496 生活費又は教育費に充てるための資金援助について贈与税が

平成 27 年 4 月 20 日
No.496
生活費又は教育費に充てるための資金援助について贈与税がかからない場合の再確認
最近の税制改正で、子・孫に係る教育資金又は結婚若しくは出産費用等を父母・祖父母が援助する場合に、贈与税の非課税
制度が設けられています。この点につきましては、お客様から尋ねられることが多いため、父母又は祖父母から子又は孫への
生活費又は教育に充てるための資金援助について、基本的な取扱いをご説明します。
1.資金援助を一括で受ける場合
資金援助を一括で受ける場合とは、資産税 FP News vol.486 でご紹介しました教育資金のために一括して援助する
場合の贈与(1,500 万円が非課税)
、結婚・子育て資金のために一括して援助する場合の贈与(1,000 万円が非課税)が該
当し、一定の要件を満たせば非課税になる規定です。この制度を適用する場合の手続きは、まず金融機関等で子や孫名義で
口座開設をする必要があります。口座開設後は援助するための資金を異動し、その資金の使途がわかる領収書を金融機関に
その都度届けて、口座から引出してもらう流れになります。資金の引出し方法としては、前記の都度精算の他、一定期間内
に支払った分をまとめて引出す方式を適用している金融機関もあります。
この制度については、教育資金又は結婚・子育て費用として一括で資金を援助することが可能となるものの、資金を支払
った都度金融機関での引出手続きが必要となる点、支払いの使途が教育や結婚・子育てに関して具体的に限定されている点
等が難点であるといえます。
2.資金援助を必要な都度受ける場合
以下では、父母又は祖父母から資金援助を必要な都度受ける場合の取扱いをご説明します。
父母又は祖父母から子又は孫へ資金援助をする場合には、原則的には贈与税の課税の対象となります。
しかし、扶養義務者(A)相互間において、生活費(B)又は教育費(C)
、結婚・出産費用(D)に充てるための資金援
助のうち、通常必要と認められるもの(E)については、必要な都度直接充当される場合には、贈与税の課税対象とされま
せん。ただし、資金援助を受けた財産が生活費や教育費等に充てられずに預貯金や有価証券、不動産等の購入費用に充てら
れる場合等、生活費や教育費等として充てられていなければ、その部分について贈与税の課税対象とされます。
なお、子が自分の資力で居住する賃貸住宅の家賃等を負担することが困難等の事情がある場合には、社会通念上適当と認
められる範囲の家賃等を親が負担している場合にも、贈与税の課税対象とされません。
(A)扶養義務者とは、配偶者並びに民法第 877 条の規定による直系血族及び兄弟姉妹並びに家庭裁判所の審判を受けて扶養義務
者となった三親等内の親族(但し、生計を一にする者については、家庭裁判所の審判がない場合でもこれに該当するものとし
て取り扱われます)をいいます。
(B)生活費とは、その者の通常の日常生活を営むのに必要な費用(教育費を除く)をいい、治療費や養育費その他これらに準ずる
もの(保険金又は損害賠償金により補てんされる部分の金額を除く)を含みます。
(C)教育費とは、被扶養者(子や孫)の教育上通常必要と認められる学費、教材費、文具費、通学のための交通費、学級費、修
学旅行参加費等をいい、義務教育費に限定されません。
(D)結婚費用のうち、結婚式・披露宴の費用については、その結婚式・披露宴の内容、接待客との関係・人数や地域の観衆等に
より本来費用を負担する者がそれぞれ負担している場合には、そもそも贈与には該当しません。
出産費用のうち、検査・検診代、分娩・入院費(保険等により補てんされる部分を除く)については、治療費に準ずるもの
となるため、そもそも贈与には該当しません。また、子育て費用のうち新生児のための寝具や産着等のベビー用品の購入等に
ついて生まれてくる子が通常の日常生活に必要なものである場合には、贈与税の課税対象となりません。
(E)通常必要と認められるものとは、贈与を受けた者(被扶養者)の需要と贈与をした者(扶養者)の資力その他一切の事情を勘
案して社会通念上適当と認められる範囲の財産をいいます。
3.まとめ
教育費についていえば、大学まで全て公立で約 1,000 万円、全て私立で約 2,300 万円かかるとされ、子育て世代の家計
の大きな負担になっているのが現状です(文部科学省「家計負担の現状と教育投資の水準」
)
。給与所得者の平均給与が 414 万
円であること(国税庁「平成 25 年民間給与実態統計調査」
)からすると、父母や祖父母からの資金援助は子育て世代の家計
に大きく貢献することは間違いありません。その援助のご検討の際に上記をご参照頂ければ幸いです。
(担当:本岡 聖子)