光の知恵( 第 7 回 ) 寝室の照明

光の知恵
(第7回)
寝室の照明 光は生体リズムのスイッチとなり、体に良い効果を与えることになります。たとえば、朝日をあ
びると体が目覚め、夜は睡眠に必要なメラトニンホルモンを排出しぐっすりと眠ることができま
す。寝室の照明は、最良の睡眠のために光の量と質を考慮することが大切です。
睡眠に良い光と
悪い光 - グレア・
色温度・照度・
照明手法
間接照明のあかりや温かい光色のスタンドが、気持ちを穏やかにし眠りの前のひとときに落ち着いた時間をもたらします。
睡眠のために良い光と悪い光があります。悪い光は、まぶしい光と色温度の高い光。そして照度
が高い光は睡眠を妨げます。寝室の全般照明は、見上げた時に光源が直接見えたり、器具全体が
まぶしく光り輝くものは避ける必要があります。シーリングライトは乳白ガラスやアクリルなど
の拡散光が得られるものや、間接照明が適しています。フロアスタンドやブラケットで全般照明
を得る手法も好ましく、建築化照明が可能であればより良い空間になります。寝室の推奨照度は
JIS の「照明基準総則 JIS Z9110 : 2010」では 20lx(15lx ∼
30lx) 位となっています。睡眠の際の光をこの数値に近づ
けるならば、状況により明るさを調節できる調光装置の
使用や照明器具の分散、さらに回路わけをするなどの方
法があります。夜間の常夜灯として、センサー付の足元
灯やコンセントの後付が可能なほんのりと照らす LED 仕
様の照明器具も便利です。
光源が見えないように設計されており、まぶ
色温度の高い光源は、覚醒作用があり寝室の照明として
しくない穏やかな光で空間全体を照らします。
は適していません。昼光色や昼白色は避け、目にも優し
BAUMN / G1533W /E17LED 電球(E17 LDA)
く落ち着いた空間となる電球色や温白色の光源がおすす
×4(別売)
めです。ダウンライトを使用する際は、ベッド上に配置しないように調整することも必要です。
適切な方向に光を照ら
してくれるフレキシブ
ルチューブが特徴の
LED デスクランプ。
充電式のため持ち運び
が自由。(6 時間のフル
充電で約 1.5 時間点灯
ダウンライトは、
可能)STEM RAY /
頭上をさけて
S7093N /LED 1.5W×1
配置しましょう。
( 電球色タイプ )
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(第7回)
寝室の照明 光源の高さと
光は上から照らすものという固定概念を捨て、設置位置をいろいろと変えてみるとその時の気分
照明心理
にあった心地よい空間が生まれてきます。たとえばリラックスしたいときは、天井の照明を暗く
して低い位置にスタンドのあかりを灯すと、ゆったりとしたくつろぎの空間になります。
反対に、活動的な時間帯や緊張感が必要な状況では、高い位置で上から下へ照らすのが効果的で
す。光の位置が人の心理にこのような作用をおよぼす理由として、太陽光の高度変化が考えられ
ます。したがって昼は上から下への光、夕方から夜にかけては低い位置からの光が私たちにとっ
て自然で快適な光といえます。
光の位置と生活
光の高さは生活をするうえでの重要なポイント。照明器具の位置がだんだん下に下がるにつれて、あかりは全般を照らすも
のから部分を照らすものになります。天井灯など高い位置の照明は活動的な解放感を、スタンドなど低い位置の照明は安ら
ぎと落ち着きを感じさせます。
メラトニンの分泌リズムは、
メラトニンと光
光の刺激に左右されます。
朝明るい光を浴びるとその刺
激が目から脳に伝えられ、メ
ラトニンの分泌が抑制されて
覚醒を促します。夜は眠気の
ホルモンであるメラトニンが
増えて眠気を催します。
このため、太陽光を充分に浴
びている人は、夜になるとメ
ラトニンの分泌がスムーズで
すが、日中、太陽光を浴びる
機会が少ない人は体内時計の
リセットがうまくいかず、生活のリズムが狂いやすくなります。そこで、朝昼は出来るだけ太陽
光を浴びるか昼の光に近い光源で空間を照らし、夕方や夜は明るさをおさえた夕日に近い光源で
空間を照らすことが望ましいでしょう。眩しさのないおだやかな光が生体リズムに対して優しい
光といえます。
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(第7回)
寝室の照明 ホテル・病院から
ホテルの客室の照明は、入り口で点灯し枕元で消灯
学ぶ寝室照明
することができたり、手元のスタンドの明るさも自
由に調光できるなどベッドの頭回りで、操作が可能
なように設計されています。光源は電球色で、まぶ
しさに対しては十分な注意をはらった光になってい
ます。最近では、ビジネスホテルでも手元照明にフ
レキシブルな LED 照明を使うことが多くなっていま
す。住宅の寝室でも、三路スイッチや手元で調光可
能なライトコントロール(調光器)を使うと便利で
天井には照明器具はなく、間接照明の十分に明る
いベース照明を主軸に、ベット横と椅子横にはス
節電にもなります。
タンド。さらにムード演出用に紫色の LED コーブ
いま世界の医療施設の病室照明でスタンダードにな
照明がベッド壁面に仕込まれている。
っているのはブラケットです。ブラケットと言って
も、器具一つに全般照明(間接照明手法が使われている)と手元読書照明が一体になっているもの
が多くみられます。これは、療養空間である病室が利用者である患者にとって、いかに快適である
かを追究した結果です。住宅の寝室より使用時間
が長く、一日中その環境下で過ごす必要があるの
で、患者の行動に対応した質の良い照明を検討す
る必要があります。
左の照明器具(K-606W)は、快適な病室環境を
つくる最新の病室用 LED ブラケットです。
スリムでコンパクトな本体に十分な照度が得られ
LED BED HEAD BRACKET / K-606W / 上向:LED 19W×2、
る全般照明と手元照明を集約させています。天井
下向:LED 10W×1、常夜灯:E12 ナツメ球 LED 0.3W×1
を開放的に見せる上向きの光とまぶしさをおさえ
た下向きの光が理想的なバランスで配光されています。同様に住宅の寝室も見上げた時の視点で、
寝室の光の配置を計画し、点灯と消灯がしやすい光環境を考えることが大切です。寝室に窓からの
昼光が入りにくい場合は、壁面や天井を明るく照らす照明を検討することをおすすめします。
一日の疲れを癒す大切な寝室の照明には、体に良い光を選択し上質な光環境を考えることが、健康
を維持し明日への大きな力につながるのではないかと思います。
M.T
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コラム
(第7回)
寝室の照明 照明基準総則 JIS Z 9110:2010
照度基準の日本工業規格「JIS Z9110:1979」が 2010 年に改訂されました。
30 年ぶりとなる今回の改定で大きく変わったのは、照明の量の基準ではなく、「照明の質に関し
ても規定された」ことです。照明の質の基準として<照度>だけではなく、色の見え方に<平均
演色評価数 Ra>、不快グレアに<UGR>、照度のムラに<照度均斉度>が加わりました。名称も
JIS 照度基準 から「JIS 照明基準総則」に変わりました。視作業の環境エリアやスポーツ施設では、
照明均斉度の推奨値が入ってきますが、住宅や宿泊施設のような雰囲気を重視する環境では、照
度均斉度の基準は明記されていません。
使用環境の目的を十分に把握し、人の行動に対応した好ましい光環境を作り上げるためには、さ
まざまな要素を総括して計画することが必要であると、本文に次のように書かれています。 「 良い照明環境を得るためには照明設計では、次の事項を考慮する。a )人々の活動目的に合致
した照明レベルの設定 b ) エネルギーの有効利用 c ) 周辺環境との調和 。特に照明レベルの設
定においては、照度、照度分布、輝度、輝度分布、陰影、グレア、光色、演色性など諸活動の状
況に応じて求められる照明の量と質をともに満たすことが重要である。この基準では基準の設定
が可能な中で最も重要な照度、照度均斉度、不快グレア、および演色性についての基準が示す。」
推奨照度に関しては、従来の幅のある表記とは異なっています。例えば、住宅の寝室の全般の照
度は 20lx となっていますが、これは照度段階の表現で照度範囲は 15 ∼ 30lx の意味を示します。
(表1参照)
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コラム
(第7回)
寝室の照明 照明基準総則 JIS Z 9110:2010
また、2011 年 3 月 11 日の東日本大震災による電力不足の際、節電のための設計照度決定の補助
になるよう,2011 年 5 月 9 日に追補(改正点だけを示して改正する規格改正手続きの一手法)が発行
されました。もし視覚条件が通常と異なる場合は、設計照度の値は推奨照度の値から、照度段階
で少なくとも 1 段階上下させて設定しても良いとされています。
なお、照度段階は、照度の違いを感覚的に認識できる照度の最小差異を、ほぼ 1.5 倍間隔として
規定しています。「照明基準総則 JISZ9110」には解説があり改正の趣旨、経緯などが記載されて
います。正しい活用の為には、全体の内容を確認の上、利用されることをお勧めいたします。
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