職業能力開発の政策とその実施状況のPDFファイル

マレーシア(調査大項目 3:職業能力開発の政策とその実施状況)
作成年月日:2009 年 10 月 30 日
3.1
職業能力開発の背景
どの国においても教育及び職業訓練が人材育成に大きな役割を果たす。そのため、多く
の国では限られた予算の中からあらゆる段階の教育や職業能力開発にかなりの金額を割り
当てている。しかしながら、マレーシアを含む多くの国では職業能力開発は教育全般の中
に組み込まれてしまっている。もちろん一般教育は重要であり、職業能力開発の基礎とな
るが、職業能力開発そのものについては、一般教育とは分離し、より大きな力を注ぐ必要
がある。なぜなら、技術的付加価値を追求するには、企業が技術開発、管理システム、生
産技術等を高度化する必要があり、そのためには初歩的な技術・職業訓練だけでなく、労
働力全体の技能の継続的な向上が必要となるからである。
マレーシアの職業能力開発については独立前の英国支配下時代にさかのぼる。1926 年に
クアラルンプールに連邦商業学校が設立され、3 年間の教育で機械工、組立工、機械操作
やその他技術者を養成していた。学生数は 1 学年 15∼20 人程度であり、当初は植民地政
府の公共事業省の需要を満たす目的のものであった。その後 1931 年には技術学校に改称
され、目的も他の政府機関の需要にも対応できるように拡大された。さらに対象を民間に
も広げ、ロンドンのシティ・ギルド協会(City and Guilds Institute of London)の技術
認定書の取得も可能となった。その後、ペナン、イポー、及び当時はまだマレーシアの一
部であったシンガポールに商業学校が設立され、機械工、鉛管工、組立工、電気工、鍛冶
屋の職人の見習い教育を行った。このように、マレーシアの職業能力開発は、産業界と政
府の需要に後押しされ、国家の制度的職業訓練が始まり、拡大していったのである。技術
学校は 1945 年に技術専門学校に改名され、1972 年にはマレーシア工科大学(Universiti
Teknologi Malaysia:UTM)という公立大学になった。
もう 1 つ重要な要因は、マレーシアが独立した直後の 1957 年に導入した国家訓練計画
である。中央訓練理事会が運営し、のちに国家工業訓練・商業認定理事会に移管された。
この計画のもと、産業訓練専門学校(ITI:後述にて詳細説明あり)のみが各々のビジネス
に必要な訓練を 3∼4 年間提供した。学校での訓練と OJT の両方が行われ、政府主導によ
り、産業界と協力して、技術者を増やそうという最初の試みであった。政府が無償で訓練
学校を提供し、企業が訓練生を受け入れ、社内で訓練を行った。当初、この計画は順調に
推移したが、その後数十年は、表 3‐1 からも分かるようにマレーシア職業能力開発にお
ける実績はあまり見られない。それは 1987 年には、産業訓練専門学校が 7 校あるのに 73
名しか卒業していないのに対し、1979 年には 2 校しか産業訓練専門学校がないのに 219
名が卒業していることからも分かる。
1
マレーシア(調査大項目 3:職業能力開発の政策とその実施状況)
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表 3‐1
マレーシア国家訓練計画の結果(1979∼1987 年)
年
職業訓練終了者
産業訓練学校数
訓練期間
1979
219
2
4年
1980
280
2
4年
1983
243
3
3年
1984
135
3
3年
1987
73
7
3年
*出典:Ahmad Othman (2005). “The national dual training system: An alternative mode of training
for produci ng K-workers in Malaysia?”
マレーシアの職業能力開発制度を見る前に、今後の内容を分かりやすくためにも独立後
の話よりも近年に視点を移し、幅広く、マクロ的な観点からマレーシアの教育システムを
取り上げる。
表 3‐2
学
公立教育機関への入学数
校
生徒数
2000 年
中学校(13∼15 歳)
702,897
784,200
(9.8%)
(11.6%)
(11.9%)
2,907,123
3,044,977
3,195,977
(52.6%)
(50.0%)
(48.3%)
1,256,772
1,330,229
1,425,231
(22.7%)
(21.9%)
(21.6%)
707,835
763,618
881,247
(12.8%)
(12.6%)
(13.3%)
60,425
(8.5%)
72,827
(9.5%)
85,227
(9.7%)
94,544
199,636
277,904
(1.7%)
(3.3%)
(4.2%)
23,740
34,672
45,899
(0.4%)
(0.6%)
(0.7%)
5,529,483
(100%)
6,076,029
(100%)
6,610,458
(100%)
高等学校(16∼17 歳)
上記のうち:政府運営もしくは政
府から助成金を受けている技術・
職業訓練学校
高等教育
教員養成学校
合
計
2010 年
539,469
幼稚園(4∼6 歳)
小学校(7∼12 歳)
2005 年
*出典:Ninth Malaysia Plan.
表 3‐2 からはさまざまなことを読み取ることができる。他の国同様、教育の基盤とな
る小学校及び中等教育については、マレーシアでも生徒数が多い。2005 年については、幼
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稚園と中等教育の生徒数が全体の 84.7%、514 万人である。しかし、生徒数の増え方が最
も顕著なのが、幼稚園及び高等教育である。2010 年までには、幼稚園生が全体の 11.9%
を占める。その一方で、小さな数字に思えるが、2010 年の高等教育の 4.2%は驚くべき伸
びであり、2000 年の 1.7%から 2005 年の 3.3%の増え方も驚異的である。また、マレーシ
アにおける技術・訓練学校の生徒は比較的少ないことを指摘しておく。2005 年の高等学校
(16∼17 歳)生徒数 76 万 3,618 名のうち、7 万 2,827 名しか技術・職業訓練学校に所属
していない。これは、この年齢層の 9.5%でしかない。2010 年になってもこの状況はあま
り改善しないことが、予想値 9.7%からも読み取れる。
3.2
職業能力開発を進めるための国の政策
前述してきたように、マレーシアは独立以来職業能力開発を発達させようとしてきてい
る。その具体例として、国家訓練計画という大きな計画が頓挫していることも述べた。政
府は職業能力開発を促進することが重要であることを認識し、1980 年代の初めにはさらに
注力することを開始した。職業訓練制度を見直し、能力開発のインフラを拡大することに
した。それらの政策は 5 年ごとに作られる開発計画の第 6 次マレーシア計画から反映され
ている。直近の 4 つの計画(第 6 次マレーシア計画 1990∼1995 年、第 7 次マレーシア計
画 1995∼2000 年、第 8 次マレーシア計画 2001∼2005 年、第 9 次マレーシア計画 2006
∼2010 年)においては、訓練による能力開発はさまざまな政策に反映されている。
・ 公立訓練学校の増加
・ 技術分野コースの増加
・ 認定システムの強化、技術教育内容の向上
・ 技術訓練における民間企業の参加を促進
(1) 公立職業訓練学校の増加
これは既に述べたことだが、マレーシアにおける教育及び職業訓練はほとんど政府によ
って提供されている。政府は訓練学校の数を増やすだけでなく、技術系の学校の数も増や
してきている。1970 年代には、技術と農業を専門とするマレーシア工科大学(UTM)と
マレーシアプトラ大学(UPM)を設立している。1990 年代後半にはマレーシアマルチメ
ディア大学(MMU)、テナガ・ナショナル大学(UNITEN)及びペトロナス工科大学(UTP)
を設立している。さらに、産業訓練専門学校(ITI)や中等教育における職業訓練学校の数
も増やし、上級技術センター(ADTEC)、高度技術訓練センター(CIAST)、ポリテクニ
ック、短期大学等も設立させている。これらの新しい学校は、技術のレベルを高めただけ
でなく、訓練による能力開発、職場における上級レベルの技術者を増加させた。公立の職
業訓練学校の詳細については、この後の章で述べる。
(2) 技術分野コースの数の増加
訓練学校の増加に伴い、技術を教えるコースも増加している。技術専門大学、ポリテク
ニック、その他の学校の設立により、訓練の種類が豊富になるだけでなく、業界のニーズ
に応えるために、教える技術内容の高度化、技術範囲の拡大にもつながった。ポリテクニ
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ックでは、エンジニアリング等の学問面でのコースを充実させているが、産業訓練専門学
校では、ビジネスコースも充実している。国家デュアル訓練システム(NDTS)のもと、
技術カリキュラム及び現場(社内や工場)や現場以外(学校)での訓練を行うことで、学
校と企業の間で新たなパートナーシップと協力体制ができ上がってきている。
(3) 認定システムの強化、教育内容の向上
政策面で最も重要な展開は、認定システムの強化により設立された国家職業訓練評議会
( National Vocational Training Council : NVTC ) と 国 家 職 業 技 能 基 準 ( National
Occupational Skill Standard:NOSS)の開発である。NOSS はマレーシアで働く技術者
が要求される技術のレベルとそれらを満たす方法を詳細に設定している。
(4) 技術訓練における民間企業の参加を促進
技術・職業訓練学校に民間企業を積極的に参加させるために、第 6 次マレーシア計画
(1990∼1995 年)には下記の政策が盛り込まれている。
・ 業界のニーズ、カリキュラムの内容や卒業認定に民間企業の意見を取り入れる
・ 技術の内容及び訓練の準備段階で民間企業の参加を促進する
・ 国営及び民間企業の両方を活用して訓練を行うことを促進する
・ 財務関係教育での民間企業の支援を促進する
第 6 次マレーシア計画に盛り込まれている政策は、1991 年に設立された技術顧問委員
会の提案によるものである。この委員会は、技術・職業訓練教育の重要性と訓練の効果を
上げるための制度を再構築する必要性に鑑みて設立された。この委員会の意見が第 6 次マ
レーシア計画に盛り込まれる形になった。
これらの政策はどちらかというと中長期的な目標であるため、結果が出るまでにも時間
がかかることは言うまでもない。それにもかかわらず、政府が民間企業の役割を増加させ、
多面的に政策を実行したことは称賛に値する。その中でも最も重要なのが、国家職業技能
基準(NOSS)の策定である。マルチメディア大学はマレーシアテレコム社が、ペトロナ
ス工科大学はペトロナス社(国家石油公社)が設立したことも大手民間企業が技術・職業
訓練に参加するようになった証拠である。最も広範囲にわたって影響を与えたのは、人的
資源開発基金(Human Resource Development Fund:HRDF)の設立である。同基金は、
民間企業を財務面で参加させるために人材資源開発資金として従業員の月額給与支払額の
1%を徴収し、訓練を実施した企業にはその費用を還付するものである。1993 年に設立さ
れ、民間企業における人材育成の責任を拡大させた。HRDF が企業側にも従業員の職業訓
練に対して責任を負わせたことで、政府の役割が、訓練提供者から訓練推進者に変わり、
その結果民間企業が訓練の計画、授業内容、基準作り、財政面、訓練センターの資金援助
や管理面にも積極的に参加するようになった。
3.3
政府及び関係団体の制度、組織、機能
マレーシアでは、教育に関連する省は 2 つある。教育省(Ministry of Education:MOE)
と高等教育省(Ministry of Higher Education:MOHE)である。教育省は、幼稚園、初
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等、中等教育が主な責任範囲であるが、技術・職業教育部という部署がある。1964 年に同
部が発足すると同時に学問を中心とした専門学校以外の中等教育における職業・技術訓練
の促進を開始した。2009 年現在、技術学校は 50 校、職業訓練学校は 40 校ある。1982 年
に技術学校は 9 校、職業訓練学校は 29 校のみであったため、飛躍的に数が増えている。
両校とも高等学校扱いであり、中等教育 3 年目の PMR(中等教育認定)試験の結果に基
づき、技術や職業訓練を希望する学生を受け入れている。2 校の大きな差は、生徒の質と
卒業方法である。技術専門学校の方が PMR 結果の成績が良い生徒を受け入れ、職業訓練
学校よりも技術についての専門的な知識を教育しており、ほとんどの生徒は、さらに上の
高等教育を目指す。一方、職業訓練学校は職業訓練を行うが、一般教養的に語学、数学、
科学等、訓練をよりしやすくする教科もある。
高等教育省は、国内の高等教育(中等教育後)を管轄している。省内にポリテクニック・
短期大学部があり、それらを発展させる責任を負っている。最初のポリテクニックは、1969
年に国連開発計画(UNDP)の支援によって設立された。現在、国内には 21 校のポリテ
クニックがある。その一方で、最初の短期大学は 2001 年に設立され、昨年末で 37 校にな
った。高等教育省によると 「ポリテクニックと短期大学は、国家の教育理念に基づきマレ
ーシアの人材資源を補給する目的があり、ダイナミックなカリキュラムと効果的な訓練を
通じて、キャリア開発のプログラムを提供し、継続的に人材の質を保証し、その支援を行
う」ものとされている。教育省以外の省が管轄する 3 つの機関が職業訓練にかかわってい
る。人的資源省 の人材部が設立した産業訓練専門学校(ITI)と高度技術訓練センター
(CIAST)であり、前者は 21 校ある。上級技術センター(ADTEC)も 4 校ある。
国営企業省の管轄下である MARA は、マレーシア政府がマレー系及びその他の先住民
(総じてブミプトラと呼ばれる)の経済活動への参加を支援するために設立された組織で
ある。MARA は、ブミプトラのみを対象とした訓練施設をいくつか設立している。それら
は、Pusat Giat MARA、Institut Kemahiran MARA、及び Kolej Kemahiran Tinggi MARA
である。これ以外にも政府機関が設立した職業訓練学校がある。例えば、青少年スポーツ
省は、青少年の訓練のためのセンターである国立青少年上級技能訓練学校(IKBN)を設
立している。
3.4
予算と財源
表 3‐3 は、5 年ごとの開発計画における訓練関連に対する予算配分である。表にある 4
回の計画において、予算配分が増加していることが分かる。第 6 次計画(1991∼1995 年)
から第 7 次計画(1996∼2000 年)においては、5 億 8,200 万リンギ 1から 16 億 6,200 万
リンギへ、186%増となっている。政府の人材育成に対するさらに強い意志が、第 8 次計
画(2001∼2005 年)における配分の 37 億 6,000 万リンギに反映されている。現行の第 9
次計画(2006∼2010 年)ではさらに 10 億リンギ増加され、47 億 9,300 万リンギの割り
当てとなっている。
1
1 マレーシアリンギ=26.3682 円(2009 年 11 月 2 日現在)
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表 3‐3
訓練関連に対する支出額・配分(1991∼2010 年)
訓練への支出
教育への支出
%
(百万リンギ)
(百万リンギ)
(訓練/全体) ^
計画
年
第 6 次計画*
第 7 次計画+
1991∼1995
1996∼2000
580
1,662
6,982
8,437
7.7%
16.5%
第 8 次計画+
2001∼2005
3,760
37,922
9.1%
第 9 次計画+
2006∼2010
4,793
40,357
10.6%
*注: * は支出、+ は配分、 ^ は訓練/教育+訓練のパーセンテージ
*出典: Malaysia Plans, various years .
上記の表の数字だけを見ていると、高額のように思えてくるが、各計画における全体の
支出における教育・訓練のパーセンテージを見てみれば、金額が小さいことが分かる。第
6 次計画では 7.7%、第 7 次計画では 16.5%であるが、その後の計画では 10%前後に留ま
っている。残念ながら職業訓練学校に対する予算配分の詳細を入手することはできなかっ
た。
3.5
外国・国際機関からの援助
発展途上のマレーシアは、外国及び国際機関から経済支援を受けていた。その支援の中
には、教育や訓練に対する技術支援や投資計画等も含まれていた。特に大型の支援は、世
界銀行とアジア開発銀行が行っていた。1970 年代及び 1980 年代においては、世界銀行と
アジア開発銀行からの技術支援・投資が主であり、1980∼1999 年においては、ADB の資
金による技術・職業訓練プロジェクトが 5 つも立ち上げられた。マレーシアの経済発展が
進み、1 人当たりの GDP が増加するにつれ、これら国際機関からの支援も減少した。
1982 年に当時首相であったマハティール・モハメド博士がルックイースト政策によるプ
ログラムを開始した。この政策では、訓練生を日本と韓国に派遣し、2 カ国から新しいス
キルや技術だけでなく、職場道徳や価値をも体得させようという狙いがあった。これらは、
日本の民間企業や公的機関における OJT によって達成されている。訓練生はさまざまな年
齢層から構成され、教育背景、身元や職業経験は政府が保証していた。ルックイースト政
策によるプログラムは連邦政府の人事院が行っていた。日本における 3∼6 カ月間の訓練
は、国際協力機構(JICA)と財団法人海外技術者研修協会(AOTS)が担当していた。1982
∼2007 年の間、さまざまな訓練のために、1 万 1,000 人が派遣され、ルックイースト政策
はこれからも実行されると報告されている。
1990 年代には国際協力支援を日本、ドイツ、英国、フランス、スペインから受けて、技
術訓練学 校が設 立され た。日 本‐マレーシア 技術学 院(Japan-Malaysian Technical
Institute : JMTI )、 ド イ ツ ‐ マ レ ー シ ア 技 術 学 院 ( Germany-Malaysia Technical
Institute:GMI)、英国‐マレーシア技術学院(British Malaysia Institute:BMI)、マレ
ーシア‐フランス技術学院(Malaysia-France Institute:MFI)、マレーシア‐スペイン
技術学院(Malaysia-Spain Institute:MSI)などである。
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(1) 日本‐マレーシア技術専門学校(JMTI)
日本とマレーシア政府の共同プロジェクトとして 1993 年に設立された。主目的は製造
業、電子業、コンピュータ、メカトロニクスにおける高度熟練技術者を育て、業界の技術
発展に見合うような人材を育成することであった。JMTI で受講できるコースは主にエン
ジニアリング関係である。毎年の受け入れ人数は約 600 名である。
(2) ドイツ‐マレーシア専門学校(GMI)
マレーシアとドイツ政府による共同プロジェクトである。MARA(Majlis Amanah
Rakyat)及びマレーシアドイツ商工会議所(Malaysian-German Chamber of Commerce
and Industry:MGCC)により 1991 年に設立さ、翌年から学生を受け入れている。GMI
の主目的は、製造及びエンジニアリング関連の分野で多様な熟練技術者を養成し、マレー
シア産業のニーズに応えることである。ここでは実技訓練と理論の両方を教えている。コ
ースでは、生産技術、工業エレクトロニクスを教えていて、鋳型、工具と金型、工業デザ
インと製造、メカトロニクス、手順管理、電子・IT 及びネットセキュリティがある。GMI
のプログラムは、すべて産業ニーズに基づき、計画的であり、結果重視である。
(3) 英国‐マレーシア専門学校(BMI)
1993 年 9 月 1 日に設立され、当初はトゥアスポリテクニックという学校名であった。
1997 年 11 月に、マレーシアへの技術移転を目標とする政府の政策と合うように現在の名
称に変更された。1997 年 8 月 27 日には、新しいキャンパス建設のための地鎮祭が英国外
務大臣とマレーシア企業発展大臣が参加して催された。BMI は英国の国家高等教育修了証
を発行しているエデクセル財団(Edexcel Foundation)、商業技術教育委員会(Business
and Technology Education Council:BTEC)に登録されている。将来高度な技術を必要
とするマレーシアの人材を育成する国際的な水準の専門学校である。
(4) マレーシア‐フランス専門学校(MFI)
マレーシアとフランス政府による共同プロジェクトであり、1995 年 2 月に設立された。
フランス側は JF Boccard と Association de Formation Professionelle de I’Industrie
Rhodanienne(AFPI )が、マレーシア側は MARA が担当している。高度技術訓練学校と
して、オートメーション、電気、機械、メンテナンス分野でのコースを提供している。す
べてのコースはマレーシア政府が支援しており、修業証書(diploma)から学士の取得も
可能である。短期コースや個人用にカスタマイズできるコースもある。
(5) マレーシア‐スペイン専門学校(MSI)
マレーシアとスペイン政府による共同プロジェクトであり、2002 年 8 月にクリムハイ
テクパーク内のテクノセンターに臨時キャンパスを設置して始まった。2003 年 12 月には
同じくクダ州クリムのクリムハイテクパーク内に 39 ヘクタールのメインキャンパスを建
設した。MARA が担当しているプロジェクトであり、自動車製造に関する高度な技術コー
スを提供する。自動車産業における高度技術に対応できるような技術も必要だという要求
に対応するために MSI は設立され、そのコースは 5 つの分野に分けられている。技術論
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はもちろんのこと、同様な技術を使用している企業での実務訓練も行われる。授業は英語
で行われている。
過去には JICA が技術供与プロジェクトを行っている。例えば、農業機械化センターに
おけるプロジェクト、ウンクオマルポリテクニックでの海洋エンジニアリング訓練プロジ
ェクトやクアラルンプールとジョホールバルにある MARA 職業訓練施設(現在の名称は
Institut Kemahiran MARA もしくは IKM)等がある。漁業訓練施設建設や漁業の近代化
にも JICA は無償資金援助を提供している。セランゴール州の農業施設には JICA から専
門家が派遣されている。JICA 支援による直近の技術・職業訓練プロジェクト(TVET)は
2 つあり、1 つは、ASEAN 人づくり計画のもとで設立された指導者育成・高度技術訓練セ
ンター(CIAST)と日本‐マレーシア技術学院(JMTI)の設立である。JICA の技術協力
プ ロ ジ ェ ク ト(1966 ∼ 2004 年 )の 概 要 は、 JICA マ レ ー シ ア 事務所 の ウェブ サ イ ト
(http://www.jica.org.my/technical_cooperation.htm)掲載されている。
AOTS の主な役割は、日系企業の海外展開を支援することであり、それにより途上国の
経済発展を促進させることである 。日本で技術・マネジメント訓練を行うだけでなく、
AOTS はマレーシアで行われるエンジニアリングマネージャーの訓練プログラムに技術者
や管理者を派遣している。
上記以外には国際機関が提供する TVET 関連のコースがある。例えば、東南アジア教育
大臣機構−職業技術教育訓練センター(SEAMEO-VOCTECH)、韓国国際協力団(KOICA)、
中央公務員訓練学校(COTI)、公務員用のコロンボ計画スタッフ専門学校(CPSC)であ
る。
3.6
職業能力開発の政策評価
この章に使用している数値は人的資源省が毎年発行している労働・人材資源戦略 2008
(Labour and Human Resources Statistics 2008)のセクション A3 にある再訓練とスキ
ル向上(Retraining and Skills Upgrading)からの抜粋である。下記のウェブサイトから
閲覧可能である。
・http://www.mohr.gov.my/index.php?option=com_content&task=view&id=1078
&Itemid=296
マレーシアの人的資源省がマレーシア技能認定(Sijil Kemahiran Malaysia:SKM)と
いう技術のレベル別認定制度を導入しているため、まずは技能開発部(Department of
Skills Development:DSD)による技術訓練の成果について述べる。SKM の 5 つレベル
における入学者と合格者の数を取り出し、表 3−4 では 2003 年と 2008 年を比較している。
表 3−4
レベル
SKM 1
技術訓練の入学者及び合格者数(レベル別)
2003 年
2008 年
入学者
合格者
入学者
合格者
53,567
51,752
38,163
49,438
8
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作成年月日:2009 年 10 月 30 日
SKM 2
50,925
49,275
32,741
40,934
SKM 3
9,527
8,664
11,784
11,664
DKM
0
0
2,244
2,041
DLKM
0
0
21
27
114,019
109,691
84,953
104,104
合計
*出典:Department of Skills Development, Ministry of Human Resources,
“Labour and human resource statistics 2008 ”,
http://www.mohr.gov.my/Statistik_Perburuhan_2008.pdf
DSD がマレーシア技能認定制度を通じ、各年共に技術訓練を約 10 万人に行ったことが
分かる。SKM 合格者は 2003 年が 10 万 9,691 名、2008 年には 10 万 4,104 名となってい
る。表 3‐4 には表れていないが、その間の年の入学者(合格者)数にも増減があり、2003
年の入学者は 11 万 4,019 名であったのに対し、2008 年には 8 万 4,953 名に減っているが、
その間も 2004 年には 9 万 163 名に減り、2005 年には 10 万 357 名、2006 年は 6 万 3,068
名、2007 年は 9 万 2,208 と変化しており、ついに 2008 年には 8 万 4,953 名にまで減って
しまったことは表にあるとおりである。毎年の増減にかかわらず、SKM 合格者の合計数
が 10 万人前後であることが重要である。毎年学生がさまざまな SKM のプログラムに入学
していることが、マレーシアの技術発展につながっていくためである。しかしながら、こ
の SKM 制度がここ数年の生徒数の増加にはつながっていないことが分かる。その一方で、
高度技術訓練が成果をあらわしてきている。2003 年には専門学校レベル(DKM)と上級
専門学校レベル(DLKM)への入学生は皆無であったが、2008 年には 2,244 名が DKM
に入学し、2,041 名が合格している。2007 年に DLKM に入学した 48 名のうち、27 名が
2008 年の試験には合格している。
前述したとおり、民間企業を参加させる努力も行われているが、職業訓練はまだほとん
ど政府運営の施設で行われている。CIAST、ADTEC、ITI(もしくはマレー語訳の ILP)
等が正式な職業訓練を実施する場となっている。表 4‐5 は 2008 年における生徒の入学・
卒業数を表している。訓練期間 1 年以上のコースがほとんどであるため、卒業者数はだい
たい前年度の入学者と考えられるが、その一方で 1∼3 年コースもあるため、入学者数は
将来の卒業者数をも表している。2008 年では ILP(もしくは ITI)の施設が最も生徒の入
学者数も卒業者数も多い。2008 年に入学した学生 1 万 3,992 名のうち、1 万 1,832 名
(84.6%)が ILP に入学していて、同じようなパーセンテージ(82.7%)の 5,764 名が ILP
を卒業している。これは国内に幅広く点在しているのが ILP であることにもよる。
表 3‐5
人的資源省傘下の訓練校(2008 年)
訓練学校
入学者
CIAST
卒業者
35
0
ILP Ipoh
715
267
ILP Jitra
909
296
ILP Kangar
316
145
9
マレーシア(調査大項目 3:職業能力開発の政策とその実施状況)
作成年月日:2009 年 10 月 30 日
ILP Kota Bharu
866
337
ILP Kota Kinabalu
690
302
ILP Kuala Lumpur
981
363
ILP Kota Samarahan
495
198
ILP Kuala Terengganu
712
274
ILP Kuantan
588
254
ILP Labuan
369
143
ILP Bukit Katil, Melaka
452
177
ILP Muar
517
208
ILP Pedas
579
210
ILP Pasir Gudang
859
278
ADTEC Batu Pahat
405
254
ADTEC Kulim
331
123
ADTEC Melaka
380
147
ADTEC Shah Alam
691
390
Institut Teknikal Japan-Malaysia
318
81
ILP Kepala Batas
193
70
ILP Selandar
437
180
ILP Nibong Tebal
388
195
ILP Kuala Langat
484
181
ILP Mersing
383
137
ILP Sandakan
465
259
ILP Miri
434
295
13,992
5,764
合
計
*出典:Department of Skills Development, Ministry of Human Resources,
“Labour and human resource statistics 2008 ”,
http://www.mohr.gov.my/Statistik_Perburuhan_2008.pdf
ILP もしくは ITI は長い歴史(最初の ILP は 1964 年に設立された)があり、また国内
に一番多く設立されており(21 校)、提供しているコースも豊富なことから利用する学生
の数も多い。2007 年の ILP の卒業生は 1 万 1,402 名で、彼らは国内のさまざまな ILP で
40 種類以上のコースを学んだことになる。ここに主要なコース及び生徒数をサンプルとし
て下記に示す。表 3‐6 によると、ILP におけるコースの中で一般技術訓練の人気が高く、
2007 年には 1,328 名が入学している。ガス及び曲線溶接も人気が高く、約千名が入学して
いる。他に 2007 年に 600 名以上が入学をしたコースが多数ある。例えば、コンピュータ
関連、機械修理、自動車技術である。
10
マレーシア(調査大項目 3:職業能力開発の政策とその実施状況)
作成年月日:2009 年 10 月 30 日
表 3-6
2007 年の ILP で取得可能な技術及び入学者数(選別及びサンプルのみ)
コース
入学者数
コース
ソフトウエア
機械工
146
(プログラミング)
ソフトウエア
コンピュータ
コンピュータ
1,328
一般技術者
380
自動車技術
610
(ネットワーク)
383
CNC
685
(システム)
679
一般機械
252
(マルチメディア)
受入数
668
工業製品デザイン
210
298
エアコン
710
CAD(機械)
工業計測
178
セラミック
工業電子
568
CAD(建築)
情報通信
421
木材建築
工業オートメーション
316
建築
ガス及びアーク溶接
978
衛生・配管
82
金属組立
371
家具
68
ガスパイプ組立
278
プラスチック技術
印刷技術
200
22
325
44
139
入学者数合計*
149
11,402
(注)*ILP の全体数であり、表 3‐6 に記載されていないコースの生徒も含む。
*出典:Manpower Department , Ministry of Human Resources,
http://www.mohr.gov.m y/A3.1-A3.20.pdf
3.7
職業能力開発の実施概況
今日のマレーシアで職業訓練能力開発において最も重要かつ効果を発揮したのは、1993
年の人的資源開発基金(HRDF)法の施行及びその実施機関としての人材開発公社の設立
である。HRDF 法は 2001 年に改定されたが、この条例のもと、50 名以上雇用している企
業もしくは従業員 50 名以下でも 250 万リンギ以上の資本金がある企業は、従業員の月給
の 1%を HRDF に拠出しなければならない。従業員 50 名以下の企業、もしくは資本金が
250 万リンギ以下の企業は適用除外を受けることがき、HRDF へ登録した場合は従業員の
月給の 0.5%を拠出する。この基金に参加している企業は、マレーシア国籍の従業員に対す
る訓練費用の還付を受けることができる。ISO 等の研修に関する費用は 100%助成され、
海外研修等は 50%まで助成される。
HRDF 助成の一例として、KDU Management Development Centre Sdn Bhd(KMDC)
を下記ウェブサイトから見ることができる。
・http://www.kmdc.com.my/html/programmes/hrdf_general_info.html
11
マレーシア(調査大項目 3:職業能力開発の政策とその実施状況)
作成年月日:2009 年 10 月 30 日
人材開発公社(Pembangunan Sumber Manusia Berhad:PSMB)は基金に集まった
資金を管理し、従業員、研修生、学生等の訓練と能力開発を促進している。PSMB の目的
は以下のとおりである。
・ 基金への申請に対するガイドラインの策定
・ 訓練施設の組織化、設立、改善、管理及びその支援
・ 訓練コース、プロジェクト、プログラムの組織化、実行、監督及びその支援
・ 基金に関する手順の説明
企業側は HRDF に支払った金額分を享受したいと考えるはずであり、HRDF の制度が
従業員に積極的に訓練を受けさせるインセンティブになることが期待されている。HRDF
についての詳細(2001 年 HRDF 法に関する情報も)は、下記 PSMB の正式ウェブサイト
を参照のこと。
・ PSMB
http://www.hrdf.com.my/wps/portal/AboutPSMB
PSMB による主な支援制度は以下のとおりである。
(1) 訓練助成金制度(Skim Bantuan Latihan:SBL)
この制度では、企業は OJT もしくは Off-JT あるいは両方の組合せで訓練を行うことが
できる。企業はさらに、内部、外部、海外の訓練指導者と契約して訓練を行える。訓練指
導者が PSMB に登録する必要はないが、費用の請求をする前に承認が必要である。
(2) 特別訓練助成金制度(Skim Bantuan Latihan – Khas:SBL-Khas)
SBL-Khas では従業員訓練の資金が不足している企業の従業員を訓練させるために支援
を行う。企業側には支払いは発生しない(訓練プログラムによっては非常に少額の支払い
が発生する場合もある)。PSMB は企業の同意を得て、企業の拠出金勘定から直接訓練指
導者に費用を支払う。助成を受けるためには事前承認が必要である。
(3) 認可訓練制度(Program Latihan Yang Diluluskan:PROLUS)
PROLUS では 訓練機関 は PSMB に登 録する 必要が あり、登録後に 認 可 訓 練機関
(Approved Training Providers:ATP)として企業が求める訓練プログラムを提供する。
企業は ATP の提案する訓練プログラムの中から、適切なものを選択することができる。
PSMB の事前承認は必要なく、企業は訓練費を訓練機関に支払った後還付を請求する。
(4) 訓練契約制度(Perjanjian Latihan Dengan Penyedia Latihan:PERLA)
この制度は PSMB に登録している訓練機関と契約を締結するものであり、その目的は、
小規模企業の資金負担を減らすことである。再訓練、技能向上の目的で従業員に訓練を受
けさせる企業は、訓練費用を全額支払う必要はなく、100%助成の場合には、資金負担は
ない。
12
マレーシア(調査大項目 3:職業能力開発の政策とその実施状況)
作成年月日:2009 年 10 月 30 日
(5) 年間訓練奨励制度(Pelan Latihan Tahunan:PLT)
雇用主は訓練ニーズの分析、訓練プログラムの体系化及びその年間計画を組み立てるた
めの助成を受けることができる。PLT では、企業が年間訓練計画を立てることを奨励して
いる。この制度では、会社のニーズ、事業計画及び技術レベルに沿って訓練プログラムが
実施されるかどうかを確認するために、雇用主はニーズ分析に取り組まなければならない。
PLT による助成は一回限りであるが、傘下には別の 2 つの制度がある。Juruplan 制度は
従業員 200 名以上の企業を、一方、SMI 訓練ニーズ分析コンサルタント制度は 200 名以
下の中小企業を対象にしている。
(6) 共同訓練制度
この制度は複数の企業、特に中小企業が共同で訓練機関を指定し、従業員に訓練を受け
させることができるものである。1 社が「主催者」になり、必要な訓練プログラム及び訓
練場所を決め、訓練提供者と契約を行う。
「主催者」は 100%の還付請求できる。請求する
には事前承認が必要である。
(7) 見習い基金
特定産業における技術者不足問題を解決するために、1996 年から PSMB により見習い
制度が作られ、実施されている。見習い基金は、企業、特に中小企業の見習いに対する訓
練費用の支援を行っている。既に実施された制度には、次のような分野がある。メカトロ
ニクス、ホテル、産業機械、プラスチック鋳型、工業用ミシン、I T(プログラミング、マ
ルチメディア−オーサリング)、工具と金型、木材(家具製造)、混合輸送オペレーション
等。
職業能力開発の成果は PSMB に登録している企業数の増加、基金への拠出金の増加、及
び PSMB から支払われている助成金の増加で評価することができる。次の 2 つの表は、
職業能力開発についての結果を読み取ることができる。
表 3‐7
年
業界別 PSMB に登録している企業数(2004∼2008 年)
製造業
サービス業
合計
2004
496
332
828
2005
317
873
1,190
2006
298
507
805
2007
296
705
1,001
2008
439
1,065
1,504
*出典:Department of Skills Development, Ministry of Human Resources,
“Labour and human resource statistics 2008 ”,
http://www.mohr.gov.my/Statistik_Perburuhan_2008.pdf
13
マレーシア(調査大項目 3:職業能力開発の政策とその実施状況)
作成年月日:2009 年 10 月 30 日
表 3‐7 は、過去 5 年間、PSMB に登録した経営者/企業数を示している。総計には増
減があるが、PSMB に参加する企業が増加傾向にあることが読み取れる。2004 年の 828
社から 2008 年にはほぼ倍の 1,504 社になっている。さらに、サービス業からの参加が増
えていることが分かる。2004 年には 332 社であったのが、2008 年には 1,065 社に増えて
いる。その一方で、製造業の数は横ばいである。
次の表 3‐8 では、HRDF の財源は主に訓練費用に使用されていることが分かる。2004
年と 2005 年では、約 93.3%が訓練を行う企業に対して支払いが行われている。2006 年に
は PSMB の収入額と支出額が同額となっている。ただし、訓練費用の支払いを受けるため
の申請、許可及び実際の支払いまでは比較的時間がかかるため、2006 年の支出額が同額の
2 億 8,900 万リンギであっても、訓練した年にその費用が支払われているとは限らないこ
とを忘れてはならない。また 2007 年及び 2008 年においても、収入よりも支出が多い(6,800
万リンギ)。
表 3‐8
HRDF(PSMB)の収入と承認された助成金(2004∼2008 年)
収入
承認された助成金
(百万リンギ)
(百万リンギ)
2004
231
217
2005
260
241
2006
289
289
2007
312
331
2008
323
372
年
*出典:Department of Skills Development, Ministry of Human Resources,
“Labour and human resource statistics 2008 ”,
http://www.mohr.gov.my/Statistik_Perburuhan_2008.pdf
次に続く 5 つの表(表 3‐9∼13)については、PSMB が承認した訓練場所とその助成
金額を表している。助成金を助成した先で割ると、訓練生 1 人当たりの費用が算出でき、
各制度別に計算されている。表のデータは、人的資源省が発行した労働・人材資源戦略 2008
(Labour and Human Resources Statistics 2008)から抜粋したものであり、インターネ
ット上でも閲覧可能である。
・Labour and Human Resources Statistics 2008
http://www.mohr.gov.my/index.php?option =com_content&task=view&id=1078&Item
id=296
表 3‐9 では、2006 年に訓練助成制度(SBL)を利用して企業が請求した金額が 2 億 3,920
万リンギであることが分かる。2007 年には 2 億 8,040 万リンギ、2008 年には 3 億 1,820
万リンギとなった。SBL のおかげで、毎年約 50 万人の従業員たちが訓練を受けることが
できたことになる。毎年訓練場所は増加していて、2008 年には 68 万 4,120 カ所になって
いる。訓練費用に関しては、平均的に増加している傾向がある。2006 年に 1 人当たりの
費用が 441 リンギであったのが、2007 年には 443 リンギに、2008 年には 465 リンギに増
14
マレーシア(調査大項目 3:職業能力開発の政策とその実施状況)
作成年月日:2009 年 10 月 30 日
えている。
表 3‐9
年
訓練場所の数
訓練助成金制度(SBL)
助成金
1 人当たりの平均訓練費用
(リンギ)
(リンギ)
2006
541,614
239,229,350
441.69
2007
632,455
280,443,035
443.42
2008
684,120
318,219,859
465.14
表 3‐10
年
特別訓練助成制度(Skim SBL-Khas)
訓練場所の数
助成金
1 人当たりの平均訓練費用
(リンギ)
(リンギ)
2006
43,028
22,726,713
528.18
2007
42,411
26,402,692
622.54
2008
38,782
28,046,812
723.19
表 3‐10 からも分かるように SBL-Khas の方が訓練先の数が少ない。しかし、助成金額
及び 1 人当たりの平均訓練費用は増加している。1 人当たりの平均訓練費用は 2006 年の
528 リンギから 2008 年の 723.19 リンギまで増加している。表 11 の PROLUS では 1 人
当たりの平均訓練費用が最も高額になっている。2008 年の PROLUS の利用者は、平均で
1,879 リンギの助成金を得ている。また、SBL-Khas と同じように PROLUS でも訓練場
所の数が減少していることに注目すべきである。2006 年には 11,594 カ所あったものが、
2007 年には 9,196 カ所に、2008 年には 7,216 カ所に減少しており、表 12 の PERLA に
も同様の傾向が見られる。訓練場所の数は減少しているが、1 人当たりの訓練費用は上昇
している。
表 3‐11
年
訓練場所の数
認可訓練制度(PROLUS)
助成金
1 人当たりの平均訓練費用
(リンギ)
(リンギ)
2006
11,594
16,277,579
1,403.96
2007
9,196
14,858,661
1,615.77
2008
7,216
13,561,609
1,879.38
表 3‐12
年
訓練場所の数
訓練契約制度(PERLA)
助成金
1 人当たりの平均訓練費用
(リンギ)
(リンギ)
2006
11,761
6,726,891
571.96
2007
6,813
4,711,107
691.49
2008
5,554
3,890,051
700.40
15
マレーシア(調査大項目 3:職業能力開発の政策とその実施状況)
作成年月日:2009 年 10 月 30 日
この先は PSMB が助成してきた分野について見ていく。表 3‐13 には、2008 年に助成
された分野の詳細を記載したが、注意すべき点は、これらは地域における訓練であり、高
等訓練、例えば学士取得のための助成金は含まれていない。そのため、表 13 の助成金額
である 3 億 5,540 万リンギ が表 3-8 の 3 億 7,200 万リンギより少なくなっている。3 億
5,540 万リンギ は 73 万 2,303 校全体に対する助成金であり、1 人当たりの助成は 485.39
リンギとなる。表に記載されている分野におけるレベルアップが助成金の 50%を占め、残
りは技術/制作と品質管理・生産性分野に均等(17%)に配分されている。技術/制作分野
には、溶接、機械修理、電気配線、ロボット技術などが含まれており、品質管理及び生産
性には統計、工程管理、ISO や品質管理が含まれている。もう一つの分野であるコンピュ
ータ技術に対しては、助成金の 9.6%が配分されている。
表 3‐13
2008 年の訓練校数及び PSMB から助成金を得た分野* 1
訓練場所の数
技術/制作*
2
品質管理・生産性*
コンピュータ*
3
4
管理・監督
その他能力開発
合
計
助成金額
助成金の割合
(百万リンギ)
(%)
72,424
63,035,345
17.7%
174,398
62,397,913
17.5%
50,061
35,027,450
9.6%
38,123
17,466,216
5.0%
397,297
177,524,300
50.0%
732,303
355,451,224
100.0%
(注 1)年に 1 つ以上のコースに出席した者を含む。
(注 2)技術/制作には溶接、機械修理、電気配線、ロボット技術等を含む。
(注 3)品質管理・生産性には統計、工程管理、ISO、品質管理等を含む。
(注 4)コンピュータには、ソフトウエア及びプログラミングを含む。
*出典:“Number of local traini ng places and financial assistance approved by PSMB, by area of
training, 2004-2008”
結論としては、PSMB は月給の 1%の資金を集めることには効果的であったが、大多数
の企業は訓練費用の請求や還付の手続きを行っていない。これは主に中小企業が訓練は贅
沢であると思っていることが一因ともいえる。彼らにとって、従業員が訓練しているとい
うことは、現場に人がいない、つまりは生産・収入の低下になると考えるからである。ま
た他の企業は、税金だと思い、嫌々払っているものの、煩わしい申請をしてまでもその金
額を取り戻そうとは思っていない。PSMB への膨大な申請書類が面倒であると考えている
例もある。
3.8
公共職業能力開発実施機関
マレーシア政府が設立した公共の職業能力開発実施機関は数多く存在する。施設によっ
ては、連邦政府、州政府、政府関連機関が建設している。他には、JMTI、MFI、BMI の
16
マレーシア(調査大項目 3:職業能力開発の政策とその実施状況)
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ように外国企業や国際機関と共同で設立しているものもある。下記は、主な公共機関であ
る。
・ 技術及び職業訓練専門学校
・ ポリテクニック及び地方短期大学
・ 産業訓練専門学校(ILPs もしくは ITI)
・ 上級技術センター(ADTECs)
・ 高度技術訓練センター(CIAST)
・ MARA 訓練センター(MARA Active cen tres)
・ MARA 技術専門学校(MARA Skills Institutes)
・ 日本‐マレーシア技術学院(JMTI)
・ マレーシア‐フランス技術学院(MFI)
・ ドイツ‐マレーシア技術学院(GMI)
・ 英国‐マレーシア技術学院(BMI)
・ マレーシア‐スペイン技術学院(MSI)
・ 青少年トレーニングセンター
・ 青少年上級技術
・ 国家青少年技術専門学校(IKBN)
・ 技術開発センター(SDCs)
上記のリストの中からいくつかの典型的な職業訓練学校を掘り下げてみていく。最初に、
上級技術センター(ADTEC)を見てみる。現在、マレーシアには ADTEC が 26 校あり、
最初の施設は 1998 年に設立された。ADTEC は、就業前及び就職後に高度技術分野の訓
練を行うセンターである。提供するコースは、認証レベルと専門学校修了レベルである。
入学のための最低学歴は、SPM レベル(上級中等教育)で数学、上級数学・科学、物理、
技術の単位を取得していることと、高校レベルの英語を合格していることである。コース
によっては 2∼3 年かかる。ADTEC の主目的は以下のとおりである。
・ 最新の技術を体得するための知識と技能を身に付けること
・ 産業界のニーズにあった質の高い人材を提供すること
・ 産業界のニーズに対応した個別の訓練コースを作成すること
・ 訓練プログラムに民間企業の積極的な参加を促すこと
(1) 上級技術センター・シャーアラム(ADTEC Shah Alam)
シャーアラムにある ADTEC を具体例として見ていく。ここでは略して ADTEC SA と
記載していく。初期に設立された ADTEC の 1 つであり、1999 年には着工し、2001 年 1
月には 107 名の生徒が入学した。2009 年現在は 1,000 名近い生徒がおり、電力、エレク
トロニクス、メカトロニクス、コンピュータ、機械、品質保証、溶接、冷蔵・エアコン技
術、航空機整備技術などを学んでいる。学校スタッフは 144 名おり、うち教員は 82 名で
ある。施設面から ADTEC SA を見ると、メイン講堂には 300 名が収容でき、多目的ホー
ルは学術的な目的以外にもさまざまな集会に使用できるが、主に、レクリエーション(バ
トミントンや卓球)、武道や美術部などの課外授業に使われている。他にはセミナー室がい
17
マレーシア(調査大項目 3:職業能力開発の政策とその実施状況)
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くつかあり、100 名まで収容できる。これらは主に授業やグループディスカッション、会
議のために使用されている。それ以外に資料室があり、約 3,000 冊の本を所蔵するだけで
なく、インターネットに接続するパソコンや IT 関連機器もある。スポーツという面でも
施設はあり、サッカー場、テニスコート、バレーボールコート等がある。
ADTEC SA は大きく 4 つの学部、電子・ICT 学部(EICT)、電気保全学部(EMT)、製
造・組立学部(M&F)、特別訓練学部がある。各学部において 2∼3 種類の卒業資格を得
ることができるコースを提供している。EICT では、メカトロニクス、コンピュータ、電
気技術における修了証書を、EMT では、冷蔵・エアコン技術と電力を、M&F では、品質
維持、製造、溶接の修了証書を得ることができる。特別訓練学部では、航空技術に関する
訓練を行い、日本マレーシア自動車産業協力事業(MAJAICO)の資格を得ることができ
る。
さらに、コンピュータコースの内容を見ていく。このコースでは、コンピュータシステ
ムの開発とデザイン、テレコミュニケーション、イメージプロセッシング、維持管理と修
理、ソフトウエアやシステムの問題点の発見などの細かい分野を学んでいく。取得できる
コンピュータ技術の資格は、“生徒はデザインに関する理論と技術を学ぶだけでなく、機械
そのものの取扱いや管理、業界で汎用されている試験ツールや計測方法、自動化システム、
ネットワークについての能力を持つ”と説明されている。デジタルだけでなくアナログのプ
ログラムもあり、基礎的なオートメーションの管理についても学ぶ。
最後にメカトロニクスの授業内容を述べる。メカトロニクスとは電気と機械技術の融合
的なものであり、自動化システムとロボット技術を主に扱う。生徒は複数のシステムを扱
うことができるようになる。例えば、水力と電気水力、気圧と電気、電気と電子工学、オ
ートメーションとロボットシステムなどである。さらに生徒は、製造業で使用されている
各システムを設計、開発、改良することを学習する。
ADTEC SA では、実習が 50∼60%で、残り 40∼50%で理論を学ぶ。普通の生徒であれ
ば、技術者として最低限必要な技術が身に付く。ADTEC SA は他に短期コースも提供して
おり、大企業から中小企業まで必要に応じた技術を学ぶことができる。
(2) ポリテクニック・スルタン・アブドゥル・ハリム・ムアザム・シャー(Sultan Abdul Halim
Mu’adzam Shah)
公共訓練学校の 1 つとしてポリテクニックを見ていく。昨年、国内には 27 校のポリテ
クニックがあり、ここでは、スルタン・アブドゥル・ハリム・ムアザム・シャー・ポリテ
クニックもしくは POLIMAS(マレー語の略)と呼ばれている施設について述べていく。
POLIMAS はクダ州ジトラのバンダル・ダルラマンにあり、州都アロー・スターの北 25km
にある。1984 年に開校した時にはポリテクニック・アロー・スターの名前で知られていた。
1987 年 3 月 14 日に現在の場所であるクバン・パスにある 28 ヘクタールの土地に移転し、
その 2 年後の 1989 年 3 月 14 日にはケダ州のスルタンによって正式に開校され、スルタン
の名前を頂き、ポリテクニック・スルタン・アブドゥル・ハリム・ムアザム・シャーに改
名された。POLIMAS は現在、立派な技術教育・訓練施設として発展した。マレーシア国
内の民間及び国営企業に送り込める質の高いセミプロフェッショナルな人材を育成するこ
とを目的としている。100 名から始まった同校も今では 6,000 名以上在籍し、スタッフも
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マレーシア(調査大項目 3:職業能力開発の政策とその実施状況)
作成年月日:2009 年 10 月 30 日
500 名以上いる。
POLIMAS には 6 つの学部がある。土木工学部、電気工学部、機械工学部、商学部、数
学・科学・コンピュータ学部、と一般教養学部である。これらの学部で下記の資格を得る
ことができる。
・ 土木工学の認証(Certificate)
・ 建築の認証
・ 建築の修業証書(Diploma)
・ 街及び地域設計の認証
・ 設計の認証
・ 土木工学の修業証書
・ 電気及び電子工学の認証
・ 電気工学の修業証書
・ 電子工学の修業証書
・ 機械工学の認証
・ 機械工学の修業証書
・ 機械工学(製造)の修業証書
・ メカトロニクス工学の修業証書
・ ビジネスの認証
・ 会計学の修業証書
・ マーケティングの修業証書
上記リストから POLIMAS はポリテクニックとして主にエンジニアリングに基づくコ
ースを提供していることが分かる。ほとんどのコースは機械、土木、電子、電気、メカト
ロニクス分野である。さらに、これらは認証もしくは修業証書資格を得ることができる。
そのため、修士まで取得できる大学と競合せず、また他の職業訓練学校よりは学問重視で
ある点でも違いがある。上記リストからも分かるようにほとんどのコースは学術的なエン
ジニアリングである。さらに、ビジネスマネジメント、会計、マーケティング、小売業に
関する認証もしくは修業証書を得ることもできる。
POLIMAS では、認証と修業証書の資格を得ることができる。認証を取得するためのプ
ログラムは 2 年間もしくは 4 学期分であり、各学期は 20 週間である。一般的に 2 学期が
終わると 2 週間の休暇があり、全学期が終わると 4 週間の休暇がある。入学時期は 1 年に
2 回あり、7 月と 12 月である。最後の学期前の 3 学期には全生徒は必ず民間もしくは政府
機関にて職業訓練を 6 カ 月間受けなければならない。職業訓練場所の割 り当ては、
POLIMAS 職業訓練連絡係で行われる。
修業証書取得コースの場合は、3 年もしくは 6 学期を終了しなければならない。入学時
期は認証コースと同じく、7 月と 12 月である。4 学期目には必ず職業訓練を受けなければ、
次の 2 学期に進学することができない。さらに、認証取得者は修業証書を得るために勉強
を継続することができる。この機会は、POLIMAS 卒業者だけでなく、教育省傘下のポリ
テクニックならどこでも同じである。しかし、就業経験者が優先される。この場合のコー
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マレーシア(調査大項目 3:職業能力開発の政策とその実施状況)
作成年月日:2009 年 10 月 30 日
スは 1 年間で 5 学期目に編入し、職業訓練は免除される。
POLIMAS には 10 のサポート部門、財務・管理部、試験部、図書館部、ICT 部、指導 ・
マルチメディア部、学生部、教育・訓練継続部、課外授業・スポーツ部、職業訓練・連絡
部とカウンセリング部がある。1984 年に設立されてから 2006 年末までに、POLIMAS を
卒業したのは、土木学部から 6,642 名、商学部から 2,719 名、数学・科学・コンピュータ
学部から 71 名、電子工学部から 6,562 名、機械工学部から 7,599 名である。POLIMAS
は 2 万 3,593 名を教育したことでマレーシアの技術発展及び職業訓練に貢献している。
(3) 高度技術訓練センター(CIAST)
高度技術訓練センター(CIAST)は、マレーシアの職業能力開発を外国企業が支援して
いることの成果を示す一例である。マレーシア政府が最初に CIAST を検討したのは 1979
年である。FS 調査を経て、ASEAN 人材資源開発プロジェクトのもと、1983 年に日本政
府から資金援助を受けて建築された。キャンパスはスランゴール州シャーアラムにあり、
1984 年から生徒の受け入れを開始した。1984∼1991 年の間に、CIAST を支援するため
に JICA を通じて日本政府から技術者や管理者が派遣されている。2007 年 5 月末まで
CIAST は人的資源省の人材部が管理していたが、6 月 1 日から訓練開発部に移管され、
CIAST の新たな役割と可能性を開発することとなった。
公共職業訓練学校の中でも CIAST はユニークな存在である。職業訓練施設の教員を育
成するだけでなく、公立・民間を問わず訓練施設の教員たちの技術能力を高める役割も果
たしている。受講可能なコースは、公立、民間共に、教員訓練、技術者の管理能力及び技
術力向上、国内外の教員、コーチや技術者たちのスキルアップも行う。CIAST の最も重要
なプログラムは、国家インストラクター訓練プログラムである。卒業者は職業訓練の修業
証書を得て、ITI、JMIT、ADTEC 等で教鞭をとることができる。
CIASTは 200 名以上のスタッフを抱え、8 つの部門に分かれている。最も大きい部門は、
教員技能開発部で 88 名在籍している。専門技能開発部は 36 名、訓練教科開発部は 29 名、
国際訓練部には 5 名いる。CIAST はマレーシア内外からその功績に対して表彰されており、
例えば 2004 年には第 2 回ミツトヨ・アジアパシフィック大学において賞を複数獲得して
いる。基本カテゴリーでは優勝しており、上級カテゴリーでは 2 位であった。翌年には同
じ大会でさらに 2 つの賞を獲得している。
3.9
民間企業が行う職業訓練への支援体制
本章では、2 つの民間職業訓練学校を取り上げる。
(1) ペナン技能開発会社(Penang Skills Development Corporation:PSDC)
ペナン技能開発会社(PSDC)は国内で最も成功している施設として有名である。PSDC
はペナンが国際的な製造企業を誘致し続けるためには、技術の進歩についていける人材を
育てなければならいという危機感から草案された。ペナンの州政府及びペナンの経済開発
機関であるペナン開発公社(PDC)はこれにすばやく反応し、州内の経営者たちと面談し、
ペナンに職業訓練センターを設置することについて話し合いが行われた。24 社が創立メン
バーになることに同意し、PSDC が 1989 年に設立された。PSDC の目的は”製造業及びサ
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マレーシア(調査大項目 3:職業能力開発の政策とその実施状況)
作成年月日:2009 年 10 月 30 日
ービス業が効果的に人材を活用できるようにするために、技術訓練と教育を提供すると共
に技術の進歩への対応も可能にする”。PSDC は、世界銀行、アジア開発銀行、ILO、USAid、
UNCTAD、UNIDO にも知られる存在となっている。1996 年に USAid の資金で行った調
査では、世界の中で最も人材開発ができている施設のトップ 10 の中に挙げられている。
PSDC は現在、ペナンのバヤン・レパス自由貿易地域内の 1 万平方フィートの土地にあ
り、147 社がメンバー企業になっている。運営委員会が運営しているが、構成メンバーの
うち、11 名は選挙で選ばれ、4 名は指名され、7 名は前役員である。選任される 11 名は、
創設時からの支援会社の社長や幹部であり、総会で会長、副会長、社長代理、委員会メン
バーが選任される。2009∼2010 年の役員は次の企業の社長もしくは重役たちである。会
長はアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)、副会長はモトローラペナン、会長代
理はインテルペナンとエテック(地元上場製造業)から、委員にはアジレントテクノロジ
ー、ビーブラウン、ボッシュ、デルやオスラムなどの幹部が就任している。これらの会社
はすべて世界的な大手電子機器、医療機器製造業社である。
PSDC はペナン州の企業が必要とする職業訓練を行っている。次にいくつかのプログラ
ムを紹介する。
労働者の技術者転換プログラム(Workforce Technical Transformation Program:
WTTP)は、マレーシア政府が高校中退者に対してさまざまな技術訓練を行うことで、彼
らを優秀な労働者にしようという計画である。WTTP は財務省の支援を得て、対象者に対
しては無料の技術訓練と 500 リンギの月給が支給される。現在 PSDC による WTTP は 2
つあり、1 つは、精密機械技術で、18 カ月の訓練と 6 カ月の実務研修がある。もう 1 つは、
水質管理で、3 カ月の訓練と 3 カ月の実務研修がある。
工業技術促進プログラム(Industrial Skills Enhancement Program:INSEP)は、新
規大学卒業者にさらに高度な技術を身につけさせるという計画である。INSEP も財務省か
ら支援を受け、対象者は無料の技術訓練と 1,000 リンギの月給が与えられる。PSDC によ
る INSEP は 3 つあり、1 つは、ウエハー設計・開発で、物理、電子・電気、メカトロニ
クス学士資格を持つ者だけが受講し、5 カ月間の訓練の後、3 カ月間の実務研修がある。2
つ目は、SEAGATE の情報通信技術、3 つ目は AMD の顧客管理である。
PSDC が提供するプログラムは他にもあり、次のような分野にかかわるものがある。労
働、技術、品質管理・生産性、ビジネスマネジメントと IT である。例えば、技術/品質
管理・生産性のプログラムについては下記のような内容である。
・ 品質管理、改善、及び管理技術
・ 統計的品質改善ツール
・ 生産性改善及びコスト削減
・ その他の品質に関連する品質、生産性、技術など
・ 自動化及び関連プログラム
・ 電気・電子
・ 製造工程
21
マレーシア(調査大項目 3:職業能力開発の政策とその実施状況)
作成年月日:2009 年 10 月 30 日
品質管理、改善及び管理技術では、3 つのレベルで 14 のコースがある。
(1) 初級
・ 5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)によるハウスキーピング
・ シックスシグマ概略
・ 新 7 つ道具による品質管理
・ 品質にかかる費用
・ 改善
・ TS 16949
(2) 中級
・ 8D 問題解決
・ 新製品品質計画(APQP)
・ 故障の影響解析(FMEA)
・ 測定システム解析(MSA)– TS 16949 第 3 版
・ 生産部品承認プロセス(PPAP)
・ 全体品質管理
(3) 上級
・ シックスシグマの黒帯認定
・ アメリカ品質協会(ASQ)の品質エンジニア(CQE)の認定
さらに具体例として技術、品質、生産性の範疇で製造工程の 7 つのプログラムが PSDC
のウェブサイト挙げられている。
・ 基本技術設計
・ IPC-A-610D(アメリカ電子回路協会(IPC)規格)の紹介
・ モノを知れ、ツールを使いこなせ
・ メナード・オペレーション・シークエンス・テクニック(MOST)
・ 時間計測 I(MTM I)
・ SMT 故障時間計測(SRT 402)
・ 抜け穴修理及び SMT
PSDC では下記学術プログラムも提供している。
・ 電子工学の修業証書
・ メカトロニクスの修業証書
・ コンピュータ工学の修業証書
・ 通信工学の修業証書
・ IT の修業証書
・ 電気及び電子工学の学士
・ 機械工学の学士
・ ビジネスマネジメントの修士
・ マイクロエレクトロニクスの修士
・ フォトニクスの修士
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マレーシア(調査大項目 3:職業能力開発の政策とその実施状況)
作成年月日:2009 年 10 月 30 日
・ 通信工学の修士
(2) 労働者技術専門学校(Workers’ Institute of Technology:WIT)
マレーシアの高名な訓練コンサルタントであるパトリック・ピライ(Patrick Pillai)氏
がもう 1 つの民間職業訓練学校として挙げているのが、労働者技術専門学校(WIT)であ
る。WIT は PSDC と全くの対極にいるといっても良い。両校とも全く違う分野での職業
訓練を行っており、異なる団体から支援されている。PSDC は多国籍企業から支援されて
おり、ペナンの輸出型製造業者を対象とした OJT を積極的に行っている。一方、WIT は
マレーシア労働組合会議(MTUC)により設立されており、中産下流階級の労働者の子供
たちを学生としている。スランゴール州クランにあり、青少年の失業率が高く、WIT が設
立された当初は特にインド系の人たちの失業率が高かった。WIT のほとんどの学生が、
MTUC のメンバーの子供たちであった。WIT は、設立当初も現在も助成金及び生徒を集
めるのに苦労している。15 年経った 1992 年の学生数は 903 人である。WIT は職業訓練
でも専門性が少し低い民間学校が抱える問題を示す典型例である。
WIT は 1977 年にスランゴール州のクランにあるパンダマラン工業団地の 10.4 エーカー
の土地に設立された。1958∼1995 年の間に運輸連盟組合(TWU)の事務局長であった V.
デイビット氏が中心となって設立された。彼は MTUC の副社長も 5 年間務め、1979∼1992
年には事務局長に就任している。WIT は、V. デイビット氏の影響によるものであるが、
主に運送業界の国際的な労働組合から多数寄付金を得たといわれている。WIT はブルカラ
ーの子供たちに職業訓練の機会を与えるために設立された。下層階級に職業訓練や技術習
得の機会を与えるパイオニア的存在である。WIT の卒業生は 3 万人を超えており、マレー
シアの人口の主要な部分を占める中産下級階級の人たちの子供である。クランのメインキ
ャンパスに加え、1986 年にペラック州イポーに分校を設立した。WIT は現在、ザイナル・
ランパク(Zainal Rampak)氏が代表を務めており、輸送連合組合に 40 年以上もかかわ
ってきた同氏は現在、TWU の事務局長でもある。彼は 1985∼2006 年までの間 MTUC の
社長も務めた。ザイナル氏の指導のもと、WIT は立派な民間の短期大学として幅広い分野
での訓練を提供する学校へと成長した。現在は、Kolej WIT として知られており、今もブ
ルカラーの子供たちに対する教育と訓練を提供するという理念は変わっていない。
Kolej WIT は現在、エンジニアリング学部と高等教育学部の 2 つの学部がある。両学部
のコースは全日制と一部履修制で提供されており、正式な資格供与はもちろんのことさら
に高い技術を習得することもできる。施設は充実しており、自動車工場や機械室、運転シ
ミュレーターやデザイン室、電気研究室や電子実験室もある。Kolej WIT は PSMB に認定
された認可訓練機関であり、さまざまなレベルの技術を学べるよう複数の業界の企業と提
携している。独自の修業証書のほかに UK BTEC-HND の資格を有する上級国家資格修業
証書も取得することができる。マレーシア国内で自動車工学の上級国家資格修業証書を取
得できる最初の学校であった。同校は下記のような、商業系、技術系の実務的な訓練に取
り組んでいる。
・ 自動車工学の上級国家資格修業証書
・ 機械修理工学の上級国家資格修業証書
・ 電子・電気工学の上級国家資格修業証書
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マレーシア(調査大項目 3:職業能力開発の政策とその実施状況)
作成年月日:2009 年 10 月 30 日
・ ソフトウエア・エンジニアリングの上級国家資格修業証書
・ 自動車工学の修業証書
・ 機械修理工学の修業証書
・ 電気・電子工学の修業証書
・ コンピュータ科学の修業証書
・ メカトロニクス工学の修業証書
・ 自動車技術の認証
・ 電気工の認証
・ 工業修理の認証
・ 工業製造・メカトロニクスの認証
・ コンピュータシステムのアシスタント・テクニシャンの認証
・ 美容師の認証
【短期コース】
・ 生産オペレーション管理
・ パソコンの修理・トラブル対応
・ 携帯電話修理・サービス
・ 英会話
・ 電子工学基礎(実用編)
・ 溶接
・ コンピューター・インターネットの基礎
・ コンピューターグラフィックス
・ ウェブサイトのデザイン
・ ビジュアルプログラミングの基礎
・ プラスター板組立(基本コース)
・ プラスター板組立(上級コース)
・ 管理技術
人的資源開発基金(HRDF)で取得可能なコースは PROLUS 、PERLA、SBL、SBL Khas
制度の対象である。
・ 工業チャージマン AO/A4
・ 気体力学/液体力学入門
・ ロジック・コントロール・プログラミング
・ マイクロプロセッサー
・ リニア・プログラミング
・ 自動 CAD(2D/3D)
・ デジタルエレクトロニクス
・ 工業オートメーション
・ ワイヤー工
単層/三層
・ テクニカルオペレーターの訓練
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マレーシア(調査大項目 3:職業能力開発の政策とその実施状況)
作成年月日:2009 年 10 月 30 日
・ 電気技術者
・ 安全プログラム
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