る虐殺になっちゃうからね。そんなの視聴者は望んでない﹂ までルールに縛られているのに納得がいく。だって、モノクマがルールを破ったら単な ? ? ﹁⋮⋮このコロシアイ学園生活を生中継で全国に放送してる それなら黒幕であるキミ てあげるよ。新苗木くんの珍し⋮い、イチ面をみれ⋮⋮たし⋮⋮﹂ ﹁何これ、怒った と音を立てモノクマの額にナイフが食い込みワタと機械の破片が飛び出る。 バキャ ﹁絶望した ! ﹁⋮⋮⋮⋮そう﹂ 疾走する青春の絶望ジャンクフード非日常編② 388 ﹁はい そのとーり ! ﹂ ﹄ 一定の自由時間の後、学級裁判を開きまーす 一定の自由時間の後、学級裁判を開きまーす 死体が発見されました 死体が発見されました 程度予想していたのだろう。 きまーす ﹃ピンポンパンポーン⋮ が発見されました 死体 ! ! これも使ってね楽しみ楽しみ﹂ ! 絶望だけを残して⋮⋮。 そう言ってモノクマは倒れているモノクマを引きずりながらどこかに去っていった。 た時に流す放送なんだ。あ、あとモノクマファイル1 ﹁やっとだよ。やっとこの放送が流せた。これはね、死体が三人以上の人間に発見され ! ! 一定の自由時間の後、学級裁判を開 がらも納得のいったような顔をする。実際、彼女もテレビに自分達が映った時点である 苗木とモノクマのやりとりにその場の全員が顔を青くするなか、霧切は青い顔をしな ! ! ! ! 389 疾走する青春の絶望ジャンクフード非日常編③ ﹁⋮⋮⋮苗木、今までお前は何処にいた﹂ 十神の言葉に苗木は冷たく、平坦な声で応える。そして、溜息を吐いた後壁際に向か ﹁寄宿舎のとある場所⋮⋮﹂ う。 ﹂ ! ﹂ ? 替えのパーカーがなくてモノモノマシーンの景品使ったんだけど、これが ? ﹁ふん。まあいい⋮⋮それより捜査を始めるぞ。生き残りたくばな﹂ く。 苗木がパーカーのフードを被りながら言うとフェルトのモノクマの左目が十神に向 思いの外着心地が良くてね﹂ ﹁ああこれ の中の誰かと限らんが⋮⋮ところでその趣味の悪いパーカーはなんだ ﹁学級裁判が開かれるという事は、犯人は学園生活の参加者という事になる。まあ、俺達 ていた。冷静になるためにやったようだ。 そのまま壁に額を打ち付け血が流れるが、その瞳から先程までの冷たさが僅かに抜け ﹁⋮⋮っ 疾走する青春の絶望ジャンクフード非日常編③ 390 ││捜査開始││ 苗木はまずモノクマファイルの確認を始めることにした。 生きててくれたー ! ﹂ ! 腰が、腰からミシミシって嫌な音が 良かった、生きてた 痛い痛い ﹂ ! ﹁苗木くーん ﹁いだだだ ! 舞園が苗木の腰に抱きつき尋常とはとても言えない力で腰を締める。 ! ! と、苗木が出て行こうとした瞬間、腰に何かが飛びついてくる。 ﹁それじゃあボク、学園長室に行ってくるよ⋮⋮﹂ ナイフの刺された場所や、当たり前だが全身の傷跡はないようだ。 また、後部に殴られた形跡もある。鉄パイプ程度の太さの棒状の物で殴られた様子﹄ カ所のみ。。 後行われたもよう。胸のナイフは心臓まで達している。このナイフによる刺し傷は、一 植物庭園で見つかった身元不明。爆破による損傷が激しい。この爆破は、被害者の死 心臓に突き刺さったナイフ。 ら三時頃の断定。互いの手を鉄の棒で貫かれ繋がれた状態で固定されている。死因は ﹃学園長室で見つかった苗木夫妻。死後硬直の進み具合から殺されたのは深夜二時頃か 391 ﹁苗木君 良かった⋮⋮ ﹂ ﹂ ﹁無言で抱きつかないでセレスさん ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁ちょっ、タンマ江ノ島さん ! ﹂ 三人がクロになっちゃう ! ﹁三人とも、今回は自由時間中、バラバラに行動してね﹂ ﹁﹁﹁⋮⋮はい﹂﹂﹂ ﹁な、苗木君⋮⋮﹂ て、その場に膝を突き目を閉じる。 大神と石丸は苗木を見て驚くがつらそうな顔をする。苗木は父親と母親の死体を見 苗木は早速学園長室に向かう。 モノクマファイル1を手帳に記入しました。言弾メニューで確認できます。 ! 苗木赤くなるどころか青く、むしろ青紫になっていた。 苗木が死にそう 死ぬかと思った⋮⋮﹂ ! 三人が漸くはなれ、苗木は慌てて呼吸する。 ﹁ぶはあ ! ﹂ 男なら誰もが一度は話してみたいと思うであろう美少女三人に抱きつかれながらも ! ! ! ﹁ちょ、三人とも 疾走する青春の絶望ジャンクフード非日常編③ 392 ﹁石丸、よせ⋮⋮﹂ 石丸が何かを言う前に大神が止める。 ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ 苗木は目を開くと二人の服のポケットを確かめ始めた。 ﹂ ねえねえ、息子に会いたい 会いたいよね そして早速何かが父親のズボンの右ポケットに入っていた。 ﹁⋮⋮ん 取り出すと、手紙だった。 それは⋮⋮﹂ ﹃こんちゃ∼、苗木のご両親 る﹄ ﹁むっ ﹂ ? 手紙を記入しました。言弾メニューで確認できます。 れているわけだ。 会わせてあげ まあ、肉親が死ぬのは初めてではない。前回も息子が殺されているし、一応妻も殺さ ち着いていることに気づく。 石丸と大神が叫ぶなか苗木はなるほど確かに会わせたわけかと自分でも驚くほど落 ﹁何て非道な ! ? ? ﹁これで呼んだっぽいね﹂ !? ! 393 ﹁くしゅ この部屋、なんか寒くない ﹂ ? どんなクーラーさこれ﹂ ああ、クーラーが効いてるからな。一応、現場の保存と言うことでつけたままにし ﹁設定は⋮⋮⋮10℃ ているのだが⋮⋮﹂ ﹁ん ! 学園長室のナイフを手帳に記入しました。言弾メニューで確認できます。 だ。 でもまあ、ナイフの刺さり方でわかると聞いたことがある。⋮⋮⋮うん、苗木には無理 は⋮⋮⋮我が母ながら二児の母とは思えない体型。脂肪が邪魔して肋にふれられない。 訳でもない父の胸を触って確認するとナイフが肋にも刺さっているのがわかる。母親 次に苗木は胸に刺さったナイフを見る。服越しで触るが薄着で、特に体を鍛えていた クーラーを手帳に記入しました。言弾メニューで確認できます。 !? ? ﹂ ? セロテープが皺にならないようプラスチックの板に張り付ける。 すると出てきた指紋をセロテープで貼り付けとる。両方とも同じ人間が使ったようだ。 苗木は化学室で見つけた薬品の一つを耳掻きの綿でナイフの柄につけていく。暫く ﹁アルミニウム粉末⋮⋮﹂ ﹁苗木君。それはなんだい ﹁指紋とか残ってるかな⋮⋮﹂ 疾走する青春の絶望ジャンクフード非日常編③ 394 指紋を手帳に記入しました。言弾メニューで確認できます。 苗木はそう言うと次の殺害現場に向かう⋮⋮⋮。 ﹁⋮⋮ここはこんな所かな﹂ ﹁っと⋮⋮霧切さん﹂ ﹁⋮⋮⋮意外と冷静なのね﹂ ﹁そうでもないよ。多分、怒ると頭が冷めるタイプなんだと思う﹂ 家族が死んだというのに、と言う部分を隠していたが苗木にはなんとななく伝わっ ﹂ た。もちろん苗木とて、全く怒っていないと言ったら嘘になる。でも、それでも⋮⋮ ﹁愛は憎しみより強いって奴なのかな ⋮⋮⋮ああ、そういうこと。苗木君は両親と仲が良かったのね。二人も、苗木君 ? け取ったようだ。まあ、優しかったのは事実だし否定はしないが。 ﹁あ、そうだ霧切さん。霧切さんは父さんと母さんの遺体見て、どう思う ﹁そうね⋮⋮まず、綺麗すぎるわ﹂ ﹁ありがとう。二人の子供でいる誇りが増えたよ﹂ ﹂ 霧切はどうも苗木が言った言葉を両親に人を憎むなと言われ、それを守っていると受 と同じで優しかったようね﹂ ﹁⋮え ? ﹁そういう意味じゃないわ。出血や服の乱れを言ってるのよ⋮⋮﹂ ? 395 その言葉を聞いて苗木はそういえばと納得する。前回のコロシアイ学園生活の死体 はほぼ一撃で死んでいたから違和感を持たなかった。 ﹁それに、掌の出血の少なさから見て心臓が止まった後貫いたのね﹂ 学園長室の死体の状況を手帳に記入しました。言弾メニューで確認できます。 ﹁⋮⋮ふうん﹂ 疾走する青春の絶望ジャンクフード非日常編③ 396 疾走する青春の絶望ジャンクフード非日常編④ 続いて苗木が来たのは植物庭園。 植物庭園には大和田と桑田が居た。 ﹂ ? これに指紋は⋮⋮⋮残っていない。そしてこのナイフは前回同様苗木が腐川から渡 次に見つけたのはナイフ。 植物庭園の死体の状況を手帳に記入しました。言弾メニューで確認できます。 のだろう。しかしこの死体、何故手を固定されているのだろう。 のは人体の構造を把握していない素人による、こっちは人殺しになれた者による殺害な 触ると肋は折れていない。しっかり肋の隙間から心臓に向かっている。両親を殺した 上半身だけが濡れ下半身が濡れていないのは前回同様だ。焼け焦げた皮膚の上から どうかは上半身が爆弾で燃やされているので言伝でしか知らない。 早速苗木は死体に近づき状況を確認する。前回同様悪趣味なマスクを被っていたか ﹁おう⋮⋮﹂ ﹁まあね。それが被害者 ﹁おう苗木、無事だったか﹂ 397 されたナイフだ。 植物庭園のナイフを手帳に記入しました。言弾メニューで確認できます。 ﹂ 苗木はそう言って死体に近づく。いざ指を見ようとすると鉄の棒のせいで手が持ち ﹁あ、そうだ。指紋を確認しとくか﹂ 上げられないのに気が付いた。 なので仕方ないから指をヘし折る。 ﹂ ﹁指紋を取ってる⋮⋮﹂ ﹁な、苗木⋮⋮お前、何やってんの⋮⋮ ! 苗木の言葉に大和田は顔をしかめ、桑田も俯く。 ﹁⋮⋮⋮⋮そうか﹂ ﹁ボクの両親だよ。正真正銘の⋮⋮⋮﹂ ﹁なあ、苗木⋮⋮学園長室にあった死体は⋮⋮﹂ 指紋を更新しました。言弾メニューで確認できます。 学級裁判が終わったら肉塊になるまで蹴り潰そう。 が苗木の両親を殺したのだろう。 苗木は指から指紋を取って先程採取した指紋とあわせる。一致した。つまりこの男 ? ﹁うお 疾走する青春の絶望ジャンクフード非日常編④ 398 ﹁二人とも優しいんだね。一番の容疑者はボクなのに⋮⋮﹂ ﹂ ? 間に犯行に及んだんだろうけど﹂ ﹂ ﹁苗木の両親殺した罪を苗木に被せようってか、クソ野郎め⋮⋮ぶん殴ってやる ﹁女だったら ! ビニールシートを手帳に記入しました。言弾メニューで確認できます。 次に苗木は物置に向かう。そこにはやはりビニールシートが置いてあった。 死体付近に落ちていた破片を手帳に記入しました。言弾メニューで確認できます。 ﹁ふ∼ん﹂ ﹁そりゃ爆弾の破片だな。体育館でモノクマを解体した時に出てきたんだ﹂ こっちでは苗木は爆弾を見つけていないことになってるが。 ま あ 取 り 敢 え ず、こ こ の 状 況 は 前 回 と 同 じ よ う だ。爆 弾 の 破 片 も あ る し ⋮⋮ ま あ、 なんともたよりある言葉だ。 ﹁⋮⋮⋮そんときゃそん時だ﹂ ? ﹂ ﹁昨日丸1日アリバイが無いのはボクだけだもん。ま、だからこそ今回の犯人はその時 前回もこれぐらいの信頼が築けていれば⋮⋮⋮。 二人とも本気で心配してくれたのだろう。 ﹁⋮⋮は 399 調べたいことも終わり、苗木が次の場所に向かおうとした時⋮⋮。 ﹃キーン、コーン⋮カーン、コーン﹄ 自由時間終了を報せるチャイムが鳴りモニターにモノクマが映る。他の皆は経験が ないからわからないだろうが、何度も経験した苗木にはわかる。 自由時間の終了が早すぎる。モノクマは、よほど苗木に情報を持たせたくないと見え る。 ﹁苗木君⋮⋮﹂ ﹁あ、霧切さん⋮⋮﹂ 苗木はコキリと首を鳴らして一階に向かう。目指すは赤い扉。学級裁判場⋮⋮⋮。 ︵それに、何だかんだで助かりそうな予感がするんだよね∼︶ いって誰かをみすみす殺させるつもりもない。 苗木はその一人の枠には当然自分を組み込む気だ。志半ばで散る気はないが、かと ︵前回の知識があるとは言え、ここまでよくやった方か⋮⋮︶ そうなれば確実に一人死ぬわけだが⋮⋮⋮。 最悪前回同様途中で学級裁判を区切ってくるかもしれない。 ︵ま、そもそもが邪魔なボクを殺すための学級裁判だろうし︶ 疾走する青春の絶望ジャンクフード非日常編④ 400 苗木が階段を下りていると霧切と遭遇した。しかも運の良いことに、ちょうどカメラ の死角になる位置だ。 ﹁⋮⋮ これは⋮⋮ ﹂ ? ﹂ ? ﹁⋮⋮あなた、それがどういう意味を持つかわかってるの ﹂ 出来ない。嘘で希望に勝っても世界はその勝利を認めない。 元々本物の犯人を指摘できない状況にした黒幕がこれで全員を皆殺しにすることは ﹁この学級裁判はね。必ず一人しか死なないんだ﹂ るようなものだ。 なにせ苗木が死んでも霧切達が生きているような言い方は、自分がクロだと言ってい 霧切は苗木を睨むように言い放つ。いや、睨んでいるのだろう。 ? うし﹂ ﹁保険。ボクが死んだ時はよろしくね♪探偵の霧切さんなら、うまく使ってくれるだろ ﹁それはわかるわよ。どうしてこれを私に渡すのか聞きたいの﹂ ﹁脱衣場の鍵だよ⋮ 律儀に受け取ってくれた。 苗木がポケットから取り出した物を霧切に渡そうとすると霧切は首を傾げながらも ? ﹁霧切さん、はいこれ⋮⋮﹂ 401 ﹁例えば誰かをクロということにして、指摘されずに全員を処刑しても最期に残った奴 ﹂ ? が自分はクロじゃないと言い続けたらバレるからね﹂ ﹂ ﹁それって⋮⋮アナタまさか、この殺人が黒幕の仕業と確信してるの ﹁それは│││ッ ﹂ ! 苗木は突然霧切の鍵を持つ手を握り、霧切を引き寄せ唇を奪う。 ﹁んむ !? ﹂ ﹁⋮⋮ カ メ ラ の 死 角 か ら な か な か 出 ず に 何 を し て る か と 思 え ば ⋮⋮ マ ジ で 何 し て ん の 疾走する青春の絶望ジャンクフード非日常編④ ﹂ こっちは時間がおしてんの 早く移動しなさい ﹂ ﹁ごめんごめん。その鍵、モノクマに気づかれるわけにはいかな│││﹂ かりズルズルと腰を落とす。 苗木がモノクマの姿が見えなくなったのを確認して唇を離すと霧切は壁にもたれか ! している二人を見て詰まらそうに言う。 ﹁まったくもう ! モノクマはプンプンと擬音を立ててその場から去っていく。 ! 霧切が顔を赤くして固まっていると角からヒョッコリモノクマのが顔を出し、キスを ? !! 苗木の謝罪の途中だが霧切は最初から苗木の話など聞かず顔を赤くして口元を抑え ﹁││ 402 ながら走り去った。てっきり、叩かれるぐらいは覚悟していたのだが。 ﹂ ﹁さて、ボクも向かうか﹂ ﹂ ﹁おまたせー﹂ ﹁っ ﹁遅いぞ苗木君 ﹁うわ ﹂ 何時の間にボクの背中に ﹂ ﹁んじゃ、役者もそろったことだしそろそろ始めよっか ! ﹁それじゃみんな。エレベーターに乗り込んで乗り込んで ﹂ モノクマが苗木の肩からヒョッコリ顔を出しそれに驚いた苗木にむしろ皆が驚いた。 !? ﹂ 苗木が赤い扉の部屋に入ると霧切が目を逸らし石丸が怒鳴ってくる。 ﹁ごめんちょっとトイレいってた﹂ ! ! ﹁気づかなかったの !? ! そして始まる。命がけの裁判、命がけの騙し合い、命がけの裏切り、命がけの謎解き、 苗木達が全員乗るとエレベーターはゴウンゴウンと音を立てゆっくりと降りていく。 ﹁わかったわかった⋮⋮⋮﹂ ! 403 疾走する青春の絶望ジャンクフード非日常編④ 404 命がけの言い訳、命がけの信頼、命がけの⋮⋮学級裁判。 疾走する青春の絶望ジャンクフード非日常編⑤ 学級裁判場、実に懐かしい。出来ればここに来たくなかったが⋮⋮⋮。 学級裁判の結果はオマエラの投票 ⋮んじゃ、後はオマエラに任せるよ﹂ ! は、植物庭園の死体はだれだ ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ ﹂ ! ﹂ ﹂ ここは特に何も言わなくて良いだろう。というか、あれは本当に誰なのだろうか ? ﹁死んだのは苗木っちだべ。それ以外にあり得ねーだろ ﹂ ﹁てめーを殺すぞ海栗 ﹁ひい ! ! ? ﹁まずは被害者の特定だ。学園長室にあった死体、あれは苗木の両親で間違いない。で じつつ、十神が議論を始める。 人の命がかかっていると言うのに、何時ものごとく脳天気なモノクマに気味悪さを感 ロだけが晴れて卒業となりまーふ 間違った人物をクロとした場合は⋮クロ以外の全員がおしおきされ、みんなを欺いたク により決定されます。正しいクロを指摘出来れば、クロだけがおしおき。だけど⋮もし ﹁まずは、学級裁判の簡単な説明から始めましょう ! 405 葉隠が苗木を指差しながら何故か誇らしげに言うとセレスがブチギレだ。セレスだ ﹂ その苗木っちは幽霊で、一緒に冥界に連れていく気だベ ﹂ けでなく舞園や江ノ島ももの凄い目で葉隠を睨んでいた。 ﹁だ、騙されちゃ駄目たべ ﹁ていうかさ、ボクとあの死体じゃボクの方が小さいんだけど ﹂ ? ! ﹁普通に考えて十六人目の高校生ではないのか ? ﹂ ! 学級裁判が起きるの 証拠を持って言うんだな。ちなみにモノクマ、黒幕の学園 ﹂ ﹂ ﹁う ぷ ぷ。か ま せ 眼 鏡 の ク セ に な か な か 言 う ね ぇ ⋮⋮ で も 残 念 長が犯人と言うことはないよな ? は、学園の生徒達による殺人が起きた場合何だからね ! ! ? ﹁こんな状況で言うことか ﹁学園長は、黒幕じゃないわ⋮⋮⋮﹂ 十神が顎に手を当て考えていると霧切がピクリと肩を震わせる。 するなら黒幕は学園長ということになるが﹂ ﹁まあ、ここに全員いるからそうだろうな⋮⋮しかし、黒幕が十六人目の高校生でないと ? ﹂ 腰に隠し持ってるナイフに手が伸びそうになる。 苗木の言葉にモノクマかゲラゲラ笑う。すごくムカつく。ぶん殴りたい⋮⋮⋮。 ﹁ぶふー ! ﹁じゃああの死体、誰なんだ 疾走する青春の絶望ジャンクフード非日常編⑤ 406 生徒達の間、ではなくなっている。まあ植物庭園の男は間違いなく生徒ではないの だ。 ﹂ ﹂ ﹂ 生徒達の間で起こった殺人ではないからそのままだと学級裁判を起こせない。 ﹁つまり犯人は生徒達の誰かという事だな 誰が殺したの ﹁じゃあ十六人目はこの中の誰かに殺されたって事か ﹁だ、だ、誰よッ !? しているんだ。その場所に死体がなかった事をな﹂ 外に出た人はいるんじゃないかな ﹂ ﹁でもさ、全員が全員体育館に居たって言い切れるの ? ? むなんて言い訳も十分通用するほどに⋮⋮。 ﹁確かにそうだが、では学園長室の死体はどう説明する その時間は全員居たと言い切 それはそうだ。人が多いぶん、前回の三人より精神的余裕ができて緩くなる。少し休 苗木の言葉に今度は互いを見合う一同。心当たりがあるのだろう。 ? トイレだの何だの理由を付けて ﹁理由もあるぞ。昨日の夜時間直後に、俺は植物庭園に行っている。そして、そこで確認 びしかし苗木は何時ものごとく貼り付けた笑みを浮かべていた。 十神の言葉に、苗木に幾つもの視線が集まる。疑惑と困惑、不安心配様々な視線を浴 ﹁⋮⋮⋮⋮容疑者は苗木一人だ﹂ !? ? ? 407 ﹂ それって、苗木が両親を殺したって⋮⋮事 びゃ、白夜様に向かってなんて無礼な れる。一度、集めた情報を話し合っていたんだ﹂ ﹁っち﹂ ﹁舌打ち ﹁ちょっと待って ﹂ ? ! と、淡々と告げる十神を見て苗木がニィと笑い言弾を放つ。 ﹁︽殺害時間︾がハッキリしているんだ。その間の俺達のアリバイもな⋮⋮﹂ ! !? モノクマファイルを見ろ、ここに確かに明記されている﹂ ? ﹂ ? ﹁だってさ これって、アリバイが完全とは言えないよね ﹂ ? ﹂ ! ﹁じゃ、じゃあ誰が殺したんだベ ﹂ 舞園が笑顔で言うが苗木を盲信している舞園が言ったところであまり説得力が無い。 ﹁苗木君⋮⋮⋮そうですよね。私は、苗木君を信じてます ﹁だいたいボクが、父さんと母さんを殺すはずないじゃないか⋮⋮﹂ 苗木の笑みに十神は顔をしかめ、しかし反論はしなかった。 ? ﹁ええ。死後硬直は気温が高温なほど早く進み、当然その逆もありえるわ⋮⋮﹂ 室温が10℃の場合って死後硬直は遅くなる ﹁モノクマファイルには﹃死後硬直の進み具合から﹄って書かれてるけどさ、霧切さん。 ﹁⋮⋮⋮何 ﹁それは違うんじゃないかな⋮⋮⋮﹂ 疾走する青春の絶望ジャンクフード非日常編⑤ 408 ? ﹁知るかよ⋮⋮犯人じゃねえのか ﹁それは、突然だな﹂ ﹂ ﹁もっとマシな発言できませんの ﹁う、うっせアホ ﹂ ﹂ ? ﹂ ? 園の死体の指紋と一致したんだよね﹂ うんだ ﹁待て、植物庭園の死体の掌は床に固定されていたはずだぞ ﹁指をヘし折って﹂ ? いったいどうやったと言 ﹁これは父さんと母さんの胸に刺さっていたナイフから取った指紋なんだけど、植物庭 ﹁どう言うことだ苗木、説明しろ﹂ まっていた。 あくまでも学園生活内での話しだが、と内心で付け足しているうちに苗木に視線が集 ﹁現状この学園生活の中で、三人の人間を殺した人は居ない﹂ る。 不二咲が死体を思い出したのかブルリと震えたとき、苗木は否定の言葉を投げかけ ﹁それは違うよ﹂ ﹁でも、︽三人も殺す︾なんて怖いよねぇ﹂ ! ? 409 ﹁ゆ、指を折っちゃったの それじゃあ箸握れないじゃん ﹂ ! 同じでしょ⋮⋮ ﹂ ? 取り出す。 ﹂ ﹁これがナイフの指紋で、こっちが植物庭園の死体の指紋。ね ﹁植物庭園のナイフはどうだっんだ ? ? 朝日奈が明後日の方向の突っ込みをしている間に苗木は懐からプラスチックの板を ﹁朝日奈よ、そういう問題では無いと思うぞ﹂ !? ﹂ ? ﹂ ? いるわ﹂ ﹁ええ、あの死体は眠らせた状態か、あるいは毒で殺した状態で心臓にナイフを刺されて ﹁無いよ。二人の死体は綺麗すぎた。でしょ、霧切さん ﹁いやまて、そんなのもみ合ったときにそうなった可能性もあんだろ﹂ 肋の隙間から心臓を刺してた。こっちの方が楽だからね﹂ ﹁父さんと母さんに刺さったナイフは肋を傷つけてはいってたけど、植物庭園の死体は る者はそうはいないのだろう。 苗木の言葉にセレスが不思議そうに首を傾げる。一々ナイフの刺さり方など見てい ﹁ナイフの入り方 の死体、ナイフの入り方が違うんだ﹂ ﹁あっちは指紋がふき取られてたよ。それと、断定する理由はもう一つあってね⋮⋮こ 疾走する青春の絶望ジャンクフード非日常編⑤ 410 ﹁ま、待て ﹂ なら学園長室のクーラーは何だ ! ど不要のはず ! 犯人が植物庭園の男ならアリバイ工作な ? 庭園の死体について考えよっか ﹂ ﹁だろうね⋮⋮ほらほら、父さんと母さんを殺した奴がわかったことだし、次はあの植物 苗木君の両親ではなく植物庭園の死体の死亡時刻を混乱させるためのものだったのよ﹂ ﹁⋮⋮気温が違う部屋に死体を置く理由は死後硬直を誤魔化すため。学園長室の気温は つめる。赤くなって目を逸らされた。 苗木の言葉に再びざわつく一同。苗木はそんな一同を眺めがら、1人冷静な霧切を見 の死体も含まれてるって﹂ ﹁そこはほら、こう考えればいい⋮⋮あの部屋で保管されていた死体は三つ。植物庭園 411 ? 疾走する青春の絶望ジャンクフード非日常編⑥ 植物庭園の死体。それが苗木の両親を殺した加害者でもある。 死亡時刻は不明だが、アリバイが曖昧なのはおそらく体育館にずっといた十神とモノ クマを分解していた葉隠、解析していた不二咲以外の全員。 ﹁じゃあ、どうやってその間のアリバイを調べるのだ ﹂ ﹁あの死体は上半身は消火の時に濡れたけど、下半身は濡れていなかった。これはスプ 態で固まる。 苗木が言い掛けた瞬間、霧切がその言葉に被せるように反論して苗木が口を開いた状 ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁それは違うわ﹂ ﹁それは││﹂ ﹁あの死体があったのはスプリンクラーが作動する七時半以降だと推測できる﹂ ﹁アリバイよりまず死体が彼処に置かれた時間を調べるべきだ﹂ ? か⋮⋮﹂ ﹁死体が植物庭園に移動したのは夜時間から、全員がそろっていた九時までの間の何時 疾走する青春の絶望ジャンクフード非日常編⑥ 412 リンクラーでは濡れていないと言う事よ﹂ じゃない﹂ ? 霧切の正論に苗木は黙り込む。 さすが超高校級の探偵。ここまで言えばわかるわね にやりにくい⋮⋮⋮。 と丸投げされてた頃より遥か ﹁怪しいと言うだけで確信ではないわ。そう推理することを見越しているかもしれない ﹁じゃあボクの容疑は││﹂ の方が怪しいわ﹂ ﹁でしょうね。だから、逆に言えばその時間帯アリバイをつくっておく必要があった者 なくてすむんじゃない﹂ ﹁いやいや待ってて。倉庫にビニールシートがあったんだけどさ、これ被せとけば濡れ ﹁つまりアリバイが無いのは苗木に加えこの三人になるわけか⋮⋮﹂ ﹁トイレに朝日奈さん、軽食に大和田君、仮眠に石丸君ね⋮⋮﹂ ﹁その間なら確か⋮⋮⋮﹂ まあその言葉に全員納得しているようだが⋮⋮。 霧切の言葉に若干落ち込む苗木。 ﹁全部言われた⋮⋮﹂ 413 ﹁ちょっと待ちなさいよ そ、そんな事したらビニールシートが汚れるんじゃないの ﹂ !? ﹂ 直接かけて、その証拠に床は汚れていないわ﹂ ﹁鶏の数も減っていたし、おそらく鶏を殺したのね。それも床が汚れないように白衣に ﹁何せここには献血用の血から、殺せば血が手に入る鶏までいるんだ﹂ ﹁血を後からかければいいのよ﹂ ! ? ﹂ ? ﹁なら動機だ、苗木はあの男に両親を殺されている ﹁もう少し考えて発言しなよ﹂ 動機として十分だ ﹁あの男が黒幕側ならここにいる誰もが当てはまるじゃない﹂ ! ﹂ ﹁でも苗木君の部屋には鍵がかかっていない。根拠としてはこれも薄いわね﹂ ぞ を束ねて太さを調節したんだろう。ちなみに、鍵となる木札は苗木の部屋で見つかった ﹁あ、ああ⋮⋮武道場のロッカーに血だらけのガムテープと矢を見つけた。おそらく矢 たわ。十神君、説明してあげて﹂ ﹁おそらく頭部を鉄パイプ程度の太さで殴られたというこれね。凶器は武道場で見つけ はなく、入り込めない。 議論というよりこれでは苗木と霧切が二人で行う推理だ。だが実際二人の言葉に隙 ﹁だとすると死因は別って事になるよね 疾走する青春の絶望ジャンクフード非日常編⑥ 414 ! ﹂ 霧切と苗木の呆れたような声に十神の頬がピクピクひきつる。 ﹂ ? ? ﹂ ? ﹂ ? るの そんな大切なところに隠し通路なんて作るわけないでしょうが ﹁モノクマわざとだろ﹂ ! ﹂ ﹁あのねぇ、学園長室にはボクの大事なマスターキーやら78期生のプロフィールがあ 筋が浮かぶ。 口元を押さえて笑うモノクマと腹を押さえて笑いを堪える苗木を見た十神の額に青 ﹁⋮貴様等⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁モノクマ、言い過ぎだよ。もっとオブラートに⋮⋮ぷぷ﹂ ﹁うぷぷ。隠し通路だって、このかませ眼鏡ったら小説の読み過ぎじゃね ﹁だがお前は一度学園長室に入っている。その時に隠し通路でも見つけて⋮⋮﹂ それに学園長室前の大量のモノクマは、何時から倒れていたのかすら不明だ。 それは確かにそうだ。 ﹁﹁﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂﹂﹂ 真犯人は学園長室に出入りできたって事になるよね。それって、この中に居るの ﹁植物庭園のクソ野郎⋮⋮失礼、植物庭園の死体が学園長室にあったてことはさ、今回の ﹁一番の謎 ﹁ていうかさ、君たち一番の謎を解いてないよね 415 ! ﹁はにゃ ﹂ ﹁マスターキー⋮⋮だと。おい苗木どう言うことだ説明しろ 仕立て上げたいらしい。 ﹂ このタイミングでわざわざ学園長室の中にあった物を言うのは、よほど苗木を犯人に ﹁ッチ﹂ ! ? ﹂ あ、ごめん嘘。情報処理室は開けられないよ﹂ ﹂ たんだろう。両親の死体と16人目の高校生を⋮⋮⋮頭に血が上り殺してしまった真 ノクマもだ。それに気づいた真犯人はさらなる情報を求めて学園長室に入り、そこで見 ﹁昨夜夜時間の後、モノクマの動きが止まっていた。おそらく全ての、学園長室の前のモ 十神は得意気に苗木を指差し推理を語り始めた。 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁なるほどな。解けたぞ⋮⋮これが事件の全貌だ﹂ 隠したのが裏目に出た。いや、隠してなくても十神に指摘されていたか。 モノクマの言葉に忌々しそうに舌打ちをした苗木に十神が視線を向けてくる。 ﹁もちのろん ﹁学園長室は開けられるんだな ! ! ? テムなのだ ﹁そうそうボクが苗木くんに盗まれたのはね、この学園全ての鍵を開けられる便利アイ 疾走する青春の絶望ジャンクフード非日常編⑥ 416 犯人は慌てたはずだ。このままではクロとなり処刑されてしまう。だから他人のアリ バイを崩すためにクーラーを付け死後硬直を狂わせ、時間を見計らい両親を殺した犯人 にマスクを植物庭園に移動させ死体を固定、ビニールシートを被せスプリンクラーの作 動後ナイフを刺し鶏の血をかけた。 そして殺人時刻を悟られなくした真犯人は俺達と合流しようと探索している間に爆 ﹂ 弾を見つけ、死体の身元を隠すために利用した。後は俺達に何食わぬ顔をして合流した ⋮⋮そうだろう、苗木 ? 黒幕だってそうだよ まったく馬鹿馬鹿しい⋮⋮﹂ ? でもさ、本来16人目の高校生は│││﹂ ﹁なんだ、まさか17人目の高校生とでも言う気か ﹂ とか、矢は何処いったとかいろいろ突っ込みたいところはあるけど取り敢えず筋 でもボクは犯人じゃないんだよね﹂ ﹁じゃあ聞くけど、鍵を開け閉めできるのはボクだけ ﹂ ? 苗木の言葉にモノクマと江ノ島が僅かに肩を震わせる。 ﹁じゃあ黒幕が生徒なんじゃない ﹁これは生徒による殺人が起きた時に起こる学級裁判だぞ﹂ ? ﹁あり得ん。学園長室に向かう意味があるのは鍵を持っているお前だけだ﹂ は通ってる⋮⋮⋮かなぁ ? ﹁馬鹿馬鹿しい ? ? ? じゃ ﹁⋮⋮⋮死体の身元を隠す理由とか、学園長室の中の犯人とやらが鍵をかけ忘れただけ 417 このタイミングで ﹂ ﹁は∼いそこまで時間切れです ﹁え ? ﹂ ! 終わりといったら終わりなの ﹁うるさいなぁ ! ﹂ は言わないでね ! だから苗木くん、これ以上余計なこと ﹁まだ解けてない謎があるわ。十神君の推理にも矛盾が││﹂ タイミングがタイミングの為、苗木以外もモノクマの行動に不信がる。 苗木が何かを言う前にモノクマが突如学級裁判を打ち切る。 ? !! ││ ﹂ ﹂ その答えは正解なのか不正解 オマエラ、お手元のスイッチで投票して さて、投票の結果クロとなるのは誰なのか ! 言うようスロットからメダルがあふれた。 そしてスロットマシンが現れ動き始める。そろったのは、苗木の絵。それが正解だと ! けで、そろそろ投票タイムと行きましょうか ﹁霧切さんと苗木くんが仲良くあんなことして遅れた際で時間が押してんの ﹂ くださーい なのか ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ! ! ! ﹁さぁ、どうなんだー !? !? と言うわ ﹁どういうつもり、こんな中途半端な推理、それこそアナタの言う視聴者が納得するはず 疾走する青春の絶望ジャンクフード非日常編⑥ 418 江ノ島さんもセ 疾走する青春の絶望ジャンクフード非日常編⑦ 大・正・解 でもね霧切さん、キチンと投票しなきゃダメだよ ﹁⋮なん⋮だと⋮﹂ ﹂ ? ? 始めた。 ﹁お別れの挨拶はすんだ じゃ、早速お仕置きを始めよっか⋮⋮⋮﹂ なら良いけどと苗木が微妙に疑ったような目で舞園達を見ているとモノクマが笑い ﹁﹁﹁わかってます﹂﹂﹂ ﹁⋮⋮あ∼、誰に当たってもダメだからね﹂ うなのだろうと周囲を見回すと皆気まずそうに目を逸らした。 三人は苗木の言葉に不服そうに頷く。心配だ、とても心配だ。しかし他のみんなはど ﹁﹁﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮はい﹂﹂﹂ ﹁三人とも、ボクが居なくても十神くんいじめちゃダメだよ を放つセレスと獲物を刈る狩人の目で十神を見る江ノ島が居た。 苗木がチラリと舞園達をみると笑顔のまま殺気をとばす舞園と無表情のまま威圧感 ? ﹁はい ! レスさんも舞園さんも、ちゃんと十神くんに投票してるからね﹂ ! 419 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁では、張り切って行きましょう おしおきターイム ﹂ ! ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹃へぇ∼﹄ り出した木槌でスイッチを押した瞬間││││ モノクマが元気よく宣言すると床からスイッチが現れる。モノクマは何処からか取 ! ﹁何じゃこりゃー ﹂ あははははは ! ベーターが動いたからさ、ちょっとした悪戯だよ﹂ ﹁ごめんごめんモノクマ、本物はこっち⋮⋮一昨日、姿を消す前にこっちに来たらエレ うとうモノクマが叫ぶとそれまで笑いを堪えていた苗木がケラケラと笑い出した。 モノクマが何度スイッチを押しても電子音声をつぶやくばかりで何も起きない。と ! !? ﹁⋮⋮⋮ぷっ、はは ﹂ ⋮⋮にゃ∼⋮へぇ∼へぇ∼へへへぇ∼⋮﹄ ﹃へぇ∼⋮⋮⋮へぇ∼⋮⋮へぇ∼へぇ∼へぇへぇへへへへへへぇ∼⋮⋮へぇ∼へへぇ∼ ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ 場の空気が凍った。 ﹁﹁﹁﹁﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂﹂﹂﹂﹂ 疾走する青春の絶望ジャンクフード非日常編⑦ 420 ﹁あのねぇ、こんな事してもおしおきはなくならないよ ﹂ こうなることは予想の範囲だったし、反論してたのは死ぬの ! ﹁それじゃあ皆、またね。霧切さん、ボクの上げたモノは有効活用してね でいく。 大丈夫、ボク 苗木の後ろの扉が開き、鉄の首枷が飛んでくるが苗木はそれをかわして扉の奥を進ん ││ナエギくんがクロにきまりました おしおきをかいしします││ 苗木はそう言ってカチリとスイッチを押す。 が怖いからじゃなくて皆の今後の練習のためだしね﹂ ﹁別になくす気はないよ ? ﹁あなたは何か、知っているんじゃないの ﹂ 机に座りペン回しをする苗木と目の前の黒板、それだけならさながら補習授業を真面 そこは異様な光景だった。 苗木はそれ以上は喋らずおしおき場に向かって行った。 ないんだから⋮⋮⋮﹂ ﹁この先はしらないよ⋮⋮ボクは預言者でもなければ、分析能力を持っているわけでも ? も乗り越えられるよ﹂ みたいな前向きなのが取り柄の凡人と違って皆には才能がある。きっとこの先の絶望 ? 421 目に受けない生徒なのだが教鞭を震うのは白黒のクマで、黒板も机も後ろに移動してい る。 そして後方には喧しい音を立てるプレス機。 死神の足音のように断続的に、近く付いていく苗木には段々と大きくなっていく音に ﹂ 苗木は顔色一つ変えない。 ? ﹂ ? マに目を向ける。 苗木はペン回しを止め、後ろで床か開いたのを確認して目の前で戸惑っているモノク ﹁な、なな⋮⋮﹂ ﹁ついてるな⋮⋮﹂ ろう。 サーバーで、たまたまこのタイミングでシステムの一部を乗っ取ることに成功したのだ 映りこんで居た。彼にはバックアップを取るように言っていて、そこが偶々この学園の プレス機の上に備え付けられた巨大なモニターには、苗木たちの良く知る人物の顔が ﹁⋮⋮⋮アルターエゴ プレス機の音がギチギチと何かが詰まったような不快な音に変わったからだ。 しかし不意に上を見上げる。 ﹁⋮⋮⋮ 疾走する青春の絶望ジャンクフード非日常編⑦ 422 その頬に手を添え、ニッコリと笑みを浮かべた。 ? 今モニターに映る穴の底はゴミがクッションになり、苗木は確実に死ぬことはな ? ﹂ ! 予定外 想定外 ! 意外 ! あはは ! あはははははは ! わざわざ苗木の両親呼ん ! う。 ﹁予想外 ! 苗木が死ななかったという事実に、苗木のせいで事がうまく進まないはずの少女は嗤 ﹁⋮⋮⋮⋮あは い。運悪く鉄パイプでも落ちていたら話は別だがそんな都合良くは行かないだろう。 事だ 本来ならここで苗木の潰れる瞬間を見れるはずだった。それが、これは一体どういう モニターに映る苗木を見て少女は珍しく間の抜けた声を出す。 ﹁⋮⋮⋮⋮は ﹂ の中に落ちていった。 下を見るが、底が見えない。怪我などしたくないな呟きながら苗木は底のみえない穴 遊感を感じる。 と、そこまで言って苗木の視界が傾いてゆく。船が大きく揺れたような感覚の後、浮 ﹁またねモノクマ、必ず君を殺しに戻るよ⋮⋮心強い仲間が一人増えたことだしね﹂ 423 もっと、もっともっともっともっともっともっともっと 見せて で、適当に都合の良い駒まで用意する狡をしたのにそれでも殺せないなんて⋮⋮ああ、 これが絶望なのね よ、苗木⋮⋮﹂ ! 女は恍惚とした表情を浮かべた。 不意に少女は真顔に戻り思案する。 苗木は意図的に情報を隠してきた。何故 に託したらしい。 ある程度コロシアイ学園生活が進むまで待っていた 何故 ? わからないが先ほどの発言を聞くに霧切 のデートの前日、いや楽しみすぎで早く来すぎてしまったデート当日のような気分で少 だって約束してくれたから、必ず戻ると⋮⋮⋮それがもうすでに待ち遠しい、初めて い。 少女は苗木が奈落から這い出ると確信していた。分析ではない、分析するまでもな ? ﹂ ? いやそれはない。ならもっとうまく事を運べるし、何よりそうなら多少弄くっても先 ﹁もしかして苗木もあたしや先輩みたいに分析能力持ってたとか ら、途中まで成り行きを知っているから変えたくなくて黙っていたような。 理由としては信頼関係か情報量か⋮⋮いや、そのどちらでもない気がする。例えるな ? ? ﹁⋮⋮⋮にしても﹂ 疾走する青春の絶望ジャンクフード非日常編⑦ 424 を予測できるはずだ。 少女はケラケラ笑いながら画面の向こうに手を振った。 ﹁ま、いっか。はやく戻っておいでよ苗木∼﹂ 425 閑話⑤ ﹁レディースアンドジェントルメン ナカだよ∼♪﹂ 読者の皆、元気かなぁ 絶対絶望の美少女、塔和モ ? ! 生級の学活の時間である。 ああ、適当に紹介よろしく﹂ ﹁⋮⋮⋮今日は待ちに待ったランキング発表 ﹁⋮⋮⋮⋮え 司会はこの塔和モナカと⋮⋮﹂ マイクを片手に横ピースしながら笑顔を振りまく少女の名を、塔和モナカ。元超小学 ! 人も絶望的だね﹂ ﹁もう、せっかく投票してくれた人に失礼だよ∼ そんな態度取られるなんて、投票した はぁ、とやる気の感じない口調で喋るセミロングの少女苗木こまる。 ないんだし﹂ ﹁どーせランキングなんてつけても意味ないじゃん。原作のゲームに影響がある訳じゃ ちょっとお姉ちゃん、ちゃんとやってよ﹂ ﹁⋮⋮嘘予告で終わるか投稿されるかアンケートで募集中のこまるお姉ちゃんで∼す。 ? ? ﹁はいはいゼツボーゼツボー⋮⋮そんなに絶望したいならあの先生呼べば良いのに﹂ 閑話⑤ 426 ていうかこれ、逆じゃない ﹂ ﹂ おいこらおかしいだ と肩を揺するとため息 ﹁いやいや、そんなの良いからちゃんとランキング発表してよお姉ちゃん﹂ ﹁ググれカス﹂ ﹁ググってもわからないよ やる気を全く見せないこまるにモナカがしっかりしてよー を吐き書類を取り出す。 ﹁んじゃ0票の同列11位から⋮⋮⋮まずダブル冬子ちゃん﹂ ﹂ 根暗はともかく何でアタシまで票が入ってねえんだ だ ﹁出番少ないからじゃない ろ ﹁ど、どうせあたしに誰も投票しないわよ⋮⋮⋮ブエックション ! !? ! ﹂ ! ﹂ !? ﹁こいつら別に友達じゃないし適当でいっか﹂ こまるが手元のスイッチを押すと床が開き腐川が穴の底に消えていった。 ﹁はい次々∼﹂ ﹁多分 子ちゃん止めるから⋮⋮多分﹂ ﹁テレビの私とここの私は別なんで⋮⋮それと安心していいよ∼、この私もちゃんと冬 おいて来ちまったんだ、冷たくされるとそれはそれで興奮すんだろ ﹁でこまる⋮⋮てか堕こまる⋮⋮アニメでアタシを必死に止めてくれた健気さはどこに ? ! ! ! 427 ﹁あ、一応特別扱いしてたんだ⋮⋮﹂ ﹁モロコシヘッド、変な髪型風紀委員、爆乳スイマー、かませ眼鏡⋮⋮はい以上。ポッチ とな﹂ ﹁誰がモロコ││﹂ アタシ呼ばれて││﹂ ﹁真面目にやりた││﹂ ﹁え の姿は丸い何か、山田さん﹂ ﹁はいはい未来の反面教師さんはそこの10位って書かれた席に座ってね。んじゃ次そ が出来る。やっぱりボクはついてるよ⋮⋮﹂ ﹁ボクなんかに一票はいるなんて、変わった人もいるもんだね。おかげでこうして会話 ﹁次は1票の10位の皆さん⋮⋮まずはお兄ちゃんの偽物、狛枝さん﹂ た。めちゃくちゃドン引きしていた。 適当な紹介のまま穴の底に消えていく四人を見てモナカは引きつった笑みを浮かべ ﹁うわぁ⋮⋮⋮﹂ ﹁⋮なん⋮だ││﹂ ? 神白夜殿にも劣らぬ⋮⋮ ﹂ ﹁やあやあどうも。ふふふ、皆さんわかってるじゃあ無いですか。そう、やはり拙者は十 閑話⑤ 428 ! 僕が10位で⋮⋮﹄ と振り向く。 あ、狛枝さんの隣に座ってください。次は、電子の妖 ﹁皆さんってか1票だけだけどね、何調子乗ってんだろあの海象は﹂ ﹃えへへ、良いのかなあ 精アルタンことアルターエゴだよ﹂ ﹁モナカちゃん、海象に失礼だよ ? アルターエゴの登場にトボトボ席に向かっていた山田がバッ ? ね﹂ ﹁ダメだよ ちゃんとやろうって ﹂ ﹂ あれ、私じゃん⋮⋮⋮⋮え∼っと、活躍する私が見たかったらア 俺の占いは三割当たる ⋮⋮お前の内蔵俺の物、くz││葉隠さ ていうかモナカ、突っ込みキャラじゃないのに∼ ﹁面倒くさい、絶望的∼⋮⋮⋮ええっと次は ﹂ ﹁俺に投票してくれた人は明日いっぱい良いことがあるベ ん﹂ ! ! ! ﹁ねえお姉ちゃん、今屑って言いかけなかった ? 同列9位のお二人だよ∼﹂ ! とこまるがどうでも良いことに反応していると大神と不二咲が現れる。 ﹁あ、2票で2人ってすごい偶然⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮さあ次いってみよー ンケートに投稿してね、投票者が50越えたら作者もやる気出すから⋮⋮きっとね﹂ ﹁さあて次々⋮⋮⋮ん ? ! ? !? ﹁ア ル タ ー エ ゴ は 1 0 位 席 に 座 る と 危 険 が あ る か ら こ こ に き て 私 の 代 わ り に 司 会 し て ! 429 ﹂ ﹂ そして見た目は可憐、その実つくもんついてる不二咲千尋さ∼ん ﹂ ﹁見た目は大鬼、中身は女神、おそらくダンガンロンパで最も心優しいキャラ、大神さく らさ∼ん ﹁⋮⋮⋮⋮もうモナカちゃんが司会やれば ﹁やだよ、絶望的に面倒くさい﹂ ﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮それ私にやらせようとしてるのはどこの誰かな ﹁それじゃ、次、行ってみよー ! 6位10票、絶望達のマスコット、モノクマ﹂ ! ヤンデレアイドル舞園さん﹂ ? ﹁いやですね、別に刺したりしませんよ⋮⋮ところであなたって苗木君と同じ血が流れ ﹁5位、11票、その包丁は何を刺す ﹂ ﹁書くのが面倒くさく⋮⋮⋮もとい読者の皆も飽きてきただろうしどんどん行くね∼、 ﹁⋮⋮⋮⋮苦労人⋮⋮⋮﹂ ﹁7位、8票苦労人霧切さん⋮⋮﹂ ﹁5票も入ってるね⋮⋮﹂ よ。びーっくりだね⋮⋮﹂ ﹁次は⋮⋮8位、この作品の作者にしても高校生と名乗る年齢詐称、超高校級の切望だ モナカの言葉にこまるはため息を吐きながら次の人を呼ぶために書類を見る。 ! ? ? ! ﹁うぷぷぷ⋮⋮かませ眼鏡や原作ヒロインより人気なボクでしたー 閑話⑤ 430 てるんですよね ⋮⋮いいなぁ﹂ ? てかおいモナカ、久し振りだなあ 久し振り∼﹂ けねーよなぁ ! ﹂ ! ﹁るせぇ ﹂ ないわ、絶望的にないわこの名前⋮⋮﹂ アンテナ小娘 ! ? ﹂ この作品でモナカ達にも関わりが 的とか言ってたし、ちゃんと絶望してくれたかなぁ ﹂ じゃあ次行くよ次 苗木誠お兄ちゃん ﹂ ! ﹁⋮⋮⋮はい、残姉さんでした ﹂ 深く、希望の戦士の6人目 ﹁お兄ちゃーん ﹁どうも、こんにち│││ぐはぁ ! ! ! ! ﹂ 良いのかなあ⋮⋮あ、でも盾子ちゃんさっき私に負けたら絶望 ! ? ? ! ﹁えっと⋮⋮私が2位 ん、略して残姉戦刃むくろ ﹁じゃ、続いて2位というまるでメインヒロインの用な票を集めた残念な軍人のお姉さ ! れキラキラネーム ﹁あれが私の先代⋮⋮⋮⋮3位、21票の牝犬ギャンブラー、セレスティア⋮⋮え、何こ ﹁わーい ! ﹁⋮⋮私なんかに19票も⋮⋮うれしいですね、でも、やっぱり何かの間違い⋮⋮⋮なわ 級の絶望、江ノ島さん﹂ ﹁うわ、なんか絶望的にヤバい予感⋮⋮続いて4位、19票、私の先輩にして真の超高校 431 苗木が出てきた瞬間、さっきまで気だるげだっだ気配を一変させ満面の笑みで兄に飛 びついた。 ちゃん ﹂ ﹂ お父さんも死んでお母さんも死んで⋮⋮私には ﹁お 兄 ち ゃ ん お 兄 ち ゃ ん お 兄 ち ゃ ん お 兄 ち ゃ ん お 兄 ち ゃ ん お 兄 ち ゃ ん お 兄 ち ゃ ん お 兄 ﹁ちょ、こまる⋮⋮⋮離れて ﹂ ﹂ ﹁やだやだやだやだやだやだやだやだ ﹂ お兄ちゃんしか家族がいないもん モナカも混ざる∼ ﹁いや、友達がいるでしょ⋮⋮⋮ 結局、戦刃が後を引き継いだ。 ﹁⋮⋮⋮えっと⋮⋮苗木君は43票のぶっちぎりの1位だよ⋮⋮﹂ ﹁わーい ! ! ! ! ! ! ! 閑話⑤ 432 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超 ! ﹂ ! ﹂ ! ﹁あ、大丈夫ですよ 十神君の心臓を貫こうと思っただけで他の人には⋮⋮﹂ ﹁そうですわ。十神君の頭蓋をかち割っても他の人には手を出しません﹂ ? ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ どれも人の命を奪える凶器だ。 霧切の言葉に舞園が包丁から、江ノ島がナイフから、セレスが木槌から手を離す。 ﹁﹁﹁⋮⋮ッチ﹂﹂﹂ ﹁つまり苗木君はまだ生きている⋮⋮だから、今すぐ武器から手を離しなさいアナタ達﹂ ﹁ネットワークに侵入したときに、バックアップを取っていたようですわね⋮⋮﹂ ﹁アルターエゴ、良かった⋮⋮生きてたんだぁ﹂ ﹁天使 ﹁ね、ねぇ⋮⋮今のって⋮ 穴の底に落ちた苗木を見て、モノクマは大笑いをして消えた。 ﹁⋮⋮⋮うぷぷ⋮⋮⋮ぶひゃひゃひゃひゃ ﹂ 高校級の絶望を引き寄せた理由① 433 る。 ? いたのだ。 ﹂ ﹁とりあえず、食堂に集まっててくれるかしら ﹁苗木君が ? ﹂ ? 山田は霧切に睨まれおとなしく引き下がった。霧切は脱衣場のロッカーの鍵を眺め、 ﹁な、何でもありませんでこざる﹂ ﹁なに ﹁ふむ、それより拙者は天使を探しにいきたいのですが⋮⋮﹂ ? 彼が残したモノも確かめたいし⋮⋮﹂ 2人に対し江ノ島は無言だ。江ノ島だけは、黒幕の味方をするか苗木を救うか迷って ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ なまねはしませんわ﹂ ﹁あるいは、単純に受け入れていたか⋮⋮死を受け入れた者から覚悟を奪うなんて無粋 ﹁だって苗木君、やけにあっさりしてましたし⋮⋮何か策があるのかって思いまして﹂ ﹁そんなにも苗木君を思ってるくせに止めないのね ﹂ 3人の言葉にさすがの十神を顔を青くして後ずさり霧切は呆れたように頭を押さえ ﹁⋮なん⋮だと⋮⋮﹂ ﹁十神の喉を割いても他の奴には何もしないって⋮⋮﹂ 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた 434 エレベーターに乗り込んだ。 ﹁しかし今更ながら、苗木誠殿は本当に犯人だったのでしょうか⋮⋮ ﹁もう投票しといてよく言いますわねこのブタは﹂ ﹁俺が暇してるの見たらわざわざ野球に誘ってくれたっけ⋮⋮﹂ ﹂ ! に動いていた心優しい苗木がクロになったからと言って自分の命を優先するまでなら 恩を売ってきた訳ではない。一度たりとも報酬など、見返りなど求めてこず人のため ﹁うむ。朝皆が何時にくるのか平均を調べようと思っていたら表を作ってくれたぞ ﹂ ﹁僕が落としたぶー子たんの眼鏡拭きも一日かけて探してもらったこともあります﹂ ろう行動を誰よりもまず先に行っていた。 たかもしれない状況で江ノ島を救って、一人モノクマに目を付けられることになるであ 全員だが、やり方はともかく舞園から殺意を無くし下手したら自分が串刺しになってい 確かにそうだ、当初はモノクマに向けた異質な殺気やら悪意で距離を採りがちだった 山田の言葉に黙り込んだ一同。 ﹁﹁﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂﹂﹂ な性格だから一見さんには狂人に見えますが、根は良い人なんですよね﹂ ﹁む⋮⋮ぐ⋮⋮今回ばかりは何も⋮⋮⋮⋮いえね、苗木誠殿ってあんな人を食ったよう ? 435 ともかく何時もと変わらぬ態度をとれるとは思えない。 ﹂ ? ﹂﹂﹂﹂ !? ﹁江ノ島盾子、アナタは何者なの ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ 私達の敵 それとも⋮⋮﹂ ? ﹂ ? 園やセレスも気づいた。 十神はそのプロフィールを見て納得したように頷く。他の皆は首を傾げていたが、舞 ﹁それがいったい⋮⋮⋮なるほどな﹂ 霧切は十神の言葉を否定して抑えていた紙を持ち上げる。 動揺する一同の中言葉を発した桑田と十神。 ﹁いいえあったわ⋮⋮⋮﹂ ﹁まさか、江ノ島のプロフィールがなかったのか ﹁ちょ、どうしたんだよ霧切ちゃん⋮急に江ノ島ちゃんに詰め寄って⋮⋮﹂ ? 霧切は書類をテーブルの上に置くと、一枚の書類の上に手を置き、江ノ島を睨む。 ﹁﹁﹁﹁ ﹁苗木君が私達に託した手掛かり、78期生のプロフィールよ⋮⋮16人分のね⋮⋮﹂ ﹁それは何だ と、そこで霧切が食堂にやってきた。その手にはなにやら書類の束が握られている。 ﹁あら、私を除け者にして話し合いかしら⋮⋮⋮﹂ 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた 436 ﹁顔が違う﹂ だってそれ盛ってるんじゃ⋮⋮⋮﹂ ﹁5割増しで美人ですわね﹂ ﹁え ずらす。 ﹁カツラ ﹂ ﹁な、なな、なな⋮⋮⋮ベークション あららん ﹂ 根暗侍、何似合わねー格好してんの ? !? き回るぐらいギョギョッとするぐらい変 霧切はプロフィールの一枚を見て少女の名を訪ねると少女、戦刃はコクリと頷く。 ﹁⋮⋮うん⋮⋮﹂ ﹁アナタは⋮⋮戦刃むくろね⋮⋮﹂ その言葉にショックを受けたように落ち込む少女。 ! ! ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹂ ﹂ どれくらい変かって言うと魚が死体の腐ったような臭い放って足をはやして動 ﹁話すのは久し振りだねジェノサイダー翔⋮⋮そんなに変 ! 江ノ島は自分に集まった視線を見回し、はあとため息をつくと自分の髪に手をかけ、 ﹁では、お主はいったい⋮⋮⋮﹂ ﹁学園の正式な書類に張られる写真が盛られている写真のはずないでしょう﹂ ? ﹁変変 ? ? 437 あ、ごめん⋮⋮違う⋮⋮﹂ それは、誰 ﹂ ﹁本物の江ノ島と入れ替わっていたのか⋮⋮つまり、お前が黒幕だな ﹁え ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁でも黒幕とは関係あるはずよね ? ﹂ しなきゃ、苗木君が私に聞かなかった意味がなくなると思うの﹂ ﹁⋮⋮⋮苗木君はあなたの正体に気づいていたの ﹁⋮⋮多分﹂ ﹂ 戦刃の言葉に霧切は少し考え納得する。 ﹁⋮⋮そう、確かにアナタの言う通りね﹂ ﹁おいどう言うことだ説明しろ霧切 ? ﹁わかってんじゃーん ﹂ ﹂ 霧切の言葉に突然モノクマが現れる。しかも一体ではない、数10体が全員を囲むよ ! わ﹂ 幕が私達を敗者にしたい以上、勝者になれなくなった時点で何をしてくるかわからない ? ! ﹁今この瞬間も放送してるのだとしたら、答えを聞いた私達を誰が勝者と認めるの 黒 ﹁⋮⋮⋮えっと⋮⋮ごめん。それは、自分で突き止めるべきだと⋮⋮思う、というかそう ? ? ? ﹁私が、78期生の16人目⋮⋮﹂ 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた 438 うに現れていた。 ﹂ ﹂ ﹁ここにいる皆を八つ裂きにしてやったよ ﹁ぐっちゃぐちゃの ﹁べっちょべっちょになるまでね ﹂ ! ﹂ ! ﹂﹁ダーヒャッヒャッヒャ ﹂ ﹁ブヒャヒャヒャ ﹁うぷぷ⋮﹂ ﹁うぷぷぷぷ﹂ ﹁うぷぷ﹂ ﹁アーハッハッハ ! ! ! ﹁じゃあボクは温かい目で見守ってやるよ。温かい目 ﹂ モノクマは奇妙な目の形をした眼鏡をかけて去っていった。 ! を見つめる。 たくさんのモノクマ達は様々な笑い声を残し消えていった。残った最後の一体は皆 ! ! ﹁クマークマックマッ ﹂ ﹁うぷぷ。もしここでそこの残念がボクの正体話してたら﹂ 439 ! ﹂ ? こっちにはイケてるモノクマまで⋮⋮っと、このムキム !? でも捨てるなんてあんまりじゃないか⋮⋮﹂ ? と、愛着があるように言いながらもモノクマスペア達を破壊していく苗木。すると かったよ キなモノクマは⋮⋮キモイな。ていうか、ボクたちもそりゃあ、マトモなのは作れな ﹁あ、これは魔法使いモノクマ 苗木は何か使えそうな物がないかと適当に地面を掘り返し始めた。 ﹁ふむふむなるほどなるほど。つまりここはあれか、地下のゴミ捨て場⋮⋮﹂ 地面には大量のゴミの山。 不快な悪臭が立ち込める薄暗い空間。 などと真面目に考え込む苗木だったが直ぐに飽きて、現状の把握に移ることにした。 ﹁⋮⋮⋮いや、彼女は一応妹だし、妹萌はあるのか 自分には妹萌とロリコン属性など無いはずなのに。 に抱きつかれる夢なんてどうかしてるよ﹂ ﹁⋮⋮⋮やめ、離れろ ⋮⋮⋮夢か、変な夢見たな⋮⋮まったく、こまるやモナカちゃん 高校級の絶望を引き寄せた理由② 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた 440 ⋮⋮ 人ならのたうち回っていただろう。 精神的ショックにより後天的な無痛症になりかけている苗木が痛いと感じるのだ、常 ろうとすると何かに触れジクジクと痛む。 と、その時苗木は漸く視界の違和感に気づいた。左側がよく見えないのだ。左目を触 人いないからね、ボクも含めて⋮⋮⋮﹂ てた奴にパーツを加工してはめ込むだけだった⋮⋮まあゼロから作れる才能持ってる ﹁⋮⋮⋮直せないじゃん⋮⋮⋮そう言えば、モノクマスペアを作るときもある程度でき が、それは道具を渡すぐらいだ⋮⋮。 伝いしてきた。もちろん、機械の製作や修理をよくしている先輩の手伝いもした。だ 嘗て周りに超高校級のパシリなどと言われていただけあり、様々な同輩先輩教員の手 と、そこで苗木は固まった。 できるよなぁ。さて、取り敢えず使えそうな家電でも探│││﹂ ﹁これに不二咲くんのプログラム付け足せば、そりゃあモノクマもあんな複雑な動きが 苗木の記憶が確かなら、あらゆる電化製品に使える万能アイテムだとか⋮⋮。 塔和グループのマークが刻まれたチップを見つけた。 ﹁お、あったあった⋮⋮﹂ 441 ﹂ ? ﹁鍵がかかってる⋮⋮でもボクにはこれがある。そう、マスター⋮⋮⋮⋮あれ のだ、マスターキーが⋮⋮。 ﹁あ、そう言えば脱衣場のロッカーに置いてきてた⋮⋮⋮﹂ ? その頃地上では。 ﹁取り敢えず、戦刃さんは常に大神さんと行動してくれるかしら ﹁うん⋮⋮わかった⋮⋮﹂ ﹁それと、苗木君の救出に向かうわ﹂ ﹂ ﹂ 扉に鍵がかかっていたが苗木は得意げな顔でポケットに手を突っ込み、固まる。無い ? ると扉にたどり着く。 苗木はスモールライト︵マッチ箱サイズの小さな懐中電灯︶を使い周囲を探索してい ﹁取り敢えずモノモノマシーンの景品で何とかしていくしかないか⋮⋮﹂ けておいた止血剤を飲む。 苗木はプレゼントの中にあった新品サラシを包帯代わり巻き保健室や科学室で見つ 糸を引く。 手に当たった何かを引き抜くとヌルリとした液体に涙と血が混じってできた液体が ﹁⋮⋮鉛筆 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた 442 ﹁ちょ、霧切ちゃん カメラカメラ ﹂ ! 息を吐くだけだった。 どうやって苗木のいる場所まで⋮⋮﹂ ﹁平気よ、校則にはクロを助けちゃダメなんて書かれてないわ﹂ ﹁だが、どうする ﹁しかし、出口はどうするのだ そうだ、戦刃君、何か知らないか ﹂ 霧切の言葉に朝日奈が慌ててカメラを指差し人差し指を立てるが霧切はふぅ、とため ! ? ﹁トラッシュルームから地下に行くわ﹂ ? ﹂ れていると判断されているからだ。 ﹁じゃあ、私が行きますね ﹁いや、ここは霧切。お前がいけ﹂ ! ! 何勝手に決めてるんですかかませ眼鏡 !? 苗木の意志、という言葉に舞園も押し黙る。 を尊重しただけだ﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮この書類も、マスターキーも、託されたのは霧切でお前じゃない。苗木の意志 ﹁ちょ ﹂ 霧切の言葉に反対する者は居なかった。戦刃が殺されかけている時点で、黒幕とは切 ﹁決まりね⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮地下には、トラッシュルームに繋がる梯子があったと思う﹂ ? 443 舞園は苗木の特別になろうとは思わない。そばにいたいだけだ。だが、だからこそ信 頼されているのが他の人間だというのは少し気に入らない⋮⋮が、苗木が戻ってくるな らどうでもいい。 ﹂ ? ﹂ !? ﹂ ? 78期生のプロフィールを部屋に置いてきた霧切はトラッシュルームの床の扉を鍵 ﹁⋮⋮⋮何でもないわ。少し、苗木君に聞きたいことが増えただけ﹂ ﹁どうした霧切⋮⋮﹂ ﹁ど⋮どうして⋮⋮ 目を見開いて固まった。 ﹁ 霧切はその紙を拾い⋮⋮ プロフィールの間に挟まっていたのだろう。小さな紙が落ちる。 ﹁⋮⋮ 霧切はそう言ってプロフィールを集め、部屋に置いていこうとした時⋮⋮。 ﹁ええ、必ず連れ戻してみせるわ⋮⋮﹂ ﹁わかりました、苗木君を頼みましたよ、霧切さん﹂ 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた 444 ﹂ を開けておき、そして、地下に向かって飛び込んだ。 ﹁│││ッ と大きな音を立て落ちたが、怪我をしていないことを確認すると立ち上がる。 ! 何かしら、この匂い⋮⋮﹂ ? やっと倒した⋮⋮いや∼、さすが四天王最後の一体。強敵だったなぁ⋮⋮む ! そこにはビニールシートを敷き、その上にぬいぐるみやクッションを敷き詰めさらに ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ つけられるなんてついてたなぁ﹂ ぐむぐ⋮⋮にしても、使えるテレビとゲーム機とカセット、ついでにバッテリーまで見 ﹁よっし しばらく歩くとぼんやりと明かりが見えてきた。 霧切はその匂いを頼りに歩き始める。 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ た。やけに強い、まるで香水の中身をぶちまけて消臭剤代わりに使ったかのようだ。 霧切が苗木を探すために歩き出そうとした時、不意に悪臭とは別のにおいを感じ取っ ﹁⋮⋮ 同じように助かっているはず⋮⋮。 周囲はゴミだらけで、だからこそクッションになったのだろう。で、あるならば苗木も ドサ ! 445 あ、霧切さんやっほ∼⋮⋮⋮どうしたの ﹂ ﹂ その上に寝転がり油芋と虹色の乾パン、華麗な王子さまを食べる苗木の姿が⋮⋮。 ﹁ん ﹁何でもないわ⋮⋮﹂ ﹂ ﹁イヤでもなんか怒って⋮⋮﹂ ! まだセーブしてないのにぃぃ ﹁ナン・デモ・ナイ ﹁ああ ! ? 悲痛の声を上げた。 霧切がバッテリーからコードを全て拭き抜くとテレビの画面が真っ暗になり、苗木は !? ? ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた 446 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超 ﹂ ? 学園長室とは一言も言っていないのだから。 嘘ではない。 ﹁⋮⋮ああ、学園長の部屋で見つけたんだ﹂ 抱える男の姿が。 霧切歯切れの悪い様子で懐から一枚の写真を取り出す。そこには幼い霧切と霧切を ﹁⋮⋮この写真は⋮⋮⋮﹂ ﹁ん ﹁魔王を育ててたのね⋮⋮⋮それより、一つ聞きたいことがあるの﹂ ﹁せっかくデスタムーアとオルゴデミーラとミルドラースを育ててたのに⋮⋮﹂ 苗木の抗議の声を無視して階段の近くまでやってくると苗木を放り投げる。 ﹁ちょっと霧切さん、ボク怪我人なんだから優しくしてよ⋮⋮﹂ ﹁まったく、心配して損したわ﹂ 苗木は霧切に襟首を捕まれ引きずられる。 高校級の絶望を引き寄せた理由③ 447 ﹂ の⋮⋮なのに、今更 ﹁⋮⋮⋮⋮さあ ︶ 本当に、どうしろって言うのよ ︵相談する相手を間違えたー ﹂ ! ﹂ ! 求めて写真を持っていた学園長がどんな思いをしていたのかもわからない。多分霧切 みもボクには想像できないし、子を置いてきてしまった事を後悔してそれでも繋がりを ミの、周りから向けられる捨てられた子供っていう視線に晒され続けた霧切さんの苦し キミの心情は理解できないし、学園長がキミをどれだけ思っていたかもわからない。キ ﹁あのね霧切さん。ボクはキミ達親子と違い、両親ともずっと側にいてくれた。だから、 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮何か失礼なことを考えられてる予感﹂ と言うんだ。 しく、それでも結局こんな場所で快適空間作ってくつろげる異常者に相談して何になる そもそもよりによって何故苗木に相談してしまったのだ。狂人に見えてその実心優 霧切の独白に首を傾げる苗木を見て霧切はその場でうなだれる。 ! ? ! ﹁あの人が私を忘れてなかったとしても、私があの人に置いていかれた事実は消えない ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮こんなもの、今更見せられてどうしろと言うのよ⋮⋮ 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた 448 さんの恨みも、学園長の思いも、どっちも正しい。だけどね、ボクはそういうのを見た ﹂ ら、取り敢えず一番傷ついてる方の味方をするって決めてるんだ⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮そう⋮⋮じゃあ、今は私の味方なのね ﹁もちろん⋮⋮﹂ ﹂ ? 少ないだろう。 などと愚痴るが苗木はゆっくりと確かに登っていく。時間はかかるが落ちる心配は ﹁片目のせいで距離感が掴めないボクに無茶言うなぁ⋮⋮﹂ ﹁足を踏み外さないでよ。あなたが落ちて来ても、受け止められないから﹂ ﹁結構深いね⋮⋮﹂ 長い梯子、天井が見えない。しばらく登と床も見えなくなった。 り始めた。 の向こうは煙突上の縦のトンネル、上までかかる鉄製の梯子⋮⋮苗木達はその梯子を登 苗木の言葉に霧切は懐からモノクマ模様のマスターキーを取り出し扉を開ける。そ ﹁ええ⋮⋮﹂ ﹁じゃ、鍵を開けてくれる 霧切はそう言って少しだけ微笑んだ。 ﹁⋮⋮⋮ありがとう。少しだけ、元気になれたわ﹂ ? 449 二人は無言のまま進み、漸く天井に扉が現れた。 あそこに繋がってるはずよ。 ? ﹂ ! ﹂ ? ﹁⋮⋮⋮さてと、行くか﹂ 痛みを感じるだろう。 た。何せ、左目は染みるではすまないのだから。痛みに鈍くなってる苗木でもかなりの 苗木は大浴場に来ると体を洗い、匂いを落とす。髪を洗うときは細心の注意を払っ ﹁そう⋮⋮⋮気をつけてね⋮⋮﹂ ﹁取り敢えずお風呂入る。で、その後モノクマと話してくるよ﹂ ﹁これからどうするの 苗木は監視カメラに気づき手を振っていると霧切も上がってくる。 ﹁⋮⋮ これたようだ。 天井の扉を開け、外にでるとそこはトラッシュルームだった。希望ヶ峰学園に戻って ﹁開いた⋮⋮﹂ 前もって鍵は外しておいたから、問題なく開くはずだけど⋮⋮﹂ ﹁寄宿舎のトラッシュルームの床に、扉があったでしょう 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた 450 苗木は新しいモノクマパーカーに着替えて脱衣場から出ると、まっすぐ体育館に向 かった。 ﹂ ﹁遅かったじゃーん ! ﹂ 苗木の顔にまかれた包帯に気づく。 ﹁⋮⋮何それ ﹂ ﹂ ﹁保健室の包帯だけど ﹁なんか怪我したの ﹁左目をね⋮⋮﹂ ﹂ ﹁ふうん⋮⋮うぷぷ。隻眼とかかっこいいじゃん でボクのよう おろし苗木を見つめる。 苗木の言葉に笑っていたモノクマがピタリと動きを止める。そして、ゆっくりと顔を ? ? ﹁この左目の代償はキミの左目に払ってもらうとして⋮⋮そろそろ本題に入らない ﹂ てか、包帯が微妙に赤くなってまる 体育館に入った苗木を出迎えたモノクマに苗木は苦笑しながら謝る。と、モノクマは ごめんね、待たせて⋮⋮﹂ ﹁待っててくれたの ? ? ! ! ? 451 ﹂ られてるからね、ここまできて誰も死んでいない﹂ ﹁キミが犯人じゃない証拠はあるの ﹂ たった一人犯人を見つ ﹁ないよ、だから用意する。でもさ、それだけじゃつまらないよね ﹂ 苗木の言葉にモノクマは首を傾げる。 ﹁ん ﹁まだ二回目だけど、これで最後にしよう。この生活も⋮⋮﹂ けただけで 面白い、実に面白いよ。そうだね、 ﹁⋮⋮⋮ふうん。つまり、キミはこの学園生活を終わらせると ﹁まさか、キチンとこの学園の謎も解き明かすよ﹂ ﹁⋮⋮⋮うぷぷぷ⋮⋮⋮アーハッハッハッハッハッ ? ? ﹂ ! ﹂ ? する。そして、扉を開け思い出したかのように振り返る。 モノクマの合意を得て満足したのか苗木は笑顔を浮かべて体育館から出て行こうと ﹁乗った ﹁⋮⋮乗るんだ ちゃった方が良いかもね﹂ 視聴者も誰も死なない平和なラブコメには飽き飽きしてるだろうし、ここらで打ち切っ ! ? ? ? ﹂ ﹁あの殺人はボクじゃない。でもキミはボクを犯人にする必要があった。何せ追い詰め 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた 452 ﹁ああ、そうそうそれと、言い忘れてたけど絶望しかないって言うキミに言いたいことが ﹂ あるんだ﹂ プラス ﹁自覚してるよ⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮君の声で言われるとスッゴい違和感﹂ ﹁人生は希望だ﹂ ﹁はにゃ ? 453 だ。そしてその推測は見事に当たる。 ﹂ ? どの角度から見ても苗木だよ ! ﹁苗木⋮⋮ ! ﹁苗木君 無事だったんですね⋮⋮ ﹂ ! ﹁苗木君 ﹂ ? ﹂ なんか格好良くなりましたな﹂ 無事で、無事でよかった ! ? ﹁いや、怪我してんだから無事とは言えねーだろ﹂ ! ﹁おや、苗木誠殿その包帯は ﹁あ、足があるじゃない⋮⋮﹂ ﹁念のため聞くけど幽霊じゃねえよな ﹁うふふ。どうやら霧切さんは賭に勝てたようで⋮⋮﹂ ! ﹁ふん、ゴキブリ並にしつこい奴だ⋮⋮﹂ ﹁苗木だ ﹂ 救出にいった霧切が帰還を知らせれば、石丸がここに皆を集めるだろうと推測したの モノクマと別れた苗木は食堂に向かう。 高校級の絶望を引き寄せた理由④ 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた 454 ﹁えっと、今は帰ってきたことに喜ぼうよ﹂ ﹁うむ。そうだな⋮⋮﹂ ﹁よかった、無事で⋮⋮﹂ ﹂ 苗木を出迎えたのは超高校級の面々。一日では当然変わりなく⋮⋮いや、一名だけ変 わってた。 ﹁あ、えっと⋮⋮戦刃むくろ⋮⋮です﹂ ﹁江ノ島の正体、そいつが16人目の高校生だ﹂ ﹁⋮⋮よろしく、戦刃さん﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮うん﹂ 苗木の言葉に戦刃は小さくほほえんだ。 ﹁それで苗木、モノクマと話に言ったそうだが、どうなった ﹁⋮⋮解き明かせなかった場合はどうなる ﹁あ、そういや聞いてなかった⋮⋮﹂ ﹂ ? だ﹂ ﹁もちろん、ただじゃない。ボクらが最後の学級裁判、この学園の秘密を解き明かしたら 苗木の言葉にザワッと周囲が動揺を露わにする。が、苗木は気にせずに続ける。 ﹁この共同生活を終わらせてくれるってさ﹂ ? 455 と、苗木が呟いた瞬間⋮⋮⋮。 モノクマが突然現れた。 ﹁あ、それとはいこれ⋮⋮﹂ ﹂ ﹁戦刃さんはいろいろ知ってるので発言を制限させます × ﹂ じゅ│││﹂ ﹂ そのマスクにはマイクが入っ さ っ そ く 誰 か が 死 ぬ こ と に な り そ う だ っ た の で 何 処 か ら と も な く 取 り 出 し た 絶 望 ﹁ッ ﹁絶望バットー ? !? ! ﹁え 江ノ島は戦刃と入れ代わるために殺されたと思っている。 苗木はモノクマの行動を見て成る程うまいと感心する。周囲を見渡せばほぼ全員が 島さん、今何処で何をしてるんだろねー⋮⋮うぷぷぷ﹂ ﹁ま、キミ残念だからうっかり言っちゃいそうだけどね。あ、そうそう皆⋮⋮本物の江ノ 戦刃は素直に受け取り素直につける。仮にも敵なのに、本当に残念な性格している。 気をつけてね﹂ ててね、キミがこの学園の秘密に触れる発言をしたら誰かを見せしめに殺してやるから ! モノクマは周囲の視線を無視して戦刃に ! 印のマスクを手渡す。 ﹁んなもん全員おしおきに決まってんじゃーん 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた 456 バットで戦刃を黙らせる。床に倒れた戦刃はビクビク痙攣し、モノクマはそんな戦刃を ツンツンつつく。 ﹂ ! け⋮⋮⋮﹂ ! 78期生は、このプロフィールに全て記されているという事だ。 フィールにも出席番号順に16分の││と書かれているしな﹂ ﹁本物の江ノ島は入れ代わるために殺されているなら、78期生は俺達だけ。このプロ ﹁じゃあ黒幕の正体って ﹂ ﹁だが、モノクマが言うには活きたままこの学園内に足を踏み込んだ人間は78期生だ ﹁あの偽装はモノクマの操作だけじゃ出来ないしね﹂ 入れていることになる﹂ ﹁⋮⋮あの植物庭園の死体を殺したのが黒幕だとすると、黒幕はこの学園内に足を踏み 全員の中に、疑心を残して⋮⋮⋮。 モノクマはそれだけ言うと消えた。 んな78期生だけなのさ まった後、希望ヶ峰学園に生きたまま足を踏み入れた人間は、あの死んだ3人以外みー をやるよ。モブの死は、確かに生徒によるものだよ。そして、コロシアイ学園生活が始 ﹁いきなりやらかしかけてたなこの残念。あ、そうそう⋮⋮オマエラにもう少しヒント 457 ﹂ ! 好きに調べてチョーダイな 思う存分、謎を解いて ! 俺もだぜ兄弟 ﹂ ! ﹂ ﹂ うぷぷ⋮⋮では、学級裁判であいましょう⋮アーッハッハッハッハッハ ロックは全て解除しちゃいます チョーダイな ﹄ ﹁⋮⋮俺は一人でいくぞ﹂ ﹁⋮⋮太っ腹だね。で、皆どうする ! ﹁⋮⋮僕は⋮⋮いや、僕は兄弟達を信じる ﹁おう ! ! ? !! ! シアイ学園生活は真の解答編に突入しまーす。そこで公平を期す為に、学園内の部屋の ﹃えー、校内放送でーす。オマエラ、すでにご承知かと思いますが、これから、このコロ と、その時チャイムが鳴る⋮⋮ 証拠を見つけた方が良いかもしれない。 ノ島が生きているというのは簡単だが証拠がない。自由時間中は、江ノ島が生きている その言葉に互いを睨み合う一同。苗木はふぅ、とため息をつくと頭をかく。ここで江 ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁つまり、この中にいるんだよ、黒幕が⋮⋮﹂ 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた 458 ﹂ ? 指紋を取ると頷く。 ﹂ なんかさ、苗木は色々やって ﹁あとさ、十神くん、武道場でガムテープと矢を発見したんでしょ を取りに行くの手伝ってくれない ? 全員の指紋を手帳に記入しました。言弾メニューで確認できます。 ﹁ふん、それぐらいなら良いだろう﹂ ? 悪いんだけど、指紋 苗木の言葉に全員、苗木が用意したコップを左右の手で握っていく。苗木はそこから かな ﹁そうだね、ボクもそうするとしよう⋮⋮⋮あ、でもその前に、皆指紋を取らせてくれる ! ﹁我はどのみち、戦刃を見張ってなければならん﹂ 何も出来ないの、やだから⋮⋮﹂ ? と、各々様々な主張で単独行動を宣言する。 てくれたみたいじゃん ﹁さくらちゃん⋮⋮⋮じゃあ、私一人でも頑張ってみるよ 459 き出してくる。 ﹁十神くん、そのガムテープから指紋取ってくれる ないし﹂ ? ﹂ ? る、今どこにあるか知らないが早いとこ見つけて指紋を取らなくては。 苗木はそう言うと部屋から出て行った。とはいえ、生徒以外の指紋を持つ者が三人い ﹁こっちの話∼⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮何 ﹁⋮⋮⋮ふうん⋮⋮二卵生じゃなくて助かった﹂ 謎の指紋を手帳に記入しました。言弾メニューで確認できます。 テープからでた指紋は十神のともう一つ、誰の指紋とも一致しないものだ。 十 神 は 苗 木 か ら ア ル ミ ニ ウ ム 粉 末 を 受 け 取 る と ガ ム テ ー プ か ら 指 紋 が で る。ガ ム ﹁ふん。それぐらいなら良いだろう⋮⋮﹂ 容疑者のボクが触るわけにもいか 武道場に来た苗木と十神。十神はガムテープが残っているのを確認すると苗木に突 高校級の絶望を引き寄せた理由⑤ 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた 460 ﹂ ﹁あ、そうだ十神くん﹂ ﹁まだ何か ﹂ ﹂ あらまーくんこんにちはー ﹁って、あれ⋮⋮ジェノサイダー ﹁おおん に来た ゲラゲラ ﹂ どーしたの ゲラ ここには死体しかないけど加わり ﹁成る程成る程⋮⋮って、死体に平気で触れるって本当に死体好きだなまーくん ? ? ﹁死体から指紋を取りに来たんだよ﹂ ? ! 生物室の内部はまるで死体安置所のようになっていた。かなり寒い⋮⋮。 ﹁お、どんぴしゃ⋮⋮⋮﹂ 全てが終わったら戦刃に聞こう。苗木も使用するつもりだし⋮⋮。 ﹁ま、記憶を消された場所は覚えてないけど⋮⋮﹂ 可能性も捨てきれないが⋮⋮⋮。 い。まあ苗木達の記憶を消した設備もどこかにあるだろうから、隠し部屋的な所にある 苗木の捜し物があるとしたら、まだ苗木の行ったことがない生物室が一番可能性が高 苗木は矢とガムテープを指さして言うとその場から立ち去った。 ﹁この前の推理だけど、衝動殺人ならそんな用意周到な武器使わないよ﹂ ? ? ! ! 461 ﹂ ? ﹂ まあ、あのドア気になるしね﹂ 苗木もここ調べに来たの ? ﹁あ、苗木 ﹁朝日奈さんも やっぱ、そうだよね 今ならあそこに入れるかな ! 苗木はそう言ってモノクママークの扉を指差す。 ﹁そうだよね ! ﹁じゃ、そこはボクの運を信じてみよう⋮⋮﹂ ﹂ ? ? ! 苗木はモノクマメダルと見取り図を拾い情報処理室に向かった。 ﹁行ってみるか⋮⋮⋮﹂ チャリーンと音を立てモノクマメダルが落ちたのは情報処理室。 苗木は希望ヶ峰学園見取り図を取り出すと床に敷き、モノクマメダルを指ではじく。 ﹁さてと、次々⋮⋮次はどこにいこっかな﹂ 両親の指紋を手帳に記入しました。言弾メニューで確認できます。 さっきの指紋とはやはり一致しない⋮⋮。 苗 木 は 笑 い な が ら 去 っ て い く ジ ェ ノ サ イ ダ ー を 見 送 っ て か ら 死 体 か ら 指 紋 を 取 る。 ジェノサイダーの秘密を手帳に記入しました。言弾メニューで確認できます。 ﹁知るかよ、アタシと根暗は記憶の共有はしてねーんだ﹂ ﹁そんなつもりは無いんだけどな⋮⋮⋮ジェノサイダーはどうしてここに 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた 462 苗木はそう言ってモノクマの扉を開ける。 爆発したら危ないじゃ│││あれ 平気だ⋮⋮﹂ ? た。まるでロボットアニメのコックピットのようだ。苗木が情報処理室のボタンを押 朝日奈がドアの向こうを恐る恐る除くと、そこにはSFのような光景が広がってい ﹁ちょ、ちょっと待ってよ !? 何今の音⋮⋮﹂ すと情報処理室で妙な音が聞こえる。 ﹁ん ! って、動かない⋮⋮⋮壊れてるの ﹂ ? 動かない⋮⋮。 びっくりした ﹁うわあ ! ﹂ まったく、脳にいく栄養が胸にいっちゃった人はほんと ﹁も、もしかしてここって⋮⋮⋮モノクマ操作室 バカだねー﹄﹂ ﹁﹃うぷぷ。まだ気づかないの も朝日奈達に向かって歩いてくる。 戸惑う朝日奈が交互にモノクマと苗木を見ているとモノクマは机に体をぶつけながら 朝日奈の言葉に苗木がマイクに向かってしゃべるとモノクマも全く同じ言葉を言う。 ボクをロボット扱いなんて、夢のないことしないでよ。全くもう⋮⋮﹄﹂ ﹁﹃こらー ! 朝日奈は開けっ放しのドアから後ろを振り向くとモノクマがジッとたってた。全く ? ﹁だろうね⋮⋮﹂ ? ? 463 ﹂ ? 鍵が閉まって⋮⋮﹂ ! ﹂ ﹁え、じゃあ私が出ようなんて言ったから⋮⋮ オマエのせいだー ! ﹁何すんのさー ﹂ ﹂ 次やったら学園長の危害って事にしてやるぞー ﹂ ﹁ま、ようするに朝日奈さんのせいだから、責任もってみんなに教えてくるんだね、黒幕 ! ! しかし再び出てきたモノクマに苗木は舌打ちを一つ。 ﹁⋮⋮⋮っち﹂ ! ﹁さて、次いこっか 苗木はそんなモノクマの頭を手で押さえ、ちょうど床に開いた穴に押し込む。 朝日奈が自分を責めた瞬間モノクマが爆笑しながら現れた。 ﹁ぶひゃひゃひゃ ! !? ら話も進められないけど﹂ ﹁へえ、てことは黒幕はあの部屋の何処かに隠れてたんだ。まあモノクマが居なかった ﹁あ らでることした。ちょうどそのタイミングでガチャリと音が聞こえた。 朝日奈が黒幕のいた部屋に罠があるかもしれないと言いだし、苗木達は情報処理室か モノクマ操作室を手帳に記入しました。言弾メニューで確認できます。 ﹁⋮⋮⋮⋮そうなるね﹂ ﹁じゃあ、黒幕は学園内でモノクマを操ってたって事 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた 464 ﹂ ﹂ をとらえる最後のチャンスを無駄にしたってさ、アハハハ ﹁あ、あのさ⋮⋮⋮﹂ じゃあ私、今度はあっちを調べてくる ﹁気にしなくて良いよ。それより、次の場所に向かおう ﹁う、うん ! ﹂ ! 苗木はさっそく寄宿舎に向かうと、霧切に出くわした。 学園長⋮⋮と言うか教師なら緊急用の電子生徒手帳を持っているはず。 ⋮⋮⋮︶ ︵そ う い え ば あ そ こ っ て、ボ ク た ち の 本 来 の 持 ち 物 を 入 れ て る ロ ッ カ ー が あ っ た は ず 度調べようと思ったのだ。 苗木は朝日奈と分かれると、今度は寄宿舎の二階に向かった。学園長の部屋をもう一 ! ? 465 なら ? 持ってきた写真を⋮⋮⋮。 霧切はパソコンの前で数秒唸った後、懐から写真を取り出す。苗木が隠し部屋から ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ 超高校級の絶望についてを手帳に記入しました。言弾メニューで確認できます。 どうやらお見通しのようだ。まあ、明らかに痕跡が残っているんだから当然か。 ﹁まあね⋮⋮﹂ 当然知ってるわよね⋮⋮﹂ の絶望的事件を引き起こした連中⋮⋮まあ、苗木君は一度ここに来てるんでしょ 高校級の絶望って言葉は、個人ではなく、集団を指してる⋮一年前の人類史場最大最悪 ﹁このパソコンには、あの人が残した超高校級の絶望についての情報が入ってたわ。超 隠し扉を閉めてしまったので、出来れば使いたいのだが。 パソコンの画面の前にいた霧切だったが苗木に気づいて顔を上げる。ここをでる際 ﹁⋮⋮苗木君﹂ 高校級の絶望を引き寄せた理由⑥ 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた 466 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮本当に、今更⋮⋮﹂ 霧切がパソコンにパスワードを入力すると音を立て隠し扉が開く。苗木がチラリと 画面を確認すると霧切の名が打ち込まれていた。 ﹁⋮⋮⋮おじゃましまーす﹂ 隠し部屋は苗木が来た時と変わりなく、苗木は机やタンスの引き出しを探る。あえて ﹂ プレゼントボックスには触れないでおく。そして、緊急用と書かれた電子生徒手帳を見 つけた。 ﹁苗木君、アナタがここに来たのはそれが目的 ﹁前に来た時は見つけてなかったからね﹂ ﹁開けるよ ﹂ ﹁⋮⋮これって﹂ 学園長と再び邂逅。また目があった。 その言葉はまるで強がっているようで、苗木は頷くとプレゼントボックスを開ける。 ? ? ﹁⋮⋮好きにしたら良いんじゃない ﹂ いるのだろう。だが、開ける勇気がなく苗木に縋っていると言うところか⋮⋮⋮。 霧切はチラリとプレゼントボックスを見つめる。勘のいい霧切の事だ、もう気づいて ﹁⋮⋮そう⋮⋮ところで⋮⋮⋮﹂ ? 467 味が悪いわね﹂ ﹁⋮⋮⋮ごめんなさい﹂ ? ﹂ ? ﹁ごめん、いやだった ﹂ ﹁⋮⋮いいえ、もう殆ど覚えていないけど、少しだけ父を思い出したわ﹂ ? 苗木も一応、一児の父だったわけだが子を持つと男は似るのだろうか ? 一瞬ビクリと身体を震わせた霧切だったが抵抗せず、苗木に撫でられた。 苗木は霧切の色素の薄い髪を撫でる。 ﹁⋮⋮⋮⋮うん﹂ 対して失礼なのも⋮⋮でも、少しだけ側にいて⋮⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮ごめんなさい。こんなの、卑怯だってわかってる。同じ、家族を失ったアナタに ﹁霧切さん とした時、苗木の袖を霧切が掴んだ。 ても気休めにならないことも理解している。しばらく一人にしてやろうと立ち去ろう 霧切は無言で佇んでいた。家族を失う辛さは知っている。だから、なんと言葉をかけ そりゃあ押し込んだのはボクだから、とは流石に言えず頬をかく苗木。 ﹁どうして苗木君が謝るの 気にしないで良いわ⋮⋮﹂ ﹁私の父よ、それ以外考えられない⋮⋮⋮それにしても、こんな乱雑に押し込むなんて趣 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた 468 暫くすると霧切は苗木を押しのけた。その顔は赤い、恥ずかしいのだろう。 ﹂ ? 次に別のロッカーを開くとそこには手帳が一つだけ入っていた。 ます。 ロッカールームで見つけたノートを手帳に記入しました。言弾メニューで確認でき わかった。 ノートには葉隠康比呂と書かれており、中の筆跡を確認すると間違いなく彼の物だと ⋮⋮目的のノートは⋮あった。乱雑に放置されている。 葉隠が買った歴代の水晶玉で、唯一本物の水晶だったもの。まあこれは置いといて ﹁葉隠くんの一億水晶玉、懐かしい⋮⋮﹂ そこは整理整頓とはかけ離れた、葉隠の占い道具が詰まったロッカーだった。 あった緊急用を使うと、今度は開いた。 念のため自分の電子生徒手帳を試してみたがやはり開かない。次に学園長の部屋に 苗木は霧切と別れ寄宿舎二階のロッカールームに来ていた。 ﹁⋮⋮ええ、お願い﹂ ﹁⋮⋮一人にしよっか 469 苗木は一通り調べ追えると最後に自分のロッカーを開ける。果たして何を入れてい す。 ロッカールームで見つけた手帳を手帳に記入しました。言弾メニューで確認できま ﹁⋮⋮⋮霧切さん、一人で突き止めたんだ。やっぱりすごいな⋮⋮﹂ ﹃絶望が紛れ込んでいる⋮だから私達が生き残った⋮2人の絶望がいる﹄ たまたま開いたそのページには、殴り書きのような文字があった⋮⋮。 られ転んだしまう。その際手帳が床に落ち、拾おうとして固まる。 苗木は手帳を閉じて持ち主を断定する。これも持って行こうとした時、瓦礫に足を取 ﹁⋮⋮霧切さんの手帳、か⋮⋮﹂ 相変わらず、自分勝手に物事を決めて⋮本当に最低な父親⋮﹄ そが唯一の希望⋮その為に、お前にも協力してもらいたい﹂⋮⋮それが父の言葉だった。 ⋮優秀な若者を汚れた世界から隔離し、未来への礎にしなければならないのだ。それこ るのは希望だけだ。この計画は、我が国にとって、最後の希望と言っても過言ではない にする事が、この計画の目的なのだ。天災に勝てるのは天才だけ、そして、絶望に勝て 長に⋮⋮すると彼から次の回答を得ることが出来た。﹁天才達を保護し、未来への希望 ついて、発案者である人物に直接、話を聞くことにした。私の父である、希望ヶ峰学園 ﹃希望ヶ峰学園をシェルター化し、生徒達に共同生活を送らせる計画、私は、その計画に 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた 470 たか⋮⋮中にはのっぺりとした丸い板があった。うろ覚えだが希望ヶ峰学園最初の最 初の一年、外の世界の最後の一年の夏近所で出店をやることにした父の知り合いの手伝 ﹂ あの いをした時にもらったものだ。好きな柄を描いて自分だけのお面を作る⋮⋮⋮聞こえ は良いがその目的は制作費を浮かせたいだけ。 放送⋮⋮ ﹃キーン、コーン⋮カーン、コーン﹄ ﹁⋮⋮ん ﹄ ね。頑張るオマエラに、優しいボクからヒントがあるんだよ うぷぷ⋮⋮ヒントが欲し ﹃えー、校内放送でーす。オマエラ、頑張ってる 捜査は、順調に進んでるかなー ? い人は急いで体育館まで来てくださーい !? ? では 戦刃むくろはまだ、本当は黒幕と繋がっているのでは 苗木は体育館に向かって歩き始めた。 ﹁⋮⋮⋮体育館か﹂ ? と思うはずだ。 それも、受け取る本人が撮影した写真。それなら自分以外の皆は元から組んでいたの ﹁⋮⋮ああ、集合写真か﹂ 攪乱できる情報、もしくは疑心暗鬼になるもの⋮⋮⋮。 が、ヒントである以上嘘の情報は渡してこないだろう。だとすると真実でありながら 明らかに怪しい。とてつもなく怪しい。 ! ! ? 471 ? ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ !? ﹁あ、葉隠くん⋮⋮﹂ 苗木っち ! ように去っていった。 やはり猜疑心を埋め込まれる類のヒントのようだ。 じゃ、最後のヒントをあげましょう ! ﹁やあモノクマ、お待たせ﹂ ﹁いらっしゃい これかな⋮⋮﹂ ! 写っていたのは苗木以外の78期生の生徒達。場所は⋮⋮⋮京都の金閣寺の前。横 入っていた。 ノ ク マ が 無 視 さ れ て 落 ち 込 ん で い た が 気 に せ ず 中 身 を み る。そ こ に は 一 枚 の 写 真 が モノクマが何かを言い終わる前に苗木は床に落ちていた封筒を取る。視界の端でモ ﹁ん ? オマエの││﹂ 体育館につくと先客の葉隠と出くわす。葉隠は苗木の顔を見て大袈裟に驚き、逃げる ﹁⋮うぉっ ﹂ 高校級の絶望を引き寄せた理由⑦ 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた 472 ﹂ ﹂ ピースをして満面の笑みを浮かべた江ノ島を中心に皆笑顔で写っている。 苗木は、いない⋮⋮。 なんか反応が薄いなぁ。つまんない ﹁⋮⋮⋮ふーん、そう来るわけね﹂ ﹁ありゃりゃ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁キミ的には、予想通りにならない方が嬉しいんじゃない ? ﹂ ! ﹂ !? ﹁な、何 ﹂ 朝日奈さん⋮⋮⋮﹂ ﹁この写真、見覚えある ? !? ? 朝日奈が見せたのは苗木とは別の集合写真。ハロウィンだろうか 様々な仮装をし 奈では朝日奈の方が筋力が上だ。最近鍛え初めてもまだ力関係は変わらない。 苗木が挨拶するより早く、勢いそのまま飛びつかれた。振りほどこうにも苗木と朝日 ﹁ぐは ﹁苗木ー くる。振り向くと朝日奈が物凄い速さで走ってきていた。 苗木は体育館から出て次は何処を調べるかと迷っていると廊下を走る音が聞こえて 集合写真を手帳に記入しました。言弾メニューで確認できます。 モノクマと苗木は暫く見つめ合った後、体育館から出て行った。 ? ! 473 とても残念だ。苗木は狼⋮⋮の着ぐるみ。ゾンビナースに扮した江ノ島にマ た皆が移っている。戦刃は自衛隊の服に赤い絵の具を塗っている。敗残兵のつもりだ ろうか ジ噛みされてる。 ? ﹂ ? よ﹂ ﹁⋮⋮⋮そっか。そうだよね まったくモノクマめ ﹂ ! ﹂ ﹁あ、霧切さん。もういいの ? ﹁ええ⋮⋮﹂ ﹂ ? ﹁何が ﹁うんまあ、嘘はついてないよね。ボクは悪くない﹂ 朝日奈はプンプンと起こりながら去っていった。 ! ﹁その写真についてだけど、ボクは間違いなく希望ヶ峰学園に入ってから皆と会ってる ﹁ご、ごめん⋮⋮﹂ 朝日奈は苗木の言葉に自分の体勢を思い出し、ボッと顔を赤くして離れた。 ﹁⋮⋮⋮え ﹁⋮⋮⋮それで逃げないように抱きついた、と⋮⋮﹂ たんだけど逃げられちゃって⋮⋮﹂ ﹁さくらちゃんに聞いても覚えてないって⋮⋮だから合成かどうか皆に聞き回ろうとし 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた 474 不意に声をかけられ振り向くと霧切が立っていた。 ﹂ その手には何やらDVDが握られている。 ﹁それは ﹂ ? る問に答えている映像を見て呟く。 苗木は流れていく映像、78期生達が学園長の共同生活を受け入れる事の了承を尋ね ﹁ああ、緊急面談ってこれか⋮⋮⋮﹂ る。 ノクマに邪魔されるであろう視聴覚室は避け、学園長の部屋のパソコンで見ることにす 苗木は霧切からDVDを受け取ると早速DVDが見れる場所に向かう。念のため、モ ﹁ありがとう。早速見てみるよ⋮⋮﹂ 緊急面談のDVDを手帳に記入しました。言弾メニューで確認できます。 霧切はそう言って苗木にDVDを手渡す。 ﹁どうぞ⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮見て良い ﹁78期生緊急面談だそうよ⋮⋮あなたが居なくなった後あの隠し部屋で見つけたの﹂ ? 475 こんなもの、覚えている苗木にはなんの価値もないのだが⋮⋮と、切ろうとした時苗 木の手が止まる。 止まない雨はないよ ! そう、終わりがあるから、新しい始まりもあるのです。だ ! か ﹄ 終わりの学級裁判の始まりだよ ぷぷ 前の場所で、また会いましょう ! うぷぷぷぷぷぷ ! それだけ言い残しモノクマの放送が終わった。苗木はモニターを見つめ微笑んだ。 !! ! から、また会えるよね。だって、終わりこそが始まりだから⋮⋮じゃあ、始めましょう ⋮干ばつ状態になるけどね まりもあるのです。明けない夜はないよ⋮真っ暗な朝だけどね ﹃物事には、始まりがあれば必ず終わりがあるのです。そして、終わりがあれば新しい始 ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ ﹃キーン、コーン⋮カーン、コーン﹄ と⋮⋮⋮。 苗木は学園長の部屋から出て、一通り調べ終わったか改めて確認しながら歩いている ﹁⋮⋮さてと、そろそろ行くか﹂ 緊急面談のDVDを更新しました。言弾メニューで確認できます。 苗木はDVDを一時停止させ呟く。 ﹁⋮⋮⋮これ、使えるね⋮⋮⋮﹂ 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた 476 ﹁じゃあ新しい章始めるために、前章は終わりにしに行こうか⋮⋮﹂ 次章は仲間でも集めて、終章では彼女の望んだ絶望的な世界を徹底的に破壊しよう。 それがきっと、彼女の望む絶望だから。 れば彼女の気持ちがわかるのかな ﹁うむ⋮⋮﹂ ﹁頑張ろうね さくらちゃん ﹂ ﹂ と、ぼやいている内に赤い扉の前に来る。 ? 私、頑張っていろいろ調べたんですよ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁あ、苗木君 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁そ、その前に免許をちゃんと取ってよぉ⋮⋮﹂ ﹁兄弟、外に出れたらツーリングでもしようぜ﹂ ﹁これで終わる。漸く終わるんだ⋮⋮﹂ ! ﹂ ﹁戦刃さん、アナタは余計なことを言いそうなので絶対に喋らないでくださる また⋮⋮﹂ ? ! ! ! ﹁⋮⋮⋮うん⋮⋮あ、喋っちゃった⋮⋮ごめん、あ ! ﹂ ﹁⋮⋮絶望か⋮⋮ボクには難しくてわかんないや。手っ取り早く絶望するDVDとかあ 477 ﹂ ! しょうか 真っ黒に塗りつぶされた最後の学級裁判 これぞ、暗いマックス ! ﹂ ! 級裁判を⋮⋮﹂ ボ ボ ク ク ﹁うぷぷ、勝つのは絶望さ﹂ ﹁いいや、勝つのは希望さ﹂ ﹂ ! ﹁頑張って考えたんだよ ﹂ ﹁殺風景な場所だなぁ⋮⋮﹂ 望 希 望 動き出したエレベーターは真っ直ぐ下に下に向かっていく。深く、落ちていく。 モノクマが消え、皆次々とエレベーターに乗り込んでいく。 ハッハ ﹁ん じ ゃ、さ っ さ と 始 め よ っ か。ボ ク は 下 で 待 っ て る よ ⋮⋮ 逃 げ ん な よ。ア ー ッ ハ ッ モノクマと苗木は数秒見つめ合い、モノクマはクルリと背を向ける。 ﹁﹁テレビの前の皆にもわからせてやる。希望は絶望よりも強しってね﹂﹂ 絶 ﹁そうだね、虚言も狂言もすべて真実に飲み込ませて、絶望を希望で押しつぶすための学 ! ﹁う ぷ ぷ ⋮ 揃 っ て る 揃 っ て る ⋮ シ ケ た 顔 が 揃 っ て や が る よ ⋮⋮ さ て と、じ ゃ あ 始 め ま かにこちらを警戒している。ぼっちだから、他人が信用できなかったのだろう。 朝日奈、大神、石丸、大和田、不二咲、霧切、桑田などはともかく十神達などは明ら ﹁だから、不用意に喋んなアホアホアホアホ 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた 478 ! ﹂ 苗木の言葉に怒りを露わにするモノクマ。モノクマは16番目の席に跳び箱を置き その上に立つ。 ﹁そんじゃあ、始めまーす ! 479 きですよー ﹂ ﹂ ﹁うん。そうなるね﹂ ﹁クマに二言は ﹂ ﹂ ? ﹁そんな事より⋮⋮俺から聞きたい事がある⋮﹂ ﹁おや、珍しくシリアス調だね、お腹でも痛いの ﹂ だけど、それが出来なかった場合 隠が発言を始めた。基本何も考えない彼が発言するなど珍しい。 苗木とモノクマは何時ものように、空気を読まずに脳天気な会話する。と、その時葉 ﹁ありません ? ! もちろん、敗者が受けるのはワックワックでドッキドッキのおしお ! ﹁それはモノクマにも適用されるの ! ! ? は⋮ボクの勝ちー 園の謎を解き明かした場合は⋮⋮オマエラの勝ちー ルを明確にしておきましょうか。モブキャラを殺した犯人を指摘し、なおかつ、この学 ﹁今回は、最後の学級裁判という事で、特別ルールが適用されまーす。まずは、そのルー 高校級の絶望を引き寄せた理由⑧ 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた 480 ﹁黒幕って⋮⋮1人なんか ﹂ ﹂ 葉隠の言葉に数人の人間が肩を震わせる。 ﹁⋮ん そうなんだろっ ﹂ 責任転嫁とはなんと卑劣な ﹁俺には⋮もうわかってんだぞ⋮⋮ここにいる全員が黒幕と繋がってんだろ ⋮えっ !? ﹁僕も同じ答えです ﹂ 皆して俺 ﹂ !? ? !? 騙しているのはそっちでありましょう を騙してんだろ ﹁失礼な ! !? ﹁それは俺の台詞だ。俺も、俺以外の全員が組んでいる証拠を持っているぞ﹂ ! るのだろう。 ﹁な、なんだ ﹂ なんで、証拠を持ってんのが⋮3人もいるんだって ﹂ ﹂ 3人だけじゃない、少なくともボクと朝日奈さんは持ってる。そうだ そりゃ⋮ ﹁それは違うよ よね ? あ、集合写真 ! 全員も写真を見せた。 朝日奈はそう言って先程の写真を取り出す。苗木も同じように写真を見せると他の ﹁⋮⋮⋮え ? ! ? く納得したような表情をする。全員、受け取り、彼等がなにを言っているか理解してい 葉隠、十神、山田の三人が周囲に敵意を向け、残りの数名がその言葉に戸惑いではな ! ! ? ? !? 481 ﹁⋮⋮え ﹂ ﹂ これ、もらった本人が写ってないね∼ あ ? ﹁⋮ほ、本当だ ! ﹂ ? ﹂ ? 魔法使いモノクマ ﹂ ! と音を立てて当たり戦刃は倒れる。 ! ﹂ ! ﹁因みに捏造ではないんだよねー﹂ 運動性能だけは残念ではないようだ。 大神の言葉に、戦刃はムクリと立ちあがる。見たところ怪我はしていないようだ。 ﹁うむ。ヒットの瞬間身体を後ろに反らしていたな⋮⋮﹂ ﹁いやいや、軍人がこの程度で死ぬ訳ないじゃん﹂ ﹁むしろ苗木っちが戦刃っちを殺してるべ ﹁ふぅ、危うく誰かが殺されるところだった﹂ マスペアを投げつける。鉄の塊がゴン 再び爆弾発言をしそうになった戦刃に苗木がゴミ捨て場から持って帰ってたモノク ﹁いけ ! ﹁⋮⋮あ、あのね苗木君⋮これは⋮⋮﹂ ﹁ちなみにこれって捏造 十神達は漸く納得する。というか、写真一枚で信じるのはどうなのだろうか⋮⋮。 ﹁そういうことか⋮⋮⋮﹂ ! ? ﹁⋮⋮あれ 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた 482 ﹁はぁ 俺らはんな写真取ったことねーぞ ﹂ つまり捏造ということ⋮⋮ぐぬぬ﹂ ! ﹂ ? ﹁まさか、忘れろビームか ﹂ 全員揃って記憶喪失か そんな非現実的なオカルトじみた話でぇぇええ ! !? ﹁兄弟、それはねぇよ⋮⋮﹂ ﹁成る程 得⋮⋮する訳ねーだろ ﹂ ! ! ﹁だがよ、んな事言われたってやっぱり信じられねーぞ﹂ ノートを見て動揺するように一瞬だけ操作をミスったのか訳の分からない動きをする。 葉隠の突っ込みに苗木は何処からかノートを取り出し読み始める。モノクマはその 一つの手だって⋮⋮﹂ ﹁でもこのノートによると意外と簡単らしいんだよね⋮⋮外部からの刺激を与えるのも ! だから写真に見覚えがなかったのか⋮⋮それなら納 ﹁ボク達全員が記憶を失ってる⋮⋮そんな、馬鹿げた理由があったら納得だよね﹂ ﹁あ ﹁⋮⋮ひょっとしてさ、忘れてるだけかも⋮⋮﹂ リスマスetc.etc.⋮⋮どれも幸せだった日常の風景。 苗木はサラッと写真を集めながら呟く。海、山、雪景色、ひな祭り、ハロウィン、ク ﹁⋮⋮にしても、見事に春夏秋冬揃えたものだね⋮⋮﹂ ! !? ﹁僕もそう思ってたんですよ 483 ﹂ ﹂ それに、その写真が本物なら拙者達は最低でも一年過ごしている⋮⋮⋮ 夏コミを忘れるはずがなぁぁぁい ! 1人だけずりーぞ ﹂ ﹁それって⋮⋮い、いやらしいヤツじゃ⋮ ﹁何 ! な、ないでしょうね ﹂ !? 談の様子だったんだ。ここにいる皆のね⋮﹂ ﹁ぼ、僕学園長と面談なんてしたことないよぉ ﹂ 冗談じゃなくて⋮﹂ ﹁いいえ、嘘じゃないわ。私も確認済み⋮なんなら、見てみる ﹁⋮⋮⋮⋮⋮ホ、ホントなの⋮ ﹂ ? ? 朝日奈は顔を青くしながら苗木と霧切に尋ねてくる。 ? ﹁うん。あのね、その映像は⋮⋮﹂ ﹁アルターボール ﹂ ! と組んでいるのか ? 苗木はモノクマ模様のボールを投げつけ戦刃の言葉を遮る。この女は実はまた黒幕 ﹁あう !? ﹂ ﹁桑田君少し黙ろっか。ここに映ってるのは、ボク達皆と希望ヶ峰学園の学園長との面 !? ! 苗木はそういうと懐から78期生緊急面談のDVDを取り出す。 ﹁じゃ、このDVDの内容聞けば納得するかな ? ! ﹁そうですぞ 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた 484 ﹂ ﹁戦刃さん、ボクが良いって言うまで黙ってて﹂ ﹁ご、ごめんなさい⋮⋮でも、つい﹂ ﹁ならこれを使いなさい⋮⋮はい、プレゼント ﹂ ? 捨てられてたなぁと呆れながらモノクマに視線を戻した。 ﹂ ﹁⋮⋮し、しかしそんな⋮⋮記憶喪失などとそう簡単に信じてよいものか ﹁だが、反論材料がないなら、信じる他あるまい⋮⋮﹂ ﹁ところで苗木よ、それはどんな内容の面談だったのだ ? 学園長はそれを尋ねて、誰1人拒否しなかったよ ? これは正解 ﹂ それともはずれ ﹂ ? いる。 ﹁で ? ﹁大・正・解 !! ? 苗木の言葉に信じられないと言う顔をする一同。モノクマだけは楽しそうに笑って ⋮⋮﹂ ﹁この学園での一生を受けいれるか ? ﹂ 着する。うん、組んではいない。苗木が黒幕だったら速攻切り捨てる。ああ、実際切り 形状から使い方を理解したのか、それでも不思議そうにギャグボールを疑いもせず装 ﹁⋮⋮⋮ 戦刃が落ち込んでいるとモノクマは戦刃に⋮⋮⋮ギャグボールを渡した。 ! 485 ﹂ !? 皆仲良く記憶喪失なの ﹂ ﹂ !! ? を訪ねる。 バレちゃった ﹂ ﹁ちなみにそれって、ここに書かれている方法で記憶を奪ったの ﹂ ボクはどんな記憶を奪ったでしょうか ⋮⋮⋮って、言いた ? !? ﹁あっちゃー ﹁うぷぷ。じゃ、次の問題 ﹁全員仲良く記憶喪失が偶然のはずないじゃん﹂ !? いんだけどまずモブキャラ殺しの犯人を突き止めてよね ! ﹁そうだね⋮⋮じゃ、議論を続けよっか﹂ ! ! ﹂ 周囲がモノクマの発言に驚愕する中苗木は冷静にモノクマに既に確信していること ﹁そう ! ﹁じゃ、じゃあ⋮⋮本当に⋮⋮ ﹁それ以外に、進む道はないという事か⋮⋮﹂ ﹁バカバカしい結論だけど、それが真実なら認めるしかないわ﹂ ﹁はぁあああああああッ 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた 486 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超 ? ﹁その可能性もありますな﹂ ﹂ ﹂ ﹁安全な所からモノクマ操作してんじゃねえか ? ﹁そうだよ 情報処理室の奥にモノクマ操作室があったんだ ﹂ ! ﹂ ? ﹁間違いない⋮か⋮⋮だとすると、黒幕の正体が、この中の誰かだという事も間違いない 上、黒幕はこの中に居た⋮⋮﹂ ﹁そう、黒幕は、あの部屋の操作パネルでモノクマを操ってたんだよ。その部屋がある以 ! 霧切や戦刃を除いた全員が半信半疑だったが苗木の言葉に朝日奈はハッと思い出す。 ﹁いや、それは違うよ。ボクと朝日奈さんがそれをよく知ってるよね ﹁ここに居るわけないじゃない⋮黒幕はきっと、別の場所に居るはずよ⋮﹂ ? ﹁しかし、黒幕は本当にこの学園にいるのか モノクマは白々しく言い放ち、その言葉に霧切が反応する。 ﹁彼を殺したのは黒幕よ。それだけは間違いないわ﹂ ﹁モブキャラ殺したのは誰でしょうね ﹂ 高校級の絶望を引き寄せた理由⑨ 487 んだな⋮⋮﹂ ﹂ ? ﹂ ? ﹂ ? ﹂ ﹁それがどうした ? ﹂ ﹁そのうち一つの指紋は、この中の誰とも一致しなかった﹂ ? ね ﹁思い出してよ、十神くんにガムテープの指紋を取ってもらった時、二つの指紋が出たよ 不機嫌そうな顔をする。 大神の言葉にふん、と鼻を鳴らしながら十神が答えたが苗木に否定されあからさまに ﹁⋮⋮⋮何 ﹁⋮⋮いや、それは違うよ﹂ ﹁当然だろ。この学園には俺達しか居ないんだから﹂ ﹁それは、確かなのか ﹁ならば間違いないな。苗木の両親を殺した男を殺した奴はこの中にいる﹂ その言葉に互いに互いがお互いを疑うように睨みあう。 ﹁⋮⋮⋮⋮そうだね﹂ たんだろ、苗木⋮⋮ ﹁この学園に足を踏み入れたのは78期生である俺たちだけ、モノクマはそう言ってい ﹁な、何を言っているんだ十神君⋮⋮﹂ 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた 488 ﹂ 何が生徒による殺人だ ﹂ 苗木の言葉に十神は目を見開いて固まる。あの指紋はこの中の誰かのものと思って いたのだろう。 ﹁モノクマ、貴様嘘をついたな⋮⋮ ﹁いやいや、ボクは嘘なんてついてないよ ﹂ ! でいる。 ﹂ ﹂ しかし、その者はもう⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮あのさ、皆。居るよね、一人、ここにいない78期生の生徒が⋮⋮﹂ ﹁江ノ島盾子の事か ? ﹁⋮⋮⋮誰が言ったの ﹁⋮⋮何 ? ﹂ ﹁モノクマは本物は何をしているか尋ねてきても、死んだとは一言も言ってないよね ﹁⋮⋮⋮あ ? ? ﹁それが目的だったんでしょ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ 江ノ島さん⋮⋮﹂ ? んでいたんだ⋮⋮﹂ ﹁そう言うことか⋮⋮⋮俺達はあの言い回しで、江ノ島盾子は殺されたものだと思い込 ! ﹂ 十神がモノクマを忌々しそうに睨むがモノクマは何処に吹く風。軽く受け流し佇ん ﹁なんだと ! ? ! 489 ﹂ ? 苗木の言葉にモノクマはただ黙り込んでいた。 ﹂ ? ね﹂ ﹁それって何時から ﹂ 転校生も、予備学科って所から移籍した ﹁前学園長が死んでボクが学園長に就任した日から ﹂ ﹂ 実際、予備学科から本科の生徒になった先輩もいるんだし ? ﹁この学園のセキュリティーは完璧だからね。ボクが誘わない限り入れないよ ﹁後から入り込んだって、言わないんだね﹂ ! ﹁はにゃ それがどうかした ﹂ ? ﹁モノクマが学園長に就任したのは前学園長が死んだ後なんだよね なら、当然この ? モノクマの言葉に苗木はふぅん、と呟き再び78期生緊急面談のDVDを取り出す。 ! ? ! 可能性もあるじゃない らって江ノ島さんとは限らないんじゃない ﹁確かにボクの正体は78期生。そこを突き止めたのは誉めてあげるよ。でもね、だか ﹁ん ﹁⋮⋮⋮あのね、苗木君。それだけでボクが江ノ島さんって決めつけるの 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた ? ﹂ DVDに映ってる人間に限られる。ここには本物江ノ島さんも映ってたし、ボク達以外 は映ってない。こんな当たり前のこと、もしかしてわざと ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ 490 ? 有り得そうだ。 敗北の絶望を味わうためにわざと失言する。そんな事すら厭わない連中の集まりこ そ超高校級の絶望なんだから。 ﹁え そうなの⋮⋮ ﹂ ﹁ウイルスが起動しなかった⋮⋮それって幸運 ? 何も言わないの ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁あれ ﹂ ? ﹁ビビってる⋮だけだよ⋮⋮﹂ ? ﹂ 高校級のギャル江ノ島盾子は、入れ替わっていた戦刃さんだったんだ。そして、江ノ島 ﹁ふうん。なら、クライマックスと行こうか⋮⋮まず、この学園で目覚めた直後あった超 望しかないボクには無縁の感情だよ﹂ ? ? ﹁ビビる ビビるって何⋮ 怯えや恐怖、それは希望があるからこそ抱く感情⋮絶 ﹁それじゃあ、推理を纏めよっか⋮⋮⋮﹂ だ⋮⋮。いや、だからこそあんな事が出来たのか。 苗木はDVDを見ながらつぶやく。ウイルスなど仕込んでいたのか。用意周到な事 ﹁⋮⋮⋮かもね﹂ ? ? ﹁おかしいなぁ。念のため途中でバグるよう、ウイルス入れてたのに⋮⋮﹂ 491 盾子を容疑者から完全に消すために処刑しようとした。 まあ、ボクのせいで失敗しちゃったんだけどね⋮⋮その後なんやかんやで殺人が起き なくなってしまった現状を焦った黒幕は、外部から人を呼ぶことにした。その際ボクに 容疑を被せる為に動機、つまりボクの両親をその男に殺させた⋮⋮けど、ボクが犯人に するためにはボクが殺す動機を持つ彼を殺す必要があったんだ。そのために矢を束ね て作った鈍器で彼を殺害し、遺体を植物庭園に運んだんだ。その際あえてアリバイを特 定できなくすることでわざと捜査を混乱させた。 この学園で殺した後に殺人を隠すのは、他の皆を殺そうとしているのと同義だから ね、投票させる忌避感を減らそうとしたのかな 苗木の言葉にモノクマは何の反応もせず黙り込む。 それは置いといて、以上が事件の全貌だよ﹂ さっきの転校生だの移籍だの、それって居もしない犯人に投票させるための嘘 まあ そして、それを仕組んだのは黒幕⋮⋮本物の江ノ島盾子なんだ⋮⋮あ、そういえば ? ? 違うよー 苗木を除いた全員がモノクマに対して様々な言葉を言うがモノクマは一切反応しな ﹂ ! ? い。 まだ続くんだよー ! ﹁うぷ⋮⋮うぷぷ⋮⋮⋮クライマックスで終了、そんな風に思っちゃった 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた 492 と、何処からともなくスモークが現れモノクマを包む。そして、スモークが晴れると ⋮⋮。 そこには⋮⋮絶望が居た。 街を歩けば10人に10人が振り返るような美少女で、そのくせ纏う気配は異様の一 言。悪意のない邪気⋮⋮罪悪感はもちろん、罪を犯すことに対する興奮も感じさせな い。息をするように邪悪をまき散らす、そんな気配。 だから、その気配を前に苗木は笑った。誰にも気づかれず、懐かしい彼女との邂逅に 一人微笑んだ。 ﹁待っていたわ 私様は待っていたのよ あなた達のような人間が現れる事をね ! ! 権利書も用意してるわよ ﹁⋮⋮⋮⋮手料理か⋮⋮﹂ 地位と名誉と私様の手料理も付けてあげるわ ﹂ ! ﹁え 大丈夫なの⋮⋮ ? ﹂ とっては、苦行を通り越して、自殺行為だからさ﹂ 日、来る日も来る日も、モノクマを演じ続けるなんて⋮⋮絶望的に飽きっぽいアタシに キャラだったか自分でも忘れちゃって⋮⋮それにしても、やっと解放されたよ。毎日毎 ﹁ごめんごめん、今のはジョークなんだよ。なんだか久しぶりの人前だからさ、どういう ! 私様の配下になるなら、世界の半分をあなた達に差し上げましょう。すでに、不動産 ! 493 ? どうかした⋮⋮ああ、そういや⋮⋮もう取っていいよ。どうせ、ここから先は知ら ? な どんだけ残念な姉だよおめーは ﹂ ﹁⋮え、あ⋮⋮うぅ⋮ご、ごめんなさい⋮⋮﹂ ! ﹂ その異様な雰囲気に、皆が飲まれ始めた⋮⋮。 ﹂ オレこそ超高校級の絶望 ﹁まあ、でも⋮⋮黒幕がわかったところでどうでもいいよ﹂ ﹁どーでもよくねえべ ﹁い い え。確 か に ど う で も 良 い こ と で す。何 故 な ら こ れ は 今 か ら 最 後 の 学 級 裁 判 ら し ! ! ! ﹁まあいーか それより自己紹介と行こうぜ、そう 江ノ島盾子ちゃーん ! 飽きっぽい彼女は自分のキャラさえ飽き、キャラを変えながら話す。 ! ! ! ﹁ああ、久しぶりだね⋮⋮⋮うん。ひゃははは 裏切っといてよく普通に挨拶できん ﹁えっと⋮⋮その⋮⋮久しぶり、だね﹂ 思わず凝視していた。 江ノ島の言葉に戦刃はギャグボールを取る。ネトっと、唾液が糸を引き桑田と山田が れても特に困んないしさ﹂ ﹁ん ﹁⋮⋮んー、んぐ⋮⋮む∼﹂ ﹁心配してくれてどうもありがとう。まあ、こうして生きている以上は平気さ⋮⋮﹂ 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた 494 く、この学園の秘密を解かなくてはならないのです。例え私の正体が幽霊だろうとロ ボットだろうと傲慢小娘だろうと、この学園の謎を解かない限りあなた達の勝ちにはな りません﹂ ﹁なら、解くよ。解いてボク等が勝つ⋮⋮﹂ 495 ? のだからわかっている事から議論するべきだ。 記憶よ⋮ッ ﹂ ﹁集合写真の撮影や⋮⋮面談の記憶⋮という事は⋮わ、わかった ! ! だ﹂ ﹁うぷぷ。大正解 流石だねぇ苗木くん⋮⋮散々ボクの邪魔をしただけはあるよ﹂ もボク達は一年共に過ごしたことになる⋮⋮なら、奪われた記憶は学園生活の記憶全て ﹁いやいや簡単でしょ。ここに映ってるのはどう見ても一年分の記憶⋮⋮なら、最低で 腐川の言葉に江ノ島は何時の間にかモノクマを抱いて何も答えない。 ﹁シーン⋮⋮﹂ !! きっと⋮入学試験の 確かに彼女の言うとおりだ。まず、この学園の記憶を奪われている事がわかっている 苗木の言葉に霧切が提案してくる。 ﹁そうね⋮なら、どんな記憶を失ったか話し合いましょう﹂ ﹁さてと⋮⋮まず何から話そっか ﹂ 高校級の絶望を引き寄せた理由⑩ 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた 496 ﹁⋮⋮⋮ああ、だからあんな動機を用意できたんだ﹂ ﹂﹂﹂﹂ ? ﹁⋮予想できた ⋮⋮それ、あなたも同じですよね⋮⋮ ﹂ ? 散々私の邪魔をして⋮⋮まあ、 ? ぶわ ﹂ 無数に存在するそれは世界に絶望をもたらす⋮⋮私様は、それを絶望の種と呼 ﹂ ﹁絶望の種⋮ ? ! ! ﹁そう がないね、人をコロシアイに走らせるモノは﹂ ﹁怨恨、私怨、恐怖、嫌悪、愛情、気まぐれ、主義、正義、救済⋮⋮確かに上げればキリ ﹁もちろん、苗木が言った4つの動機だけが世界に蔓延る動機ではないわ⋮⋮﹂ 際話しているのは苗木と江ノ島だけだった。 コロコロキャラを変える江ノ島。まるで数人が話しているような錯覚を受けるが実 おかげで絶望できましたが⋮⋮﹂ ? どう動くか、一年も過ごしてたら直ぐに予想できたんじゃない ﹁人間関係、思い出、欲望、イレギュラーだけど裏切り⋮⋮ありきたりな動機だけど誰が し、明かされず落胆してしまうのも良しと考えているのだろう。 その目には期待、怒り⋮⋮様々な感情が見て取れる。ここで明かされてしまうのも良 苗木の言葉に江ノ島以外の全員が首を傾げ、江ノ島は興味深そうに苗木を見つめる。 ﹁﹁﹁﹁⋮⋮ 497 ﹂ ﹂ なら、教えてあげましょう ﹂ それは希望よ。希望が 表と裏、だけど紙一重、それが希望と絶望なのよ ! ? 江ノ島の言葉を霧切が復唱する。 あるからこそ絶望が育つの なら希望も絶望で育つの ! ﹁絶望の種が何で育つか知りたい ﹁ん ? ! ないので⋮⋮﹂ 江ノ島と苗木の会話にイライラしたように十神は割って入ってくる。 ﹁⋮⋮いつまで、くだらない会話をしている﹂ ﹁こ、これ俺の字だ 間違いねえべ ﹂ !? その話は後にしてくれ⋮⋮で、隠し事だっ じゃ、じゃあ本当なのか ! ﹁だから苗木の言葉に正解って言ったろう ? ! 信半疑で中身を確認した葉隠だったが次第に顔が青くなってゆく。 苗木はまだ認めようとしない葉隠に、葉隠康比呂と名前が書かれたノートを渡す。半 ﹁本当だと思うよ。はい、これ追加の証拠⋮⋮﹂ !? ﹂ 何を隠している ﹂ ﹁俺達の記憶⋮⋮学園生活が抜けてるのはわかった。だが、それだけではないだろう ! それって本当なのか ﹁い、いや待て ! ! ﹁⋮⋮⋮それは、考えたことがなかったです⋮⋮難しい質問ですね⋮⋮私、絶望以外興味 ? ? ﹁種、ねえ⋮⋮苗床は人間だとして、養分は 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた 498 たっけ ﹂ 大したことじゃないよ、強いて言うなら、記憶を奪うことで希望を与えてやっ ただけ⋮⋮ま、絶望に喰われる為の希望だけどね﹂ ﹁ど、どうして記憶を奪うと⋮希望を与えた事になるの ﹁つーか⋮そもそも希望なんて与えられてねーぞ⋮⋮﹂ れたのは絶望だけだと思っているのだろう。 ﹂ ﹁⋮⋮ここから出たい﹂ ﹁ん 最低でも一年は失われてい 江ノ島の希望を与えたという言葉に混乱する一同。彼等からしたら、江ノ島に与えら ? ? ﹁ここから出たい。そう思うことが希望なんじゃないかな ? クを被った大勢の人間が強盗や破壊活動を行い、世界遺産の自由の女神やスフィンクス そしてモニターに映された映像はとてつもなく異様な光景だった。モノクマのマス ﹁これが、あなた方が出たい出たいと喚いていた外の世界です﹂ 江ノ島がメガネをクイッと上げながら手元のリモコンを操作する。 ﹁はい。その通りです。では正解したご褒美に外の世界をご覧いただきましょう﹂ ⋮⋮﹂ ボクらは自らここに立てこもった。それなら、希望ヶ峰学園シェルター化も辻褄が合う る記憶の中で、何かが⋮⋮人類史上最大最悪の絶望的事件と言われる何かが起きて⋮⋮ ? 499 などの顔がモノクマに代わり、巨大なモノクマが跋扈していた。 ﹂ ? 絶望的事件です﹂ ! ﹂ 番長のような髪型の男を観察していると桑田が叫ぶ。 信じないんだ⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮これは、質の悪い冗談ではすまぬぞ ﹁あれ こんな、こんな光景⋮⋮漫画の世界だけにしていただきたい ! ! ? わ⋮⋮﹂ 彼女、腐川さんとは記憶を共有してないんでしょ ? ﹁⋮⋮誰も覚えてねえんだからな﹂ ﹁⋮⋮⋮ジェノサイダーは ﹂ ﹁確かに、記憶を消されているのではなかったとは言えませんがあったとも言えません ! ? ﹁当たり前ですぞ ﹂ 苗木が黒スーツの中に混じりモノクママスク達を殺してやり遂げた顔をしている某 ﹁ん、んなもん信じられっか ﹂ ﹁現時刻実際に行われている映像です。これが外の世界の現状⋮⋮人類史上最大最悪の 景が映された。 苗木が愚痴ると今度はモノクママスクと黒スーツの連中がコロシアイをしている光 ﹁仕方ありませんね、ではこちらを⋮⋮﹂ ﹁切り替わりが激しいよ。もっとゆっくり流せないの 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた 500 ﹂ ﹁なるほどね、記憶を共有していないなら、片方の人格が忘れている事でも、もう片方の 人格が、覚えている可能性があるわね﹂ パンパカパーン 実は家庭的な殺人鬼でーす 苗木と霧切の言葉に全員が腐川を見つめる。 ﹁へむ あの映像って ﹂ !? ﹁アンタ 誰よ ﹂ ﹂ ! ﹁いいから早くモニター見ろって ﹁あ、こちらこそ⋮﹂ ﹁あ、はじめまして ﹁あ、黒幕ですけど⋮﹂ !? ﹂ ﹂ ? マイペースなジェノサイダーに葉隠が叫ぶと漸くジェノサイダーがモニターに目を ! ! ﹁あそこのモニターで⋮流れている映像です⋮﹂ !? ﹁あの映像は、人類史上最大最悪の絶望的事件とやらなのか で問いかけるとジェノサイダーが俺の、という部分に反応する。 苗木が投げた胡椒によってジェノサイダー翔と入れわかった腐川に十神が命令口調 !! ﹁と言うわけではい胡椒﹂ ﹁⋮ハックション ! ﹁単刀直入に、俺の質問だけに答えろ﹂ ! 501 向ける。 ﹂ 界がこんな風になっちゃったの⋮⋮﹂ ﹁こんな風⋮って ﹂ 知っている事を全て話すんだ ﹂ ﹁こんな風に終わった⋮⋮だろ ﹁終わっ⋮⋮た⋮ ﹁く、詳しく話せ⋮ えー、人類史上最大最悪の絶望的事件が起きたのは、今から一 ! !? ? ? まさしく、人類史上最大最悪の絶望的 あれは⋮殺人鬼も真っ青な事件⋮⋮あれは人災と言うよりは⋮⋮も はや、天災と言って良いレベルの事件なのです ! リアルタイムで見てたのは根暗の方なんで、あっち ! ﹂ ﹂ これって悲劇だわ 白夜様の期待に応えられなかった ﹁あいつに聞いてもわからんから、わざわざお前に聞いたんだ ! ﹁まあまあジェノサイダー、何が起きたのかはこの際問題じゃないよ。世界は終わった、 ﹁悲劇 ! ! ! に聞いてもらった方が⋮⋮﹂ ﹁具体的にはアタシも知らないの ジェノサイダーの説明にもなっていない説明に当然のように周りは混乱する。 事件⋮その結果、世界はあっと言う間に⋮あんな風になってしまいました。以上です﹂ ! 年前の事でした ! ! ﹁ラジャーよ、ダーリン ﹂ ﹁ああ、確かにこりゃ人類史上最大最悪の絶望的事件ですね⋮⋮あの事件のせいよね、世 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた 502 503 ﹂ それがわかったんだ⋮⋮だからさ、次に進もう。世界は終わってた、ならボクらはどう する ? くる江ノ島。 ﹂ でもよ、殆ど絶望に染まってんのは事実なんだぜ 絶望しきってないから、ボク達のコロシアイを放送したんだろ ﹁うぷぷ。絶望しきった世界に出てくつもり ﹁絶望しきった ﹁⋮⋮⋮⋮マジムカつくなぁ、おい ﹂ ﹂ ? ? わざとらしく首を ? ﹁人類史上最大最悪の絶望的事件⋮⋮そんな事件を起こした超高校級の絶望。あなたと 傾げる。 ど小さく、しかし微かに絶望が孕んでいるため江ノ島は気づき、ん 江ノ島が叫んでいると、霧切が絞り出したようなか細い声を出す。聞き逃しそうなほ ! ? ﹁⋮⋮何者⋮なの ? !? ﹂ 苗木の言葉に呆れたような冷めた目と同時に熱っぽさを孕んだ器用な視線を送って ﹁前向きなのがボクの取り柄だからね﹂ ﹁すごいね、キミ。まだ外の世界に出ようか迷えるんだ﹂ 高校級の絶望を引き寄せた理由⑪ 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた 504 戦刃さんの二人だけとは考えられない。それは組織なの 集団なの ? 家族なの﹂ ? ﹂ ? ﹂ ! ﹁⋮⋮⋮あれも未来機関の一人 出るのですか ﹂ ﹂ ﹁⋮⋮⋮確かに、まだ希望を捨てきれない人はいます⋮⋮だからといって、あんな世界に 苗木が未来機関と共にいる白衣の女性を指さすと江ノ島は目を細め楽しそうに笑う。 ﹁⋮⋮へぇ⋮⋮そうそう、あの女も立派な未来機関構成員﹂ ? ⋮⋮うぷぷ﹂ キ ミ 達 の 後 輩 に な っ た か も 知 れ な い 希 望 ヶ 峰 学 園 学 生 候 補 が 集 ま っ た ね。そ れ で も ﹁絶望の殲滅を夢見る未来機関っていう組織だよ。希望ヶ峰学園の卒業生や、本当なら かと尋ねると江ノ島はああ、と完全に冷めた視線をモニターに向ける。 世界そのものが敵というなら、絶望に逆らっているであろう黒スーツの集団は何なの ﹁んじゃ、あの人達は は世界そのものという事よ ﹁そして今や⋮滅びた世界の全てが絶望⋮つまり、絶望を敵と見なすなら、あなた達の敵 現象、確かにその通りだ。あれは事件というより災害という現象そのものだった。 なんだ。絶望は伝染するんだよ。それは、現象の類とも似ているかもしれないね﹂ ﹁そうだね。答えるとすれば⋮⋮どれでもないよ。なんて言うか、もっと観念的なもの 505 ? カン頑張ってはっつけて ﹂ ぜーんぶ忘れて閉じこめられたって騒いで居たわけだ ﹂ テメーらは自分達で鉄板をトンチンカントンチン ? ら、もう助けてくれよ ﹂ さすがの私様も初めて見るほど無様さだわ なんでもするから助けてくれって ﹁なるほど、それが人間の命乞いね でも ! ! ﹁そんなのボクの知った事じゃないんだよね﹂ だが⋮⋮ ない理不尽さ。それこそ絶望。 理由がないから対策も出来ない、理由がないから理解も出来ない、対策も理解も出来 そこには、一切の理由がないんだよ﹂ ね、ボクに命乞いは通じないんだよ。ボクは、ただ純粋に絶望を求めているだけなんだ。 ! ! ﹁も、もう⋮わかったべ⋮オメーがスゲーのは、もう十分すぎるほどわかったから⋮だか 江ノ島は眼鏡越しに苗木を見るが苗木はケラケラ笑って受け流している。 染させる⋮⋮計画だったんですが﹂ たのです。希望の象徴であるあなた達がコロシアイする姿を外に見せつけて、絶望を伝 ﹁そういうことです。そして、私達はあなた達の記憶を奪いコロシアイをさせようとし ! ! ﹁⋮⋮閉じこもった⋮⋮でも、それでも絶望が混じってしまったのですね﹂ ! ﹁おや、理解が早いですね⋮⋮そう ﹁わざわざ自分達で閉じこもったのに⋮って 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた 506 その絶望があるからこそ、人々は希望を求める。 ﹂ ? エホエホ アハハ ﹂ ! ゲホゲホ ! ヒィー⋮⋮アハハ ま、まって ! の言葉をかみしめニィィと獰猛な笑みを浮かべた。 ⋮ケホ ﹁うぷ⋮⋮うぷぷぷ⋮アーハッハッハッハ ! ? !? 青く、二つが混じって紫になっている。 ﹂ ﹁⋮⋮⋮ハァハァ⋮⋮笑い死ぬかと思った⋮⋮それはそれで絶望的な死因 ﹂ ﹁なのに落ち着いちゃって⋮⋮ ﹁絶望的ぃ ﹁楽しそうで何よりだよ﹂ ! ﹂ 酸欠になるほど大笑いして、なかなか飽きがこないのか笑いすぎて赤く、呼吸困難で ! ! 苗木の言葉に流石の江ノ島も絶句していた。が、絶句することに飽きて、何より苗木 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ 点をとり続ける生徒の担任が言ってたしね﹂ は前を見ていくしかない。だって目はそのために前についてるんだから⋮⋮⋮って、零 ルが接近してようと、どっかの青狸がネズミ殺すために爆弾使おうと、生きてる限り人 ﹁世界が滅んでようと、地球がなくなってようと、太陽が膨張してようと、ブラックホー ﹁ん 507 世界が終わっていると聞かされ全員が絶望仕掛けている中、苗木は何時ものように、 普段のように話す。だからこそ、周囲は少しだけだが平静を取り戻す。 ﹂ ? 私はきちんと絶望を理解してますから、理由なく絶望出来ます﹂ ? 希望を抱いているんですよね ⋮⋮ほら、正反対だけど似てません ﹂ ? う。 や っ ぱ り ⋮⋮ あ ん た は あ た し と 同 じ く ら い 狂 っ て る この世界の誰 絶 望 的 に、希 望 に ! だから、あたしはそんなアンタを絶望的に誰よりも愛してる ! ﹁だ よ ね ー 狂ってる ! ! 苗木は江ノ島の言葉に確かにと納得すると江ノ島は今度は普段のギャルに戻って笑 ﹁そうかもね⋮⋮﹂ ? ですがアナタは違います⋮⋮⋮理由なんてない、根拠なんてない⋮⋮⋮でも、アナタは ﹁そして希望にも本来理由が必要です。優しい家族、信用できる親友、素敵な思い出⋮⋮ ﹁ふーん﹂ ですよね があるから⋮⋮人は、そんな理由があって初めて絶望出来るのです。絶望に対して失礼 るのですよ。家族や友人が死んだから、親友に裏切られたから、思い出したくない過去 ﹁そうですね。先程、絶望に理由など無いと言いましたが普通の人は絶望に理由を求め ﹁そうかな ﹁やっぱり、キミはボクと似てるよね﹂ 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた 508 ﹂ ﹂ よりもあんたが好き る ﹁⋮⋮⋮え ! この世界の誰よりもあんたを愛せているって自信を持って言え ! と返すべきなのだろうか ミ 二人はそういって互いに笑みを向けた。 ﹁アンタを殺す⋮⋮﹂ キ ﹁そのために﹂ ﹁だから⋮⋮﹂ 希望の為に﹂ ﹁好きだから、キミを絶望させるためにキミの願いは何一つ叶えない。キミの大嫌いな ﹁好きだからこそアンタを殺して絶望したいんだ﹂ 苗木の返答に江ノ島は戦刃でも見たことないほど幸せそうな笑みを浮かべる。 結局素直に応えることにした。当然皆、驚愕の表情で苗木を見る。 ﹁⋮⋮うん。ボクもキミが世界で一番好きだよ﹂ ? 前初めて合い、過ごす内に恋に落ちていた。だがまさか江ノ島から告白されるとは。何 苗木だけでなく他の面々も固まっていた⋮⋮。苗木とて江ノ島の事は好きだ。二年 そんな江ノ島の突然の告白に固まる苗木。 ? 509 高校級の絶望を引き寄せた理由⑫ ﹂ ﹁それじゃあどっちが殺されるか決めて終わりにしよっか ﹁終わらせる だって、そういうルールでしょ ちなみにね、今回は最後の ! ! ? とは思ったがそもそも原因が自 ? ﹂ !? ﹂ ! ﹂ ? ﹁別にいいじゃん。死ぬのは苗木君クンだけなんだもん﹂ ﹁それにしてもアナタに有利すぎません ﹁あぁ、安心して。もちろん、ボクは投票には参加しないから﹂ ﹁い、1票でもって⋮ みなして、希望側のおしおきを行いまーす んでもらいます。そこで、1票でも希望のおしおきを望む投票があれば、ボクの勝ちと ﹁希望であるオマエ、絶望であるボク。そのどちらがおしおきされるべきかを、投票で選 分なので強くは言えない。 ﹂ ! 最後の、というかまだ二回目の学級裁判の投票だが 投票なので投票のルール自体も変更することにしたんだー ﹁もちろん、投票だよーっ ? ﹂ 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた 510 江ノ島のその言葉に全員がバッ ﹂ と振り向き、苗木はふぅん、と呟いて目を細める。 苗木は舞園達を見ながらそう呟く。 ﹁趣味が悪いね。ボクの死を次の動機にするつもり たからどうだろう 彼女達は、苗木が死ねば今度こそ誰かを殺すだろう。いや、目の前で江ノ島に告白し ? ! ﹁苗木クンが何のこと言ってるかさっぱりわかんなーい つまり、皆さんに与えられた 外に出るという目的以外で、疑わしいからと言う理由で殺しに走るかもしれない。 まあ、どっちにしろ投票という手段で苗木を殺せばそいつは理性のタガがはずれる。 ? ﹂ ! ﹁それに、霧切さんもさ、お父さんを裏切れないでしょ ﹂ 達と違い理由無き絶望も希望も持てない。そして、今は絶望するに足りる理由はある。 苗木はともかく、他の面々は絶望に浸食されかけている。当然か、普通の人間は苗木 苗木はその事に別に恐怖を覚えず周囲を見回す。 にすりゃ、オメェらは生き残れんだよ 行ってもらいます。そして、外の世界で無様に死んでもらいます。つまり、苗木を犠牲 私様のおしおきを望めば、あなた達には、ここから出て行ってもらうわよ。確実に出て なおしおきをウケ、他の皆は、この学園で仲良く暮らせる。だが、もし全員満場一致で 選択肢は2つ⋮誰か1人でも希望のおしおきを望む人がいれば、苗木クンだけが、過酷 ! ? 511 ﹂ だからこ ﹁だって、オマエラに生き延びてもらう事だけが、学園長の願いだったんだよ 死んだお そ、この学園の中に閉じ込めてまで、オマエラを保護しようとしたんじゃん 父さんの願いぐらい叶えてあげなよ⋮うぷぷぷぷ⋮⋮﹂ 誰の絶望が、苗木クンを殺すと思う て興奮しているのが目を見ればわかる。 ? なら、お姉さんを信じなよ。何より、ボク ﹁でも⋮⋮そこにいるむくろ姉さんは、元々こちら側の人間ですよ⋮⋮ ﹁キミは死んだ方が、より絶望できるんだろ ? !! と、葉隠が絞り出すように弱々しく呟く。 でも、生きる事って、前に進むことだよな ? ﹁お、俺の占いだと、やっぱ⋮⋮ここから出ない方が⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁うぉぉぉおおおおっ 辛くても⋮怖くても しを邪魔する中でも変わる事なく仲間を信じ続ける苗木の本音だ。 それは今も昔も変わらぬ、偽り無き苗木の本心だ。人を疑うこの環境の中で、人の殺 は皆を信じてるからね﹂ ﹂ 苗木の言葉に江ノ島は顔では無表情ながらなかなか絶望してくれない苗木に絶望し ? ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁ねぇねぇ、誰が絶望すると思う ? ﹁⋮⋮⋮誰も、絶望なんかしない。皆、絶望に負けたりしないよ﹂ ﹂ ? ? ! ﹁⋮え 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた 512 ⋮前に進む事だよな⋮ そのために目は前についてんだろ 俺はまだ生きたいべ 次 ! だから⋮だから⋮やっぱここ ? 俺は俺の直感を信じることにしたんだ ! ? 新しい何かが待ってるはずだって ! もう占いなんてどうでもいい ! の扉を開きたいべ から出たいべ ﹂ ! た。 葉隠は叫びながら、人の内臓を売ろうとする屑とは思えないまっすぐな言葉をはい ! ならば、我はあえて茨の道を進もう 我は恐れぬ、退かぬ⋮ ! !! ⋮⋮⋮それに、外には再びまみえる約束をしている者もいるのでな﹂ ! 苗木は、何考 ! いなら⋮⋮私はもう、決めた ここから出る ﹂ ! 苗木を殺して生きるぐら ! ﹁⋮⋮私が集めてきたお金は全部無駄、ですか。外の世界も、既に滅びている⋮⋮おもし く傷ついた。 朝日奈は前の苗木だったら心にグサグサ刺さるであろう言葉をはく。今の苗木も軽 ! て正直理解不能だけど、私達を何度も助けてくれたんだもん えてるかたまに解んないし、何で江ノ島ちゃんみたいな人好きになってしかも殺すなん ﹁⋮⋮さくらちゃん⋮⋮そう、だよね⋮⋮逃げてばかりは居られないよね 大神はそう言ってふっと笑う。ものすごい男前の笑みだ。いや、女だけど。 絶望にも屈せぬ ち向かう事でしか掴めん ﹁⋮⋮⋮⋮⋮確かに、外には絶望が、困難が待っているのだろう。だが、強さは困難に立 513 ろいじゃありませんか。それに見方を変えればこれも立派なギャンブルですわ。負け れば死が待つゲームなど、何度も経験しています⋮⋮しかも滅んだ世界ならわたくしが 自分の国を作って城を構えても誰にも文句を言われないじゃありませんか﹂ セレスはそう言ってニッコリ笑った。どうやらまだ夢は諦めてないようだ。 それが ? 私は夢を捨てたつもりはありません ﹂ 居ないなら、作ればいい。また、私がアイドルとして活動して、少しず つでも増やせばいい ! ? ﹂ ! もー決めたことだからな、絶対に変えねー ! ﹁⋮⋮チームを守る。兄貴との男の約束だ⋮⋮世界がこの様子じゃ、守れなかったのか ⋮⋮。 桑 田 は 拳 を 握 り な が ら 叫 び、大 事 な と こ ろ で 噛 ん だ。彼 ら し い と 言 え ば 彼 ら し い ぞアポ より、何時か出来るかも知れない外に出る わかったんだ。俺は野球が好きなんだって⋮⋮だからよ、野球がぜってーできねえここ ﹁⋮⋮俺はよ、しょーじき世界が滅んだとよく理解できねえよ。でもな、苗木のおかげで が消える訳ではないが⋮⋮。 依存させることで心の均衡を保たせてきたがこの様子ならもう平気だろう。まあ、好意 舞園の目にはここ暫くみなかった、確かな情熱が宿っている。これまで苗木は自分に ! どうしました ﹁⋮⋮⋮外の世界は絶望、ですか。アイドルももう居ないんでしょうね⋮⋮で 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた 514 もな⋮⋮だがよ、兄貴とは別の約束もあるんだ⋮⋮どんな時も挫けるなって⋮⋮こんな ﹂ 事で、蹴躓いてる暇はねーんだ。俺は外に出る、んでもって、チームの生き残りを集め て、もう一度チームを復活させる もうどこにも見えない。 大和田は大声で宣言する。秘密を隠すために人を殺しそうになったあの時の弱さは ! ﹂ ! ゲラゲラゲラゲラッ あ、だけど⋮白夜様が来るのは最低条件だから ゆえに、 ﹂ いやいや⋮どう見えてだっ 単純に、楽しそうな方を選びまー ! 実は、こう見えてさ、昔から学校が嫌いなんだよね アタシ的にどっちでもよし 石丸は力強く言い放つ。彼は彼の正義をどこまでも貫くつもりだろう。 す ﹁ゲラゲラゲラゲラッ つーの !! ! ! ﹂ 全ての始まりにして終わりなる者 外の世界に出て、希望を届ける漫画を描いてみせる ﹁⋮⋮⋮拙者は⋮⋮僕は⋮⋮諦めませんぞ 二三 ! 山田一 ! ﹁⋮⋮⋮⋮どうした⋮ まさか、お前如きが俺を励まそうなどと、考えているじゃないだ 山田は自分の漫画を書くという夢を叶えるために、ここから出ることを決意する。 ! ! ジェノサイダーは愉快そうに笑い、最後に十神を付け足す。まあ、何時も通りだ。 !! ! ! ! 外に出て暴力に溺れた軟弱者達に説教してやる こんな、力が支配力となる世界など、風紀が乱れきった世界など断じて認めん ﹁⋮⋮僕の夢は、自分の力で総理大臣まで上り詰め努力が結ばれる国を作ることだ⋮⋮ 515 ? ろうな⋮フン、バカバカしい⋮俺は最初から、絶望なんぞに屈するつもりはない⋮⋮だ が、勘違いするなよ。お前がどうなろうと知った事ではない。俺は、ただ自分の言葉を 守るだけだ。黒幕を殺すという言葉をな⋮⋮それに、我が十神家は滅んでなどいない ﹂ ⋮⋮まだ、この俺が残っている。ならば俺の力で十神家を再建させるまでだ。今まで以 上の存在としてな 殺しの実行は苗木、お前に譲ってやる。十神はそう言って顔を逸らした。 ! ないよ 逃げてちゃ、変わらない 弱いだけの自分は嫌なんだ ! ﹂ ! を幸せにすれば、盾子ちゃんは絶望する、よね⋮⋮ 後ね、皆が幸せな姿を想像すると、 させたいけど、死んで欲しくないって気持ちもやっぱりある⋮⋮でも、ここから出て皆 ﹁⋮⋮⋮えっと⋮⋮あの、ごめん⋮⋮私、やっぱりよくわかんないや。盾子ちゃんを絶望 いない。 不二咲は力強く宣言する。弱さを克服すると。そんな彼を弱いという者はここには ! ﹁⋮⋮外の世界は、きっと怖きことも辛いことも沢山あるんだろうね⋮⋮でも、でも逃げ 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた 516 た。 戦刃は⋮⋮まあ、彼女らしいと言えば彼女らしい言葉で妹との決別の言葉を口にし のために、盾子ちゃんを裏切るよ⋮⋮﹂ なんだか胸がポカポカするんだ⋮⋮だから、私は盾子ちゃんを絶望させるために⋮⋮皆 ? あなたは、超高校級の希望、そう呼べるんじゃないからしら ﹂ 盾子にさえ希望と称されるあなたは⋮⋮最後まで諦めずに絶望に立ち向かおうとする もっと別の理由があったのよ⋮⋮超高校級の絶望を打ち破ろうとするあなたは、江ノ島 や不運なんかで、この学園に来たんじゃないと思うの。あなたがこの学園に来たのは、 ⋮⋮これって、ひょとして⋮⋮いえ、何でもないわ。それにね、苗木君⋮あなたは幸運 確信できるわ⋮何も知らないからって、何もわからない訳じゃないって事なのかしら こに残れなんて⋮そんな事言うはずがない。どうしてかはわからないけど、それだけは も、きっと⋮私の父親なら、少なくとも血の繋がった父親なら⋮⋮苗木君を見捨てて、こ ﹁⋮⋮⋮私は、父の事を何も知らない⋮⋮だから、父の想いなんて私にはわからない⋮で 517 ? 高校級の絶望を引き寄せた理由⑬ ﹂ ! ﹂ ! だがどちらかに傾く。 ﹁絶望に犯されろ ﹁でも、でもボクは諦めたりしない﹂ コインの裏表、切っても切り離せない2つ。 ﹁気持ち悪ーい ﹁希望なんて言われる大それた存在でもないかもしれない﹂ 希望、絶望⋮⋮ ﹁外には絶望だけだ﹂ ﹁ボクはエリートでもないし﹂ に気付きながらも言葉を吐き続けた。 その事に気持ち悪がると同時に絶望し、興奮する江ノ島。苗木は江ノ島のそんな態度 ? 外の世界にさぁ、夢を叶えられるとも限んないんだよ ? 江ノ島が挑発するが、揺らぐ者はいない。 ﹁ねえ⋮⋮本当に出るの ﹂ 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた 518 ﹁飽きたりしない、捨てたりしない、絶望なんてしない﹂ ﹂ 現在の世界ではそれは絶望に傾き⋮。 ﹁ふざけろ希望 ﹁だってどんな時も希望を捨てないのが﹂ ﹂ ﹂ ! ﹂ 絶望的だ、絶望 未知に絶望しろ オマエと違って、揺らいだそいつ等が絶望に染まらないって言 ﹂ あした、どうなってるかわかんのか 明日に絶望しろ 思い出に絶望しろ い切れんのか ! ﹁絶望なんかしない⋮⋮希望は前に進むんだ !? 的に気持ち悪ーんだよ ﹁⋮⋮うぷ⋮⋮うぷぷ⋮⋮⋮胸くそ悪い希望振りかざしてんじゃねー ﹁何があろうと、ボクらはここから出る﹂ 希望と絶望の戦いの序章を終わらせるために⋮⋮。 二人の希望と絶望の戦いは終着に向かう。 ﹁大っ嫌いクマー ﹁ボクの取り柄だから﹂ そして今、残った希望がこの学園で傾き始めていた。 ﹁死にたいのですか ? ! ! ! !? 嘗て苗木を揃えたスロットマシンが動き出す。この学園の生徒から何故かモノクマ ! ! ! 519 え ? なにこれ⋮⋮﹂ までディフォルメされた顔が描かれていて、最後に江ノ島で揃い止まった⋮⋮⋮。 ⋮⋮なにこれ⋮ ? ? キ ミ アタシの⋮⋮負け ﹂ 二年も準備して、結局誰一人死ぬことなく⋮⋮だから、 ﹁江ノ島さん⋮⋮絶望の負けだよ⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮負け ? 逆に有利な条件になったのに⋮⋮負け ? るしかないのだ。そんな絶望、彼女にとって⋮⋮ ﹂ 歓喜以外のなにものでもない。 ! ﹁最高じゃない 圧倒的な敗北 その後に待つ死という絶望 ! 望の百分の1でも世界に届けたかった⋮⋮⋮﹂ ﹁これが、これが絶望なのね ! ! うっとりと語る彼女の横に、スイッチが現れる。 ああ、この絶 しかし絶望を絶望的に盲信する彼女には、敗北が認められない。でも、それでも認め ﹁こんなの⋮⋮⋮こんなのってぇぇ⋮⋮⋮﹂ めるしかない、絶望が希望に負けた。 全員が生き残り1人でも絶望すれば勝てるはずの投票で、1人も絶望しなかった。認 ? 断じて変装した姉ではない。 江ノ島は無表情でスロットに出揃った目を眺める。何度みても、それは自分の顔だ。 ﹁⋮⋮⋮⋮は 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた 520 苗木を処刑した時のスイッチだ。苗木は、なんとなく助かるんじゃないかと楽観的な 希望的観測をしていたが江ノ島は違う。死ぬために、自らスイッチを押そうとしてい る。 ﹂ おしおきターイ││││﹂ ﹁⋮⋮念のため聞くけど苗木、今度は変えてないよね ﹁うん﹂ ! ﹁苗木 何のつも││ ﹂ ! ツゥ、と彼女の顔を分けるように刻まれた赤い線は鼻で曲がり、笑みを浮かべた彼女 ﹁⋮⋮⋮⋮アハ⋮⋮﹂ ﹁ボクが、キミの望む死に方を与える訳ないじゃないか﹂ や、額に突き刺さっていた。 う音と同時に額に軽い衝撃が走る。目を上げてみればまたナイフだ。額から生えて、い ナイフを投げたであろう苗木に文句を言ってやろうとして、再び止まる。トン、とい ! そしてこんな物を持っているのは1人しかいない。 れていた、超高校級の研ぎ師が研いだナイフ。 く飛来したナイフが刺さったからだ。見覚えのあるナイフだ。モノモノマシーンに入 ││ムと、言い切る前に江ノ島の動きが止まる。おしおきスイッチに何処からともな ﹁オッケー、じゃ⋮⋮張り切って ? 521 の口の中に入る。 ﹂ !? ﹁⋮⋮ほ、本当に死んだのか た気配が⋮⋮⋮﹂ ﹂ どうして⋮⋮ ﹄ ﹁アルターエゴ ﹂ ? ! カメラも掌握したよ これで黒幕とも⋮⋮⋮あれ ﹁⋮⋮⋮ごめん、もう終わってた﹂ ! ﹄ ﹃ついさっき、この学園のサーバーを完全にハッキングしたんだ。空調も電気も水道も !? ﹃ご主人タマ と、十神が呟いた時不二咲の電子生徒手帳が震える。他の皆は震えていない⋮⋮。 ? ? ﹁お前は頭を刺されて生きていられるのか ⋮⋮⋮だが、確かに妙だな。空調が止まっ 苗木が背負わせないために殺したと思っているのだろう。 石丸はすまなそうな顔で謝る。投票結果で死ぬならそれは全員の責任になる、だから ﹁⋮⋮⋮そうか、背負わせてしまってすまない﹂ ﹁落ち着け兄弟⋮⋮どっちにしろ同じだ、あいつは死ぬ気だったんだから﹂ ﹁⋮⋮な、苗木君、何を 江ノ島は笑みを浮かべたまま、力なく倒れた。 ﹁⋮⋮絶望⋮⋮的⋮⋮﹂ 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた 522 ? ﹃そ、そんなぁ⋮⋮﹄ 不二咲の言葉にションボリ落ち込む。苗木は一瞬だけホッとしていた。 ﹂ ? し﹂ 確かに休息は必要だな。よし、探索後休むとしよう﹂ ﹁苗木もさ、休んだ方がいいよ ﹂ その⋮⋮人を殺すって事は、スッゴく精神に来ると思う ﹁⋮⋮ま、いろいろあったしな﹂ ! ? ⋮うん⋮⋮﹂ ? ﹂ ? かった。 戦刃は江ノ島の姉だ。だから、彼女も残してやったのだろう。皆特に不思議に思わな ﹁⋮⋮え ﹁あ、戦刃さんは残ってくれるかな 苗木の言葉に全員顔を見合わせ、エレベーターに乗り込んでいく。 ﹁うん。ありがとう⋮⋮少し1人にしてくれるかな ? ﹁⋮⋮⋮うむ ﹁何時でも出れる。なら、今日は使えそうな物を探して良く休んでから明日出ようよ﹂ ﹁ん ﹁⋮でも丁度いいや﹂ 523 ﹂ このバット、なかなか頑丈そうじゃね 外で誰に襲われても撃退できるぜ 暇になったときは言ってくだされ、何か書きますから ? ﹂ ! 各々、使えそうな物を見つけ、次の日の朝十時に玄関ホールを前に集まる一同。 ⋮⋮。 ﹁じゃーん キャンピングバス ﹂ ! 戦刃曰わく一応防弾仕様らしい。 ! ﹂ ? ﹁しょーじきやっぱり少し、不安だぜ⋮⋮﹂ るシロクマ化されている。 ちなみに運転手はアルターエゴが乗っ取ったモノクマだ。こっちも、ペンキで完全な ﹃何時でもいいからねー﹄ ﹁⋮⋮皆、準備はいい モノモノマシーンで当てておいた。ちなみに他にも大量の食料を手に入れている。 バスには小型の空気清浄機も備え付けられているがバスを出るときは必要だろうと、 ﹁それと外の大気は汚染されてるから、はいガスマスク ﹂ ていた。元はモノクマカラーだったので塗り直したそうだ。 どこから見つけてきたのか、またどうやって運んだのかキャンピングバスを持ってき ! と、各々の才能にあったモノを見つけてきた一同。苗木は何を見つけたかというと ! ! ﹁拙者は紙とペン ! ﹁どうよ 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた 524 ﹁⋮⋮外には絶望が待っている⋮⋮か、大丈夫だよ。世界は広いんだから、希望だって探 せば見つかる﹂ ﹁⋮⋮苗木君、これから⋮⋮どうするの ﹂ 戸惑っていないのは2人、苗木と戦刃だ。 た。 窓の外から景色を眺めて呟く葉隠と桑田。2人だけでなく、皆もやはり戸惑ってい ﹁マジで滅んでんだな世界﹂ ﹁うわ、赤い空なんて始めてみたよ﹂ 救えなかった苗木の逆行物語 END︳︳︳■ テージに進む扉が⋮⋮。 苗木はそう言ってスイッチを押す。喧しいサイレンが鳴り響き、扉が開く。次のス ﹁じゃ、行こうか⋮⋮取りあえず、卒業おめでとう﹂ 525 ? ﹂ ? 本来、操る者はいないそれは動くはずが無いが、しかし声を出す。 ﹁クックック⋮⋮⋮﹂ ! ﹁そう⋮ヌイグルミじゃないんだよ⋮⋮ボクは、モノクマなんだよ⋮⋮オマエラの、この その特徴的な笑い声は、まるで自分が本物だと言っているかのようだ。 ﹁面白いよ⋮面白くなってきたクマ⋮⋮うぷぷ⋮⋮うぷぷぷぷぷぷぷぷぅ∼ ﹂ 希望ヶ峰学園地下、学級裁判会場⋮⋮床に投げ出されたモノクマがあった。 苗木は瓶の中に浮かんだ青い瞳の眼球を見つめながらそう呟いた。 ﹁多分、大丈夫な気がするんだ⋮⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮でもその⋮⋮拒絶反応とか、大丈夫かな⋮⋮ ﹁それと、目の移植かな⋮⋮折角移植用の目を手に入れたんだから﹂ ば皆の記憶を取り戻させることが出来るだろう。 これが記憶を取り戻す装置なのは戦刃も苗木も知っている。手っ取り早く量産させれ 苗 木 は そ う 言 っ て 取 り 出 し た 脱 出 ス イ ッ チ の 角 を 指 に 乗 せ 器 用 に ク ル ク ル と 回 す。 ﹁そうだね⋮⋮取り敢えず、これを量産できる場所に保護される﹂ 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた 526 学園の⋮⋮⋮学園長なのだ ﹂ モノクマはそう言って顔を勢いよく上げた。 ! ? ﹁﹁END ⋮⋮いやいや、終わりじゃない⋮⋮⋮TO BE CONTINUED﹂﹂ ﹁漸く始まる﹂ ﹁希望と絶望の戦いは﹂ ﹁絶望した世界と、世界に希望を振りまく彼ら﹂ 苗木は1人窓の外を眺めがら呟く。 ﹁ここから、漸く始まるんだよね∼﹂ ﹁まだ、終わってないんだよ∼﹂ 527 桜の下には希望が埋まっている① ﹂ ﹂ 希望ヶ峰学園を飛び出し早一週間。現在苗木達は⋮⋮。 ﹁絶望しろぉぉぉ ﹁死ね、死んで江ノ島盾子と同じ絶望をぉぉお ﹁こそcf﹃■→︾ま︾﹂ モノクママスク達に追いかけられていた。 ﹂ バイクに乗りながら叫び、中には訳の分からない言葉を吐く者までいる。 ! ! だ、大丈夫何だろうな !? !? る。後ろのモノクママスクはぶつかる前にブレーキをかけようとしたようだが前輪の スクはバランスを崩すだけにとどめたが速度が緩み、後ろのバイクと激突しスリップす 苗木は窓を開けるとゴミを投げつける。1人のモノクママスクに当たり、モノクママ に言う。 なるべく窓から離れるために真ん中で縮こまっている桑田に戦刃は安心させるよう つつかない⋮よ﹂ ﹁うん。バイクに乗りながらじゃ、踏ん張れないし⋮⋮銃弾にも耐えられる車には傷一 ﹁うおお 桜の下には希望が埋まっている① 528 ブレーキをかけそこない、後輪だけが回ったままバイク本体が回転して後ろのバイクを ﹂ 巻き込んでいく。 ﹁反対⋮⋮も り倒れた。 ﹁⋮⋮銃弾﹂ バイクから離れて ﹄ ! それをみた戦刃がポツリと呟く。 ! ⋮⋮う、うん ﹁⋮⋮⋮アルターエゴ ﹃⋮⋮え ! ﹂ ﹂ ﹁ぎゃあ ! ﹂ 人の命など紙切れ当然に失われていく。そんな、絶望的な光景だった。 が次の標的となり死んでゆく。 銃弾の雨に撃たれ次々地面に倒れてゆき、玉突きのようにそれに巻き込まれ転んだ者 ﹁■㈲℡ !! ! ﹁ぐえ 当然、すぐ追ってこようとしたモノクママスク達だったが⋮⋮。 苗 木 の 叫 び と 同 時 に ア ル タ ー エ ゴ が ハ ン ド ル を 回 し モ ノ ク マ マ ス ク 達 か ら 離 れ る。 ? ﹂ 反対側の窓からもゴミを投げようとするがその前にモノクママスクの額が赤く染ま ? 529 俺達も撃たれんじゃ⋮⋮﹂ ﹁はい、アルターエゴ、止まって⋮⋮﹂ ﹁い、いいのかよ ﹁誰か出てきたぞ﹂ ﹂ そして、キャンピングバスを囲むように数台の黒塗りの車が停まった。 れた命令に従い停車した。 吐く。が、アルターエゴはまだ生まれたばかりのプログラム。とりあえず、最初に出さ 大和田は不安そうに、十神は余りに自然に命令を下す苗木に若干不機嫌そうに言葉を ﹁それより、何故お前が当然のように仕切っている⋮⋮﹂ ! ﹁⋮⋮おじいちゃん ? ﹁な、苗木君 危ないですよ⋮⋮ ﹂ ! ろう。 言え、相手は銃器を持った相手だ防弾使用のバスから出たらあっさり蜂の巣にされるだ そして外に出ようとする苗木だったが舞園達が慌てて止める。助けてもらったとは !? ﹁じゃ、行ってきます﹂ 止まり窓から眺める桑田達を見つめる。外に出るのを待っているのだろう。 そして、一台の車から髪の逆立った老人が降りてくる。バスにある程度近付くと立ち ﹁ああ、間違いなく爺だな﹂ 桜の下には希望が埋まっている① 530 ﹂ ﹁でもそれは向こうに敵意があったらの話だよ⋮⋮⋮そこまで心配なら⋮⋮戦刃さん、 ついてきてくれる ? ﹁⋮⋮未来機関 ああ、絶望と戦ってる﹂ ﹁いえ、お気持ちは嬉しいですよ﹂ 着けただろう。 くると言うことは、近くに人が住める環境があるということ。このバスなら十分たどり 天願と名乗った老人はチラリとキャンピングバスを見る。絶望が集団で押し寄せて かったかもしれんが﹂ ﹁そうじゃ。今日きたのは他でもない。君らを保護する為じゃ⋮⋮⋮もっとも、必要な ? ⋮⋮﹂ ﹁ワ シ は 天 願 和 夫 ⋮⋮ 未 来 機 関 の 会 長 じ ゃ。よ ろ し く の、超 高 校 級 の 希 望、苗 木 誠 君 うに警戒するが、向こうに全く隙がない。 老人は苗木を眺め顎に手をおき呟く。戦刃は何時襲いかかってきても対処できるよ ﹁ふむ。なかなか肝が据わっておるの⋮⋮まあ、それは生放送でみた通りか⋮⋮﹂ 戦刃はコクリと頷いて苗木の後についてきた。 ﹁⋮⋮⋮⋮わかった﹂ 531 ﹁そう言ってもらえると何よりじゃ⋮⋮すまんの、遅くなって。まずは希望ヶ峰学園に 向かったのだが⋮⋮﹂ 当然中には誰もおらず、周辺を探してみても車で移動していた苗木達は思ったより進 んでいた。故に二日もかかったのだろう。 ﹂ ﹁構いませ│││﹂ ﹁ッ やめろ ﹂ 先程まで戦刃がいた地面を焼き切った。 ! ﹂ ﹁止めないでください。絶望は、殲滅する ﹁⋮⋮⋮⋮ ! ! ﹂ ! 三点バースト。二発は外れ一発は宗方の頬をかする。一瞬出来た隙に戦刃は懐に侵 接近戦は不利と判断した戦刃は何処に隠し持っていたのか拳銃を取り出し発砲する。 ﹁⋮⋮ッ いるのだろう。 戦刃もナイフで応戦しようとしたが溶けた。向こうの刀はよほど特殊な合金で出来て 宗方と呼ばれたあの時モニターに映っていた男は、突然現れ突然戦刃に襲いかかる。 ! ﹂ 苗木の言葉が言い終わるより早く、戦刃が後ろに跳んだ。同時に赤く燃える日本刀が !? ﹁宗方君 桜の下には希望が埋まっている① 532 入し掌底を打ち込む。 ﹂ と、思わず苗木が呟くぐらい宗方は吹き飛ばされた。 ﹁⋮⋮人間って飛べるんだ﹂ 天願ははぁ、と頭を抱え叫ぼうとした時⋮⋮ ﹂ 動くとコイツの命はねえぞ ボク⋮⋮ ﹁動くんじゃねえ ﹁⋮⋮⋮⋮ん ? ! │││ッ ﹂ 苗木に向けていた。そして一瞬で肩をつかまれナイフを喉元に添えられる。 ﹁⋮⋮苗木君 ! ﹁逆蔵君 何をしておる ﹂ 戦刃が拳銃を捨てたのをみて男は鼻を鳴らす。 ﹁はん、最初っからそうしてりゃ良いんだよ⋮⋮﹂ ! !? パンっと手を叩き笑顔で言い放つ。その場違いな声色に一同の動きが停まった。 ﹁そこまで﹂ かかろうとしていた。苗木は││ 苗木はふむ、と顎に手を当て考える。そして、その間に宗方は起き上がり戦刃に切り ! ! ﹁黙れ天願。俺に命令していいのは宗方だけだ⋮⋮宗方、さっさとやっちまえ ﹂ 別の叫び声が聞こえる。苗木がふと後ろに振り向けばガラの悪そうな男がナイフを ? ! 533 ついてるだけのお前に何が出来る﹂ ﹁⋮⋮それ以上やるなら、ボクも黙ってないよ ﹁は ﹂ ? お前、自分の立場わかってんのか ﹁未来機関の保護を断る﹂ ﹁⋮⋮⋮あぁ うが﹂ ? それはお前等が泣いて頼むもんだろ ? 方をみる。 ? 護を断られるのと戦刃さんを見逃すの⋮⋮どっちのデメリット高いか﹂ ﹁ねえどうする こっちの脳筋はともかく、アナタならわかるよね 今ここで、ボクに保 逆蔵と呼ばれていたマッチョマンの言葉に苗木はやれやれと肩を竦めた。そして、宗 ? ? け、けどよ⋮⋮いや、わかった⋮⋮﹂ !? ? ぞ﹂ ﹁もちろん。今は⋮⋮ね ﹂ ﹁今は、戦刃むくろを見逃してやる。だが、その条件を出したからには保護させてもらう 逆蔵が渋々苗木を離すと戦刃が心配したように駆け寄ってくる。 ﹁え ﹁⋮苗木誠を離せ逆蔵﹂ 宗方は数秒苗木をみた後刀の柄を押す。すると刀の発熱が止まった。 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ 桜の下には希望が埋まっている① 534 ﹁⋮⋮生中継で何度も思ったことだが、お前は性格が悪いな﹂ 535 桜の下には希望が埋まっている② さっき、戦刃さんが戦って苗木君がヒロイ⋮⋮人質になって 苗木達はバスに戻り、未来機関の誘導の下走っていた。 ましたけど﹂ ﹁苗木君、大丈夫何ですか を信用できなくなる。 ⋮⋮⋮いまヒロインと言いかけなかった ? 舞園は心配そうに先ほど窓からみていた一部始終を語る。確かに文面にすると相手 ? ﹂ ? ﹂ 何でボクを保護する条件で戦刃さんに手が出せなく ﹁それで何で戦刃っちが助かるんだべ ﹁はいここで朝日奈さんにクイズ ? たんだ﹂ ﹁ようするに、戦刃さんに手を出したらボクは未来機関に保護されてやらないって言っ 息を吐いた。 戦刃の言葉にクエスチョンマークを大量に浮かべる一同。苗木は呆れたようにため ﹁⋮はぁ ﹁えっと⋮⋮苗木君の保護を断られたくないから私を見逃して保護するって⋮⋮﹂ 桜の下には希望が埋まっている② 536 ! なったでしょうか ﹁え⋮⋮えぇ ﹂ 正解者にはドーナツ缶を差し上げます﹂ C学園生活が放送されてたから Bボクが超高校級の希望だから A未来機関が大きな組織だから ? ﹁ヒ、ヒントは ﹂ ﹁ヒントを聞いたら残り時間は十秒になるけど ﹂ あ、それと解答権は一度だけね﹂ 突然話をふられ慌てる朝日奈。ドーナツ缶は欲しい、だが答えが分からない。 !? ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁10、9、8﹂ !? ﹁7、6、5、4﹂ ﹁え、今のヒント ﹂ ﹁ヒント、ボクの性格は悪いらしい⋮⋮﹂ ない。意を決してヒントを貰うことにした。 残り時間が十秒になるのはキツいが解答権が一度だけなら外せばドーナツ缶が貰え ﹁⋮⋮⋮う、うぅ⋮⋮ヒント ! ? !? 537 苗木が淡々と数を数えていき慌てる朝日奈。戦刃はさっき言われたことを気にして たんだ、と意外そうに苗木を見る。しかし八つ当たりはどうかと思う。 ﹂ まあ実際、苗木は必死に考える朝日奈を見て楽しんでるだけなのだが。 ﹁う、うう⋮⋮﹂ せめて適当に言えばよかった ﹁3、2、1、0﹂ ﹁うわーん ! ﹁全部﹂ ﹂ ﹁うぅ⋮⋮せめて答えを教えてよ﹂ 時間になり朝日奈が嘆く。ドーナツ缶ゲットならず。 ! ? ﹂ ! あの放送が全世界に放送されているなら未来機関以外にも数多く信奉者がいること 構成員の半数近くが苗木を崇拝している視線を向けている。 たが、そう思っているのは天願だけではないだろう。何故なら遠くに見える未来機関の ちなみに、どういう意味かというと⋮⋮まず苗木を超高校級の希望と称した天願だっ 苗木の言葉を聞き朝日奈がもー、とふてくされる。 ﹁苗木、性格悪いよ ﹁だから、全部正解だからどれ選んでも良かったんだよね∼﹂ ﹁⋮⋮ほぇ 桜の下には希望が埋まっている② 538 だろう。 次に未来機関だが、飽きっぽい江ノ島盾子が覚えていたことからこの世界ではそれな りの影響力を持っているのだろう。 そんな未来機関が苗木を勧誘して断られた。それが世間に知れ渡ればどうなるか ﹂ 仕方がない。 それを理解した上で自分自身を交渉材料にしたのだ、確かに性格が悪いと言われても 関が壊滅するかもしれない。 そうなれば絶望の殲滅どころではない。内部分裂中に絶望の残党に襲われ逆に未来機 苗 木 の 信 奉 者 が 不 信 が る。外 だ け な ら と も か く 内 部 の 未 来 機 関 構 成 員 に も だ ⋮⋮。 ? ﹂ ! ﹂ ? ﹁ごめんごめん、怒らないでよ﹂ 朝日奈は完全に不機嫌モードに入りぷいと顔を逸らした。 ﹁⋮⋮⋮むー ﹁今更だろ⋮⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮苗木誠殿って、ドS 苗木がパクパク食べていくと泣きそうな顔になった。 朝日奈は頬を膨らませている。苗木がドーナツ缶の蓋を開けると匂いに反応したが ﹁むー ! 539 ﹂ 苗木が朝日奈の頬をツンツンつつくとぷひゅーと空気が抜けて。 ﹁あむ ⋮⋮んむ、はむ⋮⋮﹂ ﹂ そこ、代われ すぐ代われ ﹂ ﹂ ! ﹁キタコレ ﹁苗木ぃぃぃぃ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁どうした兄弟、顔が赤いぞ ! ! 唾液の糸が走る。 ﹁あ、ごめん ﹂ そいつの涎だったら喜ぶんじゃね 私、盾子ちゃんの姉だから涎は似てると思う﹂ ? ﹁美少女の涎をあんな目で見れる男、苗木誠殿だけですな﹂ ⋮⋮⋮な、苗木君 ﹂ ! ? ! ﹁いや、アイツはほら、好きな人がいるわけだろ ﹁ ﹁⋮⋮⋮は ? ! ﹂ 男子達が各々の反応をする中ドーナツの滓を舐め終えた朝日奈が口を離すとぬと、と !? ! そして苗木の指についたドーナツの滓に気づきペロペロ舐めながら咥え始めた。 ﹁⋮む 朝日奈はせめてもの仕返しかつついてくる苗木の指を甘噛みする。 ! ? ﹁うわぁ、ベタベタ⋮⋮﹂ 桜の下には希望が埋まっている② 540 と、その時キャンピングバスが停止する。都市機能が働いてない今、止まると言うこ とは目的についたのだろう。外を見ると崩れかけた建築物とは大違いに、堂々と建つビ ルがあった。 ﹁あ、天願会長 いらっしゃいま││苗木誠だ 本物だー ! ﹂ ! ﹁きゃう ﹂ ﹁これこれ佐々苗君⋮⋮いつも言っとるだろう ﹂ ﹁あうう、すいません⋮⋮﹂ ﹁大丈夫 天願の言葉にションボリと落ち込む少女に苗木が手をさしのべる。 ? !? ? もっと周りに目を向けなさい﹂ 天願はやれやれと首を振り少女に向き直った瞬間、少女がすっころんだ⋮⋮。 こえてくる。見ると金髪ショートカットの少女が走ってきたいた。 天願が笑顔でビルの説明をしようとした時、パタパタと走ってくる音と明るい声が聞 ! ﹁とりあえず、ようこそと言っておこうかの。ここは未来機関│││﹂ もそれに続いた。 苗木が外に出ると十神もだからお前が仕切るなと愚痴りながら外に出る。他の面々 ﹁じゃ、行こうか⋮⋮﹂ 541 ﹁あ、ありがとうございます ﹁⋮⋮⋮ふぅん﹂ ないよと笑い手を話した。 えへへ、優しいんですね⋮⋮﹂ 苗木は立ち上がった少女を見て無事な右目を細める。少女は首を傾げたので何でも ! ようこそ こ こ は 未 来 機 関 第 1 4 支 部 ⋮⋮ わ た し は 7 9 期 生 幸 運 枠 予 定 ﹁丁度いい。佐々苗君、彼等にここを紹介してやりなさい﹂ ! ﹂ 少女はそう言って敬礼のポーズを取った。 だった佐々苗七希です ! ! ﹁あ、は い 桜の下には希望が埋まっている② 542 桜の下には希望が埋まっている③ 施設内は空気清浄機が備え付けられているらしく、美味しい空気が吸えた。まあ、流 ここが支部長室です ﹂ ﹂ 石に室内でもガスマスクしながら移動などいろんな意味で怖すぎる。 ﹁つきました ! ﹂ 今はもう無くなっちゃいましたけど、探偵図書館にも﹃90 ﹂ ﹁⋮⋮ダブル、ならその人は超高校級の探偵なの 0﹄で登録されてるぐらい頭が良いんです ! 微妙そうな顔をした。 確かに超高校級の探偵と当たりを付けるのが妥当だろう。が、霧切の言葉に佐々苗は 且つランクを示す最後の数字が0の実力者。 ことは、殺人事件を得意分野にして二番目の数字が0なので残りを総合的にこなせ、尚 探偵図書館⋮⋮文字通り探偵が登録されている図書館だ。最初の文字が9⋮と言う 霧切と佐々苗の会話に首を傾げる朝日奈や桑田達。十神と苗木はああ、と思い出す。 ? ! ﹁ずっこく綺麗な人ですよ 霧切が尋ねると先頭を歩いていた佐々苗は笑顔でクルリと振り向いた。 ﹁⋮⋮⋮14支部支部長って、どんな人なの ? ! 543 ﹁開けますね⋮⋮あ、叫ばないでくださいね ﹂ ? ﹂ 佐々苗はそう言って扉を開ける。そして、目に飛び込んできた光景は⋮⋮⋮ ﹁ほねぇぇぇぇぇ ﹂ ﹂ ﹁ボオォォォォン !? !? ﹁やあ、よく来たね皆﹂ ﹁キイィィィヤアァァァァ シャベッタアァァァ ﹂ !? はなび べき台詞では える。 りの美人だ。だが青白くどこか儚げで、骨の側にいるとまるで骨の持ち主⋮⋮幽霊に見 佐々苗が咎めるように骨を睨むと椅子の後ろからヌッと黒髪の女性が現れた。かな ﹁いやぁ、すまないね⋮⋮人をからかうのは癖なんだ﹂ ﹁⋮⋮花美支部長、客人で遊ばないでください﹂ ? 苗木は桑田の甲高い声に耳を閉じて抗議する。と言うか今の台詞は本来山田が言う ! 確認するまでもなく、立派な死体がそこにはあった。 椅子に座る骨だった。 ﹁きゃあぁぁぁ ! ﹁桑田くんうるさい﹂ 桜の下には希望が埋まっている③ 544 ﹁⋮⋮ネクロ⋮⋮なに ﹂ ﹂ ? ﹂ !? おうか ネ ク ロ マ ニ ア 死とは、恐ろしいものだ。恐怖の対象だ。そして恐怖とは未知から来るもの、 ? ないのか首を傾げている。 まるで死んだことがあるような言い方に霧切が眉をしかめる。他の面々も理解でき ならば当然理解すれば死を恐れなくてすむ。もうあんな思いはこりごりでね﹂ ﹁変かい 朝日奈が恐る恐る聞くと花美は笑顔で異常な答えを返した。 ﹁やっぱり変な人だ ﹁私は死を理解したいんだ﹂ ﹁⋮⋮そ、そうなの ﹁まあ別に、私は死体が好きという訳ではないさ。周りが勝手に勘違いしただけさ⋮⋮﹂ ないのか⋮⋮まあ、両方だろう。 が気にくわないのか、あるいは死体を見るために探偵になった可能性を考えて納得でき 本来人の死の真相を解き明かすべき立場である探偵でありながら死体好きというの 霧切の言葉に手厳しいと肩をすくめて苦笑する花美。 ﹁ネクロマニア⋮⋮死体愛好家の事ね。所謂死体が好きな狂人よ﹂ ? る﹂ ﹁第14支部支部長、花美桜下だ。ちなみに74期生で元超高校級の死体愛好家でもあ 545 ﹁まあ、正確には死にかけた⋮⋮か、この傷でね﹂ 花美はそう言って前髪を持ち上げる。額には、大きな傷が刻まれていた。 さ。下顎から頭頂部にかけて鉄筋棒が貫通したり、水中銃の銛が頭に刺さったても生き ﹁十神君。君は頭を刺されて生きてるはずがないと言っていたが、案外生きているもの ている人間がいるぐらいだ。何より、ここは右脳と左脳の中間にある隙間でね⋮⋮ま あ、運が良かったのさ﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹂ 苗木が花美と目が合うと無言で目をそらし、花美は面白そうに笑う。 ﹁⋮ふふ﹂ と、その時ノックもなく扉が開き宗方と逆蔵が入ってくる。 ﹁邪魔するなら帰ってくれ﹂ ﹂ ﹁すぐ終わるさ。苗木誠、ついてこい⋮⋮﹂ ﹁ここじゃだめなの ? 近づき何やらこそこそ話す。 苗木が宗方の言葉に嫌そうな顔をすると逆蔵が突っかかってくる。と、戦刃が苗木に ﹁良いからついてこい、てめぇは本当に自分の立場を理解してんのか ? ﹁邪魔するぞ﹂ 桜の下には希望が埋まっている③ 546 ﹁え ホモ⋮ ? ﹂ !? って⋮⋮何 ? ﹂ ? のようだ。 ? ﹂ ? ﹂ ? 苗木の言葉に宗方は首を傾げ、花美が呆れたようにため息を吐く。 ﹁妬みはよくないぞ少年﹂ ﹁⋮⋮は ﹁人類皆縮めば良いんだ⋮⋮⋮﹂ が浮かんだ。 宗方は睨むように問い詰める。身長差から、見下す形になっている。苗木の額に青筋 ﹁⋮⋮江ノ島盾子の死体が見あたらないのは、それが理由だと だけど⋮⋮あれはすごいね、死体も五分で骨になって骨も数分で溶けた﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮希望ヶ峰学園には、でっかい花があってね⋮⋮モノクマフラワーって言うん たいことがある﹂ ﹁⋮⋮ホモ ⋮⋮何の話をしてるが知らんが、取りあえず取調室までついてこい。聞き 意味は分からなかった。戦刃も戦闘能力以外残念なため覚えていた単語を言っただけ 基本的一般人︵性格を除く︶苗木の周りには当然異性愛者しかおらず、戦刃の教えた ﹁ごめん⋮⋮知らない⋮⋮盾子ちゃんが言ってるの聞いただけたから﹂ ﹁ 547 ﹁⋮⋮⋮はぁ。じゃあまあ、正直に言うとたぶん映像が終わった、頭にナイフが刺さった 時点では生きてたよ。運が良くてね⋮⋮もっともどっちの運かは知らないけど⋮⋮で ﹂ その後江ノ島がもっとも嫌がるであろうおしおきをして⋮⋮江ノ島盾子を殺した﹂ ﹁それは確かか ﹂ 苗木の言葉に逆蔵がビキリと青筋を浮かべる。そりゃそうだ。 ﹁脳筋のボクサーにはこれぐらいがわかりやすいかと思って⋮⋮﹂ ﹁何で急に片言になってんだよ⋮⋮﹂ ﹁もちろん。嘘、つかない⋮⋮ボク、江ノ島、この世から⋮⋮消した﹂ ? !! ﹁⋮⋮⋮てめぇ⋮⋮⋮﹂ しね﹂ ﹁別に否定はしないよ ﹂ ? 逆蔵は舌打ちをして去っていった。 ﹁⋮⋮⋮⋮ッチ カーテン閉めてる ﹂ ? 歯ブラシ、すり替えられてない ? ? ﹁宗方さんも色々気をつけなよ ? ! 誰が誰を好きになるかなんて、ボクが言えるような事じゃない に⋮⋮いや、間違えたんじゃないのか⋮⋮彼女の日記にはいろいろ書かれてたよ ﹁そっちこそいい加減ボクと君の立場の違いに気づけよ⋮⋮クロとシロを間違えたくせ ﹁てめぇ⋮⋮舐めてんのか 桜の下には希望が埋まっている③ 548 鼻かんだティッシュは捨てるよりすぐ燃やした方がいいよ⋮⋮﹂ 苗木はそう言うと去っていく宗方にバイバイと手を振った。 ﹁⋮⋮ふーん⋮⋮⋮肝に命じておくよ﹂ 赦はしない﹂ ﹁⋮⋮よくわからんが気をつけておこう⋮⋮それと、俺はお前が絶望だと確信したら容 549 ﹂ 桜の下には希望が埋まっている④ ﹁ここが寄宿所エリアになります 寄宿所は南にあるようだ。 こんな赤い空の世界で太陽の位置を気にする必要あるのだろうか たらデカい桜の木があった。しかも、少し咲いてる。 何でも年中花が咲いていて、春には満開になるんだとか。 ﹂ ? 佐々苗がそう言うと皆各々自分の部屋と決めた扉に向かっていった。 ﹁さ、ここがみなさんの部屋です。好きなところを使ってください﹂ を持つ者でもいたのだろう。 しかし昔から咲き続ける桜の木とは⋮⋮過去に超高校級の植物学者に匹敵する才能 よくよく見れば幹に紙垂が巻かれていた。御神木と言うのは本当なのだろう。 んだとか﹂ ﹁いえ、昔かららしいですよ。なんでも、花美支部長の一族を代々見守ってきた御神木な ? あと、中庭にはや 佐々苗の案内の元、苗木達は寄宿所に赴いた。どうやらこのビルはロの字型らしく、 ! ﹁超高校級の植物学者が改良したの 桜の下には希望が埋まっている④ 550 ﹁あ、皆。希望ヶ峰学園から部屋のプレート持ってきてたからこれ使おう﹂ ﹁佐々苗さん、部屋他に空いてない ﹂ ﹁空いてますけど⋮⋮どうしたんですか ﹁座敷童が居た﹂ ? ? ﹂ ⋮⋮えっと⋮⋮あの、ホラーは無しで﹂ ? ﹁ひぃぃぃいいい ﹂ 佐々苗はうぅと呻きながら中に入る。するとクロスーツの目つきの悪い男が現れる。 ﹁確かめれば ? ﹁⋮⋮⋮は ﹂ そして部屋から出るとまだ佐々苗が居るのを見つけ安堵のため息を吐いた。 苗木はクローゼットを開け中を確認して、無言で閉めた。 ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁タンスは替えの服を入れて⋮⋮クローゼットは使わないかな⋮⋮﹂ シャワールームが分かれているのはいい。 テレビ、タンス、シャワールーム、トイレ、意外と充実していた。何より、トイレと 後残ったプレートを苗木の部屋につけ中に入る。 霧切はふふ、と笑いながら自分のプレートを取る。他の面々もプレートを受け取り最 ﹁用意がいいのね﹂ 551 !? ﹁⋮⋮⋮うるさいぞ佐々苗⋮⋮と言うかお前、第三支部じゃなかったか ﹂ どうやら佐々苗と知り合いらしい。聖原と言うらしい男は佐々苗を押しのけ苗木の ﹁ひ、聖原さん⋮⋮なんでここに⋮⋮それと私は先週からここに転属してたんです﹂ ? 前に立つ。苗木が思わず身構える中聖原は懐に手を入れ⋮⋮⋮色紙を取り出した。 いきなり言われてもね⋮⋮﹂ ﹁サインください﹂ ﹁サイン ﹂ !? なのだが。 苗木は色紙にサラサラとサインを書いていく。まあ、実際は普通に名前を書いただけ ﹁手慣れてる ﹁あ、たくみんへをお忘れなく⋮⋮﹂ ? ﹁ん ﹂ ﹂ ﹂ 聖原の言葉に苗木は一瞬だけ固まる。 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁江ノ島盾子をどう殺したんですか ? ? ? ﹁ところで、一つ聞いていいですか ﹁別にボクのなんて家宝する価値ないと思うけどな⋮⋮﹂ ﹁ありがとうございます家宝にします﹂ 桜の下には希望が埋まっている④ 552 ﹂ そしてすぐに笑みを浮かべる。 ﹁興味あるの ただ相手のことを想い、相手の為だけの殺人方法を考える ﹂ ﹁俺は⋮⋮今まで様々な殺人を見てきた。あの放送で、今までにない殺し愛を感じた ? だ 教えてくれ ﹂ ! ﹂ ? ﹁ZV︵試︶ ⋮⋮ふむふむ、要するに洗脳映像ね⋮⋮あ、本科の人達にも使ったんだ。 が書かれていた。 ページをメクっていくと不意に手を止める。江ノ島が予備学科を絶望化させた方法 ﹁⋮⋮⋮んにゃ つぶしのため﹃江ノ島盾子の日記﹄を開く。 まだ扉の外に気配がある。しばらく部屋に立てこもった方が良さそうだ。苗木は暇 苗木はうなだれる聖原を無視して部屋に戻り鍵をきっちり閉めた。 ﹁やだ﹂ ? 江ノ島盾子の額を突き刺した時明らかに何かが違うと感じた。どんな殺し方をしたん ﹁もちろんそう言う殺人も、苗木さんには劣るが何度か見たことがある。だけどあの時、 聖原は何やら熱く語り出した。苗木も佐々苗も若干⋮⋮嘘、かなり引いている。 ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ ! ! 553 ? こっちは本番用みたいだけど⋮⋮⋮ん づいたのだろう。 ﹂ なら多少気配を消すだけで事足りるが⋮⋮少なくとも苗木が気づいていたことには気 扉を開けると土下座した聖原の姿が。気配はなかった、消したのか。まあ、苗木相手 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁教えてくださいお願いします﹂ かったと言い訳は出来るが没収されてしまう。 ﹃苗木﹄と書いたダンボールに詰め込んでおいたが勝手に調べられたら困る。知らな たDVDにあったような気がする。 と、ほぼ私室となっていたモノクマ操作室の下にあった部屋。そこを漁ったとき出てき この単語どっかで見たような⋮⋮⋮と、そこで思い出す。寄宿舎二階の江ノ島の部屋 ? んを生中継で好きと言ったんだけどな﹂ ﹁危機管理力がないというか、ボクが信用されすぎているのか⋮⋮ボク仮にも江ノ島さ たと言ったらあっさり通してくれた。 駐車場には荷物を検査している人間はおらず、一応の見張りはいたが荷物を取りに来 苗木はそう言って聖原の横を通り抜け、駐車場に向かう。 ﹁教えない﹂ 桜の下には希望が埋まっている④ 554 ダンボール箱を担ぎながら歩いていると、ふと中庭に誰かが居るのに気づく。どうや ﹂ ら老婆のようだ。 ﹁⋮⋮⋮ ﹂ ? 放送見てたよ⋮⋮どんな時にも絶望に屈さない、まさに希望だね﹂ ? 気づいた。 老人の話か、長くなりそうだなと苗木は考えながらまた聖原が自分を見ていることに ﹁この桜はね、私達花美一族にとって希望なんだよ⋮⋮﹂ ベンチの隣に座った苗木に老婆は飴を渡しながら話す。なかなか甘い⋮⋮。 ﹁そうさ⋮⋮私達にとってこの桜と同じ﹂ ﹁そうですか ﹁苗木、誠君だね 中庭に歩き出した。 老婆は苗木に気づくとニッコリ笑って手を誘うように動かす。苗木は数秒考えた後 ! 555 桜の下には希望が埋まっている⑤ その昔、1人の少女が人買いに売られ命からがら逃げ出した。 両親に売られたため、帰れるはずもなく野垂れ死ぬのを受け入れかけていた時桜の木 を見つけた。それはとても美しく、少女を魅了した。 そして魅了されたのは少女だけでなく地元の大名もだ。元々心優しいことで有名な 大名は少女の話を聞き人買い達を捕らえた後、少女に功績として金を与えた。 少女には商人の才能があったらしく、数年とたたぬ内に沢山の財を手に入れ、その金 で自分を守ってくれた桜の木の近くに祠を建て祀ったそうだ。 やがて少女は成人し、花のように美しい事から花美姫と呼ばれるようになり、大名と 結婚した。 それが花美一族の始まりらしい。 ﹁ええ⋮でも、数ヶ月前まで枯れそうだったんです。ですが私の孫⋮⋮桜下が空気清浄 ﹁⋮⋮へえ⋮⋮その子にとって、この桜は希望なんですね﹂ れそうになる度にこの桜を見に来たのだとか⋮⋮﹂ ﹁才能があったとは言え幼い少女1人、当然多くの苦労としたと聞きます。それでも、折 桜の下には希望が埋まっている⑤ 556 機を取り付けたビルで囲むことにして、お陰でこうして花が少しとは言え咲くほど回復 しました﹂ あれ⋮⋮花美さんが孫って⋮⋮﹂ ? ? だ、苗木はまだ未成年だ。 ﹂ ﹁いや、こんな世界なら法律とか関係ない ﹁ところで⋮⋮その荷物は 苗木は桜と別れて部屋に向かった。 ﹁では桜さん、また今度⋮⋮⋮﹂ ﹁桜、花美桜だよ﹂ ﹁あ、そうだ⋮⋮じゃあ⋮⋮えっと⋮⋮﹂ ? ﹂ この壊れかけた世界ではかなりの重圧だろう。今度、酒でもつき合ってみるか 駄目 死んだのか。超高校級とはいえまだ若い花美桜下が当主となりしかも支部長か⋮⋮ 絶望的事件の時に⋮⋮﹂ ﹁ああ、私は桜下の祖母ですよ。二代前の当主でもあります⋮⋮桜下の先代、私の息子は ﹁⋮⋮ん よく見れば朽ちかけている枝がある。 このビルの配置にそんな意味があったのか。だが、元々寿命が来てるのだろう。よく ﹁⋮⋮ふぅん﹂ 557 ? 桜は苗木の背を見つめる。現状、世界で希望の象徴となった存在⋮⋮。 彼女は苗木がここに来たのは必然だと思っている。希望の桜の下に、希望の象徴⋮⋮ これはきっと天命だろう。 枯らすわけにはいかない。 しかし自分は植物に詳しくない⋮⋮だが、昔ある方法を使い一生の中で一番綺麗な桜 を咲かせたことがある。その方法をまた使えばいい⋮⋮⋮。 苗木がビルの中に戻ると戦刃と聖原が喧嘩をしていた。刃物を使った、ぶっちゃけ殺 し合い。 苗木の横を聖原の斬撃が通り過ぎてゆき、髪が数本落ちる。 ﹂ !? いた聖原が、一般人のはずの苗木に恐怖していた。 幾つもの戦場を渡り歩いてきた戦刃と、押され気味だったとはいえ戦刃と渡り合って ながら微笑む。 苗木が苛立った声を出すと二人はビクッと固まった。苗木は、緑の隻眼に2人を写し ﹁ ﹁⋮⋮⋮ねぇ﹂ 桜の下には希望が埋まっている⑤ 558 ﹁少し、頭冷やそうか ﹂ ? ﹁で なんで二人は喧嘩してたの ﹂ ? ﹂ !? くて良いと笑った。 しょんぼり落ち込むむくろの頭をなでながら聖原に謝罪する苗木。聖原は気にしな 言うだけでマジで殺しにかかった戦刃が悪いだろう。 苗木に叱られショックを受けたような顔をする戦刃。だが誰がどう見ても怪しいと ﹁ ﹁うん。戦刃さんが悪い﹂ 男が苗木を見つめていて、暗殺者か何かと思い攻撃したのだろう。 戦刃はそう言って聖原を睨む。ようするに、たまたま見つけた人を殺した経験がある ﹁こいつ⋮⋮人を殺したことがある、あやしい⋮⋮﹂ ﹁こいつが先に手を出しました﹂ ? 戦刃はコクコクと飲み、聖原は一気に飲み込んだ。 苗木は紙コップにミネラルウォーターを注ぎ聖原と戦刃に渡す。 ﹁ごめんねー、いまミネラルウォーターしかなくて﹂ ﹁﹁す、すいませんでした⋮⋮﹂﹂ 559 ﹁代わりに江ノ島盾子の殺した方法を││﹂ ﹁しつこいな⋮⋮⋮じゃあ、そうだね⋮⋮ヒントをあげよう﹂ ﹂ 盾子ちゃんは本当は⋮⋮﹂ ? 鼠のようにカリカリ食べながら文句を言った。 苗木はポ○キーを戦刃に咥えさせ黙らせる。戦刃は苗木からもらったポ○キーを栗 ﹁むぐ⋮⋮⋮最近、苗木君が冷たい気がする﹂ ﹁はい黙れ﹂ ﹁⋮え、教えちゃうの 苗木の言葉に聖原のアンテナが揺れる。 ﹁ ! ﹁存在殺人 それは⋮⋮超強盗殺人みたいなものですか あ、超強盗殺人っていうのは ? ﹁これ以上は教えない。後は自分で考えなよ⋮⋮ところで、キミさっき第六支部所属っ はサクサクと栗鼠のように食べ始めた。 戦刃はポッキーを食べ終え何かを言おうとするが今度はクッキーを食わせる。戦刃 ﹁⋮⋮⋮⋮えっとね⋮⋮﹂ ﹁いやいや、全世界に放送された超高校級の絶望したデータを消すなんて無理でしょ﹂ その人に関するデータを全て消し去る⋮⋮﹂ ? ﹁ボクがやったのは⋮⋮名付けるとするなら存在殺人、と言ったところかな﹂ 桜の下には希望が埋まっている⑤ 560 て言ってたよね ﹂ ? 戦刃さんの話では人を殺したことがあるようだけど⋮⋮どんなとこ ? す﹂ ﹁⋮⋮ああ、逆蔵さんだっけ⋮⋮ちなみに、ここってどんな支部なの ﹁それは││﹂ ﹂ ? ﹂ !? ﹂ ! え 今や世界一の有名 ! また妙な人が来た、苗木はそんな風に観能と名乗った女性を見つめた。 人苗木誠に会うためただいま見参 ﹁希望ヶ峰学園第74期生、元超高校級のプロデューサー観能示恵 かんの し 戦刃がナイフを取り出し構えるが突然の乱入者、女性は臆した様子もない。 ﹁誰だ 鍵かけ忘れた。 聖原が何かを言い掛けていると扉が勢いよく開かれ誰かが入ってくる。そう言えば ﹁広告活動さ ! ﹂ ﹁暴動の鎮圧、凶悪犯罪の調査⋮⋮まあ、武力集団の集まりですね。支部長はホモ野郎で 561 何のようですか ﹂ 桜の下には希望が埋まっている⑥ ﹁観能さん⋮でしたっけ ? ﹂ ? ﹁どうわぁ ﹂ ﹂ と首を傾げてからようやく苗木以外の存在に気づいたように驚く。 きちんと標準語喋れるで い、いつからいたんや自分ら ﹂ ちゃ、ちゃう ! ﹁⋮⋮方言 ﹁あ ! ! ? ﹁いや、別にどっちでも良いけですけど⋮⋮﹂ ! ? !? が、観能はん の殺人を行った苗木にここまで懐くとは。 聖原の言葉に苗木は顔をひきつらせる。殺人鬼に憧れているとは言っていたが、未知 ﹁先生って⋮⋮もしかしてボクのこと ﹁おい、先生を許可無く眺めるとはどういう了見だ﹂ その目にはありありと観察の二文字が浮かんでいる気がした。 観能と名乗った女性は苗木を上から下まで無遠慮に眺める。 苗木誠に会いに来たの⋮⋮ふぅん⋮なかなかプロデュースし ? がいのある人ね﹂ ﹁さっきも言ったっしょ ? 桜の下には希望が埋まっている⑥ 562 急に言葉遣いが変わり、戦刃が首を傾げると観能は慌てて取り繕うり。が、喋り方が ﹂ ならそうさせてもらうわ⋮⋮⋮勝手に眺めてすまんな。わっちゃあプロデュー 変というなら時折中二病っぽい発言をする山田よりマシだ。 ﹁そか サーやから、売りがいがあるのを見るとつい⋮⋮かんにんな ? こっちが対応に困る。 ボクをプロデュースしたいんでしたっけ ? ﹂ ? はん、と鼻を鳴らす観能に元超高校級の絶望である戦刃が恐る恐る聞く。 ﹁⋮⋮絶望を、憎んでる しとる⋮⋮全く、絶望するために人を殺すとか訳わからんわ﹂ とくに、苗っち達襲ったモノクママスクみたいんはヤバいで⋮⋮あれは完全に絶望を愛 ﹁それに絶望は伝染するからなぁ⋮⋮誰かに何かを奪われた者が、他の者から奪う⋮⋮ の話を聞き逃さないように聞く。 宗方辺りが聞いたら奴らを人間と思うな、とか言いそうだなと思いながら苗木は観能 使えんし、そもそも人殺しなんてしたくあらへん﹂ 殺しとるっちゅうのはわかる⋮⋮それはよくない。といっても、わっちゃあ護身術しか ﹁おうよ。わっちゃあ希望だの絶望だのようわからん。が、絶望の連中が多くの人間を ﹁で ﹂ 意外とフレンドリーな性格だ。まあ、人の部屋に突然入ってきて人見知りだったら ? ? 563 わっ ち ら おんしが世界を滅ぼしたなんて思っとらんよ⋮⋮止められなかった大人達の責 だが仮にも才能はプロデュースだ。人を見る目はあるのだろう。 ようするに、この女性は敵なら容赦しないが味方には甘い性格なのだろう。 の運命なんやろな﹂ ﹁世界が数人の手で滅ぶものかよ⋮⋮それに賛同する者が多くいただけだ。これも一つ ﹁⋮⋮随分と甘いんですね。仮にも世界を滅ぼした1人なのに﹂ あの連中は受け入れんが奴らを裏切りこちらについたおんしを責める気はない﹂ ﹁わっちが言っとる絶望は、連中達の呼び名や。断じて精神論のあれではない⋮⋮故に ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ 任やしな﹂ ﹁別に ? ﹂ ! ね﹂ ﹁さあ 何のことだか ﹂ ? ﹁よいよい。別に話さんでもな⋮⋮ただ、1つ言っとくとわっちはプロデューサー、人を ? ﹁⋮⋮ほぅ、ここまで内面隠せる子も珍しいな⋮⋮よっぽど人に隠したい事があるんや 苗木は微かに目を見開き、が、直ぐに笑みを浮かべ直した。 ﹁ ﹁そやね、顔色をよーく観察すれば考えとることもわかるで⋮⋮﹂ 桜の下には希望が埋まっている⑥ 564 喜ばせてこその商売や。やから、おんしが人類の敵になるんやったら⋮⋮おんしに相応 しい最期をプロデュースしたる﹂ えてくるから⋮⋮明日は楽しんでね ﹂ よ。ああそれと、明日は君達が来たお祝いに花見をするんだ。これから他の面々にも伝 ﹁君自身をプロデュースして良いかどうかは、君が決断してから聞かせてくれればいい 木の価値観に従わせる必要はない。 別に方言もその人の個性だと苗木は思うが、本人には色々あるのだろう。別に深く苗 調に戻らないよう気をつけてるの﹂ ﹁あんまり喋り方戻してると、標準語が抜けちゃうからね。私は連続五分以上は本の口 苗木の言葉を聞き、言葉遣いを標準語に戻す観能。 ﹁そう。安心したわ⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮ま、ボクも人類の敵になるつもりなんてありませんよ﹂ その瞳には確かな強さを感じた。 明るく朗らかに見えても、仮にもこの絶望的世界で生き抜き抗って来ただけはある。 い﹂ ﹁⋮⋮ 先 生 を 殺 す な ら 存 在 殺 人 に つ い て 聞 い た 後 に し て 尚 且 つ 殺 し 方 を 見 せ て く だ さ ﹁⋮⋮⋮苗木君に手を出すなら許さない﹂ 565 ? 観能はそう言うと部屋から立ち去った。 聖原も立ち上がりクローゼットに││ ﹁いやいやおかしい、何流れるような作業でクローゼットに収納されようとしてんの﹂ ﹁ここはとてもしっくりきました。今日からここを俺の部屋にします﹂ ﹁自分の支部に帰れ﹂ ﹂ ﹁俺には帰る場所などない﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮本音は 戦刃は二人だけは危険というので戦刃も残して⋮⋮⋮。 にいることを許可した。 ら別の部屋に移動させてもらうのは、未来機関構成員に悪いと思い仕方なく聖原が部屋 苗木ははぁ、とため息をはいた。時間を確認すると夜の九時。さすがにこんな時間か ﹁存在殺人について聞くまで帰れない﹂ ? ﹂ ! その人物は自分の部屋で、防音のなされた部屋で叫ぶ。我慢できないほど喜ばしい。 るなんて⋮⋮やっぱり■■様こそ世界の支配者よね ﹁いや∼、さすが■■様。こんなほぼ雑用支部、最悪かと思ったけどまさか苗木誠に会え 桜の下には希望が埋まっている⑥ 566 むしろ部屋までよく我慢できたと自分を誉めたい。いや、むしろ自分が何故我慢などし なくてはならないのだろう。むしろ世間が自分の奇行を見て見ぬ振りをするべきだと 傲慢に考える。 ま、■■様に目を付け ? その笑い声は部屋の中で木霊し、しかし部屋の外には漏れることが無かった。 られた時点で無理だろうけど⋮うぷぷ﹂ 盾子になる⋮⋮うぷ、うぷぷぷ⋮⋮そう簡単に壊れないでよね 絶望させることが出来なかった苗木誠を絶望させ、■■様が新たなる真の絶望、江ノ島 ﹁まあそれは今だけの我慢。いずれ■■様が⋮⋮真の超高校級の絶望、江ノ島盾子でも 567 桜の下には希望が埋まっている⑦ 花見、というのは久し振りだ。 去年はシェルターの中に居たため一年ぶりだろう。満開⋮⋮とは言わないが大きさ も大きさなので花の量は多い。 ﹁それじゃあ、第14支部副支部長の観能示恵副支部長から開会の言葉﹂ 司会者の女性がマイクを片手に台本を読み上げる。どうやら彼女は、副支部長だった ようだ。広告活動だし、普通は支部長じゃないのかと思ったがあの性格では⋮⋮。 意識を空から地上に戻すとちょうど観能の開会の言葉が終わったようだ。 ﹁││と、長々話しましたが﹂ 青かったはずだ。 それにしても赤い空というのは落ち着かない。一年前、苗木達が最後に見た空はまだ 取り敢えず曇りなのだろう。 現状、どんな天気が晴れなのかわからない。まああの火事の煙のような雲が多ければ 空を見上げればビルに囲まれた四角く、赤い空が見える。 ﹁えー、本日はお日柄も良く⋮⋮って、相変わらず赤い空だけど⋮⋮﹂ 桜の下には希望が埋まっている⑦ 568 どうせこんな世界、法律もくそもない 飲んで、食って、楽しめー 元々苗木は長い話は好きではない。意図せず聞き逃せてラッキーだった。 ﹂ ﹂﹂﹂ ﹁今日は無礼講やー ﹁﹁﹁おぉぉぉぉぉ ﹂ ! ! ﹂ ! ﹁いやその学校も潰れてんだろ﹂ まえ ﹂ ﹂ ﹂ ﹁君はともかく僕達はまだ18だ。高校生なんだ。君もクラスメートなら校則に従いた とする。 葉隠は早速酒を飲もうとして石丸に止められていた。が、屁理屈を言って酒を飲もう ﹁お前は二年前から成人してんだろうが ! ! 後花美も苦笑していた。 ﹁いやー、ひさしぶりの酒だべ 僕らはまだ未成年だ ﹁待ちたまえ葉隠君 ! だったらもー成人してんべ﹂ ﹁記憶失ってんだろ ! ほらほら山田っち、飲むべ飲むべ なり、慌てて周りに乗っかった。苗木と聖原、十神や霧切や大神は別に叫んでいない。 周りのテンションが上がる中、戦刃が突然の咆哮に警戒してナイフを取り出しそうに ﹁お、おー ! ! ! ? ! 569 ﹁それに、お酒は二十歳、というのは日本の法律。世界には16で飲酒が出来る場所が数 多くありますわ﹂ 大和田とセレスの言葉に口ごもる石丸。法律で禁止されているとも、校則違反とも言 ﹁む、い、いやしかし⋮⋮﹂ ﹂ ほら、水だ⋮⋮﹂ ﹂ えぬ現状。健康を阻害すると言ったところでセレス辺りが少量なら平気ですわと言っ ﹂ ﹁兄弟ぃぃぃ ﹁酒弱 ど、どーした石丸 ﹂ ﹂ が白くなり変なオーラが出てる。 桑田が慌てて水を持ってくるのと同時に石丸がカッ 大丈夫か ﹁⋮⋮⋮う⋮⋮﹂ !? ﹁お、おい石丸 ! ﹁うおっしゃあぁぁぁぁ ﹁うお ! と目を覚ます。気のせいか髪 ! !? !? ? てくるのが目に見えている。 ﹂ ﹁まあまあイッシー、先輩から出された酒を飲まないのは礼儀に反しないの では、一杯だけです ! 観能の言葉に石丸は覚悟を決め一杯だけ酒を飲み│││ぶっ倒れた。 ﹁そ、それは⋮⋮⋮ええい ! !? ? 桜の下には希望が埋まっている⑦ 570 ﹁石丸ぅ 何処のドイツだそりゃ ﹂ ! ﹂ !? ﹂ ! ﹂ ? ﹂ ﹁舞 園 さ ん 酒臭 ﹂ ! !? ﹁苗木君から離れて⋮⋮﹂ ﹁む∼、じゃましにゃいりぇくだひゃい ﹂ ﹂ ! と苗木にひっついていた舞園の手がかすみ、キィン と金属音を響かせる。 飲み会に無理矢理つき合わされた時のお父さんと同じ臭いがする ﹁⋮⋮にゃえぎく∼ん 確かにこれでは風情がない。 ﹁ふふ。どうせなら青空の下で行いたかったがね﹂ ﹁花美さん⋮⋮﹂ ﹁やあ戦刃、少年、楽しんでるかな んでいた。酒を飲んだ経験があるのかもしれない。 石丸は酔うとあんな性格になるらしい。怒り酒と言う奴だろう。戦刃はごくごく飲 ﹁兄弟が壊れた ﹁俺は俺だあぁぁぁぁ ﹁いや、石丸清多夏殿はあなたしかいないでしょう﹂ ? ﹁よってましぇんよ∼、アイドルですから ? ! ! ! ヒュン ! 571 見るとサバイバルナイフを持った戦刃と包丁を持った舞園が居た。 ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ 苗木はその場から離れることにした。その際周りをみると、やはり戦刃はあまり受け 入れられていないらしくナイフを振るう戦刃に不信感のこもった目で見ている者が数 多いた。 ﹁舞園さん、酔ってるわね⋮⋮﹂ ﹁あ、霧切さん⋮⋮酔ってなさそうだね﹂ 恥曝しだもの﹂ 歌います ﹂ ﹁祖父に酒に酔いすぎないよう訓練されてたのよ。酔って間違えた推理したなんていい ﹁一番舞園 ! ﹁死体 ﹂ 埋められているなら事故死じゃないわね。犯人は ﹁凶器は ? ? ﹂ ﹁⋮⋮⋮そういえば、綺麗に咲く桜の下には死体が埋まってるなんて噂があったね﹂ る。 超高校級、場は大盛り上がり。桑田が何時の間にか法被を着てオタゲイを披露してい と、何時の間にか戦刃との戦闘を終えた舞園がマイクを片手に歌い始める。酔っても ! ﹁ふーん⋮⋮﹂ 桜の下には希望が埋まっている⑦ 572 ? ﹁いつ ﹂ ﹂ デュエットしましょー ﹂ ! ﹂ ! 何の話ですかー ⋮⋮ふにゃ ? ﹂ !? ﹁いたた、何ですかも∼⋮⋮ひっ ﹂ と、佐々苗が苗木の下に駆け寄ったとき足元の何かに躓いて転ぶ。 ﹁ん ? ﹁⋮⋮⋮⋮苗木君って、実は以外とチートキャラなんじゃ⋮⋮﹂ 間にか覚えてるんだよね﹂ ﹁ボクって友人を持つ度に友人を観察してるんだけど、そうすると相手の特技を何時の 歌い終え戻ってきた苗木に霧切が素直な感想を言ってくれる。 ﹁苗木君、歌うまいのね⋮⋮﹂ ﹁それじゃ、デュエットいきまーす が集中し、仕方なく舞園の下まで歩く。 と、そこで一曲目を歌い終わった舞園が苗木に向かって手を振ってきた。苗木に視線 ﹁苗木く∼ん ! 何となく呟いた言葉に二名の探偵が思いの外反応して呆れる苗木。 ﹁いやだから噂だってば⋮⋮職業病患わせないでよ﹂ ? ? ﹁死体の発見時の状況は 573 !? ﹂ ? 苗木も佐々苗の足元にあった物をみる。間違いなく、人の腕だった。 佐々苗は自分が何に躓いたのか確認して、固まる。 ﹁ん 桜の下には希望が埋まっている⑦ 574 桜の下には希望が埋まっている⑧ 当然だが花見は中止。 元探偵と超高校級の探偵が2人もいるなら十分 現場には苗木と霧切、佐々苗と観能、そして数名の未来機関構成員。戦刃や大神達7 なんでボクも調査してるの 8期生は外の見張りと石丸の看護。 でしょ﹂ ﹁⋮⋮ん ? ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁あ、スコップみっけ⋮⋮﹂ ﹁つまり犯行時間はその間だって事ね⋮⋮﹂ い。 た観能と数名の構成員は夜の11時まで準備していて、朝の6時には数人来ていてらし 掘り起こした死体は男性、未来機関の構成員らしい。昨日の夜、会場の準備をしてい 何故か頼りにされているというのはわかった。仕方なく、早速調査をする事にした。 ﹁少年、面倒くさがるのは良くないよ﹂ ﹁苗木君は学園生活での実績があるじゃない﹂ ? 575 霧切が犯行時間を思考している間に掘り返された土の中から苗木がスコップを見つ けた。話を聞いてないことに怒こった霧切が睨んだが気づかない振りをする。 だ。その時に使ったものだね。今日、花見の後肥料に使えそうなゴミを埋めるために一 ﹁ああ、ここ最近雨が降ってなくて地面が固くなってるから掘り返して柔らかくしたん 本残してたんだ﹂ ﹁使われてんなら指紋は取っても意味ないか。じゃあ死因だけど⋮⋮﹂ と、苗木は死体をみる。 ﹂ 死体の心臓にはナイフが突き刺さっていた。すごいデジャヴ⋮⋮いや、それよりナイ やっぱり、あいつ ! ! フに見覚えが⋮⋮。 なら犯人は戦刃むくろ ! 戦刃を捕らえにいこうと動き出すが⋮⋮。 苗木の言葉に走るのをやめた。 ﹁それは違うよ。だから、全員待って⋮⋮﹂ ﹁で、ですが苗木様⋮⋮そのナイフは⋮⋮﹂ ? 取りにいける。まあ、戦刃さん、隠し持ってたけど⋮⋮でも犯人じゃない﹂ ﹁様って⋮⋮⋮大体、ナイフはキミらが保管してたんでしょ スコップと同じで誰でも 苗木がナイフを引き抜き眺めていると未来機関の1人が叫ぶ。他の面々はすぐさま ﹁そ、それは戦刃の 桜の下には希望が埋まっている⑧ 576 ﹁何故言い切れるんですか ﹂ ? ﹂﹂﹂ ? ﹂ ? ﹁いや、これは窒息死だね﹂ ないし、これで死因は間違いないと思うけど⋮⋮﹂ ﹁それより、死体の状況を確認しましょう⋮⋮外傷は胸に刺さったナイフ以外見あたら ? が何時もより鋭い。 ﹁あなたは、戦刃さんと2人で、一晩中、何をしていたの ﹂ ﹁ひ、聖原君巻き込んでのTRPGです⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮それは何 ﹂ ! 霧切は赤くなって顔を逸らした。 ﹁苗木君のクセに生意気よ ﹁霧切さんは、何を想像したの 苗木の言葉に霧切は首を傾げ、花美が説明してくれる。 ﹁スゴロク見たいなものさ⋮⋮﹂ ? ﹂ 苗木の言葉に未来機関一同が凍りつき霧切が苗木に尋ねてきた。気のせいか目つき ﹁どういうことなの苗木君﹂ ﹁﹁﹁⋮⋮⋮⋮はい ﹁だって戦刃さん昨日の夜から今日の朝までずっとボクの部屋にいたし﹂ 577 霧切が死因を断定すると花美が否定してくる。 突然の否定に当然霧切はむっとした。 だ﹂ ﹂ ﹁⋮⋮何が目的か知らないけど、一度埋めてから殺して、その後心臓を刺して埋めたよう ﹁⋮⋮何でそんな事がわかるの ﹂ みる。確かに手首や足首に縄の跡が残っていた。 花美は死体の胸をトントンと指で叩きながら説明する。苗木はよくよく死体を見て 拠だよ﹂ れないようにとも判断できるが、体内に土が入るのは埋められていたときに生きてる証 ﹁胃や肺に土が入り込んでいる。それに、手首には縄の跡⋮⋮こっちは殺す時に抵抗さ ? ? しては君より上だ﹂ 君は、随分私を嫌っているようだね⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮あなたが捜査を混乱させるために嘘を言ってる可能性もあるわ﹂ ﹁私が犯人と言いたいのかね どことなく険悪な雰囲気を醸し出す二人に苗木はああ、と手をたたく。 ? い ﹁霧 切 さ ん 自 分 よ り 先 に お 父 さ ん の 側 に い た 探 偵 の 花 美 さ ん に 嫉 妬 し て ⋮⋮ いひゃい 痛 ﹁私は死を理解するために多くの死体を見てきた。直接解剖したこともある。死体に関 ﹁体内に土があるって、どうしてわかるの 桜の下には希望が埋まっている⑧ 578 痛 い 痛 い よ 霧 切 さ ん いひゃい、いひゃいよひりひりはん﹂ ﹂ ? ﹁ 似ているも何もボクは誠だけど ﹂ ? ? 2人は仲がいいようだ。 弟じゃなくて ? ﹂ ﹁⋮⋮え、妹なの⋮⋮ ﹁うん。妹⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮ぷっ﹂ ﹁霧切さん今笑った ﹂ ? ﹁まあいいや。じゃあ調査を続けよう⋮⋮﹂ と、素知らぬ顔をする霧切。だが肩が微かに震えている。 ﹁何のことかしら ? ﹂ 苗木が首を傾げていると観能がやってきて説明してくれた。下の名前⋮⋮同期だし ﹁違うよ。花美真、桜下の妹のことだよ﹂ ? ﹁ああすまない、微笑ましくてね。やはり少年はマコトに似ている﹂ クスクス笑う。 霧切は余計な一言を言った苗木の両頬を引っ張る。そんな二人の様子を見て花美は ﹁余計なことを言うのはこの口かしら⋮⋮ 579 ﹁そうね。けど、まずはこの死体が本当に窒息死なのか確かめましょう﹂ 猟奇的な死体 霧切はそう言って死体に向き直る。とは言え霧切は指で叩いただけで死体の中身を ﹂ 判別する力はない。と、霧切の肩を苗木が叩く。 ﹁これで腹を切れば良いんじゃない そう言って霧切に渡したのは死体に刺さっていたナイフだ。 ﹁⋮⋮⋮⋮苗木君⋮⋮私、頑張るから。だから、側にいてくれないかしら は幾つも見たけど、自分で死体を切り刻むのは⋮⋮﹂ 霧切が意を決して挑もうとすると花美がひょいとナイフを奪う。 ﹁いやいや素人にやらせるわけがないだろう﹂ ? ? 生物の体は複雑なんだ、筋繊維の向き、骨の隙間、内蔵の位置それら全てを勉 ? ? でから心臓を刺され、そして再び埋められたという事だ。 ﹂ ﹁⋮⋮⋮生き埋め殺人、か。にしても、何故わざわざ死因の偽装を ﹁戦刃さんに罪を着せる為じゃないかな ﹁なら見つけやすい場所に死体を放置するはずだ﹂ ? ﹂ え切ると土が出てきた。確かに胃と肺の中には土がある。つまりこの死体は一度死ん 花美はそう言って手袋をつけるとなれた手つきで解剖していく。やがて胃と肺が見 強してからにしてくれ⋮⋮﹂ ﹁いいか 桜の下には希望が埋まっている⑧ 580 ﹁生き埋めと死体偽装の犯人が別ならどうかしら たまたま見つけた死体を戦刃さんの ナイフで傷つけ、土で汚れた死体に違和感を持たれないように再び土に埋めた﹂ ? 多いんだ。内部の人物なら熟知してる⋮⋮﹂ ? 保管してた倉庫と中庭に出るための通路を利用した人を捜しましょう﹂ ﹁でも倉庫の入り口ぐらいなら映してますよね 11時から6時の間にボクらの荷物を ﹁すまない。なにぶん桜のために建てた建物なので監視カメラの配置は適当で、死角が ﹁⋮⋮⋮⋮そういえばここ廊下に監視カメラあるけど﹂ ﹁たまたま⋮⋮か⋮⋮﹂ 581 桜の下には希望が埋まっている⑨ 守衛室にはカメラの映像が記録されているとのこと。 とは言え、倉庫の入り口は一つだが中庭の入り口は8つ。これら全てを11時から6 時の7時間を見なければならない。 と思ったが信用できる人間 ﹁早送りしても時間がかかるわね、最初から当たりを引ければ良いんだけど⋮⋮﹂ と、2人は苗木を見る。普通に全員で探せばいいのでは ﹁そんな幸運持ち合わせていないな⋮⋮﹂ しかいないと思っていた支部内で殺人が起きている以上、誰も信用できないとのこと。 ? ﹁じゃあ次は中庭の入り口だけど⋮⋮あれ、六つ ﹁いや、その⋮⋮すまない﹂ ﹂ ? そしてその映像だけで6人居た。 そう言って苗木は映像を確認する。飛ばしすぎると見逃すので三倍速で⋮⋮。 ﹁それでボクですか⋮⋮じゃあ、取り敢えず倉庫の映像から⋮⋮﹂ の隊員や戦刃君が捜査するのを快く思わない者が多くてね﹂ ﹁だが少年にはれっきとしたアリバイがある。戦刃君や聖原君もそうだが、余所の支部 桜の下には希望が埋まっている⑨ 582 ネ ク ロ マ ニ ア 苗木の疑問に花美はすまなそうな顔をした。まあ、元々探偵業をしていて才能も超高 校級の死体愛好家が設計したのだ。建築業の者が建てたから強度はいいだろうがカメ ラの位置や間取りには穴があったりするのだろう。 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ? ﹁アルターエゴ ﹂ ﹃えへへ、こっちに引っ越してたんだぁ﹄ ﹄ ﹁丁度よかった。映像を処理してくれない 任せて ? ? ! いく。三分もしない内に映像が止まりアルターエゴの満面の笑みがディスプレイに映 アルターエゴは早速映像の処理を始めたのかものすごい早さで映像が切り替わって ﹃うん ! 人が通ったところを映して欲しいんだ﹂ 咲の顔が映っていた。いや、不二咲ではない。不二咲でもあるのだが⋮⋮。 と、その時何処からか声が聞こえてきた。辺りを見回すとディスプレイの一つに不二 ﹃苗木君、大丈夫ぅ ﹄ ﹁安心してくれ、私達も出来ることは手伝う﹂ 映ってない可能性の方が高いのに何故わざわざ確認を。 苗木が呆れながらモニターを見つめる。めんどい、正直かなり面倒くさい。犯人が ﹁⋮⋮これ、犯人映ってたら本当に幸運だよね﹂ 583 し出された。 ﹃昨日の夜11時から6時の間に中庭に通ったのは、カメラに映る限りだとこの2人だ けだよ﹄ アルターエゴがそう言って映したのは2人の男。片方は今回の被害者だ。 時間を確認していることから呼び出されたのだろう。 その男が出てくる所を捕らえるカメラはなかった。時間は12時。 ﹁⋮⋮で、もう1人は⋮⋮かなり不審だね⋮﹂ その人物は一度中庭に入った後慌てて逃げ出し、そしてまた戻ってきた。その手には 何か持っている。 ﹄ アップするとすると画像が粗くて見えない。 ! ? ﹁⋮⋮そうね﹂ ﹁これ調査する必要あったのかな ﹂ ﹁⋮⋮⋮カメラを使えれば、犯人捜すのこんなに簡単なんだね﹂ ﹁間違いないわね。死体偽装はこの人よ﹂ だ。 アルターエゴが叫ぶと画像の粗が徐々に減っていく。男の手元にあったのは、ナイフ ﹃ここもボクに任せて 桜の下には希望が埋まっている⑨ 584 ﹁あるさ。言い逃れできない証拠を見つけられただろ ﹂ まあまだ真犯人が分かっていないのだが。 大丈夫⋮⋮ ﹁⋮⋮眠い﹂ ﹁苗木君 ? ﹂ ? ﹁見つけた ﹂ ﹁被害者の部屋からキチンと⋮⋮⋮別に、俺は犯人分かってるんですけど﹂ ? いる。 苗木が名を呼ぶとベッドの下から聖原が現れる。その手には何やら手紙が握られて ﹁呼びましたか先生﹂ ﹁聖原く∼ん﹂ 苗木は部屋に戻りベッドに寝転がると目をつぶり眠りに│││つかなかった。 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮は∼い﹂ ﹁この男には、私から話を通しておく。少年は休みたまえ﹂ いたのだ。寝不足なのだろう。 苗木は唐突に眠気を訴えると霧切は慌てて駆け寄る。徹夜でTRPGとやらをして ? 585 ﹁殺し愛だっけ でもボクはそれの的中率を知らないし⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮よし、じゃあ行こっか。ボクが許可出すまで何もしちゃだめだよ ﹁⋮⋮⋮⋮はい﹂ 深夜1時。 中庭の桜の前に1人の老人がいた。花美桜だ。 こんな時間に呼び出して⋮⋮﹂ そんな桜に苗木が話しかける。 ﹁なんのつもり のだ。 ﹂ ﹁ようは直ぐすみますよ⋮⋮⋮じゃ、言いますね ﹁⋮⋮⋮何の事かしら ? ﹂ ﹁今回の生き埋め殺人の犯人ですよ。あなたは、この手紙で被害者を呼び出し眠らせ、縄 ? 犯人はアナタだ﹂ 桜は責めるように苗木を見て手紙を見せつける。彼女は苗木に手紙で呼び出された ? ? た。 苗木は手紙から指紋を取り、聖原に取らせてきた別の指紋とあわせる。完全に一致し ? ﹁お待たせしました﹂ 桜の下には希望が埋まっている⑨ 586 ﹂ この で 縛 っ て 埋 め た。被 害 者 の 部 屋 か ら 見 つ か っ た 手 紙 と ア ナ タ の 指 紋 が 一 致 し ま し た。 それに、あなたの部屋から睡眠薬が見つかりました﹂ 桜の木は死体を養分にすると綺麗に咲くと言うからな⋮⋮﹂ 苗木が証拠の写真を見せると桜の顔が強ばる。 ﹁動機は桜か ぬっと聖原が現れる。その言葉を聞き桜はにぃ、と気味悪い笑みを浮かべた。 我らに幸運を授ける⋮⋮だから、私は真を捧げた ﹁えぇ、その通りです⋮⋮⋮この桜を枯らせるわけには行かない。当然でしょう 桜は、特別なのです ! ﹁││ッ ﹂ ﹁こんな木、いっそ切った方が良いのかもね﹂ 人を殺すなどごめんだ。 ﹂ だがこんな殺人は絶対にしない。崇められるだけで何もしない信仰の対象のために るかもしれないと思っている。 苗木とて希望のために人を殺した。この先もきっと数え切れない数を殺すことにな 苗木はその言葉を聞きはぁ∼と長いため息を吐き頭を抱える。 ⋮⋮﹂ ﹁あ の 子 は 足 り な い 子 で し た か ら ね、せ め て 役 に 立 っ て も ら い ま し た。希 望 の た め に ﹁⋮⋮⋮⋮何だって⋮⋮⋮お前、埋めたのか⋮⋮花美さんの妹を⋮アンタの孫を ! ? ! ? 587 !! ﹂ 希望のあなたな 苗木の言葉に桜が目をギョロリと見開く。ガリガリシワシワの老人が目を見開くと かなり怖い。 ら、きっと良い肥料になる ﹁⋮⋮⋮あぁ⋮⋮ああ、そうだ⋮⋮次はあなた達を肥料にしよう⋮⋮ ! ゾバ とまるで地面が爆発したように桜の足下の土が吹き飛ぶ。桜は突然できた穴 殺人っていうのは⋮⋮﹂ ﹁あんたの殺人は10点だ。妄想のための殺しなど⋮⋮⋮そして教えてやる。生き埋め 苗木が合図した瞬間、聖原の腕が霞む。 ﹁⋮⋮⋮じゃあ聖原君、やっちゃえ⋮﹂ ! ! 先生ならきっと直ぐに覚えられますよ⋮⋮﹂ ﹁おー、もはや手品の域すら越えてんね⋮⋮どうやって一気に掘ったの ﹁やってみます ? ﹂ ? ﹁超生き埋め殺人⋮⋮﹂ 桜が慌てて叫ぶが、重力に従った土が待つはずもなくきれいに穴に落ちていく。 ﹁⋮⋮まっ│││ ﹂ あまりにも深すぎる。 に落ちてゆき、そこに落下して慌てて駆け上がろうと上を見上げて固まった。 ! ﹁バイバイ♡﹂ 桜の下には希望が埋まっている⑨ 588 ﹁いやいい⋮⋮ま、桜さんも桜の養分になれたんだし本望でしょ﹂ ﹂ ! ﹂ ! ﹁何で分かるの聖原君⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮幼女の骨だ を立て苗木の背に何かが落ちてくる。 苗木は聖原の言葉に親指を立てた。そして自分の部屋に戻ろうとした時、カランと音 ﹁グッジョブ ﹁あ、桜の根が届かない所まで埋めときました﹂ 589 ﹄ 桜の下には希望が埋まっている⑩ ﹃苗木君、起きてる ﹂ ? ﹁昨日の生き埋め殺人だけど、犯人が分かったわ⋮﹂ ﹁まあね⋮⋮﹂ ﹁おはよう苗木君。よく眠れたかしら 苗木は寝ぼけ眼を擦りながら起きあがると扉を開ける。 朝に7時、インターホンの音の後に、通話機能があったのか霧切の声が聞こえてくる。 ﹁⋮⋮⋮ん、あぁ⋮⋮おはよう霧切さん⋮⋮﹂ ? ﹂ ? ﹁人骨よ⋮⋮少なくとも数年以上の月日、地面に埋められていた。今、花美さんが調べて ﹁厄介なもの したのよ。でも何処にもいない⋮⋮代わりに厄介な物を見つけたわ﹂ ﹁被害者の部屋の机に置かれていた手紙、その筆跡が花美さんの祖母⋮⋮花美桜と一致 特に気にしなかった。 苗木は数秒遅れて驚いたような顔をする。寝起きなので反応が遅れたのだと霧切は ﹁⋮⋮⋮へぇ﹂ 桜の下には希望が埋まっている⑩ 590 いるわ﹂ 苗木はあぁ、と思い出す。 昨晩⋮⋮いや、もはや今日の夜だが苗木の合図で聖原が掘り返した土には、過去花美 桜が埋めたという花美真の遺骨が紛れていたのだ。 ﹂ それはたまたま木の枝に引っかかっり再び土の中に落ちることなく、たまたま帰ろう とした苗木の背に落ちてきたのだ。 ﹁じゃあ、人骨の調査は花美さんに任せてボクは花美桜の捜索に当たれば良いの お礼をしに来たのよ﹂ ? ましょう﹂ ﹁で、ケーキと⋮⋮﹂ ! 苗木がケーキの箱を見つめていると背後から声が聞こえてくる。そう、背後⋮⋮苗木 ﹁良いですね。おいしそうです ﹂ ﹁死んでから数日までならともかく数年は私の専門外よ。そういうのは、専門家に任せ ﹁⋮⋮意外、死体の調査するかと思ったのに﹂ り⋮⋮ケーキだ。 霧切はそう言って後ろに回していた手を前に持ってくる。箱の中から微かな甘い香 ⋮⋮⋮今日は⋮⋮昨日は手伝ってくれたでしょう ﹁花 美 さ ん の 話 だ と、狡 猾 な 性 格 ら し い わ。た ぶ ん、も う 逃 げ て る ん じ ゃ な い か し ら ? 591 の部屋の中からだ。 ﹂ 振り向けば舞園がお茶の準備をしていた。 ﹁⋮⋮⋮聖原君 ﹂ しまったのは、今回の突然の登場で唯一まともだったからだろう。 と、今度は戦刃がやってきた。ちゃんと通路から。唐突に現れたのに何故か安心して ﹁大丈夫、持ってきた⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮ケーキは2人分しか無いわよ﹂ 興味も示さず勝手に席に座る。 苗木の言葉にクローゼットから聖原が姿を現す。霧切はギョッと驚き、しかし聖原は ﹁隠し扉は発見できませんでした﹂ ? ? ﹂ ? 私も混ぜてもらって良いかな ﹂ ? が⋮⋮。 ﹁おや、ケーキかい ﹁⋮⋮⋮葉隠君、当たるときは当たるのね﹂ ? 霧切は苗木と自分の分のケーキを用意している。後は聖原と舞園、戦刃の三人だけだ ﹁4人 ﹁葉隠君の占いでケーキを4人分持って行くと良いって﹂ ﹁まって⋮⋮どうしてケーキを用意できたの 桜の下には希望が埋まっている⑩ 592 そこへ花美がやってきた。これで人数分のケーキが揃ったことになる。 ではないかと不安になる。 ﹁苗木君あーん♡﹂ ﹁あむ⋮⋮﹂ ﹁苗木君⋮⋮はい﹂ ﹁はむ﹂ ﹁少年、これも一口どうだ ? ﹂ ! 霧切も思わずあげそうになったがなんとか我慢して花美を見る。 ﹁⋮⋮っ に苗木はあーんと口を大きく空けていた。 いる舞園と戦刃はもちろん年上の花美も自分たちのケーキを差し出していく。その度 苗木は差し出される度に口を開け雛鳥のような反応をするので苗木に好意を寄せて ﹁むぐ﹂ ﹂ 苗木の言葉に呆れたような顔をする霧切。実はもう自分の才能も覚えられているの ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ たらなんか見える水晶玉占いを覚えられたよ﹂ ﹁そういえば葉隠くんとも話しながら観察してたら長い間考えられる長考と水晶玉見て 593 ﹁⋮⋮あの死体、身元は分かったのかしら ﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮妹だったよ﹂ ﹁⋮⋮⋮え ﹂ ? 逃げてくれた⋮⋮と言うことから、彼女自身花美家には良い思いがなさそうだ。 ギュッと手を強く握る花美。 れていたんだ﹂ だから、逃げたと思っていた。逃げてくれただけだと思っていた⋮⋮でも違った、殺さ 辞にも出来た子とは言えなかったからな、両親にも、祖母にも、冷たく当たられていた。 ﹁⋮⋮人類史上最大最悪の絶望的事件が起こる三年ほど前、唐突に姿を消してな。お世 花美はふっと寂しげな笑みを浮かべた。 花美の言葉に霧切が凍り付く。 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ? 苗木は自分の分のケーキをフォークでぐしゃぐしゃと崩していく。 ﹁そして人間まで⋮⋮と言うことね﹂ 本気で信じて動物の死体を埋めていたから⋮⋮﹂ 言っていたからね。あの人は⋮⋮⋮あの人達は、桜の下に死体を埋めれば綺麗に咲くと ﹁埋めたのは⋮⋮きっと祖母だろうね。真が居なくなった時期に、桜が綺麗だ、などと 桜の下には希望が埋まっている⑩ 594 ﹁滑稽な話だろう 私は知らず知らず、心のそこから家族と思っていた妹を殺した血の ﹂ ﹁自分を責めないで⋮⋮って、妹さんなら言うんじゃない 花美はそう言って苗木の頭をなでる。年上から撫でられるのは久し振りで、苗木は目 ﹁⋮⋮♪﹂ 空気を読んで慰めてくれる⋮⋮﹂ ﹁やはり似てるな⋮⋮昔から、空気を読まず正直なことばかりいって、こう言うときだけ 苗木の言葉にキョトンと苗木を見つめる。そして、クスリと笑った。 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ かを守ろうとすること自体は間違った事じゃないもの⋮⋮﹂ まるが何も知らずその人を守っていたとしてもボクはこまるを責めないよ。だって、誰 ﹁死人に口なし。こまるじゃないんだから⋮⋮でもね、ボクは誰かに殺されたとして、こ ? ﹂ 苗木は唐突に花美の額を指で弾く。突然のデコピンにポカンとする花美。 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮てい﹂ 繋がり以外絆など感じなかった相手を守っていたんだ⋮⋮﹂ ? ﹁⋮⋮⋮⋮そう思う根拠を聞かせてもらっても ﹂ ﹁無いけど ? ﹂ ﹁⋮⋮⋮え ? ? 595 を細めた。 なり怪しい手紙だ。誰が、何のために⋮⋮ した。 いろいろ気になったが取りあえず今は皿にこびりついたケーキの残骸を頂くことに ? 内容は穴を掘れと言うもの。そこに戦刃むくろを追い出す方法が埋まっていると、か ろ、花美桜とは別の筆跡による手紙があった。 苗木は花美の背を見ながら考える。聖原に死体偽装の犯人の部屋を調べさせたとこ 花美はそう言うと部屋から出て行った。妹の遺骨を埋葬しに行くのだろう。 ﹁そうだね⋮⋮アイツは、きっと怒らない⋮⋮ありがとう、少しだけ元気が出たよ﹂ 桜の下には希望が埋まっている⑩ 596 閑話⑥ 世界は救われた。 まだ絶望の残党は残っているが、かつての世界並に犯罪数も減り、大気に至っては人 が減ったからこそ元より綺麗なぐらいだ。 ﹂ 世界を救ったのは苗木誠率いる未来機関。苗木誠は言う、仲間と支え合いながらここ まできたと。 あーはっはっは ! あはは ! 男がナイフを振るって、少女⋮⋮ではなく、少女を守ろうと身を乗り出した母親に向 切りかかる。 男はギョロリと泣いている少女に目を付ける。自分より遥かに弱い存在、幼い子供に 際、正気ではないのだろう。 目の焦点は合っておらず、口の端から涎を垂らす男はとても正気には見えない。実 ていく。 路上で狂ったように笑いながら1人の男がナイフを振るい近くの通行人達を傷つけ ﹁あは ! 597 かってナイフを振った。 ﹁│││あ﹂ 人は突然の死を認識すると頭は冷静になり、それでも身体は動かないのだなと母親は 冷めた感想を抱く。そして││ 男にしては高い声が聞こえ、目の前の男がグルリと回転する。 ﹁はいそこまで⋮⋮﹂ 背中を地面にたたきつけた男の胸を踏みつけ気絶しさせたのは1人の青年。童顔で、 ﹂ 頭頂部にアンテナのようなアホ毛を持った青年は、この世で知らぬ者はいない人物だっ た。 ﹂ 本物 ! 連れてその場から去っていった。 た現代の英雄。そんな英雄は民衆の声に引きつった笑みを浮かべながら気絶した男を 苗木誠、人類史上最大最悪の絶望的事件の黒幕、超高校級の絶望、江ノ島盾子を倒し ﹁⋮⋮⋮あ、あはは⋮⋮﹂ !? ﹁苗木誠だ ﹁⋮⋮嘘 ! ﹂ ﹁すげー ! 閑話⑥ 598 ﹁またね⋮⋮﹂ ﹁まただね⋮⋮﹂ 苗木の報告書を見た霧切は頭を抱える。ここ最近とある犯罪が増えている。それは、 端からすれば傷害事件なのだが厄介なのは加害者が洗脳されているという事。 洗脳動画、ネットの広告に紛れうっかりクリックすると周囲の人間を傷つけたくなる いってきます ﹂ ! ﹂ と言うもの。現在御手洗がワクチンになる映像を作成していて、不二咲が出どころを調 べている。 ﹁はやいとこ終わらせられると良いんだけどね﹂ 忘れてた ﹁そうね⋮⋮そういえば、今日宗方さんと会議じゃないの ﹁あ ! ﹁⋮⋮⋮⋮そう思います ﹂ ﹁そうか、なら大丈夫だろう⋮⋮﹂ ﹁こっちもこっちで調べてますけどね⋮⋮﹂ 宗方の用件も洗脳動画に関するモノだった。 慌てて支部長室から出て行く苗木を見送り、霧切はクスリと笑った。 ! ? 599 ? ﹁仮にも超高校級のプログラマー⋮⋮何より、幸運のお前もいる⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ 支え合っているつもりだった。 だが何時しか支えているのは自分だけになっていた。膝を突きそうなほど、へし折れ そうなほどの重圧を一身に背負い、苗木は世界を見渡す。 ﹂ 犯罪はなくならない。絶望だって、どんなにがんばっても消えない。なのに、のしか かる。 ﹁死ねば ﹂ ? 苗木はゲームをしながら淡々と答える。ちょうどセーブポイントがあったのでセー ? ﹂ ﹁⋮⋮⋮そうか、簡単だ⋮⋮背負うのがいやなら、壊せばいいんだ⋮⋮﹂ ⋮⋮ たらしい。慌てて消そうとして固まる。画面いっぱいに映されたモノクマの顔を見て ネットで洗脳動画の被害が多い地区を調べていると妙な広告をクリックしてしまっ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮ん ? ﹁││って、絶望に堕ちた苗木を考えてみたけどどう思う 閑話⑥ 600 ﹂ ブして、改めて紙芝居を自信満々に朗読した江ノ島に向き直り、はぁ⋮⋮とため息を吐 いた。 ﹂ ﹁⋮⋮江ノ島さん⋮⋮⋮死ねば ﹁二度言う ﹂ ? ﹂ ? ﹂ ? 出来上がったストーリーに2人は首を傾げる。一体何処で何を間違えば先ほどの話 ﹁⋮⋮⋮さあ ﹁⋮⋮⋮何でこうなるの いぐるみを刺したり吊したりして殺す話が出来上がった。 2人は紙芝居の内容について話し合い、最終的にモノクマがモノミと言うウサギのぬ ﹁ならこうして⋮⋮﹂ ﹁だとしてもさ⋮⋮﹂ じゃない ﹁い や い や あ れ っ て 女 の た め に か っ こ つ け て る と こ ろ あ る し、一 皮 む け ば こ ん な も ん じゃん﹂ ﹁よ か っ た ね ⋮⋮⋮ て い う か こ れ 作 り 込 み が 甘 い よ。宗 方 さ ん、こ ん な 性 格 じ ゃ な い ﹁あひぃ⋮⋮今の、良いかも⋮⋮﹂ 苗木に死ねと蔑まれ江ノ島はショックと興奮と絶望を感じて結局興奮する。 !? ? 601 がこうなるのだろう。 ﹁ま、いいや。飽きた⋮⋮苗木∼ ﹂ ﹂ ﹂ 今日の苗木君優しい ﹁⋮⋮⋮結婚式ってさ﹂ ﹁ん 甘えさせて ﹂ ﹂ はぶりっ子になった後苗木の膝に頭をおいた。 苗木は呆れたようにため息を吐いて、近くの木に背を預けると両手を広げる。江ノ島 ﹁きゃーん ﹂ 本編じゃいちゃいちゃ出来ねえんだから、番外編でヤることヤりま ! ﹁⋮⋮はぁ⋮⋮おいで﹂ くろうぜー ﹁いいじゃねえか 狙いなどつけていないはずのそれは幸運にも江ノ島の額に直撃した。 ﹁あいた !? ! と苗木に向かって飛んでくる。苗木は飛び退き距離をとると同時に ! ゲーム機を江ノ島に向かって投げつける。 江ノ島はとう ! ! ! ! ﹁死が2人を分かつまで⋮⋮っていうじゃん ? ? ます⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮はい⋮⋮私には一生縁のないことですが⋮⋮確かにそんな台詞があったの覚えて 閑話⑥ 602 ﹂ ? 苗木は江ノ島の頭をなでながら唐突につぶやくと江ノ島は律儀に答える。 ﹂ ? 江ノ島は頭をなでる苗木の手をつかみ、苗木も江ノ島の手を優しく握り返した。 ﹁⋮⋮⋮うん﹂ ⋮⋮死んでも別れてやらない﹂ ﹁うぷぷ。苗木くんったら本当にボクに首ったけだね⋮⋮⋮あたしも愛してるよ。苗木 とが何より嬉しい⋮⋮﹂ ﹁好きだよ。今でも好き、愛してる⋮⋮例えこれが一時の夢でも江ノ島さんに会えるこ ﹁⋮⋮⋮アナタはどうなのですか ﹁それってさ⋮⋮愛って言うのは、死んだら冷める程度のって意味なのかな 603 そろそろ君をプロデュースさせて おいでよ動物の国① ﹁苗っち ﹂ ! ﹁いいよ﹂ ﹁一言目で断られるのは予想の範囲。だけど⋮⋮⋮って、え⋮⋮⋮ええの ? ⋮⋮やって、わっちが前頼んだ時は⋮⋮⋮﹂ を開いてしまった。 苗木の指摘に観能はハッと口元を押さえる。が、気になってしまったのかついつい口 ﹁観能さん方言出てる﹂ ﹂ セレスは丁度賭ける物が下着になったところなので天の助けのように観能を見た。 苗木がセレスとポーカーをしていると突然観能が部屋のドアを開け侵入してきた。 ! ﹁ええんか ? スはおもしろくなさそうな顔をした。 苗木はそう言って笑い、条件と言うのを口にした。観能はその言葉に目を見開きセレ ﹁昔は昔、今は今⋮⋮まあ、条件付きではあるけどね♪﹂ おいでよ動物の国① 604 宗方京助は苗木誠の扱いに困っていた。当然だろう、苗木誠はもはや黒を白と言えば 多くの人間が賛同する影響力を持った存在なのだから。 彼の扱いで未来機関は大きく揺らぐ。何より、彼自身それを理解しているのが厄介 だ。 理解せず、流されてくれる存在だったならばどれだけ楽か⋮⋮。 江ノ島盾子を倒した英雄を、世界のために愛する者を殺した英雄を⋮⋮。 が多く集まり、皆苗木を見つめていた。 電気や水道設備が復活し、難民が多くすんでいる街だ。当然、そのような場所には人 苗木は街に来ていた。 件の人物苗木誠が画面に映し出された。 ﹃皆さん。はじめまして⋮⋮苗木誠です﹄ 休憩するかとテレビを付ければ⋮⋮ 机の上にたまった書類に目を通し、判を押し、あるいは付け足し要約終わった。少し しかし今やるべきは書類仕事を終わらせることだ。 ﹁⋮⋮⋮ふう⋮⋮﹂ 605 もっとも苗木は江ノ島の為に江ノ島を刺したのだから、江ノ島盾子を倒した英雄では あるが世界と愛する者を天秤に掛けて苦渋の決断の末世界選んだ⋮⋮などと言うこと はないのだが。 ﹁ボクは一年間、シェルター化した希望ヶ峰学園で過ごしていたので、この世界にこれほ ど多くの人が残っているとは思ってませんでした。皆さん、頑張っていたんですね﹂ 苗木の言葉に、多くの人間が固まった。この世界で皆、必死に生きてきた自覚はある。 だが、頑張った自覚はないだろう。死なないよう、ただ生きてきただけ。 それを肯定された。他でもない、英雄から⋮⋮。 来機関より苗木個人の賛同者となっているだろう。だが、それだけだ。 苗木は一度も、未来機関に保護された事に関する言葉は言っていない。多くの者が未 宗方はその演説を聞いて歯噛みする。 さんも絶望せず頑張ってください﹂ 暮らせるようになります。だから、ボクも皆さんの力になれるよう頑張りますから、皆 さい。一人の希望が誰かに伝染して、その希望が広がっていけば⋮⋮きっと昔みたいに ﹁今、ボクにできることは残念ながらありません。ですがどうか、希望を捨てないでくだ おいでよ動物の国① 606 苗木誠の賛同者が増えるなら、苗木誠を未来機関に縛り付け未来機関に組み込めばい ﹂ い。そうすれば、絶望の残党を殲滅できる⋮⋮ ﹁⋮⋮ん ⋮⋮⋮ええっと、戦刃むくろです⋮⋮﹄ ? 苗木がいるので誰も手が出せない。 ﹁えっと⋮⋮その⋮⋮まず一言⋮⋮⋮ごめんなさい﹂ ? い。 だろう。幸せを奪っておきながら、世界を壊しておきながら許してくれなど都合のい 戦刃は謝罪とともに頭を下げる。が、周りからすればなんだそれは と怒りを覚える 戦刃の登場に周囲の動揺は隠せない。中には足元の石を拾う者もいたが、直ぐ近くに だった。 それは元超高校級の絶望にして、絶望の裏切り者。現在もっとも多くの敵を持つ人間 ﹃⋮⋮あ、えっと⋮⋮これに話しかけるの 見ている全ての人間が同じような反応をしているだろう。 誰か、ではない。その人物を認識して宗方は息をのむ。宗方だけではない、この映像 そんなことを考えていると画面の端から誰かが現れる。 ? 607 ﹁あ、あの⋮⋮今のは許してもらおうと思っていったわけではありません⋮⋮⋮あれ ? と必死に笑いをこらえていたが戦刃を凝視していた じゃなくて、許してもらいたいけど⋮⋮でもそれは別の方法でごめんなさいしたくて ⋮⋮えっと⋮⋮﹂ 苗木は何このカワイイ生き物 戦刃は苗木の言葉に微笑むと再びマイクを手に取った。 ﹁⋮⋮⋮うん﹂ ﹁頑張って、戦刃さん⋮⋮﹂ 一通り笑い終わった後、戦刃の背後に近づき肩に手をおく。 その場の皆はもちろんカメラにも映ってないため誰も気づけない。 ! ⋮⋮今は、許されなくても良い。でも、頑張るから。こんなことにしちゃった世界を、頑 かった⋮⋮さっきのごめんなさいは、形にした反省。だから、許してなんて言わない と思った⋮⋮⋮そういう、当たり前のことをしている人間を不幸にしてきたこともわ 分の意志で行動したいと思った。助けてくれた苗木君のために、自分で考えて動きたい 動してきた⋮⋮でも、盾子ちゃんに殺されそうになって、苗木君が助けてくれて⋮⋮自 ことがなかった。才能に流されるまま、盾子ちゃんに言われるまま、何も考えないで行 から、才能を磨いて、盾子ちゃんの頼みを聞いて、自分自身から何かをしようと思った ﹁⋮⋮私は、家族が盾子ちゃんしかいなかった⋮⋮私には、人を殺す才能があった⋮⋮だ おいでよ動物の国① 608 張って戻すから⋮⋮その時は、また謝るから⋮⋮そしたら、許してほしい⋮⋮﹂ いった。 ! さらに増えた。今回はその比ではない。下手に戦刃むくろに手を出せなくなった。 元々、絶望の皆殺しに反対する者は居た。苗木誠が、戦刃むくろを連れて外に出た時 た。 超高校級の絶望である戦刃むくろを、苗木誠が許してやれと言った。言ってしまっ 宗方は机を叩いて叫ぶ。やられた。 ﹁っくそ ﹂ 苗木の言葉に、誰かが石を落とした。そして次々と石を拾った者達が石を落として かなか許せないことだと思います。でも、どうか見守っていてください⋮⋮﹂ かを許して、繋がって⋮⋮そうやって希望は広がる。戦刃さんがしたことはきっと、な れて、裏切って、裏切られて絶望してしまう⋮⋮でも、人は許しあえると思うんだ。誰 ﹁人って、どうしても潔白じゃいられないと思うんだ。みんな誰かを傷つけて、傷つけら 苗木は戦刃からマイクを受け取ると再び話し始める。 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ 609 いや、戦刃むくろだけではない。苗木誠が保護した絶望全てだ。それを防ぐ手だて は、苗木がまだ何の地位も持っていない内に絶望を殲滅するかそこまでの地位を与えな いかのどちらかだ。 どちらもキツい。地位与をえなければ反発を生む、地位が低くても、だ⋮⋮。 ﹁あの、宗方さん⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮柊か⋮⋮﹂ 宗方が頭を抱えていると灰色の髪を肩で切りそろえた女性が心配そうに話しかけて きた。 彼女の名は柊投花。花火や宗方と同じ74期生だ。 だってあなたの味方ですから﹂ ﹁あまり、根を詰めすぎないで、困ったことがあったら相談してください⋮⋮私は、何時 柊の言葉に宗方は笑い、宗方が出した先の2人の名前に柊は目を細めた。 ﹁⋮⋮⋮⋮逆蔵と言い、雪染と言い、お前と言い⋮⋮俺は部下に恵まれているな﹂ おいでよ動物の国① 610 おいでよ動物の国② ﹂ ! ﹂ 素晴らしい 心に染み渡ったぜ ! ﹁さっきの演説見てたぞ ﹁おう ! ! ﹂ 第14支部に戻ると78期生が揃っていた。 ﹁⋮⋮⋮戦刃君 ﹁あれはむしろあれでよかったかもね⋮⋮﹂ ﹁あ、あの⋮⋮でも⋮⋮最初全然言えなくて⋮⋮﹂ なので苗木が台本を考えてやったのだ。 ないし、妹の願いが間違っているのかも知らない。 戦刃は残念ながら罪悪感がない。なにせ戦場で育ったのだ。人を殺すことに罪悪感は 苗木が観能に出した条件は戦刃の反省をプロデュースさせると言うもの。とはいえ、 苗木が頭をなでると戦刃は嬉しそうな顔をする。 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ い﹂ ﹁お疲れ戦刃さん。最初はどもってたけど、最後はキチンと台本通り言えたね。偉い偉 611 ! ﹁⋮⋮え⋮⋮あ、えっと⋮⋮ありがとう ﹂ ﹂ 満を減らしたかったのだろう。理解はしたがやはり特別扱いされている事実に納得し 確かに、戦刃だけ78期生の中で唯一元超高校級の絶望だ。早めに彼女に集まった不 ﹁﹁⋮⋮⋮⋮﹂﹂ ﹁そりゃ、彼女だけ皆とは立ち位置が違うからね。それだけだよ⋮⋮﹂ も不機嫌そうな顔をしていた。 と、不意に苗木の後ろからセレスがジト目で睨んできて。セレスだけではない、舞園 ﹁⋮⋮戦刃さんだけ、随分と特別扱いするのですね﹂ 然戸惑い、苗木はそんな戦刃を優しく見守る。 石丸と大和田が戦刃に駆け寄り褒め称える。そういうことになれていない戦刃は当 ? 帰ってきたんですね ! ? づらい。 ﹂ ? 床に激突する前に苗木にポフっと抱き止められる。 木はデジャヴを感じて走り出す。と、同時に佐々苗が何もないところで躓き、倒れるが セレス達が嫉妬していると、佐々苗がパタパタと走りながらやってきた。そして、苗 ﹁実は、苗木先輩達に班分けしてほしくて⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮何か用 ﹁あ、苗木せんぱーい おいでよ動物の国② 612 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮色香 ﹁もー ﹂ 苗木先輩にはデリカシーがないんですか たけど⋮⋮﹂ ﹂ ﹁⋮⋮あざといね⋮⋮それより、何か用があったんじゃないの !? ﹂ 班分け⋮⋮とか言って 苗木先輩達って汚染された大気に満ちた外に出て数日じゃないです ! それに、二年前と姿が変わらないって不思議現象も⋮⋮なので第4支部、ああ、新 ? ﹂ ? れていたなと思い出す。 苗木はそう言えば図書室を借りた時見た各支部の役割で、第4支部はそんな事が書か ﹁⋮⋮⋮ふうん 規医療の最前線の支部なんですけど、そこで看てもらうことになって⋮⋮﹂ か ﹁あ、そうでした ? ! と佐々苗の額に青筋が浮かんだ気がしたが直ぐにショックを受けたような顔をする。 苗木は佐々苗の平ぼ││慎ましやかの体型を見て不思議そうに首を傾げる。ビキっ ? か⋮⋮﹂ ﹁やだなぁ苗木先輩、それじゃあわたし、色香で人を騙そうとしてるみたいじゃないです ! ﹁佐々苗ちゃんは、走らないほうが良いかもね⋮⋮﹂ 転びかけて、フラグも建てられました ! ﹁ごめんボク好きな人がいるからハニートラップは別の人にやって﹂ ﹁別にしょっちゅう転ぶ訳じゃありません 613 医療技術、ねえ⋮⋮超高校なら感染病も思いのままだろうなぁ。などと思いながら見 ていたものだ。 確か支部長は薬剤師、どんな怪我でも一瞬で治る薬とか作ってそうだ。果たして身体 に良いのかは知らんが。 それを解析 苗木が考え込んでいると花美がやってきた。花美が何気なく言った言葉は、皆を動揺 ﹁ついでに、君達の記憶を戻す薬品も完成したようだ﹂ ﹂ させるには十分だった。 ﹁き、記憶を戻す ﹁ああ、以前少年が記憶を取り戻す装置と持ってきた脱出装置があったろ ウ チ 憶を取り戻しているのだ。記憶のフラッシュバックによる知恵熱は出さないだろう。 丁寧な説明に苗木は自分が飲んだらどうなるのだろうと首を傾げる。苗木は既に記 シュバックで知恵熱を出す可能性があるそうだ﹂ して、作ったんだ。電気信号を送る必要はないらしいが飲んだその日は記憶のフラッ ? ? ﹁わたくしは苗木君と行きますわ﹂ だ﹂ になるだろう。と言うわけで、一班5人の三班に分け順に行ってもらうことにしたん ﹁とはいえ、だ⋮⋮第14支部と違って第4支部は忙しい。15名も同時に送れば迷惑 おいでよ動物の国② 614 ﹁私も苗木君と行きます ﹂ ! ﹂ ? ﹁えー 私早く記憶取り戻したい ﹂ ! ﹂ ! モノモノマシーンの景品の一つであろう色鉛筆を出した。紙を15枚に細くカットし、 苗木はそう言って何処からともなく取り出した紙と何時も何処かに隠し持っている ﹁⋮⋮じゃあ、これで決めようよ﹂ 班にしろと言うに違いない。 十神辺りは後で腐川とは別の班にしろと言ってくるだろうし腐川は逆に十神と同じ 出す。 1人である舞園に好意︵と言っても良いのか微妙︶を持つ桑田が舞園と行きたいと言い なかなか複雑な人間関係のようだ。苗木誠に好意を寄せる者も多く、また、その内の 花美は呆れたように笑う。 ﹁⋮⋮⋮まあ、そうなるよなぁ⋮⋮﹂ ! ﹁あ、俺舞園ちゃんとがいいでーす ﹁ぼ、僕も苗木とがいいなぁ⋮⋮なんて⋮⋮﹂ いのよ。ここまで言えばわかるわね ﹁苗木君、仮にだけど事件が起こった時、洞察力が優れた助手となる人物が1人いると良 ﹁⋮⋮わ、私も苗木君とがいい﹂ 615 その下に三色、5枚に色を塗っていく。 がする⋮⋮と。 した者達が集まったのは、幸運なのだろうか だとしたら、かなり厄介ごとになる予感 喜ぶ者、悔しがる者と反応は様々だったが苗木はふと、不安に思う。運動能力に特化 となった。 青班 葉隠、不二咲、石丸、腐川、霧切 黄班 十神、セレス、桑田、山田、舞園 赤班 苗木、大和田、大神、戦刃、朝日奈 なんともわかりやすい。誰一人文句言うことなく引いた。結果⋮⋮ ﹁籤引き。ああ、ちなみに赤が一番、黄色が二番、青が三番ね⋮⋮﹂ おいでよ動物の国② 616 ? おいでよ動物の国③ 籤引きの翌日、第4支部の職員と名乗る男に連れられ苗木達は車に揺られる。外から 見える景色はやはり緑がない。 ? 大和田が慌てて止める。 ﹁お、おい⋮⋮どうした苗木 ﹂ 苗木は備え付けのガスマスクを手に取ると外に出ようとしている事に気づいたのか 苗木の言葉に運転していた男は丁寧な言葉で車を停車する。 ﹁かしこまりました﹂ ﹁ごめんちょっと停めて﹂ 普通なら気づかないだろうが光を反射して苗木だけが気づけた。 あるのだ。 苗木はそんな外の景色見ながら、ふと奇妙な物を見つける。瓦礫の中に隠れて何かが 大神と朝日奈も外の景色を見ながら呟く。 ﹁⋮⋮うん。それだけ、江ノ島ちゃんが恐ろしい存在だって事だよね﹂ ﹁一年で、ここまで変わるものなのだな﹂ 617 ﹁⋮んー、ちょっとね﹂ コロシアイ学園生活により警戒心が上がり、さらには霧切を観察して手に入れた観察 眼で見つけた気になるもの。 ﹂ 偶然見つけたというのも気になる。仮にも超高校級の幸運である自分がたまたま反 射した光で見つけたのだから。 ﹂ ああ、頼むよ⋮⋮⋮えっと⋮⋮神城さん﹂ ﹁苗木様、よろしければ私が護衛としてついていきましょうか ﹁ん ﹁はい﹂ ﹁あ∼、おい俺も行くぞ。なんかあんだろ ? 車護ってて⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮大和田くん⋮⋮うんじゃあお願い。大神さんと戦刃さんは、ここで朝日奈さんと ? ? き詰められている。 から小さな瓦礫と積み上げられている。ご丁寧に大きな瓦礫の間には小さな瓦礫が敷 ある程度近づくとやはり違和感を感じる。瓦礫の集まり方が妙だ。下から大きく、上 2人の言葉に苗木は頷き先ほど見つけた瓦礫の山に向かった。 ﹁わかった⋮⋮﹂ ﹁うむ﹂ おいでよ動物の国③ 618 苗木はそんな瓦礫の山にある数少ない隙間のから中身をのぞく。なにやら、機械が見 える。 苗木が取りあえずどかせそうな瓦礫を退かしていくと機械の全貌が見える。それは、 まるで希望ヶ峰学園にあった空気清浄機のようだった。 ﹂ ! ﹂ ? 大気汚染装置からは確かに絶望の残り香を感じる。だが何か妙だ⋮⋮何か、とは明言 た。いわゆる共感覚と言われるそれは、絶望の臭いを感じ取ると言うものだ。 実は苗木はループした際、記憶以外に誰の才能でもない自身のスキルを手に入れてい 神城の言葉に苗木はへぇ、と大気汚染装置を眺める。 ﹁絶望の技術者が人の住み難い世界にするために作った大気汚染装置です﹂ ﹁知ってるの ﹁これは⋮⋮⋮ どうやら正解だったらしい。 苗木がスイッチを押すとブゥンと音を立て機械が止まった。 ﹁えっと⋮⋮これかな、停止ボタン﹂ い煙を出す機械は、どうみても大気を汚しているようにしか見えない。 モノクマの左目のマークが張られた黒い空気清浄機。シュウシュウ音を立て黒っぽ ﹁⋮⋮でもこれ、空気清浄機じゃないよね⋮⋮﹂ 619 ﹂ できないが。 ﹁⋮⋮⋮ ﹂ あのでっけぇのがか ﹂ !? 塀、と言うことは庭があるのだろうか ﹁はい﹂ ﹁塀 ﹁はい。苗木様のおっしゃるとおり、あれは壁⋮⋮厳密には塀でこざいます﹂ ﹁⋮⋮壁 い、高さもだが、幅が⋮⋮だ。しかし苗木は直ぐに気づいた。窓が少ない。 朝日奈が思わず呟いたように、第4支部と思わしき建物は巨大だった。高さではな ﹁お、おっきい⋮⋮﹂ しばらく進と、見えてきた光景に苗木達はあんぐり口を開ける。 結局モヤモヤを抱えたまま苗木は車に戻り、再び進んだ。 ? ? ﹂ きめの庭を作っているのかもしれない。 第14支部で桜が育つように中庭を作ったように、第4支部では薬草が育つように大 ? !? ? ﹁はい。まあ、薬草ではありませんがね﹂ ﹁もしや⋮⋮薬草を育てるためか おいでよ動物の国③ 620 苗木と同じ結論を出した大神が呟くと神城はそれを否定する。いや、否定ではないが 付け足す。 ﹂ ? いてくる。 大和田が草食動物と目があった瞬間逃げられ、逆に大神と目があった草食動物が近づ る。まるでサファ○パークのようだ。 14支部の中庭にも桜や草があるが、これは規模が違う。遠くには動物の影が見え そして塀の中には緑が広がっていた。 ﹁⋮⋮⋮へぇ﹂ 苗木はふーん、と軽く受け流して外を眺めていると車は門をくぐり抜けた。 神城はそう言って苗木を見る。 ﹁もちろん。ですが、今は何よりあなたを信奉しておりますよ﹂ ﹁ふーん、尊敬してるの 薬をやったこともあるのですから﹂ ﹁⋮⋮まあ、それもありますが、支部長は心優しい方ですよ。道端で死にかけている犬に ﹁どの動物が狂犬病の媒介になってるかわからないしね⋮⋮﹂ 檻が壊れて野生化した動物達の保護もしているんですよ﹂ ﹁動物も保護されているのですよ。支部長の薬は、動物に効く物もあります。動物園の 621 ﹁ここには草食動物が多いんだね﹂ ﹂ ﹁そういう区ですから⋮⋮⋮﹂ ﹁この動物達にも薬を ﹁病気になれば⋮⋮﹂ ﹁ ﹂ がいるのも考えるとそうとうな種類の薬品が必要になりそうだが⋮⋮。 見渡せば目に付くのはヌー、シマウマ、インパラ、etc.etc.、別の区に肉食獣 ? 臭いの元は、倒れている草食動物⋮⋮。職員と思われる人間達が車に乗せている。 不意に苗木は鼻をクンクン動かす。 ! というか、未来機関の内部がすごいことになってるな。よ ? く潰れない⋮⋮と、苗木は呆れ半分、関心半分のため息を吐いた。 この場合は臭いだろうか ﹁⋮⋮⋮厄介ごとの予感がするなぁ﹂ おいでよ動物の国③ 622 おいでよ動物の国④ ﹁ではこちらへ⋮⋮﹂ 神城に案内されながら歩く第4支部の中は、さながら薬品工場と行ったところか。 ﹂ どの支部でも同じよう なんで薬を作る第4支部に ガラスの向こうでは職員達が顕微鏡を覗いたり機械の操作をしていたりする。 ﹁そういえば、神城さんは超高校級の執事なんですよね ﹁それを言ったら花美支部長も広報活動に向いてないでしょう ? ことは医療に精通した人間と言うことになる。どんな人物なのだろう やはりつぎは 苗木は支部長室と書かれたプレートのある扉を見つめる。第4支部の支部長と言う ﹁ここが支部長室⋮⋮﹂ ﹁つきました﹂ はあるのだが⋮⋮。 て直そうとしている時代ならどの支部で栄えるという事はないだろう。役立つ才能で 苗木はなるほどと納得する。超高校級の執事、平和な時代ならともかく今、世界を立 す﹂ な働きしか出来ない者や、才能を役立てようとしない者は適当な支部に送られるんで ? ? ? 623 ぎが顔にあり、黒い髪なのに一部白髪メッシュがあるのだろうか ﹁いらっしゃい⋮⋮﹂ 苗木の中で支部長像がガラガラ音を立てて崩れた。 ﹁ ﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ 図書室の資料もう少し詳しく書いてもらいたいものだ。 想 像 と 違 う。い や ま あ 薬 剤 師 な の だ か ら 想 像 通 り だ と 違 和 感 だ ら け な の だ が ⋮⋮。 ? ﹁ん ﹂ ﹁⋮⋮それ﹂ ほどではないが⋮⋮と考える。 は絶望を受け入れない派⋮⋮以前あった宗方と同じタイプなのだろうか まああの男 第4支部支部長はジロリと戦刃を見つめた。戦刃は首を傾げたが苗木はこの支部長 ? ? ? あ、でも時折鈍く痛みます﹂ ? 完全な無痛症ならともかく精神面の問題、江ノ島を殺した日からはさらに痛みを感じ ﹁ないですよ ﹂ るのは苗木の顔⋮⋮ではなく包帯の下の中身のなくなった左の眼孔だ。 苗木が第4支部支部長を観察していると唐突に話しかけてきた。それと指さしてい ? ﹁⋮⋮⋮痛みは おいでよ動物の国④ 624 にくくなってしまっている。それでも包帯を取ったとき、風呂の時に微妙に痛くなる。 すると第4支部支部長は支部長席の後ろにあった棚から薬の入った瓶を取り出し苗 木に渡す。 ﹂ ! ﹁血を採ることだ﹂ ﹁さくらちゃん。採血って ﹂ ない理由、調べるために採血するから⋮⋮﹂ ﹁じゃあ、ついてきて⋮⋮記憶再生薬と⋮⋮それに、あなた達が二年前と体型が変わって 苗木に続いて他の皆も自己紹介する。 ﹁⋮⋮戦刃むくろ﹂ ﹁大神さくらだ⋮⋮﹂ ﹁大和田紋土だ﹂ ﹁朝日奈葵でーす ﹁あ、ども78期生超高校級の幸運苗木誠です﹂ ﹁私は、第4支部支部長忌村静子⋮⋮⋮﹂ 第4支部支部長は苗木に痛み止めを渡すと席に戻る。 ﹁⋮⋮⋮どうも⋮⋮﹂ ﹁痛み止め⋮⋮つらくなったら、使って⋮⋮﹂ 625 ? ﹁ええ 私、注射苦手だよ⋮⋮ ﹂ ! ﹁ありがとう忌村さん 頼りになるね ﹂ ! 幼いようだ。 ﹂ ﹁苗木、なんか失礼なこと考えてない ﹁気のせいじゃない ? どしたんです ? ている女子がいた。 師匠 ﹂ 暫く歩き、第5薬品室と書かれた部屋に来る。忌村が扉を開けると中で薬品を整理し ﹁ここよ⋮⋮﹂ 忌村はそう言って歩き出し、7人は後について行く。 ﹁早くしてくれる⋮⋮あの子待たせてるから⋮⋮﹂ ? ﹂ 朝日奈は忌村の手を取って感謝をする。そこまで注射が嫌いか。やはり精神年齢は ﹁あ、うん⋮⋮﹂ ! 朝日奈の声に忌村は慌てて朝日奈に薬を渡す。 ﹁え⋮⋮じゃあこれ⋮⋮刺す前に飲めば痛くなくなるから﹂ !? あ ? ! ﹁薬師寺⋮⋮﹂ ﹁ん ! おいでよ動物の国④ 626 ﹂ てことは、苗木誠さん来たんか⋮⋮どの人﹂ ﹁記憶再生薬⋮⋮取りに来た﹂ ﹁おお ⋮⋮あ、わたす薬師寺薬師言います ﹁ボクだよ﹂ ﹁本物だ ﹂ 無意識に包帯に手をおく。 ⋮⋮あ、そだ⋮記憶再生薬 ! 忌村が間一髪キャッチしたが。 転んだ。 ﹂ ドタドタと薬棚の奥に引っ込んだ薬師寺は、数秒後に薬の入った箱を持ってきて⋮⋮ ﹁はい ﹂ 薬師寺の発言に苗木はピクリと反応した。 ﹁医学者 ﹁元77期生超高校級の医学者だす る。見るからにやぶ医者といった風貌である。 変わった女性だ。瓶底メガネに抹茶色のスーパーロングの髪に襤褸白衣を纏ってい てくる。 なまった喋り方をする薬師寺薬師と言う女性は苗木の手をつかみブンブン振り回し ! ! ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ! ? ! ! 627 作るの、大変なんだから﹂ ﹁気を⋮⋮つけて ! ﹂ ? ﹁ほい、腕だして⋮⋮﹂ の棒を五本持ってくる。 薬師寺が扉を開けると献血室のような部屋の中身が見える。薬師寺は戸棚から硝子 ﹁ささ、どうぞ⋮⋮﹂ 薬棚の奥を進んでいくとまた扉があった。朝日奈は急いで薬を飲む。 ﹁あ、この部屋の奥にあるすよ﹂ ﹁ところで採血は 苗木は納得したように頷く。 ﹁なる程⋮⋮﹂ ﹁それ雪染先生のクラスのこどだすよ﹂ ﹁そう言えば、77期生と言えば全滅したって書かれてたけど﹂ まあ正確には苗木も必要ないのだが言うと面倒なことになるから言わないで置こう。 ﹁⋮⋮あ、うん⋮⋮﹂ ﹁戦刃には、必要ないわね⋮⋮﹂ 忌村に叱られ落ち込む薬師寺。箱の中の瓶は5人分。 ﹂ ﹁す、すんません ! おいでよ動物の国④ 628 ﹁⋮⋮ん、ああはい﹂ 苗木が腕を出すと薬師寺は硝子棒の先端についている針をキチンと血管に刺す。中 が真空になってるため、苗木の血液が吸い込まれていった。 ﹁ほら、皆も⋮⋮﹂ 苗木が言うと戦刃も腕を出し血を採らせる。他の皆も腕を出す。大神から血を取る ﹁⋮⋮⋮⋮うん﹂ ﹂ ﹂ 時は大変そうだったが⋮⋮。 ﹁っ ﹁い、痛がった ﹂ 大和田も注射は好きじゃないらしい。 ﹁くそ、やっぱ注射は何時まで経ってもなれねえーぜ﹂ ﹂ ﹁ところでさ、薬師寺さん﹂ ﹁なんだべ ﹁医学者ってことは、移植手術出来る ? ? ? なら、まがせて あ、でもドナーが⋮⋮﹂ シュンと落ち込む朝日奈。大神がよく頑張ったなと頭をなでてやる。 ﹁痛くは無いけど怖かった⋮⋮﹂ ? ! ﹁でぎるよ⋮⋮あ、その左目のごとが ! 629 ﹁それなら大丈夫だよ。あの学園出る時に、何時か立体視に戻れるように左目持ってき てるから﹂ ﹂ ああ、そう言えば⋮⋮あそこにはあなたの両親の死体があったわね⋮⋮⋮先を見据 えるのは美点だと思うけど⋮⋮⋮薄情ね﹂ ﹁ ﹁両親が死んでショックを受けてないわけじゃないよ ﹁あ、ご⋮⋮ごめんなさい⋮⋮﹂ ﹂ ! ﹂ ? ﹁大丈夫よ。その子は⋮⋮治療や手術の時はキチンとしてるから﹂ ﹁あ、うっかり毒とか勘弁してよ。君、うっかりしてそうだし⋮⋮﹂ ﹁まがせてぐださい ﹁それじゃあ、お願い出来るかな 苗木の言葉に忌村は慌てて謝る。苗木は気にしないでと手を振り薬師寺に向き直る。 ? ? ﹁じゃあお願いね﹂ おいでよ動物の国④ 630 おいでよ動物の国⑤ ﹂ 苗木が移植手術をしている間に大和田達は第4支部の食堂に来て食事を取っていた。 ﹁苗木の奴、大丈夫かなぁ﹂ ﹁あのチビ女の腕は確かなのか の持ち主のようだ。 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹂ ﹁そういやなんであんたが俺らと一緒に食ってんだ ﹁⋮⋮⋮い、いやだった ? 大和田が同席していた忌村に話しかけるとビクッと体を震わせる。気のせいか外に ? ﹂ と言えるなど信頼している証拠だろう。それに自分の立場を他人に譲れるなど広い心 忌村の言葉にさくらは感心したように言う。自分より上の立場を、他人が向いている ﹁あの者を随分と買っているのだな﹂ ⋮⋮﹂ り、私が年上だからで私が支部長だけど、本来ならあの子の方が支部長をやるべきなの ﹁⋮⋮うん⋮あの子、腕は確かよ⋮⋮今は万人に使える薬の方が優先される時代だった ? 631 大和田ー謝りなさいよー ﹂ 跳ねている髪の毛が少しだけ下に垂れた。 ﹁ちょっと ﹂ ! 答は簡単、絶望達による暴力だ。 ? 和田、戦刃が臨戦態勢になるが朝日奈だけは首を傾げていた。 忌村はそう言って何処からともなく注射器を数本取り出す。殺気を感じた大神や大 てあげる﹂ 奴らは説得してあげる⋮⋮でも、変わってないなら⋮⋮私の毒のフルコースを食らわせ ﹁⋮⋮あの時の放送⋮⋮⋮見定めたいだけ。もし、アナタが変わってるなら⋮⋮ここの ? のだろう。 ﹂ 人を治す者達からしたら、世界をこんな風に変えた絶望である戦刃は受け入れがたい この時代何が原因で怪我をする者が多いか ここは医療機関だ。怪我をした者が運ばれ、怪我を治そうとする者が集まる。では、 睨んでいた、戦刃を⋮⋮。 戦刃がそう言って周囲を見渡す。つられて大和田達も周囲を見ると睨まれた。いや、 ﹁⋮⋮多分私のため﹂ 朝日奈に責められさすがに自分にも非があったと思ったのか慌てて謝る。 ﹁う、す、すまねえ ! ! ﹁でもそれはアナタも同じはず⋮⋮⋮どういうつもり おいでよ動物の国⑤ 632 ﹁⋮⋮⋮⋮私は⋮⋮立場上自白剤とか、毒をたくさん作った⋮⋮でも本当は命を助ける ために学んできた⋮⋮だから、使わせないで⋮⋮﹂ ﹂ ? ﹁夢は記憶の整理⋮⋮この中身は何度も見てるから記憶にあるはずだけど⋮⋮﹂ 苗木が水面を覗き見ると左目にはポッカリとそこの見えない黒い穴があった。 ﹁⋮⋮グロくはないね⋮⋮﹂ すこともなかった。 議なことに、それとも夢の中だから不思議ではないのか黒い水は苗木を濡らすことも汚 で、足下は一面黒い水が広がり黒曜石のようにぼんやりと空と苗木を映していた。不思 空は色々な色の絵の具を適当に混ぜ合わせたかのようにグチャグチャ、混沌とした色 苗木誠は夢を見ていた。 朝日奈は指についたドーナツのかけらを舐めながらポツリと呟いた。 ﹁⋮⋮苗木の方は大丈夫かな 朝日奈はドーナツをハムハム食べながら首を傾げていた。 散したのを感じた周囲の人間はほっと席に腰を下ろして食事を再会した。 戦刃はそう言って拳をほどく。大和田や大神も臨戦態勢を解き、一種即発の空気が霧 ﹁⋮⋮⋮わかった。使わせない﹂ 633 と、苗木が穴の中を除いていると水面に波が立つ。僅かに曲がっていて、均等の感覚 で広がり、まるで波紋のようだ。波紋と言うことは当然中心がある。振り向くと水面が 揺れていた。 やがて波紋が二つに増え、ズブズブと二つの影が浮かび上がってきた。 そして水面に姿を現したのは死んだはずの苗木の両親。苗木はそんな2人に気軽に ﹁あ、父さん、母さん、ヤッホー⋮⋮﹂ 手を振り、顔をのぞくためについていた膝を水面から話す。 ﹁オマエのせいだ﹂ ﹁あなたのせいだ﹂ ﹂ 刺しているのだろうか ? 聞こえてきた声に苗木は笑顔を崩し首を傾げる。はて、自分のせいとはいったい何を ﹁⋮⋮ん ? ﹁何処が希望よ⋮⋮﹂ ﹁ナニが希望だ⋮⋮﹂ 何時の間にか2人の片手は鉄の棒で貫かれ固定され、胸にはナイフが刺さっていた。 ﹁誠くんが、余計なことをしなければ私達は殺されなかったのに﹂ ﹁オマエが、余計なことをしなければ俺達は死ななかったのに﹂ おいでよ動物の国⑤ 634 ﹁﹁親を救えなかったくせに⋮⋮﹂﹂ 苗木を責めるように睨む2人に苗木は後ずさる。そして、ゴボリとどこかで水が漏れ るような音がする。 それは苗木の左目の眼孔からだった。 ﹂ ﹂ ! ﹂ ! 左目は苗木同様存在せず赤い液体を⋮⋮血を流していた。 ギュッと力強く苗木を抱き締めたのは江ノ島盾子。その額はナイフが刺さっていて、 ﹁なーえーぎー が見間違えるはずもない、彼女の手だ。 白磁のように白く、シミ一つ無い美しい肌をして、血のように赤い爪をした手。苗木 2人のその言葉と同時に、ぬぅと背後から二本の手が伸びてくる。 ﹁⋮⋮⋮っ ﹁﹁お前のせいで⋮⋮絶対に許さない⋮⋮⋮﹂﹂ ﹁許さない﹂ ﹁許さない﹂ 中這い回られる嫌悪感に身を震わせ取ろうとするが一向に取れない。 ゴボゴボ音を立て赤い液体が溢れ苗木の体に付着していく。ドロドロした液体に体 ﹁⋮⋮え ? 635 ﹁ほら見て、アイツ等⋮⋮自分が救われなかったから苗木を責めるの⋮⋮実際、苗木が余 計なことしなければ私もあんな手使わなかったし、そういう意味じゃアイツ等殺した のって間違いなくあんただよねー﹂ 悲しい 苦しい 苛つく 怒った 怖い 絶望的に 親を犠牲に友達助 ? 絶望的だよね 逃げたい スリスリとまだ血が付着していない苗木の右頬に自分の左頬をこすりつける。その 痛い ? 親に責められるのって、どんな気分 ? 際左目から溢れる血が苗木の右頬は汚していく。 ﹁辛い けたのってどんな気分 ? ﹁そう、それを否定しようとして俺達は⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮これが、絶望⋮⋮﹂ ナス面の感情が混じり合って、自分でも理解しきれない ? ﹁それをアナタが拒絶して私達は⋮⋮﹂ ﹂ そう、これが絶望何だよ。ドロドロのグチャグチャで、色んなマイ ? ? 苗木はガッカリしたように頭を掻く。苗木を蝕もうとしていた液体は乾いた血のよ と思ったらもう絶望出来なくなった⋮⋮⋮﹂ ﹁せっかく堪能して⋮⋮⋮あ、もう無理だ。少しでも江ノ島さんの気持ちを理解できる 苗木の言葉に再び語り始めた2人に苗木片手を降り一蹴する。 ! ? 死にたくなるよね ? ? ? ? ﹁2人ともうっさい、静かにして⋮⋮﹂ おいでよ動物の国⑤ 636 ﹂ うに黒っぽく変色してパリパリと剥がれてゆく。 ﹁⋮⋮何を、何を言っているんだお前は⋮⋮ ﹁私達を殺したことに、何の罪悪感も感じないの ! ﹂ あいにく、ボクの両親は自分の命より他人の命 ? ﹁さあ ﹂ ﹁⋮⋮⋮このあたしも偽物なのかな ? ﹂ を先読みしたように受け止め手首を握る。 フが消えていた。そして手に持っていたナイフで切りつけてくるが苗木は彼女の行動 苗木の指摘に江ノ島はケラケラ笑いながら苗木から離れる。何時の間にか額のナイ ﹁だよねー⋮⋮﹂ ﹁そういうのは事前に声を作るとこ見せちゃダメでしょ﹂ きりだね﹂ ﹁⋮⋮ありゃー⋮⋮⋮あ、ちょっと待って⋮⋮あー、あー、あー⋮⋮よし、苗木⋮⋮2人っ たのは苗木と江ノ島の2人きりだ。 苗木がパンと手をたたくと両親の形をした何かは霧のように消えて。その場に残っ で、オマエラ消ーえろ﹂ を優先する変わり者だからボクを責めるなんてありえないんだよね⋮⋮⋮というわけ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮ていうか君たち誰 !? 637 ? ﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮ま、どっちでも良いけどね。てか絶望すれば好きな人の気持ちが分かるか もしれないと思うと絶望出来ないって何よそれ⋮⋮あんた一生絶望出来ないじゃん ! ﹂ ﹂ ﹁ど う だ ろ ⋮⋮ 江 ノ 島 さ ん よ り 好 き な 人 が 出 来 た ら 絶 望 出 来 る よ う に な る ん じ ゃ な い 本人を前に浮気宣言 !? を向けて歩き出した。 江ノ島の言葉に苗木は頬をひきつらせた。そして、思い出したかのように江ノ島に背 ﹁それは勘弁してほしいな⋮⋮⋮じゃ、そろそろ行くよ⋮⋮﹂ んなら毎日枕元で呟いてやんのに﹂ ﹁ま、いいや⋮⋮死んだあたしがとやかく言える問題でもないしね⋮⋮幽霊が本当にい 苗木の言葉に江ノ島は引いたような態度をとり、苗木と同時に吹き出した。 ﹁え、浮気⋮⋮ ? ? ﹁⋮⋮⋮ん﹂ しだけ降った。 去っていく苗木に手を振る江ノ島。苗木は一度だけ振り返り笑みを浮かべて手を少 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮またね♪﹂ ﹁バイバイ♡﹂ おいでよ動物の国⑤ 638 ﹂ いわがんねえですが ﹂ ﹂ ムクリと起き上がった苗木は左目を包帯越しに触る。穴の中には確かに何かがある 感触がした。 ﹁あ、おぎました⋮⋮ ﹁なんも ﹁⋮⋮⋮⋮薬師寺さんさぁ⋮⋮ボクが寝てる間になんかした ? 苗木は壁の手すりに捕まりながら手術室から去っていた。 ﹁どいたしまして⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮それじゃあ、薬師寺さん⋮⋮ありがとね、色々と﹂ が、全く歩けないと言うほどではない。 苗木は手術台から降りて歩こうとするが麻酔が抜けきっていないのか少しふらつく。 取らないほうがいいだ⋮⋮﹂ ﹁あ、左目の移植は成功だぁ⋮⋮視界が馴染むまで数日かかるし⋮今日いっぱいは包帯 ﹁⋮⋮⋮そう﹂ ? ? ? 639 おいでよ動物の国⑥ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ 部屋に戻った苗木は記憶再生薬を片手に見つめていた。 おそらく他の部屋でも戦刃を除いた78期生は似たような反応をしているだろう。 ﹁ま、飲んだ方が良いよね⋮⋮﹂ 苗木は瓶の蓋を開け、一気に飲み干す。飲む人への配慮か甘かった。 ふぁ、と欠伸をして苗木はベッドで横になる。だんだんと視界が霞んでいく。苗木は そのまま眠りについた。 苗木は知恵熱を起こすことなく目覚めた。だが、快調とは言えない。息苦しい。胸の 上に何かが乗っかっているような感覚だ。 ﹂ ! ﹁みゃあ ﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁みゃお おいでよ動物の国⑥ 640 ! ﹁⋮⋮⋮ライオンって、食べれるのかな ﹂ ﹂ ? ﹁みゃあみゃあ ﹂ 苗木の言葉に不穏な気配を感じ慌てて逃げようとするが尻尾を掴まれ吊される。 子だろうか ボロだ。犯人は間違いなく何故かいるライオンの子供のせいだろう。この場合は犯獅 苗木は昨日の夜、入院服のまま眠りについた。その入院服は爪を立てられたのかボロ ﹁ふみゃあ !? ? ﹂ ! ﹁みゃー ﹂ ﹁おとなしくしてなよ獅子王丸﹂ 時計を確認すると朝の5時。起きている人間が居ればいいのだが⋮⋮。 ﹁⋮⋮⋮取り敢えず、どっかに持ってかないとな﹂ なんとなく愛らしい子獅子の顎を撫でてやるとゴロゴロ喉を鳴らし始めた。 すとポフッと落下した。 子獅子とは言え牙は生えているらしく、噛みつこうとしてきたが苗木がパッと手を離 ﹁おっと⋮⋮﹂ ﹁ふしゃー ﹁ははは。なんて言ってるかわかんないや﹂ ! 641 ! 苗木の言葉に頭の上に乗っかった子獅子改め獅子王丸は元気に鳴いた。人懐っこい ⋮⋮誰かのペットだったりするのだろうか ﹁取り敢えず歩いてれば職員に会うでしょ﹂ ﹁みゃう⋮﹂ ﹁迷った⋮⋮﹂ ? みゃーみゃー ﹂ 苗木は周囲を見渡し呟く。上から呆れたような声が聞こえてくる。 ﹁⋮⋮みゅう﹂ ﹁⋮⋮⋮みゃ ! みゃみゃ、みゃう ﹂ ﹂ ? ﹂ 不意に獅子王丸が叫び、何事かと目を向けてみれば人が倒れていた。 ! まあ他に手がかりがないので従うが⋮⋮。 不意に獅子王丸が苗木の頭に爪を立て無理矢理横を向けさせる。横には通路しかな ﹁いたた、爪を立てないでよ⋮⋮﹂ ? い。その通路を進めというのだろうか ﹁みゃー ! ﹁⋮⋮⋮ん ? ﹁⋮⋮これは⋮⋮死んでる ! おいでよ動物の国⑥ 642 ﹁ぎゃう ﹂ ! ﹁ぎゃ、ぎゃう みゃあ ﹂ ! ﹂ ? 返り苗木を見つめる。付いて来いと言うことだろうか ﹁よしよしお前は頭のいい子だね﹂ ﹂ ! 鍵を開けるんだ ﹂ 子王丸はここのペットなのだろうか ﹁よし獅子王丸 ! ! ? 扉の前で立ち尽くす苗木。扉の下にはペットるというペット専用のドアがある。獅 ! 鍵がない ! ﹁しまった ! みゃみゃみゃ ﹁みゃっみ ﹂ 苗木に頭を撫でられ獅子王丸は嬉しそうな鳴き声をあげて再び歩き出した。 ﹁な∼﹂ ? 獅子王丸は苗木の頭から上から降りると苗木の前を歩き出す。ある程度進むと振り ! ﹁⋮⋮獅子王丸、部屋知ってる 苗木は取り敢えず抱えてみるが持ち上げられず、仕方なくおんぶする。 倒れていたのは忌村だった。 ﹁嘘嘘生きてるよ。息してるし⋮⋮⋮って、この人確か⋮⋮﹂ 643 ﹁みゃ ﹂ ﹁みゃーみゃーみゃう けられるよ⋮⋮﹂ ﹂ ﹁大丈夫、今日日猫だってドアを開けられるんだ。ライオンの君なら鍵付きのドアもあ !? た。 ﹁え ﹂ 随分と⋮⋮根暗な⋮⋮﹂ ? みドアを開ける。 忌村はそう言って懐から鍵を取り出して苗木に渡す。苗木は鍵を受け取ると差し込 ﹁⋮⋮⋮鍵⋮⋮﹂ ﹁冗談ですよ⋮⋮﹂ ﹁ワザと言ってる⋮⋮ 獅子王丸、今しゃべった 苗木の言葉に抗議するように叫ぶ獅子王丸。不意に耳元で呆れたような声が聞こえ ﹁無理に決まってるじゃない⋮⋮⋮﹂ ! ? ? す。猫が匂いをつけるのはマーキング⋮⋮自分の物である印を付ける行為だ。 忌村は苗木の足にスリスリと額をこすりつける獅子王丸を見て驚いたように声を出 ﹁⋮⋮レオンがこんなに懐くなんて⋮⋮﹂ ﹁みゃんみゃみゃぁ﹂ おいでよ動物の国⑥ 644 ﹁へえ、獅子王丸そんな名前なんだ﹂ み込もうと││ ? やっちゃえ ﹂ ! ⋮⋮﹂ ﹁獅子王丸 ﹂ ! ﹁⋮⋮なに、するの⋮⋮ ﹂ 苗木が叫ぶと獅子王丸は忌村の手に体当たりして更に瓶を弾く。 ﹁にゃん ! ﹁大 丈 夫。睡 眠 時 に 起 き る 生 体 活 動 を 起 こ さ せ る 薬 だ か ら、寝 な く て も 健 康 は 保 て る ﹁いやいや絶対体に悪いよねそれ⋮⋮﹂ ﹁栄養補給と、疲れを飛ばす薬を﹂ ﹁待って、何してんの ﹂ 忌村はそう言ってベッドの近くにあった薬瓶から薬をザラザラ手の平に落として飲 ﹁必要ないわ⋮⋮単なる過労⋮⋮⋮栄養とって休めば治る⋮⋮⋮﹂ 苗木は忌村をベッドに寝かせ体温計を探す。薬品だらけの部屋だ。流石薬剤師⋮⋮。 ﹁⋮⋮えっと⋮⋮体温計は⋮⋮⋮﹂ 645 ? ﹁寝てろ⋮⋮お、一応食料はあるんだね﹂ ﹂ あ、吸 苗木にしては珍しく乱暴な言葉遣いにビクリと肩を振るわせる忌村。苗木は備え付 けの冷蔵庫をあさり食材を取り出していく。 ﹁最近、狂犬病にかかる動物が多くて治療に忙しくて⋮⋮﹂ 血鬼伝説のモデルでもあるんだよね ﹁狂犬病って⋮⋮発症したら致死率100%のゾンビウイルスのモデルだっけ ? に随分感情移入する人間だ。命の尊さを誰より知ってるのだろう。 ﹁⋮⋮これは しといた﹂ ﹂ 消化しやすいのに シーツの上で丸くなった獅子王丸の頭を撫で悲しそうな顔をする忌村。たかが動物 ﹁でも⋮⋮レオンの親は、間に合わなかった⋮⋮⋮﹂ 苗木は料理しながら忌村の偉業を素直に賞賛する。が、忌村の顔はどこか浮かない。 ﹁⋮⋮すごいね﹂ ﹁⋮⋮発症したばかりなら、治せる薬を⋮⋮作った⋮⋮﹂ ? ﹁おかゆ。さっきの口振りから、しばらく食事取ってないんでしょ ? ﹁⋮⋮⋮⋮おいし﹂ ? ﹁はい出来た⋮⋮﹂ おいでよ動物の国⑥ 646 一口食べた忌村は目を見開き、次々蓮華で掬っていく。 救えなくなる﹂ ? あ、あ∼⋮⋮うん。平気⋮⋮心配してくれてありがとね、静子おねーちゃん♡﹂ ﹁⋮⋮⋮うん、わかった⋮⋮⋮そういえばアナタ熱は平気なの ? 苗木は満面の笑みで忌村に笑いかけた。 ﹁ん ﹂ ﹁⋮⋮⋮ま、取り敢えず休みなよ。実際気絶してたわけだし。君が倒れたら救える命も は中学生程の忌村と同い年ぐらいの男女。短髪の女子が男と忌村の腕を掴んでいる。 そしてふと、ベッドのそばに立て掛けられている写真立てを見つける。写っているの と、忌村が呟き苗木は首を傾げる。 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮こうやって、甘い物も食べられたら良いのに﹂ よ﹂ ﹁妹が風邪ひいても両親がいないとき作ってたのと同じだけど⋮⋮口にあって何よりだ 647 おいでよ動物の国⑦ 苗木が忌村と別れ数分、ようやく自分が迷子になっているのを思い出した。 苗木、早いな﹂ が、適当に歩いている内に見覚えのある廊下についた。 ﹁⋮⋮⋮む ﹂ ? 無理無理、戦刃さんの修行でも手一杯なのに⋮⋮﹂ ? した。 ﹁少し身体が怠いな。一晩で二年分の記憶を見たので、少し気分も悪い⋮⋮﹂ ? ﹂ まだ朝食のために食堂が開くまで時間もあることだし、苗木は大神についてくことに ﹁⋮⋮⋮⋮それなら良いけど﹂ ﹁何、精神統一だけだ﹂ ﹁え、大神さんの修行に ﹁丁度いい、少し付き合ってくれぬか 部屋に戻ろうとすると丁度そのタイミングで大神が出てくる。 ? ﹁そういえば、大神さん熱は おいでよ動物の国⑦ 648 庭で座禅を組む大神に、その隣で大神を真似て座禅を組んだ苗木が尋ねると大神は素 直に答えてくれる。 ﹂ ﹁⋮⋮そういえばさ、大神さん﹂ ﹁⋮⋮⋮む ﹂ ? ﹁我がまだ未熟で、力に溺れていた頃の話だ。ただ己が力を誇示したいために、多くの道 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ とは、その人物の本質が変わってしまうことだと我は思っている﹂ ﹁ほう⋮⋮良い言葉だな。覚えておくとしよう。では、例に私の考えを教えよう⋮⋮死 いでいる自分がいる限り彼は死なぬ⋮⋮なんて台詞を見つけるから⋮﹂ ﹁んー⋮⋮そうかな。よく漫画で彼は武道家として死んだ⋮⋮とか、彼の教えを引き継 ﹁⋮⋮⋮苗木よ、それは我にとっての死の定義を聞いておるのか 聞きようによってはかなり失礼な質問だが大神はふむ、と真剣に考える。 ? ? ﹁大神さんって人を殺したことはあるの パンチ一発で出来そうだけど⋮⋮﹂ 自分自身を客観的に眺め、自分の周囲に意識を広げていく。 苗木は大神の言うとおり、心を澄み渡らせる。 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁体調は悪くともせめて精神統一はな⋮⋮明鏡止水の心得、これを常に忘れるな﹂ 649 場を回った⋮⋮ケンイチロウに止められたがな。ケンイチロウに諭され、我は目が覚め た。迷惑をかけた道場の謝罪に行ったのだが⋮⋮その内一つの道場の師範は、我との戦 闘の怪我が原因で二度と武を嗜むことが出来なくなってしまった。武を失った彼は、ま るで別人であった⋮⋮なるほど、奴は確かに武道家として死んだのだろうな⋮⋮﹂ ﹂ 大神は空を見上げながら呟く。彼女にとっても恥ずべき事なのだろう。だがそれで も話してくれた⋮⋮。 ﹁しかし、何故この様なことを ﹂ ? る。 む。苗木もつられてその木を見つめるとパチパチと拍手の音とともに1人の男が現れ 苗木が何も言わずにいると話は終わったと判断したのか大神は木の陰をギロリと睨 ﹁⋮⋮さて、ではそろそろ出てきてはどうだ 苗木の言葉に大神は優しげな目で苗木を見つめた。 ﹁⋮⋮⋮そうか﹂ ﹁⋮⋮⋮ボクが江ノ島さんを殺したってことの再確認、かな⋮⋮﹂ ? の下の泣き黒子が特徴的な美青年だった。 木の陰から出てきたのは紫がかった黒髪を短めのウルフカットで整え、タレ目。左目 ﹁我輩の気配に気づくとは、流石超高校級の格闘家と言うところか⋮⋮﹂ おいでよ動物の国⑦ 650 ﹂ ひ と と せ ﹁⋮⋮⋮⋮あ、春夏秋冬先輩だ﹂ ざいます ﹂ ﹂ 我輩の事を覚えていてくださったのですね この春夏秋冬四季、感激でご ﹁苗木よ⋮⋮知り合いなのか ﹁⋮⋮⋮⋮悪化してるし﹂ ! ﹁ああ主君、やはりアナタは我輩が見込んだ通りの男だった。江ノ島盾子に打ち勝ち、世 苗木がそう思うほどウザいのだ⋮⋮。 かった。 の 本 科 の 生 徒 の よ う に 死 ん で い た か も し れ な い。む し ろ 苗 木 に 取 っ て は そ ち ら が よ 学業を疎かにしていた為退学になったが⋮⋮。あの時点で希望ヶ峰学園にいたら他 から崇拝されるようになった。以来、学園では常につきまとわれていた。 希望ヶ峰学園に入学する前に一度だけ公園で会い何の間違いか話を聞いてしまい彼 彼の名は春夏秋冬四季。苗木の二年先輩で、つまり76期生の元超高校級の工作員。 苗木は呆れたように頭を掻く。 ﹁⋮⋮⋮学園時代のストーカー﹂ ? ﹁ああ、主君 苗木は見覚えのある人物の名を呼ぶと男は突然感極まったように破顔する。 ﹁⋮⋮⋮ ! ! ! 651 ﹂ ﹂ 界を平和にするにたる人物だった ﹂ ﹁⋮⋮⋮鬱陶しい ﹁あふ ﹁な、苗木が人を蹴った ! ﹂ ! 主君が、蹴ってくれた ボクの為にワ ! ぬ行動に大神は目を見開いて驚いた。 ﹂ ﹁⋮⋮ふ、ふふ⋮⋮ふひへへ⋮⋮あはは 蹴った ザワザ労力を裂いてくれた ! そして苗木に蹴られた快感が限界を超えたのか気絶した春夏秋冬を見てうんと頷く。 く。 ビクビクと悦に浸っている春夏秋冬に苗木は完全に引いていた。それはもうもの凄 ﹁⋮⋮あー⋮⋮⋮ダメだこりゃ﹂ ! ! 苗木の直ぐ前で跪き顔を上げて苗木を褒め称える春夏秋冬顎を蹴る。苗木らしから !? ! ﹂ ? ﹁⋮⋮⋮そ、そうか﹂ ﹁大丈夫。それ、仮にも超高校級だから丈夫だよ⋮⋮⋮﹂ ﹁い、いいのか ﹁部屋に戻ろっか大神さん。この変態いつ目覚めるかわかんないし﹂ おいでよ動物の国⑦ 652 さて、昼頃になり苗木は鏡を前に包帯に手をかけていた。 いよいよ包帯を取るつもりだ。 ﹂ ? ナー レシピエント ⋮⋮ な ら そ れ は き っ と 絶 ぼ ⋮⋮ し ま っ た、気 持 ち を 知 れ る と ま た 思 っ ? 我ながら難儀な性格だな、と思いながらため息をつき洗面所から出て窓の外を眺め ちゃった﹂ あるのかな ﹁⋮⋮本質の死が本人の死を意味するなら⋮⋮⋮ボクはまだ君に取り殺される可能性が ちなみに記憶転移とは提供者の記憶の一部が受給者に移ることである。 ド 合いの肉親にいても何ら不思議ではない。 薄い瞳の者が生まれることがある。緑は約18%青でも約6%と言われている。知り となっている。薄い者同士の親の間からは濃い瞳の者は生まれないが濃い者同士だと 茶色の瞳はメラニン色素が多い証拠。瞳の色を濃い順にすると大まかに茶色、緑、青 でも話せばごまかせるか⋮⋮⋮そういえば記憶転移はどうなるんだろ ﹁色に疑問もたれたら⋮⋮⋮⋮まあ、劣性遺伝で青い目を持つ日本人もいるし、その話題 いのだろう。青い瞳が鏡に映し出されていた。 何の躊躇もなく包帯を解き左目を露わにする。手術痕はまるでない。腕がよほど良 ﹁ほいっと⋮⋮⋮﹂ 653 る。 ﹂ こ の 位 置 か ら な ら 丁 度 肉 食 の 動 物 達 が 見 え た。左 目 の 視 界 は ま だ ぼ や け て い る が ⋮⋮。 ﹁⋮⋮ん とだ。 ﹃⋮⋮⋮あー、あー、マイクテスッ、マイクテスッ⋮⋮大丈夫 えー、ではでは⋮﹄ 聞こえてるよね ⋮⋮ ? じように感じる。 だが滲み出る濃密な、人が思わず忌避してしまう嫌な気配、絶望の気配はあの時と同 聞き覚えのある台詞に、変声機を使っているのか聞き覚えのない声⋮⋮。 ? ドに戻っただろう。問題はその人物がモノクマを象ったマスクを被っていると言うこ 皺一つ無い白衣をまとった人影が。これだけなら良い。苗木も直ぐに気にせずベッ ふと苗木は別の棟の屋上を見つめ、固まる。そこには人影があった。 ? ポチッとな⋮⋮﹄ お疲れ様です⋮⋮でも、もうお終ーい ぷぷ、最高に絶望的なこーけいを、皆でみよー う ! ! ! 遠目で、モノクマDr.︵苗木命名︶がスイッチらしき物を押す。途端にスプリンク ! ら戦闘員も集めてずーっと守って来たよね ﹃皆さん。今まで、ホントーに頑張ったね こういう場所は、何度も絶望に襲撃されるか おいでよ動物の国⑦ 654 ラーが作動した。 ﹂ だとしたらかなり危険だがどうやらただの水だ。何のつもりだろうか !? 取り敢えず、 人が人を喰らう光景。ゾンビ映画のようなその光景に苗木は顔をひきつらせていた。 ﹁⋮⋮⋮映画だけにしてほしいよ、こういう光景⋮⋮﹂ おり絶望的な光景が広がっていた。 他のメンバーの容体でも見に行こうと扉を開けるとそこにはモノクマDr.の言うと ? ﹁薬品 655 おいでよ動物の国⑧ 扉を開けた苗木に気づいたのか人を噛んでいた1人の男が振り返る。 ﹂ ﹁げ⋮⋮﹂ ﹂ ﹁があぁ ﹁うわ ! ﹂ ! ﹂ しずつ扉の隙間が開いている。と、突然男の首が720 ° でいる者もいる。 苗木が外を除くと凶暴化していた人間が皆殺しにされていた。心臓を撃たれて死ん ﹁うわぉ⋮⋮流石ぁ⋮⋮﹂ ? 、つまり2回転する。 別段力が強いと言うことはない。普通の成人男性の力だ。が、苗木の力より強い。少 ﹁っち⋮⋮力は普通か⋮⋮⋮﹂ ﹁⋮ぎ、ぎ⋮⋮がぁ たが新聞売りのように足を挟み両手で無理矢理開こうとしてくる。 まるでゾンビのような行動をするくせに動きは機敏だ。慌ててドアを閉めようとし ! ﹁苗木君⋮⋮平気 おいでよ動物の国⑧ 656 ﹁⋮⋮流石に本物のゾンビ見たく頭撃たなきゃダメって訳じゃないのね⋮⋮﹂ 苗木は死体を観察しながら呟く。心臓を撃たれずに単純に出血死した者もいる。ゾ ンビ化ではなく、理性を失った状態と言うことだろう。 ﹁まるでヴードゥーのゾンビだね﹂ 現在はアンデットの代名詞とされているゾンビと言う単語。ヴードゥー教における ゾンビとは死者の様に自由意思がない者を指すらしい。昔、動物に世話をする先輩から 教わった。 し、死んでるの ﹂ ﹁おいおい、こりゃ一体何の騒ぎだよ⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮ヒ ? 顔を青くする。 ⋮⋮朝日奈さん 危ない ﹂ ! ﹁⋮⋮い、一体何が起きてるの⋮⋮⋮﹂ ﹁一言で言うと、パンデミック⋮⋮なの、かな ! スプリンクラーの作動と放送で異変を感じたのか、大和田達が出てきて廊下の惨状に ﹁⋮⋮むぅ⋮⋮﹂ !? いかと言うほど口を開け、噛み千切ろうと閉じる⋮⋮が てて朝日奈を押しのけるが朝日奈の後ろの影、男は止まらない。顎がはずれるのではな 朝日奈の言葉に苗木が苦笑しながら応えると、朝日奈の後ろに影が現れる。苗木は慌 ? 657 ﹁残念⋮⋮﹂ 口の中に押し込められたのは苗木の一部ではなく、拳銃だった。 ﹂ ﹂ 戦刃は自分の腰に手を当てると銃が無かった。苗木はそのまま布を使い男の口に銃 ﹁⋮⋮あ、私の⋮⋮﹂ を固定して首に膝を打ち込む。 ﹂ ﹁大神さん、こいつよろしく﹂ ﹁どうする気だ ﹂ ﹁専門家に見せて症状を確かめる。と言うわけで静子おねーちゃん探すよ﹂ ﹁静子⋮⋮﹂ ﹁おねーちゃんだぁ ただ、家族内で孤立してそうだから家族っぽく接してあげてるだけだよ !? ? ﹁忌村さんって苗木のお姉ちゃんなの ﹁別に ? ? 闘、中心を朝日奈と苗木、荷物持ちを大神、後衛を大和田に任せて移動を開始した。 苗木はそう言いながら戦刃に目配せすると戦刃は頷き走り出す。苗木達も戦刃を戦 ? 苗木は渡された拳銃を使い脚を撃ち抜いていく。戦刃の動きの模倣。完璧とは言え ﹁はいこれ、護身用⋮⋮﹂ ﹁なるべく殺さないようにね、治療出来る可能性もあるからね﹂ おいでよ動物の国⑧ 658 ないがスキルとして手に入れている苗木は素人よりは高い命中率を発揮していた。 ﹁⋮⋮⋮えっと⋮⋮多分右﹂ ﹂ ﹂ 葉隠の三割的中率の水晶玉占いを使いながら移動する苗木達。不意にバリケードら 誰かいない しき物を見つけた。 ﹁おーい ? 扉だ、横の扉を使え !? ! 人か ! ﹂ ? !? らしい。負傷者はあまりいない。 そうなんだろ ! と、不意に1人の男が戦刃に近づいていく。 ﹁おい、これはお前の仕業なんだろ ﹁⋮⋮え、違う⋮⋮﹂ ﹂ バリケードの奥には結構な人数の人間がいた。どうやら忌村を中心に集まっている ﹁⋮⋮⋮そう⋮⋮﹂ ﹁感染者。現状の調査に使えるかと思って⋮⋮﹂ ﹁あなた達⋮⋮無事のようね⋮⋮⋮⋮その男は ろう。苗木達は扉を開きバリケードの向こう側に出た。 よくよく見ればバリケードの近くに扉があった。大きめの、二つ扉がある部屋なのだ ﹁⋮ ! 659 ﹁はぁ 適当なこと⋮⋮﹂ ﹂ ? ﹂ ? ﹁貴様こそ⋮⋮我輩はあの放送の前から主君に仕えていた。弁えろ⋮⋮﹂ ﹁下がっていろ、苗木様に報告するのは私だ﹂ をにらみ合う。 苗木が現状を確かめようとすると春夏秋冬と神城が現れ苗木の前にひざまずき、互い ﹁何なりと聞いてください苗木様﹂ ﹁我輩におまかせを﹂ ﹁⋮⋮⋮誰か話してくれない がら苗木は落ち着いて現状を聞けそうな相手を捜す。 苗木の言葉に男は舌打ちして戦刃から離れた。話の分かる相手で何よりだと思いな ばかりの戦刃さんに出来るわけないでしょ ﹁落ちつきなよ。相手は放送設備やスプリンクラーの制御を乗っ取ってる⋮⋮昨日来た !? 2人の話をまとめると、彼等もよく分かっていないということだけが分かった。スプ 2人の態度に苗木は頭を抱えてため息を吐く。 ﹁⋮⋮⋮⋮さっさと話してよ﹂ ﹁﹁おお神よ、なんと慈悲深きお言葉⋮⋮﹂﹂ ﹁⋮⋮⋮情報は多い方がいいからね。2人から聞くことにするよ﹂ おいでよ動物の国⑧ 660 リンクラーの作動の後職員の何名かが凶暴化、周囲の人間を食い始めた。しかもゾンビ 映画のように噛まれた者も凶暴化するらしい。 ﹁数分 数分たったら⋮⋮ ﹂ ? ﹂ ? なら共食いさせれば⋮⋮﹂ ? ﹁一定値以上のウイルスが潜伏すると食べられないと判断されるの⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮ん まるだろう。 それは何とも厄介な病気だ。なるほど、これが世界に広がっていけば世界は絶望に染 ﹁満腹中枢の麻痺、理性の消失⋮⋮目に付く食べられそうな物を喰う廃人になる⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮一部 ﹁脳細胞の一部が壊死して⋮⋮もう戻れない⋮⋮﹂ ? ﹁その辺も改造されてるみたい⋮⋮潜伏期間も短い⋮⋮でも、発症数分なら何とか⋮⋮﹂ ﹁狂犬病って人から人へは移植でしか感染しないんじゃ⋮⋮﹂ と、そこへ忌村が戻ってくる。 ﹁実際、狂犬病を改造したウイルスみたい⋮⋮﹂ ﹁ふぅん⋮⋮まるで狂犬病だね⋮⋮⋮﹂ 遅いようです﹂ ﹁噛まれた場所によって発症する感覚が違うようですか⋮⋮頭と離れた場所ほど発症が 661 ﹁超厄介⋮⋮﹂ ﹁でも⋮⋮一番厄介なのは⋮⋮﹂ 忌村が何かを言い掛けた時、がりがりと何かを削るような音が聞こえてきた。 ﹁⋮⋮⋮え﹂ 音の発生源を見て苗木は固まる。バリケードと天井の隙間から侵入しようとしてい る獅子を見つけた。 ﹁⋮⋮⋮あれって⋮⋮﹂ 獅子はバリケードの一部を突き破って床に着地する。周囲の職員が慌てる中大和田 ﹁感染者⋮⋮﹂ ﹂ 達が臨戦態勢を取り苗木は拳銃のトリガーを引く。 ﹁ぐう ﹂ ﹂ ﹂ ﹁ガアアァァ ﹁避けた ! ! ﹂ 慣性の法則で勢いは消えなかったが逆に利用して床にたたきつけて頭蓋を砕く。 弾 丸 を 避 け た 獅 子 は 苗 木 に 牙 を 向 け る が そ の 前 に 戦 刃 が 眉 間 に ナ イ フ を 突 き 刺 す。 ﹁させない ! !? ﹁おお⋮⋮流石戦刃さん ! おいでよ動物の国⑧ 662 ﹁⋮⋮ 今、誉めてくれた⋮⋮ ! ﹂ !? 戦刃はクルリと踵を返した。 ﹁⋮⋮⋮撤退﹂ 量の獅子、虎、豹が現れる。 戦刃がもっと誉めてもらおうと次の敵を探そうとするとバリケードを突き破って大 ﹁⋮⋮ルル﹂ ﹁ガウゥ⋮﹂ ﹁グルルル﹂ ﹁誉めて⋮⋮くれた、苗木君が私を誉めて⋮⋮誉めて誉めて誉めて誉めて⋮﹂ ﹁え⋮⋮うん。誉めたね⋮﹂ 663 おいでよ動物の国⑨ 後ろを振り向けば数匹の肉食獣が涎を垂らしながら追いかけてくる。元々理性のな あの角を曲がりましょう ﹂ い獣だからか、痛みを感じないくせに銃弾を本能的に避けてかなり鬱陶しい。 ﹁主君 ! ﹂ 文字通り一網打尽にした春夏秋冬に戦刃はパチパチと小さな拍手を送る。 ﹁そういえば、先輩は直接戦闘より罠張るのが得意だった﹂ ﹁⋮⋮おお⋮⋮⋮﹂ イッチを押すと壁と床と天井から鉄製の槍が飛び出し獣達を貫いた。 唐突に春夏秋冬が叫び苗木達は左の通路に曲がる。と、同時に懐から取り出したス ﹁⋮⋮ま、考えてる暇はないか﹂ ! ? 闘より罠が得意らしいが⋮⋮まあ超高校級の工作員なのだし当たり前か⋮⋮。 フェンリルということは相当高い戦闘能力を持っているのだろう。戦刃の話では戦 戦刃はそう言って春夏秋冬を指す。 ﹁⋮この人、元フェンリル⋮⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮先輩 おいでよ動物の国⑨ 664 ﹂ ﹂ ﹁ぐるるる﹂ ﹁がぁぁ ﹁また来た ! ﹂ ! ﹂ ! ﹂ ! 叱ってください⋮⋮﹂ ! ﹁⋮⋮光に驚いたのかな ﹂ を止めた。理由は簡単。獣達が逃げ出したからだ。 苗木がキレかかり、叱られることを期待した春夏秋冬とだったが苗木がピタリと動き ﹁ああすいません ﹁この、役立た││ ﹁しまった、間違えた⋮⋮ ﹁⋮⋮先輩⋮それスタン・グレネード⋮⋮﹂ 同時に周囲が強烈な光に包まれた。 みた戦刃があ、と呟き苗木の視界を塞ぐ。 苗木が不安そうに槍を見ていると春夏秋冬が懐からだし筒状の物を投げる。それを ﹁爆弾で吹き飛ばしてしまいましょう ﹁破られることはないと思うけど⋮⋮﹂ ガリガリ槍に噛みつく。 と、串刺しになった獣の向こうから別の獣がやってくる。串刺しの獣達を食いちぎり ! 665 ? ﹂ ? そうか、そういうことか ﹁支部長の話では脳の一部が壊死して恐怖などを感じないと聞きましたが⋮⋮ ﹁体の反射は残っているんでしょ⋮⋮⋮にしても過剰な⋮っ ﹂ ! ﹂ ! 達を追う。 ﹂ ! ﹁な、何を⋮⋮ ﹂ ﹁発症者、5分の1を5分の4生かすために切り捨てるか、脳細胞を復活させる薬をいず ? ﹁選んで﹂ 苗木が忌村に詰め寄ると忌村はビクッと震える。 ﹁な、なに⋮⋮ ? ﹂ 苗木の言葉に春夏秋冬はビクビク興奮するが苗木は無視して奥に避難している忌村 ﹁あふぅ ﹁男が頬染めないでよ気色悪い﹂ た。 その笑みに戦刃と春夏秋冬はうっとりと頬を染め神城は微笑ましそうに見つめてい 苗木は顎に手を当て考え、ニィと笑みを浮かべる。 ! ﹁静子おねーちゃん おいでよ動物の国⑨ 666 れ開発させると約束して第4支部を封鎖するか﹂ ﹂ ? ﹁⋮うん。選んでくれてありがとう⋮⋮あと、選ばせてごめん﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮わかった﹂ びそうになった忌村はその痛みで平静を取り戻した⋮⋮。 ギリッと忌村の両肩をつかむ苗木の手に力がこもる。一瞬、ならあなたが選んでと叫 てなきゃいけないこんな絶望的な選択肢⋮⋮どっちも選びたくないよ﹂ ﹁甘ったれんな。選べ、もう道は二つしかないんだよ⋮⋮⋮ボクだって、多くの命を見捨 ﹁⋮⋮う⋮⋮けど、皆を救うには⋮⋮﹂ ﹁発症者を増やさずに⋮⋮ ﹁で、でもここに立てこもってれば⋮⋮⋮﹂ どのみち助けられない。むしろここで殺さなければ被害が増える可能性もある。 するだろう。 で、他の場所で薬を作る設備を用意しているうちに、閉鎖した第4支部の発症者は餓死 死すると判断したのは他でもない自分だ。それを治す薬を造るにはここの施設が必要 苗木の言葉に動揺する忌村。しかし強く否定できない。発症者の脳細胞の一部が壊 ﹁そ、そんな⋮⋮ここを封鎖したら、薬なんて⋮⋮﹂ 667 モノクマDr.は屋上から下の光景を眺めていた。 三日、長くて五日も立てこもってれば感染者達は勝手に飢え死にするだろう。だが、 それで終わるはずがない。ここで立てこもれば世界は希望をその程度の存在だと再認 識する。絶望が再び動き出す。 それを理解できないほど、苗木誠は甘くない。少なくともそれがモノクマDr.の苗 木誠に対する評価だった。どれだけ警戒してもまだ足りない。 ﹂ ﹁お、やっぱりここにいた。ま、下手に動いたら自分も食べられちゃうもんね﹂ ﹁ ? 足を見逃さないように見つめ、故に飲まれ始める。 ケラケラと本心の読みとれない笑みを浮かべる苗木。モノクマDr.は一挙手一投 ﹁狂犬病ってさ⋮⋮⋮吸血鬼伝説のモデルなんだよね⋮⋮⋮﹂ 苗木の後ろには大神と戦刃、そして忌村が居た。 ﹁も、モノクマDr.⋮⋮ ﹂ る振り返れば警戒している人物、苗木誠が笑顔で立っていた。 不意に後ろから聞こえてきた声にモノクマDr.はギクリと身を震わせる。恐る恐 !? ﹁ヤッホーモノクマDr.﹂ おいでよ動物の国⑨ 668 ﹁噛まれると感染するのはもちろん、流水⋮⋮じゃなくても水を恐れる恐水症状、そして 瞳孔反射の亢進で光に過剰に反応して日光を避けるようになる⋮⋮﹂ 苗木はそう言って懐中電灯をプラプラふる。 恐水症状って嚥下筋が痙攣する事によって生じる痛みのせいだ ? ま、私程度にやられるようじゃ困るんだよね⋮⋮ ! ﹁レオン ﹂ ! ﹂ ﹁獅子王丸 覚えがありすぎる子獅子だった。 そう言ってケースから首根っこを掴んで取り出したのは子獅子。苗木や忌村には見 け物になっちゃうよ∼﹂ ﹁負けて悪いんだけど、逃げさせてもらうよ。見逃さなければ、この子が見るも無惨な化 苗木はそんなモノクマDr.を眺めながら足元のケースに気づく。 苗木の言葉にゲラゲラ笑うモノクマDr.。 君は仮にも江ノ島盾子を倒したんだし⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮うぷぷ⋮⋮正解⋮⋮大正解 みたいだね⋮⋮と、静子おねーちゃんから聞いたけど⋮⋮﹂ から痛みを感じないなら起きないし⋮⋮でも、光に反応するところは変えられなかった 判断させる為でしょ ﹁スプリンクラーを作動させたのは、通常の狂犬病で現れる恐水症状なんかがないって 669 ! ﹁そう、この獅子お⋮⋮あれ、レオ⋮⋮⋮どっち ま、まあいいや⋮⋮この子に注射をブ スッと行かれたくないなら私を見逃してね﹂ 見て目を見開いた。 ﹂ そう言って一本の注射機を獅子王丸に近づけるモノクマDr.。忌村はその注射機を !? さ、そこをどいて ﹂ そう、これは忌村支部長のドーピング薬の原液、それに私特性恐化病ウイ ﹁それは⋮⋮私の⋮⋮⋮ ルスも入ってまーす ? ﹁さっすがー ! ? ! ﹁外に逃げたフリしてもこの支部に君の居場所なんかないよ⋮⋮⋮薬師寺さん﹂ ﹁あの∼⋮⋮こっちには人質⋮じゃなくて獅子質が居るんだけど⋮⋮⋮﹂ 苗木は拳銃片手にはぁ、と呟く。 ﹁外したか⋮⋮﹂ ﹂ り物の右耳が吹き飛んだ。 モノクマDr.が喋っている途中、パン という発砲音と同時にモノクマDr.の被 ﹁安心しなよ。ウイルスはここで使ったので最後、作れる設備も他に⋮⋮﹂ ング薬の原液、それに今回のウイルス。凶暴化した獅子王丸と戦闘をする事になる。 その言葉に忌村はギリッと歯軋りする。嘗てチワワを巨大化させた事もあるドーピ ! ! ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮え おいでよ動物の国⑨ 670 苗木の言葉にピタリと周囲の人間が固まる。モノクマDr.もだ。 さすがだねぇ⋮⋮﹂ ! ﹂ ? ﹁改めまして。超高校級の絶望薬師寺薬師。仲良くしてね♪﹂ の顔があった。 モノクマDr.はそう言ってマスクを外した。マスクの下には、眼鏡を取った薬師寺 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮またまた大正解 ちゃんを除けば君だけ、ウイルスも予防接種と嘯いて入れたのかな 瞬間を調整されて潜伏していたと考えるべきだ。こんなことを出来るのは静子おねー スプリンクラーの作動⋮⋮スプリンクラー自体がフェイクな以上、ウイルスは発症する ﹁隠しても無駄だよ。ボクには分かるんだ。ま、証拠を言ってあげるとすると放送設備、 671 おいでよ動物の国⑩ ﹁⋮⋮ど、どう⋮⋮して⋮⋮ ﹂﹂ ﹂ ? 師匠と再会して、師匠に未来機関に誘われた時から ? !? 方なのだろう。 ちょ、タンマ、あんたそれでも正義の味方 ! 苗木はそんな薬師寺に向かって⋮⋮無言で銃を撃った。 ! めうっとりと苗木を見つめる。 暗に脳を撃ち抜くと言われ、普通なら顔を青くするところだが絶望たる彼女は頬を染 クも、獅子王丸に人の脳の味覚えさせたくないし⋮⋮﹂ ﹁馬鹿だね、正義の味方は人の味方じゃないんだよ。それより獅子王丸を返してよ。ボ 危な ﹂ 何時もの訛った喋り方とは違う標準語がスラスラと紡がれる。こちらが本来の喋り 私はこの計画を思いついてました。ま、苗木誠が紛れたのは運がなかったとしか⋮﹂ ﹁ん∼そうですね⋮⋮⋮最初から ﹁どうしてアナタが⋮⋮何時、から⋮⋮﹂ 絞り出すような忌村の言葉に苗木と薬師寺は同時に振り返った。 ﹁﹁ん ? ﹁うわひゃあ おいでよ動物の国⑩ 672 ﹁さすがさすが⋮⋮⋮江ノ島様が惚れるわけね⋮⋮で・も⋮⋮ここで殺されるわけには ﹂ 行かないないのよね、来るべき修学旅行に参加したいし⋮⋮﹂ ﹁修学旅行 ﹁な ﹂ ﹂ ﹂ 出し、他の面々も動く物に視線を集めてしまう。と、同時に薬師寺が屋上から飛び降り そんな状態で投げられてはたまったものではないだろう。苗木と忌村が慌てて駆け 獅子王丸は先程から何の抵抗も見せなかった、つまり意識がない状態だった。 ﹁危ない ﹂ 薬師寺はそう言って獅子王丸を⋮⋮放り投げた。 ﹁うわぁ⋮⋮⋮ん∼、魅力的なお誘いだけど、遠慮しとく⋮⋮よ ? ! !? ! がいい ﹁今すぐネタバレするのと爪を剥がされ目に塩酸をかけられた上で自白するの、どっち め息をつく。 何らかの計画に関する情報なのだろう。苗木はグリップで頭をガリガリ掻きながらた 苗木が首を傾げると慌てて口を閉じる薬師寺。時期が来たら、と言い掛けたことから たら⋮⋮と、ネタバレはここまで⋮﹂ ﹁私も詳しくは知らないの⋮⋮絶望の誰かが、手紙を寄越しただけだしね⋮⋮時期が来 ? 673 た。 ﹁させぬ ﹂ まったね∼♪﹂ ! ﹂ ! ⋮⋮っく⋮⋮﹂ ﹁ま、まって 丸を見事にキャッチした苗木がそんな薬師寺に向かって銃を放とうとするが│││ 薬師寺は片手で巨大な鳥の足首に捕まり空いてる手でバイバイと手を振る。獅子王 ﹁恐化病ウイルスっていうのは嘘でした そして大神の目の前を黒い影が通り過ぎた。 を投げたことにより身をそらしてしまう。 自殺を図ったと判断した大神が慌てて丸太のような腕を伸ばす。が、薬師寺が注射機 ! に行こっか⋮⋮﹂ ⋮⋮それも多分ここの設備があってこそだろうし ⋮⋮今は追い出せただけでも御の字にしとくか⋮⋮じゃ、残りのゾンビ擬きどもの殲滅 ? ハッと苗木から離れて落ち込む。 して副支部長にしていたのだ、割り切れなかったのだろう。反射的な行動だったらしく その腕を忌村が掴み、その隙に薬師寺は射程外に出てしまった。忌村は薬師寺を信頼 ﹁わ ! ﹁⋮⋮⋮ま、恐化病ウイルスだっけ おいでよ動物の国⑩ 674 森の中、とは言え既に朽ちた木だらけの不気味な森に抹茶色の髪をした女性が歩く。 その数歩後ろにはグジュグジュと音を立て腐っていく巨大な鳥の死体があった。 ﹂ ! ﹂ ? が、怪しい薬でクリーチャーへと変貌し死に至る⋮⋮ああ なんと絶望的なのだ ﹂ ! 恍惚とした表情で今度は直接注射機を刺そうと男に迫る薬師寺。が、男は薬師寺の手 ﹁だよね、大切な存在が死んじゃうのって⋮⋮想像するだけで絶望的ぃ⋮﹂ わりにする。蛇はビクビクと痙攣した後動かなくなった。 と、男が大声を上げながら両手を広げた瞬間注射機が飛び、男が蛇の首をつかみ盾代 ! ﹁確かに故奴は、俺にとって家族のような存在だった⋮⋮雛から見守ってきた⋮⋮それ ﹁鳥を貸してくれてありがと。でも、殺しちゃってよかったの 不意に聞こえてきた声に振り向けば蛇を体に巻いた怪しげな男が立っていた。 ならともかく﹂ ﹁いやいやいや、死者蘇生なんて出来るわけないじゃん。死んだばかりで外傷が少ない に住まいし神さえ冒涜する死者復活のウイルスを生み出せるほど ﹁仮にも超高校級と呼ばれる能力だ、だが貴様は薬以外の能力で奴を上回る。そう、天界 ﹁やっぱり師匠には適わないな∼、改良しようとしても改悪になっちゃったよ⋮⋮﹂ 675 首をつかみ受け止めると力を込めて握り薬師寺が苦痛から注射機を落とすと中の液体 が飛び散り草や蛇の死体を溶かした。 ﹁面倒をかけさせるな、あの手紙に時が来るまで数を保てと言われたろ⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮ま、それもそっか⋮⋮真なる絶望の為に今は我慢するよ⋮⋮﹂ ﹁しかし、あれほど成功させると息巻いた結果がこれか、絶望的だな﹂ ﹁まあね⋮⋮優しい師匠なら、三日は迷って苦渋のすえゾンビ擬きの殲滅を選ぶ⋮⋮師 匠は晴れて英雄の仲間入り、けど心優しい師匠が人を殺した事実から立ち直るかは五分 五分ってのが私の目的だったんだけど⋮⋮﹂ それを苗木誠に邪魔された。苦渋のすえではあるが確かな覚悟を持って選ばされた。 高い確率で立ち直れるだろう。ま、英雄の名声は苗木誠につくだろうが⋮。 ﹁では行くぞ、修学旅行とやらに参加するためにも、捕まるわけにはいかんからな﹂ ﹂ ! ンを投与⋮⋮。無事な者が怪我をした者の治療や料理にあたり、動物達も大半は処分す ゾンビ擬き化した者達は残らず排除され治療が可能な者だけすぐさま忌村のワクチ 第4支部の立て直し。 ﹁OK∼。このままランデブーしよう おいでよ動物の国⑩ 676 ることになってしまったがそれでも多くの命を管理区に戻すことが出来た。 ﹂ と振り返る。 苗木は空き缶片手にその光景を青と緑の双眸で見下ろしていた。 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮苗木君 戦刃が話しかけると苗木はん ﹂ ! ぶってんの ⋮はぁ⋮⋮っう⋮⋮﹂ それとも単純に行動を先読みできる知能がないの ﹁んあ⋮⋮ご、ごめ⋮あ ﹂ ? ﹂ ? グリグリと尻を踏まれ頬を染める戦刃。苗木はしかし直ぐに飽きて離れる。 ! ? ﹁何 で 戦 刃 さ ん が 知 ら な い の。あ れ か、盾 子 ち ゃ ん に 頼 ま れ て や っ た だ け っ て 被 害 者 ﹁っ⋮⋮あ⋮かっ⋮⋮⋮ 苗木は無言で戦刃の腹を殴った。ご丁寧に空き缶をねじ込むように⋮⋮ ﹁⋮⋮えっ⋮⋮と、覚えてない⋮⋮です⋮⋮﹂ ﹁ねえ戦刃さん。未来機関に潜入している可能性がある絶望は、何人いる そう言って立ち上がると戦刃の横を通り過ぎ屋内に戻る。戦刃も慌ててついてくる、 んのやだし﹂ ﹁ん、いや⋮⋮外の絶望とやらを見てただけだよ。お前は何も知らない、とか悪口言われ ﹁あ、えっと⋮⋮どうしたのかなって⋮⋮﹂ ? ? 677 ﹁江 ノ 島 さ ん の 真 似 し て も 江 ノ 島 さ ん の 気 持 ち が 分 か る 訳 な い か。ご め ん ね 戦 刃 さ ん ⋮﹂ 苗木は戦刃を見ながら大丈夫じゃないな、色々手遅れだと思いながら廊下を歩く。 ﹁だ、大丈夫⋮⋮﹂ 未来機関内部に絶望が混じっていた。近いうちに支部長同士の会議があることだろ う。そして、世間体と苗木誠自身の見極めのために呼ばれる可能性が高いと分析してい る。 ま、どちらかに傾いた ? かべた。 関の幹部の集いに絶望の残党は動くのか、ワクワクしてきた。苗木は人知れず笑みを浮 さてはて、未来機関を実質取り仕切っている宗方はどんな手を使ってくるか、未来機 世界は作れるけど⋮⋮﹂ 世界も作れるはずないって⋮⋮何で誰も気づかないんだろうね ﹁どうせなら泳がせてみるか、未来機関も絶望も⋮⋮てか、絶望だけの世界も希望だけの おいでよ動物の国⑩ 678 閑話⑦ ド 記憶転移と言う言葉がある。 ナー レシピエント 臓器移植などを行った時、提供者の記憶の一部が受給者に移ると言う現象だ。科学的 根拠は存在しない。 ﹂ ! ﹁ふう⋮⋮そろそろ休憩しよっか﹂ 多く、男達は自分の腕と二人の腕を見比べた。 朝日奈も戦刃ほどではないにしろかなりの量の荷物を運んでいた。周囲の男達より ﹁あ、戦刃ちゃん、それこっち 戦刃は現在大量の荷物を両手に走り回っていた。 そして可愛らしい顔で笑みを浮かべ、寝間着のまま部屋から飛び出した。 ﹁⋮⋮⋮⋮ふぅん。面白いことなってんじゃん♪﹂ ﹃彼女﹄はムクリと上体を起こしパチパチ瞬きすると洗面所に向かい顔を確認する。 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ 679 ﹁⋮⋮⋮ん﹂ 戦刃はドズンと荷物を下ろし朝日奈から渡されたペットボトルの中身を飲む。さて、 何故こうなっているかというと⋮⋮三日前、絶望の残党によるパンデミックの後壊れた 箇所の修繕、薬品を大量に使った為薬品倉庫の整理、動物保護区の管理、恐化病ウイル ス潜伏の確認etc.etc.⋮⋮職員達は大忙し、忌村は反省を形で示したいとテレ ビで戦刃が言っていたことを思い出し手伝いをさせていた。 ﹂ ﹂ 最初は良い顔をしなかった者も、しっかり働く戦刃に気を許し始めていた。 ﹁ありゃ ﹁⋮⋮どうしたの ﹂ ? その可能性は十分ある。故に、二人は大して気にとめず作業を再開した⋮⋮。 誰かが記入し忘れたのかな ﹁⋮⋮うん、なんか⋮⋮在庫が足りないの⋮⋮未来機関の女性用の制服なんだけど⋮⋮ 朝日奈はドーナツを食べながら首を傾げる。 ? ? ど、沢山あり紛らわしい。と、その時⋮⋮ 朝日奈と別れ、戦刃は薬品倉庫の薬品棚の整理をしていた。ラベルの色や薬の名前な ﹁えっと⋮⋮これは⋮⋮⋮﹂ 閑話⑦ 680 ﹁おねーちゃん♡﹂ ドドドド⋮⋮⋮ゴシャア ﹁苗木⋮君⋮⋮⋮ る。 ﹂ と、助走をつけ跳び、勢いそのまま何者かに蹴られた。長 緑の瞳は見下すように、呆れるように戦刃を見つめ顔はニヤニヤと笑みを浮かべてい せる完璧なメイク。髪の色と合わせたウィッグは肩甲骨あたりまで延びている。青と ブカブカの未来機関の制服を着崩し、軽く施された化粧は彼女の可愛らしさを際立た がら振り返ると見覚えのない少女がいた。 彼女が最も愛している男の声で、彼女が最も愛している女のような喋り方、混乱しな 戦刃は床を何度かバウンドし、ズザザと滑りながら漸く止まる。 年の経験からとっさに体に力を入れなければ背骨が折れていたかもしれない。 ! ﹁はぁ お姉ちゃんマジで気づかないわけ ﹂ ﹂ かなり似合ってるし⋮ ? の も の だ っ た。何 が 起 き て い る の だ ろ う 一粒で二度美味しいというあれだろうか 戦刃の言葉に苗木はニヒッと歯を見せ笑う。それは戦刃がよく知る彼女の笑い方そ ﹁⋮え、あれ⋮⋮盾子⋮⋮ちゃん⋮⋮なの ? ? ? を持っているのは彼だけのはずだ。しかし何故女装を 何時もの五倍増しで可愛らしくなっているが現状第4支部でこのような特徴的な瞳 ? ? 681 ⋮⋮。 ﹁なんかくっだらねーこと考えてんだろお前﹂ ﹂ ⋮⋮げほ ﹂ ! ﹂ 江ノ島はベンチ座りながら目の前で正座する戦刃を見つめる。 場所は代わり屋上。 江ノ島は戦刃の髪を掴み無理矢理目を合わせさせる。戦刃はコクリとうなずいた。 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ そうよ、むくろお姉ちゃん♡﹂ ﹁おっほ∼、あたしってばツイてる∼⋮⋮⋮ま、いいや。久し振りにちょ∼っと二人で話 ﹁げえ の先端が肋の下から肺にめり込む。 江ノ島は不機嫌そうな顔になり戦刃の腹あたりを蹴ろうとし、戦刃に取って運悪く靴 ﹁あう ! ! ? 苗木は何時の間にか眼鏡をかけ何処からか出てきたホワイトボードに絵を描く。 ﹁そうだね∼⋮⋮じゃ、まずはそっから│││説明します﹂ ﹁あ、あの⋮⋮これって⋮⋮何がどうなってるの 閑話⑦ 682 ﹁今回の現象は所謂記憶転移、完全にオカルト部門の現象です。臓器移植をした際に、元 の持ち主の記憶が患者に宿ることがあるそうです﹂ ホワイトボードに白い人間を描き、その周りを黒いオーラで覆う。まるで悪霊にとり つかれたような絵だ。 テメェこの野郎 何さらっとネタバレしそうになってんだ !? ﹁⋮⋮ ﹂ ﹁えっとね⋮⋮ ﹁罪悪感から、ドナーの命は自分の中で残ってるって⋮⋮考えたりするそうです⋮⋮私 苗木に限ってそれは有り得なそうだ⋮⋮。 ? ? ? にストレスがかかるじゃない∼ それで心理に影響が出るとか∼﹂ 記憶転移って、色んな説があるんだ∼。例えば∼移植手術って精神的 ﹁まあ私様が真の私様なのかは、残念ながら私様にも解らないがね⋮⋮﹂ 抱えて今度は何処からか王冠を取り出す。 思い切り顎を蹴られ倒れる戦刃。江ノ島ははぁ、と呆れたようにため息をつくと頭を ! あ、てことは今盾子ちゃんは│││﹂ ﹂ 死 ぬ か、 ﹁えっと⋮⋮じゃあ今の盾子ちゃんは盾子ちゃんの左目に宿ってた盾子ちゃんなの⋮ あぁ ﹁は い ど ー ん ! ﹁ご、ごめんなさい⋮⋮⋮﹂ !? ? 683 ﹂ なんかの為に、苗木君が傷ついているんです⋮⋮﹂ ﹁えっと⋮⋮ ﹂ 的に作られた人格なんだろうけどね﹂ ﹁な、なんで分かるの ﹁だって松田くんとの記憶がないもん、これは流石におかしいっしょ、元恋人だよ ? ? ﹁でも⋮⋮何で苗木君は盾子ちゃんを⋮⋮﹂ ﹂ どうせあたしは苗木が記憶の中にあるあたしを思い出して観察しようとした結果一時 ﹁そうだね∼⋮⋮この体でもう一度世界を絶望で満たすのも良いかも⋮⋮⋮な∼んて、 江ノ島がガリガリと頭を掻くと戦刃はしょぼんと落ち込む。 ﹁だからややこしくて困ってんでしょー⋮⋮はぁ、全く⋮⋮﹂ ﹁でも盾子ちゃん飽きっぽいから⋮⋮昔のこと覚えないかも⋮⋮﹂ からだし⋮⋮﹂ 島盾子ににた人格の可能性もあるんだよ。実際、ボクの記憶は苗木くんとあったところ ﹁はぁ、本当に君はバカデブスだなぁ。ようするに、このボクは苗木誠が生み出した江ノ ? 観察すんじゃん だからあたしの持ってた才能を手に入れようと で、結果的にアイドルの美声だの野球球児の剛腕だの探偵の観察眼だ ﹁ほら苗木って仲良くなった相手に喜んでもらおうと何をすれば喜ぶのか考えるために ? の色んな才能手に入れてる訳じゃん ? 閑話⑦ 684 してるんしょ、たぶんだけど⋮⋮⋮﹂ ﹂ 江ノ島はそう言うとクァとあくびした。 ﹁あ、あの⋮⋮何で私に会いに来たの ね ﹃精々今を頑張りなよ どうせお姉ちゃんが殺してきた人が生き返るわけでもない ﹁ああ、忘れるところだった⋮⋮この台詞は苗木が考えた台詞なのかもだけど言っとく ? 685 ? 服装は寝間着だ、何故かボタンがずれている。寝ながらボタンの位置を入れ替えた いやいやバカな、一昨日寝ぼけていたんだろうと洗面所に向かい固まる⋮⋮ か 朝、苗木が起きると翌日ではなく翌々日だった。昨日はまさか丸一日寝てたのだろう 茶にする行為を頑張れと⋮⋮ 妹から頑張れと声援。きっと妹なら言うだろう、形だけの応援を、どうせ後で無茶苦 江ノ島はそう言うと屋上から出て行ったしまった。 んな所かな、じゃ、あたしもう寝るわ⋮⋮﹂ ど、人生最大の絶望味わえるまで生きてもがいて足掻いて醜態をさらしてね⋮⋮﹄と、こ し、自分達だって誰かを殺した事のある連中に人殺しと罵られることもあるだろうけ ? ? ﹁⋮⋮⋮何これ﹂ ? 閑話⑦ 686 何故か自分の顔は化粧されていた。昨日一体何があった た。 思い出そうとしても夢の 中で二年間、江ノ島と過ごしていた瞬間の記憶を夢見ていたことしか思い出せなかっ ? 機械少女は希望の夢を見るか① 苗木達が第4支部に来て一週間。 漸く職員が実務に戻れるぐらいは落ち着いてきて、苗木達も第14支部に戻ることに なった。 血液サンプルが盗まれていたことが分かったのだ。超高校級の医学者である薬師寺な 忌村が心配そうに言うのは訳がある。騒動の後在庫などを調べているうちに苗木の ﹁⋮⋮はい⋮⋮⋮﹂ ﹁苗木君⋮⋮体に異変を感じたら、すぐウチにきてね﹂ ﹁うえ⋮⋮まだ頭の中がグラグラする⋮⋮良くこんな感覚に慣れたなあの女⋮⋮⋮﹂ 酷使しすぎたらしい。 をしていなかった苗木は現在熱を出して先に車に乗っている。本人曰く脳をいきなり 朝日奈や戦刃はもちろん、大和田や大神も手伝えることは手伝っていた。唯一手伝い ﹁大和田の言うとおり、感謝されるほどの事ではない﹂ ﹁いいってことよ、どうせ暇だったしな﹂ ﹁いろいろ手伝ってくれて、ありがとう⋮⋮﹂ 687 ら血液から特定の遺伝子にしか効かないウイルスを作ることも可能だそうだ。逆もま たしかりだが⋮⋮。 ドーナツ食べる ﹂ そして神城の運転する車に全員が乗り込み発車した⋮⋮⋮。 ﹁大丈夫 ? ﹁にしても何でおめえ熱出したんだ ﹁そうだったんだ⋮⋮﹂ 知恵熱が人より遅くかかったのか ﹁知恵熱はかかるもんじゃないよ⋮⋮⋮﹂ ? ﹁マジか⋮⋮﹂ ﹁ほう⋮⋮﹂ ? うと判断したのだ⋮⋮。 苗木ははぁ、とため息をつくと目をつぶった。脳を完全に休めた方が回復も早いだろ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹂ て手を引っこ抜いたが流石に病人は叩けず振り上げた手は数秒空をさまよった。 苗木は朝日奈から差し出されたドーナツを指ごと口に含む。朝日奈は真っ赤になっ ﹁食べる﹂ ? ﹁知らなかった﹂ 機械少女は希望の夢を見るか① 688 旗印というのは、かなり高い影響力がある。 黄天の為に国に逆らった黄巾党、聖女と言われるジャンヌに付き従った兵士達⋮⋮国 に逆らう、特別な存在、そんな普通とは違い、異質でありながら民意の体言者は特に優 れた旗印となる。 すつもりの捧我と苗木誠が流れを掌握することを危険視する宗方。 二人の会話は平行している。どちらも目的は絶望の殲滅、そのために多少の危険を犯 ﹁それはわかっている。だが、その流れを苗木誠に取らせるのが危険なんだ﹂ さんでも止められない流れとなる︼ くなっているが絶望を恨む者は絶えない。早い内に苗木誠を象徴とすればもはや天願 ︻だがその爆弾の力を求めて人は集まる。前回、戦刃むくろの放送で減って、もしくは緩 ﹁⋮⋮⋮苗木誠は身の内の爆弾になる﹂ 紙がもったいないからだ。 応える。元々は執筆でコミュニケーションを取っていたが現在はPDAを使っている。 宗方の言葉に帽子を深くかぶった男、超高校級のスタッフ捧我渉はPDAを操作して ︻苗木誠君は束縛するのではなく引き入れるべき⋮⋮と、我は言いたいのだよ︼ ﹁つまり、何が言いたい⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ 689 ︻そんなにかな 確かに苗木君は放送でみる限りかなり頭のいい子だけど、超高校級の 気配が勘違いだったと思うほど⋮⋮。 ! その時苗木君を呼んでみよう︼ ? いていたのだろうか ︻じゃ、準備は我がしておくけど、場所はどうする ︼ ? ? 呼ばなくとも言い訳は通ったのだがついていない⋮⋮。いや、ある意味苗木に取ってつ 全く絶望の残党も余計なことをしてくれた。苗木誠がせめて第4支部に居なければ 誠が呼ばれなかったと信者どもが知ったらどうなるか⋮⋮﹂ ﹁どの道呼ぶしかないだろう、支部長会談は未来機関の総意を決める会談だ、そこに苗木 事で各支部長を集めるだろ 第4支部に絶望の残党が潜んでいた しかも恐ろしいのはその気配は話を切る頃には消えていたことだ。それこそ奇妙な 話を終わらせたのはあれ以上苗木の側に居たくなかったからだ。 こちらの全てを見透かすようにこちらを見る目に、飲まれかけた。正直言うと宗方が 宗方は苗木と出会った時を思い出す。 生の枠に入っていたのか⋮⋮⋮﹂ ﹁全く、世間は何を見てきたのか⋮⋮あれの何処が特出した才能を持たない平凡な高校 才能を持たなかったからこその幸運枠だけど⋮⋮︼ ? ︻我は見たわけでないからわからんね⋮⋮そうだ 機械少女は希望の夢を見るか① 690 ︼ ﹁⋮⋮⋮ 第 6 支 部 だ ⋮⋮ あ そ こ な ら 仮 に 支 部 長 に 絶 望 の 残 党 が 紛 れ て い て も 対 処 で き る﹂ ︻⋮⋮⋮逆蔵君は ﹁⋮⋮ん⋮⋮﹂ ﹁美味しいですか苗木君 ﹂ ちなみに使用したスプーンとタオルは舞園がいただいたりして⋮⋮⋮。 ぶご満悦のようだ。 一週間苗木に会えなかった舞園は看病にかっこつけて苗木の汗拭いたり出来てだい いた。 そんな苗木に舞園はすりおろした林檎を食べさせる。現在、舞園は苗木の看病をして ﹁あ∼ん⋮⋮あむ﹂ ﹁はい苗木君、あ∼ん♡﹂ 苗木は氷の入ったビニール袋を頭に乗せるという古典的な方法で熱を冷ます。 ︻そうか、わかった⋮⋮⋮じゃ、我は仕事に移るとするよ⋮︼ ﹁あいつは高校時代からのつき合いだぞ、あいつらの事は俺が良く知っている﹂ ? 691 ? 苗木はボーッとした頭で舞園の質問に応えながらふわぁ、と欠伸する。眠くなったの だろう。舞園はそっとシーツをかけてあげる。 正直弱っている苗木はかなりレアなので写真に収めたいが、流石に迷惑になるだろう と思い名残惜しいが自重した。 舞園はそう言うと部屋から出て行き、残された苗木は天井を見つめた。戦刃から聞い ﹁それじゃ、早くよくなってくださいね⋮⋮﹂ た江ノ島の分析力⋮⋮。 自分が何気に人の才能を覚えていることに気づいた苗木はなんとか使えないかと二 年間江ノ島と過ごしていた記憶をなんとか探り、取り敢えず覚えることが出来たのだが 早速使ってみたら知恵熱を出してしまった。 苗木は分析の結果出た未来予想が当たると良いなと願いながら眠りについた。 り仲良く出来そうな支部長探してみるか⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮第6支部ねぇ⋮⋮⋮内部犯による事件は起きないと思うけど⋮⋮⋮ま、それよ 機械少女は希望の夢を見るか① 692 機械少女は希望の夢を見るか② 花美桜花は未来機関から差し出された手紙を読み頭を抱える。 第4支部で起きた騒動は既に花美の耳にも入っている。召集があるのも予想してい た。だが、よりによって苗木を連れてこいとは⋮⋮⋮ ようはお前が信用している者が信用に値するか、こちらで判断すると言われているの ﹁佐々苗、取り敢えずお前がついてこい、信用できる者同伴となっているからな⋮⋮﹂ とは言え、上からの命令に逆らえるほどの発言権も持っていない。 ることなら見せたくない。 大人達の⋮⋮というかこの絶望的な世界で生きてきた者達の腹のさぐり合いは出来 ﹁⋮⋮が、そういう訳にも行かないんだよなぁ﹂ 花美は苗木を参加させたくない。 した事実があるだけでも世間はその会議を重要視するだろう⋮⋮⋮が、出来ることなら 未来機関の一員だと世間に思わせるためだろう。苗木に発言させなくとも、苗木が参加 いや、考えていることはわかる。重要な会議だからこそ苗木を参加させて、苗木誠は ﹁上は何を考えているんだ﹂ 693 だが。観能は広報活動で手が放せないだろうから、もう1人信用に値する佐々苗を連れ 苗木先輩に伝えてきますね ﹂ て行くことにした。苗木と年も近いというのもあるが⋮⋮。 ﹁りょーかいです ! 才能だ。 ﹂ !? ⋮⋮⋮何これ が、不思議と彼女は信用できる。あの明るい性格のおかげだろう、人に好かれる立派な 佐々苗は満面の笑みを浮かべて元気な返事をした。まだ第14支部に来たばかりだ ﹁ああ、頼む⋮⋮﹂ ! ! ﹁⋮⋮ん ああ、佐々苗さん。どうしたの ﹂ ? 苗木は何時ものように微笑む。 苗木は本の山から降りると佐々苗の前まで歩いてくる。青と緑の瞳が佐々苗を映し ﹁最近頭がすっきりしてね。今ならいろいろ覚えられそうだったから勉強をね⋮⋮﹂ ﹁こ、この本の山は一体⋮⋮﹂ ? 本は格闘技指南から物理学、生物図鑑に翻訳など様々な部類に分かれている。 佐 々 苗 が 勢 い よ く 苗 木 の 部 屋 の 扉 を 開 け る と 大 量 の 本 の 山 の 上 に 座 る 苗 木 が い た。 ﹁苗木せんぱーい 機械少女は希望の夢を見るか② 694 ﹁それで、何か用 ﹂ ? ﹂ ! ﹂ ! ﹂ !? ﹂ !? ﹂ ? 佐々苗が苗木に誰を連れて行くか訪ねた瞬間どこからともなく舞園が現れる。どっ ﹁ひ ﹁もちろん私ですよね ﹁ところで苗木先輩は誰を連れて行くんですか 苗木と同じ幸運枠だが、苗木より優れた幸運らしい。 ﹁まあ超高校級の幸運予定でしたからね ﹁⋮⋮ふぅん、佐々苗さん、ついてるんだね﹂ ﹁観能さんは仕事が入ったらしくて⋮⋮﹂ ﹁意外だね、観能さんじゃないんだ⋮⋮﹂ てっきり副支部長である観能が付き添いになるかと思っていたが⋮⋮。 ドヤッと無い胸を張る佐々苗に苗木はへぇ、と今度は興味深そうに反応する。 私を連れて行ってくれます ﹁あ、それと信用できる者を1人連れてきてほしいそうです⋮⋮ちなみに、花美支部長は 苗木は興味なさそうに流す。 ﹁⋮⋮⋮⋮ふぅん﹂ ﹁あ、はい⋮⋮実は今度の支部長会談に苗木先輩も召集がかけられてて⋮⋮﹂ 695 から現れどこで聞いていたのだろう。 ﹁苗木君が一番信頼しているのは私ですよね ﹂ 苗木の言葉に舞園はピキリと固まる。よほど苗木と行きたかったのだろう。なにせ、 ﹁⋮⋮⋮⋮え﹂ ﹁舞園さんは何かあったら危ないから留守番してて﹂ ! 無事帰れたら存在殺人について教えてあげるから﹂ 苗木に選ばれれば他の奴らよりリードしているという事なのだから⋮⋮。 ﹁聖原くん、お願いできる ﹂ ? た。 ﹂ 夜になり、苗木の部屋には聖原と苗木と戦刃の3人がダイヤモンドゲームをしてい 舞園は暫く聖原を睨んだが男なら良いかと諦め大人しく部屋から出て行った。 ! ﹂ ﹁この聖原、先生の御身を守るために粉骨砕身でお供します ﹂ ! ﹁はい ? 苗木の言葉にクローゼットから聖原がものすごい笑顔で出てきて。 ﹁よろこんで ! ﹁守りたいのはボクじゃなくてボクの存在殺人の知識でしょ 機械少女は希望の夢を見るか② 696 既に苗木がリードしている。 ﹂ ? 信用してるから苗木君はアナタを選んだんじゃ⋮⋮﹂ ? の責任になる﹂ ? ﹂ ? だ。 苗木の言葉にションボリ落ち込む戦刃。苗木が頭を撫でてやると嬉しそうに微笑ん ﹁戦刃さんこういうゲーム弱いね⋮⋮﹂ ﹁そりゃそんな先を見ない置き方をすればな﹂ ﹁私の負け⋮⋮⋮﹂ そう言って聖原も上がった。残ったのは戦刃1人⋮⋮⋮。 ﹁いまだ出会えてませんがね⋮⋮﹂ もかな ﹁信用してるよ、殺人方法を知るためなら君は何でもするって⋮⋮ああ、引きこもり仲間 に居るのだ、上司は普段話す相手を覚えるだけで十分だったのだろう。 苗木は1抜けしながら呆れたように言う。聖原は猟奇殺人鬼に会うために第6支部 ﹁自分の上司ぐらい覚えておきなよ⋮⋮﹂ 長である⋮⋮⋮さ、逆蔵⋮⋮⋮ ﹁俺は本来第6支部の人間だ。だから、俺が絶望だったとしてもそれは第6支部の支部 ﹁⋮⋮ ﹁先生は俺を信用してないんですか 697 ﹁⋮⋮⋮戦刃むくろも信用しすぎでは ﹁何度でも助ける ﹂ ﹁第4支部でも助けてもらってるし﹂ ﹁必要必要﹂ そいつ、俺は何の興味もわかない仕事としての ﹁そりゃ世間が絶望も更正できるって事を実例がなく受け入れるなら必要ないけど﹂ 聖原の言葉にムッとする戦刃。が、苗木に撫でられへにゃっと笑みを浮かべる。 ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ 殺人を行ってきた軍人ですが絶望の残党でもあったんですよ﹂ ? ﹂ ﹁この先も必要不可欠なのは実証済みだよ﹂ ! 苗木の言葉に嬉しそうに復唱する戦刃。聖原も確かにと納得する。 ﹁不可欠不可欠 ! ﹁わんわん わんわんわんわん ﹂ ﹂ ﹁戦刃さんうるさい静かにしなさい !! ﹂ 苗木の言葉に落ち込む戦刃を見て聖原はこりゃ確かに裏切らなさそうだと確信した。 ﹁きゃん ! ! ! ﹁自分で拾ったんだから面倒は見るよ。犬みたいで結構かわいいし﹂ 機械少女は希望の夢を見るか② 698 機械少女は希望の夢を見るか③ ﹂ 苗木は第2支部の遣いと言う柊投花と言う女性が運転する車に乗り込む。 ﹁リムジンなんて初めて乗りました ﹁普通乗る機会無いからね﹂ なったときの為に困るから支部を人里と離しているんですよ﹂ ﹁第14支部は広報活動だから集める必要がなくて、第4支部は集めすぎると感染症に ﹁第6支部は戦闘部隊だからね、守るべき人を集めているんだ﹂ ﹁わお﹂ 花美が呆れる中、建築物が密集した⋮⋮街が見えてきた。 ﹁少年の少しとは一体どの程度なのか⋮⋮⋮﹂ ﹁少しぐらいなら薬になるよ﹂ ﹁⋮⋮⋮少年、酒の飲みすぎは良くない﹂ ぐ。 には数本のワインの空瓶がある。飲み終わると左に座った佐々苗が新しくワインを注 テンションの上がっている佐々苗の横で苗木は備え付けのワインを飲む。既に足下 ! 699 ﹂ ﹁ふーん⋮⋮⋮にしても全支部支部長が集結か⋮⋮﹂ ﹁派閥でも作るんですか 苗木がポツリと呟くと佐々苗がニシシと笑いながら苗木の顔をのぞき込むと苗木の ? ﹂ ﹂ 新しく移植した青い瞳に見つめられる。 ﹂ どうしたの ﹁ヒッ ﹁ ﹁⋮⋮え、あ⋮⋮あれ ? !? ﹁どうした 少年の顔に虫でもついていたか ﹂ ? もっていた聖原を出して通路を歩く。 時折すれ違う職員達が苗木達を見ると会釈して去っていく。 あ、ヨーヨー⋮⋮﹂ 扉 が 開 き 柊 が 降 り る よ う に 促 す。苗 木 達 は 車 か ら 降 り る と ト ラ ン ク の 中 に 引 き こ ﹁皆様、つきました。足下にお気をつけて﹂ と、その時車が止まり扉が開く。 ﹁い、いえ⋮⋮﹂ ? 何故自分でも怯えたのかわからず首を傾げていた。 苗木の左目と目があった瞬間、言い知れぬ感覚を感じて後ずさりした佐々苗だったが ? ? ﹁⋮⋮ネイルアーティスト、円盤投げ、棋士⋮⋮うーん、手品師 ? 機械少女は希望の夢を見るか③ 700 ﹁さっきから何をしてるんです ﹂ ? ﹂ ? ﹂ ? ﹂ ? ﹂ !? ﹁少年 ﹁先生 ﹂ ﹂ ﹁どうしました !? ? ﹂ ﹂ !? ? ﹁な、苗木先輩 再び第6支部の職員とすれ違った瞬間左目に激痛が走り苗木は思わずうずくまった。 ﹁⋮⋮⋮ッ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ 柊は呆れたように言う。むしろ知ってたら怖い情報だ。 ﹁知りませんよそんなの⋮⋮﹂ ﹁結果は ﹁殺してきた人数を⋮⋮﹂ ﹁聖原くんは何してるの ﹁15人⋮⋮27人、55人、11人⋮⋮﹂ 柊はパチパチと拍手する。佐々苗や花美も感心したように苗木を見る。 ﹁今のところ全問正解です﹂ ﹁才能当て⋮⋮で、結果は 701 ﹂ 3人が慌てて駆け寄って来る中苗木は先程の職員に振り返るが何処にもいなかった。 ﹂ ﹁⋮⋮⋮さっきの職員、何の才能持ちですか ﹁彼はただの下っ端ですが ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮ふぅん﹂ ? 柊が心配そうに言ってきたが苗木は片手をふり立ち上がると再び歩き出した。 ﹁大丈夫大丈夫。心配しないで﹂ ﹁あの、気分が優れないなら﹂ 苗木は左目を押さえながら右目を細める。 ? ﹂ ﹁そーいえばさ、ボクらみたいにバカ正直に信用できる相手を連れてきたのって何人居 るんですか ? ﹁この部屋です﹂ 最も信頼されていたはずの者だ。連れてくる方が少ないだろう。 実際信用できる者と言っても今回潜んでいた絶望の残党は副支部長、つまり支部長に ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ をみれたのに﹂ ﹁ま、あんな事の後じゃ誰も信用できませんよね。強制にしてくれれば色んな才能持ち ﹁⋮⋮⋮⋮アナタ方を含めて7人です﹂ 機械少女は希望の夢を見るか③ 702 柊がそう言って扉を開けると長丸のテーブルを囲んだ連中が一斉に苗木を見る。 おいしーよ﹂ ? ? にするためか顔を逸らした。だが時折苗木の飴をチラチラ見てくる。 第3支部支部長黄桜公一は酒瓶片手に苗木に手を振ってきた。 ﹁へえ⋮⋮スカウトに行ったときとは別人じゃないの。あ、俺のこと覚えてる ろうか ﹁⋮⋮ッケ﹂ 第12支部副支部長神島光留はそう言って苗木に笑いかけた。 ﹁支部長は君のファン何だよ。ま、ボクもだけどね﹂ ? 第12支部支部長グレート・ゴズは覆面をつけたまま挨拶をした。あれは、良いのだ ﹁はじめまして苗木誠さん。お会いできて光栄です﹂ ﹂ 第9支部支部長十六夜惣之助は羨ましそうに苗木の飴を見ながら気にならないよう ﹁良いことを言う。流流歌からもらった物だ、味わって食え﹂ ﹁すいません、貰い物なんであげられません﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ 第8支部支部長安藤流流歌はそう言って苗木に飴を渡してくる。 食べる ﹁あ、苗木君じゃーん。テレビで見たまんま⋮⋮でもないか、片目色違うし。あ、お菓子 703 ﹂ 第6支部支部長逆蔵十三は苗木を見てつまらなそうに舌打ちした。 ﹁あ、あの⋮⋮第13支部の支部長は 第4支部支部長忌村静子も呆れたように言う。 ﹁⋮⋮あそこは、相変わらずね﹂ 第4支部新副支部長神城もそれに同意した。 ﹁そういえば私13支部の支部長にあったことないのよね、どんな人なの 第5支部支部長雪染ちさはふと首を傾げる。 ﹂ 第13支部副支部長大文字ユウははぁ、とため息をはきながら頭を抱えた。 だよ⋮⋮﹄と言っておりました⋮⋮﹂ ﹁ミーの所の支部長なら﹃ノーセーブでRPGクリアする縛りプレイで忙しいから無理 いる男に話しかける。 第6支部副支部長斉藤竜は第13支部支部長が本来なら座るべきはずの席に座って ? その後ろに第2支部副支部長の柊が立つ。 第2支部支部長宗方京介は吐き捨てるように言った。 だ﹂ ﹁まともに仕事しない奴のことなど知る必要ない。全く、誰がアイツを支部長にしたん ? ﹁そうですね﹂ 機械少女は希望の夢を見るか③ 704 ﹁ワシじゃよ﹂ 第1支部支部長にして未来機関トップの天願が宗方の言葉に応えた。 天願の一言で、会議が始まった。 ﹁では全員そろったところで、会議を始めよう﹂ 第14支部支部長花美桜下と超高校級の希望苗木誠は空いていた席に座る。 てくれ﹂ ﹁ふむ。どうやら私が最後のようだね。ああ、この子は佐々苗七希だ。仲良くしてやっ 第10支部支部長御手洗亮太は無言で苗木を見ていたが目が合うとすぐそ逸らした。 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ のキャラクターに喋らせていた。 第7支部支部長月光ヶ原美彩は車椅子につけられたディスプレイに映されたうさぎ ﹃強制召集じゃありまちぇんからね﹄ 第11支部支部長万代大作は良くわからない諺を使った。 ﹁手を触れば多少は縁だね﹂ 第1支部職員日本尊はうんうんと頷きながらどうでも良いことを言った。 らない確率について話し合った﹂ ﹁あの子はいい子ではある。この前もワシと共にダンボールを被って徘徊すれば見つか 705 機械少女は希望の夢を見るか④ ま、元々人望なんてないボッチ女が支部長じゃ誰が裏切ってもおか ﹁さ て、今 回 の 議 題 は 皆 も 聞 い て い る と お も う が、第 4 支 部 に 潜 伏 し て い た 絶 望 の 事 じゃ﹂ ﹁副支部長だっけ しくないっしょ﹂ だ。 のお菓子職人、何時だったか忌村が呟いていた甘い物というのが何か関係していそう 安藤、十六夜、この2人は忌村と同期だったとらしい。何より安藤の才能は超高校級 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁良いことを言う。支部長は人望のある人物がなるべきだ﹂ 天願の言葉に安藤は忌村を見ながら馬鹿にしたようにケラケラと笑う。 ? ﹁まあ静子おねーちゃんがボッチかどうかはおいといてさ、こうして信用できる相手を ⋮⋮。 何か複雑な人間関係を持ってそうな予感がする。というか持ってるだろうな、絶対に ﹁⋮⋮⋮うーん﹂ 機械少女は希望の夢を見るか④ 706 連れて来てる奴が少ないのは皆も自分の人望には自信がないんじゃない 葉を続けた。 ﹂ 苗木の言葉に数名の支部長がピクリと反応する。苗木はその反応を確かめながら言 ? さった。 人望があるつもりなら信用できる相手が1人ぐらいいるでしょう る奴全員に留守を任せてんのよ﹂ い﹄っていわれてるよ。でも信用できる奴が居ないわけじゃあない。単純に、信用でき ﹁ま ー 俺 も こ ん な 適 当 な 性 格 だ か ら ね、い っ つ も 部 下 に﹃キ チ ン と 仕 事 し て く だ さ ー パクパク口を動かした後乱暴に座り直した。 安藤が身を乗り出し叫ぼうとするがその前に黄桜が笑い言い掛けた言葉を言えずに ? ﹁あまり俺たちをなめるなよ﹂ ﹁事実ですよね ? ﹁あはは。こりゃ痛いとこつかれちゃったね﹂ ﹂ 苗木はそんな周りの反応など気にせず体を横にずらすと背もたれにナイフが突き刺 ピシィッと空気に罅が入った気がした。 人望に自信があるわけないよね﹂ 話辺りに1人2人は必ずしょーもない方法で殺されそうな少しキャラの強いモブだし、 ﹁ま、それも仕方ないか。君たちご立派な名前やキャラ立てをされておいて、アニメの一 707 黄桜は酒を飲みながら応える。 ﹁俺んとこはスカウトやってるだけあり新入りが多いからね。なるべくあけたくない訳 よ﹂ ﹁なるほど、皆さんにもそんな理由があるんですね。失礼なこと言ってすいませんでし けど ? た﹂ ﹂ ﹁良いって良いって、相手が折れないなら煽って本性出されるのは有効な手だよ あんま大人をなめない方が良い、わかってくれたかな 最近の若い子は成長が早いんだね、おっちゃん置いてかれそうだよ﹂ ﹁⋮⋮⋮折るとか煽るとか何のことだが﹂ ﹁はは ? ら肩をすくめた。 苗木は心の底からわからないと言うように言うと黄桜は何がおかしいのか笑いなが ! ﹂ ! ﹂ ? 天願の言葉に逆蔵と宗方が否定した瞬間苗木は思わず吹き出す。幸い断言した二人 ﹁ぶふ ﹁ありえねーよ﹂ ﹁ありえん﹂ 絶望は居ると思うかね ﹁ふむ。じゃれあいは終わったようじゃな⋮⋮では聞くが、皆が信用している者の中に 機械少女は希望の夢を見るか④ 708 に視線が集まっていたため気づかれなかったが。 もっとも、連れてきた人は ? ところか⋮⋮﹂ ﹁5人いれば絶望が数人紛れていても大丈夫だろうよ﹂ ? 者と判断に迷っている者の二組に分かれる。 ⋮⋮うーん、そうね、殺さず希望の素晴らしさをわかってもらえる ? ! ﹁絶望は殲滅する﹂ ﹂ ﹁あいつらを生かしとく理由なんかねえだろ わ、私⋮⋮ ﹁だって、雪染さん⋮⋮どう思います ﹁ふえ ? るが納得してはいないかのように。 突然話をフられた雪染は数秒考え自信の答えを不服そうに返す。まるで急進派であ しら⋮⋮﹂ なら良いんでしょうけど、まだ無理よ⋮⋮やっぱり、絶望は消すしかないんじゃないか ? ﹂ 苗木がふと思い出したように手を挙げると何を決まりきった事をという反応を示す ﹁質問ですけど、未来機関に絶望が潜んでいるとわかったらどうするですか ﹂ ﹁わかっているさ。手段としては俺、逆蔵、ゴズ、会長、月光ヶ原の5人で面談といった 殆どいませんが⋮⋮﹂ ﹁その見る目が確かなものか確認するための会談でしょう 709 御手洗君⋮⋮﹂ ﹁あ、あの⋮⋮﹂ ﹁む、どうした ﹁絶望の残党って⋮⋮戦刃は平気なんでしょうか ﹁ま、そうくるよね﹂ 予想通りで⋮⋮ツマラナイ⋮⋮。 ? そんな簡単に ﹂ ﹂ ﹁⋮⋮⋮御手洗さんさぁ、戦刃さんに何か個人的な恨みでもあるの ! 天願の言葉に御手洗は押し黙った。 ﹁落ち着け御手洗君⋮﹂ ? ﹂ もらうぞ。連れが絶望だった場合その支部には監査が入る。今回連れを連れてきてい ﹁ではこの各支部長の連れ⋮⋮と、言っても連れてきたのは7人だけじゃが、面接させて トップとはいえ実に潔い、何か彼に恩でもあるのだろうか どうでも良いけど。 ﹁そ、そうじゃなくて⋮⋮僕は絶望の残党が未来機関に堂々と居るのが⋮⋮﹂ ? !? ⋮⋮その⋮⋮難しい事、悪巧みをできる知能があるとは思えないんですよ﹂ ﹁私 の 主 観 で よ い の な ら、大 丈 夫 か と ⋮⋮ 現 状 は お と な し く し て ま す し 何 よ り 彼 女 は ﹁ふむ、戦刃君か⋮⋮花美君、どう思う ﹂ 御手洗の言葉に苗木は予想していたが呆れたように呟く。 ? ? ﹁相手は絶望ですよ 機械少女は希望の夢を見るか④ 710 ない支部と第4支部も同様じゃ﹂ ﹁はじめましてカムクラ先輩。同じく超高校級の希望と呼ばれる者どうし、仲良くお話 ﹁⋮⋮予想外の客かと思えば、あなたでしたか﹂ ﹁こんにちは﹂ 情報室では現在2人の男が気絶しており、1人の男がパソコンを弄っていた。 と書かれた部屋で指が止まる。 苗木はたまたま見つけた案内板に描かれている部屋を指差していく。そして情報室 ﹁ど・こ・に・し・よ・う・か・な││││﹂ 分を嫌っている男が支配している建物の中を進んでいく。 ずっと持ち歩いていた刀剣の類は逆蔵が強制的に没収している。実質丸腰の苗木は自 聖原は現在面接中、花美は自室で休んでいて、佐々苗も同様。コロシアイ生活以来 解散となった後苗木は第6支部の中を歩き回る。 ﹁⋮⋮意外とあっさり終わったね﹂ 711 712 機械少女は希望の夢を見るか④ ししましょう♪﹂ 機械少女は希望の夢を見るか⑤ なら続けても構わないけど﹂ 苗木と相対した男ははぁ、とため息を吐きパソコンの電源を切る。 ﹁作業中 ﹂ ? ﹁知識があると行動が解りすぎちゃうから ﹂ ﹁部下ではありません。あったことはありますが記憶を消してますから﹂ ﹁ダメな部下を持つと苦労するんだね﹂ んですよ﹂ ﹁ええ。僕はともかく、彼等は才能単一特化ですから、捕まえようと思えば捕まえられる ﹁つまりカムクラ先輩には捕まるタイミングが同じでなければ困る理由があると﹂ 苗木はほほう、と感心したように呟く。 しれませんね﹂ で、情報の操作を⋮⋮まあ、それともう一つ⋮⋮これはアナタがきたから必要ないかも ﹁考え無しに動いている絶望達が僕の都合の悪い時に捕まったりしては困ります。なの ﹁⋮⋮ちなみに、何をしてたの ﹁気にしないでください。終わりました⋮⋮﹂ ? 713 ? ﹁ええ、ある程度解るぐらいがちょうど良いんですよ。全部わかったらツマラナイじゃ ほど傾げさらに ° ないですか﹂ ボクは面白いけど、全部思い通りに進むのって﹂ カムクラの言葉に苗木は良く解らないというように上半身を30 首を傾げる。 ﹁ツマラナイ ﹂ ? ⋮⋮いえ単純に、アナタは見えないんですよ。確かにそこ ? たんですか ﹂ にいるのに、ここにはいない⋮⋮そんな感じです⋮⋮質問ですが、あなたはどこから来 ﹁アナタの場合ボク達では ﹁情報があれば分析できるのが君たちじゃないの ﹁いずれツマラナくなりますよ⋮⋮⋮いえ、どうでしょうね﹂ ? ? うしかしてカムクラが自分を分析できないのはそれも理由の一つなのだろうか ? しやすかった⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮う∼ん⋮⋮理からはずれたからかな ﹂ ﹁アナタはただでさえ不規則な波の幸運を持ってますから⋮⋮それでも、昔の方が分析 ? どこから来た、と聞かれれば苗木は未来から来た⋮いや、今となっては過去だが。も 苗木は言葉に詰まる。 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ 機械少女は希望の夢を見るか⑤ 714 なんてね、と笑った苗木にカムクラは無表情で見つめる。 自首を勧めてみますか ﹂ 絶望の残党である僕に、 ? なんか臭わないんだよね﹂ ﹁それで、話をしましょうと言ってましたが何を話すんですか ﹁⋮⋮⋮カムクラ先輩ってさ、本当に絶望の残党なの ああ、アナタ共感覚を⋮⋮⋮﹂ ? ? 識を持ってして苗木の言っている意味を理解した。 ﹁ならアナタはこの場に集った絶望の3人についても理解してるのですね﹂ ﹁⋮⋮1人だよ﹂ ﹂ ? 笑わせないでよ、それってあの2人の事⋮⋮あの絶望ぶってる連中が ﹂ カムクラは苗木の言葉に一瞬だけ首を傾げたかそれも一瞬。超高校級のあらゆる知 ﹁臭い⋮⋮ ? ﹁いえ、確かに3人ですよ ﹁あはは ! ﹁4人ですか ⋮⋮⋮1人はキラーキラーとして、後1人は ? ﹂ ﹁うんうん。わかってくれれば良いんだよ⋮⋮ところでこの後暇なら4人で話さない﹂ 女達は⋮⋮﹂ を持たされた者達はともかく、名乗っているだけの者は認めないと⋮⋮まあ、確かに彼 ﹁ああ、アナタは江ノ島盾子と愛し合っていましたね⋮⋮なるほど、彼女と同じ思考回路 苗木はカムクラの言葉にケラケラおかしそうに笑う。が、明らかに苛立っていた。 ? 715 ? あの5人なら今は塔和シティに行けば会えますよ ﹁教え子のお姉ちゃん⋮⋮﹂ ﹁教え子⋮⋮ ﹂ ? び変装する。しかしあの長髪が何処に隠れているのだろうか よ。アナタが来ましたがね﹂ ﹁超 高 校 級 の 人 気 者 の 才 能 を 使 い 逆 に 何 故 か 近 付 き た く な い 気 配 を 出 し て い た ん で す ﹁それにしても全く人が寄りつかないね﹂ き出したので苗木も扉の前からどいて廊下にでる。 超高校級の演劇人か、はたまた俳優かまるで別人のような気配を纏ったカムクラが歩 ? カムクラはそうですかと呟き考える。そして、考えがまとまり解りましたと言うと再 から﹂ ﹁そんなこと知ってるよ。ボクは妹の居場所を聞きたいんじゃなくて姉と話したいんだ ? うから﹂ ﹁まあ彼女もある意味ついてはいるんでしょうね。何せ彼女は僕と会いたくないでしょ い。となると規則があるのだろう。 苗木の幸運は読みにくいと先ほど言っていた。逆に佐々苗の幸運は読みやすいらし ﹁幸運ですか⋮⋮アナタの所の小娘は簡単に分析で上回れるんですが⋮⋮﹂ ﹁運任せでカムクラ先輩を探してたからね﹂ 機械少女は希望の夢を見るか⑤ 716 ﹁何かしたの ﹂ ? ﹂ ! ﹄ ? やってきたのは第7支部支部長月光ヶ原美彩だった。月光ヶ原はカムクラを見ると ﹃こんな手紙で呼び出ちて何のようでちゅか に座り白衣を纏い赤いマフラーを首に巻き顔の下半分を隠した女性が現れる。 苗木達が駒を用意していると不意に扉がノックされる。聖原が扉を開けると車椅子 から来る4人目とやらの為に4でも遊べるゲームを選んだのだろう。 暫くすると聖原が戻ってきた。苗木は早速テーブルの上に人生ゲームを置く。これ ﹁⋮⋮従順ですね﹂ ﹁はい。任せてください ﹁聖原君。これちょっとある人の部屋の扉に挟んできてほしいんだ﹂ そしてベッドの下を見ると聖原と目が合う。 ら書いて手紙を作る。 暫く歩いていると客室に着く。苗木は部屋に入ると早速備え付けのメモ用紙に何や カムクラはそう言ってため息をはいた。戦いですら無かったようだ。 ﹁ツマラナイ戦い⋮⋮いえ、作業でした﹂ ﹁へえ⋮⋮ただついてるだけの⋮⋮なんて言うか、身の程知らずだね﹂ ﹁返り討ちにしただけです﹂ 717 不思議そうに見つめる。ここに一般の職員が居ることを疑問に思ったのだろう。 ﹁んー、ちょっとね。このゲームどうせなら4人でやろうと思って⋮⋮﹂ ﹄ 月光ヶ原が机の上に置かれた人生ゲームを見るとディスプレイに映ったうさぎがた め息を吐いた。呆れているのだろうか⋮⋮。 ﹃そんなことでいちいちあちしを呼ぶんじゃありましぇん ﹂ ﹁それに月光ヶ原さんに聞きたいことがあるんだよね﹂ ﹁ ! ﹄ 苗木が扉を閉めて月光ヶ原の前に立つ。 車椅子を回転させて出ようとする月光ヶ原だったがその前に何時の間にか移動した !? ? な、なにを⋮⋮ ﹂ ! ﹄ ! さえる。 数秒固まった月光ヶ原は顔を真っ赤にして苗木を押し退ける。そして慌てて口を押 ﹁⋮⋮⋮ !? 苗木はそう言うと月光ヶ原のマフラーを掴み引き寄せ唇を奪った。 ﹁⋮⋮⋮⋮ふうん。じゃ、こうする﹂ ﹃そ、そんなのあなたには関係ありまちぇん ﹁月光ヶ原さんの声、一度で良いから聞いてみたいんだよね﹂ ﹃な、なんでちゅか⋮⋮ 機械少女は希望の夢を見るか⑤ 718 ﹁││ッ ﹂ 唇の血を舐めながら笑っていた。 ・ ・ ・ ﹁その声、本当に妹さんにそっくりだね⋮⋮やっぱり両方とも母親にだからな ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹂ 顔を赤くしたまま苗木を睨むが苗木は月光ヶ原がとっさに噛んできたせいで切れた ! ﹁⋮⋮モナカ⋮⋮の⋮⋮ ﹂ ら机まで車椅子を動かした。 目を見開き固まる月光ヶ原に苗木は取り敢えず人生ゲームでもやろっかと言いなが ﹁やっぱり自分の声が嫌いなんだね、妹を思い出しちゃうから﹂ ? していた男だよ♪﹂ ﹁改めて自己紹介させてもらうよ。ボクは苗木誠、一時期は君の妹塔和モナカの先生を ? 719 機械少女は希望の夢を見るか⑥ ﹁希望ノ丘学園の人工天才プロジェクトの被験者になり一回休み﹂ ﹁殺人鬼の情報をいち早く気づく。2マス進む⋮﹂ ﹃⋮⋮⋮未来機構からのスカウト、各ターンごとに所持金二万追加でちゅ﹄ ﹁ボクは⋮⋮未来機構No.2に目を付けられた、五回先まで出た目の半分進む﹂ 4人はルーレットを回しながら駒を進めていく。 一体何処の会社が作ったのやら、何気にこの場の人間にとってはリアルなマスばかり だ。しかも今のところ誰も止まってないが事故死、病死など死に関するマスもある。 ﹂ コンセプトは人間何時死ぬか解らない⋮⋮⋮。 それともカムクラ先輩 ﹁ある意味幸運ですね﹂ ﹁それってボクの ? ろう。 幸運も持っている人間が参加している。この場合、どちらの幸運に引き寄せられたのだ 苗木は6を出し3マス進みながら尋ねる。確かにこのゲームには超高校級の幸運と ? ﹁適当に選んだんだけど⋮⋮﹂ 機械少女は希望の夢を見るか⑥ 720 ﹁ま、どっちでも良いけどね⋮⋮あ、占い師の借金を押し付けられる、か⋮⋮﹂ み﹂ !? ﹄ ﹃そういうことを聞いてるんじゃありまちぇん て平然とゲームを始めるんでちゅか ﹃み、見放してなんか ﹄ 何であたちにキ、キ⋮⋮キスをしとい ﹁そ、月光ヶ原さんとは種違いの姉妹で、君が見放してしまった妹⋮⋮﹂ ﹃⋮⋮⋮モナカ⋮⋮﹄ 子から聞いてた事だから﹂ ﹁実はボク、月光ヶ原さんについては未来機関に来る前から少し知ってたんだ、何せ教え と言う名らしい││が文句を言ってくる。 キスの部分で月光ヶ原本体も赤くなり俯きながらディスプレイのウサギ││ウサミ ﹁でも取り敢えずやってくれる月光ヶ原さんって結構優しいよね﹂ ! ! ﹁﹁何って、人生ゲーム⋮⋮﹂﹂ ボードを落ちないように受け止め駒を元の位置に来るようにボードでキャッチする。 月 光 ヶ 原 の 車 椅 子 か ら ア ー ム が 飛 び 出 て 机 を ひ っ く り 返 す。カ ム ク ラ は す ぐ さ ま ﹃って、これは一体何でちゅか│││ ﹄ ﹁人工天才プロジェクト成功、出した目の数の倍進む⋮⋮⋮絶望の少女と接触、一回休 721 ! ﹁少なくともモナカちゃんはそう感じてた⋮⋮﹂ って言ってやった⋮⋮﹄との事 苗木の言葉に押し黙る月光ヶ原。その表情は悲痛なモノとなり両手をギュッと力強 く握った。 ﹁モナカちゃん曰わく﹃二度と私の前に姿を見せるな ところかな ﹂ ﹂ ﹃それが解っていながら何であたちに無理やり声を出させたんでちゅ ﹄ ﹁今の内に慣らしとかないと妹に会った時大変でしょ ﹃⋮⋮⋮⋮どういう事でちゅか⋮⋮ ﹄ ⋮⋮察するにその事がトラウマになって妹と同じ声を発するのが出来なくなったって ! ? は花火の打ち上げ筒の中に落ちて一回休みになっていた。 月光ヶ原は苗木に責めるような視線を向けていたがその言葉に固まる。そして聖原 ? !? ? ﹂ ﹄ ﹁一度否定されたから逃げ続けるの ! ﹂ ﹁⋮⋮⋮家族なんだ、仲良くしなよ。モナカちゃんが君を否定したのだって、大好きだか 俯く月光ヶ原はしかし何も言い返せない。 ﹁ッ ! ? ﹃で、でもあちしは⋮⋮ ﹁そのまんまの意味。ボクは月光ヶ原さんとモナカちゃんを会わせる気なんだ♪﹂ 機械少女は希望の夢を見るか⑥ 722 らこそ嫌いになったんだ。最初から嫌いだったらあんなに怒ってないよ﹂ ﹄ ? ﹂ ? ﹄ ねじ曲げられ殺される、振り出しに戻る⋮⋮何でちゅかこれー ﹂ きの⋮⋮﹄ ﹁ ﹁真面目と書いてマジと読む﹂ ﹃未来機関を抜けるって⋮⋮本気なんでちゅか ? いや、それよりさっ ! ぬ、一回休み﹂ ﹁じゃあ月光ヶ原さん引き入れるの手伝ってよ⋮⋮コロシアイゲームで嘗ての仲間が死 苗木君は同じ組織が好ましいのですが﹂ ﹁つくづく予想を上回ってくれますね。しかし困りました、僕としては月光ヶ原さんと ? ° ﹃⋮⋮⋮未来機構総統が妹を未来機構に潜入させて混沌な状況を作るために首を180 苗木の言葉に唖然としていた月光ヶ原は慌ててルーレットを回す。 てるのが宗方さんじゃあねぇ⋮⋮あ、月光ヶ原さんの番だよ﹂ ﹁実はボク未来機関抜ける気なんだよね、最初は見定めようと思ったけど⋮⋮実権握っ ﹃⋮⋮⋮⋮⋮え ﹁ならボクの組織に来る ﹃⋮⋮⋮でも⋮⋮⋮いえそもそもあたちは今自由に動ける立場では⋮⋮﹄ 723 未来機関の職員が聞いたら一騒動起きそうなことを話すカムクラと苗木。月光ヶ原 は冷や汗を流して2人を見つめる。 ﹄ す。苗木君が未来機関から抜ければ未来機関は絶望の殲滅を躊躇しません。ですが、苗 ﹁手伝いですか⋮⋮⋮では月光ヶ原さん、アナタの妹である塔和モナカは絶望の残党で それって本当なんでちゅか 木君の設立する組織なら妹を殺す必要はありません﹂ モナカが⋮⋮ !? ﹁誰が脅せと⋮⋮⋮﹂ ﹃ぜ、絶望の残党⋮⋮ ? 応えを待つ。月光ヶ原は視線を泳がせながら応えにつまっていた。 苗木はだから誰が脅せと言ったのさとカムクラを呆れた目で見ながらも月光ヶ原の かないでしょう﹂ ﹁事実です⋮⋮そして助ける方法としては未来機関を抜けるか未来機関を作り替えるし ? す﹂ のアニメーターを仲間にして新たな旅へ⋮⋮⋮希望はここから始まる⋮⋮⋮上がりで ﹁未来が見えないのであれば、良く考えてから選んだ方が良いでしょう⋮⋮⋮未来機構 ﹁いいよ﹂ ﹃少し⋮⋮考えさせてくだちゃい﹄ 機械少女は希望の夢を見るか⑥ 724 一位カムクラ二位苗木、三位聖原、四位月光ヶ原で人生ゲームが終了した後部屋には ﹂ 苗木達男子だけが残った。 ﹁彼女は来ますかね ﹁話は聞かせてもらいました。よろしければお力に│││﹂ ﹁それは違います。聞けたのではく、聞かせてやったのです﹂ ﹁最初っから居るのに気づいてたよ∼﹂ 苗木とカムクラは突然の訪問者に大した興味も抱かずに片付けを終える。 あんた、急進派の宗方の側近だろ ? ﹁そ、そうですか⋮⋮ではその⋮⋮未来機関を抜ける手伝いを⋮⋮﹂ ﹁待て、何故あんたが先生の味方をする ? ﹁ええ、ですが私は⋮⋮超高校級の絶望でもありますから﹂ ﹂ と、その時ノックもなく扉が開き誰かが入ってきた。やってきたのは柊だった。 ﹁まあね﹂ ﹁にしても先生は未来機関を抜ける気だったんですね﹂ いなく苗木の立ち上げるつもりの組織に来るだろう。 聖原の言葉に苗木とカムクラが人生ゲームを片付けながら応える。月光ヶ原は間違 ﹁脅したつもりはありませんが来るでしょうね﹂ ﹁来るでしょ、カムクラ先輩があれだけ脅してたし﹂ ? 725 ﹂ ? 柊の言葉に苗木は殺気全開に柊を睨んだ。 ﹁⋮⋮⋮⋮あ 機械少女は希望の夢を見るか⑥ 726 機械少女は希望の夢を見るか⑦ 普段笑みを浮かべている苗木が明らかに感情を露わにした表情を見てカムクラはそ れほど江ノ島盾子が好きなんですねと呟き聖原は苗木に感情があったのかと驚愕し怒 りを向けられた柊は思わず後ずさる。が、苗木が顔を手で隠しどけると何時もの表情に 戻っていた。 ﹂ ? ﹂ ? ﹁ええ、都市伝説のようなもので、確認はされていませんが﹂ ために才能を使ってる連中でしょ ﹁それは知ってるよ。超高校級の才能を持ちながら世界のためではなく絶望を振りまく ﹁あ、はい⋮⋮では説明しますと超高校級の絶望というのは﹂ ﹁それで、柊さんは何が目的なの と言う意味だろう。柊が席に着くと苗木達も席に座った。 苗木は柊の言葉を笑顔で否定する。椅子を一つ引いて両手で示したのは座ってくれ ﹁受け入れてるよ、絶望は﹂ ﹁⋮⋮は、はあ⋮⋮⋮苗木さんは絶望も受け入れていると伺ってましたが﹂ ﹁やあごめんごめん。ちょっとムカつく発言があってね﹂ 727 だろうね、と苗木はカムクラをチラリと見る。カムクラは素知らぬ顔で柊を観察して 殲滅される絶望味わいたいなら宗方 いた。苗木もそりゃ一々反応しないかと視線を柊に戻す。聖原は興味がないのか船を その絶望が何のようか聞きたいんですけど 漕いでいる。 ﹁で ? が⋮⋮。 苗木ははぁ、とツマラナそうにため息を吐く。もちろん聞かれない程度に小さくとだ ﹁⋮⋮⋮⋮それが宗方さんなら文句はないけどねぇ⋮⋮﹂ ﹁いえ私はある人物を絶望させたいからあなた方に協力するのです﹂ さんに頼んでください﹂ ? 君がボクにどういった益をもたらしてくれるんですか せる方法が好ましいのです﹂ ﹁で ﹁カムクラプロジェクトに関するデータです﹂ ﹁何それ知ってるんですけど﹂ ﹂ ? していない。既に知っているのだろう。ならば、あの時言ったもう一つの意味もわか その言葉にようやく苗木は柊に興味を持った。カムクラを見るが特に何の反応も示 ? ? ﹁人間を天才にする方ではなく、途中凍結したゼロから天才を作る方もデスか ﹂ ﹁そのためにも宗方さんの絶望を皆殺しという目標は挫折して、あなたの絶望の更正さ 機械少女は希望の夢を見るか⑦ 728 る。 その凍結されたもう1人のカムクラになる予定だった存在を見に来たのだろう。自 分と同じ全ての才能を持つ超人相手なら退屈せずに済むだろうから。まあ、予想外の苗 木の登場で必要なくなったみたいだが。 ﹂ ? ﹂ ? すもん﹂ ? ﹁だから凍結したんです﹂ ﹁当時の評議会は馬鹿の集まりですか って、その話が今出てくるって事は⋮⋮﹂ ﹁意味ないじゃないですか、結局人間じゃないんじゃ人間を天才にする計画とは別物で いと思い直す。しかしロボット、ロボットとは⋮⋮⋮。 苗木はプログラマーと言う言葉に一瞬反応したが別に先輩の中にいてもおかしくな 極めて人間に近く人間を越えたロボット⋮⋮﹂ 者、精神科etc.etc.⋮⋮様々な分野の超高校級の才能持ちが集まり作り上げた ﹁ロボットですよ。超高校級のメカニック、プログラマー、神経学者、生物学者、解剖学 ﹁⋮⋮⋮⋮なんと ﹁ロボットです⋮⋮﹂ ビーですか ﹁⋮⋮ゼロからってラノベのタイトルみたいな状態から作られたって、デザイナーベイ 729 その中に ﹁ここにあります。元々絶望殲滅の戦力として回収されたそうですが起動しなくて⋮⋮ ですがあなたは希望ヶ峰学園で幾つか重要な書類を持って行ってますよね あったり⋮⋮あるいは幸運で適当にいじれば動くのでは、と⋮⋮﹂ 前者の理由はともかく後者は適当だな。運任せて⋮⋮⋮。 簡単に入れるとは⋮⋮。 絶望の残党に利用されたら困るから隠し部屋を使っているクセに扉さえ見つければ 第6支部の第4倉庫の奥、そこにあった隠し扉を通り4人は地下に向かう。 い。 容を理解する知識を得るのを優先していたから重要書類の全てを見ているわけではな 確かに苗木は希望ヶ峰学園から大量の重要書類を持ってきてはいるが重要書類の内 ? けない無能なのだが⋮⋮。 かりの宗方だって絶望の残党と自称絶望が紛れている、しかもすぐ側に居ることを気づ 聖原の言葉に柊は不機嫌そうに言う。ぶっちゃけ柊が好意を寄せていることが丸わ らないことを⋮⋮﹂ ﹁宗方さんに言われても無能脳筋ボクサーは﹃いざとなったら俺がぶっ壊す﹄と訳の分か ﹁不用心だな﹂ 機械少女は希望の夢を見るか⑦ 730 そして数分降りると扉が現れる。 ﹁適当にってねぇ⋮⋮⋮﹂ ﹁それでは苗木さん、取り敢えず適当にいじってみてください﹂ める。 苗木は気づいてないのかと呆れながらカムクラの行動に呆れたように言う柊を見つ ﹁というか超高校級でもない一般職員が動かせるなら苦労しないわ﹂ ﹁⋮⋮⋮だめですね。このパソコンではスペックが低すぎます﹂ と起動させようとプログラムを弄るが⋮⋮。 クラが少女のヘッドホン⋮⋮に見えるパーツをいじくりケーブルをパソコン接続する しかしこのロボット何処かで見たような気がする。苗木が首を傾げている間にカム ﹁彼女が希望ヶ峰共同製作No.000です﹂ いる。 超高校級のイラストレーターか芸術家でもデザインしたのか顔立ちはとても整って ともすれば息遣いが聞こえる錯覚すら覚えそうだ。 いや、あれが超高校級のロボットなのだろう。極めて人間に近いと言われるだけあり 柊が扉を開けると、飛び込んできたのは眠る少女。 ﹁この奥です﹂ 731 はぁ、とため息を吐きながら少女に近づいていく苗木。と、何か懐かしいような、前 にもやったような感覚を思い出す。 そして、ああと呟いた。 ﹁魅例、起きて⋮⋮﹂ ピッ、ブウゥゥゥンと音を立て少女の瞼が持ち上がる。キュウウ、キュイイとまるで カメラのピントを合わせるような音が止まると少女はゆっくり顔を持ち上げ苗木を見 つめる。 ろう笑顔もまるで人間のそれだった。 人間に近いと言うだけあり、あらかじめ表情の一つとしてプログラムされただけであ ﹃おはようございますマスター﹄ 機械少女は希望の夢を見るか⑦ 732 機械少女は希望の夢を見るか⑧ 軍人対クラスメートの隠れん坊大 それは苗木が希望ヶ峰学園で平和に過ごしていた頃の話。 突如江ノ島が考案した﹃ドキッ 超高校級大集合 ! ﹁あ、苗木君やっほー﹂ ﹁あれ、七海先輩﹂ そうですね⋮⋮ハロウィンとか﹂ ﹁ねえねえ突然で悪いんだけどさ、この時期何かイベントないかな ﹁この時期ですか ﹂ のは探偵や軍人を観察している内についた癖とは本人も未だ気づいていない。 通い慣れない場所まで来てグチる苗木。その際無意識ながら壁を叩いて進んで居る ﹁戦刃さんから逃げるって、けっこうハードルが高い気が⋮⋮⋮﹂ 会﹄で苗木が隠れる場所を探している時の出来事だった。 ! る。曰く、平均的な意見を聞きたいのだ⋮⋮とか。 になるゲームは基本人気なゲームばかりだが七海は時折マイナーなゲームも誘ってく 苗木が歩いていると角から見知った顔が現れる。一年上の七海千秋だ。苗木が好き ﹁うーん、去年もやったしな﹂ ? ? 733 それいい 一緒に仮装して街を回るんです﹂ ? ありがとね∼⋮⋮あ、そうだ⋮⋮﹂ ﹁あ、なら付属小学校の子供達とやったらどうです ﹁うん ! ﹂ く。と、カチリと壁が窪んだ。 七海の落としたであろうハンカチを踏みバランスを崩した苗木は慌てて壁に手をつ とハンカチだ。 七海はそう言って去っていき、苗木も去ろうとして不意に何かを踏み滑る。よく見る ﹁そっか⋮⋮見かけたら教えてね﹂ ﹁ボクと同じアンテナを持った予備学科の先輩にはあったことありませんよ﹂ ! ? ば活動できる。おまけに食事を取り胃の中でエネルギーに分解できるらしい。 ずっと眠っていたが先ほどの振動でたまたま目が覚めた。元々彼女は電力さえあれ 彼女は1人暗い部屋に居た。 少し進んで隠れるつもりが思いの外広くはなく、扉の前についた。 を進む。 ガチガチと音が鳴り壁が開いていく。苗木は暫く眺めた後壁の中に現れた通路の中 ﹁⋮⋮⋮ん 機械少女は希望の夢を見るか⑧ 734 そして人間と違い眠っているときはエネルギーを消費しないので眠る限りなら何年 でも寝ていられる。 だが時折眠りが浅くなる。待っているから、必要とされるのを⋮⋮。人の希望となる ﹂ ために造られたのだから、人の希望になることがしたい。 ﹁⋮⋮あれ ﹄ ? ﹁先輩ですよね ﹂ 隠し部屋に保管されていたはずだが。 いないのだろう。しかし、自分はあまりに人間に近いため人道的どうこうと言う理由で 発汗、瞳孔、呼吸⋮⋮それらを全て確認してみるが怪しいところは無い。嘘は言って ﹃⋮⋮⋮⋮⋮﹄ るとは﹂ ﹁えっと⋮⋮78期生の苗木誠です。すいません隠れん坊のつもりで⋮⋮まさか人が居 ﹃あなたは誰ですか 所謂可愛らしい容姿をしている。 ような所謂アホ毛が特徴的な、平均的容姿に比べれば目が大きく鼻が細く口は小さい、 足音から記録にない者だとは思っていたが見たこともない少年だった。アンテナの ﹃⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹄ ? 735 ? じゃあ⋮⋮あなたは ﹂ ﹃私は希望ヶ峰学園の生徒ではありません﹄ ﹁え ? は一体何者なのだろう ﹂ ? ﹁えっと⋮⋮良くわからないけど名乗る気はないと﹂ ﹃名前はありません。機体名は希望ヶ峰共同製作No.000です﹄ ﹁⋮⋮⋮ ﹃私は⋮⋮誰でもありません﹄ ? 制作者達はカムクライズルを作るつもりが、自分では期待に応えられなかった。自分 その中質問に彼女は応えかねた。なんと答えれば良いのか解らなかった。 ﹃⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹄ ? わけです﹄ ﹃その後私は別の場所に保管されてしまい、しかしこうしてマスターと再会したという ﹁じゃあ⋮⋮三つの零で三零⋮⋮じゃ味気ないし、魅例で﹂ でください﹄ ﹃そうですね、 ︵そもそも名前がないから︶名乗りようがありません。好きなように呼ん 機械少女は希望の夢を見るか⑧ 736 魅例の説明が終わると苗木は懐かしいなと頷く。あの後隠れん坊では苗木が見つか ﹂ ? らずにすんで、優勝者に江ノ島がご褒美といって頬にキスをしてきた。 あれ苗木が残らなければ他の奴がキスされていたのだろうか ﹄ ﹁まあね⋮⋮で、魅例はずっとボクを待ってたの ? ﹄ ! で信用する相手を探します﹂ ないので、宗方さんのやり方に不満持ちなおかつ超高校級の希望であるあなたを無条件 ﹁えっと⋮⋮どうやら役立てたようで⋮⋮とは言え私は表立ってあなたの手助けは出来 わからない。 説得する必要が消えた。昔の出会いがこんな風に役に立つとは運がどう作用するか 希望ヶ峰学園に造られたから苗字を希望ヶ峰。安直だが喜んでくれた。 ﹃はい ﹁そっか⋮⋮待たせてごめんね。取り敢えず、苗字は希望ヶ峰にしとこうか﹂ ﹃はい。名を与えられたその時から、私の存在意義はマスターの御身のために﹄ ? ﹃⋮⋮女の事を考えてますね 想像だけで嫉妬するとは我ながら独占欲の強い⋮⋮。 ﹁ん、あごめん﹂ ﹃マスターの心理状態は現在苛立ちを示しています﹄ 737 ﹁ん ああ、︵必要ないけど︶よろしく頼むよ﹂ ﹂ ? そうは見えませんでしたが﹄ 部屋に戻った苗木はベッドに飛び込みため息をつく。 ﹁よく我慢できましたね﹂ ﹁⋮⋮⋮あ∼⋮⋮ぶっ殺さずにすんだ﹂ 原、希望ヶ峰が続き柊もついてくる。 苗木はあっそ、と興味なさそうに出口に向かって歩き出した。その後にカムクラと聖 ﹁まさか、私はアイツを絶望させたいだけです。好きなわけがない⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮柊さんってさ、雪染さん好き ﹁はい。ですからどうか、雪染を絶望させてください﹂ ? ? 僕が知る限り、あなたは確かに幸運で、超高校級の ? 苗木はイライラしながらポケットから飴を取り出し噛み砕く。 残党だよ⋮⋮﹂ ﹁こっちにも色々あるんだよ⋮⋮てか、殺したい。本当に殺したい⋮⋮なぁにが絶望の 演劇部の師事を受けたことはないはず﹂ し、何時の間にそのような才能を ﹁超高校級の演劇部は体の反応、脳波、極めれば自分自身さえ騙しますからね⋮⋮しか ﹃マスターはあの女に殺意を覚えていたのですか 機械少女は希望の夢を見るか⑧ 738 体中を言い知れぬ快感が走りようやく怒りが収まった。 まあ、カムクラ先輩が言うなら⋮⋮おやすみなさい﹂ ? 苗木も欠伸を一つしてから眠りについた。 はコンセントをヘッドホンから取り出しさしてスリープ状態になった。 カムクラはそう言って部屋から出て行き聖原もクローゼットの中に入る。希望ヶ峰 ﹁あなたも充電は満タンにしておくように⋮⋮ではおやすみなさい﹂ ﹁ ﹁落ち着いたら寝た方がいいですよ。明日は、早くなるでしょうから﹂ 739 機械少女は希望の夢を見るか⑨ 早めに寝たら早めに起きるのは当然で、苗木は気分良く目が覚めた。今日は良い日に ﹂ なりそうだ⋮⋮ったのだが││ ﹁邪魔するぜ 殴り起こされるかしていただろう。 だが助かった。もし眠っていたら殺気を隠そうともしない逆蔵に蹴り起こされるか 分析している。先読みはカムクラが上だったようだ。 ているの情報量が違うし苗木は慣らすために時折使っているのに対しカムクラは常時 昨日カムクラが早く寝ろと言ったのはこれが理由だろう。カムクラと苗木では持っ ないだろう。 扉が開けられ⋮⋮壊され逆蔵が入ってくる。鉄製の扉は歪んで二度と使い物になら ﹁最悪な日になりそうだなぁ﹂ ! 蔵だったがその腕は苗木以外の者に掴まれる。希望ヶ峰だ。逆蔵の手首を掴み逆蔵を 何も言っていないくせに固まっている苗木に文句を言って腕を掴もうとしてきた逆 ﹁何ぐずぐずしてやがる、さっさとついてこい﹂ 機械少女は希望の夢を見るか⑨ 740 睨む。 てめえ、ポンコツロボ⋮⋮なんで動いてやがる﹂ ? ﹄ ? ﹂ ? ﹂ ? た。 そうな犬のような目をしていたがそのまま数秒睨んでいると顔を赤くして目をそらし 宗方は苗木の言葉にはぁ、と長いため息をつきジロリと逆蔵を睨む。逆蔵は捨てられ ﹁何一つ⋮⋮﹂ ﹁逆蔵から聞いてないのか ﹁で、これはいったい何です 目の前には逆蔵、宗方、柊が座っている。 あれよあれよと言う間に苗木達はヘリの中に居た。聖原と希望ヶ峰を左右に座らせ 突然やって来たくせに何を言っているんだろうこの男は、ついていくけど。 ﹁はん、大した幸運だな⋮⋮って、んなこたぁどーでも良いんだよ。早くしろ﹂ 持ってきた本に彼女についてかかれているのがあったのを思い出しまして﹂ ﹁⋮⋮昨日迷った時たまたま隠し通路を見つけて、彼女を発見した時希望ヶ峰学園から 危害を加えようとしたのでしょうか ﹃ポンコツロボではありません。希望ヶ峰魅例です。マスターに如何なる理由があって ﹁あ⋮⋮ 741 ﹁怒るな、お前の失態だろ⋮⋮﹂ 怒っているのではないと思うが黙っとこう。おもしろいし⋮⋮。 ﹁苗木誠、お前は絶望も救いたいと言ったな﹂ ﹁全てではありませんが、言いましたね﹂ る者達が、どれだけ害悪となるか﹂ ﹁それはお前が絶望を知らないから言えることだ。見せてやる、お前が救おうとしてい ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ 未来機関第13支部、活動は復興の遅れている地域への食料物資の供給。故にそこを 責められれば多くの餓死者が出るだろう。故に狙われた。 ﹂ 沢山のモノクマスクをかぶった老若男女が第13支部に進入しようとしていた。 ﹂ 江ノ島盾子に捧げる絶望を ! 絶望を 恐怖を ﹁絶望を ! ! ! 絶望達に躊躇いはない。人を殺すことに、人を不幸にすることに、何せ他の人間も とする一部の絶望達は未来機関に打撃を与え尚且つ多くの死者が出る方法を選んだ。 死してなお⋮⋮いや、死んだ後にこそ神格化された江ノ島盾子に多くの贄を捧げよう ! ﹁死を 機械少女は希望の夢を見るか⑨ 742 やっているのだ、自分達だって良いはずだ。そういう、洗脳に近い民意。だが民意は大 勢の中の一人という安心感があるから意味をなす。半数以上が止まれば当然全員が止 まる。 ﹂﹂﹂ !? い落ちちゃって、なんとか衝撃を減らして着地しようとしたら下に彼らがいただけなん ﹁ああこれは違うんだよ。ヘリのハッチが突然開くものだがハッチの側にいたボクはつ き絶望達が道をあける。何時の間にか少年を中心に空間ができてきた。 ベシャベシャとまるで雨が降った後の泥道を歩く程度の気軽さで血溜まりの上を歩 ﹁⋮⋮⋮どこの誰か知らないけど運がないね君たち、まいいや。おかげで助かったよ﹂ ナのようなアホ毛を持った少年が足下の死体に気づいた。 そしてすぐ上から降ってきた人物を見ればかわいらしい顔立ちに青と緑の目、アンテ 上を見れば三階程の高さにヘリが滞空していた。 ﹁⋮⋮ふう、びっくりした⋮⋮素人がいるヘリのハッチを開けるかな普通﹂ 刺さっていない。 れた。ぐしゃぐしゃに歪めば当然骨が飛び出るのだが上に降りた少年には欠片も骨は グシャリと音が鳴り前の方にいた絶望の数人が上から振ってきて人間に踏みつぶさ ﹁﹁﹁ ﹁おっとと⋮⋮﹂ 743 ﹂ だ、故意じゃないだからボクは悪くない﹂ ﹁苗木⋮⋮誠 神 しれない。苗木は周囲で跪く数名の絶望を見ながら思った。 男の言葉に苗木ははぁ、とため息をついた。だが、ある意味いなくて良かったのかも ﹁無理矢理連れてきといて酷い扱いだ﹂ ﹁﹃その程度で死ぬ輩でもないだろう﹄って言ってましたよ﹂ ていく。 人は人形のように無表情の女だ。名を呼ばれた少年、苗木が上を見上げるとヘリが離れ 絶望の誰かが叫ぶと同時に新たに二つの陰が降りてくる。一人は目つきの悪い男、一 ! ﹂ 江ノ島盾子の敵だぁぁ 死ね、死んで絶望しろ ﹂ ! り下ろしてくる。 ﹁苗木誠 ﹁⋮⋮⋮⋮ああん ! 苗木は途端に不機嫌そうな顔になり男の顔面を蹴りつける。モノクマスクを潰し男 ? ! そんな絶望の反応に苗木はうんうんと満足そうに頷く。と、一人の絶望がバットを振 ﹁うんうんそうだよ。それでこそ絶望だ。うん、合格﹂ ﹁ありがとう俺達に大切なモノを壊される絶望を教えてくれて﹂ ﹁ありがとう、私たちから江ノ島盾子を奪ってくれて﹂ 機械少女は希望の夢を見るか⑨ 744 の鼻の骨を折る音が聞こえ首あたりでゴキリと音が鳴る。 ﹂ ! 苗木は女から拳銃を受け取ると自分に憎悪を念を向けてくる連中に向けた。 ﹃かしこまりましたマスター。マスターも護身用にどうぞ﹄ ﹁はい先生 外は出来るだけ殺さないように殲滅するよ﹂ ﹁⋮⋮あ、つい⋮⋮まあ今のは正当防衛だよね。聖原君、希望ヶ峰さん⋮⋮仕方ない時以 745 機械少女は希望の夢を見るか⑩ ﹁うわぉ、流石ぁ⋮⋮﹂ まさしく死屍累々という言葉が相応しい。苗木は詰まれた絶望の残党の上に座りな がら見渡す限り横たわった絶望の残党を見下ろす。 ﹁っく⋮⋮仲間達がやられて、何も出来ずあまつさえ椅子にされるなんて⋮⋮なんて絶 望的なんだ﹂ ﹁さて、それじゃあ中に入ろっか。別の場所から絶望が中に入ったかもしれないし⋮⋮﹂ 苗木は座っていた絶望の残党達をキッチリ気絶させた後歩き出す。と、そこで気絶し たフリをしていた絶望の残党が立ち上がりナイフを片手に突っ込んでくる。 ﹂ ! ﹁超バラバラ殺人﹂ の間にか握っていたナイフを光らせる。 聖原と希望ヶ峰がとっさに苗木を庇おうとするが苗木は2人より一歩前に出て何時 ﹁いいよいいよ。聖原くんともだいぶ仲良くなれて、こういうの覚えられたし﹂ ﹃させませ││﹄ ﹁ 機械少女は希望の夢を見るか⑩ 746 ﹁が ⋮⋮⋮っあ⋮⋮⋮ ﹂ ! ﹂ 来てしまった。 だろ なら、喜べよ。 ? お、俺は⋮⋮周りにあわせてた そのボクに、何も出来ず殺される。それって絶望的な事だよね ﹂ 絶望を受け入れろよ、それが君達絶望なんだから﹂ ﹁い、いやだ ﹂ 死にたくない 消えたくない 助けて ! ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ た、頼む ! ﹁いやだ、いやだいやだ だけだ ! ! ! ﹁人を殺す絶望が味わいたいわけでも、復讐で殺される絶望を味わいたいわけでも無く 内部に入る前にクルリと振り向く。 苗木ははぁ、と頭をかくと無言で歩き出した。別に助けたわけではない。13支部の ! ! ? 誰よりも愛され、そのくせ江ノ島盾子を殺したボクが恨めしくて羨ましくて仕方ないん ? ﹁ひっ 笑えよ、君は絶望なんだろ 君達にとって神に匹敵する江ノ島盾子に 勢いを落とす足もなくなり地面を転がる絶望の残党は不幸なことに苗木の足下まで うに細かく切れる。 苗木の腕がぶれた瞬間絶望の残党の足がバラバラに、それこそサイコロステーキのよ !? ﹁ん、どうしたの ? !? 747 周りにあわせるためだけに殺してきた。そのくせ助かりたいって⋮⋮君⋮⋮⋮ま、運が 良ければ誰かに助けられるでしょ。運が悪ければ、まあ失血死かな⋮⋮﹂ 苗木はそう言って絶望した男を置いて建物の中に入った。 建物の中に侵入した絶望の残党は居るにはいたが少しだけ。聖原の殺人鬼レーダー ﹂ で人を殺し、今回は絶望の残党が集まっている場所を見つけ、扉を破ろうとしている絶 望の残党達を気絶させた。 ﹁聖原くん他に人を殺した奴の反応は ﹁⋮⋮⋮ありませんね﹂ ﹁そ、じゃあとっとと開けよっか⋮⋮﹂ ? ﹂ ﹁ふむ。ワシに任せなさい﹂ ﹁うわ まあ、実際は気配を周囲 ? ﹁ダンボールはな、万能なんじゃよ⋮⋮﹂ ﹂ に同化させて移動していただけで、ダンボールを使うのはおふざけなのだろうが。 いた。近くにダンボールが落ちている。あれに隠れていたと 何時の間にか苗木の後ろにたっていた日本がピッキング用と思われる道具を持って !? ﹁本人は自覚無しか。これも天才故の勘違いなのかな ? 機械少女は希望の夢を見るか⑩ 748 バカやホームレスなのではない ﹁体を隠せば潜伏アイテム、顔にかぶれば変装道具、集めれば布団や家になるし小腹がす ﹂ ! ﹂ ! ﹂ ? ﹁⋮⋮⋮ん あれ、苗木くんだ。ひさしぶりだね﹂ い髪も長く伸びた七海千秋だった。 はたして天殺竜神拳なる技を使った人物は、苗木の記憶より身長が高くなり色素の薄 ﹁⋮⋮⋮⋮七海先輩 ﹁私の支部の人間に、手を出さないで﹂ 下した。 たのだろう、見事に決まった。日本の体が浮かび上がり2、3メートルほど宙を舞い落 中にいた女性が日本にアッパーを食らわせる。敵の気配がなかったから油断してい ﹁ぐわっぱ ﹁天殺竜神拳 日本はそう言って扉を開け中にはいる。と、その時││ ? けばいざとなっても食える﹂ この老人は本当に元超高校級の軍人なのだろうか だろうか と、その時カチリと音が鳴った。 ? ﹁あいたぞい。では、先方はワシが⋮⋮﹂ 749 ? 苗木に気づいた七海は苗木の頭を撫で始める。そして、あれ ﹁あ、日本おじいちゃんごめんなさい ﹂ 苗木くんと一緒にいた なら今の人は⋮⋮と呟きながら振り返ると日本は顎をすりながら立ち上がっていた。 ? 中の誰が治療したのか⋮⋮。 学者である薬師寺や保険委員であるとある先輩のような存在だと思われる。なら、その を治療できるなどそれこそどこかのつぎはぎ医者のような名医か、或いは超高校級の医 苗木の疑問に日本が答えたが苗木は更なる疑問を覚えた。死んでもおかしくない傷 されてな﹂ ﹁そう思われていたが、彼女は生きておった⋮⋮死んでもおかしくない傷を完璧に治療 ﹁⋮⋮⋮⋮77期生は全滅したんじゃ﹂ ﹁よいよい、相変わらず元気だね七海や﹂ ! ば救えるだろう。 ? のかと迷っていると電子生徒手帳がふるえる。見れば昨日登録したカムクラの名が。 絶対彼女の生存にはカムクラが関わっている。間違いない。とはいえ、どう答えたも ﹁そーだ苗木くん、髪の長い根暗そうな人知らない ﹂ 全ての才能を持つカムクラ、彼なら目の前の七海が死にかけていても生きてさえいれ ︵⋮⋮いや、後一人いるか︶ 機械少女は希望の夢を見るか⑩ 750 ﹃彼女に僕のことは黙っていてください。まだ、時ではない﹄ ﹂ ? それと、私がここの支部長だって事はここにいる皆の秘密。ね ﹂ ﹁あ、そうだ苗木くん。改めて自己紹介、元超高校級のゲーマー七海千秋、よろしくね。 報告されるとは、つまりそういうことなのだろう。 2人のやりとりを見て苗木は七海が現状どう言った立場なのか理解する。わざわざ ﹁ううん。わがまま言ってごめんはさい⋮⋮⋮﹂ ﹁何名かは、すまんの⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮殺したの 圧は終わったぞい﹂ ﹁おお、そうだ七海よ、内部に侵入した絶望の残党および外に攻めてきた絶望の残党の鎮 残念そうにため息を吐く七海。 ﹁そっか、知らないなら仕方ないね﹂ ﹁⋮⋮知りませんね﹂ 751 ? 閑話⑧ 安藤流流歌の過去 お菓子作りは得意だった。母親の手伝いをしていたから、やっている内に覚えた。 友達が喜んでくれるのが好きだった。 ﹂ ﹁あ、あのこれ⋮⋮カヌレ作ってみたんだ﹂ ﹁わー、ありがとうルルちゃん ﹁うん。一緒に食べ││﹂ ││よう、と言いきる前に友人は走り去ってしまった。最近、多い。 ! ﹂ ﹂ 除け者にされている訳ではないのだが、少し寂しい。ほんの出来心で、後を付けてみ ることにした。 ﹁どう十六夜くん、美味しい ? 明日も作ってくるね ! ﹁おいちい﹂ ! そこでみたのは、安藤が作ったお菓子をさも自分が作ったかのように誇らしげに男子 ﹁良かった∼ 閑話⑧ 752 に食べさせている友人の姿だった。 ﹂ ﹁そ、それ流流歌の⋮⋮﹂ ﹁あ、る、ルルちゃん ていた。 ﹁これはお前が作ったのか ﹂ あたしが作ったんじゃん 嘘つくなよ ﹂ 友人はしまったと言うような顔をして男子に振り返ると男子はジッと安藤を見つめ ! あ⋮⋮う、うん⋮⋮﹂ ! ﹁え ﹂ ﹁何言ってんの ﹁ひっ !? ? 次の日、朝早速十六夜がお菓子を取りに来た。渡す時ひそひそと話し声が聞こえたの 第一印象は、変な奴⋮⋮⋮。 ﹁⋮⋮えっと⋮⋮⋮え、えぇ∼⋮⋮うん﹂ ﹁毎日俺のためにおいちいお菓子を作ってくれ﹂ 手を掴んで頼み込んだ。 安藤の言葉に友人は慌てるように叫ぶが十六夜は耳を貸さず安藤の下まで来ると両 ! ! ? 753 ﹂ で振り向くが目を逸らされた。 ﹁おはよー﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁あ、あれ⋮⋮あ、おはよう ﹁無視される ﹂ それから一週間、お菓子を取りに来る男子、十六夜惣之助としか話せていない。 るとクスクス嘲るような笑い声が聞こえてきた。 近くの友人に挨拶を無視され、別の友人に挨拶したがこれも無視された。戸惑ってい ! ﹂ そしてその日久々に友達に遊びに誘われた。 居ないため、必然的に話す時間も増えた。 安藤のお菓子を食いながら不思議そうな顔をする十六夜。話せる相手が十六夜しか ﹁こんなに美味しいのに﹂ ﹁うん⋮⋮お菓子も食べてくれなくて﹂ ? ﹁⋮⋮あんたさぁ、最近なんなの ? 閑話⑧ 754 ﹁⋮⋮⋮へ た。 ﹂ ﹁何十六夜くんと仲良くしてんのよ、お菓子でつってさぁ ﹂ ﹁だ、だって⋮⋮十六夜くんが欲しいって⋮⋮﹂ ﹁物でつるとかサイテー﹂ ﹁顔に自信ないからじゃん ﹂ 公園についた途端にトイレの裏に連れてこられ、待機していた数人の女子に睨まれ ? あんたあたしより勉強できる ﹂ 出来ねえ 男に色目使ってん 運動できる ふざけんな ? が、どうやら気に入らなかったらしい。 ﹂ ﹁んだよその目は事実だろうが だろ ﹂ ! !? ! ﹁そ、そんなこと⋮⋮何で、そんな酷いこと言うの ﹂ ﹁酷いのはお前だ裏切り者 ﹁う、裏切り⋮⋮ ﹂ ! ? ﹁仲 良 く し て や っ て ん の に 十 六 夜 く ん 取 り や が っ て じゃねえよ ! ! ! ? クスクスと笑顔で放たれていく理不尽な言葉の暴力に涙目になりながらも睨み返す。 ﹁お菓子作りしか出来ないもんね∼﹂ ? ! 755 ﹁る、流流歌、そんなつもりは⋮⋮ ﹂ だから、女子は気に入らない。仲良くするのが、自分以外の存在であるという事が、自 た。 そんなつもりは無い。彼は、ただの友人の1人だ。だが不幸なことに彼は人気者だっ ! 分以下の存在であるという事が⋮⋮。 ? 下校中、十六夜は甘い匂いを感じ公園に向かう。トイレの裏からだ。隠れて誰かが食 ﹁⋮⋮⋮お菓子の匂い﹂ ﹂ べているのだろうか ﹂ ﹁⋮⋮⋮安藤 ﹁ッ ? げる。 十六夜がうずくまっていた少女の名字を呼ぶとビクリと肩を震わせ恐る恐る顔を上 !? ﹁⋮⋮ ﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁ちょうど良かった⋮⋮何時ものおいちいお菓子をくれ﹂ 閑話⑧ 756 ? 不意にゾクリと取り返しのつかないことを、大切な物を底の見えない穴に落としたよ うな悪寒を感じる。 流流歌には、そ 安藤はゆらりと立ち上がり土を払うと十六夜に駆け寄って抱きついてくる。 お菓子、いくらでも上げるから ﹁⋮⋮うん⋮⋮あげるよ⋮⋮いくらでも⋮⋮﹂ ﹁おお、良いことを言う⋮⋮﹂ ﹁だから⋮⋮﹂ ﹂ ずっと流流歌の側にい ! ﹁⋮⋮ ﹁⋮⋮だから、流流歌を裏切らないで れしかないけど⋮⋮でも、でももっと美味しいお菓子作るから ! ? 絶対に、裏切らないで⋮⋮お願い⋮⋮お願い、します⋮⋮⋮⋮﹂ ! しかも、もう片方のせいで ﹂ ﹁これが公式だったら絶望的だよね∼⋮⋮⋮だって、片方はある意味壊れてんじゃん。 その肩は余りに小さく、弱々しい。だから、守ってあげなくてはと思った。 えぐえぐと泣く。 その声は段々と小さくなっていき、終いには嗚咽に変わり十六夜の胸に頭を押しつけ て ! 757 ! ジ ャ バ ウ ォ ッ ク 島 の 図 書 館 に 会 っ た 絵 本 を 読 み な が ら ケ ラ ケ ラ 大 笑 い す る 江 ノ 島 ﹂ だったが話しかけた相手である苗木は月光ヶ原が書いた本を読みながら難しい顔をし ていた。 ﹁どったの ⋮⋮今更 ちょっ、気づくの遅すぎっしょ !? ! らドS、所謂サディストなのかも知れない﹂ ﹁は、え ﹂ ﹁うん⋮⋮この本を読んで性格診断をしてみたんだけど⋮⋮⋮⋮⋮ボクはひょっとした ? 苗木はあたしを絶望させるためだけ 何時かそれも本物愛に変わるよ﹂ ﹁そ れ に 引 き 替 え あ た し 等 は 相 思 相 愛 だ も ん ね ? これあたしの写真集じゃん ﹂ これでガードするとかあたしへの愛が感じない ! ﹂ 江ノ島は笑顔で苗木の背中をバシバシと叩き、一瞬でナイフを袖の下から出したが苗 に、あたしが最も嫌がるお仕置きしてくれたしさ ! ! ﹁良いんじゃない ﹁にしても⋮⋮依存と偽善って対した恋仲だよねこいつらも﹂ で笑いまくった。 苗木が解せないと言うような顔で唸っていると江ノ島はヒーヒーと過呼吸になるま ? ! 木が近くの冊子で防いだ。 ! ﹁愛ねえ⋮⋮⋮﹂ ﹁げ 閑話⑧ 758 ﹁何、まさか愛してないとか言う気 もう他に好きな人が出来たの !? ﹂ ? ﹂ ? その日の苗木の第一声はそれだった。 ﹁⋮⋮⋮夢か。後少しだったのにツイてない﹂ ていった。 江ノ島は苗木の言葉に責めるように良いながらも、手をつないでコテージまで向かっ ﹁やん、苗木のエッチ♪﹂ ﹁じゃあ愛の結晶でも作ってみる 759 スコアガール① ﹁⋮⋮あ、また負けた﹂ ﹂ 支部長の私室⋮⋮の奥の隠し部屋でゲームをする2人の影。後ろではゲームがつま ﹁うーん、苗木君やるね。勝つのが難しくなってきたよ﹂ れた棚の隙間に嵌まる影。 苗木と七海、そして聖原だ。 ﹁良いんですか七海先輩。宗方さん、あなたに会いたがってましたよ だからその支部長は七海先輩じゃないか、と思ったが口に出さないでおく。 てる手腕に興味があるんでしょ﹂ ﹁私じゃなくて支部長、だよ。私個人ではなくしっかり保護した人物にも箝口令をしけ ? ﹂ きさき ﹂ ﹂ どうせ支部長って立場の人間にしか興味がないんだよ、とか言ってくる。 ﹁ランクにすると ﹁ううん。別の人⋮⋮姫咲ちゃん。苗木君にとって新キャラだね ? ﹁⋮⋮⋮Cかな⋮⋮使えるような、使えないような⋮⋮そんな人。でももと御令嬢だか ? ! ﹁なら大文字さんに任せると スコアガール① 760 らプライドが高くて、偉い立場の人には見えるんじゃないかな⋮⋮⋮あ、次はこれやろ ﹂ トし起動する。 ﹁そういえば七海先輩って⋮⋮﹂ ﹁ん∼⋮⋮待ってて、今クエスト選んでるから⋮⋮⋮これでいっか。で、何だっけ ﹂ と、七海は﹃モンスター・ハンティング﹄。通称モンハンのカセットをゲーム機にセッ ? ﹂ ﹁七 海 先 輩 っ て 死 ん だ ん じ ゃ ⋮⋮ 江 ノ 島 さ ん の 日 記 に 無 駄 に 精 巧 な 絵 で 描 か れ て た よ ? 761 ﹂ ? ﹂ ? ﹂ ! ﹁気づいたらご飯とゲームが用意された部屋にいて。怪我が治って外に出てみたらびっ ﹁多分 ﹁多分﹂ ﹁⋮⋮⋮日向先輩に助けてもらったんですね﹂ ﹁カムクライズルじゃないよ。日向創君だもん ねった。振り向けばむ∼と頬を膨らませていた。 一応日記にも彼がそこにいたことは書かれていた。と、不意に七海が苗木の頬をつ ﹁それって⋮⋮カムクライズル ﹁⋮⋮⋮⋮⋮助けてもらったんだ﹂ ? くりだよ⋮⋮﹂ ﹂ 片手で操作しながら苗木のサポートがあるとはいえモンスターを圧倒していく七海。 苗木も観察しながら技術を覚えていく。 ﹁よく日向先輩に助けてもらったってわかりましたね ﹂ ? じゃあ苗木君も教えてないじゃん﹂ でも、なら何で七海先輩は雪染さんの秘密教えないの ﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁それも江ノ島さんの日記 ﹁ん 度だったら平和なのにと思いながらモンスターの尻尾からアイテムをはぎ取る。 にへら∼とだらしない笑みを浮かべる七海。苗木は好意を寄せてくる女子がこの程 ﹁少しだけ覚えてるんだ。私をベッドに寝かせる時、私を抱えてたあの腕は日向君だよ﹂ ? 達って洗脳されたんだって﹂ ﹁ま、教 え て あ げ る よ。え っ と ね ⋮⋮ 日 記 に 書 い て あ る と 思 う ん だ け ど ⋮⋮ 雪 染 先 生 ? ? ﹁雪染先生のために ﹂ もし出来ないって解ったら ﹁やれば何とかなるって奴だよ ! ? ﹂ ﹁だから、洗脳が解く事が絶対に出来ないって解るまで秘密にしておくの﹂ モンスターに大樽ボムを投げつけ生じた隙に七海が切りつける。 ﹁⋮穏やかじゃないね﹂ スコアガール① 762 ? ﹂ とどめを刺しふんす、と叫ぶ七海。つまり、諦める気は無いと言うことだろう。 ね ? ? プス ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ? ﹁なるほど﹂ そしたら、誰の命令も聞かなくて済む支部長に⋮⋮﹂ ﹁日本おじいちゃんと天願さんに頼んだんだ。保護されたことを秘密にしたいって⋮⋮ ﹁七海先輩よく支部長になれましたね﹂ り高くなった。腕を鳴らしていたのだろう。 七海は掌をスリながら新たなクエストを選択する。今度はクエストのランクがかな ﹁苗木君のこれって⋮⋮⋮風間君の髪の毛みたいなんだね。他の髪は普通なのに﹂ ﹁⋮どうしました ﹂ ﹁⋮⋮⋮日向君もだけど、これどうなってるんだろう﹂ に目がいく。 苗木の頭を撫でながら満足げな顔をする七海は、ふと苗木の頭頂部に聳えるアンテナ ﹁うんうん。苗木君はテレビで怖くなってたけどやっぱり良い子だね⋮⋮よしよし﹂ ﹁ま、ボクが困ることでもないからいいけど⋮⋮⋮﹂ ﹁だから苗木君、秘密にしてくれるよね 763 実質的支配者の宗方でも、あくまで第二支部支部長。七海と立場は同等だ。天願には 逆らえない。今回わざわざ来たのは天願が執拗なまでに秘匿する第十三支部支部長の 正体を見ようとしたのだろう。 ﹁私なんて大したこと無いのにな﹂ ヤマクイという巨大なモンスターの手足を切り落としながらため息を吐く七海。苗 木も手足をかわしながら周りによってくる虫を切り裂く。 ﹁嫌になっちゃうよ。江ノ島さんも、何で私を選ぶかなぁ⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁人気者だからでしょ﹂ ﹁私は雪染先生がいなくなったクラスを纏めようと頑張っただけだもん。本当はやるこ ﹂ とが終わったら、毎日放課後は日向君とゲームしたかったのに⋮⋮⋮雪染先生と日向君 のバカ ? ないようにアイテムをはぎ取った。 ﹁へえ⋮⋮⋮あ、じゃあ私もその組織に入って良い 雪染先生も私を殺しにこないだろうし﹂ 未来機関も手出しできなくなれば 七海は倒してもスッキリしないのか死体をズバズバ斬っていく。苗木は巻き込まれ ヤマクイがもの凄い勢いで切り刻まれていく。プログラムとはいえ哀れ⋮⋮。 ! ﹁実はボク、未来機関抜けようと思うんですよね﹂ スコアガール① 764 ﹁いいよ﹂ ゲームをしながら、全く緊張感が無い様子で新たな組織の発足を伝える苗木とあっさ り入る七海。 ﹁そんな ボクみたいな人畜無害の羊のような人間に嫌われる要素が ﹂ !? ね﹂ ﹁その羊の背中にはファスナーがついてるんだろうね。中にいるのは狼どころか狼男だ ! ﹁あ、でも姫咲ちゃんは誘わない方がいいかも⋮⋮⋮彼女、苗木の事嫌ってるから﹂ 765 スコアガール② ﹁千秋、戻ったぞ⋮⋮聞いてくれ奴らと来たら本当に私が支部長なのか に本来の支部長は七海だが、私とて実質的支部長ではないか﹂ ﹂ だと⋮⋮確か ﹁うーん。実質的支部長は姫咲ちゃんじゃなくて大文字さんだ⋮⋮と、思うよ⋮⋮ ? ? 苗木と七海がゲームをしていると突如隠し部屋の扉が開き見覚えのない女性が入っ ﹂ てくる。七海とのやりとりからして知り合いだろう。 ﹁何だ、二人きりの時は礼歌と呼べと⋮⋮ !? 何故ここにいる ﹂ 姫咲ちゃんと呼ばれた女性は苗木の存在に気づくと慌てて目元を隠す仮面を取り出 苗木誠 !? し装着する。 ﹁貴様 ! ていたが唐突に停止させると振り返る。 叫んでくる姫咲を前に苗木は七海をチラリと見る。七海は我関せずとゲームを進め ! やりとりからして仲がいいのだろう。 ﹁う、す⋮⋮すまん千秋⋮⋮﹂ ﹁礼歌ちゃん。め、だよ。苗木君はお客さんなんだから﹂ スコアガール② 766 しかし、何だろうこの小物臭は⋮⋮⋮十神と似た気配を感じる。 真に優れているのは高貴な血筋 ? ﹁あん ﹂ ﹁⋮⋮ふん。気に障ることを言ってしまったか ﹁じゃ、ボクは出てくよ﹂ 私以外とゲーム⋮⋮ !? ﹁またゲームしようね﹂ ! ﹁大丈夫だよ。礼歌ちゃんにゲームを勧めたのは私だもん﹂ ﹁な、何だと千秋 た、確かに私は下手だが⋮⋮⋮﹂ た。十神とは違い愛嬌があるのがせめてもの救いか。 苗木は七海の後ろに隠れながら傲慢に振る舞う姫咲に苗木ははぁ、とため息を吐い ﹁⋮⋮⋮⋮せめて七海先輩の後ろから隠れずに言おうよ﹂ ? ? 低い証拠だな﹂ だが気に入らなければ睨むなど許容が ﹁江ノ島盾子とて、元々は私が殺してやるつもりだったというのに⋮⋮﹂ う。十神は勝利の経験に基づく自信があったわけだが⋮⋮。 なるほど十神と似た気配がするはずだ。かなり高い階級で生まれ、育ってきたのだろ ﹁⋮⋮⋮ふーん﹂ たる私1人だ﹂ ﹁苗木誠、英雄などと呼ばれているが調子に乗るなよ 767 仲がいい。あの性格では友達も出来ないだろう。きっと、七海が初めての友達に違い ない。 そう言えば高校生活でも十神と仲良くなってから気味悪いぐらい親しげに話してき た気がする⋮⋮。 ﹁いくよ、聖原くん⋮⋮﹂ ﹁はい﹂ ﹂ 苗木と聖原が支部長室から出て数歩歩き、二人は同時に振り返る。 ﹁君、だれ⋮⋮ ち込まれる文を分析する。 ? 予想通りでツマラナイ言葉だ。そんな言葉に苗木は⋮⋮ してほしい︼ 彼らの危険性もわかったはずだ。殲滅するために協力 いる。そして、こちらの利用価値を理解している。次に言う言葉⋮⋮いや、PDAに打 苗木は捧我を緑と蒼の双眸で見つめ、直ぐに飽きた。信仰はしていないが尊敬はして は超高校級のスタッフ捧我渉。以後、よろしく︼ ︻おやおや気づかれていたか。ふむん、我もまだまだのようだ。初めまして英雄殿。我 ? ︻今日、絶望達の連中を見たろ スコアガール② 768 ﹁絶望の危険性 確かに見たけど、殲滅するための協力は出来ないな。そこまで危険と 測通りに動くのは楽しい。 我は、間違っていないはずだ。そうだろう ﹁話はそれだけなら行くね﹂ ︻ま、待ってくれ 苗木はニッコリ笑ってその場から立ち去った。 ﹁⋮⋮⋮自分で考えな﹂ ﹂ ツマラナイ質問ならお断りです﹂ 苗木は屋上でカムクラとコーヒーを飲みながら会話をする。 ﹁何ですか ? ﹂ ? 苗木の言葉にカムクラはピクリと肩を揺らす。その反応を見て苗木は自分の予測が たりします ﹁カムクラ先輩って体験したこと無い記憶を持ってたり、もしくは未来の記憶を持って ? なのに何故⋮⋮︼ 苗木の言葉にポカンと固まる捧我を見て苗木は満足げに頷く。自分の行為で人が予 は思えないしね﹂ ? ! ﹁カムクラ先輩、一つ聞いて良いですか ? 769 当たっていることを確信した。 ﹁⋮⋮流石ですね。てっきり、何故助けたかを聞かれると思ったのですが⋮⋮あります よ﹂ と予測したのだ。 江ノ島の日記に書かれていた事と、実物のカムクラを見て彼が七海を助けるとは思え なかった。ならば、普通では有り得ないことが起きたのでは ﹁⋮⋮⋮南国﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ 苗木はふぅん、と赤い夜空を眺める。未来の記憶、カムクラと日向創は別だからかそ んな夢を⋮⋮気がついたら彼女を助けてました﹂ 途中、モノクマがやってきましたが⋮⋮途中までは予想通り、けど最後が違った⋮⋮そ ﹁南国で、僕は彼女を含めた77期生達と日向創としての僕が過ごしていたんですよ。 ? れを本来の記憶とは認識せず謎の記憶と思っているようだが彼もまた苗木と同類なの だろう。探せば他にも居るのかもしれない。 ﹂ ? ﹁⋮⋮⋮ああ、これですね﹂ ﹁今日は何故か臭いますね。それも、他の奴らとは比べ物にならないほど⋮⋮﹂ ﹁何ですか ﹁⋮⋮⋮⋮時にカムクラ先輩﹂ スコアガール② 770 カムクラは懐からメモリースティックを取り出す。苗木はカムクラが取り出したメ ﹂ モリースティックをジッと見つめる。 ﹂ ﹁お貸ししましょうか ﹁⋮⋮⋮良いの た。 苗木は笑顔で屋上の出口に向かって歩き出す。カムクラも、何時の間にか消えてい に使おっかな∼⋮⋮⋮取り敢えずあの女を潰すのを手伝っても∼らお♪﹂ ﹁わかってますよ⋮⋮⋮ふーん、そう言うこと。ただでは死なないね彼女も。面白い、何 くまでには返してください﹂ ﹁あなたなら面白いことに使いそうなので。ただ、貸すだけです。僕が塔和シティに行 ? ? 771 スコアガール③ 苗木は13支部に用意された部屋でふぁ、と欠伸をする。 苗木は部屋の外にいる逆蔵や宗方の部下であろう人物達の片づけを頼む。 ﹁聖原君、希望ヶ峰さん、外の人たち片付けよろしく﹂ ﹁なるべく平和的にね﹂ 希望ヶ峰はぺこりとお辞儀して部屋から出て行った。 ﹃はい。しっかり失踪させます﹄ ﹂ 苗木は苗木で明らかに女性が手を加えたデコケータイを弄る。 ﹁⋮⋮お、面白いものみーつけった♪これ、どーしよっかなぁ かべる。 ﹁ああ聖原君、終わった ﹂ 苗木はパスワードを解きセキュリティーを解除し、中身を確認してにひぃと笑みを浮 ? きました﹂ ﹁終わりました。ついでに、彼等が逆蔵から依頼を受けていた証拠も、個人情報も消しと ? ﹁先生﹂ スコアガール③ 772 ﹁⋮⋮ふぅん。なら行方不明になった原因がボクと関係してるのは、逆蔵さんの証言だ けになるわけか⋮⋮⋮﹂ いくら宗方が逆蔵を信用しているとはいえ、支持者が多い苗木を逆蔵の証言だけで糾 弾することは出来ない。 ﹃楽しい、ですか ﹄ 楽しみが解らなかったのかな ﹂ 次の日、苗木達は支部長室の隠し部屋に向かおうとすると、このタイミングで一番会 ﹃おやすみなさい﹄ ﹁おやすみなさい先生﹂ ﹁じゃ、お休み∼﹂ はない。 苗木は江ノ島に解ってもらいたいだけなので他の誰が解ろうと努力していても興味 ﹃⋮⋮⋮⋮すいません。私も何が楽しいのか⋮⋮﹄ ? ? ? ﹁楽しいよ。解らない 予想通りと予定通りは別物なんだよ⋮⋮江ノ島さんは何でこの ﹁いいねいいね。予定を組み込むのは楽しいね﹂ 773 いたくない奴に出会った。 ︻やあ、苗木誠君︼ ﹁先生は今忙しい﹂ ﹃アポを取って出直してください﹄ 俸我が笑顔で手を振ってきたが苗木が一瞬嫌そうな顔をすると苗木の心情を察して くれた二人が苗木と俸我の前に立った。 ︻我は随分嫌われたようだな︼ ﹁いえ、生理的に受け付けないだけです﹂ ︻⋮⋮⋮︼ 人が予定通りに動くのは楽しいが、人の予定に組み込まれるのは何となくいやだ。だ から、明らかに苗木誠と言う存在を欲しがっている俸我は苗木に取ってゲーム中に起こ るバグレベルで受け付けない。 ﹂ ? 支部支部長の許可がない今長期滞在は出来ないだろう。 絶望の残党が去った今、いくら支部長とはいえ所詮他の支部の人間である彼等は13 ︻結局あの女が本物の支部長なのか、影武者なのか証拠がでなかったでな︼ ﹁今日の午後 ︻まあまあ、我等は今日の午後立ち去るのだ。少しぐらい話をしようではないか︼ スコアガール③ 774 ﹂ ︻所で⋮⋮︼ ﹁ て叩かれるのは彼等だ。 ﹂ 逆蔵と違い考える頭があるようだ。 ﹁お話は終わりですか ? ︻⋮⋮⋮⋮よけいな時間をとらせてしまったか すまなかったな︼ の命令実行した証拠がない今、苗木が知らないと一言言えば証拠もなく疑ったものとし おそらく苗木につけていた監視について尋ねようとしたのだろう。しかし逆蔵がそ ︻⋮⋮⋮いや、何でもない︼ ? た。しかも殺気を隠そうともしない⋮⋮。 ﹂ ﹁おい⋮⋮俺の部下をどこにやった⋮⋮﹂ ﹂ てめぇの監視命じてた俺の部下が失踪してんだよ ﹁⋮⋮何の話ですか ﹂ ﹁とぼけんな るだろ ! ? 苗木は訳が分からないというように首を傾げた。その態度が気にくわなかったのか ﹁⋮⋮⋮監視 ! ? ! てめぇ、何か知って 苗木達は俸我と別れ再び七海のいる部屋に向かおうとすると、今度は逆蔵に出会っ ? 775 逆蔵は苗木の胸ぐらをつかみ持ち上げる。 ﹁あまりなめた態度取ってんじゃねえぞ⋮⋮﹂ ボクが嫌いだからつけてもない監視をつけたといって、勝 ? 手に行方不明扱いしてるだけじゃ⋮⋮﹂ ﹁それ、本当の話なんですか ﹂ ! る。 ? 希望ヶ峰の言葉に苗木は笑顔で頭を撫でてやると、再び七海のいる部屋に向かって歩 ﹃かしこまりました﹄ いてよ﹂ ﹁平気平気。それより希望ヶ峰さん、今の映像、うまく編集して第6支部の職員に送っと ﹁先生、大丈夫ですか ﹂ 逆蔵の姿が見えなくなると苗木は懐から取り出した針を自分の体に刺して起きあが 逆蔵は唾を吐き捨て去っていった。 ﹁⋮⋮⋮⋮っち﹂ 苗木はうぇぇと唾液を吐き出した。 朝 食 を 食 べ る 前 だ っ た か ら 良 か っ た が 食 べ て い た ら 間 違 い な く 戻 し て い た だ ろ う。 と、苗木の腹に逆蔵の拳がめり込む。 ゴッ ﹁てめぇ ! スコアガール③ 776 き出した。 ﹁ん なんかいった ﹂ ? いや、なんとなく解るが。 ? ﹂ ? ちょっとどころか二時間はゲームに付き合わされたが⋮⋮⋮。 があって来たんだよね ﹁うん。私もそう思ってた⋮⋮あ、ごめんちょっとゲームにのめり込みすぎてた。用事 ﹁何も、あ、その選択肢﹃君は何にでもなれるよ﹄が良いと思います﹂ ? ﹁⋮⋮⋮恋する乙女って、いろんな意味でかわいいなぁ﹂ からだ。誰を意識しているのだろう なければ七海がまず最初に攻略するキャラは平凡ながらヒロインと趣味の合うキャラ はぁ、とため息を吐きながら平凡な男子を攻略しようとする七海。苗木の気のせいで ﹁ゲームはいいよね、アイコンで会いたい人に会えるんだもん﹂ 肢がいいか聞かれるのでキチンと答えておいた。 苗木は七海の後ろで七海がやっている恋愛ゲームを眺める。時折七海からどの選択 ﹁オールジャンルで行けるからね﹂ ﹁恋愛ゲームもやるんだね﹂ 777 ﹂ ﹂ ﹁確かここ、モノクマロボットがたまに攻めてくるんですよね ですか ﹁良いけど、どうするの ? ? ﹁ロボットを作る﹂ スコアガール③ 778 その残骸もらって良い ? スコアガール④ 苗木はふんふんと鼻歌を歌いながら通路を歩く。 メモリースティックについたモノクマのキーホルダーの紐に指を通しクルクル回し ながら廃棄物置き場まで向かう。 ﹂ いや、左か あ、苗木誠 ﹂ ﹂ ﹂ と唸っている モノクマのキーホルダーなど持っていたらまず間違いなく見咎められるだろうが、幸 いなことに誰ともすれ違っていない。 ﹁えっと⋮⋮⋮この分かれ道どっちだっけ と、苗木は二手に分かれた道を見て固まる。確か右⋮⋮ ﹁ん ﹁Oh ? 1人の日本人が苗木に気づくとほかの面々も苗木に駆け寄ってきて次々に様々な国 ﹁え、ちょ⋮⋮⋮ ! ! ! ? 外国人も混じった団体だ。 足音は複数だ。と、右の通路から団体で現れる。 と足音が聞こえてきたので慌ててメモリースティックをしまう。 ? ? 779 の感謝の言葉を送ってくる。 江ノ島を倒した苗木にお礼を言っているのだろうが苗木はせいぜいサンキューと謝 謝ぐらいしか理解できなかった。 ﹃皆さん、苗木さんが困ってますよ﹄ ﹂ ﹁大文字さん ﹂ ﹂ ﹂ 去っていく集団を後目に大文字は苗木に謝罪する。 ﹁こんにちは苗木君。彼らを悪く思わないでくれ﹂ ﹁今、何したんです ﹁ミーの編み出した汎用言語サ ! ? あいにく苗木には聞き覚えがない。 ? ? 会議の時と違いテンションが高い。これが素なのだろうか だろうか しかし汎用言語とは何 その音を聞いた瞬間、それは言葉となって苗木の脳裏に伝わる。 ﹁⋮⋮ん ? ? 目指してた﹂ ﹁敬語に聞こえたのはボクの脳が勝手にそう翻訳したからか⋮⋮⋮ん してた ﹂ ? ﹁これはどうも使い勝手が悪くてね。下手したら洗脳や精神の汚染になるかもしれない ? ﹁どんな国の人間にも母国語として聞こえる言葉サ。ミーはこれで全世界の言語統一を スコアガール④ 780 のサ﹂ ﹂ ? ﹂ ? ﹂ ? 良かったら力になるよ⋮⋮﹂ ? そうか、すまな⋮⋮⋮﹂ ? 手伝いを申し出た人物にお礼を言おうとして、花美はビシリと固まる。そこにいたの ﹁ん ﹁誰か探してるの に、少年も何処に行った ﹁全 く 何 処 に 行 っ た ん だ。そ ろ そ ろ 帰 る 準 備 を し な く て は な ら な い と い う の に。そ れ 花美は佐々苗を探して第13支部を歩き回っていた。 ﹁ところで廃棄物置き場ってどっちだっけ ﹁構わないよ。ミーとキミは今日からフレンドだ﹂ んか たんですねボク。えっと、大文字さん。差し支えなければボクと友達になってくれませ ﹁まあおかげで助かりました。一応英雄だって自覚はありましたが思ったより人気だっ 暫く何かを考えた後、苗木は大文字に手を差し出す。 苗木は興味深そうに呟く。 ﹁⋮⋮⋮洗脳、ねえ⋮⋮⋮﹂ 781 は人ではなかった。 丸い体型、丸い耳、熊のような⋮⋮⋮というか熊のぬいぐるみそのものの見た目で、右 苗木君に作られた熊型ロボットなのだ ﹂ 半身はかわいらしいシロクマ、左半身は白に近い灰色の邪悪な熊。しかし包帯で隠され ている。 ﹂ ! ﹁も、モノクマ ﹂ ﹁はじめましてボクシロクマ ﹁し⋮⋮⋮シロクマ ﹂ ? ! !? 知ってるよ ﹂ こっちこっち⋮⋮⋮﹂ ﹁なら、少年が何処にいるか知ってるか うか 名前を呼ばれて胸を張るシロクマ。というか今、苗木に作られたと言わなかっただろ ﹁えっへん ! ! しかしこんなモノ作れたのか彼⋮⋮⋮。 の、中には綿が入っている感触だ。恐らく骨組みのみがロボットなのだろう。 花美が苗木の居場所を尋ねるとシロクマは花美の手を持って歩き出す。フェルト地 ﹁うん ? ? ! ﹁少年は超高校級の幸運だったと記憶していたんだが⋮⋮⋮⋮﹂ スコアガール④ 782 シロクマに連れられ歩くこと数分。 屋上の入り口が見えてきた。どうやら苗木は屋上に居るようだ。ここの屋上なんて ⋮⋮⋮精々電波が良く通る程度しかメリットはないが、誰かに電話しているのだろうか ? ﹁おーい 苗木く∼ん ﹂ ﹂ 花美さん﹂ ﹁やあ少年。誰と話していたんだい ﹁あ、シロクマ⋮⋮⋮ん ! ﹂ ? ﹁明日時間あいてます ちょっと、今後の方針について色々な人たちと話したいので﹂ 苗木は花美の言葉に了解し、思い出したように呟く。 ﹁はーい⋮⋮⋮あ﹂ から準備をしてくれないか ﹁そうか、ところで。私達も何時までもここに長居する訳にも行かない、明後日には帰る かったです﹂ ﹁は い ち ょ っ と 昔 の 先 輩 と ⋮⋮ ど う や ら 生 き て た ら し く て、番 号 も 変 わ っ て な く て 良 ? ? ! がやはり誰かに電話していたらしい。 屋上の扉を開けると苗木の声が聞こえてきた。あいにく風で良く聞き取れなかった ﹁はい、そうです。はい⋮⋮││を、その日に⋮⋮⋮お願いしますね││先輩⋮⋮﹂ 783 ? ﹁ん スコアガール④ 784 あ、ああ⋮⋮わかった﹂ ? スコアガール⑤ 苗木は並べられたテーブルの上にノートパソコンを一つ一つ置いていく。 上座に座るのは七海千秋。何やら緊張しているようにも見える。 ﹂ ? ﹂ ﹂ ﹁何で苗木先輩を睨んでるんですか ? ﹁あ、えっと⋮⋮未来機関第十三支部真支部長七海千秋です﹂ とさすがに苗木を睨むのをやめて二人を見る。 彼女達は始めてみる七海に不思議そうな視線を向ける。七海も二人の視線に気づく ? ﹁お待たせ。おや、そちらの子は 刻は既に十時近く。と、そこへ佐々苗と花美もやってくる。 七海がむー、と睨むが苗木は何処に吹く風で受け流し最後のパソコンを起動する。時 ﹁⋮⋮⋮それって会長の座を押し付けようとしてない ﹁そしたらボクが会長にならなきゃいけないから却下で⋮⋮﹂ ﹁私より苗木君のが影響力高いんじゃ﹂ ﹁はい﹂ ﹁あ、あの、苗木君⋮⋮⋮やらなきゃダメかな﹂ 785 ﹂ ﹁これはご丁寧に。未来機関第十四支部支部長花美桜花だ。と、なると⋮⋮ご令嬢は偽 物だったということか﹂ えっと⋮⋮この人が第十三支部支部長なんですか ﹁才能は本物だけどね﹂ ﹁へ ? ? ぬ存ぜぬと酒を煽る。 画面のそのまた向こうの画面越しだ。物理的に止めることは出来ないので黄桜は知ら とぼけた様子で黄桜が笑い、グレード・ゴズがそんな黄桜を窘める。とはいえ互いに ﹃黄桜さん、お酒は控えてください﹄ ﹄ そこに映っているのは、全員でこそ無いものの、未来機関の幹部達だからだ。 見つめ佐々苗は驚愕で固まっている。 苗木は画面に映った面々ににこやかに微笑む。花美はほぅ、と感心したように画面を ﹁こんばんは皆さん﹂ 苗木が時計確認してつぶやくと、ノートパソコンの画面が一斉に切り替わった。 ﹁⋮⋮⋮と、そろそろ時間だね﹂ ていたのか大して驚いた様子はない。 佐々苗は驚いたように七海を見る。花美はもとから姫咲が支部長じゃないと予想し ? ﹃よー、苗木君。いきなりメールが来るから何事かと思ったけど、実際何事 スコアガール⑤ 786 ﹃苗木君 あら苗木君、ごきげんよう﹄ 早く帰ってきてくださいね﹄ ﹃どけビチクソ共 ﹃待ってるよ﹄ ! か朝日奈さんにおねがいするわ﹄ ﹃待て、何故石丸なんだ。ここは俺だろう﹄ ﹃霧切よ、我では務まらぬよ。お主に任せたい﹄ ! ﹃⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹄ ﹁あれ月光ヶ原さんどうしました 声を出そうとしたのだが断念してしまって残念だ。 苗木は赤くなった顔で見つめていた月光ヶ原は苗木の言葉にさらに赤くなる。途中 ! ? ﹃何でも⋮⋮﹁何でもありまちぇん ﹂﹄ 赤くなって唇押さえて﹂ する。彼女もどうやらお疲れのようだ。 別の画面では霧切達のやり取りが。気のせいか霧切の目の下に隈が出来ている気が なったわ﹄ ﹃⋮⋮⋮⋮そう。お待たせしたわね苗木君。78期生、代表は男子石丸君、女子は私に ﹃うんうん。戦刃ちゃん達に言うこと聞かせられるの霧切ちゃんだけだもんね ﹄ ﹃⋮⋮⋮三人とも、マテ。石丸君、男子の代表で来てくれるかしら。女子は⋮⋮大神さん ! 787 ﹃それで、何で私達を集めたの クラスは全滅したって⋮⋮⋮﹂ ﹄ 一年前の、人類史上最大最悪の絶望的事件の始まりを語る。 七海はそう呟くと画面を見回す。誰も反論することはない、すぅ、と息を吸い七海は ? ? ﹁えっと⋮⋮話が長くなるけど、聞いてくれる ﹂ ﹁⋮⋮本人、みたいだがどういうことだ 雪染ちゃんの話じゃ、77期生の雪染ちゃんの をまじまじ見つめる。 七海の言葉にざわつく一同。特に黄桜など酒を飲む手を止め目を見開いて七海の顔 校のゲーマーです﹂ ﹁こんばんは。未来機関第十三支部本当の支部長の七海千秋です。えっと⋮⋮⋮元超高 ﹁うん。詳しい話は彼女から﹂ 忌村はカメラを通してみた会議室の中のノートパソコンを見て苗木に尋ねる。 ? ゴズが顎に手を当て呟き花美も根も葉もない噂話を思い出す。所詮は都市伝説⋮⋮ ﹁にわかには信じがたいけど、それなら都市伝説が事実だったということになるね﹂ ⋮⋮﹄ ﹃⋮⋮⋮ 洗 脳 技 術 に よ り 絶 望 化 し た 超 高 校 級 の 才 能 持 ち 達 に よ る 世 界 の 破 壊、で す か スコアガール⑤ 788 しかし事実として高い才能を持つ者が関与しなければなし得ない出来事もある。空気 汚染機、謎の伝染病、毒があると解っていても食べるのをやめられない中毒性の料理、他 とは比べ物にならないほど組織力を持った絶望の集団、etc.etc.etc. ﹃あの子達だけじゃなく、雪染ちゃんもかぁ⋮⋮⋮世界ってのは残酷だな﹄ ﹄ 黄桜は酒を飲むのをやめ帽子を深くかぶる。彼はこの中で七海を除き唯一77期生 全員と雪染に関わっていた男だ。思うところがあるのだろう。 ﹃⋮⋮⋮けど、宗方さんはその話を信じないと思う﹄ ﹁だろうね、なにせ雪染先生が巻き込まれちゃってるんだもん﹂ ﹂ ﹃しかし、だからこそ絶望の殲滅ではなく保護に乗り出すように頼めるのでは ﹄ ﹁ゴズさんはさ、人を好きになったことってある ﹃⋮⋮⋮はい ? ﹃その節はすまない苗木君 僕等全員が背負うべき咎だったのに⋮⋮﹄ ﹃実際、苗木君も江ノ島盾子を殺しているものね﹄ その人の望みを叶えてやりたいってね⋮⋮﹂ ﹁人を心の底から愛するとね、その人の命より意志を尊重するんだ。その人を殺しても 的な言葉を吐くと、苗木はスゥ、と目を細めた。 忌村と苗木のやり取りに穏健派であるゴズがおそらく多くの者がするであろう理想 ? ? 789 ! ﹁気にしなくていいよ石丸君﹂ ていうかあの場の全員が江ノ島さん殺しの咎を背負いそうになったら皆殺しにして 宗方君は実質的未来機関の支配者だ⋮⋮⋮逆らえば未来 も独占したと思うし、と最近自分の独占欲の高さを自覚し始めた苗木は笑う。 ﹃⋮⋮それで、どうすんだい 機関に入れなくなる﹄ ? ﹄﹄﹄﹄﹄ ﹁うん。だからいっそ辞めようかなぁ、と⋮⋮⋮﹂ ﹃﹃﹃﹃﹃は ? 驚愕の叫び声が会議室内に響き渡った。 七海がおずおず挙手をすると一同が完全に固まり、苗木が耳をふさぐ。と、次の瞬間 うかなぁ⋮⋮って﹂ ﹁えっとね⋮⋮⋮苗木君と話したんだけど、未来機関を抜けて新しい組織を立ち上げよ スコアガール⑤ 790
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