情報メディアとインターネット 第2回 メディア・リテラシー概説 学術情報基盤センター 升屋正人 「メディア」とは? 1.情報を伝える方法 新聞 雑誌 テレビ・ラジオ インターネット ホームページ ブログ/マイクロブログ 電子掲示板/SNS 電子メール 2.情報として伝えられるモノ 文字、写真、映像、音声→マルチメディア 3.伝える情報が記録される媒体 HDD/CD/DVD/USBメモリ 「メディア・リテラシー」とは? メディアを批判的に受け止め、メディアに対する主 体性を培う教育 ほとんどの先進国で義務教育(国語に含まれる)に組み 込まれているが、日本の取り組みは遅れている…という よりこの意味での取り組みは皆無 「コンテンツの作り方」止まり メディア産業・教育産業は野放し 食品メーカーに対する安心・安全はうるさいが… 早期教育ビデオ、しつけビデオ、テレビゲーム、ケータ イなどが子どもの心身の発達にどのような影響を与える かは一切検証されていない 多くのジャパニメーションが海外で放映禁止 私たちの取り組み方 自己防衛する or メディア・教育産業で大儲けする or 市民を都合のいいように動かす いずれにしても、メディアの影響がどのようなものなの かを知る必要がある 子どもたちの教育に携わるなら、自己防衛のための知識 を子どもに与える義務がある…んじゃないかな? 意識せずに育ってしまった大人がすでに存在 子どももまたメディア漬け、のスパイラルが既に回転中 メディア産業にとってはホクホク せめて子どもは救おうよ あなたのメディア接触時間は? テレビ・DVD・ゲーム・ケータイ(スマートフォン 含む)・ネットサーフィン(パソコン)をあわせて 1日何時間くらい? 平日:○時間 休日:○時間 小中学生の平均と比べてみよう メディア接触時間は世界一 小中学生は平日休日を平均すると1日6時間以上 テレビ・ビデオ視聴時間はずば抜けて世界一(2003, 2007) ゲーム時間を足したメディア接触時間ではさらに断トツに 中3で1日19時間の例も(2007年所沢市) 休日10時間以上が12%(2008年文京区中2平均) 2007-2008でも増加 テレビ・ビデオを平日3時間以上視聴 小6:34.0→45.8%(43.0% - 2010年) 中3:32.4→38.8%(35.0% - 2010年) by 全国学力・学習状況調査2008 テレビ・ビデオ視聴時間と学力 • • • メディア漬けの悪影響で時間 が長いほど学力が低い • メディア反対派? 塾時間が長い(=視聴時間が 短い)と学力が高い • 塾関係者? 全く見ないよりちょっと見た 方が学力が高い • メディア関係者? などの解釈がある 乳幼児期のメディア接触の早期化・長時間化 テレビ世代・ゲーム世代が子育てを始めた1990年代 以降加速 授乳時にテレビ・ビデオ・DVD・ケータイする母親 が7割超 脳神経回路が形成される時期にアイコンタクトではなく 人工光線・機械音・電子音を与える 「電子ベビーシッター」 特定のテレビ番組やビデオに長時間赤ちゃんを向き合わ せる 子育てビデオや早期教育ビデオを売り込む企業の戦略にはまる 幼児期にゲーム機を買い与える・おもちゃ代わりにパソ コンで遊ばせる 小学校高学年の生活行動の変化 (1941→2005) ほとんどの「生活」時間が減少 睡眠時間が1時間短縮 家の手伝い・家事の時間、家族内のコミュニケーション 時間が激減 外遊びも激減 食事時間が増加(ながら食事の影響と推察される) 唯一の増加 メディア接触の時間は30分から4時間30分に激増 メディア接触時間の増大が原因と考えられている 体力・運動能力の低下 一日あたりの歩行歩数が減少→足の発達に影響 背筋力指数は1997年以降調査不能に 調査を行うことで腰を痛めるため調査が中止に! 1997年当時で半数の男子が親の介護が困難、半数の女子が自分の赤ちゃんを抱 くことによるぎっくり腰の懸念 視力低下 テレビ・ビデオ・ケータイの普及と時期が合う 東京都高一女子の裸眼視力1.0未満割合は平成元年で53.4%、平成19年では 75.0% 「立体視力」の低下も目立つ 左右の視力差が大きくなることにより立体認識力が低下 自律神経が育たない 血圧調整不良・体温調節不良 五感の異常 肌の接触やにおい、食べ物の味に異常な反応・極端に鈍感 攻撃的行動の増大・性行動の低年齢化などなど コミュニケーション能力への影響 ビデオを長時間視聴していた3歳児に以下のような 共通する行動特徴 友だち関係が持てない 遊びが限られている 表情が乏しい 気持ちが通わない 物を何かに見立てて、想像して遊べない 自分から話しかけようとしない ほかの子どもが近寄ると避ける 視線が合わない コミュニケーションが苦手→メディアにのめり込む 悪循環に陥ることも コミュニケーション能力が低くなるので、 幼児期には言葉を使わず、噛みつく、引っ掻く、体 当たり、奇声などで「表現」 年齢が上がると、殴る、蹴る、棒やナイフ、包丁、 爆弾、放火などで「自分の感情や思いを表現」 2004年、佐世保市の小学校6年生がクラスメートを殺害 2006年、奈良市の高校生が母親と弟妹を焼殺 2008年、埼玉県の女子中学生が父親を殺害 異常な生命感覚 ペットの死に際して「電池を入れ替えて」と親に言 う子ども 「一度死んだ命が再び甦ることがあると思うか?」 に対して28/33の児童が「そう思う」と回答(佐世 保市の事件を受け、長崎県内の小学校6年生に対す る質問) ビデオやゲーム機ではワンタッチで「生」と「死」 を行き来できる バーチャル世界と現実世界の区別がつかない幼児期 からメディア漬けであるのが理由とも ネット中毒・ゲーム中毒 少年期・青年期のメディア漬け テレビゲームやネット生活 ネットだとオンラインゲームが長時間使用傾向強 無差別殺傷事件の犯人に共通 西鉄バス・秋葉原など 電子映像への接触時間が長い子どもほど、以下の感 情が希薄 生への執着 自他の生命尊重 自己肯定感 脳科学の分野でも… 長時間電子メディアに接触すると前頭前野の機能が 低下 感情のコントロール、欲望の制御、相手を思いやる、未 来を予測する部分 裏付けとなる多くのデータ 児童生徒の暴力行為の増加 キレる幼児 軽度発達障害児童の増加 メディア接触時間と学力の間に相関 「ノーテレビ・ノーゲーム」、「アウトメディア」活動 に取り組む小中学校の学力向上 ここで注意!この話は鵜呑みにしないで! 「最近の子ども」問題は自分の都合のよいように解 釈される ここまでは反「テレビ・ビデオ・ゲーム・ケータイ」と しての立場で展開中 →この主旨でテレビなどのメディアで報道されることはあり得 ないからね 同じ現状に対して「教育制度が悪い」という主張が なされることも、とても多い 日教組のせいだ! 「修身」を復活しろ! 「ゆとり」が悪い! 親を大事にしろ! 君が代を歌わせろ! メディア漬けの悪循環 テレビ世代・ゲーム世代のメディア漬けの子どもが 1990年代から親になった 子どもへの虐待が急増 前頭前野の機能が低い モンスターペアレントの出現 コミュニケーション能力が欠如 メディア接触の押しつけ 2歳以下の乳幼児が自分からテレビ・ビデオを見たいわけがな い←親が視聴習慣をすり込む 早期教育・しつけ教育を売り物にするビデオやDVD 安全性に関する科学的検証は一切なし 食の安心・安全にはうるさいのに… 劣化の連鎖 負の連鎖 生活保護や就学援助を受けている家庭が多い学校ほどメ ディア接触時間が長い(事実) ↓ 学力が低い(事実) ↓ 進路選択に制約が大きい(ほぼ常識) ↓ 経済的に豊かでなくなる(ほぼ常識) | はじめに戻る 貧乏だとメディア接触時間が長いのか? 子どもとメディアの問題に対する提言 (日本小児科医会) 2歳までのテレビ・ビデオ視聴は控えましょう 授乳中、食事中のテレビ・ビデオの視聴はやめま しょう すべてのメディアに接触する総時間を制限すること が重要です。1日2時間までを目安と考えます。テ レビゲームは1日30分までを目安と考えます 子ども部屋にはテレビ、ビデオ、パーソナルコン ピュータを置かないようにしましょう 保護者と子どもでメディアを上手に利用するルール を作りましょう メディア依存からの脱却 ノーテレビ・ノーゲーム・ノーメディア 実態把握(アンケート調査など) ↓ 問題意識の共有(教職員・PTA幹部) ↓ 目標設定(実施体制の構築・具体的目標) ↓ 啓発活動(保護者・子どもに対する指導) ↓ 実施(期間を明確にして実施) これを繰り返す 「メディア・リテラシー」とは?(再) メディアを批判的に受け止め、メディアに対する主 体性を培う教育 メディア接触時間を制限すればいいわけではない 時間の短縮は一つの方法かもしれないがそれだけでは× ノーメディア運動のような極端な活動は反動もあり得る メディアとの上手なつきあい方を保護者・教師・社 会が考え、子どもをみちびく 作り手に、受け手はバカでないことを意識させる ダマされない力をつける 例:「日本図表審査機構[JGRO]」 一歩進んだメディア・リテラシー 情報の取捨選択能力を持つ 複数の情報を入手して比較検証する パーソナルメディア(ブログ・SNS)の情報は信憑性 をまず疑う マスメディアの情報であっても信憑性を疑う 誤報・ねつ造がある 例:京大入試カンニング事件の時の産経新聞(東京の高校生二 人関与、と事実とは異なる報道) デマを流さない・デマに流されない 【拡散希望】は怪しい 根拠の無い情報を発信しない 風評被害・報道被害・偏向報道・ステレオタイプ 本日のレポート課題 自分自身の[体験・経験・実情など]を例にあげ、メ ディアリテラシーが必要な理由、もしくは不要な理 由について100~200字程度で述べよ。 たとえば…(ちょっとくだけ過ぎですが) 私は毎日、起きている時間の大半を[Twitter|Mixi|2ch| オンラインゲーム]に費やしています。ネット上に多く友 人がいて毎日やりとりしているのですが、誰とも口を聞 かない日がよくあります。外に出るのもだんだんおっく うになってきました。メディアとの付き合い方について 小中学校で学んだり考えたりする機会があればここまで ハマらずに済んだように思います。
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