第 6 回 VL 講習会@千葉大.CEReS

2012 年 9 月 18-19 日(千葉大学.CEReS)
講師:樋口篤志、斎藤尚子、カトリ.プラデイープ、眞子直弘
第 6 回 VL 講習会@千葉大.CEReS
∼エアロゾルと大気補正∼
Part
A:スカイラジオメーターデータの標準解析方法
担当:カトリ.プラデイープ
演習の目的
スカイラジオメーターデータの標準解析方法を学び、
エアロゾルの光学的パラメータを推定する
演習の流れ
OMI データを用いてカラムオゾン量を求める
(第一章.応用1)
MODIS データ(MCD43B4 プロダクト)を用いて
地面反射率を求める
(第二章.応用2)
SKYRAD.PACK(Version 4.2)ソフトを用いて
スカイラジオメーターデータを解析する
(第三章.応用3)
目次
第 1 章 OMI 観測によるカラムオゾン量 ......................................................... 1
1.1 Ozone Monitoring Instrument(オゾン監視装置; OMI) ....................... 1
1.2 OMI レベル 3 データファイルの形式 ........................................................ 1
1.3 OMI レベル 3 データのダウンロード ........................................................ 2
1.4 応用 1:OMI 観測データの簡単な処理 ..................................................... 2
第 2 章 MODIS/MCD43B4 プロダクトによる地面反射率 ..................................... 5
2.1 Moderate Resolution Imaging Spectrometer(MODIS) ......................... 5
2.2 MODIS 土地データプロダクト .................................................................. 5
2.3 応用 2:MODIS/MCD43B4 プロダクトの処理方法 ....................................... 7
第 3 章 スカイラジオメーターデータの解析 ................................................. 11
3.1 スカイラジオメーター装置 .................................................................... 11
3.2 観測原理 ............................................................................................... 12
3.3 応用 3:スカイラジオメーターデータの解析方法................................. 13
3.3.1 ディスクスキャンデータを用いた立体視野角(ΔΩ)の計算 ........ 14
3.3.2 前方散乱(Θ≤300)データを用いた検定常数(F0)の計算 ............ 16
3.3.3 全散乱角のデータと F0 を用いたエアロゾル光学的パラメータの推定
................................................................................................................. 21
3.3.4 雲のスクリーニングム .................................................................... 24
参考文献.................................................................................................... 26
第 1 章 OMI 観測によるカラムオゾン量
1.1 Ozone Monitoring Instrument(オゾン監視装置; OMI)
オゾン監視装置(OMI)は、2004 年に打ち上げられた米国航空宇宙局(NASA)
の AURA 衛星に搭載された地球大気観測センサーである。OMI は、オゾン全量を
観測するとともに、大気中のダストや硫酸塩などのエアロゾルも検出すること
ができる。OMI は過去のオゾン全量マッピング分光計(TOMS)のようにオゾン化
学と気候変動に関連する様々な大気パラメータのデータを提供している。
1.2 OMI レベル 3 データファイルの形式
OMI 標準レベル 3(L3)プロダクトのデータは、ASCII ファイル形式で提供され
ている。本原稿作成時点でデータは、1.0 度の経度×1.0 度の緯度(低解像度)の
グリッディングと、0.25 度の経度×0.25 度の緯度(高解像度)のグリッディング
で公開されている。低解像度データファイルは「L3_ozone_omi_YYYYMMDD.txt」、
高解像度データファイルは「L3e_ozone_omi_YYYYMMDD.txt」という名前となって
いる(YYYY、MM、DD はそれぞれ年、月、日を表す)。
例 1:OMI レベル 3 プロダクトデータの例
1
データファイルの中身を例1に示す。データファイルのヘッダーの最初の行
には、データ取得日、センサー名、プロダクトの種類(例えば、オゾン、エア
ロゾル)、ファイルの作成日、時間などの情報が含まれている。二行目には、
中心となっている経度の値と経度ビン数と、同様に、三行目には、中心となっ
ている緯度の値と緯度ビン数の情報が含まれている。負の緯度は南半球を、負
の経度は西経を表している。ヘッダーの次は、各グリッドに対する観測データ
が並んでいる。例えば、例1を見ると、ヘッダーの次は、南緯 89.5 度を中心と
した緯度帯について経度を 360 個に分けたグリッドの観測データである。この
次は、南緯 88.5 度を中心とした緯度帯について経度を 360 個に分けたグリッド
の観測データである。各グリッドの値は、三桁の数字で表示されている。ゼロ
は、データが存在しない、あるいは光量やその他の問題でデータが収集されな
かったことを示している。
1.3 OMI レベル 3 データのダウンロード
OMI レベル 3 プロダクトデータファイルは、米国航空宇宙局(NASA)のウェブ
サイト(http://ozoneaq.gsfc.nasa.gov/OMIOzone.md)からダウンロードする
ことが出来る。また、 wget コマンドを通じて、低解像度データファイルは
ftp://jwocky.gsfc.nasa.gov/pub/omi/data/ozone/から、高解像度データファ
イルは ftp://jwocky.gsfc.nasa.gov/pub/omi/data/Level3e/ozone/ から、そ
れぞれ取得することが出来る。例えば、2011 年の 1 年間の低解像度データファ
イルは以下のようにダウンロードが出来る。
wget ftp://jwocky.gsfc.nasa.gov/pub/omi/data/ozone/Y2011/*.* -p AAAA
ここで、「AAAA」は、データの保存先である。
1.4 応用 1:OMI 観測データの簡単な処理
千葉大学(緯度:35.62470N、経度:140.10380E)を中心とする 1.00×1.00
領域に 2012 年 5 月におけるカラムオゾン量を算出しよう。
1.2 節で記述したように、OMI レベル 3 プロダクトデータファイルは、ASCII
ファイル形式であり、全球のデータは緯度、経度をグリッド化して公開されて
いる。どのプログラミング言語で作成したプログラムを用いても目的の緯度と
2
経度のデータを抽出する事が出来るが、今回の演習では Fortran 言語で書いて
あるプログラムを使って、与えられた緯度と経度に対するオゾンのカラム量を
抽出する。
必要なツール、データなど
プログラム名:2012VL_readozone.f
入力データ:OMI レベル 3 プロダクトデータファイル
出力データ:対象地点におけるカラムオゾン量の値
解析方法



データを用意する
解析プログラムを実行する
オゾン量の日変化を図で表す
注:以下のコマンドでUSBは、USBメモリの意味である。
USBの代わりに/media/disk を打ってください。
 データを用意する
1. 新しいディレクトリを作成する。
mkdir –p OZONE/DATA
2. 本演習のために必要なデータは事前にダウンロードして USB メモリの
「2012VL_PartA/OZONE/DATA」ディレクトリにおいてある。このデータをコ
ピーする。
cp USB/2012VL_PartA/OZONE/DATA/*.txt OZONE/DATA
 解析プログラムを実行する
1. USB メ モ リ の 「 2012VL_PartA/OZONE/PROGRAMS 」 デ ィ レ ク ト リ に あ る
「2012VL_readozone.f」プログラムを「OZONE」ディレクトリにコピーする。
cp USB/2012VL_PartA/OZONE/PROGRAMS/2012VL_readozone.f OZONE
2. 「OZONE」ディレクトリに移動する。
cd OZONE
3. 入力データファイルのリストを作り、解析プログラムをコンパイルし、実
行する。
ls DATA/*.txt > ozonelist.txt
f95 2012VL_readozone.f –o 2012VL_readozone.e
./2012VL_readozone.e
3
 オゾン量の日変化を図で表す
1. USB メモリの「2012VL_PartA/OZONE/PROGRAMS」から「2012VL_ozone_plot.txt」
を現在のディレクトリ(「OZONE」)にコピーする。
cp USB/2012VL_PartA/OZONE/PROGRAMS/2012VL_ozone_plot.txt ./
2. gnuplot で日変化の図を作る。
gnuplot 2012VL_ozone_plot.txt
3. gnuplot から作成した図を開く。
display OZONE.png
4
第 2 章 MODIS/MCD43B4 プロダクトによ
る地面反射率
2.1 Moderate Resolution Imaging Spectrometer(MODIS)
中解像度イメージング分光放射計(MODIS)は、米国航空宇宙局(NASA)の TERRA
衛星と AQUA 衛星に搭載された地球大気観測センサーである。MODIS センサーは、
0.4µmから 14.4µmの間に様々な空間分解能の 36 スペクトルバンドを持ってい
る。MODIS センサーの主な波長帯を表 2.1 に記載する。
表 2.1 MODIS センサーの主な波長帯
バンド
波長帯[μm]
1
0.620-0.670(赤)
2
3
4
0.841-0.876(近赤外域)
0.459-0.479(青)
0.545-0.565(緑)
5
1.230-1.250(短波長赤外域)
6
1.628-1.652(短波長赤外域)
観測項目
空間分解能
陸、雲、
エアロゾル
250m
陸、雲、
エアロゾル
500m
7
2.105-2.155(短波長赤外域)
8~36 以下、省略
1000m
MODIS センサーによる観測データプロダクトは、土地、大気、雪氷、海洋の
グループに分けられている。



土地データプロダクトの詳細 https://lpdaac.usgs.gov/
大気データプロダクトの詳細 http://ladsweb.nascom.nasa.gov/
雪氷データプロダクトの詳細 http://nsidc.org/daac/modis/index.html

海洋データプロダクトの詳細 http://oceancolor.gsfc.nasa.gov/
2.2 MODIS 土地データプロダクト
Land Processes Distributed Active Archive Center(LP DAAC)は、様々な
MODIS 土地データプロダクトを無料で配布している。データプロダクトの種類
によって時間分解能及び空間分解能が異なる。
5
時間分解能:1日、8 日、16 日、月、四半期、および年間
空間分解能:250 meter, 500 meter, 1000 meter, 5600 meter (0.05 度)
TERRA/MODIS や AQUA/MODIS、またはその両者の組み合わせからのプロダクト
は、上記の一つあるいは複数の分解能で公開されている。データプロダクト名
には、衛星の種類を表す為に次の様な接尾辞が付けられる。
MOD:MODIS/TERRA プロダクト
MYD:MODIS/AQUA プロダクト
MCD:MODIS/TERRA と MODIS/AQUA 組み合わせたプロダクト
MODIS 土地データプロダクトは、三種類の投影法( Sinusoidal, Lambert
Azimuthal Equal-Area, and Geographic)で構成されており、ほとんどのプロ
ダクトは、Sinusoidal 地図投影法で構成されている。Sinusoidal 地図投影法で
は、約 10 度角の非重複タイルとして全球のデータが構成されている。タイルの
座標系は、左上隅が(0,0)
(水平方向のタイル数,縦のタイル番号)になり、右
向き(水平)下向き(垂直)の方向に進行する。例えば、図 2.1 に示すように、
緯度 35.62470N と経度 140.10380E の千葉大学に該当するタイル番号は、(29,5)
である。
図 2.1 Sinusoidal 地図投影法と千葉大学を該当するタイル番号
6
MODIS 土地データプロダクトファイルの名前は、以下のようになっている。
MOD09A1.AYYYYDDD.hxxVxx.VVV.YYYYDDHHMMSS.hdf
プロダクト名
年と通過日
タイル番号
データのバージョン
データ公開の
年、日と時間
2.3 応用 2:MODIS/MCD43B4 プロダクトの処理方法
いくつかの MODIS 土地プロダクトのうち、16 日の時間分解能と 1000 meter の
空間分解能の天底 BRDF(双方向反射分布関数)調整した表面反射率(MCD43B4)
のプロダクトには、波長帯 1-7 の地面反射率の情報が含まれている。このプロ
ダクトを用いて、千葉大学(緯度:35.62470N、経度:140.10380E)を中心とす
る領域の 2012 年 5 月の地面反射率を算出する。
必要なツール、データなど
ツール
LDOPE_Linux_bin
2012VL_MODIS_download.pl
2012VL_MODIS_pixel.pl
土地データプロダクト解析用ツール
データダウンロード用プログラム
pixel 値を読み取る用プログラム
入力データ
MCD43B4 プロダクト(hdf ファイル)
出力データ
波長帯 1-7 の月平均地面反射率
注:以下のコマンドでUSBは、USBメモリの意味である。
USBの代わりに/media/disk を打ってください。
LDOPE_Linux_bin のインストール
1. 新しいディレクトリを作成する。(注:現在「OZONE」ディレクトリにいれば,
まず「cd ..」で上のディレクトリに移動する。)
mkdir MODIS
7
2. USB メモリの「2012VL_PartA/MODIS/PROGRAMS」にある「LDPOE_Linux_bin.tar」
を「MODIS」ディレクトリにコピーする。
cp USB/2012VL_PartA/MODIS/PROGRAMS/LDOPE_Linux_bin.tar MODIS
3. 「MODIS」ディレクトリに移動して、「LDPOE_Linux_bin.tar」を展開する。
cd MODIS
tar –xvf LDOPE_Linux_bin.tar
4. 「LDPOE_Linux_bin/bin」ディレクトリにある「read_pixvals」をコピーす
る。
cp LDOPE_Linux_bin/bin/read_pixvals ./
解析方法
 対象の地点(緯度,経度)が含まれるタイルの番号、地点(緯度,経度)に対
応する line と sample の値を検索する



データを用意する
pixel の値を読み取る
各波長帯の値を描く

対象の地点(緯度,経度)が含まれるタイルの番号、地点(緯度,経度)に対
応する line と sample の値を検索する
1. MODLAND Tile Calculator」を次のリンクから開く。
http://landweb.nascom.nasa.gov/cgi-bin/developer/tilemap.cgi
2. 図 2.2 のように必要な情報を提供して、「Compute Coordinates」をクリッ
クする。
3. 「Results」のタイル番号、sample と line の値をメモしておく。

データを用意する
MODIS 土地 プロダクト ( Version 5)のデータは、 NASA のウェブ サイト
(ftp://ladsweb.nascom.nasa.gov/allData/5)からダウンロードすることが出
来る。本演習のために必要なデータは事前にダウンロードして、USB メモリの
「2012VL_PartA/MODIS/DATA」ディレクトリにおいてある。(本演習のデータを
ダウンロードするためのプログラムは、「VL2012_MODIS_download.pl」である。
時間の関係でデータのダウンロードは本演習中には行わない。)
USB メモリの「2012VL_PartA/MODIS/DATA」にある hdf ファイルを現在のディ
レクトリ(「MODIS」)にコピーする。
cp USB/2012VL_PartA/MODIS/DATA/*hdf ./
8
図 2.2 「MODLAND Tile calculator」

pixel の値を読み取る
「 MODLAND Tile calculator 」 か ら 得 ら れ た 、 sample と line の 値 と
「read_pixvals」という実行プログラムを用いて、対象の地点(緯度,経度)に
対応する pixel の値を以下のように読み取る事が出来る。
./read_pixvals –xy= sample,line MODIS_Filename.hdf
本演習では、一ヶ月の MODIS/TERRA と MODIS/AQUA 組み合わせのプロダクトの
複数データファイルを用いて、対応地点(緯度、経度)の pixel と共に対応地
点(緯度、経度)の pixel の周りの pixel の値も読み取る。このような複数デ
ータファイルの複数の pixel の値を読み取るため「2012VL_MODIS_pixel.pl」と
いうプログラムを作成して USB メモリの「2012VL_PartA/MODIS/PROGRAMS」ディ
レクトリにおいてある。
9
1. USB メ モ リ の 「 2012VL_PartA/MODIS/PROGRAMS 」 デ ィ レ ク ト リ に あ る
「2012VL_MODIS_pixel.pl」プログラムを現在のディレクトリ(「MODIS」)に
コピーする。
cp USB/2012VL_PartA/MODIS/PROGRAMS/2012VL_MODIS_pixel.pl ./
2. 「2012VL_MODIS_pixel.pl」を実行する。
perl 2012VL_MODIS_pixel.pl
 各波長帯の値を描く
1. USB メ モ リ の 「 2012VL_PartA/MODIS/PROGRAMS 」 デ ィ レ ク ト リ に あ る
「2012VL_reflect_plot.txt」ファイルを現在のディレクトリ(「MODIS」)に
コピーする。
cp USB/2012VL_PartA/MODIS/PROGRAMS/2012VL_reflect_plot.txt ./
2. gnuplot で各波長帯の値を描く。
gnuplot 2012VL_reflect_plot.txt
3. gnuplot から作成した図を開く。
display SUR_REFLECTANCE.png
10
第 3 章 スカイラジオメーターデータ
の解析
3.1 スカイラジオメーター装置
図 3.1 日本製のスカイラジオメーター(PREDE 株式会社)
分光放射計の一種であるスカイラジオメータ-(PREDE 株式会社)
(図 3.1)は、
サンセンサー、駆動ユニット、制御ユニットと降雨センサーから構成される太
陽直達光及び天空散乱光を観測する装置である。一般的に、型番 POM-01 の場合
7 波長(315, 400, 500, 675, 870, 940,1020 nm)と、型番 POM-02 の場合 11 波
長(315 , 340 , 380 , 400 , 500 , 675 , 870 , 940 , 1020 ,1627, 2200 nm)
の選択で、波長別の太陽周辺光を含む天空輝度が散乱角毎(0, 2, 3, 4, 5, 7,
10, 15, 20, 25, 30, 40, 50, 60, 70, 80, 90, 100, 110, 120, 130, 140, 150,
160)に測定される。太陽天頂角 θ とエアマス(大気路程)に依存して、2 つ
の測定法が取られる(図 3.2)。 天頂角が 15 度未満(南中時付近)のとき、太
陽が描く主平面に沿って測定(Principal plane scanning method; 垂直スキャ
ン)を行う。天頂角が 15 度以上のときは、太陽高度と同じ高度の周辺光の測定
(Almucanter plane scanning method; 水平スキャン)を行う。
図 3.2 スカイラジオメーターの構成概念図(Aoki and Fujiyoshi, 2003)
11
3.2 観測原理
散乱角 Θ は、天頂角 θ と観測角 θ0 方位角 φ から以下のように求められ
る。
cos   cos  0 cos   sin  0 sin  cos 
(3.1)
水平スキャンではθ=θ0 としてφを、垂直スキャンではφ=0 としてθをそれぞ
れ変化させる。
各波長λに対する直達放射強度F [Wm-2μm-1]は、次の式で与えられる。
F  F0 e  m
(3.2)
ここで、F0 は大気上端での太陽放射強度で、m
はエアマス、τ は大気の全光
学的厚さである。各波長の等高度観測(水平スキャン)における天空輝度E(λ)
[Wm-2μm-1]は次のように書ける。
E( ,  )  E()  Fm[P()  q()]
(3.3)
ここで、ΔΩは装置の立体視野角、ω は全エアマスの単一散乱アルベド、そ
してP(Θ)は散乱光Θにおける位相関数で、(ωτP(Θ))は単一散乱寄与、
q(Θ)が多重散乱寄与を表す。輝度強度Ε(Θ)を直達放射強度 F で割ると
R() 
E ()
 P()  q()
Fm
(3.4)
正規化された相対的強度が定義できる。この比 R(Θ) は、観測値のみによっ
て作られ、経年変化に伴う放射計の干渉フィルターの劣化の影響を受けないた
め、長期観測に適している。
太陽日光 F から得られる光学的厚さτと相対天空輝度 R から、エアロゾル
の光学的特性が導かれる。Nakajima et. al(1996)はこのようなインバージョ
ン法を用いて、スカイラジオメーターのデータ解析用プログラムパッケージ
「Skyrad.pack」を開発した。「Skyrad.pack」は、現在まで修正・改良が加え
12
られ、ΔΩの計算、前方散乱を用いた装置常数の算出とエアロゾルの光学的物
理量の計算、及び後方散乱まで含めた複素屈折率の計算と光学的物理量の再計
算の各プログラムが提供されている。
最新の観測プログラムでは、下記の 4 種類の観測データが作成される。なお、
各ファイルの詳細は、スカイラジオメーターの操作書に記述されている。



yymmddnn.dat
yymmddnn.sun
yymmddnn.V**
通常観測データファイル
直達光観測データファイル
ディスクスキャンデータファイル

yymmddnn.cld
雲観測データファイル
3.3 応用 3:スカイラジオメーターデータの解析方法
千葉大学(緯度:35.62470N、経度:140.10380E)観測サイトにあるスカイラ
ジオメーターの 2012 年 5 月のデータを用いて、エアロゾルの光学的パラメータ
を推定する。
スカイラジオメーターデータ解析の流れ
ディスクスキャンデータから立体視野角(ΔΩ)を計算する
SKYNET Level1 解析
前方散乱(Θ≤300)放射輝度データを用いて Improved Langley 方
法で装置の検定常数(F0)を計算する
SKYNET Level2 解析
全散乱角放射輝度データと Improved Langley 方法から得られた
F0 の値を用いてエアロゾルの光学的パラメータを推定する
雲のスクリーニングを行う
13
3.3.1 ディスクスキャンデータを用いた立体視野角(ΔΩ)の計
算
必要なプログラムとデータ
プログラム名:(1)solid3m.f  立体視野角(ΔΩ)を求めるプログラム
(2)2012VL_SVA.f  古い ΔΩ を新しい ΔΩ で入れ替える
プログラム
補助ファイル:(1)sproc.par  solid3m.f のパラメータ設定ファイル
(2)ins.para  Instrument parameter ファイル
入力データ:晴れた時間のディスクスキャンデータ
注:使用データの品質によって、出力の値に影響される可能性があるので出来
だけ晴れた時間のデータを選ぶ
出力データ:立体視野角(ΔΩ)の値
注:以下のコマンドでUSBは、USBメモリの意味である。
USBの代わりに/media/disk を打ってください。
解析方法
1. 新しい「solid」ディレクトリと「solid」の配下に「DSK」ディレクトリを
作る。(注:現在「MODIS」ディレクトリにいれば,まず「cd ..」で上のディ
レクトリに移動する。)
mkdir –p solid/DSK
2. USB メモリの「2012VL_PartA/SKYRADIOMETER/PROGRAMS」にある「solid3m.f」、
「solid.par」と「ins.para」を「solid」ディレクトリ にコピーする。
cp USB/2012VL_PartA/SKYRADIOMETER/PROGRAMS/solid* solid
cp USB/2012VL_PartA/SKYRADIOMETER/PROGRAMS/ins.para solid
3. USB メモリの「2012VL_PartA/SKYRADIOMETER/DATA」にあるディスクスキャン
データを「solid/DSK」ディレクトリにコピーする。
cp USB/2012VL_PartA/SKYRADIOMETER/DATA/*V* solid/DSK
4. 「solid/DSK」ディレクトリに移動する。ディスクスキャンデータ(*.V1 だ
け)のリストを作る。
cd solid/DSK
ls *V01 > ../fname
5. 「solid」ディレクトリに戻る。
「solid3m.f」をコンパイルして実行する。
cd ../
14
f77 –r8 –O –g –o solid3m.e solid3m.f
./solid3m.e
注:出力の「SVA.out」ファイルを開いて、波長別の値をチェックする。同じ
センサーの過去のデータがあれば比較する。
「SVA.out」の中身は以下の通りである。
波長の値
立体視野角(ΔΩ)の値
6. 目視で確認した立体視野角(ΔΩ)の値を、「ins.para」ファイルに入力す
る(手動あるいは別のプログラムを使って)。本演習のために作成した
「2012VL_SVA.f」プログラムを「2012VL_PartA/SKYRADIOMETER/PROGRAMS」
ディレクトリからコピーして実行する。
cp USB/2012VL_PartA/SKYRADIOMETER/PROGRAMS/2012VL_SVA.f ./
f95 2012VL_SVA.f –o 2012VL_SVA.e
./2012VL_SVA.e
「ins.para」ファイルの中身は以下の通りである。
波長数
波長の値
波長別の ΔΩ 値(これらを入れ替える)
15
3.3.2 前方散乱(Θ≤300)データを用いた検定常数(F0)の計算
観測の放射輝度データファイル
(yymmddnn.dat ファイル)
dtform.f
yymmddnn.DT4 ファイル
yymmddnn.Tag ファイル
入力データ:
(i)気圧
sproc4.f
(i)1.53-0.005i の屈折率
(ii)カラムオゾン量
(iii)地面反射率
SKYNET Level 1 の解析
(ii)気体分子の吸収が少ない
波長の散乱角(Θ )≤300
のみのデータ
光学的厚さ(τ )、一次散乱アルべド(ω ),
粒径分布(dV/dlnr)など
cal_f0.f
F0.out ファイル
f0_w**.out ファイル
必要なプログラム、データなど
プログラム名:(1)dtform.f
(2)sproc4.f
(3)cal_f0.f
 観測データの形式を変換するプログラム
 インバージョンプログラム
 検定常数(F0)を求めるプログラム
補助ファイル: (1)dtform.par
(2)sproc_0.par
(3)cal_f0.par
(4)ins.para
(5)obs.para
(6)meteo.dat






dtform.f のパラメータ設定ファイル
sproc4.f のパラメータ設定ファイル
cal_f0.f のパラメータ設定ファイル
Instrument parameter ファイル
Observation parameter ファイル
meteorological data ファイル

Mie kernel ファイル
(7)MIEKER
16
入力データ:観測の放射輝度データファイル(yymmddnn.dat ファイル)
出力データ:光学的厚さなどのパラメーター
注:固定の屈折率と前方散乱だけの情報によるインバージョンなので一次散乱
アルべドなど重要なパラメータの信頼度が低い。
注:以下のコマンドでUSBは、USBメモリの意味である。
USBの代わりに/media/disk を打ってください。
解析方法
1. 新しい「skyradiometer」 ディレクトリを作る。「skyradiometer」の配下
に「level1」ディレクトリ、「level1」の配下に「DAT」、「DT4」、「Tag」、
「Out」、「Par」、「Vol」、「Aur」、「Phs」、と「F0d」ディレクトリを作る。
(注:現在「solid」ディレクトリにいれば,まず「cd ..」で上のディレクト
リに移動する。)
mkdir –p skyradiometer/level1
cd skyradiometer/level1
mkdir –p DAT DT4 Tag Out Par Vol Aur Phs F0d
2. USB メモリの「2012VL_PartA/SKYRADIOMETER/DATA」ディレクトリにある通
常観測データファイルを「DAT」ディレクトリにコピーする。
cp USB/2012VL_PartA/SKYRADIOMETER/DATA/*dat DAT
3. USB メモリの「2012VL_PartA/SKYRADIOMETER/PROGRAMS」ディレクトリにあ
る必要なプログラムとファイルを「level1」ディレクトリにコピーする。
cp USB/2012VL_PartA/SKYRADIOMETER/PROGRAMS/dtform* ./
cp USB/2012VL_PartA/SKYRADIOMETER/PROGRAMS/sproc* ./
cp USB/2012VL_PartA/SKYRADIOMETER/PROGRAMS/cal_f0* ./
cp USB/2012VL_PartA/SKYRADIOMETER/PROGRAMS/meteo.dat ./
cp USB/2012VL_PartA/SKYRADIOMETER/PROGRAMS/obs.para ./
cp USB/2012VL_PartA/SKYRADIOMETER/PROGRAMS/MIEKER ./
cp USB/2012VL_PartA/SKYRADIOMETER/PROGRAMS/2012VL_meteo_param.f ./
cp USB/2012VL_PartA/SKYRADIOMETER/PROGRAMS/2012VL_surf_refl.f ./
4. 「solid」ディレクトリにある「ins.para」ファイル(立体視野角 ΔΩ を更
新したファイル)を「level1」ディレクトリにコピーする。
cp ../../solid/ins.para ./
5. 「2012VL_meteo_param.f」をコンパイルして実行する。
f95 2012VL_meteo_param.f –o 2012VL_meteo_param.e
17
./2012VL_meteo_param.e
このプログラムを実行することで、
 「user」に提供された観測サイトの標高(meter)から気圧を求められ
る。
 「OZONE/OZONE.txt」ファイルにある平均のオゾン量の値を読み取れ
る。
 「meteo.dat」にある気圧とオゾン量の値は、新しいデータで置き換え
られる。
「meteo.dat」ファイルの中身は以下の通りである。
気圧の値
オゾン量の値
6. 「2012VL_surf_refl.f」プログラムをコンパイルして実行する。
f95 2012VL_surf_refl.f –o 2012VL_surf_refl.e
./2012VL_surf_refl.e
このプログラムを実行する事で
 「MODIS/MODIS.txt」ファイルの月平均の地面反射率値を読み取る。
 月平均の地面反射率値を用いて sky radiometer 用波長に内挿/外挿する。
 「sproc_0.par」にある古い地面反射率値を新しい値(内挿/外挿の値)

で入れ替えられる。
「sproc」 ファイルの名前は「sproc_0.par」から「sproc.par」に変更
される。
18
「sproc_0.par」ファイルの中身は以下の通りである。
波長の値
波長別の地面反射率
7. 「DAT」 ディレクトリに移動して、「*.dat」ファイルのリストを作って、
「level1」ディレクトリに戻る。
cd DAT
ls *.dat > ../fname
cd ..
8. 「dtform.f」をコンパイルして実行する。
f77 –r8 –O –g –o dtform.e dtform.f
./dtform.e
9. 「sproc4.f」をコンパイルして実行する。
f77 –r8 –O –g –o sproc4.e sproc4.f
./sproc4.e
注:1-9 までは、SKYNET Level 1.0 の解析方法である。Level-1 は、固定の屈折
率と前方散乱だけの情報によるインバージョンなので一次散乱アルべドなど重
要なパラメータの信頼度は低い。現在、SKYNET Level 1.0 のプロダクトは、検
定常数(F0)を求めるのために使っている。
10. 「SKYNET Level 1.0」解析の出力としての「F0d」ディレクトリのデータは、
検定常数(F0)を求めるためのデータである。「F0d」ディレクトリに移動
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して、「*w01」 ファイルのリストを作って、「level1」ディレクトリに戻
る。
cd F0d
ls *.w01 > ../fname
cd ..
11. 「Cal_f0.f」 プログラムをコンパイルして実行する。
f77 –r8 –O –g –o cal_f0.e cal_f0.f
./cal_f0.e
注:出力として「F0.out」、「f0_w**.out」などのファイルが出来る。「F0.out」
に平均値、「f0_w**.out」に瞬間値が格納されている。検定常数(F0)は、非常
に重要なパラメータなので「F0.out」、「f0_w**.out」の出力を確認した後、
F0 の値は、Level2 の解析に使う。長時間(1年以上)の F0 の時系列で、時間
による F0 の変動を見ながらデータ screening などを行う。今回の演習では、
「F0.out」の値はこのまま使うが、実際のデータ解析の場合は、検定常数(F0)
の値に注意をする。(個別の議論は [email protected] まで連絡してくださ
い。)
「F0.out」ファイルの中身は以下の通りである。
波長の値
検定常数(F0)の値
「ins.para」ファイルの中身は以下の通りである。
検定常数(F0)の値
(今回の演習では、これらは F0.out の F0I 値
に自動的に入れ替えられるように cal_f0.par を設定してある)
20
3.3.3 全散乱角のデータと F0 を用いたエアロゾル光学的パラメータ
の推定
観測の放射輝度データファイル
(yymmddnn.dat ファイル)
dtform.f
yymmddnn.DT4 ファイル
yymmddnn.Tag ファイル
入力データ:
(i)F0
(ii)気圧
SKYNET Level 2 の解析
sproc4.f
(i)1.53-0.005i の屈折率(初値)
(ii)気体分子の吸収が少ない波長
(iii)カラムオゾン量
(iv)地面反射率
の全散乱角(Θ)のデータ
光学的厚さ(τ )、一次散乱アルべド(ω ),
粒径分布(dV/dlnr), 屈折率(mr-imi)など
Level 1 と Level 2 の違う点
 検定常数(F0)を使う
 1.53-0.005i の屈折率は初値として使う
 前方散乱だけではなく、全散乱角(Θ)データを使う
必要なプログラム、データなど
Level 1 と同じ
注:以下のコマンドでUSBは、USBメモリの意味である。
USBの代わりに/media/disk を打ってください。
解析方法
1. 「skyradiometer」 ディレクトリの配下に「level2」ディレクトリを作る。
21
(注:現在「level1」ディレクトリにいれば,まず 「cd ../..」で上のディ
レクトリに移動する。)
mkdir –p skyradiometer/level2
2. 「skyradiometer/level2」ディレクトリに移動する。「level2」ディレクト
リの配下に「DT4」、「Tag」、「Out」、
「Par」、
「Vol」、
「Aur」、
「Phs」、
「F0d」
ディレクトリを作る。
cd skyradiometer/level2
mkdir –p DT4 Tag Out Par Vol Aur Phs F0d
3. 「 skyradiometer/level1 」ディ レク トリにある 「 DAT」デ ィレクト リを
「level2」ディレクトリに移動する。
mv ../level1/DAT ./
4. 「skyradiometer/level1」ディレクトリにある必要なプログラムとファイル
を「level2」ディレクトリに移動する。
mv ../level1/dtform* ./
mv ../level1/sproc* ./
mv ../level1/ins.para ./
mv ../level1/obs.para ./
mv ../level1/meteo.dat ./
mv ../level1/MIEKER ./
5. 「sproc.par」ファイルを開いて、以下のように編集してからファイルを保
存する。
0 0 0 を 1 1 1 にする
30.0 を 160.0 にする
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6. 「DAT」 ディレクトリに移動する。「*.dat」ファイルのリストを作って、
「level2」ディレクトリに戻る。
cd DAT
ls *.dat > ../fname
cd ..
7. 「dtform.e」と「sproc4.e」を実行する。
./dtform.e
./sproc4.e
23
3.3.4 雲のスクリーニング
必要なプログラム、データなど
プログラム名: (1)CSSR2.f 
(2)asy.f
補助ファイル:
雲除去プログラム

asymmetry parameter を計算する
プログラム
(1)form.par  CSSR2.f のパラメータ設定ファイル
(2)ins.para Instrument parameter ファイル
(3)obs.para  Observation parameter ファイル
(4)meteo.dat meteorological data ファイル
入力データ:(1)スカイラジオメーターの出力としての*.out ファイル
(2)スカイラジオメーターと同時観測の全天日射データファイル
出力データ:雲を除去したエアロゾルの光学的パラメータ
注:以下のコマンドでUSBは、USBメモリの意味である。
USBの代わりに/media/disk を打ってください。
解析手法
1. 「skyradiometer/level2/Out」ディレクトリに移動する。
cd Out
2. USB メモリの「2012VL_PartA/CLOUDSCREEN/PROGRAMS」ディレクトリにある
必要なプログラムとファイルをコピーする。
cp USB/2012VL_PartA/CLOUDSCREEN/PROGRAMS/*.f ./
cp USB/2012VL_PartA/CLOUDSCREEN/PROGRAMS/form ./
3. USB メモリの「2012VL_PartA/CLOUDSCREEN/DATA」にある全天日射のデータ
をコピーする。
cp USB/2012VL_PartA/CLOUDSCREEN/DATA/*.txt ./
4. 「level2」ディレクトリにある「ins.para」、「meteo.dat」、「obs.para」
ファイルをコピーする。
cp ../obs.para ./
cp ../ins.para ./
cp ../meteo.dat ./
5. スカイラジオメーター出力の「*.out」ファイルのリストを作る。
ls *.out > skyradfiles
6. 全天日射データファイルのリストを作る。
ls swd*.txt > globalfiles
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7. 「asy.f」プログラムをコンパイルして実行する。
f95 –ffixed-line-length-132 -w asy.f –o asy.e
./asy.e
8. 「CSSR2.f」プログラムをコンパイルして実行する。
f95 –ffixed-line-length-132 CSSR2.f –o CSSR2.e
./CSSR2.e
出力データファイルは以下の通りである。
yymmdd00opticalL2R01.txt (光学的厚さ、一次アルべドなどのプロダク
ト)
yymmdd00physicalL2R01.txt(粒径分布, 屈折率などのプロダクト)
 スカイラジオメータ-のプロダクトを図で表す
1. USB メモリの「2012VL_PartA/CLOUDSCREEN/PROGRAMS」ディレクトリにある
「2012VL_skyrad.pl」プログラムを現在のディレクトリ(「Out」)にコピー
する。
cp USB/2012VL_PartA/CLOUDSCREEN/PROGRAMS/2012VL_skyrad.pl ./
2.「2012VL_skyrad.pl」を実行する。
perl 2012VL_skyrad.pl
課題:
上記の方法に従い千葉大学(緯度:35.62470N、経度:140.10380E)観測サイ
トにあるスカイラジオメーターの 2012 年 1 月のデータを用いて、エアロゾルの
光学的パラメータを推定しよう。
(必要なデータは USB メモリにあります)
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参考文献
Aoki, K., and Y. Fujiyoshi, 2003: Sky radiomter measurements of aerosol
optical properties over Sapporo, Japan. J. Meteorol Soc. Japan, 81,
493–513.
Nakajima, T., G. Tonna, R. Rao, Y. Kaufman, and B. Holben, 1996: Use of
sky brightness measurements from ground for remote sensing of
particulate polydispersions. Appl. Opt., 35, 2672−2686.
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