ダイキュア クリア SD-661

新製品/新技術紹介
DVD Bonding Resin “DAICURE R CLEAR SD-661”
DVD-ROM用新規接着剤 “ダイキュア R クリア SD-661”
記録材料技術本部
橘内 崇
<開発の背景>
●DVD-9に対応
大量の情報を記録,再生するために光ディスクが注
DVD-ROMにはDVD-5,DVD-9,DVD-10,DVD-18
目 を 浴 び て い ま す 。 特 に DVD( Digital Versatile
の4種のフォーマットがあります。DVD-9はFig.1に
Discま た は Digital Video Disc) は デ ジ タ ル 方 式 で 音
示すように,片方の基板(半透明反射膜,L0)を通
声・文字・映像を記録再生できるため,CDやビデオ
してもう片方の基板(反射膜,L1)の情報を読みと
テープに置き換わる記録媒体として有望視されていま
るため,光学的に透明な接着剤が必要とされます。通
す。
常,L1にはアルミニウムが用いられますが,L0には
DVDは2枚のディスクを貼り合わせた構造を有し
金やシリコン化合物が使われています。そのため,貼
ているため,各種の貼り合わせ方法が検討されていま
り合わせた基板が容易に剥がれないようにアルミニウ
す。接着方法にはホットメルト型接着剤,粘着シート,
ム反射膜,金やシリコン化合物等の各種半透明反射膜,
カチオン重合型UV接着剤,ラジカル重合型UV接着
およびポリカーボネート基板との接着性が必要になり
剤等を使用する方法があります。DVD-ROM(再生
ます。新製品SD-661はこれら各種反射膜やポリカー
専用DVD)の場合,CDの生産技術を展開できる点と
ボネート基板との優れた接着性を示すため,DVD-9も
接着剤層に光学的透明性が必要となるDVD-9にも対
含めたあらゆるタイプのDVD-ROMの生産に適用する
応できることから,ラジカル重合型UV接着剤が広く
ことができます。
使用されています。
DVD-ROM用接着剤に求められる特性として,硬
化性,反射膜に対する接着性,ディスクの耐久性があ
ります。“DAICURE CLEAR SD-661”はこれらの特
性に優れ,世界中のユーザーに広く使用されていま
す。
<製品の特徴>
“ DAICURE CLEAR SD-661” の 代 表 的 な 物 性 値
Fig. 1 Structure of DVD-9.
をTable 1に示します。DVD-9の場合,接着剤層の厚
さは規格化されており,膜厚の均一性をコントロール
しやすくするため,粘度を約600mPa・s前後となるよ
うに設計しています。また,DVDは記録密度が高く
●硬化性
ディスクの反りの影響を受けやすいため,反りを小さ
DVD-ROM用接着剤は反射膜のついた基板を透過し
く抑える必要があります。アクリル系のUV材料にと
た紫外線で数秒以内に硬化する必要があり,紫外線が
って,硬化収縮は避けられない現象ですが,ディスク
直接UVコート剤に照射されるCD用コート剤と比較
の反りを考慮すると,硬化収縮率はなるべく小さい方
し,より高感度化を図る必要があります。通常,アル
が良いといえます。そのため,新製品SD-661の硬化
ミニウム反射膜は50 nm前後の厚さがあるため,基板
収縮率は6.7%と低い値に抑えています。
を透過し減衰した非常に弱い紫外線でも十分硬化でき
るように光重合開始剤を選定し,配合量の最適化を行
っています。
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DIC Technical Review No.6 / 2000
新製品/新技術紹介
Table 1 Physical Properties of SD-661
Item
Typical data
Condition etc.
Before curing
Color
Pale yellow
Visual
Viscosity
Refractive index
590 mPa・s
1.498
25℃, Brookfield viscometer
nD25, Abbe
Surface tension
38 mN/m
After curing
Tg
10℃
23 ℃
Measurement of dynamic viscoelasticity
[(tanδ)max]
Rheovibron DDV IIEA
Modulus
30℃
2 MPa
50℃
4 MPa
Frequency 3.5Hz
75℃
100℃
6 MPa
6 MPa
Temperature rising speed 3 ℃/min
6.7 %
Density method
Shrinkage on curing
●高耐久性
DVDの長期信頼性を確保するためには,接着剤の
特性に記録面の保護機能が要求されます。
耐久性は,高温高湿試験前後における信号特性で評
価します。信号特性の劣化要因は,主としてアルミニ
ウム反射膜の化学変化です。高温高湿の環境下で長時
間ディスクを放置すると,アルミニウムが酸化され透
明化し反射率が低下するために信号が読みとれなくな
ります。新製品SD-661では特に使用する原料を厳選
し独自の処方を施すことによって,アルミニウムの酸
化を防ぎディスクの高い信頼性を確保しています。
耐久性試験の例として,新製品SD-661で貼り合わ
せたDVD-9のエラーレート(PI error)をFig. 2に示し
Fig. 2 Change in PI error of DVD-9 bonded with SD-661.
ます。80℃95%RHの高温高湿条件下でもエラーレー
トの上昇がほとんどみられず,耐久性に優れたディス
使用やコストダウンを目的として新規半透明膜の検討
クを生産できます。
がなされており,それらに対応した接着剤を開発する
ことでDVDの市場拡大をサポートしていきます。
<将来の展望>
DVDはタイトル数も増え,プレーヤーの低価格化
お問い合わせ先
埼玉工場
も進んできたため,今後一層普及が進むと考えられま
記録材料技術本部 光学材料技術グループ
す。貼り合わせ方式もUV硬化型接着剤を用いる方式
TEL: 048-722-8219
が主流となり,今後もその需要は拡大基調にあるとい
えます。さらに大容量化を目指してブルーレーザーの
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