イベント開催報告

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タイトル: Urban, Climate Change and Finance
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日時:2014 年 12 月 5 日(金)15:00-16:30
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主催者・共催者名: JICA 研究所
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目的・概要
急速な都市化は国際的にも新たな課題である。国連によれば、2050 年までに世界人口の約 70%が都市部
に居住し、約 90%の経済活動が都市に集中するといわれている。無計画な人口や経済の成長は高レベル
なエネルギー消費、交通渋滞や環境劣化等都市部における深刻な問題を招く。本イベントは気候変動に
おける都市の役割に関する議論を強化しうる「低炭素で気候耐性ある都市」の実務的かつ現実的なビジ
ョンを見出すことを目的として、開発途上国や先進国、国際機関等の様々なステークホルダーからの現
実的な視点を寄せ合い、このビジョンを達成するための機会と課題を特定するために開催するものであ
る。
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アジェンダ(講演者名を含む。敬称略)
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須藤智徳, JICA 研究所主任研究員
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Radley Horton, コロンビア大学/米国
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Ho Chin Siong, UTM/マレーシア
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Benoit Lefevre,World Resources Institute/米国
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Hervé Breton, AFD/フランス
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Jan Corfee-Morlot, OECD
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発表・議事の概要
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須藤 JICA 研究所主任研究員から、都市の人口、経済性等の指標を示したうえで、(1)低炭素で気候
変動に影響されにくい都市計画・開発における主要な教訓とは? (2)そのための効果的な政策策定
においてもっとも重要な要素は? (3)都市当局と開発金融機関にとってその経験を気候ファイナン
スに活かすには? (4)開発金融機関や研究機関にとってどのようなことをさらに研究することが必
要か? との問題提起を示した。
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また、須藤主任研究員は、その回答として、(1)よくデザインされた開発計画とそのタイムリーな
実施と O&M 能力がカギであること、(2)開発計画とファイナンスに関する中央政府と地方政府の適切
なコーディネーション、(3)都市の金融能力(財政管理能力)の改善、(4)コベネフィッツを生み出
すことのできる環境 を提示した。
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コロンビア大の Horton 氏は、100 以上の都市の 550 人を超える研究者や実務家からなる Urban
Climate Change Research Network (UCCRN)について、そしてその最初のレポートである”Assessment
Report on Cities and Climate Change (ARC3)”について説明した。
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マレーシア UTM の Ho 氏は、イスカンダルでの低炭素型都市開発の事例をベースにその取組を紹介
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した。見通しでは,2015 年に 2005 年比で GHG 排出原単位でマイナス 58%、絶対量でマイナス 40%の
削減が見込まれる。とくにその中で交通部門の(続いて民生部門の)削減効果が大きいことを示し
た。とくに教訓として、開発の視点との融合、定量評価のできるベースライン方法論、低炭素ブル
ープリント計画とコンセンサスを通した科学的で客観的な決定ができること、研究者と実務者の協
同、国際協力や能力開発の重要性が指摘された。
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WRI の Lefevre 氏は、とくに都市の役割が重要となる交通に焦点を当てたプレゼンテーションを行
った。交通部門は年間 1.4–2.1 兆ドルもの投資が行われる部門であり、そのうち 58%(1 兆ドル)が
民間セクターからの投資となっているが(先進国はそのうち 3/4),途上国では公的資金の方が比率
が高い。問題は、どうすれば公的資金が民間資金を呼び込み市場を成長させることができるか?と
いうところにある。とくに国際協力の公的資金は「レバレッジ」となるべき。そして、いくつもあ
る金融手法は、それらを適材適所にコーディネートすることで最も効果的に活かすことができると
主張した。
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フランス援助機関 AFD の Breton 氏は,AFD の方法として、対象とする都市の様々な状況に応じた
テーラーメイドなファイナンス、バリアの問題に対処するための政策対話と技術協力、イノベーシ
ョンのための知識開発とパートナーシップ開発の 3 点を挙げた。
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OECD の Corfee-Morlot は、ODA 全体の約 1/2(73 億ドル,2012 年)が環境目的で、その約 1/2 が
都市を対象としていると述べた。ただその数は少なく、言い換えると個々の案件がかなり巨大なも
のとなっていて、その典型が交通部門プロジェクトであり(案件数で 57%)
、水関係が 23%で続く。
エネルギーは 2%に過ぎない。都市の適応関係は、全 ODA の 8%でその 7 割がアジア諸国が対象、低利
融資型が 72%、82%が中所得国の都市対象となっていて主としてインフラ関係である旨紹介した。
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最後に須藤主任研究員は、まとめとして、革新的ファイナンスの必要性を示し、交通部門で(将
来の)地価に応じたファイナンスの方法(Land Value Capture)などを例示した。
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イベント風景
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(報告者: JICA 研究所 須藤 智徳)
COP20/CMP10 日本パビリオンにおけるイベント開催報告・発表資料については以下をご覧ください。
日本語:http://www.mmechanisms.org/cop20_japanpavilion/
英
語:http://www.mmechanisms.org/e/cop20_japanpavilion/
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