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http://www.sciencesignaling.org/
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は、生物学におけるシグナル伝達に関する知識と情報を集約した、AAAS(米国科学振興協会)が発行す
る
の姉妹誌です。シグナル伝達は、細胞が自らの環境にどのように応答し、適応するのかを調べる重要な研究です。
過去 40 年間、ノーベル生理学賞や医学賞の 30%はシグナル伝達分野における発見であることからもわかるように、免疫学、
生理学/医学、神経科学、発生生物学、微生物学、生化学、植物科学/植物学、および分子細胞生物学などの生命科学のほ
ぼ全ての分野の研究に不可欠です。
1999 年に AAAS はスタンフォード大学 High Wire Press 等の協力の元、Signal Transduction Knowledge Environment
(STKE)として、世界中のシグナル伝達分野における発見を科学者たちのために
年 9 月には形質を変えて、
オンラインで創刊しました。2008
ピアレビュー誌としてオンラインに毎週 Research Articles を掲載、また印刷版
月刊誌も新たに創刊しました。
このたび AAAS では、日本での活動の一環として、
刊誌「
に掲載された論文の要約の一部を日本語で紹介する季
日本語版ダイジェスト」を作成する運びとなりました。第4号 (vol.4) は、2009 年 7 月 ∼ 9 月ま
でに掲載された記事の紹介です。誌面の都合上、一部の記事の紹介になります旨、ご了解下さい。是非とも本サイト、本誌
をご覧下さい。
本誌に関する詳しい情報:http:www.sciencesignaling.org
編集者に関する詳しい情報:http://stke.sciencemag.org/about/help/research.dtl
AAAS は 1848 年以来、272 の加盟団体と科学研究団体を有する学術団体です。米国ワシントン DC に拠点を置く
編集部はピアレビュー誌として科学論文を扱う Science , ScienceSignaling , Translational Medicine を出版しています。
AAAS は「科学の進歩と社会への貢献」を使命とし、科学政策、国際協力、および科学教育におけるプログラムを通して科
学活動を支援・奨励しています。
詳しくは www.aaas.org
内容については細心の注意を払っていますが、情報の正確性、専門性について、発行者はいかなる責任を負うものではあり
ません。正確な情報は必ず原文でご確認下さい。
シグナル伝達の研究に携わっておられる皆様に、是非とも
をご購読いただき、多くの日本人研究者の方か
らのご投稿をお待ち申し上げております。
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発行元
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1200 New York Avenue NW
Washington DC 2005
USA
Science International
Bateman House 2nd Floor
82-88 Hills Road
Cambridge CB2 1LQ
UK
後援
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〒135-0016 東京都江東区東陽 2-2-20 東陽駅前ビル
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科学編集長:Michael B. Yaffe
翻訳・制作
編集者:Nancy R. Gough
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発行日
http://sciencemag.co.jp
2009 年 11 月
© 2009 American Association for the Advancement of Science (AAAS). All Rights Reserved.
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Editorial Guide
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Re-reviewing Peer Review
Michael B. Yaffe1,2*
自分の研究分野に直接関係する論文のレビューを依頼されるのは怖いことだが、それよ
だすという責任を放棄し、代わりに投稿論文に対して、3 人以上のレビュアーから出され
りも怖いことがひとつだけある。それは、自分の投稿原稿に対するレビューを受け取るこ
た要求をすべて満たすよう求めてくる者もいる。私の経験では、研究者が 3 人寄れば、ラ
とだ。もちろん、ピアレビューは現代の論文発表システムを支える不可欠な要素であり、
ンチのお店を決めるにも骨が折れる。ましてや 3 人の研究者全員が 1 本の原稿にみられる
その目的は、不正確またはずさんな研究報告が出版され、その分野の後続の研究者たちを
すべての長所に同意する見込みはきわめて少ないように思える。
混乱させることがないよう、事前にその研究報告を排除することにある。しかし私たちは、
レビュアーとして最も重要な責任を忘れてはならない。その責任とは、新発見、または過
このような状況を改善するために、研究者として、私たちに何ができるだろうか?レビュ
去に報告された発見とは異なる事実の報告と訂正情報を、確実に、できるだけ速やかに研
アーたる者がなすべきなのは、論文のデータが新規かつ正確なものであるならば、そのデー
究者に伝えることである。本稿では、以上のことを念頭に置いたうえで、現行のピアレビュー
タがどこかに(たとえそれがレビュー依頼元のジャーナルでないとしても)掲載されるよ
制度に関する私の経験と考え方について、この制度をより良いものにしていくために内側
うに、批評の焦点をその原稿を改善させることに向けることである。批評家の功績を表し
から変えていくにはどうすればよいかという前向きな視点に立って論じることにする。
て銅像が建てられたことはいまだかつてない。原稿の内容が自らの研究内容と近すぎて客
観的にみることが難しい場合や、その論文の出来がお粗末で読むに耐えない場合、あるい
研究者の論文原稿や助成金申請書、昇進希望書類をレビューする際の私自身の方法と内容
は多忙のあまり責務を果たすのに十分な時間を割けそうにない場合には、依頼を断るべき
のほとんどは、試行錯誤を繰り返すなかで身に付けてきたものである。ひょっとすると、
である。たとえ、論文に目を通さないまますでに 6 週間が過ぎ、「レビューの期限です」
そうした錯誤のなかにはとんでもない誤りが含まれていたかもしれない。私は、大学院生
という催促メールが溜まっていたとしても、である。そして、自分のレビューを、投稿者
時代とポスドク時代に、指導教官とともに論文のレビューを手伝う機会に恵まれた。当初
の立場に立って読み直してみることである。「このレビューを受け取るのが自分だったとし
は旺盛な意欲をもってレビューに取り組み、テキスト中に実験対照がないことや、不適切
たら、コメントの内容を建設的に活用できるだろうか?」、それとも「コメントを読んでサ
なデータ解釈、不明瞭な考え方があるのを見つけようものなら厳しく非難した。このよう
ンドバッグを殴りたい気分にならないだろうか?」と。幸いなことに、大半のレビュアー
な態度は若い研究者にはありがちなことである。若い研究者はえてして、高い基準を掲げ、
は公正で、レビューのプロセスに熱心に取り組み、その任務をまじめに引き受けている。
実際のデータというものがしばしばどのように見えるものかということについての経験が
明らかに不足しており、実際に実験を行うにはどれだけの時間を要するのかについて十分
将来的なことを考えた場合、学生およびポスドクを対象にした、原稿のピアレビューに関
にわかっていないものである(これは、投稿論文を郵便で学術雑誌に送り、レビューが戻っ
する何らかの正式なトレーニングを検討すべきかもしれない。大学院のプログラムはすべ
てくるまでに何カ月も待たされた時代の話である。実験には、それ以上に時間がかかった)。
て、掲載済みの文献を批判的に評価することを学生に求めている。しかし、正式なレビュー
幸いにも、私は良き指導者に恵まれ、このような辛辣な態度を改めることができた。自分
の方法を実際に教えるプログラムはほとんどないのではないだろうか。このようなやり方
たちは論文の発表を手助けしようとしているのであって、発表を阻止しようとしているわ
を 実 施 し て い く た め の ひ と つ の 興 味 深 い 手 段 と し て、
けではない、ということを気づかせてもらったのである。私が先輩研究者から学んだ重要
Resource において、ウェブディスカッションフォーラムの利用が紹介されている( )。別
な教訓のひとつは「ストーリーが大体においてまとまっているが、データの一部に若干の
の案として、2 つ目の Teaching Resource で記されているのだが、学部レベルにおけるトレー
食い違いがみられるような論文こそが、実は最も興味深い論文である」というものであった。
ニングとして、実験室実習のレポートを研究論文の形式で書かせた後に、学生どうしでそ
第一に、そのような論文は、データがおそらく本物であり、選択的に編集されたものでは
の「研究」についてピアレビューをさせるという方法がある( )。
の Teaching
ないことを意味する。第二に、そのような論文は、他の研究者にとって、データの一部に
みられる食い違いまできちんと説明するストーリーを仕上げるために、まだいくらか研究
最後に、エディターたる者は、レビュアーが 2 回目、3 回目のレビューで新たな修正を要
の余地が残されていることを意味する。すべてが 1 つの全く隙のない自己完結型の「パッ
求して「ゴールの設定を覆す」ような不当な要求をしていないかどうかを確認すべきである。
ケージ」に収められている必要はない。むしろ、完璧すぎるストーリーほど疑ってかかる
レビュアーは、最初にひととおりの批評を行ったら、初回の批評に応えるために行われた
べきである。あるいは、実データにみられる「色むら」や余分な「線」が掲載データに全
実験に関することでない限り、初回レビューで言及したこと以外の要求はすべきではない。
くみられない場合も疑ってかかるべきである。私の指導者のひとりは、厳しくも公平なレ
エディターには介入する義務があり、最終結果にレビュアーの意見をそのまま反映させて
ビュアーとして知られていた。彼は私に「より良い実験方法を著者に提案できる場合以外
はならない。レビュアーは本来、エディターに考え方の指針を示すべきなのであって、エディ
は実験を批判してはいけない」と教えてくれた。「ダーツを投げたいのならパブに行けばい
ターの意見を支配するのではない。エディターが独立性を保つには、ある程度の scientific
い」と言われたものだ。
courage が必要である。それは、特定の分野で優れた勲章を受けた専門家からのアドバイ
スに反する決断をくだす場合にはなおさらである。一方で、レビュアー自身が助けてくれ
残念ながら、すべてのレビューが新しいデータの出版を助けているとは限らない。なかには、
る場合もある。過剰な怒りと敵意をあらわにした辛辣な言葉を並べるレビュアーは、自ら
新発見をつぶしにかかることに専念しているとしか思えないレビューもある。この点に関
レビュアーとして不適格であることを示している。
して、私がこれまでにピアレビューの結果を受け取ってきた者として(またはその同僚と
して)見聞きしてきたレビューのなかには、いわば「創造的」という言葉を勘違いしてい
学術雑誌に殺到する新研究が増加の一途をたどる今、ピアレビューのプロセスにおいて、
るアプローチも見受けられた。たとえば、(1)大量の追加実験(実質的には完全原稿をも
本当の意味で「peer(仲間)」として行動することが、いままで以上に重要である。
う 1 本か 2 本は書き上げられるほどの)を要求し、結果として追加の原稿がデータの補足
でしかなく、結局忘れ去られたり無視されたりする可能性のあるようなレビュー、(2)新
Citation㸸Sci. Signal., 25 August 2009
Vol. 2, Issue 85, p. eg11
[DOI: 10.1126/scisignal.285eg11]
たにトランスジェニック動物かノックアウト動物を作製して完全な動物個体環境での結果
を検証することを求める、または通常は(そのレビュアーにさえも)容易には手に入らな
い装置や高度な専門技術を要する実験を求めるレビュー、(3)データ解釈の些細な点を
1 ヵ所だけ執拗に取り上げ、まるでその論文全体の正当性がその 1 点にかかっているかの
ように扱っているレビュー、(4)「貴殿の論文に書かれていることは、その主張を支持す
る文献をわざわざ引用するまでもなく誰もが知っていることである」と述べるレビュー、
(5)すでにピアレビュー済みである過去の出版データについて反論しているレビュー、そ
して極めつけは(6)レビュアーが、データの解釈を間違えている場合、さらに悪くすると、
別の研究者による発表済みの論文について明らかに間違えた解釈をして、今回の結果と矛
盾していると主張しているレビューである。優秀なエディターであれば、あまりに不当な
要求は拒否することも多い。しかし、エディターのなかには時折、自ら独立した判断をく
Michael B. Yaffe
1
Chief Scientific Editor of Science Signaling, American Association for the
Advancement of Science, 1200 New York Avenue, N.W., Washington, DC
20005, USA.
2
David H. Koch Institute for Integrative Cancer Research, Departments of
Biology and Biological Engineering, Massachusetts Institute of Technology,
Cambridge, MA 02139, USA.
* Corresponding author. E-mail: [email protected]
Óãéåîãå Óéçîáìéîç ஓట᝙࿂ʊɮʂɱʃʒǽöïì®´ǽǽ³
Research Articles
A compilation of editor’s summaries of research published in July - September
Sci. Signal., 28 July 2009
Sci. Signal., 4 August 2009
疾患および進化におけるリン酸化ネットワーク
重要な関係を解明する
Phosphorylation Networks in Disease and Evolution
Defining the Critical Relationship
Vol. 2, Issue 81, p. ra39
[DOI: 10.1126/scisignal.2000316]
Vol. 2, Issue 82, p. ra41
[DOI: 10.1126/scisignal.2000343]
配列アラインメント法、キナーゼ - 基質ネットワークアラインメン
多くのタンパク質キナーゼは複数の基質を持ちうるが、多くの基質
ト法という 2 つの計算的分析の結果を組み合わせることで、タンパ
もまた複数のキナーゼによってリン酸化されうる。このため、考え
ク質リン酸化の進化への洞察が明らかになった。2 つの分析方法か
られる多数のキナーゼ‐基質対のうちのいずれが特定の生理反応を
らは、ヒトおよびモデル生物において、異なるがいくらか重複する
媒介するのかを特定する必要がある。Schleicherらはタンパク質キ
保存されたリン酸化タンパク質のまとまりが得られた。1 つ目から
ナーゼ Akt1 が欠損し、同時に Akt1 基質である内皮一酸化窒素合
は、位置が保存されたリン酸化部位を有するリン酸化タンパク質を
成酵素(eNOS)に Akt1 によるリン酸化を模倣または阻止する変異
コードする一連の遺伝子が得られ、2 つ目には、位置の保存がない
を有するマウス系統を用いることにより、Akt1-eNOS シグナル伝
機能的に保存された多くのリン酸化タンパク質が含まれた。キナー
達の生理機能を探った。Akt1 欠損に伴う表現型の一部は eNOS 変
ゼ - 基質ネットワーク法を通して同定された遺伝子の enrichment
異の影響を受けず、これらの Akt1 機能が他の基質を介しているこ
analysis から、リン酸化されたシグナル伝達ハブをコードする遺伝
とが示唆されたが、Akt1 欠損に起因した創傷組織における血管新
子には疾患関連遺伝子(ヒトのメンデル遺伝オンライン版 Online
生の欠陥は eNOS のリン酸化模倣変異体によって回復した。さらに、
Mendelian Inheritance in Man により定義)が多いことが示唆され、
Akt1 は eNOS を介したシグナル伝達により、虚血組織における低
いずれの方法からも、保存されたリン酸化タンパク質をコードする
酸素誘導因子 1α(HIF-1α)媒介血管新生反応も調節した。以上よ
遺伝子にはがん関連遺伝子が豊富であることが示された。2 つの遺
り、Akt1 は主に eNOS のリン酸化を介して生後血管新生を調節す
伝子セットの機能アノテーションから、位置の保存は、アロステリッ
ると考えられる。
ク相互作用により制御される領域など、構造的に拘束された領域に
よく見られること、ならびに、キナーゼ - 基質ネットワーク法は、
機能の保存に位置の保存を必要としない進化が早いシグナル伝達過
程の分析に役立つ可能性があることが示唆された。分析からは、保
存された制御ネットワークが様々な疾患に関与している可能性があ
ることも示唆される。
Citation㸸C. S. H. Tan, B. Bodenmiller, A. Pasculescu, M. Jovanovic, M. O. Hengartner, C.
Jørgensen, G. D. Bader, R. Aebersold, T. Pawson, R. Linding, Comparative Analysis Reveals
Conserved Protein Phosphorylation Networks Implicated in Multiple Diseases. Sci. Signal. 2,
ra39 (2009).
´ǽǽÓãéåîãå Óéçîáìéîç ஓట᝙࿂ʊɮʂɱʃʒǽöïì®´
Citation㸸M. Schleicher, J. Yu, T. Murata, B. Derakhshan, D. Atochin, L. Qian, S.
Kashiwagi, A. Di Lorenzo, K. D. Harrison, P. L. Huang, W. C. Sessa, The Akt1-eNOS Axis
Illustrates the Specificity of Kinase-Substrate Relationships in Vivo. Sci. Signal. 2, ra41 (2009).
Research Articles
A compilation of editor’s summaries of research published in July - September
Sci. Signal., 11 August 2009
Vol. 2, Issue 83, p. ra42
[DOI: 10.1126/scisignal.2000224]
虫はどのようにして PKD で学ぶのか
How Worms Learn with PKD
る役割がよく知られたグアノシ
ントリホスファターゼ)を発見
し、この分子が MAVS と結合す
ることで、IFN 産生の誘発に必
要な転写因子の活性化を阻害す
膜結合型のセカンドメッセンジャーであるジアシルグリセロール
ることを見いだした。これらの
(DAG)は、種々のホルモンと神経伝達物質による活性化後にホス
データを総合すると、Mitofusin
ホリパーゼ C(PLC)によって産生され、プロテインキナーゼ C
2 は、MAVS と RIG-I ま た は
(PKC)のさまざまなアイソフォームの動員と活性化に関与するこ
MDA-5 との相互作用を阻害する
とが知られている。DAG はまた、プロテインキナーゼ D(PKD)
ことによって、抗ウイルス応答
として知られるキナーゼファミリーを動員し、PKC とともに活性
の内在性阻害因子として作用す
化する。PKD は、PKC が標的とするものとは異なる基質をリン酸
ることが示唆される。
化する。培養細胞における検討により、PKD は多数の細胞過程を
調節する可能性が示唆されているが、in vivo での特異的機能はい
まだ不明である。本稿で Fu らは、線虫(Caenorhabditis elegans)
Citation㸸K. Yasukawa, H. Oshiumi, M. Takeda, N. Ishihara, Y. Yanagi, T. Seya, S.-i.
Kawabata, T. Koshiba, Mitofusin 2 Inhibits Mitochondrial Antiviral Signaling. Sci. Signal. 2,
ra47 (2009).
において、すでに同定されている DKF-2A アイソフォームが主に腸
に存在するのとは異なり、これまで知られていなかった PKD のア
イソフォームを同定し、DKF-2B と呼ばれるこのアイソフォームが
ニューロンに存在することを示している。C. elegans は、食物の非
存在下で Na+ 含有溶液にさらされると、通常であれば強力な誘引
物質である Na+ を回避することを
学習する。さまざまな変異体やト
ランスジェニック動物を用いた実
験によって、PLC-DAG-PKC シグナ
ル伝達経路を介したニューロンと
腸の PKD の活性化が、塩味誘導性
の学習にきわめて重要であること
が明らかにされた。
Sci. Signal., 25 August 2009
Vol. 2, Issue 85, p. ra48
[DOI: 10.1126/scisignal.2000274]
細胞死を操る
Finessing Death
BAX および BAK は BCL-2 タンパク質ファミリーのアポトーシス促
進メンバーとしての役割を持つため、慎重に制御する必要がある。
これらのタンパク質は、他の BCL-2 ファミリーメンバーによって
調節されているホモオリゴマー化のプロセスを受けることにより、
細胞死シグナルに反応してミトコンドリアアポトーシス経路を誘
起する。また、BAK は、ミトコンドリア外膜のポーリンタンパク
質 VDAC2(電位依存性陰イオンチャンネル 2)との相互作用によっ
Citation㸸Y. Fu, M. Ren, H. Feng, L. Chen, Z. F. Altun, C. S. Rubin, Neuronal and
Intestinal Protein Kinase D Isoforms Mediate Na+ (Salt Taste)–Induced Learning. Sci. Signal.
2, ra42 (2009).
てオリゴマー化が阻害され抑制されるが、BAX は抑制されない。
Ren らは、マウス胸腺リンパ球において Vdac2 を欠損させ、対照
マウスの胸腺リンパ球に比べ、これらの細胞は T 細胞受容体刺激
によって誘発されるものも含め、各種細胞死シグナルに対して感
Sci. Signal., 18 August 2009
Vol. 2, Issue 84, p. ra47
[DOI: 10.1126/scisignal.2000287]
役割の融合
Fusing Roles
受性が高いことを明らかにした。これらの細胞のアポトーシス促
進表現型は Bak との同時欠損によって回復したが、Bax との同時
欠損では回復しな
か っ た こ と か ら、細
胞死シグナルに対す
細胞は複数の異なる受容体を用いることにより、さまざまな病原体
る反応を決定するう
関連分子パターンを検出し、これに応答している。例えば、細胞質
えで、VDAC2 および
内に移行したウイルスを検出するためには、ウイルス RNA に対す
BAX の相対的存在バ
る 2 種類のセンサー分子であるレチノイン酸誘導性遺伝子 I
ランスが重要である
(RIG-I)またはメラノーマ分化関連遺伝子 5(MDA-5)を利用して
ことが in vivo で証明
いる。一度、ウイルス由来核酸に結合すると、これらセンサー分子
された。
はミトコンドリア外膜に局在するアダプタータンパク質、MAVS と
結合する。結果として、この相互作用は、ウイルスに対する自然免
疫応答の一部の I 型インターフェロン(IFN)産生へと導かれる。
Yasukawa らは、この応答を調節する可能性がある、他のミトコン
ドリア外膜タンパク質 Mitofusin 2(ミトコンドリア融合を媒介す
Citation㸸D. Ren, H. Kim, H.-C. Tu, T. D. Westergard, J. K. Fisher, J. A. Rubens, S. J.
Korsmeyer, J. J.-D. Hsieh, E. H.-Y. Cheng, The VDAC2-BAK Rheostat Controls Thymocyte
Survival. Sci. Signal. 2, ra48 (2009).
Óãéåîãå Óéçîáìéîç ஓట᝙࿂ʊɮʂɱʃʒǽöïì®´ǽǽµ
Research Articles
A compilation of editor’s summaries of research published in July - September
れにより自身のリン酸化を促進する、ポジティブ・フィードバック・
Sci. Signal., 8 September 2009
Vol. 2, Issue 87, p. ra52
[DOI: 10.1126/scisignal.2000393]
ループの存在が示唆される。
移動と FX
Migration FX
細胞運動性の鍵を握る制御因子は、負荷電脂質のホスファチジン
酸(PA)である。PA は、ホスホリパーゼ D(PLD)によって、膜
脂質ホスファチジルコリンから生成される。PA と PLD が細胞遊走
を制御する機構は、十分に解明されていない。Itoh らは、アクチ
ン重合を促進する細胞質チロシンキナーゼ Fer に着目して、Fer の
PA 結合ドメインを同定し、FX ドメインと名付けた。PA が Fer に
結合すると Fer のキナーゼ活性が高まり、この結合には FX ドメイ
ン内の正荷電残基が必要であった。Fer を強制発現させると、FX
ドメイン内の正荷電残基が欠損した Fer 変異体を発現している細
胞と比べて、葉状仮足形成と遊走が増加し、これらの作用は PLD
の活性に依存していた。したがって Fer は、膜組成の変化をアクチ
ン再構築現象に結び付け、細胞遊走を促進している可能性がある。
Citation㸸B. Diaz, G. Shani, I. Pass, D. Anderson, M. Quintavalle, S. A. Courtneidge,
Tks5-Dependent, Nox-Mediated Generation of Reactive Oxygen Species Is Necessary for
Invadopodia Formation. Sci. Signal. 2, ra53 (2009).
Sci. Signal., 22 September 2009
Vol. 2, Issue 89, p. ra56
[DOI: [DOI: 10.1126/scisignal.2000547]
相互作用の傾向
A Tendency to Interact
単一の膜貫通ドメインをもつ大半の受容体型チロシンキナーゼに
とって、細胞外シグナルを細胞内へ伝達するためには二量化が必
須である。これまでいくつかのアッセイにより、各受容体型チロ
Citation㸸T. Itoh, J. Hasegawa, K. Tsujita, Y. Kanaho, T. Takenawa, The Tyrosine Kinase
Fer Is a Downstream Target of the PLD-PA Pathway that Regulates Cell Migration. Sci.
Signal. 2, ra52 (2009).
シンキナーゼの膜貫通ドメインは受容体の二量化に寄与している
ことが明らかになった。さらにこれらのタンパク質の中には、膜
貫通ドメインの突然変異が受容体の異常な活性化と発癌に関連し
ているものもあった。Finger らは、ヒト受容体型チロシンキナー
ゼ全 58 種の各膜貫通ドメインの自己相互作用の傾向を体系的に解
Sci. Signal., 15 September 2009
析した結果を報告してい
Vol. 2, Issue 88, p. ra53
[DOI: 10.1126/scisignal.2000368]
る。細菌系において、標的
浸潤するためのシグナル
とするタンパク質の相互作
Signals to Invade
用を細菌内膜に伝達してい
る融合タンパク質として発
がんは、周囲の健康な組織の浸潤を特徴とし、この過程は、アクチ
現されたとき、膜貫通ドメ
ンが豊富な膜突起である浸潤突起によって促進される。浸潤突起は、
インはすべて自己相互作用
細胞の細胞外マトリックスへの接着と分解を調整すると考えられて
していたことは、これらシ
いる。実際に、がん細胞上の浸潤突起の存在は、その浸潤性と相関
グナル伝達受容体の膜貫通
し て い る。ま た、が ん 細 胞 の 浸 潤 お よ び 転 移 は、活 性 酸 素 種
ドメインにとって二量化は
(ROS)の産生と関連している。今回、Diaz らは、NADPH オキシダー
固有の特性であること、ま
ゼ(Nox)複合体による ROS の局所的産生と、浸潤突起の形成およ
た膜貫通ドメインの相互作
び機能とを関連付けた。Diaz らは、浸潤突起に認められる足場タン
用がシグナル伝達に寄与す
パク質 Tks5 が、おそらく Nox 構成要素 p22
ることを示唆している。
との会合を通して、
がん細胞における ROS 産生に非常に重要な役割を果たすことを示
した。さらに、機能性の浸潤突起形成に必要な Tks5 のリン酸化が、
ROS 産生に依存していたことから、Tks5 が ROS 形成を促進し、そ
¶ǽǽÓãéåîãå Óéçîáìéîç ஓట᝙࿂ʊɮʂɱʃʒǽöïì®´
Citation㸸C. Finger, C. Escher, D. Schneider, The Single Transmembrane Domains of
Human Receptor Tyrosine Kinases Encode Self-Interactions. Sci. Signal. 2, ra56 (2009).
www.sciencesignaling.org
Science Signaling
¨ ɿɮɲʽʃˁʁɺʔʴʽɺ ©
Science Ɂ᣸Ҕ᫖‫ފ‬ʴʇ˂ʃ
ISSN: 1937-9145
は、ダイナミックな細胞情報伝達分野において、画期的研究や論評に関する最新リソースを研究者の皆様
にお届けしています。基本科学から療法の開発、分子からネットワークおよびシステムデザインにいたるまで、
は研究者、教職にある方々、そして学生の皆さまに最先端の情報を提供します。ピアレビューによる研究記事の
は次の
オリジナル版も、2008 年 9 月より週刊で掲載していく予定です。
分野の細胞制御の研究
において多大な影響力
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• 分子生物学
• 開発
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• 薬理学
が発行す
る STKE 独自の内容に以下の新しい特徴を加えた内容でお送りします。
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• 生物化学
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Chief Scientific Editor:
Michael B. Yaffe, M.D., Ph.D.
(Associate Professor,
Department of Biology,
Massachusetts Institute of
Technology)
Editor :
Nancy R. Gough
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