広幅複合機の導入で高精度の図面を出力 クライアントとの

【導入事例】662
平川建設株式会社
662 ● 平川建設株式会社
【 導入事例 】
Vol.138
広幅複合機の導入で高精度の図面を出力
クライアントとの情報共有や
社内文書の電子化を推し進める
導入の狙い
建設現場で使用する精度の高い図
面の出力による作業の円滑化
既存機の性能面における課題解決
導入システム
カラー広幅複合機
『Océ ColorWave 300 MFR』
AutoCAD
基幹系オーダーシステム
導入効果
図面出力に関する課題やストレスの解消
図面の電子化による記録の蓄積
総務分野での活用におけるコスト
削減等
数多くのビッグプロジェクト成功の陰には、同社が提供する職人技が不可欠だ
(写真はみなとみらいODKビル建設風景)
横浜スタジアムやよみうりランドの木製コースター、みなとみらいの最新オフィスビ
ルまで、神奈川県内のランドマークを数多く手がける、鳶工事業大手の平川建設株
式会社。同社では、クライアントのゼネコンから支給された図面に、作業に必要な
情報を書き込んで使用してきたが、利用していた出力機に限界を感じていた。この
USER PROFILE
平川建設株式会社
●
業種:建設業
●
事業内容:鳶・土工工事業、建築工事業
●
従業員:270名(2007年3月現在)
ほど、大塚商会より広幅複合機『Océ ColorWave 300 MFR』
を導入。これまで
の図面出力などに関する不満を一気に解消すると共に、スキャン機能を活用して、
図面の電子化にも取り組み始めた。
機械ではできない職人技で
大手ゼネコンの信頼を得る
平川建設株式会社(以下、平川建
広幅複合機の導入で図面利用の不都合を解決し
よこ
た平川建設株式会社
2010年9月取材
業施設、中高層の新築マンション、大
型レジャー施設などの建設には欠か
せない 存 在として、大 手ゼネコンか
ら多数の受注を得ている。
設)は、1959年に重量鳶工事の請
過去のビッグプロジェクトでは、横
負業として創業。現在では約270人
浜スタジアムや、よみうりランドの木
の従業員を抱え、鳶・土工工事業の
製コースターの建設に携わったほか、
分野では国内最大規模を誇る。本社
最近では、みなとみらいセンタービル
所在地の神奈川県を中心とした首都
の工事を担当。総務部 部長の深澤 友
圏全域において、超高層・高層の商
秋氏によると「当社では、スーパーゼ
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【導入事例】662
総務部 部長
ネコンのプロジェクトにこだわってい
C A Dデータを出力して現場に持参し
深澤 友秋氏
る部分もあります。中堅規模の企業か
ている。ゼネコンは1つのプロジェクト
ら依頼を受けることもありますが、目
に膨大な量の図面を必要とするが、そ
先の売上や利益率に惑わされずに、継
のうち同社が使用するのは1つの現場
続して安全に仕事を成し遂げたいとい
で10枚程度だという。その図面に障
う考えから、既存のお客様との信頼関
害物の有無や、材料の搬入ルートなど
係を第一に考えています」と同社の経
現場の状況を手描きで書き込みなが
営方針を話す。
ら、事前に作業工程を確認していく。
「メーカーの担当者からも、マニュアルどお
りの回答だけではなく、使い方のヒントもも
らえて、助かっています。今後各部門の実
質的な活用を通じて、大塚商会さんにはい
ろいろ問い合わせすると思いますが、引き
続きしっかりしたサポートを期待しています」
建設業界は、長引く不況の影響が
「工事の進行状況や工程の変化など
深刻といわれているが、鳶工事大手の
で、クライアントが事前に作った図面
同社の悩みは、仕事不足よりも人材不
と、現場の状況が違うことは珍しくあり
足である。鳶工事を扱う会社は、一般
ません。また、クライアント側が使うた
に5〜10人規模の職人集団というと
めに作成された図面なので当社の作
ころが多く、同社のように会社組織が
業に必要な情報が不足していることも
整備されている企業は、神奈川県内に
あり、図面への加筆作業が必要になり
も数社しかない。取引先の大手ゼネコ
ます。それも作業のスピードを考える
ンにとっても、同社のように高い技術
と、どうしても手描きになるのです」と
力のある人材を確実に集められる下
深澤氏は図面利用の様子を説明する。
請けは貴重な存在だ。
「確かに、工事件数全体は縮小傾向
にあるといえます。しかし、当社で扱う
そんな大事な図面を出力する広幅出
力機だが、同社が長年使用していたも
のは多くの問題を抱えていたという。
鳶工事は、機械に頼ることができない
深澤氏は当時の様子を次のように振
ので、どうしても人手が必要となりま
り返る。
「広幅のモノクロのレーザープ
す。しかも、建設業界が3K職場と言
リンタだったのですが、A1サイズの出
われるようになってから、若い人が集
力でも、印刷にムラが生じて、現場で
まりにくく、人材の確保がいっそう難し
の使用に耐えないこともありました。
くなっています。ですから、同社では
また、長尺印刷ができない、CADなど
入社してくれた人が、できるだけ長く
のアプリケーションソフトにドライバが
働けるよう、人材教育にも力を入れて
対応しないなど、不満に感じることが
います」
と深澤氏は力強く語る。
多かったのです。メーカーには何度も
かつて、職人の世界は現場で仕事
を覚えるのが普通だったが、同社では
申し入れましたが、対応してくれる気配
が感じられませんでした」
安全性の面からも、現場に出る前の研
また、その出力機にはスキャン機能
修に時間を割くように腐心している。
がなかったため、同社で加筆した図面
の控えをとることができず、取引先に
図面出力に多くの課題
代替機の登場を待つこと8年
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現物を提出してしまうと、後で閲覧する
のが難しい状況となったことも、深刻
な課題の一つであった。
同社の業務では通常、取引先のゼネ
とはいえ、同社が欲する機能をす
コンから配付された紙図面コピーや、
べ て 有した 代 替 機 がなかったため、
不 満を感じながらも結 局 、8 年 間も
ん。その印刷品質の高さにも驚かさ
使用し続けていた。最近になってよう
れました」と、事前の不安がかえって
やく、同 社が必 要とする性能を備え
好印象につながったという。
た大判複合機を扱うメーカーが増え
また、同社の業務特性上、図面を外
始め、満を持して、新機種の導入に
へ持ち歩くことも多く、雨などの水濡
踏み切ることとなった。
れへの耐久性も懸念していたが、こち
らも合格だった。
従来の課題はすべて解消
予想外の高性能に大満足
「さすがに、雨があたる場所に図面
を貼り出すようなことはしませんが、
移 動 中 の ちょっとした水 濡 れなどに
「今度は絶対に満足できるものが欲
は、持ちこたえてほしいという希望が
しいと考え、7〜8社を対象に検討を
ありました。インクジェットプリンタな
進めました」と深澤氏。
ので、耐水性は弱いだろうと覚悟して
コピー機を得意とするメーカーの
いたところ、印字サンプルに直接水を
機 種 や 、業 務 用 の 大 判 複 合 機 専 門
かけるなどしてテストしてみたら、意
メーカーの製品を検討対象とする中
外と大丈夫でした。これならいけると
で同社が選択したのは、大塚商会か
いう手応えをつかめました」
ら紹介された日本オセの広幅複合機
こうした実践的なテストにもパスし
『Océ ColorWave 300 MFR』
て『Océ ColorWave 300 MFR』
だった。この機種は、1台でカラーと
は、2010年6月、同社に導入された。
モノクロのプリント・コピー・スキャン
導入後、3カ月ほど経った現在では、
ができ、同社のニーズを満たしてい
早くも利便性を実感する場面が増え
た。操作も簡単で、いろいろなタイプ
ている。
「一言でいうと、以前の出力
のファイル形 式に対 応できることか
機では諦めなければならなかったこと
ら、建設用のCAD図面だけでなく、社
が、諦めなくてもよくなった、というこ
内の幅広い用途での使用も可能で、
とです」と深澤氏は笑顔を見せる。
大判オールインワンプリンタとして高
く期待されたという。
「まずは、カラー出力とスキャン機
能が便利ですね。以前から現場での
「組織としてはシステムに詳しくな
作業用図面への加筆は色違いのペン
い人間でも、プロッタとプリンタの性
やマーカーを使っていたのですが、う
能の違いを意識しなくても使えるも
ちで加筆した記録をスキャンし、さら
のが必要でした。図面を印刷する時
にそれをプリントアウトすることが多
も、普通のプリンタに出力するような
くなりました。また以前は、加筆した
感覚ですね」と深澤氏は話す。
図 面 そ のものをクライアントに渡し
インクジェットプリンタの最大の難
てしまっていました。今ではスキャン
点といえば、印刷速度だが、深澤氏は
データを送ることで、お客様にも早く
「推測していたよりずっと速かったの
確認してもらえますし、社内でも控え
です。心配していただけに、予想外の
がとれ広く閲覧できるようになり、記録
スピードに驚きました。しかも速いか
としても残せるようになりました」
らといって解像度を犠牲にしていませ
導入間もないが、工事部に限らず全社で活用が進
んでいる
現場で使用する図面出力やスキャ
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【 導入事例 】
662 ● 平川建設株式会社
Vol.138
【導入事例】662
ンだけでなく、総務部などにおいても
や保守までやります』
と申
『Océ ColorWave 300 MFR』の
し出たシステムベンダー
使用頻度が高まっているという。
は複数ありました。しかし、
「図面出力以外の用途も結構あ
あれから何年か経って、大
ります。実 は 、我 々 総 務 が 、
『Oce
´
塚商会さん以外の会社は
ColorWave 300 MFR』
を欲しかった
1社も残っていません。ま
理由の一つとして、社内行事で使用す
たITを活用する以上、OS
る横断幕や社内掲示の製作への利用
のバージョンアップに必ず
があります。例えば、入社式の横断幕
対応しなければなりませ
や、安全決起集会の立て看板などは、
ん。ちょうど今、Windows
長尺の出力が可能なので非常に助かっ
XPから7への移行を考える時期になっ
ています。以前、横6メートルの幕など
ていますが、基幹システムを他社に依
は、外注で2万円くらい製作費がかかっ
頼していたら、バージョンアップしよう
ていたので、社内で作成できるようにな
にも、開発元の会社がないという恐ろ
りコストメリットが大きいですね。また、
しい 事 態になっていたかもしれませ
駅構内に張り出す求人広告ポスターな
ん。やはり、基幹システムにしても、今
ども、内製しています。総務部門以外で
回の出力機にしても、安定的に長く付
も社長が年度初めの計画表作成に使
き合えるところにお願いしたいと痛感
用したり、工事部が社内用のポスター
しました」
と深澤氏は語る。
を作成したり、全社的に活用が進んで
今回の『Océ ColorWave 300
います。エクセルで作ったデータをポス
M F R 』導入を機に、深澤氏は社内の
ターサイズで出力することもあります」
IT化を進めたいと考えている。
ランニングコスト面でも満足度は高
「大判の図面のスキャニングが可能
い。
「今、オセさんの純正用紙を使用し
になったので、まずは、図面の電子化に
ていますが、品質もインクの乗りもよ
取り組みたいと思います。図面をお客
く、単価も安くて助かります。安いから
様に戻してしまったり、保管場所の確保
といって、他社製の消耗品を使用する
が大変だったりで、今まで手元に残すこ
とトラブルの元になることが多いので
とを諦めてきた部分もありますが、実績
すが、紙もインクもオセさんのものな
を記録する意味でも、図面の電子化、さ
ので、安心して使用できますね」
らに社内文書の電子化は急務の課題で
クライアントから提供されるCADデータのA1出力もス
ピーディだ
す」
と深澤氏は意欲を見せる。また、取
手堅いIT導入で
職人たちの現場をサポート
平川建設では、これまでにもAuto
引先のゼネコンが使用していることか
ら導入したAutoCADについても、さら
に活用頻度を高めていく考えだ。
機械が代わることができない熟練し
CAD導入のほか、基幹システムの開
た鳶職の仕事を、I Tが支えることで、
発などで大塚商会との取引があった。
信頼と品質向上へ向けた取り組みに
「実は、基幹システムの開発の時に
は、大塚商会さん以外にも『システム
開発に加えて、サーバのメンテナンス
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拍車がかかりそうだ。
平川建設株式会社のホームページ
http://www.hirakawa-co.jp/