がん患者の退院支援 在宅を目指す退院調整のシステム構築 京都大学医学部附属病院 地域ネットワーク医療部 退院調整看護師 宇都宮宏子 退院支援の現状 今までの退院支援 ・医師が退院決定してから 家族が「帰れない」 ⇒MSWへ連絡・患者が相談 MSW・・相談業務の中に 退院支援・転院支援 ★医療的な知識がない 入院医療をそのまま在宅へ 無理だよね・・・転院先探し? 入院医療から在宅医療へ がん患者の場合 ・積極的治療が困難になって から、、退院宣告 ・見捨てられる、見離された 今までDrを信頼してきたの に、今更他の病院へは、、 治療の場面・治療決定 病棟→外来へシフト! 家族も交えたICができてる? 患者が孤独に闘っている 在宅看護の経験から 在宅のよさ 家が持つ力 生活者としての強さ 患者さん⇒家・生活の場・『私自身、私の人生』 地域で生活する利用者を支える「看護」 「看護師さんに来てもらってたら家で死ねるかな」 「在宅ケアの事知ってたらもっと早く帰りたかった。」 平均在院日数短縮・介護保険導入 ⇒「医療依存度の高い利用者も増加する」はずが 訪問看護導入・・・病院退院時がもっと必要じゃないの? 病院側が在宅医療・訪問看護を活用していない 『こんな状態で家は無理よね、大変でしょ」 訪問看護を利用して在宅を目指した退院へ! 退院支援とは・・ どのような患者に退院支援が必要なのか 入院医療を受けた結果、入院前と療養生活上に 変化がある ①医療管理・医療処置等が継続する ②ADL・IADLが低下し、自立した生活に戻れない ③癌や難病のように、進行する症状を抱えながら 在宅療養を迎える ④在宅療養における病状管理が不十分なため再入院を 繰り返していた 「家に帰りたい・・」の声に 最初は・・ 患者・家族の声に動き出す 退院支援だった ★終末期の退院支援 生活を送れる時間を作れな いかな・・もっと早く! 初回カンファレンス 主治医・病棟Nsと 退院調整NS・MSW ⇒医療上の課題・生活介護 上の課題を総合的にアセ スメント⇒方向性検討 医療チーム間での共有! Dr:退院時のイメージは? Ns:生活状況はどう変化? 病態予測に基づくイメージ 患者・家族への説明内容 患者の思い・家族の思い ⇒どうしたいだろう? ⇒叶えるために何が必要? 患者を軸に、チームで支援 退院支援・退院調整 入院~退院まで 3つの段階に分ける 病院規模・機能によりどの段階を誰が担うか 京大の退院支援システムのポイント 1.病棟看護師が主体的に取り組む 2.3段階の1・2段階は病棟の特徴を踏まえた仕組みづくり 3.退院調整看護師が第1・2段階の仕組みづくりを支援 4.退院調整困難事例に「地域ネット」がサポートする 退院支援・・自己決定支援 病棟医療チームの役割 患者・家族が「病気によって、これからどのような生活を送 ることになるかを理解しどこで療養を続けるかを決定す る。」 患者:どこでどのような生活を送りたいか 家族:どこで看たいか、看れるか Dr:病状説明・病態予測 Ns:生活にどう影響する、本人に望む生活スタイルに 近づける⇒生活の場に帰せる方法 退院支援・・第1・2段階 入院患者から「退院支援が必要かどうかの特定」を早期に 行い、支援介入を始める ・・情報確認・動機付け 第1段階 (48時間以内) 生活の場に帰すための看護 第2段階(1週間以内) 医師が退院を目指す時期に、継続する医療は? ADL・IADLから、入院前とどこが変化? 目指せる状態は? 看護介入・リハビリ・退院指導は? 早期離床・・入院生活による悪化を予防 医療処置をシンプルに・帰せる医療提供を考える 退院調整とは・・第3段階 退院調整看護師・MSWの役割 患者の自己決定された療養方法を可能にするために 人的・物的・経済的な環境を整える どのようなサポートがあれば可能か 自宅環境・自宅に変わる療養先の検討 人的・・医療スタッフ・介護スタッフ 物的・・医療管理上必要な物品 介護用品・食事に関連する物品等 ★経済的な負担はどうか、継続性はあるか 院内における退院支援プロセス 第1段階 入院当初から退院計画は始まる ・退院支援が必要な患者の早期把握⇒入院目的は? ADLから支援や自宅環境調整が必要 服薬管理・病状管理が不十分(再入院歴あり) 在宅医療・ターミナル期で在宅ケアが必要 既に在宅ケアを受けていて調整が必要 ・入院前の生活状況を知る(ADL・IADL・介護力) ・病棟Nsから患者・家族と退院について話し始める(主 治医も巻き込んで)⇒入院診療計画を利用! 院内における退院支援プロセス 第2段階 ・ 退院する頃のイメージの共有 医療管理・必要な処置⇒退院後も継続するか? ADL・IADL 提供しているケア⇒患者ができるところ 出来ないところは何か? 入院に伴うリスクを最小限にとどめる 依存・寝たきり・あきらめ⇒退院支援で患者が変わる! ・ 現在提供しているケアを在宅用にアレンジ 投薬の簡素化・点滴やカテーテル使用を簡便な方法へ 症状コントロールは定期投与を基本に扱い易い方法へ 在宅看護経験者の知識が必要! 退院支援カンファレンスを支える ★在宅に向けたアセスメントシートを利用 ・治療モデルから生活モデルにNsの思考を切り替える ・入院時の取った情報から支援の必要性を創造する 入院前の生活状況・家族状況・サポート力 患者の理解度・受け止め・患者指導の評価 ⇒退院調整看護師やMSWが参加する事でコンサルト ★看護師チームで継続発展できるようにするには・・・ ・記録での情報共有をどうするか? ・退院支援計画書を利用・・・退院支援は一枚の絵 ・看護計画に立案がホントはいいんだけど・・・ 院内における退院支援プロセス 第3段階:退院調整 病棟でのアセスメントを受けて どうしたら帰せる? 病院側だけではイメージ貧困! 制度?サービス 在宅のイメージ ★退院後のイメージが膨らみますか? ★ポケットに情報はありますか? 公的制度⇒何が使える?⇒地域のマネジメント部門 社会資源として何がある?⇒制度との絡み 患者居住地のサービス提供量 院外とのネットワーク構築ができているか! 医療上の課題をサービスへ 在宅医 かかりつけ医 患者の安心感 新たに逆紹介する時 在宅療養支援診療所 どんな医療が必要か 症状管理を具体的に伝える 看取りの可能性 ★ここを伝えないと退院調整NS の存在意味がない! ★入院支援病院・・自院? ホスピス?決めておく! 訪問看護 直接ケアを依頼する 患者との信頼関係 医療保険→末期がん(余命6M) 神経難病 回数制限なし、複数StOk ★医療ニーズの高い高齢者 ⇒3回/Wの制限あり ★自己負担も考えよう! 生活介護上の問題をサービスへ 社会保障制度につなぐなら ①介護保険 ②自立支援法 ③難病施策(市町村差あり) 65歳以上・・① 40歳以上64歳・・末期なら① ②の認定待ちが可能? 自宅環境の問題:電動Bed・ 車いす・ポータブルトイレ 訪問入浴・ヘルパー 介護保険の流れ すでに認定⇒入院時情報? (サービス計画書・利用票) ケマネジャーと連携 「一緒に退院調整よろしく!」 新規申請の場合 申請→訪問調査・意見書 認定:1か月かかる! 退院時サービス必要なら⇒ ケマネジャー決定・暫定! がん患者の退院調整 ポイント1:医療管理継続・・・・ADLは自立 退院後も継続する管理・処置がある 症状コントロール(疼痛・栄養管理・HOT等) ストマ(ウロ・コロ)、ドレーン関連 ⇒起きている病態を患者・家族にどのように説明してい るか?どう受け止めているか? ⇒管理・手技がどの程度自立しているか? ⇒今後どんな悪化が予測されるか? 退院調整のポイント 現在のADLから 通院可能・・Drが実施する 自宅での管理は? [訪問看護] ケアの頻度といつ? PTCD:シャワー介助 HPN:ルート交換・入浴 ストマ:交換・入浴 在宅医療 [在宅医]:提供可能なDr 外科?泌尿器?内科? 麻薬処方可能? 在宅では困難⇒受診 在宅医と当院との連携 在宅療養を希望されるなら 早い時期に在宅医へ! ★依頼するポイント・自院 との役割分担を明確に! ★管理料請求について 退院前カンファレンスの実際 第1段階:家族・地域・院内 情報共有・問題点は把握 ⇒その上で、話し合い ・今後の病態予測 ・在宅でどこまで看れるか ・ケア提供の上で注意す る点を確認 ・看取り・急変は? 何ができる?どうする? 在宅看取りの可能性 第2段階:本人・最初のメンバー 本人交えて・・・ ・話し合いの報告 ・メンバーの紹介 ★退院に向けてのタイム スケジュール 家族へ指導する内容 準備する物品・書類の 確認 癌患者さんを自宅に帰すとき・・・ 病状をどう聞いているか? 積極的な治療はできない 何もできないなら帰りたい 死んでもいいから帰りたい 患者さん・・・余命は知らない 最期まで希望をもてる 自己決定支援 これからの生活、何ができるか なぁ・・ こんな生活を送りたいなぁ・・ 患者の言葉で聴く、相談にのる 家族への説明・・今・これから 病態予測の説明 今後どのような変化が起こるか 緩やかな変化 突然・・いわゆる急変 「何ができる?何もできない」 患者を想う気持ちは様々 闘い続ける事が一番 症状や悪化する現実に向き 合っているのは患者である 「帰ろうね」って思えたら・・・ 医療上の課題 現在ある症状・・何故? 今後継続?悪化? 緩和する方法は? これから出てくる症状は? 何故? どんな医療での解決 が可能? 緩和する方法は? 大きく患者の生命に影響する のは? 生命予後 「紅葉みようね」 肯定的な言い方を! 生活介護上の課題 食事⇒食べれなくなった時 補液・・ポート?高カロリー? 排泄⇒泌尿器科系は確認 消化器科・・イレウス オピオイド・・便秘対策 骨転移・脊椎転移 ADL拡大、どこまで? 骨折のリスク・・患者に説明 脳転移⇒意識レベル どんな障害が出る? 退院調整チームによる 適切なサポート 1.自己決定への傾聴・相談 生活がどう変わる? その時、どこで、どう暮らし たいか?⇒患者の気持ち ここを優先的な軸にする! 長い治療経過で聴くタイミ ング・・節目(再発・転移) 2.病状と変化予測のIC 緩やかな変化・急変 その時医療は何ができ る?できない? 3.在宅に向けたシンプル ケア調整 医療の場⇒生活の場 データ管理から何を優先す るか?の発想 4.看取りの場とケア準備 急性期Drだから言わなく てはいけない事 在宅側がバトンタッチして 伝える事・・死への教育 病院内部の意識・構造を変革! 病院における医療作業 ①生命を維持する ②生活の場に帰す 今までは①⇒②でよかったが、、、 ①に全精力を尽くしても生活の場に安心して帰れる 状況を作らなくては退院できない ②を①と同じ重要な目的として医療者が認識す る! 「どの様に治すか」と同時に「どの様に帰す事がで きるような検査と治療を行うか」 「治療のパス」から「帰宅可能なパスへ」 仙台往診クリニック川島孝一郎先生 「退院計画:在宅導入のコツ」 外来からの情報は? *痴呆・その他精神障害を疑う *入院前の状況 (施設入所者、他院で在宅医療管理を 受けている等) 入院 看護師 初期情報 収集 入院診療 計画 医師 病棟看護師が看護計画の中で 展開 入院時スクリーニング シート ENT計画必要者の早 期把握 地域ネットワーク医療部 相談・援助依頼書 カンファレンス 患者・家族 との面談 ・包括的アセスメント ・ENT後の方向性確認 在宅での情報確認 *再アセスメントとプラン立案 * 退院調整 もう尐し早い段階での支援介入ができないか、 入院前に! 外来患者への支援へ! 外来通院中・・「家にいたい、何とか家で看たい」 この時にサポート体制を整えて在宅療養を継続! ADL・IADLの変化に外来で気付けるか? 最初のIC時、再発・転移等治療経過の節目 入院しないでいいサポート体制へ! 日頃から患者・家族と話し合う場面を持つ! 病状経過から適切な時期に在宅支援を導入 ★入院判断時に「入院」ではない「在宅」も 検討していく⇒外来看護師・訪問看護師 病棟・外来NSたちの看護力 最初は・・ がむしゃらに! 「こんな状態でも帰れるんだ !」「帰って良かったね」 ⇒病棟看護師への フィードバック 在宅への調整:どんな事? どれくらい時間かかる? 何をキチンと説明する? 自分たちでできる事は何? 病棟NSたちの変化! 看護部レベルアップ研修 「退院支援コース」 研修生が業務改善に! 越年で継続する・評価 病棟毎・外来毎の仕組み! そして20年度! 「退院支援担当者連絡会」 各病棟・外来に担当者 部署の特徴・課題にそった 退院支援・在宅支援 900 新規依頼数推移 800 700 600 500 400 300 200 100 0 平成12年度 平成13年度 平成14年度 平成15年度 平成16年度 平成17年度 平成18年度 平成19年度 療養上の問題支援 40件 6% 在宅療養支援 138件 20% 退院支援 344件 49% 転院支援 176件 25% 平成19年度 支援内容別 筋・骨格系 脳血管障害 その他 免疫・膠原病疾患 呼吸器疾患 内分泌・代謝疾患 悪性新生物 循環器疾患 神経疾患 精神疾患 平成19年度 退院支援から在宅療養へ 疾患別 グループホーム, 1 精神科病棟, 1 訪問リハビリ , 1 その他, 9 デイサービス, 2 介護タクシー, 2 精神障害者地域生活支援セン ター, 2 宅配食事, 2 訪問介護, 5 デイケア, 6 通所リハビリ, 9 保健所, 17 居宅介護支援事業所, 81 ホスピス病 棟, 18 市役所・福祉事務所, 21 診療所・医院, 21 福祉用具・医療機器, 23 訪問看護, 76 一般病院, 33 地域生活支援センター, 39 往診医, 55 平成19年度 <在宅>活用した社会資源 末期がん患者の退院調整 本人「帰りたい」家族「叶えたい、でも不安」 ポイント⇒IC どう聞いている?どう受け止めた? そしてどうしたい? 患者の想い・家族の想い…一致はしない 向き合える家族、向き合えるための家族調整 でも、、、向き合えない家族もいる・・・ ポイント⇒訪問看護・在宅医のネットワークを作る 情報把握・在宅時の支援・事例を通じた研修・勉強会 地域合同研修会:訪問看護師・ホスピスNS・京大NS 一人の患者さんを通じての意見交換・共通言語 今年度診療報酬改定 後期高齢者・・退院後の生活を見越した計画的な入院医 療・入院中の評価とその結果の共有・退院前後の支援 後期高齢者退院調整加算 100点(退院時1回) ・退院困難事例に対して、退院支援計画を立案し、チーム で支援し退院できた場合算定 ①退院支援が必要かの特定②具体的な支援計画 ③計画に基づいて患者・家族に支援を行う 退院時共同指導 300点 3職種以上の参加:2000点加算 病院側の看護師が「退院後の生活」を患者・家族と一緒に 考える事を当たり前にしよう!
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