商品づくり、直接販売の手順(8月)

商品づくり
商品づくり、
づくり、直接販売の
直接販売の手順
近年、自分で作った農産物や加工品を消費者や実需者の方々に直接販売したい!届けた
い!と思っている方は多いのではないでしょうか。
一口に直接販売といってもその形態は様々です。具体的には、近所の直売所、地元JA
の直売所、インターネット販売、スーパーやデパート、百貨店、レストラン等の飲食店(原
材料として)などが挙げられます。
どの形態でも、お客様に商品を買っていただくためには、自社商品の魅力を伝える必要
があります。魅力には、商品の特徴、作り手の思い、価格、パッケージなど様々な要素が
関係します。
そこで、商品の魅力を組み立て(商品づくり)、伝えるための流れを紹介します。
【ステップ1】
ターゲット(買ってもらいたいお客様)、商品の優位性(ウリ)、コンセプトを明らか
にします。専門家に販売方法等の指導を受ける場合は、事前に整理しておくと、スムー
ズに指導が受けられます。
1
ターゲット(買ってもらいたいお客様)をハッキリさせる
まず、商品を”誰に買ってもらいたいのか”をハッキリさせることが重要です。この
部分が決まらないと、具体的な商品づくりに進むことができません。なぜなら、ターゲ
ットによって商品のコンセプト、パッケージ(商品の包装)、価格設定は全く違ってく
るからなのです。
【例】子どもをターゲットとした場合 → 子どもが手に取りたくなるようなパッケージ
を作成
2
ポジショニング(競合する他商品との違い)をハッキリさせる
商品の「違い」「独自性」をハッキリさせます。商品の特徴、他産地などのライバル
商品との違いは何かを考え、商品の「売り」を決めます。
お客様は、他には無いものや珍しいものに興味を持ってくれます。特に、百貨店など
のバイヤー(仕入れ担当者)は、その傾向が強いと言えます。
『市場調査』
競合する他商品との違いを把握する手段の一つに、市場調査があります。この調査
は、自社商品と競合する商品が、どこで、どのような状態(量、パッケージ、価格他)
で販売されているかを自分の目で確認し、商品づくりや販売先の選定に役立てること
ができます。
【例:市場調査における目の付け所】
調査内容
調査項目
◎どの店(コーナー)を見たいのかを決める ①そのままの形で販売
=自分の目指す販売形態はどれか?
②惣菜に加工されて販売
③弁当に調理(加工)されて販売
※同じ店(百貨店、スーパー等)の中でも農産物 ④贈答品として販売
は様々な形で販売されている
⑤飲食店で調理(加工)されて販売
◎来店客をさりげなく観察する
①調査日は、平日?、休日?、時間帯は?
②客層は、サラリーマン?、OL?料理人? ……
③用途は、ランチ?、仕事帰りの夕食?、仕入れ? ……
-1-
◎店(コーナー)の特徴をチェックする
◎商品をチェックする
①立地(百貨店、スーパー等の中でどのような場所を占め
ているか)
②客単価
③お店の特徴
④品揃えの特徴
①量目(内容量)
②品質の特徴(外観、認証、食味)
③価格(想定しているターゲットは誰か)
④パッケージ
⑤販売者、製造者、生産者の名前
→気になったらインターネット等で調べてみる
⑥賞味期限
⑦原材料(加工品)
⑧味 →気になったら、購入して食べてみる
※新潟県農業担い手サポートセンター・松田販売戦略スペシャリスト作成資料より引用
【市場調査の結果から商品改善(切り餅)をした事例】
~首都圏百貨店への販路開拓を目指していたAさんの場合~
項 目
調査結果
改善内容
価 格
自社商品と同類商品の比較検討した結果、
商品のこだわりをもっとPRできるよう
差別化 ①商品の特徴がPRできていない、②内容量 なパッケージに変更するとともに、内容量を 30
量 目 が多いことが分かった
%以上減らし、価格を下げた。
3
商品のコンセプトをハッキリさせる
~基本的な概念を明らかにする~
「どんな思いで作ったのか」、「どんなことに役立つのか」、「誰のどんなニーズに
応えるのか」「アイディアは何か」をハッキリさせます。
社会的な要望に裏打ちされた存在感こそが、商品の「個性」、「特色」となります。
【商品コンセプトとは】
誰のどんな欲求(ニーズ)を満たすのか、どのように役に立つのか、メリットは何かなどを一言
で言い表したもの
【例】永谷園のスピード中華
”ピーマン6個で青椒肉絲が簡単にできる”
コンセプト
=
忙しい主婦を応援!
※忙しい主婦の「短時間で美味しい料理が作りたい」というニーズに応える
【ステップ2】
商品を魅力的に見せるための商品づくりをします。ターゲットにあったパッケージ
や商品PRパンフレットの作成、価格設定、ロゴマーク等を作成します。
パッケージやPRパンフレット、ロゴマーク作成などは、専門家に依頼する場合が
多いですが、パッケージなどを作ることが最終目的ではないので、販売計画を十分練
り、経費をかけ過ぎないように注意してください。
1 パッケージ、ネーミング、ロゴマーク、PRパンフレット等の作成
(1)パッケージ
パッケージには、商品を包み、消費者の元へ届ける重要な役割があります。それに
加え、多くの商品の中から、自分の商品を選んでもらうための大きな役割を持ってい
ます。商品の特徴や使い方(食べ方など)を正しく伝え、消費者に必要性を感じてもら
うことが必要です。
-2-
(2)ネーミング(商品名)
ネーミングは、商品の機能・特性を「分かりやすい言葉」で表現するものと言えま
す。また、ターゲットにあわせたネーミングが必要であり、他の競合商品と重ならな
いように注意します。
【商標調査】
弁理士などの専門家に商標調査を依頼する前に、特許庁のホームページで確認し
ます(専門家への依頼がムダにならないために)。
(3)ロゴマーク
ロゴマークは、自社の「顔」であるとともに、「個性」と「その差別的優位性」を
ビジュアルに表現し、瞬時に消費者を説得し引きつけることができるツール(道具)で
す。また、背景にある消費者への姿勢や自社の経営理念、コンセプトが表現されるも
のです。
(4)PRパンフレット
パンフレットは、会社・店舗や商品のイメージを消費者伝えるツール(ツール)です。
一般的には、営業活動などに持参し、自社のイメージをお客様に定着させます。
パンフレットの目的、設置場所、期待する効果などを考慮した上で、より効果の期
待できるパンフレットを作成する必要があります。
2 価格設定 ~ターゲットに買ってもらえる販売価格を設定する~
(1)製造(生産)原価の把握
販売価格を決定する要素はいくつかありますが、多くの場合、市場価格を参考に決
定されていると思われます。
しかし、類似する商品であっても、それぞれ製造(生産)にかかる費用は異なり、利
益も違ってきます。つまり、一般市場価格のみにこだわり、製造(生産)に係る費用を
下回った価格で販売したのでは、経営は成り立ちません。よって、経営を安定的に継
続させるには、「市場価格」の他に「製造(生産)原価」や「販売管理費等のその他運
営に必要な経費」を大きな要素として考える必要があります。
実際の商談場面では、価格交渉(特に値下げ交渉)にどこまで応じられるのかを判
断するため、必ず把握しておいてください。
上限
買い手が感じる価値
値付け可能な価格帯
下限
…他の同類製品価格
…実勢価格、入札価格
コスト(限界単価)
…コスト積上げ、原価+α
(2)生産及び販売計画の策定
ア 生産計画
生産量は、製造原価等の原価に影響するため、生産計画の策定は、価格設定と同
時に進めます。
イ
販売計画
多くの場合、同じ商品であっても、取引先によって販売に係る経費は異なるため、
商品別・取引先別の販売計画を策定します。
-3-
【ステップ3】
消費者やバイヤー等に商品を認知するための活動を行います。どんなに優れている
商品であっても、消費者に知ってもらわなければ販売にはつながりません。
1 プロモーション
~新規顧客確保に向け、営業活動を実施する~
(1)販売促進活動計画策定
ターゲットとするお客様に対し行う商品PR活動にあたり、プロモーション(販売
促進)活動計画(誰に、どのようなメッセージを、どんなタイミングで伝えるのか)
を策定し、計画的な活動を行います。
(2)PR活動
ア イベントの開催、参加
イベントは、「情報発信」の場であると同時に「情報受信」の場です。あらかじめ
①誰に、②どんなメッセージを届け、③どんなゴールを期待するのかという設計図を
準備します(情報発信)。また、お客様と直接向き合え、お客様のニーズや不満を聞
き出せる絶好の機会です(情報受信)。
情報発信 … (例)無料配布の商品に産地名や社名、連絡先を記載する
情報受信 … (例)聞き取り調査の活用
イ 商談会への参加
商談会は、興味を持ったバイヤー等が集まってくるため、効率良く営業活動を行う
ことができる場です。しかし、多くの場合、出店料の負担が伴うため、計画的な参加
が必要です。
ウ 広告、宣伝等
代表的な手段として、以下の手法があげられますが、広告料等の費用負担が伴うも
のもあるため、自分の経営資源やターゲットにあったやり方を選択します。
【代表的な手段】
①電波や活字の活用(テレビ・ラジオCM、新聞等のチラシ)
…広告料等の費用が必要となりますが、コミュニティー放送など販売エリアに
あわせて活用しましょう(放送局によっては販促もしてくれます)。
②サンプル配布、景品、懸賞などの活用
③テレビ、ラジオ、新聞、雑誌などに無料で取り上げてもらいます。
…一時的なPR効果は高いが、固定客化させるための努力が必要です。
④口コミ
…お客様が新たなお客様に商品良さを伝えてくれるため、高い効果が期待でき
ますが、固定客の顧客満足度向上が必要です。
営業活動
~足で稼ぐ!~
ターゲットとするお客様(特に小売店、実需者等)に対し、電話や訪問による商品
PRを行います。電話よりもお客様に顔をみせる方がPR効果は期待できます。場合
によっては、粘り強く、何度でも足を運こび熱意と誠意を伝えることが必要となりま
す。
エ
しかし、これらの活動には、旅費の発生を伴うため計画的な行動が必要です。
【経営普及課専門技術指導担当(農業経営)
-4-
阿部
浩一】