1 『ホッとしてハッとする-女性性でビジネス核心を創る』

クオリティ・ワン
アナリシス&モデリング
ビジネス開発シリーズ
【 テ キ ス ト NO: 3- 1】
『ホッとしてハッとする-女性性でビジネス核心を創る』
~ 「 消 費 の 中 心 は 女 性 」「 女 性 性 の 勘 所 と し て の 感 性 が 必 要 」
「女性性の落とし穴もよく理解しておく」
デ フ レ か ら の 脱 却 を 目 指 し た ア ベ ノ ミ ク ス 。 2% の 成 長 を 目 標 に し て 各 種 の 政 策 を 創 出
し た が 、 い ま だ に ク リ ア し て い な い 。 東 京 を 中 心 に 2020 年 の 東 京 オ リ ン ピ ッ ク を 目 指 し た
各種の公共事業、民間投資などで景気を刺激しているものの、ここ数年のうちの期限切れを
視野に入れると、今後は、時代に即したクリエイティビティが求められるのではないか、と
考えます。
グローバルに展開するという決断を行った企業の意思は強固であり、さまざまな経験を
も と に 事 業 の 展 開 に 知 恵 を し ぼ っ て い ま す 。し か し 、海 外 の グ ロ ー バ ル 企 業 の 動 き を み る と 、
日本企業は以下のような壁にぶつかるのではないかと思います。
-世界の紛争地域でも支店を設けるようなリスクの高い決断ができるか
-社内のコンプライアンスが新興国ビジネスでも同じようにできると考えるか
これらのハードルは非常に高いのです。アジア地域におけるビジネス展開でも、バングラ
ディッシュで起きたようなテロ事件に巻き込まれるリスクも考慮しなくてはならなくなった
わけです。
ここでは、小さく始めて、小さな成功を収める日本市場での店舗ならではのビジネスの
あ り 方 を 考 察 し た い と 思 い ま す 。店 舗 ビ ジ ネ ス で は 、Web を 活 用 し た オ ム ニ 戦 略 に 対 抗 す る
必要が生じますが結局のところ、対面販売の強みは商品や人の温かみに大きく依存していま
す。
ポイントは、
「 消 費 の 中 心 は 女 性 」で あ り 、
「 女 性 性 の 勘 所 と し て の 感 性 が 必 要 」、さ ら に
付け加えれば「女性性の落とし穴もよく理解しておく」という三点に収斂されるのではない
かと考えます。
商 品 や ス タ ッ フ に 暖か さ を 感 じ た と き に、 お 客 様 は 好 意 的 にな り ま す
これは、説明は要しないところと思いますが、まったく温かさを感じないお店が結構あ
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るのも事実。このようなお店に入ると、店主やマネジャーの感性、感覚自体がさび付いてい
るとしか思えないわけですね。
それに対して、お店のあるべき姿・目標は「温かいけどクールでカッコイイ!」となり
ます。クオリティが高くなればなるほど、その両面を追求することは当たり前になります。
温かみがありながらクールでカッコイイというのは、一見相反することですが、これを研究
す る の は 、商 品 を 企 画 す る た め の セ ン ス を 磨 く こ と に も な る と い え ま す 。
「 そ の「 五 感 」を 感
じれる人こそが、これからの時代を上手に生き抜くことができ、一方わからない人はどんな
ビジネスにおいても時代に遅れてしまうのだと思うのです」と吉村たかみさんは言います
(『 女 性 が 思 わ ず 買 っ て し ま う 商 品 の ヒ ミ ツ 』 吉 村 た か み 、 日 本 実 業 出 版 社 、 2005 年 8 月 )。
ホ ッ と し て ハ ッ と する 店 舗 ビ ジ ネ ス の 極意
同書より、ホッとしてハッとする店舗ビジネスの極意を取り上げてみます。
【1】人を惹きつける魅力の源泉は女性性
「どんなジャンルにおいても成功者のほとんどの方は、年齢に関係なくこの「五感」と
いう女性的なエネルギーが鋭いものを持っています。人を惹きつける魅力には、この女性性
に 秘 密 が 隠 さ れ て い ま す 」。
【2】元気なお店は「暖かい」
「一人ひとりに合わせた言葉を選んで話しかけている。喜んで帰っていくお客様が多け
れば多いほど、人の喜んだ「気」が再びリピーターとしてお客様とともに帰ってくる。売れ
る 商 品 の ヒ ン ト は 、人 の 流 れ を 静 か に 見 て い る と き や 、人 が 集 ま っ て い る な か で 生 ま れ ま す 」。
「自分の目で見て、足で動き、手で触れて感じ取った味や商品に関しては、絶対に忘れ
ません。これが一番大切だと言います。また、売り手もさ細なことに感動したり、敏感に感
じる感受性を磨く。感受性は、自分自身が常にイキイキしているためにも必要不可欠なので
す 」。「 感 受 性 が 豊 か だ か ら 、 ヒ ッ ト 商 品 に も め ぐ り 会 い 、 人 を 動 か す 不 思 議 な パ ワ ー を 持 っ
ていたり、不可能を可能にしたり、夢を実現させる力が備わったり。これらすべては、感性
の 力 に よ る も の で は な い で し ょ う か 。」
【3】純粋なプラス思考と切り捨ての早さの共存
「 い い 商 品 は ど ん な 人 を も 感 動 さ せ る パ ワ ー を 持 っ て い ま す 。な ぜ か「 余 韻 が 残 る 」
「は
まる」といった感覚にさせるものが売れる商品なのです。売れる予感は瞬時に感じるもので
す。イメージする力は困難に立ち向かう原動力になる。たくさんの人と会って直感力をアッ
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プ さ せ る こ と が 重 要 」。
【4】人の笑顔が見たい、それが企画の第一歩
「企画担当者は実際にその商品をどんな人が購入し、そして売るのがどれだけ大変か、
またどれだけの競合があるのかを、現場に出て認識すべき。とくに最近は大多数の意見やた
だの統計でなく、もう少し掘り下げた、そのジャンルに詳しい消費者からの声を聞き、クオ
リ テ ィ を 求 め て 研 究 し て い か な け れ ば な ら な い 時 代 で す 」。
【 5 】「 お 客 様 と 一 緒 に つ く る お 店 」 と い う 感 覚 が 大 切 。 人 が 人 を 呼 ぶ 法 則 を 重 視
「お客様一人ひとりに対してどんな少ない購入額でも真心ある接客とサービスに徹し
て・・そのときに感じたのが、人が喜ぶことをすれば、必ず結果は返ってくるということ。
一人ひとりの個性を大切にした、商品企画、仕入れが大切。物販に限らず、女性をターゲッ
トにした仕事すべてにいえること。女性がみんなキレイで、わがままで、一人ひとりが自己
主 張 し 始 め た 時 代 、そ れ を 理 解 し た 商 品 開 発 を 心 得 る こ と 。そ し て 忘 れ て は な ら な い こ と は 、
す べ て は 表 面 的 で な く 、 本 物 で あ る こ と 」。
女性心理をないがしろにしていると「必ず痛い目にあいます。奥底に隠れた深層心理を
見抜くこと、気づくことこそ、これからの経営の課題だ」といいます。例えば、ファースト
フード店で近年、売り上げが低迷している会社などはこれまでまったく異なった観点からの
経営を行ってきたので、再生を図るにはこのような観点での見直しが必要ではないかと思わ
れます。
商 品 や ビ ジ ネ ス が 本物 で あ れ ば 、 人 に 訴え る な に か が あ る
また、ビジネス全般に通じる重要な指摘もあります。人格とか人柄がビジネスに影響を
与える。とくに接客における「真実の瞬間」の重要性を再確認し、店舗スタッフの研修に取
り入れる必要があります。そして、本物はいつも人を説得する力を持っている。人まねでは
決し成功しないということです。
【6】困難な状況においてポジティブな発想ができるかどうかが重要
「仕入れミスで不良在庫をかかえてしまった状況であっても、どんな工夫をして売り切
ったのかが大切。順調に進んできた人は、大きな落とし穴に落ちたときになかなか這い上が
ってこれません。そして順調に進んできた人には人に対しての痛みがわかりません。そうい
う人は許容量が少ないので、大人になってもプライドが捨てられず、人に対して冷たいので
す 」。
「 そ の よ う な ス タ ッ フ は お 客 様 に 頭 を 下 げ る こ と が で き ず 、表 面 的 な 挨 拶 だ け を し ま す 。
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今の自分がプライド優先になってしまっているということは、この先どんなことをやっても
結果は同じになる」と指摘します。
【7】自己満足かプロ意識かどうかで結果はでる
「成功例をマネしてもダメ。人になにを与えられるか、どうやって人に役立っていくか
まで深く考えるために、商品やお店をつくる意味を真剣に考えます。
その商品が発売されたとき、いったいどんな人がどれだけ喜んで、そしてなにが変わってい
くのか。それが発売されることによって、今までの悪いことがよい方向へ変るのか。
つ く る こ と の 意 味 を 考 え て い け ば 、お の ず と い い 商 品 が 生 ま れ 、そ の 売 り 上 げ は 伸 び て い く 」。
【8】自分のためにやっているのか人に与えようとしているのかがとても重要
「まずは人に与えることがビジネスの大原則。純粋に今やっていることに目的を持って
楽しんでいれば、それほど人が気にならないはず。心の許容量がないと、いい仕事などでき
るわけがないのです。人の喜びがイコール自分の喜びというように共感できる心を持ってい
る人はいったいどれくらいいるのでしょう。自分が楽しめていない人は人に与えることはで
き な い の で す か ら 」。
女性は本心を言っているように見えても本当の真意を探ると実は自分の都合のい
い よ う に 言 っ て い る場 合 が 多 い
「女性の心はコロコロ変ります。自分が一番大切で可愛いのが女性なので、商品や男性
の好みも自分の都合によってコロコロ変っていきます。女性は自分の都合で答えていること
が 多 い の で 、鵜 呑 み に し て し ま う と と て も 危 険 。女 性 は 意 見 に 私 情 や 感 情 も 入 り や す い の で 、
マ ー ケ テ ィ ン グ 段 階 で は そ の 点 に 気 を つ け る の が ベ タ ー 」。
【9】本当に必要な情報は自分の目で感じて欲しいのです。
「客観的な情報を取り入れていく。どこで買ったのか、何を読んでいるのか、など事実
を つ か む こ と が 大 事 。企 画 担 当 者 や バ イ ヤ ー は 男 性 だ か ら と い っ て 女 性 に 頼 り き る の で な く 、
あ く ま で も 参 考 程 度 で 意 見 を 聞 い て 、 自 分 の 選 択 眼 を 鍛 え な い と 後 々 大 変 な こ と に な る 」。
【 10】 女 性 か ら 本 当 の 意 見 を 聞 き た い の な ら 、 一 人 ひ と り か ら 聞 き 出 す こ と
「気持ちのゆらぎは女性特有のもの。一方で、自分がこれは絶対と思ったものに関して
は か な り の 闘 争 心 を 燃 や す と い う 一 面 も 」。
【 11】 美 の 追 求 は 女 性 の 本 能
「どんな女性も同性に対して無意識になにかをチェックしている。女性同士でいいと思
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うものには、自然と意識がそこにいくようです。女性ならではの美に対する本能なのではな
いでしょうか。脳のなかにそのセンサーがインプットされているのでしょう。女性は街を歩
い て い て も 、 レ ス ト ラ ン に 入 っ て も 、 美 の 情 報 は 大 好 き な の で す 。“ 私 は あ き ら め て い ま す ”
といっている女性でもちょっと声をかけてきれいになるためのきっかけをつくってあげると
本 当 に 驚 く ほ ど 目 覚 め る の が 早 い の で す 」。
【 12】 商 品 に は 単 に 購 入 す る と い う 以 外 に 、 人 に 夢 を 与 え る と い う 側 面 も あ る
「 一 番 わ か り や す い 女 性 の 特 徴 は 同 性 に 影 響 さ れ や す い と い う こ と 。人 が し て い る こ と 、
夢中になっていることなど、周囲の流行や人に左右されやすいのです。どんなに知的な女性
でも周りから受ける影響はすごいのです。女性が美のアンテナを張り巡らせている裏には、
少しでもライバルに勝ってキレイでいたいという、どんな女性でも持っている本能的な気持
ち が あ る の で す 」。
「例えば、化粧品では、これを使用するとキレイになる、ドキドキする、という暗示効
果が必要なのです。少しでも以前よりキレイになれる、ということを女性は期待しているの
です。今は未婚、既婚に関係なく、キレイな人ほど化粧品に興味を持つのが現実なのです。
女性は化粧品に対しては夢を買っている部分がかなりを占めている。常に今以上、現状に満
足 し な い 、 こ れ で い い と い う こ と が な い の が 美 へ の 追 求 な の で す 」。
いかがでしたか。女性性を理解し、感性を研ぎ澄ますことは、多くのビジネスの要件と
して大切にとらえることができるのではないでしょうか。
【 テ キ ス ト NO: 3- 1】
◆参考文献
『 女 性 が 思 わ ず 買 っ て し ま う 商 品 の ヒ ミ ツ 』 吉 村 た か み 、 日 本 実 業 出 版 社 、 2005 年 8 月
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