「海外ビジネスコラム(第 68 回)」 (公財)富山県新世紀産機構 環日本海経済交流センター 鹿野健・海外販路開拓支援マネージャー 第 68 回 ラオスの PAKSE-JAPAN SME SEZ について 筆者は昨年(2015 年)12 月中旬にラオスを訪問する機会に恵まれ、その際に現地計画投資 省大臣、同省上級顧問(鈴木基義氏)らと面談した。彼らが特に日本の中小企業に期待す る進出先として上述 PAKSE-JAPAN SME SEZ (パクセージャパン 中小企業専用経済特 区、以下「PJSS」と略す)が揚げられたので、その概略を述べてみたい。既に進出済みのタ イ工場プラスワン (所謂タイプラスワン)を検討される場合の一つの候補地になり得る と考える。 1)PJSS の場所 : ラオス南方のタイ・カンボジアとの国境に近いチャンパサック県 (Champasak Province)のパクセ市(Pakse City)にあり、首都ビエンチャンから約 770KM の距離にあり、プロペラ機で約 1.5 時間、ベトナムのホーチミンから同じくプロペ ラ機で約 1.5 時間である。 2)PJSS の現状 : A) 開発・運営会社である”Pakse-Japan SME SEZ Development Co.,Ltd.”は 2015 年 12 月に設立され、出資者はラオス政府経済特区委員会・サイサナ グループ・サワン TVS コ ンサルタント・西松建設(20%)である。総事業費は$62 百万(約 73 億円)の予定。 B) 段階的に約 195Ha を造成する予定であり、2016 年中頃には「土地使用権」の販売を開 始する予定。第一期引渡は 2016 年 9 月を目指している。この権利料は$15/M2 の予定。 C) 造成予定地には既にダイワハーネス、レオンカワールド、ジャパンテック、アンドウ、 ナダヤ、新電元の 6 社が操業開始されており、ほとんどがタイプラスワンの位置付けであ る。 3)PJSS への進出のメリット: A) 労働賃金の安さ。最低賃金は$111/月(2015 年 12 月現在)であり、東南アジアではミ ヤンマーの$73 相当に次ぐ安さである。またラオスにはボーナスの習慣がない。タイの最 低賃金$228(300 バーツ/日)にボーナスを 6 カ月とすれば、平均で$228X1.5=$342 と なり、実質的にタイの 1/3 の賃金レベルである。 B) PJSS 立ち上げのコンセプトはあくまでも「日系中小企業専用」であり、計画投資省の 鈴木上級顧問の弁を借りれば「タイ チョンブリのアマタナコーン、ベトナム ハノイの タンロン工業団地を反面教師として大企業の進出を防ぎ、人材引き抜き合戦・給与の高騰 招かない環境」を創造しようとするものである。 (蛇足ながら、筆者は上記 アマタナコーン、タンロン両方で日系の大手企業の下請け会 社の立ち上げを行ったので、鈴木先生の言葉の意味がよく理解できる。) 「海外ビジネスコラム(第 68 回)」 (公財)富山県新世紀産機構 環日本海経済交流センター 鹿野健・海外販路開拓支援マネージャー C) 税制面での優遇。 黒字転換後 10 年間は法人税は無税。個人所得税は一律 5%。材料・資材の VAT 及び 輸入税の原則免除。 D) タイとは言語・文化が類似している。 E) ラオス人は手先が器用。 F) タイとの陸路での物流可能。ラオス側のメコン川を渡る「パクセ橋」が 2000 年に 日本の ODA で完成し、タイとの国境から約 40KM の距離にあるパクセとタイの間は この橋を通じて陸路での物流が可能である。 以上であるが、2016 年 1 月 29 日付の Japan Times 紙上で駐日ラオス大使も国としての経 済特区への注力の一例として Pakse-Japan SME SEZ について言及されていることを付け 加える。 Pakse-Japan SME SEZ 造成予定地 ←67 68 目次へ→
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