30P-0228 腎尿細管上皮細胞におけるマグネシウム欠乏による細胞周期抑制因子の増加 五十里 彰 1,真田 あゆみ 1 , 澤田 隼 1 , 山崎 泰広 1 , 菅谷 純子 1 ◯利根川 千恵 1 , ( 1 静岡県大薬) 【目的】抗生物質や抗がん剤などは、腎尿細管に障害を及ぼし、低マグネシウム 血症を伴った急性腎障害などの副作用を引き起こす。マグネシウムの投与により 薬剤惹起性腎障害が軽減することが報告されたが、マグネシウムの作用機序は解 明されていない。本研究では、ラット尿細管由来の NRK-52E 細胞を用いて、細胞 周期抑制タンパク質の発現に対するマグネシウム欠乏の影響を検討した。 【方法】NRK-52E 細胞を血清飢餓法で同調培養後、マグネシウム有無の培地で培 養した。細胞周期はフローサイトメーターを用いて解析した。細胞周期調節タン パク質の発現量をウェスタンブロット法により解析した。p21 と p27 の mRNA 発 現量は Real-time PCR 法、プロモーター活性はルシフェラーゼアッセイにより測 定した。 【結果および考察】マグネシウム非存在下に比べ、マグネシウム存在下で細胞増 殖が有意に促進した。このとき、S 期の細胞が増加し G1 期の細胞が減少したこと から、マグネシウムは G1 期から S 期への移行の調節に関与すると示唆された。細 胞周期調節タンパク質の発現量を比較したところ、マグネシウム非存在下で p21 と p27 の発現量が高かった。p21 または p27 を過剰発現させると、G1 期の細胞 が増加し S 期の細胞が減少したことから、マグネシウム欠乏による p21 と p27 の 発現増加が細胞周期の抑制につながると示唆された。マグネシウム欠乏により、 p21 と p27 タンパク質の安定性は変化しなかったが、mRNA 発現量とプロモータ ー活性が増加した。以上のことから、マグネシウム欠乏によって p21 と p27 の発 現量が増加し、細胞周期の進行が抑制されることが明らかになった。さらにマグ ネシウム欠乏による細胞増殖の抑制が、尿細管の再構築を阻害すると推察された。
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