保険薬局における残薬調整に対する取り組みが医療費削減に与える効果 野口洋子 1), 常世田京子 2), 吉田和幸 2), 長谷川佳孝 2), 月岡良太 2), 森澤あずさ 2) 1) 株式会社アインファーマシーズ 今川薬局 龍ヶ岡店 2) 株式会社アインファーマシーズ 【目的】医療費の増加が深刻な問題である今日、その削減に向けて残薬問題の 解決が求められている。残薬確認が薬歴管理指導の算定要件であることから、 残薬解決に保険薬局の貢献が求められていることは明らかである。そこで、保 険薬局における残薬調整への取り組みが医療費削減に与える効果を調査した。 【方法】当薬局来局患者の 2012、2013 年および 2014 年の 4 月の薬歴から残薬 調整の記述がある患者を抽出し、残薬調整に至った経緯、薬剤の種類、その後 の経過などを調査した。 【結果】残薬調整の事例は、2012 年で調査件数 1,837 件中 56 件、2013 年で調 査件数 1,973 件中 79 件、2014 年では調査件数 2,143 件中 99 件と増加し、当薬 局の申し出から残薬調整された事例も 2012 年から毎年約 10%ずつ増加した。 残薬調整のきっかけは、すべての年で「患者の申告」が 60%以上と最も多かっ たが、2012 年には 3.5%であった「保険薬剤師の指導」も、2014 年には 10%ま で増加した。疑義照会による残薬調整の事例も 2014 年では 2012 年よりも 23% 増加し、2012 年は 0.77%であった残薬調整による 1 ヵ月薬剤費の削減率も、2014 年には 1.2%まで増加した。患者 1 人あたりの残薬調整剤数は調査事例全体平均 で 1.65 剤であり、薬剤費削減額と患者自己負担額に有意な相関はなかった。残 薬となりやすい薬剤は消化器治療薬であり、服用方法は毎食後、夕食後、朝食 後であった。残薬調整後に状況が改善した事例は、調査事例全件平均で約 65% であり、毎食後服用の薬剤の残薬調整効果が最も低かった。 【考察】本研究では、保険薬剤師の残薬に対する指導が医療費削減につながる ことを数値的に示すことができた。また、残薬となりやすい薬剤・服用方法に ついても特定することができた。保険薬剤師が残薬発生のメカニズムや患者背 景などを理解して適切な指導を行うことで、患者のアドヒアランス向上や医療 費削減に大きく貢献できると考えられる。 (第 8 回日本薬局学会(2014 年 11 月, 広島)にて発表)
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