2014年度事業評価報告書 - 一般財団法人海外産業人材育成協会

2014
はじめに
近年の経済活動のグローバル化に伴い、各国・企業間の競争関係は激しさを増す一方、相互
の補完関係の重要性もますます高まりつつあります。こうした状況の中、日本企業の海外事業
展開は加速の一途を辿っており、幅広い分野で日本の知識・経験を民間ベースの技術協力に
よって効率的に途上国へ移転することで、日本が途上国とともに持続的・安定的に成長する関
係を構築すべき時代といえます。
当協会は、昨年、創立55周年を迎え、人と人とのつながりとして世界中に広がるHIDA/
AOTS帰国研修生同窓会の代表者会議を10月に東京で開催し、成功事例大会等を通してこれ
までの産業人材育成協力事業の成果を確認するとともに、これまで長年にわたり海外の産業人
材の育成を通じて培ってきた国内外の人的ネットワークや経験・ノウハウを活かしながら、
『人材育成を通じ、「共に生き、共に成長する」世界の実現を図る』というミッション達成に
向け、さらに着実に事業を前進させて参ります。
本事業(新興市場開拓人材育成支援事業)は、政府開発援助(ODA)の理念に基づくわが国
の経済協力の一環として、経済産業省から補助金の交付を受け実施している事業です。
政府資金と民間資金を組み合わせて行う官民連携事業として、開発途上国の現地産業人材の
育成、技術移転を通じて開発途上国の産業発展を促すと共に、我が国企業の貿易投資活動の促
進を目的としています。
協会は、2012年度より3年間、本事業の実施者として採択され、本年度が最終年度にな
ります。本報告書では、2014年度の本事業の成果についてまとめるとともに、2012年
度から3年間の成果についてもデータの集計分析等を行っております。
評価にあたっては、一貫性・客観性・透明性・継続性を担保するため、協会が有する事業評
価システムに基づき、事前・中間・事後の各段階において、研修生・専門家・HIDA・受入企
業・派遣元企業等による多面的な評価を行っております。
また、その評価結果(一次評価)をさらに包括的且つ専門的に評価していただくため、外部
有識者による評価委員会でご審議(二次評価)いただいております。
近年、我が国の厳しい経済・財政状況の中、当協会では本事業をより一層効果的・効率的に
行うべく、事業評価を通じて各ステークホルダーに対して説明責任を果たすとともに、より一
層の事業の改善に取り組む所存でございます。
関係各位の格別のご支援とご協力を引き続き賜りますよう心よりお願い申し上げます。
2015年3月
一般財団法人 海外産業人材育成協会
理事長
金 子 和 夫
(頁)
序章
事業の概要、事業評価システム
Ⅰ. 新興市場開拓人材育成支援事業の概要
1.事業の概要
2.事業の実績と評価対象
Ⅱ. 事業評価システムの概要
1.HIDA研修事業評価システム
2.HIDA専門家派遣事業評価システム
第1章
2.1
2.2
2.3
2.4
2.5
2.6
2.7
2.8
3.1
3.2
3.3
3.4
3.5
3.6
16
18
19
24
28
34
41
44
50
53
58
62
68
75
78
80
83
83
86
94
97
158
190
受入研修事業の事後評価
5.1 概要
5.2 研修生による評価
5.3 受入企業による評価
第6章
11
外部専門家によるヒアリング調査
4.1 外部専門家によるヒアリング調査概要
4.2 アジア4カ国の調査結果
・タイ、ベトナムの企業訪問
・インド、ミャンマーの企業訪問
付
表
第5章
6
専門家派遣事業
受入企業に対する指導評価
付加指導先に対する指導評価
HIDA総合評価
専門家派遣の経済効果評価
制度利用企業からの要望、コメント
本事業3年間における特徴、傾向
付
表
第4章
3
研修事業
技術研修における一般研修の評価
技術研修における一般研修での日本語研修の評価
技術研修における実地研修の評価
政策的重点分野の評価
管理研修の評価
受入研修環境の評価
受入研修の経済効果評価
海外研修の評価
付
表
第3章
2
評価結果(要旨)
1.1 研修事業
1.2 専門家派遣事業
1.3 外部専門家によるヒアリング調査
1.4 受入研修事業の事後評価
第2章
1
194
196
207
評価結果の二次評価
6.1 評価委員会による事業評価の内容
6.2 評価委員会による提言の内容
214
214
序章
Ⅰ.
事業の概要、事業評価システム
新興市場開拓人材育成支援事業の概要
1.事業の概要
新興市場開拓人材育成支援事業(以下、本事業という。)は、日本の技術協力の一環とし
て、開発途上国の経済発展を支える産業人材を育成する事業で、国(経済産業省)からの資
金(ODA)と民間の資金を組み合わせて実施する官民連携事業である。この事業には、人材
育成の手段として日本で行う研修(受入研修)、海外で行う研修(海外研修)、並びに、海
外に専門家を派遣して行う専門家派遣の3つのタイプがある。
1)事業の種類
(1)日本で行う研修(受入研修)
開発途上国等の技術者・管理者を日本に招聘して行う研修を受入研修と呼び、企業固
有の産業技術の習得を目的とした技術研修と、企業経営や工場管理に必要とされる汎用
的な経営管理技術を学ぶ管理研修の2つのタイプがある。
①技術研修
技術研修は、製造技術等の固有技術の習得を目的とした研修で、HIDAで実施する導
入研修(一般研修)と民間企業の現場等で実施する研修(実地研修)からなる。技術研
修では、日本及び日本人に対する理解を深め、専門分野の固有技術を習得する。
・一般研修
一般研修は、実地研修を円滑に進める上で必要な日本語の習得や日本社会の理解を
目的とした研修で、HIDAの研修センターにおいて、日本語、日本社会の産業・企業文
化等を理解するための講義、産業施設の見学等を行う。標準的な6週間コース(J6W)
の他、より高度な日本語力を習得するための13週間コース(J13W)、日本語研修を行
わない9日間(9D、A9D)コースを実施している。
・実地研修
実地研修は、研修生が現地業務を行う上で必要とされる製造技術等の固有技術や各種
管理技術を、受入企業の協力を得ながら、適切な研修計画に基づいて習得するための研
修である。
②管理研修
管理研修は、企業経営や工場管理等に必要な管理手法を習得するため、日本企業の先
進的な事例見学やケース・スタディ、講義、また参加者間あるいは専門家とのディス
カッションや演習などを通し、日本企業の高度なマネジメントを学ぶ研修で、HIDAの
研修センターで実施される。研修期間は通常2週間で、コースによっては1週間や3週間
といったコースもある。管理研修は、開発途上国の研修ニーズや国内外の機関からの要
望に基づいて、経営管理、生産管理、品質管理、デザインマネジメント等の分野別、言
語別、職位別にコースを開設している。
(2)海外で行う研修(海外研修)
海外研修は、日本から講師を海外に派遣し、汎用的な管理技術等について、講義、演
習、実技等を組み合わせて現地で実施する短期集中型の集団研修である。
(3)専門家派遣
専門家派遣は、日本企業(協力企業)と連携し、開発途上国の企業(受入企業)に技
術指導者(専門家)を派遣する事業である。民間企業の製造現場や教育機関等にわが国
の産業界で培われた優れた技術・知見を有する民間の人材を専門家として派遣し、OJT
方式による技術指導を行う。
-1-
2.事業の実績と評価対象
本事業は、2012年度より3年間継続して実施され、HIDAが事業実施者として採択され毎年
事業を実施してきた。事業名称は、2012年度が経済産業人材育成支援事業、2013年度からは
新興市場開拓人材育成支援事業と変更されたが、事業の目的、内容、制度はほぼ同様の形態
で実施された。
各年度の事業の実績は下表の通りである。本年度については事業実施中のため、数値は見
込み値である。極めて残念なことに、予算額はこの3年間で約半減し、各事業の人数、コース
数等も急減している。利用企業、参加研修生、専門家、講師、HIDA/AOTS同窓会、海外関
係機関など本事業関係者からは高い評価をいただいてきた事業であるが、国の厳しい財政事
情のもと、財政当局からは厳しい査定を受け、前述した状況となっている。
評価対象は、過去2年間と同様に、まず本年度の事業評価を行い、次に、過去3年間の経年
変化や総合評価を試みている。特に、事後評価については、単年度では人材育成の成果をな
かなか捉えにくいところ、海外インタビュー調査やアンケート調査では、過去3年間の研修生
にまで対象を広げて調査することができた。
なお、本年度については、現在も事業実施中のため、2014年12月末日までに研修終了や派
遣終了した案件までを評価対象としている。
表1
区
2012、2013、2014年度の事業実績
分
事業名
2012
2013
2014
経済産業⼈材
育成⽀援事業
新興市場開拓⼈材
育成⽀援事業
新興市場開拓⼈材育成⽀援事業
2014年度計画数
研
修
⽣
⼈
数
(内、政策的重点分野)
研修⽣⼈数
研
修
事
業
受
⼊
研
修
派
専
遣
門
事
家
業
専⾨家派遣
(434)
(174)
731
(112)
639
433
1,125
743
483
428
再適⽤
190
138
151
-
不参加
5
11
5
5
61
36
44
37
616
700
694
298
30
32
31
14
281
120
82
82
コース数
10
4
5
5
専⾨家数
127
107
71
71
研修⽣⼈数
コース数
海外研修
(776)
1,333
892
コース数
管理研修
1,592
1,320
コース参加者数
技術研修
※1,934
評価対象者数
研修⽣⼈数
(47)
(内、前年度からの期またがり)
予 算 額 ( 補 助 ⾦ ベ ー ス)
2,208百万円
(5)
1,481百万円
※2名の研修⽣が複数の研修コースに参加した
-2-
(32)
1,207百万円
(32)
Ⅱ. 事業評価システムの概要
1. HIDA研修事業評価システム
受入研修並びに海外研修事業は、HIDA研修事業評価システムに基づき、研修の事前から
事後に至るまで、一貫性に留意した評価が実施されている。(表1)
表1 評価対象と評価分類
対
象
技術研修
受⼊研修
事前評価
中間評価
直後評価
事後評価
⼀般研修
《⽇本語研修》
◎
◎
◎
○
実地研修
◎
○
◎
○
◎
◎
◎
○
◎
○
◎
○
管理研修
海外研修
◎:全件実施、○:サンプリング実施
・HIDA研修事業評価システムの特徴
本評価システムでは、①一貫性の確保、②客観性の確保、③透明性の確保、④継続性の確
保、という4つの評価指針(表2)に沿った評価活動に取り組んでいる。また、定められた時
期に複数の評価者による評価を行っており(表3)、評価の視点、研修事業の目指すプロセ
ス・成果を明示するものとして、6評価項目・24指標(表4)を設定している。
なお、表5に、OECD(経済協力開発機構)のDAC(開発援助委員会)が策定した「評価5
項目」に合わせて、研修事業評価システムの6評価項目24指標を整理した。これより、研修
事業評価システムとDACの評価5項目との関連を見ることができる。
表2 HIDA研修事業評価システムにおける評価指針
⼀ 貫 性
研修の開始前から終了後の過程において、適切な評価項⽬・指標に基づき、
適切なタイミングで評価する。
客 観 性
評価結果に客観性を持たせるため、研修⽣、研修⽣の受け⼊れ企業等の
担当者及び現地派遣企業の関係者を評価者とし、多⾯的評価に取り組む。
透 明 性
評価結果のみならず、評価の過程についても可能な限り公開する。
継 続 性
研修の事後成果にのみ焦点を当てた評価ではなく、研修の開始前から
終了後に⾄るまでの過程で、モニタリング・評価を⽇常の業務に取り込み、
評価活動に継続性を持たせる。
-3-
表3 評価時期・評価内容・評価者
評価分類 / 評価時期
評
価
内
容
評
価
者
案件審査
審査委員会
研修⽣の初期能⼒の測定
研修⽣
中間評価 / 研修中
モニタリング(研修の進捗確認、意⾒交換会等)
HIDA
直後評価 / 研修終了時
研修⽣の⽬標達成度・満⾜度評価、
研修環境評価
研修⽣、受⼊企業
(受⼊研修、海外研修)
事後評価 / 研修終了後
研修成果の発現度合い、⾃⽴発展性、
友好関係、効率性、妥当性等に関する評価
研修⽣、研修⽣派遣企業等
事前評価 / 研修開始前・開始時
表4 評価項目と評価指標
評価項⽬
評価指標
(1)満⾜度
(A)
研修効果
(2)⽬標達成度
友好関係
研修環境
(14)ハード⾯
(4)業績向上度
(16)研修実施のための時間
(E)
効率性
(17)研修成果を得るための費⽤
(18)費⽤対効果
(7)部署の業績向上
(19)総費⽤とミッションの達成度
(8)⾃社の業績向上
(20)研修内容の研修⽬的に対する合致度合い
(9)他企業への波及
(21)研修⽣の資質の適切性
(10)⽇本との友好関係
(C)
(13)ソフト⾯
(D)
(15)研修ニーズの発現から研修開始までの時間
(6)部署内での活⽤
⾃⽴発展性
評価指標
(3)⾏動変容度
(5)部署内での伝達
(B)
評価項⽬
(11)第三国との友好関係
(12)⾃国への働きかけ
(F)
妥当性
(22)実施者側の研修⽬的と受益者側の研修ニーズの関係
(23)研修結果と研修⽬的の関係
(24)各事業の⽬的と結果の関係
-4-
表5
DAC
評価
5項⽬
DAC評価5項目と研修事業評価システムの関連
受⼊研修
研修事業評価システム
による評価項⽬と
評価指標
技術研修
⼀般
⽇本語
管理研修
実地
○
研修内容の
(20)
○
○
研修⽬的に
︵
性
研修⽣の
(21)
資質の
適切性
︶
F
性
実施者側の研修
(22)
⽬的と受益者側
○
実地研修視察
○
実地研修直後評価
実地研修報告書
研修⽬的の
︵
研
修
︶
環
境
各事業の⽬的
と結果の関係
性
案件審査
受⼊研修・海外研修
○
○
研修⽣の
初期能⼒の測定
受⼊研修
⽬標達成度の事前評価で
研修コース参加前の理解度を問う
○
○
⽬標達成度
受⼊研修
受益者の研修ニーズについては
実施者側から提案している
直後評価
海外研修
受益者側の研修ニーズと
研修内容の合致度合いを問う
⽬標達成度
受⼊研修
事前、事後評価の関係を評価する
○
直後評価
海外研修
計画された研修カリキュラムの
実現度を問う
事業報告書
受⼊研修・海外研修
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
ソフト⾯
○
○
○
○
○
研修環境満⾜度
受⼊研修
ハード⾯
○
○
○
○
○
研修環境満⾜度
受⼊研修
教室・共有スペース・個室・⾷堂等
(1)
満⾜度
○
○
○
○
○
○
○
○
(2)
ト
(4)
業績向上度
好
(11)
関
係
C
(12)
)
ク
⾏動変容度
(10)
(
パ
(3)
○
(15)
○
効
率
率
性
E
︶
性
(17)
(18)
︵
⾃
⽴ 持
発 続
性
研修⽣
受⼊企業
(技術研修)
研修⽣
⽇本語講師
実地研修報告書
受⼊企業
(技術研修)
海外研修
研修技術の習得度を問う
⾏動⽬標タスク試験
⽇本語⾏動⽬標8項⽬に沿った
学習レベル別試験で具体的な
リアクションが⽇本語で求められる
受⼊研修・⼀般研修
事後評価で⽣活実践⼒・⾏動⼒、異⽂化適応
⽇本企業理解、業務推進⼒などの⽬標項⽬で
⾏動変容について問う
研修⽣
⽇本語講師
研修⽣
○
○
事後評価
同窓会活動について問う
研修⽣
研修⽣派遣企業等
友好関係
○
○
○
○
○
事後評価
同窓会活動について問う
研修⽣
研修⽣派遣企業等
⾃国への
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
友好関係
第三国との
働きかけ
研修ニーズの発現から
研修開始までの時間
経済効果
同窓会活動について問う
事後評価
○
研修実施の
ための時間
研修成果を得る
ための費⽤
費⽤対効果
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
帰国後の効果の持続性
⻑期的効果、⼆次的効果について問う
○
部署内での伝達
○
○
○
○
○
(6)
部署内での活⽤
○
○
○
○
○
(7)
部署の業績向上
○
○
○
○
○
(8)
⾃社の業績向上
○
○
○
○
○
(9)
他企業への波及
○
○
○
○
○
研修⽣(技術・海外)
研修⽣派遣企業(管理)
研修⽣
研修⽣派遣企業等
技術研修の場合現地でのニーズが
発現した時期を問う
HIDA、外部専⾨家
実地研修報告書
実地研修の総合評価で
研修期間について問う
受⼊企業(技術研修)
実地研修直後評価
実地研修の研修内容デザインに
ついて時間を問う
直後評価
⽇本語研修
学習時間の満⾜度を問う
直後評価
海外研修
研修期間の適切性
経済効果
受⼊研修・海外研修
研修⽣
費⽤に対して⾒合う研修効果が
現れると思うかどうか問う
研修成果を得るための費⽤を1とした場合
研修終了後5年間までの研修効果を
倍数で答えるよう問う
研修⽣(技術・海外)
研修⽣派遣企業(管理)
技術研修の場合、費⽤と実地研修での
達成度との費⽤対効果について問う
事後評価
○
ミッション
学んだ内容を活⽤した場合の
職場での効果について選択式で問う
事後評価
(5)
B
研修⽣
○
︶
︶
性
展
HIDA
○
発
︵
展 性
⽴
研修⽣
○
の達成度
⾃
研修⽣
○
総費⽤と
(19)
研修⽣
○
⽇本との
○
︵
効
審査委員会
3.実地研修の総合評価
研修⽬的達成度及び所⾒
直後評価
○
(16)
【⼀般】⽣活実践⼒・⾏動⼒、⽇本社会理解
異⽂化対応⽇本企業理解、実地研修理解等
【管理】コース毎に内容に沿って設定
研修⽣
⽇本語技能試験
⽬的達成度
○
受⼊研修・技術研修
【⼀般】⽣活⼒、⾃⼰管理⼒、異⽂化適応⼒
⽂化・社会理解、⽇本企業理解、実地研修理解等
【⽇本語】会話⼒、聴解⼒、⽂法⼒、⽂字⼒等
研修⽣
受⼊企業
(技術研修)
⽇本語能⼒評価基準に
沿った試験を実施
⽇本語研修
○
【総合満⾜度】カリキュラム構成
要望への対応、メンバー構成・雰囲気、研修環境
コース担当者通訳、⾒学・講義内容等
受⼊研修のうち、⽇本語と実地研修を
除く技術研修と管理研修
⽬標達成度
○
受⼊研修・海外研修
満⾜度
○
⽬標達成度
︶
ン
○
果
友
評価結果をもとにHIDAが分析する
(14)
A
イ
海外研修
研修⽬的達成度について問う
・研修カリキュラムの実現度
・研修技術の習得度
(13)
修
効
実地研修の内容は⾃分の仕事に関連する
ものであったか研修計画の内容のうち何%を
教えられたかを問う
○
︵
効
研修⽣・受⼊企業
(技術研修)
職員・受付・⾷堂スタッフの
ホスピタリティー
研
有
研修⽣
⼀般研修と⽇本語研修の発現度合いと
実地研修の⽬的達成度について問う
研修内容の⽬的達成度
直後評価
評価者
⽬標達成度の事前評価で
研修コース参加前の理解度を問う
○
関係
(24)
設問内容
受⼊研修は参加候補者の資質の適切性について
審議(海外研修は研修⽣を公募)
の研修ニーズの
研修結果と
中間評価
受⼊研修・技術研修
関係
(23)
受⼊研修のうち、⽇本語と実地研修を
除く技術研修と管理研修
⽬標達成度
○
当
D
該当する評価内容
○
度合い
妥
当
研修事業評価システムに
研修
○
対する合致
妥
管理
海外
満⾜度
受⼊研修・管理研修
直後評価
海外研修
参加費の満⾜度で、参加費と研修コース内容
の関係について改善点の選択肢に挙げている
参加費に⾒合う成果が
あったかについて問う
研修⽣
学んだ内容を活⽤による部署内での
影響度を⼈数で答えるよう問う
経済効果
受⼊研修・海外研修
学んだ内容について職場での
活⽤予定について問う
研修⽣(技術・海外)
研修⽣派遣企業(管理)
学んだ内容を活⽤した場合の職場での
効果について選択式で問う
事後評価
-5-
同窓会活動について問う
各国同窓会
2. HIDA専門家派遣事業評価システム
1.専門家派遣事業の評価体系
専門家派遣事業の各案件について、派遣の「事前」・「中間」・「事後」の3段階において、専門家、受入企
業、協力企業及びHIDAによる多面的な評価を行っている。評価の客観性を確保するため、事前・事後評価にお
いては、外部有識者から成る2つの委員会(審査委員会・評価委員会)を設置している。
(1)事前評価
まずHIDA内部において、候補案件の専門家・受入企業・協力企業の資格要件審査、派遣期間や指導目標・
計画の妥当性等に関する案件審査を行う。次に経済産業省の確認及び外部有識者から成る「審査委員会」への
諮問(毎月実施)を経て、HIDAが派遣の可否を最終決定する。
(2)中間評価
専門家派遣期間中は、実行目標(※)及び専門家による毎月の指導報告に基づき、専門家とHIDAの案件担
当者が一体となって目標・実績管理を行い、指導の円滑化を図る。
※専門家が赴任後1ヵ月程度をめどに(受入企業の状況を確認後)、受入企業の責任者及びHIDAと協議して決定する指導目標です。
(3)事後評価
案件ごとに、妥当性、有効性、効率性、波及性(インパクト)、自立発展性について、専門家・受入企
業・協力企業が評価を行い、これを受けてHIDAが当該案件の総合的な評価を行う。
HIDAはさらに、案件ごとの評価を集計・分析して、年度を通じた事業全般の実績と評価結果をまとめた事
業評価報告書案を作成し、外部有識者から成る「評価委員会」に諮る。同委員会の検討結果及び提言を受け、
HIDAは当該年度の事業評価報告書を完成させ、公表する。
2.評価基準
OECD(経済協力開発機構)のDAC(開発
援助委員会)が策定した評価のための5項目
に準拠し、「妥当性」・「有効性」・「効率
性」・「波及性(インパクト)」・「自立発
展 性」の 5 項 目 を 評 価 基 準 と し て い る。
これに「総合評価」を加えた6つの視点で、
案件ごとに評価を行っている。
定量評価項目では、5段階評価(5が最良)
を基本としており、HIDAでは上位3評価を
合格点と考えている。
3.2012、2013、2014年度の専門家派遣事業評価について
(1)評価の元データ
先述の評価システムに基づき、案件ごと
の評価結果を集計・分析し、本報告書にま
とめた。
主な評価データの出所は右記の通りである。
(2)評価対象
2012、2013年度及び2014年度12月31日までに専門家が帰国した本事業の229件を対象としている。
-6-
-7-
-8-
評価結果(要旨)
1.1 研修事業
受入研修
技術研修 ‐ 一般研修(日本語研修)、実地研修
管理研修
海外研修
1.2 専門家派遣事業
1.3 外部専門家によるヒアリング調査
1.4 受入研修事業の事後評価
本報告書の構成は次のとおりである。
序章で本事業の概要と評価対象、並びに事業評価システムについて概括し、第1章で評価結果の
要旨をまとめた。第 2 章と第 3 章では、本事業の主要な事業ツールである、受入研修(日本語研修
や管理研修を含む)、海外研修、専門家派遣の各事業評価について詳細をまとめた。さらに、第 4
章では、外部専門家による海外企業への現地ヒアリング調査結果をまとめ、第5章で、この3年間に
受入研修に参加し帰国した研修生全員に行ったアンケート調査結果と、日本企業へのアンケート
調査結果をまとめた。最後に、第 6 章では、評価結果の二次評価として実施した評価委員会による
評価結果をまとめた。
第1章に本事業の評価結果の要旨をまとめたが、その全体像を概観すると、以下のとおりである。
受入研修では、3 年間でアジア、アフリカ、中南米、欧州等の計 47 カ国から約 4,200 名の研修生を
受入れ計 210 コースを実施した。研修生は来日後、HIDAで日本語や日本社会の理解を深め、受
入企業において生産技術や設計等の固有技術を学び、帰国後は、その成果を職場で活用し、業
績向上に貢献していることが確認できた。
また、品質管理など日本の優れた管理技術や環境エネルギー分野に関する研修にも高い評価が
寄せられ、研修生の意識改革や業務への取り組み姿勢の変化が顕著であることが報告されてい
る。
海外研修は、3 年間でアジア 7 カ国において計 19 コースを実施し、約 500 名が参加したが、日本
から講師を派遣し、現地ニーズに合致したテーマで数日間のセミナー形式の研修を行うことができ、
参加者から高い評価を得ている。
専門家派遣については、3 年間で約 300 名の経験豊富な専門家が日本からアジア、アフリカ、中
南米の計 14 カ国へ派遣され、現地で現場指導を体系的にきめ細かく行い、指導先企業等の技術
の向上をもたらし、指導目標の達成率も高い結果が得られた。
こうした評価結果から、本事業の各事業ツールを通じて、日本語や日本文化を体得し、経営や技
術に係る知識・スキルを身に付けた有為な現地産業界の人材が着実に育っていることが確認でき、
また、一方、日本側では必要な技術、管理ノウハウ等の現地への移転が進み、社員の国際意識の
醸成や現地側との連携強化も促がされていることが報告されている。
経済のグローバル化に伴い、日本企業の海外事業環境は厳しさが増す中、本事業による人材育
成を通じて、日本企業の競争力強化のみならず、現地サプライチェーンの構築や現地ローカル企
業の技術力向上等をもたらし、ひいては、現地投資環境整備を通じた日本企業の海外展開支援と
現地産業界の発展にともに貢献していることが示されているといえよう。
二次評価として実施した外部有識者による評価委員会においては、本事業による人材育成を通じ
た成果の確認ができたとする一方、各事業ツールの相乗効果、成果の数値化へのさらなるチャレ
ンジ、改善事項のアクションプラン作成などの課題も挙げられている。また、HIDA が新たな時代の
ニーズに応じた新たなプログラムの開発や企業からの相談機能の強化など、人材育成のトータル
ソリューション提供機関へ進化していく必要性も提言され、より一層の取り組み強化が期待されて
いる。
-10-
第1章 評価結果(要旨)
本報告書は、2014 年度の新興市場開拓人材育成支援事業(以下、本事業という)の事業成果をま
とめたものである。本事業は 2012 年度から 3 年間継続して実施され、今年度が最終年度になるた
め、今年度の評価結果とともに 3 年間の評価結果の集計分析も行い、事業評価を行った。
第1章 評価結果 (要旨)
本章では、評価対象とな
なるすべての事
事業の評価結果
果について、そ
その要旨を報告
告する。
HIDA の有する評価シス テムに基づき、受入研修(技
技術研修、管理
理研修)、海外研修、
専門家派遣の各事業の評
て実施した海外ヒア
評価結果をまとめ、さらに、事
事後評価として
リング調査とアンケート 調査の結果に
についてまとめた。
1.1
研修事業
業
1.1. 1 技 術 研 修
1)一
一般研修につ
ついて
・研修
修生による評
評価(一般研
研修について
て)
2014 年度は、12 月末まで
でに実施され
れた 37 の一般
般研修コース
スに参加した
た 428 名の研
研修生
を調査
査対象とした
た。一般研修
修に対する評
評価の目標値
値は、研修終
終了直後の目 標達成度が 7 点
満点中 5 点、満足
足度が 5 点満
満点中 4 点 としている。
。目標達成度
度については
は、すべての
のコー
スの目標水準項目
目 32 項目(
(J6W/J13W
W は 17 項目、9D/A9D は 15 項目) のうち、30
0 項目
で平均
目標達成度は
均 5 点を超えた結果とな
なり総じて目
は高い。また
た、総合満足
足度平均は 5 点満
点中 4.50 点、4 点に達した割
割合が全体の
の 95.5%とな
なり、高い満
満足度を得る
ることができ
きた。
また
た、2012-20
014 年度を通してみて も、目標達成
成度・満足度
度ともに高い
い水準を保つ
つこと
ができ
きた。
目標達成度コース別目
目標項目別平
平均点(2014
4 年度)
・研修
修生による評
評価(一般研
研修における
る日本語につ
ついて)
一般
般研修コース
スのうち、日
日本語研修が
が行われる 13 週間(7 コー
ース) 及び 6 週間(17 コース)
コ
に参加
加した 312 名の研修生を
名
を調査対象と
とした。J13
3W/J6W コー
ースの参加者
者の総合満足
足度平
均は 4.57 点で、4 点に達した
た参加者は全
全体の 98.4%
%で満足度は
は高い。
・受入
入企業による
る評価(一般
般研修につい
いて)
一般
般研修に参加
加した研修生
生の目標達成
成度合いに対
対する受入企
企業の満足度
度は、5 点満点中、
平均 4.03 点とな
なり、4 点に達
達した割合は
は 73.1%であ
あった。
2012-2014 年度
度を通してみ
みても、
「生
生活力」
「自己
己管理力」
「実
実地研修理解
解」が 4 点を
を超え
る高い
い目標達成度
度を示してお
おり、これは
は研修生によ
よる自己評価
価とも一致し
していて、一
一般研
修の成
成果が表れて
ているものと
と考えられる
る。
-11-
実地研修につ
ついて
2)実
・受入
入企業による
る評価(実地
地研修につい
いて)
2012-2014 年度
度に技術研修
修に参加した
た研修生の属
属性をまとめ
めたところ、年齢は平均 30 歳
前後、
、職歴は平均
均 5 年程度
度で来日して おり、学歴は大学卒が大
大半を占めて
ている。国は
は、タ
AN が多く、
イ、イ
インドネシア
ア、ベトナム
ム等の ASEA
、インド、ミ
ミャンマーと
といった新興
興国か
らの参
参加が増加傾
傾向にある。研修の業種
種は、自動車
車関係、機械
械、電器など
どが多い。
2014 年度では
は、12 月末日
日までに実地
地研修が修了
了し帰国した
た研修生 3099 人を評価対
対象と
し、実
実地研修の目
目的達成度を
を尋ねたとこ
ころ、5 点満
満点中、平均
均 4.36 点とな
なり、目標の
の4点
を上回
回った割合も
も 80%を超えた。
実地
地研修での目
目的達成度に
に関する受入企業の評価(2012-20014)
-12-
評価結果(要旨)
J6W
W の能力別平
平均
第1 章
入企業による
る評価(一般
般研修におけ
ける日本語に
について)
・受入
一般
般研修に参加
加した研修生
生の日本語能
能力の習得度
度に対する受
受入企業の満
満足度は、5 点満点
点
中、平
平均 3.50 点となり、目
点
標の 4 点を 下回った。また、4 点に
に達した割合
合は 48.1%と
と他の
評価項
項目に比べ厳
厳しい結果となっている
る。企業から
らは会話力、文字力のさ
さらなる向上
上、専
門用語
語の学習など
どを期待する
る声が大きい
い。
なお
お、2014 年度から日本
年
本語の教材を 「みんなの日本語」に変
変更している
るが、受入企
企業の
満足度
度に変化は見
見られなかっ
った。
研修生の実地研修に対する取組み姿勢も企業は高く評価しており、日本研修の目的意識
を明確にもった研修生が真摯に研修に取り組み成果をあげている様子が窺える。HIDA は事
前に企業からの申請の事前評価として審査委員会を開催し案件の妥当性を審議しているが、
周到な研修計画の策定、指導態勢の整備、研修生の資質確認などと、HIDA が行う一般研修
による導入教育の効果によるところが大きいと思われる。
2012-2014 年度を通してみても、目的達成度は高く安定しており大きな変化は見られな
い。
・研修生による評価(実地研修について)
実地研修成果の満足度は、目標値が 4 点であるところ、平均 4.46 点であり、4 点に達し
た割合は 92.0%を占め、高く評価されている。
知識、技術の習得度についても、70%以上を修得したと答えた割合が 90.5%あり、受入
企業からみた目標達成度とほぼ見合う結果である。受入企業と研修生との間で研修目的が
明確に共有され、共通の目標に向かって円滑なコミュニケーションのもと実地研修が行わ
れたものと推察される。
3)政策的重点分野について
2012 年度からの 3 年間で受け入れた政策的重点分野の研修生は、2014 年 12 月末日まで
に 1,153 人(再適用を除く)となり、国別ではタイ、インドネシア、ベトナム、インドが
多く(74.1%)、業種は主に自動車産業の分野(51.3%)における環境・エネルギー関連分
野(79.2%)において、省エネ・環境配慮型製品の設計、開発、製造に関わる技術を学ぶ研修
が多かった。
受入企業からは、研修目的の 70%以上達成したとの評価が 93.7%占め、研修生帰国後に
日本で学んだ知識ノウハウを現地で展開し、低環境負荷、省エネ化に貢献していることが
推察される。
政策的重点分野の受⼊⽬的別実績⼈数
受⼊⽬的
インフラ
システム
年度
(再適⽤を除く)
環境・エネルギー
科学・技術
医療関連
クールジャパン
・情報通信
輸出関連
合 計
2012
141
509
0
19
0
669
2013
46
315
9
2
0
372
2014
19
89
0
3
1
112
206
913
9
24
1
1,153
総
計
-13-
第1 章
1.1. 2 管 理 研 修
管理
理研修国別研
研修生数年度
度別(2012-
-2014)
修生による目
目標達成度の
の評価は、7
7 点満点中、平均で 5.98 点となり、
、5 点を超え
えた割
研修
において平均
合は全
全体の 94%
%、分析対象コース全てに
均 5 点を越え
える結果とな
なり、高い評
評価を
得てい
いる。
参加
加者は経営幹
幹部や上級管
管理者が多く
く、問題意識
識も高い。個
個別の講義・
・講師への高
高い評
価や参
参加者同士で
で共に学ぶ雰
雰囲気が特に
によく維持で
できたものに
については、 参加者の満
満足度
も非常
常に高くなっ
った。管理研
研修コースへ
への参加をき
きっかけに日
日本や日本企
企業への親和
和性を
高め、
、今後の日本
本企業との取
取引拡大など
ど新興市場開
開拓にも資す
することが期
期待される。
1.1. 3 受 入 研 修 環 境
一般
般研修と管理
理研修を実施
施し、研修生
生の宿泊施設
設でもある HIDA
H
研修セ
センターの研
研修環
境につ
ついての評価
価は、総合満
満足度として
ては 5 点満点
点中、平均 4.69
4
点とな り、4 点を越
越えた
割合は
は 99.3%で高
高い評価が得
得られている
る。
2014 年度より東京・関西
西の2センタ ー体制となったが、いず
ずれも研修 ・宿泊施設と
として
適切な
な運営ができ
きているもの
のと思われる
る。ただし、食事につい
いては、ベジ
ジタリアンや
やハラ
ルなど宗教上の食
食事制限に配
配慮した対応
応は高い評価
価を得ている
るものの、タ
タイ、ベトナ
ナムな
ど東南
南アジアの研
研修生からは
は味に関して
て改善を望む
む意見が寄せ
せられた。
-14-
評価結果(要旨)
2014 年度は 12
2 月末までに
に研修が終了
了した 14 の管
管理研修コー
ースに参加し
した 298 名の
の研修
生を調
調査対象とし
している。管
管理研修への
の参加者の属
属性は、年齢
齢は平均 30 代
代後半、学歴
歴は大
学卒が
が大半を占め
め、国はタイ
イ、インドネ
ネシア、ベトナム等の AS
SEAN 諸国に
に加え、イン
ンド、
バ ン グ ラ デ シ ュ 、 ス リ ラ ン カ な ど 南 ア ジ ア か ら の 参 加が 多 い 。 管 理 研 修 コ ー ス は
HIDA
A/AOTS 同窓会による参加者募集活
活動が行われ
れることも多
多く、同窓会
会活動が活発
発な国
からの
の参加者が多
多くなる傾向
向にある。
1.1.4 受 入 研 修 の 経 済 効 果 評 価
受入研修(技術研修及び管理研修)についてそれぞれの研修はその費用に見合うもので
あるか、さらに研修実施を通して得られる期待経済効果はどのくらいになるのかについて、
2012 年度から 2014 年度 12 月末日までの研修生を対象にアンケート調査をし、回収した回
答(技術研修 2,054 名、管理研修 1,059 名)を基に経済効果を試算した。
アンケート調査は、研修にかかる研修生一人当たりの費用のうち ODA 補助金額を除いた
企業負担額の申告を求め、さらにその金額を「1」とした場合、研修終了後 5 年間までに
得られる期待経済効果の倍率を尋ねたところ、技術研修の平均が 2.18 倍、管理研修の平均
が 2.95 倍との回答が得られた。
この倍率を年度毎の研修生人数に掛け合わせた金額を期待経済効果額とし、これを
2012‐ 2014 年度の国庫補助金執行金額と比較したところ、受入研修の経済効果は国庫補
助金執行金額(見込を含む)に対して 3.74 倍となった。
1.1.5 海 外 研 修
2014 年度は、海外研修 5 コース、82 名の参加者が評価対象となる。5 コース全体での総
合満足度は平均 6.22 点と目標の 5 点を大幅に上回り、また 5 点を上回った割合は 96.3%を
占めた。過去のコースについても、コース全体での総合満足度は、2012 年度が 5.76 点、2013
年度が 5.87 点といずれも目標評点の 5 点を超えている。
さらに 2012‐ 2014 年度の 3 年間に実施されたコースに対する目標達成度、効率性、妥
当性についての評価では、いずれも目標評点である 5 点を超えており、研修技術の習得度
や参加費に見合う成果が得られたか、あるいは研修ニーズと内容が合致しているかなどの
評価項目で 6 点を超える高評価を得るなど、海外研修コースは適切な水準で実施されてき
たと思われる。
海外研修 5 コース平均目的達成度、効率性、妥当性評点分布と平均(2012-2014)
実 カ 計
リ 画
キ さ
現
れ
ラ た
ム 研
度 の 修
⽬的達成度
習 研
修
得 技
術
度 の
適 研
研 参
加
修
修 費
合 研 研
致
切 期
に
成 み
間
あ
度 の
果 う
効率性
-15-
度
修 修
ニ
内
容 ズ
合 の と
妥当性
2012年
N=281
2013年
N=120
2014年
N=82
専門家派遣事業
1.2.1 受 入 企 業 に 対 す る 指 導 評 価
1)指導目標達成度と波及効果
①技術向上目標及び人材育成目標の達成度
専門家派遣事業の評価については、2012 年 4 月 1 日から 2015 年 3 月 31 日までに専門
家が帰国した案件及び帰国する予定の案件の計 259 件のうち、専門家、受入企業、協力
企業から提出された報告書から、有効性、波及性、自立発展性の評価を行った。
指導目標のうち技術向上目標の達成度については、2012、13、14 年度 3 年間合計で
80%以上達成したとの評価の比率が専門家では 69%、受入企業では 71%となった。また
人材育成目標の達成度については、同じく 80%以上の達成度とした評価の比率が専門家
では 64%、受入企業でも 64%となっている。
②協力企業及び HIDA からみた指導目標達成度
指導目標の達成度については、80%以上の達成度とした評価の比率が協力企業では
60%、HIDA では 72%となっている。
③受入企業及び協力企業における波及効果
専門家派遣による経営上の効果を聞いたところ、専門家の指導により、受入企業には
「技術の向上」、「品質の向上」、「受入企業従業員の改善意識の向上」、「生産性の向上」
等の回答が多かった。また、協力企業にとって専門家派遣による経営上の効果が見込ま
れるか聞いたところ「大いに見込まれる」
「かなり見込まれる」とした評価が 69%となっ
ている。つまり専門家を派遣をして現地での技術移転を行う本制度が、日本の協力企業
への裨益がかなり見込まれていることがわかる。
協力企業における経営上の効果
(協力企業評価 N=229)
(2012-2014)
品質向上
161
顧客満足度の向上
101
生産コスト低減
100
受入企業との関係強化
93
受入企業との取引増
60
(連結)売上増
59
技術開発力向上
58
協力企業等日本への輸入増
52
技術移転のスピードアップ
51
(受入企業に対する)管理コスト低減
49
事業の高度化に貢献
34
営業基盤の強化
31
協力企業等日本からの輸出増
29
その他
10
0
20
40
60
-16-
80
100
120
140
160
180
第1章 評価結果(要旨)
1.2
2)自立発展性
HIDA 担当者による自立発展性の総合評価の結果をみると、
「大いに見込まれる」
「かなり
見込まれる」との評価で 69%となっている。
また、受入企業が専門家による指導内容を定着させ自立発展させていく可能性について
は、専門家自身は同じく「大いに見込まれる」
「かなり見込まれる」とした評価で 79%が「可
能性がある」と評価している。
さらに自立発展等のために受入企業に対する今後の支援方針を協力企業に聞いたところ、
「大いに強化する」
「かなり強化する」との回答が 86%占め、継続的な支援の必要性を協力
企業が感じていることがわかる。
1.2.2 付 加 指 導 先 に 対 す る 指 導 評 価
付加指導は、受入企業への日系資本比率が高い場合、現地ローカル企業への指導を義務
付けているが、受入企業の外注先や原料、資材等の購買先であることが多い。この付加指
導先での指導が受入企業にとって効果があったかを聞いたところ、受入企業では「非常に
効果的だった」
「かなり効果的だった」との評価が 59%あり、さらにその期待できる経営向
上効果として「顧客満足度の向上」
「製品/サービスの競争力の向上」等があると専門家が評
価している。
付加指導先にとって期待できる経営向上効果 (2012-2014)
(専門家評価 N=231)
顧客満足度の向上
107
製品/サービスの競争力向上
96
日本式経営への理解が深まった
65
コスト低減
65
従業員の勤労意欲の向上
61
売上の増加
59
取引先の増加
43
就職への準備ができた
23
現地調達率の向上
22
従業員の定着率の改善
18
その他
13
輸出の増加
11
就職先が決まった
5
0
20
40
60
80
100
120
また、付加指導先で指導内容を定着させ自立発展させる可能性があるかを専門家に聞い
たところ「十分にある」
「かなりある」とした評価で 65%となり、自立発展につながる可能
性があると答えている。従って、付加指導が負担となっている側面があるものの、制度上
課すことで、結果として受入企業にも効果をもたらしていると考えられる。
-17-
2012、13 年度及び 2014 年度に専門家派遣制度を活用した協力企業に対して実施したア
ンケート調査によれば、協力企業が HIDA の補助なしに専門家を派遣した場合に受入企業
に期待される平均的な経済効果は、派遣費用(直接の派遣経費、直接・間接人件費、機会
費用の合計)の 1.36 倍程度であったが、補助金の投入によって派遣費用が軽減されること
により、この比率は 1.93 倍程度まで上昇する(なお、補助金額の合計に対する経済効果の
倍率を期待するならば約 4.6 倍となる)。このため本制度は、協力企業単独では実施困難な
技術移転を促進する効果をもたらしているものと判断される。
また、本制度の経済効果は受入企業に関わるもののみではなく、受入企業への日系資本
比率が高い場合に制度利用上義務付けている付加指導先にもたらす経済効果や、人的資源
の付加価値向上、協力企業自身への裨益にも貢献していることがいえる。
1.3
外部専門家によるヒアリング調査
2012、13 年度に続いて本年度も2名の外部専門家に委託し、海外ヒアリング調査を実施
した。
調査対象はアジア 4 か国(タイ、ベトナム、インド、ミャンマー)の日系及び現地企業
とし、進出後一定年数を経た日系企業を中心に日本企業が国際展開する上で本事業の受入
研修、専門家派遣をどのように有効的かつ持続的に利用しているか、管理研修コースに参
加した現地企業がどのように事業を成長させ現地裾野産業の発展やサプライチェーンの構
築に貢献しているかなどについて検証することを主な目的とした。
訪問先は、技術研修においては日系企業 12 社(内、政策的重点分野 4 社)、管理研修利
用現地企業 7 社、専門家派遣利用の日系企業 5 社であった。その他、泰日工業大学や
HIDA/AOTS 同窓会も訪問した。
今年度は 3 年間(2012-2014 年度)にわたって実施した事業の最終年度にあたる。この 3
年間は、単独で海外に進出する中小企業が増え、また一般企業においては開発設計業務の
アジア移管の動きが顕著になるなど、日本企業の海外展開新時代が本格化した時期であっ
た。この時期に呼応する形で実施された本事業が、人材育成ニーズに効果的に対応してい
たことが報告された(大野専門家)。
また、特に技術研修について、一般研修+実地研修を通して日本語と日本文化を体得する
とともに経営に関わる知識・スキルを身につけた有為な人材を輩出している点は、HIDA
のレゾン・デートルともいえる活動領域であると同時に、従業員の「能力開発」を企図す
る派遣元企業と自らの「エンプロイアビリティ」の強化を志向する研修参加者との win-win
の関係構築に資するものであることが指摘された(古沢専門家)。
両専門家からは、管理研修が現地企業の日本国及び日本企業への親和性の向上にも貢献
し、日本企業の国際展開の一助となることも示唆されている。
両専門家から、今後の HIDA の取組みの一層の充実に向けて、次のような提言があった。
<大野専門家よりの提言>
① 人財をコアとした相談機能の強化
(人財をコアとしながら、海外工場の立ち上げ・操業の安定化に向けた様々な課題に
対して相談にのる体制を組み、よりきめ細やかに対応ができるようにする。)
② 日本語研修プログラムの改善、さらなる強化
(研修制度を利用している企業の多くが、HIDA の強みとして、一般研修が挙げられて
いる。特に日本語研修に関しては、企業が求める日本語力に引き上げるプログラム改
善の要望が企業から出されている。
)
-18-
第1章 評価結果(要旨)
1.2.3 専 門 家 派 遣 の 経 済 効 果 評 価
③ 手続きの簡素化・合理化
(利用企業の立場にたって、可能な限りの応募手続きの省力化・システム化に努める
べきである。
)
④ 低炭素輸出促進人材育成支援事業との関連
(中小企業の海外展開が新時代における多様な人材育成ニーズに対して、企業の業務
展開に応じた寄り添い型の支援が柔軟に対応できる予算と体制を確保することが望ま
しい。)
⑤ 今まで HIDA が築いた企業人材・組織ネットワークを活用した、新しい協力モデルの創
設(特にタイ)
(HIDA が築いた、日本の協力を受けて成長し、自立発展した現地人材・組織ネットワ
ークを活用して、現地の産業開発ニーズと日本の中小企業の海外展開ニーズをマッチ
させる新しい協力モデルの創設。)
<古沢専門家よりの提言>
① 「ハードスキル」プラス「ソフトスキル」の涵養
(「ハードスキル」に加えて、模倣困難性や因果曖昧性といった特質を有する「ソフト
スキル」の涵養が組織にとっても個人にとっても競争優位の源泉となる。ついては新興
国では組織マネジメントが次なる経営課題として浮上するであろうことから、「質的変
容」に対応した研修プログラムの企画・実施が求められる。)
② ローカル人材の「グローバル化」と日本人の「ローカル化」を支援
(これまで HIDA は研修を通して日本語能力を保有し、日本文化を内面化したローカル
従業員の「バンウンダリー・スパナー」(日系企業における本社と現地の橋渡し役)の
育成に貢献してきたが、今後は日本人社員の「ローカル化」を支援し「語学力」と「多
様性を尊ぶマインド」を身につけるプログラムに対応してもらいたい。)
③ 人材育成機関として「トータル・ソリューション」を提供
(現地企業の経営現場ではタイムリーな対応が求められており、HIDA は日本企業のみ
ならず同窓会等連携し、現地企業に対しても情報発信し、人材育成に関する「トータル・
ソリューション」を提供する機関に進化していくことを期待する。)
1.4
受入研修事業の事後評価
2014 年度は本事業の 3 年目となるが、受入研修の成果は研修参加者の帰国後一定期間を
経て発現する。事後評価の一環として、研修効果の発現時期、習得した知識・技術の波及
効果、現地企業や産業界への貢献度合いなどを評価するため、帰国後 3 年以内の全研修生
と、本年度に制度を利用した日本側受入企業にアンケート調査を実施した。
結果は、41 ヶ国 935 名の帰国研修生と 39 社の受入企業から回答を得た。以下はそのポ
イントである。
1)帰国研修生のよる評価
・研修によって変化した姿勢・意識を尋ねたところ、
「品質・コスト・納期を意識する姿勢」
「顧客の満足を優先する姿勢」「仕事にきちんと・とことん向かう姿勢」が変化したという
回答が多数寄せられた。高品質な製品を生み出す日本的ものづくりマインドを実感し、意
識改革をもたらしている様子がうかがえる。
・研修参加時に勤務していた企業に現在も勤務しているかを質問したところ、1 年目は 95%
で、3 年平均でも 9 割を超える研修生が現在も勤務していると回答した。転職したと回答し
た研修生のうち、技術研修参加者の場合、3 年平均して約 3 割が「日系企業」に、管理研修
-19-
伝
伝達した(or する予定の)知
す
知識・技術が
が企業の業績
績向上に貢献す
する可能性<イ
インパクト>
2014 技術研修(n=60)
2013 技術研修((n=206)
2012 技術研修((n=192)
2014 管理研修(n=79)
2013 管理研修((n=230)
2012 管理研修((n=168)
派遣
遣元企業への業績
績貢献
13.3%
売上の向上(2014技術研
研修)
売上の向上(2013技術研
研修)
41.7%
49.6%
経費
費削減による利益の向上(2013技術研
研修)
27. 7%
費削減による利益の向上(2012技術研
研修)
経費
26.6
6%
39.2%
40.4%
取引先の拡⼤(2014技術研
研修)
46.4%
27. 4%
取引先の拡
拡⼤(2012管理研
研修)
26.8
8%
市
市場におけるシェアの増⼤(2013技術研
研修)
市
市場におけるシェアの増⼤(2012技術研
研修)
16.1%
0.8%
40
市場
場におけるシェアの増
増⼤(2013管理研
研修)
20.9%
%
市場
場におけるシェアの増
増⼤(2012管理研
研修)
%
19.6%
0%
10%
いくらかある
10.9% 7.8%
49.4%
50.6%
40%
どちらとも⾔
⾔えない
-20-
9.2% 6.8%
27.1%
50.0%
30%
13.3% 6.7%
25.7%
40.1%
20%
%
5.7% 7.3%
1
11.9% 8.3%
23.3%
46.7%
%
50%
8.9% 7.8%
13.9
9%
11.4%
16. 5%
7.4%
9%
17.9
60%
6
6.8%
12.7% 8.9%
%
52.2%
22.8%
%
市場
場におけるシェアの増
増⼤(2014管理研
研修)
⼤いにある
20.8%
%
45.6%
50.0%
10.0%
17.5%
18.9
9%
43.2%
3 2.9%
取引先の拡
拡⼤(2013管理研
研修)
市
市場におけるシェアの増⼤(2014技術研
研修)
6.7% 5.0%
16
61.7%
19.8%
%
取引先の拡⼤(2012技術研
研修)
取引先の拡
拡⼤(2014管理研
研修)
5.7%5.7%
%
7.7% 6.0%
53.6%
25.7
7%
取引先の拡⼤(2013技術研
研修)
8.9% 8.9%
47.4%
11.7%
4.9%
15.1% 4.2%
43.0%
4
31
1.5%
経費削減による利益の向
向上(2012管理研
研修)
10.0%
18
8.0%
49.5%
経費削減による利益の向
向上(2013管理研
研修)
11.9%
20.0
0%
44.7%
経費削減による利益の向
向上(2014管理研
研修)
10.1%
11.3% 8.7%
1
13.1 %
53.3%
15.0%
経費
費削減による利益の向上(2014技術研
研修)
16
6.5%
49.4%
%
21.4%
売上の向
向上(2012管理研
研修)
9.4% 9.4%
45.6%
27.0
0%
売上の向
向上(2013管理研
研修)
7.8%7.3%
22.4%
27..8%
売上の向
向上(2014管理研
研修)
6.7% 11.7%
22.8%
43
3.2%
15.6%
売上の向上(2012技術研
研修)
21.7%
46
6.7%
20.4%
%
70%
あま
まりない
80
0%
ない
い
7.7%
90% 100%
%
評価結果(要旨)
本で習得した
た知識や技術
術を周囲の同
同僚や部下、上司に伝達
達し、それら
らが派遣元企
企業の
・日本
業績向
向上に貢献す
する可能性を
を尋ねたとこ
ころ、6 割か
から 7 割の研
研修生が、「経
経費削減によ
よる利
益の向
向上」や「取
取引先の拡大
大」に貢献す
する可能性が
があると回答
答した。
第1 章
者は「現地企
企業」に転職
職、あるいは
は自ら起業し
したケースが
が多かった。 研修生の現
現地で
参加者
の高い
い定着率を確
確認するとと
ともに、転職
職者の動向も
もうかがうこ
ことができた
た。
入企業による
る評価
2)受入
・研修
修生の変化に
について尋ね
ねたところ、 研修生は、日本研修終
終了後、
「仕事
事に対する意
意識・
姿勢」
」が変ったと
とする回答が
が 75%にのぼ
ぼった。HIDA 研修制度
度が知識・技
技術の習得だ
だけで
はなく、研修参加
加者の意識・姿勢に対し
しても寄与し
していること
とが窺える。
営上の効果に
について尋ね
ねたところ、最も多かった回答が「日本側と現地
地側の連携強
強化」
・経営
であり、次が「日本側従業員
員の国際意識
識の変化」で
であった。前
前者は回答企
企業の 82%を
を、後
者は 53%を占め
めた。本事業が研修参加者
者の知識・技
技術の習得だ
だけではなく
く、日本と現
現地と
の橋渡
渡しとしての
の役割も強く
く期待されて
ていることが
が窺える。
業の経営上の効果
果 (n=39)
⽇本側企業
0%
0
10%
20%
30%
現
現地での売上増
17.9%
現地
地での売上増による⽇
⽇本側収益改善
17.9%
⽇本で
での知名度向上
⽇本における取
取引機会の拡⼤
50%
60%
70%
%
80%
90
0%
10.3
3%
7.7%
25.6%
%
海外における取
取引機会の拡⼤
1
15.4%
⽇本側従業
業員の⼈材育成
53.8%
⽇本側従業員の国
国際意識の強化
82.1%
%
⽇本側と現地
地側の連携強化
その他
40%
7.7%
-21-
研修事業
2.1 技術研修における一般研修の評価
目標達成度評価
満足度評価
2.2 技術研修における一般研修での日本語研修の評価
日本語能力評価基準
日本語技能別到達度評価
日本語学習に関する講師の評価
日本語研修満足度評価
2.3 技術研修における実地研修の評価
実地研修参加者の概要
受入企業による実地研修の評価
研修生による実地研修の評価
2.4 政策的重点分野の評価
実地研修参加者の概要
受入企業による実地研修の評価
2.5 管理研修の評価
管理研修参加者の概要
目標達成度評価
満足度評価
2.6 受入研修環境の評価
満足度評価
2.7 受入研修の経済効果評価
2.8 海外研修の評価
付
表
2.1
第2章
技術研修における一般研修の評価
研修事業
本章では、新興市場開拓人材育成支援事業のうち、受入研修事業の評価について述べる。受
入研修は、技術研修のうち一般研修、日本語研修、実地研修についての評価、政策的重点分
野の評価、管理研修の評価、並びに海外研修の評価についてまとめた。
2.1 技術研修における一般研修の評価
目標達成度評価
項目別事前・直後評価の平均評点と伸び
一般研修では、研修生が実地研修に円滑に取り組むために必要な能力と知識の習得度を測るため、
目標達成度評価を行い、一般研修の開始時と終了時における研修生の能力や知識の習得度合いと伸
び幅を測定している。目標評点は、一般研修直後(コース終了時)で7点満点中5点と設定している。
まず、一般研修中の日本語研修の有無によって、あるいはコース期間の長短によって、目標達成度に
差異があるのかどうかを見るため、J13W/J6W/9D/A9Dに共通で設定されている目的「日本において安
定した質の高い生活を送り、実地研修を円滑に進めることができるよう、適応力をつける」を達成するた
めの5つの目標項目「生活実践力・行動力」、「日本社会理解」、「異文化適応」、「日本企業理解」、「実
地研修理解と適応力」を取り上げ、それぞれの直後評価の平均をコース種数で別に比較したのが図1で
ある。 図1からそれぞれの目標項目はコースの期間の長短や日本語学習の有無に関わらずいずれも
目標評点5点を越え高い平均値で達成されたことがわかる。また、図2からはJ6Wの伸び幅が最も高い
ように見えるが、13W,9D/A9Dは初期値が高いため相対的に伸び幅が少ないだけであり、いずれの
コース種別においても高い伸び幅を達成していることには変わりない。
図2 目標達成度コース別目標項目別伸び幅
図1 目標達成度コース別目標項目別平均点
N=428
J13W/J6W/9D・A9D
実地研修理解
と適応⼒
⽇本社会理解
5.82 5.76 6.03
5.49 5.41 5.67
実地研修理解
と適応⼒
5.41
5.52
事前評価
5.63
事前評価
N=226
5.76
異⽂化適応
5.65
⽇本社会理解
⽇本企業理解
5.49
事後評価
⽣活実践⼒・⾏動⼒
2-3
5.68
≪6W≫
⽇本社会理解
5.82
5.63 5.47 5.81
⽣活実践⼒・⾏動⼒
2-2
実地研修理解
と適応⼒
⽇本企業理解
異⽂化適応
5.65 5.52 5.89
N=86
5.75
≪13W≫
5.75 5.68 5.89
⽇本企業理解
⽣活実践⼒・⾏動⼒
2-1
⽣活実践⼒・⾏動⼒
5.89
≪9D・A9D≫
実地研修理解
と適応⼒
N=116
⽇本社会理解
5.67
6.03
異⽂化適応
⽇本企業理解
5.47
事後評価
-24-
異⽂化適応
5.89
5.81
事前評価
事後評価
図3 一般研修目標達成度項目別事前事後評価平均(2014)および伸び幅(2012-2014)
5.69
5.43
5.98
4.89
5.43
5.37
5.66
5.51
5.61
5.88
5.66
(日本語研修あり )
5.83
5.77
5.88
5.65
5.58
5.82
5.77
6.08
5.67
5.63
5.98
5.87
5.90
6.15
5.91
(日本語研修なし)
6.13
5.97
6.18
6.04
6.01
2014 N=428
-25-
2013
N=743
2012 N=1,111(4Dを除く)
第2章 受入研修
4.88
2.1
技術研修における一般研修の評価
さらに、一般研修コース全体を日本語研修を実施するコース(J13W/J6W)と日本語研修を実施しな
いコース(9D/A9D)とに分け、それぞれの達成水準項目ごとに事前と直後の目標達成度の平均値およ
び2012-2014年度の3年間の伸び幅の推移を表したのが、前ページの図3である。2014年度も達成水
準項目32項目中、30項目の平均値が目標評点5点を越え、目標評点に及ばなかった2項目も4.89点、
4.88点と、おおむね高い評点結果であった。これらの2項目は日本語能力についての自己申告であり、
例年低い傾向がある。なお、達成水準項目6,9,16,17は、今年度の伸び幅が前年度・前前年度に比して
低いが、これは初期値が高かったためであり、目標達成度としては他年度に比して遜色がないか上回っ
ている。
満足度評価(一般研修終了時)
項目別満足度の平均評点及び達成率
一般研修終了時には目標達成度に加え、研修内容や指導方法、実施方法等に関する研修生による
満足度評価を行っており、目標評点を5点満点中4点に設定している。図4の通り、2014年度一般研修
の総合満足度に関する評価結果は5点が54.9%、4点が40.6%、平均は4.50点であった。目標値を上回
る評価をした回答者は、全体の95.5%であった。
図4では、総合満足度に加えて、満足度に関する他の質問項目についての回答も分布と平均を記し
た。2012-2014年度を通じて平均値は総じて高く、全ての項目において4点を越える結果となっている。
3年間継続して最も満足度が高い項目は「コース担当者」であり、HIDAに培われている研修生を受け
入れる姿勢が高く評価され高い満足度を得られているものと思われる。また、一般研修の参加者は、カリ
キュラム構成や研修環境といった全体の項目から、講義・見学の内容、企業等見学(遠隔地)・講師・通
訳といったコースを構成する個別の項目に関しても高い満足度であることがわかる。
図4 一般研修総合満足度項目別評点分布と平均
4.46
4.50
4.50
4.42
4.44
4.47
4.37
4.42
4.45
4.44
4.47
4.50
4.56
4.59
4.58
4.77
4.80
4.80
4.51
4.50
4.52
4.51
4.54
4.55
4.57
4.58
4.63
4.58
4.65
4.66
4.74
4.72
4.65
4.52
4.66
4.59
4.55
4.63
4.62
4.50
4.56
4.54
4.52
4.59
4.57
4.57
4.60
4.61
2012年度平均
2013年度平均
2014年度平均
2012 N=1,125
2013 N=743
2014 N=433
講
師
満
⾜
度
度
容
理
理
⾜
解
解
度
度
度
⾜
内
満
容
訳
度
度
満
学
内
⾜
成
義
義
学
達
当
講
講
⾒
⾒
通
満
標
担
境
企業等⾒学︵遠隔地︶
満
⾜
度
R
⽬
環
企業等⾒学︵遠隔地︶
⽬
標
達
成
度
W
R
気
W
囲
ス
雰
応
コ
・
対
修
成
の
研
構
へ
度
望
⾜
ラ ム 構 成
満
要
合
カ リ キ
総
WR:ウォークラリー
-26-
総合満足度への項目別満足度影響比較
図5 一般研修総合満足度CS分析(2012-2014)
2014 N=433
満⾜率
満⾜率
N=743
コース担当
通訳
企業⾒学(遠隔地)
満⾜度
企業⾒学(遠隔地)
⽬標達成度
研修環境
WR満⾜度
WR⽬標達成度
⾒学満⾜度
講師満⾜度
⾒学内容理解度
講義満⾜度
講義内容理解度
通訳
コース担当
研修環境
構成・雰囲気
カリキュラム構成
参加者からの要望へのHIDAの対応
カリキュラム構成
参加者からの要望への
HIDAの対応
構成・雰囲気
決定係数
N=1,125
満⾜率
コース担当
通訳
決定係数
研修環境
構成・雰囲気
表1 一般研修総合満足度CS分析データ(2012-2014)
2012
第三四半期
項
⽬
カ リ キュ ラ ム 構成
総合評価との
決定係数
0.48
2013
満⾜率
46.4%
総合評価との
決定係数
0.67
2014
満⾜率
45.3%
総合評価との
決定係数
0.61
満⾜率
51.8%
要 望 へ の 対 応
0.37
43.5%
0.54
43.8%
0.42
52.5%
構 成 ・ 雰 囲 気
0.35
49.6%
0.51
48.7%
0.31
55.6%
研
境
0.28
57.4%
0.55
59.2%
0.29
62.6%
当
0.16
77.6%
0.41
79.5%
0.23
80.7%
WR⽬標達成度
0.15
54.8%
0.39
52.6%
0.28
57.8%
W
度
0.18
56.4%
0.42
56.0%
0.23
60.5%
研修旅⾏⽬標達成度
0.18
58.9%
0.39
59.7%
0.17
65.3%
研修旅⾏満⾜度
0.15
60.9%
0.44
65.6%
0.17
68.2%
通
訳
0.22
75.3%
0.30
78.2%
0.24
80.3%
⾒学内容理解度
0.01
60.3%
0.01
61.2%
0.01
62.1%
⾒
度
0.01
65.8%
0.01
64.2%
0.01
66.3%
講義内容理解度
0.01
53.6%
0.01
54.3%
0.01
55.1%
講
義
満
⾜
度
0.01
57.5%
0.01
57.5%
0.01
60.1%
講
師
満
⾜
度
0.01
67.1%
0.01
61.0%
0.01
63.2%
コ
修
ー
R
学
環
ス
満
満
担
⾜
⾜
カリキュラム構成
参加者からの要望への
HIDAの対応
-27-
決定係数
第2章 受入研修
次に、図5において総合満足度とその他の評価項目についてのCS分析を試みた。各項目ごとに
「大変満足」(評点5)と回答した比率を算出した満足率を縦軸にとり、総合満足度と各評価項目との
相関の強弱を表す相関係数を算出(CORREL関数)し、その二乗を決定係数として横軸にとった
散布図である。
決定係数とは、一方の要素が他方の要素を決定付ける度合いを示す数値となる。ここでは、決定係数
が高い項目は総合満足度を押し上げる要素が高い項目と言える。
各項目の満足率は50%を超えるが、その中でも決定係数(重要度)が高く満足率のやや低い「カリキュ
ラム構成」(重点維持項目②)、「参加者からの要望へのHIDAの対応」(維持項目③)が総合満足度を
押し上げる要素がより高い項目に該当することが分かった。(2014年)
なお、2014年度はそれまで「改善項目」に位置していた項目が「維持項目」に上がるなど、全体的に満
足度が上がっていることが読み取れる。
2.2 技術研修における一般研修での日本語研修の評価
2.2 技術研修における一般研修での日本語研修の評価
ここでは、最初に日本語能力評価基準を示す。次に日本語技能別到達度表評価結果及びタスク
型試験による行動目標評価結果、学習状況評価結果を示し、最後に研修生による日本語学習の
満足度評価結果を示す。
日本語能力評価基準
一般研修における日本語研修では、日本語能力評価基準を定め、日本語能力の到達目標及び
学習内容に関する基準を設定している。
「会話力」、「聴解力」、「文法力」、「文字力」の4つの技能については、「1.日本語能力
評価」の通り基準を設け、コース開始時の日本語初期能力判別試験及びコース終了時の最終試
験結果により初期値と到達値を測っており、文字学習については「2.文字能力評価」の評価基
準、非漢字圏の研修生には「漢字練習帳」(非漢字圏の未学習者用教材)、漢字圏の研修生及
び既習者等には「教科書準拠漢字」(使用教科書である『みんなの日本語初級Ⅰ』、『みんな
の日本語初級Ⅱ』、『新日本語の中級』に準拠した教材)を用いて指導を行っている。ただ
し、文字学習が全体の学習進度に好ましくない影響を及ぼすと予想される研修生に対しては文
字を紹介するに留め、ローマ字による教科書で日本語学習を行う等の柔軟性を持たせている。
更に、日本語の技能と講義・見学で得た日本の社会常識に関する知識を統合し、日本語を
使って、求められる行動がどの程度できるようになったかを「タスク型試験」により評価して
いる。「3.日本語研修行動目標とタスク型試験」の通り、行動の目標は全部で8つあり、J13W
では1~8の全ての行動目標が評価対象となるが、J6Wではそのうち1~4の4つの行動目標のみ
が評価対象となる。また、それぞれの行動目標は、初級前半・初級後半・中級のレベル別の難
易度を設けており、タスク型試験では、各研修生の学習進捗に応じたレベルの試験を課してい
る。
また、研修生の学習に対する取組姿勢については「4.学習状況」の通り、“積極性”と“学
習努力”の二項目を日本語講師が日常の観察により評価している。
1.
日本語能力評価
レベル
評価点
初級
前半
0〜5
初級
後半
6〜10
会話・聴解・⽂法
「⽇本語能⼒試験」
相当レベル(*2)
初歩的な⽂法(約75⽂型)・語彙(約800語)を習得し、
「みんなの⽇本語初級Ⅰ」
簡単な会話ができ、平易な⽂、または短い⽂章が読み書きできる。
1課〜25課
《 J6Wコース標準クラス(*1)の到達⽬標 》
N5
基本的な⽂法(約150⽂型)・語彙(約1,400語)を習得し、
「みんなの⽇本語初級Ⅱ」 ⽇常⽣活や実地研修に役⽴つ会話ができ、簡単な⽂章が読み書き
26課〜50課
できる。
《 J13Wコース標準クラス(*1)の到達⽬標 》
N4
応⽤的な⽂法・語彙(約2,700語)を習得し、場⾯や状況に
応じて適切なやり取りができ、読み書きができる。
N3
14〜15
やや⾼度な⽂法・語彙(約6,000語)を習得し、⼀般的なことがら
について会話ができ、読み書きができる。
N2
16〜18
⾼度な⽂法・語彙(約10,000語)を習得し、⽇本での社会⽣活
をする上で必要であるとともに、実地研修に役⽴つ総合的な⽇本語
能⼒がある。
N1
11〜13
中級
上級
使⽤教科書
「新⽇本語の中級」
1課〜20課
(*1)標準クラス ・・・・・・・・・ 初めて⽇本語を学習し、1⽇1課の授業進度で学べるクラス。
(*2)⽇本語能⼒試験 ・・・ 公益財団法⼈ ⽇本国際教育⽀援協会及び独⽴⾏政法⼈ 国際交流基⾦により、年に2回国内外で実施される試験。
-28-
2.
文字能力評価
⽂
字
内
容
評価点
⽂ 字 数
仮名⽂字
平仮名・⽚仮名を使った短⽂
の読み書きができる
0〜5
平仮名・⽚仮名(218字)
0〜5
基礎漢字(100字)
基礎漢字
⽇本語能⼒試験N4、N3、
N2レベルの漢字を使った
⽂章の読み書きができる
(主として⾮漢字圏対象)
6〜10
基礎漢字(上記100字を含む300字)
11〜13
基礎漢字(上記300字を含む500字)
6〜10
使⽤教科書で学習する漢字を
使った⽂章の読み書きができる
(主として漢字圏対象)
教科書準拠漢字
3.
『みんなの⽇本語初級Ⅰ』初級前半レベル約800語
の漢字
『みんなの⽇本語初級Ⅱ』初級後半レベル約1400語
の漢字
11〜13
『新⽇本語の中級』中級前半レベル約2700語
の漢字
14〜15
⽇本語能⼒試験N2(約1000字)
16〜18
⽇本語能⼒試験N1(約2000字)
日本語研修行動目標とタスク型試験
⾏動⽬標
コ ス
J6W
J13W
コ ス
4.
タスク型試験
1
場や状況に合わせて⾃分の事を話すことが
できる
受⼊会社に宛てたビデオレターで⾃分の事を話す
2
予定や実施したことを伝えることができる
研修の進捗・成果を報告する
3
必要に応じて質問や相談ができる
提出予定の課題について締切り延⻑の相談をする
4
適切な話題を⾒つけ会話を続けることができる
偶然会った顔⾒知りと駅までの道のりの間、会話
を続ける
5
場⾯や状況に応じて丁寧に挨拶やお礼、
今後の抱負などを伝えることができる
研修中にお世話になった⼈に丁寧なお礼のメール
を書く
6
現在の⼼境や考えを伝えることができる
HIDA研修のよい点と問題点、または、今後の
期待や不安について話す
7
作業⼿順や安全指導などの研修上必要な
説明を聞いて、不明な点は質問・確認しながら
理解することができる
研修準備の指⽰を聞いて、⾃分がどのように
⾏動しなければならないか理解する
8
⾃分の会社や業務について説明ができる
派遣元の会社やそこで⾏っていた業務について
説明し、帰国後の⾃分の役割について述べる
学習状況
積極性
学習努⼒
⽇本語で積極的にコミュニケーションしようとする意欲
学習課題に⽇々真⾯⽬に取り組む姿勢
1
まったくなかった
1
まったくなかった
2
あまりなかった
2
あまりなかった
3
普通であった
3
普通であった
4
ほぼ期待通りであった
4
ほぼ期待通りであった
5
期待通り⼗分あった
5
期待通り⼗分あった
-29-
第2章 受入研修
0〜5
2.2 技術研修における一般研修での日本語研修の評価
日本語技能別到達度評価
日本語研修[学習成果] コース種別による能力別平均
研修生の日本語力を能力別(話す力、聞く力、文法力、文字力*)に学習開始時と終了時に評価し、
初期値と到達値伸び幅を評価した。
来日前の研修生の日本語学習歴は様々であるため、初期値がゼロの初心者から中級を超えるレベ
ルの者までが存在する。また、初期値と到達値の伸び幅も個人差によるところが大きいが、図6-1,
6-2の通り、全体の平均値で見ると、HIDAの平均的な一般研修コース参加者像とその目標達成状況
が見てとれる。
即ち、J6WとJ13Wコース参加研修生ともに一般研修開始時での日本語力初期値は入門レベル(会
話・聴解・文法の初期値は1.21~1.65)であったところが、J13Wコースを終了した研修生は初級後半レ
ベルの会話・聴解・文法の力(到達値:7.62~9.43)を概ね身に付け、またJ6Wコースを終了した研修生
は初級前半レベルの会話・聴解・文法の力(到達値:4.20~4.62)を概ね身に付けられている。こうした
ことから両コースとも目標とする日本語能力レベルに達していることがわかる。
*文字力については、仮名は習得(評価点:5)を目標とし、漢字については非漢字圏の学習者は「基礎漢
字」、漢字圏の学習者及び基礎漢字500文字を既に身に付けた者は「教科書準拠漢字」とそれぞれ異なる学習
方針を設けて学習している。
図6-1
J13Wの能力別平均
N=86
図6-2
J6Wの能力別平均
N=226
-30-
日本語研修行動目標とタスク型試験
表2 日本語研修タスク型試験結果
⾏動⽬標
⽬標1
J6W
コ ス
⽬標2
コ ス
J13W
⽬標3
⽬標4
⽬標5
⽬標6
⽬標7
⽬標8
レベル
場や状況に合わせて⾃分の事を話す
ことができる
予定や実施したことを伝えることが
できる
初級前半
必要に応じて質問や相談ができる
適切な話題を⾒つけ会話を続ける
ことができる
場⾯や状況に応じて丁寧に挨拶や
お礼、今後の抱負などを伝えることが
できる
現在の⼼境や考えを伝えることができる
初級後半
作業⼿順や安全指導などの研修上
必要な説明を聞いて、不明な点は
質問・確認しながら理解することができる
⾃分の会社や業務について説明が
できる
中級前半
評価基準
評点4
問題なくできる
評点3
問題はあるが概ねできる
評点2
⼀部できる/時々できる
評点1
ほとんどできない/まったくできない
-31-
⽬標
⼈
評点4
評点3
数
評点2
評点1
平均
評価
合計
⽬標1
108
121
33
4
266
3.25
⽬標2
52
118
75
21
266
2.76
⽬標3
93
97
48
18
256
3.04
⽬標4
85
90
67
14
256
2.96
⽬標5
5
19
7
3
34
2.76
⽬標6
3
15
9
3
30
2.60
⽬標7
1
4
7
6
18
2.00
⽬標8
6
5
5
2
18
2.83
⽬標1
26
10
2
0
38
3.63
⽬標2
19
18
1
0
38
3.47
⽬標3
26
14
2
0
42
3.57
⽬標4
31
8
3
0
42
3.67
⽬標5
14
25
5
1
45
3.16
⽬標6
22
22
5
0
49
3.35
⽬標7
15
30
5
1
51
3.16
⽬標8
32
17
2
0
51
3.59
⽬標1
3
0
0
0
3
4.00
⽬標2
2
1
0
0
3
3.67
⽬標3
7
2
0
0
9
3.78
⽬標4
8
0
1
0
9
3.78
⽬標5
0
4
3
0
7
2.57
⽬標6
1
2
4
0
7
2.57
⽬標7
7
8
2
0
17
3.29
⽬標8
15
1
1
0
17
3.82
第2章 受入研修
通常J6Wコースに参加する初級前半レベルの研修生は、行動目標1~4のタスク試験を受験し、
J13Wの研修生や中級以上の学習者は目標5~8のタスク試験についても受験することができる。各人
のタスク試験の受験実績に基づき、受験した目標項目について結果を評価している。初級前半の研修
生には、「評点1:ほとんどできない/全くできない」評価がつく場合が一定数あるが、初級後半以上にな
ると評点1の評価はほぼ無くなる。初級前半レベルの学習者にとっては、タスク試験の場で求められる力
を出すことはまだまだ難易度が高いことが分かるが、たとえ初級前半レベルであっても、今後の実地研
修で起こりうる日本語使用の場面をイメージして学習に取り組ませたり、 “知識と実力の差は”について
意識させるために、このようなタスク型試験は有効であると考える。試験で上手くできたこと、できなかっ
たことについて意識させ、改善を促したり励ましたりする丁寧な事後指導が不可欠である。このためタス
ク型試験については、コース開始後2-3週間おきのタイミングでJ6Wでは2回、J13Wでは4回実施し、日
本語講師による充分な事後指導をコース中に実施できるように工夫して有効性を高めている。
2.2 技術研修における一般研修での日本語研修の評価
日本語学習に関する講師の評価
1)研修生の積極性に対する評価
研修生は一般研修中に日本語を使って積極的にコミュニケーションしようとする意欲があったかどうか
について、日本語講師が評価を行った。J13Wコースでは「期待通り十分あった」が38.4%、「ほぼ期待
通りあった」が38.4%で、合わせて76.8%、J6Wコースでは「期待通り十分」が42.5%、「ほぼ期待通り」
が36.3%、合わせて78.8%という評価であった。
図7-1,2 研修生の積極性の評価
2)研修生の学習努力に対する評価
研修生は日本語学習の課題に日々真面目に取り組む姿勢があったかどうかについて、日本語講師
が評価を行った。J13Wコースでは「期待通り十分であった」が64.0%、「ほぼ期待通りであった」が
22.1%で、合わせて86.1%の研修生が期待通りの学習努力をしたと評価した。一方、J6Wコースでは
「期待通り十分」が54.5%、「ほぼ期待通り」が29.2%、合わせて83.7%との評価であった。
両項目とも高評価であることから、大部分の研修生は技術研修における日本語学習の意義を理解
し、よく努力して学習に取り組んでいたことが分かる。
図8-1,2 研修生の学習努力の評価
-32-
日本語研修満足度評価
図9-1 日本語研修
一般研修終了時
満足度項目別評価
N=312
修
話
期
時
ラ
内
法
内
容
⼒
貢 学
説
授
明
業
意
の
の
わ
内
献 欲
か
容
り
・
や
進
す
め
さ
⽅
習
導
業
字
内
学
習
内
容
進
向
上
度
量
度 の
対 学
応 習
配
や 者
配 へ
慮 の
教
宿
科
題
講
書
・
師
・
テ
使
教
ス
⽤
布
材
ト
教
設
材
備
・
・
教
環
練
習
内
容
具
・
回
境
図9-2 学習期間と総合満足度における評点分布
N=312
-33-
会
話
︶
容
⼒
⽂
授
︶
容
⼒
導
指
︶
間
解
⽂
︶
間
⼒
導
︶
成 ム
導
聴
指
︵
習
指
︵
キ
会
︶
度
リ
指
︵
⾜
研
︵
満
学
︵
合
構 カ
︵
総
数
第2章 受入研修
一般研修終了時に研修生に対して日本語学習に関する満足度評価を行っており、「総合満足度」に
加え項目別の満足度を評価している(図9-1)。「総合満足度」については、目標評点を5点満点中4点に
設定しており平均は4.57点であった。また、項目別評価でも全ての項目で目標点を超えた。過去2年の
評価と対照すると、項目別評価には一定の傾向があり、講師の「学習者への対応や配慮」、「学習意欲
向上への貢献度」「説明のわかりやすさ」「授業の内容・進め方」のような教え方や研修生への接し方等、
日本語講師に関する項目や、教材・教具に対する項目は例年の通りたいへん高く評価されていることが
わかる。今年度は初級の使用テキストを従来の『新日本語の基礎』から『みんなの日本語』に切り替えた
初年であり、宿題・試験の内容もそれに伴って一部変更したが、満足度のレベルは変化していない。
「学習期間」が他の項目よりも満足度が低い傾向も一定であるが、これは研修生から多く聞かれる「もっと
長い時間勉強して力をつけたい」という希望によるものであろう。また、図9-2の通り学習期間の満足度が
高い研修生は総合満足度評価も高い割合が多いので、限られた学習期間を最大限に活かし、効率よく
相応の成果を得られたと実感できた研修生は学習期間の満足度が高いものと思われる。
2.3 技術研修における実地研修の評価
2.3 技術研修における実地研修の評価
実地研修参加者の概要
実地研修の参加者の概要を表すため、年齢分布、学歴別人数分布、研修生の国別分布、地域別分
布、実地研修を受入れる受入企業の業種を図 から図 までに示した。分析対象としたのは、2012、13
年度と2014年度12月末日までに研修が終了した者、或いは実地研修が実施されている者までを対象
とした。
図10の年齢分布図からは、3年継続して平均年齢は変化がなく20代後半から30代前半が多数を占め
る。男女比では20%前後で推移している。また学歴では、高等教育(大学、短大、専門学校)を修了し
た者の割合が3年継続して85%程度を占めており、高等教育を修了し職歴5,6年程度の若手キーパソ
ンの研修生が多いことを示している。また国別では3年間の傾向は同じでアセアン4のタイ、インドネシ
ア、マレーシアの他、新興国ではベトナム、インドからの研修生が多い。なお、2013から2014年度はミャ
ンマーからの研修生が増加傾向にある。
また、受入企業を業種別に分け、それぞれの参加人数を図12に示した。「自動車」が最も多く、「その他
電器」、「その他機械」、「産業機械」といった日本から進出している分野での受入が3年間同じ傾向で多
いことを示している。
図10
年齢分布図(2012-2014)
2012
⼥
213
2013
男
917
1130名
⼥
116
2014
男
638
⼥
93
754名
男
340
433名
図11 実地研修学歴別人数(2012-2014)
N
⼤
2012年 2013年 2014年
1230
754
433
学
1331
短
期
⼤
学
265
専
⾨
学
校
391
⾼
等
学
校
中
学
校
⼩
学
校
277
50
3
-34-
図12 国別研修生人数
年度別(2012-2014)
2012年 2013年 2014年
1230
754
433
N
計
252 349 165 109 71 42
2
1
1 82
0
3
1
1
1
1
2
1
2 24
8
4
2
0
0
2
1
2
1
0
0
0
0
0
0
0 1130
2013年
12 253 171 114 58 30
9
4 13 55
4
2
1
1
1
1
0
0
0
7
2
2
1
0
7
0
3
0
3
0
0
0
0
0
0
0
754
3
4 22 26
3
0
6
1
1
0
0
0
0
4
0
0
1
1
0
0
1
0
2
1
5
2
1
1
1
1
433
2014年
0 123
81
84 52
6
図13
地域別分布図(2012-2014)
N
2012年 2013年 2014年
1230
754
433
N
2012年 2013年 2014年
1230
754
433
図14 実地研修業種別人数(2012-2014)
総
そ
業
林
窯
農
材
⽔
の
維
鉄
炭
⾮
⽯
品
器
そ の 他 製 造 業
⽪
油
機
⽊
⽯
密
8
繊
精
6
産
⾦
印
ル
機
機
電
機
13
パ
設
動
他
他
機
電
2
版
・
業
の
信
の
電
庭
14
⾷
⾞
出
建
紙
ゴ
化
⾦
鉄
⾃
産
そ
通
そ
家
重
業
2
ム
学
業
プ
両
刷
他
計
7
53
2
2
0
14
1130
11
36
42
0
0
2
3
9
2
6
3
4
23
3
0
0
15
754
2014
13
1
39
17
26
29 165
21
0
0
14
45
2
0
4
3
4
3
6
11
3
6
4
0
1
16
433
-35-
業
鋼
10
38
属
属
4
68
⾰
⾞
47
36 323
5 117
械
43
54
械
17
13
器
12
41
32 155
器
36
5
器
75 415
17
器
39
2013
種
2012
第2章 受入研修
総
ZAMBIA
UGANDA
TANZANIA
SUDAN
RWANDA
NIGERIA
KENYA
EGYPT
ETHIOPIA
SOUTH AFRICA
IRAQ
ECUADOR
ARGENTINA
VENEZUELA
CAMBODIA
BRAZIL
MEXICO
名
PAPUA NEW GUINEA
FIJI
MONGOLIA
KAZAKHSTAN
UZBEKISTAN
SRI LANKA
BANGLADESH
PAKISTAN
NEPAL
INDIA
MYANMAR
LAOS
COLOMBIA
MALAYSIA
PHILIPPINES
VIET NAM
INDONESIA
THAILAND
CHINA
国
2012年
2.3 技術研修における実地研修の評価
受入企業による実地研修の評価
一般研修の目標達成度合いに関する満足度評価(実地研修終了時)
受入企業に対して、各研修生の一般研修の目標達成度合いに関する満足度評価を行っている。
図15の通り、一般研修の目標達成度合いに受入企業は満足しているかどうかについてHIDAの定め
る目標評点は5点満点中4点であるが、結果は4.03点で、目標評点の4点を上回った割合は73.1%で
あった。
図15に、達成度合いに対する満足度評価の他の項目の平均と分布についても示した。4点を上回っ
た項目として「生活力」、「自己管理力」、「異文化適応力」、「文化・社会理解」、「実地研修理解」が挙げ
られる。これらの項目は、研修生による一般研修の目標達成度の評価でも高い達成度を示しているた
め、研修生による評価と受入企業による評価が一致しており、一般研修の成果が現れているものと考え
られる。
図15 実地研修目標別達成満足度評点分布と平均
4.07
3.88
3.99
2012年
N=1226
3.84
4.02
3.90
3.96
2013年
N=744
2014平均
4.24
4.23
4.00
4.04
3.92
4.06
3.94
4.03
2014年
N=309
⽣
⾃
異 ⽂
⽇ 本 企 業 理 解
実 地 研 修 理 解
標
達
成
ン
度
⼒
シ
適 応
⼒
⼒
理
⼒
ニケ
管
活
-36-
⽬
3.85
3.90
コミ
3.92
3.98
能
3.99
4.17
⽂ 化 ・ 社 会 理 解
4.06
4.14
化
4.09
2013平均
⼰
2012平均
一般研修での日本語研修に対する受入企業の満足度評価(実地研修終了時)
図16 実地研修項目別日本語研修に対する満足度評点分布と平均
2012平均
3.30
3.56
3.38
3.15
3.43
3.28
2.82
3.59
2012年
N=1226
2013平均
3.26
3.51
3.37
3.12
3.51
3.31
2.55
3.55
2013年
N=744
2014平均
3.25
3.49
3.32
3.07
3.43
3.26
2.64
3.50
2014年
N=309
会 話 ⼒ ︵ 研 修 ︶
会 話 ⼒ ︵ ⽣ 活 ︶
聴
⽂
解
法
⼒
⼒
⽂字⼒︵ひらがな︶
⽂字⼒︵カタカナ︶
⽂ 字 ⼒ ︵ 漢 字 ︶
⽇ 本 語 研 修 満 ⾜ 度
-37-
第2章 受入研修
研修生のHIDAでの日本語研修に対する満足度評価を実地研修終了時に受入企業に尋ねている。
HIDAで行った日本語研修が実地研修を行う上で満足のいくものであったかについて、結果を図16に
示した。18.2%が「満足」、29.9%が「やや満足」と評価しており、合わせて48.1%の研修生に対して満足
している結果となった。また、目標評点を5点満点中4点に設定しているが、日本語研修に対する満足度
平均は目標評点を下回る3.50点との結果となった。研修生の日本語能力について、一般研修における
日本語技能別到達度評価の技能別平均においては、J6W/J13WともにHIDAの設定した目標レベル
に達しているにもかかわらず、受入企業の満足度につながっていないことは、今後のHIDAの日本語学
習の目標設定のあり方、もしくはその説明のあり方に改善が必要であることを示唆している。
2.3 技術研修における実地研修の評価
実地研修での目的達成度に関する受入企業の評価(実地研修終了時)
実地研修終了時に、受入企業による実地研修の総合的な評価を行っている。その中での各研修生
の実地研修における目的達成度について、HIDAの定める目標評点は5点満点中4点である。図17の
通り、結果は平均4.36点となり、54.4%の研修生が「80%以上達成」し、30.3%が「70%以上達成」したと
の評価結果となった。受入企業から見ると、84.7%の研修生が7割以上の達成度で実地研修を終えたと
評価している。
なお、絶対数は少ないものの、評点が低い(1もしくは2)場合を見てみると主に2つのケースに分かれ
た。①研修生は熱心だったが、学ぶべき項目に対して研修期間が足りなかったケース、②傾聴力など態
度に問題があり十分な学習に至らなかったケースである。①は研修計画立案の重要性、②は研修生の
人選の重要性を示している。計画・人選は、決定してしまってからのHIDAの助言・指導にはおのずと限
界があるため、初期の会社の判断が鍵になるといえよう。
図17 実地研修での目的達成度に関する受入企業の評価
2012年
N=1226
2013年
N=744
2014年
N=309
実地研修での研修生の取り組み姿勢に関する受入企業の評価(実地研修終了時)
実地研修中の研修生の取り組み姿勢について、受入企業による評価を行っており、HIDAの定める
目標評点は5点満点中4点である。図18の通り、結果は平均4.48点となり、57.7%の研修生が「とても熱
心」に取り組み、34.0%が「熱心」に取り組んでいたとの評価結果となった。
上記目標達成度と取り組み姿勢は密接に関連しており、熱心に取り組む研修生を人選することがまず
は目標達成への鍵であるといえよう。
図18 実地研修での研修生の取組姿勢に関する受入企業の評価
-38-
2012年
N=1226
2013年
N=744
2014年
N=309
研修生による実地研修の評価
一般研修の効果と実地研修の満足度に関する評価(実地研修終了時)
図19
実地研修直後評価一般研修効果4項目と実地研修に関する満足度等4項目の評点分布と平均
2012年平均
4.39
4.40
4.52
4.38
4.34
3.88
4.26
4.11
2012年
N=1226
2013年平均
4.40
4.44
4.56
4.44
4.35
3.75
4.28
4.20
2013年
N=744
2014年平均
4.50
4.50
4.45
4.42
4.52
4.08
4.46
4.34
2014年
N=309
知 識 ・ 技 術 の
習
得
度
研 修 成 果 の
満
⾜
度
⾔ 葉 の 問 題
︵ ⾔ 語 指 導 ︶
指導内容・⽅法
研修デザインの
満
⾜
度
⽇ 本 語 研 修 の
役
⽴
度
︵
研
修
︶
⽇ 本 語 研 修 の
役
⽴
度
︵ ⽇ 常 ⽣ 活 ︶
講 義 ・ ⾒ 学 の
円滑導⼊における
役
⽴
度
実 地 研 修 へ の
円
滑
移
⾏
一般研修の効果4項目
実地研修の成果4項目
-39-
第2章 受入研修
実地研修を行った研修生に対し、一般研修が実地研修参加にあたりどのくらい効果があったか及び
実地研修の成果に関しての満足度についてそれぞれ4項目ずつ、計8項目について実地研修終了時
に評価を行っている。
図19の通り、この中で目標評点が5点満点中4点に設定されているのは、一般研修の講義・見学の内
容が実地研修の円滑な導入にどれだけ役立ったか(「講義・見学の円滑導入における役立度」)、実地
研修での指導内容と方法、研修デザインの満足度(「指導内容・方法、研修デザインの満足度」)、さら
に実地研修の成果に対する満足度(「研修成果の満足度」)の3項目で、それぞれ4.50点、4.52点、
4.46点と、いずれの項目も4点を越える高い評価であった。
一般研修の効果4項目について(図19の左側4項目)、実地研修終了時点で研修生に振り返っても
らった結果、どの項目も高い効果があったと評価されている。4項目の中で、問いに対して「そう思う(評
点5)」と回答した研修生の割合が最も高かったのは、日本語研修が実地研修中の日常生活に役立った
かとの問い(日本語研修の役立度「日常生活」)で57.4%であった。
実地研修の成果4項目(図19の右側4項目)では、「言葉の問題」についてなんらかの不満足を感じて
いると回答した研修生は18.4%にのぼった。これは、研修生の日本語力に関する問題の有無を問うもの
ではなく、研修生の理解できる言語で実地研修が指導されたかどうかに対する満足度を問うている。受
入企業では研修生の理解できる言語による指導体制を、研修生が満足するように整えることは難しいの
であろうと推察することができる。
実地研修での「知識・技術の習得度」に対する満足度の問いには、88.3%の研修生が「そう思う」ある
いは「いくらかそう思う」と評価しており、かなり満足のいく知識・技術の習得度であったと思われる。
2.3 技術研修における実地研修の評価
実地研修中に習得した知識・技術に関する研修生の評価(実地研修終了時)
実地研修の成果として、実地研修で習得した知識・技術の習得度を研修生に評価してもらったとこ
ろ、図20のように90.5%の研修生が、教えられた知識・技術の70%以上を習得したと自己評価した。ま
た、習得度の平均は81.8%となった。
先に、実地研修での研修成果の満足度(図19の右から2項目)について述べたが、92%の研修生から
4点以上の評価で満足しているとの結果であったので、ほぼ教えられた知識のうち7割から8割以上の習
得度で、高い満足度が得られている傾向があるといえよう。
知識・技術の修得度が低かったと回答しているケースを調べたところ、研修内容や指導員は適切だと
回答しながらも、研修期間が短い・学習量が多いとしているケースが目立った。ここでも研修内容に比し
て適切な研修期間を設定することの重要性が示されている。
図20 実地研修直後評価 実地研修生についての知識、技術習得度%分布
2012年
2013年
-40-
2014年
2012年
N=1226
2013年
N=744
2014年
N=309
2.4 政策的重点分野の評価
実地研修参加者の概要
政策的重点分野における実地研修の評価
国別研修生人数
国別の人数では、アセアンからはタイ、インドネシア、ベトナム及びインドで3年継続して人数
が多く、3年間で政策的重点分野で受け入れた1,153人(再適用を除く)のうち4カ国で74.1%
を占める。
図21 政策的重点分野国別研修生人数
N=669
N=372
N=112
FIJI
1
67
0
0
2
1
2
9
4
1
0
2
0
2
1 669
9
18
2
1
43
0
0
0
0
0
2
6
0
0
0
3
0
0 372
2014年
0
22
23
6
5
0
0
8
1
2
0
0
0
0
0
0
1
0
2
0
1 112
総
MONGOLIA
EGYPT
BANGLADESH
ETHIOPIA
NEPAL
2
54
計
名
SOUTH AFRICA
INDIA
IRAQ
MYANMAR
ECUADOR
COLOMBIA
CAMBODIA
MALAYSIA
BRAZIL
PHILIPPINES
32
80
-41-
MEXICO
VIET NAM
14
2 152
41
PAPUA NEW GUINEA
INDONESIA
THAILAND
CHINA
42
2013年
国
2012年 165 221 101
第2章 受入研修
実地研修参加者の概要
本項では、2012年度、2013年度及び2014年度については12月末日までに実地研修が終了した
或いは実地研修が実施されている政策的重点分野に該当する研修生のみを抽出し分析対象とし
た。分析対象の傾向を示すため、研修生の国別人数(図21)、受入目的別人数(表3)及び業種別人
数(図22)を示した。
2.4 政策的重点分野の評価
受入目的別人数
受入目的別実績人数では、環境・エネルギー分野が3年継続して人数が多く、合計913人と全体
の79.2%と大多数となっている。環境・エネルギー分野では低環境負荷、省エネ等の分野の技
術移転で省エネ・環境配慮型製品、部材、素材の設計・開発、製造、生産、保守、管理技術等
といった研修テーマが組まれ、研修を通してアジアを中心とした途上国の成長を日本の成長に
取り組み、製品・ノウハウ輸出拡大、海外展開促進を図っている。
表3 受入目的別人数
政策的重点分野の受⼊⽬的別実績⼈数 (再適⽤を除く)
受⼊⽬的 インフラ
システム
輸出関連
年度
科学・技術
・情報通信
環境・エネルギー 医療関連
2012
2013
2014
総 計
141
46
19
206
509
315
89
913
0
9
0
9
クールジャパン
合計
19
2
3
24
0
0
1
1
669
372
112
1,153
業種別人数(図22 )
業種別人数を3年間通してみると「自動車」591人(51.3%)と最も多い。
研修技術を見てみると自動車部品に生産技術や品質管理、設計あるいは自動車エンジン部品の
品質管理といったものが多く、日本の自動車の関する高い技術を通して省エネ・環境分野でア
セアンやインドに技術移転され、貢献をしている。現地ヒアリング調査の項目でも後に報告さ
れているが、アセアン+インドのハブ機能を担ったタイでの現地法人で、自動車部品設計の研
修では、帰国後に必要とされる日本語力や日本の企業文化、モチベーション向上のためにも
HIDA研修が活用されている。
図22 業種別研修生人数
年度別(2012-2014)
N=669
合
そ
密
の
設
機
⾦
計
他
器
属
両
鉄
業
⾮
学
その他製造業
化
ム
10
精
ゴ
鋼
26
⾞
鉄
属
19
建
⾦
⾞
械
11
動
機
⾃
業
器
そ の 他 機 械
産
機
器
信
電
器
通
庭
機
29
そ の 他 電 器
家
電
種
重
業
33
N=112
N=372
2012
94
5
51
22
303
7
2
3
5
46
3
669
2013
6
0
13
5
27
0
213
15
28
8
16
13
0
2
0
23
3
372
2014
4
0
5
2
9
0
75
0
0
0
1
7
0
1
3
2
3
112
-42-
受入企業による実地研修の評価
実地研修での目的達成度に関する受入企業の評価(実地研修終了時)
図23 実地研修での目的達成度に関する受入企業の評価
2012
2013
2014
N=626
N=400
N=79
-43-
第2章 受入研修
実地研修終了時に、受入企業による実地研修の総合的な評価を行っている。実地研修での目的
達成度に関する受入企業の評価を見ると(図23参照)、3年継続して70%以上目的は達成した
との回答が90%程度占めている。また5点満点を評点とした場合約4.5点と高い評価を得てい
る。これらは外部専門家によるヒアリング調査した現地側企業から、技術力が高まったととも
に、日本側との人脈が太くなりコンタクトがしやすくなったことや帰国研修生のモチベーショ
ンが上がったこと、幹部候補生としてのキャリアパスとなっているなどとの高い評価を得てい
ることからも、受入企業と現地側企業とで目的達成の評価が一貫していることが見て取れる。
2.5 管理研修の評価
2.5 管理研修の評価
管理研修参加者の概要
管理研修の参加者の概要を表すため、年齢分布、学歴別人数分布、研修生の国別分布を図24から
図26までに示した。分析対象としたのは、2012、13年度と2014年度12月末日までに研修が終了した
者を対象とした。
図24の年齢分布図からは、3年継続して平均年齢は30代後半が多数を占める。男女比では年々女
性の割合が増加し、今年度は28%であった。また、男性より女性の方が若干平均年齢が若い。また図
25で示されている学歴では、大学卒が圧倒的に多く、3年間で全体の96%を占めている。また国別で
はタイ・インドネシア・ベトナム・インド・バングラディシュ・スリランカの人数が多い。また今年度は、トル
コ、スーダン、南アフリカからの参加者も多かった。技術研修の国別人数の傾向と必ずしも一致しないの
は、管理研修の参加者は日系企業と直接関係しない現地企業からの派遣であることも多く、現地産業
団体やAOTS同窓会の働きかけによる応募が軸となっているからであろう。日本企業がまだ市場を開拓
していない新興国からの参加も多いため、管理研修参加をきっかけに日本や日本企業への親和性を
高めることで、日本企業の新興市場開拓にも資することが期待できるといえる。
図24
管理研修
年齢分布図(2012-2014)
2012
2013
2014
⼥
男
⼥
男
⼥
男
81
533
111
589
84
214
614名
700名
-44-
298名
図25 管理研修学歴別人数(2012-2014)
N=614
⼤
N=700
N=298
学
1547
期
⼤
学
6
専
⾨
学
校
28
⾼
等
学
校
第2章 受入研修
短
31
図26 管理研修国別研修生数年度別(2012-2014)
N=614
N=298
合計
JAMAICA
PERU
PARAGUAY
TANZANIA
EL SALVADOR
NIGERIA
YEMEN
SUDAN
JORDAN
IRAN
TURKEY
MACEDONIA
SOUTH AFRICA
CAMEROON
GHANA
KENYA
EGYPT
ETHIOPIA
CHILE
ECUADOR
ARGENTINA
2012 79 67 51 28 14
7
1
5 11
0
1
1
7
4 10
0
0
4 28
1
0 12
0
0
0
3
3 14
1 614
2013 70 68 54
9
7
3
0 22 83 29 28 72 64 21 27 18
8
8
1
2
5 11
7 12
1
0
1 31
1
0 15
1
1
1
0
4 15
0 700
2014 16 49 26
2
2
1
0
0
3
0
0
2
2
0 18
1 23
0
1 20
0
0
0
0
0
0 298
4 49
3
7 11 30
0
7
9
VENEZUELA
BRAZIL
MEXICO
UZBEKISTAN
SRI LANKA
BANGLADESH
PAKISTAN
NEPAL
INDIA
MYANMAR
LAOS
COLOMBIA
MALAYSIA
PHILIPPINES
VIET NAM
INDONESIA
THAILAND
国名
1 76 27 30 42 43 17 17
N=700
4
-45-
5
8
4
2.5 管理研修の評価
目標達成度評価
コース別評点分布と平均値及び伸び幅
管理研修では、一般研修と同様に研修生による目標達成度評価を行っている。各コースの研修テー
マに関する研修生の能力や知識をコース開始時と終了時で自己評価で測定しており、コース終了時の
目標評点は7点満点中5点としている。また目標達成度の伸び幅の目標評点は1.5点である。達成率の
目標値は目標評点5点に達した研修生の割合が94%以上となっている。
分析対象14コースの、コース開始時の目標達成項目の初期値(各項目について事前の理解や知識
がどの程度あるか)の平均点は3.73点であった。コース終了時の達成値は平均5.98点まで伸び、伸び
幅は平均2.25点となった。また、5点に達した研修生の割合は94.7%となった。
図27に各コース毎の目標達成度の達成値の平均とその分布、および伸び幅の平均を示した。伸び幅
が目標とする1.5点を下回っているコースが4コース(SHOP,TRPM,VNCM,LKSL)あるが、コース開始
前に設定された目標項目に対して参加者がすでに事前の知識や理解度が高い項目が多く含まれてい
たためと思われる。なお、これらのコースに関しては、前述したコース毎の総合満足度は高い結果となっ
ている。INWL(インド女性ビジネスリーダー研修コース)の伸び幅が4.2と際立って高いのは、日本の行
政・企業の女性活用への取組みという参加者にとって特に事前知識のない項目が多く含まれており、そ
れらを本コースを通して大変よく理解した、ということが示されている。また、EPCM(企業経営研修コー
ス)は目標達成度、総合満足度ともに最も低いが、研修生のレベルが高く、さらに高いレベルを目指して
コース参加に非常に意欲的であり、コース実施の意義は高かったことが担当者より報告されており、次
年度につなげるべきと考える。
図27 管理研修コース別目標達成度評点分布と平均及び伸び幅
N=298
A
F
L
D
I
D
C
M
I
D
L
D
I
N
B
P
関
Q
C
T
C
S
H
O
P
T
R
P
M
V
N
C
M
⻄
E
P
C
M
I
N
W
L
L
K
S
L
東
-46-
P
D
M
京
P
Q
M
S
A
T
I
研修生による満足度評価
総合満足度及び項目別満足度の評点分布(2014)と平均点(2012-2014)と達成率
図28の通り、コース全体の総合満足度は2014年度は平均4.44点で4点を上回る評価をした研修生
は96.1%と高評価であった。各項目の満足度平均も高い結果となっている。
第2章 受入研修
図28 管理研修項目別総合満足度評点分布(2014)と平均点(2012-2014)
N
2012年
2013年
2014年
4.43
4.29
4.37
2014年平均
4.44
4.23
4.44
4.39
4.63
4.71
4.38
4.39
4.33
4.22
4.45
4.39
4.37
4.36
4.43
事
参
⾒ 学 内 容 理 解 度
⾒ 学 内 容 満 ⾜ 度
講 義 内 容 理 解 度
講
講
払
い
加
務
修
合
加
⼿
ス
満
内
費
⼿ 続
続
師
容
の
き
費
き
訳
当
気
担
囲
応
境
雰
対
環
の
ム
成
度
ラ
⾜
-47-
義
4.37
4.32
参
⽀
4.37
4.27
通
4.38
4.33
コ
4.39
4.22
研
4.35
4.2
や
4.32
4.35
成
4.44
4.58
構
4.6
4.73
へ
4.76
4.6
望
4.55
4.32
要
4.3
4.38
キ
4.37
4.21
リ
4.22
4.33
カ
構
4.36
2013年平均
総
2012年平均
616
700
298
2.5 管理研修の評価
コース別総合満足度評点分布と平均
一般研修と同様に管理研修でも満足度評価を実施しており、目標評点は5点満点中4点である。
図29に、管理研修コース別の総合満足度評点の分布と平均を示す。満足度の達成率として各研修参
加者の総合満足度が5点満点中4点に達した割合が70%以上という目標値が設定されている。
図29に表した通り、分析対象14コースすべてについて満足度4点以上と回答した研修生が目標値の
90%を超える結果となった。総じて管理研修の満足度目標値は高い水準で達成されたと言える。
特に満足度の高い2コース(AFLDとPDM)について、AFLDは特に後半の実践的な講義・講師へ評価
が高く(5点満点中4.8-4.9点など)、それが全体的な満足度の高さと結びついている。PDMはカリキュラ
ム内容が整っていることはもちろんだが、今回は特に参加者の年齢層が若く、積極的に互いの交流を図
り、コース期間中「共に学ぶ」雰囲気が継続できたことが満足度の高さに影響している旨担当より報告さ
れている。
図29 管理研修コース別総合満足度評点分布と平均
N=298
A
F
L
D
I
D
C
M
I
D
L
D
I
N
B
P
Q
C
T
C
関
S
H
O
P
T
R
P
M
V
N
C
M
⻄
E
P
C
M
I
N
W
L
L
K
S
L
P
D
M
東
-48-
京
P
Q
M
S
A
T
I
総合満足度への項目別満足度影響比較
図30の通り、2012-2014年度について、総合満足度と各項目の満足度のCS分析を行い、影響
度を分析した。3年度とも、総合満足度を押し上げる影響の高いものとして、「カリキュラム構成」「要望へ
の対応」が上げられる。
「カリキュラム構成」「要望への対応」は総合満足度(図28)の目標評点4点を上回っており、評点4または
5とした研修生の割合も90%を超える評価を得ているが、これらの項目が管理研修の総合満足度への
影響が大きいことは留意しておく必要がある。
第2章 受入研修
図30 管理研修総合満足度CS分析(2012-2014)
N=700
満⾜率
満⾜率
N=298
コース担当
通訳
研修環境
コース担当
通訳
要望への対応
研修環境
構成や雰囲気
事務⼿続き
要望への対応
カリキュラム構成
参加費に対する満⾜度
参加費の⽀払い⼿続き
講義内容に対する満⾜度
カリキュラム構成
決定係数
N=616
満⾜率
⾒学内容理解度
講師に対する満⾜度
⾒学内容
コース担当
通訳
研修環境
講義内容の理解度
要望への対応
決定係数
カリキュラム構成
表4 管理研修総合満足度CS分析データ(2012-2014)
2012
項⽬
総合評価との
決定係数
カ リ キ ュ ラ ム 構 成
要
望
へ
の
対
応
構
成
や
雰
囲
研
コ
修
ー
環
ス
担
通
事
務
⼿
続
2013
満⾜率
総合評価との
決定係数
0.51
33.5%
0.30
48.9%
気
0.19
境
2014
満⾜率
総合評価との
決定係数
満⾜率
0.49
33.9%
0.44
32.6%
0.26
46.9%
0.27
53.3%
43.0%
0.15
41.7%
0.09
48.8%
0.19
61.6%
0.15
64.2%
0.14
66.2%
当
0.13
79.6%
0.14
76.6%
0.14
74.6%
訳
0.08
66.1%
0.05
67.5%
0.04
67.5%
き
0.14
54.5%
0.14
50.8%
0.13
50.7%
参加費に対す る満 ⾜度
0.14
48.1%
0.14
44.5%
0.12
48.4%
参加費の⽀払 い⼿ 続き
0.09
50.1%
0.11
45.8%
0.13
43.6%
44.0%
⾒ 学 内 容 理 解 度
0.01
51.2%
0.01
54.3%
0.01
⾒
容
0.01
53.5%
0.01
53.9%
0.01
41.6%
講 義 内 容 の 理 解 度
0.01
53.0%
0.01
54.1%
0.01
34.8%
内 容に 対 す る満 ⾜ 度
0.01
51.1%
0.01
54.9%
0.02
38.2%
講 師に 対 す る満 ⾜ 度
0.01
56.2%
0.01
59.1%
0.01
43.7%
学
内
-49-
決定係数
2.6 受入研修環境の評価
2.6 受入研修環境の評価
HIDAでは、研修生が研修に集中して所期の目的を達成することができるよう、食事、宗教、生活習
慣の違いによる心身の負担を軽減し、研修生が快適に過ごせるような生活環境の提供が不可欠である
と考え、研修センターの運営を行っている。研修センターは研修生にとっての “Home Away from
Home”(国を離れてのもう一つの我が家)であるようにとの考えからその役割と機能を整えるべきととら
え、食事制限のある研修生への柔軟な対応、清潔かつ機能的な個室の提供、共有スペースの充実、休
日・夜間を含めた研修生からの相談等にも力を注いでいる。
満足度評価
項目別満足度の平均評点及び達成率
受入研修の環境面に関しては、一般研修終了時に研修生による総合満足度評価を行っている。結果
は図31の通りである。総合満足度の目標評点は5点満点中4点に設定されており、平均は4.69点であっ
た。また、目標評点の達成率は99.3%であった。内訳は、5点の回答者が69.9%、4点が29.4%、3点以
下が0.7%であった。満足度のその他の項目もすべて平均4点を越え、研修センター運営に対して研修
生から高い評価を得た。
一般研修や管理研修を実施している研修センターの運営においても、「職員・受付スタッフ」の対応が
宿泊する研修生から継続的に最も高い満足度の項目となっている。
図31 研修環境総合満足度項目別分布と平均
2012 N=1,125
4.63
4.61
4.64
4.57
4.63
4.64
4.26
4.31
4.30
4.51
4.51
4.55
4.57
4.64
4.64
環
個
サ
ビ
職
受 付 ス タ
室
⾷ 堂 ・ 喫 茶
共 有 ス ペ
境
ス
ス
フ
-50-
4.76
4.79
4.77
員
4.63
4.65
4.69
総 合 満 ⾜ 度
2012平均
2013平均
2014平均
2013 N=743
2014 N=433
総合満足度への項目別満足度影響比較及び評価結果
図32の通り、総合満足度とその他項目のCS分析を行い重要度・満足度を分析した。(2012-2014)
満足度を向上させる要素として一番影響が高い項目(重点維持項目②)は「研修を実施するための環
境」となっており満足率も(62.7%-65.8%)決定係数(0.45-0.61)も高い。
満足率が低く(43.3%-47.8%)決定係数も低い(0.23-0.31)(改善項目④)は、「食堂・喫茶コーナー」
に対する満足度で、満足率が50%を切る結果となった。
N=743
N=433
満⾜率
満⾜率
環境
HIDA職員・受付スタッフ
個室
サービス
HIDA職員・受付スタッフ
環境
⾷堂・喫茶コーナー
共有スペース
決定係数
⾷堂・喫茶コーナー
N=1125
満⾜率
HIDA職員・受付スタッフ
環境
⾷堂・喫茶コーナー
決定係数
表5 研修環境
総合満足度CS分析データ(2012-2014)
2012
項
⽬
総合評価との
決定係数
2013
満⾜率
総合評価との
決定係数
2014
満⾜率
総合評価との
決定係数
満⾜率
環
境
0.48
64.8%
0.45
62.7%
0.61
65.8%
個
室
0.31
57.6%
0.31
64.2%
0.42
68.5%
⾷ 堂 ・ 喫 茶 コ ー ナ ー
0.26
43.3%
0.23
45.6%
0.31
47.8%
共
ス
0.34
53.8%
0.37
55.6%
0.29
58.8%
ス
0.35
59.0%
0.36
65.0%
0.23
65.8%
HIDA 職 員 ・ 受 付 ス タ ッ フ
0.34
75.9%
0.26
79.2%
0.28
78.5%
サ
有
ス
ー
ペ
ビ
ー
決定係数
そこで、図33の通り、「食堂・喫茶コーナー」に対する要望点(2012-2014)を検証した。要望は多岐
に渡る結果となったが、3年間を通して最も多かった回答は、「食堂の料理の味」と「母国の料理の提供
不足」がほぼ並び、次いで「食堂のメニューのバリエーション」となった。図34の通り、評点3以下と回答し
た84.3%を東南アジアからの研修生が占めている。おおむね図12の国別研修生数と比例しているが、
インドネシアとベトナムの順位が逆転しており、ベトナムの研修生はより味・メニューに厳しい傾向がある
といえるかもしれない。ベジタリアンやムスリムからの評価は比較的高く、食事制限に配慮したHIDAの
努力は一定の実を結んでいるといえる。
研修センターの食堂では、研修生の国籍や宗教等にできるだけ配慮した食事を提供するよう努めてい
るが、同時に滞在する研修生の国籍や宗教等が多岐にわたることもあり対応しきれていない可能性が考
えられる。一方で、研修センターの滞在中に日本の食文化に慣れてもらうという観点もある。研修生が
快適に日本で生活できるよう今後の食堂運営の上で参考としたい。
-51-
第2章 受入研修
図32 研修環境 総合満足度におけるCS分析(2012-2014)
2.6 受入研修環境の評価
図33 食堂・喫茶コーナーに対する要望点(2012-2014)
※複数回答
1
⾷堂の料理の味
2
⺟国の料理の提供不⾜
3
⾷堂のメニューのバリエーション
4
⾷堂で⼀⽇に提供されるメニューの豊富さ
5
⾷堂の料理の料・価格
6
⾷堂の混雑状況
7
宗教に配慮した料理の提供
8
⾷堂施設の営業時間
9
健康に配慮した料理の提供
10 喫茶コーナーで提供されるメニューの豊富さ
11 喫茶コーナーの料理・ドリンクの量と価格
12 ⾷堂スタッフのホスピタリティー
13 喫茶コーナーの雰囲気
14 喫茶コーナーのスタッフのホスピタリティー
15 ⾷堂施設・⾷器等の清潔度
図34
食堂・喫茶の満足度評価の
うち評点3以下と回答した
研修生の国・地域別分布
(2012年-2014年)
センター毎の総合満足度比較
最後に、HIDAの2つの研修センターに対する総合満足度(2012-2014)を図35を用いて比較した。結
果は、いずれも平均評点が高く、4点を越える評点をつけた研修生の割合も高い。3年間を通して、いず
れの研修センターにおいても、研修生から高い満足度を得て日本で快適に生活し、研修に参加できる
環境が提供できたと言える。
図35
研修環境センター別満足度評価評点分布と平均(2012-2014)
2012 N=1,125
2013 N=743
2014 N=433
年/センター
2012平均
2013平均
2014平均
関西
東京
-52-
関⻄
4.60
4.66
4.70
東京
4.73
4.58
4.67
2.7
受入研修の経済効果評価
経済効果の試算
●分析の方法と目的
●回答数
技術研修2,054名分、管理研修1,059名分(2014年12月末日までの審査承認者を対象)を回収した。
なお、経済効果を試算するにあたり、研修形態によりアンケート回答者、回答時期が異なるため、技術
研修と管理研修に分けて分析した。
技術研修の経済効果
研修にかかる研修生一人あたりの費用のうち、ODA補助金金額を除いた企業負担費用を算出
してもらったところ、平均額は214.2万円であった。続いて、企業負担額を「1」とした場合、
研修終了後5年間までに得られる研修効果の見込みを数値で聞いたところ、結果は平均で2.18で
あった。以上により、技術研修生一人当たりの期待経済効果額は467.0万円と推定される。この
研修生一人あたりの期待経済効果額に研修生数2,408名を掛け、技術研修全体の期待経済効果額
を112億4,430万円と試算した。
管理研修の経済効果
管理研修では、研修を実施するためにかかる一人当たりのコース経費(ODA補助金金額を含
む)をコース毎に提示し、その経費を「1」とした場合、研修終了後5年間までに得られる研修
効果の見込みを数値で聞いた。結果は、一人当たりのコース経費が平均61.6万円、研修効果の
見込み値は、平均で2.95であり、以上の結果から、一人当たりの期待経済効果は181.7万円で、
これに管理研修生数2,039名を掛け合わせ、37億527万円と試算した。
-53-
第2章 受入研修
2012年度から2014年度の受入研修と管理研修の研修成果・効果による経済効果についてアンケート
調査を行い、その結果をもとに、受入研修と管理研修の経済効果の試算を行った。アンケート調査では
次のことを明らかにすることを目的とした。
1)研修の経済効果(金銭的価値)はどのくらいか。
2)研修の経済効果は費用に見合うものであるか。
アンケート調査対象は、実施のための便宜上、原則、受入研修のうち技術研修は受入企業担当者、
管理研修は研修生派遣企業代表者とし、研修生ごとに研修申込の時点で回答してもらった。
2.7 受入研修の経済効果評価
研修成果・効果をふまえた経済効果
先に述べた技術研修および管理研修の経済効果額を合計した149億4,957万円を2012、13年度
及び2014年度の12月時点での研修事業に要する国庫補助金推定額の合算額である39億9,630万
円と比較すると3年度通しては3.74倍となり費用対効果の高い、効率的な事業が行われていると
言える。
表6 受入研修の経済効果(推定)
⼀⼈当たりの
研修分類
技術研修
受
⼊
研
修
(企業負担費⽤)
管理研修
(コース経費)
①を"1"とした場合の
研修⽣数
経済効果
コ ー ス 経 費
(期待)研修効果
(予定)
(①×②×③)
①
②
③
④
2 1 4 .2 万 円
2 .1 8
2 ,4 0 8 名
1 1 2 億 4 ,4 3 0 万 円
企 業 負担 費⽤
6 1 .6 万 円
2 .9 5
2 ,0 3 9 名
3 7 億 0 ,5 2 7 万 円
図36 経済効果金額と国庫補助金の比較
-54-
国庫補助⾦
経済効果
(対国庫補助⾦)
⑤
④/⑤
3 9 億 9 ,6 3 0 万 円
3 .7 4 倍
経済効果評価に見る持続性
図37-1 研修で学んだことにより影響を与えることができる人数(技術研修)
N=334
1⼈〜10⼈
11⼈〜20⼈
21⼈〜30⼈
31⼈〜40⼈
41⼈〜50⼈
国
名
BANGLADESH
1〜10名
11〜20名
21〜30名
3
BHUTAN
31〜40名
41〜50名
計
2
5
1
1
BRAZIL
2
2
CAMBODIA
2
2
ECUADOR
1
EGYPT
3
1
INDIA
15
2
6
INDONESIA
27
9
15
1
4
1
1
24
4
56
3
KENYA
2
LAOS
2
1
MALAYSIA
1
2
MYANMAR
3
NEPAL
2
NIGERIA
1
PHILIPPINES
24
2
3
3
1
3
1
3
1
8
36
RWANDA
1
1
SUDAN
1
1
TANZANIA
1
THAILAND
84
UGANDA
3
7
4
41
34
2
105
1
1
78
10
11
334
1
VIET NAM
65
ZAMBIA
合
1
16
1
1
計
238
1
-55-
第2章 受入研修
さらに、経済効果に関連する研修の成果として、経済効果評価のアンケートで研修により学んだこと
の部署内での伝達や活用について、部署や組織の業績向上に研修で学んだ事柄がどのような形で活
かされるかについても尋ね自立発展性(持続性)の評価とした。
①研修で学んだことを自社で活用した場合、研修後1年以内に何人の管理職、従業員に影響を与え
ることができるかとの問い(影響を与える人数を自由回答)に対しては、図37-1に示されているように、
技術研修では、研修生一人当たりが1から10人に影響を与えることができる、と回答した研修生が最も多
く71.3%(238名)を占める。技術研修全体では、平均11.9人に影響を与えることができるとの回答で
あった。
。
2.7 受入研修の経済効果評価
続いて図37-2の管理研修では、最も多かった回答(1から25名に影響を与えることができる)が全体
の37.4%を占めたが、大規模人数の回答もあり、平均人数は305.4人であった。技術研修と管理研修で
は参加者の職位に違いがあり、一般的に管理研修参加者の方が職位が高いため、影響を与えることが
できる平均人数も増加していると思われる。
図37-2 研修で学んだことにより影響を与えることができる人数(管理研修)
1〜25名
25〜50名
51〜100名
101〜200名
201〜300名
301〜400名
401〜500名
501〜1,000名
1,001〜2,000名
2,001名以上
国
名
1〜
25名
25〜
50名
51〜
100名
ARGENTINA
BANGLADESH
101〜
200名
2
3
1
2
CAMBODIA
1
EGYPT
1
ETHIOPIA
2
GHANA
3
1
1
INDIA
28
7
5
INDONESIA
14
10
12
401〜
500名
501〜
1000名
1001〜
2000名
2001名
以上
計
3
1
1
1
1
1
1
2
2
5
2
5
1
4
3
2
1
43
1
45
1
1
1
MACEDONIA
2
MYANMAR
1
NEPAL
2
PAKISTAN
4
PERU
1
1
1
1
7
1
4
3
1
1
7
1
1
4
1
6
5
1
1
5
12
3
3
9
3
4
THAILAND
4
2
1
TURKEY
2
1
計
1
1
SUDAN
VIET NAM
1
1
1
SRI LANKA
2
1
3
PHILIPPINES
SOUTH AFRICA
1
1
MEXICO
11
2
KENYA
合
301〜
400名
1
2
BRAZIL
JORDAN
201〜
300名
1
2
1
1
1
3
4
6
6
4
1
101
42
48
21
10
-56-
16
1
30
1
2
1
2
3
1
18
2
1
13
2
10
20
2
1
1
1
26
10
15
8
7
8
270
図38 研修で学んだことの活用効果(技術研修・管理研修)
低
環
境
負
荷
・ 省 エ ネ の 実 現
技術開発・製品開発設計の
現
地
化
⽣ 産 能 ⼒ の 拡 ⼤
⽣
産
性
の
向
上
製品・サービスの品質向上
コ
販
そ
ス
ト
路
削
開
の
減
拓
他
-57-
第2章 受入研修
②研修で学んだことを活用した場合、どのような効果が見込まれるか(複数選択回答)の問いに関し
て、図38に示した。複数回答を選択する形式であるため各棒グラフの先に示した%は全体の回答者数
に対し各項目を選択回答した人数の割合となる。
技術研修では最も多かった回答が「生産性の向上」23.7%、次いで「製品・サービスの品質向上」
18.9%に続いて「生産能力の拡大」15.8%であった。管理研修では最も多かった回答が「製品・サービ
スの品質向上」18.7%名、次いで「生産性の向上」18.6%となっており、ここまでは技術研修と同様であ
るが、管理研修では3つ目の項目に「コスト削減」16.1%があがっている(いずれも複数回答可)。
この違いは、技術研修と管理研修の参加者の職位の差異による結果の違いと推察できる。大部分が
マネジメントの職位にある管理研修の参加者は、技術研修の参加者よりも研修で学んだことをさらにダイ
レクトにコスト削減に活かすことができる環境にあるものと思われる。また、販路開拓の割合が高いことも
管理研修ならではの特徴であり、販路に日系企業が含まれる可能性もあり、本事業の事業趣旨である
日本企業の現地市場開拓に直接資する効果があると考えられる。
2.8
海外研修の評価
2.8 海外研修の評価
海外研修事業は、日本から海外に講師を派遣して現地で集団研修として実施している。研修分野と
して、現地企業で必要とされる基礎的な技術や広く利用・応用可能な技術について、 一度に多くの参
加者に伝達したいケース等に有効である。海外研修には、HIDAが自ら企画して実施する「協会企画
型海外研修」と公募により協力機関を募って企画・実施する「案件募集型海外研修」の2種類がある。
2012年度は、ベトナム、タイ、インドネシア、インド、フィリピン、マレーシアにおいて、10コースの「協
会企画型海外研修事業」を実施した。2013年度は、インドにおいて「協会企画型海外研修」1コースと、
ベトナム、インドネシア、フィリピンにおいて3コースの「案件募集型海外研修」を実施した。2014年度
は、ベトナム、インドネシア、カンボジア、フィリピンにおいて「案件募集型海外研修」を5コース実施し
た。各コースの概要については、付表8の通りである。
総合満足度評価
海外研修では、研修の満足度や、カリキュラムの実現度、研修技術の習得度等に関して、研修生によ
る評価を行っており、総合満足度の目標評点を7点満点中5点に設定している。2014年度実施の分析
対象は5コースとなったが、5コース全体での総合満足度評価は、6.22点であった。また目標達成率は、
96.3%であった。
図39-1
海外研修コース別総合満足度評点分布と平均(2014)
≪2014≫
インドネシア
インドネシア
ベトナム
カンボジア
フィリピン
N=10
N=22
N=10
N=10
N=30
-58-
図39-2
海外研修コース別総合満足度評点分布と平均(2013)
≪2013≫
インド
インドネシア
ベトナム
N=34
N=42
N=23
N=21
図39-3
第2章 受入研修
フィリピン
海外研修コース別総合満足度評点分布と平均(2012)
≪2012≫
インドネシア
インドネシア
N=40
N=19 N=29 N=17 N=24 N=32 N=34 N=42 N=23 N=21
インド
インド
マレーシア
フィリピン
タイ
タイ
ベトナム
ベトナム
また、過去2年間(2012、2013年度)に実施したコースについて見てみると、コース全体での
総合満足度評価は、2012年度が5.76点、2013年度が5.87点といずれも目標評点の5点を超えて
いる。過去3年間のコース全体での総合満足度は概ね高い評価となっているが、5点を下回る
4.83点のコースが2012年度に1コースあった。これは、研修テーマが「水インフラ技術・運営
管理 -産業排水の公害防止管理手法と運用-」のコースであり、参加者からはもっと具体的
な事例や演習がほしかったとするコメントが挙げられた。短期間の集合研修の形態をとる海外
研修においては、専門性の高い分野については参加者の異なるニーズに応えることが難しい面
もあると言える。しかし、汎用性の高い技術や管理手法の分野については、講義・演習・実技
を組み合わせて実施し、参加間での意見交換を行う集合研修を行うメリットは大きく、参加者
の総合満足度評価も高くなっている。
-59-
2.8
海外研修の評価
さらに図40では、研修の目的達成度、効率性、妥当性について評価を行っており、2014年度
実施の5コースの平均評点と分布を表した。いずれの項目も5点を越える評点結果となった。特
に、研修ニーズと研修内容の合致度合に対する評点が6.12点ともっとも高く、次いで参加費か
らみた場合の研修成果に対する満足度(参加費にみあう研修成果)は6.08点であった。海外研
修実施に対する効率性と妥当性において参加者の高い満足度が読み取れる。
図40 海外研修5コース平均目的達成度、効率性、妥当性評点分布と平均
2012平均
2013平均
2014平均
5.62
5.76
5.85
実 カ 計
リ 画
キ さ
現
れ
ラ た
ム 研
度 の 修
⽬的達成度
5.57
5.70
6.02
習 研
修
得 技
術
度 の
5.70
5.84
6.08
5.52
5.55
6.03
適 研
研 参
加
修
修 費
5.68
5.67
6.12
間
あ
度 の
果 う
効率性
N=281
2013年
N=120
2014年
N=82
合 研 研
致
切 期
に
成 み
2012年
度
修 修
ニ
内
容 ズ
合 の と
妥当性
また、過去2年間(2012、2013年度)に実施したコースについても、研修の目的達成度、効
率性、妥当性のいずれの項目も5点を越える評点結果であった。研修ニーズと研修内容の合致度
合および計画された研修カリキュラムの実現度についても参加者は高く評価しており、実施し
たコースが現地企業で必要とされる技術の普及に役立っていることを示している。
2012年度から2014年度の3年間にかけて、いずれの評価項目についても参加者からの評価は
高まっており、海外研修コース実施は適切な水準で実施された。
-60-
研修事業
付表1
実施
センター
2014年度 ⼀般研修実施コース(分析対象)
コース
種類
コース名
東 京
関 ⻄
合
14
-
T
-
001
(A)9D
14
-
T
-
002
14
-
T
-
14
-
T
14
-
14
⼈数
期
間
6
平成26年04⽉16⽇
-
平成26年04⽉24⽇
J6W
12
平成26年04⽉23⽇
-
平成26年06⽉10⽇
003
J6W
12
平成26年04⽉23⽇
-
平成26年06⽉10⽇
-
004
J6W
18
平成26年04⽉23⽇
-
平成26年06⽉10⽇
T
-
005
J6W
12
平成26年05⽉14⽇
-
平成26年06⽉24⽇
-
T
-
006
J6W
25
平成26年05⽉14⽇
-
平成26年06⽉24⽇
14
-
T
-
007
J13W
12
平成26年06⽉18⽇
-
平成26年09⽉16⽇
14
-
T
-
008
J6W
7
平成26年06⽉18⽇
-
平成26年07⽉29⽇
14
-
T
-
009
J6W
16
平成26年08⽉06⽇
-
平成26年09⽉16⽇
14
-
T
-
010
(A)9D
9
平成26年08⽉27⽇
平成26年09⽉04⽇
14
-
T
-
011
(A)9D
9
平成26年09⽉17⽇
平成26年09⽉25⽇
14
-
T
-
012
J13W
5
平成26年09⽉24⽇
平成26年12⽉23⽇
14
-
T
-
013
J6W
9
平成26年09⽉24⽇
平成26年11⽉04⽇
14
-
T
-
014
(A)9D
9
平成26年10⽉15⽇
平成26年10⽉23⽇
14
-
T
-
015
J6W
1
平成26年11⽉12⽇
平成26年12⽉23⽇
14
-
T
-
016
(A)9D
7
平成26年11⽉12⽇
平成26年11⽉20⽇
14
-
K
-
001
J13W
6
平成26年04⽉16⽇
-
平成26年07⽉22⽇
14
-
K
-
002
(A)9D
26
平成26年05⽉14⽇
-
平成26年05⽉22⽇
14
-
K
-
003
J13W
21
平成26年05⽉21⽇
-
平成26年08⽉19⽇
14
-
K
-
004
J13W
29
平成26年05⽉21⽇
-
平成26年08⽉19⽇
14
-
K
-
005
J6W
26
平成26年05⽉21⽇
-
平成26年07⽉01⽇
14
-
K
-
006
J6W
27
平成26年05⽉21⽇
-
平成26年07⽉01⽇
14
-
K
-
007
J6W
4
平成26年06⽉11⽇
-
平成26年07⽉22⽇
14
-
K
-
008
(A)9D
14
平成26年06⽉11⽇
-
平成26年06⽉19⽇
14
-
K
-
009
J6W
9
平成26年07⽉09⽇
-
平成26年08⽉19⽇
14
-
K
-
010
(A)9D
4
平成26年07⽉16⽇
-
平成26年07⽉24⽇
14
-
K
-
011
J13W
5
平成26年07⽉30⽇
-
平成26年10⽉28⽇
14
-
K
-
012
J6W
8
平成26年07⽉30⽇
-
平成26年09⽉09⽇
14
-
K
-
013
(A)9D
1
平成26年08⽉20⽇
-
平成26年08⽉28⽇
14
-
K
-
014
J13W
8
平成26年08⽉27⽇
-
平成26年11⽉25⽇
14
-
K
-
015
J6W
17
平成26年08⽉27⽇
-
平成26年10⽉07⽇
14
-
K
-
017
J6W
15
平成26年09⽉17⽇
-
平成26年10⽉28⽇
14
-
K
-
018
J6W
8
平成26年10⽉15⽇
-
平成26年11⽉25⽇
14
-
K
-
019
(A)9D
14
平成26年10⽉15⽇
-
平成26年10⽉23⽇
14
-
K
-
020
(A)9D
8
平成26年10⽉15⽇
-
平成26年10⽉23⽇
14
-
K
-
022
(A)9D
6
平成26年11⽉12⽇
-
平成26年11⽉20⽇
14
-
K
-
024
(A)9D
3
平成26年12⽉10⽇
-
平成26年12⽉18⽇
計
37
コース
※ 2014年度:集計期間は第三四半期までに研修を修了したコース
※ 14-K-016は研修コース移動のため⽋番
-62-
428名
付 表
付表2
2012-2014年度 ⼀般研修 コース数 ・ 研修⽣数(分析対象)
コース種別
J13W
J6W
9D・A9D
4D
計
年度
コース数
⼈数
コース数
⼈数
コース数
⼈数
コース数
⼈数
コース数
⼈数
8
35
16
2
61
151
678
282
14
1,125
5
19
12
-
36
97
469
177
-
743
7
17
13
-
37
86
226
116
-
428
20
72
41
2
135
334
1,373
575
14
2,296
2012年度
2013年度
2014年度
合計
※ 2014年度:集計期間は第三四半期までに研修を修了したコース数および研修⽣数
付表3
2012-2014年度 ⼀般研修 研修センター別コース数 ・ 研修⽣数(分析対象)
研修センター
TKC(東京)
KKC(関⻄)
CKC(中部)
YKC(横浜)
計
年度
コース数
⼈数
コース数
⼈数
コース数
⼈数
コース数
⼈数
コース数
⼈数
6
18
19
18
61
104
313
311
397
1,125
9
12
15
-
36
190
267
286
-
743
16
21
-
-
37
169
259
-
-
428
31
51
34
18
134
463
839
597
397
2,296
2012年度
2013年度
2014年度
合計
※ 2014年度:集計期間は第三四半期までに研修を修了したコース数および研修⽣数
-63-
付表4
年
度
国
2012-2014年度 実地研修(分析対象)
数
業
種
受⼊企業数
研修⽣数
2012年度
26
25分類
241
1,130
2013年度
23
22分類
177
754
2014年度
25
22分類
139
433
※ 2014年度:集計期間は第三四半期までに研修を修了したコース数および研修⽣数
※ 研修⽣数はコース不参加者含む
付表5
実施
センター
対象国
2014年度 管理研修実施コース(分析対象)
コース名
コース
種類
⼈数
期
間
共通課題対応型
企業経営研修コース
EPCM
2W
23
平成26年07⽉07⽇ - 平成26年07⽉18⽇
共通課題対応型
品質経営研修コース
PQM
2W
24
平成26年09⽉17⽇ - 平成26年10⽉01⽇
共通課題対応型
デザインマネジメント研修コース
PDM
2W
17
平成26年11⽉12⽇ - 平成26年11⽉25⽇
南アフリカ
南アフリカ
輸送産業経営管理研修コース
SATI
10D
18
平成26年07⽉29⽇ - 平成26年08⽉07⽇
インド
インド
⼥性ビジネスリーダー研修コース
INWL
1W
17
平成26年11⽉17⽇ - 平成26年11⽉21⽇
スリランカ
リーダーシップ研修コース
LKSL
2W
23
平成26年11⽉26⽇ - 平成26年12⽉09⽇
共通課題対応型
⼈と組織の問題解決研修コース
SHOP
2W
24
平成26年08⽉18⽇ - 平成26年08⽉29⽇
共通課題対応型
品質管理研修コース
QCTC
2W
23
平成26年08⽉28⽇ - 平成26年09⽉12⽇
インドネシア
インドネシア
企業経営研修コース
IDCM
2W
23
平成26年09⽉23⽇ - 平成26年10⽉06⽇
ベトナム
ベトナム
企業経営研修コース
VNCM
2W
22
平成26年10⽉09⽇ - 平成26年10⽉22⽇
インドネシア
リーダーシップ養成研修コース
IDLD
2W
19
平成26年10⽉22⽇ - 平成26年11⽉04⽇
トルコ
トルコ
⽣産管理研修コース
TRPM
2W
22
平成26年11⽉05⽇ - 平成26年11⽉18⽇
インド
インド
中⼩企業ビジネスプラン研修コース
INBP
2W
18
平成26年12⽉08⽇ - 平成26年12⽉19⽇
アフリカ
アフリカ
リーダーシップ研修コース
AFLD
2W
25
平成26年12⽉09⽇ - 平成26年12⽉22⽇
東 京
スリランカ
関 ⻄
インドネシア
合
計
14
※ 2014年度:集計期間は第三四半期までに研修を修了したコース数および研修⽣数
-64-
コース
298 名
付 表
付表6
2012-2014年度 管理研修 コース数 ・ 研修⽣数(分析対象)
コース種別
3W
2W
10D(11D)
9D(8D)
1W
計
年度
コース数
⼈数
コース数
⼈数
コース数
⼈数
コース数
⼈数
コース数
⼈数
コース数
⼈数
3
21
4
1
1
30
68
436
77
17
18
616
-
26
5
1
-
32
-
577
103
20
-
700
-
12
1
1
14
-
263
18
17
298
3
59
10
2
2
76
68
1,276
198
37
35
1,614
2012年度
2013年度
2014年度
合計
※ 2014年度:集計期間は第三四半期までに研修を修了したコース数および研修⽣数
※ 2012年度:延⼈数(2名重複研修⽣)
付表7
2012-2014年度 管理研修 研修センター別コース数 ・ 研修⽣数(分析対象)
研修センター
TKC(東京)
KKC(関⻄)
CKC(中部)
YKC(横浜)
計
年度
コース数
⼈数
コース数
⼈数
コース数
⼈数
コース数
⼈数
コース数
⼈数
10
9
7
4
30
193
197
151
75
616
9
13
10
-
32
187
295
218
-
700
6
8
-
-
14
122
176
-
-
298
25
30
17
4
76
502
668
369
75
1,614
2012年度
2013年度
2014年度
合計
※ 2014年度:集計期間は第三四半期までに研修を修了したコース数および研修⽣数
※ 2012年度:延⼈数(2名重複研修⽣)
-65-
付表8
海外研修 コース⼀覧(2012年-2014年)(分析対象)
2012年
No,
実施国
都市
研修タイトル
実施時期
1
ベトナム
ホーチミン
マテリアルフローコスト会計⼊⾨
2012年09⽉28⽇
- 2012年09⽉29⽇
23
名
2
ベトナム
ホーチミン
⽔インフラ技術・運営管理
-産業排⽔の公害防⽌管理⼿法と運⽤ー
2012年11⽉28⽇
- 2012年11⽉30⽇
21
名
3
タイ
バンコク
IEの実践的活⽤
2012年12⽉11⽇
- 2012年12⽉13⽇
34
名
4
タイ
チェンマイ
グローバル市場に向けた創造的
デザインコンセプト
2013年01⽉15⽇
- 2013年01⽉17⽇
42
名
5
インドネシア
ジャカルタ
⽔道事業経営セミナー(上⽔道)
-⽇本の⽔ビジネス企業最新技術
導⼊事例の紹介-
2013年01⽉16⽇
- 2013年01⽉17⽇
19
名
6
インド
アウランガバード
Next Level of Genba Kaizen
2013年01⽉29⽇
- 2013年01⽉30⽇
29
名
7
フィリピン
マニラ
プロジェクトマネジメント(基礎・中級)
2013年01⽉30⽇
- 2013年02⽉01⽇
32
名
8
インド
コルカタ
グリーン鋳造セミナー、環境、省エネ、
省資源、職場環境に配慮した鋳造
-⽇本の最新技術の紹介-
2013年02⽉26⽇
- 2013年02⽉27⽇
17
名
9
マレーシア
クアラルンプール
サプライチェーンマネジメントにおける
グリーン調達
2013年03⽉04⽇
- 2013年03⽉05⽇
24
名
10
インドネシア
ブカシ
現場改善ステップアップセミナー
-5Sから作業改善、ラインバランス改善へ-
2013年03⽉05⽇
- 2013年03⽉06⽇
40
名
281
名
計
10コース
⼈数
2013年
No,
実施国
都市
1
インドネシア
ジャカルタ
2
ベトナム
ホーチミンシティ
3
フィリピン
マニラ
4
インド
グルガオン
研修タイトル
実施時期
⼈数
マテリアルフローコスト会計⼊⾨
2013年09⽉28⽇
- 2013年09⽉29⽇
23
名
⽔インフラ技術・運営管理
-産業排⽔の公害防⽌管理⼿法と運⽤ー
2013年11⽉28⽇
- 2013年11⽉30⽇
21
名
IEの実践的活⽤
2013年12⽉11⽇
- 2013年12⽉13⽇
34
名
グローバル市場に向けた創造的デザインコンセプト
2014年01⽉15⽇
- 2014年01⽉17⽇
42
名
120
名
計
4コース
2014年
No,
実施国
都市
研修タイトル
実施時期
1
インドネシア
ジャカルタ
プレス技術・⾦型基礎研修
2014年09⽉08⽇
- 2014年09⽉12⽇
22
名
2
ベトナム
ホーチミン
企業理念に関する意識改⾰研修
2014年09⽉30⽇
- 2014年10⽉02⽇
10
名
3
カンボジア
プノンペン
企業理念に関する意識改⾰研修
2014年10⽉06⽇
- 2014年10⽉08⽇
10
名
4
インドネシア
ジャカルタ
EMC基礎研修(EMC規格、設計、対策、
測定、認証)
2014年11⽉05⽇
- 2014年11⽉06⽇
10
名
5
フィリピン
マニラ
電⼒ケーブル⼯事技術とケーブル接続技術
2014年12⽉08⽇
- 2014年12⽉10⽇
30
名
82
名
計
5コース
-66-
⼈数
専門家派遣事業
3.1
3.2
3.3
3.4
3.5
3.6
受入企業に対する指導評価
付加指導先に対する指導評価
HIDA 総合評価
専門家派遣の経済効果評価
制度利用企業からの要望、コメント
本事業 3 年間における特徴、傾向
付表
3.2
第3章
付加指導先に対する指導評価
専門家派遣事業
本章では、専門家派遣事業の評価について述べる。
3.1 受入企業に対する指導評価
※2012 年 4 月 1 日から 2015 年 3 月 31 日までに専門家が帰国した案件及び帰国する予定
の案件は計 259 件(うち 30 件は 2015 年 1~3 月に帰国(予定))である。
※HIDA 担当者評価を除いては帰国者ベースであり、N 数は有効回答数を示す。
※専門家が 2014 年 12 月以降に帰国する件については、全評価項目に対して回答を得られて
いない案件がある。
DAC の評価 5 項目、すなわち妥当性、有効性、波及性(インパクト)、効率性、自立発展性のうち、本事業で
特に重要なのは、有効性、波及性、自立発展性であると思われる。本章では、専門家が指導を行った受入企業
及び付加指導先に対する指導評価について、専門家、協力(派遣元)企業、受入(指導先)企業から提出された
報告書をもとに指導目標達成度(有効性)及び波及効果、並びに自立発展性の観点から 5 段階評価による事後
評価結果をまとめた。
提出されている報告書は以下の5点である。
① 指導導報告書(専門家が指導終了後に提出)
② 受入(指導先)企業報告書現地側企業が指導終了後に提出)
③ 協力(派遣元)企業報告書(日本側制度申請企業が指導終了後に提出)
④ 月別指導報告書(専門家個人、週単位での指導活動状況を毎月報告)
⑤ 付加指導報告書
(1)指導目標達成度と波及効果
①技術向上目標の達成度
指導目標のうち技術向上目標の達成度については、上位 2 評価の比率が専門家で 69%、受入企業では 71%と
なった。年度ごとの達成度評価は次の通りであった。
5
4
3
2
1
計
技術向上目標の達成度
(専門家評価 N=231)
2012年度 2013年度 2014年度
24件
13件
9件
53件
37件
24件
33件
18件
8件
2件
5件
2件
3件
0件
0件
115件
73件
43件
計
46件
114件
59件
9件
3件
231件
-68-
5
4
3
2
1
計
技術向上目標の達成度
(受入企業評価 N=231)
2012年度 2013年度 2014年度
28件
10件
10件
59件
39件
18件
25件
18件
12件
0件
6件
3件
3件
0件
0件
115件
73件
43件
計
48件
116件
55件
9件
3件
231件
技術向上目標の達成度の専門家・受入企業の評価ともに「30%未満」、「30%~60%」の下位評価があった。
技術向上目標の達成度
(専門家評価 N=231)
技術向上目標の達成度
(受入企業評価 N=231)
3件, 1%
9件, 4%
9件, 4%
3件, 1%
100%以上達成
46件, 20%
100%以上達成
80~100%達成
59件, 26%
48件, 21%
60~80%達成
114件, 49%
80~100%達成
55件, 24%
60~80%達成
30~60%達成
116件, 50%
30%未満
30~60%達成
30%未満
②人材育成目標の達成度
指導目標のうち人材育成目標の達成度については、専門家による上位 2 評価の比率が 64%、受入企業も 64%で
あった。
人材育成目標の達成度
(専門家評価 N=231)
16件, 7%
人材育成目標の達成度
(受入企業評価 N=231)
5件, 2%
8件, 3%
3件, 1%
100%以上達成
41件, 18%
63件, 27%
80~100%達成
73件, 32%
60~80%達成
106件, 46%
100%以上達成
43件, 19%
80~100%達成
60~80%達成
104件, 45%
30~60%達成
30~60%達成
30%未満
30%未満
③協力企業及び HIDA からみた指導目標達成度
協力企業からみた指導目標の達成度については「80~100%達成」までで 90%を超えている。HIDA 担当者か
らみた指導目標の達成度についても「60~80%達成」まで含めるとほぼすべての案件を包含する。
指導目標達成度(HIDA 評価)と平均派遣日数の関係
目標達成度
2012年度
平均派遣日数
件数
14件
211 日
2013年度
平均派遣日数
件数
15件
153 日
2014年度
平均派遣日数
件数
6件
93 日
計
平均派遣日数
件数
35件
166 日
5
100%以上達成
4
80~100%達成
65件
210 日
38件
129 日
29件
155 日
132件
175 日
3
60~80%達成
26件
209 日
17件
123 日
7件
143 日
50件
171 日
2
30~60%達成
8件
101 日
3件
100 日
0件
11件
101 日
1
30%未満
2件
27 日
0件
115件
199 日
73件
計
-69-
132 日
1件
30 日
3件
28 日
43件
142 日
231件
167 日
3.2
付加指導先に対する指導評価
指導目標達成度
(HIDA評価 N=231)
指導目標達成度
(協力企業評価 N=229)
15件, 7%
7件, 3%
11件, 5%
17件, 7%
3件, 1%
35件,
15%
100%以上達成
80~100%達成
100%以上達成
80~100%達成
50件, 22%
60~80%達成
60~80%達成
69件, 30%
121件, 53%
132件, 57%
30~60%達成
30~60%達成
30%未満
30%未満
④専門家指導の経営上の効果についての受入企業の評価
専門家の指導による指導の成果、経営上の課題解決効果及び受入企業従業員の変化等について、具体的な
テーマの選択方式で尋ねたところ、「技術の向上」、「品質の向上」「従業員の改善意識の向上、「生産性向上」、
「マネージャー・リーダークラスの人材育成」、という回答が多かった。これは従来と同じような回答結果となった。
受入企業にとっての専門家の指導による指導の成果等
(N=231)
技術の向上
品質の向上
従業員の改善意識の向上
生産性の向上
マネージャー/リーダーの人材育成
ワーカーの人材育成
従業員の協同の向上
顧客満足度の向上
製品/サービスの競争力向上
コスト削減
従業員の勤労意欲の向上
生産時間短縮
従業員間コミュニケーションの改善
従業員のコスト意識の向上
日本式経営への理解が深まった
稼働率の向上
売上が増えた
設備停止時間の短縮
取引先が増えた
従業員の定着率の改善
現地調達率の向上
その他
輸出が増えた
183
170
161
160
157
132
109
107
103
103
88
88
87
80
79
67
46
41
36
31
29
18
17
0
20
40
60
80
100
120
140
160
180
200
⑤協力企業における波及効果
「協力企業にとって専門家派遣による経営上の効果が見込まれるか」という問いに対して、一応見込まれると回
答している企業を含めると、9 割以上の協力企業が「効果が見込まれる」と評価している。
-70-
専門家派遣による経営上の効果
(協力企業評価 N=229)
6件, 3%
0件, 0%
28件,
12%
大いに見込まれる
かなり見込まれる
65件, 28%
一応見込まれる
あまり見込めない
130件, 57%
見込めない
具体的な効果としては、「品質向上」、「顧客満足度向上」、「生産コスト低減」、「受入企業との関係強化」などが
上位に並んだ。
協力企業における経営上の効果
(協力企業評価 N=229)
品質向上
161
顧客満足度の向上
101
生産コスト低減
100
受入企業との関係強化
93
受入企業との取引増
60
(連結)売上増
59
技術開発力向上
58
協力企業等日本への輸入増
52
技術移転のスピードアップ
51
(受入企業に対する)管理コスト低減
49
事業の高度化に貢献
34
営業基盤の強化
31
協力企業等日本からの輸出増
29
その他
10
0
20
40
60
80
100
120
140
160
180
以上のような受入企業や協力企業の経営へのインパクトを通じて日本への裨益が期待できるかどうか、HIDA 担
当者が協力企業へのヒアリング等で情報を補いながら評価した結果をみると、ほぼすべての案件で「期待できる」
という評価になった。
-71-
3.2
付加指導先に対する指導評価
日本への裨益に対する期待
(HIDA評価 N=231)
2件, 1%
3件, 1%
28件,
12%
大いに見込まれる
かなり見込まれる
69件, 30%
一応見込まれる
129件, 56%
あまり見込めない
見込めない
(2)自立発展性
①自立発展性総合評価
指導を受けた受入企業が自立発展できるかどうかは、本事業において指導目標の達成度と並んで重要な評価
項目である。まず HIDA 担当者による自立発展性の総合評価の結果をみると、すべての案件で「評価できる」と
なっており、上位 2 評価だけでもほぼ 7 割を占めるなど、高く評価されている。
自立発展性総合評価
(HIDA評価 N=231)
8件, 4%
1件, 0%
19件,
8%
大いに見込まれる
かなり見込まれる
62件, 27%
一応見込まれる
141件, 61%
あまり見込めない
見込めない
②指導内容を定着させるために取った対策と受入企業の自立発展性についての専門家の評価
指導に当たった専門家は、指導内容を受入企業が自立発展させるために採った対策として、「指導の効果を受
継ぐリーダーを養成」、「マニュアル等の文書作成・整備」、「社内の意識改革・体制整備」の順に挙げている。こ
の結果は、例年と同様である。
-72-
指導内容を定着させるためにとった対策
(専門家評価 N=231)
指導の効果を受継ぐリーダーを養成
173
マニュアル等の文書作成・整備
157
社内の意識改革・体制整備
104
水平展開など指導成果を活用できる機
会を準備
46
優秀な従業員の待遇改善を経営者へ
進言
46
その他
12
0
50
100
150
200
また、こうした対策を受け、受入企業が専門家による指導の内容を自立発展させていく可能性について専門家
自身は、ほぼすべての案件で「可能性がある」と評価している。
受入企業は指導内容を定着させ、さらに発展させていく可能性があるか
(専門家評価N=231)
2件, 1%
0件, 0%
十分にある
47件, 20%
87件, 38%
かなりある
一応ある
95件, 41%
あまりない
ない
③受入企業が講ずる指導効果持続のための対策について
受入企業が自立発展を担保するために、専門家による指導の効果をどのような方策で持続させようとしているか
についての受入企業に対する質問では、「被指導人材中心に指導効果を定着、発展」、「専門家が残したマニ
ュアル等文書を活用」、「社内の意識改革・体制整備」、「優秀な従業員に対し、待遇改善や昇進の機会を与え
る」などとなっており、やはり例年同様の回答となっている。
-73-
3.2
付加指導先に対する指導評価
受入企業として指導効果が持続するような対策を講じるか
(受入企業評価 N=231)
指導を受けた人材を中心に指導効果の定着と発展を図る
196件
専門家が残したマニュアル等文書を活用する
141件
社内研修、改善活動等に取り組む
95件
社内の意識改革や体制整備を行う
95件
水平展開で指導成果の活用機会を作る
82件
優秀な従業員に対し、待遇改善や昇進の機会を与える
61件
その他
対策は講じない
6件
0件
0件
50件
100件
150件
200件
250件
④受入企業に対する協力企業の支援方針と自立発展性評価
受入企業における指導内容の自立発展等に対する協力企業の支援姿勢を尋ねてみたところ、全案件で「強化
する」となり、上位 2 評価だけで 86%に達した。
協力企業による受入企業の自立発展
に対する継続的支援策
(HIDA評価 N=231)
受入企業に対する今後の支援方針
(協力企業評価 N=229)
1件, 0%
2件, 1%
10件, 4% 0件, 0%
29件, 13%
30件,
13%
大いに強化する
かなり強化する
105件, 46%
58件, 25%
かなり評価できる
一応評価できる
一応強化する
あまり強化しない
92件, 40%
大いに評価できる
132件, 58%
あまり評価できない
強化しない
ほとんど評価できな
い
こうした協力企業の姿勢の下で、受入企業に指導成果が定着すると思うかを協力企業に尋ねたところ、「十分に
ある」、「かなりある」、「一応ある」で 9 割以上を占めた。
受入企業における指導成果の定着の見通し
(協力企業評価 N=229)
12件, 5%
1件, 0%
18件,
8%
大いに定着する
かなり定着する
一応定着する
93件, 41%
105件, 46%
あまり定着しない
ほとんど定着しない
-74-
3.2 付加指導先に対する指導評価
2012 年 4 月 1 日から 2015 年 3 月 31 日までに専門家が帰国した案件及び帰国する予
定の案件は計 259 件(うち 30 件は 2015 年 1~3 月に帰国(予定))である。このうち、付
加指導が要件となった案件は計 169 件で、計 210 社/機関、延べ 959 人に対する付加指
導が実施された。
(1)指導目標達成度と波及効果
<受入企業と付加指導先の関係>
受入企業と付加指導先の関係では、受入企業の「外注先」、原料・資材等の「購買先」、「人的関係」などとなっ
ている。付加指導は受入企業に対する指導と異なり、指導先の強いニーズに基づいて実施されるとは限らない
ため、付加指導先ニーズを的確に把握し指導目標を設定することが重要になるが、HIDA 担当者はほぼすべて
の付加指導について、付加指導先ニーズに「合致していた」と評価している。
受入企業と付加指導先の関係 (N=231)
1派遣案件あたり3件までの集計
外注先
67
購買先
37
人的関係
24
その他
19
販売先
19
採用先
13
資本関係
7
0
10
20
30
40
50
60
70
80
付加指導は付加指導先のニーズに合致していたか
(HIDA評価 N=160)
4件, 3%
2件, 1%
15件,
9%
大いに合致していた
かなり合致していた
47件, 29%
一応合致していた
あまり合致していない
92件, 58%
まったく合致していない
①技術向上目標の達成度
付加指導における技術向上目標の達成度については、達成度 30%未満とされた案件が 3 件あった。
-75-
3.2
付加指導先に対する指導評価
付加指導技術向上目標の達成度
(専門家評価 N=139)
9件, 7%
3件, 2%
100%以上達成
29件, 21%
80~100%達成
28件, 20%
60~80%達成
30~60%達成
70件, 50%
30%未満
②人材育成目標の達成度
人材育成目標の達成度については、過半数以上の専門家が指導目標の「60%以上」が達成されたと評価してい
る。
付加人材育成目標の達成度
(専門家評価 N=157)
13件, 8%
3件, 2%
100%以上達成
25件, 16%
80~100%達成
38件, 24%
60~80%達成
30~60%達成
78件, 50%
30%未満
③付加指導の効果
付加指導先は受入企業と主として商取引等の関係を持っているが、受入企業に付加指導の効果を尋ねたとこ
ろ、上位 2 評価は 60%に留まった。
付加指導の効果
(受入企業評価 N=177)
11件, 6%
3件, 2%
32件, 18%
非常に効果的だった
かなり効果出来だっ
た
一応効果的だった
58件, 33%
73件, 41%
あまり効果的でな
かった
まったく効果的でな
かった
-76-
付加指導先にとって期待できる経営向上効果
(専門家評価 N=231)
顧客満足度の向上
107
製品/サービスの競争力向上
96
日本式経営への理解が深まった
65
コスト低減
65
従業員の勤労意欲の向上
61
売上の増加
59
取引先の増加
43
就職への準備ができた
23
現地調達率の向上
22
従業員の定着率の改善
18
その他
13
輸出の増加
11
就職先が決まった
5
0
20
40
60
80
100
120
④付加指導による波及効果
付加指導は、日系資本比率 50%未満の現地ローカル企業への指導を義務付けた制度であるが、受入企業、さら
に協力企業にメリットが及ぶことが日本にとっては望ましい。そうした観点から、付加指導が受入企業に及ぼす
相乗効果の有無を専門家に尋ねてみているが、相乗効果「有り」との回答が 84%に達しており、専門家は受入企
業及び協力企業双方にとって付加指導のメリットがあったとみている。
付加指導先に対する指導の成果が受
入企業に及ぼす相乗効果はあったか
(専門家評価 N=205)
32件,
16%
有り
無し
173件, 84%
(2)自立発展性
付加指導先が指導内容を定着させ自立発展させる可能性については、専門家は 97%の派遣案件で「ある」と評
価している。
付加指導先は指導内容を定着させ、さらに発展させる可能性があるか
(専門家評価 N=203)
12件, 6%
4件, 2%
十分にある
41件, 20%
かなりある
55件, 27%
一応ある
あまりない
91件, 45%
ない
-77-
3.3
HIDA 総合評価
3.3 HIDA 総合評価
(1)総合評価
2012、13、14年度専門家派遣事業について、HIDA による総合評価は、「大いに評価できる」、「かなり評価でき
る」の上位 2 評価の比率はそれぞれ 12%、60%であった。
昨今、予算削減に伴い一案件当たりの平均派遣期間が短くなってきており、派遣期間が短くなると目標達成度
に影響する場合も散見される。上記のように派遣期間を一律削減せざるをえなかった影響が強いと思われる。
HIDA総合評価
(HIDA評価 N=230 平均評点3.75)
10件, 4%
2件, 1%
27件,
12%
大いに評価できる
かなり評価できる
52件, 23%
評価できる
あまり評価できない
139件, 60%
まったく評価できない
(2)専門家(指導)の属性と HIDA 総合評価
専門家の海外での指導経験及び HIDA 制度による派遣指導経験と HIDA 総合評価との関係については、特に
相関は見られなかった。
専門家の海外指導経験別にみたHIDA総合評価
100%
80%
1件
6件
1件
3件
1件
20件
11件
66件
34件
21件
60%
40%
まったく評価できない
39件
評価できる
かなり評価できる
20%
0%
平均評点
あまり評価できない
7件
14件
6件
初の海外指導
HIDAでは初
HIDA2回以上
3.61
3.86
大いに評価できる
3.87
専門家の年代と HIDA 総合評価との関係は、例年、年代が上がるに伴って HIDA 総合評価も上昇する傾向があ
る程度見受けられるが、明確な傾向は確認できなかった。50 代の評価に「あまり評価できない」という案件があり、
これはミャンマーの案件であるが、専門家の指導経験年数よりも派遣期間と指導先受入企業の要因の方が大き
くこのような結果となった。
-78-
専門家の海外指導経験別にみたHIDA総合評価
100%
0件
2件
0件
2件
15件
0件
0件
1件
2件
1件
10件
13件
80%
0件
4件
14件
60%
40%
まったく評価できない
5件
37件
あまり評価できない
44件
27件
26件
評価できる
かなり評価できる
20%
大いに評価できる
1件
10件
20代
3.63
30代
3.86
0%
平均評点
5件
3件
40代
3.79
50代
3.73
8件
60代以上
3.73
次に、専門家の業務歴と HDIA 総合評価との関係をみてみると、例年、30 年以上 40 年未満にピークあるが、こ
のような傾向は確認できなかった。
専門家の業務歴別にみたHIDA総合評価
100%
80%
0件
2件
1件
2件
1件
1件
10件
11件
8件
0件
1件
0件
15件
8件
4件
60%
まったく評価できない
41件
40%
あまり評価できない
19件
38件
19件
22件
評価できる
かなり評価できる
20%
大いに評価できる
11件
0%
平均評点
4件
2件
4件
10年未満
3.68
10年以上20年未満 20年以上30年未満 30年以上40年未満
3.91
3.78
3.69
6件
40年以上
3.73
<参考>
派遣国の産業技術と産業人材のレベルアップに日本からのどんな協力が望まれるかを受入企業に尋ねたところ、
「現地企業への専門家派遣」と「現地スタッフの日本での研修」が、ほぼ同数の回答で多数を占める結果になっ
た。現地人材の育成にとって、専門家派遣と受入研修を有機的に活用することが期待されるところと言える。
-79-
3.3
HIDA 総合評価
派遣国産業の技術・人材のレベルアップに望まれる協力
(受入企業評価 N=231)
現地民間企業への専門家派遣
191
現地スタッフの日本での研修
187
技能研修・教育機関の設立
75
認証、標準、規格等の経済制度の導入支援
49
大学/学校への講師派遣
19
政府機関/研究所等への資金援助
13
政府機関/研究所等への専門家派遣
12
政府機関/研究所等への機器・設備等の供与
7
その他
4
0
50
100
150
200
250
3.4 専門家派遣の経済効果評価
(1)経済効果評価の手法
2012 年度から 2014 年度の専門家派遣事業の経済効果を把握するため、これまでに帰国した案件(2015 年 1
月末日まで)につき、派遣終了後に協力企業に対してアンケートを実施した。アンケートの主旨は、協力企業が
負担する専門家の派遣費用と、専門家の指導によってもたらされる受入企業の収益改善効果の対比をみるもの
である。アンケートの設問は以下の二つである。
設問 1 HIDA による補助がなされずに今回の専門家派遣を行った場合、派遣期間中に協力企業が負担したで
あろう費用の合計額はいくらか。 これには以下の三つの経費を含むものとする。
①直接の派遣経費(専門家の日当、宿泊費、航空運賃等)
②直接・間接人件費(専門家の直接人件費<給与等>及び総務・人事・経理等の間接部門の費用のうち専門
家に係わる分)
③機会費用(専門家が派遣されずに協力企業で勤務していた場合に得られたであろう利益を協力企業が失
うために発生する間接的な負担)
設問 2 専門家の指導の効果が持続すると見込まれる期間に期待できる受入企業の経済効果(利益)は、上記
設問 1 の費用のおよそ何倍か。 回答は以下の選択肢からの選択による。
□0.5 倍未満
□0.5~1.0 倍未満
□1.5~2.0 倍未満
□1.0~1.5 倍未満
□2.0~2.5 倍未満
□2.5 倍以上
企業が全額自費で専門家を派遣した場合、受入企業の経済効果が派遣費用を回収できるほどの大きさにな
るとは限らず赤字になるケースも想定されるが、そのような場合に政府が派遣費用を補助する本制度を利用する
意義があると考えられる。
-80-
(2) アンケートの回収状況
本事業期間の案件は 268 件あるが、HIDA が直接派遣した 9 件及び、2015 年 2 月 1 日現在で派遣中の 26
件を除き、帰国案件 233 件をアンケート調査の対象とした。
(3) アンケート回答結果-1(派遣費用)
設問 1 の派遣費用総額(補助金なしの場合)については計算例等も添付してなるべく回答がぶれないように工
夫したが、費用に関する考え方は各社各様であり、回答は 90 万円台から 5,400 万円代までばらつきが大きかっ
た。233 件の派遣費の総額は、約 24 億 4 百万円、1 件当たり平均は、約 1,030 万円である。一方、この 233 件に
対する政府補助金の総額は、7 億 9 百万円で、1 件当たりの平均は約 304 万円であった。
(2012 年度については 2011 年度からの期またがり案件があるため、2011 年度分も勘案して算出した。)
表1
問1回答の分布(1)
派遣費用総額の分布( 原数値)
5 0 0 万円未満
5 0 0 ~1 0 0 0 万円
未満
39
97
1 0 0 0 ~2 0 0 0 万円 2 0 0 0 ~3 0 0 0 万円
未満
未満
71
3000万円以上
18
8
(4) アンケート回答結果-2(受入企業の経済効果)
設問 2 の受入企業の経済効果については、前問で回答した専門家派遣費用に対する倍率で 1.0 倍~1.5 倍と
する回答が、5 割以上を占めた。一方 1.0 倍未満の案件も 35 件(15.1%)あった。なお、専門家指導の効果の継続
期間については特に指定せず各社判断にゆだねている。また受入企業の利益の変動は、市場動向や国際的
な経済変動をはじめ多くの要因によるため、専門家の指導の寄与度がどの程度か判断することはたいへん難し
いと思われるが、これも各社の主観に任せるものとして、アンケートに当って特に示唆は与えていない。
表2
問2回答の分布
受入企業に期待される経済効果(派遣費用に対する倍率)
0.5倍未満
0.5~1.0倍未満
1.0~1.5倍未満
1.5~2.0倍未満
2.0~2.5倍未満
2.5倍以上
12
23
129
47
16
6
次に、この経済効果の実額は、設問 1 の派遣費用を用いて算出できる。個々の回答は「1.0~1.5 倍」のように
レンジ付きであるため、その上限と下限の加重平均を採用すると、分布は下表のようになり、全 233 件の合計は
約 32 億 6,690 万円で、1 件当たりの平均は約 1,350 万円、派遣費用に対する倍率は約 1.36 倍である。昨年度
はサンプル数が少なく、1.09 倍の効果にとどまったが、3 年度通してみると 1.36 倍と総じて高い回答を得た。
表3
問2回答に基づく経済効果
受入企業に期待される経済効果の実額
500万円未満
500~1000万円
未満
1,000~2000万円
未満
2,000~3,000万
円未満
3,000~4,000万
円未満
4,000万円以上
34
61
90
23
15
10
-81-
3.4
専門家派遣の経済効果評価
(5) 補助金の効果
協力企業から専門家を派遣することによって高い経済効果を現地受入企業が得られるのであれば、補助金の
有無にかかわらず企業として自主的に派遣を実施することが予想される。一方、上記の結果で見たように平均
的な投資効率が 1.36 倍程度であれば、自費で派遣することはやや困難であり、ここに補助金を投入して技術移
転のインセンティブを高めることの意義があると考えられる。
企業が自費で専門家を派遣した場合に期待される経済効果は費用の約 1.36 倍であるが、補助金を得ることに
よってネットの派遣費用は縮小し、これに対する経済効果は約 1.93 倍まで上昇する。これにより協力企業の技
術移転へのインセンティブが高まったことが推測でき、ODA 事業としての意義があったものと考えられる。
なお、補助金額の合計に対する期待経済効果の倍率を計算するならば約 4.6 倍となるが、派遣に際しては協
力企業、受入企業が直接・間接の費用を別途負担しているのであり、補助金のみによって経済効果が発生して
いるのではない。
表4
経済効果イメージ
派遣費用合計
補助額合計
ネッ ト派遣
費用合計
期待経済効果
合計(加重平均)
投資効率
補助金込みの
投資効率
A
B
A-B (C)
D
D/A
D/C
240,420万円
70,877万円
169,543万円
326,685万円
1.36倍
1.93倍
(6) その他の経済効果
今回のアンケート調査は現地の受入企業に期待される経済効果(収益改善)を調査したものであるが、専門家
派遣事業に関わる経済効果はそれのみではない。
大きなものとしては、付加指導先における経済効果がある。政府補助金を使う本事業の意義は、協力企業が
全額自費で専門家を派遣する場合では得られない効果にあると考えられ、その点からすると制度利用のために
義務付けられた付加指導や日系資本が入っていないローカル企業に対する指導の経済効果こそ派遣国に対
する本事業の最も重要な経済効果とみなすこともできる。
その他、派遣国における経済効果としては、人的資源の付加価値向上もカウントする必要があるであろう。具
体的には、指導を受けた人間がジョブホップした場合の賃金上昇分がそれに相当すると考えられる。(受入企業
の立場では、指導を受けた人間が他企業へジョブホップしてしまうと、かえって損失とみなされることになるが、派
遣国にとっての経済効果としてはプラスに捉えるべきである。)
さらに、経済効果以上に評価されるべきであるのは、専門家の指導活動を通じた、現地の国民である現地人
材による、日本への理解や共感の向上、いわゆるソフト・パワーの強化である。隣国との緊張が高まる中、ソフト・
パワーは国際社会における信頼や発言力に直結し、武力によらず恒久の平和を念願する我が国にとってきわ
めて有効な安全保障の方策といえる。
また、グローバルサプライチェーンが広まる中で、日本企業と日本製品なしには、世界の産業が立ち行かない
事態は、東日本大震災直後の混乱で強く印象に残こることとなった。
日本の ODA 技術協力をもって、海外の日系企業および日本の協力企業の重要性を高める、本事業の取り組み
は、その経済効果以上に評価されるべきである。
もちろんこれらの効果を、経済的指標を用いて明確に示すことは困難をともなう。しかしながら、たとえば、専門
-82-
家の派遣指導を通じた日本に対する好感度の変化、現地調達率の変化などの数値の採取は、可能であろう。
昨年 2014 年 5 月には南沙諸島の領有権を巡って、ベトナム国内で大規模な反中デモが発生した。こうした中、
現地の日系企業に対する評価は一層高まったという話は、専門家や受入企業から具体的に聴取している。
日本に対する評価は、「人と人」の真摯かつ地道な交流によって醸造されるものであって、特に本事業におい
ては具体的な経済産業活動を通じて実現が図られており、真に貢献できたと確信している。
3.5 制度利用企業からの要望、コメント:
本事業に対する協力企業からの具体的な要望、コメントについて、主だったものを以下に紹介する。
・弊社のような中小企業にとっては、海外進出へ勇気を持ってチャレンジできる事業だった。近隣の諸外国が
ASEAN 市場を狙いたくさん進出してくる中、このような制度があれば日本企業も勝負できると思う。この機会を必
ず実績につなげ、たくさんの中小企業がこの制度を通じて ASEAN 進出が盛んになれば日本の経済も中小企業
が元気になることで向上すると思う。
・数ヶ月にも及ぶ海外での活動は、HIDA のような支援がなければ不可能。
・HIDA 専門家派遣制度がエチオピア工場の技術力向上に非常に役立っている。今後はさらに制度のスケール
アップ(事業予算拡大及び案件当たりの派遣人数制限枠拡大)をお願いしたい。企業側から見た場合、HIDA
の制度(専門家派遣、研修)が他のどの機関のスキームよりも実益性が高い。
・伝えようとする想いがあれば、理解しようと努力する姿勢が生まれる。言葉の壁や文化の壁はあるが、現地で指
導できてよかった。
3.6 本事業 3 年間における特徴、傾向:
(1)脱中国の流れ(チャイナプラスワン)
人件費の高騰や、反日運動の影響を受けて、操業拠点を中国から移管する動きが広がりつつある。本事業の専
門家派遣においても、脱中国の動きが見られた。
①中国からアセアンへ(特に、タイ、ベトナム)
脱中国を志向する場合、多くの(中小)企業にとって、一番に選択となるのは、アセアン地域である。この中でも
親日的で自動車を中心に産業が集積しつつあるタイの人気が高いが、実際に進出するためには、出資費用、
出資割合、人材の確保などハードルも高く、中小企業にとっては、ベトナムが選択されることが多かった。専門家
派遣においても、その傾向がみられる。
②中国から南アジアへ(特にバングラデシュ)
縫製業などを中心に、脱中国の場合の選択肢としては、バングラデシュの関心が高い。バングラデシュの縫製
業への進出は、大手を中心に加速しており、審査後キャンセルとなったが、本事業への期待がうかがわれる。
(2)アフリカへの挑戦
本事業は、基本的に民間企業からの申請に基づいて支援が実施されるが、徐々にアフリカに進出する企業から
の問い合わせが増えつつある。第 3 年度(2014 年度)は、実際に 3 件の案件が審査承認され、うち 2 案件を派
-83-
3.6
本事業 3 年間における特徴、傾向
遣した。派遣できなかった 1 案件は、ナイジェリアへの派遣計画で、2014 年に西アフリカで猛威を振るったエボラ
出血熱の懸念があるため、最終的に断念することとなった。
(3)ミャンマー支援
民主化を進め、経済発展の著しいミャンマーに対して日本政府は積極的に支援を行っており、本事業において
も、特に重点的な取り組みがあった。特出すべきは、ミャンマー商工会議所連盟(UMFCCI:Union of Myanmar
Federation of Chamber of Commerce and Industry)への支援であり、PC 機材、同時通訳機器の貸与と、機材を
活用した指導に対して、3 名の専門家を派遣した。
(4)シニア人材の活用(協会が主体的に企画、実施した専門家派遣)
HIDA は専門家データベースを整備しており、その登録数は約 1,000 名を数える。多くは、民間企業を定年リタイ
アしたシニア人材であるが、自らの知識や経験を途上国で引き続き活用したい強い意欲をもって、派遣の機会
を望んでいる。本事業では、ほとんどの場合、日本企業の申請に基づいて専門家派遣が実施されるため、これ
ら有為の専門家が活用される機会は少なかったが、わずかながら以下のような派遣を実現することができた。ま
た、その事例の一部は、新聞でも取り上げられており、社会的にも意義が認められるところである。
①バングラデシュ金型協会
専門家(63 歳)
「プラスチック成形金型の技術向上に関する指導」
②ラオス商工会議所
専門家(58 歳)
「管理者研修プログラム(MTP)に関する指導」
上記①、②の 2 件の専門家派遣に関しては、協会に登録された専門家の中から応募を募り実施した。
③タイ金型工業会
専門家(68 歳)
「自動車及び家電機器用部品等の製造における各種金型の設計、製造、保守に関する技術指導」
-84-
専門家派遣事業
付
表
付表 専門家派遣実績(2012 年度、2013 年度、2014 年度)
1.国別状況
調査票段階では、20 カ国に関し制度利用の問い合わせがあったが、専門家派遣実績としては図表1の通り
14 カ国となった。新興国のなかでも全体の 8 割近くをアセアン諸国(240/305 件)が占める結果となった。
図表1 派遣実績
件数
国名
1
タイ
2
ベトナム
3
中国
4
インドネシア
5
フィリピン
6
7
ミャンマー
ラオス
8
マレーシア
9
10
インド
バングラデシュ
11
12
13
14
カンボジア
メキシコ
ウガンダ
エチオピア
年度
2013
2012
33
(→10)
20
(→9)
31
(→12)
15
(→7)
14
(→8)
6
2
39
23
(→1)
15
(→4)
8
5
4
5
3
総計
2
1
107
(→5)
総計
91
70
53
29
22
10
9
2
(→1)
1
(→1)
4
1
2
(→1)
1
127
(→47)
2014
19
(→10)
27
(→12)
7
(→7)
6
(→1)
3
6
4
4
1
1
2
1
1
71
(→32)
3
2
1
1
305
※(→数字)は、前年度からの期またがりの案件の件数
※2014 年度は、2015 年 2 月 1 日現在で派遣中の 26 件を含む。
図表 2 調査票(問い合せ)受付状況
国名
2012
2013
2014
総計
1
タイ
70
58
37
165
2
ベトナム
45
44
28
117
3
中国
46
22
3
71
4
フィリピン
32
21
5
58
5
インドネシア
18
17
12
47
6
マレーシア
7
7
2
16
7
ミャンマー
4
9
1
14
8
カンボジア
1
6
6
13
-86-
ラオス
5
4
2
11
10
インド
2
6
1
9
11
バングラデシュ
2
2
4
12
メキシコ
1
2
4
13
モンゴル
1
14
エチオピア
1
1
15
タンザニア
1
1
16
ナイジェリア
1
1
17
ウガンダ
18
パナマ
19
ブラジル
20
カザフスタン
1
1
1
1
1
1
1
1
1
総計
235
1
196
106
537
※本事業の開始以前(2011 年度以前)からの問い合わせが、成案する場合もあるため、調査票のデータは 2012 年 1 月
から 2014 年 12 月までを対象とした。したがって表中のデータでは問い合せ数が派遣実績を包含していない場合があ
る。また、前年からの継続(期またがり案件)のため、当該年度の問い合わせが、必ず当該年度に成案するわけでは
ないので、数値は前後する場合がある。
2.業種
業種については、①(生産、輸送、業務、はん用)機械器具製造業 135 件(32.7%)、ついで、②金属製品製
造業 63 件(15.3%)、③情報サービス業 49 件(11.9%)、④繊維工業(なめし革等製造業を含む)30 件(11.9%)、
サービス業 28 件(7.3%)等となった。
機械器具製造業
金属製品製造業
情報サービス業
2.2%
繊維・なめし革製造業
2.9%
サービス業
4.6%
プラスチック製品製造業
32.7%
パルプ・紙・紙加工品製造業
6.3%
鉄鋼・非鉄
化学・ゴム
6.8%
食料品ほか製造業
15.3%
7.3%
窯業・土石製品製造業
11.9%
図表 4 調査票の提出状況(業種)電気機械器具製造業
印刷・同関連業
建設業
その他の製造
-87-
・機械器具製造業は、自動車等
の輸送機器の部品製造関係
が多い。
・金属製品製造業は、金型、金
属加工等が多いが、製品の用
途によっては、機械器具製造
業に分類した場合がある。
付 表
9
付
表
3.企業の状
状況
1)日本側(派
派遣元)協力
力企業
①会社規模
模(資本金)
社数
数
図表 6 会社規模
会
(資本
本金)
180
165
160
140
120
100
80
69
57
60
40
44
20
20
52
18
12
0
54
48
4
83
500 万円未満
~5
500 万円以上 1,000 万円以上
1,000 万円未満 5,000 万円未満
~50
~10
5
5,000 万円以上
1 億円未満
~
~100
1 億円以上
~300
~
3 億円未満
19
1
3 億円
円以上
~
模(従業員数)
②会社規模
社
社数
図表 7 会社規模 (従業員数)
1
180
162
1
160
1
140
125
1
120
1
100
80
63
60
40
20
106
60
37
7
36
27
12
0
~20
0
20 人以
以下
~100
21 人以上
100 人以下
~300
101 人以上
300 人以下
~500
13
501 人以上
~
301 人以上
500 人以下
態
③企業形態
問い合わせ
せ(調査票)レベ
ベルでは、41
13 社の内訳
訳は、「個人事
事業主」0 社(0%)、「株式会
会社」224 社(97.6%)、
「有限会社」9 社(2.2%)、「その他(持分会社、組合
合など)」1 社(0.2%)となった。
利用企業制度
度利用企業 228
2 社の内訳
訳は、「個人事
事業主」0 社(
(0%)、「株式会
会社」223 社(97.8%)、
一方、制度利
「有限会社」4 社(1.7%)、「その他(持分会社、組合
合など)」1 社(0.9%)となった。
外指導先)企
企業
2)受入(海外
協力企業(派
派遣元企業)は前述のよう
うに 228 社であ
あるが、受入
入(海外指導先
先)企業は、公
公的機関を除
除き 226 社
-88-
①出資状況
100%
日本の派遣元企業と海外の派遣元企業の出資
75%から100%未満
関係については、日本側 100%出資が最も多く
50%から75%未満
56.4%、ついで出資関係のないものが 22%となった。
0.4%
50%以上の日本側がマジョリティを持つ会社が 7
25%から50%未満
22%
25%未満
5.3%
4.4%
11.9%
割を超えている。
②受入企業(資本金)
56.4%
日本の出資がある受入企業 178 社の資本金につ
出資無し
図表 11 指導先企業(海外)への
派遣元企業(日本側)出資状況
n=227
いては、資本金額が邦貨換算で、「1 千万円まで」
17 社(9.6%)、「1 千万円~5 千万円」47 社(26.4%)、
「5 千万円~1 億円」21 社(11.8%)、「1 億円~1 億 5 千万円」25 社(14.0%)、1 億 5 千万円~」68 社(38.2%)
であった。平均資本金は 229 百万円となった。
10 億円以上の資本金の受入企業も 6 社あり、そのうち 4 社は日本側の 100%出資である。(その他 1 社は
97.5%、もう 1 社は 56.3%)
前述のとおり、日本側協力企業の資本金が 5,000 万円以下の場合は、全体の 64.5%だったのに対し、海外
の受入企業の資本金が 5 千万円以下なのは 36%しかない。単純な比較は難しいが、受入企業の方が協力
企業よりも規模が大きい場合が多いように推察される。
社数
邦貨換算(円)
80
70
60
50
40
30
20
10
0
~1 千万円
② 業員数
1 千万円
~5 千万円
5 千万円
~1 億円
1 億円~
1 億 5 千万円~
1 億 5 千万円
社数
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
80
48
20
20 人以下
28
100
21 人以上
100 人以下
7
300
500
101 人以上
300 人以下
301 人以上
500 人以下
-89-
15
次の級
501 人以上
付 表
であった。異なる協力企業(派遣元企業)から同じ受入(海外指導先)企業に派遣された案件はなかった。
付
表
ここで、日本側(協力企業)よりも海外の受入企業の従業員が多い企業の割合を調べてみると以下のようなグ
ラフになった。
従業員数が協力企業よりも多い受入企業の割合
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
100%
69.4%
52.6%
41.3%
10
30
50
10 人以下
30 人以下
50 人以下
100
100 人以下
36.9%
34.9%
300
1000
300 人以下
1000 人
以下
33.7%
-
1000 人
以上
協力企業の従業員数
協力企業の従業員に対して、受入企業の従業員が多いという傾向は、日本側協力企業が小規模の場合に
顕著である。特に協力企業の従業員数が 10 名以下の場合では、受入企業の従業員数は、100%日本よりも
多かった。このような場合、繊維業(縫製加工)、情報システム開発(オフショア・ソフトウエア開発)などのよう
に人件費に着目して海外進出している業種が多いが、以下のように、受入企業が、日本の協力企業である
「親(会社)」を「孝行している子(会社)」になっているケースも見られる。
4.派遣期間
派遣期間は平均 160 日(5.3 ヵ月)となった。なお、事業予算の関係上、派遣期間は 1 ヵ月以上 6 ヵ月以内を
原則とした。
一方で、派遣期間が「短かった」、「やや短かった」とする評価は、非常に多かった。製造業の場合、スキル、
ノウハウは、短期間ではなかなか身につかず、また製造工程サイクルが長期に及んだり、季節性、繁忙期な
ど、ある程度の指導期間が求められる場合も多い。また現地に派遣され実際に指導してはじめて現地の事
情や現地人材のレベルがわかり、その結果、当初計画どおりには指導が進まない、派遣前にはわからなかっ
た様々な課題が明らかとなり指導時間が足りなかったという専門家も多かった。
※期またがり派遣があるため、派遣期間は年度ごとではなく、年度をまたいだ派遣期間の通期で算出している。
5.専門家:
①年齢
80
専門家の派遣開始時における年齢は、平均で 47.8 歳で
あった。最も若い専門家の年齢が 26 歳、最も高齢の専門
家は 72 歳であった。
なお、専門家派遣では、「満 25 歳以上 69 歳以下であるこ
N=268
60
75
40
20
55
14
30 歳以下
-90-
73
51
0
と」を要件として求めている。
図表 16
専門家の年齢
人数
31 歳以上
41 歳以上 51 歳以上 61 歳以上
40 歳以下
50 歳以下 60 歳以下
く、51 歳以上の年齢の専門家は 39.6%となった。
※年齢の基準制限を超えた専門家(1 名:72 歳)については、技術的に他に代えがたい事情(高級紳士服の仕立
て職人)であったため、特例で認めている。
②国籍
ほとんどが日本人であるが、ミャンマー人、中国人、マレーシア人の専門家を派遣した。外国人の専門家は、
日本での滞在が長く、いずれも高等教育を日本で受けた者であった。
③専門性
製造業の現場で指導する必要から、なんらかの資格を有する専門家がほとんとであった。所得している資
格の種類は 100 種類を超えており、具体的には、フォークリフト免許(19 名)、危険物取扱者(19 名)、玉掛作
業者(16 名)、(金属、機械加工などの)技能士 20(名)、有機溶剤作業主任者(8 名)、公害防止管理者 7
(名)、ガス溶接技術者(5 名)などであった。
④女性専門家
268 名の専門家の内、女性の専門家は、12 名(4.5%)であった。
なお、中小企業のサービス業を対象とした事業である中小サービス業等海外現地人材研修支援事業(専
門家派遣)では女性の専門家は、22.4%となっている。(2015 年 1 月末現在 未派遣を含む。)
-91-
付 表
分布に示すように、中高年、ベテラン技術者の派遣が多
外部専門家による
ヒアリング調査
4.1
4.2
外部専門家によるヒアリング調査概要
アジア4ヶ国の調査結果
・タイ、ベトナムの企業訪問
・インド、ミャンマーの企業訪問
付 表
4.1
国
名
No.
1
2
タイ
3
4
5
6
1
ベトナム
2
3
4
5
現地企業名
東洋電子工業株式会社
TOYO ELECTRONICS (THAILAND) CO., LTD.
技術研修
(東京都国分寺市)
(タイ・バンコク)
専門家派遣
―
CHUGAI RO (THAILAND )CO., LTD.
(タイ・バンコク)
―
SEWS-ASIA TECHNICAL CENTER LTD.
(タイ・バンコク)
―
(タイ・バンコク)
―
技術研修
管理研修
技術研修
(管理研修)
CADIAN VIETNAM CO., LTD.
(大阪府大阪市)
(ベトナム・ホーチミン)
株式会社フクオカラシ
FUKUOKARASHI VIETNAM CO., LTD.
技術研修
(福井県鯖江市)
(ベトナム・ホーチミン)
専門家派遣
株式会社大洋発條製作所
VINA TAIYO SPRING CO., LTD.
(大阪府東大阪市)
(ベトナム・ハノイ)
株式会社デンソー
DENSO MANUFACTURING VIETNAM CO.,
(愛知県刈谷市)
LTD.
昭栄印刷株式会社
SHOEI VIETNAM CO., LTD.
技術研修
(新潟県新発田市)
(ベトナム・ハノイ)
専門家派遣
インド
4
―
ミャンマー
4
TOPTECH DIAMOND TOOLS CO., LTD
専門家派遣
株式会社キャディアン
―
3
(タイ・バンコク)
(三重県四日市市)
3
2
MORNING SUN INTERPACK CO., LTD.
住友電装株式会社
―
1
/泰日工業大学 (タイ・バンコク)
(大阪府堺市)
2
7
THAI-NICHI INSTITUTE OF TECHNOLOGY
中外プラント株式会社
―
6
研修/
日本企業名
1
5
外部専門家によるヒアリング調査概要
KAIZEN METAL FORMING PVT. LTD.
(インド・ブッダナガル)
IMPERIAL AUTO INDUSTRIES
(インド・ハリヤーナー)
HUMANIZE INFORMATION PVT. LTD.
(インド・ニューデリー)
SANDHAR TECHNOLOGIES LTD.
(インド・グルガオン)
第一工業株式会社
DAIICHI N HORIZEN AUTOCOMP PVT. LTD.
(静岡県浜松市)
(インド・ニムラナ)
ダイヤモンド電機株式会社
DE DIAMOND ELECTRIC INDIA PRIVATE
(大阪府大阪市)
LIMITED.
本田技研工業株式会社
HONDA MOTORCYCLE & SCOOTER INDIA
(東京都港区)
(PVT) LTD.
株式会社きんでん
MYANMAR AGTI SOCIETY
(東京都千代田区)
(ミャンマー・ヤンゴン)
―
HI HI PURIFIED DRINKING WATER
(ミャンマー・ヤンゴン)
ユース・情報システム開発株式会
ACE DATA SYSTEMS Co., Ltd.
社
(ミャンマー・ヤンゴン)
新藤電子工業株式会社
SHWE KA THAR-SHINDO ENGINEERING &
(東京都墨田区)
MANUFACTURING PVT. CO., LTD.
-94-
技術研修
技術研修
技術研修
管理研修
(管理研修)
管理研修
管理研修
専門家派遣
技術研修
技術研修
技術研修
管理研修
専門家派遣
技術研修
ページ
第4章
外部専門家によるヒアリング調査
本章では、事後評価の一環として行ったヒアリング調査の結果をまとめた。
調査は、タイ、ベトナム、インド、ミャンマーの 4 カ国に進出している日本
企業の中から技術研修制度および専門家派遣制度またはその両方の制度を
利用している企業 14 社、また、日本での管理研修コースに参加した現地企
業7社を抽出し、2 名の専門家とともに訪問し日本人および現地管理者、既
に帰国している技術研修生及び管理研修生、専門家派遣事業の専門家との面
談を通じて、日本企業の海外展開における HIDA 制度利用の実際を把握し、
その効果と必要性について検証することを目的とした。
4.1 外部専門家によるヒアリング調査概要
日本企業が海外展開する上で本事業の受入研修(技術研修)制度と専門家派遣制度とが
どのように有効的かつ持続的に利用されているかとその必要性や、これら両方の制度を利
用することで生まれる相乗効果について検証するとともに、管理研修コースに従業員を派
遣した現地企業を訪問し、研修の成果を検証するとともに、現地裾野産業の成長、サプラ
イチェーンの再構築への貢献など、今後の日本企業の国際展開に資するような人材育成支
援のあり方について示唆を得ることを目的とした。
調査は、専門家 2 名が受入研修の派遣元企業および専門家派遣事業の受入企業である現
地企業合計 21 社及び海外教育機関 1 校を海外 4 カ国において訪問して行った。海外の訪問
家が派遣されている現場の管理者)
、既に日本での受入研修(技術研修または管理研修)を
終え帰国した元研修生、現地に派遣されている専門家と、国内では管理者および研修生の
指導者と面談した。なお、調査の方法はこれら事業の制度利用の実際、効果、必要性とそ
の相乗効果について、面談者から直接聞く形をとった。
結果として日本企業の国際展開における本事業の有効性が浮きぼりになっただけでなく、
HIDA の将来的な役割について様々な示唆を得られる調査となった。
なお、本調査では評価内容の客観性を保つためこれらインタビューの実施と報告書の作
成を外部専門家に依頼することとした。専門家の調査日程、訪問先は次の通りである。
①政策研究大学院大学
日
教授
大野泉氏
程:2014 年 12 月 15 日~20 日
訪問先:タイ(日系企業 3 社、現地企業 2 社、教育機関 1 校)
ベトナム(日系企業 5 社)
-95-
第4章 外部専門家によるヒアリング調査
先では日本人および現地の管理者(主に既に帰国している元研修生の上司、あるいは専門
4.1
②大阪商業大学
日
外部専門家によるヒアリング調査概要
総合経営学部
教授
古沢昌之氏
程:2015 年 1 月 9 日~16 日
訪問先:インド(日系企業 3 社、現地企業 4 社)
ミャンマー(日系企業 2 社及び日系企業関連教育機関 1 校、現地企業 1 社)
また、こうしたヒアリング調査は HIDA 研修事業評価システムでは「事後評価」と呼ば
れ、主に、日本で実施された受入研修の修了後一定期間経過後、研修の成果が現地におい
ていかに発現しているかその効果を計測するため帰国後の研修生および研修生の上司等と
の面談を通して行われる評価項目として位置付けられている。
一方で、HIDA 専門家派遣事業評価システムでは「事後評価」は、派遣された専門家の帰
国後行われる主に 3 つの評価項目(①直後評価、②案件総合評価、③事業全体評価)を意
味している。それぞれの評価システムにより「事後評価」の用語の使われ方に差異がある
ため、本調査は「外部専門家によるヒアリング調査」としている。
*なお、2012 年度、2013 年度も同様の調査を行っている。これら過去 2 年分の訪問先に
ついては付表参照。
-96-
2015 年 1 月 30 日
政策研究大学院大学 教授
大野 泉
HIDA 事業利用企業の訪問調査(タイ、ベトナム)
調査目的と対象
2014 年 12 月 15 日(月)~20 日(土)の期間にタイとベトナムを訪問し、両国に進出
して HIDA の技術研修や専門家派遣制度を利用した日系製造企業 8 社(タイ 3 社、ベトナ
ム 5 社)、及びタイの現地企業(2 社)と教育機関(1 校)と意見交換を行った。調査の主
目的は、
「新興市場開拓人材育成支援事業」が対象期間とする 2012~2014 年度の 3 年間に
HIDA を利用した企業を主対象に、事後調査の一環として研修生の派遣元企業や専門家の受
入れ企業の現場をたずねて、これら企業の海外展開における HIDA 制度利用の実際を把握
しその効果について考察することである。
訪問した日系企業は全 8 社のうち 5 社(タイ 2 社、ベトナム 3 社)は技術研修のみを利
用、残る 3 社(タイ 1 社、ベトナム 2 社)は技術研修と専門家派遣の両方を利用していた。
タイ現地企業は管理研修を利用した事例であった。
方法としては、現地企業の管理者及び帰国研修生を対象として、日本における研修や帰
国後の状況についてヒアリングを行った。専門家派遣については、指導が完了していたた
め、企業関係者からのヒアリングや専門家による指導報告書を主要な情報源としつつ、(企
タイ現地企業のうち 1 社は、今回の評価期間に HIDA を利用してはいないが、過去に日
系企業で AOTS 研修を受けた人材がその後、現地企業の社長となり日本的経営を導入して
いる例であり、今後の示唆を導くうえで含めている。教育機関の泰日工業大学(TNI)につ
いても、評価というよりは、タイにおける HIDA の今後の役割や協力関係について示唆を
得ることを目的として意見交換を行った。TNI は 8 年前に創設された日本型ものづくり大
学で、HIDA(前 AOTS)同窓生がその設立に重要な役割を果たし、現在は日系企業(訪問
先 2 社を含む)に人材を供給し、HIDA の様々な事業で連携パートナーとして発展を遂げ
ている。
短期間の調査にもとづく分析ではあるが、以下、総括的な所感、両国で訪問した企業・
機関ごとに調査結果をとりまとめた。また、評価対象ではないが、タイ同窓会幹部、及び
ベトナム同窓生が組織した NPO と追加的に意見交換する機会があったところ、その概要も
付録として添付している。
総合的な所感
-97-
第4章 外部専門家によるヒアリング調査
業派遣等で)同専門家と現地で面会できた場合は、可能な限り、その結果も反映した。
4.2
アジア4ヶ国の調査結果
個別企業の調査結果に記したとおり、今回訪問した全ての企業は、HIDA 制度が各社のニ
ーズに対応したものとして、その有用性を高く評価していた。今後の取組への示唆を含め、
特に気づいた点を記す。
(1)日本企業の海外展開の新時代に対応、実施された HIDA 事業
HIDA が「新興市場開拓人材育成支援事業」を実施した 3 年間(2012~2014 年度)は、
いろいろな意味で、日本企業の海外展開の新時代が本格化した時期であった。従来の日本
式生産関係にとらわれず海外進出する中小企業が増え、タイとベトナムは、インドネシア
とともに最も関心ある進出先になっている。大企業においては部品のグローバル調達や現
地調達の加速、またアジアが生産拠点のみならず市場になったことをうけて開発設計業務
のアジア移管の動きが顕著になった。(なお、政府は 2011 年 6 月に「中小企業の海外展開
支援大綱」を策定し、2012 年 3 月の改定で HIDA は JICA とともに協力機関となった。)
今回、調査対象の日系企業 8 社の内訳は、大企業 2 社、中小企業 6 社である。中小企業 6
社のうち 5 社は、単独で初めて海外進出した拠点である。大企業のうち 1 社(在タイ)か
らは、大手自動車メーカーがタイをアジア戦略車の開発設計拠点として位置づける動きの
説明をうけた。したがって、「新興市場開拓人材育成支援事業」を評価する際には、海外展
開新時代において、日本企業が人材育成面で直面する課題に HIDA 事業が効果的に対応し
ているか、といった視点も重要と考える。
下記の表は、
8 社の海外進出と HIDA 制度の初回利用時期の関係を整理したものである。
これをみると、技術研修制度については、大企業は以前から HIDA を利用しているが、中
小企業 6 社のうち 4 社は 2012~2014 年度に初めて利用したことが分かる(残る 2 社は 2007
年度、2011 年度に初回利用)。専門家派遣制度についても、利用した中小企業 3 社のうち 2
社が同時期に初めて利用している(残る 1 社は 2011 年度に初回利用)
。
-98-
初回利用年
研修
専門家
親会社
現地法人
設立年
Toyo Electronics (Thailand)
Co. Ltd
中小
2008
2014
Chugai Ro (Thailand) Co. Ltd.
中小
2012
2012
大
2006
2010
ASEAN地域拠点、開発設計(タイ)
海外初進出(ベトナム)
現地法人名
SEWS-Asia Technical Center
Ltd.
Cadian Vietnam Co. Ltd.
Fukuokarashi Vietnam Co.
Ltd.
Vina Taiyo Spring Co. Ltd.
DENSO Manufacturing
Vietnam Co. Ltd.
中小
2005
2007
中小
2013
2014
中小
2007
2012
大
2001
2002
SHOEI Vietnam Co. Ltd.
中小
2009
(工場:2011)
2011
2013
2013
備考
海外初進出(タイ)、実質的な工場
稼動は2013年から
海外初進出(タイ、インドネシア同
時)
海外初進出(ベトナム)
タイに続く第2の拠点(ベトナム)
特定部品の輸出拠点、デザインセ
ンター併設(ベトナム)
2011
海外初進出(ベトナム)
(2)日本で研修する有用性、研修効果
HIDA の受入れ研修について全 8 社が共通して評価していた点は、日本語研修、及び日
本の企業文化を実地研修前の導入段階で学ぶ機会の提供であった(その他、ビザ等の手続
き、研修生の滞在中のケアにおいて HIDA の役割を評価する声も数社あった)。
また、企業別に強調していた点として、①日本語能力が向上し日本人の仕事の仕方に理
解を深めた結果、本社等の日本人社員と直接コミュニケーションがしやすくなり、業務の
ス ピ ー ド ア ッ プ や 能 力 強 化 に つ な が っ た ( Cadian Vietnam 、 Chugai-Ro 、 DENSO
Manufacturing Vietnam、SEWS-ATC、等)、②カイゼンや品質管理など、ものづくりの
や新生産ライン立ち上げ時の体制づくりに貢献した(Fukuokarashi Vietnam、Toyo
Electronics)
、等があった。なお、②・③を挙げた中小企業 4 社のうち 3 社は初めての海外
進出で、受入れ研修と前後して専門家派遣制度を利用していた(Fukuokarashi、SHOEI
Vietnam、Toyo Electronics)。工場立ち上げ・操業開始期に補助金事業で研修と専門家派遣
を行えたことは、資金的制約の大きい中小企業にとって有用だったとの声も聞かれた。
研修効果については、中小企業 2 社は操業開始後、順調に業務展開し、短期間で日本の
本社を上回る規模の企業になっている(Vina Taiyo Spring 20 名→250 名、SHOEI Vietnam
数名→330 名)。別の中小企業 2 社は工場や新生産ラインの立ち上げ期にあり、量産はこれ
からという段階であったが、現地拠点を設けたことで顧客拡大や新市場開拓につながって
いる、と述べていた(Fukuokarashi、Toyo Electronics)。タイでは自動車生産の低迷によ
り新規の工業炉製作の需要が伸び悩んでいるが、現地拠点があることでメインテナンス需
要や近隣のマレーシアから新注文がくるようになったと、進出のメリットを述べる中小企
業もあった(Chugai Ro)。
-99-
第4章 外部専門家によるヒアリング調査
基礎の習得に貢献した(Toyo Electronics、SHOEI Vietnam、Vina Taiyo Spring)、③工場
4.2
アジア4ヶ国の調査結果
(3)タイ拠点の位置づけ、タイ・プラスワン時代における HIDA 研修
訪問した日系企業 8 社のうち 3 社が、タイとベトナムの両方に拠点を置いていた(大企
業は SEWS-ATC、DENSO Manufacturing Vietnam の 2 社、中小企業は Vina Taiyo Spring
の 1 社)。タイがアジアのものづくり拠点(マザー工場)になりつつある今、製造部門にお
いて日本で研修する必要性はあるのか、HIDA 研修の有用性をどう考えるかについて、質問
した。その結果、企業ごとに経営方針が違い、日本における研修への期待も異なっている
が、HIDA 研修に対するニーズは依然としてあると感じた。
まず中小企業 1 社については、四輪車用の部品生産(タイ拠点)、二輪車用の部品生産(ベ
トナム)と明確な分業体制を作っており、日本をマザー工場と位置づけている(Vina Taiyo
Spring)。したがって、日本での研修は、ものづくりの基礎を習得するうえで不可欠という
のが、同社の考えである(上述(2))。
大企業 1 社は、製造部門では日本で研修する必要性は低下しているが(タイ国内の工場
に研修施設を設け、マザーセンター機能をもたせて近隣諸国の技術者にものづくり研修を
実施)、一方で、開発・設計部門では日本の研修が果たす役割は依然として大きい点を強調
していた。日本で開発の基礎や新技術を学び、さらに本社や顧客の担当者とのコミュニケ
ーションをしやすくするためにも、日本語及び日本における研修を重視しているとのこと
だった(上述(2))。
別の大企業 1 社は、タイに ASEAN 地域統括拠点を置いているが、域内各国で製品品種
による生産分業をしているので、タイをマザー工場とした研修体制は敷いていない。むし
ろ、日本型ものづくりのスピリット・価値観を体得させること、そのために日本語能力向
上を重視しているとのことだった。よって、同社は製造部門の幹部候補生育成のキャリア
パスの一環として、HIDA 制度により日本で研修している(注:ただし、開発設計部門では
自前で日本語研修をしており、HIDA は利用していない)。
タイ・プラスワン時代が到来しているが、タイ拠点の位置づけは各社さまざまで、HIDA
事業に対する期待も多様であることが分かった。
(4)人事育成計画の一環としての HIDA 技術研修
一定期間(5 年以上、2010 年度以前から)受入れ研修を行っている 3 社にヒアリングし
たところ、それぞれの人材育成計画に明確に組み込んで、HIDA 制度を利用していた。
中小企業 1 社(Cadian Vietnam)は本社のバックオフィスとして、日本で受託する CAD
業務を行っている。ベトナムとのオフショア体制を構築し、高品質を維持しながら作図価
格・速度を強みとして業務展開している。日本側と密接に連携しながら業務を行う必要性
から、日本語を習得し、日本人と一緒に働きながら設計思想を学ぶことを重視している。
こうした方針のもと、毎年、設計管理者候補や経営幹部候補を選抜し、人材育成の一環と
-100-
して HIDA 制度で研修している。中には本社採用に切り替えられ、日本で勤務する人材も
いる。同社は従業員の定着率がきわめて高く、2007 年から退社した例がないとのこと。
DENSO Manufacturing Vietnam は「デンソースピリット」を理解したベトナム人社員
を一人でも多く作ることが大切という考えのもと、社員の日本語教育を非常に重視してい
る。日本型ものづくりに習熟した人材を育てるために、体系的な人材育成計画をもってお
り、入社後、3~4 年を経た幹部候補生を選抜して日本で研修させている。キャリアパスも
明確である。同社の定着率は他企業に比べて高いとのことだった。
上記 2 社の事例は、幹部候補生の育成といった明確なキャリアパスの中に HIDA 研修が
位置づけられており、これが従業員のモチベーションを高め、定着率を高めている一因に
なっているようだ。
一方、SEWS-ATC は、入社後すぐか 1 年程度で、HIDA 制度を利用した研修を行ってい
る。ワイヤーハーネスは汎用技術ではなく特別な部品なので、一から勉強する必要がある。
したがって、中途採用でなくても新卒から育て上げる方がよく、泰日工業大学(TNI)の卒
業生など、一定程度、日本のものづくり教育を受けた若い人材を採用し、日本における研
修を通じて育て上げるという方針をとっている。
(5)技術研修と専門家派遣の組み合わせ
今回、初めて海外進出した中小企業 3 社が、技術研修と専門家派遣を組み合わせて利用
していた。いずれも工場や新生産ラインを立ち上げる際の体制づくりのために専門家(自
社の人材)を派遣し、前後して現地のリーダー格の人材を研修に送っていた。相談をうけ
例もあり、初期の段階における助言の重要性を示唆している。特に海外進出する企業がま
すます小規模化している昨今、資金制約の軽減という観点から、中小企業にとって研修と
専門家派遣の両方が補助対象になるメリットは大きいと思われる。
(6)管理研修のもつ意味
今回は、管理研修について多様な観点から考える機会にもなった(タイ)。第 1 に、工業
デザインコースに参加した現地企業(Morning Sun Interpac)は、共通基盤となる知識の
習得だけでなく、包装デザインに対する日本顧客の考え方に理解を深め、さらに多様な国
のコース参加者と相互学習できたことを、重要な成果として強調していた。第 2 に、かつ
て日系大手企業に在職し管理研修に 2 回参加した元研修生に会ったが、同氏は、数年前に
タイ現地企業(TOP TECH Diamond Tool)の経営者になり、日本的経営やものづくりの考
え方を導入して地場中小企業の底上げに尽力している。これは、スピンアウトによる地場
企業への技術移転・普及の例といえよう。また、この現地企業は、日本の中小企業に工場
-101-
第4章 外部専門家によるヒアリング調査
た AOTS(当時)職員が JODC(当時)の活動を併せて紹介したことがきっかけになった
4.2
アジア4ヶ国の調査結果
の余ったスペースを貸し(軒先ビジネス)、新事業領域を拡大する機会にしている点も注目
される。第 3 に、日系大企業の幹部である HIDA 同窓生は、タイがマザー工場となるにつ
れて、一部の在タイ日系大企業では日本における技術研修への需要は減るかもしれないが、
管理研修の重要性は引き続き大きいと述べていた。特に高度な技術・経営スキルを習得し
たり同業他社の取組を学ぶなど、企業が付加価値を高めるために必要な、特定テーマの管
理研修への需要は大いにあるとのこと。
今後の HIDA の取組への示唆
(7)人財をコアとした相談機能の強化
今回、強く感じたのは、単独で初めて海外進出する中小企業が増え、中小企業の海外展
開が新たな時代を迎えたこと、それに伴って初回利用の企業が増えていることである。新
時代の到来をうけて、HIDA は単に研修または専門家派遣を行うだけでなく、人財をコアと
しながら、海外工場の立ち上げ・操業の安定化に向けた様々な課題に対して相談にのる体
制を組むことを検討すべきである。今まで以上にきめ細やかで多岐にわたる助言が求めら
れることになろう。以下、例示する。
<他の公的機関とのネットワーキング、中小企業に対する情報提供能力の強化>
一般的に中小企業は情報アクセスに苦労している。実際に、HIDA が海外展開に関する
様々な情報を提供してくれるとさらに有難い、といったコメントもあった(Fukuokarashi)。
また、今回、JETRO や商工中金といった中小企業の海外展開支援に取り組む公的機関から
HIDA 制度の紹介があり利用にいたった例に出会ったが(Chugai Ro、SHOEI Vietnam)、
逆に HIDA が他の組織を紹介する場合もあってよい。HIDA 職員が他の支援組織が何をや
っているかを熟知したうえで、他機関と相互に「効率的なたらい回し」をする体制を作れ
ば、中小企業も大いに助かるだろう。海外に進出する中小企業が増加し、また小規模化し
ている昨今、HIDA が他の支援機関とのネットワークを強化し、相互紹介やアドバイス機能
を強化することは重要と考える。
<採択されなかった企業や質問に対するフォローアップ>
今回訪問で、ある初回利用の企業から、①同じ人材が複数回、研修をうけることは可能か、
②学歴や職位について条件はあるのか(中卒やオペレータでも研修に送れるのか)、などの
基本的な質問をうけた。特に②については、申し込んだが採択されなかったため、学歴や
職位で制限があると思い込んでいた模様である。応募企業に対して満額回答ができない場
合、却下した理由を明確に説明するなど、HIDA 側のフォローアップの仕方を工夫する余地
があろう。HIDA の採択基準等について誤解されると、将来の制度利用の機会を狭めてしま
-102-
いかねず、勿体ない。初回利用の企業に対しては、必要に応じて、HIDA 現地事務所および
本部の窓口にて、正式な応募書類をあげる前に相談・アドバイスができる体制を組めると
よいのではないかと感じた。
<企業の業務展開に応じた、寄り添い型の支援>
訪問先の中には、進出後に短期間で成長し、日本の親会社を上回る規模(数百名)にな
った企業が 2 社あった。こうした業務の拡大は歓迎すべきことではあるが、急速な拡大に
伴い、立ち上げ期とは異なる課題も顕在化してくると思われる(人事体制や日本水準の品
質管理体制の確立など)
。HIDA が人財をコアとして、中小企業の海外事業の展開に寄り添
った支援、さらに必要なアドバイスをする機能を整備していくことは検討に値しよう。
(8)日本語研修プログラムの改善、さらなる強化
技術研修制度を利用している企業の多くが、HIDA の強みとして、実地研修に先立つ導入
段階で、日本語研修や日本の企業文化の講義を受けられることを挙げていた。同時に、幾
つかの企業から、日本語研修に対する改善要望が出された。具体的には、①近年、日本語
研修の質が低下しており、従来の質の維持・向上のために HIDA 側で努力してほしい(1
社)、②専門用語(最大公約数的な内容)を HIDA で教えてほしい(1 社)、②日本語の基
礎知識がある研修生用に、中級・上級クラスを開設してほしい(2 社)
、といった点である。
特に①については、2013 年度から J6W の教材が変わってレベルが下がったこと、最近
では最終発表会を日本語でやらなくなり、演劇等で創造力を試す機会も少なくなっている
材派遣・受入れであれば、HIDA 以外でもできる組織はあろう。企業が HIDA に期待して
いる強みを十分発揮するためにも、HIDA は日本語研修プログラム、指導内容や最終発表会
のあり方を含め、強化すべきと考える。また、②については、昨年度の評価(フィリピン、
インドネシア)でも 2 社から同様の要望が出されたことを述べておきたい。
(9)手続きの簡素化・合理化
最近、HIDA 制度を利用し始めた中小企業から、応募資料に関し、会社概要等の共通部分
をデータベース化するなど同じ情報を毎年提出しなくてすむよう省力化してほしい、との
要望が出された。中小企業は人員体制に制約がある場合が多く、もっともな指摘だろう。
今後も、初めて海外進出する中小企業の応募が増えると思われるところ、HIDA は企業の立
場にたって、可能な限り応募手続きの省力化・システム化に努めるべきである。
(10)「低炭素技術輸出人材育成支援事業」との関連
-103-
第4章 外部専門家によるヒアリング調査
ことへの懸念が示された。これが事実ならば、真摯に受けとめるべきと考える。単なる人
4.2
アジア4ヶ国の調査結果
今回の評価は「新興市場開拓人材育成支援事業」が対象であるが、2014 年度から「低炭
素技術輸出促進人材育成支援事業」が始まったことをうけて、今まで前者で行っていた技
術研修を後者の事業に分類して実施している例が 4 件あった(Chugai Ro、DENSO
Manufacturing Vietnam、SEWS-ATC、SHOEI Vietnam)。日本企業の海外展開が新時代
を迎えたことをうけ、「新興市場開拓」事業に対する企業側のニーズは益々高まると思われ
る(特に中小企業)。本来、「低炭素技術輸出促進」はそのエントリーポイントの一つのは
ずである。よって、「新興市場開拓」事業を基本枠組と位置づけ、中小企業の海外展開新時
代における多様な人材育成ニーズに対して、寄り添い型で柔軟に対応できる予算をしっか
り確保したうえで、同予算の一部を「低炭素技術輸出促進」事業に充当する方が実態に即
しているし、考え方としても企業側にとって混乱が少ないのではないか、と感じた(なお、
「低炭素化技術輸出促進」を特別の政策目的とするのであれば、追加インセンティブを与
え、効果測定することも考えられよう)。また、両事業の相談窓口を共通にして、一体化し
た形で企業側の相談にのることが望ましい。
(11)今まで HIDA が築いた企業人材・組織ネットワークを活用した、新しい協力モデ
ルの創設(特にタイ)
今回、タイで泰日工業大学(TNI)や同窓会幹部、また過去に日系大手企業で管理研修を
うけた人材がスピンアウトして現地企業の底上げに尽力している例を見たが、これらは日
本の協力をうけて成長し、自立的な発展を遂げている好事例である。同時に、これら人材・
組織は互恵的な関係で(Mutual Growth)、日系中小企業とのパートナーシップを望んでい
ることが判明した。HIDA がもつ現地人材・組織ネットワークを活用して、タイの今日的
な産業開発ニーズと、日本の中小企業の海外展開ニーズをマッチさせる新しい協力モデル
を創れないものだろうか。以下、例示する。
<タイの今日的課題に対応した、互恵的な協力関係の構築>
TNI は近年の日本の中小企業のタイ進出の増加に対し、タイの地場企業の能力を高めな
いと日系中小企業との競争が激化する可能性を懸念しており、タイ企業の研究開発能力を
強化する必要性を強調していた。そして、TNI が受け皿となり、HIDA と連携してタイの
ローカル企業や人材を成長させるよう、技術・研究開発面のコーディネーターの役割を果
たしたいとの提案があった。例えば、①HIDA と連携して日本の中小企業経営者のタイ視察
プログラムを企画し、TNI にてタイ企業や在タイ日系中小企業のモデル事例の見学をアレ
ンジし、日系中小企業がタイに進出して成功するための鍵となる要因を学ぶ機会をつくる、
②TNI が施設を提供し、日系中小企業とタイ中小企業が参加して研究開発に利用してもら
い、日泰双方にメリットがあるようなビジネスマッチングの機会を作る、といった提案で
-104-
ある。また、産業人材・裾野拡大支援事業(経済産業省の受託事業、2009~2011 年度の 3
年間パイロット)についても、タイの学生を日系企業で実習させてマインドセット変革を
促す好機会になったと、評価していた。
タイは人件費上昇や ASEAN 経済統合をふまえ、労働集約的産業を周辺国にシフトしつ
つあり、自国の産業高度化、研究開発能力の強化が喫緊の課題になっている。TNI は、HIDA
を含む日本の官民が育てた貴重な財産である。HIDA として、タイ人の主体性のもとに運営
されている TNI のような組織を活用しながら、タイ側の現在の産業開発ニーズを考慮した
内容と方法で、日系企業の海外展開支援に取り組む可能性を検討する意義は大きいと感じ
た。
<現地企業・人材ネットワークを活用した HIDA 相談機能の強化>
多くの日系中小企業は、海外進出を準備する際に初期のコストやリスクを軽減する観点
から、現地企業と様々な形のパートナーシップを求めている(OEM、ライン借り、JV、軒
先借り、あるいは調達先・販路として、など)
。こうした現地パートナー探しを、同窓会メ
ンバー企業のネットワークを活用して支援できないものか。実際に今回、タイ同窓会会長
が経営する企業は日系中小企業と JV を組んでいる。また、TOP TECH Diamond Tool(日
系大手企業に在職時に管理研修をうけた人材が経営する現地企業)は、日系中小企業に軒
先貸しをしている。特にタイでは現地企業が力をつけてきており、HIDA がもつ現地企業・
人材ネットワークを活用して、パートナーを探す日系中小企業に役立てる可能性を検討す
ることも一案と思われる。
ベトナムにおいては、引き続き従来の協力モデルが有効と思われるが、上述したように
(IMT)のような現地企業とのネットワークをもつ組織と情報収集等の点で連携することは
有用と思われる。(IMT は HIDA 同窓生がコアとなって設立され、人材育成を切り口とし
て日本とベトナムの組織・企業をつなぐ役割を果たしている。)
-105-
第4章 外部専門家によるヒアリング調査
HIDA が相談機能を強化する際に、Institute of Management and Technology Promotion
4.2
タイ
アジア4ヶ国の調査結果
東洋電子工業株式会社(技術研修と専門家派遣)
(調査日:2014 年 12 月 16 日)
会社名
(現地側企業)
(業種)
情報通信機械器具製造
Toyo Electronics (Thailand) Co.,
(事業内容)
光通信モジュール部品の製造
(従業員数)
50 名(2014 年 12 月、うち日本人
Ltd..
(日本側企業)
東洋電子工業株式会社
設立年
2008 年
5 名)
資本金
3 億円
専門家氏名
山賀真一郎
研修生
2012 年度から 2014 年度まで計 8 名(予定)(うち 1 名退社)
(派遣期間)2013 年 8 月~2014 年 3 月
(2014 年度:5 名が研修済、今後 3 名予定)
(1) 企業概要
Toyo Electronics (Thailand)社は、東洋電子工業株式会社(1959 年設立、従業員 230 名
(2014 年 12 月時点))の最初の海外子会社で、2008 年に全額出資で設立された。東部臨
海地域チョンブリ県にあるアマタ・ナコーン工業団地のレンタル工場(1,500 ㎡)に入居し
て、光通信モジュール部品を製造している。東洋電子工業の本社は東京都国分寺市、工場
は新潟県村上市(半導体、光技術部門)と山梨県甲府市(組立・実装、ウェハ検査部門)
にあり、システム開発センターが新潟市にある。
2008 年にタイ現地法人を設立したのは、当時、受注予定だった半導体関連の部品製造の
ためだったが、顧客側の都合で(リーマンショックの影響と思われる)、急遽、発注がなく
なり、2013 年まで現地で何も製造していなかった。ようやく 2 年前に日系大手メーカーか
ら光通信モジュール部品を受注し、2013 年 10 月に量産を始めた。その後、複数の日本企
業から発注があり、目下、顧客ごとにクリーンルームを設けて、試作、そして量産体制を
準備している。日系大手メーカーからの受注部品はすべてタイ工場で生産しているが(新
潟工場から生産ラインを移管)、他の顧客からの受注部品は技術の難易度や人件費等を考慮
しながら、タイと日本で製品を棲み分けて生産する予定。営業活動はすべて日本の本社が
行っており、本社からの発注をうけてタイ工場で生産し、完成品を日本、中国などへ出荷
している。
技術研修
-106-
(2) 技術研修制度利用の背景
2014 年度に初めて技術研修制度を利用したが、その契機は、タイ現地法人の浜田社長(タ
イを含む海外経験豊富、外部の民間企業出身)が以前から HIDA(当時の AOTS)を知っ
ていたことによる。光通信モジュールの製造は手作業が多いところ、本社において、タイ
人の手先の器用さを評価してタイ工場に生産ラインを(一部)移管することを考えるよう
になった。新潟工場が立地する村上市周辺(山形県に近い)は、手先が器用な人材を集め
ることがもはや難しい状況にある。日系大手メーカーからの受注は既に量産しているが、
より最近に受注した新顧客の部品の量産体制を整えるため、5 人の研修生を新潟工場に派遣
して当該部品の生産工程や生産管理について指導することにした。
なお、Toyo Electronics (Thailand)社は HIDA 制度のもとでの研修生派遣に加えて、自費
でオペレーターレベル(中卒)の従業員を新潟工場に送っている。
(3) 研修生から見た HIDA 研修制度の効果
2014 年度の研修生で帰国済の 5 名のうち、今回は 3 名にヒアリングした(全員、女性)。
いずれも一般研修は 9D コースで、日本語研修はなかった。
5 名は新生産ライン立ち上げのために 2013 年 6~10 月に採用され、2014 年 5 月から新
潟工場で実地研修をうけた。面談したのは表に記した 4 名中、最初の 3 名である。3 名とも
主要な生産工程のリーダー候補として技術指導をうけた。研修期間の後半では、タイに移
管する生産ラインにおいて、工程ごとに顧客が立ち会って監査が行われ、全員、資格認定
企業の勤務経験があり、採用時は副工場長だったが、帰国後に工場長に昇格した(急に国
内出張用務が入り、挨拶のみ)。5 名のうち 1 名が帰国後に退社している(注:通訳を兼ね
た人材)。
氏名(性別)
研修期間
研修項目
現在の職位(当時)
Ms. Waraporn
2014 年 5 月 13 日~
9D
ラインリーダー(新
Tipparat(女)
2014 年 7 月 1 日(49
ワイヤーボンド装置
ライン立ち上げのた
日間)
の操作方法、量産品
め 2013 年 5 月採用)
実作業
Ms. Praparon Pisnok
2014 年 5 月 13 日~
9D
ラインリーダー(新
(女)
2014 年 7 月 1 日(49
自動調芯 YAG 溶接
ライン立ち上げのた
日間)
装置の操作方法、量
め 2013 年 5 月採用)
産品実作業
Ms. Ketsara
2014 年 5 月 13 日~
9D
-107-
ラインリーダー(新
第4章 外部専門家によるヒアリング調査
をとることができた。表の最後にある Ms. Panwipa Rojanarowan は大卒エンジニアで日系
4.2
Charoentrat(女)
アジア4ヶ国の調査結果
2014 年 7 月 1 日(49
フレキシブル基盤は
ライン立ち上げのた
日間)
んだ付け作業の訓
め 2013 年 5 月採用)
練、量産品実作業
Ms. Panwipa
2014 年 5 月 13 日~
9D
工場長(副工場長、
Rojanarowan(女)
2014 年 7 月 30 日
光通信モジュール部
2013 年 5 月採用)
(79 日間)
品の製造技術・生産
管理の教育、生産管
理の個々の業務の実
地研修
Ms. Waraporn Tipparat、Ms. Praparon Pisnok、Ms. Ketsara Charoenrat の 3 名から、実
地研修を通じて、各自が担当する生産工程について分かりやすい指導をうけ(それぞれ、
ワイヤーボンド付け、YAG 溶接、はんだ付けの工程)、資格認定の監査にも合格したと、研
修成果のを説明があった。また、時間厳守や、勤務時間は集中して丁寧に作業する日本人
の仕事のやり方を身をもって学んだと述べていた。
彼女たちは各工程のラインリーダー候補として、入社後まもなく日本に派遣された。帰
国後に自立するという具体的目標をもって、研修に取り組んだ。現在、3 名はそれぞれ 10
名の従業員を指導しているとのことだった。工場内で指導的な役割を与えられ、日々の業
務を通じて研修成果を他の従業員にフィードバックしている。
HIDA の施設やサービスは特に問題なく、生活しやすかったとのこと。寮については、現
状どおり、一人部屋が望ましいと言っていた。
(4) 現地企業から見た制度利用のメリット、要望
小川正志副社長にヒアリングしたところ、HIDA 技術研修は、工場立ち上げ時の人材育成
支援として、中小企業にとって有用な制度であると述べていた。もう一つ別の新生産ライ
ンを立ち上げるため、2014 年度に追加 3 名を 2015 年 2 月初旬から 3 月末まで、HIDA 技
術研修を利用して日本に派遣予定である(9D コース)。
上述したように、3 名は帰国後、ラインリーダーとして現場で指導的役割を果たしている。
また Ms. Panwipa Rojanarowan の場合は前職で日本企業の経営を経験していたので、今
回研修では Toyo Electronics の主力製品である光通信機器の特徴を理解し、生産管理や本
社の顧客関係について学ぶことを重視したとのこと。現在、彼女は工場長として重要な役
割を担っている。
2 か月弱の研修期間は短かったとの話もでたが、これは Toyo Electronics 社側が新生産ラ
インの立ち上げ準備で忙しく、腰をすえて人事計画や研修スケジュールを練って HIDA に
応募する余裕がなかったことも一因と、述べていた。
-108-
同社にとって初めての HIDA の制度利用だったこともあり、技術研修制度について幾つ
か質問をうけた。具体的には、①同じ人材が同一年度内に複数回、研修をうけることは可
能か(→6 か月間(183 日)あけば年度内の再研修は可能)、②中卒の学歴やオペレーター
の職位でも研修をうけることは可能か(→原則として高等教育を修了した者であるが、こ
れに限らない。将来、中核的人材に育てる人事計画の一環であれば可能)。この背景には、
今回 5 名(高卒で班長レベル、および大卒で副工場長)だけでなく、7 名(オペレーターレ
ベル、中卒)を含む 10 数名で応募したが、後者 7 名は HIDA から補助対象にならないと言
われ、最終的に自費で新潟工場で研修させたことがある。
なお、要望事項として、HIDA の応募申請資料について、会社概要等の共通部分は毎回記
載しなくてすむよう、HIDA にてデータベース化するなど、省力化を図っていただけると中
小企業にとって有難い、という指摘があった。
専門家派遣
(5) 専門家派遣制度を利用した背景
2013 年度に初めて本制度を利用し、東洋電子工業の新潟工場の工場長である山賀真一郎
氏をタイ工場に派遣した。長野県中小企業振興センターからの紹介による(専門家派遣案
件概要説明書から)。
背景としては、光通信モジュールの製品が厳しいコスト競争に直面するようになり、競
争力を強化するため、東洋電子工業では、タイで数少ない本格的なクラス 1000 のクリーン
た。新製品の組立には熟練の技術が必要であり、さらに高価な部品を扱うため高い歩留率
が求められるところ、タイ工場に専門家を派遣して組立技術や品質管理の知識を教え、中
核人材を育成することにしたものである。
(6) 専門家の指導内容と課題
山賀真一郎氏の派遣期間は 2013 年 8 月 20 日から 2014 年 3 月 20 日で、指導内容は「光
通信モジュール組立・試験に関する技術指導」であった。新生産ラインを立ち上げること、
及び日系大手メーカーからの受注部品が量産体制に入ることに備え、工場を組織する主要
部署である品質保証課・技術課・製作課の各課のリーダークラスを対象に、不良率を日本
水準まで削減すること、過去の不良事例の理解と問題解決、光通信製品の構造の理解、ま
た予防措置活動について指導したものである。上記の 5 名も日本での研修前に山賀専門家
の指導をうけたと理解され、専門家派遣と研修が補完的に実施された事例と考えられる。
当方訪問は山賀専門家の帰国後だったので直接、話は聞けなかったが、指導報告書は、
-109-
第4章 外部専門家によるヒアリング調査
ルーム設備を含む生産設備を国内の甲府工場から現地工場に移管して生産することになっ
4.2
アジア4ヶ国の調査結果
以下のとおり成果を説明している。教育終了時に、「品質状況を自ら月報としてまとめ、状
況の把握と問題点の把握を実施していた。この事実は、不良発生時の解析能力、各種デー
タの分析能力など自ら対応できる能力を有したと考えられる。従って、当初の目標は十分
達成できたと判断した。」また、「新技術向上、新規事業開発、技術開発は、スピーディに
新規案件を試作量産化することが必要になることから、タイ工場に技術移転しながら人材
を育てていく方法として、HIDA 専門家派遣制度の活用を今後も考えていきたい」、との意
向が示されている。
なお、付加指導は、クリーンルーム消耗品等の購買先に対して、クリーンルームで使用
する製品や、建設・管理の仕方について知識を強化するために行われた。
小川副社長(後列中央)と帰国研修生 3 名(前列)
所感:
小川副社長からお話を伺う
技術研修と専門家派遣を組み合わせて、新生産ラインを立ち上げ、量産化体制を
確立するための支援を行った例と位置づけられる。新製品の量産はこれからなので、厳密
な意味で研修効果は特定することは難しいが、専門家派遣による工場の生産体制強化に続
いて、日本で技術研修を行うことで、中核人材の育成が図られた。研修生の一人は、帰国
後に副工場長から工場長に昇格するなど、研修成果をを活かして職務を遂行している。
今後、特に初回利用の企業に対しては、必要に応じて、HIDA 現地事務所および本部の窓
口にて、正式な応募書類をあげる前の相談・アドバイスができる体制を組めるとよいので
はないかと感じた。また、応募企業に対して満額回答ができない場合、却下した理由を明
確に説明するなど、HIDA 側のフォローアップの仕方も検討する余地があると感じた。
HIDA の採択基準等について誤解されると、将来の制度利用の機会を狭めてしまいかねず、
勿体ないと考える。
-110-
タイ
泰日工業大学(HIDA を含む日本の各種産業協力から自立・発展)
(調査日:2014 年 12 月 16 日)
組織名
(現地側機関)
(業種)
教育機関、大学
Thai-Nichi Institute of
(事業内容)
日本型のものづくり教育
(学生数)
4,394 名(2014 年度、大学院を
Technology (TNI)
設立年
2006 年設立、2007 年 6 月開学
含む)
HIDA との関
TNI 創立において、HIDA(前 AOTS)同窓生が中核的な役割を果たした。
係
TNI 立ち上げ期に、①管理研修(タイ工業管理研修:2007 年 10 月 17 日~26 日、
2008 年 2 月 13 日~22 日)を通じて支援し、その後、②専門家派遣(益田明氏:2009
年 3 月~2010 年 3 月)、③経済産業省受託事業(2009~2011 年度:産業人材・裾野
拡大支援事業、2013 年度:中小企業海外高度人材育成確保支援事業)等を通じ
て、HIDA と協力関係を構築している。
バンディット・ローッアラヤノン学長(クリサダー前学長の後任として、2014 年 12 月 8
日付で第 2 代学長に就任)と面談し、HIDA と長年の協力関係をもち、タイ進出日系企業
にものづくり人材を供給している泰日工業大学からみた、今後のタイにおける HIDA の役
割や同大学との協力関係を中心に意見を伺ったもの。(同席者:水谷光一氏(Lecturer &
Internationaol Relations)、及び日・タイ経済協力協会(JTECS)から泰日経済技術振興
協会に出向中の山本創造氏(Advisor))
泰日工業大学(Thai-Nichi Institute of Technology: TNI)は、タイ・日本両国間の友好
とタイ産業界の人材育成を目的として 1973 年に設立された泰日経済技術振興協会
(Technology Promotion Association (Thailand-Japan):TPA)を母体として、2007 年に
設立された日本型ものづくり大学である。現場・実践重視の教育機関として、基礎的な日
本語と日系企業の文化を理解する人材を育てている。特にタイ産業界で需要の高い分野(自
動車、電機電子、ICT、生産技術)を重視し、日本のものづくりに直結する実務、かつ実践
的な技術と知識を備えた学生を育成している。産業界やタイ国内外の各種日本機関との強
い協力関係を活かして、現場のインターンシップ教育も実施している。自動車工学と生産
工学が中核コースであるが、企業ニーズを反映して、電気電子工学(2013 年)、会計(2013
年)、人事管理(2014 年)のコースを新設した。
応募者は年々増えており、競争率は 2 倍程度ある。今では年間 1,400 名が入学し(修士
課程を含む)
、約 1,000 名が卒業する(2 割はドロップアウトまたは留年)。政治的低迷や自
-111-
第4章 外部専門家によるヒアリング調査
(1) 組織概要
4.2
アジア4ヶ国の調査結果
動車生産台数の減少等により、現在、タイの景気は必ずしも良くないが、TNI は高い就職
率を維持している(希望者の 100%)。卒業生は日本語が話せるので、日本企業からの引き
合いは多い。就職希望者のうち約 5 割が日系企業及び地場企業で日系へのサプライヤー企
業に就職している(補足:今回訪問先のうち、中外プラント Chugai-Ro (Thailand)社と住
友電装 SEWS-ATC 社は TNI 卒業生の採用経験あり)。日系企業への就職率は工学部が最も
高く(6 割)
、一方、IT・情報学部では低い(18%)。これはタイでは IT・情報分野の日系
企業が少ないことによる。就職先は大企業(48%)と中小企業(42%)とほぼ同率である
(ただし、学生は大企業志向)。
TNI は、日本語のみならず英語能力の強化も重視している。これは、日系中小企業では
日本語が中心でよいが(タイ国内で操業)、大企業に行くと英語も必要になるからである(タ
イ・プラスワンなど、タイがアジアの生産拠点になってきている)。
(2) HIDA との関係
TNI の母体である TPA、そして TNI は HIDA(旧 AOTS)やアジア学生文化協会(留学
生受け入れ、通称 ASCA)を通じて日本で研修・留学経験のある同窓生(ABK&AOTS 同
窓会メンバー)が中心となって設立された。TNI 創立の際は、バンコク日本人商工会議所
が全面的な協力を行っている。日本は TPA や TNI に対して長年、HIDA を含む官民で技術
支援・人材派遣・企業協力を行ってきている。例えば、TNI 立ち上げ期の 2007 年度に AOTS
(当時)は「タイ工業管理研修コース」を 2 回実施し、経営学修士課程の社会人学生(か
つタイ製造業で生産に携わる管理者)を対象に、日本の生産現場で実践される「ものづく
り」の基本的考え方と日本の「ものづくり」に特徴的な各種管理技術・手法等を紹介した。
また、2009 年度には、JODC(当時)制度で、
「工学部教員への自動車工学全般にわたる理
論と実技の技術指導」を目的として専門家 1 名(益田明氏)を派遣している。
さらに最近は、HIDA が経済産業省等から受託する事業のパートナーとして、例えば、以
下のような事業で協力関係を築いている。
・
産業人材・裾野拡大支援事業(経済産業省の受託事業、2009~2011 年度の 3 年間パイ
ロット):HIDA が受託し、タイでは TNI と連携して実施。
・
中小企業海外高度人材育成確保支援(経済産業省の受託事業、2013 年度、2014 年度):
2013 年度は HIDA が受託し、タイでは TNI と連携して実施。2014 年度は株式会社パ
ソナが受託し、同様に TNI と連携して実施中。
(3) 日系企業との協力関係
TNI は、日系企業と次の 4 段階で協力関係を築いている。
・ 奨学金: バンコク日本商工会議所の呼びかけと日系の新規進出企業からの寄付で、開
-112-
学から 8 年間、奨学金を提供している(毎年 50 名程度、4 年間で計 200 名)。
・ インターン: 4 年生後期に卒業のための履修条件として、①4 か月のフルインターンで
単位取得を認める、②卒論の一環として 2 か月間インターンする、のいずれかを義務付
けている。①を選ぶ学生が多く、卒業後にインターンシップ先に就職する場合もある。
受入先はタイ企業が多いが、日系中小企業にもよく受け入れてもらっている。また、イ
ンターン候補先企業ではタイ人の人事・総務部長との関係構築も大切にしている(これ
は、日系企業の日本人社長が了解しても、現場を準備するタイ人幹部が安全やスペース
上の配慮から、学生受け入れに慎重な場合があるためとのこと)。TNI の就職課にはタ
イ人のプロパー職員が 3 名おり、日系企業のインターンシップ責任者と連絡をとってい
る。900 社の名簿があり、毎年、手紙をだして、関係維持に努めている。
・ 就職フェア: TNI 独自で、毎年 1 月に実施している。校内にブースを設け、約 110 社
に会社説明やリクルートの機会に使ってもらう(タイ企業、日系大企業・中小企業)。
これは、TNI に奨学金を出してくれている企業への恩返しでもある由。
(4) 日系中小企業のタイ進出に対する TNI の見解
バンディット学長は、近年、日系中小企業のタイ進出が増えているが、タイ側で研究開
発能力を高める必要性を感じていると、何度も述べていた。タイ中小企業の能力を高めな
いと、日系中小企業との競争が激化する可能性を懸念しているとのこと。日本では、地方
自治体や自治体の関連団体(産業振興公社等)が日系中小企業の海外展開支援を積極的に
行っている。日系中小企業の海外進出の増加という昨今の動きが、(日本側の事情のみで進
あるとの問題意識が示された。
具体的には、次の 3 つの取組を検討中とのことである。
・ ビジネスマッチング: TNI が施設を提供し、日系中小企業とタイ中小企業が参加する
形で研究開発に利用してもらい、日泰双方にメリットがあるようなビジネスマッチング
の機会を作りたい。TPA とも連携して実施する。
・ 知財提携: TNI は日本の大学 40 校以上と提携している。TNI が技術移転機関
(Technology Licensing Office:TLO)となり、日本の提携校がもつ技術・知財でタイ
企業に役立つものを紹介し、タイ側の研究開発能力の強化を支援する。
・ J-Expert: 今までは HIDA(前 JODC)のもとで、タイ企業は日系企業やタイ工業省
を通じて日本人専門家から指導をうけてきたが、今後は TNI を介した新しい協力モデ
ルを作りたい。新しい協力モデルは、TNI が介在してタイ中小企業が直接、専門家から
指導をうけられるようにするもの。専門家派遣の人数もスケールアップしたい。例えば、
TNI が日本人専門家を招聘し、タイの中小企業 4 社を回って現場指導することを計画中
(2015 年 2 月から 1.5 ヵ月の予定)
。TNI に蓄積された知識・ノウハウを使って、新し
-113-
第4章 外部専門家によるヒアリング調査
むのではなく)タイ企業にとってもメリットがあるよう、TNI として方策を考える必要が
4.2
アジア4ヶ国の調査結果
い協力モデルを作りたい。
TNI のバンディット学長(中央)と
TNI の外観
TPA の山本氏(左端)
(5) HIDA との連携可能性についての提案
上述とも関連して、バンディット学長は、近年、増加している日本の中小企業のタイ進
出において、TNI が受け皿となり、HIDA と連携してタイのローカル企業や人材も成長さ
せるよう、技術・研究開発面のコーディネーターの役割を果たしたいと意欲を示していた。
具体的には、HIDA と連携して日本の中小企業経営者のタイ訪問ツアーを企画し、TNI
にてタイ企業や在タイ日系中小企業のモデル事例の見学をアレンジし、日系中小企業がタ
イ進出して成功するための鍵となる要因を学ぶプログラムを作っては如何、といった提案
が出された。
また、産業人材・裾野拡大支援事業(経済産業省の受託事業、2009~2011 年度の 3 年間
パイロット)の取組における日本との連携を評価している、と述べていた。タイの学生を
日系企業(大・中小)に 2 か月間派遣して実習させると、目つきが変わった。
(注:同事業
は、「日本企業文化講座」
(大学での座学)、「企業実習」(在タイ日本企業での実習)
、「ジョ
ブフェア」(企業紹介と新卒採用)、「日本語講座」(初歩ビジネス日本語)から成り、タイ
の7大学で実施され、TNI も対象に含まれた。なお、TNI では企業実習やジョブフェアを
独自にやっているので、期間等を調整して実施したとのこと。)
続く、中小企業海外高度
人材育成確保支援(経済産業省の受託事業、2013 年度、2014 年度)においても「日本企業
文化講座」や「ジョブフェア」が実施されており、TNI もタイ人学生と日系中小企業との
就職マッチング等で協力している、とのことである。
所感:
HIDA を含む日本の官民は TNI 創立に多大な貢献をしてきており、こうして TNI
-114-
が日本型ものづくり大学として、強い主体性をもって自立・発展していることは素晴らし
い。TNI は今や、日本と対等なパートナーとなっている。
そして、今回、日系中小企業の進出支援において、タイと日本の互恵的な関係構築をめ
ざすことが必要という、バンディット学長の指摘を重く受けとめたい。特に、タイ側は人
件費上昇や ASEAN 経済統合をふまえ、労働集約的産業を周辺国にシフトしつつあり、今
後、自国産業の高度化、研究開発能力の強化を重視している。HIDA として、タイ人の主体
性のもとに運営されている TNI のような組織を活用しながら、タイ側の現在の産業開発ニ
ーズを考慮した内容と方法で、日系企業の海外展開支援に取り組む可能性を検討する意義
は大きいと感じた。
第4章 外部専門家によるヒアリング調査
-115-
4.2
アジア4ヶ国の調査結果
タイ
中外プラント株式会社(技術研修)
(調査日:2014 年 12 月 16 日)
会社名
(現地側企業)
(業種)
産業機械
Chugai Ro (Thailand) Co. Ltd.
(事業内容)
熱処理設備の販売、並びにメイ
(日本側企業)
ンテナンス業務
中外プラント株式会社
設立年
2012 年 4 月
(従業員数)
12 名(2014 年 12 月現在、うち日
本人 4 名)
資本金
2500 万円
研修生
2012 年度から 2014 年度まで計 4 名(うち 2 名退社)
(2012 年度:2 名、2013 年度:2 名)
加えて、2014 年度は中外炉グループインドネシア現地法人にて低炭素技術輸出促
進支援事業で 2 名研修
(1) 企業概要
Chugai Ro (Thailand) Co. Ltd.は、タイで各種工業炉の営業、技術サービス、メインテナ
ンス等のフィールドサービスを行うために、中外炉グループのタイ現地法人として、2012
年 4 月にバンコクに設立された。日本側受入企業である中外プラント(1999 年設立、大阪
府堺市、従業員 35 名(2013 年 8 月現在))は、中外炉工業株式会社の 100%子会社で、自
動車・鉄鋼・電気等の基幹産業を支える各種工業炉の据付・組立・試運転・維持管理とい
ったフィールドエンジニアリング業務を行っている。
タイ進出の契機として、複数の顧客から、工業炉の納品後に現地でメインテナンス拠点
があることが望ましいとの要望が寄せられたこと、また現地でフォローできる会社に発注
したいとの条件が付くようになったことがある。主な顧客は自動車メーカーや自動車関連
の一次下請け部品企業で、タイとインドネシアのどちらかにメインテナンス拠点を作って
ほしいと言われ、一度に 2 ヵ国に現地法人を設立することを決めた。
自社の製造工場はないが、タイのサプライヤー3 社(タイ現地企業、台湾系企業、日系企
業)に日本で設計した設備を組立・製造してもらい、Chugai Ro (Thailand) 社が製作指導
をしている。大型の炉は、顧客先で組み立てている。
(2) 技術研修制度利用の背景
技術研修制度は 2012 年度に初めて利用し、以来、毎年、継続利用している(注:2014
年度は中外炉グループインドネシア現地法人にて低炭素技術輸出促進支援事業のもとで 2 名
-116-
が研修)。HIDA を知った経緯は、現地法人を設置するために JETRO バンコク事務所内の
中小企業ビジネス・サポートセンターのオフィススペースを借りていた時(低価格の賃料、
3 ヵ月間)、HIDA バンコク事務所が JETRO と同じビル内にあった関係で HIDA の存在を
知り、技術研修制度の利用を決めた。
日本人のコストは高いので、Chugai Ro (Thailand) 社はタイ人社員が、顧客先またはサ
プライヤーでの組立、試運転の確認等のチェック、納品後のメインテナンス、さらには納
品した 1 号機をもとに 2 号機の仕様ヒアリング、設計製造を行えるように、現地人材を育
成していく方針である。客先での業務が多いので、タイ人社員には日本語(及び英語)が
話せることが重要になっている。こうした背景から、日本語教育や日本人の行動様式を教
えてくれる HIDA 研修制度を利用することを決めた。
(3) 研修生から見た HIDA 研修制度の効果
今まで 4 名が日本で研修をうけており、今回は下記に示す 2013 年度の研修生の Ms.
Suchada Anurakdan にヒアリングした。彼女は 2013 年 5 月に入社し、数か月後に HIDA
研修に参加している。同時期に研修をうけた Mr. Santipap Yodarlai は日本人の技術マネー
ジャーと一緒に設備点検に出かけていたのでヒアリングできなかったが、面談の終了間際
に帰社し、挨拶することができた。残念なことに、2012 年度に研修をうけた 2 名(泰日工
業大学の卒業生)は帰国後、転職した。
氏名(性別)
研修期間
研修項目
現在の職位(当時)
2013 年 8 月 27 ~
J6W
Technical Engineer
Anurakdan(女)
2014 年 3 月 29 日
熱処理設備の設計・
(Engineer)
(215 日間)
据付・メインテナン
ス技術、現場実習
Mr. Santipap
2013 年 8 月 27 日~
J6W
Technical Engineer
Yodarlai(男)
2014 年 3 月 29 日
熱処理設備の設計・
(Engineer)
(215 日間)
据付・メインテナン
ス技術、現場実習
Ms. Suchada Anurakdan は、日本の研修で、安全第一の意識が徹底していることに感心
したこと、また工場内安全第一の精神をよく理解できるようになったと強調していた。(中
外プラントでは、毎朝ラジオ体操し、朝礼時に安全第一を唱和する。
)実地研修により具体
的な知識・ノウハウを習得したほか、日本人とコミュニケーションができるようになった。
一般研修も問題なく、HIDA 職員は親切で、日本語ができないときは英語で対応しながらも、
少しずつ日本語を話すように励ましてくれた。J6W の日本語研修については、生活上は困
-117-
第4章 外部専門家によるヒアリング調査
Ms. Suchada
4.2
アジア4ヶ国の調査結果
らなかったが、仕事で日本語を使えるレベルには至っていない、と述べていた。
(なお、Ms.
Suchada Anurakdan は高校時代に独学で、「みんなの日本語」のテキストで、日本語を勉
強していた由。)
工業炉はカスタムメイドなので、作業がマニュアル化されていない。今回、研修先の堺
工場で、汎用設備の炉の製造過程を学ぶ機会があったので(断熱材の工事、レンガの積み
方等)、自分で製造過程ごとに説明文を英語で書いたとのこと。これをインドネシアや中国
にある他国の現地法人スタッフに共有するなど、研修成果を還元している。Ms. Suchada
Anurakdan は研修前は Engineer だったが、帰国後は Technical Engineer として、学んだ
専門的知識を活かして業務をしている。
川中取締役(左から 2 番目)と
Suchada さんの職場
2 名の帰国研修生と一緒に
(4)現地企業から見た制度利用のメリット、要望
川中哲也取締役によれば、HIDA の日本語教育と一般研修の内容を高く評価しているとの
ことだった。日本語や日本社会・企業文化等の基礎知識の教育は有用で、HIDA の強みは語
学研修と日本のやり方を教えてくれることだと強調していた。J6W の日本語コースでは、
生活するための日本語レベルには到達するが、業務上の専門用語を習得するには不十分と
指摘したうえで、派遣元企業としては、6 週間で研修生が達成した日本語の習得度に満足し
ていると述べていた。
Ms. Suchada Anurakdan と Mr. Santipap Yodarlai はともに、モンクット王工科大学ラ
カバン校の卒業生で、泰日工業大学(TNI)ほどは大学時代に日本語を学んだわけではなか
ったが、研修期間中に向上した。特に 2013 年 12 月年に研修先が年末で炉をとめた時に、
作業工程ごとに写真をとって、英語で解説した資料を作成して送ってきた。こうした本人
の努力や進歩は嬉しい驚きで、評価しているとのことだった。帰国後、独り立ちしてきて
おり、日本人スタッフも同行するが、製作現場の指導やメインテナンスは任せられるよう
-118-
になっている。
2012 年度に HIDA 制度を利用してから毎年、入社後まもない社員 2 名を日本で研修させ
ている。これは Chugai Ro (Thailand) 社では、日本で製作中の機械を見せて人材を育てて
いく必要があるからである。2012 年に入社した TNI 卒業生 2 名は日本語が話せたが、残念
ながら HIDA 研修から帰国後に転職した。タイの大卒者はホワイトカラー志向で、現場で
汗まみれになって働くことを好まない風潮があるが、TNI は実学的な人材を育てている。
日系企業が寄付した工作機械もある。TNI 卒業生を採用したのは、Chugai Ro (Thailand) 社
長が TNI 関係者と懇意にしており、卒業生の推薦をうけたことによる。ただし、Chugai Ro
(Thailand)社としては特定大学にこだわらず、また新卒・中途採用の両方を組み合わせて人
材を採用・育成していく方針とのことだった。
HIDA の専門家派遣制度にも関心があり、CAD を使った技術指導をする可能性を検討し
たいとのことだった。Chugai Ro (Thailand)社は将来の展望として、タイ・プラスワン、
そして(現地法人を設立済のインドネシア以外の)アジアを対象に、新規の炉の設計・製
造もタイで行えるように現地の能力を高めていきたいと考えているとのこと。CAD を使っ
て図面作成を行い、将来はタイで設計することをめざしたい、と述べていた。
所感: 日本で設計・製造してタイに輸出し、現地で組み立てる場合が多いが、その後、2
号機をタイで製造してタイで納める場合がでてきている。また、マレーシアの日系企業か
らタイで制作してほしいとの注文があり、タイから陸送した。これらはタイに進出したか
大に貢献していると言える。
2014 年について言えば、近年の政情不安とエコカー減税がなくなったこと等の理由から、
自動車の国内向け生産は大幅減(3~4 割)になった。自動車メーカーの生産設備の拡張は、
生産台数が大きく伸びてこそ需要がでてくるものなので、目下、新規の炉の製造受注より、
メインテナンス業務が中心とのこと。製作はサプライヤーが行い、同社は製作指導と品質
管理をしているので、リスク軽減にはなっている模様である。タイは人件費は日本より安
いが、工数はまだ日本の 3 倍との話もあり、生産性を高めてこそタイでの製造メリットが
生まれるところ、引き続き、現地人材の育成に取り組むことは重要と思われる。
-119-
第4章 外部専門家によるヒアリング調査
らこそ可能になったことであり、現地拠点設立と担い手である人材育成は、販路・市場拡
4.2
タイ
アジア4ヶ国の調査結果
Morning Sun Interpac 株式会社(管理研修)
(調査日:2014 年 12 月 17 日)
会社名
(現地側企業)
(業種)
包装材製造、広告
Morning Sun Interpac Co. Ltd.
(事業内容)
包装材の営業・販売・企画デザ
イン
設立年
1999 年
(従業員数)
50~100 名(2014 年 12 月現在、
非正規職員を含むので増減あ
り)
資本金
200,000 USD
研修生
工業デザインコースに参加: 2014 年 11 月 12 日~11 月 25 日(14 日間)
日本企業を得意先とするタイ現地企業から HIDA の管理研修に参加した事例として、
Morning Sun Interpac Co.Ltd.の Mr. Thirawat Yanvinayo 社長からヒアリングしたもの。
(1) 企業概要
Morning Sun Interpac 社は段ボールの包装材の営業・販売・企画デザインを事業とし、
1992 年に創業、Mr. Thirawat Yanvinayo は 2 代目社長である(2008 年就任)。同じ敷地
内に、別会社で段ボールを製造する Mueng Thuong Packaging 社(1988 年創業)があり、
同氏の父が社長を務めている。華僑一族による同族経営の会社といえる。従業員は 50~100
名(うち、正規職員は 50~60 名)で、両方の会社に所属するものもいる。
Morning Sun Interpac 社は段ボールの包装材のデザイン・企画を強みとし、顧客の仕様
に合わせて 100%カスタマイズされた段ボールを受注し、Mueng Thuong Packaging 社で
生産する。包装材の主な用途は 2 種類で、①産業用は自動車部品、電子・電気製品を梱包
する段ボール箱、②消費者向け製品は化粧品や家具を詰めて運送する箱、となっている。
顧客数は 30~50 社で、内訳はタイ企業(3 割)
、在タイの日系企業(3 割)や欧米企業(4
割、オーストラリアを含む)である。日系企業の多くは第一次・二次下請け企業で、輸出
用と国内用の両方を扱っている。
使用する段ボールの資材は、タイ国内のサプライヤーから調達しており、顧客の仕様に
合わせて、設計・図面作成・型作成・打ち抜き・箱材作成まで行う。箱内部の仕切り(partition)
も作成する。
(2) HIDA 管理研修制度利用の背景
知人の会社からの紹介で、HIDA の管理研修のひとつである工業デザイン(Product
-120-
Design Management; PDM)コースを知った。具体的には、知人が Sharoen Larb Autoparts
社という ABK&AOTS Alumni Association(タイ同窓会)メンバーで AOTS 時代から研修
制度を利用している企業におり、工業デザインコースを紹介してくれたもの。2 週間のコー
スで、総費用の 4 分の 3 を HIDA が補助し、4 分の 1 を自己負担した。
説明してくれる Thirawat 社長
段ボール製造工場(整理整頓が必要?)
(3) 研修生からみた HIDA 研修制度の効果、現地企業からみた制度利用のメリット
(4) HIDA への要望
-121-
第4章 外部専門家によるヒアリング調査
Mr. Thirawat Yanvinayo は次の 3 つの理由から、工業デザインコースの参加の有用性を
強調していた。
第 1 に、日本の顧客の嗜好、製品デザインの考え方を理解できたこと。特に安全第一に
対するタイ人、欧米人、日本人の考え方の違いについて認識を新たにした。日本企業は製
品保護を最優先し、部品ひとつたりとも壊れないよう仕切りにも細心の注意を払う。これ
に対して欧米人はコスト第一主義で、梱包した製品が輸送過程で少々壊れても構わないが、
低価格を重視する。
第 2 に、共通基盤となる知識を習得したこと。例えば、ユニバーサルデザイン、エコデ
ザイン、サステナブルデザインといった考え方を初めて学んだ。これらの考え方について、
自社が取引している顧客にも紹介して、包装材の企画を考え直すきっかけにしたい、と述
べていた。
第 3 に、コース参加者間のディスカッション・意見交換が役に立った。工業デザインコ
ースには様々な国から 17 名(タイ 5 名、ミャンマー、インド、バングラデシュ、スリラン
カ、メキシコ、アルゼンチン)が参加し、各国で製品デザインに対する考え方が異なるこ
とが分かった。通常業務ではこれほど多様な国の人々との接点はなく、これは HIDA の管
理研修コースの強みと考える、と強調していた。
なお、同氏は、帰国後に送られてくる同窓会の知らせを読んでおり、将来は生産管理
(Production Management)コースの研修をうけたいと述べていた。
4.1
外部専門家によるヒアリング調査概要
上述のように工業デザインコースの内容を高く評価しつつも、次の 2 点で改善の要望を
うけた。
第 1 に、スケジュールがタイトすぎて、日本の顧客等と会ってネットワーキングする時
間がなかったこと。2 週間の研修期間のうち週末は研修旅行、普通の日は夕方まで講義があ
ったので、自由な時間が全くなかった。結局、滞在期間中に日本の顧客と会えなかったの
は残念だった、と述べていた。具体的な要望として、①門限時間(現在は夜 12 時)を緩和
すること、②研修終了後に商談のために個人ベースの滞在延長を認めることについて、提
案があった。
第 2 に、英語力が高くない講師については、
(無理に英語で講義するよりは)英語通訳を
つけた講義とする方が、内容を理解しやすい、という指摘もあった。
所感: Morning Sun Interpac 社はタイのローカル企業だが、顧客に日系企業もある。今
般、知人が属する HIDA 同窓会のメーリングリストから Mr. Thirawat Yanvinayo が HIDA
管理研修を知って参加したことは、同窓会のもつネットワーキング機能を示唆している。
また、同氏自身、工業デザインコース研修に参加して、日本の顧客の包装デザインに対す
る考え方を他国企業との違いを含めて理解するようになった点を評価しており、将来、生
産管理コースへの応募にも関心を示している。HIDA の顧客層を広げることにもなったと考
えられる。
同時に、Morning Sun Interpack 社と Mueng Thong Packaging 社を見学したが、典型
的なローカル企業であり、生産管理の課題が一目で分かった。工場内に原材料、半製品、
完成品がランダムに置かれており、5S にはほど遠い状態にある。一方で、製品は全てカス
タムメイドで、顧客と直接商談し、顧客の仕様を社内で企画・設計し、より良いデザイン
を顧客に提案する能力はある。この点が評価され、日系企業や欧米企業、タイのローカル
企業からの引き合いも多い。
今回、来日して工業デザインコースに参加したことで、Mr. Thirawat Yanvinayo におい
て工場内の生産工程を改善する必要性や、カイゼン活動への取組に対する認識を新たにす
る契機となったものと思われる。
-122-
タイ
住友電装 株式会社(技術研修)
(調査日:2014 年 12 月 17 日)
会社名
(現地側企業)
(業種)
非鉄金属
SEWS-Asia Technical Center
(事業内容)
自動車用ワイヤーハーネスの
Ltd..
開発設計業務
(日本側企業)
住友電装 株式会社
設立年
2006 年 1 月
(従業員数)
100 名(2014 年 12 月現在、うち
日本人は 13 名)
資本金
29.6 百万バーツ
研修生
2012 年度から 2014 年度まで計 11 名(うち 1 名退社)
2012 年度:5 名、2013 年度:4 名
加えて、2014 年度は低炭素技術輸出促進支援事業で 2 名研修
HIDA 制度は 2010 年度から利用しており、累計 20 名
(1) 企業概要
(2) 技術研修制度利用の背景
SEWS-ATC 社は 2010 年度から技術研修制度を利用しており(累計 20 名)、過去 3 年間
は 2012 年度に 5 名、2013 年度に 4 名となっている。加えて、2014 年度に低炭素技術輸出
促進支援事業で 2 名を研修。HIDA 制度の利用は、住友電装からの紹介による。また、製
造工場の Sumitomo Electric Wiring Systems(Thailand)社は、それに先立つ 1996~2008 年
度に 6 名を住友電装で研修させている。
近年、自動車メーカーはアジア戦略車の開発設計業務をタイに移管している。こうした
-123-
第4章 外部専門家によるヒアリング調査
SEWS-Asia Technical Center 社(以下、SEWS-ATC 社)は、住友電装株式会社(1917
年設立、三重県四日市市、従業員 6,362 名(2014 年 3 月時点))の海外子会社で、2006 年
に ASEAN 地域の開発統括拠点としてバンコクに設立された(出資比率 80%)。また、2008
年に営業部門が新設された。住友電装は自動車用・機器用ワイヤーハーネスを製造販売し、
アジアではベトナム、フィリピン、マレーシア、インドネシア、タイ、インド、カンボジ
アに製造拠点がある。タイ国内に 3 つのワイヤーハーネスの製造工場がある。さらに、タ
イ・プラスワンで、ミャンマー国境近くのラチャブリ(2013 年に本格稼働)とカンチャナ
ブリ(2014 年に本格稼働)に分工場が新設された。
SEWS-ATC 社はアジア(特に ASEAN)地域の製造のための開発設計・営業を行ってい
る。SEWS-ATC がタイに進出した背景には、自動車メーカーが次々とタイをアジアの開発
拠点とする動きがある。これをうけて、昔のような国単位ではなく、国を横断して設計・
プランニングして自動車メーカーに提案する機能をもつことが重要になった。住友電装は
タイを ASEAN+インドのハブ機能と位置づけており、そのために SEWS-ATC 社は開発設
計・営業においてアジアを統括する役割を担っている。
4.1
外部専門家によるヒアリング調査概要
動きをうけて、SEWS-ATC 社として、住友電装の日本国内の各技術センターが、ワイヤー
ハーネスの開発設計において各顧客(自動車メーカー)とどのように働いているか、仕事
のやり方を理解できる人材を育てることが肝要になっている。例えば、自動車メーカーに
ゲストインして共同で開発設計するやり方を日本で学び、タイでの開発設計業務に活かし
ていく必要がある。
(3) 研修生から見た HIDA 研修制度の効果
今回、2012 年度と 2013 年度に研修をうけた下記 7 名の技術者からヒアリングした。全
員、一般研修は J6W コースであった。
住友電装は顧客と共同開発設計しているため、研究開発の拠点(技術センター)を顧客
の開発部門の近くに置いている。したがって、各研修生は担当顧客の近くの技術センター
で実地研修をうけた。両年度の合計で 9 名が研修をうけており、1 名だけ退社した。
氏名(性別)
研修期間
研修項目
現在の職位
(当時)
Ms. Benchamaphorn
2012 年 7 月 31 日~
J6W
同じ(Assistant
Srimun(女)
2013 年 3 月 22 日
ワイヤーハーネスの
Engineer)
(231 日間)
開発設計手法
Mr. Thanapol
2012 年 9 月 18 日~
J6W
Laongkaeo(男)
2013 年 3 月 28 日
ワイヤーハーネスの
(192 日間)
開発設計手法
Ms. Phatchara
2012 年 9 月 18 日~
J6W
Meemuk(女)
2013 年 3 月 28 日
ワイヤーハーネスの
(192 日間)
開発設計手法
2013 年 10 月 15 日
J6W
同じ(Assistant
Engineer)
Ms. Thitirut Somtavil
同じ(Assistant
Enginee)
同じ(Assistant
Engineer)
~2014 年 3 月 27 日
ワイヤーハーネスの
(164 日間)
開発設計手法
Mr. Nithikorn
2013 年 10 月 15 日
J6W
Noonvongsa(男)
~2014 年 3 月 27 日
ワイヤーハーネスの
(164 日間)
開発設計手法
Mr. Dutsakan
2013 年 10 月 15 日
J6W
Sriprasit(男)
~2014 年 3 月 27 日
ワイヤーハーネスの
(164 日間)
開発設計手法
Ms. Wannakan
2013 年 10 月 15 日
J6W
同じ(Assistant
Kittitornkul(女
~2014 年 3 月 27 日
ワイヤーハーネスの
Engineer)
(164 日間)
開発設計手法
(女)
同じ(Assistant
Engineer)
同じ(Assistant
Engineer)
研修生 7 名は、愛知県の技術センターで 2012 年に 1 名、神奈川県の技術センターで 4 名
(2012 年に 2 名、2013 年に 2 名)、そして栃木県の技術センターで 2013 年に 2 名が実地
研修をうけた。皆が共通して言っていたのは、以下の点である。
-124-
・
・
日本の研修により、基本設計段階の考え方に理解が深まり、タイで後工程の設計業務
を担当するうえで、内容をよく理解できるようになった。
日本人の担当者と親しくなり、帰国後にコミュニケーションがとりやすくなった。業
務上、日本人と日常的に相談する機会が多いので、話しやすい環境ができた。
研修成果物のひとつとして、日本で使っていたチェックシート(日本語版)を英語に
訳して、チームで使えるように共有した。
日本人の仕事のやり方から多くを学んだ。特に規則遵守、礼儀正しさに感銘をうけた。
・
・
伊藤部長(後列左端)、吉田副社長(後列左か
緒方社長、吉田副社長、伊藤部長、柳川部長
ら 2 番目)、柳川部長(後列奥中央)と 7 名の
との面談
帰国研修生
(4) 現地企業から見た制度利用のメリット、要望
緒方佳幸社長、吉田茂幸副社長、伊藤雅仁部長、柳川輝影部長にヒアリングしたところ、
・
ビザの申請が簡略になる
・
一般研修で日本語や日本の企業文化を勉強できるので、初期導入として有用である。
その後の技術センターにおける研修の土台を作ってくれる。
・
冬休み期間中の HIDA 日本語力アップ短期集中講座にも申込んでいる
・
企業側にとっても研修生を半年~1 年間受け入れることは結構大変である。土日・祝日
期間のケアを含め、HIDA が研修生をフォローしてくれることで受入企業の負担も軽く
なり、助かった。
なお、実地研修先でも企業負担で 1 週間に 2 回、日本語学校で日本語を勉強させたとの
ことである。
研修に送る方針については、4 月入社後、9 月まで社内で研修し、その後 HIDA 制度を利
用して日本で研修させているとのこと(毎年 10 名前後を採用、うち 4~5 名を HIDA 研修
-125-
第4章 外部専門家によるヒアリング調査
HIDA の技術研修制度を長年利用している理由として、以下があげられた。
4.1
外部専門家によるヒアリング調査概要
生として選抜)。住友電装が日本で顧客とどのように働いているのか、タイを超えて理解し
てもらうことを目的とし、研修制度を利用した効果として、①研修先の指導員と仲良くな
り、その後の日本側との相談等でコンタクトがしやすくなったこと、②日本で研修をうけ
られることで皆のモチベーションがあがること、を挙げていた。
どのスタッフをいつ日本で研修させるかの判断は、①自動車メーカーの車種変更、モデ
ルチェンジに合わせて新技術を導入する時、②自動車メーカーごとに SEWS-ATC 社内の開
発チームの技術がどの程度集積しているか、をふまえて行う。
なお、製造部門ではタイ国内の工場に自社の研修施設があり、マザーセンターとして機
能しており、既にタイでベトナムや近隣国の現地スタッフにものづくり研修をしている。
一方、設計開発については、日本で基礎を学び、日本で開発した新技術を各国拠点の技術
者を呼んで指導・教育していく必要性は依然としてあり、今後も日本で研修する意義はあ
る、と述べていた。
SEWS-ATC 社は、泰日工業大学(TNI)の卒業生を多く採用している。同社は TNI が年
1 回行う就職フェアに参加しており、説明会がきっかけで入社してきた。その後も同大学の
卒業生からの応募が続いている。社内では日本語が優先なので、TNI は日本語を教えるカ
リキュラムを組んでいる点で有難い、とのことだった。なお、同社では設計は新卒採用、
営業は中途採用(経験を評価)を重視している。設計で新卒採用する理由は、自動車用ワ
イヤーハーネスは汎用技術ではなく特別な部品なので、一から勉強する必要があるため、
中途採用よりも新卒技術者を育て上げる方が適切(人件費もより安い)という考えによる
とのこと。
所感:
タイがアジアのものづくり拠点となり、マザー工場になった今、製造部門におけ
る日本での研修の必要性は低下している。一方、開発設計部門においては、日本での研修
の役割は依然として大きい。同社では、日本の設計知識を SEWS-ATC 社に集約強化し、ア
ジアの統括拠点としてタイを位置づけているところ、タイから周辺国市場の需要を拾いあ
げ、日本とタイで研究開発面の連携を強化していく必要性は大きいと思われる。その意味
で、日本語が分かり、日本の設計思想・技術を習得する人材の育成は重要と考える。
-126-
タイ TOP TECH Diamond Tool 株式会社
(日系企業で管理研修を受けた人材が自立化、経営する現地企業)
(調査日:2014 年 12 月 17 日)
会社名
(現地側企業)
(業種)
生産用機械器具製造
TOP TECH Diamond Tool Co.
(事業内容)
研磨機械の製造(工業用自動
Ltd.
車向け)
設立年
2002 年
(従業員数)
84 名
資本金
8,000 万バーツ
研修生
人と組織の問題解決研修コース(SHOP): 1992 年 10 月 12 日~11 月 6 日(26 日間)
企業経営研修(EPCM)コース: 2006 年 6 月 19 日~30 日(12 日間)
かつて日系大手企業に勤務し、現地中核人材として前 AOTS の管理研修を受けた元研修生
が、その後、タイ現地企業の経営者となり活躍している事例。TOP TECH Diamond Tool
Co.Ltd.の Mr. Pondeji Sriwachirapardit 社長(President & CEO)からヒアリングした
もの。オーナーの Mr. Jaturong Pisutsin (Managing Director)も同席。
(1) 企業概要
TOP TECH Diamond Tool 社は 2002 年に設立されたタイの地場企業で、SNC グループ
(上場企業)と合弁企業である(資本比率は SNC が 60%、TOP TECH Diamond Tool 社
のオーナーが 40%)。従業員は現在 84 名で、2015 年には 90 名以上に増える見込みである。
ン部品の OEM 生産を事業とする 100%地場のタイ企業である。
TOP TECH Diamond Tool 社の事業は、工業用自動車向けのダイヤモンドを溶接した研
磨機械の製造である(ダイヤモンド工具、超硬合金の切削工具を生産)。顧客は日系自動車
メーカー、自動車部品、家電、産業機械メーカー等で、165 社にのぼる。タイでは最近まで
この種の研磨機械は輸入中心だったが、今では国産品が 2 割を占めるようになった。TOP
TECH Diamond Tool 社のシェアはまだ 1%で、競争相手の同業者はタイの地場企業 10 社、
日系 5~6 社である。販売先は主にタイ国内だが、パキスタンとベトナムへの輸出を開始し
た(予定を含む)。Pondeji 社長によれば、今後、さらなる品質向上が必要とのこと。
(2) 経営者と HIDA との関係
Pongdeji Sriwachirapardit 社長は日系の大手自動車メーカーに約 20 年勤務し、人事・
労務・会計部門を統括した後(Corporate Manager)、2 年前から現地企業、TOP TECH
-127-
第4章 外部専門家によるヒアリング調査
同社は、SNC グループ会社(計 14 社)の一つとして位置づけられている。SNC はエアコ
4.1
外部専門家によるヒアリング調査概要
Diamond Tool 社の経営を担っている。1992 年度に日系大手メーカーの人事課長時代に
AOTS 管理研修「人と組織の問題解決研修コース」(Solving Human & Organizational
Problems:SHOP)に参加し、その後 ILO 研修(1995 年)、2006 年度に人事・労務部長
時代に AOTS 管理研修「企業経営研修コース」
(Entrepreneurship Corporate Management
Course:EPCM)等を受けている。なお、Pongdeji 社長は、1992 年当時は日本語は全く
できなかったが、2007 年には日本語で講義聴講や討論ができるレベルになった。
その後、2012 年に、日系大手メーカーから社長としてタイ地場企業に移った。タイの中
小企業を強化するために、自ら経営者として関わりたいとの思いからである。以来、前職
の経験を活かして日本式生産管理システムを導入するなど、TOP TECH Diamond Tool 社
の抜本的な強化に努めている。工場内を見学したが、整然として5S がゆきとどいており、
生産管理や機械の点検チェックシートが緻密に記載されていた。以前は、機械が雑然と配
置されていたが、Pongdeji 社長のもとでレイアウト変更、現場カイゼンが行われた。また、
食堂や売店の設置等、福利厚生面でも従業員に配慮して運営している様子が見てとれた。
同社は人材育成にも積極的に取り組んでおり、自動化に備えて、Amata Nakorn 工業団
地の近くにある職業訓練機関、Thai-German Institute で従業員 12 名を 3 か月間研修させ
たと述べていた(費用は合計 200 万バーツ、一人当たり約 60 万円)。また、1999 年頃から
JICA 支援で導入された中小企業診断士育成事業で訓練をうけたタイ人専門家からアドバ
イスを受けているとのことである(注:タイの中小企業診断士制度は日本のような国家資
格制度としては定着しなかったが、現在は、より簡略化したプログラムで TPA が研修を実
施したり、TNI の工場診断の授業に取り入れている)。
Pongdeji 社長、日本的経営の導入に熱心
社員食堂、メニューが充実している
(3) 日系中小企業との連携
敷地内に 2 棟の工場スペースがあり、このうち 1 棟では 3 つの生産ラインが稼働中であ
-128-
る。興味深かった点は、他の 1 棟(3 分の 1 は第 4 ラインとして準備中)の余ったスペース
を「軒先ビジネス」として日系中小企業にサブリースまたは合弁事業を立ち上げる方向で
検討していることである(プラスチック成型を専門とする日系中小企業との JV、他にも日
本の地方自治体からコンタクトあり)。Pongdeji 社長によれば、日系中小企業と連携するこ
とで、自社の技術力を磨き、また事業領域が広がる可能性もあると期待しているとのこと。
最近は大企業の系列に属さない日系中小企業のタイ進出も増えているが、技術は優れてい
ても経営・販路・労務面等で不慣れな企業も少なくない。同社のような日本型ものづくり
を実践するタイの地場企業との合弁、あるいは軒先ビジネスを通じた提携は、日本の中小
企業にとっても有難い選択肢となる可能性を秘めていると感じた。
所感:
日系大手企業で日本型ものづくりを習得したタイ人材がスピンアウトし、現地企
業の底上げに尽力している取組として、非常に興味深い。同人材は日系企業を通じて、AOTS
(当時)の管理研修に 2 回参加し、日本的経営や日本のものづくりの考え方等を学んでい
る。過去に AOTS を利用した日系企業に在籍していた元研修生が、タイ企業の社長になり、
生産管理体制の強化を図っていることは、現地への技術移転やノウハウ普及といった点で
の貢献になると考えられる。
さらに、同社が、今ではタイ進出する日系中小企業のパートナーになりつつある点も注
目される。
第4章 外部専門家によるヒアリング調査
-129-
4.1
外部専門家によるヒアリング調査概要
付録: 同窓会の活動
タイ同窓会幹部と夕食を交えた意見交換会(2014 年 12 月 15 日)
趣旨:
タイ同窓会の会長 Mrs. Somsri Junhasavasdikul(Innovation Group の上級副総
裁)、及び 2014 年 10 月末に東京で開催された「HIDA 成功事例大会」のファイナリスト
10 名に選ばれた Mr. Phongstorn Ermongkonchai(Thai YAMAHA Motor 社の幹部、Chief
of Finance, Corporate Planning & Administration)と懇談したもの(HIDA バンコク事務
所の窪田次長と井出所員同席)。
タイの同窓会、ABK & AOTS Alumni Association (Thailand)(通称 AATA)は 1967 年
に設立され、47 年の歴史をもつ。AOTS 時代から研修をうけた人数は 3 万人弱にのぼるが、
Somsri 会長によれば、同窓会の会員は約 6,000 名で、このうち年次総会等に毎年参加する
のは 200~300 名程度とのこと。常設の理事会メンバーはマネジメントチームを含めて現在
18 名で、コアメンバーとして、以下のような活動を企画・開催している。
・
AATA による自主的活動:日本語研修(於 AATA オフィス)、日本人専門家による技術・
経営管理の研修、翻訳事業等
・
国内のカウンターパートと連携した活動:例として、CLV の若い人材によるタイ企業・
工場訪問
・
海外のカウンターパートと連携した活動:HIDA、ABK、日本の大学等
・
他国の HIDA/AOTS 同窓会と連携した活動:World Network of Friendship によるエ
ジプト同窓会の訪問やスリランカ企業家の訪問、スリランカやマレーシアの企業家の
訪問(自己負担)等
・
会員メンバーのための活動:月 2 回のニュースレター、年次総会、ゴルフコンペ、各
種イベント等
上記 3 番目の HIDA との連携活動については、新国際協力事業として日本へのスタディ
ーツアーを提案するなど、積極的に取り組んでいる(例:Entrepreneurship、Family
Business、Design for Recycling)。Somsri 会長は、タイは ODA から卒業したとされるが、
様々な形で AATA と連携する仕組みを作ってほしいと述べていた。
また、同窓会ネットワークを活用して、日本の中小企業とのビジネスマッチングをする
可能性についても言及があった。Somsri 会長はタイの化学製品会社の経営者であるが、2
年前に茨城県の中小企業(株式会社カワマタ・テクノ、ゴム金型設計・製作・試作・成形)
と JV 会社を設立(Kawamata Innovation Thailand, Ltd.)、自動車関連工業用のゴム金型
の設計・製作を行っている。Somsri 会長の発言は、自らの JV 経験にもとづき、タイ企業
と日本の中小企業が Win-Win となるようなビジネスマッチングの機会を創る意義を強調す
るものといえよう。
-130-
タイ・ヤマハ幹部の Mr. Phongstorn Ermongkonchai は近年、日本の中小企業のタイ進
出(あるいは進出への関心)が一段と増えていることに言及しつつ、大企業は自社で従業
員の研修を行えるが、中小企業にとって HIDA 研修の意義は大きい、と述べていた。また、
日系大企業にとっても、付加価値を高めるための高度な技術、経営スキル、同業の他社の
取組を学ぶなどの特定テーマの研修(管理研修)は引き続き有用と、意義を強調していた。
今後、タイと日本が相互に成長(Mutual Growth)を遂げられるような関係構築を望む、
と述べていたのが印象深かった。
第4章 外部専門家によるヒアリング調査
-131-
4.1
外部専門家によるヒアリング調査概要
ベトナム
株式会社 キャディアン(技術研修)
(調査日:2014 年 12 月 18 日)
会社名
(現地側企業)
(業種)
設計
Cadian Vietnam Co., Ltd.
(事業内容)
CAD 製図の受託請負
(従業員数)
100 名(2014 年 12 月現在)
(日本側企業)
株式会社 キャディアン
設立年
2005 年 3 月(駐在員事務所は
2004 年 5 月設立)
資本金
1,880 万円
研修生
2012 年度から 2014 年度まで計 5 名
(2012 年度:2 名、2013 年度:2 名、2014 年度:1名)
HIDA 制度は 2007 年から利用しており、累計 18 名(このうち 2011 年度はインフラ支
援予算で 2 名研修)
(1) 企業概要
Cadian Vietnam 社は、(株)キャディアン(1998 年設立、大阪府大阪市、従業員 20 名
(2014 年 4 月時点))の唯一の海外子会社である。本社の全額出資で 2005 年に設立され、
ホーチミン市内にオフィスがある。
(株)キャディアンは CAD 業務のアウトソーシング・
代行を行っており、Cadian Vietnam 社の設立によりベトナムとオフショア体制を構築し、
高品質を維持しながら作図価格・速度を強みとした業務展開をしている。(株)キャディア
ンはかねてから図面事業のアウトソーシング先として海外拠点の設立を検討していたが、
たまたま日本採用のベトナム人(日本の大学卒業)が勤めていたことから、この人材を核
にベトナムに子会社を設立しようと考えた。また、ベトナム国内の設計会社とのネットワ
ークをもっていたこと、チャイナ・プラスワンの視点という要因もあった。
Cadian Vietnam 社は本社のバックオフィスとして、日本で受託する CAD 業務を行って
いる。日本からのアウトソーシングなので、ベトナムで設計した図面を日本の本社へ納品
する(ベトナムで一から図面を作成する)。本社(株)キャディアンは建設用仮設機材のレ
ンタル・リース・販売業を営むエスアールジー・タカミヤ株式会社のグループ企業のひと
つで、設計部門でもある。他に、ホリー株式会社が建設用仮設機材の製造をしている。2005
年当時は親会社からの業務が中心だったが、2009/10 年頃から顧客の多様化を図っており、
現在は親会社の比率は 60~70%程度になっている。ベトナム国内の顧客も開拓したいと考
えているが、ベトナムでは建設工事前に足場図面の許可申請(日本では通称、ハチハチ申
請と言われる)が不要なので、現時点では需要が少ない。
-132-
(2) 技術研修制度利用の背景
2007 年から技術研修制度を利用しており、毎年 2 名程度を日本へ研修に送っている。
HIDA 制度を知ったのは、本社の常務が前の勤務先で AOTS(当時)を利用しており、紹
介された。
入社後 2~3 年の勤務をへて、能力・日本語・作図等の観点から帰国後にリーダー格また
はサブリーダーになれる見込みのある人材を選んで研修させている。設計のアウトソーシ
ング業務では日本本社の担当者とのコミュニケーションが重要であり、日本での研修を重
視している。
(3) 研修生から見た HIDA 研修制度の効果
今まで 18 名が研修をうけているが、今回、2012 年度~2014 年度に研修をうけた下記 4
名と面談した。4 名は、Cadian Vietnam 社の事業拡大・増員にあたり、日常的な技術指導
に加えて、技術研修の企画・運営ができる管理技術者を育成するために日本に送られた。
氏名(性別)
研修期間
研修項目
Ms. Ho Tu Anh(女) 2013 年 1 月 15 日~
現在の職位(当時)
J6W
チームリーダー
2013 年 9 月 26 日
仮設計画図の設計・
(CAD オペレータ)
(255 日間)
受発注管理・検収(品
質管理)、設備設計
2013 年 1 月 15 日~
J6W
チームリーダー
(男)
2013 年 9 月 26 日
仮設計画図の設計・
(CAD オペレータ)
(255 間)
受発注管理・検収(品
質管理)、設備設計
Mr. Nguyen Minh
2013 年 12 月 10 日~
不参加
マネージャー・部長
Ha(男)
2014 年 3 月 27 日
仮設計画図の設計・
級(ASHIBA チーム
(108 日間)
受発注管理・検収(品
リーダー)
※2008 年 3 月~2009 年
質管理)、設備設計
3 月にも研修(J6W)
Mr. Tran Bao Anh
2014 年 5 月 20 日~
J6W
チームリーダー
(男)
2014 年 10 月 23 日
仮設計画図の設計・
(CAD オペレータ)
(157 日間)
受発注管理・検収(品
質管理)、設備設計
4 名のうち Ms. Ho Tu Anh、Mr. Nguyen Minh Ha、Mr. Tran Bao Anh の 3 名は 2005
-133-
第4章 外部専門家によるヒアリング調査
Mr. Tran Pham Tuan
4.1
外部専門家によるヒアリング調査概要
年の設立時に入社し、Mr. Tran Pham Tuan は 2007 年に入社している。Mr. Nguyen Minh
Ha は 2 度目の研修だったので、今回は一般研修には参加しなかった。他の 3 名は J6W の
一般研修をうけた。
研修生は皆、日本の設計現場を見て、技術力の高さに驚くとともに、仕事に対する真面
目な姿勢(集中力、長時間勤務等)や仕事のやり方(時間厳守・時間管理、チームワーク
等)から多くを学んだ、と述べていた。また、研修後は日本の技術者にすぐに連絡して相
談できるようになるなど、日本側とコミュニケーションがとりやすくなり、仕事がスムー
ズに進められるようになった、と強調していた。
Cadian Vietnam 社では技術部門に 2 名のマネージャーがおり、各マネージャーが 3 つの
チームを統括している。現在 6 つのチームがあり、チームごとにチームリーダーとサブリ
ーダーをおいて各 7~8 名の CAD オペレータを管理・指導している。今回、研修をうけた
4 名のうち研修前に CAD オペレータだった 3 名は帰国後にチームリーダーに、2 度目の研
修をうけた Mr. Ngyuen Minh Ha はマネージャー(部長級)に昇格している。この関連で、
Mr. Tran Bao Anh は、日本の研修で業務の管理の仕方を習得したことが重要だったと強調
していた。リーダーとして、業務量を考えながらチーム内のオペレータに合理的に仕事を
割り当てられるようになった。また、日本の仕事のやり方の良い点をベトナムでも導入す
るなど、工夫しているとのことだった。
一部の研修生から、HIDA 研修センターの食事にベトナム料理が少なく、不自由を感じた
といったコメントが寄せられた。
児島社長(前列左から 2 番目)と帰国研修生
帰国研修生の Trao Bah Anh さん、チームリ
ーダーとして指導中
(4) 現地企業から見た制度利用のメリット、要望
児島圭輔社長にヒアリングしたところ、毎年、設計管理者候補や経営幹部候補を選抜し
-134-
て、人材育成の一環として HIDA 制度を利用して研修させている、とのことだった。また、
研修成果として、①日本の仕事のやり方を覚えて、規律正しくなったこと、②日本人の担
当者とのコミュニケーションが良くなり、技術面で向上していること、を挙げていた。2007
年から今まで 7 年間、HIDA 制度を利用しており、合計で 18 名が研修をうけた(退職者な
し)。このうち、Mr. Nguyen Minh Ha を含む 2 名がマネージャー(部長級)になっている。
今後の事業拡大をにらみ、こうした部長級の人材が統括するチームを増やしていきたい。
なお、2013 年に研修をうけた Ms. Ta Thien Kim は現在、本社採用に切り替えられ、日本
の(株)キャディアンで勤務しているとのことだった。
児島社長は HIDA の強みは日本語と日本文化の習得を導入研修としたうえで、この点に
おいて HIDA にさらなる改善を求めたいとの要望を述べた。具体的には、2013 年から J6W
の日本語研修の教材が変わり、レベルが下がったことを懸念している。さらに一般研修の
最終発表会を以前は日本語でやっていたが、最近は母国語で感想を述べてそれを通訳が日
本語訳して参加者に説明する方法になったが、これは望ましくない。演劇もなくなるなど、
日本語環境で研修生の創造力を活かす機会が少なくなっており、残念である。HIDA の強み
を活かすために、HIDA スタッフや日本語講師が研修生にかける時間を増やしてほしい、と
の要望が寄せられた。
Cadian Vietnam 社は、日本本社とのやりとりが多いことから、日本語の習得を重視して
いる。派遣前は 1~2 ヵ月間、月曜から土曜の午前に日本語を勉強させている。
同社は従業員の定着率が非常に高い。児島社長にその理由を聞いたところ、①ベトナム
人に主体性をもたせて業務をさせており、ベトナム的な雰囲気で人間関係がよいこと、②
HIDA 研修のチャンスがあり、2~3 年勤務すれば日本に行ける可能性があることがモチベ
事をしていること(単なる作図ではなく、強度設計もする)、④初任給は他社に比べ高くは
ないが、チームリーダーになるまでは給与の上昇率が普通の会社より高いこと、などの説
明があった。
所感: 会社が明確な人事方針をもち、HIDA 技術研修をその中にしっかり組み込んで利用
している。キャリアパスも明らかで、こうして日本と密接な関係のもとでベトナム人を信
頼・任せて業務をしていることが従業員の定着につながり、好循環を生んでいるようだ。
オフィスを訪問したところ、ベトナム人スタッフに机の並びや各チームの体制づくりを含
めて任せており、彼ら(彼女ら)が仕事をしやすい雰囲気が感じられた。
同時に、日本から CAD 業務の受託請負していることから、日本語の習得を非常に重視し、
HIDA 研修に対する目も厳しい。今般、日本語研修の質面について率直なコメントが寄せら
-135-
第4章 外部専門家によるヒアリング調査
ーションを高めていること、③帰国後も定着しているのは、普通の設計会社より高度な仕
4.1
外部専門家によるヒアリング調査概要
れた。今後、HIDA の比較優位を強化していくうえで、この指摘を真摯にうけとめるべきと
考える。
-136-
ベトナム
株式会社 フクオカラシ(技術研修と専門家派遣)
(調査日:2014 年 12 月 18 日)
会社名
(現地側企業)
(業種)
金属製品
Fukuokarashi, Vietnam Co. Ltd.
(事業内容)
精密金属部品切削加工
(従業員数)
8 名(2014 年 12 月現在、うち日
(日本側企業)
株式会社 フクオカラシ
設立年
2013 年 5 月
本人 2 名)
資本金
10 百万円
専門家氏名
恩地宏彰
研修生
2012 年度から 2014 年度まで計 2 名(予定)
(派遣期間)2013 年 8 月~2013 年 11 月
(2014 年度:1 名が研修済、1 名が研修中)
(1) 企業概要
Fukuokarashi, Vietnam 社は、旋盤・マシニング・専用加工機による金属加工の精密切
削加工を手がける(株)フクオカラシ(1948 年設立、福井県鯖江市、従業員 80 名(2014
年 12 月時点))の初の海外子会社である。本社の全額出資で 2013 年に 5 月設立され、ベト
ナム南部ドンナイ省のロンドウック工業団地内の中小企業専用レンタル工場(768 ㎡)に入
居している。本社がある鯖江市は眼鏡の産地で、(株)フクオカラシは眼鏡の丁番をはじめ
とする眼鏡部品、特殊・精密ネジ、特殊部品、精密部品、医療部品等の金属切削加工を得
え、国内の眼鏡工場は苦境に陥っている。(株)フクオカラシも例外ではなく、特にリーマ
ンショック後に工場は 100 名規模から 80 名へと縮小するに至った。少量・高級品生産でな
く大量・汎用品生産の路線をとっていることもあり、日本のものづくりに危機感をもち、
今般、海外進出することにした。当初は中国進出を考えていたが、たまたま合弁の話が立
ち消えになった時に本社社長がロンドウック工業団地の中小企業専用のレンタル工場計画
を知り、ベトナム進出を決意した。
Fukuokarashi Vietnam 社では眼鏡の丁番・ネジ(2 種類)を生産し、中国に輸出してい
る。加えて、2013 年 10 月にホーチミンで開催された METALEX(展示商談会)への出展
が契機で、在ベトナム日系企業と商談が成立し、新規業務(腕時計バンドのピン)におい
て 2014 年 10 月から生産を始めている。納品先はベトナム国内である。ベトナムで操業す
る日系企業は現地で部品調達に苦労しているので、今後、より多くの新規顧客を開拓して
いきたいと考えている。
-137-
第4章 外部専門家によるヒアリング調査
意としてきた。しかし、地元では低コストを追求して中国で眼鏡生産をする企業が年々増
4.1
外部専門家によるヒアリング調査概要
技術研修
(2) 技術研修制度利用の背景
2014 年度に初めて HIDA 技術研修制度を利用するもので、本社の取引先企業からの紹介
で知った。工場立ち上げ時の生産支援体制の構築を目的とした、人材育成研修といえる。
また、研修生受入れに先立ち、専門家派遣制度を活用している。
(3) 研修生から見た HIDA 研修制度の効果
研修生の第一号である、Ms. Nguyen Thi Hong Nghi にヒアリングした。一般研修は J6W
コースで、本社の実地研修では製品認識に関する技能を習得した。
氏名(性別)
研修期間
研修項目
現在の職位(当時)
Ms. Nguyen Thi
2014 年 5 月 20 日~
J6W
総務・人事・経理業
Hong Nghi(女)
2014 年 11 月 14 日
検査、製品認識に関
務全般、検査・資材
(179 日間)
する技能習得
調達(事務)
Ms.Nguyen Thi Hong Nghi はドンナイ省のラクホーン大学日本語学科を卒業し、1 年ほ
ど日本企業で通訳として働いた後、2013 年の Fukuokarashi Vietnam 社の設立時に入社し
た。工場立ち上げの事務サポートをした後、日本での実地研修を通じて品質検査、貿易実
務(海外出荷の手続き等)・インボイス(材料・資材調達等)を学んだ。日本語学科出身だ
ったので、一般研修の日本語授業は簡単だったと話していた。日本の企業文化の講義は興
味深く、異文化に触れ(例えば、ごみ分別)、日本人の考え方を理解できるようになった。
現在の職務内容は総務・人事・経理業務全般、さらに品質検査や資材調達を担当してい
る。もう 1 名、事務担当のベトナム人が入社し、Ms. Nguyen Thi Hong Nghi の指導のも
とで働いている。
(4) 現地企業から見た制度利用のメリット、要望
山本利光社長と内方忠敏工場長、及び本社企画課長の恩地宏彰氏(専門家としても赴任、
後述)からヒアリングしたが、HIDA 技術研修は、業務立ち上げ支援として非常に役に立っ
たと述べていた。ベトナム新工場の設立直後に、HIDA 制度を利用して総務・人事・経理を
担う人材を育成できたことにより、その後の工場運営がスムーズになった。今では、Ms.
Nguyen Thi Hong Nghi に総務全般や貿易事務を任せている。
Fukuokarashi Vietnam 社は 8 名体制で、日本人は山本社長と内方工場長の 2 名、残る 6
-138-
名がベトナム人スタッフである(事務職 2 名、技術者 4 名)。現在、技術者の 1 名である
Mr. Vo Minh Vuong が、HIDA 制度を通じて日本で加工技術の研修をうけている(期間:
2014 年 5 月~2015 年 3 月予定)。将来、技術面でリーダー格となることを期待して研修さ
せている。来年、もう 1 名の技術者を日本で研修させたいとのことだった。
山本社長、内方工場長、恩地課長はともに、中小企業は人員・資金面で制約があり海外
進出のノウハウも乏しいことから、人材育成面で補助金を受けられることは有難いと強調
していた。また公的支援について、HIDA が海外展開に関する様々な情報を提供してくれる
とさらに有用になる、と述べていた。将来的には、ベトナム新工場において受注領域を拡
大し新販路を開拓して、製品をベトナム国内のみならず各国に輸出できるグローバル企業
に成長していきたい、との抱負を語っていた。
なお、改善を要望する点として、日本語研修について、今回の研修生のように基礎知識が
ある人にとっては簡単すぎるので、中級以上のクラスを少人数でもよいので開設してくれ
ると有難い、とのコメントがあった。
新規に生産を始めた腕時計バンドのピン
内方工場長(右から 2 番目)、恩地専門家(右)
専門家派遣
(5) 専門家派遣制度を利用した背景
(株)フクオカラシの恩地宏彰氏は生産・工程管理に関する技術指導のために、2013 年
度に専門家として派遣されている。初の海外子会社として Fukuokarashi Vietnam 社が
2013 年 5 月に設立されて数か月後の時で、試作から生産へと準備を進める段階で、現地ス
タッフに生産管理やサプライチェーンについて指導し、原材料調達や工程管理等について
主体的に対応できる体制を構築することを目的とした。(なお、恩地氏は前職で、日系大手
-139-
第4章 外部専門家によるヒアリング調査
山本社長(中央左)、帰国研修生(中央右)、
4.1
外部専門家によるヒアリング調査概要
メーカーのベトナム工場の立ち上げ業務支援に携わった経験がある。
)
(6) 専門家の指導内容と課題
恩地宏彰氏の派遣期間は 2013 年 9 月 7 日~2014 年 1 月 14 日で、指導内容は「生産、工
程管理に関する技術指導」であった。恩地氏は専門家業務を終了して本社に戻っていたが、
当方訪問時に企画課長としてベトナム出張中で直接、話を聞くことができた。
まず、恩地専門家が Ms. Nguyen Thi Hong Nghi(主担当)及びサブ担当者をベトナム
工場で指導し、その後、主担当スタッフを技術研修制度で日本に送り、本社(福井県)で
実地研修を行った。具体的な指導内容は、①受注から設計・手配・製造・検査・出荷にい
たる生産工程管理の方法の基礎を指導し、製造工程や資材調達における納期遵守の目標を
定めて取り組む、②原材料の調達や輸出入管理の標準化やシステム化を指導し、原材料調
達コストと輸送費の低減に取り組む、③原材料、部品、冶具の調達管理担当者を育成する、
④輸出入管理担当者を育成する、ことであった。
結果として、①については「有望顧客先で事故発生により商談がストップし、納期を設
定しないテスト生産が続いた」ため、本生産に即した出荷管理や製造工程管理の基礎指導
を必ずしも十分にできなかったが、他の項目や人材育成全般については、問題なく行われ
た(専門家派遣案件概要説明書)。その後、主担当スタッフは日本で研修をうけ、今や生産
工程全般をサポートする事務に精通する人材に育ったことは、上述のとおりである。
付加指導としては、近隣のホンバン国際大学やホーチミン市外国語・情報大学において
生産管理実務の講義(4~5 回、座学)及びインターンシップの受入れを行った(9~10 名)。
なお、恩地専門家から出された問題提起として、専門家の経費手当について、中小企業
向けの単価水準を別途設けては如何といった指摘があった。専門家に支給される宿泊費や
滞在費が高すぎき、専門家の給与を大企業並みの水準を想定しているように思うとのこと。
HIDA 制度では経費の 3 分の 1 を会社が負担するが、補助金以外の企業負担額が大きくな
ると公的制度利用のメリットが薄まる。大企業と中小企業向けとで支給額の単価を変え、
手当水準を選べると資金不足の中小企業にとっても助かる、といったコメントがあった。
所感: Fukuokarashi Vietnam 社の場合は、ベトナムで工場を立ち上げたばかりで、まだ
本格操業を開始していない段階のヒアリングであった。そのため、研修効果の評価は難し
いが、近年、増加している(系列に属さない)中小企業が単独で海外進出する際に、日本
語が堪能で日本の業務を理解し、様々なサポート業務を担って現地生産体制を支える人材
を初期に確保することは重要であり、この点において HIDA 制度を利用した例として興味
深い(事務・運営面の中核人材の育成)。また現在日本で研修中の人材を通じて、技術面で
-140-
の人材育成・技術移転が行われることを期待したい。なお、同社はベトナム進出により販
路拡大、新規の顧客開拓が可能となっている。
HIDA の日本語研修については、今回の研修生は大学の日本語学科卒業だったので、適当
な日本語クラスがなかったようである。日本語の上級クラスを開設することも一案ではな
いかと考える。
第4章 外部専門家によるヒアリング調査
-141-
4.1
外部専門家によるヒアリング調査概要
ベトナム
大洋発條製作所(技術研修)
(調査日:2014 年 12 月 19 日)
会社名
(現地側企業)
(業種)
金属加工
Vina Taiyo Spring Co. Ltd.
(事業内容)
薄板ばね及びプレス部品の製
(日本側企業)
造販売
株式会社 大洋発條製作所
設立年
2007 年
(従業員数)
資本金
4,500 百万円
研修生
2012 年度から 2014 年度まで計 2 名
250 名(2014 年 12 月現在)
(2012 年度:1 名、2013 年度:1 名)
(1) 企業概要
株式会社大洋発條製作所(1953 年設立、大阪府東大阪市、従業員 135 名(2015 年 1 月
現在))は、薄板ばね・精密プレス加工メーカーで、二輪車・自動車を中心に(製品構成の
約 7 割)、農機具・建機・文具・家電・IT 産業を含む幅広い分野で金属製品の製造販売を行
っている。多品種大量生産(毎月 750~850 品種)、しかも製品の金型から製造し、加工・
組立まで一貫生産、内製化している点が特徴である。1997 年のタイ進出(現地企業との合
弁事業、49%出資)に続き、2007 年にベトナム進出し、全額出資で Vina Taiyo Spring 社
を設立した。タイは日系の四輪車メーカーへの部品サプライヤーとしての進出、ベトナム
は二輪車メーカーへの部品サプライヤーとしての進出である。自動車メーカーの部品の現
地調達が進むにつれて国内の仕事が伸び悩み、海外進出を決断した。メーカーからの要請
ではないが、現地で新しい顧客を開拓したいと考えた。現在、タイは約 250 名(ホームペ
ージ)、ベトナムも 250 名(設立当初は 20 名)と、短期間で本社を大きく上回る人員体制
になっている。
ベトナム工場はハノイ近郊の Thach That-Quoc Oai 工業団地(現地資本)に立地するが、
ここを選んだ理由は、顧客の二輪車メーカーや第一次下請け企業(複数)から中間地点で 1
時間半以内の距離にあること、ハノイ中心部より人件費や価格が安いこと、ベトナムを良
く知るビジネスコンサルタントの助言があったことなどによる。ベトナムでは 210 品種を
生産している。
(2) 技術研修制度利用の背景
Vina Taiyo Spring 社が HIDA の技術研修制度を知ったのは、本社の紹介による。本社は
2009 年度からタイ工場の技術者を HIDA 制度のもとで継続的に受け入れており、累計で 9
-142-
名になる(2009 年度 2 名、2010 年度 2 名、2011 年度 1 名、2012 年度 2 名、2013 年度 2
名)。ベトナム工場では設立直後から独自に本社で技術者を研修していたが、2012 年度から
HIDA 制度を利用するようになった。以前は研修前にハノイの日本語学校に通わせていたが
(会社負担)
、HIDA 制度を利用するようになってからは、自前の日本語研修はしていない。
今般、技術研修制度を利用した背景には、ベトナムでプレス金型を生産することになり、
現地工場で設計から部品加工・組立・検査・納品に至る生産体制を強化することが急務と
なったことがある。そもための中核となるベトナム人技術者を、日本で研修させることに
した。
(3) 研修生から見た HIDA 研修制度の効果
2012 年度と 2013 年度に研修をうけた 2 名の技術者にヒアリングした。一般研修は J6W
コースで、実地研修は製造現場(京都府福知山の長田野工場)で実施された。
氏名(性別)
研修期間
研修項目
現在の職位(当時)
Mr. Nguyen Hai
2012 年 7 月 30 日~
J6W
金型メインテナン
Quan(男)
2013 年 3 月 29 日
プレス金型・マルチ
ス・調整のサブリー
(243 日間)
フォーミング金型の
ダー(金型の技術者)
設計製作技術
Mr. Nguyen Duc
2013 年 8 月 27 日~
J6W
金型設計チームでリ
Hoang(男)
2014 年 3 月 30 日
板バネ・精密プレス
ーダー格(金型の技
(216 日間)
用金型の設計製作技
術者)
術
金型・マルチフォーミング金型の設計製作技術を学んだ。金型メインテナンスや新しい金
型の調整を担当する技術者だが、研修後はメインテナンス・調整チーム 10 名のサブリーダ
ーを務めている(注:金型部門は計 20 名で、設計、メインテナンス・調整、金型製作の 3
つのチームがある)。日本での研修を通じて、①日本語能力が高まったこと(日常生活レベ
ル)、②金型の調整の仕方やメインテナンス作業の効率が高まり、作業スピードも速くなっ
たことを主な成果として強調していた。
Mr. Nguyen Duc Hoang は入社後 1 年の 2013 年に研修をうけた。実地研修では、板バネ・
精密プレス用金型の設計製作技術を学んだ。金型の図面設計をする技術者だが、研修後は
設計チーム 4 名の中で指導的役割を果たしている。以前から金型の設計理論や図面を勉強
していたが、ベトナムで扱う金型は簡単なものだけだった(数も 1~2 個)。日本での研修
により、多くの種類で複雑な形状の金型製作を学び、専門性と実践的経験が大きく増え、
-143-
第4章 外部専門家によるヒアリング調査
Mr. Nguyen Hai Quan は入社後 1 年の 2012 年に研修をうけた。実地研修では、プレス
4.1
外部専門家によるヒアリング調査概要
技術力も向上したと述べていた。日本語研修については、J6W コースでは日常生活レベル
の日本語は身につくが、専門用語は学ばないので、工場の実地研修で指導員とのコミュニ
ケーションに対応できるよう HIDA で専門用語を学ぶ機会が作ってほしかった、と述べて
いた。
二人とも、HIDA 研修センターでベトナム料理がもっとあればよかったと述べていた。
(4) 現地企業から見た制度利用のメリット、要望
勝野慎二氏(営業・品質管理マネージャー)と小幡高弘氏(技術マネージャー)からの
ヒアリングによれば、二人とも研修後は、他のベトナム人スタッフに比べて作業が丁寧に
なり、技術者として成長した。具体的には、工具の扱い方が丁寧になり、作業後は整理整
頓により工具台の5S を保っている。広い視野で生産工程を学んだので、部品の修正につい
て細かく数値化して指示しなくても、どの程度の調整が必要か判断できるようになった。
日本の研修でものづくりの基礎を習得してきた、と述べていた。
ベトナム工場では、設立直後は金型を 2 個しか製作していなかったが、2013 年は 14 個
製作し、2014 年は 28 個を製作予定とのこと。その意味で、Mr. Nguyen Hai Quan と Mr.
Nguyen Duc Hoang は金型の現地生産体制を強化していく中で、期待通り、中核人材の役
割を担いつつある。なお、小幡氏は、日本国内ではコスト削減のみが関心事になりがちだ
が、ベトナム工場では業務拡大の展望があり従業員も意欲的なので、やりがいを感じると
述べていた。インドネシア向けの部品生産が始まっており、ベトナムを生産拠点として輸
出も考えているとのことだった。
Vina Taiyo Spring 社は従業員の定着率はよく、退職者は少ない。その理由として勝野氏
は工場が立地する地域環境をあげていた。例えば、同地域には大学卒エンジニアにとって
他の勤務先がないこと、親を大切にするので自宅通勤者が多いこと、会社としても工場周
辺に住む人を採用していることなどである。また、同社では福利厚生を大切にしており、
食堂の昼食メニューを従業員の意見を取り入れて改善したとのこと(食費は会社負担)。技
術系スタッフについては、ハノイ工科大学とて提携して、インターン生を毎年 2~3 名受け
入れている。
-144-
帰国研修生の Nguyen Duc Hoang さん、金
勝野氏(営業・品質管理マネージャー)と小
型メインテナンス・調整チームのサブリーダ
幡氏(技術マネージャー)
ー
ベトナム現地調査後、親会社の大洋発條製作所の長田野工場を訪問し、生産部門の平和
悟部長と足立邦浩課長(設計担当)に面談した。多品種大量生産のため同社は製品サイク
ルが早く、月に 4 台程度、新規の金型を使用する必要があり、その半分を内製している。
タイやベトナムで金型を内製しないと現地日系企業の顧客のコスト要求に見合う製品を製
造できない、ひいては受注できないという逼迫した状況から、金型設計・製造の現地移管
を急速に進めてきた。最近は現地製造することを前提とした商談もあり、タイやベトナム
に工場があることで顧客のコスト要求に応え、営業がしやすくなるなど、業績向上に寄与
していると、述べていた(ちなみに、タイ工場は本社にほぼ匹敵する売上をあげ、収益源
になっている由。ベトナム工場はこれからであるが、2014 年に在インドネシアの日系企業
への納入を含め、販路が広がっているとのこと)。
以前は日本で製作した金型を使って現地工場で部品製造をしていたが、HIDA 技術研修を
利用した人材育成により、(全ての部品ではないが)現地で金型設計・製作・メインテナン
スまで一貫してできるようになった。タイ工場では既に、かつて本社から輸出していた製
品を製造・直接納入するようになっている。ベトナム工場でも徐々に金型設計・製造でき
る品種が増えており、今後は日本で採算が合わない製品を現地に移管し、日本は新規取引
や、より付加価値の高い業務を取り込む計画である。タイとベトナム工場の分業も進んで
おり、タイ工場で受注した金型部品の一部をベトナム工場で製作し、タイに輸送して組立
て、タイの顧客に納品した事例もあるとのこと。
所感:日本で金型を作り、ベトナムやタイで部品加工をするとコスト高となり、注文をと
れない。したがって、金型を現地生産できる体制をつくることが現在の目標となっている。
このために、金型の専門家である小幡氏が 2014 年 2 月からベトナム工場に送られ駐在して
145
4.1
外部専門家によるヒアリング調査概要
いる。こうした動きの中で、HIDA 研修は金型設計、メインテナンス・調整を担う中核人材
を育て、現地生産体制を強化することに貢献していると考えられる。なお、Vina Taiyo
Spring は 2014 年度は HIDA を利用していないが、これは当面は、日本で研修をうけた上
記の中核人材を軸に、小幡氏による現地指導を組み合わせてベトナム工場全体の生産体制
を強化したいとの本社意向による。その後、ワンランクアップした現地技術者を、日本で
研修する方向で考えたい模様である。
日本語研修について、研修生からの要望にあるように、(特殊専門用語は企業ごとに学べ
ばよいが)最大公約数的な基本用語を HIDA で教える可能性については検討に値すると思
われる。
-146-
ベトナム
株式会社デンソー(技術研修)
(調査日:2014 年 12 月 19 日)
会社名
(現地側企業)
(業種)
自動車部品の製造販売
DENSO Manufacturing Vietnam
(事業内容)
エアフロメータ、VIC アクチュエ
Co. Ltd.
ータ等の生産・販売
(日本側企業)
株式会社デンソー
設立年
2001 年 10 月(2003 年から操業開
(従業員数)
始)
3,700 名(2014 年 12 月現在、う
ち日本人駐在は 23 名)
製造部門:3,450 名、設計部門:
250 名
資本金
1,000 万 USD
研修生
2012 年度から 2014 年度まで計 25 名
(2012 年度:7 名、2013 年度:5 名、2014 年度:13 名)
加えて、2014 年度は低炭素技術輸出促進支援事業で 6 名研修
HIDA 制度は 2002 年度から利用しており、累計 105 名(延べ人数で 156 名)
(1) 企業概要
DENSO Manufacturing Vietnam 社は、自動車部品の第一次下請け企業(Tier 1 サプラ
イヤー)である株式会社デンソー(1949 年年設立、2014 年 4 月時点で従業員 38,581 名)
ン工業団地(日系)に立地している。
(株)デンソーはアジアでは、ASEAN 地域に 21 拠点(内訳はタイ 8 社、インドネシア
4 社、マレーシア・フィリピン・ベトナム各 2 社、シンガポール・カンボジア・ミャンマー
各 1 社)、インドに 7 拠点を設置している。他に韓国、中国、台湾、インド、パキスタンに
拠点がある。シンガポールとタイにアジア地域統括拠点を置き、特に ASEAN 地域では各
国ごとのコスト面等の優位性にもとづき、製品品種を分担・相互補完する生産体制をとっ
ている。タイは ASEAN 地域統括拠点で一部門にテクニカルセンターが設置され、同地域
に適した製品開発をしている。
こうした分業体制の中で、DENSO Manufacturing Vietnam 社は 2003 年に操業開始以
来、自動車のエンジン関連部品(エアロフロメータ、VIC アクチュエータ等)を製造し、
世界への輸出拠点となっている。また、自動車部品のアプリケーション設計を行うデザイ
ンセンターを併設し、本社開発品の類似設計、強度や流れの数値解析等を行っており、技
術開発分野でも現地化に取り組んでいる。
-147-
第4章 外部専門家によるヒアリング調査
のベトナム現地法人として、2001 年 10 月に設立された(95%出資)。ハノイ近郊のタンロ
4.1
外部専門家によるヒアリング調査概要
(2) 技術研修制度利用の背景
ベトナム工場は日本から部材を輸入して組立てているので、主に日本語で業務をしてい
る。また、ベトナム人幹部は日本と対話をする機会が多い。(株)デンソーは長年、世界中
にある現地法人から HIDA 制度を利用して研修生を送っている。本社にて全体の人数枠を
考慮しながら、各国の現地法人から送る研修生の数を調整している。ベトナム工場(製造
部門)からも毎年、日本で研修させている。選考基準として、入社後 3~4 年がたち離職す
る可能性が低く、将来の幹部候補生と見こまれる人材を重視している。
併設しているデザインセンター(230 名)は日本の設計部門のオフショアの役割を果たし
ているので、本社と密接にコミュニケーションをとる必要がある。日本語の習得に即効性
が要求されるので(HIDA 研修の応募プロセスを待っていられない)、自社で独自に日本語
講師を雇って研修している。これに対し製造部門は、工場内で作業が完結するので、日本
語習得は設計部門ほどは緊急でない。したがって、HIDA 制度を活用して幹部候補生を育成
しているとのこと。
(3) 研修生から見た HIDA 研修制度の効果
今回、2013 年度と 2014 年度の研修生 2 名にヒアリングした。一般研修は J13W コース
で、日本語教育を重視していることが伺われる。実地研修は、三重県いなべ市の(株)デ
ンソーの大安製作所が主な実習先であるが、愛知県の西尾製作所でも実施された。
氏名(性別)
Mr. A(男)
研修期間
研修項目
現在の職位(当時)
2012 年 4 月 17 日~
J13W
生産技術の係長(技
2012 年 10 月 26 日
製品加工の工程設計
術者)
2014 年 4 月 22 日~
J13W ( 申 込 書 は
検査の副係長(技術
2014 年 7 月 10 日
J6W、要チェック)
者)
(80 日間)
AT モジュールの検
(193 日間)
Mr. B(男)
査
Mr. A は 2010 年 10 月に入社し、生産技術部門で働いている。研修前は副係長(部下は 4
名)、現在は係長として 14 名の部下を指導している。日本では AT モジュールの生産ライン
で研修をうけたが、製品の仕様書を日本人と一緒に作り、今それをベトナムで製造・加工
している。日本で取り組んだ経験が現在の仕事に役立っている、と述べていた。また、日
本語能力が向上し、顧客の自動車メーカーの担当者に日本語で相談できるようになり、自
-148-
信をもって仕事ができるようになった、と話していた。
Mr. B は 2004 年入社で、品質検査部門で働いており、日本での研修は 2 回目である。い
ずれも、新しい製品の生産前に日本で研修をうけ、日本人の指導員と一緒に検査機械(デ
ンソーで内製)の仕様書を作成した。研修中は毎月 1 回、ベトナム語と日本語で報告を書
き、上司に進捗状況を連絡した。日本で驚いたことは、効率的な公共交通(電車)、日本人
の親切さ、丁寧なサービス、また仕事が忙しいこと、と述べていた。彼は日本料理は口に
合ったようで、研修期間の食事には問題なく、おいしかったとのこと。
なお、二人とも研修後に報告書をまとめて各部署で共有したり、研修成果の報告会をし
てはおらず、係長または副係長として日々の業務を通じてチームを指導しているとのこと。
帰国研修生 2 名
八木副社長(後列左)と帰国研修生
(4) 現地企業から見た制度利用のメリット、要望
りやすくなったこと、日本人の仕事の仕方がわかり計画の大切さを理解するようになった
ことを強調していた。教育担当スーパーバーザーの Ms. C は、社内で日本語能力試験を年 2
回行っているが、HIDA 研修生は日本語試験の成績が向上しているほか、帰国後は動きがテ
キパキするようになった、と述べていた。
DENSO Manufacturing Vietnam 社では、主に生産技術と品質管理の部門で働く大学卒
業者を研修に送っている。入社後 4 年たつと辞める可能性が低くなるので、3 年以上勤務し
て辞めそうにない人を選考する。また、新しいプロジェクトのキーパーソンになりそうな
人、将来リーダー格と見こまれる人を重視して選んでいる。
転職率は製造部門、設計部門ともに 1 割を切っており、周辺の企業より低い。入社して 4
年目を超える者はめったに辞めないので、いかに 2 年目、3 年目の従業員に対して、デンソ
ーで働く意味、価値、将来性を感じてもらえるかが鍵となる。そのため同社では体系だっ
た人材育成システムをつくっている。例えば、①入社 4 年目で幹部候補生を見極め、一部
-149-
第4章 外部専門家によるヒアリング調査
八木寛一副社長は、主な研修効果として、日常の仕事で相談やコミュニケーションをと
4.1
外部専門家によるヒアリング調査概要
は HIDA 制度で研修する、その後も、節目ごとにものづくり人材研修を行う、②社内資格
認定制度があり、高卒のワーカーでも 1 年間、理論と実技の集中研修をうけて認定されれ
ば、デンソー社内の高専・短大卒と認められ、学歴として将来の幹部候補生と同じレベル
にする(通称、デンソー学園)、③スペシャリスト育成として、技能五輪をめざした訓練を
する、など、この会社にいればキャリアアップができると思える制度づくりに努力してい
る。HIDA 研修は、まさにこうした人材育成システムに組み込まれている。
なお、タイ・プラスワンとして、ベトナム工場の従業員をタイで研修する可能性につい
て質問したところ、言葉の問題があるのでタイでの教育は現実的ではない、との説明があ
った(英語圏と異なり、アジアでは言語が多様)。(株)デンソーは、日本における日本語
での教育を重視していると感じた。
所感:
今回の面談で感じた点は、DENSO Manufacturing Vietnam 社は社員の日本語教
育を非常に重視していることである。「デンソースピリット」を理解したベトナム人社員を
一人でも多く作ることが大切である(八木副社長によれば、デンソーでは、自分だけで知
識を蓄えるのではなく、デンソーに貢献できる人や情報共有できる人を評価している。こ
れがデンソーの価値観、企業文化になっているとのこと)。日本語の能力が向上することで、
日本で働く日本人社員と直接コミュニケーションをとりながらプロジェクトを推進するこ
とが可能になる。そして、これが業務のスピードアップにつながり、社員の能力強化にも
なる。(HIDA ジャーナル No.2、Spring 2013、p.6 参照)
同社はタイに ASEAN 地域統括拠点をおいているが、製品品種による分業体制をとって
いること、ベトナム拠点からは世界に輸出していること、設計を含めて行っていることな
どから、タイをマザー工場として研修を行うモデルは採用していない。製造部門における
幹部候補生の育成、キャリアパスの一環として HIDA 制度を明確に位置づけて活用してい
る。一方、デザインセンター(設計部門)は短期間で高い日本語能力の習得が求められる
ので自社で日本語教育を行っており、使い分けをしている。
-150-
ベトナム
昭栄印刷 株式会社(技術研修と専門家派遣)
(調査日:2014 年 12 月 19 日)
会社名
(現地側企業)
(業種)
印刷業
SHOEI Vietnam Co. Ltd.
(事業内容)
各種パッケージ、パンフレット、
(日本側企業)
取扱い説明書、シール
昭栄印刷 株式会社
設立年
2009 年 2 月にハノイ事務所設
(従業員数)
330 名(2014 年 12 月現在)
立、2011 年 11 月に工場設立
資本金
8,000 万円
専門家氏名
大森豊貢
(派遣期間)2011 年 11 月~2012 年 4 月
桐原裕介
(派遣期間)2013 年 11 月~2014 年 2 月
渡辺雅司
(派遣期間)2014 年 10 月~2015 年 2 月
研修生
2012 年度から 2014 年度まで計 2 名
(2012 年度:2 名)
加えて、2014 年度は低炭素技術輸出促進支援事業で 4 名研修
HIDA 制度は 2011 年度より利用しており、累計 10 名
(1) 企業概要
年設立、新潟県新発田市、従業員 122 名(2014 年 12 月時点))の初の海外子会社である。
本社の全額出資で 2009 年 2 月にハノイに事務所を設立し、当初は DTP(Desktop
Publishing:パソコンでデータを作成し、印刷物にする)データを日本から送って現地で
加工し、日本に送り返す業務のみだったが、2011 年 11 月にハノイ近郊バクニン省の VSIP
工業団地に工場を建設し、在ベトナム企業の製品パッケージ等の印刷・加工を開始した。
ほぼ同時期に、中国北京市に SHOEI China を設立している(2010 年 7 月創業、合弁)。
ベトナム進出の理由は、多くの日系企業が進出しており、また今後もさらなる進出が見
込まれるなか(チャイナ・プラスワンを含め)
、現地に日系印刷会社が少ないので日系企業
からの需要が見込めること、また過去 3 年間、本社でベトナム人の技能実習生を受け入れ
ており(毎年 3 名程度、現在本社に 9 名いる)
、ベトナムに親近感をもっていたこと、など
による。なお、SHOEI Vietnam 社の工場長は、日本で技能実習生として働いた経験がある
ベトナム人(ただし、当時の勤務先は昭栄印刷ではない)である。
販路は主にベトナム国内向けだが、DTP 部門は日本からの注文も受けている。
「日本品質
-151-
第4章 外部専門家によるヒアリング調査
SHOEI Vietnam 社は、データ加工サービス、印刷業を専門とする昭栄印刷株式会社(1959
4.1
外部専門家によるヒアリング調査概要
をベトナム価格で!」をコンセプトとして、現地の印刷会社に発注するのと変わらない価
格で、パッケージ製造・薄物商業印刷をワンストップで(印刷から製本まで)行うことを
強みとしている。従業員数は工場設立時(2011 年)の 100 名から、現在は 330 名に拡大し
ている。
技術研修
(2) 技術研修制度利用の背景
2009 年 2 月にハノイ事務所を設立、当初は日本から送る DTP データを現地で加工して
日本に送り返す業務が中心だったが、現地進出企業からの受注を見込んで 2011 年に印刷工
場を建設した。初めての HIDA 技術研修制度の利用は 2011 年度で(4 名)、この時、2 名
は DTP オペレーターとして印刷版出力技術の研修をうけ、残る 2 名は 11 月の工場立ち上
げに備えて生産管理システムを学んだ。
HIDA 制度を知ったきっかけは、本社が商工中金の国際部から紹介をうけたことにある。
(3) 研修生から見た HIDA 研修制度の効果
今回、2011 年度と 2012 年度に研修をうけた 3 名と面談した。一般研修は 1 名は J6W、
2 名は 9D コースで、実地研修でパッケージ印刷・製作技術を習得した。実習先は昭栄印刷
(株)及び、パッケージ印刷の技術をもつ株式会社中央製版であった(ともに新潟県)。
氏名(性別)
研修期間
研修項目
現在の職位(当時)
Mr. Pham Van Trung
2011 年 9 月 14 日~
J6W
DTP チームの責任者
(男)
2011 年 11 月 30 日(78
印刷版出力機の操
(技術者)
日間)
作・手順等の技術習
得
Mr. Tran Van Ha
2012 年 9 月 4 日~
9D
副工場長(製図チー
(男)
2012 年 12 月 21 日
パッケージ生産(工
ムのリーダー)
(109 日間)
程全体の理解、製函
機の操作方法の習
得)
Mr. Nguyen Huu
2012 年 9 月 4 日~
9D
営業部長(倉庫管理
Minh(男)
2012 年 12 月 21 日
パッケージ生産(工
チームのリーダー)
(109 日間)
程全体の理解、打ち
抜き機の操作方法の
-152-
習得)
Mr. Pham Van Trung は 2010 年 3 月入社で、ハノイに DTP 部門の事務所が設置された
時からの社員である(当時は印刷工場は完成していなかった)。日本で印刷版出力技術の研
修をうけ、現在は DTP 専門チームの責任者(5 名を指導)になっている。日本で DTP に
ついて学び、パッケージのデザイン、図面設計、検査等のやり方を習得した。特に印象に
残ったのがカイゼンである。帰国後は皆にカイゼンを説明し、仕事の効率や品質を高める
ためにフォーマットに項目を書き出して、チームから提案を奨励している。また、日本で
納期・品質・規則厳守・5S などを学んだ。地震や火事等の防災対策が徹底していることも
強く印象に残っている、と述べていた。
Mr. Tran Van Ha はベトナム工場が完成した直後の 2011 年 12 月入社、翌年に日本で研
修をうけてパッケージ生産の工程全体、製函機の操作方法や知識を習得した。パッケージ
生産は初めての経験で、製品の材料、形状の理解・製函機の操作を一人で行えるように技
術指導をうけた。研修前は生産部門の製図チームリーダーで、帰国後は副工場長として生
産管理部門全体をみている。
Mr. Nguyen Huu Minh は 2011 年 10 月入社、翌年に日本で研修をうけてパッケージ生
産の工程全体、打ち抜き機の操作方法や知識を習得した。研修前は生産部門の倉庫管理チ
ームリーダーだったが、帰国後、Mr. Tran Van Ha とともに副工場長になり(2014 年 11
月まで)、12 月に営業部長に就任している。日本の実地研修で印象深かったこととして、
「抜
き」、「箔押し」(金箔)の技術や、カイゼンによる問題解決の方法、工場全体のマネジメン
トを学んだ、と強調していた。また、新潟県で地元の人たちが温かく迎えてくれ、毎日、
寮に送り迎えしてくれたことを感謝していると述べていた。
桐原裕介氏(本社の第一生産部印刷第二課長、専門家としても赴任:後述)は、拡大し
ていく現地業務の中で、日本の品質を分かる人材を育てることの重要性を強調していた。
特にパッケージ生産部門において、Mr. Tran Van Ha と Mr. Mguyen Huu Minh の 2 名を
まず中堅幹部として育て、その次のリーダー格も順次育てていく必要がある。その意味で、
HIDA 技術研修により、カイゼンをはじめとする効率や品質を高めるための取組、日本の仕
事の仕方を習得することは重要である。SHOEI Vietnam 社は 2011~2014 年度に計 10 名
を HIDA 研修に送っている(うち 4 名は、低炭素技術輸出促進人材育成支援事業の予算)。
(面談時間が限られ詳しいヒアリングはできなかったが)既存資料から判断すると、
SHOEI Vietnam 社は、日本とは異なり紙媒体の需要が旺盛なベトナムで、現地進出企業か
らパッケージ印刷の受注を獲得して売上を拡大している。工場稼働後の 3 年間で従業員数
-153-
第4章 外部専門家によるヒアリング調査
(4) 現地企業から見た制度利用のメリット、要望
4.1
外部専門家によるヒアリング調査概要
は大きく増えている(3 倍増)。さらに現物見本帳の作成という新規事業にも取り組む予定
で、急速に拡大する現地業務において日本水準の品質管理・工程管理・生産管理技術を徹
底して導入・確立することがきわめて重要になっている。
桐原専門家(右端)と帰国研修生 3 名
昭栄印刷のディスプレイ
専門家派遣
(5)専門家派遣制度を利用した背景
SHOEI Vietnam 社は、2011 年度から専門家派遣制度を継続的に利用しており、今まで
3 名の専門家が派遣されている。2011 年度は大森豊貢専門家が印刷工場の立ち上げ直後に、
印刷物の DTP 操作や印刷技術の生産管理について指導した。2013 年度に桐原裕介専門家
が印刷の品質管理技術を指導した。現在、2014 年度に渡辺雅司専門家が、新規事業である
見本帳の製作立ち上げに関する技術指導を行っている。いずれも、昭栄印刷(株)の社員
である。
専門家派遣制度を知った経緯は、同社が(商工中金の紹介をうけ)最初に受入研修につ
いて AOTS(当時)に問い合わせたところ、JODC(当時)の専門家派遣制度についても紹
介され、両制度を組み合わせて利用することになったものである。
(6)専門家の指導内容と課題
今回訪問時に、2013 年 11 月~2014 年 2 月まで専門家として派遣されていた桐原裕介氏
(本社、第一生産部印刷二課課長)がベトナム出張中で、話を聞くことができた。桐原氏
の指導内容は、「印刷技術の品質管理に関する技術指導」であった。大森専門家の指導によ
り生産管理について一定の成果をあげたが、生産量をあげると印刷時に色彩にムラが生じ
る、表面に汚れが付着する、ゴミが混入するなどの品質問題が生じるようになった。不具
-154-
合のために機械を停止し、材料を再据付するなどムダな作業が多く、ロス削減が課題とな
っていた(専門家派遣案件概要説明書)。
桐原専門家は、①品質管理に対する従業員の意識改善、作業形態を見直すこと(役割
分担の明確化、作業報告書に予定時間・実作業時間を記入して、ロス時間・原因の見える
化、など)、及び②生産管理・検査部門と生産部門におけるリーダー的人材の育成をめざし
て指導を行った。結果として、①については不良率の減少は当初目標どおり進んでおり、
作業報告書の記入も定着した。ただし記入間違い・漏れがあり、リーダークラスによる確
認、リーダーからワーカーへの指導が必要な状況である。②については、両部門ともワー
カーの上司であり管理責任者的立場であるという意識づけを行い、主体性をもって取り組
む様子が見られ始めている。技術研修と組み合わせて、Mr. Tran Va Ha と Mr. Nguyen Huu
Minh の 2 名を、日本の品質水準が分かる中核人材として育てていきたいと考えている。
現在、渡辺専門家が 2014 年 10 月から 5 ヵ月の任期で派遣されているが(今回は面談で
きず)、これは新規事業としてカーペットや壁紙等の素材の現物見本帳の製作が立ち上がる
予定のところ、膨大な種類の素材をミスなく扱えるように資材管理と工程管理を強化する
ために指導を行っているものである。
これら 3 名の専門家は、付加指導として技術提携先の地場企業に対して品質管理につい
ての基礎知識や、ミス・ロスの原因抽出方法の指導を行っている。
所感: SHOEI Vietnam 社は工場稼働後の数年で従業員数は 3 倍に増え、より最近は新規
事業の話もきており、進出後の業務が急速に拡大している。日本水準の生産体制の導入・
確立が急務となっている中で、HIDA 制度が活用されている。同社はベトナム工場の建設直
後から、HIDA の技術研修(リーダー格の育成)と専門家派遣(現地の生産管理・検査部門
年度に研修をうけた 3 名はそれぞれ、DTP 部門の責任者、副工場長、営業部長に就任して
おり、期待どおり中核人材として育ちつつあり、HIDA 制度利用の効果はあがっていると思
われる。
なお、同社が技術研修と専門家派遣制度を組み合わせて利用するにいたった背景には、
商工中金から紹介された AOTS(当時)が、JODC(当時)の活動を併せて説明したことが
ある。一般的に中小企業は情報アクセスに苦労しており、このように他機関の活動を含め、
必要な情報を迅速に共有していくこと(効率的なたらい回し)は重要と考える。
-155-
第4章 外部専門家によるヒアリング調査
と生産部門の強化)を組み合わせて、計画的に人材育成に取り組んでいる。2011 年度と 2012
4.1
外部専門家によるヒアリング調査概要
付録: 同窓生の活動
Institute of Management and Technology Promotion (IMT)(2014 年 12 月 17 日訪問)
Mr. Luu Nhat Huy, CEO と面談・意見交換
趣旨:
IMT は HIDA 同窓生が中核となって設立された組織で、HIDA を含む日本とのネ
ットワークを活用してビジネスコンサルティングをしている。こうした組織の活動及びベ
トナム企業の人材育成等に果たしている役割を理解するために面談したもの。
IMT は 2005 年に設立された民間非営利団体で、企業経営や人材育成を中心したコンサル
ティングを行っている(ホーチミン市の科学技術局から認可をうける)。ホーチミン市に本
社があり(スタッフは約 10 名)、ダナンに支社がある(3 名)。IMT の経営陣は全員が HIDA
同窓会のメンバーで、IMT 代表の Mr. Tuan はベトナム同窓会の会長も兼任している。Mr.
Tuan はパナソニックの品質管理マネージャーを務めた後、複数の大手日系企業を経て、
2006 年にサムソン副社長に就任した経歴をもつ。2009 年から IMT 代表を務めている。CEO
の Mr. Luu Nhat Huy は AOTS 研修コースに 2 回参加した。
IMT は、主に以下の活動をしている。
・ トレーニング: 管理者研修、カイゼン・5S 研修、顧客サービス研修等。(例:Mgt.
Excellence のために、BSC パフォーマンス、能力、賃金体系、業務プロセス等/Mfg.
Excellence のために QDCSM、MFCA(Material Flow Cost Analysis)等)
・ コンサルティング: マネジメント及びガバナンス指針。Breakthrough をもたらし、将
来につながるソルーションを提供する。
・ アドバイザリー・サービス: 一定の期間に専門的ノウハウをもって指導(工場改善、
人事・労務管理、販路拡大、ブランドづくり、事業計画作成等)
今まで研修プログラムやセミナーに参加した人数は約10,000人にのぼる。また、マテリ
アルフローコスト会計(MFCA)コンサルティングのパイオニアとして、日本生産性本部
やHIDAからの協力を得てコンサルティング活動を行っている。(MFCAは、生産にかかる
素材やエネルギーのロス、及びロスに係った設備償却費等のシステムコスト、廃棄コスト
等を見える化し、最適な改善プランを検討するための手助けとする分析手法。)
IMTは、スタッフがプロジェクトマネージャーとして、内外の専門家を動員して研修、
コンサルティング、アドバイザリー・サービスを提供する事業形態をとっている。ベトナ
ム人専門家16名とネットワークをもつほか、日本との関係では中京大学の日比野省三名誉
教授(ブレイクスルー思考の創始者、以前AOTSの中部研修センターでも講義)や日本生産
性本部等から協力を得ている。
こうした背景をふまえて日本の機関との連携は密接で、様々な受託事業を行っている。
幾つかの例をあげると、経済産業省から「グローバルインターンシップ事業」を受託し、
-156-
日本人の大学生をインターンとしてベトナムの現地組織・企業に受け入れるプログラムを
実施したり(2012年度に90名を11か国に派遣(うちベトナム30名)、2013年度に150名を
11か国に派遣(うちベトナム40名)、近畿経済産業局から「ものづくり人材バンク」調査
を受託し、現地進出する日系中小企業の人材採用・育成に役立てるために、ベトナムの短
大や大学卒業者のデータベースを作成する調査を実施している(2014~15年度)。また、
HIDA総合研究所が取り組んでいる日系企業のための新興国ビジネス調査やビジネスマッ
チング(「グローバルインターフェイス・ジャパン」)等においても、IMTがもつベトナ
ム企業や人材とのネットワークを活かして協力している。(なお、日本だけではなく、米
国からもソフトウェア開発の仕事を受注するなど、多様な業務展開をしている。)
このように、HIDA同窓生がコアとなってIMTを設立し、人材育成を切り口として、日本
とベトナムの組織・企業をつなぐ役割を果たしていることは興味深い。
第4章 外部専門家によるヒアリング調査
-157-
4.1
外部専門家によるヒアリング調査概要
新興市場開拓人材育成支援事業 海外ヒアリング調査(事後評価)
総括所感
大阪商業大学
総合経営学部
教授・博士(経営学) 古沢 昌之
新興市場開拓人材育成支援事業の事後評価活動の一環として、2015 年 1 月 9 日~16 日ま
での 8 日間、インドとミャンマーを訪問し、11 の企業・機関に対するヒアリング調査を行
った。調査対象の内訳は、日系進出企業=4 社(完全所有と合弁が各々2 社)、地場企業=6 社、
日本企業と地場企業の提携による職業訓練校=1 機関である。これを HIDA の事業別に見ると、
技術研修=4 社・機関、管理研修=4 社、専門家派遣=2 社となり、他にインドでは成功事例
大賞受賞企業(1 社)も訪問した。
各社・機関へのヒアリングの詳細については後述の記録を参照いただきたいが、全体と
して当該事業に関しては、事業の種別を問わず、概ね高い評価が寄せられた。特に、技術
研修(一般研修+実地研修)を通して日本語と日本文化を体得するとともに、経営に関わる知
識・スキルを身につけた有為な人材を輩出している点は、HIDA のレゾン・デートルともい
うべき活動領域であると同時に、従業員の「能力開発」を企図する派遣元企業と自らの「エ
ンプロイアビリティ」の強化を志向する研修参加者との間の win-win の関係構築にも資す
るものであると感じられた。
これらの点を踏まえ、本所感では HIDA の取り組みの一層の充実に向けて、以下のとおり
提言する。
(1)「ハードスキル」プラス「ソフトスキル」の涵養
筆者は、HIDA の管理研修における 20 年弱の指導経験を通して、途上国の人材レベルが近
年急速にアップしている様子を見てきたが、今回の現地調査ではその感を一層強くした。
事実、ヒアリングにおいては、従来型の 5S やカイゼンなど生産現場関連の所謂「ハードス
キル」だけでなく、リーダーシップや人的資源管理、さらには企業文化といった「ソフト
スキル」に関するトレーニングを求める声が数多く聞かれた。IT 技術の進展によりグロー
バルな知識経済化が加速度的に進行する今日、ハードスキルは瞬時に国境を越えて伝播す
る。従って、新興国の中で後発とされるミャンマー等のキャッチアップも、我々の予想を
越えるスピードで進行していくに違いない。しかしながら、知識経済化においては、知識
が最も重要であるが故に、ハードスキルは短期間で陳腐化する。こうした状況下、模倣困
難性や因果曖昧性といった特質を有する「ソフトスキル」の涵養こそが組織にとっても、
個人にとっても競争優位の源泉となる。別言すれば、個々人の知識レベルが一定水準に達
する中、新興国では組織マネジメントが次なる経営課題として浮上してくるであろう。今
後 HIDA には研修対象国や対象者の上記の如き「質的変容」に対応した研修プログラムの企
-158-
画・実施が求められると考える。
(2)ローカル人材の「グローバル化」と日本人の「ローカル化」を支援
今日の多国籍企業の経営には「現地適応」と「グローバル統合」の両立が求められてい
る。
これを人的資源管理の側面から捉えると、ローカルとグローバルに対する「2 つの忠誠心」
を有した人材を確保することが重要であると言えよう。こうした中、HIDA はこれまで技術
研修を通して、日本語能力を保有し、日本文化を内面化したローカル従業員の「バウンダ
リー・スパナー」(日系企業における本社と現地の橋渡し役)の育成に貢献してきたが、今
後は日本人社員の育成にも注力する必要があろう。今回のヒアリングにおいても、多くの
インタビューイーから問題提起がなされたように、日本企業の国際経営上のアキレス腱は、
現地適応度の弱さにある。それは人材活用面では海外子会社の幹部人材の「現地化の遅れ」
に現れているが、その背後には、高コンテクスト文化の影響を受けた「暗黙知中心の経営
スタイル」や「責任や権限が不明確な組織構造」、さらには「内なる国際化の遅れ」といっ
た構造的問題が横たわっている(古沢, 2008)。かような状況下、日本企業が当面は日本人
駐在員中心の海外現地経営に依存せざるを得ないのであれば、「ローカル」のエキスパート
としての日本人駐在員の育成を加速する仕組みが求められることになろう。すなわち、「語
学力」と「多様性を尊ぶマインド」を有した人材を確保することこそが日本企業のガラパ
ゴス化を防ぐための喫緊の課題であると言える。日本企業における海外駐在員に対する事
前研修が赴任後の異文化適応や意欲・仕事成果の面で必ずしも奏功していない点にも鑑み
(古沢, 2011)、HIDA には日本人向けコースの設置や新興国人材との交流型プログラムの開
設、インターンシップ・プログラムの拡充等を通して当該問題に対応してもらいたい。
今回のヒアリング調査では、面談した多くの方々から HIDA の取り組みに関する情報提供
を求める声が寄せられた。現状、例えば技術研修に関して言えば、各企業の日本本社と HIDA
本部の担当者との関係が構築されており、それをベースに海外子会社側と連携して現地人
従業員を定期的に派遣するというルートは既に確立されていると思われる。その一方で、
現地の人材開発責任者が HIDA の管理研修や専門家派遣制度について認識していないケース
が散見された。グローバル競争が激化する中、各社の人材開発ニーズは個別化・多様化・
専門化すると同時に、経営の現場ではそれらにタイムリーに対応することが求められてい
る。こうした中、HIDA には、
「スタンド・アロン型」の事業展開に陥るのでなく、インター
ンシップや各地の同窓会が主催する現地セミナーも含めた多様なメニューを、本部と駐在
員事務所との連携のもと、各企業の本社・現地法人の双方に対して情報発信することで、
人材育成に関する「トータル・ソリューション」を提供する機関へと進化していくことを
期待する次第である。
-159-
第4章 外部専門家によるヒアリング調査
(3)人材育成機関として「トータル・ソリューション」を提供
4.1
外部専門家によるヒアリング調査概要
<参考文献>
古沢昌之(2008)『グローバル人的資源管理論―「規範的統合」と「制度的統合」による人
材マネジメント―』白桃書房。
古沢昌之(2011)「日本企業の海外派遣者に対する人的資源管理の研究―駐在経験者への調
査を踏まえて―」『大阪商業大学論集』(第 6 巻第 3 号)、1-22 頁。
-160-
インド
KAIZEN GROUP
(管理研修)
(調査日:2015 年 1 月 10 日)
会社名
(現地企業)
(業種)
自動車
KAIZEN METAL FORMING PVT.
(事業内容)
自動車部品製造(シートメタル)
(従業員数)
230 名
LTD.
設立年
2003 年
資本金
50 万USD
研修生
インド新規事業立案研修コース(INBP)2014 年 2 月 12 日~2 月 25 日(14 日間)
(1)企業概要
Kaizen Group は、我々が面談した Naresh Kumar Chawla 氏(現社長)が 1993 年に創業した
自動車部品の製造・加工を主に手掛けるインドの地場企業である。同氏が日本で学んだ「カ
イゼン」の重要性をインドにも広めたいとの想いから Kaizen Group と命名した。Chawla 氏
は、1983 年からインドのマルチ・スズキに勤務していたが(車体溶接部門の品質管理担当)、
外国自動車メーカーのインド参入が相次ぐ中、自動車部品ビジネスの将来性を感じ取り、
1993 年に退社して Kaizen Group を創業した(マルチ・スズキ時代には、HIDA の技術研修に
参加したこともある)。当初は設備を調達する資金が不足していたので、顧客企業に出向い
て作業をすることもあったという。
現在では、グループ傘下に創業時からの Kaizen Industrial Services と 2003 年に設立
した Kaizen Metal Forming の 2 社を擁する。10 名でスタートした従業員数は、今日では全
体で 2,600 名以上にまで拡大している。
はアウォードも与えられた。日系顧客からの売上は全体の 30%であるが、その比率は上昇中
である。一方、Kaizen Metal Forming の取引先はマルチ・スズキが最大である。日系企業
とのビジネスは拡大傾向を示しており、現在ではその比率が売上の 50%を占めるようになっ
ている。マルチ・ススギに次ぐ取引先はドイツの CLAAS で、同社からはアウォードを得て
いる。
Chawla 氏は、創業以来、10 年毎の長期戦略を策定しており、2020 年には Kaizen Metal
Forming の売上高を 20 億ルピー(2011 年実績は 3.5 億ルピー)とすることを目標に掲げてい
る。
(2)HIDA 研修への参加について
Chawla 氏は、2014 年に CKC で開催された Business Planning コース(Business Planning
for Indian MSMEs)に参加した。受講の背景は、Kaizen Metal Forming の新規事業である物
流用「スチールパレット」を軌道に乗せるためである。本コースを受講したことで、これ
-161-
第4章 外部専門家によるヒアリング調査
Kaizen Industrial Services の大口顧客は Tata Motor と Mahindra Group で、Tata から
4.1
外部専門家によるヒアリング調査概要
までは感覚的に経営していたが、システマチックに思考することの重要性に気づいたとい
う。具体的には、SWOT 分析、5F(forces)分析、PEST 分析、BMO(Bruce Merrifield & Ohe)
評価マップ、さらには 4P などが印象に残っている。また、他の参加者とのヒューマン・ネ
ットワークを構築できたことも研修成果の一つであり、現在でも彼(彼女)らとは SNS を使
って日々情報交換している。
これまで他の従業員を HIDA の研修に派遣したことはなかったが、Chawla 氏は今後
Business Planning コースに同社の Director を参加させたいと述べている。なお、HIDA の
ケララ同窓会が日本ケララセンターで開催した Business Planning コース(CKC と同一講師
が担当)に Chawla 氏の子息が参加したとのことである。
Kaizen Metal 社(中央が Chawla 氏)
スチールパレット製造現場
(3)HIDA への要望等
Chawla 氏からは、以下のような要望等がなされた。
①安価な中国製品の流入が続く中、マーケティングが現在の最大の経営課題である。従来
は Chawla 氏のみがマーケティングに携わっていたが、今後は新規事業開発も含め、チーム
を作って組織的に対応してきたいと考えている。しかしながら、インドで開催されるマー
ケティングのセミナー等は、B2C 関連が中心で、当社のような B2B ビジネスを対象としたも
のは少なく、専門家も見当たらないので、HIDA にプログラムの開発等を検討してもらいた
い。
②今後は Tier2 のサプライヤーがインドに参入してくることが見込まれる。Kaizen Group
としては、そうした企業とのタイアップも視野に入れているので、HIDA にマッチメーカー
としての役割を期待したい。
③研修内容に関しては、生産管理に関わる知識やスキルだけでなく、参加企業に対するソ
リューションの提供を図ってほしい。
④HIDA はインドビジネスに携わる日本人駐在員の育成にも注力すべきであろう。最近では、
日本人駐在員がインド人従業員を取り巻く状況を正確に把握できず、ストライキに発展し
たというケースもある。
-162-
インド
IMPERIAL AUTO INDUSTRIES
(管理研修/成功事例大賞受賞)
(調査日:2015 年 1 月 10 日)
会社名
(現地企業)
(業種)
ゴム・樹脂製品製造業
IMPERIAL AUTO INDUSTRIES
(事業内容)
防振ゴム・ホース等自動車用部
LTD.
品等の製造・販売
設立年
1969 年
(従業員数)
5,000 名
資本金
2 千万ルピー
研修生
社長・工場長含む計 12 名:1991 技術研修(スズキ受入)、1994 インド中小企業経営
管理研修コース(PIDE)、2002 全社的問題解決コース(CWPS)、2014 技術研修(住
友理工受入)他
(1)企業概要
IMPERIAL AUTO INDUSTRIES は、自動車部品(主にトランスミッション用ホース)の OEM 生
産を手掛けるインドの地場企場である。インド国内に 14 工場を展開しており、従業員数は
5,000 名である。インド国内市場がメインのターゲットであるが、世界水準の経営を知るた
めに輸出にも注力している(現在の輸出比率は 20%)。また、住友理工(旧東海ゴム)と 2 つの
合弁事業を展開している。2008 年~2009 年の経済危機に際しては、合弁パートナーに株式
の売却を打診したが、パートナーシップを失いたくないとして、逆に無利息のソフトロー
ンの提案を受け、相互の信頼関係が強化されたという。この他にも住友理工からは、計画
立案などの面でも学ぶことが多いとのことである。
受賞している。
(2)HIDA 研修への参加について
Tarun Lamba 氏は、工場長であった 1991 年に HIDA の技術研修に参加、YKC での 6 週間の
一般研修の後、ススギの磐田工場(静岡県)で実地研修を行った。研修を通して、①従業員
相互の信頼関係、②情報(知識と経験)の共有、③カイゼンの重要性を学び、経営者として
の方向性が分かったという。その後、同氏は 1994 年に KKC で開催されたインド中小企業経
営者研修コースにも参加している。
これまで IMPERIAL AUTO INDUSTRIES からは社長を含め 12 名が HIDA の研修に参加した実
績がある。従来は管理研修が中心であったが、今回機械工学の学位を取得した社長の子息
を技術研修に派遣することにした。KKC での 2 か月間の日本語研修を終え、現在は住友理工
の小牧工場・松阪工場で実地研修中である。KKC での研修では、日本語の読み書きができる
レベルに到達したとのことであった。
-163-
第4章 外部専門家によるヒアリング調査
なお、我々が面談した Tarun Lamba 社長は、第 9 回 HIDA/AOTS 成功事例大会にて大賞を
4.1
外部専門家によるヒアリング調査概要
HIDA 研修に参加した者のうち 9 名は現在も在職しており、研修後の定着率は良い。研修
の成果としては、第 1 にモチベーションの向上が挙げられる。第 2 は社内に共通の「ルー
ル」と「言語」ができたことである。すなわち、納期厳守などの原理原則が徹底されると
ともに、情報の共有化が企業文化になりつつある。例えば、2002 年に CKC で開催された
Company-wide Problem Solving コースに参加した現本社工場長は、見学したトヨタやデン
ソーの工場での取り組みも参考にして、5S、カイゼン、提案制度、見える化を導入・定着
させた。
参加者の選定は、当初は社長が行っていたが、最近では HIDA 研修の有用性が社内に周知
され、参加を志願する者も出てきた。また、研修から帰国した後は各部門内での報告会を
奨励しており、成果の共有化を図っている。なお、従業員との信頼関係を大切にしている
ので、派遣後の拘束に関わる契約はしていないという。
インタビュー風景(右が Lamba 氏)
Imperial Auto Industries 社前にて
(3)HIDA への要望等
Lamba 氏からは、以下のような要望等がなされた。
①研修テーマとしては、従来型の 5S やカイゼンに留まらず、より専門的なテーマを取り上
げてもらいたい。例えば、リーン生産方式やゼロ・トレランス、リーダーシップ、人的資
源管理などである。
②各産業の特性を踏まえた業界別コース(自動車産業コースなど)の設置も希望する。
-164-
インド
HUMANIZE INFORMATION PVT. LTD.(管理研修)
(調査日:2015 年 1 月 10 日)
会社名
(現地企業)
(業種)
市場調査
HUMANIZE INFORMATION PVT.
(事業内容)
中小零細企業経営支援
(従業員数)
9名
LTD.
設立年
2011 年
資本金
1 万USD
研修生
インド新規事業立案研修コース(INBP)2014 年 2 月 12 日~2 月 25 日(14 日間)
(1)企業概要
HUMANIZE INFORMATION は、2011 年に設立された市場調査会社(インド地場企業)で、従業
員は単体で 9 名、グループでは 50 名である。日本企業との関係については、日経 HR がア
ジアの 100 大学の優秀者を日本企業に紹介するビジネスに同社がコラボレーターとして関
与しているほか、日本のシンクタンク等から調査のアウトソーシングを受けるなどしてい
る。我々が面談した共同経営者の Mohita Modgill 氏は、17 年間に及ぶ日本滞在歴を有する
など日本語堪能で、HIDA ニューデリー事務所の Executive Coordinator も務める。
(2)HIDA 研修について
Modgill 氏は、HUMANIZE で新規事業の案件が持ち上がり、それに対応すべく 2014 年に CKC
で開催された Business Planning コース(Business Planning for Indian MSMEs)に参加し
た。参加に際しては、HIDA ニューデリー事務所の三谷所長に相談し、申込み要件等を確認
Modgill 氏は、Business Planning コースは、よくデザインされたコースであったと感じ
ている。日本人の考え方に精通している同氏であるが、それでも様々な気づきを与えられ
ることがあり、特に SWOT 分析や日本の中小企業のケーススタディが印象に残っているとい
う。講師陣も経営の現場に日々接しているコンサルタントであるので、「生きた知識」を吸
収することができた。また、参加者とも夜遅くまで CKC のカフェテリアでディスカッショ
ンした。同氏は、インド経済は上昇局面にあるので、人々はどうしても、エゴイスティッ
クに思考・行動してしまうが、本研修に参加したことで経営に対して専門的な視点からア
プローチできたことが良かったと述べている。また、自らの行動も時間厳守などの点で大
きく変わったとのことである(但し、最近は元に戻りつつあるので、再び気を引き締めたい
との弁)。
今後は、HUMANIZE INFORMATION の他の共同経営者(2 人)を、Business Planning のほか、
マーケティングやコーポレート・マネジメントのコースに派遣したいと考えている。
-165-
第4章 外部専門家によるヒアリング調査
してもらった。
4.1
外部専門家によるヒアリング調査概要
インタビュー風景(右が Modgill 氏)
(3)HIDA への要望等
Modgill 氏からは、インドのモディ首相がスキル・ディベロップメントの重要性を盛んに
強調しており、HIDA の役割についても認識しているとした上で、以下のような要望等(日本
企業の課題も含む)がなされた。
①Business Planning コースについては、地方からの参加者が多く、かつ年齢層も高かった
点が残念であり、内容的にもワンランク掘り下げたものが望ましい。
②HIDA は日本人の人材育成にも注力すべきである。例えば、インド人の思考や行動特性に
フォーカスした駐在員向けコースなどである。インドに駐在する日本人は赴任の辞令を受
け取った時、95%の人が落胆し、帰任時のインドに対する印象も悪いと言われるが、その一
因は派遣前研修の不備にある。具体的には、駐在員としての使命や赴任の意義が十分に注
入されていないため、インド人従業員と効果的にコミュニケーションできない。
④一方、日本企業は自身に対するイメージ戦略に注力すべきである。例えば、欧米企業は、
1)高い給与、2)キャリアアップに向けた機会の豊富さ、3)オープンな社風、といったイメ
ージを上手く発信し、インドの有能人材を引き付けている。また、韓国企業もイメージア
ップに努力している。日本企業にも、1)雇用の安定、2)幅広い職務の体験、3)長期的視野
による経営(長い会社寿命)といった長所があり、それらは社会主義的経済運営が長く続い
たインドに親和的な部分でもある。インドにおける日系企業のプレゼンスが拡大しつつあ
る今こそ、イメージ戦略を重視すべきであろう。
-166-
インド
SANDHAR TECHNOLOGIES
(管理研修)
(調査日:2015 年 1 月 12 日)
会社名
(現地企業)
(業種)
自動車
SANDHAR TECHNOLOGIES
(事業内容)
自動車部品(ロックシステム等)
LTD.
製造
設立年
1987 年
(従業員数)
1,600 名
資本金
170 万 USD
研修生
インド女性ビジネスリーダー研修コース(INWL) 2014 年 11 月 17 日~21 日
(1)企業概要
SANDHAR TECHNOLOGIES は、1987 年に設立された自動車部品メーカー(インド地場企業)で、
従業員数は 1,600 名である。取引先は、ホンダ、ヤマハ、タカタ、トヨタ、双日、コマツ、
デンソーなどで、同社にはホンダ専用工場もある。
(2)HIDA 研修について
2014 年に TKC で開催されたインド女性ビジネスリーダー研修コース(Empowerment for
Women Leaders in India)に参加した Vinita Shaw 氏(Deputy general manager, Head of
special projects & corporate communication)、Charu Khatri 氏(Senior manager, Head of
resource mobilization) 、 Ankita Bhowmik 氏 (Assistant manager, Head of banking &
international trade)と面談した。参加者は同社社長が選抜した。3 名とも HIDA のことは
以前から知っていたが、初来日であり、同コースでは目を見開かされることが多かったと
事のレクチャーやリコーの CSR の取り組み、凸版印刷の最新施設の見学などが印象に残っ
ているほか、日本における①時間厳守、②綿密な計画立案と実行、③カイゼンに感銘を受
けた。また、女性の雇用状況については、インドと状況が似ていることを理解した。研修
の成果としては、第1に他社の経営幹部との交流を通して管理職としての自信が増しモチ
ベーションがアップした。第 2 はヒューマン・ネットワークの構築である。他社からの参
加 者 と は SNS で 交 流 を 続 け て い る ほ か 、 日 本 人 の 友 人 も で き た 。 そ し て 、 SANDHAR
TECHNOLOGIES の社長も本研修で学んだことに大きな関心を示してくれているので、今後も
同社として参加者を派遣すべきとのことであった。
-167-
第4章 外部専門家によるヒアリング調査
いう。特に、一橋大学の石倉名誉教授、経済産業省の福地室長、GEWEL のアキレス副代表理
4.1
外部専門家によるヒアリング調査概要
Sandhar 社帰国研修生(右 3 名)と
インタビュー風景
(3)HIDA への要望等
ヒアリングした 3 名からは、以下のような要望等(日本企業の課題も含む)がなされた。
①HIDA の研修については、インド工業連盟(CII)から情報が寄せられるが、今後は HIDA か
らも案内してほしい(本件については、同席した HIDA ニューデリー事務所の三谷所長が対
応する旨返答した)。
②新工場設置等の業務に備え、プロジェクト・マネジメントについて学びたい。
③在インドの日系企業は、インドの文化と市場及びインド人のメンタリティーに対する理
解を深めるべきである。そのためには英語力を磨く必要がある。一般的に日本人駐在員の
英語力は韓国人駐在員に劣っている。韓国の現代自動車は人材や部品・原材料の面で現地
化を進めた結果、既にインドの自動車市場でトヨタとホンダの合計を上回るシェアを有し、
マルチ・スズキと同等の高い評判を得ている。それに対し、日本企業は主要な意思決定は
全て日本人駐在員が行っており、インド人マネジャーに十分な権限委譲がなされていない。
そして、意思決定のスビードが遅い。
-168-
インド
第一工業株式会社
(専門家派遣)
(調査日:2015 年 1 月 12 日)
会社名
(日系企業)
(業種)
自動車
DAIICHI N HORIZON AUTOCOMP
(事業内容)
自動車部品(ボルト・ナット等)
PVT.LTD
製造
(日本側出資企業:90%)
第一工業株式会社
(現地側出資企業:10%)
HORIZON INDUSTRIAL PRODUCTS
設立年
2011 年
資本金
2 億円
代表者
Managing Director
専門家氏名
鈴木 仁之
(従業員数)
58 名
戸塚 洋光
(派遣期間)2013 年 9 月~2014 年 3 月
(1)企業概要
DAIICHI N HORIZON AUTOCOMP は、第一工業(株)とプレス溶接を手掛けるインド地場企業
の HORIZON INDUSTRIAL PRODUCTS が 2011 年に設立した合弁企業(第一工業が 90%出資)で、
自動車用ボルト・ナット等の精密ネジ類を製造している。
ローカルの従業員は正社員 47 名と職業訓練生 8 名(卒業後の採用も見据えている)で、日
本人駐在員として面談した Director の匂坂慎吾氏のほか、営業・財務・製造に管理者を 1
名ずつ配置している。このほか、人事総務部長として現地採用の日本人(長澤千里氏)を雇
で 13 年間の勤務経験がある。客先はほぼ 100%が在インドの日系企業で、マルチ・スズキを
筆頭にホンダ・カーズ、ルノー・日産 他で取引がある。
インタビュー風景(右から匂坂氏、長澤氏)
同社玄関前にて
-169-
第4章 外部専門家によるヒアリング調査
用している。一方、工場長と QA 課長にはローカル人材を登用しており、工場長は日系企業
4.1
外部専門家によるヒアリング調査概要
(2)専門家派遣制度利用の背景
DAIICHI N HORIZON AUTOCOMP は、日系のネジメーカーとしては、最初のインド進出企業
ということもあり、インドに当該分野での経験を有する人材が少ないことが懸念材料であ
った。そこで、インド工場の立ち上げに際し、まずはオペレーターに対する教育を施すべ
く、専門家派遣制度を活用した。特に、同工場の工程は標準化が困難で、「勘とコツ」に頼
る部分が多いので、実地の訓練が重要となる。派遣された専門家は、第一工業にて品質管
理や生産技術の業務に携わってきた鈴木仁之氏である。鈴木専門家は、2013 年 9 月~2014
年 2 月までの半年間、同工場にて主にオペレーター4 名に対するトレーニングを実施した。
なお、工場立ち上げに当たっては、本専門家派遣制度を利用したほか、工場長と検査員 2
名、さらには上記とは別のオペレーター2 名を 1 か月間日本へ派遣して研修した。
(3)受け入れ企業としての評価
Director の匂坂氏は、専門家派遣を通して基本的な部分は教え込めたと認識しており、
生産も軌道に乗ってきたという。但し、鈴木専門家には同社のインド人通訳も活用しなが
ら指導してもらったが、それでも言葉の壁は大きく、また立ち上げ期でもあったので 1 年
くらいの期間が欲しかったとのことである。
課題は専門家から指導を受けたオペレーターが他の従業員に技能を移転しないことであ
る(この点については、「後進指導」を彼らの役割の中に盛り込み、匂坂氏も常々言い聞か
せているという)。また、教育を受けた者の中の優秀者が退職してしまった。その他、今回
指導を受けたオペレーターに限らず、解決すべき事は適宜・適時 対応を余儀なくされてお
り今後も必要と考えている。
(4)HIDA への要望等
匂坂氏、長澤氏からは次のような要望等(同社の今後の展望も含む)がなされた。
①匂坂氏から「今後はリーダーレベルの教育にも注力していく。日本人の考え方を深く理
解するには、日本へ行くことが効果的であるので、HIDA の技術研修への派遣も検討してい
きたい。日本語研修は 13 週間が良いと考えている」との発言があった。
②長澤氏より技術研修の現在の実施要領(申込み手続き、期間、補助金)について問い合わ
せがあり、同席した HIDA の木村職員と三谷ニューデリー事務所長が説明した。
-170-
インド
ダイヤモンド電機株式会社(技術研修)
(調査日:2015 年 1 月 12 日)
会社名
(日系企業)
(業種)
自動車部品他
DE DIAMOND ELECTRIC INDIA
(事業内容)
自動車用点火コイル等の製造・
PRIVATE LIMITED.
販売
(日本側出資企業:100%)
ダイヤモンド電機株式会社
設立年
2007 年
(従業員数)
資本金
611 百万 INR
研修生
2012 年度から 2014 年度まで計 9 名
250 名
(2012 年度:5 名、2013 年度:3 名、2014 年度:1 名)
HIDA 制度は 2008 年から利用しており、累計で 22 名(延べ人数で 23 名)
(1)企業概要
DE DIAMOND ELECTRIC INDIA は、2007 年に設立されたダイヤモンド電機(株)の 100%出資
企業である。従業員数は 250 名(うち 60 名は派遣社員)で、主に自動車用点火コイルの製造
を行っている。客先は全て在インドの日系企業である。シフトは 3 交代制である。社長は
ダイヤモンド電機から派遣された増田
裕文氏で 2013 年 9 月に着任した(ハンガリーの現
地法人での勤務経験もある)。
(2)技術研修参加の背景
ら継続的に技術研修を活用しており、人材育成計画の中にも位置づけている。最近では 2012
年に 5 名(インバータの設計、購買管理、製造設備の保守・保全、生産管理)、2013 年に 3
名(生産管理、生産技術、販売)、2014 年に 1 名(財務管理)を派遣した。派遣までのプロセ
スは、人事部門が公募し候補者を絞り込み、社長が面談して最終決定をするというもので
ある(インドは家族の絆が強いので、家族にも会う)。
-171-
第4章 外部専門家によるヒアリング調査
インド事業拡大に伴い、日本語能力を有した現地人の中核人材を確保すべく、2008 年か
4.1
外部専門家によるヒアリング調査概要
(3)研修参加者の声
我々は下記 3 名の研修参加者からヒアリングを行った。
氏名(性別)
研修期間
研修項目
現在の職位(当時)
Mr. Parvin Kumar J13W
自動車部品の財務
Account Officer (専門
Dhingra
2014/5/21-2014/9/18
管理
職)
Mr. Ravinder
J13W
自動車エンジン部
Asst. Manager-Prod.
Kumar
2012/5/16-2012/11/11
品の生産管理
Eng.(技術者)
Mr. Jagdeep Jaspal
J13W
自動車エンジン部
Engineer-Production
(男)
2013/5/15-2013/11/12
品の生産管理
(技術者)
(男)
(男)
3 名のうち 1 名は派遣前に社内の日本語研修に参加していたが、他の 2 名は日本語が全く
話せないレベルであった。現在は日本人駐在員とのコミュニケーションに加え、日本の工
場とも日本語で e メールをやりとりするなど日常的に日本語を使用している。日本との交
流が増えた理由としては、日本研修で日本語能力を身に付けたことはもちろんであるが、
日本の工場のキーパーソンとの人脈を構築できたことも大きいという。今回の日本研修で
は日本語と日本文化、生産管理について学んだほか、計画立案の重要性や時間厳守の精神
に感銘を受けたので、部下にも技術研修への参加を勧めているとのことである。
帰国研修生(左 3 名)とのインタビュー
同社前にて(右から 2 番目が増田社長)
(4)派遣元企業としての評価
社長の増田氏は、HIDA の研修を通して「日本語能力」を有し、
「日本の文化と日本の仕事
のやり方」を理解した人材を確保できたと感じている。また、前述のとおり、DE DIAMOND
ELECTRIC INDIA では社内でも日本語の研修会を開催している(従来は外部から社費で講師を
招いて土曜日に 6 時間の研修、今年からは HIDA 研修参加者の第 1 期生 2 名が講師となり週
2 回研修)。その結果、現在ではスタッフ職 25 名のうち 7 割が日本語を話すことができるの
で、日本語でのマネジメントがやりやすい。モノづくり関連の会議は日本語で実施してい
-172-
る。こうした中、かつては製造部長として日本人が駐在していたが、帰任させることがで
き現地化が進んだ。また、給与水準が悪くないことに加え、装置型で労働の負荷が少ない
こともあり、従業員の定着率は良いという。但し、増田社長によると、5S は未だ清掃中心
で、改善提案は報奨金を用意しているがなかなか出てこないとのことであった。
第 1 期生 5 名のうち 2 名は現在でも在職しており、彼ら 2 人がロールモデルとして他の
ローカルスタッフを牽引している。
うち 1 名は日本本社採用扱いに雇用契約を切り替えた。
一方で、一部の実地研修が片手間で行われてしまっていることが課題として残っている。
マンパワー的に受け入れ部門の負担が大きい。工場での研修は問題ないが、販売部門では
適切な研修を施すことができず、研修参加者に不満が残ったこともあった。
(5)HIDA への要望等
増田社長からは、以下のような要望等(同社の経営課題も含む)がなされた。
①HIDA の研修に関する情報が入ってこないので、直接社長に届くようにしてほしい(本件に
ついては、同席した HIDA ニューデリー事務所の三谷所長より対応する旨返答した)。
②現地経営上の課題としては、第1に複雑で高い税金への対応が挙げられる。第 2 は過激
な労働組合の存在である。特に日系企業は「騒ぎを起こせば折れる」とのイメージを持た
れているので、注意しなければならない。こうした中、当社としては地域の社長会に出席
して情報共有を図るとともに、社内では「家族的経営」を推進し、従業員に対する気配り
と目配りを怠らないよう留意している。具体的には、社長も社員食堂で昼食を取り、一人
ひとりのオペレーターとのコミュニケーションを心がけていることに加え、誕生日会や家
族も招いてのスポーツイベント(1 月 26 日の共和国記念日に実施)を開催するなどしている。
第4章 外部専門家によるヒアリング調査
-173-
4.1
インド
外部専門家によるヒアリング調査概要
本田技研工業(技術研修/政策的重点分野グリーン・イノベーション)
(調査日:2015 年 1 月 13 日)
会社名
(日系企業)
(業種)
自動車
HONDA MOTORCYCLE & SCOOTER
(事業内容)
二輪車製品及び部品製造販売
(従業員数)
17,000 名
INDIA (PVT) LTD.
(日本側出資企業:100%)
本田技研工業株式会社
設立年
2001 年
資本金
31 億ルピー
研修生
2012 年度から 2014 年度まで計 4 名
(2012 年度:1 名、2013 年度:2 名、2014 年度:1 名)
加えて、2014 年度は低炭素技術輸出促進支援事業で 1 名研修
HIDA 制度は 2000 年から利用しており、累計 22 名
(1)企業概要
HONDA MORORCYCLE & SCOOTER INDIA は、2001 年に設立された本田技研工業が 100%出資す
る現地法人である。従業員数は 1 万 7000 人で、二輪車製品及び同部品の製造・販売を行っ
ている。日本人駐在員は 70 名で、現地採用の日本人はいない。
(2)技術研修参加の背景
我々が面談した Director の丸山氏によれば、インドにおける現地経営上の悩みの一つは、
折角育成した従業員がジョブホッピングすることである。こうした中、HONDA MORORCYCLE &
SCOOTER INDIA では、中核人材に給与以外の面で会社への愛着を感じてもらうことの必要性
を感じており、その具体的な施策として HIDA の技術研修を継続的に活用している。主たる
参加者は係長クラスで、最近では製造担当以外に、品質管理や新機種開発などスタッフ系
の者も参加するようになっている(営業系は未だない)。
派遣のプロセスは、経営トップの指示のもと、各部門の部長クラスが推薦した候補者の
中からセレクションが行われる仕組みになっている。
(3)研修参加者の声
我々は下記 3 名の研修参加者からヒアリングを行った。
氏名
Mr. A
(男)
研修期間
研修項目
現在の職位(当時)
J13W
二輪自動車の製造管
Manager (課長)
2013/8/21-2014/2/21
理
-174-
Mr. B (男)
Mr. C (男)
J13W
二輪自動車の製造管
Deputy Manager
2013/8/21-2014/2/21
理
(係長)
J13W
自動車エンジンの品
Deputy Manager
2012/8/1-2013/2/7
質管理
(課長)
3 名は日本では 13 週間の一般研修(CKC、KKC)の後、ホンダの熊本製作所で生産管理に関
わる実地研修を行った。いずれの参加者も、今回の技術研修以前に日本へ出張した経験は
あったが、日本語能力は挨拶言葉程度に留まっていた。現在は日本人駐在員とのコミュニ
ケーションも日本語でできるようになり、漢字も 150 字~200 字程度は読める。熊本製作所
とも日本語で e メールのやり取りをしている。但し、一般研修では漢字学習の時間がもう
少し多ければ良かったと感じている。
日本で学んだ事柄の中で強く印象に残っているのは、①規則を守ること、②「次工程は
お客様」という考え方、③タイムマネジメント(計画立案と実行段階でのフォロー・時間厳
守)、④チームワーク、⑤5S・安全・規律、⑥コミュニケーションの大切さ(日本の企業で
は皆が同じプラットフォーム上で意思疎通をしているため、コミュニケーションの齟齬が
生じにくい)である。
研修の成果については、同僚や部下と共有化するとともに、カイゼンに取り組むなどし
ているという。
丸山氏(左)
(4)派遣元企業としての評価
Director の丸山氏は、HIDA の技術研修について、良い制度であると評価している。前述
した給与以外のモチベーションアップ策としても奏功しており、研修参加者は退職してい
ない。ホンダとしては、日本語能力に加え、日本企業であるので日本の文化や日本人の考
え方についても理解を深めてもらうことを期待して送り出しているが、その点も充足され
ている。近年の方針として社内では日本語を使わない環境をなるべく作ろうとしているが、
-175-
第4章 外部専門家によるヒアリング調査
帰国研修生、工場長(中央)インタビュー
4.1
外部専門家によるヒアリング調査概要
日本人駐在員の中には英語が苦手な者も多いので、ローカルスタッフの日本語力は依然と
して貴重である。研修後の日本語能力の向上にはいつも驚かされるとともに、仕事に取り
組む姿勢やモチベーションの面でも変化が見られるという。また、新機種開発については、
従来は日本人駐在員のみが担当していたが、最近では技術研修で日本語を習得したローカ
ルスタッフが直接日本の朝霞研究所や熊本の研究部隊とやりとりができるようになった。
こうした中、今回のヒアリングでは、これからも継続的に技術研修に人員を派遣したいと
の意向が示された。
一方、課題としては、研修成果の横展開が難しいことである。研修成果の報告会等の開
催については各部門に任せているが、今後はそうした場を会社として設定していく必要性
も感じているとのことである。
(5)HIDA への要望等
丸山氏からは、以下のような要望等がなされた。
①他社との交流型のセミナーであれば、CSR をテーマとしたものに興味がある(インドでは
会社法が改正され、利益の 2%を CSR 関連に支出しなければならないことになった)。
②労働組合への対応やファイナンス関連のプログラムはないのか。
③当社(インド現地法人)の組織構造の特徴はヒエラルキーが細分化されていることである。
そこで、地元の機関が主催するチームビルディングや問題解決に関するセミナーに従業員
を派遣したり、社内でも下位の者が意見を述べやすい雰囲気を作り上げるよう努めている
が、ワイガヤやフラットな組織をモットーとしてきたホンダ流のマネジメントをどのよう
にしてインド流のやり方と融合させていくかが課題である。
④技術研修については、本社人事部が窓口となっているが、日本での管理研修やインドで
の現地セミナーに関しては、現地法人サイドにも情報を提供してほしい(本件については、
同席した HIDA ニューデリー事務所の三谷所長が対応する旨返答した)。
-176-
ミャンマー
株式会社きんでん
(技術研修)
(調査日:2015 年 1 月 14 日)
会社名
(職業訓練教室*下記提携によ
(業種)
教育
って開講)
(事業内容)
高等職業教育
(従業員数)
AGTI 非常勤役員:6 名 (会長、
AGTI SOCIETY VOCATIONAL
TRAINING CENTRE
SAKURA-INSEIN TECHNICAL
COURSE
(日本側提携企業)
株式会社きんでん、住友商事株
式会社
(現地側提携・運営団体)
MYANMAR AGTI SOCIETY
設立年
AGTI:1954 年
教室開講:2014 年
副会長、書記長、会計)
常勤職員:2 名 (校長、事務
員) + 指導員 6 名
きんでんからの出張者 1 名
資本金
―
研修生
2012 年度から 2014 年度まで計 6 名(指導員として生徒を指導)
(HIDA にて研修 2013 年度:6 名)
SAKURA-INSEIN TECHNICAL COURSE は、ミャンマーAGTI 協会(Myanmar Association of
Government Technical Institute, 以下、AGTI)と(株)きんでん、住友商事(株)が協力して
設立した電気工事関連の職業訓練教室である。AGTI は、ミャンマーで 100 年の歴史を有す
る理工系教育機関である GTI(Government Technical Institute)の元教員・卒業生の互助団
体で、SAKURA-INSEIN TECHNICAL COURSE の校舎は GTI INSEIN 校を接収したヤンゴン市当局
からリースを受け、改修したものである。
SAKURA-INSEIN TECHNICAL COURSE は、2014 年 7 月に開講し、2015 年 3 月に第 1 期生が卒
業する予定である。第 1 期生については、日本の高校卒業程度以上の学歴を有する 18 歳~
25 歳の男性を公募し、56 名の応募者に対する選考試験(数学・英語・色の識別・握力)を経
て 40 名を受け入れた(平均年齢は 21 歳)。現在同教室には、送配電コースと一般内線電気
工事コースの 2 コースがあり、各々20 名が学んでいる。授業料は月$200.00 で、40 名のう
ち 4 名が電気機器のサプライヤー等からの会社派遣である。後述する指導員に対しては、
-177-
第4章 外部専門家によるヒアリング調査
(1)組織概要
4.1
外部専門家によるヒアリング調査概要
給与をきんでんが負担するほか、AGTI が住宅手当・通勤手当として月$100.00 を拠出して
いる。
授業は、月曜から金曜日まで毎日 6 時間(8:30~11:30、12:30~15:30)行われている。内
容は電気計算・電気基礎理論の座学と実技訓練(建柱・昇柱訓練、架線工事、配管・配線工
事、電灯・動力回路の結線など)のほか、2015 年 2 月からはきんでんのミャンマーにおける
配電工事現場にて OJT が実施されることになっている。日常の学校運営は AGTI から派遣さ
れた校長とローカルスタッフ 1 名が担当しているが、きんでんの国際事業本部の琴崎氏が
AGTI の運営のサポートを行うため、長期出張者として派遣されている。技術指導について
は、きんでん学園(きんでん人材開発部)からサポーターが交代で来校し、実践的な教育の
フォローをしている。卒業者には修了証が授与される予定であるが、それは公的資格では
ない。
我々が面談した琴崎氏によると、現在は地元紙に AGTI が広告を掲載するなどして第 2 期
生の募集を行っている。なお、第 2 期からは、定員の割り振りを送配電コース=10 名、一般
内線コース=30 名に変更するとともに、力仕事をそれほど必要としない一般内線コースにつ
いては女性の生徒も受け入れる予定である。
(2)技術研修参加の背景
ミャンマーにおける従来の技術者教育に対しては、座学偏重である点に批判があった。
そこで、本校では、実践的な内容であることを前面に打ち出し、その指導員を育成すべく、
きんでんのサジェスチョンで HIDA の技術研修を活用することとした。
指導員候補者をミャンマーで公募し、20 名ほどを1次候補生とした後、英語による筆記
試験(数学と技術用語)、面接(知識と吸収力をチェック)、実技試験を経て 6 名を合格とし
た。なお、訪日前の 1 ヶ月間、当地において毎週末にヤンゴン外国語大学の教員を招聘し
て延べ数十時間の日本語のトレーニングが実施された。
(3)研修参加者の声
我々は下記 6 名の研修参加者からヒアリングを行った。
氏名(性別)
研修期間
研修項目
現在の職位(当時)
Mr. Kyaw Htike
J6W
電気設備の施工管理
インストラクター
(男)
2013/8/28-2014/3/21
(インストラクタ
ー)
Mr. Sanda Maung
J6W
(男)
2013/8/28-2014/3/21
電気設備の施工管理
インストラクター
(インストラクタ
ー)
Mr. Myo Win Htun
J6W
電気設備の施工管理
-178-
インストラクター
(男)
2013/8/28-2014/3/21
(インストラクタ
ー)
Mr. Kyaw Myo
J6W
Thwin
2013/8/28-2014/3/21
(男)
電気設備の施工管理
インストラクター
(インストラクタ
ー)
Mr. Win Nyunt
J6W
(男)
2013/8/28-2014/3/21
電気設備の施工管理
インストラクター
(インストラクタ
ー)
Mr. Nay Lin Han
J6W
(男)
2013/8/28-2014/3/21
電気設備の施工管理
インストラクター
(インストラクタ
ー)
技術研修では、HIDA 東京研修センターでの 6 週間の一般研修等の後、(株)きんでんの社
内教育訓練施設である「きんでん学園」(兵庫県)において、日本人の新入施工社員向けと
同じ内容のカリキュラムで実地研修を行った。同研修では日本語(殆ど通訳はなし)に苦労
したが、図示等も多いので理解できた。特に、安全・5S・時間厳守の重要性を学んだ。時
間厳守については、本校の生徒にも教育しているが、未だ何度も注意しないといけない状
態である。
本校の魅力は、日本の技術を実際の設備も使いながら実践的に学べる点にある。本校で
使用するテキストは、きんでん学園で使用しているものを、指導員 6 名が日本人の助力を
仰ぎながら「日本語→英語→ミャンマー語」に翻訳して作成した。第 1 期ということもあ
り、教えることは大変であるが、今後は学生の要望も踏まえて改善していきたいという。
琴崎氏によると、日本語能力に関しては、期待通りの水準に達したとのことである。一
方、実地研修については、終了時点では、全て教え込めたと感じたが、生徒として理解す
ることと、指導員として教えることの間にはギャップが存在するのも事実である(きんでん
学園の教育内容は、指導員となることを想定したものではない)。なお、実地研修での 6 名
の取り組み姿勢は良かったという。
本校に対しては、前述した実践的な教育内容や、安全帯を使用した日本式の安全重視の
訓練方法などが受講者本人のみならず父兄からも評価され、第 2 期生の応募状況も順調と
のことであった。
琴崎氏は、第 1 期生について、意欲・吸収力があり、素直であるとの評価を下している。
コースを途中で変更したケースはあるが、ドロップした者はいない。但し、時間観念に関
しては日本のようにいかない(日本のきんでんでは「5 分前の精神」を掲げているが、当地
では授業開始 5 分前に全生徒が揃うというようなことはない)。
-179-
第4章 外部専門家によるヒアリング調査
(4)派遣元としての評価
4.1
外部専門家によるヒアリング調査概要
当面の課題は、第 1 期生の卒業後の進路である。会社派遣を除く生徒の多くは日系企業
への就職を期待し入学してきたので、それに応えなければならない。具体的には、琴崎氏
が就職カウンセラーを務めるほか、きんでんの現地事務所でも卒業生を採用する予定であ
る。また、将来的には指導員のアシスタントが必要と考えており、卒業者の中から抜擢す
ることもありうるという。
インタビュー風景(左が琴崎氏)
送配電コース実習風景
(5)HIDA への要望など
琴崎氏からは、以下のような要望等がなされた
①実地研修中、HIDA から研修生 6 名に対して一切コンタクトがなかった。
「元気か?」
「頑張
っているか?」といった簡単なものでよいので、コミュニケーションをしてもらえれば、彼
らも「HIDA がサポートしてくれている」という気持ちになり、よりモチベーションがアッ
プしたであろう(但し、この点について研修参加者が特に不満に感じていたわけではない)。
②研修派遣の枠を増やしてほしい。現状、ASEAN5 か国の現地法人から 1 回につき 2 名ずつ
の派遣を考えているが、できればそれを年 2 回実施したい。
③HIDA のメールマガジンを見ているが、ミャンマーの同窓会組織については承知していな
いので教えてもらいたい(本件については、HIDA の木村職員より連絡先等をお伝えすること
にした)。
-180-
ミャンマー
HI HI PURIFIED DRINKING WATER
(管理研修)
(調査日:2015 年 1 月 14 日)
会社名
(現地企業)
(業種)
製造
HI HI PURIFIED DRINKING
(事業内容)
飲料水の製造・販売
(従業員数)
80 名
WATER
設立年
2013 年
資本金
30 万 USD
研修生
ミャンマー品質経営管理コース(MYQM):
(1)企業概要
HI HI PURIFIED DRINKING WATER は、2013 年に現社長の Kyaw Myint 氏と、我々が面談し
た General Manager の Kyaw Thu Sein 氏が創業した飲料水メーカー(ミャンマーの地場企業)
で、20 リットルの容器に入れた水を直接または代理店経由で企業やレストラン、学校等に
販売している。顧客の中には、きんでん、クボタなどの日系企業も含まれている。
創業のきっかけは、金のアクセサリー販売を手掛けていた Myint 氏と建設機材店を経営
していた Sein 氏が商工会議所主催の Production Management セミナーで知り合ったことで
ある。Sein 氏は、その 2 年前から飲料水ビジネスの可能性に注目しており、市場調査や他
社研究を進めていた。そして、Myint 氏に相談したところ、Myint 氏=80%、Sein 氏=20%の出
資で同社を設立することとなった。我々が訪問した本社工場のほか、もう 1 か所ヤンゴン
に工場を有する。
同社の特徴は、容器製造から水の消毒・充填、最終製品の配送までを一貫して行ってい
ングを展開している(現在は本社工場周辺)。このほか、水の品質管理を徹底するとともに、
顧客へのサービスにも注力している。例えば、①セールスマンにマナー教育を行う(清潔な
服装と配送車)、②定期的に顧客を訪問する、③配送車の車体に苦情処理窓口を掲載する、
といったことである。また、工場近くに看板を掲げ、同社がモノづくりやカイゼンを重視
していることをアピールしている。加えて、日系企業に対しては、英語が堪能な担当者を
任命して時間厳守を心がけるとともに、専用車を準備するなどしている。
創業当時の従業員は 30 名であったが、現在では 80 名まで増えており、売上も最近1年
間で 10%アップした。今後は徐々に販売エリアを広げ、2015 年にはヤンゴン管区で 30%、2016
年にはミャンマー国内で 40%のシェアを獲得することに加え、海外進出を果たすことが目標
として掲げられている。
現在の経営課題は、従業員のモチベーションアップと有能人材の定着率向上である。そ
のための対策として、①賃金水準を上げる、②責任の大きな仕事を与える、③家族とも面
談して従業員の不満も吸い上げる、といった事柄に取り組んでいる。
-181-
第4章 外部専門家によるヒアリング調査
る点にある。また、販売エリアを闇雲に広げるのでなく、重点エリアを決めたマーケティ
4.1
外部専門家によるヒアリング調査概要
インタビュー風景(左が Sein 氏)
工場見学
(2)HIDA 研修への参加について
Sein 氏 は 、 2014 年 に KKC で 開 催 さ れ た ミ ャ ン マ ー 品 質 経 営 管 理 コ ー ス (Quality
Management for Myanmar)に Myint 氏とともに参加した(Sein 氏は 2012 年に YKC で開催され
た Production Management コースも受講している)。品質経営管理コースについては、商工
会議所から情報提供を受けて参加を決めた。研修では、5S やカイゼンのほか、QCDSME、標
準化、QC サークル、トヨタの管理手法、ヒストグラムの作り方などを学んだ。研修内容の
70%くらいは理解できた。5S は実際に取り組んでおり、カイゼンも実施した結果、従来は 3
人で担当していた工程を 1 人でできるようにした。このほか、見える化も図っている。さ
らに、コンビュータソフトを使ってヒストグラムを作成する方法を財務担当に教えるなど
したという。
また、日本では、①仕事に対する責任感、②ルールの遵守、③時間厳守の重要性にも感
銘を受けた。Sein 氏自身、訪日前と比べ、自分が変わったと感じており、仕事で苦しい時
は、日本で撮った写真を見て自らを鼓舞しているとのことである。
(3)HIDA への要望等
Sein 氏からは、以下のような要望等がなされた。
①今後は同社の No.3 である工場長をリーダーシップや人的資源管理のコースに参加させた
い。
②HIDA がミャンマー国内で開催しているコースについても、これまでは社長の Myint 氏と
Sein 氏しか参加経験がなかったが、今後は対象を拡大していきたい。
-182-
ミャンマー
ユース・情報システム開発株式会社
(専門家派遣)
(調査日:2015 年 1 月 15 日)
会社名
(現地企業:専門家指導先)
(業種)
ソフトウエア開発
ACE DATA SYSTEMS CO., LTD.
(事業内容)
ソフトウエア開発
(従業員数)
225 名
(日本側企業:専門家派遣元)
ユース・情報システム開発株式
会社
設立年
1992 年
資本金
75,000,000MMK
専門家氏名
横野俊春
(派遣期間)
2012 年 7 月~2012 年 12 月
2015 年 1 月~2015 年 4 月
(1)企業概要
ACE DATA SYSTEMS は、1992 年に設立されたミャンマーの地場企業で、現在の従業員数は
225 名(グループ全体では 427 名)、グループの売上は 17 億チャットである。事業内容は、
ICT の教育からスタートし、今日では銀行・保険・小売・ホテル産業、さらには政府機関の
システム開発を手掛ける。特に、金融関係に強く、ACE DATA SYSTEMS はミャンマーの民間
銀行のシステム開発の殆どを請け負っている。
同社は、ミャンマーにおいて大和総研(大和証券グループのシンクタンク)や学研といっ
た日本企業のほか、米国企業・シンガポール企業との合弁事業を展開している。また、日
Thein Oo 氏は、ミャンマー政府に対する IT 関係の政策アドバイザーやヤンゴン大学・マン
ダレー大学のアドバイザーを務めるほか、親日家で日本の政財界とも交流がある。
(2)専門家派遣制度利用の背景
我々は専門家として派遣されているユース・情報システム開発(株)取締役の横野俊春氏
と面談した。専門家派遣は、大和総研が ACE DATA SYSTEMS と合弁を立ち上げる際にユース・
情報システム開発が指導したことがきっかけで 5 年前にスタートした。
横野氏によると、ミャンマーでは最近外国企業の進出が増加しており、IT 技術者に対す
る需給が逼迫している。特に、知名度のない外国企業は、人材を吸引するため高額の報酬
を提示する傾向があり、ACE DATA SYSTEMS にとっては優秀な技術者の確保が課題となって
いる。一方で、同社は海外売上比率(現在は 30%)の上昇を企図しているが、ミャンマーの
IT 産業における従来型の開発手法は、リーダーの属人的なスキルに依存したもので、生産
性や品質管理といった概念も未だ十分に定着していない。こうした中、対日ビジネス(日本
-183-
第4章 外部専門家によるヒアリング調査
本ではユース・情報システム開発(株)との合弁会社も有する。ACE DATA SYSTEMS 会長の U
4.1
外部専門家によるヒアリング調査概要
向けオフショア開発)の拡大を目指し、横野氏の派遣が始まったのである。
(3)専門家による自己評価
派遣の最初の段階(2010 年~2011 年)は、標準化や生産性向上施策、さらには報告書の書
き方など日本式の開発手法を教育した。次の段階(2012 年~2013 年)は、JAVA 言語も含めオ
フショア開発に向けた本格的なトレーニングを開始した。そして現在(2014 年~)はプロジ
ェクトのマネジメントと品質管理に重点を置いている。
横野専門家は、進捗状況はほぼ予定通りであるが、メンバーの入れ替わり等もあり、自
己評価としては 70 点くらいであると述べている。
横野専門家によれば、
「チャイナ・プラス・ワン」としてのミャンマーの最大のネックは、
日本語能力である。そのため、毎週 5 時間(毎日 1 時間)、日本人の講師を招いて日本語を
学習させている。日本向けオフショア開発には e メールやテレビ会議でのコミュニケーシ
ョンに際する日本語能力が必須である。取引先の日本企業からは、専門用語の教育とビジ
ネス文書の書き方に注力してほしいとの要求が寄せられている。
また、ミャンマー人の国民性は楽天的で、「分からない」「できない」と言わない(道を尋
ねた場合、知らなくても適当な方角を教える)。また、上下関係が厳しい組織風土、仏教国、
女性従業員が多い(ACE DATA SYSTEMS では 7 割が女性)といった特性のためか、マイナス情
報が上がってこない。そこで、各プロジェクトの終了後は客先からのフィードバックを詳
細に分析し、問題の原因の究明に努めている(外部の声を通して問題に気づかせる)。さら
に、対面のコミュニケーションでなく、報告書を作成してもらうことで本音を引き出すよ
うにしているという(報告書の作成は文書作成能力の向上にもつながる)。
一方、ACE DATA SYSTEMS では現在 6 名のスタッフを前述した日本にあるユース・情報シ
ステム開発との合弁企業に派遣している。木目細やかなドキュメントなど日本式の開発手
法は、日本で実地に体得する方が効果的であるからである。彼(彼女)らは 2 年後ミャンマ
ーに帰国し、プロジェクトリーダーとなる予定である、こうした日本派遣は今後もメンバ
ーを入れ替えながら継続し、従業員のモチベーション向上と会社側の人材確保という
win-win の関係を作り上げたいとのことであった。なお、ACE DATA SYSTEMS では日本語検
定取得者に手当を支給しており(例えば、N1 は毎月 2 万チャット、N4・N5 で同 5,000 チャ
ット)、これもモチベーションアップ策として奏功しているという。現状、同社全体で N1
は 2 名、N2 が 3 名在籍しており、オフショア部門に限れば 60%が N4 または N5 レベルであ
る。
なお、最近のミャンマー経済は上昇気流にあるので、IT スキルと日本語能力の双方を兼
ね備えた人材を採用するのは困難である。そこで、先述した技術者に対する日本語教育を
強化する一方、通訳者・翻訳者として採用した者に対する IT 教育も行い、プロジェクトメ
ンバーに加えるなどしている。
その他、横野専門家は、日常の指導業務においては、怒らないこと、イライラしないこ
-184-
とを心がけているという。彼(彼女)らは、プライドが高いので、叱る際は要注意である。
そして、IT 業界ということもあり、理論的に語ること、数字を示すことが重要であると述
べている。
(4)ローカルスタッフの声
我々は、ACE DATA SYSTEMS の Htun Tauk Zaw 氏(Business development manager)と Si Thu
Phyo 氏(Project manager)の 2 名からヒアリングした。まず、Zaw 氏は、横野専門家の指導
を通して、日本のお客様の考え方を理解できるようになったとのことである。また、かつ
ては客先への提案書も一人で不安を抱えながら作成していたが、現在は横野専門家という
相談相手がいるので自信を持ってお客様と向き合える。そのため、モチベーションがアッ
プした。そして、日本語能力も向上した。他方、Phyo 氏も日本人とのコミュニケーション
のやり方など対日ビジネスの勘所を習得したと語る。また、生産性やバグへの対応、プロ
ジェクトの進め方といったスキル面で得たことも多い。そして、今後は部下に対するビジ
ネスマナー教育(「ほう・れん・そう」の重要性も含む)にも取り組みたいとのことであっ
た。
横野氏・ローカルスタッフと共に
(5)HIDA への要望等
横野専門家からは、以下のような要望等がなされた。
①専門家派遣については、直前にならないと HIDA の予算状況が分からず、計画的に対応で
きないので今後善処願いたい(派遣期間が2か月のみといったケースもあった)。
②最近のミャンマーはインフレで家賃が高騰しているので(サービスアパートの家賃は毎
年 1,000 ドルずつ上昇しているとのこと)、その点もご考慮願いたい。
③HIDA の安全情報にはミャンマーに滞在している専門家が掲載されているが、専門分野に
関する記述がないので、情報交換等をしようと思ってもコンタクトが取りづらい。
-185-
第4章 外部専門家によるヒアリング調査
インタビュー風景(左が横野氏)
4.1
外部専門家によるヒアリング調査概要
ミャンマー
新藤電子工業株式会社
(技術研修)
(調査日:2015 年 1 月 15 日)
会社名
(現地企業)
Shwe
Ka
Thar-Shindo
(業種)
製造
(事業内容)
フレキシブル基板等電子部品
Engineering & Manufacturing Pte.
Co.,
の製造
Ltd.
(日本側企業)
新藤電子工業株式会社
設立年
2014 年
(従業員数)
50 名
資本金
6.06 百万USD
研修生
2013 年度から 2014 年度まで計 6 名(うち 1 名退社)
(2013 年度:6 名 2014 年度:2 名)
加えて、2014 年度は低炭素技術輸出促進支援事業で 6 名研修
HIDA 制度は 2013 年から利用しており、累計 14 名
(1)企業概要
SHWE KA THAR-SHINDO ENGINEERING & MANUFACTURING は、新藤電子工業とミャンマーのプ
ラント建設会社である SHWE KA THAR INDUSTRIAL SERVICES の折半出資による合弁会社で、
2014 年に設立された。社長はミャンマー側が務め、新藤電子工業社長の田中規幸氏が副社
長(非常勤)である。現在の従業員は 50 名、我々の訪問時はミャンマー政府工業省傘下の国
営企業からリースされた工場建屋の改修を行っていて(1 月中に完了)、2 月からオペレータ
ーの採用が始まる。製造開始は 6~7月、生産品目は TAB テープ(液晶パネルの表示用半導
体)や COF(chip on film)といった電子部品で、全量韓国と台湾に輸出する予定である。新
藤電子工業からは立上げ支援現地責任者として、1名の日本人従業員が長期出張ベースで
派遣されて来ているが、訪問時は所用あって一旦日本へ帰国していた。
(2)技術研修派遣の背景
上記合弁企業の工場立ち上げ要員と、将来の中堅幹部・技術者を育成・確保すべく、2013
年 8 月~2014 年 8 月まで、6 名(第1期生)を技術研修に派遣した。派遣者の選定に際して
は、新聞で候補者を公募したところ 500 名の応募があり、その中から 200 名を面接して最
終的に 6 名を合格とした。
現在は第 2 期生(8 名)が技術研修を受講している。第 1 期生と異なるのは、第 2 期生には
設計担当者 2 名が含まれていることである。また、第 3 期生の公募もしており、総務や財
務担当を含め 12 名を日本に派遣したいとのことである(本件については、HIDA の木村職員
より人数的に難しい可能性がある旨先方に対して説明があった)。同社は、フェイズ
-186-
1(2014.7~2015.5)とフェイズ 2(2015.8~2016.12)の二期に分けて工場を立ち上げていく
予定で、合計で 60 名以上のエンジニアを必要としていることから今後も日本研修を継続す
る予定であるという。
(3)研修参加の声
我々は下記 5 名の研修参加者からヒアリングを行った(第1期生 6 名のうち 1 名は退職)。
氏名
Mr.
Htun
Myint
Naing
研修期間
研修項目
現在の職位(当時)
2013/8/28-2014/8/23
電子部品の製造・製
技術者(技術者)
(男)
造設備保全
Mr. Aung Myin Oo
2013/8/28-2014/8/23
(男)
Ms.
Shwe
電子部品の製造・製
技術者(技術者)
造設備保全
Wint
Myat
2013/8/28-2014/8/23
(男)
技術者(技術者)
造設備保全
Ms. Ei Khine Wai
2013/8/28-2014/8/23
(男)
電子部品の製造・製
技術者(技術者)
造設備保全
Ms. Yu Par Min
(男)
電子部品の製造・製
2013/8/28-2014/8/23
電子部品の製造・製
技術者(技術者)
造設備保全
日本研修に先立ち、会社内で 2 週間ほどの日本語研修が行われたが、それまでは 5 名と
も全く日本語が分からなかった、現在は全員が会話レベルの日本語能力を身に付けており、
新藤電子工業から派遣された日本人とも主に日本語でコミュニケーションしているとのこ
第4章 外部専門家によるヒアリング調査
とである。
帰国研修生ならびに Ko Ko Aye 氏(右から 4 番目)と共に
-187-
4.1
外部専門家によるヒアリング調査概要
技術研修では、TKC での 6 週間の一般研修の後、新藤電子工業の那珂工場(茨城県)で実地
研修を行った(実地研修は、当初予定から 4 か月延長された)。実地研修は、日本語で指導
が行われた。日本研修で学んだことは、①規則の遵守、②時間厳守、③COF に関する高度な
技術、④計画的な仕事の遂行、⑤人を大切にする経営である。第1期生の 1 人は、研修を
通して自身が変わったことを実感しており、日々規則の遵守と時間厳守を心がけ、責任感
を持って仕事に取り組んでいるという。そして、今後オペレーターが入社してきたら、5S
や問題解決手法を伝授したいとのことであった。HIDA での一般研修に対しては、異口同音
に、もっと日本語学習(特に漢字の学習)の時間が欲しかったとの声が上がった。
(4)派遣元としての評価
我々が面談した Director の Ko Ko Aye 氏は、送り出し側として、80%満足しているとい
う。同氏は、第1期生について、博士号取得者が含まれるなど元々能力の高い人材ではあ
るが、①日本語能力が向上したこと、②規則遵守の重要性を理解したこと、③合弁事業開
始に際し、日本側とミャンマー側の信頼関係を構築できたことなどを成果として挙げてい
る。但し、同工場には 16 もの工程があることを考えると、今回の研修期間は短すぎたとの
ことである(日本語研修に 4~5 か月、実地研修には 1 年間ほしい)。
(5)HIDA への要望等
Ko Ko Aye 氏からは、以下のような要望等がなされた。
①HIDA については、時々ウェブ・サイトをチェックしているが、HIDA 側から直接情報が寄
せられることはない(本件については、HIDA の木村職員より今後対応する旨返答があった)。
②ミャンマー側の出資者はプラント建設会社であるので、工業団地のマネジメントに関す
る研修プログラムにも関心がある。
-188-
外部専門家によ
るヒアリング調査
第4章 外部専門家によるヒアリング調査
-189-
4.1
外部専門家によるヒアリング調査概要
2012 年度現地調査訪問企業一覧
フィリピン・インドネシア
タイ・ベトナム
国名
No
調査員:麗澤大学経済学部 教授
大場 裕之氏
調査員:公益財団法人 日本生産性本部国際協力部参与
井上 安彦氏
日本側企業名
現地側企業名
研修/専門家派遣
ベトナム
タイ
フィリピン
インドネシア
日本
1
豊桑産業㈱
(岐阜県各務原市)
HOSO VIETNAM CO., LTD
(ベトナム・ダナン)
技術研修
2
福井電化工業㈱
(千葉県市川市)
FUKUI VIETNAM CO., LTD.
(ベトナム・ダナン)
技術研修
3
大石金属工業㈱
(大阪府大阪市)
OISHI INDUSTRIES (VIETNAM) CO., LTD.
(ベトナム・ダナン)
技術研修
4
協和機工㈱
(長崎県佐世保市)
KYOWA VIETNAM CO., LTD.
(ベトナム・ドンナイ)
技術研修
5
大和軽合金工業㈱
(大阪府東大阪市)
DAIWA LIGHT ALLOY INDUSTRY VIETNAM CO., LTD.
(ベトナム・ドンナイ)
技術研修
専門家派遣
1
サムテック㈱
(大阪府柏原市)
SAMTECH (THAILAND) CO., LTD.
(タイ・チョンブリ)
技術研修
2
㈱桜井製作所
(長野県埴科郡)
SAKURAI MFG (THAILAND) CO., LTD.
(タイ・チョンブリ)
技術研修
3
タピルス㈱
(東京都港区)
TAPYRUS (THAILAND) CO., LTD.
(タイ・チョンブリ)
技術研修
4
サンアロイ工業㈱
(兵庫県神崎郡)
SANALLOY INDUSTRY (THAILAND) CO., LTD.
(タイ・ラヨン)
技術研修
5
豊田精工㈱
(静岡県掛川市)
TOYODA SEIKO (THAILAND) CO., LTD.
(タイ・ラヨン)
技術研修
6
㈱モールドテック
(神奈川県横浜市)
SANKEI ENGRAVING TECHNOLOGIES (THAILAND) LTD.
(タイ・ラヨン)
技術研修
専門家派遣
7
美岡工業㈱
(兵庫県美方郡)
VIRTUE (THAILAND) CO., LTD.
(タイ・チョンブリ)
専門家派遣
8
OKKテクノ㈱
(兵庫県川西市)
OKK MANUFACTURING (THAILAND) CO., LTD.
(タイ・サムトプラカーン)
専門家派遣
1
中西輸送機㈱
(大阪府大阪市)
NKC CONVEYORS PHILIPPINES CORPORATION
(フィリピン・セブ)
技術研修
2
オールウィン㈱
(岐阜県関市)
ALL WIN MACTAN INC.
(フィリピン・セブ)
専門家派遣
3
㈱西東京建設
(東京都立川市)
FRONTIER INTERMEDIARY TECHNOLOGY, INC.
(フィリピン・マカティ)
技術研修
専門家派遣
4
㈱フレスコ( (株)おゆみの住宅 )
(千葉県千葉市)
ONE'S PHILIPPINE EPOCH CORPORATION
(フィリピン・マカティ)
技術研修
専門家派遣
5
アークテック㈱
(栃木県下都賀郡)
ARKTECH PHILIPPINES, INC.
(フィリピン・パタンガス)
専門家派遣
1
オムロンスイッチアンドデバイス㈱
(岡山県岡山市)
PT.OMRON MANUFACTURING OF INDONESIA
(インドネシア・ブカシ)
技術研修
2
岡山イーグル㈱
(岡山県高梁市)
PT.EAGLE INDUSTRY INDONESIA
(インドネシア・ブカシ)
技術研修
3
興南設計㈱
(岡山県倉敷市)
PT.CHIYODA KOGYO INDONESIA
(インドネシア・ブカシ)
専門家派遣
4
イトモル㈱
(愛知県豊川市)
PT.ITOMOL INDONESIA
(インドネシア・ブカシ)
技術研修
1
㈱大成美術印刷所
(千葉県松戸市)
TAISEI BIJUTSU PRINTING (VIETNAM) CO., LTD.
(ベトナム・ビンズオン)
技術研修
専門家派遣
2
㈱エイゾー
(埼玉県八潮市)
EIZO SHOES VIETNAM CO., LTD.
(ベトナム・ホーチミンシティ)
技術研修
専門家派遣
-190-
2013 年度現地調査訪問企業一覧
フィリピン・インドネシア
カンボジア・タイ・ベトナム
調査員:政策研究大学院大学 教授 大野 泉氏
調査員:慶応義塾大学理工学部 専任講師 稲田 周平氏
第第
44
章章 外
門家
家に
によ
よるる
グ査
調査
外部
部専
専門
ヒヒ
アア
リリ
ンン
グ調
-191-
受入研修事業
の事後評価
5.1
5.2
5.3
概要
研修生による評価
受入企業による評価
5.1
概要
第 5 章 受入研修事業の事後評価
本章では、受入研修事業の事後評価として、帰国研修生と受入企業にアンケートを
実施したので、その結果について述べる。
5.1
概
要
受入研修事業の成果・効果は研修生の帰国後に発現するものであり、特にその波及効果や持
続的効果を測定するためには、帰国後に一定の時間が経過したのちに実施する事後評価が有効
である。
したがって、本事業の実施 3 年目にあたる本年度は 2012 年度、2013 年度、2014 年度(12 月末
日までに帰国した研修生)の受入研修参加者、及び 2014 年度の受入企業(12 月末日までに受入
研修が終了)を対象にした事後評価を実施した。
1. 目的
受入研修を終了し、研修生が帰国してから一定期間が経った時点で、改めて日本での研修を評
価してもらうとともに、帰国後の研修効果の発現度合い、習得した知識・技術の現地での使用度合
い、職場や周囲への波及度合い等を明らかにするために研修事後アンケート調査を行った。また、
受入企業に対しては、研修効果や目標達成度、派遣元企業や受入企業への裨益効果等を明らか
にするために、アンケート調査を行った。
2. アンケート対象者
アンケートは、2012 年度は経済産業人材育成支援事業、2013 年度及び、2014 年度は新興市場
開拓人材育成支援事業の受入研修を修了した研修生合計 3,679 名のうち、有効な E メールアドレ
スを把握している 48 カ国、計 2,953 名に対して行った。また、受入企業に関しては、2014 年度 12
月末日までに受入研修が終了した新興市場開拓人材育成支援事業の利用企業 61 社に対して行
った。
3. 調査の時期・方法
研修生向けアンケートに関しては、インターネット上でアンケートに答えてもらう方法で調査を実
施した。アンケートは英語に翻訳したものを用意し、アンケートの回答期間は 14 日間とした。また、
受入企業向けアンケートに関しては、回答期間は 15 日間とした。
4. 回答状況
研修生向けアンケートの回答状況は表 1 の通りであり、回答者数は 935 名(41 カ国)、回答率は
31.7%であった。また、受入企業向けアンケートの回答数は 39 社、回答率は 63.9%であった。
-194-
アンケート回答者
管理研修
⼀般研修+実地研修
アジア
計
2012
2013
2014
2012
2013
2014
167
193
54
125
158
59
タイ
50
64
11
18
31
7
756
181
インドネシア
30
45
9
23
22
14
143
インド
22
16
8
13
16
10
85
ベトナム
9
31
8
10
11
4
73
フィリピン
52
11
14
9
12
6
0
バングラディシュ
1
6
1
8
27
8
51
スリランカ
1
3
0
16
24
6
50
中国
28
4
0
1
0
0
33
マレーシア
11
3
1
4
4
1
24
ネパール
1
1
1
11
4
パキスタン
1
2
1
8
3
3
18
ミャンマー
0
1
3
0
7
2
13
カンボジア
0
2
2
0
0
1
5
ラオス
1
0
0
0
0
2
3
イラン
0
0
0
1
1
0
2
イラク
1
0
0
0
0
0
1
ヨルダン
0
0
0
0
0
1
1
カザフスタン
0
1
0
0
0
0
1
ウズベキスタン
0
0
0
0
1
0
1
イエメン
アフリカ
18
0
0
0
0
1
0
1
2
3
3
13
27
14
61
スーダン
0
0
0
5
8
3
16
ガーナ
0
1
0
4
4
2
11
エジプト
1
0
0
1
6
2
10
南アフリカ
1
2
2
0
0
5
10
ケニア
0
0
0
2
6
1
9
カメルーン
0
0
0
0
1
0
1
エチオピア
0
0
0
0
1
0
1
ナイジェリア
0
0
0
0
1
0
1
ルワンダ
0
0
1
0
0
0
1
タンザニア
中南⽶
メキシコ
0
0
0
0
0
1
1
20
10
3
25
31
4
93
10
5
1
2
13
2
33
ペルー
1
0
0
8
7
2
18
ブラジル
5
1
1
2
4
0
13
アルゼンチン
1
0
0
5
3
0
9
ベネズエラ
2
3
0
2
1
0
8
コロンビア
1
0
0
4
1
0
6
パラグアイ
0
0
0
2
2
0
4
エクアドル
0
1
1
0
0
0
2
3
0
0
6
14
2
25
トルコ
その他
2
0
0
2
14
1
19
マケドニア
0
0
0
4
0
1
5
フィジー
1
0
0
0
0
0
1
192
206
60
168
230
79
935
合計
※2014 年度は 12 月末までに研修終了した者が対象
-195-
第5章 受入研修事業の事後評価
表 1・事後評価 研修生向けアンケート調査 回答状況
5.2 研修生による
研
る評価
5.2
研修生に
による評価
価
受入研修の目
目標達成度<有
有効性>
問1 受
受⼊
⼊研修の⽬標達成
成度
2014技術研修
48.3%
26.7%
(n=60)
2013技術研修
36.9%
18
8.4%
(n=
=206)
2012技術研修
2014管理研修
2
20.3%
(n=79)
2013管理研修
2012管理研修
0%
6.3%
80--100%
60--80%
40--60%
13.9%
20--40%
0-2
20%
26.1%
35.7%
20%
6.3%
26.6%
2
1%
36.1
18
8.5%
(n=
=168)
10.0%
24.5%
%
34.2%
26.5%
(n=
=230)
36.4%
46. 9%
2
21.9%
(n=
=192)
15.0
0%
33.3%
40%
60%
80%
100%
%
帰国
国した研修生に改めて日本
本での研修に
に関する目標
標達成度を評価してもらっ た。その結果
果、2012
年度、2013 年度、22014 年度通して、55~755%の研修生が
が 60%以上の目標を達成し
したと回答して
ており、
や知識の習得
得が確実に行わ
われているこ
ことが窺える。
技術や
日本語能力の
の活用<有効性
性>
問2 日
⽇本語
語の有益度(技術
術研修)
20
014技術研修
(n=56)
20
013技術研修
(n=188)
25.0%
25.0%
26.8%
3 5.1%
35.6%
%
3.6% 19.6%
17.0%
8.0%
⾮常に役⽴ってい
いる
かなり役⽴っている
いくらか役⽴ってい
いる
あまり役⽴っていな
ない
20
012技術研修
(n=180)
3.9%
33
35.6%
16.1%
10.6
6%
役⽴っていない
⽇本語を話す機
機会が無い
0%
20%
40%
60%
80%
100%
1
入研修のうち、一般研修に
における日本語
語研修を修め
めた研修生に
に対し、研修中
中に習得した
た日本語
受入
は帰国
国後も職場で役
役立っている
るかどうか質問
問した。2014 年度の技術
術研修参加者 は「非常に役
役立って
いる」、「かなり役立
立っている」、「いくらか役立
立っている」を
を合わせると、
、76.8%の研
研修生が一般
般研修中
習した日本語は帰国後も役
役に立ってい
いると答えてい
いる。これは、一般研修中
中の日本語教
教育が実
に学習
地研修
修を円滑にして
ているだけで
でなく、帰国後
後の社内での
のコミュニケー
ーション等にも
も役立っている
るものと
考えられる。
に、特筆すべ
べき点として、2012 年度、22013 年度の
の技術研修参加者は 20144 年度を上回
回る割合
さらに
-196-
本語を
を活用する機会
会が増え、一
一般研修の効
効果を実感して
ている研修生
生が増えている
ると推察できる
る。
日本企業への
の理解度<イン
ンパクト>
問3 日
⽇本
本企業の仕事の進
進め⽅や考え⽅の
の理解度(技術研
研修)
20
014技術研修
(n=56)
44.6%
⼤いに理解でき
きた
53.6
6%
ある程度理解で
できた
20
013技術研修
(n=188)
20
012技術研修
(n=180)
0%
46.8%
%
50.0
0%
%
46.1%
1%
51.1
20%
40%
60%
どちらとも⾔えな
ない
あまり理解でき
きなかった
理解できなかっ
った
80%
100%
受入
入研修に参加
加したことにより、日本企業
業の仕事の進
進め方や考え方
方がより理解
解できたかどう
うかにつ
いて聞
聞いたところ、22012 年度、2
2013 年度、20014 年度のい
いずれの年度も参加者の 995%が「大い
いに理解
できた」、「ある程度
度理解できた」
」と回答してい
いる。これは一
一般研修で組
組み込まれて
ている日本企業理解
修項目を修め、日本企業で
での実地研修
修を経験した
たことが理解度
度を高め、帰国
国後も持続し
している
の研修
ことを示
示していると思
思われる。
日系企業への
の継続勤務希
希望<インパク
クト>
問4 日
⽇本企業へ
への継続勤務希望
望(技術研修)
201
14技術研修
(n=56)
55.4%
%
33.9%
8.9%
37.8%
5.9%
⾮常に
に思うようになった
か思うようになった
いくらか
201
13技術研修
((n=188)
201
12技術研修
((n=180)
0%
%
52.7%
49.4%
41.1%
20%
40%
60
0%
7.8%
80%
%
どちら
らとも⾔えない
あまり
りそう思うようにはなら
らなかった
そう思
思うようにはならなかっ
った
100%
現地
地日系企業に
に勤務しており
り、受入研修
修に来日した研
研修生に対し
して、受入研
研修に参加した
たことに
よってこ
これからも日系企業で働き
きたいと思うよ
ようになったか
か質問したとこ
ころ、両研修参
参加者とも約
約 90%が
「非常に
に思うようにな
なった」、「いく
くらか思うよう
うになった」と回
回答している。研修を通じ
じて日本企業
業への理
解度や
や親近感が増
増しており、その結果、研修
修を修了して 3 年経過し
した者でも引き
き続き日系企
企業で勤
務したいという希望
望を持ち続けて
ていることが読
読み取れる。
-197-
第5章 受入研修事業の事後評価
で、一般
般研修中に学
学習した日本
本語は帰国後
後も役に立って
ていると答えている。時間
間が経つにつ
つれて日
5.2 研修生による
研
る評価
問5 日
日系企業との
の関係強化希望<インパクト
ト>
⽇本企業と の関係強化希望
望(管理研修)
201
14技術研修
(n=56)
51.9%
32.9%
50.9%
37.0%
⾮常に
に思うようになった
7.6%6.3%
か思うようになった
いくらか
201
13技術研修
((n=188)
201
12技術研修
((n=180)
0%
50
0.0%
34.5%
20%
40%
60
0%
7.0%
どちら
らとも⾔えない
あまり
りそう思うようにはなら
らなかった
8.3%
80%
%
そう思
思うようにはならなかっ
った
100%
管理
理研修に参加
加した研修生の
のうち、非日系
系企業に勤務
務している研
研修生を対象に
に、研修に参
参加した
ことによ
より日本企業
業と今後業務上
上の関係を持
持ちたい(また
たは強化したい)と思うよう
うになったかど
どうか聞
いたとこ
ころ、全体の 80%が「非常
常に思うように
になった」「い
いくらか思うようになった」と
と回答した。こ
これらの
ことから
ら、日本での受入研修参加
加は日本企業
業への理解度
度を深め、勤
勤務先企業の
の技術移転に貢献す
る他、現
現地企業の日
日本企業との
の取引促進に影
影響を与えて
ていることが推
推察される。
離職率につい
いて<持続性>
>
問6 離
研
研修種別毎の離職
職率
2014技
技術研修
%
95.0%
(n=60)
2013技
技術研修
1.7%
9% 1.9%
2.9
93.2%
(n=
=206)
転職していな
ない
2012技
技術研修
⽇系企業に
に転職
現地企業に
に転職
2014管
管理研修
%
96.2%
(n=79)
2013管
管理研修
2.5%
% 3.5%
2.2%
93.0%
(n=
=230)
2012管
管理研修
88.1%
(n=
=168)
50%
3.6%3.1%
90.1%
(n=
=192)
60%
70%
6.0%
80%
90%
⾮⽇系企業
業に転職
その他(起業
業など)
3.0%
100%
アン
ンケート発信日
日において、研
研修参加時に
に勤務してい
いた企業に現在
在も勤務して
ているかを聞い
いたとこ
ろ、技術
術研修および
び管理研修と
とも、ほぼ 90%%を超える高い
い割合で現在
在も勤務を継
継続していると
と回答し
ている。技術研修参
参加者では、研
研修を修了し
して 3 年経過
過する 2012 年度の研修生
年
生も 90%は転職
職してい
また、管理研
研修参加者は研
研修終了後 1 年を経過す
すると「その他
他(起業など)」の割合
ないことがわかる。ま
を超えており、受入研修を
を通して現地
地への技術移転
転、ならびに
に経済発展に 寄与している
ると推察
が 3%を
される。
。
-198-
研修によって変化した姿勢・意識
70.0%
73.3%
78.1%
81.0%
83.0%
78.0%
品質・コスト・納期を意識する姿勢(2014技術)
品質・コスト・納期を意識する姿勢(2013技術)
品質・コスト・納期を意識する姿勢(2012技術)
品質・コスト・納期を意識する姿勢(2014管理)
品質・コスト・納期を意識する姿勢(2013管理)
品質・コスト・納期を意識する姿勢(2012管理)
顧客の満⾜を優先する姿勢(2014技術)
顧客の満⾜を優先する姿勢(2013技術)
顧客の満⾜を優先する姿勢(2012技術)
顧客の満⾜を優先する姿勢(2014管理)
顧客の満⾜を優先する姿勢(2013管理)
顧客の満⾜を優先する姿勢(2012管理)
52.9%
61.7%
62.0%
64.6%
73.5%
68.5%
事実に基づき合理的な⼿段を選択する姿勢(2014技術)
事実に基づき合理的な⼿段を選択する姿勢(2013技術)
事実に基づき合理的な⼿段を選択する姿勢(2012技術)
事実に基づき合理的な⼿段を選択する姿勢(2014管理)
事実に基づき合理的な⼿段を選択する姿勢(2013管理)
事実に基づき合理的な⼿段を選択する姿勢(2012管理)
38.3%
41.7%
42.2%
⾃分の業務の前後の⼯程を考える姿勢(2014技術)
⾃分の業務の前後の⼯程を考える姿勢(2013技術)
⾃分の業務の前後の⼯程を考える姿勢(2012技術)
⾃分の業務の前後の⼯程を考える姿勢(2014管理)
⾃分の業務の前後の⼯程を考える姿勢(2013管理)
⾃分の業務の前後の⼯程を考える姿勢(2012管理)
41.7%
49.4%
46.1%
47.0%
52.4%
54.2%
57.0%
57.8%
56.0%
2014 技術研修(n=60)
2013 技術研修(n=206)
2012 技術研修(n=192)
2014 管理研修(n=79)
2013 管理研修(n=230)
2012 管理研修(n=168)
61.7%
63.1%
仕事にきちんと・とことん向かう姿勢(2014技術)
仕事にきちんと・とことん向かう姿勢(2013技術)
仕事にきちんと・とことん向かう姿勢(2012技術)
仕事にきちんと・とことん向かう姿勢(2014管理)
仕事にきちんと・とことん向かう姿勢(2013管理)
仕事にきちんと・とことん向かう姿勢(2012管理)
50.5%
55.7%
59.6%
55.4%
55.0%
48.1%
50.5%
60.8%
57.0%
54.8%
⼈に対して配慮ある姿勢(2014技術)
⼈に対して配慮ある姿勢(2013技術)
⼈に対して配慮ある姿勢(2012技術)
⼈に対して配慮ある姿勢(2014管理)
⼈に対して配慮ある姿勢(2013管理)
⼈に対して配慮ある姿勢(2012管理)
環境・省エネに取り組む意識(2014技術)
環境・省エネに取り組む意識(2013技術)
環境・省エネに取り組む意識(2012技術)
環境・省エネに取り組む意識(2014管理)
環境・省エネに取り組む意識(2013管理)
環境・省エネに取り組む意識(2012管理)
32.9%
組織⼈として求められる社会責任の意識(2014技術)
組織⼈として求められる社会責任の意識(2013技術)
組織⼈として求められる社会責任の意識(2012技術)
組織⼈として求められる社会責任の意識(2014管理)
組織⼈として求められる社会責任の意識(2013管理)
組織⼈として求められる社会責任の意識(2012管理)
50.0%
45.1%
41.1%
41.7%
42.9%
42.2%
43.2%
39.2%
44.8%
会社へのロイヤルティー(2014技術)
会社へのロイヤルティー(2013技術)
会社へのロイヤルティー(2012技術)
会社へのロイヤルティー(2014管理)
会社へのロイヤルティー(2013管理)
会社へのロイヤルティー(2012管理)
51.7%
53.6%
44.2%
38.5%
43.0%
47.8%
44.6%
安全重視の意識(2014技術)
安全重視の意識(2013技術)
安全重視の意識(2012技術)
安全重視の意識(2014管理)
安全重視の意識(2013管理)
安全重視の意識(2012管理)
31.6%
58.3%
51.7%
51.0%
50.5%
43.5%
48.2%
0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 60.0% 70.0% 80.0% 90.0%
研修に参加したことによって、どのような姿勢や意識が変化したか質問したところ、技術研修、管理
研修参加者ともに研修を通じて「品質・コスト・納期を意識する姿勢」「顧客満足を優先する姿勢」「仕
事にきちんと・とことん向かう姿勢」が多く、QCDの大切さや勤勉性の姿勢といった日本のものづくりマ
インドが高まったことが窺える。
また実地研修が実施されている技術研修においては、安全重視の日本企業の現場運営を肌身で
感じているため「安全重視の意識」が管理研修参加者よりも高く、安全への姿勢や意識が 3 年経過し
-199-
第5章 受入研修事業の事後評価
問 7 研修によって変化した姿勢・意識(行動変容)<インパクト>
5.2
研修生による評価
た研修生も維持されていると推察される。
問 8 研修によって向上した能力<インパクト>
研修によって向上した能⼒
他者とコミュニケーションを上⼿に図ることができる能⼒(2014技術)
他者とコミュニケーションを上⼿に図ることができる能⼒(2013技術)
他者とコミュニケーションを上⼿に図ることができる能⼒(2012技術)
他者とコミュニケーションを上⼿に図ることができる能⼒(2014管理)
他者とコミュニケーションを上⼿に図ることができる能⼒(2013管理)
他者とコミュニケーションを上⼿に図ることができる能⼒(2012管理)
2014 技術研修(n=60)
2013 技術研修(n=206)
2012 技術研修(n=192)
2014 管理研修(n=79)
2013 管理研修(n=230)
2012 管理研修(n=168)
56.7%
54.9%
59.4%
57.0%
57.4%
45.8%
チームで協⼒して取り組むための能⼒(2014技術)
チームで協⼒して取り組むための能⼒(2013技術)
チームで協⼒して取り組むための能⼒(2012技術)
チームで協⼒して取り組むための能⼒(2014管理)
チームで協⼒して取り組むための能⼒(2013管理)
チームで協⼒して取り組むための能⼒(2012管理)
68.3%
59.7%
59.4%
65.8%
68.3%
63.7%
リーダーシップを発揮し、集団をまとめる能⼒(2014技術)
リーダーシップを発揮し、集団をまとめる能⼒(2013技術)
リーダーシップを発揮し、集団をまとめる能⼒(2012技術)
リーダーシップを発揮し、集団をまとめる能⼒(2014管理)
リーダーシップを発揮し、集団をまとめる能⼒(2013管理)
リーダーシップを発揮し、集団をまとめる能⼒(2012管理)
56.7%
51.0%
47.9%
72.2%
70.0%
64.9%
業務を遂⾏するための計画・実施・創意⼯夫に関する能⼒(2014技術)
業務を遂⾏するための計画・実施・創意⼯夫に関する能⼒(2013技術)
業務を遂⾏するための計画・実施・創意⼯夫に関する能⼒(2012技術)
業務を遂⾏するための計画・実施・創意⼯夫に関する能⼒(2014管理)
業務を遂⾏するための計画・実施・創意⼯夫に関する能⼒(2013管理)
業務を遂⾏するための計画・実施・創意⼯夫に関する能⼒(2012管理)
58.3%
50.5%
51.6%
63.3%
64.8%
58.9%
問題意識を持ち、発⽣した問題に適切に対応できる能⼒(2014技術)
問題意識を持ち、発⽣した問題に適切に対応できる能⼒(2013技術)
問題意識を持ち、発⽣した問題に適切に対応できる能⼒(2012技術)
問題意識を持ち、発⽣した問題に適切に対応できる能⼒(2014管理)
問題意識を持ち、発⽣した問題に適切に対応できる能⼒(2013管理)
問題意識を持ち、発⽣した問題に適切に対応できる能⼒(2012管理)
46.7%
52.9%
47.9%
58.2%
60.4%
57.1%
環境や考え⽅の違いを前向きに認識して適応するための能⼒(2014技術)
環境や考え⽅の違いを前向きに認識して適応するための能⼒(2013技術)
環境や考え⽅の違いを前向きに認識して適応するための能⼒(2012技術)
環境や考え⽅の違いを前向きに認識して適応するための能⼒(2014管理)
環境や考え⽅の違いを前向きに認識して適応するための能⼒(2013管理)
環境や考え⽅の違いを前向きに認識して適応するための能⼒(2012管理)
0%
43.3%
42.7%
42.7%
48.1%
54.8%
47.6%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
研修に参加したことによってどのような行動能力が向上したかについて聞いたところ、技術研修・管
理研修参加者ともに「チームで協力して取り組むための能力」の回答が多かった。また、技術研修参
加者では「他者とのコミュニケーションを上手に図ることができる能力」などの能力の回答割合が多く、
管理研修参加者では、「業務を遂行するための計画・実施・創意工夫に関する能力」、「リーダーシッ
プを発揮し、集団をまとめる能力」などが多かった。
技術研修においては一般研修中の他国他社の研修生、および実地研修期間中は受入企業の日
本人といった様々な人とコミュニケーションを図る必要があり、これらの能力が向上したと感じている研
修生が多いと考えられる。
管理研修においては、集団講義やグループワークといった講義形式と様々な分野の管理技術を身
につけたことにより、これらの能力が向上しているものと考えられる。
-200-
研修
修効果の発現時
時期
23.3%
22.8%
16.7%
27.8%
17.4%
14.9%
上
上司からの評価が⾼まっ
った(2014技術)
上
上司からの評価が⾼まっ
った(2013技術)
上
上司からの評価が⾼まっ
った(2012技術)
上
上司からの評価が⾼まっ
った(2014管理)
上
上司からの評価が⾼まっ
った(2013管理)
上
上司からの評価が⾼まっ
った(2012管理)
同僚や
や部下から評価が⾼まっ
った(2014技術)
同僚や
や部下から評価が⾼まっ
った(2013技術)
同僚や
や部下から評価が⾼まっ
った(2012技術)
同僚や
や部下から評価が⾼まっ
った(2014管理)
同僚や
や部下から評価が⾼まっ
った(2013管理)
同僚や
や部下から評価が⾼まっ
った(2012管理)
20.0%
17.5%
8..9%
25.3%
9 .6%
8..9%
46.4%
53.3%
47.1%
32
2.8%
3%
24.3
33.3%
9%
51.9
34.8%
28.6%
68.4%
59.6%
5
43.5%
23.9%
26.8%
26.2%
1
13.3%
10
0.2%
7.3
3%
16.5%
18.2%
11.5%
69.6%
45.7%
%
10.1%
13.3% 3.3%
10.2%4.9
9%
15.1% 6.3
3%
15.2% 3.8%
16.1% 3.9%
20.2%
7.7%
%
15.0%
10.0%
11.2% 13.1%
14.1%
16.5%
1
13.0%
%
14
4.1%
17.2%
15.6%
13
3.9%
11.4%
15.2%
10.0% 8.3% 7.0%
11.9
9% 11.3%
13.7
7%
19.6%
70.0%
43.2%
30.2%
13
3.9%
19.0%
20.0%
6.7%
17.5%
11.7% 11.2%
%
22.4%
%
17.7%
12
2.7% 10.1% 6.3%
%
14.8%
14.3%
11.3%
%
23.8%
20.8%
7.7
7%
68.3%
%
61.2%
51.6%
74.7%
65.7%
50.6%
23.3%
1
13.1%
10
0.9%
1 1.4%
10
0.4%
1
12.5%
11.7%3.3%
61.7%
6
9.2%
17.5%
57.8%
14.1% 6.8%
21.4%
46.9%
15.2% 1.3%
%
68.4%
%
15.2% 3.9%
48.3%
22.2%
15.5%
11.3%
39.9%
20.8%
%
0%
まだ
53
3.2%
62.6%
45.1%
%
40.1%
昇給し
した(2014技術)
昇給し
した(2013技術)
昇給し
した(2012技術)
昇給し
した(2014管理)
昇給し
した(2013管理)
昇給し
した(2012管理)
伝達
達した知識・技術が社内
内で活⽤されるようになっ
った(2014技術)
伝達
達した知識・技術が社内
内で活⽤されるようになっ
った(2013技術)
伝達
達した知識・技術が社内
内で活⽤されるようになっ
った(2012技術)
伝達
達した知識・技術が社内
内で活⽤されるようになっ
った(2014管理)
伝達
達した知識・技術が社内
内で活⽤されるようになっ
った(2013管理)
伝達
達した知識・技術が社内
内で活⽤されるようになっ
った(2012管理)
15.0% 3.3%
20.9%
5.8%
%
24..5%
8.9%4.7
7%
19.0%
20.9%
4.8%
%
28.0%
10.1% 6.5%
53.1%
71.7%
昇進、昇格し
した(2014技術)
昇進、昇格し
した(2013技術)
昇進、昇格し
した(2012技術)
昇進、昇格し
した(2014管理)
昇進、昇格し
した(2013管理)
昇進、昇格し
した(2012管理)
伝達した
た知識・技術が所属部署
署で活⽤されるようになっ
った(2014技術)
伝達した
た知識・技術が所属部署
署で活⽤されるようになっ
った(2013技術)
伝達した
た知識・技術が所属部署
署で活⽤されるようになっ
った(2012技術)
伝達した
た知識・技術が所属部署
署で活⽤されるようになっ
った(2014管理)
伝達した
た知識・技術が所属部署
署で活⽤されるようになっ
った(2013管理)
伝達した
た知識・技術が所属部署
署で活⽤されるようになっ
った(2012管理)
60.0
0%
54.4%
30.0%
1
13.6%
1
12.5%
24.1%
21.3%
16.7%
程度の⾼い仕事
事を任せられるようになっ
った(2014技術)
程度の⾼い仕事
事を任せられるようになっ
った(2013技術)
程度の⾼い仕事
事を任せられるようになっ
った(2012技術)
程度の⾼い仕事
事を任せられるようになっ
った(2014管理)
程度の⾼い仕事
事を任せられるようになっ
った(2013管理)
程度の⾼い仕事
事を任せられるようになっ
った(2012管理)
2014 技術研修(n=60)
2013 技術研修(n=206
6)
2012 技術研修(n=192
2)
2014 管理研修(n=79)
2013 管理研修(n=230
0)
2012 管理研修(n=168
8)
55..0%
20.0%
42.2%
21
1.8%
10.7%
42.7%
20.8%
%
12.0% 7.8%
%
51.9%
5
15.2% 3.8
8%
27.0
42.2%
0%
10.9%
25.6%
35.1%
17.3%
7.1%
帰国後〜3か⽉
10%
20%
4〜6か⽉
30%
40%
50%
%
7〜12か⽉
15.0% 3.3%
20.4%
7.8%
%
%
11.5% 6.8%
22.9%
15.2% 2.5%
%
20.9%
7.0%
14.3% 6.0
21.4%
0%
60%
70%
80%
90%
100%
1年以上
研修
修効果が発現
現した時期につ
ついて項目別
別に聞いてみ
みた。研修効果
果は帰国後 3 ヶ月以内に
に現れる
項目が
が多かった。た
ただし、項目ご
ごとに差異が
が見られた。「伝
伝達した知識
識・技術が所属
属部署で活用
用される
ようにな
なった」、「伝達した知識・技術が社内
内で活用される
るようになった
た」「同僚や部
部下からの評
評価が高
まった」」の項目の効
効果が現れるの
のが比較的早
早く、帰国後 3 ヶ月以内とした回答の割
割合が高いの
のに対し、
「昇給し
した」、「昇進
進、昇格した」に関しては、 他の項目に
に比べて効果
果が現れるタイ
イミングが遅く
く、半年
以上経
経過してから発
発現していることがわかる 。これは研修
修生が研修の
の効果を現地 で活用し、評
評価され
ることに
により、昇格・昇給につなが
がるため、多少
少の時差が生
生じていると推
推察される。
-201-
第5章 受入研修事業の事後評価
問9 研
研修効果の発
発現時期<イン
ンパクト>
5.2 研修生による
研
る評価
問10 知
知識・技術の
の活用状況<イ
インパクト>
知識
識技術の伝達有
有無
2014技
技術
(n=6
60)
2013技
技術
(n=20
06)
25.0%
%
48.3%
52.9%
% 8.3%
18.3%
35.9%
5.3%
すでに⾏った
た
2012技
技術
60.9%
(n=19
92)
2014管
管理
(n=7
79)
6.3%
現在⾏ってい
いる
今は⾏ってい
いないが、具体的な予定
定がある
53.2%
2013管
管理
39.2%
61.3%
(n=23
30)
2012管
管理
30.4%
22.6%
67.3%
%
(n=16
68)
0%
27.1%
2
20%
40
0%
60%
%
80%
7.6%
3.5%
今は⾏ってい
いないが、今後⾏おうと思
思っている
⾏っていない
い
5.4%
100%
帰国
国後、研修で習
習得した知識
識・技術を波及
及させるために伝えている
るかどうか聞い
いたところ、70%以上
の研修
修生が「すでに
に行った」「現
現在行ってい る」と回答して
ている。また、残りのほとん
んどの研修参
参加者も
具体的
的な取り組みを
を計画、或い
いは今後取り組
組もうと思っているとしており、研修終
終了後も技術力や知
識の向
向上ための自主的な取組が
が行われ、研
研修効果が周
周囲に伝達して
ている、もしく
くは伝達されて
ていくこ
とがわか
かる。
年を
を経るごとに「す
すでに行った
た」と回答して
ている研修参加
加者が増えて
ている点に関
関しては、技術
術研修と
管理研
研修ともに同じ
じ傾向ではあ
あるが、その割
割合は管理研
研修のほうが高
高く、より知識
識・技術を伝達
達しよう
とする意
意識が高いと
と推察される。
-202-
知識技術の伝達⽅法
0.0%
10.0%
20.0%
40.0%
23.3%
OJT・作業者に技術指導(2014技術)
OJT・作業者に技術指導(2013技術)
OJT・作業者に技術指導(2012技術)
OJT・作業者に技術指導(2014管理)
OJT・作業者に技術指導(2013管理)
OJT・作業者に技術指導(2012管理)
33.0%
11.4%
13.1%
22.2%
43.3%
42.2%
47.4%
31.7%
60.8%
66.1%
57.1%
39.8%
45.3%
50.6%
51.8%
21.7%
27.7%
社内での成果発表・講義(2014技術)
社内での成果発表・講義(2013技術)
社内での成果発表・講義(2012技術)
社内での成果発表・講義(2014管理)
社内での成果発表・講義(2013管理)
社内での成果発表・講義(2012管理)
その他(2014技術)
その他(2013技術)
その他(2012技術)
その他(2014管理)
その他(2013管理)
その他(2012管理)
70.0%
25.0%
24.3%
24.0%
所属部署での会議(2014技術)
所属部署での会議(2013技術)
所属部署での会議(2012技術)
所属部署での会議(2014管理)
所属部署での会議(2013管理)
所属部署での会議(2012管理)
テキスト・資料の作成・配布(2014技術)
テキスト・資料の作成・配布(2013技術)
テキスト・資料の作成・配布(2012技術)
テキスト・資料の作成・配布(2014管理)
テキスト・資料の作成・配布(2013管理)
テキスト・資料の作成・配布(2012管理)
60.0%
43.2%
26.6%
25.2%
19.0%
同僚とのディスカッション(2014技術)
同僚とのディスカッション(2013技術)
同僚とのディスカッション(2012技術)
同僚とのディスカッション(2014管理)
同僚とのディスカッション(2013管理)
同僚とのディスカッション(2012管理)
報告書の作成・配布(2014技術)
報告書の作成・配布(2013技術)
報告書の作成・配布(2012技術)
報告書の作成・配布(2014管理)
報告書の作成・配布(2013管理)
報告書の作成・配布(2012管理)
50.0%
21.7%
24.8%
27.6%
22.8%
33.0%
27.4%
講習会・研修会(2014技術)
講習会・研修会(2013技術)
講習会・研修会(2012技術)
講習会・研修会(2014管理)
講習会・研修会(2013管理)
講習会・研修会(2012管理)
マニュアルの説明(2014技術)
マニュアルの説明(2013技術)
マニュアルの説明(2012技術)
マニュアルの説明(2014管理)
マニュアルの説明(2013管理)
マニュアルの説明(2012管理)
30.0%
61.7%
35.4%
44.3%
43.9%
38.1%
21.7%
24.8%
19.3%
20.3%
24.8%
13.7%
8.9%
23.3%
18.9%
15.6%
19.0%
16.5%
8.3%
8.3%
9.9%
8.9%
7.4%
4.2%
2014 技術研修(n=60)
2013 技術研修(n=206)
2012 技術研修(n=192)
2014 管理研修(n=79)
2013 管理研修(n=230)
2012 管理研修(n=168)
帰国後、研修で習得した知識・技術をどのように伝達したか、しているかについて質問したところ、
多かった回答は「同僚とのディスカッション」、「所属部署での会議」であった。「マニュアルの説明」や
「報告書の作成・配布」、「テキスト・資料の作成・配布」、に比べ、伝達ツールを作成する必要がない
-203-
第5章 受入研修事業の事後評価
問11 知識・技術の伝達方法<インパクト>
5.2 研修生による
研
る評価
ため、回
回答の割合が
が高かったと考
考えられる。
技術
術研修では「O
OJT・作業者に
に技術指導」」も伝達方法と
として多く活用
用されている
る。また、管理
理研修で
はマネ
ネージャークラ
ラスの参加者が多いことに
に関係すると思
思われるが、「社内での成
成果発表・講義
義」と回
答した割合も高かっ
った。
伝達人数<イ
インパクト>
問12 伝
伝達⼈数
2014技
技術研修
53.3%
(n=60)
2013技
技術研修
50.5%
(n=
=206)
2012技
技術研修
(n=79)
23.8%
%
42.2%
(n=
=192)
2014管理研修
22.4%
31.6%
2
21.5%
5.0%
30.0%
19.0%
%
6.7%
12.1% 5.3% 3.4%
15.1%
10.4%
8.9%
5.2%
13.9%
9⼈以
以下
10⼈〜19⼈
20⼈〜29⼈
30⼈〜49⼈
50⼈〜99⼈
2013管理研修
(n=
=230)
2012管理研修
(n=
=168)
0%
26.5%
27.4%
20%
27.8%
23.8%
40%
14.3%
%
13.0%
13.1%
60%
100⼈
⼈以上
16.1%
80%
100%
伝達
達した人数につ
ついて聞いて
てみたところ、 技術研修参
参加者の場合は 9 人以下
下が最も多く、全体の
約半数
数を占めている
る。ただし、年
年度毎に比べ
べてみると、年
年を経るごとに
に「9 人以下」」の割合が小
小さくなり、
「20 人~29 人」「30 人~49 人」の
の割合が大き
きくなっている
ることから、時間
間が経つにつ
つれ、徐々に
に研修で
識・技術が現地
地で多くの人に浸透してい
いっていること
とがわかる。
の知識
管理
理研修参加者
者の場合、最も
も多い回答は
は「10 人~19 人」に伝達し
したであり、500 人以上に伝
伝達した
割合が
が 20%程度と
となり、マネー
ージャーや経営
加する研修の
の場合、伝達
達する効果が高
高いこと
営幹部が参加
が言え
える。
-204-
派遣
遣元企業への業績
績貢献
2014
2
技術研修(n=60
0)
2013
2
技術研修(n=20
06)
2012
2
技術研修(n=19
92)
2014
2
管理研修(n=79
9)
2013
2
管理研修(n=23
30)
2012
2
管理研修(n=16
68)
13.3%
売上の向
向上(2014技術研修
修)
20.4%
売上の向
向上(2013技術研修
修)
41.7%
15.6%
売上の向
向上(2012技術研修
修)
8%
27.8
売上の向上
上(2013管理研修
修)
27.0 %
経費削
削減による利益の向
向上(2012技術研修
修)
%
26.6%
経費削
削減による利益の向上
上(2013管理研修
修)
40.4%
取引先の拡
拡⼤(2014技術研修
修)
46.4%
4%
27.4
取引先の拡⼤
⼤(2012管理研修
修)
26.8 %
8%
20.8
45.6
6%
17.5%
%
52.2%
46.7%
%
市場
場におけるシェアの増
増⼤(2012技術研修
修)
16.1%
市場
場におけるシェアの増⼤
⼤(2013管理研修
修)
20.9%
市場
場におけるシェアの増⼤
⼤(2012管理研修
修)
19.6%
0%
10%
いくらかある
10.9% 7.8%
%
8.9% 7.8%
27.1%
49.4%
40%
どちらとも⾔
⾔えない
50%
13
3.9%
11.4%
16
6.5%
7.4%
17
7.9%
50.6%
30%
%
9.2% 6.8%
25.7%
50.0%
20%
%
13.3% 6.7%
23.3%
%
22.8%
市場
場におけるシェアの増⼤
⼤(2014管理研修
修)
5.7% 7.3%
11.9% 8.3%
0.8%
40
40.1%
60%
6
5.0%
6.8%
%
12.7% 8.9%
50.0%
10.0%
市場
場におけるシェアの増
増⼤(2013技術研修
修)
⼤いにある
1
16.7%
18..9%
43.2%
2.9%
32
取引先の拡⼤
⼤(2013管理研修
修)
市場
場におけるシェアの増
増⼤(2014技術研修
修)
%
7.7% 6.0%
61.7%
19.8%
取引先の拡
拡⼤(2012技術研修
修)
5.7%5.7%
53.6%
%
25.7%
取引先の拡⼤
⼤(2014管理研修
修)
%
8.9% 8.9%
47.4%
11.7%
4.9%
15.1% 4.2%
43.0%
4
31..5%
取引先の拡
拡⼤(2013技術研修
修)
1
18.0%
49.5%
39.2%
10.0%
20..0%
44.7%
経費削
削減による利益の向上
上(2014管理研修
修)
11.9%
1%
13.1
53.3%
経費削
削減による利益の向
向上(2013技術研修
修)
10.1%
%
11.3% 8.7%
49.4%
27.7
7%
経費削
削減による利益の向上
上(2012管理研修
修)
1
16.5%
49.6%
15.0%
経費削
削減による利益の向
向上(2014技術研修
修)
7.8% 7.3%
%
9.4% 9.4%
22.4%
45.6%
21.4%
6.7% 11.7%
22.8%
%
43
3.2%
売上の向上
上(2014管理研修
修)
売上の向上
上(2012管理研修
修)
21.7%
46.7%
70%
あま
まりない
80
0%
7.7%
90%
100%
ない
い
研修
修参加者が帰
帰国後、社内に
に伝達した(ま
または今後す
する予定の)知
知識、技術が
が所属部署や
や自社の
業績向
向上に貢献す
する可能性があ
あるかどうかに
について聞い
いてみたところ
ろ、概ね 60%
%の研修生が
が「大い
にある」、「いくらかあ
ある」と回答し
している。
た、「市場にお
おけるシェアの
の増大」、「取
取引先の拡大
大」、「売上の向
向上」といった
た項目でもい
いずれも
また
「大いに
にある」「いくらかある」が 60%以上回答
答されていることから、研修
修したことによ
より競争力の
の強化の
効果が
が現れていると
と推察される。
。
-205-
第5章 受入研修事業の事後評価
問13 伝
伝達した(or する予定の)知
知識・技術が
が企業の業績
績向上に貢献する可能性<<インパクト>
5.2 研修生による
研
る評価
問14 伝
伝達した(or する予定の)知
知識・技術が
が産業界に貢
貢献する可能性
性<インパクト
ト>
産
産業界への貢献
献度
13
3.3%
雇
雇⽤の増⼤(2014技
技術研修)
雇
雇⽤の増⼤(2013技
技術研修)
46.7%
17.5%
1
海外取
取引の増⼤(2012管
管理研修)
13
3.1%
国内需
需要の拡⼤(2014技
技術研修)
11..7%
1%
46.1
設備投
投等の拡⼤(2012技
技術研修)
28.3%
0%
10%
⼤いにある
る
8.3%
25.0%
9.0%
19
55.7%
5
5.7%
15
49.4%
20%
いくらかある
る
30%
40%
21.4%
50%
どちらとも⾔えない
60%
%
70%
あまりない
7.8%
6.5%
16.7%
49.4%
14
4.3%
設備投
投等の拡⼤(2012管
管理研修)
10.1%
26.2%
47.9%
18.3%
設備投
投等の拡⼤(2013管
管理研修)
9.2%
8.3%
20.9%
%
39.8%
22.8%
設備投
投等の拡⼤(2014管
管理研修)
15.0%
21.4%
38.3%
14
4.6%
11.3%
12.5%
25.3%
46
6.1%
18.9%
13.9%
27.2%
%
50.6%
10.0
0%
設備投
投等の拡⼤(2013技
技術研修)
8.7%
9.9%
29.7%
36.7%
14
4.3%
国内需
需要の拡⼤(2012管
管理研修)
10.0%
21.7%
40.8%
21.3%
国内需
需要の拡⼤(2013管
管理研修)
10.7%
20.0%
43.2%
25.3%
国内需
需要の拡⼤(2014管
管理研修)
19.6%
23.2%
48.3%
11.5%
国内需
需要の拡⼤(2012技
技術研修)
10.9%
21.5%
47.6%
17.0%
1
国内需
需要の拡⼤(2013技
技術研修)
19.6%
23.4%
40.5
5%
18.7%
海外取
取引の増⼤(2013管
管理研修)
13.9%
30.1%
45.8%
21.5%
海外取
取引の増⼤(2014管
管理研修)
7.3%
16.5%
30.0%
36.9%
14
4.6%
海外取
取引の増⼤(2012技
技術研修)
2014
4 技術研修(n=60)
2013
3 技術研修(n=206)
2012
2 技術研修(n=192)
2014
4 管理研修(n=79)
2013
3 管理研修(n=230)
2012
2 管理研修(n=168)
%
48.8%
8.3%
%
海外取
取引の増⼤(2013技
技術研修)
設備投
投等の拡⼤(2014技
技術研修)
46.1
1%
16.1%
雇
雇⽤の増⼤(2012管
管理研修)
4.4%
25.0%
35.4%
19.1%
雇
雇⽤の増⼤(2013管
管理研修)
海外取
取引の増⼤(2014技
技術研修)
49.5%
31.6%
雇
雇⽤の増⼤(2014管
管理研修)
8.3%
%
24.8%
42.7%
14
4.1%
雇
雇⽤の増⼤(2012技
技術研修)
25.0%
48.3%
21.8%
80%
%
7.3%
6.3%
7.8%
8.3%
90% 100
0%
ない
修参加者が帰
帰国後、社内に伝達した( または今後す
する予定の)知
知識、技術が
が、産業全体
体の底上
研修
げに貢
貢献する可能性
性があるかど
どうかについて
ても、約 60%の
の研修参加者
者が「大いにあ
ある」、「いくら
らかある」
と答えている。研修
修が所属企業
業の業績を向上
上させるのみ
みならず、新興
興国経済の発
発展につなが
がる効果
み出す影響力
力として、「雇用
用の増大」、「「海外取引の増大」、「国内
内需要の拡大
大」、「設備投
投資等の
を生み
拡大」と
といった項目で貢献する可
可能性がある
ると意識されて
ていることがわ
わかる。
-206-
受入企業
業による評価
の技術目標の
の達成度<有
有効性>
問1 日本側企業の
技術⽬
⽬標の達成度(n
n=39)
2..6%
17.9%
⽬標以上であっ
った
100%達成した
た
ほぼ達成した
あまり達成できな
なかった
74.4%
全く達成できなか
かった
わからない
本側企業に計
計画された技
技術目標がど の程度達成さ
されたかを聞
聞いたところ、994.9%の企業
業が「目
日本
標以上
上であった」「100%達成した」「ほぼ達成
成した」と回答
答した。これは
は研修生受入
入に当たり計画
画され
た習得
得させるべき
き技術移転の
の目標が達成
成され、研修制
制度が効果的
的なものとなっ
っていることが
が窺え
る。
修参加による
る研修生の変
変化<インパクト>
問 2 日本での研修
研修
修⽣の変化 (n=38)
7.9
9%
⾮常に変化が⾒られ
れた
44.7%
⼀応の変化が⾒られ
れた
%
47.4%
あまり変化は⾒られな
なかった
効果は⾒られなかった
た
わからない
日本
本側企業に、
、日本での研
研修参加によっ
って研修生に
に変化がみら
られたか聞いた
たところ、いず
ずれの
企業も
も「非常に変化が見られた
た」「かなり変化
化が見られた
た」「一応の変
変化が見られ
れた」と回答して
ている
ことか
から、研修が終
終了したすべ
べての研修生に
に研修後の変
変化がみられ
れたことがわか
かる。
-207-
第5章 受入研修事業の事後評価
5.3
5.3 受入企業に
による評価
問 3 日本での研修
修参加による
る研修生の変
変化の具体的な内容
研修⽣の変
変化の具体的な内
内容 (n=39)
0%
%
10%
20%
30%
40%
50
0%
60%
70%
80%
%
74.4%
%
仕事に対する
る意識・姿勢
23.1%
⽣産性を意
意識する姿勢
品質・コストを意
意識する姿勢
46
6.2%
リー
ーダー・指導者としての
の意識・姿勢
46
6.2%
%
25.6%
環
環境・省エネに関する
る意識・姿勢
28.2
2%
その他
日本
本での研修参
参加による研
研修生に表れた
た変化の具体
体的内容を聞
聞いたところ、 「仕事に対す
する意
識・姿
姿勢」が最も多
多く 74.4%の回答があった
た。また「品質
質・コストを意識
識する姿勢」、
、「リーダー・指
指導
者とし
しての意識・姿
姿勢」において
ても共に 46.22%と多くの回
回答があった。管理監督ま
または指導的
的立場
あるい
いは期待をされている HID
DA 研修生へ
への研修は、知
知識・技術を習
習得するだけ
けではなく意識
識、姿
勢の改
改革にもつな
ながる変化がも
もたらされたこ
ことを受入企業が認めてい
いることが窺え
える。なお、帰
帰国し
た研修
修生にもアン
ンケートを実施
施しているが、 研修生が回
回答した行動変
変容では、「品
品質・コスト・納
納期
を意識
識する姿勢」、
、「顧客の満足
足を優先する
る姿勢」、「仕事にきちんと
と、とことん向か
かう姿勢」とい
いった
回答で
でいづれも 60%を超えてい
6
いた。
また
た、「その他」と
と回答例として
ては「日本語力
語力の向上」「コ
コミュニケーシ
ション能力の向
向上」「安全に
に対
する意
意識」というものがあった。特に「安全に
に対する意識
識」に関しては、日本の安全
全管理手法が
が貢献
してい
いると思われる
る。
企業(派遣元
元企業)におけ
ける研修成果
果の波及・定着
着の見通し
問 4 研修生帰国後の現地側企
研修効果の波
波及・定着の⾒通
通し (n=39)
5.1%
5.1%
10.3% 5
⼤いに定着
着する
かなり定着
着する
46.2%
4
33.3%
%
⼀応定着
着する
あまり定着
着しない
定着しない
い
わからない
い
本側企業に、
、研修生帰国
国後の現地側
側企業(派遣元
元企業)にお
おける研修成
成果の波及・定
定着の
日本
見通し
しについて聞
聞いたところ、「大いに定着
着する」「かな
なり定着する」
」「一応定着す
する」と回答し
した企
業が 84.6%あった
た。別途、帰国した研修生
生にもアンケートを実施し
しているが、そ
それによると研
研修成
-208-
署での
の会議」、「O
OJT・作業者へ
への技術指導
導」等により波
波及、定着を図っていると
との回答が多
多くあっ
た。ま
また「伝達した
た知識・技術が
が社内で活用
用されるように
になった」、「伝
伝達した知識
識・技術が所属
属部署
で活用
用されるように
になった」とし
した回答も、700%程度の研修
修生が答えて
ている。
業)の経営上の
の効果
問 5 現地側企業(派遣元企業
営上の効果 (n=39)
経営
0%
10%
20%
30%
40%
%
50%
60%
6
70%
80%
15.4%
売上
上増
87
7.2%
研修
修⽣の技術・知識の向
向上
74.4%
研修
修⽣の意識・姿勢の変
変化
61.5%
研修技術の伝
伝達
46.2%
研修技術の定
定着
15.4%
従業員の離職率低
低下
25.6%
従業員のモラル向
向上
15.4%
顧客満⾜度の向
向上
知名度の向
向上
そ
その他
90
0%
5.1
1%
7.7%
7
日本
本側企業に、研修生帰国後
後の現地側企
企業(派遣元
元企業)ではど
どのような経営
営上の効果が
が期待
できる
るか聞いたとこ
ころ、「研修生
生の技術・知識
識の向上」や
や「研修生の意
意識・姿勢の変
変化」、「研修
修技術
の伝達
達」が 60%を
を超えての回答
答があった。こ
これは問 1-2
2-2 にて研修生に表れた変
変化の結果が
が現地
側企業
業(派遣元企
企業)での経営
営上の期待され
れる効果につ
つながっており
り、研修効果 が高いことが
が窺わ
れる。
-209-
第5章 受入研修事業の事後評価
果の波
波及・定着の
のために研修
修生は具体的 な取り組みと
として「同僚とのディスカッ
ッション」や「所
所属部
5.3 受入企業に
による評価
問 6 現地側企業の収益への影
影響
現地側企
企業の収益への影
影響 (n=39)
2.6%
2.6%
20%以
以上の増収
23.1%
35.9%
10%以
以上の増収
10%未
未満の増収
2.6%
特に影響はない
33.3%
減収
わからな
ない
問 3-1 の効果に
によって、現地
地側企業(派遣
遣元企業)の
の収益にどのよ
ような影響があ
あるか聞いた
たところ、
以上の増収」」、「10%以上の
の増収」、「100%未満の増収
収」と回答した
た企業が 28.33%あった。一
一方で、
「20%以
「特に
に影響はない」、「わからな
ない」といったも
ものが 69.2%
%の回答があ
あったが、これ
れはアンケート
トが研
修生が
が帰国して 1 年以内に行
行われたことも
もあるかと思わ
われる。
の効果
問 7 日本側企業での経営上の
業の経営上の効果
果 (n=39)
⽇本側企業
0%
0
10%
20%
30%
現
現地での売上増
17.9%
現地
地での売上増による⽇
⽇本側収益改善
17.9%
⽇本で
での知名度向上
⽇本における取
取引機会の拡⼤
40%
50%
60%
70%
%
90
0%
10.3
3%
7.7%
25.6%
%
海外における取
取引機会の拡⼤
1
15.4%
⽇本側従業
業員の⼈材育成
53.8%
⽇本側従業員の国
国際意識の強化
82.1%
%
⽇本側と現地
地側の連携強化
その他
80%
7.7%
日本
本側企業に、研修生帰国
国後の日本側
側受入企業で
ではどのような
な経営上の効
効果が期待できるか
聞いた
たところ、「日本側と現地側
側の連携強化
化」が最も多く
く 82.1%あっ
った。これは研
研修の効果が
が研修
生の知
知識・技術の
の習得だけに留
留まらず、受
受入企業と派遣
遣企業との連
連携強化に研
研修生が橋渡
渡し役と
しての
の強い期待が
がおかれていることが窺わ れる。
また
た、「日本側従
従業員の国際
際意識の強化
化」と答えた企
企業も半数以
以上にのぼり、
、日本側従業
業員が
研修生
生を指導する
ることにより、現地事情の理
理解が深まっ
ったり、日本人
人を指導する
るのとは異なる
る経験
を経る
ることで、日本
本側従業員の
の成長にもつな
ながると期待
待されているこ
ことがわかる。
-210-
⽇本側
側企業の収益 (n
n=39)
2.6
6%
38.5
5%
20%以上の
の増収
20.5%
10%以上の
の増収
10%未満の
の増収
特に影響は
はない
38.5%
減収
わからない
企業
業に、研修生
生帰国後の日本側受入企
企業の収益にどのような影
影響があるか聞
聞いたところ、
、現地
側企業
業(派遣元企
企業)での収益
益の影響と同
同様な結果が
がみられ、「10%
%以上の増収
収」が 20.5%あるも
のの、
、「特に影響が
がない」、「わからない」とし
した回答が 77%あった。
立った点
問 9 HIDA 研修制度で役に立
研修制度
度で役に⽴った点 (n=39)
0%
10%
20%
30%
40%
50%
%
60%
70%
%
80%
84.6%
経費の補助
61.5%
%
査証研修
修査証取得⼿続き
48.7%
在留資格「研修」」で実務研修実施
41.0%
「公的
的研修」参加によるモ
モチベーション向上
6
69.2%
H
HIDAの⼀般研修(
(⽇本語研修含)
35.9%
HIDA研修セ
センターの宿舎利⽤
0.8%
30
HIDA担当者のサ
サポート・アドバイス
離職率の低下
7.7%
20.5%
他企業、他国研修
修⽣との⼈脈形成
その他
90
0%
7.7%
今年
年度の研修制
制度を利用した企業に、H
HIDA 研修制
制度で役に立
立った点は何か
ところ、
かを聞いたと
「経費
費の補助」、「研
研修査証取得
得手続き」「H
HIDA の一般研
研修(日本語
語研修含)」の
の回答は 60%を
を超え
ていた
た。経費補助
助のみならず、HIDA の査証
証取得手続き
きや一般研修
修が受入企業
業にとって研修
修制度
利用で
で役に立って
ていることを示
示している。
「その他」の回
回答として「日本語の言語 習得、日本文
文化に対する
る基本教育」「「担当者による
るサポ
あった。
ート」というものもあ
-211-
第5章 受入研修事業の事後評価
問 8 日本側企業の収益への影
影響
5.3 受入企業に
による評価
問1
10 手続きの
の中で不満、煩
煩雑であると感
感じた項目
制度利⽤の
の⼿続きに関する満⾜度 (n=38)
2
2.6% 2.6%
⾮常に満⾜
⾮
26.3%
概ね満⾜
概
普通
普
68.4%
6
やや不満
や
不満
不
わからない
わ
⼿続きで不満
満、煩雑と感じた項
項⽬ (n=38)
0%
%
10%
20%
30%
40%
研
研修⽣来⽇・帰国時
時の空港送迎
7.7%
33.3%
20.5%
報
報告書の作成
その他
70%
%
10.3
3%
旅費・滞在
在費等の申請
HIDAホームページの
の構成・内容
60%
61.5%
研修⽣受⼊申込
込書類の作成
査証
証申請⼿続き
50%
2.8%
12
17.9%
今年
年度の研修制
制度を利用し
した企業に、制
制度利用にあ
あたっての手
手続きに関す る満足度を聞
聞いた
ところ
ろ、「非常に満
満足」「概ね満
満足」と答えて
ているところが 71%あり、制度利用の手続
続きが概ね妥
妥当で
あると
と考えられる。
そ
その中で、申込
込書類の作成
成、申請、報告
告書の作成な
などについて煩雑であると
と感じている企
企業が
多い。
。より一層の簡
簡素化に努め
める必要があ る。
-212-
評価結果の二次評価
6
評価結果の二次評価
評価結果の二次評価(外部有識者による評価)
HIDAでは、研修事業評価システム及び専門家派遣事業評価システムに基づき、研修事業では
研修生、受入企業、HIDA担当者等、専門家派遣事業では専門家、指導先企業、HIDA担当者等、
それぞれ複数の評価者が実施した評価結果について、本報告書第1章から5章に取り纏めた。
それら内部の評価結果(一次評価)を検証し、事業の運営改善に役立てるとともに、評価結果
を広く公開し本事業の説明責任を果たすため、次の外部有識者から成る評価委員会を開催し事業
評価(二次評価)が行われた。評価委員会による事業評価及び提言の内容は次のとおりである。
委員名(敬称略)
団体・役職
委員長
牟田
博光
東京工業大学
名誉教授
委員
大場
裕之
麗澤大学
委員
井上
安彦
公益財団法人日本生産性本部
委員
西谷
和雄
日本商工会議所
教授
国際部
参与
担当部長
1)事業評価の内容
今年度は本事業の実施3年目であり、最終年度であるので、今年度の評価結果の集計分析とと
もに、3年間の評価結果の集計分析も行い、3年間の総括的な事業評価が行われた。また、3年
間の帰国研修生全員へのアンケート調査や、外部専門家2名によるアジア4か国の主な現地企業
への訪問インタビュー調査を行い、本事業が技術移転や人材育成に大変効果的であったことが報
告された。
評価報告書(一次評価)に示されたそれらの評価結果からは、本事業の両輪である研修事業と
専門家派遣事業がともに当初の目標を達成し、各評価者から高く評価されていることがわかっ
た。本委員会としても本事業の事業実績を高く評価したい。
2)提言の内容
今後の事業の改善を期し、以下に提言を行う。
①
本事業の成果と必要性のアピールの明確化
本事業は企業に必要とされており効果的であることが報告書からも示されているが、予算は毎
年削減されている。HIDAの理念、姿勢や事業の成果・効果を明確にわかりやすくアピールする
必要があるのではないか。
② 受入研修と専門家派遣の相乗効果等について
全体的な研修成果の「見える化」「数値化」はよくできているが、受入研修と専門家派遣の相
乗効果については、合併してHIDAとなったことのメリットであると思うので、その点を評価結
-214-
果で示せるとよい。また、予算制約がある中で、どういう改善が行えるのかアクションプランを
示し、事業の改善に取り組んでもらいたい。
③
HIDA色を打ち出した事業展開について
海外ヒアリング調査を実施した大野・古沢両専門家より、HIDAならではの相談機能の強化や
人材育成のトータルソリューション提供機関への進化、時代のニーズに応じた新たな人材育成プ
ログラム(ソフトスキル重視や日本人向け管理研修コース、新興国人材との交流型プログラム、
インターンシッププログラムなど)の実施など、よりHIDAの理念を打ち出した事業の実施を期
待する意見が出された。このような提言も活かし、HIDA色を打ち出した積極的な事業展開を期
待する。
第6章 評価結果の二次評価
-215-
2015年3月
〒104-0061
東京都中央区銀座5-12-5 白鶴ビル4階
電
話
F
A
X
ホ ー ム ペ ー ジ
03-3549-3051
03-3549-3055
http://www.hidajapan.or.jp/