● 総 説● トリプレットリピー ト病 臨床的側面からみた分子病態 小牟禮 修 ・上野修一 ・佐野 輝 最近,遺 伝性神経筋疾患の原因遺伝子変異としてトリプレットリピートの異常伸長が相 Database Center for Life Science Online Service 次いで見いだされた。これらの疾患では,臨 床遺伝学的に従来のメンデル遺伝学では説明 できない表現促進現象が認められ,分 子遺伝学的にも,伸 長したトリプレットリピー トが なぜ不安定性を示すのか,さ らにトリプレットリピー トの異常伸長がどのように特定の神 経細胞死をひき起こすのかという点で注目を集めている。本稿では各トリプレットリピー ト病について臨床的側面から概説するとともに,病 態機序の解明に向けた今後の課題につ いても述べてみたい。 Key words は じめ に 近 年,分 【ト リプ レ ッ ト リ ピーと病】【動 的 変 異 】 【 神 経 変性 】 子 生 物 学 ・遺 伝 学 の 目覚 ま しい 進 胞 死 を ひ き起 こす の か,と い う点 で注 目 を 集 め て い る。 歩 に よ り,多 数 の 遺 伝 性 神 経 疾 患 の 原 因 遺 伝 子 が 同 定 本 稿 で は,今 さ れ て きた1)。 そ の なか に,従 来 知 られ て い た 塩 基 の置 ー ト病 に つ い て 紹 介 し,そ 換,欠 響 に つ い て 概 説 す る と と も に,病 失,挿 入,重 複 な どの 遺 伝 子 変 異 で は な く,ト リ プ レ ッ ト リ ピ ー ト(3塩 基 反 復 配 列)の 異 常 な伸 長 が 日 まで に 見 い だ され た トリ プ レ ッ ト リ ピ の 原 因 遺 伝 子 の も た らす 影 態 機 序 の解 明 に向 け た 今 後 の 課 題 に つ い て も述 べ て み た い 。 原 因 で 発 症 す る疾 患(ト リプ レ ッ ト リ ピー ト病)2,3)が新 た に見 い だ され 注 目 され て い る。 これ らの疾 患 で は,従 来 の メ ンデ ル 遺 伝 学 で は説 明 しが た い 現 象,す I.ト リ プ レ ッ トリ ピート 病 とは なわ ち 同 一 家 系 内 に お い て も症 状 が 異 な る 臨 床 的 多 様 性,世 今 日 まで に 見 い だ さ れ た ト リ プ レ ッ ト リ ピ ー ト病 に 代 を 経 る ご と に 発 症 年 齢 が 若 年 化 す る表 現 促 進 現 象 つ い て は,図14)に (anticipation),疾 存 在 す る 遺 伝 子 上 の 領 域 に 基 づ い て 整 理 す る と理 解 し 患 を伝 えた 親 の性 に よっ て次 世 代 の 重 症 度 が 異 な るparental れ,臨 sex biasな ど の現 象 が観 察 さ 床 遺 伝 学 的 な観 点 か ら興 味 が もた れ て い る。 ま 示 す よ う に トリプ レ ッ ト リ ピー トの や す い。 す な わ ち,(1)5'末 端 の非翻 訳領 域 に存在 す る ト リ プ レ ッ ト リ ピー トの 伸 長 に よ る疾 患 で あ る脆 弱X た,分 子 遺 伝 学 的 に も,伸 長 した ト リプ レ ッ ト リ ピ ー 症 候 群,脆 トが な ぜ 不 安 定 性 を 示 す の か,さ ト リ プ レ ッ ト リ ピー トの伸 長 に よ る疾 患 で あ る 球 脊 髄 ら に ト リプ レ ッ ト リ ピ ー トの 異 常 な伸 長 が どの よ う な機 構で 特 定 の神 経 細 Osamu Komure,神 Kobe Shu-ichi 1840 School Ueno, psychiatry, Triplet 戸 大 学 医 学 部 精 神 神 経 科 学 講 座(〒650 University Akira Ehime Repeat of Medicine, Sano, University Disorders : From 性 筋 萎 縮 症,ハ The 神 遅 滞 症,(2)翻 ン チ ン ト ン病,脊 神 戸 市 中 央 区 楠 町1-5-1)[Department 訳 領域 に存在 する 髄 小 脳 失 調 症1型, of Neurology and Psychiatry, Kusunoki-cho,Chuo-ku,Kobe650,Japan] 愛 媛 大 学 医 学 部 神 経 精 神 医 学 講 座(〒791-02 School 弱XE精 of Medicine, Clinical View 愛 媛 県 温 泉 郡 重 信 町 志 津 川)[Department Shigenobu,Onsen-gun,Ehime791-02,Japan] of Neuro- トリプ レットリピー ト病 Database Center for Life Science Online Service 図1 27 現 在 まで に明 らか に されて いる トリプ レ ッ トリピー ト病 に お ける3塩 基 反 復 配列 の 存 在領 域4) 歯 状 核 赤 核 ・淡 蒼 球 ル イ体 萎 縮 症,Machado-Joseph 程 度 は,蛋 病,脊 リ ピ ー トの場 合 に は 約40∼100リ 髄 小 脳 失 調 症2型,脊 髄 小 脳 失 調 症6型,(3) 白 質 へ の翻 訳 領 域 に 存 在 す る ト リプ レ ッ ト ピ ー ト程 度 で あ るの 3'末 端 の 非 翻 訳 領 域 に存 在 す る ト リプ レ ッ ト リ ピ ー ト に対 し て,非 の伸 長 に よ る疾 患 で あ る筋 緊 張 性 ジ ス トロ フ ィ ー,(4) レ ッ トリ ピ ー トの 場 合 は,約200∼1000リ 翻 訳 部 位 や イ ン トロ ン に 存 在 す る ト リ プ ピ ー ト以 上 イ ン トロ ン 内 に存 在 す る ト リプ レ ッ ト リ ピ ー トの 伸 長 と著 し い 増 大 を 示 す 。 これ ら原 因 遺 伝 子 の 生 理 的 機 能 に よ る 疾 患 で あ るFriedreich失 に つ い て は,球 表1に 示 す よ う に,こ 調 症 が あ る。 れ らの 疾 患 の 原 因 遺 伝 子 の リ ピ ー ト数 は,健 常 者 で は お よ そ40リ ピ ー ト以 下 の 一 定 の範 囲 に分 布 し,こ の 範 囲 の な か で 著 し い 多 型 を示 す こ とが 多 い 。 一 方,患 表1 者 に お け る リ ピー ト数 の 増 大 の 脊 髄 性 筋 萎 縮 症 が ア ン ドロ ゲ ン受 容 体 を,脊 髄 小 脳 失 調 症6型 が 電 位 依 存 性Ca2+チ ャ ネルの α1Aサ ブ ユ ニ ッ トを コー ドし て い る こ とが わ か っ て い る 以 外 は 不 明 で あ る。 こ の よ うな ト リプ レ ッ ト リ ピ ー トの 異 常 な伸 長 に よ 3塩 基 反 復 配 列 の伸 張 に よ る遺 伝 性 疾 患(ト リプ レ ッ トリ ピー ト病) 1841 28 蛋 白質 核酸 酵素 Vol.42 No.11(1997) 表2 ト リ プ レ ッ ト リ ピ ー ト病 の 分 子 病 態 に 基 づ く分 類2) ピ ー ト数 は健 常 者 で は6∼54 回 で あ る の に 対 し,患 者 で は 230回 以 上 に伸 長 し て い る (full mutation)。 また,表 型 は正 常 で あ る が,リ 数 が52∼200回 程 度 に増 加 し て い るpremutationと るFMR1を 現 ピー ト よばれ 有 す る 男 性 ・女 性 の保 因 者 が 認 め られ る8)。健 常 者 のCGGリ っ て,ど の よ う な機 構 に よ り疾 患 が 生 じ る の か に つ い Database Center for Life Science Online Service て は い まだ 十 分 に 解 明 され て い な い が,表22)に 示す よ の 場 合,リ ト数 が35回 レ ッ ト リ ピー トの伸 長 に 関 して は,遺 る9)。FMR1のCGGリ 伝子 発 現が低 下 原 因 と考 え られ て い る 。 一 方, 列 が1∼3個 入 され て お り,こ の 中 断 が 消 失 し連 続 す るCGGリ う に 非 翻 訳 領 域 お よび イ ン トロ ン内 に 存 在 す る ト リ プ す るloss of functionが ピー トには 多 く ピ ー トを中 断 させ るAGG配 程 度 を こえ る とFMR1遺 ピー トの 伸 長 は女 性 生 殖 細 胞 で 増 幅 され て い る と考 え ら れ て お り,女 性 保 因 者 か ら男 性 に伝 わ る場 合 に は大 多 数full mutationへ し て は,CAGリ (動 的 変 異;dynamic ピ ー トが ポ リグ ル タ ミン を コー ドし て 白質)内 の異 常 に伸長 したポ リ グ ル タ ミ ン鎖 が 神 経 細 胞 に対 して 何 らか の 毒 性 を 獲 得 す るgain of functionが 原 因 と考 え られ て い る。 mutation)。 翻 訳 領域 での ト リプ レ ッ ト リピー ト病 の特 徴 1.脆 弱X症 こ のpremutation 本 疾 患 の 分 子 病 態 と して は,FMR1のCGGリ の 直 後 のCGGリ 候群 ロモー ター とそ 不 活 化 さ れmRNAが X syndrome;FRAXA)は で はFMR1のmRNA10)お よ びFMR1遺 (FMR1蛋 X連 鎖 性 疾 患 で あ り,染 色 体 の 構 造 異 常 としてX染 長 に よ り異 常 メ チ ル 化 が 生 じ,FMR1の 色 域 に特 異 的 な葉 酸 感 受 性 脆 弱 部 位 を認 め る。 臨 床 徴 候 と し て は精 神 遅 滞 の ほ か に,身 き な 耳)と 長 い 顔,長 い 鼻,突 体 的特徴 とし 出 し た 下 顎,大 受 け,最 終 的 にFMR1蛋 白質 が 消 失 す る こ とが 本 疾 患 よ びFMR1蛋 白質 の消 失 が 確 認 さ れ た 。 こ の マ ウ ス で は 巨 大 睾 丸,学 過 多 が 見 られ た もの の,脳 り,従 来 か らShermanパ 認 め られ な か っ た12)。 ラ ドッ ク ス と して複 雑 な遺 伝 FMR1蛋 に原 因 遺 伝 子 が 同 定 され5,6),CGGリ ピー トの 異 常 伸 長 が 存 在 す る こ とが 明 らか に な り7),ト リプ レ ッ 伝 子 の生 理 の 遺 伝 子 の ノ ッ ク ア ウ トマ ウ ス が 作 製 さ れ,mRNAお り,ま た 無 症 状 で あ る男 性 を 介 して 遺 伝 す る場 合 も あ 様 式 を 示 す こ とが 知 ら れ て い た 。 ピー トの 伸 転写 が影響 を の 発 症 に関 与 す る と考 え ら れ る。FMR1遺 機 能 を 調 べ るた め,こ 巨 大 睾 丸 を認 め る 。 本 疾 患 で は世 代 を経 る 者 伝 子 産 物 白質)11)が 消 失 して お り,CGGリ ご とに 浸 透 率 が 高 ま る表 現 促 進 現 象 を認 め る傾 向 に あ 1991年 発 現 し な くな る こ とが 原 因 と考 え られ て い る(図2)。FRAXA患 候 群(fragile て 特 有 な 顔 貌(細 ピー ト ピ ー ト自体 が 異 常 に メ チ ル化 され,そ ダ ウ ン症 に つ い で 頻 度 の 高 い精 神 遅 滞 を主 症 状 とす る 体q27.3領 ラ ドッ ク ス は見 事 に 解 明 さ れ た8)。 の 結 果,FMR1が 脆 弱X症 と移 行 す る と ダ イ ナ ミ ック 変 異 の 概 念 に よ り,Shermanパ が 異 常 伸 長 す る こ とに よ り,FMR1プ II.非 ピー 伝 子 は不 安 定 にな 翻 訳 領 域 に存 在 す る ト リ プ レ ッ ト リ ピー トの伸 長 に関 お り,遺 伝 子 産 物(蛋 挿 白質 はRNA結 習 障 害,行 動 ・精 巣 に組 織 学 的 な 異 常 は 合 蛋 白 質 と して の 性 質 を有 し13),神 経 細 胞 の 細 胞 質 内 に豊 富 に存 在 してい る14)。し か し,最 近 の研 究 で は,FMR1蛋 白 質 は核 内 保 留 シ グ ト リ ピー ト病 解 明 の さ きが け とな っ た 。 この 原 因 遺 伝 ナ ル と核 外 輸 送 シ グ ナ ル を有 す る リボ 核 蛋 白 質 で あ り, 子 はFMR1(fragile 初 期 段 階 で い った ん 核 内 に 移 行 し た の ち,あ X mental 子 と命 名 さ れ た7)。FMR1は17個 全 長 約38kbの 伝 のエ クソンを有す る ゲ ノ ム か らな り,そ の 第1エ 末 端 の非 翻 訳 部 位 にCGGリ 1842 retardation-1)遺 ク ソ ンの5' ピー トが存 在 す る。CGGリ 伝 子 のRNA転 る種 の 遺 写 産 物 と結 合 し リ ボ核 蛋 白 質 粒 子 を形 成 し,そ の 後 細 胞 質 内 に輸 送 さ れ リ ボ ソー ム と結 合 す る との仮 説 が 提 唱 され て い る15)。したが って,FMR1蛋 29 ト リプ レ ッ ト リ ピー ト病 Database Center for Life Science Online Service 図2 脆 弱X症 FM則 候 群 に おけ る分 子 病 態 遺 伝 子 のCGGリ が 生 じ,FMR1遺 ピー トが 異 常 伸 長(230回 以 上)す 伝 子 の 転 写 が 抑 制 され,FMR1蛋 白質 の消失 は正 常状 態で核 内FMR1蛋 る と,CGGリ ピー トお よ び プ ロモ ー ター(CpGア イ ラ ン ド)に 異 常 メ チ ル 化 白 質 が 生 成 され な い。 白質 と結合 する DM)は 常 染 色 体 優 性 遺 伝 性 の 神 経 筋 疾 患 で あ り,成 人 転 写産 物 の翻訳 に も影響 を与 え る ことにな り,そ の結 に み ら れ る筋 ジ ス トロ フ ィー 症 と して は 最 も頻 度 が 高 果FRAXAが い 。 臨 床 徴 候 と して,筋 発症 す る可能 性 も考 え られ る。 に加 え て,心 2.脆 弱XE精 脆 弱XE精 神遅 滞症 害,男 神 遅 滞 症(fragile tion;FRAXE)16)は,X染 や テ ロ メ ア 側)に XE 色 体q28領 mental retarda- 域(q27よ りや 葉 酸 感 受 性 脆 弱 部 位 を 認 め る。 臨 床 徴 候 と して は精 神 遅 滞 の み を示 し,そ の程 度 はFRAXA よ り軽 い 。 原 因 遺 伝 子 は 剛R2と ソ ンの5'末 命 名 され,第1エ 端 の 非 翻 訳 部 位 にCCGリ る17,18)。CCGリ ピ ー トが 存 在 す ピ ー ト数 は健 常 者 で は6∼25回 の に 対 し,患 者 で は200回 FMR2のCCGリ で ある 以 上 に 伸 長 し て い る16)。 ピー トの伸 長 は,FMR1同 様 に女性 生 殖 細 胞 で 増 幅 され て い る と考 え られ て い る。 FMR2もFMR1同 様 に,CCGリ す る とFMR2の5'末 FMR2は ピ ー トが 異 常 伸 長 発 現 し な くな る。FRAXE患 で は,FMR2のmRNAの ロ リン,ス 者 消 失 が 確 認 さ れ て い る17,18)。 レオ ニ ン に富 んで お り,AF- 4(白 血 病 発 症 に 関 与 し て い る と考 え られ る転 写 因 子 の 1つ)と の相 同 性 が 認 め られ て い る17,18)。 ら症 状 を 示 す先 天 性DMも た,世 オ トニ ア 糖 能 低 下,知 能障 腺 萎 縮 な ど を 伴 う全 身 疾 代 に多 い が,生 下 時か 存 在 し,臨 床 症 状 とし て筋 神 遅 滞 を呈 し,大 部 分 の 先 天 性DMは 成 母 親 か ら生 ま れ る こ とが 知 られ て い る。 ま 代 を経 る ご とに 発 症 年 齢 が 若 年 化 し症 状 が 重 篤 に な る表 現 促 進 現 象 も知 られ,こ れ らの 成 因 に つ い て は さ ま ざ ま な 推 論 が な さ れ て きた 。 1992年,DMに 特 異 的 な 不 安 定DNA領 染 色 体 長 腕(19q13.3)よ 域 にCTGリ CTGリ 成 人 脳 と胎 盤 に 発 現 して お り,そ の 遺 伝 子 産 物 はセ リ ン,プ 性 で は 前 頭 部 脱 毛,性 緊 張 低 下,精 萎 縮,ミ 内 障,耐 域 が 第19 り単 離 さ れ19∼21),つ い で この 遺 伝 子 の 塩 基 配 列 が 決 定 され,そ 端 側 が 異 常 メチル 化 され,FMR2 が 不 活 化 されmRNAが 伝 導 障 害,白 患 で あ る 。 発 症 年 齢 は20∼30歳 人 型DMの ク 力 低 下,筋 の3'末 端 の 非 翻 訳 領 ピ ー トを も つ こ とが 明 らか に な っ た22∼24)。 ピー ト数 は健 常 者 で は5∼37回 で あ る の に対 し て,患 者 で は50∼ 数 千 回 に 伸 長 し て い る。 伸 長 し た CTGリ ピ ー トは 次 世 代 で さ ら に増 加 す る傾 向 に あ り, CTGリ ピー トの伸 長 の 程 度 とDMの 発 症 年 齢 ・重 症 度 との 間 に は相 関 が 認 め られ る こ と よ り,こ れ が 表 現 促 進 現 象 を反 映 して い る と考 え ら れ た25)。 伸 長 したCTGリ ピー トの 世 代 間 で の 変 化 に つ いて は, 母 親 か ら遺 伝 子 が 伝 わ る場 合 に リ ピ ー ト数:が よ り増 大 3.筋 緊張 性 ジス トロフ ィー 筋 緊 張 性 ジ ス トロ フ ィ ー(myotonic す る傾 向 に あ り26),先 天 性DMの dystrophy; る。 先 天 性DMの 一 因 と考 え られ て い 子 を もつ 母 親 のCTGリ ピー トは,成 1843 30 蛋自質 人 型DMの 核酸 酵素 Vol.42 No.11(1997) 子 を もっ 父 親 ・母 親 に 比 べ て 長 く,ま た 世 代 間 の 伸 長 度 も子 が 成 人 型DMで あ る場 合 に比 べ て 大 ,DMPKは 骨 格 筋 の細 胞 内膜 系,と 槽 と横 細 管 よ り形 成 さ れ て い る)に 達 され た 場 合 に は,子 され て い る。 さ ら に,そ 親 のCTGリ に お け るCTGリ ピー トの長 さ は ピ ー トの 長 さ と逆 相 関 を示 して お り,父 ピー ト数 が500回 を こえ る と,子 にお け る リ ピ ー ト数 が 父 親 の 回 数 よ り減 少 す る傾 向 を 示 す28)。 DMに お け るCTGリ ピ ー トの長 さは 同 一 患 者 で も組 くに筋 小 胞 体 の 終 末 槽38)あ る い は トラ イ ア ッ ド(筋 小 胞 体 の 終 末 き くな っ て い る27)。これ に対 して,父 親 か ら遺 伝 子 が 伝 父 親 のCTGリ 局 在 す る こ とが 示 の 生 理 機 能 と し て,ト ッ ドに局 在 す る 電 位 依 存 性Ca2+チ ラ イア ャネ ル で あ る ジ ヒ ド ロ ピ リ ジ ン受 容 体 の β サ ブ ユ ニ ッ ト を リン酸 化 す る こ とが 報 告 さ れ て い る39)。これ らの事 実 は,DMPK蛋 質 の 量 的 減 少 が,骨 白 格 筋 に お け る興 奮 収 縮 連 関 の 障 害 織 に よ っ て 異 な り,い わ ゆ る体 細 胞 モ ザ イ ク(somatic あ る い は 骨 格 筋 の 筋 繊 維 構 造 の 異 常 を ひ き起 こす 可 能 mosaicism)を 性 を 示 唆 し て い る の で あ ろ う か? 程 度,ス 示 し,骨 格 筋 で は リ ンパ 球 よ りも伸 長 の メ ア の 広 が りが 著 しい29)。この体 細 胞 モ ザ イ ク は,先 天 性DMで Database Center for Life Science Online Service 一方 は観 察 さ れ て お らず29),患 者 の 年 齢 最 近,DMPK遺 伝 子 の ノ ッ ク ア ウ トマ ウス が 作 製 さ れ た40)。 この マ ウ ス は晩 発 性 ・進 行 性 の ミオ パ チ ー像 を 増 加 に 伴 い顕 著 に な る こ とが 明 らか に され て お り30),体 呈 し,組 織 学 的 に も筋 繊 維 の 大 小 不 同,変 細 胞 内 で の 不 安 定 さが 患 者 の 一 生 を 通 じ て 持 続 して い 維 化 の 増 加,筋 る こ とが 示 唆 され る。 さ ら に,DM31)お のDMに よびFRAXA32) の父 親 の 精 子 の 伸 長 リ ピ ー トは,子 球)に の 体 細 胞(リ ンパ お け る リ ピ ー トよ り も伸 長 の程 度 が 小 さ い と さ れ て お り,世 代 間 で の伸 長 リ ピ ー トの 延 長 が,受 の 初 期 段 階,あ 精後 る い は 出 生 後 の体 細 胞 内 で の 不 安 定 さ DMの ト 特 徴 的 な ミオ トニ ア は 示 さ な か っ た 。 ま た, 伸 長 リ ピ ー ト を組 み 込 ん だ トラ ン ス ジ ェ ニ ッ ク マ ウ ス も作 製 され,CTGリ ピー トの 世 代 間 で の 不 安 定 性 お よ び体 細 胞 モ ザ イ ク は み られ た が,こ DMの 性 お よ び線 小 胞 体 の膨 張 な どが み ら れ た が,ヒ のマ ウ ス は 表 現 型 を示 さ な か っ た41,42)。 に よ る もの で あ る 可 能 性 も考 え られ る。 DMの 原 因 遺 伝 子 は セ リ ン ・ス レ オ ニ ン プ ロ テ イ ン III.イ ン ト ロン 内 での ト リプ レ ッ ト リピー ト病 の特 徴 キ ナ ー ゼ類 似 蛋 白 質 を コ ー ド して お り,DM蛋 白質 キ ナ ー ゼ(DMPK)と 伝子は 1.Friedreich失 のエ ク ソ ンか ら構 Friedreich失 全 長 約12kbの よ ば れ て い る33)。DMPK遺 ゲ ノ ム か ら な り,15個 成 さ れ て い る 。 キ ナ ー ゼ 領 域(第2-8エ リ ッ ク ス領 域(第9-12エ エ ク ソ ン)を ク ソ ン),膜 有 して お り,CTGリ ク ソ ン),α ソ ンの 非 翻 訳 領 域 に存 在 す る33)。DMPK遺 が どの よ う にDMの は幼 小 児 期 に 発 症 す る 家 族 性 運 動 失 調 症 で,常 ク 構 音 障 害,深 劣 性 の 遺 伝 形 式 を示 す 。 臨 床 徴 候 と して は,運 動 失 調, 力 低 下 に 加 え て,凹 尿 病 な ど を伴 う全 身 疾 患 で あ る。 神 よび 蛋 白 質 レベ ル に つ る考 え が 大 勢 を 占 め て い る 。 ま た,最 伝 子 のCUGリ 近 の 研 究 で は, 合 蛋 白 質 の 存 在 が 報 告 され て い る。 こ のCUG ー トと結 合 し,DMPKの 駆 体 中 のCUGリ ピ 胞 質 内へ の 輸 送 を妨 げ る こ と に よ り, 細 胞 質 内 にお け るDMPKのmRNAお ル を 著 し く低 下 さ せ,本 よ び蛋 白質 レベ 疾 患 の 発 症 に 関与 して い る可 能 性 が 示 唆 さ れ て い る37)。 側 索,ク (9q13)よ 柱 側 湾, 髄 の 後 索, ラ ー ク柱 ・脊 髄 小 脳 路 の 変 性 を伴 う。 原 因 遺 伝 子 が 第9染 り単 離 ・同 定 され,そ 色体 長腕 の コ ー ドす る蛋 白質 が フ ラ タ キ シ ン(frataxin)と 命 名 され た43)。予 想 外 な こ とに,こ ン トロ ン 内 に は これ ま で の の 遺 伝 子 の 第1イ トリプ レ ッ トリ ピー ト(CGG/CCGあ 転 写 産 物 の プ ロセ シ ング,核 足,脊 経 病 理 学 的 に は後 根 お よ び 後 根 神 経 節,脊 1996年,FRDAの ピ ー ト と特 異 的 に 結 合 す る 結 合 蛋 白 質 はDMPKのmRNA前 1844 ビンス キ ー 反 射 陽 性,筋 よび 蛋 白質 レベ ル は と もに減 少 して い る とす 内 で の安 定 性,細 部 腱 反 射 消 失,バ 肥 大 型 心 筋 症,糖 し か し,近 年 の 報 告36)で は,患 者 骨 格 筋 のDMPKの CUG結 部 知 覚 障 害,深 伝子 の異常 い て相 反 す る 結 果34,35)が報 告 さ れ た た め 不 明 で あ っ た 。 DMPK遺 染色体 病 態 生 理 に 関 与 し て い るか に つ い て は,当 初DMPKのmRNAお mRNAお ataxia;FRDA) ヘ 貫 通 領 域(第15 ピー トは第15エ 調症 調 症(Friedreich's とは異 な るGAAリ ピー トが 存 在 して お り,そ の リピー ト数 は健 常 者 で は7∼22回 は200∼1200回 るい はCTG/CAG) で あ る の に 対 して,患 者で 程 度 まで 異 常 伸 長 して いた43)。この遺 伝 子 異 常 は90%の 症 例 で は ホ モ 接 合 で あ っ た が,残 りの 一部 の症 例 で は ,一 方 の対 立 遺 伝 子 に は リ ピ ー トの増 大 を,他 方 の 対 立 遺 伝 子 に は 点 変 異 を 認 め るヘ テ ロ 接 31 トリ プ レ ッ ト リ ピー ト病 合体 で あ っ た43)。GAAリ ピ ー ト数 とFRDAの 齢 との 間 に は 負 の 相 関 が 認 め られ,糖 筋症 を伴 う患 者 のGAAリ 発 症年 尿 病 あ る い は心 ピー ト数 は,前 記 の症 状 を伴 細 胞 間 で きわ め て不 安 定 で あ る,(6)CAGリ ピー トを も つ 原 因 遺 伝 子 の 発 現 は 中枢 神 経 系 の み な らず 幅 広 く ほ か の 臓 器 に も み ら れ る,(7)そ の 遺 伝 子 産 物 は ポ リ グル わ な い 患 者 の リ ピ ー ト数 よ り増 大 し て い る こ とが 示 さ タ ミ ン を コ ー ド し て い る と考 え られ,や れ た44)。 系 の み な らず 全 身 臓 器 に 分 布 し て い る,(8)お 伸 長 したGAAリ 間 でGAAリ ピー トは不 安 定 性 を示 した が,親 ピ ー ト数 に差 は認 め られ ず,FRDAが 例 でGAAリ のおの の 子 疾 患 は 中 枢 神 経 系 の 特 定 の領 域 に お い て疾 患 特 異 的 な 表 神 経 細 胞 死 を生 ず る 。 現 促 進 現 象 を認 め な い こ と を 反 映 し て い る と考 え られ た 。 父 親 か ら子 へ 伝 達 さ れ た対 立 遺 伝 子 で は,ほ は り中 枢 神 経 ぼ全 こ こで は,ま 調 症6型 ず球 脊髄 性筋 萎縮 症 お よび脊髄 小脳 失 の特 徴 に つ い て 言 及 し,そ の後CAGリ ピー ト ピー トの 短 縮 が み られ,さ ら に,男 性 保 因 病 の 中 核 を構 成 して い る と考 え られ る残 りの5つ のCAG 者 の精 子 に お け る伸 長 リ ピ ー トは,体 細 胞(リ ンパ 球) リ ピ ー ト病 の 特 徴 に つ い て概 説 す る 。 Database Center for Life Science Online Service にお け る リ ピ ー ト よ り も伸 長 の 程 度 が 小 さ い こ とが 報 1.球 告 さ れ て い る45)。 フ ラ タ キ シ ン遺 伝 子 は脊 髄,心 どFRDAの 者 で はmRNAの トが,エ 格 筋,膵 臓 な 量 的 減 少 が 報 告 され て い る43)。現 在 の と こ ろ,第1イ RNAの 筋,骨 主 要 な 障 害 部 位 で 豊 富 に発 現 して お り,患 ン トロ ン内 で 異 常 伸 長 したGAAリ ピー ク ソ ン ・イ ン トロ ン境 界 部 で の フ ラ タ キ シ ン プ ロセ シ ン グ を 障 害 す る こ とに よ り,細 胞 質 内 にお け る成 熟 型 フ ラ タ キ シ ンmRNAお 的 減 少 が 起 こ り,こ れ がFRDAの よび 蛋 白 質 の 量 発 生 に関 与 し て い る と考 え られ て い る。 脊髄 性筋 萎縮 症 球 脊 髄 性 筋 萎 縮 症(spinal 力 低 下,線 muscular 維 束 攣 縮 お よ び 球 症 状 を 呈 す る下 位 運 動 ニ ュ ー ロ ン 疾 患 で あ る。 病 理 学 的 に は 脊 髄 前 角 細 胞,舌 下 ・顔 面 神 経 核,後 根 神 経 節,睾 本 症 に は 女 性 化 乳 房,睾 高 頻 度 に み られ,以 丸 な どが 障 害 され る。 丸 萎 縮 な どの 性 腺 機 能 障 害 が 前 よ り男 性 ホ ル モ ン受 容 体 と の 関 連 が 推 察 さ れ て い た 。1991年 訳 領域 での ト リプ レ ッ ト リピー ト病 の特 徴 bulbar ピ ー ト病 の 中 で は例 外 的 に 伴 性 劣 性 遺 伝 形 式 を 示 し,成 人 期 発 症 の 筋 萎 縮,筋 遺 伝 子 の 第1エ IV.翻 and atrophy;SBMA)はCAGリ ア ン ドロゲ ン受 容 体(AR) ク ソン 内 のCAGリ ピー トが,SBMA患 者 で 特 異 的 か つ 異 常 に 伸 長 し て い る こ とが 明 らか に な っ た46)。 今 日 まで の と こ ろ,翻 訳 領 域 に お い て 異 常 な伸 長 を 起 こす トリ プ レ ッ トリ ピー トはCAGリ る の で,総 称 し てCAGリ ピー トの み で あ ピ ー ト病(あ る い は ポ リグ ル AR遺 伝 子 はX染 全 長75∼80kbの 色 体 長 腕Xq11.2-12に ゲ ノ ム か ら な り,8個 構 成 され て い る。ARの 第1エ の機 能 が 推 定 さ れ て お り,第2,3エ と脊 髄 小 脳 失 調 症6型 合 部 位,第4-8エ 機 能 を有 す る。 第1エ び 疾 患 の 性 質 が ほか のCAGリ 数 は,健 と考 え ら れ る。 これ に対 して,残 りの5つ のCAGリ ピー ト病 は,臨 床 お よび 分 子 遺 伝 学 的 に も以 下 の よ うな 多 くの類 似 点 を 有 し て い る。(1)CAGリ ピ ー ト数 は健 常 者 で は お よ そ 40回 以 下 の 一 定 の 範 囲 に分 布 し多 型 を示 す,(2)患 お け る リ ピー ト数 の 増 大 の程 度 は 約40∼100回 あ る,(3)伸 長 し たCAGリ 者に 程度 で ピー ト数 と発 症 年 齢 との 間 に は負 の 相 関 が 認 め られ る,(4)表 現 促 進 現 象 が み られ, ク ソ ン に存 在 す るCAGリ 常 者 で は11∼34回 は38∼66回 ク ソ ン はDNA結 ク ソ ン は リガ ン ド結 合 部 位 と し て の ー ド して い る蛋 白質 が 判 明 し て お り ,原 因 遺 伝 子 お よ ピー ト病 とは若 干 異 な る のエ ク ソンよ り ク ソ ンは転 写 調 節 として タ ミ ン病)3)と よ ばれ る 。 こ の うち,球 脊 髄 性 筋 萎 縮 症 につ いて はそ の原因遺 伝子 の コ で あ るの に対 して,患 に増 大 し て お り,CAGリ 者で ほ ど発 症 年 齢 が 若 年 化 し,臨 床 的 に も重 症 で あ る こ と が 示 さ れ て い る47∼49)。 世 代 間 に お け るCAGリ ピー ト数 の 変 化 に つ い て は, 母 親 由 来 の 場 合 に は 平 均-0.3回,父 は 平 均+1.4回 親 由来 の場合 に の 変 化 が み られ,CAGリ ピー トの不 安 定 性 は認 め られ た もの の きわ め て 小 さな もので あ った49)。 これ は,SBMAで は 表 現 促 進 現 象 が 明 らか で ない こ と を反 映 し て い る と思 わ れ る 。 ま た,組 で あ る,(5)伸 ザ イ ク も ほ とん ど認 め られ て い な い50)。 ピ ー トは 世 代 間 お よ び 体 ピー ト ピ ー ト数 が 多 い そ の程 度 は父 親 よ り病 気 を受 け継 い だ 場 合 に よ り顕 著 長 し たCAGリ 存 在 し, 織 間 の体 細 胞 モ 1845 32 蛋 白質 核酸 伸 長 したCAGリ 酵素 Vol.42 No.11(1997) ピー トを含 むAR遺 伝 子 の転 写 産 物 は,脊 髄 ・脳 幹 の み な らず 神 経 系,非 神 経 系 を問わ ず きわ め て 広 範 に発 現 し てお り,SBMAで は異 常AR遺 ,AR遺 伝 子 のCAGリ が 見 られ る に もか か わ らず,世 ピー トは ポ リグ ル タ ミン 鎖 を形 成 す る と考 え ら れ て お り,ポ リグ ル タ ミ ン鎖 の 異 常 伸 長 は こ の 受 容 体 の ア ン ドロ ゲ ン 結 合 能 を 変 化 さ ピー ピー ト病 で は 代 間 でCAGリ ピー ト数 の増 大 が 認 め られ な い こ と,(3)コ ー ド して い る蛋 白質 が 膜 蛋 白質 で あ る こ と で あ る 。 α1ACa2+チ ャネ ル 遺 伝 子 は第19染 色 体 短 腕(19p13) せ る こ とな く,転 写 活 性 を低 下 さ せ る こ とが 示 さ れ て に 存 在 し,本 遺 伝 子 の 異 な る 型 の 変 異 で 生 じ る疾 患 と い る52)。ま た,ポ して,家 族 性 片 麻 痺 性 片 頭 痛(FHM)とepisodic リ グ ル タ ミン 鎖 は β シ ー ト構 造 を と atax- り,グ ル タ ミ ンの 極 性 に よ る 水 素 結 合 に よ っ て 相 互 に ia with nystagmus(EA-2)が 強 力 に 結 合 し,ポ 両 疾 患 で は と き に永 続 性 の 小 脳 失 調 と小 脳 萎 縮 を認 め リ グ ル タ ミ ン ど う しが ジ ッパ ー 機 能 を もち う る こ とが報 告 さ れ て い る53)。した が って,ポ Database Center for Life Science Online Service 遺 伝 子 異 常 で 特 徴 的 な の は,(1)CAGリ 正 常 範 囲 内 の 伸 長 とみ な さ れ る こ と,(2)表 現 促 進 現 象 伝 子 の 転 写 に は 大 き な 障 害 が な い こ とが わ か る51)。 一方 SCA6の トの増 大 が きわ め て 小 さ く,他 のCAGリ リ す で に報 告 さ れ て お り57), る こ とが 知 られ て い る。SCA6の α1ACa2+チ ャネ ル に は グ ル タ ミ ン鎖 が 異 常 伸 長 す る こ と に よ り水 素 結 合 の 強 ど の よ う な 機 能 異 常 が 存 在 す る の か?ま 度 が亢進 し,標 的 遺 伝 子 お よ び ほ か の転 写 活 性 調 節 蛋 EA-2とSCA6の 白質 と の 結 合 性 が 変 化 し,新 た な 転 写 調 節 の 変 異 が も の か?今 た ら され,SBMAの 分 子 病 態 の 差 異 はい か な る もの で あ る 後 の研 究 の 進 展 が 待 た れ る と こ ろ で あ る 。 病態 発現 にかかわ っている可能 性 が 考 え られ る 。 最 近,CAGリ 3.ハ ピー トの増 大 したAR遺 伝 子 を組 み 込 ん だ トラ ン ス ジ ェ ニ ッ ク マ ウ ス が 作 製 さ れ た が,本 疾 ン チ ン ト ン病 ハ ンチ ン ト ン病(Huntington's を 中 心 とす る不 随 意 運 動,知 2.脊 場 合 に は筋 固 縮,寡 る 。 発 症 年 齢 は30∼40歳 髄 小 脳 失 調 症6型 ヒ ト電 位 依 存 性Ca2+チ ャネル の α1Aサ ブユニ ッ ト(α1A ャ ネ ル)のmRNAに ン グ 変 異 体 が存 在 し,そ は い くつ か の ス プ ラ イ シ の な か に はGGCAGと 塩 基 挿 入 に よ り翻 訳 領 域 が3'側 にCAGリ い う5 に伸 展 し,翻 訳 領 域 内 ピー トを有 す る型 が 存 在 す る55)。α1ACa2+チ disease;HD)は 染 色 体 優 性 遺 伝 形 式 を と る神 経 変 性 疾 患 で,舞 患 の 表 現 型 を見 る に は至 らな か っ た54)。 Ca2+チ た,FHM・ 型 といわ れ,そ 踏運 動 能 障 害,精 神 症 状 を呈 す 代 が 多 いが,若 年 で発症 する 動 が 主 体 とな り,進 行 も早 く若 年 の80%以 経 病 理 学 的 に は,線 常 上 は父 親 か らの遺 伝 で あ る。 神 条 体(尾 型 有 棘 神 経 細 胞(GABA作 状 核 ・被 殻)に お け る中 動 性 投 射 神 経 細 胞)の 選択 的 脱 落 とグ リオ ー シ ス が 主 体 を な す 。 HDの 原 因 遺 伝 子 の 局 在 は1983年,DNAマ ー カー ャ ネ ル は 小 脳 プ ル キ ン エ 細 胞 に お い て 豊 富 に発 現 し て を 用 い た 連 鎖 解 析 の 結 果 か ら,第4染 お り56),こ のCAGリ (4p16.3)に 位 置 す る こ とが 明 らか に な っ た58)。そ の 後, ピ ー トと小 脳 失 調 症 との関 連 が 調 べ られ た 。 そ の 結 果,CAGリ ∼16回 ピ ー ト数 は健:常者 で は4 で あ る の に対 して ,あ は21∼21回 る種 の 小 脳 失 調 症 患 者 で に 伸 長 し て お り,脊 髄 小 脳 失 調 症6型 (spinocerebellarataxia た55)。SCA6に type6;SCA6)と お い て も,CAGリ 命 名 され ピ ー ト数 と発 症 年 齢 との 間 に は 負 の 相 関 が み られ る よ うで あ る。 SCA6は 小 脳 失 調(歩 行 障 害,構 音 障 害,眼 こ の 領 域 の 徹 底 的 な 遺 伝 子 探 索 が 行 な わ れ,1993年 班)遺 伝 子(IT15)が 同 定 さ れ,コ ハ ン チ ン チ ン(huntingtin)と ED遺 伝 子 は 全 長 約210kbの ー ドす る 蛋 白 質 が 命 名 され た59)。 ゲ ノ ム か ら な り,67個 の エ ク ソ ンを有 してお り,そ の翻 訳 部 の5'末 端 側 にCAG リ ピー トが 存 在 す る 。CAGリ 振)と ご 色体 短腕 先端 部 ∼35回 で あ る の に対 して ピー ト数 は健 常 者 で は10 ,患 者 で は36∼121回 に伸長 く軽 度 の 深 部 知 覚 障 害 の み を呈 し,神 経 病 理 学 的 に は し て お り60),CAGリ 小 脳 皮 質(プ 化 す る こ とが 示 さ れ て い る61∼63)。 た だ,CAGリ ピー ト 核 の 変 性 を 認 め る55)。したが って,こ れ まで常 染 色 体 優 の 正 常 上 限 と伸 長 の下 限 は,実 ピー ト 性 遺 伝 性 の 純 粋 型 小 脳 失 調 症 あ る い はHolmes型(広 で 重 な っ て お り,36リ ル キ ン エ細 胞 ・穎 粒 細 胞)と 下 オ リー ブ ピー トが 長 い ほ ど発 症 年 齢 が 若 年 際 に は36∼39リ ピ ー トで発 症 して い る症 例 が あ 義)小 脳 皮 質 萎 縮 症 と考 え られ て いた 症 例 の 多 くは,こ る一 方 で,39リ のSCA6で 正 常 とい う症 例 も存 在 す る64)。す なわ ち,HDで 1846 あ る 可 能 性 が 考 え られ る 。 ピ ー トで95歳 まで 生 存 し病 理 学 的 に も はCAG 33 ト リプ レ ッ ト リ ピー ト病 リ ピー ト数 が36∼39回 の 範 囲 で は100%の さ な い こ とが 示 唆 さ れ る。 ま た,新 り生 じ た と考 え ら れ るHD家 CAGリ ピ ー ト数 は35回 浸 透 率 を示 た な突然 変異 によ 系 で は,発 症 者 の親 の 前 後 で あ り,こ れ は正 常 とHD の 中 間 サ イ ズ の対 立 遺 伝 子(intermediate る こ とが 示 さ れ て い る70,72)。 SCA1遺 伝 子 のCAGリ ん どの 場 合 リ ピ ー トを 中 断 させ るCAT配 挿 入 さ れ て い る が,患 allele;IA) ピ ー トに は,健 お り,CAGリ ピー トは 中 断 さ れ る こ とな く伸 長 して い る73)。した が っ て,CAGリ 系 を供 給 す る対 立 遺 伝 子 と考 え ら れ て い る 。 子 は,CAT挿 ピ ー トの す ぐ3'側 に はCCGリ ピ ー トが 存 在 列 が1∼3個 者 で は こ の 挿 入 配 列 が 欠 落 して で あ る65,66)。IAは 比 較 的 不 安 定 で あ り,新 た なHD家 CAGリ 常者 ではほと ピー ト数 の 多 いSCA1遺 伝 入 が 欠 落 す る と不 安 定 さ を増 し,さ らに リ ピ ー ト数 が 増 大 して 発 症 に 至 る と推 定 さ れ る 。 し,正 常 で も多 型 が あ る こ とが 判 明 した 。 欧 米 のHD患 者 の90%以 上 はCCGリ ピー ト数 が7回 不 平 衡 を認 め る の に対 して,本 Database Center for Life Science Online Service はCCGリ ピー ト数 が10回 で あ り強 い連 鎖 邦 のHD患 者 の約80% HDが 邦の 欧 米 とは突 然 変 異 の 異 な る祖 先 に 由 来 してい る可 能 性 を示唆 してい る。 4.脊 髄 小 脳 失 調 症1型 脊 髄 小 脳 失 調 症1型(spinocerebellar 1;SCA1)は ataxia type 常 染 色 体 優 性 遺 伝 を 呈 す る脊 髄 小 脳 変 性 症 で あ り,本 邦 のYakuraら 告68)が 契 機 と な り,そ (6p23-24)に に よるHLAと の 遺 伝 子 座 が 第6染 の連 鎖 の報 色体短腕 存 在 す る こ とが 明 らか に な り,SCA1と 状 核 赤 核 ・淡 蒼 球 ル イ 体 萎 縮 症(内 藤 ・小 柳 病) 歯 状 核 赤 核 ・淡 蒼 球 ル イ 体 萎 縮 症(dentato で あ り,欧 米 と は異 な る連 鎖 不 平 衡 を 示 す67)。 この 連 鎖 不 平 衡 の 違 い は,本 5.歯 よ pallidoluysian atrophy;DRPLA)は1982年,内 性 疾 患 で あ る74)。DRPLAの 以 下 の 若 年 発 症 者(若 ク ロ ー ヌ ス,て ん か ん,精 神 遅 滞 を 主 症 状 とす る進 行 は ミオ 人 型)で 呆 は小 脳 性 運 動 失 調,舞 踏 ア テ トー ゼ 運 動,痴 を 主 症 状 とす る 脊 髄 小 脳 変 性 症 の 像 を 呈 す る 。 本 疾 患 で はCAGリ ピ ー ト病 の なか で 最 も著 しい表 現 促 進 現 象 と高 率 な若 年 型 の存 在 が み られ,若 年 型 の 大 部 分 は父 親 か ら の遺 伝 で あ る こ とが 知 られ てい る75)。神 経 病 理 学 的 に は,歯 年発 年 型)で 性 ミオ ク ロ ー ヌ ス て ん か ん の 像 を,成 人 発 症 者(成 性 が 主体 をなす。 路 徴 候 な どが み られ る 。 表 現 促 進 現 象 を認 め,若 臨 床 像 は 発 症 年 齢 に依 存 して お り,20歳 ばれ る よ うに な った69)。臨 床 徴 候 として は小 脳 性 運 動 失 体 藤 と 小 柳 に よって報 告 され た常染 色体 優性 遺伝 性 の神経 変 調 を 中 核 と し て,眼 振 が 目立 た な い外 眼 筋 麻 痺,錐 rubral- 状 核 赤 核 系 お よ び 淡 蒼 球 外 節 ル イ体 系 の 変 1994年DRPLAの 原 因 遺 伝 子 が 第12染 症 例 の 大 部 分 は父 親 か ら の遺 伝 で あ る こ とが 知 られ て (12p13.31)に い る 。 神 経 病 理 学 的 に は小 脳 皮 質(プ 常 に伸 長 して い る こ とが 報 告 され た76,77)。DRIPLA遺 橋 核,下 ル キ ン エ 細 胞), オ リー ブ核 お よ び ク ラ ー ク 柱 ・脊 髄 小 脳 路 の 変 性 が 主 体 を な し,歯 状 核,淡 経 核,脊 蒼 球 外 節,脳 幹運 動神 原 因 遺 伝 子 は1993年,候 者 で はCAGリ 補 領 域 か らCAG ピ ー トが 異 伝 子 は全 長 約20kbの ゲ ノム か らな り,10個 有 し て お り,第5エ ク ソ ン(翻 訳 領 域 の 中 間 部)にCAG リ ピ ー トが 存 在 す る78)。CAGリ 髄 前 角 な ど の 変 性 を伴 う。 SCA1の 同 定 され,患 色 体 短腕 上 7∼23回 のエ ク ソ ンを ピー ト数 は健 常 者 で は で あ る の に対 して,患 者 で は49∼88回 に伸長 リ ピー トの存 在 す る部 位 を 直 接 検 索 す る こ と に よ り同 し て お り,CAGリ 定 され,そ の コ ー ドす る蛋 白質 が ア タ キ シ ン1(ataxin- す る こ と,若 年 型 は成 人 型 に比 べ て よ り伸 長 し た リ ピ 1)と 命 名 さ れ た70)。SCA1遺 ー トを有 す る こ とが 報 告 され て い る79,80)(図3) 。 伝 子 は 全 長450kbの ゲノ ムか らな り,9個 の エ ク ソ ン よ り構 成 され て お り,5'末 端 側 の 第1∼7エ ク ソ ン と第9エ ク ソンの3'末 端 側 の大 従 来DRPLAは ピー トが 長 い ほ ど発 症 年 齢 が 若 年 化 日本 に 多 く,欧 米 で は きわ めて まれ と考 え られ て きたが,DRPLA4遺 伝 子 の発 見 以 来,欧 部 分 は 非 翻 訳 領 域 で あ る 。5'末 端 側 の 長 い非 翻 訳 領 域 か らの 報 告 もみ られ る81,82)。日本 人 にDRPLAが はSCA1遺 理 由 と し て,日 本 人 健 常 者 集 団 の 中 に は,欧 伝 子 を特 徴 づ け て お り,転 写 ・翻 訳 レベ ル で の 調 節 に 関 与 し て い る と考 え られ て い る71)。CAGリ 者 集 団 で は認 め られ な い20リ ピ ー トは翻 訳 領 域 の5'末 端 側 に存 在 し,健 常 者 で は6 CAGリ ∼40回 で あ るの に 対 して ,患 者 で は40∼83回 て お り,CAGリ に増 大 し ピー トが 長 い ほ ど発 症 年 齢 が 若 年 化 す イ ズ(中 米人 健常 ピー トを こ え る大 きめ の ピ ー ト を有 す る人 の 割 合 が 多 く83),約1%の 合 で リ ピー ト数26∼35回 間 体)の 米 多い 割 程 度 の 健 常 者 と患 者 の 中 間 サ リ ピ ー トを有 す る者 が 存 在 す る こ と 1847 34 蛋 白質 核酸 酵素 Vol.42 No.11(1997) どが 伴 う。 神 経 病 理 学 的 に は,視 蒼 球 内 節 系,歯 状 核 赤 核 系,黒 経 核,脊 角,ク 髄(前 床 下 核(ル 質,橋 核,脳 イ 体)淡 幹 運 動神 ラ ー ク 柱 ・脊 髄 小 脳 路,後 索) の変 性 と末 梢 神 経 病 変 が 主 体 を な す 。 MJDの 原 因 遺 伝 子 は連 鎖 解 析 に よ り第14染 色体 長 腕 に位 置 す る こ と85)が 明 ら か に さ れ た の ち,1994年 CTGリ ピー トを探 索 子 と して ヒ ト脳cDNAラ イブラリ ー を検 索 す る候 補 遺 伝 子 ア プ ロ ー チ に よ り,染 14q32.1に MJD遺 位 置 す るMJD1aが 伝 子(MJD1)の 存 在 す る。CAGリ Database Center for Life Science Online Service 図3 DRPLAに お け るCAGリ ピ ー ト数 と発 症 年 齢 の 相 関79) リ ピー ト数 が増 大 す る ほ ど発 症 年 齢 が 若 年 化 す る とい う明 瞭 な相 関 関係(r=-0.832,p<0.001)を 認 め る。 ま た,若 分 は 父親 か らの 遺 伝 で あ る こ と,若 (平 均59回)に る 。●:父 年 型(平 年型の大部 均67回)は 成 人型 比 べ て よ り伸 長 した リ ピー トを有 す る こ とが わか 親 か らの 遺 伝,○:母 親 か らの 遺 伝,□:発 端者が不 明。 端 側)にCAGリ ピー トが 者 で は61∼84回 きめ のCAGリ ピー トを有 す る人 の な か か ら,あ る頻 度 でDRIPLA4遺 伝子 変 異 が 生 じ て い る 可 能 性 を示 唆 して い る。 DRPLA遺 ピ ー トが 長 い ほ ど発 症 年 齢 が 若 年 化 す る こ と, I型 はII・III型に比 べ て よ り伸 長 した リ ピー トを有 す る こ と(発 症 年 齢 も低 い)87,88),同 じ リ ピー ト数 を もつ 同 胞 間 で は 男 性 の ほ うが 女 性 よ り10歳 とが 示 さ れ て い る89)。また,ハ 以 上発症 が早 い こ プ ロ タ イ プ解 析 よ り,日 本 人 と欧 米 人 は 共 通 の創 始 者 を も つ 可 能 性 が 示 唆 さ れ 存 在 して お り,こ の うちA1-B1に 回 程 度 の 比 較 的 長 いCAGリ DRPLA患 は11 ピ ー トが 伴 っ て い る。 者 の 伸 長 した リピー トお よび 中 間 体 の リピー べ てA1-B1ハ プ ロ タイ プ を伴 って お り,こ れ は 日本 人 ・欧 米 人 に共 通 で あ り84),リ ピー ト伸 長 の起 源 が 共 通(創 始 者 効 果)で 7.脊 髄 小 脳 失 調 症2型(Menzel病) SCA1に 類 似 した 臨 床 像 を呈 しなが ら,発 症 早 期 よ り 眼 振 を欠 く粘 着 性 緩 徐 眼 球 運 動 と深 部 腱 反 射 低 下 が 特 伝 子 に は リピー トに近 接 して2種 類 の 多 型 (多型A・B)が あ る こ と を 示 唆 して い る 。 徴 的 に 認 め ら れ,遺 伝 子 座 がSCA1と 異 なる常染 色体 優 性 遺 伝 性 の小 脳 失 調 症 が キ ュ ー バ に多 く存 在 す る こ とが 報 告 され て い た90)。1993年,連 ら の家 系 が 第12染 鎖 解 析 に よ り これ 色 体 短 腕(12q23-24.1)と 連鎖 す る こ とが 明 ら か に な り,脊 髄 小 脳 失 調 症2型(spinocerebellar ataxia type 2;SCA2)と 命 名 さ れ た91)。SCA2 は神 経 病 理 学 的 に はMenzelに よ り報 告 された 遺 伝 性 運 動 失 調 症 に 相 当 して お り,小 脳 皮 質 全 層,橋 6.Machado-Joseph病 常染 色体 優性 遺伝 を 示 す 脊 髄 小 脳 変 性 症 で あ り,当 初 ポ ル トガ ル 系 白人 に 特 有 な 疾 患 と考 え ら れ て い た が,そ の 後,日 め世 界 中 か ら報 告 され る よ うに な った 。MJDの 本をはじ 臨 床像 核,脊 オ 髄(後 索,前 角,ク ラ ー ク柱)な どの 変 性 と末 梢 神 経 病 変 を伴 う。 SCA2の 原 因 遺 伝 子 は1996年,3つ の 独 立 した グ ル ー プ に よ りそ れ ぞ れ 異 な る 方 法 で 同 定 さ れ ,そ の コ ー は多 彩 で あ り,錐 体 路 徴 候 とジ ス トニ ア を主 徴 とす る ドす る蛋 白質 が ア タ キ シ ン2(ataxin-2)と I型,小 た92∼94)。SCA2遺 脳 性 運 動 失 調 と錐 体 路 徴 候 を主 徴 とす るII型, 小 脳 性 運 動 失 調 と筋 萎 縮,感 核,下 リ ー ブ 核 の き わ め て 強 い 変 性 が 主 体 を な し,黒 質,赤 Machado-Joseph病(MJD)は 覚 鈍 麻,深 を 主 徴 とす るIII型 に大 別 さ れ,こ 名 な 眼 振 を伴 う外 眼 筋 麻 痺,顔 1848 で に伸 長 して お り, て い る88)。 が あ げ られ て い る 。 こ の事 実 は,大 トは,す の エ ク ソ ン を有 し,第 ピ ー ト数 は健 常 者 で は12∼37回 あ る の に対 し て,患 CAGリ 同 定 され た86)。 は4つ 4エ ク ソ ン(翻 訳 領 域 の3'末 色体 部 腱 反射 低下 れ に び っ く り眼,著 面 ・舌 の線 維 束 攣 縮 な CAGリ ピー トが 存 在 し て お り,CAGリ 常 者 で は15∼29回 命 名 され 伝 子 で は 翻 訳 領 域 の5'末 端 側 に ピ ー ト数 は健 で あ る の に対 して,患 者 で は35∼59 回 に 伸 長 して お り,CAGリ ピ ー トが 長 い ほ ど発 症 年 齢 35 トリプ レ ッ ト リピ ー ト病 が若 年 化 す る こ とが 示 さ れ て い る92∼94)。 SCA2遺 伝 子 で 特 徴 的 なの は,(1)CAGリ に乏 し く,リ ピー ト数22回 表3 ピー ト多 型 者 に お け るCAGリ ピー トの 伸 長 の 程 度 が 比 較 的 小 さ く,リ ピー ト数40回 に,健 常 者 のSCA2遺 させ るCAA配 ピー ト数 の伸 長 度 の の 対 立 遺 伝 子 が 全 体 の90% 程度 を 占 め る こ と,(2)SCA2患 の発 症 者 が 数10%を 親 の性 差 に よる親 子 間 のCAGリ 違 い73,79.80,87,88,92,94,97) 占 め る こ と,(3)SCA1遺 伝 子 に はCAGリ 列 が1∼3個 未満 伝 子 同様 ピ ー トを 中 断 挿 入 され て い るが,患 遺 伝 子 で は この挿 入 配 列 が 欠 落 して お り,CAGリ 者の ピー トは 中 断 され る こ とな く伸 長 してい る こ とで あ る92∼94)。 の場 合 の 親 子 間 で のCAGリ ピ ー ト数 の 変 化 につ い て ま とめ て み た73,79,80,87,88,92,94,97)。CAGリ ピ ー ト病 で は共 通 し て父 親 経 由 の 場 合 に よ り リ ピ ー ト数 が 増 大 す る傾 向 V.CAGリ ピー ト病 の 病態 生 理 を示 し,DRPLAで は その傾 向 が最 も顕 著 で あ った 。 こ Database Center for Life Science Online Service の 結 果 は,精 子 形 成 過 程 で の減 数 分 裂 の際 にCAGリ SCA2の 原 因 遺 伝 子 が 同 定 され,CAGリ ピー トの 異 常 SCA172,98)で は体 細 胞(リ ンパ 球)に 比 べ て,精 伸 長 が 各 疾 患 の 臨 床 像 と深 くか か わ る こ とが 明 らか に い て よ り伸 長 したCAGリ な っ た が,で さ れ て い る。 また,DRPLA,MJDで は具 体 的 に どの よ う な 機 構 に よ り疾 患 特 異 的 な神 経 細 胞 死 が 生 じ る の で あ ろ う か?発 症 機構 の解 明 に 向 け て の 問 題 点 を 整 理 し な が ら概 説 し て み た い(SBMA,SCA6の 病 態 生 理 に つ い て はIV-1,2を 参 照 され た い)。 MJD87,88)お にCAGリ よびDRPLA95)で gation distortion)も 報 告 さ れ て い る99)。 さ らに,最 近 の 研 究 で は,MJD1遺 が,異 は,両 方 の対 立 遺 伝 子 ピー トの伸 長 を もっ ホ モ 接 合 体 は,ヘ テ ロ 接 列(CAGリ ピ ー ト配 列 の3' トラ ン ス に もつ 場 合 の ほ う ピー トの 世 代 間 に お け る不 安 定 性 が よ り増 大 す る こ とが 示 さ れ て い る100)。こ れ は世 代 間 に お け るCAGリ 性 に,対 子 量 効 果 ” を認 め る。 一 方,HDで を 示 唆 して い る。 はホ モ接 合 体 の 重 症 伝 子 にお いて,正 常 対 立 遺 伝 子 内 の伸 長 したCAGリ 合 体 に比 べ て 明 らか に発 症 が 早 く重 症 型 を示 し,“ 遺 伝 化 や 発 症 年 齢 の 若 年 化 は 明 らかで はな く59,96),SCA2に は父 親 経 由 の 場 合 に 異 常 遺 伝 子 が 次 世 代 に伝 わ る率 が 高 い こ と(segre- 常 対 立 遺 伝 子 内 にGGG配 遺 伝 子 量 効 果 ” は 存 在 す る の か? 子にお ピ ー トが 存 在 す る こ とが 証 明 末 端 側 に 隣 接 す る 多 型)を 1.“ ピ ー トの不 安 定 性 が 強 い ことを示 唆 してお り,事 実HD61), ハ ン チ ン ト ン 病(HD),SCA1,DRPLA,MJD, 一方 ピ ー トの不 安 定 立 遺 伝 子 問 の 相 互 作 用 が 関 与 して い る可 能 性 ,体 細 胞 分 裂 にお け るCAGリ ピー トの 不 安 定 性 つ い て も ホ モ 接 合 体 で の 明 らか な 発 症 年 齢 の 若 年 化 は に つ い て も,剖 検 組 織 を 用 い た 解 析 か ら体 細 胞 モ ザ イ 認 め られ て い な い92)。同 じCAGリ クが 存 在 す る こ とが 示 され て い る。 当 初,HDに ピ ー ト病 で も,リ ピ ー ト数:が 伸 長 の 下 限 と 正 常 上 限 で 約2倍 DRPLA・MJDと,伸 も異 な る 長 の 下 限 と正 常 上 限 の リ ピー ト 数 が 近 接 し てい るHD・SCA2で,ホ モ接 合 の 効 果 が 異 な っ て み え る こ と は興 味 深 い 。 病 理 変 化 の 最 も少 な い 小 脳 でのCAGリ 長 の 程 度 が,中 た た め,疾 お いて, ピー トの 異 常 伸 枢 神 経 系 内 で 最 小 で あ る こ とが 示 さ れ 患 特 異 的 な 病 変 分 布 に体 細 胞 モ ザ イ ク が 関 与 し て い る 可 能 性 が 推 測 され た101)。しか し,そ の後 の 研 究 に よ り,SCA198),DRPLA102,103)(図4),MJD104) 2.CAGリ ピー ト は な ぜ 不 安 定 な の か? 世 代 間 で のCAGリ ピー トの不 安 定 さは,疾 に お い て も,小 脳 に お い て 異 常CAGリ 患 を伝 え 最 も短 い こ とが 示 さ れ た た め,現 ピー トの 伸 長 が 在 で は む し ろ病 変 の る親 の 性 別 に よる影 響 を強 く受 けて い る。HD,SCA1, 分 布 とは 一 致 せ ず,CAGリ DRPLAで は,従 来 よ り若 年 型(重 症 型)の 症 例 の 大 部 特 有 な 現 象 と考 え られ て い る 。 した が っ て,体 細 胞 モ 分 は 父 親 か ら病 気 を受 け継 い で い る こ とが 知 られ て い ザ イ ク の み で 疾 患 特 異 的 な神 経 変 性 過 程 を 説 明 す る こ た 。 表3に,そ と は 困 難 で あ る。 れ ぞ れ の 疾 患 にお け る母 親 経 由(mater- nal transmission)と 父 親 経 由(paternal ピー ト病 に 共 通 す る小 脳 に transmission) 1849 36 蛋 白質 核酸 酵素 Vol.42 No.11(1997) な わ ち,変 異 原 因 遺 伝 子 の転 写 に は大 き な 障 害 は認 め られ な か った 。 続 い て,予 測 さ れ る ア ミノ 酸 配 列 に対 す る抗 体 を用 いて, HD110,111),SCA1112), DRPLA113)の 遺伝 子産 物の同 定 が 行 な わ れ た 。 そ の 結 果,3 疾 患 す べ て に,伸 長 したCAG リ ピ ー トを有 す る 変 異 対 立 遺 伝 子 に対 応 す る異 常 蛋 白質 が 存 在 し,正 常 蛋 白 質 と は電 気 Database Center for Life Science Online Service 泳 動 に お け る移 動 度 が 異 な る こ とが 明 らか に な っ た 。 また, こ の異 常 蛋 白質 は 伸 長 した CAGリ ピー ト数 に比 例 して 移 動 度 が 異 な り,遺 伝 子 産 物 に グ ル タ ミ ン鎖 の 伸 長 が 存 在 す る こ とが 確 認 さ れ た 。 こ れ ら 図4 DRPLA患 者 の 剖 検 組 織 に お け るCAGリ 上 段 は異 常 に伸 長 したCAGリ 数 を もつ 対 立 遺 伝 子 。CAGリ ピー ト数 の 体 細 胞 モ ザ イ ク102) ピー ト数 を も つDRPLA対 立 遺 伝 子,下 段 は正 常 のCAGリ の遺 伝 子 産 物 は脳 内 の 神 経 細 ピー ト ピー トの 異 常 伸 長 の 程 度 は小 脳 皮 質 に お い て 最 も小 さ い。 胞 に最 も多 く存 在 して い たが, 神 経 系 以 外 に も広 く一 般 臓 器 に存 在 して お り,疾 患 の病 変 3.伸 長 したCAGリ ピー トを 有 す る 変 異 原 因 遺 伝 子 の 転 写 ・翻 訳 は 正 常 に 行 な わ れ て い る の か? 経 細 胞 内 で の 局 在 につ いて は,HD,DRPLA遺 原 因 遺 伝 子 の 転 写 に 関 す る研 究 は まずHDに 行 な わ れ た 。ED遺 伝 子 の転 写 産 物(mRNA)は 最 も多 く発 現 し て い た が,神 部 位 の 分 布 に対 応 す る特 異 性 は認 め られ な か っ た 。 神 おいて 物 は細 胞 質 内 に,SCA1遺 伝子 産 伝 子 産 物 は核 内 お よ び 細 胞 脳で 質 内 に 存 在 す る こ とが 示 さ れ た 。 さ ら に,患 者 脳 にお 経 系 以 外 に も広 く全 身 臓 い て も これ ら の遺 伝 子 産 物 が 存 在 す る こ とが 確 認 され, 器 に 発 現 し て い た 。 脳 内 で の 発 現 パ タ ー ン は神 経 細 胞 しか も正 常 蛋 白 質 と異 常 蛋 白 質 の 両 者 が ほ ぼ等 量 存 在 に 多 く分 布 して お り,グ す る こ とが 示 され た112∼114)。 す な わ ち,変 異 原 因 遺 伝 子 リア 細 胞 に は ほ と ん ど発 現 し て い な か っ た 。 しか し,と くに病 変 部(線 く発 現 して い る わ けで は な く,脳 条 体)に 多 内 の 広 範 な組 織 に 分 布 して お り,発 現 パ タ ー ン か らで は組 織 特 異 的 な病 変 を説 明 す る こ とは 困 難 で あ った 。 ま た,患 て も対 照 脳 と変 わ らな いmRNAの 者脳 にお い 発 現 が認 め られ てお の 翻 訳 に つ い て も大 き な 障 害 は な く,遺 伝 子 産 物 の 安 定 性 に も大 差 が な い こ とが 判 明 した 。 一方 ED遺 ,HDに つ いて はノ ッ クア ウ トマ ウス が作 製 され, 伝 子 が ホ モ 接 合 で 欠 失 し て い るマ ウ ス で は胚 発 生 が 障 害 され,胎 生 致 死(embryonic り105,106),さらに,正 常 対 立 遺 伝 子 と変 異 対 立 遺 伝 子 の じ る こ とが 示 され た115,116)。HD遺 いず れ か ら も転 写 が 行 な わ れ て い る こ とが 確 認 され た 。 欠 失 し て い る マ ウ ス で は,運 こ れ ら の 事 実 はSCA171),DRPLA107,108),MJD109) れ,視 lethality)が 生 伝 子 が ヘ テ ロ接 合 で 動亢進,認 知 障 害が み ら 床 下 核 の 細 胞 数 の減 少 を認 めた とす る報 告115)と, に つ い て も 共 通 し て お り,そ の 変 異 対 立 遺 伝 子 の 何 ら異 常 を認 め な か った116)と す る報 告 が あ る。 これ ら mRNAは,正 の 事 実 か ら,ED遺 常 対 立 遺 伝 子 のmRNAと して お り,ま た,患 ほぼ等 量 発 現 者 脳 に お け る原 因 遺 伝 子 のmRNA レ ベ ル は対 照 脳 と変 わ ら な い 発 現 が み られ て い る 。 す 1850 伝 子 産 物 が 胚 発 生 に重 要 な 役 割 を 果 た し て い る こ とが 推 測 さ れ る が,ま ク ア ウ トマ ウ ス と ヒ トのHDの た,同 時にノッ 間 に は類 似 性 が 認 め ら 37 Database Center for Life Science Online Service ト リプ レッ トリ ピー ト病 図5 CAG リ ピ ー ト病 の 分 子 病 態 伸 長 したCAGリ ピー トを 有 す る 変 異 原 因 遺 伝 子 の転 写 ・翻 訳 は 正 常 に行 な わ れ てお り,変 異 対 立 遺 伝 子 に対 応 す る 異 常 蛋 白 質 が 存 在 す る。 異 常蛋 白 質 は 伸 長 し たポ リグ ル タ ミン 鎖 を有 して お り,疾 患 特 異 的 な 神 経 細 胞 死 を ひ き起 こ す と考 え られ るが,そ は不 明 で あ る 。ORF:読 れ ず,本 疾 患 の 変 異 がloss of functionで はない こと が確認 された。 した が っ て,前 あ る い は異 常 ポ リ グ ル タ ミ ン ど う し の 結 合 が 起 こ り凝 集 し,こ れ が 神 経 細 胞 に 対 して 障 害 性 に働 く53)な どの 記 のCAGリ ピー ト病 の場 合,伸 長し た ポ リ グ ル タ ミ ン鎖 を有 す る異 常 蛋 白 質 が 神 経 細 胞 に 仮 説 が 提 唱 さ れ て い る。 最 近 に な り,ポ 対 し て 何 らか の 毒 性 あ る い は 障 害 性 を 獲 得 す る こ と に 在 が 見 い だ され,注 よ り,神 経 細 胞 死 を ひ き起 こす 可 能 性 が 示 唆 さ れ る。 遺 伝 子 産 物)に リグ ル タ ミ ン に 結 合 す る蛋 白 質 の 存 目 を集 め て い る。 ハ ンチ ンチ ン(HD 特 異 的 に 結 合 し,神 経 系 の み に 発 現 し て い る 蛋 白 質HAP1(huntingtin 4.伸 の機 序 に つ い て み 取 り枠 。 長 したポ リグル タ ミン鎖 を有する 異常 蛋 白質 は どの ような機 構 で神経 細胞死 をひき起 こすのか?(図5) 伸 長 した ポ リグル タ ミン鎖 を有す る異 常蛋 白質 の性 associated 1)が 最 初 に 同 定 さ れ た118)。HAP1の 明 で あ る が,HAP1と protein- 機 能 につ い て は不 ハ ン チ ン チ ン の 結 合 性 は,ポ リ グ ル タ ミ ン鎖 の 伸 長 が 長 い ほ ど強 い こ とが 示 さ れ て お 質 につ いて は,(1)異 常 蛋 白質 は トラ ンスグル タ ミナー り,HAP1がHDの ゼ の基 質 とな り,こ の酵素 を介 して他 の蛋 白質 と架橋 され る。.また 最 近 に な っ て,ポ を起 こ し凝 集 し,こ れ が神 経 細 胞 に対 して毒 性 に働 す る 蛋 白 質 と し て グ リセ ル ア ル デ ヒ ド3-リ ン酸 脱 水 素 く117),(2)ポリグル タ ミンは水素 結合 によって相 互 に強 酵 素(glyceraldehyde 力 に結 合 し,ポ リグル タ ミン どう しが ジ ッパ ー機 能 を GAPDH)が もち う る。 ポ リグ ルタ ミン鎖 の異常 伸張 に よ り水 素結 DRPLA蛋 合 の強度 が亢進 し,ほ かの蛋 白質 との非特 異 的結合 か, す る こ とが 報 告 さ れ て い る120)。GAPDHは 発 症 に 関 与 して い る可 能 性 が 示 唆 リ グ ル タ ミン 鎖 に 結 合 3-phosphatede 同 定 され た119)。GAPDHは hydrogenase; ハ ンチ ン チ ン, 白質 の み な らず119),ア タ キ シ ン1と も結 合 解 糖 系 の重 1851 38 蛋 白質 核酸 酵素 Vol.42 No.11(1997) 要 な 酵 素 で あ り,伸 長 した ポ リグ ル タ ミ ン鎖 を有 す る お り,よ 異 常 蛋 白質 とGAPDHが 強 固 に結 合 す る こ とに よ り ン ほ ど切 断 さ れ や す い こ とが 示 され て い る126)。ア ポペ 性 が 低 下 し,神 経 細 胞 の エ ネ ル ギ ー 代 謝 が イ ン の 脳 内 分 布 は 広 範 で あ り,疾 患 特 異 的 な病 変 分 布 GAPDH活 障 害 され,神 経 細 胞 死 に至 る の で は な い か と推 測 さ れ る。 しか し,原 因 蛋 白質 の 分 布 同 様 にGAPDHも り長 い ポ リ グ ル タ ミ ン鎖 を有 す るハ ン チ ン チ を 説 明 し う る もの で は な い が,異 常 伸 長 した ポ リグ ル 広範 タ ミ ン鎖 を 含 む 部 分 の プ ロ セ シ ン グ産 物 が 神 経 細 胞 の の発 現 分 布 に 病 変 部 位 の分 布 に 対 変 性 機 構 に 密 接 に 関 与 して い る可 能 性 を示 唆 し て お り, 応 す る特 異 性 は認 め られ て い な い 。 一方最近 になって ,MJD1遺 伝 子 の異 常 伸 長 した 前 述 の “プ ロ セ シ ン グ モ デ ル ” 同 様 に今 後 の研 究 の 進 に発 現 して お り,そ CAGリ 展 が 待 た れ る。 ピー トよ り翻 訳 さ れ るポ リ グル タ ミ ン鎖 を培 養 細 胞 に発 現 さ せ た 場 合 に 細 胞 が ア ポ トー シ ス に 陥 る こ Database Center for Life Science Online Service と,マ ウ ス の小 脳 プ ル キ ン エ 細 胞 に この 異 常 ポ リグ ル おわ りに ト リ プ レ ッ ト リ ピー ト伸 長 の 発 見 は神 経 疾 タ ミ ン鎖 を特 異 的 に 発 現 さ せ る と生 後 早 期 よ り著 し い 患 の 病 態 解 明 の う えで新 分 野 を切 り開 い た とい え る。 最 小 脳 失 調 を呈 し,プ ル キ ン エ 細 胞 の 著 明 な 脱 落 を伴 う 近 で は,進 行 性 ミオ ク ロ ー ヌ ス て ん か ん1型(Unver- 小 脳 萎 縮 が 認 め られ る こ とが 報 告 さ れ た121)。MJD1全 richt-Lundborg病)の 長 蛋 白質 を培 養 細 胞,プ の 変 異 と して,プ ル キ ン エ 細 胞 に発 現 させ た 場 原 因 遺 伝 子(cystatin B遺 伝 子) ロモ ー タ ー領 域 に お け る12塩 基 を単 合 に は何 ら表 現 型 を示 さ な か っ た こ とか ら,以 下 の よ 位 とす る反 復 配 列 の 異 常 伸 長 が 報 告 され る な ど127),神 う な “プ ロ セ シ ン グ モ デ ル ” が 提 唱 さ れ て い る。 す な 経 疾 患 の 分 子 病 態 を 考 え る う え で トリ プ レ ッ ト リ ピ ー わ ち,異 常 伸 張 した ポ リ グ ル タ ミ ン鎖 を含 む全 長 蛋 白 質 は細 胞 障 害 性 に 乏 し い が,あ る特 定 の部 位 で 限 定 分 解 あ る い は プ ロ セ シ ン グ を 受 け て,異 トを は じ め とす る動 的 変 異 の 果 た す 役 割 の 意 義 は ます ます 増 し て 野 る。 疾 患 の 原 因 遺 伝 子 が 判 明 し た こ と に 常 ポ リグ ル タ ミ よ り,日 常 臨 床 の 場 に お い て 分 子 レ ベ ル に 基 づ く診 断 ン鎖 を含 む 断 片 が 切 り出 さ れ た 場 合 に は著 し い 細 胞 毒 お よび よ り正 確 な遺 伝 子 相 談 が 可 能 に な っ た 。 今 後 は, 性 を獲 得 し 神 経 細 胞 死 を ひ き起 こ す とす る 仮 説 で あ ト リプ レ ッ ト リ ピ ー トが どの よ う な分 子 機 構 で 異 常 伸 る121)。伸 長 リ ピ ー トを 含 むSCA1原 cDNAを 因 遺伝 子 の全 長 発 現 さ せ た マ ウ ス で は小 脳 失 調 の 発 症 が きわ め て 遅 か っ た こ と122),伸 長 リ ピー トを含 むHD原 伝 子 の 全 長cDNAを 発 現 させ た マ ウ ス はHDの 因遺 表現 型 長 し不 安 定 に な る の か と い う点 と,ど の ような分 子機 構 に よ り特 定 の 神 経 細 胞 が 変 性 に 陥 り発 症 に 至 る の か と い う点 の 解 明 が 必 要 で あ ろ う。 そ し て,こ が 明 らか に さ れ た 先 に,わ れ らの 点 れわ れ臨床 医 が待 ち望 ん だ を示 さず123),伸 長 リピ ー トを含 むHD原 因遺 伝子 のエ 真 の原 因 に 対 す る “治 療 ” が み え て くる も の と思 わ れ ク ソ ン1の み(HD蛋 度 にす ぎ な い) る。 白質 の わ ず か3%程 を発 現 さ せ た マ ウ ス で はHDの もCAGリ 表 現 型 を示 し124),し か ピ ー トの 不 安 定 性 を認 め た こ と125)は,こ の 仮 説 の 妥 当 性 を暗 示 し て い る。 限 定 分 解 あ る い は プ ロ セ シ ン グ を行 な う酵 素 が 個 々 の 原 因 蛋 白 質 に特 異 的 で か つ 脳 内 の 分 布 が 特 異 的 で あ る とす る と,異 常 伸 長 し た ポ リグ ル タ ミ ン鎖 を 含 む 断 片 が 切 りだ され る領 域 は 限 定 さ れ,疾 患 特 異 的 な 病 変 分 布 を 説 明 し う る と も考 え られ る。 また,線 虫C.elegansの 3) 4) 5) プ ログ ラム細胞 死 にかかわ る シ ス テ イ ン プ ロ テ ア ー ゼ(CED-3)の ロ グ で あ るICEフ 文 1) 2) 哺乳 動物 ホ モ ァ ミ リー プ ロ テ ア ー ゼ の1つ ア ポペ 6) イ ンが ハ ン チ ン チ ン の プ ロ セ シ ン グ に 関 与 して い る と の報 告 が み られ る126)。 しか も,ア ポ ペ イ ンに よ るハ ン チ ン チ ンの 切 断 は ポ リ グル タ ミ ン鎖 の 長 さ に依 存 し て 1852 7) 献 Martin, J. 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