新事業創出支援事業 ハンズオン支援事例集(PDF/8MB)

平成27年度
新事業創出支援事業
ハンズオン支援事例集
∼新連携・地域資源活用・農商工連携∼
は じ め に
独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下中小機構)は、中小企業施策の総合的な実施機関として、平
成16年7月に設立されました。設立以来中小機構では、
「創業・新事業展開の促進」
「経営基盤の強化」「経
営環境の変化への対応の円滑化」などを事業の柱として、全国に10か所の地域本部・事務所を設置し、我
が国中小企業の成長ステージ全般にわたる支援施策を展開しています。
中でも、新たな事業に挑戦する中小企業をサポートする事を目的とした新事業創出支援事業では、新連
携事業(平成17年度∼)、地域資源活用事業(平成19年度∼)、農商工連携事業(平成20年度∼)が、それ
ぞれ法律の施行と共にスタートしています。中小機構は、この3法事業において専門家が、国の認定取得
に向けた事業計画の策定から認定後の事業化達成まで、事業者と伴走しながら事業の進捗状況に応じて発
生する様々な課題について、一貫した総合的な支援(ハンズオン支援)を行っています。
この度、この3法事業ハンズオン支援事例の中から成果が上がっている事例、特徴的な取り組みを行っ
ている事例を全国で11件取り上げて、事例集を編纂致しました。
本事例集では、成功事例の事業者が、様々な事業課題を克服して新事業を力強く立ち上げた姿をご紹介
して、中小企業の方々に新事業へのチャレンジ意欲を持っていただくと同時に、中小機構の専門家が事業
者に寄り添って新事業の本質的な課題をどのように目利きし、有効な支援活動を展開したのかという事を
ご紹介する事により、中小機構の支援内容を理解していただく事も目的としています。
これから新事業に取り組もうとされている方々、中小企業支援機関の職員や専門家の方々にとって、本
事例集が今後の活動の一助となれば幸いです。
本事例集の作成に当たりご協力いただいた事例企業の経営者、関係者の皆様方に心から感謝を申し上げ
ます。
平成28年3月
独立行政法人中小企業基盤整備機構
経営支援部長 滝本 浩司
新連携事業の概要
新連携事業とは、事業分野を異にする事業者が有機的に連携し、その経営資源(設備、技術、個人の有する知識及
び技能その他の事業活動に活用される資源をいいます)を有効に組み合わせて、新事業活動を行うことにより新たな
事業分野の開拓を図ることをいいます。
根
拠
法
中小企業新事業活動促進法
事業実施年度
平成17年度∼
事 業 主 体
異分野の中小企業者2者以上(共同)
計 画 期 間
3年以上5年以内
事 業 内 容
新商品の開発又は生産/新役務の開発又は提供/商品の新たな生産又は販売方式の導入/役
務の新たな提供の方式の導入その他の新たな事業活動
主な認定要件
1.異分野の中小企業者2者以上がそれぞれの経営資源を持ち寄り取り組む事業であること
2.新事業分野の開拓であること
3.相当程度の需要が開拓されること
4.新事業活動により一定の利益を上げられること
【イメージ図】
中小企業(コア企業)
経営資源
中小企業(異分野)
中小企業(異分野)
経営
資源
経営
資源
経営
資源
新事業活動
経営
資源
大学・研究機関等
NPO・組合等
新事業分野開拓
〔新たな需要が相当程度開拓されるもの〕
国が「基本方針」
において認定要件
等を策定
2
異分野の中小
企業者が 2 者以上
で連携を構築
中小企業者連携体が
共同で「新連携計画」
を
作成し、国に申請
主務大臣の認定
(経済産業大臣等)
各種支援措置
の活用
新事業分野の開拓
【事業スキーム】
地域資源活用事業の概要
地域資源活用事業とは、地域の強みとなりうる農林水産物、産地の技術、観光資源等の地域資源を活用して商品・
サービス(農業体験や産業観光含む)の開発、生産等を行い、需要の開拓を行うことをいいます。
根
拠
法
中小企業地域資源活用促進法
事業実施年度
平成19年度∼
事 業 主 体
中小企業者(単独又は共同)
計 画 期 間
3年以上5年以内
事 業 内 容
商品の開発、生産又は需要の開拓/サービスの開発、提供又は需要の開拓
主な認定要件
1.都道府県が指定する地域産業資源を活用した事業であること
2.新たな需要開拓の見通しがあること
3.地域を挙げた取組と関係事業者、関係団体等との連携がなされていること
4.自然や文化財等の地域産業資源の持続的活用のための配慮がなされていること
5.事業計画の実現可能性があること
■地域産業資源とは
各都道府県が指定する以下のものをいいます。
⑴地域の特産物として相当程度認識されている農林水産物又は鉱工業製品
⑵地域の特産物である鉱工業製品の生産に係る技術
⑶文化財、自然の風景地、温泉その他の地域の観光資源として相当程度認識されているもの
農林水産物
鉱工業製品
観光資源
国が「基本方針」
において認定要件
等を策定
都道府県が
地域資源を指定
中小企業者が「地域資源
都道府県が意見
活用事業計画」を作成し、 を付与して経済
都道府県に申請
産業局に提出
主務大臣の認定
各種支援措置
(経済産業大臣等) の活用
新商品・新サービスの開発・
生産等及び需要の開拓
【事業スキーム】
3
農商工連携事業の概要
農商工連携事業とは、農林漁業者と商工業者等が通常の商取引を超えて協力し、お互いの強みを活かして売れる新
商品・新サービスの開発、生産等を行い、需要の開拓を行うことをいいます。
根
拠
法
農商工等連携促進法
事業実施年度
平成20年度∼
事 業 主 体
農林漁業者と中小企業者(共同)
計 画 期 間
原則5年以内
事 業 内 容
新商品の開発、生産又は需要の開拓/新サービスの開発、提供又は需要の開拓
主な認定要件
1.農林漁業者と中小企業者が有機的に連携して実施する事業であること
2.農林漁業者及び中小企業者のそれぞれの経営資源を有効に活用したものであること
3.新商品・新サービスの開発、生産等若しくは需要の開拓を行うものであること
4.農林漁業者の経営の改善かつ中小企業者の経営の向上が実現すること
【イメージ図】
農林漁業者
連携
なめらかな
舌触りで
新食感
新商品等
中小企業者
!!
国が「基本方針」
において認定要件
等を策定
4
農林漁業者・
中小企業者が
連携体を構築
農林漁業者・中小企業者が
主務大臣の認定
共同で「農商工等連携事業計画」 (農林水産大臣・
を作成し、国に申請
経済産業大臣等)
各種支援措置
の活用
新商品・新サービスの開発・
生産等及び需要の開拓
【事業スキーム】
中小機構の支援イメージ図
全国10ケ所にある中小機構の地域本部等では、ビジネスに精通したプロジェクトマネージャー(PM)及びチ
ーフアドバイザー(CAD)が、新連携事業、地域資源活用事業、農商工連携事業(以下「3事業」
)による新商品・
新サービスの開発等の実施にあたっての事業計画の策定、商品開発、販路開拓等のアドバイス・ノウハウ提供な
どを行い、事業の構想段階から法認定後の事業化達成まで一貫した支援を行っています。
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5
中小機構の主な支援ツール
⑴地域活性化支援アドバイザー派遣事業
対 象 者
3事業の認定事業者及び認定を目指す事業者
事業内容
認定事業者等が直面する専門的・実務的な課題の解決のため、民間での豊富な実務経験を有する地
域活性化支援アドバイザーを複数回派遣して、必要なアドバイスを行い、課題の適性かつ早期の解
決を支援します。
派遣回数
(同一課題について)3回以内
派遣する
専 門 家
企業の現役・OB人材等の実務家や、中小企業診断士等の中小企業支援の第一線で活躍している経
験豊富な専門家
⑵地域活性化パートナー事業
対 象 者
3事業の認定事業者
事業内容
市場ニーズの把握や商品企画、開発した新商品・新サービスの市場での評価やマーケティング、首
都圏等での販路開拓等で発生する課題に対応するため、全国規模で活動する大手の流通事業者等を
「地域活性化パートナー」として登録。パートナー企業との効果的な連携活動により、課題解決を
図り、事業化の早期達成を支援します。
登録企業数
主 な
企画内容
107社(平成28年3月現在)
■販路開拓支援:大型展示会、百貨店等販売会、通信販売企画、商談会等
■商品化支援:各種相談会、専門家アドバイス、商品評価等
■その他:セミナー講師、アドバイザー、評価者としてバイヤー派遣
⑶展示会、商談会等ビジネスマッチング
新価値創造展(中小企業総合展)
対 象 者
経営革新等に取り組んでいる中小・ベンチャー企業
内 容
中小機構主催展示会または他機関・団体主催の展示会内で、中小企業の優れた製品・技術・サービ
ス等を展示・紹介することにより、販路開拓、業務提携といった企業間の取引を実現するビジネス
マッチング機会を提供します。
J-GoodTech(ジェグテック)
対 象 者
優れた技術、製品等を持つ日本の中小企業
内 容
優れた技術や製品を有する日本の中小企業を国内大手企業や海外企業につなぐBtoBマッチングサ
イトです。
WEB上での情報発信に加え、商談会の開催や専門家による仲介サポート等を効果的に組み合わせた
マッチングを実現します。これにより、新たな取引や技術提携等を可能にします。
URL:https://jgoodtech.smrj.go.jp/
eコマース活用促進支援
対 象 者
eコマースを活用した販路開拓に取り組む中小企業
内 容
拡大する国内外のeコマース(EC)市場の獲得を目指す中小企業に対し、民間EC事業者と連携した
課題別支援メニューを提供します。
Rin crossing(リン クロッシング)
対 象 者
地域資源商品を製造するメーカー
内 容
マッチングサイトや商談会・展示会を通じて、全国各地で価値あるモノづくりに取り組むメーカー
と新たな市場を創り出す商品を求めるバイヤーとの架け橋となって、地域資源を活かした商品の販
路開拓を支援します。
URL:http://rin-shopping.jp/
上記のほか、3事業の認定事業者を対象とした展示・商談会イベントなどを随時開催しています。
6
⑷専門家派遣
経営・技術・財務・法律・知財などの専門家を派遣し、企業の発展段階に応じたアドバイスを行います。
事業名
事業の特徴
派遣する専門家
専 門 家
継続派遣
事 業
企業が抱える真の経営課題を探り、全体
支援目標を設定した上で複数の支援テー
マを併行して行う、総合的な経営支援で
す。企業の発展段階や経営環境の変化に
応じて、タイムリーかつ適切なアドバイ
スを行います。
大企業の経営幹部など経営
経験の豊富な方、中小企業
支援の経験を積んだ中小企
業診断士・公認会計士など
のアドバイザー
経営実務
支援事業
特定された経営課題の解決に向けて、単
一支援テーマに絞って実施する短期集中
5ヶ月以内
大手・中堅企業等での実務
型の経営支援です。実務経験の豊富なス
(アドバイ
経験や指導・監督経験の豊
ペシャリストを派遣し、経験で培った実務
ス は1 0 回
富なアドバイザー
的な知識・ノウハウにより、現場の実態
以内)
に即した具体的なアドバイスを行います。
専門家
1人・
1回あたり
8,200円
戦 略 的
CIO育成
支援事業
中長期的な経営戦略の実行のためにITを
組織的に活用しようとする企業に専門家
を派遣し、IT導入・運用のプロジェクト
に対するアドバイスを行います。
CIO経験者、中小企業診断士、
ITコーディネーターなど、経
支援内容に
営上の問題点・課題をITの活
より6ケ月
用により解決した実務経験・
∼1年程度
支援実績を有するアドバイ
ザー
専門家
1人・
1日あたり
17,200円
テストマ
ーケティ
ング活動
4ヶ月以内
専門家
1人・
同行支援
1回あたり
4,100円
新商品・新技術・新サービスについて、
首都圏・近畿圏におけるテストマーケテ
販路開拓
コーディネート ィング活動の実践を通じ、新たな市場へ
事 業
の手がかりを掴むとともに、販路開拓の
力をつけることを支援します。
首都圏または近畿圏に販路
ネットワークを有する商社・
メーカー等出身の販路開拓
コーディネーター
支援期間
費用(税込)
支援内容
により
6ヶ月∼
1年程度
専門家
1人・
1日あたり
17,200円
⑸海外展開支援
国際化支援アドバイス
内 容
中小企業の海外展開、国際取引等、豊富な実務知識・経験・ノウハウを持つ海外ビジネスの専門家
が、経営課題に対応したアドバイスを実施しています。
海外ビジネス戦略推進支援
内 容
海外ビジネス戦略策定や販路開拓につなげるF/S(事業化可能性調査)支援を行います。また、海
外ビジネス展開に必要な外国語WEBサイト構築の支援を行います。
海外企業CEOとの商談会・交流会
内 容
日本製品の購入や合弁会社設立、代理店契約締結など日本企業との連携を希望している海外企業経
営者等を日本に招聘し、企業経営者間の交流会・商談会を開催致します。
国際展示会出展サポート
内 容
海外展示会(JETROの「ジャパンパビリオン」
)や海外バイヤーが多く訪れる国内展示会への出展
を支援します。各社海外展開の段階に応じたアドバイスの他、商談ツールの翻訳や印刷まで支援し
ます。
上記のほか、海外展開を目指す方を対象とした各種セミナーや研修なども企画、開催しています。
7
法認定に基づく各事業の支援措置
補助金※
新連携事業
地域資源活用事業
農商工連携事業
◆商業・サービス競争力強化連携支
援事業
中小企業・小規模事業者等が他の
事業者及び大学・公設試等と連携し
て行う新しいサービスモデルの開発
について、研究員費、知的財産権関
連経費、展示会等への出展経費など、
その費用の一部を補助します。
補助金限度額3,000万円、補助率2/3
以内
◆ふるさと名物応援事業
(消費者志向型地域産業資源活用新
商品開発等支援事業)
市場調査、研究開発に係る調査分
析、新商品・新役務の開発(試作、
研究開発、評価等を含む)、展示会
等の開催又は展示会等への出展、知
的財産に係る調査等の事業に係る経
費の一部を補助します。
補助金限度額500万円、補助率2/3 以
内
◆ふるさと名物応援事業
(低未利用資源活用等農商工等連携
支援事業)
中小企業者と農林漁業者とが有機
的に連携し、それぞれの経営資源を
有効に活用して行う新商品・新役務
の開発、需要の開拓等を行う事業に
係る経費の一部を補助します。
補助金限度額500万円、補助率2/3以
内
◆政府系金融機関による融資制度
認定を受けた事業計画に基づく設備資金及び運転資金について、政府系金融機関が優遇金利で融資を行います。
資
融
◆高度化融資制度
4者以上が連携して行う事業に必
要な生産・加工施設等の設備資金に
ついて、中小機構が都道府県と協力
して融資を行います(無利子)。
◆ 市町村による高度化融資制度
中小企業者(グループ、組合等)が、
事業計画を実行する際に必要な土
地、設備等に対し、市町村(特別区
を含む)が融資する場合、中小機構
が市町村に融資を行います。
◆農業改良資金融通法、林業・木材
産業改善資金助成法、沿岸漁業改
善資金助成法の特例
中小企業者が農林漁業者の行う農
業改良措置等を支援する場合に農業
改良資金等(無利子)の貸付を受け
ることができます。また当該資金の
償還期間及び据置期間を延長します。
信用保証
◆信用保証の特例
中小企業者が金融機関から融資を受ける際、信用保証協会が債務保証をする制度で、中小企業者は次の措置を受
けることができます。
*普通保証等の別枠設定
普通保証2億円、無担保保証8,000万円、特別小口保証1,250万円、流動資産担保融資保証2億円に加えて、それ
ぞれ別枠で同額の保証を受けることができます。
*新事業開拓保証の限度枠拡大
新事業開拓保証の限度額が2億円から4億円(組合4億円から6億円)に拡大されます。
◆食品流通構造改善促進法の特例
食品の製造等の事業を行う中小企業者が金融機関から融資を受ける際、食
品流通構造改善促進機構が債務保証等をする制度で、食品の製造等の事業を
行う中小企業者は、当該認定事業に必要な資金の借り入れに係る債務の保証
等を受けることができます。
その他支援措置
◆中小企業投資育成株式会社の特例
事業を行う中小企業者が増資等を行う場合、資本金3億円を超える株式会
社であっても投資育成会社の投資対象に追加されます。
◆特許料の減免措置
技術に関する研究開発事業による
成果について、中小企業者が特許出
願を行った場合、審査請求料・特許
料(第1∼10年)を半額に軽減でき
ます。
◆ 地域団体商標の登録料等の減免
組合等が事業計画に基づき、地域
団体商標の登録を受ける際の登録
料・手数料を減免できます。
(※)平成27年9月時点の支援措置です(一部、予定を含む)。なお、年度等によって名称や内容等が異なる場合があります。
8
目 次
都道
府県
事業者名
事業
区分
商品
事例概要
頁
北海道
秋
田
北
東
北海道
北海道産有機
小麦を用いた
有機JAS
認証パン
連携農業者が製造した北海道産有機小麦粉を用いて、北海道で
は唯一の有機JAS認証パンを開発。ロゴマークから新店舗デザイ
10
ンまでブランドコンセプトを統一し、行列のできるベーカリーを実
現。全国販売に向けた販路開拓を開始。
魚醤
市の地域活性化プロジェクトと連携して、地域のシンボル的地魚
「鱈」を活用した「鱈の魚醤(鱈しょっつる)」を商品化。地域一
14
体となった「鱈の魚醤」活用の取り組みが地域ブランドへ成長し、
地域経済活性化に大きく貢献。
糀糖
清酒造りのノウハウを活かし、地元の峡北米による米糀と米粉の
みを原材料とした自然甘味料「糀糖」を開発。直営のカフェをオ
18
ープンし、自然由来の糀糖のコンセプトや魅力を直接消費者に伝
えることにより新市場の創造に挑戦。
株式会社
金澤製作所
免震装置
地震のエネルギーを吸収し免震を行う装置は施工も簡単。テーブ
ルの対角線上に仕組まれたマーブル鋼球が免震能力を発揮。シン
22
プル構造で高性能なアイデア免震装置が、東日本大震災から国宝
の仏像を守り性能を実証。
松岡コンク
リート工業
株式会社
雨水
地下貯留槽
ゲリラ豪雨の洪水被害から都市を守るために画期的なハニカムボ
ックス工法のコンクリート製地下貯留槽を開発。有効な土地利用、
26
簡易施工、耐震構造を実現し、都市のニーズに適合。新連携で製
品ラインアップの拡充と全国製造・販売体制を構築。
寺井レース
有限会社
防草植栽
シート
創業以来レース生地、加工糸などの繊維製品を製造・販売してき
た事業者が、自社技術であるレース編み技術を活用した防草植栽
30
シート「ネガトール」を開発。これまで全く取引経験がない異業
種分野での販路開拓に手探りの挑戦。
トキハ産業
株式会社
天然素材を
使った
長寿命家具
天然素材で健康や環境に優しい高耐久性の良質家具シリーズを新
開発。家具の生涯(生産∼販売∼買取り∼再生∼販売)を一元管
34
理する新しい提供システムで、
「良い家具は使い捨てであってはな
らない!」という理念のビジネスモデルを実現。
株式会社
ブンシ
ジャパン
ベルト除菌など
食品工場の
衛生管理に
寄与する製品
包装資材卸売会社が、顧客のお困りごとをヒントに、業界初の食
品製造用コンベアベルト除菌クリーナー等を発案し、製造業との
38
企業連携を経て商品化。
「食品衛生管理機器メーカー」として、
新市場を開拓し全国に商圏を拡大。
株式会社
キシモト
骨まで
食べられる
干物
魚骨軟化技術で骨まで食べられる干物を商品化。世の中にない商
品を認知してもらう取り組み(攻め)と食の安心・安全に対する取
42
り組み(守り)により新規顧客開拓とリピート注文を実現。テレビ
番組で取り上げられ認知度が高まり、大幅売上アップを達成。
有限会社
坂本石灰
工業所
火傷しない
安全な
石灰乾燥剤
「発熱せず子供や高齢者にも安心安全な石灰乾燥剤を世の中に
広めたい。」という強い思いで、業界初の発熱しない食品保存用
46
石灰乾燥剤を商品化。長年培った石灰への知識、ノウハウ、技術、
高品質の商品を組み合わせた提案営業で市場を開拓。
株式会社
ECOMAP
北大東島産の
ドロマイトと
月桃を活用した
コスメ製品等
「沖縄の地域資源を活かせば、無理無駄の無い商品がきっとで
きる。
」との思いで、北大東島の「ドロマイト」と「月桃」を原料にし
50
たコスメ製品等を開発。支援機関の協力を得て、販路開拓や資金
調達の課題を解決し地域の新しい産業を興そうと新事業に挑戦。
シロクマ
北海食品
株式会社
日南工業
株式会社
山
梨
東
東
関
山梨銘醸
株式会社
京
岐
石
川
陸
阜
北
部
中
大 阪
近 畿
山
愛
媛
熊
本
沖
縄
縄
沖
州
九
国
口
四
国
中
9
シロクマ北海食品株式会社
北海道札幌市
「オーガニックブレッドでブランド創造」
国内外で活躍の専門家によるディレクション!
連携農業者が製造した北海道産有機小麦粉を用いて、北海
道では唯一、全国的にも希少な有機JAS認証パンを開発し、
全国販売に向けて販路開拓を開始。専門家チームの力を結
集してロゴマークから新店舗デザインまでブランド統一し、
行列のできるブランド・ベーカリーを実現。
●会社名 シロクマ北海食品
株式会社
●代表者 荒川 伸夫
●設 立 昭和43年7月
●資本金 5,600万円
●売上高 3億5,000万円
(平成27年2月期)
●従業員数 60名
●事業内容
パン製造・販売。本社工場で製造
した焼き立てパンをスーパー等へ
出荷。また、直営店2店舗で販売。
●所在地
北海道札幌市白石区
南郷通20丁目南8-3
●URL
http://www.sirokuma.co.jp/
●T EL 011-865-3521
●FAX 011-865-2271
事業の概要
に、有機JAS認証パンの事業化可能
性を感じた。
<取り組みの経緯>
また、同社は、首都圏の有名百貨
シロクマ北海食品㈱は、昭和22
店から商品供給を打診されていなが
年に函館市で創業以来こだわりのパ
らも、自社商品の競争力がまだ不足
ンを製造してきた。日本人の主食が
していると感じて本格的な首都圏進
米を抜いてパンが1位になる中、パ
出を躊躇していたが、有機JAS認証
ン業界は、熾烈な価格競争を繰り広
を得た商品ならば十分に競争力を持
げており、大手パンメーカーですら
てると判断した。
営業利益率が1∼3%という状況であ
そこで、荒川社長は田中社長と共
った。同社は、過剰な競争を回避す
同で、北海道初の有機JAS認証パン
べく北海道産原料にこだわったパン
の製造販売に取り組むこととなった。
の製造販売を続けており、健康機能
性を付与させるために菊芋や大麦を
練り込んだパンなどの製造も得意と
している。
同社の荒川伸夫社長は、連携参加
者である北海道中小企業家同友会札
幌支部農業経営部会の副会長も経験
シロクマベーカリー
荒川社長
し、地域の農業者との人脈も広く、
同社には、量産用の本社工場と小
後に共同申請者となる㈲ファーム田
ロット製造可能な店舗兼工場があ
中屋(北海道新篠津村)の田中哲夫
り、この店舗兼工場で食パン、ベー
社長とも親交が深かった。
グル、ロールパン等の有機JAS認証
田中社長は、6次産業化法の認定
パンの新事業を展開することにした。
を得て、病気発生リスクが高く生産
有機JAS認証支援機関の協力もあ
が難しい小麦の有機栽培をして、有
り、5名の社員が有機加工食品の格
機小麦粉を製造・販売しており、安
付を行う生産工程管理者・小分け業
定した販売先を探していた。
者の講習を修了した。また、平成
荒川社長は、田中社長が北海道産
26年8月から11月にかけて、工場の
で有機JAS認証の小麦粉を製造する
JAS認証のために厳しく規定されて
話を聞いて、同社の次なる看板商品
いる生産工場の整備及び工程管理規
事業の推進体制
●事業名
北海道産有機小麦を用いた有機
JAS認証パンの開発、製造及び販売
●認定期間
平成26年11月∼平成31年2月
10
田中社長
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定の作成、従業員への徹底などを実
ュアップ支援を開始した。機構専門
北海道フードフェア」で北海道発オ
施し、平成26年12月に有機JAS認証
家は、商品力に磨きをかける必要が
ーガニックパンを披露した。翌3月
を取得することができた。
あると考え、荒川社長に各地のイベ
には、東京ビックサイトで開催され
ントに積極的に参加し、消費者の声
た「健康博覧会」に出展し、オーガ
事業の展開
を商品改良に提案すべきであると提
ニック食品を世界中から輸入販売し
案した。
ている会社からも引き合いがあっ
<農商工連携事業計画認定に挑戦>
荒川社長は、平成26年9月から積
た。その後、イベントで引き合いが
北海道発有機JAS認証パンの首都
極的にイベントに参加していった。
あった会社に専門家が同行し、効果
圏展開を本格化したいと考えていた
札幌市で開催された「食べる・たい
的な商談の進め方や、商談用資料の
荒川社長は、農商工連携事業計画認
せつフェスティバル」
、札幌大通公
作成方法などのアドバイスを行った。
定を受ければ販路開拓などの様々な
園で開催された札幌オータムフェス
更に、機構専門家は札幌市内の有
支援を受けることができると聞き、
ト、東京代々木公園での北海道食な
名な老舗有機食品店、食材卸業者、
平成26年5月に中小機構に足を運ん
どのイベントに参加した。イベント
オーガニック嗜好が高い外国人観光
でプロジェクトマネージャー(PM)
では、オーガニックブレッドの試食
客が宿泊するホテルなどターゲット
やチーフアドバイザー(CAD)と面
評価を積極的に実施し、消費者の声
を絞って販路開拓支援を実施した。
談した。
を製品に反映させて着実に品質改善
また、平成27年2月には、機構専
PM、CAD(以降、機構専門家)
を図った。
門家が荒川社長に中小機構企画「北
から国の農商工連携事業の説明を受
さらに、
海道新聞しあわせBOX(紙面15段)
」
け、新規事業の相談をした。
機構専門家
への記事掲載を提案し、同社の健康
その後、機構専門家は、競争優位
は、バイヤ
配慮・地産地消・北海道道産有機小
性を発揮できてお客様にも認識でき
ーの反応も
麦使用などのこだわりが紙面で大き
る新規性を打ち出し、事業の確実性
確認する必
く紹介された。
を高める必要があると考え、荒川社
要があると
長とともに競合調査を実施した。す
考え、荒川
展示会出展
<ブランディングへの取り組み>
機構専門家は、同社最大の課題で
ると、有機JAS認証のパンは全国で
社長ととも
数社しかなく、北海道初の事業であ
に首都圏で有機食品を取り扱ってい
あり事業成功の鍵はブランド化にあ
ることが分かり、加えて、有名店の
る店、有名高級スーパーや百貨店等
ると目利きして、農商工連携事業計
有機JAS認証パンは、通常の5倍の
のバイヤーへ聞き取りを実施した。
画認定直後にブランディングに着手
価格で販売されており、中小企業者
反応は極めて良好で、
「商品が発売
した。
の強みを生かせる高付加価値・ニッ
されたらすぐにサンプルと仕様書が
機構専門
チ市場であることが分かった。
欲しい。」などの声をいただいた。
家は、中小
また、同社商品は有機原料の天然
これで、事業化の目処も立ち、自
機構の地域
酵母、塩、小麦、砂糖をベースに、
信を持った荒川社長は、消費者の反
活性化支援
通常の方法で製造すると風味や食感
応や販路の情報を事業計画に反映
アドバイザ
が悪いため、特別な製法で芳醇な風
し、平成26年10月に農商工連携事
ー派遣制度
味と良質な食感を実現しており、平
業計画の認定を受けた。荒川社長は、
を活用し、
成26年7月に中小機構主催の消費者
「農商工連携キックオフ会」を実施
国内外で活
傾聴会で、札幌消費者協会・食味テ
し、従業員の理解を深めた。
躍するクリエイティブ・ストラテジ
ブランディングの打合せ
ストの吉田透氏を派遣した。吉田氏
スターの高い評価を受け、質の面で
<販路開拓の取り組み>
は、同社の店舗工場やスーパーのパ
そこで、機構専門家は、農商工連
機構専門家は、知名度がない状況
ンコーナーを調査しながら、荒川社
携事業計画認定を目指してブラッシ
で販路開拓するには、展示会でのマ
長の思い、シロクマパンの歴史を丁
ッチングとパブリシティが重要であ
寧にヒアリングし、さらに、田中社
ると判断した。
長の有機小麦畑にも出向き、圃場(ほ
同社は、平成26年10月に開催さ
じょう)を見学しながらのブランド
れた「オーガニックEXPO」に出展
構築に必要なストーリーを膨らませ
した。来場者の関心が高く、20社
ていった。
以上と商談が実施でき、有名百貨店
また、吉田氏は自社商品のカテゴ
も競争力があることを証明した。
からは工場視察の申し出があった。 ライズ、自社商品の他に負けない特
オーガニックブレッド生産
平成27年2月、札幌市の「第13回
徴は何か、ファンになって欲しい人
11
は誰か、どのようにお客様を幸せに
するかなどの情報を整理した。こう
して、ブランドイメージを表現する
「冬眠ホテルのシロクマベーカリー」
という物語が完成した。
大な精霊であり、大地の守り神です。
白き熊は、大地の豊かな恵みや自然
の大いなる力の象徴であるととも
に、その力の偉大さを人々に伝える
使者でもあります。
翌週に特集として放映された。さら
に、民放テレビ局2社、ラジオ2社
でもニュースで取り上げられた。
<包材の質感からデザインまで>
この物語の舞台は、オーナーのシ
ブランド創造には、あらゆる面で
ロクマ親方が、弟子の若いシロクマ
の統一感が重要になる。ブランドコ
たちと切り盛りしている、山あいの
ンセプトに合う材質と高級感のある
小さな冬眠所である。
「クマたちは
デザインと質感を、包材企画会社と
冬が近づくとこの冬眠所に集まり、
やわらかいベッドと毛布の中で冬眠
します。春が近づいてくると、シロ
クマ親方たちが冬眠から覚めてくる
腹ペコのクマたちのために、『さあ、
始めよう、今年もとびっきりのパン
を創ろうじゃないか。』と言って名
物の美味しい焼き立てパンをつくり
始め、冬眠を終えたクマたちは、香
ばしい匂いに誘われて次々と目覚め
てきます。そして、焼き立てのパン
を食べて大満足のクマたちが、元気
に森へと帰っていくお話です。」
荒川社長は、このストーリーに大
変感銘を受け、その後も農商工連携
事業補助金を活用して、ブランド化
の取り組みを継続することを決意
し、吉田氏の統括のもと、美術家、
デザイナー、建築家などから構成さ
れるブランド化を進める専門家チー
ムを組織した。
荒川社長と専門家チームのメンバ
ーは、ブランドロゴ、包材デザイン、
店舗内装・外装、チラシやショップカ
ード、名刺、ショッピングバッグ、看
板、スタッフのユニフォームに至る
までをゼロベースで構築していった。
専門家らが連携して創り上げた。
包材は、同社が持つ包装機械の仕
様、協力会社の可能な包材と印刷方
ブランドロゴ「白き熊」
その背には、北の先住民の畏れと
敬いを表す紋を負い、その額には道
なき道を歩む者のしるべとなる北辰
の印を刻んでいる。これは、先住民
の文化や知恵、精神性を尊重し、学
ぶ姿勢を重んじた北海道開拓の精神
を象徴するものでもあります。」と
いう素敵なストーリーを創り上げた。
こうして完成した白き熊のブラン
ドロゴの世界観は、見た人の印象に
残るように意図され、ブランド戦略
の中核となっている。
白き熊 は新店舗の入口に飾られ
たエンブレムとなっており、いつで
もお客様を出迎えてくれる。
法、そしてコストとのバランスを取
ることに時間をかけた。
また、単にデザインをするのでは
なく、パンが入った時に最も美しく
見えるような工夫を施し、棚に並ん
だ時に目を引く演出ができるように
なった。
<ブランドを表現する新店舗創り>
同時期に「札幌市白石区の三角屋
根の建物を借りてくれないか。
」と
いう話があった。
荒川社長
と吉田氏ら
専門家チー
ムが偶然そ
の建物の横
を通った時
<メディア対策も入念に行う>
に、「この建物は、ブランドイメー
同社は、メディア対策を念頭に事
ジを表現できる。
」という話題にな
業を進め、平成26年10月の農商工
っていた建物である。
連携事業計画認定直後に関係支援機
そこで荒川社長は、すぐにこの建
関を集めて事業内容を紹介した。
物を借りることを決め、新店舗デザ
荒川社長や専門家チームのメンバ
インに着手した。
ーは、マスメディア各社に対しニュ
<国内外で活躍する美術家の協力>
ースリリースを送り、複数の業界誌
美術家のミヤケマイ氏は、荒川社
や専門誌に掲載された。また、専門
長の北海道産原料へのこだわり、田
家チームのメンバーが北海道の民放
中社長の有機小麦にかける思いにつ
テレビ局2社に企画を持ち込み、1
いて、北海道の大自然の中にある小
社では新店舗オープン前に地域情報
麦畑で語り合った。
のコーナーでテレビ放映された。
ミヤケマイ氏は、ブランドを表現
もう1社か
するイメージを膨らませ「白き熊」
らは、2か月
資金面では農商工連携の制度融資
をデザインしていった。そして、吉
間の密着取
(農業改良資金)を活用し、細部に
田氏は、
「シロクマパンのシンボル
材を受け、
までこだわる芸術作品のような新店
としてデザインされたシロクマは、
北の森の奥深くに生きる聖獣『白き
熊』の姿であり、強く、気高く、雄
平成27年9
舗への改修工事を実施した。
12
月の新店舗
オープンの
密着取材
新店舗内観
<ブランド化のための知的財産権>
れてきたヨーロッパ式の伝統製法で
同社が昭和45年に、札幌へ進出
焼き立てパンを提供している。この
した際に、同社社名にちなんで「シ
店舗で焼かれたオーガニックブレッ
ロクマパン」の名称の商標登録を試
ドは、全国に届けられている。
みたが、既に使用されており断念し
この建物を外から見ると、緑色の
た経緯がある。
三角屋根に赤レンガの煙突が目に入
荒川社長と専門家チームは、今回
り、入口に向かうとパン屋とは思え
のブランド化の取り組みには商標登
ないほど洗練された雰囲気が漂い、
録が必須と考え、45年の時を経て、
白き熊のエンブレムと笑顔のスタッ
「シロクマパン」で再チャレンジし、
フが出迎えてくれる。
ブランド化を進めるための重要な権
2階のイートインスペースもおし
利を保有することができた。
ゃれなレストランを思わせる雰囲気
事業者のひと言
これまで、美味しいパンを創るこ
とに全精力を傾けていましたが、改
めてブランディングの重要さを実感
しました。幸いにも吉田透さん、ミ
ヤケマイさんとの出会いがあり、彼
らの決して妥協をしない姿勢から多
くのことを学びました。
今後は、全社員が一丸となり、事
業を全国的に発展させることが最大
の恩返しになると思いますので、こ
れからも努力を続けたいと思います。
である。シルバーグレーの壁に木漏
<ブランド化のためのWEB構築>
れ日が差し込むと、言葉にならない
同社は、平成9年にWEBを立ち上
落ち着ける空間を醸し出している。
げ、少しずつWEBサイトを拡張して
パンを焼いている工場の中が見える
きたが、時を経て統一感がない状態
店舗は、本当に焼き立てを出してい
になっていた。今回のブランディン
るのが確認でき、お客様から喜ばれ
グをきっかけに、WEBサイトも新た
ている。
なブランドイメージと一致させる必
店外にまで漂う焼き立てパンの香
要があった。そこで、WEBサイト構
りも手伝い、休みなくパンを焼いて
築に向けて専門家チームの支援を得
も追いつかないほどの大盛況である。
ながらWEB戦略を立案した。その結
代表取締役
果、 新 た にshirokuma-bakery.com
<首都圏への販路拡大へ>
のドメインを取得し、WEBサイトの
平成27年2月から発売開始になっ
抜本的な改修を行った。
た同社の有機JAS認証マークの付い
たオーガニックブレッドは、もっち
りとした食感で、北海道産有機小麦
の芳醇な香りが引き立つ逸品であ
り、新店舗や札幌市内のオーガニッ
ク専門店などで販売している。現在
は、オーガニックの食パン、ベーグ
ル、ロールパンの3種であるが、徐々
にアイテム数を増やす予定である。
WEBサイト
その他、平成27年9月の同社の新
店舗のオープンに合わせて専門家チ
荒川 伸夫 氏
支援者のひと言
同社は、こだわりの北海道産原料
を使う高コストのパンにもかかわら
ず、以前はコンビニと同程度の価格
で、ブランディングに取り組んだ経
験がなく、磨かれていないダイヤモ
ンドの原石のような状態でした。し
か し、今 で は 誰 が 見 て も 優 れ た 価
値 を理解できる味とデザインにな
っています。
北海道で唯一の全国出荷できるオ
ーガニックブレッド供給会社とし
て、全国で愛されることを期待しま
す。
ームやIT会社が結束してソーシャル
・ネットワーキング・サービスで情
報発信を実施した結果、3週間で2.5
既に有機食材卸会社、百貨店、自
万アクセスを記録した。
然食品取扱小売店等から引き合いも
あり、平成27年度中に首都圏での
事業の成果
販売も開始する。さらに日本を訪れ
<ブランド・ベーカリー店の実現>
好の方の割合も高く、ニッチ市場で
平成27年9月に三角屋根の「シロ
はあるものの競合が少ないため、十
クマベーカリー」をオープンさせた。
分な需要を取り込めると期待してい
原料麦をすべて北海道産にこだわ
る。
り、昭和22年の創業以来受け継が
る欧米の観光客は、オーガニック嗜
北海道本部 前田チーフアドバイザー
13
日南工業株式会社
秋田県にかほ市
地域のシンボル的地魚を原料とする
「鱈しょっ
つる」の商品化が地域ブランド化をリードする
鱈しょっつる「うわてん」
秋田県にかほ市において 市の魚 に指定されている 「鱈」
を活用した地域活性化プロジェクトと連携し、
『鱈の魚醤(鱈
しょっつる)』の商品化を実現。
地域と一体となった『鱈の魚醤(鱈しょっつる)
』活用の取組み
が地域ブランドへと成長し、
地域経済の活性化に大きく貢献。
●会社名 日南工業株式会社
●代表者 細谷 広志
●設 立 昭和23年10月
●資本金 2,650万円
●売上高 4億2,700万円
(平成26年11月期)
●従業員数 35名
●事業内容
醤油、味噌、調味料、加工食品等
の製造・販売
●所在地
秋田県にかほ市院内字此木沢6
●URL
http://www.kikkonan.co.jp/
●T EL 0184-36-2111
●FAX 0184-36-2113
事業の概要
近年は、漁協が有する加工処理技
術を用いて、未利用魚や低利用魚の
<事業者を取り巻く環境>
有効活用に取り組み、また、県産魚
日南工業㈱は、昭和23年より醤
をPRすることにより消費拡大を図
油等を製造してきた業歴を持ち、秋
り、組合員の利益を向上させる機会
田県内の食品スーパー等を中心に自
をうかがっていた。
社ブランド「キッコーナン」で醤油・
特に、鱈の低利用魚については、
味噌商品等を販売している。
年間を通じて大量に発生するが、主
近年は、国内市場の成熟と消費者
に餌料用、飼料用として使用されて
嗜好変化により、簡単で便利な調理
いたため、その価値を高める有効活
を支援する万能調味料など他の調味
用策を模索していた。
料へのシフトが顕著であり、それに
対応した「つゆ商品」等の充実も図
っている。
しかしながら、主力である醤油関
連商品が年商に占める割合は減少の
一途を辿る状況にあり、地域嗜好や
消費者ニーズに合わせた高付加価値
商品等の二次加工品の開発によっ
キッコーナンブランドの商品例
て、売上の拡大と収益性の改善に取
本社工場
一方、連携先である秋田県漁業協
そのような状況下、平成23年に
同組合(以下「漁協」という)は、
にかほ市商工会(以下「商工会」と
平成14年の設立以来、県内水産資
いう)は、市の魚に指定されている
源の管理並びに組合員の経営・技術
鱈(注1)を活用した地域活性化プ
向上を指導するほか、漁獲物の運搬
ロジェクトを計画した。プロジェク
加工・保管などを行っている。
トの取り組みを推進する中で、秋田
事業の推進体制
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14
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●認定期間
平成25年7月∼平成29年11月
<支援機関との連携の経緯>
㏻ᦘమ
●事業名
地域のシンボル的地魚である鱈の
低利用魚を原料に用いた魚醤(「鱈
しょっつる」)等の開発・生産・
販売及びご当地調味料としてのブ
ランド化
り組むことが必要な状況であった。
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䝛䝱䝦䞀䜻䝫䝷䡖Ὦ㏳ᡋ␆ᨥᥴ㻃
県総合食品研究センター(以下「総
そのまま消費地で味わうことのでき
では「鱈しょっつる」と命名)を活
食研」という)から鱈を活用した魚
る加工・保存技術の開発及び移転」
用した地域活性化プロジェクトに発
醤開発の提案を受け、鱈魚醤の実現
を大きな柱に掲げ、鱈などによる魚
展させ、地域の飲食店や加工業者等
に向け動き出した。
醤の試作と技術開発にも取り組んで
による「鱈の魚醤」を活用した地域ブ
商工会は、にかほ市内において、
いたため、協力することになった。
ランド育成事業へと展開していった。
醤油・味噌等の販売を手掛け、醸造
また、魚醤の原料となる鱈の調達
同社においても、単に「鱈の魚醤」
設備を有する同社に対して魚醤開発
が課題となっていたが、鱈の低利用
の製造を担うだけではなく、売上拡
を提案した。同社も高付加価値商品
魚の有効活用に課題を抱えていた漁
大を目指して広く業務用や一般消費
等の開発に取り組む良い機会と捉
協に対し、プロジェクトへの参画と
者向け商品として販売することの検
え、商工会からの提案を受け入れた。
鱈の低利用魚の提供を働きかけ、漁
討を開始した。
同社には、醤油の製造工程の中に
協の協力を取り付けることに成功し
長年に亘り蓄積された醸造ノウハウ
た。
が存在し(※図参照)、特に「仕込み」
こうして、商工会が推進する地域
や「発酵・熟成」の工程における職
活性化プロジェクトを実現するため
<中小機構との連携>
人技とも言えるノウハウを有効活用
の連携体が、商工会のコーディネー
同プロジェクトは、商工会のコー
することで魚醤製造に取り組む事は
トにより構築され、同社が「鱈の魚
ディネートにより、それぞれが役割
可能であった。
醤」の製造に取り組むこととなった。
を担う体制が確立し活動が開始され
しかしながら、これまで魚醤製造
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に取り組んだことは無く、既存の醸
造設備を魚醤製造に使用する事は難
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た。そのような中で、商工会が「鱈
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の魚醤」を活用した地域活性化プロ
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し技術的知見を有する専門家から指
必要があった。
報を入手した中小機構の高橋プロジ
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導を仰ぎながら生産体制を確立する
そこで、商工会は、広く県内食品
ジェクトに取り組んでいるという情
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しいために、製造設備を新たに整備
事業の展開
ェクトマネージャー(PM:当時)は、
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事業者の技術支援を行い、魚醤の試
平成24年12月、商工会へヒアリン
グを実施した。プロジェクトに取り
組んだ経緯や連携に至る経緯を聞く
中で、「鱈の魚醤」の商品化に取り
作や技術開発に取り組んでいた総食
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組む本事業は、参画事業者における
研に対し、プロジェクトへの参画及
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経営力向上に資するだけでなく、当
び魚醤の製造技術やノウハウの同社
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該地域活性化への貢献度が高い案件
への移転を働きかけた。
総食研では、
「秋田のおいしさを
(注1)にかほ市における『鱈』
にかほ市では、鱈を「市の魚」と
している。それは、毎年2月に多く
の観光客を集客する「掛魚まつり(別
名 たらまつり)」が開催されている
ことなどから、広く市民に親しまれ
る地魚であるためである。
そのまつりの歴史は300年以上と
言われ、漁獲の一部(鱈)を守護神
に奉納して感謝を捧げ、海上安全と
大漁祈願を行っている。
掛魚まつりの風景
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であると強く認識した。
その後、商工会のコーディネート
により、プロジェクト参加者の協議
の場に高橋PMも参加することにな
った。高橋PMからは、同プロジェク
᳠ᰕ
トの取り組みにより具体化した「鱈
⿿ဗ
の魚醤」が、農商工連携事業の活用
図:醤油製造の工程
により商品化や販路開拓などの中小
機構の支援を受けることが可能とな
<地域活性化プロジェクトの
発展>
ることなどが詳しく説明され、プロ
総食研の支援により、平成24年
が関与することへの理解が深まった。
には少量ではあるが「鱈の魚醤」の
これらの協議を経て、同社及び漁
試作品を完成させることが出来た。
協が互いの課題を解決するととも
更に、総食研からは、特産メニュ
に、新たな商品の開発を目的とした
ーの開発や加工食品の開発材料とし
農商工連携事業を進めることを決定
て、にかほ市周辺の店舗で「鱈の魚
し、中小機構によるハンズオン支援
醤」を活用すべきとの提案がなされ
が開始された。
た。商工会は、既に取り組んでいる鱈
農商工連携事業計画の認定申請に
を活用する地域活性化プロジェクト
向けては、地域活性化プロジェクト
を、商品化された「鱈の魚醤」(事業
との係わりや連携の経緯から、商工
ジェクト参加者のなかに、中小機構
15
会や総食研も連携参加者として関与
ル等の開発にあたっては、これまで、
2015」などの各種展示会や商談会、
することとなり、事業計画の作成に
同社は既存商品においても実施した
中小機構の地域活性化パートナー活
参画し協議が進められた。
経験が無く、知見を有する専門家の
用事業による販路開拓支援やビジネ
高橋PMは、味や風味、使用方法
支援や助言が必要と考えられた。そ
スマッチングイベント等を積極的に
等の消費者ニーズを踏まえたネーミ
のため、高橋PMは中小機構の地域
活用し、他社(他店)との差別化を
ングやパッケージデザインの開発、
活性化支援アドバイザー派遣事業を
企図する醤油製造業者や加工業者、
商品の情報発信、PR手法等を戦略
活用し、商品企画の専門家を派遣し
飲食店等に提案を実施して販路拡大
的に展開することが商品化を進める
検討が進められた。主な検討内容は、
に取り組んでいる。
上での課題と考えた。同社はこれら
市場流通に適した一般消費者向け商
の課題対応策を盛り込んだ事業計画
品のネーミングやキャッチコピー、
を作成し、平成25年7月、農商工連
容器の形状を含むパッケージデザイ
携事業計画の認定を取得した。
ン全般の具体化であった。また、商
品コンセプトを明確にする必要性に
<商品化への取り組み>
ついての助言が行われた。
こうして、中小機構及び連携参加
次に、プロモーション活動の中で
者の支援の下、
「鱈の魚醤」の商品
課題としていた情報発信の方法等に
化に向けた取り組みが開始された。
ついては、特にメディアを通じた情
従来の一般的な魚醤が持つ強い臭
報発信において、商工会のバックア
みが無く、旨味成分を多く含み、風
ップも受けながら課題解決に向けた
味がよく、幅広い料理に活用出来る
以下の様な活動を展開した。
汎用性の高さを 売り として市場提
まず、本商品を活用して地元高校
これらの取り組みの中で、平成
案を実施することを計画した。
生がご当地名物を開発する企画や、
26年6月より業務用の販売を開始し
総食研の塚本上席研究員が、かね
地元事業者と連携した土産商品の開
た。更に、同年10月より一般消費
てより魚醤等の醸造技術の研究及び
発、地元の短大生へ協力を依頼して
者向け商品(商品名:
「うわてん」
(注
開発を行い栄養成分と機能性の分析
のレシピ開発、
「鱈しょっつるを地
2))が販売開始され、にかほ市地
を行ってきた成果を用い、
「鱈の魚
域ブランドに育てる会」への参画な
域を中心とした市場で注目度を徐々
醤」が持つ特徴を活かしながら、競
ど、積極的な活動を実施した。それ
に高めている。
合商品と差別化する取り組みが行わ
らが功を奏し、現在までに地元TV
しかしながら、国内市場には多く
れた。具体的には、通常は1∼2年
局や各種情報誌など数多くのメディ
の競合他社商品が存在しており、広
要すると言われる「しょっつる」の
アに取り上げられ、事業や商品の認
く域外市場への展開を進めるうえで
製造を、総食研からは6ヶ月という
知度向上に繋げている。
は、特徴を示し理解を得るだけでな
短期間で製造する技術のノウハウ移
更に、市場流通における課題とし
く、購買意欲を喚起させられるよう
転と品質の安定化や量産化に向けた
ていた販売チャネルの検討と商品
な更に踏み込んだ提案が必要である。
アドバイスも行われた。
PR方法については、高橋PMが中心
そのため、新たな商品パンフレッ
商品化における取り組みの中で課
となり、一般消費者向けと事業者向
トの作成や地元TV局でのCM放映な
題としていたネーミングやパッケー
け(業務用)に大別し、多種多様な販
どプロモーションツールの改良を行
ジデザイン及びプロモーションツー
売チャネルとそれらに向けたPR方法
った。また、幅広い客層に提案が可
を検討した。同社は高橋PMの支援
能となるように「鱈の魚醤」をベー
を受けながら着実に実践していった。
スとした新商品 白だし の販売を開
本商品は汎用性の高い調味料であ
始するなど、市場ニーズを反映させ
るが、万能調味料である「つゆ」と違
た商品バリエーションの追加等を図
い、一般の消費者が使い慣れていな
っており、現在、高橋PMはその活
い魚醤であることから、料理にこだ
動を支援している。
わりを持つ方をメインターゲットに
料理教室等での活用や食品スーパー
等の売場における実演でのメニュー
提案等によりアプローチを実施した。
また、業務用では、日本野菜ソム
リエ協会「ときめき調味料選手権
2014」をはじめ、「FOODEX JAPAN
16
(注2)「うわてん」とは?
「鱈の魚醤」は、旨味物質の三大
要素の一つである「グルタミン酸」
を多く含み、
「うわて(上手)」に「て
んか(添加)」する事で旨味をアッ
プさせられる調味料であることをメ
ッセージ化したものである。
事業の成果
商工会及び総食研は連携参加者と
して事業への関与意欲が高く、現在
も事業を遂行するうえで緊密な連携
が図られている。認定申請からその
後のフォローアップまで一連の支援
に関与することで様々な課題を共有
し、その解決に向けた支援にも積極
的に関与する関係が構築されている。
更に、商工会が展開する地域活性
化プロジェクトと連動した事業の
PRが効果を現している。具体的に
は同プロジェクトの推進により、商
工会会員の飲食店店舗や菓子製造事
事業者のひと言
地方にある中小企業者は、その資
金力や立地といった経営環境から、
せっかく素晴らしい製品を作りだし
ても、販路開拓がうまく進められな
いことが多いようです。
当社も同様の状態でしたが、農商
工連携事業計画の認定により中小機
構の支援を受けてからは、積極的に
販路開拓に取り組むことが出来るよ
うになりました。
特に定期訪問については、各種情
報提供等にとどまらず、親身になっ
て事業の展開について考えてくれる
(厳しいことも言われますが)、非
常にありがたい時間となっています。
業者等で「鱈の魚醤」を活用したメ
ニューや商品が開発された。そして、
地域への誘客を図るイベントとし
連携支援者のひと言
秋田県総合食品研究センターは、
秋田県食品産業を支援するための公
設試験研究機関です。
当センターでは秋田県内の食品企
業様が売り上げを伸ばし、利益を上
げることが何よりの成果となりま
す。今回の農商工連携事業により、
当センターは魚醤製造技術を移転
し、支援していく上で大変効果的に
進めることが
できました。
更に、本事
業の成果をあ
げるため、今
後も支援を継
続していきま
す。
秋田県総合食品
研究センター
上席研究員 塚本 氏
て、「鱈の魚醤」を使った料理を提
供する市内23店舗の飲食店を紹介
するキャンペーン「んだっ鱈、にか
ほ市へ!」が1月中旬から2月上旬
支援者のひと言
にかけて毎年開催されている。
このように、「鱈の魚醤(鱈しょ
っつる)」そのものが地域の新たな
代表取締役社長
細谷 広志 氏
特産品として行政機関や小売事業者
等により積極的にPRされる等、地
域全体を巻き込む事業に発展し、地
域ブランドとして地域経済の活性化
に大きく貢献する事業となりつつあ
る。
左:地域イベン
ト案内のパ
ンフレット
連携支援者のひと言
今回の農商工連携への取組み支援
として、日南工業㈱の製造した「鱈
しょっつる」をご当地調味料として
開発・生産・流通させることを目的
とし、各関係機関が連携を図りなが
ら支援して参りました。
この取組みも現在では、にかほ市
地域全体での連携を有する様にな
り、今後も同社をはじめとする各機
関と連携を図りながら「鱈しょっつ
る」を活用した地域ブランド化を進
めることにより、商工業者を含む地
域全体の活性化向上に繋げていきた
いと考えております。
下:にかほ市内
の飲食店
で、鱈の魚
醤を使用し
たメニュー
の一例
にかほ市商工会
経営支援課 三浦 氏
本事業は、にかほ市商工会の地域
活性化プロジェクトから誕生した新
事業活動で、連携事業者のみならず
地域全体をも巻き込んで展開されて
います。
また、同商工会は、本事業におい
ても秋田県総合食品研究センターと
ともに連携参加者として参画し、連
携事業者である秋田県漁業協同組合
とともに、それぞれが保有する互い
の強みを有効活用して事業を進展さ
せています。
このように、連携事業者だけでな
く地域支援機関も事業活動に積極的
に関与しサポートする体制が構築さ
れていますが、そこには単に事業と
して利潤を生むことの目標だけでな
く「地域の活性化にも貢献する」と
いう共通の思いが存在しています。
これこそが、有機的連携の要因で
もあり、当機構においてもその思い
を共有しつ
つ、当社収益
事業としての
確立化も目指
して支援に努
めて参ります。
東北本部
高橋チーフアドバイザー
17
山梨銘醸株式会社
山梨県北杜市
清酒造りのノウハウを活かした、米糀と米粉の
みが原材料の自然甘味料「糀糖」を開発・販売
地元の峡北米による米糀と、酒造用に米芯部まで削った際
に発生する米粉を活用した糖で、食物繊維とビタミン類が
多く含まれる健康的な自然甘味料「糀糖」を開発。直営の
カフェをオープンし、自然由来の糀糖のコンセプトや魅力
を直接消費者に伝えることにより新市場の開拓に挑戦。
●会社名 山梨銘醸株式会社
●代表者 北原 兵庫
●設 立 大正14年11月
●資本金 1,500万円
●売上高 4億2,100万円
(平成27年9月期)
●従業員数 16名(正社員)
●事業内容
日本酒の製造・販売
食品の製造・販売
飲食店の経営
●所在地
山梨県北杜市白州町台ヶ原2283
●URL
http://www.sake-shichiken.co.jp/
●T EL 0551-35-2236
●FAX 0551-35-2282
事業の概要
日本酒の製造技術を応用した新たな
山梨銘醸㈱では、寛延3年の創業
を製造する際に必要となる米糀の製
以来、一貫して日本酒醸造を行って
造技術に着目した。
収益源を探していた。そこで日本酒
きており、現在の社長は北原家12
代目である。明治13年に山梨を巡
幸した明治天皇の行在所となった木
造建築が、現在も当時のまま残され、
酒蔵として利用されている。
米糀製造の様子1
馬車時代の同社正門玄関風景
「七賢は、日本酒の新しい価値を
創造し、時代が求める美味しさを追
求します。」を経営理念とし、現在、
米糀製造の様子2
日本酒醸造業、食品製造業、飲食業
取引先の意見等を踏まえ社内で検
の三業態を商いの中心としている。
討した結果、地域資源である地元の
峡北米による米糀と米粉を活用した
糖で、砂糖に比べ食物繊維とビタミ
ン類が多く含まれる健康的な機能を
本社
●事業名
清酒造りのノウハウを活かした、
峡北米を原料とする糀糖及び糀糖
粉末の開発及び販売
●認定期間
平成26年3月∼平成29年9月
●地域資源名
峡北米・武川米
18
付加した商品の開発に着手し、加工
方法を確立した。本商品の開発は、
これまで十分に活用されていなかっ
た、酒造用として米芯部まで削った
同社の日本酒
際に発生する米粉の有効活用も狙っ
たものである。
本事業は、このように260年以上
<本事業着手の経緯>
の伝統ある清酒造りのノウハウを活
我が国における日本酒の生産量は
かし、地域資源である峡北米による
昭和48年度をピークに、現在では3
米糀と米粉のみを原材料とする自然
分の1程度にまで減少している。
甘味料「糀糖」を開発及び販売する
こうした中、同社では、保有する
ものである。
ロジェクトチームを組織した。
は、営業部門の人材不足など経営資
また社外には、北原専務、澤CAD
源の面から困難と考え、業務用の販
<中小機構との出会い>
のいずれとも旧知である、山梨県庁
路を開拓していくこととした。
同社と中小機構の関わりは、平成
の地域資源担当である産業支援課
食品メーカーの多くが来場する展
25年7月に同社が出展していた山梨
(現、成長産業創造課)の西子氏(現
示会への出展など販路開拓努力の結
中央銀行が主催する展示・商談会
「や
担当は望月氏)に県内支援機関との
果、大手食品メーカーや健康食品メ
まなし食のマッチングフェア」の会
取りまとめ役として、更に、地元北
ーカー、地元のパン屋などへの糀糖
場で、本事業の責任者である同社の
杜市商工会の向山氏に地域支援機関
の販売が決まっていった。しかしな
北原対馬専務と中小機構山梨県担当
として支援を依頼した。
がら、長期的かつ十分な量の取引に
の澤チーフアドバイザー (CAD)が出
このような支援チームを組織する
は至らず、北原専務と澤CADは、こ
会ってからである。
ことで、多くの支援機関や支援者が
の方針の延長線上では、当初計画の
その後、澤CADが北原専務を訪問
連携して支援していく体制を築くこ
年間100トンの販売にはならないだ
し、事業のビジョンについて意見交
とができた。
ろうと判断した。
換を行い、二人は事業化の可能性と
また、澤CADは事業計画の策定段
糀糖を販売するためには、消費者
発展性について強く認識するに至っ
階から現在まで、常に伴走して節目
に米糀と米粉による自然由来の甘味
た。
の判断のタイミングで相談相手とな
料があることを認知させて、新たな
澤CADから国の地域資源活用事業
った。
市場を造ることが必要であり、そし
の話を聞いて、試作中の糀糖の販路
事業計画の策定にあたっては、関
て、消費者の認知を得るためには、
開拓を模索していた北原専務は、地
係者が集まって、時には早朝からミ
糀糖に思い入れがあってその魅力を
域資源活用事業計画認定に挑戦する
ーティングを行い、米糀と米粉のみ
理解している同社が、糀糖のコンセ
ことにした。その背景には、北原専
を原材料とする自然甘味料「糀糖」
プトや魅力を直接消費者に伝えるこ
務と澤CADが旧知の仲であり、お互
の市場ニーズ、ターゲット顧客、既
とが必要との認識に達したからであ
いの信頼関係が醸成されていたこと
存商品と比較した位置づけ、商品コ
る。また、消費者の糀糖に対する認
も大きかった。
ンセプト、需要開拓の方針等を明確
知度が十分に高まることが、業務用
こうして中小機構のハンズオン支
にし、事業計画を具体化していった。
の販売にもつながると想定した。
援が始まった。
こうした社内外の関係者で構成さ
同社の経営資源を見直すと、同社
れたチームによるミーティングは、
には、経済的に比較的恵まれた消費
<地域資源活用事業計画認定
に挑戦>
月に2∼3回開催されることとなっ
者が年間6万人程度、酒蔵見学や日
た。同社のプロジェクトチームに加
本酒試飲・購入のために訪れていた。
北原専務の事業への想いや構想
え、様々な立場の支援者が連携した
そ こ で、 平 成26年7∼9月 限 定 で、
を、実現可能な事業計画として具体
ことにより、効率的かつ有効なブラ
消費者向けに同社内にカフェ「糀 s
化することが事業実施のために必要
ッシュアップ支援が可能となり、平
くらかふぇ」をオープンし、来店客
であると同時に、地域資源活用事業
成26年2月に地域資源活用事業計画
に大変好評であった。消費者の認知
計画の認定につながるとの認識を共
に認定され、本事業がスタートした。
度向上には継続的な店舗運営が必要
事業の展開
有し、具体的な事業計画の検討がス
と判断し、現在も継続して運営して
タートした。
<消費者の認知度向上の必要性>
まず、具体的な事業計画検討のた
販路開拓については、同社が日本
めのチーム編成を行った。社内に、
酒の製造・販売を行っている企業で
北原専務を統括とし、開発責任者の
あることから、自社で日本酒と異な
常務、さらに営業部2名からなるプ
る消費者に直接糀糖を販売すること
いる。
事業の推進体制
㛜Ⓠ䝿⿿㏸
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⿿㏸ጟェ
山梨銘醸(株)
角光化成
(株)
䚼䝛䝱䜼䜫䜳䝌䝅䞀䝤䚽
⤣ᣋ䠌ᑍຸ
㛜Ⓠ㈈௴⩽䠌ᖏຸ
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䝰䜻䝘㛜Ⓠ
料理研究家
糀 sくらかふぇの様子
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ᒜᲅ┬ၛᕝఌ㏻ྙఌ
ᒜᲅ୯ኳ㖗⾔
䜊䜄䛰䛝⏐ᴏᨥᥴᶭᵋ
ᨥᥴᶭ㛭
「糀 sくらかふぇ」では、糀糖の
試食のみならず、地元料理研究家と
୯ᑚᶭᵋ
タイアップした糀糖を利用したスイ
ーツやドリンクを提供している。
19
カフェは、新規の消費者に対して、
の消費者の糀糖に対する認知度を高
新たな商品である糀糖の特徴や魅力
めるとともに、消費者の実際の反応
を従業員自ら伝達する場になってい
を把握する場として、協力企業とと
る。さらに、消費者の意見や使い方
もに、「糀 sくらかふぇ」の横浜店
を把握するとともに、糀糖を利用し
をオープンした。
たレシピ開発の場としても重要な機
また、平成27年9月には、丸の内
能を果たしている。
ビルディング(東京都千代田区)で
開催された糀糖ファンとほぼ合致す
る 消 費 者 が 参 加 す る 展 示 会「Will
トリノでの展示会の様子
Conscious Marunouchi Festival
2015」に出展し、消費者向けの認
事業の成果
知度向上に力を入れている。
平成26年2月の認定から、約1年
半が経過したが、糀糖は年間6トン
程度の販売に留まり、目標の年間
100トンの売上にはまだ及ばない状
況である。平成27年9月末時点で糀
糖の累計売上高は約1,000万円に過
ぎないものの、徐々に伸びている。
消費者向けの糀糖の説明
消費者向け展示会への出展の様子
すでに糀糖のリピーター、中には
熱狂的ともいえるファンも獲得して
おり、糀糖を求めている消費者が一
<複数支援者の連携による支援>
定層いることは明らかとなっている
地域資源活用事業計画認定後も、
が、どのように広く消費者に商品そ
山梨県、北杜市商工会、中小機構の
のものの価値や使い方を伝えていく
チームとしての連携支援に加えて、
かは未経験であり、伝えることには
他の支援機関もそれぞれの特徴を活
時間がかかる。しかしながら、企業
かしながら連携して適時に有効な支
としては短時間で結果を残す必要が
援を行っている。
ある。 具体的には、やまなし産業支援機
そのような状況で、地域資源活用
構は、知財総合支援窓口のアドバイ
事業計画が認定されたことにより、
ザーが商標の取得や管理で支援して
ハンズオン支援で、多くの支援機関
いる。山梨中央銀行は、担当営業が
や支援者が連携して支援したこと
糀糖を県内の想定顧客に紹介してい
が、経営資源の乏しい中小企業であ
また、カフェの運営を通じて、上
る。山梨県商工会連合会は、丸の内
る同社にとって、経営資源を補うこ
図に示したように、消費者向けにわ
エリア(東京都千代田区)を中心に
とに繋がっている。また、ぶれるこ
かりやすく、糀糖の説明や効能や糀
店舗を構えるシェフのグループであ
とのない事業の遂行に結びついてい
糖ファンの実態を伝える資料を作成
る丸の内シェフズクラブに糀糖を紹
る。
した。
介している。
さらに、平成27年1月に、都市部
また、連合会事業の一環で、イタ
<今後の展開>
リア・トリノでの展示会「サローネ・
糀糖の消費者の認知度を向上させ
デル・グスト」に出展することがで
るとともに、販売量を増やして、糀
きた。本展示会では、自然な甘みが
糖の年間販売量を100トンにするた
する、原材料が明確で安心、米由来
めに、現在、直営糀糖専門店の展開
の発酵甘味料ということに喜びを感
を検討している。それは、「糀 sく
じるなどの感想を得られ、欧州にお
らかふぇ」横浜店や消費者が参加す
ける糀糖の事業化の可能性を感じる
る展示会での反応が良かったことか
こととなった。
ら、都会の消費者と直接触れるとと
糀糖の効能
もに、消費者が実際に購入できる場
「糀 sくらかふぇ」横浜店の様子
20
が必要と考えたためである。直営専
門店を展開するために、現状では足
りないカフェ運営ノウハウ、立地選
定ノウハウ、店舗装飾ノウハウなど
を自力で補うか、他社に委託するか、
これらのノウハウのある企業と連携
するか模索中である。
この様にして、糀糖の認知度を向
上させ、ファンを増やすことによっ
て、食品メーカーから強く望まれる
形での業務用の販売にもつなげてい
きたいと考えている。
また、糀糖のみならず、造り酒屋
がつくる調味料を、発酵の力で豊か
な食を楽しむ「ひとさじ糀」シリー
ズとして商品化し、こだわりの消費
者に提供していく予定である。
連携支援者のひと言
事業者のひと言
弊社にとって当該事業を経験でき
たことは糀糖の販売のみならず、今
後の経営責任を取る私にとってはか
けがえのないことでした。単独一社
では有することのないマーケティン
グ、ブランディング、PRの一連の流
れを支援機関の有識者の方々ととも
に作り上げることができました。結
果として地域資源活用事業計画認定
を受けることができましたが、その
事業計画を作る数か月の時間が大変
貴重なものであり、それ故、現在の
販売内容に対して迷いがないことも
事実です。当初は本事業を通して認
定を受けることが第一の目的であり
ましたが、認定を受けるまでに経営
者自身がどれだけ本気になれるかが
重要であり、その内容次第で会社全
体の行く先も大きく変えられるチャ
ンスでもある
のでしょう。
支援機関の皆
様には大変感
謝しておりま
す。
創業から260年を超える業歴を重
ねる老舗の山梨銘醸株式会社。今回
の取り組みは、同企業が永年大切に
培ってきた糀発酵技術と酒造りの精
米工程から生まれる米粉を有効に活
用した、これまでにない新しい健康
的な自然甘味料の開発と販路の開拓
でした。初めて支援会議に参加し、
試作品の試食を行った時「どこか懐
かしさを感じるやさしい甘さ」の糀
糖に感動したことを鮮明に覚えてい
ます。伝統の時間と社員の方々の熱
い思いが育んだこの糀糖の逸品が、
より多くの方々に世代を超えて末永
くご愛用され
ることを願っ
ております。
北杜市商工会
向山 繁樹 氏
「ひとさじ糀」シリーズ
支援者のひと言
専務取締役
連携体制の紹介
本事業は山梨県庁、山梨県内各支
援機関(北杜市商工会、山梨県商工
会連合会、やまなし産業支援機構、
山梨中央銀行)ならびに中小機構の
連携による総合的支援が行われた。
事業計画のブラッシュアップ、また
認定後のフォローアップの各段階で
複数支援機関が情報共有をして支援
を行っている。各支援機関の担当者
同士が信頼関係のもと、相互に情報
交換し、お互いにオープンな関係で
真摯に事業者の課題に取り組んでい
ることも成功の大きな要因といえる。
このように県内の支援機関が組織
的に一丸となって支援できた背景
は、県内支援機関の取りまとめ役と
北原 対馬 氏
連携支援者のひと言
山梨県では、商工団体や金融機関
など県内13の支援機関が連携して県
内事業者の新たな事業活動を支援す
る「中小企業経営革新サポート事業」
を実施しており、各機関が「山梨を
もっと元気にしたい」という想いを
共有し、協働する意識が醸成されて
います。こうした環境の上に北原専
務と澤CADの事業化に向けた強い想
いが加わり、今回の様な支援チーム
が構成できたことは、私達にとって
も素晴らしい
経験であり、
以降の案件に
おいても大き
なプラスにな
っています。
とても素晴らしいチームでした。
北原専務を中心に、山梨県の西子さ
んと望月さん、北杜市商工会の向山
さんとのチームは、お互いの信頼関
係のもと、本事業の成功に向けた熱
い想いを共有していました。時には
壁にぶつかったり、後戻りしたこと
もありましたが、チームで壁を乗り
越えた時の喜びは今でも忘れません。
こうした連携体制が構築できた背
景には、支援機関の担当者同士の日
常的な情報交換できる体制が構築さ
れていたことに加え、周囲を活かし
ながら謙虚にかつ的確に状況判断す
る北原専務の存在が大きかったと思
います。本事業の経験を契機に、企
業としてもさらなる飛躍を遂げられ
たら、支援者
として最高の
幸せです。
して山梨県担当者が支援チームに加
わり、常に打ち合わせに同席してい
たことが大きい。なお、本事例が契
機となって、山梨県では、県庁が中
心となって県内支援機関が連携して
支援していく体制が整った。
山梨県成長産業創造課
西子 氏 (前担当)
望月 氏
(現担当)
関東本部
澤チーフアドバイザー
21
株式会社金澤製作所
東京都品川区
シンプル構造で高性能なアイデア免震装置が、
東日本大震災から国宝の仏像を守り性能を実証
ボールベアリングと
減震パット
1ユニット
(台)
マーブルベアリング
(最小販売単位)
地震のエネルギーを吸収し免震を行う装置はシンプルで施
工も簡単。テーブルの対角線上に仕組まれたマーブル鋼球
が免震能力を発揮。装置の厚さは63㎜と薄型にもかかわら
ず1ユニット(0.8㎡)のプレートで耐荷重は1.2トン。超高
層ビルの長周期振動にも有効な優れた性能が注目を集める。
●会社名 株式会社金澤製作所
●代表者 金澤 光雄
●設 立 昭和14年12月
●資本金 1,000万円
●売上高 1億8,000万円
(平成27年6月期)
●従業員数 7名
●事業内容
土木建設機械設計・製作・販売(主
として、トンネルシールド工事エ
ントランス部地中変位止水システ
ム工事)
免震・制振装置(アブサーバー)
の製造販売施工
●所在地
東京都品川区西五反田7丁目7-9
●URL
http://www.kanazawa-ss.jp/
abserver/
●TEL 03-3491-6147
●FAX 03-3490-9297
事業の概要
らあるボールベアリングで振動を吸
<屋内の免震制振装置を
第二の創業に>
が転がり吸収はするものの、揺れが
㈱金澤製作所の業歴は長く創業
そこで、ボールをゴムの円柱の中
75年を数える。戦後間もなく若く
に入れて転がりを抑える方式を考え
して同社の事業を引き継いだ2代目
特許を申請した。しかし、振動を制
の金澤光雄社長は地下鉄トンネル工
御する効果は弱く試行錯誤の上に考
事や下水トンネル工事に威力を発揮
え出されたのが、マーブルベアリン
していたシールド工法の止水工事に
グであった。
目をつけ、公共工事の発展と共に同
マーブルベアリング方式は振動の
社を成長させてきた。しかし、公共
揺れを戻す効果があり、長周期振動
工事が減少する状況で何か関連する
に効果的であることが分かり、平成
事業に進出しなければと考えていた。
18年9月に特許を取得した。しかし、
アイデアマンである金澤社長はシ
ここからが研究開発の本番だった。
ールドマシンの振動制御の問題に関
ボールベアリング方式にしろマーブ
心を持ち研究を重ねる中で、世の中
ルベアリング方式にしろ、その大き
には免震や制振の装置は各種のもの
さ、マーブルの曲率、免震プレート
が開発されているが、その大半は建
(ベアリングを挟むプレート)の材
築構造物(ビルやマンション)を対
質や板厚、ボールを支える曲率等そ
象としており、屋内の備品等の安全
の組み合わせは膨大となり専任の研
性を担保する有効なものはあまり無
究開発者がいない同社は困った。
収する方式は、振動を受けてボール
収まらないという欠点があった。
いことが分かった。
<産学連携事業に発展>
本社
<開発の経緯>
そこで金澤社長はこの免震装置の
地震の多い我が国では耐震構造関
開発中に知り合いになったNPO法
連産業が伸びると思い、超高層ビル
人ものづくり品川宿(東京都品川区)
の長周期振動による屋内での振動制
の事務局長に相談したところ、都立
御に着目し研究を開始した。従来か
産業技術高等専門学校(東京都品川
事業の推進体制
●事業名
復元能力と減衰能力を兼備した免
震装置「abserver」の開発と事業
化
●認定期間
平成20年12月∼平成25年12月
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区)の教授を紹介され、実験や研究
田CADは面談で事業の概要を聞き、
ことにした。
で協力が得られた。
この免震装置はシンプルな構造であ
建設技術の公的研究所のXYZの3
同時に、免震プレートについては、
りながら、高度な免震機能を有し特
軸及び各軸周り回転の加震振動台を
以前から取引がありプレス加工のノ
許も取得しており、特にそのユニー
使い実験をしてもらうことになり、
ウハウのある、㈱野島角清製作所(新
クさに驚いた。
平成7年の阪神淡路大震災における
潟県三条市)の協力を得ることとな
鹿田CADは、新連携事業計画の認
神戸海洋気象台で観測されたデータ
った。さらに、ゴムパッド等の振動
定を目指して事業計画の作成に着手
を入力し、地震を再現して性能試験
吸収材については、吸収剤を開発し
するようアドバイスした。
が行われた。
ている㈱ソピー(東京都港区)の協
金澤社長は、行動力と実行力で商
振動台加速度はX軸が1100 gal、Y
力を得ることとなった。この免震装
品開発にリーダーシップを発揮して
軸が693galであったが、アブサーバ
置開発事業はそれぞれ専門の知見を
きたが、事業計画を作ることは初め
ー の 成 績 はX軸 が156gal、
Y軸 が
持つ企業や都立高専との産学連携に
ての経験であった。アブサーバーの
168galで そ れ ぞ れ1/7、
1/4で、最
発展した。
特徴の明確化、免震構造の図解、性
大変位も設計上は20cmであるが、X
能のデータ、競合品との比較など多
軸が13.6cm、
Y軸が11.1cmで十分に
岐にわたる検討が必要で戸惑いもあ
免震能力を持っていることが実証さ
ったが、鹿田CADのアドバイスを受
れた。
けながら事業計画書を作成し、平成
その2、知財戦略のアドバイス
20年12月に新連携事業計画の認定
同社は現在までも特許の取得には
を受けた。
熱心で、海外展開の計画があること
から、海外事情を考慮した知的財産
<中小機構による支援>
戦略を検討することが必要と判断し
新連携事業計画の認定に向けた事
た鹿田CADは、新連携事業の支援ツ
業計画のブラッシュアップ支援から
ールである地域活性化支援アドバー
始まり、事業計画実現に向け実践的
ザー派遣事業を活用することにし
なフォローアップ支援が鹿田CADを
た。弁護士・弁理士から以下のよう
中心に開始された。
な知財戦略のアドバイスを得て、戦
その1、振動試験装置の導入見送り
略的な思考で知的財産の取得を進め
都立高専の協力は実験だけでな
ている。
く、客先に同行して説明していただ
①参入障壁を作るためには、意匠
いたり、機械学会で研究発表してい
登録も重視すべきである。意匠
ただくなど大きな協力を得ていた。
の方は権利の範囲が広いのでブ
しかし、都立高専の振動試験機は
ロックしやすく、特に中国対応
一軸の簡易振動台であったため、実
では意匠登録が有効である。
際の観測地震波を入力して試験する
ことはできなかった。この状況を打開
するために3軸の振動試験機と加震
②「abserver」という名称やロゴ
も商標登録をすべきである。
③地震の多いアジア特に中国、米
機を購入する計画が検討されていた。
国といった国を意識しPCT出願
しかし、試験ができればい良いの
(国際特許出願)すべきである。
事業の展開
ではなく、入力地震波の学術的検討、
④出願中、取得済みを含めすべて
試験装置にデータを入力する地震波
洗い出し、形状、材質ごとにも
<新連携事業計画認定に発展>
のコンピュータ制御、コンピュータ
列挙し予算の範囲内での優先順
新しい国の支援制度である、新連
に記録されたデータの解析評価等の
位を検討すべきである、という
携事業を知り、平成19年9月に品川
エビデンスを得るための機器の活用
ものだった。
宿の事務局長、都立高専の教授、金
は専門性が必要であるため、地震工
その3、営業体制の整備
澤社長、エンジニアリング担当マネ
学の専門家が誰もいない企業が導入
東日本大震災の後には首都圏の県
ージャーの4人で関東経済産業局を
しても使いこなせない。
庁のサーバーが転倒したという情報
訪問し新連携制度の概略を聞いた。 エビデンスの取得は大学や専門の
を得て、早速営業に駆け付け説明を
そこで中小機構関東本部を紹介さ
研究機関に委託した方が得策との鹿
した結果強い興味を持ってもらえた
れ、同機構の鹿田チーフアドバイザ
田CADからのアドバイスを受け、高
が、その後のフォローを行わなかっ
ー(CAD)に会うことになった。鹿
価な振動試験機の導入計画を見送る
たため入札には呼ばれなかった。営
23
業力の弱さを痛感し営業体制強化の
事業の成果
ルに際し、展示
ける安定性の確
ポテンシャルの大きさに反して営業
<東京都トライアル発注
認定制度に採用>
体制が弱いと判断し、営業戦略マッ
東京都のトライアル発注認定制度
になった。
プを作成して市場ジャンル別に営業
は平成21年度から開始された制度
同博物館は各
体制を考える提案をした。
であるが中小企業の新規性の高い優
社の免震装置を
金澤社長は、営業戦略マップを検
れた新製品の普及を支援するため、
比較検討した結
討する中で、代理店経由で販売する
東京都が新製品を認定しPR等を行
果、アブサーバーがマーブルタイプ
標準品と特注品で設計施工の必要な
うとともに、その一部を試験購入し
の鋼球に支えられ免震するシンプル
直販品に区分けした営業体制の整備
て評価するもので産業労働局で毎年
で効果的な構造を評価し採用される
など具体的な検討を進めた。また、
公募している。鹿田CADはこの制度
ことになった。
営業戦略に対応するために、新規人
に認定されれば、アブサーバーの性
施工直後 東日本大震災に襲われ
材の採用も含め戦略的営業体制の構
能を公的にアピールすることになる
たが、アブサーバーがしっかり機能
築を検討している。
と考え、申請することを強く勧めた。
し国宝には一切のダメージがなかっ
しかし、最終需要家への営業の経
申請の結果採用されたのは、東京
た。このことがアブサーバーの評価
験がないだけに組織的営業のための
都交通局でバスの乗降客の乗車券売
をさらに高めた。
人事制度、給与体系などが確立され
上データの電磁記録媒体読み取り装
てなくその検討が急がれている。
置である。記録媒体を読み取り装置
重要性を認識させられた。
鹿田CADは、アブサーバーの商品
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ジャンル
産業機械向け
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電算室
コンピュータ・
美術・工芸品
医療器械向け
アクセスフロ
サーバー向け
向け
ア
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保が大きな課題
<象牙彫刻美術館にも採用>
に挿入する際の振動に強
伊豆高原にある「象牙と石の彫刻
く、地震の際も転倒しない
美術館」は大型の象牙彫刻がある世
ことが必須である。このこ
界最大の象牙彫刻美術館である。当
とは、
コンピュータのサーバ
然、地震対策が重要課題となるが、
ー類にも同じことが言え、
今
アブサーバーのホームページへの掲
後のサーバーのビジネス展
載がきっかけで同美術館から引き合
開の足掛かりとなった。
いがあり、施工が簡単なことや東日
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物の地震時にお
本大震災発生時における国立博物館
<自動車メーカーで
試験採用>
での実績が評価され142ユニットが
採用された。
某自動車メーカーのエン
その4、各種展示会出展支援
ジン製作工場で、アルミ鋳造ライン
今後の営業展開では、性能を実際
の耐震改修工事に際して溶解炉の免
<仙台市博物館室生寺展に次い
でサントリー美術館でも採用>
に見てもらって営業に繋げることが
震を検討していた。調査でアブサー
平成26年8月に仙台市博物館(仙
重要である。しかし、同社は展示会
バーの性能評価を知り、テストケー
台市)で開催された「東日本大震災
出展の経験がなかったので、鹿田
スとして自重10tのアルミ溶解炉の
復興祈念特別展『奈良国宝室生寺の
CADはパンフレットの作り方、サン
基礎に1ユニット耐荷重5tのアブサ
仏たち』」では,室生寺の国宝や重
プルや展示物の持ち込み方、名刺の
ーバーを4ユニット試験採用した。
要文化財が東北地方で初めて展示さ
管理方法、DVDやCDの作り方など
れた。中でも「十二神将立像」は、
具体的なサポートを行った。
初めて十二体が揃って仙台まで持ち
例えば、展示会でのデモンストレ
出されるという
ーションでは、振動実験用ペットボ
貴重な展覧会と
トルの水に赤と青の色を付けて免震
なった。それだ
効果がはっきり分かるようにするな
この装置は平成23年の東日本大
けに、主催者は
どの工夫をアドバイスした。
震災で有効に機能し、アルミ溶解炉
地震対策には神
その結果、中小企業総合展等の出
の安全性を実証することになった
経を使い、各社
の装置を比較検
展した展示会では大きな反響を得
た。事業計画に従い戦略的な営業展
開が高い成果に繋がっている。
24
<東京国立博物館の
国宝仏像展示に採用>
討した結果、施
我が国で最も歴史ある東京国立博
や実績が評価され同社のアブサーバ
物館(台東区上野公園)
のリニューア
ーが採用され、十二体の仏像の下に
工が簡単なこと
<今後の事業の課題>
取り付けられた。このことがきっか
けで、平成26年10月にサントリー
1、営業戦略を再構築する
美術館(東京都港区)で開催された
サーバー、美術館・博物館、大学
「高野山開創1200年を記念した『高
等理化学機器使用機関、危険物倉庫
野山の名宝』展」に出展された運慶
などそれぞれ市場特性が違っている
作「八大童子像」にも採用された。
だけに市場ごとに戦略的対応が必要
である。特に、特注品の営業では設計
<危険物格納倉庫に採用>
デザイン能力が必要になる。美術品
政府機関から危険物格納倉庫への
などは地震対応が見えないようなデ
提案公募の要請があった。従来、危
ザインが問われる。早急に、営業体
険物倉庫の地震対策は建物の安全性
制やデザイン設計体制の充足を図る。
を担保するもののその内部の棚等の
2、設計のマニュアル化による組織
対応の強化
安全性については十分ではなかった。
今回の要求仕様は1007㎡という
現在は装置の設計は社長の経験に
大面積を免震して安全性を担保する
依存しているが、事業の拡大と共に
という特殊なものであったが、提案
社長以外でも設計を行えるような組
の結果、アブサーバーの高い免震能
織対応が求められる。そのためには、
力が評価され受注につながった。今
様々な振動パターンとマーブルの曲
後この種の受注可能性に明るい見通
率の関係を実験し設計マニュアル化
しとなった。
する必要があり、今後、公的試験研
事業者のひと言
扁平なマーブル型のボールを組み
込んだ「復元力と減衰力を兼備する
免震装置」を思い付き、
「abserver(ア
ブサーバー)
」と名付け、新連携に
申請することを考えた時点から、中
小機構並びに関東経済産業局には大
変お世話になっています。
地震から大切な財産を守るという
免震装置の重要性は広く認識されつ
つあり、お陰様で引き合いも多く寄
せられ、売り上げも伸びています。
良い連携企業にも恵まれ、今後は
製品のコストダウンと組織的営業の
強化、そして後継者育成に、これまで
以上に注力したいと考えております。
究機関や大学などとの連携を強化す
<最近の動きと実績>
る必要がある。
アブサーバーの実績が評価される
3、ブランドイメージ戦略の推進
とともに、製薬会社のサーバーや美
商品の性能は最も重要であるが、
術大学の仏像展示用、さらには東京
事業を拡大しabserver(アブサーバ
都水道局の水質検査室内の検査機器
ー)というブランドを戦略的にアピ
用など大口商談も受注してる。
ールすることが重要である。カタロ
平成27年3月までの用途別実績は
グ、
ホームページの充実、
ユニホーム、
⑴サーバー用
83ユニット
営業車へのabserverの表示、本社事
210ユニット
務所ハサードの改善と起震車などを
9ユニット
整備し、事務所の一角でいつでもア
1007㎡
ブサーバーの効果を確認できるよう
⑵美術品用
⑶その他
⑷特注
顧客別にみると、企業、博物館、
なショウルームを作るなど、
アブサー
美術館、官庁、大学となっている。
バーの露出作戦を考える必要がある。
売上は、認定後4年間で1,140万円
4、「耐震空間創造サービスビジネ
ス」への飛躍
と目標には達していないが、着実な
取 り 組 み が 実 を 結 び5年 目 に 入 り
将来はabserverというモノの販売
7,000万円を超える受注があり、平
から発展し、耐震に関するコンサル
成27年3月までの売り上げは累計で
ティングやメンテナンスなどをサー
1億円を超えた。
ビスビジネスとして付加し、
「耐震
代表取締役
金澤 光雄 氏
支援者のひと言
本事業は支援者として、申請段階
から5年後の終了までを一貫して担
当させて頂きました。
社長さんの「やり手経営者」とい
う第一印象は、そのうちに「人望が
厚く実行力のあるアイデアマン」に
変わっていきました。ご自身のアイ
デアを立派な商品にまで育て上げ、
累計1億円以上を売上げることは簡
単ではありません。それが可能にな
ったのも、ここへきて右肩上がりに
売り上げが伸びているのも、経営者
の卓越したアイデアと熱意の賜物と
思います。
地震国に不可欠な「アブサーバー」
の更なる普及を願っています。
空間創造サービスビジネス」とでも
いうサービス機能を付加した企業へ
の進化が期待できる。
認定事業の売上推移(単位:百万円)
100
50
0
H23年度
H23年度
H24年度
H25年度
H26年度
関東本部
鹿田チーフアドバイザー
25
松岡コンクリート工業株式会社
岐阜県大垣市
画期的なハニカムボックス工法の地下貯留槽
が、ゲリラ豪雨の洪水被害から都市を守る
新工法(ハニカムボックス工法)のコンクリート製雨水地
下貯留槽が、有効な土地利用、簡易施工、耐震構造を実現し、
都市の雨水対策ニーズに適合。事業者連携で製品ラインア
ップの拡充と全国製造・販売体制を構築し、売上拡大を実現。
●会社名 松岡コンクリート工業
株式会社
●代表者 松岡 重吉
●設 立 昭和25年1月
●資本金 3,000万円
●売上高 51億6,000万円
(平成27年4月期)
●従業員数 160名
●事業内容
コンクリート製品の開発を通し
て、災害の発生を未然に防止する
為の製品開発、各種のインフラ整
備、生態系や景観に配慮した環境
保全。その他ヒートアイランド抑
制対策の塗料開発等
●所在地
岐阜県大垣市神田町1丁目6
●URL
http://www.cm-con.co.jp/
●T EL 0584-62-5007
●FAX 0584-62-5265
事業の概要
が都市化の影響で大幅に減少し、プ
ラスチック製の地下貯留槽が多く利
<事業を取り巻く環境>
用されてきた。しかし、製品強度に
近年、各地で発生している記録的
よる荷重制限や維持管理の困難性等
な集中豪雨は洪水や土砂くずれなど
の問題が発生した。
の被害をもたらしている。特にコン
そこで松岡コンクリート工業株式
クリートに覆われた都市部では被害
会社は、コンクリート製のハニカム
が深刻であり、雨水処理システムの
ボックス(コンクリート製のパーツ
脆弱さが浮き彫りになっている。
をミツバチの巣構造に組み合わせて
また、宅地開発等でも地表がコン
施工するため ハニカムボックスと
クリートやアスファルトで覆われ、
名付けた製品)を開発した。
森林や水田・ため池がなくなること
本製品を連結させることにより、
により、下流への流出が増大し、低
公園や駐車場等、広さや深さの仕様
平地での氾濫被害が増加している。
条件にフレキシブルに対応すること
国土交通
ができ、車両総重量25トンまで耐
省では「雨
えられる構造となった。工期短縮も
に強い都市
可能で、M6.5程度の直下地震にも
づくり支援
対応する商品である。
事業」を創
コンクリート製雨水地下貯留槽の
設し、
「雨水
製造・施工を行う本事業の推進体制
の排除」によるハード対策を主とし
は、平成23年2月、同社と有限会社
た方策から、
「貯留浸透による流出
広川(和歌山県有田郡広川町)の2
抑制」によるハード対策と住民の災
社が連携して事業の基礎を築いた。
害対応を支援するソフト対策を組み
その後平成24年6月からは株式会社
合わせた総合的対策を実施している。
ヤマックス(熊本市)が加わり、製
都市開発による雨水被害
品ラインアップの拡充と全国製造・
<事業開始の経緯>
雨水対策としては、従来型の溜池
販売体制を構築した。
本事業で製造・販売する主な製品
本社工場
●事業名
有効な土地利用や簡易施工が可能
であり、地震対策も施してある雨
水地下貯留槽の製造・販売事業
事業の推進体制
ᖲᠺ 23 ᖳ 2 ᭮
ᮿᒱࢤࣤࢠ࣭ࣛࢹᕝᴏ㸝ᰬ㸞
ᮿᒱࢤࣤࢠ࣭ࣛࢹᕝᴏ㸝ᰬ㸞
஥ᴏ⟮⌦࣬⿿㏸࣬㈅኉
஥ᴏ⟮⌦࣬⿿㏸࣬㈅኉
●認定期間
平成23年2月∼平成27年3月
ᖲᠺ 24 ᖳ 6 ᭮
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㸝᭯㸞ᗀᕖ
ቌ⢋๠ᥞ౩࣬⿿㏸࣬㈅኉
㸝ᰬ㸞࣏ࣕࢴࢠࢪ
ኬᆵ࣍ࢴࢠࢪ⿿㏸࣬㈅኉
26
は、
プレキャ
などが明確化した事が、後の販売活
ストコンク
動に大きな成果をもたらした。
リート製の
貯留材(以
下、「 ハ ニ
カムボック
ハニカムボックス製品
ス」)及び、
連結金具他
本事業の全体イメージ
付属部材、
CD側溝の一例
雨水を流入
新技術の活用促進のための情報提供
させるため
システム)へ登録し事業PRを開始
の側溝(以
した。
下、CD側溝
中小機構の新連携事業を担当する
<事業の新規性検証>
という)で
平松プロジェクトマネージャー
(PM)
製品の新規性として特徴的なの
現場での施工の様子
あり、これ
は、新事業に取り組む中小企業者の
は、ハニカムボックスの形状である。
らを用いて、雨水貯留浸透施設を構
情報を得るため、平成22年11月に
頂版・底版・控え壁を薄肉部材とす
築するものである。
「建設技術フェア2010 in 中部」を
ることで高い空隙率を有する構造と
訪れていた。そこで同社と出会い、
なっている点が最大の特徴であり、
事業の展開
「新連携事業」についての紹介を行
製品の強みである。
った。
これにより限られた範囲で、より
<製販連携を開始>
同社ではハニカムボックス工法の
多くの水量を貯留することが可能と
同社は、平成17年より貯水施設
知名度を高めて全国に販売したい意
なった。また、同時にコンクリート
に必要なハニカムボックスの研究開
向を持っていたため、中小機構の事
を型に流し込む際に必要な振動の与
発に取り組んでいた。開発当初は均
業計画策定支援を受けることによっ
え方についても、同社の開発した新
等にコンクリート材料が混ざらず製
て、計画的に全国展開ができるとの
方式により振動騒音をこれまでの
品不良が起きるなど製造方法に問題
期待が高まり、新連携事業計画認定
2/3まで抑えることが出来、作業環
を抱えていた。そこで、同社と以前
に向けチャレンジすることとなった。
境を大きく改善できることとなった。
から取引があり、高流動コンクリー
また、施工現場においては、ハニ
ト製造にノウハウを持つ㈲広川と製
<中小機構の支援開始>
カムボックス本体と側壁パネルを連
造面の協力関係を構築し、品質に関
新連携事業計画の認定を受けるた
結金具により一体化するだけの簡易
する課題を解決した。
めには事業計画の策定が必要であ
施工を開発し、現場作業時間が短縮
一方販売面では、岐阜県に拠点を
り、中小機構の平松PMによる支援
した。
置く同社にとってハニカムボックス
が開始された。
の移動コストを考えると販売エリア
平松PMは同社が同事業の現状分
<製品の販売可能性確認>
の拡大が容易ではなかった。㈲広川
析が不十分であると感じ、新規性検
市場ニーズを明確化するために関
とのハニカムボックス製造協力を機
証、販売可能性確認、信頼性確保等
連する法規制等の調査を開始した。
に、両者で販売エリア拡大を模索し、
の現状分析を実施した上で事業計画
雨水震災に関わる法律としては、
「特
和歌山県に拠点を置く㈲広川との製
を作ることをアドバイスした。また、
定都市河川浸水被害対策法(平成
販連携が開始された。
マーケティングの観点も不十分であ
15年6月に制定、平成16年5月に施
こうして両者が連携することで2
るため販売促進のためのPR戦略に
行)」があり、河川周辺の指定地域
工場でのハニカムボックス製造と同
ついてもアドバイスを開始した。
の開発時に雨水貯留浸透施設の設置
時に、中部・関西方面での販売エリ
こうして平松PMと同社は協議を
義務や浸水被害の防止を図るため、
ア拡大が実現した。この2者連携が
重ねる中で、本事業商品の特徴、新
一時的な雨水の貯留や地下への浸透
後の全国展開へ向けての第一歩とな
規性、市場ニーズや市場規模の明確
についての努力目標が定められてい
った。
化、さらに他社の雨水貯留装置との
ることが明らかとなった。
比較優位性など本事業の全体像を明
さらに、製品競争力を確認するた
らかにしていった。
め「ハニカムボックス」と競合関係
同社は雨水地下貯留槽の関連特許
これらの事業計画作成のプロセス
にあるプラスチック製品、プレキャ
(第4209827号)を取得した。そし
を経て、これまで気づかなかった製
スト製品との比較調査を行った。
て、NETIS(国土交通省が運営する
品特性の客観的評価や販売促進方針
これ等の比較の結果、
「ハニカム
<中小機構との出会い>
27
ボックス」は、他社の製品に比べ、
けでは雰囲気が伝えにくいと判断し
(夏休み期間内完了)などが評価さ
コスト面で30%近く削減でき、施工
た平松PMの、1/10スケールの模型
れ、本事業は順調に推移してきた。
日数も短縮することができることが
づくりのアドバイスを受けて、事業
判明した。また、作業環境、安全性
者は机上で組み立てる説明方法を実
の面でも優位性があり、熟練作業者
現した。
販売拡大に伴う商品の問い合わせ
に依存することなく施工が可能な製
このように平松PMの支援を受け
が増えるにつれ、既存の製品ライン
品であるとを確信した。
て、事業計画を完成させた。そして、
ナップに無い大型地下貯留槽(高さ
平成23年2月に同社と㈲広川の2社
3m以上のハニカムボックス)への
による新連携事業計画認定を受ける
需要が高まってきた。その理由は、
ことが出来た。
都市部における地下貯留槽ニーズの
<本事業の信頼性確保>
建設業の公共工事では採用基準の
<進化する顧客ニーズ>
拡大である。
評価として、工法の信頼性を重視す
る傾向が強い。そこで同社のハニカ
<順調な売上の伸長>
雨水は一時貯留した後に周辺の河
ムボックス工法も信頼性確保のた
㈲広川との「新連携事業計画」が
川等へ排水することとなる。この場
め、平 成 20
認定されたことで、セメント新聞や
合、地下深い水槽からの排水には大
年4月、
国土
週刊ブロック通信などパブリシティ
型ポンプ活用などのランニングコス
交通省の外
メディアからの取材要請が来るよう
トが必要となる。そのため浅く広い
郭団体であ
になった。平松PMのアドバイスで、
エリアでの貯留槽が理想であるが都
る社団法人
それらの業界紙に掲載された内容や
市部での狭い土地の場合は大型(深
雨水貯留浸
施工実績をリーフレットにまとめ、
い)貯留槽の設置が余儀なくされる。
透技術協会
PR材料とすることにより、公共工
近年、都
による「雨
事、民間工事向けへの営業活動が活
市部で発生
水貯留浸透
発化した。
するゲリラ
技術評価認
さらに平松PMは受注に影響力の
豪雨も大型
定」を受け
ある建設コンサルタントへのアプロ
化ニーズを
た。
ーチを重点的に行うことをアドバイ
後押しする
スしたところ、大型受注に繋がる事
理由の1つといえる。
雨水貯留浸透技術
評価認定
<PR戦略の策定>
都市部における洪水被害
が多くなり、商品認知度も高まり、
<大型化への取り組み>
本事業の課題である製品知名度ア
事業は順調に推移した。
ップについても、平松PMと検討し
販売実績としては大手スーパーマ
大型ハニカムボックスを開発する
以下の戦略が立てられた。平松PM
ーケットの駐車場や電力会社研修施
に当たり、社内での検討を進めたが、
は建設業の専門家が情報収集のため
設、老人介護施設等に採用された。
研究費用や製造コスト、運搬コスト、
に購入する業界紙への記事掲載、シ
スーパー等の民間需要開拓では当
構造計算等、非常に多くの課題があ
ステム製品のカタログ作り、専用ホ
初、安価なプラスチック製雨水貯留
ることが分かった。
ームページの立ち上げなどをアドバ
槽と競合することが多かった。しか
例えば、同社には高さ2m程度の
イスし、同社は販売促進計画を作成
し貯留槽内へ入り込んだ土砂の排出
ハニカムボックスを量産できる設備
し次々と具体化した。
問題が起き、作業員が中に入って土
があるが、3m以上の大型製品を製
展示会での演出方法についても
砂を直接排出できる同製品がメンテ
造するには、すべての周辺設備(ク
「製品模型」を使ってプレゼンする
ナンス性でリードでき受注を増やす
レーンや鉄筋加工設備)の改良のみ
方法を考案した。具体的には、ハニ
ことができた。
ならず、作業人材の教育や確保など
カムボックスの優位性はカタログだ
が必要となる。
平松PMは、大型ハニカムボック
スの開発には、強度試験を行い耐震
評価データを取得する必要があり、
設備環境が整う地元大学での実証試
験への取り組みをアドバイスした。
同社は、3m以上の試作品開発ま
作業員が入れる点検孔
ハニカムボックス模型
28
では成し遂げたものの、運搬コスト
や人件費などを検討した結果、同社
公共工事についてもメンテナンス
と㈲広川が保有する経営資源(設備
の容易性のみならず工期の短縮性
面、技術面等)だけでは大型製品の
量産は困難であると判断した。
を製造・販売することができるよう
になった。
<新たな連携体の構築>
大型化を模索した結果、平成23
年8月 貯 留 槽 の 強 度 計 算 や 製 造 技
術・ノウハウを持っている㈱ヤマッ
クスに大型製品の開発を相談した。 ㈱ヤマックスは、高水準技術と厳
格な品質管理から生み出される土木
用・建設用コンクリート二次製品の
3.5mハニカムボックス
高シェアを誇る。また、青森県、岩
手県、埼玉県、九州に生産拠点を有
<販売エリアの拡充>
しており、輸送面でも大型船舶を活
用できる強みを有していた。
㈱ヤマックスが有する東北、関東、
㈱ヤマックスは、同社のハニカム
九州、沖縄への販売ルートが加わり
ボックスが製造・施工面で優れてい
本事業の全国販売体制が構築された。
ることを承知していたことから、大
売上実績も計画累計額8億1,900万
型ハニカムボックスを共同で開発す
円を上回る実績累計額8億6,898万円
ることに賛同した。
を達成することができた。
事業者のひと言
近年、国内の気象状況が変化する
中で豪雨対策製品である雨水貯留槽
への需要が高まっています。新連携
事業計画認定によって、ハニカムボ
ックス工法の雨水貯留槽を全国的に
認知してもらうことができ、受注・
販売を拡大することができました。
今後は市場ニーズに対応するた
め、連携体と共に更なる改良を進め
ていきたいと考えています。
中小機構の皆様には新連携事業計
画の策定におけるブラッシュアップ
や認定期間内におけるフォローアッ
プ支援では、多大なるご支援を頂き
有難うございました。
㈱ヤマックスが新連携事業メンバ
<製造拠点の拡充>
ーに加わるためには、新連携事業計
画の変更申請が必要となる。
全国販売体制が構築されたことで
平松PMは、㈱ヤマックスの本社・
連携体全体での信頼性も格段に増
工場を視察し、大型ハニカムボック
し、生産拠点も全国に増えている。
スの製造予定ラインや製造方法等の
その結果、連携3者の製造拠点以
技術面や設備面を有していることを
外に新潟、島根、山口、東京にまで
現場で直接確認した。さらに、連携
ハニカムボックスの製造希望企業が
事業をスムースにするため連携体同
増え、単年度売上も平成27年度で
士の役割分担や活動エリア、製造製
は7億円を超え、まさに製販連携の
品の大きさ範囲などを再度明確化す
全国展開が実現したといえる。
るための規約作成支援を行った。
こうして松岡コンクリート㈱、㈲
<今後の展望>
広川、㈱ヤマックスの3者による新
次なる目標は貯めた雨水の有効活
たな連携体が構築され、平成24年6
用である。雨水活用の幅は「防火用
月に再度新連携事業計画の認定を受
水」「樹木散水」「非常時飲料」など
けた。
大きい。
平成28年度は同社を含めた製販
事業の成果
連携7社で雨水の有効活用に係る研
<製品のラインナップ充実>
ジに向けた都市型環境ビジネスの構
3者連携の結果、従来の小型・中
究会を立ち上げ、新たな事業ステー
代表取締役
松岡 重吉 氏
支援者のひと言
松岡社長から「是非、新連携に申
請したい。ご支援宜しくお願いしま
す。」との依頼を受け、支援が始ま
りました。限られた時間の中で、松
岡社長を中心に連携体と機構担当者
が協力し、工場ラインや雨水貯留槽
の現場の視察、建設業界の取引慣例
を聞く中で、連携体の本事業に取り
組む意欲を強く感じました。
連携体と機構が密接な関係を構築
できたことにより、計画通りの実績
を上げることに成功しました。本事
業が中部のモデル事業になるように
中小機構として支援を行っていきた
いと思います。
築を目指している。
型に加え、大型のハニカムボックス
認定事業の売上推移(単位:百万円)
400
200
0
22年度
23年度
24年度
25年度
26年度
中部本部
平松プロジェクトマネージャー
29
寺井レース有限会社
石川県能美郡川北町
レース生地製造業者が開発した自社ブランド
の防草植栽シートで、
異業種分野の開拓に挑戦
防草植栽シート「ネガトール」
創業以来レース生地、加工糸などの繊維製品を製造・販売
してきた事業者が、業績の回復と安定を目的に、産業資材
分野への進出をめざしレース編み技術を活用した防草植栽
シート「ネガトール」を開発。これまで全く取引経験がな
い異業種分野での販路開拓に手探りの挑戦。
●会社名 寺井レース有限会社
●代表者 井波 秀俊
●設 立 昭和39年11月
●資本金 400万円
●売上高 1億900万円
(平成26年12月期)
●従業員数 8名
●事業内容
レース生地、加工糸、工業用資材、
防草植栽シートなど繊維製品の製
造・販売事業
●所在地
石川県能美郡川北町田子島い32
●URL
http://terailace.com/
http://negato-ru.com/
●T EL 076-277-1511
●FAX 076-277-1315
<本事業に取り組む経緯>
事業の概要
寺井レース㈲は昭和39年の設立
<石川県繊維業界の概要>
以来、国内のレース生地などの問屋
石川県は日本を代表する合成繊維
やメーカーを取引先として、レース
の産地であり、長らく委託加工を通
生地、加工糸、工業用資材などの繊
じて繊維産業の「川上」である大手
維製品を製造してきた。設立当時は
原糸メーカーとともに歩んできた。
カーテン用の柄の入ったレースの製
戦後の発展過程を振り返ると、繊
造を行っていたが、技術開発や新製
維産業は石川県経済を常にリードす
品の研究・開発を重ねながら同業他
る産業として他産業をけん引してき
社との差別化を図ってきた。特にレ
た。それは、原糸メーカーから委託
ースを編み立てる機械で同社独自の
される糸を織物などへの賃加工や、
生産品や生産方法を開発するのを得
産元商社からの生産加工などの受注
意としており、「他社の不可能を可
量が豊富で安定していたためであっ
能にする!」 を理念に掲げ、これま
た。
で不可能とされていた短繊維の編た
しかし、バブル経済崩壊後の「失
てや、セーターの原料となる糸のな
われた10年」以降、グローバル化
かでもラッセルモール(毛のはえた
の進展などにより量産型委託加工産
糸)の新しい編組織の製造方法を開
地としての機能は大きく低下した。
発し、製法特許を取得するなどして
全国的にみても、国際分業体制の構
きた。
築が進み、大手合繊メーカーが中国
しかし、繊維製造業の衰退に伴い
やASEAN諸国に生産拠点をシフト
同社の業績も下降の一途をたどり、
した結果、国内の繊維加工数量は
ピーク時の売上高に対し、平成22
20年前に比べほぼ半減するなど、
年には約60%減となるまでに落ち
繊維業界を取り巻く環境は大きく変
込んだ。このように衣料分野が縮小
化している。
するなか、同社は今後生き抜くため
寺井レース 工場
●事業名
編レース技術を活かした防草機能
の高い植栽シートの商品開発と販
路開拓事業
●認定期間
平成24年2月∼平成28年12月
▴ᕖ┬⦼⥌⏐ᴏ䛴⏍⏐㢘᥆⛛
㻗㻏㻓㻓㻓൦ළ
㻖㻏㻓㻓㻓൦ළ
㻕㻏㻓㻓㻓൦ළ
㻔㻏㻓㻓㻓൦ළ
●地域資源名
レース
㻓൦ළ
㻔㻜㻚㻘ᖳ
30
㻔㻜㻛㻘ᖳ
㻔㻜㻜㻘ᖳ
㻕㻓㻓㻘ᖳ
㻕㻓㻔㻖ᖳ
には従来の衣料向けを中心とした生
から手をつければよいのかわからな
地などの開発・製造だけではなく、
い状態で困難が予想された。
産業用資材をはじめとした非衣料分
そこで、担当CADは中小機構とと
野の用途開発が不可欠と考えた。
もにISICO、連合会、商工会、石川
そのような中、平成21年10月に
県商工労働部を加えた支援体制をつ
福井県の農機具販売業者よりヒメイ
植栽から1か月後
くり、認定計画書の作成を支援する
ワダレソウを植栽するシートに関す
ことにした。
る相談を受けた。
認定申請書作成においては、防草
業者は法面や畦道に織物シートで
シート市場に関する資料の収集や本
防草措置を施し、ヒメイワダレソウ
事業品のコンセプトや製造工程を解
を植栽するという事業を行っていた
説するイラストなどの資料作成、事
が、「根がつかない。」、「透水性が悪
植栽から2か月後
いため、もぐら被害にあう。」 とい
う問題点があった。その原因は建設
援機関の助言・助力を得て解決する
ことができた。こうして本事業は平
農業分野で用いられる繊維資材は隙
事業の展開
間の少ない織物シートや隙間のない
フラットなポリエチレンシートが主
業計画作成等に苦労したが、上記支
成24年2月に地域資源活用事業計画
の認定を受けた。
<中小機構との出会い>
流であったためであった。
平成23年、同社は本事業で 「い
<支援会議の発足>
同社は編みレースの技術を生か
しかわ産業化資源活用推進ファンド
認定後の事業展開においても課題
し、その問題点を解決できないかと
事業」 への申請を行い採択され、製
は山積していた。特に、ターゲット
考え、植栽防草シート「ネガトール」
法特許申請や海外市場の販路開拓調
として想定した土木や農業での活用
(以下、「本事業品」 という)を開
査等で石川県産業創出支援機構(以
に向けて、それらの市場への販路開
発した。本事業品は、機械上でカッ
下、「ISICO」という)の支援を受け
拓が急がれた。このため、本事業を
トした幅7ミリのテープ状のポリエ
た。販路開拓についても、ISICOや
支援する目的で改めてISICO、商工
ステルシートを独自の技術でねじれ
これまでも同社にさまざまな経営支
会、連合会、中小機構の4者による
ないように挟み込むため、水や空気
援を行ってきた地元の川北町商工会
支援体制を構築することとした。
は通すが光は通しにくいシートであ
(以下、
「商工会」という)を通じ
支援活動の具体的な内容は、隔月
る。この画期的な特性を活かし、法
て石川県商工会連合会(以下、「連
に一回の支援会議を開催し、事業進
面保護工事などを施工する石川県内
合会」という)から、県内土木事業
捗状況の共有とその時点での課題解
外の建設土木工事事業者を最優先タ
者を中心に紹介を受ける等の支援を
決に向けた協議を行い、今後の事業
ーゲットとして販路開拓している。
受けた。
活動の優先順位を整理するなどの支
今後は農業分野への開拓も視野に入
そのような中、ISICOから地域資
援を行う、いわば支援のワンストッ
れている。
源活用事業計画としての認定をすす
プ機能を目指すものであった。平成
められた。すでに認定を受けていた
24年6月に第1回目の支援会議を開
近隣の先輩事業者からも「信頼性が
催し、すでに10数回の会議を重ね、
向上する。」「今後の事業戦略を文章
さまざまな課題を洗い出し対応策を
化することで、より明確になる。
」
協議して支援を行った。
【「ネガトール」の植栽例】
などのアドバイスを受けたことが後
押しとなり、認定申請を決意した。
こうして、ISICO、連合会、商工会
と共に中小機構を訪れた。
植栽前
<地域資源活用事業計画の認定>
中小機構では担当のチーフアドバ
イザー(CAD)から地域資源活用事
支援会議の様子
業計画の認定について詳しく説明を
植栽完了直後
受けた。その後、認定計画の作成に
支援会議は主に商工会の会議室を
取り掛かったが、展開を予定してい
借用し、概ね2時間をめどとして隔
る市場は、これまでの事業領域であ
月で定期開催している。出席者の内
る繊維業界と無縁の市場のため、何
訳は同社の井波社長、ISICOから2名、
31
連合会から1名、商工会から1名、
事業者との商談機会を提供した。具
<課題への取組④事業PR>
中小機構からは現担当の指江CADを
体的には、大手法面工事施工会社、
同社は従来から既存事業中心のホ
含む2名である。まず井波社長から
高速道路メンテナンス会社、大手種
ームページを開設していたが、本事
前回会議から約2か月間の事業進捗
苗会社、私鉄線路メンテナンス会社
業の認知度を高めるため、本事業に
について報告があり、前回の会議で
などである。このうち数社にはサン
特化したホームページを新たに立ち
宿題を持ち帰った支援機関の担当者
プルを提供しテスト施工を行うこと
上げることとなった。その際、連合
がいる場合はその報告をする。それ
となり、施工後はフォローアップに
会は専門家を派遣し、成約に結び付
を受けて全員で課題を整理し、意見
努めている。
くためのホームページ作成を支援し
交換を行う。そして、課題解決に向
また、井波社長は専門家(販路開
た。施工事例の紹介と更新を充実さ
けて今後2か月間に実施する内容に
拓コーディネーター)との同行を通
せることやブログを追加することで
優先順位をつけて確認する。支援会
じてプレゼン内容や手法を学び、販
閲覧回数を増やす等の助言を行っ
議で対応できない課題は必要に応じ
促物の改善点の指摘を受けるなどし
た。これにより、現在ではホームペ
て外部の専門機関に相談したり、支
た。さらに、支援会議において、営
ージを通じて事業者、個人客などか
援会議メンバーが井波社長と専門機
業経験が乏しい井波社長に対し、指
ら週に約10件の問い合わせを得て
関に同行訪問することもある。
江CADが豊富な営業経験を活かした
いる。
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助言を行ったこともあ
また、ISICO、連合会はそれぞれ
る。具体的には、商談前
自らの機関誌で同社の特集を掲載、
の準備や商談時における
商工会は日本建設新聞を紹介するこ
セールストークの展開順
とで記事掲載につなげる等、事業
序、商談後のフォローア
PRの支援を行った。
ップの内容などについて
とが、それ以降の営業活
<課題への取組⑤
農業試験場の活用>
動に大いに役立っている。
平成27年に入り、同社は近隣の
さらに、販路開拓支援
農家からの問い合わせを受け、 加
として、商工会はテスト
賀丸いも の育苗のテスト施工に着
施工先として地元事業者
手した。これを機に、従来からの課
を 紹 介 し、ISICOは の と
題であった農業分野への展開も検討
鉄道廃線跡地でのテスト
することとし、支援会議を通じて石
アドバイスした。このこ
<課題への取組①市場調査>
施工可能性を探った。中小機構は工
川県農業試験場の専門技師の紹介を
まず着手したのは、植栽・防草シ
業団地部門を紹介するなどの支援を
得て、同試験場でのテスト施工が実
ート市場のターゲットやアプローチ
行った。
現できた。具体的には、石川県の重
するためのチャネルなど同市場にお
点産物であるフリージアの育苗シー
トとして同試験場が使用し有効性を
った。そのため、中小機構は調査委
<課題への取組③
公的機関の認定取得>
託先として、福井県鯖江市にある雑
また、公的機関の認証として石川
業向け資材としてのテープ幅、製品
草の制御・利用技術に関する研究を
県建設新技術の認定と国土交通省の
サイズなど改善点の検討を行うこと
行っているNPO法人を紹介した。こ
新技術情報提供システム(NETIS)
となった。今後、これらを本事業品
のNPO法人が調査した結果、防草シ
の登録が、異分野から参入した同社
に反映させることで農業分野での競
ートの優先すべき顧客セグメントは
の製品に対する信頼性を担保するう
争力向上を目指している。
法面工事施行会社などの建設業者で
えで有効であるため、登録をめざす
あり、また公的機関の認証が有効で
こととした。石川県建設新技術につ
あることが判明し、その後の活動方
いてはISICOが中心となり認定まで
針に反映された。
を支援した。また、NETISの登録に
<異業種分野への挑戦が成果に>
けるプレーヤーや仕組みの調査であ
示すデータを収集すると同時に、農
事業の成果
向けては連合会、商工会が中心とな
本事業は同社にとって初めての自
<課題への取組②販路開拓>
り、国交省北陸地方整備局への同行
社ブランド製品であり、製造以外の
防草シートの顧客が、従来の事業
や申請書作成に向けて支援してお
あらゆる面において試行錯誤の連続
分野と全く異なることから、中小機
り、27年度末までの登録をめざし
であった。
構の「販路開拓コーディネート事業」
ている。
まず土木分野に新規参入をめざし
を活用し、主に関西方面6社の有力
32
た同社にとって、サンプルによるテ
スト施工は土木分野での実績がない
にも取り組み、平成26年度補正「も
ため欠くことができない過程であっ
のづくり・商業・サービス革新補助
た。また、防草・植栽という事業の
金」第1次公募において「人工羽毛
性格上、テスト施工の実証期間も長
の試作開発と量産化体制構築」が採
く、場合によっては1年以上必要で
択された。本事業と合わせ、今後の
あるケースもある。そのため、実績
新たな経営の柱となることが期待さ
作りには想定以上の時間が必要とな
れる。
るが、着実に実績を積み重ねている。
27年 度 は 念 願 の 国 土 交 通 省 の
NETIS登録も見込まれ、さらにこれ
まで各地で実施してきたテスト施工
の結果を本施工の受注として刈取り
を見込んでいる。さらに、農業分野
へ本格参入する予定である。これら
を背景に、本事業の着実な発展を目
指している。
認定事業の売上推移(単位:万円)
600
500
400
300
200
100
0
平成
24年度
平成
25年度
平成
26年度
事業者のひと言
地域資源活用事業計画が認定され
たことで、金融機関や初対面の商談
相手先からの信頼度が大きく向上し
ました。また、計画を作成すること
で事業遂行の戦略が明確になり、課
題を確認しながら進むことができま
した。
支援会議には大変感謝していま
す。その時その時の課題に対し、当
社に寄り添った適切な助言をいただ
き、感謝するとともに実績を上げる
ことで皆さんのご支援にこたえたい
と必死で頑張っています。
当社は経営資源、特にマンパワー
が乏しいため、皆さんによるご支援
がなければ、現在のような成果を上
げることは不可能だったと思います。
今後ともよろしくお願いいたしま
す。
平成
27年度
(9ヶ月分)
<今後の展開>
事業の拡大とともに今後は井波社
長の負担が増加することになる。そ
のため支援会議は、社内の経営体制
を見直し「権限委譲と責任の明確化」
を進め、これまであいまいだった役
代表取締役
割分担を明確にし、井波社長の負担
井波 秀俊 氏
を少しでも軽くするよう助言した。
従来は工場内での段取りなどにつ
いても井波社長の判断を仰ぐ場合が
あったが、この支援会議の助言を受
けて井波社長は、工場長や従業員の
それぞれの役割分担を明文化するな
どを行い、自分の判断で業務を遂行
できるようにした。
現在では、井波社長が不在であっ
ても工場内の作業が滞ることがない
までに改善され、社長は重要な経営
判断と営業に専念できる状況になっ
ている。
また、本事業以外の新規製品開発
また、事業者からも、本事業の範
囲を超えた課題全般について相談で
きる点が大変有効だとの評価を得て
います。今後もこのような支援連携
体による支援を積極的に活用し、中
小企業の課題解決を支援していきた
いと思います。
連携支援者のひと言
今回のような4支援機関による支
援連携体は初めての経験でした。一
部には円滑な運営を懸念する声があ
りましたが、事業者の意欲的な参加
姿勢や中小機構さんの適切なファシ
リテーションなどで、多くの効果的
な支援が実現しました。
特に、専門家派遣などでは支援会
議の協議を経て最も適切な専門家を
選んだうえで活用する制度を検討す
る等、支援機関にとっても効率的な
支援が可能となりました。
石川県商工会連合会
森 達朗 氏
支援者のひと言
前任者のCADが支援会議を開始し
た1年後、引き継いで担当すること
になりました。連携体による支援体
制は初めて経験するものでしたが、
常に前向きな井波社長や各支援機関
の担当者さんの積極的な参加によ
り、その時その時の事業課題に対し、
活発な議論を行うことができまし
た。バイタリティがあふれる井波社
長はこれまで経験のなかった営業活
動にも積極果敢に取り組み、売上実
績を伸長しています。
今後は、これまで積極的に行って
きたテスト施工の結果が出る、いわ
ば収穫の時期が到来すると思われま
すし、NETISの登録も今年度内に実
現が見込まれ、業績のさらなる向上
を大いに期待しています。
今後も、支援会議の機能を高め、
同社の発展の一助となるよう支援に
努めたいと思います。
北陸本部
指江チーフアドバイザー
33
トキハ産業株式会社
大阪府大阪市
100年使い継ぐ天然素材で優しい長寿命家具
とその家具で利用者を紡ぐ新しい提供システム
第三者評価委員会で品質を担保した、健康や環境に優しい
高耐久性の良質家具シリーズ ハウスオブツリー(House of
Tree) を新開発。家具の生涯(生産∼販売∼買取り∼再生
∼販売)を一元管理する新しいシステムで、「良い家具は使
い捨てであってはならない!」理念をビジネスで実現。
●会社名 トキハ産業株式会社
●代表者 藤川 龍磨
●設 立 昭和37年8月
●資本金 3,000万円
●売上高 17億1,500万円
(平成27年7月期)
●従業員数 85名
●事業内容
オフィス家具天板加工、家庭用家
具小売り販売(学習机、テーブル、
椅子、収納家具、カーテン等)
●所在地
大阪府大阪市都島区
大東町2丁目17-9
●URL
http://www.tokiwa-mfg.co.jp/
●T EL 06-6928-8265
●FAX 06-6928-8266
事業の概要
<新事業の取組みの背景>
商品の特徴は次の通りである。
【素材のこだわり】
・構造材比重と木材含水率を規定
トキハ産業㈱は、大阪府枚方(ひ
・天然塗料系とホルムアルデヒド放
らかた)市にある枚方家具団地の自
散量が最も少ないF☆☆☆☆等級
社店舗「ハーモニックハウス」を中
(JIS・JAS規格)の接着剤
心に、
「健康に配慮した家具」や「高
級天然素材家具」を販売している。
・天然木無垢材、
それに準ずる集成材
【加工のこだわり】
家具の国内市場は、人口・婚姻件
・安易な加工方法の禁止
数・住宅着工件数等の減少を背景に
・将来も入手可能な補助部品を使用
縮小傾向である。また、価格競争力
・木材調達ルートの管理(違法伐採
のある大手量販店が市場を主導し、
中小家具小売店は安売り競争では体
の禁止)
【保守のこだわり】
力勝負で勝算がなく新たな戦略が必
・掃除や修理がしやすい
要であった。一方、健康家具や高級
更に、それらの長寿命家具は大学
天然素材家具は高価格帯商品が多く
教授等の専門家で構成される第三者
て顧客の値ごろ感と乖離し、品質評
機関の「家具品質評価委員会」によ
価は高いが幅広く普及しない課題が
る 厳 し い 認 定 基 準 を 満 た せ ば、
あった。
House of Tree 家具に認定される。
同社は新事業構想のため平成21
年にアンケート調査を行い、同社顧
客の約9割、顧客以外の商圏住民の
約6割が「愛着ある商品を使い継ぐ」
ライフスタイルに共感するという分
析結果を得た。そこで、同社の藤川
龍磨社長は「良い家具は本来使い捨
店舗「ハーモニックハウス」
●事業名
100年使い継ぐ、天然素材を使っ
た人に優しい長寿命な家具の販売
とサービスの事業化
てであってはならない!」との理念
に基づき、良い家具を永く使い継い
でもらう新しいビジネスモデルを検
討した。
<100年使い継ぐ長寿命の家具>
新開発の長寿命家具は、ダイニン
●認定期間
平成22年3月∼平成27年3月
34
グやリビングのテーブル・椅子・ボ
100年家具の一例
ード、学習机等である。販売価格は
ダイニングテーブルで7∼10万円、
<家具のお里帰りのシステム>
学習机で10万円程度と、品質に比
これらの家具は、世代や顧客をま
してリーズナブルな価格である。各
たいで使い継がれることを前提と
となる㈲セブンパパズ(兵
の主要課題は、新ブランドの構築、
庫県神戸市)の山口勝巳社
「家具のお里帰り」の仕組みの継続
長と共に、同年6月に中小
であった。
機構へ相談に出向いた。
中小機構では新たに担当した多田
2人は以前勤めていた会
PMが、藤川社長と相談しながら中
社の同僚で信頼関係も厚
小機構のハンズオン支援や経営支援
く、山口社長は2級建築士
メニューを活用し、主要課題に対し
としてインテリアデザイン
てフォローアップ支援を開始した。
やマネジメントのノウハウ
ブランド構築を図るためには、信
し、点検・補修をしながら、仮に不
に通じているため、藤川社長は山口
頼される商品をシリーズとして提供
用となる場合も買取り制度を利用で
社長に本事業の協力を仰いだ。
し続けることと、100年続く需要を
きるものである。買取りした家具は、
本事業では、同社がコア企業とし
確保することが必要である。同社は、
修復・再生が施され、また違う顧客
て事業統括・店舗運営・家具製造販
先ず新連携補助事業(補助金)を活
に再販売される。認定された家具に
売・補修・修復・再生を担当し、連
用して、より良い商品の開発に引き
はシリアル番号が刻まれた銘板が付
携企業の㈲セブンパパズが評価委員
続き取り組むとともに、市場調査や
けられ、商品毎や顧客毎のカルテで
会運営や商品計画、サービス計画等
販路開拓(PR資料作成、展示会出展、
家具の生涯(生産∼販売∼買取り∼
をサポートする連携体制を作った。
展示用什器作成、等)のマーケティ
再生∼販売)を一元管理する。
新連携事業計画策定では、中小機
ング活動にも積極的に取り組んだ。
同社は、長寿命家具の生涯をサ
構の相談当時の担当プロジェクトマ
ポートするこの新システムを「家具
ネージャー(PM)がブラッシュア
<ITシステム基盤の構築>
のお里帰り」と名付けた。
ップを進めた。担当PMは、大手量
同社は商品管理や顧客管理の仕組
販店の台頭で競争が厳しい家具市場
み自体は構築していたが、
「家具の
の中で本事業をビジネスとして成功
お里帰り」の履歴情報を含めた商品
させるためには、長寿命家具の需要
カルテが新たに必要であった。藤川
開拓だけでなく新たな文化創造が必
社長は、商品サイクル履歴を管理す
要と考え、新連携事業計画の認定に
るITシステム構築について多田PM
向け商品・サービスの特徴や競争力
に相談した。
事業の展開
と新規性、ターゲット顧客への販売
多田PMは、中小機構でIT分野を
促進計画、損益計画と資金調達計画
専門とするチーフアドバイザー
「家具のお里帰り」のイメージ図
長寿命家具に付けられる
シリアル番号の刻印銘板の例
<新連携事業計画認定を目指す>
等の具体化をアドバイスした。特に、
(CAD)と、ソフトウェアやハード
藤川社長は、このビジネスモデル
顧客に新たな価値を理解してもらえ
ウェアの仕様、商品コード管理方法
を実現するため、当初、国の支援策
るように、商品の特徴等をしっかり
やコード設定等に関してアドバイス
の平成21年度「連携体構築支援事
顧客目線で説明することを重視して
した。それにより、同社は商品管理
業」(マーケティング調査等で事業
アドバイスした。
システムに履歴情報を組み込み、
「家
性・市場性を明らかにし、事業計画
事業計画のブラッシュアップや現
具のお里帰り」を支援するITシステ
熟度を高めた連携体の構築を支援)
地確認を含め、打合せを半年で約
ム基盤を構築した。
にチャレンジした。
15回重ね、平成22年3月に新連携事
その相談で近畿経済産業局を訪問
業計画の認定を受けた。
<マーケティング戦略の強化>
同社は、既存事業でもパンフレッ
した際、新連携事業に関して中小機
構の事業計画ブラッシュアップ支援
<事業活動のスタート>
トや季刊誌等でPRに取り組んでい
や認定後のフォローアップ支援の情
新連携事業計画認定を受け、同社
るが、藤川社長は新事業を立ち上げ
報を得た。藤川社長は後に連携企業
は本格的に事業を開始した。本事業
る戦略的なプロモーション方法に悩
ん だ。 相 談 を 受 け た 多 田PMは、
事業の推進体制
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BtoCビジネスのプロモーション経
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験が多い広告代理店出身の専門家を
探し、地域活性化支援アドバイザー
として派遣した。
同専門家は、プロモーション全体
のコンセプトの統一と、利用者の生
の声をPRに活かす仕組み作りを支
35
援した。コンセプトは「優位性のある
来場する大変盛大な「びわ湖環境ビ
で活動の公正性が明確になり、更に
商品・サービスの提供」 ではなく「お
ジネスメッセ」に合同ブース出展を
信頼性向上につながるのではないか
客様に対する安心サポート」と位置
行い、各事業者のPRをサポートし
という意見が出て来た。そこで、藤
付けることをアドバイスした。
また、
ている。
川社長は連携企業の山口社長と相談
顧客とのつながり度合を高めリピー
多田PMは本事業も環境への優し
し、家具品質評価委員会を一般社団
ト顧客の増加を狙うプロモーション
さがポイントであるため出展を提案
法人化することにした。
の仕組みづくりとして、
「枚方家具
し、同社も合同ブース出展を平成
一方で藤
団地・家具専門アドバイザー」資格
23年 ∼ 平 成25年 ま で の3年 間 行 っ
川 社 長 は、
を有する従業員による丁寧な顧客応
た。(平成26年は自社独自で出展)
外部組織化
対、定期的な顧客フォロー、メンテ
展示会では、当初は一般消費者を
する同評価
ナンス履歴管理 消費者が参加する
意識したブランド認知を図り、年々
委員会と家
メンテナンス教室の開催などを、統
BtoBを意識して企業関係者に向けた
具のお里帰
一コンセプトのもとで実施すること
PRも進め、展示机を商談机に利用
りシステムと、同社との間で密に連
をアドバイスした。藤川社長は、統
して実際に触れてもらうなど、企業
携できるのかという課題を感じてい
一コンセプトの重要性を改めて認識
関係者が実際に商品の良さを体験す
た。その課題に対し、多田PMは再
し、各PR内容が「お客様に対する安
る工夫も凝らした。
度専門家継続派遣事業を活用し、ま
心サポート」につながるよう見直し
ハウスオブツリー協会のロゴ
ちづくり等の公的活動の支援に強い
してブランド構築につなげていった。
専門家を派遣して、一般社団法人化
また、顧客にとっては従来事業や
する評価委員会と家具のお里帰りシ
新事業の区分は関係ないことから、
ステムの運営方法、同社との連携方
多田PMは従来事業と新事業の両方
法等を支援し、連携スキームの構築
を含めた会社全体のマーケティング
に至った。
基盤を支援するため、一般消費財の
また、同社は、顧客が愛着を持っ
マーケティングの専門家による専門
て永く使える家具作りや修理再生を
家継続派遣事業を活用した。藤川社
長は専門家のアドバイスを受けて、
担う人の養成と、家具・木工・木の
びわ湖環境ビジネスメッセへの出展
楽器作り等の体験を通じて多くの顧
従業員同士の営業情報の共有、会社
出展を支援する中で多田PMは、事
客に木の家具と技術の良さを知って
全体での顧客情報管理方法の改善な
業や商品のストーリーを伝えるため
もらい、家具を大切に扱う気持ちを
ど、会社全体のマーケティング基盤
の展示内容のアドバイスや、古材・
高めてもらう共感の場として、公益
の再構築を進めていった。
フローリングのビジネスを行ってい
財団法人大阪産業振興機構の「おお
る出展事業者の紹介等も行いPRを
さか地域創造ファンド」を活用して
<環境ビジネス展示会への出展>
サポートした。
「家具町工房」を立ち上げ、ブラン
本事業は、一般消費者への直接販
それらの取組みの結果、マンショ
ドの認知度向上を図った。
売以外に、長期優良住宅を販売する
ンモデルルームへのレンタル家具の
工務店やディベロッパーを通じた販
商談も得られ、BtoB展開につなが
<全員参加型の取組みへ発展>
売や住宅事業者等への家具賃貸(レ
る成果が得られた。
藤川社長は、事業スタートからの
ンタル)も行う計画であった。
推進過程で必ずしもその活動内容に
中小機構は、全国の新連携事業計
<更に信頼を高める体制作り>
応じて本事業の売上高が伸びたとも
画認定の事業者より環境関連ビジネ
本事業を進めるなかで、
「家具の
言い切れない状況を鑑み、その要因
スの希望者を募り、毎年秋に滋賀県
お里帰りシステム」と社内組織の家
の一つに従業員のモチベーションの
長浜市で開催され3日間で数万人が
具品質評価委員会を外部化すること
課題があるのではないかと考えた。
新連携事業は開始当初から藤川社長
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て新たな事業であり、店舗等の営業
っていない印象を感じていた。
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36
画・遂行した。しかし、同社にとっ
従業員にそのコンセプトが十分伝わ
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が中心になってプロジェクトを企
そこで、藤川社長は、各店舗合同
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の会議で従業員に「超長期にわたる
お客様との関係作り」や「良き企業
文化を作る」ことの目的を共有した。
業員のモチベーションが向上する効
その上で、中小機構との打ち合わせ、
果も得られた。
展示会出展等への取り組みの際、藤
川社長だけが打ち合わせや取り組み
に関わるのではなく、店舗メンバー
も参加するよう指示してプロジェク
ト参画意識を持ってもらうと共に、
積極的な意見が出やすいボトムアッ
プ体制作りに取り組んだ。また、連
携企業の山口社長も打ち合わせや展
同社の営業メンバー
示会出展に参加して事業をサポート
し、全員参加型の取り組みに仕立て
て行った。その結果、従業員にも同
<多店舗展開への布石>
社における新連携事業の意義が伝わ
新連携事業の販路開拓活動で知り
り、協力体制が出来上がった。
合った流通系ディベロッパーの1社
か ら、 京 都 市 伏 見 区 の 商 業 施 設
事業の成果
「MOMOテラス」に出店の強い誘
<確実な売上による事業の確立>
を考えつつ、同社にとって初めての
自社店舗ハーモニックハウスの周
京都市進出でPRになり、今後の多
辺地域は、安全安心を望む子育て世
店舗展開の布石となるのだが、藤川
代や良い物を求める中高年齢層等で
社長は迷っていた。そこに従業員か
環境意識の高い人が多い。それらの
ら「やってみましょう。
」との声が
顧客に商品・サービスのコンセプト
上がり、思い切ってチャレンジした。
や品質を丁寧に伝えた結果、顧客の
同店には、商品コンセプトに共感
評価を得て、毎年安定して1億円以
する環境志向の顧客が店舗を訪れ、
上の売上を達成しており、新事業を
商品に対して大変良い反応を示して
確立することが出来た。
いる。
事業者のひと言
思い起こせば連携体となって頂い
た㈲セブンパパズの山口社長との
「長寿命な本物の家具の命をなんと
か守れないだろうか…。」という会
話からこの事業は始まりました。大
量生産・大量消費・大量廃棄という
消費社会から、循環型消費社会への
転換を担う先駆けにならんとする想
いを支えとしてやって参りました
が、単独ではここまでは来られなか
ったと思います。
また、お客様の共感を肌で感じて、
この事業に意味を見出し、主体的に
考え活動してくれている社員の変化
が一番うれしいと感じています。こ
の前向きな状態を高めながら日々精
進して参ります。
いがあった。藤川社長は投資対効果
藤川社長は、これまでの新連携事
<従業員のモチベーション向上>
業の取り組み経験を活かして、引き
藤川社長の率先垂範と従業員の積
続き次の事業展開と更なる発展につ
極的な参画、連携企業の山口社長の
なげて行く考えである。
積極的な協力、来店顧客や展示会来
場者の好感触、継続的な売上により、
従業員に新事業の理念や必要性が着
実に根付いてきた。
新連携事業計画の認定期間が終了
に近づくと、従業員から藤川社長に
対して「この商品の良さを知っても
らうため、各都道府県に1店舗ずつ
出店すればどうか?」というような
積極的な提案も出るようになり、従
代表取締役
藤川 龍磨 氏
支援者のひと言
もともと事業コンセプトと商品は
素晴らしく、それを理解するニッチ
ユーザーからどのように幅広く顧客
を広げるかが重要でした。その検討
に事業計画策定が有効であったと思
います。新連携事業計画認定後も、
フォローアップ支援だけでなく中小
機構支援メニューを幅広く有効活用
され、事業確立につながりました。
その背景にあるのが、藤川社長が
チームマネジメントを重視された点
です。今後望まれる新しいプロジェ
クトリーダーのマネジメントモデル
になると思っています。
ハーモニックハウスMOMOテラス店
認定事業の売上進捗(単位:百万円)
250
200
150
100
50
0
H22年7月期
H23年7月期
H24年7月期
H25年7月期
H26年7月期
H27年7月期
近畿本部
多田統括プロジェクト
マネージャー
37
株式会社ブンシジャパン
山口県周南市
お客様のお困りごとをヒントに、食品製造用
コンベアベルト清掃作業の機械化を実現!
包装資材卸売会社が、顧客の声から業界初の食品製造用コ
ンベアベルト除菌クリーナーを発案し、製造業との企業連
携を経て商品化。
「食品衛生管理機器メーカー」として、新たなる市場を開
拓し全国に商圏を拡大。
●会社名 株式会社ブンシジャパン
●代表者 藤村 周介
●設 立 昭和57年2月
●資本金 2,200万円
●売上高 26億4,500万円
(平成27年2月期)
●従業員数 95名
●事業内容
食品包装資材の企画・製造・販売
食品環境衛生支援業務
●所在地
山口県周南市清水2丁目3-7
●URL
http://www.bunshi.co.jp/
●T EL 0834-62-2575
●FAX 0834-62-4283
事業の概要
で、これら生産上の問題に対応でき
<食品製造・加工業界の課題>
ーナー「アンベル」
(安 全にベル ト
消費者の食品への安全意識が高ま
を清潔にする)である。
る業界初のコンベアベルト除菌クリ
4
4
4
る中、食品製造・加工に携わる事業
者は、徹底した衛生管理に努め、食
中毒や異物混入など健康を損なう食
品危害発生を未然に防ぐことが当然
のこととして要求されている。また、
一方では生産効率も維持しなければ
ならず、食品安全性の確保と生産性
の向上との両立が求められている。
例えば、大手コンビニの弁当や惣
菜加工工場では、各製造工程が終了
する度に製造ラインを停止し、作業
員が手作業でコンベアのベルト面に
付いた食材を布などで拭き取り、さ
らにアルコール噴霧を行っている。
「アンベル」は、既設コンベアベ
しかし、清掃レベルに個人差がある
ルトの下部の空間に配置し、ベルト
ことに加え、生産時間の損失が生じ
の除菌、洗浄を自動的に行う装置で、
ていることから、手作業に頼らず、
主に3つの機構で構成されている。
かつ製造工程を中断することなく衛
最初はアルコール噴霧機構であ
生管理を確実に行える方策を開発す
る。写真で表示されている黄色タン
ることが望まれていた。
クから専用のアルコール製剤を噴霧
し、ベルトに付着した汚れを浮かせ
る。
次に汚れ除去機構では、スクレー
パーと呼ばれる樹脂製の尖った先端
本社
●事業名
ベルト除菌や異物発見など食品工
場の衛生管理の向上に寄与する製
品の製造・販売
●認定期間
平成23年2月∼平成28年2月
部をベルトに当て、浮いた汚れを物
理的に除去する。
最後の除菌機構では、汚れが取り
コンベアベルトの清掃作業
職布を接触させ、低速で逆回転しな
<業界初の
ベルト除菌クリーナー>
がら菌を取り除く。
そこで、㈱ブンシジャパンが開発
清掃および除菌が完了する。
した製品が、製造作業を中断するこ
と無くベルトを自動除菌すること
38
除かれたベルトに約8cmにわたり不
こうしてベルトが一周した時点で
業製品開発等支援補助金に採択され
等の策定が必要である。
たことで、資金面の支援を得た。ま
そこで初回面談から新連携事業計
た、山口県産業技術センターの技術
画認定申請までの約6か月間、担当
支援を得ることができた。
CADをはじめとする中小機構スタッ
こうして平成20年の取り組み開
フや専門家のサポートを受けなが
始から4年をかけ、平成23年「アン
ら、ターゲット市場、販売チャネル、
ベル」は完成した。
価格、販売促進の方法等を具体化し
た販売戦略を立案した。
<新連携事業計画認定への挑戦>
とりわけ課題であった販路の強化
藤村社長は「アンベル」の事業化
については、全国に食品素材系メー
を進めるにあたり、ものづくり補助
カーの顧客を有する㈱ヤナギヤ(山
金で支援を受けた山口県中小企業団
口県宇部市)と、大手ベンダー系を
事業の展開
体中央会に全国の販路開拓の進めか
中心とする精密機械装置の全国販売
たについて相談したところ、中小機
網を有する㈱寺岡精工(東京都大田
不織布「ベルワーパー」
<商品化の道のり>
構を紹介された。そこで、平成22
区)の2社が連携メンバーに加わる
本事業は、同社の藤村周介社長が
年に藤村社長は中小機構を訪れ、当
こととなり、非常に強力な販売チャ
顧客を訪問した際に聞いたベルトコ
時の担当チーフアドバイザー(CAD)
ネルを得ることに成功した。
ンベア清掃に関するお困りごとから
から新連携事業についての説明を受
こうして4社による企業連携の枠
着想したものである。しかし、食品
けた。その後、担当CADが同社を訪
組みによる新連携事業計画認定を申
包装資材卸売業である同社には技術
問し、事業に関するヒアリングを行
請し、平成23年2月に認定を受けた。
開発の機能がないため、商品化を実
った。
現するためには、製造に関する専門
担当CADは、①卸売業と製造業の
<事業化の5つの課題>
性を有したパートナーの協力が不可
異業種連携による新事業分野参入事
新連携事業計画認定後、事業計画
欠であった。
業であること、②すでに特許出願中
を推進するため、現担当である村上
そこで、山口県周南市内で藤村社
で新規性が高いこと、③社長就任後
CADのフォローアップ支援がスター
長の製品構想を技術的に実現可能な
同社の売上を倍増させる等、藤村社
トした。
企業を検討した結果、ステンレス材
長の経営手腕がしっかりしているこ
村上CADは、除菌効果など「アン
料を中心とした部品の加工技術を有
とを高く評価し、新連携事業計画認
ベル」の性能面のエビデンスだけで
する化学機械・装置製造業の㈱徳機
定への挑戦を提案し、中小機構の支
なく、導入によって得られるコスト
に協力を要請し、企業連携体制を構
援のもと認定を目指すこととなった。
メリットを明確にしない限り、顧客
築した。
事業化支援を目的とする新連携事
に新たな機械投資を意思決定させる
こうして「アンベル」の開発に着
業計画認定を得るためには、製品の
ことは難しいと感じていた。また、
手することとなり、基本性能部分は
優位性や新規性だけでなく、販売の
知名度が無い中での営業や、製造コ
㈱徳機の協力で順調に進んだもの
シナリオづくりや、売上・投資計画
スト、資金確保など、取り組まなけ
の、その他の開発では数々の研究課
題に直面することとなった。
一例を挙げると、アルコール製剤
の濃度の問題、適量の製剤を効率的
事業の推進体制
連携体
に噴霧するノズル機構の調整、あら
ゆる食材に対応するスクレーパーの
素材、除菌に最適な不織布の選定、
市場投入のポイントとなるコスト低
減への取り組み等である。
これらの課題については、藤村社
長自ら全国から探した各専門メーカ
ーの協力を得ながら、ひとつひとつ
克服していった。
一方、公的機関からのサポートに
ついては、山口県中小企業団体中央
会の平成21年度ものづくり中小企
39
ればならない課題があると目利きし
作業清掃における生産性低下の問題
③評価用デモ機の積極的な貸出
た。
を洗い出し、
「アンベル」導入とと
営業マンパワー不足を補うため、
そこでフォローアップ支援に入る
もに作業手順や人員の配置変更まで
に、前述①の経営視点でのメリット
にあたり、事業化における次の5つ
踏み込んだ製造工程全体の改善提案
訴求やDVD等の販促ツールの充実
の課題を藤村社長と村上CADの間で
を行った。
によって、商談効果の向上を図った
共有した。
改善提案には実例をもとに「アン
ものの、
「アンベル」は効果が認め
①機械化メリットの訴求
ベル」の導入効果をコストで換算し、
られても、緊急性が低いことから来
これまで手作業で行われていたコ
利益貢献という形で訴求した。
期以降の予算に持ち越されることが
ンベアベルト清掃作業の機械化にお
提案書には、清掃作業の機械化に
多かった。
けるメリットをどのように訴求する
よって、生産性が1.2時間(8%)向
そこで、このような商談が長期化
か。
上し、コスト換算で月712,800円の
する有力案件への対策として、新連
②知名度の向上
削減効果があったこと、その他作業
携事業計画認定に伴い申請した補助
メインターゲットであるコンビニ
改善によって余剰となった人員の他
金を活用して製作したデモ機を貸し
系列の弁当・惣菜製造工場に対する
ラインへ投入することで人手不足の
出し、顧客の本番製造ラインに設置
知名度をいかに上げるか。
解消に寄与したこと等の大変生々し
し使っていただくことにより評価を
③営業効率の向上
いデータが、A4一枚に簡潔にまと
得ることで、翌期の予算確保を確実
専任営業2名という限られたマン
められている。
なものとした。
パワーの中で、営業効率をいかに高
このように製品の機能視点ではな
このデモ機貸出は、見込客に対す
めるか。
く、製品導入がもたらす経営的な効
る営業対応工数の軽減だけでなく、
④コストダウンの実現
果を訴求することにより、案件化率、
導入効果訴求のための実例データの
「アンベル」本体価格はもとより、
受注率の向上につながっている。
収集にも貢献している。
剤のコストをいかに抑えるか。
②共同出展で展示会効果を倍増
④約30%のコストダウン実現
⑤資金調達
「アンベル」の知名度向上のため
「アンベル」のコストダウンにつ
事業拡大にあわせて増加する事業
に展示会への出展は不可欠である
いては、材料調達コストだけでなく、
資金をどう確保するか。
が、中小企業の同社がかけられるコ
設計面から見直しを行うことで部品
ストは1コマのブース出展が限界で
点数を大幅に削減し、約30%のコ
<課題への対応>
ある。これでは、FOOMA JAPAN(主
ストダウンを実現した。さらに清掃
フォローアップ支援では、村上
催:一般社団法人日本食品機械工業
だけで十分という顧客の要望に応え
CADと藤村社長が課題解決の方針や
会)のような大規模な展示会では目
る形で、除菌機構をカットしたロー
具体策の協議を重ね、藤村社長が決
立たず埋もれてしまう。
コストタイプも商品ラインナップに
定事項を即実行し、実行結果を検証
そこで、同社は同じサニタリー系
加えた。
して新たな対応策を協議する、この
の出展企業と連携し、複数社で共同
アルコール製剤等の消耗品につい
ようなPDCAサイクルをスピーディ
出展することで、1コマ分の出展費
ても、「アンベル」本体の販売台数
に回しながら、次のとおり課題への
用で、広い出展ブースを確保した。
の増加はもちろん、デモ機貸出台数
対応を着実に進めて行った。村上
そして、ベルトコンベアを持ち込み、
の増加によって、コンスタントに一
CADは各課題への対応においても、
清掃デモンストレーションをやり続
定量以上の消耗品が使われるように
藤村社長に具体的なアドバイスを行
け、来場者の注目を集めることに成
なったことで、ロット発注が可能と
った。
功し、大手食品メーカー等の新規見
なり、量産効果でコストダウンが図
込先とのコンタクトを取ることに成
られつつある。
消耗品である不織布とアルコール製
①経営視点で導入メリットを訴求
功した。
手作業を機械化するメリットを清
掃・除菌効果等の製品機能で訴求し
ても、
「手作業よりは良い」程度の
評価しか得られず製品購入まで結び
つきくい。
そこで同社では、ベルト清掃作業
における手待ち時間ロス、清掃に用
いる消耗品の過剰利用によるムダ、
清掃作業そのもののストレス等の手
40
共同出展ブース(FOOMA JAPAN)
「アンベル」ローコストタイプ
⑤補助金をはじめとする資金調達
など微細な異物が発見しにくい。
」
事業拡大に比例して、評価用デモ
「異物除去のために両手を自由に使
機等の事業資金が必要となったが、
いたい。
」というお困りごとから生
新連携事業計画認定に伴い申請した
まれた製品である。
補助金の活用とともに、新連携事業
計画認定によって同社の評価が向上
したことから、地元金融機関のファ
ンドの出資を受けることができ、事
業資金を確保することができた。
事業の成果
<コンベアベルト自動清掃機
マーケットの創造>
平成27年3月時点で「アンベル」
事業者のひと言
「卸売業からメーカーへ」を目標
に本事業を進める上で、販路拡大は
事業成功の大きな要因といえます。
この度、国の新連携事業計画認定
の採択を受け、大変助かりました。
お陰様を持ちまして、販売スタート
から丸4年、今年度目標の累計売上
台数100台を達成致しました。最終
累計売上台数目標は、2,000台を目
指します。
更には、新たな製品開発にも取り
組んでおり、今後も支援をお願いす
ると思いますので宜しくお願い致し
ます。
LED搭載拡大ルーペ装置「バイルック」
の売上は累計2億円を突破した。販
さらに同社では、食品製造業の大
売台数ベースでは、平成27年度中
きな課題である作業標準化と生産性
に100台を突破する見込みである。
向上を支援するクラウドサービス
「アンベル」はすでに一部の大手
「マイスタ イローハ」の事業化に
コンビニベンダーのベルトコンベア
取り組んでおり、平成28年2月に村
の必須オプションとなっており、製
上CADの支援のもと、2回目の新連
造ラインの増設や工場新設の際に
携事業計画認定を受けた。
は、必ず同社に声がかかるまでにそ
の存在感を増している。
代表取締役
お客様のちょっとしたお困りごと
藤村 周介 氏
を ヒ ン ト に 構 想 し て か ら8年 あ ま
り。これまで存在しなかったコンベ
支援者のひと言
アベルト自動清掃機マーケットは確
実に創造されつつある。
<お客様の声起点で
新規事業を主力事業へ>
生産性向上クラウドサービス
「マイスタ イローハ」
同社は「アンベル」以外の商品開
新規事業の売上規模は同社年商の
発にも継続して取り組んでいるが、
まだ数%に過ぎない。しかしながら
すべてお客様の声が起点となってい
同社は、
5年後を目標に新規事業を主
る。
力事業に成長させるべく、お客様の
例えば、新連携事業計画認定を「ア
声を起点とした食品衛生管理と生産
ンベル」と同時に申請したLED搭載
性向上を切り口とするニッチなマー
拡大ルーペ装置「バイルック」は、
ケットへの挑戦を今日も続けてい
食品製造での異物混入防止のための
る。
本事業は、技術開発機能を持たな
い商社とメーカーとの連携による新
連携事業計画認定のモデル事業です。
同社は、製品開発期の「産みの苦
しみ」と販売促進期の「売りの苦し
み」に遭遇しながら、藤村社長の強
力なリーダーシップのもと、即断即
決即実行で事業化を実現しました。
今後もこの圧倒的なスピードを武
器に、新商品・新サービスを事業化
されることを期待しています。
目視検査作業における「毛髪や海藻
(百万円)
200
(台)
80
認定事業の売上と「アンベル」の販売台数推移
売上累計
150
60
売上
累計台数
100
40
50
20
0
0
23年度
24年度
25年度
26年度
中国本部
村上チーフアドバイザー
41
株式会社キシモト
愛媛県東温市
骨まで食べられる干物
「まるとっと」を商品化
攻めと守りの取り組みで売り上げアップ
魚骨軟化技術で骨まで丸ごと食べられる干物を商品化。
世の中にない商品を認知してもらう取り組み(攻め)と食
の安心・安全に対応する衛生管理強化の取り組み(守り)
により新規顧客開拓とリピート注文を実現。
テレビ番組の放送で認知度が高まり大幅売上アップを達成。
●会社名 株式会社キシモト
●代表者 岸本 幸雄
●設 立 昭和46年5月
●資本金 2,300万円
●売上高 3億2,600万円
(平成27年4月期)
●従業員数 35名
●事業内容
食品製造業(干物製造)
●所在地
愛媛県東温市則之内甲693
●URL
http://www.kishimoto-web.com
●T EL 089-966-6060
●FAX 089-966-6360
事業の概要
<お年寄りに安心して魚を
食べてもらいたい>
<事業者を取り巻く環境>
営業も担当していた岸本専務は、
愛媛県東温市は松山市の東に隣接
消費者ニーズ調査に着手した。取引
し、南北に山が迫る町である。海に
先の小売店だけでなく、同社の主要
面していない内陸部の立地である
ターゲットである高齢者にも直接意
が、㈱キシモトの社長である岸本幸
見を聞いたところ、干物を食べてい
雄氏は、干物製造に欠かせない水に
ない高齢者も多くいることが判明し
西日本最高峰の石鎚山系の良質な地
た。
下水が活用できることに着目し、昭
魚離れの理由には「骨がある」
「食
和46年に同社を設立した。
べるのが面倒」というものが多いが、
設立以来、同社は「山のふもとの
高齢者はこうした理由に加え「尾頭
干物屋さん」としてアジ、カマス、
つきの魚が食べたいが骨が刺さるの
ホッケなどの干物を製造し、全国に
が怖い」という理由も多かった。
販売してきた。しかし、食生活の変
岸本専務はこうした声に応えるこ
化に伴い消
とができないかと考え、高齢者が安
費者の魚離
心して食べられる干物を開発するこ
れが顕著と
とにした。
なり干物の
需要が減
少、同社は
事業の展開
同社の既存干物商品
<骨まで食べられる干物>
厳しい経営環境に置かれるようにな
本社工場
●事業名
八幡浜港で水揚げされる鮮魚を活
用した魚骨の軟化技術による骨ま
で食 べ ら れ る 干 物 等 の 開 発・ 製
造・販売
●認定期間
平成23年7月∼平成27年4月
42
った。
高齢者が安心して食べられるよう
こうした状況を打破するために
にするには骨を取り除かなければな
は、消費者ニーズに合わせた新商品
らない。しかし、骨を取り除くと尾
の開発が必要であるため、岸本社長
頭つきの魚ではなくなってしまう。
の実弟で同社の専務取締役である岸
平成22年1月、こう思い悩んでい
本賢治氏が新商品開発を担うことと
た岸本専務のもとに愛媛県産業技術
なった。
研究所から思いがけない提案があっ
事業の推進体制
㏻ᦘమ
௥⾪⏞ㄫ⩽
᪜Ꮛᕰሔ
㒌ᕰᅥᕰሔ
Ꮥᰧ⤝㣏
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ऒ࢞ࢨ࣓ࢹ
᭯ᶭⓏ㏻ᦘ
⿿ဗࡡ㛜Ⓠ࣬⿿㏸࣬㈅኉
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㨮㦭㌶໩ᢇ⾙භྜྷ◂✪
㏻ᦘཤຊ⩽ យ፸┬⏐ᴏᢇ⾙◂✪ᡜ
た。愛媛県産業技術研究所では、魚
った。
が増加するにつれて、新たな課題が
の骨を軟化する技術を開発してお
岸本専務
顕在化するようになった。
り、この技術を活用した製品を市場
は、事業計
食品製造業は、近年異物混入問題
化できる地元企業を探していたのだ。
画作成にあ
などにより、高い衛生管理、品質管理
「この技術を活用すれば、骨まで
た り、「 誰
基準を求められるようになっている。
食べられる干物を作ることが可能に
に」
「何を」
なる。
」と感じた岸本専務は早速、
売るのかは
愛媛県産業技術研究所と共に骨まで
検討していたが、
「どのように」売
ることから、外部から虫などが侵入
食べられる干物「まるとっと」の商
るのかは十分に検討できていなかっ
する可能性が高い。また、工場内部
品化に取り組むことを決断した。
た。PMは同社の強み・弱みを明ら
の壁、床も経年劣化が見られるなど、
かにした上で、独自技術・製品の認
衛生管理上の問題が見られた。
知度を高めることがポイントである
平成26年
と助言した。岸本専務は、PMのブ
度に入り、
ラッシュアップ支援を受けて事業計
首都圏、関
画を作成し、平成23年6月に農商工
西圏の大手
連携事業計画の認定を受けた。
小売業との
骨まで食べられる干物の
製造装置
同社工場には、生の魚を扱う工程
があり、工場が山の麓に立地してい
商談も増
<商品の認知度を高める>
え、バイヤ
加工作業風景
農商工連携事業計画の認定後、岸
ーから工場見学を希望されることも
本専務はPMと事業方針を話し合い、
多くなってきた。実際に工場を見学
「骨まで食べられる干物」は世の中
したバイヤーからは工場の衛生面を
<農商工連携事業計画認定に挑戦>
に存在していないため、まず多くの
指摘されることが多く、衛生面を理
愛媛県産業技術研究所の支援を受
消費者、流通業者に知ってもらうこ
由に取り引きを断られるケースも発
けて商品開発を進める中、世の中に
とに重点的に取り組むこととした。
生した。
ない画期的な商品であるが故、市場
まるごと食べられる魚であること
に認知されるには時間がかかること
から商品名を「まるとっと」
(とっ
が予想された。
とは魚を意味する方言)とし、岸本
<大手食品製造業出身の
専門家による支援>
岸本専務は、同社が保有する経営
専務は愛媛県内の介護施設や学校な
そこで、中小機構の現担当専門家
資源だけでは市場化が難しいと考
どに積極的に販路開拓を行うととも
である越智プロジェクトマネージャ
え、支援策の活用を考えていたとこ
に、地元メディアを中心にパブリシ
ー(PM)は岸本社長、岸本専務に
ろ、平成23年2月に愛媛県産業技術
ティ活動を行った。
対し今後のさらなる事業拡大のた
研究所から中小機構のプロジェクト
中小機構は中小企業総合展2011
め、衛生管理の強化を提言し、地域
マネージャー
(PM)
を紹介された。
PM
出展支援や中四国の百貨店との商談
活性化支援アドバイザー(AD)派
から農商工連携事業の説明を受けた
会への参加、通販カタログへの申込
遣による専門家支援を活用すること
岸本専務は、3年から5年という期
み・採用、販路開拓企画の紹介・支
となった。
間でハンズオン支援を受けられる農
援などを行い、認知度向上を図った。
専門家として選任されたADは、
商工連携事業が同社の新事業に最も
これらの活動により徐々に「まる
大手食品製造業で工場の立ち上げを
適していると考え、農商工連携事業
とっと」の認知度が向上し、売上拡
行い、品質管理、生産管理、生産技
計画認定に挑戦することを決めた。
大に結びついていった。
術など食品工場の全てを知り尽くし
骨まで食べられる干物「まるとっと」
農商工連携事業計画の認定に挑戦
た楠本誠一氏である。
するにあたり、連携する漁業者を探
<工場の衛生管理問題の顕在化>
支援に先立ち、平成26年8月に同
していたところ、平成23年3月に愛
商品の認知度が向上し、引き合い
社と楠本ADのマッチングを行った。
媛県産業技術研究所から㈲昭和水産
を紹介された。㈲昭和水産は愛媛県
で有数の漁港を有する八幡浜市で唯
地域活性化支援アドバイザー派遣を活用した支援の流れ
࣏ࢴࢲࣤࢡ
ᕝሔහࡡ⾠⏍⟮⌦୕ࡡၡ㢗Ⅴ᢫ฝࠉ⤊ႜ⩽㟻ㄧ
一のトロール船団を持つ企業である
が、近海での漁獲量の減少と魚価の
➠ ᅂ
㣏ဗ⿿㏸ࡡୌ⯙⾠⏍⟮⌦
低迷により新たなビジネスを模索し
➠ ᅂ
6 Ὡິ࡫ࡡཱིࡽ⤄ࡲ᪁
➠ ᅂ
ఌ♣ࢅ༱ᶭ࠾ࡼᏬࡾ༱ᶭ⟮⌦ᚪ㡪▩ㆉ
ていたことから、㈱キシモトと共に
農商工連携事業を実施することにな
43
同社の製造工程を見た楠本ADか
<意識が変わり、行動に>
いない社員もいたが、平成26年12
ら は、 工 場 内 の3S( 整 理、 整 頓、
平 成26年10月、 第2回 目 の 楠 本
月に行われた第3回目の支援の際に
清掃)
、異物混入を引き起こす要因
ADによる支援が行われた。冒頭で、
皆が理解することになった。
(錆、塗装はがれ、コンクリートの
岸本専務が笑顔で楠本ADに「楠本
楠本ADの第3回目の支援当日に、
欠け等)
、工場のゾーニング(清潔
さん、社員も私たちと同じように衛
ある食品製造業者が自社製品に虫が
区域、干渉区域、汚染区域)など今
生管理の重要性に気づいてくれたよ
混入していたために製品を自主回収
後の改善ポイントについて指摘があ
うです。先日、社員から壁の塗装を
したというニュースが流れたのであ
った。
直したいと申し出がありました。こ
る。このニュースを見た社員は衛生
岸本社長、岸本専務との面談では、
んなことは今までなかったことで
管理が不十分であるとどのような事
両者から衛生管理面の改善に対する
す。」と報告があった。
態に陥るのか、他人事ではないと感
強い思いを確認できた。反面、社員
第1回目のAD派遣後、社員側から
じた。岸本専務も「この事件は当社
はその思いを共有できていないこと
自分たちの手で工場の壁面を塗装し
でも起こりうることである。現場の
もわかった。そこで、楠本ADによる
直したいとの申し入れがあり、休日
ささいなミスであっても、これまで
支援は、社員全員が基本的な衛生管
返上で塗り直したとのことであった。
に築き上げてきた信用が一瞬で失わ
理の手法を習得し、衛生管理の仕組
自分たちの工場は自分たちで美化
れてしまう。
」と改めて衛生管理の
みが構築され、自律的に運用される
するという楠本ADの支援が、早く
重要性を認識した。
ことを目標に実施することとなった。
も実践されたのである。
<5Sの取り組み>
第2回目では、楠本ADから5S活動
への取り組み方について説明があっ
た。
楠本ADからは社員に、5Sのうち、
整理、整頓、清掃の3Sは、衛生管
理の実践段階において行うことであ
AD派遣前の工場床面
り、清潔、躾の2Sは実践した事項
を定着させるためのものであること
<社員全員の意識を変える>
社員自らによる工場床面塗装
<会社を危機から守る>
が伝えられた。
楠 本ADに よ る 第3回 目 の 支 援 で
平成26年9月、楠本ADによる第1
社員自ら壁を塗り直すことだけで
は、危機管理について検討を行った。
回目の支援が行われた。
も同社にとっては大きな前進であ
食品製造業は、異物混入などの不
岸本社長の衛生管理強化に対する
る。しかし、塗り直した壁も放置し
具合は原材料と製造過程で発生する
強い決意のもと、平日午後の作業を
ておけばまた以前と同じようになっ
ことが多いが、流通過程、店頭でも
中断し製造現場の社員が参加した。
てしまうので、壁を清潔に保つこと
発生することもある。食品製造業に
楠本ADは参加した社員に対し、
が重要であることを楠本ADは社員
とって、自社の手を離れた流通過程
主な食中毒菌と異物混入防止の基礎
に伝えたのである。
や店頭で起こる異物混入から自社を
知識をレクチャーした。さらに、食
守るにはどうすればよいかを検討す
品工場にとってそれ以前の基礎であ
<衛生管理強化がブランド化に>
る必要がある。
る食品の安全・品質で考えるべき点、
また、楠本ADは第2回目の支援で
楠本ADは、そのためには管理文
守らなければならない安全・衛生管
衛生管理強化が企業のブランド化に
書の作成・記録が不可欠であること
理 事 項、5S( 整 理、 整 頓、 清 掃、
つながることを説明した。
を説明し、クレーム情報の収集と分
清潔、躾)、報・連・相の徹底につ
消費者に食の安心・安全志向が高
析など同社でできるところから実践
いても説明を行い、衛生管理への意
まっており、食品製造業は一度でも
していくこととなった。
識強化を図った。
問題を起こせば消費者からの信用を
業務を中断してまでこうしたレク
失ってしまう。楠本ADは、衛生管
<実践から定着へ>
チャーを実施したことがなかったこ
理の強化とは、お客様に安心・安全
3回目の楠本ADによる支援終了後
とや、あえて基礎知識の徹底を図っ
を届けるための取り組みであり、衛
も、衛生管理強化のため、5S活動
たことで、社員もその重要性を感じ
生管理強化の継続的活動がブランド
は継続している。年末の繁忙期が一
取り、全員真剣にメモを取り、今後
を作り守っていくことにつながると
段落した平成27年の正月、岸本社
の自主的な活動にもつながるきっか
伝えた。
長、岸本専務は休みを返上して自ら
けとなった。
この時の説明では、理解しきれて
床面の塗装に取り組んだ。こうした
44
活動は、今も経営者だけでなく社員
員のモチベーションも上がってきた。
全員で取り組んでいる。
AD派遣実施後、社員が自分たち
で率先して壁の塗り直しを行うな
ど、同社では今までに見られなかっ
事業の成果
た動きも起こるようになった。
<テレビ放映で注文が殺到>
事業者のひと言
「まるとっと」は自信を持って商
品化しましたが、世の中にない商品
であるため、売れるまでに多くの苦
労がありました。中小機構からはタ
イミングよく楠本ADを派遣してい
ただき、衛生管理の専門知識を持た
ない我々にとって非常に役立つ内容
で感謝しております。
課題は山積しておりますが、多く
の方の支援を受けてここまできた事
業ですので、今後さらに発展させ、
皆様に恩返しができるよう全社一丸
で取り組んでいく所存です。
平成27年1月、全国ネットのドキ
<今後の展開>
ュメンタリー番組で「まるとっと」
岸本社長、岸本専務はじめとして
など同社の製品が大きく取り上げら
同社は現状に決して満足していない。
れたことを機に、かつてないほどの
衛生管理の強化については、現工
問い合わせ、注文が舞い込んだ。
場で同社ができることには取り組ん
一般的に、テレビで取り上げられ
でいるが、食品製造業として生き残
たことで注文が殺到しても品質トラ
るためにはHACCP(食の安全性を
ブルなどで一時的で終わることも多
確保する危機管理の方式)の認証が
い。同社では、楠本ADからのアド
必要と考えている。越智PMは社内
バイスによる危機管理対応をもと
規程類の整備、HACCP等の外部認
に、販売アイテムを絞り込んだこと
証取得に向けたアドバイスを開始し
が、製造、発送時のミス防止などに
た。しかし、老朽化した現工場で
つながった。このような対応により、
HACCP取得は難しく、工場を新設
テレビ放映から半年以上経っても、
しなければならない。そのためには、
1ヶ月以上の受注残を抱えるほどの
「まるとっと」の売上を今以上に増
評判を維持している。
やしていくことが不可欠である。
平成27年4月期の「まるとっと」
「まるとっと」の売上は平成27
(右)代表取締役社長 岸本
の 売 上 高 は 事 業 初 年 度 の6倍 に 増
年に入り急激に増加したが、今後も
(左)専務取締役 岸本
加、平成28年4月期はさらに増加す
継続して売上を伸ばしていくため
る見込みである。
に、製造規模拡大など製造体制のほ
また、衛生管理については、まだ
か、 営 業 体 制 の 強 化、Web販 売 体
強化の途上であるが、整理、整頓、
制の強化など山積する課題に取り組
清潔の3SはAD派遣前よりも向上し
まなければならない。中小機構は継
ており、少なくとも衛生面を理由に
続してフォローする予定である。
商談が流れる事態は発生していない。
また、岸本社長、岸本専務ともに
70歳代という年齢を感じさせない
<社員の士気も向上>
エネルギッシュな活動をしており、
「まるとっと」の売上増加は社員
今後も先頭に立って会社を引っ張っ
のモチベーション、モラルの向上を
ていくと思われるが、10年先、20
もたらした。
年先を考えると次世代へのスムーズ
干物だけを製造していた頃は、売
なバトンタッチも必要となってくる。
上が減少傾向で業績も決して良いと
現在、岸本社長、岸本専務のご子
は言えなかったことから、社員の士
息が次世代リーダーとして「山のふ
気は低かった。しかし、
「まるとっと」
もとの干物屋さん」の未来のために
の売上が徐々に増加し、メディアに
奮闘している。
幸雄 氏
賢治 氏
支援者のひと言
平成27年から急激に売上が増加
し、同社のこれまでの苦労がようや
く実を結んだこと、非常にうれしく
思います。
粘り強く地道な営業活動を続けら
れ、岸本社長、岸本専務が率先して
制約の多い工場で衛生管理の向上に
取り組まれてきたからこそ、結果が
出たのだと思います。
農商工連携事業計画の認定期間
は平成27年4月で終了しましたが、
さらなる売上向上、経営の向上を目
指していかれることを期待していま
す。
も取り上げられるようになると、社
認定事業の売上推移(単位:百万円)
30
25
20
15
10
5
0
24年4月期
25年4月期
26年4月期
27年4月期
四国本部
越智プロジェクトマネージャー
45
有限会社坂本石灰工業所
熊本県玉名市
子供や高齢者にも安全、安心!
業界初、発熱しない石灰乾燥剤を商品化
海苔やせんべいなどの米菓の品質保持に欠かせない石灰乾
燥剤。発熱するという業界の常識を覆し、「発熱しない安全
な石灰乾燥剤を世の中に広めたい」という強い思いで新事
業に挑む。
●会社名 有限会社坂本石灰工業所
●代表者 坂本 達宣
●設 立 昭和27年11月
●資本金 500万円
●売上高 19億4,500万円
(平成26年6月期)
●従業員数 86名
●事業内容
石灰製品(食品用乾燥剤、家庭用
乾燥剤、肥料など)の製造販売
●所在地
熊本本社
熊本県玉名市下273-1
関東支店
茨城県稲敷郡阿見町実穀1617-1
広島支店
広島県広島市安佐南区
山本3丁目4-16
●URL
http://www.sakamoto-lime.com/
●T EL 0968-76-6165
●FAX 0968-76-6130
事業の概要
ないこと、③人体に無害であること、
<石灰乾燥剤の
パイオニアとして>
価であること、等が求められるが、
海苔やせんべいなどの米菓を食べ
間の品質保持」が関心事であり、乾
るとき、必ずと言っていいほど目に
燥剤そのものの種類や品質を細かい
する石灰乾燥剤。有限会社坂本石灰
ところまで追求していない。
工業所は江戸時代後期の創業以来、
しかしながら、海苔用石灰乾燥剤
石灰に携わって150年以上の歴史を
ひとつを取っても、味付き海苔かど
有する石灰乾燥剤のパイオニアであ
うか、また、その味が濃いか薄いか、
る。もともとは石灰石を採掘し石灰
さらには用途やパッケージによって、
肥料などを販売していたが、付加価
使用すべき乾燥剤の特性は異なる。
値の向上を目指し、昭和35年より
同社は、商品の種類や仕様、保管
他社調達の石灰材料による乾燥剤の
期間に合わせて、最適な石灰乾燥剤
加工、販売を開始した。
を提案、加工(焼成)するノウハウ
一般的な乾燥剤としては、石灰以
を有しており、創業以来培ってきた
外にもシリカゲルやゼオライト系乾
石灰に関する知識、データの蓄積を
燥剤が流通しているが、特に海苔の
強みに、国内石灰乾燥剤のトップシ
品質維持のためには生石灰が持つ強
ェアを保ってきた。
●事業名
火傷しない安全な石灰乾燥剤の金
属除去による「乾燥剤I・C-Ⅱ」の
量産化事業
●認定期間
平成25年2月∼平成30年2月
燥剤を使用している。
<業界の常識を覆す
発熱しない石灰乾燥剤>
乾燥剤には、①吸湿能力が高く品
先に述べたとおり、海苔の乾燥の
質を保持できること、②科学的に不
ためには石灰乾燥剤が欠かせない
活性で食品成分と化学反応を起こさ
が、石灰乾燥剤には水と化学反応を
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46
食品メーカーにとっては、
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力な乾燥能力が必要であり、我が国
の海苔メーカーのほとんどが石灰乾
熊本本社
④取り扱いが容易であること、⑤安
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課題解決のためには、石灰原料の
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段階で金属含有量を減らすととも
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に、加工工程で金属を除去する必要
があったが、同社のみでは限界があ
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った。そこで、生石灰の採掘及び焼
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成技術・設備を有する薬仙石灰株式
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会社(山口県美祢市)と連携し、
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燥剤」の開発に着手した。薬仙石灰
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は、石灰活性度の制御技術を強みと
し、小ロットでも石灰を焼成できる
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設備を保有していた。両社で協力し
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て試行錯誤を重ね、原料段階で金属
異物が入らない原料製造プロセスを
確立するとともに、同社の加工工程
起こすと急激に発熱し、1分以内に
また、従来の石灰乾燥剤は航空法
においても、金属異物を除去するこ
300℃まで温度が上昇するという弱
で危険物に指定されていたため航空
とに成功し、15g以上の中・大袋で
点がある。そのため、高齢者や子供
機内で開封する包装食材への使用は
の流通を可能とする「乾燥剤I・C Ⅱ」
が海苔やせんべいなどと間違えて口
禁止されていたが、
「乾燥剤I・C Ⅰ」
の完成に至った。
に入れ火傷を負うという事故が後を
は弱アルカリ性に改良したことによ
絶たず、石灰乾燥剤業界においては、
り航空法の危険物適用外となり、航
<新連携事業計画認定への挑戦>
安全性の確保が大きな課題となって
空機用包装食材の販路拡大にも寄与
「乾燥剤I・C Ⅱ」の完成に目処が
いた。梱包材料に撥水性の素材を使
することになった。
立ちつつあった頃、熊本県の中小企
用したり、素材を強固にしたりする
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業支援機関である「くまもと産業支
など、業界全体で事故防止に努めて
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援財団」からの紹介で、国が進める
きたが、現在もこのような事故が年
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間150∼200件にものぼっていると
言う。
業界ではその危険性を認識しなが
らも、食品メーカーからの求めに応
じ、石灰乾燥剤を提供し続けてきた
が、同社の坂本達宣社長は、「石灰
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「新連携事業」の支援制度を知った。
「乾燥剤I・C Ⅱ」の改良や販路開拓
に活用できそうだと魅力を感じ、中
小機構に支援内容を問合わせた。そ
の後、中小機構の段谷プロジェクト
マネージャー(PM)の訪問を受け、
新連携事業計画の認定に向けた事業
計画作成に着手し、中小機構のブラ
の本質から変えていかないと事故は
無くならない。
」という強い思いを
事業の展開
持ち、20年以上も前から「発熱し
ッシュアップ支援が始まった。
当初、坂本社長は、「発熱しない
ない石灰乾燥剤」の研究に取り組ん
<乾燥剤I・C-Ⅰの課題>
乾燥剤は業界初であり作れば売れ
だ。平成15年からは熊本大学と連
「安全な石灰乾燥剤をつくりた
る。」と考え、従来品との置き換え
携して石灰が発熱するメカニズムの
い。」その強い思いで完成させた「乾
が順調に進んでいくと確信し、事業
研究を重ね、石灰内部の細孔を少な
燥剤I・C Ⅰ」であったが、実際に流
化を安易に考えていた。ところが、
くし、表面の撥水性を高め、水と石灰
通に乗せてみると浮かび上がった問
事業計画の作成にあたり、段谷PM
の急激な反応を抑制する加工技術を
題が「金属反応」であった。
から様々なアドバイスを受けること
開発した。この技術をもとに、平成20
一般的に、海苔や米菓などの包装
になった。例えば、既存商品である
年、業界初となる発熱しない石灰乾
食品は、乾燥剤封入後、金属探知機
「乾燥剤I・C Ⅰ」と新商品である「乾
燥剤「乾燥剤I・C-Ⅰ」を完成させた。
を使用した異物混入検査を行ってい
燥剤I・C Ⅱ」の違いを明確にするこ
「乾燥剤I・C」の「I・C」は、イン
る。「乾燥剤I・C Ⅰ」はその性質上、
と、そして、それを顧客目線でわか
テリジェント・カルシウムの頭文字
金属・非鉄金属の含有量が多く、
りやすく説明することの重要性であ
で、同社が命名したものである。従
10gを超えると金属検出反応を引き
った。それまで坂本社長は、既存商
来の石灰とは全く違う 安全な乾燥
起こすため、小袋のみの販売しかで
品と新商品の違いを突き詰めて考え
剤 を粘り強く追求してきた同社の
きず、量産・拡販ができない状況に
たことなどなく、まして新連携事業
思いが込められている。
あった。
で求められる「新規性」、「事業性」
47
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事業の成果
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<販路開拓コーディネート
事業の活用>
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同社は今まで海苔、米菓などの食
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品メーカーへのルート営業を中心と
した販売を行っており、エンドユー
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ザーに近い流通業者へのアプローチ
を行ったことがなかった。このため、
という発想もなかった。
廣瀬CADは「販路開拓コーディネー
段谷PMからアドバイスを受けな
ト事業」の活用を提案し、流通業者
がら、一緒に事業計画を作り上げて
が「乾燥剤」に対してどのような問
いくうちに、自社の強みや商品のセ
題意識を持っているかを把握し新市
ールスポイントも整理され、平成
場開拓の可能性を検証するための活
25年2月4日に新連携事業計画の認
動を開始した。まずは、廣瀬CAD、販
定を受けた。これが「乾燥剤I・C Ⅱ」
路コーディネーター、同社担当者で
の販路開拓を加速させる原動力とな
手分けをし、首都圏及び福岡市近郊
製造現場の様子
った。
のスーパーマーケット及び百貨店の
イデア出しをすることとした。
売場調査を実施し、海苔や米菓など
<石灰乾燥剤の
展開可能性を探る>
廣瀬CADは「ブレーンストーミン
の商品にどのような乾燥剤が使用さ
グ」の進め方をアドバイスし、石灰
れているのかを把握した
(表1参照)
。
新商品の販路開拓にあたり、同社
乾燥剤の新しい用途について、プロ
次に、ターゲットを①シリカゲル
のフォローアップ支援を新たに担当
ジェクトチームと一緒になって、延
など石灰以外の乾燥剤を使用してい
することになった中小機構の廣瀬チ
べ471件のアイデアを抽出した。こ
るメーカー及び流通業者、②従来の
ーフアドバイザー(CAD)は、同社
れらのアイデアを整理し、
「靴の乾
発熱する石灰乾燥剤を使用している
の商品開発担当者と議論を重ねるう
燥剤」や「剣道防具の乾燥剤」など、
メーカー及び流通業者の2パターン
ちに、同社は、研究開発型の原料メ
日用品での用途展開も検討した。し
と想定し、関東圏の小売・流通業9
ーカーであり、石灰に関する専門的
かしながら、
「 発熱しない という
社に絞り込んだ。さらに認定事業計
な知識やノウハウは有しているもの
商品の強みを活かせる市場は安全性
画書をもとにして、メーカー及び流
の、顧客目線での商品提案、いわゆ
が重視される食品市場である」とい
通業者、消費者の目線に合わせたプ
る提案営業の経験が乏しいことが課
う結論に至り、消費者から近いスー
レゼン資料を作成し、①安全、②吸
題だと考えた。廣瀬CADは、付加価
パーマーケットなどの流通業者への
湿力が強い(海苔の賞味期限が4か
値の高い「乾燥剤I・C Ⅱ」の販路開
展開可能性を検討することとした。
月から12か月の約3倍に)、③安価
拓に向けて提案型営業にシフトして
プロジェクトチームによるこの取
(シリカゲル価格の約3分の1)、④
いくことの必要性を感じ、マーケテ
り組みは、改めて市場ニーズや自社
取扱いが容易(包装材が破れない、
ィング戦略の再検討をアドバイスし
て支援を開始した。
最初に廣瀬CADは、商品開発当初
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への展開の可能性を検証することを
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場として日用品分野の開拓を模索す
ることとし、中小機構の販路開拓チ
ーフアドバイザーである相場氏と打
合せを実施し、まず同社内でプロジ
ェクトチームを組み、参入市場のア
48
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粒子が小さい、使用期限がわかる、
を強化していくこともあわせてアド
航空機輸送できる)等の商品特徴を
バイスした。
わかりやすく提示した。
ターゲット9社に対し、14回のテ
<顧客に選択の自由を>
ストマーケティング活動を実施した
坂本社長は、
「選択の自由が顧客
が、その結果は総じて「乾燥剤その
満足につながる。
」と語る。業界の課
ものの認知度が低い。
」ということ
題であり、社会問題である石灰乾燥
だった。また、流通業者は、乾燥剤
剤の安全性を他社に先駆けて追及し
に関する決定権を持っておらず、食
てきたが、まだまだ道半ばである。金
品メーカー側も、これまで自社で使
属反応対策についても十分ではない
用してきた乾燥剤に関する問題意識
ため、現在も改良に向けた取り組み
が少なく、無意識に従来の取引を継
が続いている。また、食品メーカーに
続していることが明らかになった。
対する安全に関する意識付けも十分
だが、今回の活動を通じて、同社
ではない。ただ、
「乾燥剤I・C Ⅱ」は、
の商品が競合他社にはない安全商材
胸を張ってお客様にお勧めできる自
であることは高く評価され、
「発熱
社ブランド商品である。安全性を追
しない乾燥剤を使用することにより
求したからこそ、顧客からの信頼が
社会的な評価を得られる。」、「他社
高まり、また、新連携事業計画の認定
との差別化を図ることができる。」、
を受けたことで社会的信用力も高ま
との意見を多数聞くことができた。
った。売上は大幅に伸長し、全社の売
特に、ペットフードメーカーからは
上、利益にも大きく貢献している。
「発熱しない乾燥剤は安全性の面で
石灰に関する知識と長年蓄積した
価値があり、他社との差別化が図れ
データ、吸湿に関する分析ノウハウ
る。また、自社商品の規格開発に合
と石灰の焼成技術、その結果完成さ
わせて、最適な乾燥剤を選ぶことが
れる品質の高い商品の組み合わせに
できる。」との高い評価を得て、「既
よるトータルサービスこそ、今後同
存乾燥剤との全面入替」という決定
社が展開していく「提案営業力」の
がなされ、ペットフードメーカーと
源泉である。また、最適な乾燥剤を
の取引を開始するに至った。
顧客が選択できるように提案営業し
販路コーディネーターは、乾燥剤
ていくことが顧客満足につながって
の認知度が低い状況下では、安全性
いく。
への意識付けを地道に行っていく活
新連携事業計画の認定、そしてハ
動が必要であると判断し、食品生
ンズオン支援により、自社の強みと
産・加工・流通に関する媒体への寄
事業戦略の方向性が明確になったと
稿、展示会での講演など、同社の知
言えよう。
「お客様の悩みに耳を傾
識やノウハウを活かしたPR活動を
け、その悩みに答えて行くことが営
積極的に行っていくことをアドバイ
業担当者の引き出しとなり、商品開
スした。また、顧客の商品に応じて、
発のヒントとなる。
」と坂本社長は
最適な乾燥剤を提案できるという同
言う。顧客に乾燥剤に関する知識が
社の強みを活かし、在庫期間や賞味
少ないからこそ、同社の強みが発揮
期限の延長など、より顧客の側に立
でき、これからの新しいチャレンジ
ったコンサルティングや商品提案力
につながっていく。
事業者のひと言
長年企業を経営していると、叱ら
れたり、本音でアドバイスしてもら
えることがほとんどなくなります。
新連携事業計画の策定の際、担当の
段谷PMから、本質を突いたアドバ
イスをいただき、とても新鮮で、多
くの気づきを得たことが印象に残っ
ています。新連携に取り組んだこと
が一つのターニングポイントになっ
たと思っています。
「安全な乾燥剤を世の中に広めた
い。」という強い思いで事業に取り
組んできましたが、これからも真摯
にお客様の声を聴き、研究開発を積
み重ね、解決策を提案していくこと
で、道を切り開いていきたいと思っ
ています。
代表取締役
坂本 達宣 氏
支援者のひと言
最近、
「乾燥剤I・C」が入った食品
をちらほらと見かけるようになりま
した。見つけるたびに嬉しくなりま
す。これからもお客様目線での開発
を続けられ、そして商品力の見える
化を通じた提案営業により事業が拡
大されることを期待しています。
同社に対するチーム支援によるフ
ォローアップが成果に繋がった事例
であると思います。
認定事業の売上推移(単位:百万円)
250
200
150
100
50
0
H24年度
H25年度
H26年度
H27年度見込
九州本部
廣瀬チーフアドバイザー
49
株式会社ECOMAP
沖縄県那覇市
北大東島の「ドロマイト」と「月桃」を活用
したコスメ商品開発で島の新産業創出に挑む
北大東島にしか無い数万年かけてドロマイト化した化石珊
瑚と、北大東島に自生する「月桃」を原料にしたコスメ商
品や消臭芳香剤等を開発。行政や地域金融機関の協力も得
ながら、販路開拓や資金調達などの課題を解決し、サトウ
キビに並ぶ地域の新しい産業を興そうと新事業に挑戦。
●会社名 株式会社ECOMAP
●代表者 三輪 恵美
●設 立 平成19年7月
●資本金 5,900万円
●売上高 1億円
(平成27年3月期)
●従業員数 15名
●事業内容
化粧品・アロマ素材製造販売
北大東村月桃加工施設の運営
●所在地
本社
沖縄県那覇市寄宮1丁目31-22
北大東島加工場
沖縄県島尻郡北大東村
字中野259-1
●URL
http://www.ecomap.co.jp/
http://okinawa-junkan.jp/
●T EL 098-894-3696
●FAX 098-894-7017
北大東島の月桃加工場
●事業名
北大東島の「ドロマイト化した化
石珊瑚」と、同じく北大東島の「月
桃」を活用したコスメ商品・加工
食品の製造販売事業
●認定期間
平成26年3月∼平成31年3月
●地域資源名
「サンゴ」、「月桃」
50
事業の概要
沖縄県北大東村は、沖縄本島から
東へ約360㎞の離島にある。サトウ
キビの生産や製糖および、漁業、観
光が産業の中心となっており、サト
ウキビの輪作としてジャガイモも生
産されている。また、沖縄県の各地
北大東島の月桃
に自然に生息している月桃は、近年
の研究で除虫成分や美容成分が含ま
村は、他に付加価値の高い新たな
<沖縄の天然資源を活用した
事業をスタート>
産業を起こして島民に雇用の場を確
東京都出身の三輪CEOにとって沖
保し、島の活性化を図るために平成
縄の自然の魅力は格別だった。森や
22年に月桃加工施設を建設した。
海の天然資源を生活に生かす術を伝
この加工施設には、島に自生する月
統の中から学び、現在の生活スタイ
桃(注1)を加工するための精密機
ルに合わせて使うことで女性の悩み
材の蒸留装置、乾燥機、繊維を取り
などを解決していきたいと考えてい
出す解繊機などが導入されている。
た。一方、三輪CEOの妻である同社
北大東村の村長が、月桃の活用に
の三輪恵美社長は、母親の視点から
実績のある㈱ECOMAP(沖縄県那覇
生活の中で安心して使える商品を提
市)の三輪範史取締役CEOに声をか
供したいという思いを強く持ってい
け、工場運営と特産品開発事業を同
た。
社に委託した。同社は平成19年に
「沖縄の地域資源を活かせば、無
設立され、月桃を活用してコスメ商
理無駄の無い商品がきっとできる。
品、消臭芳香剤などの生活雑貨を開
沖縄の地域資源である月桃を活かし
発してきた企業である。
て女性目線のコスメ商品を作りた
れている事が分かってきた。
(注1)月桃とは
沖縄の方言でサンニンと呼ばれる、
ショウガ科ハナミョウガ属の種生植
物。沖縄では伝統行事の「ムーチー」
や加工食品の原料に使用されたり、
虫よけとして利用されたりと、生活
に密着した素材で昔はどこの家庭の
庭にも植えられていた。北大東島の
月桃は沖縄本島のそれとは若干異な
る特徴を持ち、有効成分の違いや加
工のしやすさから、「大東月桃」と
して同社がブランド化を行っている。
い。」三輪CEO夫妻は、二人でそう
決めて自宅の一室に机を置き事業を
スタートさせた。
同社は、オフィシャルサイト「沖
縄循環生活」で販売している月桃を
使用した消臭・芳香剤スプレーの代
表的商品「ピュアシャワーシリーズ」
などがヒットし順調に業績を伸ばし
てきた。かつて自宅だった建物は、
4階 建 て の 本 社 兼 工 場 へ と 改 築 さ
れ、見学客が絶えない。
(注2)ドロマイト(dolomite)
とは
石灰岩のカルシウム(Ca)が長い
歳月を経て海水中のマグネシウム
(Mg)と交代され変化した鉱物。
この変化の時、成分構成にとても興
味深い変化が起きる。私たちがカル
シウムを摂取する際、マグネシウム
も同時に摂取する必要があるが、そ
の割合はCa:Mg=2:1で摂取すること
が理想とされている。驚くことに北
大東島のドロマイトはその変化の
際、この比率になっている。北大東
島は、過去にどこの島ともつながっ
ていないうえに、地球上で唯一島全
体がドロマイト化した、世界的に貴
重な宝島である。
カルマグ月桃
ドロマイト石鹸
<中小機構との出会い>
「月桃」と「ドロマイト」を活用
したコスメ商品等の研究開発・商品
化には、沖縄県の支援制度を活用し
た。同社の三輪CEOは、今後の販路
開拓方法についてメインバンクに相
談した際に、支店長から「中小機構
オフィシャルサイト「沖縄循環生活」
に相談してみてはどうか。
」との提
また、平成26年には「ドロマイ
案を受け、同支店長と旧知であった
ト石鹸」の商品化に成功し、15名
中小機構の金城チーフアドバイザー
まで増えた従業員とともに更なる成
(CAD)を紹介された。平成25年6
長を誓う。
月に三輪夫妻は中小機構を訪ね、金
ドロマイト鉱石
城CADと面談し事業の展開について
相談した。
極めて高いことがわかった。しかし
三輪CEOは、TVショッピングにみ
ヒトの皮膚に使用するには吸着力が
られる インフォマーシャル による
強すぎて、かえってカサカサにして
沖縄の地域資源を使った商品販売に
しまう。ここで三輪CEOならではの
ついての思いを金城CADに熱く語っ
直感と行動力が働いた。
「月桃」に
た。インフォマーシャルとは、商品
含まれる成分には肌を柔らかくする
が作られた経緯や体験談などを、ス
特性(エモリエント作用)があるこ
トーリー性を持たせ視聴者に感情移
とがわかっている。
「ドロマイト」
入させ購入につなげる手法である。
事業の展開
の洗浄力に月桃の成分を加えること
三輪CEOは、インフォマーシャルを
で肌に潤いを与え、洗い上がりのツ
沖縄の商品にとって素材や製造工程
<ドロマイトと月桃を活用した
商品を開発・販売>
ッパリ感を無くすことができると思
の良さ・安心安全等をしっかり理解
い、試行錯誤の結果、硬いドロマイ
してもらえる適切な手法であると考
前述のように、月桃に対して深い
トを加工しやすい粉末状にすること
えた。
理解と知識がある三輪夫妻だが、北
に成功した。この成功を受けて、北
しかし、プロモーションには多額
大東島村長からの依頼で最初に北大
大東村は月桃加工場に隣接してドロ
の資金が必要となるため、販売実績
東島を訪問していた頃は、予想以上
マイト加工場を整備し、その事業を
の無い段階での融資には、金融機関
に人口と産業が少ない印象を持つと
同社が受託する事になり量産体制が
も慎重にならざるを得ない。一般的
共に、月桃が防風林としてしか使わ
整った。
に事業者は自身の事業、マーケット
れていないことに疑問を抱いた。
こうして「ドロマイト石鹸」は
を肌感覚で熟知しており、事業計画
また、何度か島を訪問するうちに
30∼40代の女性をメインターゲッ
に自信を持っている。しかし情報が
琉球石灰岩に似たやけに白い石が気
トとして商品開発が始まった。さら
少ない金融機関は保守的な評価にな
になった。島の人に聞いてみると、
に、月桃の粉末とドロマイトを組み
るため、両者の折り合いが中々つか
「ドロマイト」(注2)という北大
合わせたサプリメントも開発し、カ
ず融資に時間を要する場合も多い。
東島にしか無い鉱物で、過去には活
ルシウムとマグネシウムを含んだサ
三 輪CEOの 話 を 聞 い た 金 城CAD
用方法を研究したものの硬すぎて使
プリは「カルマグ月桃」と名付けら
は、必要資金の内容、返済計画につ
えなかったという事であった。
れ、現在では沖縄県内外のショップ
いて具体的な裏付けを示して相談す
活用方法を研究するうちに、ドロ
やインターネットで販売されている。
る必要性を感じ、当面必要となる金
従業員の皆さんと三輪夫妻
マイトは汚れを吸着して落とす力が
額を融資してもらうことで実績を積
51
み、売上が立つなどリスクが減った
「ドロマイト石鹸」のプロモーショ
価を受けたものの、これが後日の購
段階で追加調達することをアドバイ
ンによる販売拡大を中心に行い、2
買・リピートに繋がるかどうかは未
スした。併せて中小機構のハンズオ
年目にはシリーズ化しチューブ入り
知数である。
『ドロマイト』という
ン支援を活用し販路開拓支援も受け
タイプ(半練り)を開発・販売する
素材が良いものとして認知されるに
られるよう、国の地域資源活用事業
こと、また、3年目以降は、大手流
は、エビデンス取得のために研究を
計画認定を取得することを勧めた。
通企業が運営する通信販売カタログ
徹底継続し研究成果の発表を行うこ
への参画、インターネットを活用し
と、自社ホームページの改良、産地
<事業計画のブラッシュアップ>
た通信販売チャネルで販路拡大を図
である北大東島のPR等、消費者目
三輪CEOは平成25年7月に地域資
ることをアドバイスした。
線の情報提供が必要である。
」とア
源事業計画認定を目指す決意をし
しかし、これらの取組みは同社に
ドバイスした。
た。金城CADは認定に向けたブラッ
とっても初の試みであると同時に、
シュアップを進める中で、同社が比
多額の資金を要しリスクも高い。確
較的高いマーケテイング能力を有
信に近い自信をもって進めようとす
し、生産性、成長性、付加価値力に
る 同 社 の 三 輪CEOに 対 し て、 金 城
高い可能性を有していると感じ、三
CADは出来るだけ多角的な視点か
輪CEOが「将来の目標はIPO」と言
ら、仮説を否定してみるなどの否定
った事が決して夢ではないと思うよ
的見解をあえて示すようにし、リス
うになった。金城CADは、そうであ
クを意識してもらう様にした。そし
れば、同社への支援は販路開拓支援
て、同社の社員も交え、これから実
だけでなく、事業推進に関する総合
施していくべきアクションを一緒に
金城CADはまた、展示会での結果
的な経営課題を解決する支援とする
考え抜く作業を行った。
を、現場に行けない金融機関にも報
べきであると思うようになった。
展示会の様子
告するようアドバイスした。このよ
平成25年12月に、沖縄県商工会
<市場モニタリングと認知向上>
うに事業の進捗状況を積極的に共有
連合会主催の「離島フェア」
の北大東
同社は、地域資源活用事業計画認
したことで、金融機関にも資金需要
島ブースに同社が出展した。
その際、
定事業者が申請できる補助金を活用
が発生するタイミングを把握しても
金城CADがその日来場していた北大
し、東京の展示会で試作品を使用し
らうことに役立った。
東村長と面談し、島の産業振興プラ
たアンケート調査を実施するととも
ンと同社への期待を聞かせてもらっ
に、更にインターネットでも5,000
<販売に向けての支援>
た。また、金城CADが北大東島も訪
人にアンケート調査を行った。その
ドロマイト石鹸の販売方針は基本
問し、村の経済課から情報収集して
結果、展示会で試作品を使用したア
的にネットや通販だが、三輪CEOは
工場や圃場の視察等を行い、原料の
ンケート回答者のうち90%から高
毎年11月に開催される「沖縄の産
調達見込み、行政等協力者の支援見
い評価を得られ製品には自信が持て
業まつり」への出店も決まっていた
込み、同社の島での評判などを調査
たが、インターネットによるアンケ
ので、そこに来ていただいた県内客
した結果、事業の実現性、事業規模
ート回答者のほとんどがドロマイト
に、ネット等以外でも身近に購入出
等について確認することができた。
を知らないと答えた。
来る場所を案内したいと考えた。
このように、金城CADが認定取得
女性がコスメ製品を使うかどうか
このため金城CADは、ドロマイト
に向けたブラッシュアップ段階で北
は、使ってみた感触で評価するとこ
石鹸を本格販売する前に、三輪CEO
大東島を訪問するなどして、自分の
ろが大きいが、実際に手にしてもら
に沖縄県内デパートのバイヤーを紹
目で現場を確認し現地ヒアリングし
う前に、そもそも商品や素材を知っ
介し、平成26年9月から自然派コス
た結果に基づいて三輪CEOを支援し
ているということが重要なポイント
メの常設コーナーで取り扱ってもら
て事業計画を具体化し、平成26年2
となる。このため、三輪CEOと金城
うことになった。初めはレジの横に
月に地域資源活用事業計画の認定を
CADは、展示会場では来場者一人一
「今月のおすすめ」という企画で置
取得した。この事業計画作成プロセ
人に十分説明できるよう、従業員5
いてもらった。このコーナーは、こ
スが、その後の金融機関との交渉に
∼6名を配置し、展示ブースも来場
だわりの自然派コスメを中心に大量
も役立った。
者の目につくよう2コマを角地に展
生産が難しい沖縄県内企業の製品で
開し、「ドロマイト」を知ってもら
あってもクオリティを見定めて取り
う活動を徹底する事にした。
扱っており、金城CADは同社のドロ
金城CADは三輪CEOと需要開拓の
金城CADは展示会後の意見交換の
マイト石鹸はそのコンセプトに合う
方針を話し合う中で、事業計画1年
場において、
「ドロマイト化粧品を
と判断した。その結果、バイヤーか
目に「インフォマーシャル手法」で
体験した人の大半から非常に高い評
ら高い評価をいただき、三輪CEOの
<需要開拓方針の策定>
52
素早い行動力もあって、すぐに正式
後の10月末では約1,300万円となっ
な取り扱い開始となった。
ている。
10月には、最終パッケージの完
ギフトショー等の展示会には毎年
成を受け、中小機構沖縄事務所会議
継続して出展しており、その際に行
室で販売開始のプレス発表を行った。
ったモニタリングによって、臭いの
その後も、中小機構が毎年発行す
改善、チューブ式へのニーズなど、
る「沖縄プロデュース」への掲載、
より良い商品に向けたフィードバッ
更に中小機構が提供するラジオ番組
クを得ることができた。これらの結
に三輪CEOと金城CADが出演し「ド
果を踏まえ、平成27年11月からド
ロマイト石鹸」を紹介するなど、中
ロマイト石鹸のシリーズ第1弾とな
小機構と連携してPRに努めた。
るチューブタイプの発売を予定して
いる。
また通販を行っていく中で、
「@
COSME(アットコスメ:コスメ製
品の口コミサイト)
」などに寄せら
れる多くのコメントで7ポイント中
6ポ イ ン ト と 高 い 評 価 を 受 け て お
販売開始記者発表の様子
事業者のひと言
ブラッシュアップの段階から金融
機関との信頼関係構築が出来たこと
がとても良かったと思っています。
担当の行員さんも最初は「地域資源」
のことをあまりよくわかっていませ
んでしたが、信用保証協会の担当者
とも一緒に勉強してくれました。
認定を受けたことで、金融機関と
の会話が非常にスムーズになり、こ
れは資金調達力の弱い当社にとっ
て、非常に大きかったと思っていま
す。また、大きな展示会は勝負の場
であり、ブースの規模、質には、こ
だわりたいので資金面の協力が欠か
せません。その意味でも中小機構さ
んとは、会社が大きくなろうという
時にベストなタイミングで出会えた
と思って感謝しています。
り、口コミでの広がりも出てきてい
る。
<金融機関との信頼関係を構築>
中小機構に同社を紹介した金融機
関は、これまでも中小機構と業務連
携し、共同で商談会を開催するなど、
中小機構の支援メニューを評価して
代表取締役 三輪 恵美 氏(左)
いた。また金城CADも以前から同金
取締役CEO 三輪 範史 氏(右)
融機関と交流を続けていたこともあ
り、三輪CEOが同金融機関を訪問す
支援者のひと言
る際は、金城CADも積極的に同行し、
同金融機関が抱える懸念や疑問点を
把握し解消に努めた。
具体的には、必要運転資金の根拠
となる売上見込や原料調達面での課
題の有無、生産工程の課題の有無な
ど三輪CEOの説明の場に金城CADが
同社の商品
同席し、金城CADから客観的視点で
補足説明することで、融資担当者の
更に本事業を機に、商品のアフタ
理解が深まった。
ーサービス向上のため社内コールセ
また、融資審査時に限らず、ハン
ンターを設置した。その結果、取扱
ズオン支援を通して把握した同社の
販売後のフォローが売上に結びつく
商品開発力や組織力、経営者の資質
好循環が形成された。
といった財務面だけでは捉えられな
このように事業が市場投入から拡
い同社の強みを、金融機関に伝える
大期までタイミングを逃すことなく
ことで、事業の将来性を評価しても
順調に推移したのは、三輪夫妻の熱
らうことができた。
心な取り組みや、同社社員の一丸と
三輪CEOの口癖は、 難が有ると
書いて有難う との事。前向きであ
りながら謙虚な三輪氏と、それを支
える奥様の人柄にECOMAPという会
社の成長が垣間見える気がします。
事業の初期段階で客観的評価を適
宜金融機関と共有することで、短
期・長期の資金調達が可能とまりま
した。中小機構と金融機関が互いの
強みを活かした支援が行えた事例だ
と思います。北大東島産のドロマイ
トと月桃が、さとうきびと並ぶ名実
共に新たな産業財として成長する事
を期待し、今後も精一杯サポートさ
せていただきたいと考えています。
なっての取り組みと共に、金融機関
事業の成果
売上高は平成26年10月10日の発
売開始から約半年後の平成27年4月
末時点で約600万円、発売から1年
との良好な関係構築によるスムーズ
な資金調達がポイントとして挙げら
れる。
沖縄事務所
金城チーフアドバイザー
53
平成27年度 新事業創出支援事業 ハンズオン支援事例集
発 行 平成28年3月
独立行政法人 中小企業基盤整備機構
経営支援部 経営支援課(連携事業支援担当)
経営支援部 ハンズオン支援統括室
連絡先 〒105−8453 東京都港区虎ノ門3−5−1 虎ノ門37森ビル
TEL:03−5470−1194(ダイヤルイン)
FAX:03−5470−1670
中小機構URL:http://www.smrj.go.jp
新 …新連携
地 …地域資源
農 …農商工
新連携、地域資源、農商工連携についてのお問い合わせ・ご相談は、
お近くの中小機構地域本部・事務所までお願いします。
金比羅神社
新虎
通り
虎ノ門
ヒルズ
虎ノ門三丁目
新虎通り
関東本部
■北海道本部
〈対象地域〉北海道
■東北本部
〈対象地域〉青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島
■関東本部
〈対象地域〉茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・東京・神奈川・新潟・長野・山梨・静岡
〒060-0002 北海道札幌市中央区北2条西1-1-7
ORE札幌ビル6階
新 地 農 011-210-7472
電話 新 地 農 011-210-7481
FAX 〒980-0811 宮城県仙台市青葉区一番町4-6-1
仙台第一生命タワービル6階
新 地 農 022-399-9031
電話 新 地 農 022-399-9032
FAX 〒105-8453 東京都港区虎ノ門3-5-1
虎ノ門37森ビル3階
新 03-5470-1606 地 農 03-5470-1640 電話 新 地 農 03-5470-1573
FAX けやき大通り
■中部本部
〈対象地域〉愛知・岐阜・三重
■北陸本部
〈対象地域〉富山・石川・福井
■近畿本部
〈対象地域〉滋賀・京都・奈良・大阪・兵庫・和歌山
〒460-0003 愛知県名古屋市中区錦2-2-13
名古屋センタービル4階
新 農 052-201-3068 052-218-8558
地
電話 新 地 農 052-201-3010
FAX 〒920-0031 石川県金沢市広岡3-1-1
金沢パークビル10階
新 地 農 076-223-6100 076-223-5855
電話 新 地 農 076-223-5762
FAX 〒541-0052 大阪府大阪市中央区安土町2-3-13
大阪国際ビルディング27階
新 地 農 06-6264-8619
電話 新 地 農 06-6264-8612
FAX 高松サンポート
合同庁舎
■中国本部
〈対象地域〉鳥取・島根・岡山・広島・山口
■四国本部
〈対象地域〉徳島・香川・愛媛・高知
■九州本部
〈対象地域〉福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島
〒730-0013 広島県広島市中区八丁堀5-7
広島KSビル3階
新 地 農 082-502-6689
電話 新 地 農 082-502-6558
FAX 〒760-0019 香川県高松市サンポート2-1
高松シンボルタワー タワー棟7階
新 地 農 087-823-3220
電話 新 地 農 087-811-3516
FAX 〒812-0038 福岡県福岡市博多区祇園町4-2
サムティ博多祇園BLDG.2階
新 092-263-0325 地 農 092-263-0323
電話 新 地 農 092-263-0331
FAX ■詳しい情報は下記HPをご覧ください
金城
沖縄事務所
金比羅神社
新虎
通り
至
那
覇
空
昭和シェル
港
駅
ゆ
線
い
園駅
山公
奥武
虎ノ門
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至 イオン
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国
小禄駅
本 部
赤嶺駅
道
33
ー
ル
那覇西高校
1号
レ
ココストアー
地域資源活用
チャンネル
マクドナルド
■沖縄事務所
〈対象地域〉沖縄
■本部 経営支援部
〈対象地域〉全国
〒901-0152 沖縄県那覇市字小禄1831-1
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電話 新 地 農 098-859-5770
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