第2章 第1節 中高層建築物における火災の状況等 中高層建築物の状況 東京における中高層建築物の状況を把握するため、東京消防庁統計書及び東京消防庁総合予 防情報システムのデータ(平成 23 年 6 月 1 日現在)を取りまとめた。 なお、本審議会における審議事項の一つが、歩行困難者等の安全な避難のあり方であること を踏まえ、本章では、地上 4 階建て以上の建築物について調査を行った。 1 中高層建築物の推移 東京消防庁管内の中高層建築物の推移を表 2-1-1 に示す。昭和 45 年から平成 22 年までの 40 年間で、建築物数は約 3 万棟から約 15 万棟に増加している。 それらを、建築基準法で特別避難階段の設置を要する 15 階以上、消防法などで消防用設備 等の設置基準が強化されている 11 階以上、これら以外の階層のもので分けてみても、各階層 の建築物数は、増加傾向にある。 図 2-1-1 に示すように、昭和 45 年の建築物数を基準とした割合でみると、4 階~10 階建て と比べて、11 階~14 階建て及び 15 階建て以上の増加が顕著である。 表 2-1-1 地上階層 中高層建築物の推移(単位:棟) 昭和 45 年 15 階建て以上 昭和 55 年 28 平成 2 年 143 平成 12 年 285 平成 22 年 638 1,640 11 階~14 階建て 368 1,921 3,495 5,874 9,697 4 階~10 階建て 30,739 67,187 112,872 128,943 141,498 計 31,135 69,251 116,652 135,455 152,835 60.00 58.57 50.00 40.00 15階建て以上 30.00 22.79 26.35 11階~14階建て 4階~10階建て 20.00 15.96 10.18 5.11 10.00 1.00 1.00 0.00 昭和45年 9.50 5.22 2.19 昭和55年 4.19 3.67 平成2年 図 2-1-1 平成12年 4.60 平成22年 中高層建築物の推移 (昭和 45 年の数を基準とした場合の割合) - 9 - 中高層建築物について、地上階数の平均を表 2-1-2 に示す。昭和 55 年から平成 22 年まで の 30 年間でほぼ 1 階層分高くなっており、中高層建築物は全体的に高層化している。 表 2-1-2 昭和 55 年 平均地上階数 中高層建築物の平均地上階数 平成 2 年 5.43 5.59 平成 12 年 5.94 平成 22 年 6.31 ※ 昭和 45 年は、15 階建て以上の個別データがないため除く 2 中高層建築物の用途 中高層建築物の用途について、平成 12 年と平成 22 年の階層ごとのデータを表 2-1-3 に示 す。物品販売店舗やホテルなど、用途によっては 4 階~10 階建てが減尐しているものもある が、中高層建築物の総数は、平成 12 年から平成 22 年までの 10 年間で約 13 万 5 千棟から約 15 万 3 千棟へ約 1 万 8 千棟増加している。 11 階建て以上の用途は、ホテル、共同住宅、病院、学校、事務所及び複合用途が多くを占 めており、いずれの用途の建築物数も増加している。 - 10 - 表 2-1-3 中高層建築物の用途(単位:棟) 4 階~10 階建て 政令 用途 主な用途 平成 12 年 11 階~14 階建て 平成 22 年 平成 12 年 平成 22 年 15 階建て以上 平成 12 年 計 平成 22 年 平成 12 年 平成 22 年 1 項イ 劇場・映画館 33 42 0 0 0 0 33 42 1 項ロ 公会堂 29 24 0 0 0 0 29 24 2 項イ キャバレー 15 13 0 0 0 0 15 13 2 項ロ 遊技場 264 183 0 0 0 0 264 183 2 項ハ 性風俗関連 - 5 - 0 - 0 - 5 2 項ニ カラオケボックス - 106 - 2 - 0 - 108 3 項イ 待合 3 項ロ 飲食店 4項 物品販売店舗 5 項イ ホテル 5 項ロ 共同住宅 6 項イ 37 24 0 0 0 0 37 24 1,028 1,125 0 3 0 0 1,028 1,128 924 876 3 3 0 0 927 879 1,132 1,031 61 128 12 12 1,205 1,171 44,339 54,335 3,285 6,526 171 822 47,795 61,683 病院・診療所 801 917 15 15 11 11 827 943 6 項ロ 老人ホーム 301 433 1 2 0 0 302 435 6 項ハ 老人通所施設 6 項ニ 幼稚園 7項 学校 8項 図書館・美術館 9 項イ - 163 - 0 - 0 - 163 16 24 0 0 0 0 16 24 3,199 3,312 42 65 9 21 3,250 3,398 50 52 0 0 0 0 50 52 熱気浴場 117 106 0 0 0 0 117 106 9 項ロ 公衆浴場 5 6 0 1 0 0 5 7 10 項 停車場 10 17 0 0 0 0 10 17 11 項 神社・寺院 227 276 1 1 0 0 228 277 12 項イ 工場・作業場 1,707 1,418 1 0 0 1 1,708 1,419 12 項ロ テレビスタジオ 7 11 0 0 0 0 7 11 13 項イ 駐車場 207 252 2 5 1 1 210 258 13 項ロ 格納庫 4 2 0 0 0 0 4 2 14 項 倉庫 1,572 1,261 4 3 0 0 1,576 1,264 15 項 事務所 18,876 17,544 445 499 101 114 19,422 18,157 16 項イ 特定用途複合 31,742 33,606 1,001 1,296 265 523 33,008 35,425 16 項ロ 非特定用途複合 22,297 22,667 1,013 1,129 68 133 23,378 23,929 4 1,667 0 19 0 2 4 1,688 128,943 141,498 5,874 9,697 638 1,640 135,455 152,835 その他 計 ※ 1 2 3 政令用途:政令別表第 1 に定める防火対象物の用途 平成 22 年の建築物数の網掛けは、平成 12 年の建築物数から減尐しているもの 特定用途複合:飲食店・物品販売店舗などの特定用途(1 項から 4 項、5 項イ、6 項及び 9 項イ)を含む複合用途 非特定用途複合:特定用途複合以外の複合用途 4 2 項ハ、2 項ニは、それぞれ平成 14 年及び平成 20 年の政令改正で追加されたため、平成 12 年のデータはない。 また、平成 19 年の政令改正で 6 項ロが 6 項ロと 6 項ハに細分化され、同時に改正前の 6 項ハが改正後の 6 項ニに 移行したため、比較を行う便宜上、平成 12 年の 6 項ハのデータは 6 項ニの欄に計上している。 5 その他に計上されているものは、建築物の使用状況等により、一時的に無用途となっているものなどが含まれる。 - 11 - 3 11 階建て以上の建築物の階層ごとの主な用途等 表 2-1-3 では、中高層建築物について、用途別に建築物数の整理を行ったが、複合用途防 火対象物の存在や、政令第 1 条の 2 第 2 項後段の規定に基づく「防火対象物の従属的な部分 を構成する」と認められた部分の存在等により、実際に使用されている用途を把握できない。 さらに詳細なデータを得るために、東京消防庁総合予防情報システムのデータ(平成 23 年 6 月 1 日現在)から、階層ごとの用途や床面積を調査した。 なお、高層階に着目するため 11 階以上の階の部分に対象を絞り、調査を実施した(調査対 象建築物は 11 階建て以上 11,457 棟(調査基準日が異なるため、表 2-1-1 の数値とは一致し ていない。))。 ⑴ 階層ごとの主な用途 11 階以上の階について、階層ごとに用途を整理したものを、表 2-1-4 に示す。表 2-1-3 の建築物全体の用途と同様に、用途は限定されている。しかし、飲食店は、表 2-1-3 の 11 階建て以上では 3 件しか存在しないが、表 2-1-4 の階層ごとの用途でみると、共同住宅、 事務所、ホテル、学校に次いで、多くの階でみられる。 ホテルや事務所は、11~14 階の数よりも 15 階以上の数が上回っている。 表 2-1-4 11 階以上の階の主な用途(平成 23 年 6 月 1 日現在) 飲食店 物 品 販売店舗 ホテル 共同住宅 15 階以上の階 137 0 701 7,517 44 11~14 階 136 23 664 23,928 計 273 23 1,365 31,445 ※ 病院 学校 事務所 その他 計 158 3,544 470 12,571 96 241 3,037 544 28,669 140 399 6,581 1014 41,240 主な用途:同一階を複数の用途で使用している場合、代表的な一の用途を当該階の用途としている 飲食店:事務所ビルの従業員用の食堂なども含む 共同住宅:ビルの一部を住宅として使用している場合の住居を含む その他:飲食店、物品販売店舗、ホテル、共同住宅、病院、学校、事務所以外の用途のほか、機械室、 階段室、空室などを含む ⑵ 階の床面積 非常用エレベーターの設置台数は、高さ 31mを超える階の最大床面積により規定されて おり、1,500 ㎡以下では 1 台、1,500 ㎡を超えると 2 台以上の設置が必要となる。 そこで、高層階部分がどの程度の規模であるかを把握するため、11 階以上の階において 多く使用されている、ホテル、共同住宅及び事務所の 3 つの用途について、階の床面積の 状況を調査した(図 2-1-2 参照)。 15 階以上の階(15 階建て以上にあるもの)は、11~14 階の階(11 階建て以上にあるも の)と比較して、階の床面積が 1,500 ㎡を超えるものの割合が多い。 用途ごとの傾向をみると、ホテルや共同住宅は、事務所に比べて小規模であり、1,500 ㎡以下のものが多くを占めている。事務所は 15 階以上の階では、1,500 ㎡を超えているも のが 75%以上であり、4,500 ㎡を超えるものもみられる。 - 12 - 凡例: 1,500 ㎡以下 1,500 ㎡超~3,000 ㎡以下 ホテル 11~14階 3,000 ㎡超~4,500 ㎡以下 4,500 ㎡超 ホテル 15階以上 4% 2% 2% 8% 8% 30% 60% 86% 共同住宅 11~14階 共同住宅 15階以上 1% 0% 4% 0% 0% 15% 84% 96% 事務所 11~14階 事務所 15階以上 4% 7% 9% 23% 26% 25% 61% 45% 図 2-1-2 4 高層階部分の階の床面積の状況(平成 23 年 6 月 1 日現在) まとめ ⑴ 中高層建築物は、昭和 45 年から平成 22 年までの 40 年間で、約 3 万棟から約 15 万棟ま で増加している。その中でも、高層・超高層建築物である 11 階~14 階建て及び 15 階建て 以上の増加が顕著である。 ⑵ 11 階建て以上の用途は、ホテル、共同住宅、病院、学校、事務所及び複合用途が多くを 占めており、平成 12 年から平成 22 年までの 10 年間で、いずれの用途の対象物数も増加 している。 - 13 - 第2節 1 歩行困難者等の状況 東京都における高齢者の状況 図 2-2-1 に東京都における 65 歳以上の高齢者人口の推移を示す。 65 歳以上の人口及び東京都の全人口に対する 65 歳以上の高齢者人口の構成比は、どちら も毎年増加している。平成 24 年 1 月現在では、東京都の全人口約 1,269 万人に対して、65 歳以上の高齢者人口は約 263 万人であり、構成比は約 20.8%に達している。つまり、東京都 においては 5 人に 1 人は 65 歳以上である。 300 100 90 250 80 70 200 60 150 50 高齢者人口 40 100 30 全人口に対する 構成比 20 50 10 図 2-2-1 平成21年 平成24年 平成18年 構成比 [%] 東京都における高齢者人口(65 歳以上)の推移 (住民基本台帳による東京都の世帯と人口 2 平成15年 平成9年 平成12年 平成6年 平成3年 昭和63年 昭和60年 昭和57年 昭和54年 昭和51年 昭和48年 昭和42年 昭和45年 昭和39年 昭和36年 0 昭和33年 人口 0 [万人] 平成 24 年 1 月より) 共同住宅に居住する高齢者 表 2-2-1 は、平成 12 年、平成 17 年及び平成 22 年の国勢調査の結果から、東京都における 共同住宅に居住する 65 歳以上の高齢者数を示したものである。 各年のデータを比較すると共同住宅に居住する 65 歳以上の高齢者数は増加傾向にあり、居 住する階層ごとの 65 歳以上の高齢者数も全て増加している。 共同住宅に居住する 65 歳以上の高齢者の居住階層別の割合を各年で比較すると、1・2 階の 居住者数の割合が減尐し、3 階以上の各階層の居住者数の割合が増加している(図 2-2-2 参照)。 このことから、高齢者の住居が高層化傾向にあることがわかる。 - 14 - 表 2-2-1 東京都における共同住宅に居住する高齢者数 (国勢調査 平成 12 年、平成 17 年、平成 22 年より抜粋) 平成 12 年 世 帯 が 居 住 す る 階 主 世 帯 数 主 世 帯 人 員 平成 17 年 65 歳 以 上 親 族 人 員 主 世 帯 数 1 世 帯 当 た り 人 員 主 世 帯 人 員 平成 22 年 65 歳 以 上 親 族 人 員 1 世 帯 当 た り 人 員 主 世 帯 数 主 世 帯 人 員 65 歳 以 上 親 族 人 員 1 世 帯 当 た り 人 員 11 階 以上 17,030 35,457 22,213 2.08 28,475 56,872 37,938 2.00 41,053 79,991 55,359 1.95 6階 ~10 階 65,565 132,316 84,807 2.02 97,274 189,130 127,979 1.94 128,772 243,794 171,451 1.89 3階 ~5 階 161,534 321,049 207,125 1.99 222,787 422,770 289,570 1.90 276,356 509,245 362,318 1.84 1・2 階 253,124 460,072 315,898 1.82 327,820 564,488 409,898 1.72 374,554 628,679 468,826 1.68 計 497,253 948,894 630,043 1.91 676,356 1,233,260 865,385 1.82 820,735 1,461,709 1,057,954 1.78 ※ 共同住宅:1 階が店舗で2階以上が住宅のもの及び重層の長屋も含む 主世帯:他の世帯が住んでいる住宅の一部を借りて住んでいる世帯を除いたもの 1・2階 3階~5階 6階~10階 11階以上 3.5 13.5 平成12年 32.9 50.1 4.4 14.8 平成17年 33.5 47.4 5.2 16.2 平成22年 34.2 44.3 0% 10% 20% 図 2-2-2 (国勢調査 3 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 共同住宅に居住する高齢者の階層別の割合 平成 12 年、平成 17 年、平成 22 年のデータを使用) 東京都における障がい者の状況 東京都における身体障害者手帳の交付台帳への登載数を表 2-2-2 に示す。登載数は、平成 12 年度からの 10 年で、いずれの障がい区分でも増加しており、平成 22 年度の総数は約 45 万 9 千件である。 図 2-2-3 の身体障がい者の住居の種類をみると、平成 15 年度と比べ、平成 20 年度では持 家(一戸建て)の割合が減尐する一方、持家(分譲マンション等)や民間賃貸住宅(共同住 宅)の割合が増加している。 4 階以上の階に居住している障がい者は、障がい者全体のどのくらいであるかを推定する ため、東京消防庁の緊急通報システム(緊急時にペンダント等のボタンを押すことにより東 - 15 - 京消防庁へ通報することができるシステム)に、障がい者区分で登録している者が居住する 507 世帯の住所を調査したところ、約 5 分の 1 にあたる 102 世帯が建築物の 4 階以上の階に 居住していた。これらの障がい者の障がいの内訳も様々である(表 2-2-3 参照)。 表 2-2-2 身体障害者手帳交付台帳登載状況(単位:件) (東京都福祉保健局 福祉・衛生統計年報 平成 22 年度より) 障がい 年度末 総 数 視 覚 聴 覚・ 平衡機能 音声・言語・そ しゃく機能 肢体不自由 内 部 平成 12 年度 362,665 35,014 36,140 5,382 208,227 77,902 平成 22 年度 459,200 39,013 44,057 6,989 248,687 120,454 持家(一戸建て) 平成15年度調査 (2,653人) 52.1 9.7 21.8 11.8 4.6 持家(分譲マンション等) 公営賃貸住宅、都市機構・公社 などの賃貸住宅 平成20年度調査 (2,674人) 47.3 12.7 21.5 12.8 5.7 民間賃貸住宅(共同住宅) その他 0% 20% 40% 図 2-2-3 (東京都福祉保健局 表 2-2-3 60% 80% 100% 身体障がい者の住居の種類 平成 20 年度「障害者の生活実態」より) 緊急通報システム登録者のうち 4 階以上の階に居住する障がい者の世帯数 (東京消防庁管内の緊急通報システム登録者データ 平成 22 年 12 月末現在) 身体障がい者区分での登録者数 507 世帯 上記のうち4階以上の階に居住する数 102 世帯 障がい別内訳 ※1 世帯に複数の障がい者が 視覚障がい 8人 聴覚障がい 8人 いる場合や、1 人の障がい 上肢機能障がい 30 人 者が複数の障がいを持っ 下肢機能障がい 28 人 ている場合などがあるた 体幹機能障がい 16 人 め、世帯数と一致しない。 移動機能障がい 5人 内部機能障がい 10 人 その他 58 人 - 16 - 4 まとめ ⑴ 東京都における 65 歳以上の高齢者人口及び東京都の全人口に対する構成比は、どちら も毎年増加しており、平成 24 年 1 月現在では、東京都の全人口約 1,269 万人に対して、 65 歳以上の高齢者人口は約 263 万人であり、構成比は約 20.8%に達している。 平成 12 年、平成 17 年及び平成 22 年の国勢調査のデータをみると、共同住宅に居住す る 65 歳以上の高齢者数は増加傾向にあり、3 階以上の各階層の居住者数の割合も増加して おり、高齢者の住居が高層化傾向にあることがわかる。 ⑵ 東京都における身体障害者手帳の交付台帳への登載数をみると、平成 12 年度からの 10 年で、どの障がい区分でも増加しており、平成 22 年度の総数は約 45 万 9 千件となってい る。 身体障がい者の住居の種類をみると、平成 15 年度と比べ、平成 20 年度では持家(一戸 建て)の割合が減尐する一方、持家(分譲マンション等)や民間賃貸住宅(共同住宅)の 割合が増加している。また、緊急通報システムのデータをみると、障がい者区分で利用登 録している 507 世帯のうち約 5 分の 1 にあたる 102 世帯が建築物の 4 階以上の階に居住し ており、障がいの種類も様々である。 - 17 - 第3節 1 中高層建築物における火災の状況 中高層建築物の火災件数等 中高層建築物において発生した火災の実態を把握するため、平成 12 年から平成 22 年まで に発生した火災についてとりまとめた。 ⑴ 中高層建築物の火災件数 平成 12 年から平成 22 年までにおける中高層建築物の火災件数を表 2-3-1 に示す。各階 層とも火災件数は、毎年増減しながらも、やや増加傾向にある。 階層別の火災件数をみると、他の階層に比べて、15 階建て以上で発生した火災は増加傾 向にあり、平成 12 年と平成 22 年で比較すると、約 2.4 倍となっている。 階層別の建築物 100 棟あたりの火災件数を平成 12 年と平成 22 年で比較すると、両年と も高層の建築物ほど多くなっている。 表 2-3-1 階層別の火災件数(単位:件) 建築物 平成 平成 平成 平成 平成 平成 平成 平成 平成 平成 平成 階層 12 年 13 年 14 年 15 年 16 年 17 年 18 年 19 年 20 年 21 年 22 年 15 階 建て以上 11~14 階 建て 44 (6.90) 243 (4.14) 1,129 4~10 階 建て (0.88) 計 1,416 ※ 39 62 80 76 91 81 82 122 126 253 256 293 260 237 236 240 277 254 1,161 1,105 1,175 1,169 1,220 1,222 1,183 1,227 1,131 1,453 1,423 1,548 1,505 1,548 1,539 1,505 1,626 1,511 平成 12 年及び平成 22 年の( )内の数字は、中高層建築物 100 棟あたりの火災件数 (全体の建築物数は、表 2-1-1 のデータを使用) - 18 - 105 (6.40) 235 (2.42) 1,062 (0.75) 1,402 ⑵ 出火階別の火災件数 中高層建築物で発生した火災について、 30 出火階別にまとめたものを図 2-3-1 に示 25 す。 20 火災件数が最も多いのは 1~3 階の低層 階であるが、平成 12 年から平成 22 年ま での推移をみると、やや減尐傾向にある。 一方、4 階以上の階で発生した火災件数 は、いずれの階層でも増加傾向を示して 15階以上 21 10 15 13 11 5 16 13 6 60 11~14階 50 55 いる。 このことから、中高層建築物では、高 層階での火災が増加傾向にあるといえる。 ⑶ 40 46 44 52 47 41 38 37 36 30 32 31 焼損程度別の火災件数 中高層建築物で発生した火災の焼損程 27 22 15 0 25 24 20 550 度別の件数を表 2-3-2 に示す。 4~10階 焼損程度は、ぼやが約 8 割、部分焼以 500 530 513 上が約 2 割を占めている。 450 463 平成 12 年から平成 22 年までの推移を みると、ぼや火災がやや増加傾向にあり、 400 特に 15 階建て以上では顕著である。 350 433 408 950 480 476 466 471 455 419 1~3階 900 932 915 910 895 891 850 860 851 856 850 800 823 774 750 140 地階 120 125 121 101 98 80 114 115 100 106 96 95 96 86 60 図 2-3-1 - 19 - 出火階別の火災件数(単位:件) 表 2-3-2 焼損 程度 建築物 階層 15 階 建て以上 11-14 階 建て 部 分 焼 以 上 平成 13 年 平成 14 年 平成 15 年 平成 16 年 平成 17 年 平成 18 年 平成 19 年 平成 20 年 平成 21 年 平成 22 年 6 2 2 5 4 6 6 3 8 6 8 35 45 42 52 44 44 39 37 43 29 33 4-10 階 建て 277 235 261 262 211 263 263 261 263 193 189 小計 318 282 305 319 259 313 308 301 314 228 230 38 37 60 75 72 85 75 79 114 120 97 208 208 214 241 216 193 197 203 234 225 202 4-10 階 建て 852 926 844 913 958 957 959 922 964 938 873 小計 1,098 1,171 1,118 1,229 1,246 1,235 1,231 1,204 1,312 1,283 1,172 計 1,416 1,453 1,423 1,548 1,505 1,548 1,539 1,505 1,626 1,511 1,402 15 階 建て以上 11-14 階 建て ぼ や 合 ※ 部分焼 以上 2 焼損程度別の火災件数(単位:件) 平成 12 年 全 焼:建物の70%以上を焼損したもの又はこれ未満であっても残存部分に補修を加えて再使 用できないものをいう 半 焼:建物の20%以上70%未満を焼損したものをいう 部分焼:全焼、半焼及びぼやに該当しないものをいう ぼ や: 建物の10パーセント未満を焼損したもので,かつ,焼損床面積若しくは焼損表面積 が1㎡未満のもの,又は収容物のみを焼損したものをいう 建築物の用途別の火災状況等 中高層建築物において、どのような用途で火災が発生しているのかなどの状況を把握する ため、平成 18 年から平成 22 年までの 5 年間のより詳細な火災調査データを用いた分析を行 った。 ⑴ 表 2-3-3 建築物の用途別の火災件数 政令用途 主な用途 火災件数 5 項ロ 共同住宅 3,153(41.6) 各用途の火災件数は、それぞれの用途に供 16 項イ 特定用途複合 2,769(36.5) される建築物数と相関関係にあり、共同住宅 16 項ロ 非特定用途複合 767(10.1) 及び特定用途複合が圧倒的に多く、次いで、 15 項 事務所 323( 4.3) 7項 学校 136( 1.8) 4項 物品販売店舗 75( 1.0) 6 項イ 病院・診療所 72( 1.0) 3 項ロ 飲食店 49( 0.7) 5 項イ ホテル 42( 0.6) 中高層建築物の火災の総数は 7,583 件であ り、用途別にまとめたものを表 2-3-3 に示す。 非特定用途複合、事務所の順である。 ⑵ 建築物の用途別の火災件数 (単位:件) 出火階の用途別の火災件数 中高層建築物の火災を出火階の用途ごとに まとめたものを表 2-3-4 に示す。 半数以上が共同住宅からの出火であるが、 他の用途では飲食店及び事務所からの出火が その他 多い。 計 ※ - 20 - 197( 2.6) 7,583 ( )内の数字は、全体の火災件数に対する 割合(単位:%) 出火階に注目すると、10 階以下の階で発生した火災では、共同住宅に次いで、飲食店が 多い。飲食店では特に 1~3 階で発生した火災が 6 割以上を占めている。11 階以上の階で 発生した火災では、共同住宅からの出火が約 6 割を占めており、次いで事務所、ホテルの 順となっている。事務所及びホテルでは 11~14 階よりも 15 階以上の階で発生した火災の 方が多い。 表 2—3-4 政令用途 主な用途 出火階の用途別の火災件数(単位:件) 出 地階 1~3 階 火 階 4~10 階 11~14 階 15 階以上 計 1 項イ 劇場・映画館 4 1 6 0 0 11 1 項ロ 公会堂 1 1 0 0 0 2 2 項イ キャバレー 13 18 6 0 0 37 2 項ロ 遊技場 11 43 11 0 0 65 2 項ハ 性風俗関連 2 9 3 0 0 14 2 項ニ カラオケボックス 0 6 2 0 0 8 3 項イ 待合 0 0 0 0 0 0 3 項ロ 飲食店 181 555 129 3 8 876 4項 物品販売店舗 52 241 50 1 0 344 5 項イ ホテル 4 31 27 9 10 81 5 項ロ 共同住宅 35 2,189 1,623 172 35 4,054 6 項イ 病院・診療所 8 53 38 5 3 107 6 項ロ 老人ホーム 3 23 11 0 0 37 6 項ハ 老人通所施設 0 1 5 0 0 6 6 項ニ 幼稚園 0 2 0 0 0 2 7項 学校 12 92 38 0 0 142 8項 図書館・美術館 1 4 1 0 1 7 9 項イ 熱気浴場 0 2 2 0 0 4 9 項ロ 公衆浴場 0 2 0 0 0 2 10 項 停車場 10 31 0 0 0 41 11 項 神社・寺院 2 4 0 0 0 6 12 項イ 工場・作業場 7 68 13 0 0 88 12 項ロ テレビスタジオ 1 3 0 0 0 4 13 項イ 駐車場 13 17 7 0 0 37 13 項ロ 格納庫 0 2 0 0 0 2 14 項 倉庫 5 21 5 1 0 32 15 項 事務所 69 323 239 18 31 680 111 512 219 29 23 894 545 4,254 2,435 238 111 7,583 非 該 計 ※ 当 非該当:複合用途の建築物の共用部分から出火した火災等 - 21 - 東京消防庁総合予防情報システムのデータから集計した階層及び用途ごとの床数を母数 とし、主な用途の床数 100 当たりの火災件数を表 2-3-5 に示す。 床数 100 当たりの火災件数は、飲食店が最も多く、事務所が最も尐ない。ホテル及び共 同住宅は、事務所の約 2 倍である。 表 2-3-5 床数当たりの火災件数(単位:件) 飲食店 出火階 ホテル 火災件数 (5 年間) 床 数 床数 100 当りの 火災件数 (5 年間) 出火階 火災件数 (5 年間) 床 数 床数 100 当りの 火災件数 (5 年間) 15 階以上 8 137 5.839 15 階以上 10 701 1.427 11-14 階 3 136 2.206 11-14 階 9 664 1.355 4-10 階 129 5,119 2.520 4-10 階 27 5,944 0.454 1-3 階 555 25,740 2.156 1-3 階 31 4,246 0.730 地階 181 7,379 2.453 地階 4 230 1.739 876 38,511 2.275 81 11,785 0.687 計 計 病院 共同住宅 出火階 火災件数 (5 年間) 床 数 床数 100 当りの 火災件数 (5 年間) 出火階 火災件数 (5 年間) 床 数 床数 100 当りの 火災件数 (5 年間) 15 階以上 35 7,517 0.466 15 階以上 3 44 6.818 11-14 階 172 23,928 0.719 11-14 階 5 96 5.208 4-10 階 1,623 283,746 0.572 4-10 階 38 3,319 1.145 1-3 階 2,189 230,283 0.951 1-3 階 53 7,926 0.669 35 5,295 0.661 地階 8 506 1.581 4,054 550,769 0.736 107 11,891 0.900 地階 計 計 事務所 出火階 火災件数 (5 年間) 床 数 床数 100 当りの 火災件数 (5 年間) 15 階以上 31 3,544 0.875 11-14 階 18 3,037 0.593 4-10 階 239 105,786 0.226 1-3 階 323 101,266 0.319 69 7,512 0.919 680 221,145 0.307 地階 計 - 22 - ⑶ 死傷者の発生状況 中高層建築物の火災で発生した死傷者のうち、自損によるものを除いた状況を表 2-3-6 及び表 2-3-7 に示す。 平成 18 年から平成 22 年までの 5 年間で、死者は毎年 20 人前後、負傷者は 400 人前後発 生している。これらのうち、65 歳以上の高齢者は、死者では約 5 割、負傷者では約 2 割を 占めている。 死傷者が死傷時にいた階をみると、4 階以上で死傷した者が約 5 割であり、ここ数年で は 3 階以下の低層階での死傷者の割合がやや減尐し、平成 21 年では 11 階以上の高層階で の死傷者の割合が増加している(図 2-3-2 参照)。 表 2-3-6 年 平成 18 年 死者数 ※ 平成 19 年 20(9) ( 年 負傷者数 階層 11 階 以上 4~10 階 3階 以下 計 21(10) 平成 21 年 19(10) 平成 22 年 23(7) 計 22(15) 105(51) 中高層建築物の火災による負傷者数(単位:人) 平成 18 年 ( 平成 20 年 )内の数字は、65 歳以上の死者数(内数)を示す 表 2-3-7 ※ 中高層建築物の火災による死者数(単位:人) 平成 19 年 419(79) 平成 20 年 420(82) 平成 21 年 392(86) 平成 22 年 335(68) 312(62) 計 1878(377) )内の数字は、65 歳以上の負傷者数(内数)を示す 平成 平成 平成 平成 平成 18 年 19 年 20 年 21 年 22 年 18 12 8 25 15 174 159 200 158 140 238 259 196 168 172 430 430 404 351 327 図 2-3-2 3階以下 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 4.2 4~10階 2.8 40.5 37.0 55.3 60.2 11階以上 2.0 49.5 45.0 47.9 4.6 42.8 52.6 48.5 平成18年 平成19年 平成20年 平成21年 平成22年 死傷時にいた階層ごとの死傷者数(人)と割合(%) ※ 7.1 建物の外周部などで受傷したもの等は除いている - 23 - ⑷ 出火原因 平成 18 年から平成 22 年までの 5 年間で発生した中高層建築物の火災 7,583 件について、 主な出火原因をまとめたものを表 2-3-8 に示す。 各階層とも「放火」、「ガステーブル等」、「たばこ」が出火原因の上位を占めており、東 京消防庁管内のすべての火災の出火原因と同様の傾向にある。 表 2-3-8 中高層建築物の火災の主な出火原因(平成 18 年~平成 22 年)(単位:件) 出 地階 1位 2位 3位 4位 5位 6位 7位 8位 9位 10 位 総件数 放火 79 大型ガスこんろ 56 たばこ 1-3 階 放火 1,096 たばこ 629 ガステーブル等 44 ガステーブル等 大型ガスこんろ 191 電気こんろ 14 モーター 13 12 大型ガスレンジ 12 蛍光灯 11 コンデンサ 10 545 82 火遊び コード 階 73 電気ストーブ 72 コード 67 ロウソク 63 ライター 49 4,254 11-14 階 ガステーブル等 たばこ 42 たばこ 電気こんろ 81 電気ストーブ 66 ロウソク 60 コード 40 ライター 38 大型ガスこんろ 34 火遊び 34 2,435 - 24 - 27 電気ストーブ 11 火遊び 8 ロウソク 7 コード 6 ライター 4 電気こんろ 3 石油ストーブ 3 238 階 放火 11 たばこ 401 385 ガステーブル等 53 放火 放火 全 15 階以上 ガステーブル等 490 549 23 屋内線 火 4-10 階 1,609 ガステーブル等 9 放火 1,126 たばこ 7 大型ガスこんろ 1,110 大型ガスこんろ 3 白熱灯スタンド 3 ロウソク 2 ライター 2 屋内線 2 蛍光灯 2 コンデンサ 2 111 284 電気こんろ 170 電気ストーブ 154 ロウソク 135 コード 126 火遊び 118 ライター 99 7,583 ⑸ 避難状況 平成 18 年から平成 22 年までの 5 年間で発生した中高層建築物の火災のうち、避難行動 があった火災は、830 件発生している(表 2-3-9 参照)。つまり、5 年間で約 9.1 件当たり 1 件は避難行動を必要とする火災が発生していると言える。 いずれの階層でも、避難誘導人員が 10 人未満の火災が多いが、避難誘導人員が 100 人を 超える火災も発生している。 避難上支障のあった火災は 78 件であり、支障理由としては「火災に気づくのが遅れた」 及び「廊下が火煙で使用できなかった」が多い。支障のあった階としては出火階が 7 割以 上を占めている(表 2-3-10 参照)。 表 2-3-9 中高層建築物の火災の避難状況(平成 18 年~平成 22 年)(単位:件) 避 建築物階層 誘 導 人 員 10 人 10~ 20~ 30~ 40~ 50~ 100~ 200~ 300 人 未満 19 人 29 人 39 人 49 人 59 人 199 人 299 人 以上 15 階 建て以上 11-14 階 建て 4-10 階 建て 計 表 2-3-10 難 計 12 4 0 3 2 0 2 1 5 29 69 12 6 5 0 8 5 1 1 107 429 94 51 27 16 45 10 11 11 694 510 110 57 35 18 53 17 13 17 830 中高層建築物の火災における避難上の支障理由(平成 18 年~平成 22 年)(単位:件) 避難上の支障理由 火災に気づくのが遅れた 出火階 出火階の 出火階の直上 出火階の 直上階 階以外の上階 直下階 計 13 2 0 0 15 廊下が火煙で使用 できなかった 5 5 2 0 12 報知がなされなかった 4 1 1 0 6 老人、幼児、災害弱者等のた め自力避難が困難だった 6 0 0 0 6 避難経路がわからなかった 1 1 0 0 2 パニック状態となった 1 1 0 0 2 廊下に物品が置いてあった 2 0 0 0 2 25 4 1 3 33 57 14 4 3 78 その他 計 - 25 - 3 中高層建築物及び歩行困難者等の避難に関する火災事例(平成 17 年~平成 21 年) 中高層建築物の火災時における避難行動に着目し、避難にエレベーターを使用した事例や 高齢者等の逃げ遅れがあった事例などを抽出した。 事例1 病院において水平避難を行った事例 用途・規模:病院 耐火造 地上 16 階 地下 2 階 建 7,400 ㎡ 延 53,000 ㎡ 避難施設:特別避難階段 3 系統 非常用エレベーター:2 基 出火月・出火時間・焼損程度:4 月 7 時ごろ 8 階病室 布団等焼損 ぼや 火災概要 入院患者がごみ箱に放火したもの。防災センター勤務員等が屋内消火栓を使用し消火した。 避難状況 看護師から火災の知らせを受けた医師が防災センターへ通 病 室 報し、防災センターの勤務員が 119 番通報した。 非常用 EV 8 階勤務の看護師と駆け付けた看護師等により、入院患者 デイ ルーム 病 室 38 名をデイルームに避難させたが、臭気が強くなってきたた め、隣接する防火区画へ水平避難させ、防火戸を閉鎖した。 その後、歩行可能な患者のみを特別避難階段で 1 階まで避 病 室 難させた。 非常用 EV 8階 事例2 病 室 平面略図 高層共同住宅において非常用エレベーター等を使用して避難した事例 用途・規模:共同住宅 耐火造 地上 32 階 地下 1 階 建 1,200 ㎡ 延 22,700 ㎡ 避難施設:特別避難階段 2 系統 非常用エレベーター:1 基 出火月・出火時間・焼損程度:3 月 21 時ごろ 32 階住戸 39 ㎡ 部分焼 火災概要 電気毛布の電源コードから出火したもの。消防隊により 31 階の連結送水管を活用し消火した。 避難状況 常用 EV 非常用 EV 近隣の共同住宅 8 階の居住者がバルコニーから火災を発見し、 119 番通報した。また、防災センターに 1 名で勤務中の警備員が、 自動火災報知設備の鳴動により非常用エレベーター(通常運転) で現場に向かい、出火住戸の玄関扉の隙間から煙が出ているのを 確認し、携帯電話で 119 番通報した。 出火時に建物内にいた 2 階から 32 階の居住者 433 名のうち 311 バ ル コ ニ ー 住戸 吹抜 住戸 名が自動火災報知設備の連動で作動した非常放送等により火災 に気付き、非常用エレベーター(通常運転)及び特別避難階段で 1階へ避難した。常用エレベーターは火災時管制運転で停止して いた。 なお、スプリンクラー設備は特例が適用され、設置されていない。 凡例: 出火場所 - 26 - 住戸 バルコニー 32 階 平面略図 バ ル コ ニ ー 事例3 超高層建築物において多数の避難誘導のあった事例 用途・規模:複合用途(店舗・事務所・美術館等) 建 16,100 ㎡ 耐火造 地上 54 階 地下 6 階 延 379,400 ㎡ 避難施設:特別避難階段 4 系統 非常用エレベーター:4 基 出火月・出火時間・焼損程度:4 月 焼損 17 時ごろ 50 階エレベーター機械室 吸音用ウレタン若干 ぼや 火災概要 エレベーター機械室から出火し、隣接区画のパイプシャフト室に煙が漏えいしたもの。 避難状況 防災センターの勤務員がパイプシャフト室で煙を 確認し、119 番通報した。放送設備の連動は遮断して おり、自衛消防隊が口頭により、49 階から 53 階の客 53 階 美術館 等 851 名を 1 階まで避難誘導した。避難誘導の際、火 52 階 展望フロア 災の状況から常用エレベーターを使用しても支障が 51 階 飲食店(会員制) ないと関係者が判断し、別防火区画内の 5 基のエレベ 50 階 事務所 ーターを使用した。 49 階 図書館(会員制) EV 機械室 PS室 関係者の話では、避難者の中に車いすの使用者はい なかった。 事例4 ホテルにおいて多数の避難誘導のあった事例 用途・規模:複合用途(ホテル・飲食店等) 建 14,800 ㎡ 耐火造 地上 17 階 地下 4 階 延 125,000 ㎡ 避難施設:特別避難階段 5 系統 非常用エレベーター:1 基 出火月・出火時間・焼損程度:12 月 19 時ごろ 地下 2 階機械室 配電盤 1 焼損 ぼや 火災概要 配管からの漏水により配電盤内の開閉器が短絡し、出火したもの。ダクトスペースを介して 1・2 階に煙が拡散した。 避難状況 配管からの漏水に対応していた作業員が火災を発見し、アシスタン トマネージャーに内線電話で火災を知らせた。アシスタントマネージ ャーは、防災センターに初動対応を指示後に 119 番通報した。アシス タントマネージャーは、火災現場に向かう際、1 階で煙が漂っている のを確認したため、従業員に 1 階の客 350 名及び 2 階の客 40 名の避 難誘導を指示した。 凡例: 出火場所 - 27 - 2階 飲食店 1階 宴会場 B1 階 B2 階 DS 機械室 事例5 共同住宅において高齢者の逃げ遅れのあった事例 用途・規模:共同住宅 耐火造 地上 5 階 建 400 ㎡ 延 2,300 ㎡ 避難施設:屋外階段 2 系統 非常用エレベーター:なし 出火月・出火時間・焼損程度:11 月 12 時ごろ 3 階住戸 57 ㎡焼損 部分焼 火災概要 テーブルタップのコードから出火し、カーテンに延焼拡大したもの。消防隊到着時、出火住戸の 玄関が開けられていたため、廊下側にも煙が噴出していた。 避難状況 1 階の居住者が火災を発見し、119 番通報した。各階の居住者は煙や非常ベルで火災に気付き、屋 外階段を使用して避難した。 出火住戸には、3 名の高齢者が居住しており、1 名(83 歳女性)は隣戸に火災を知らせた際に、 見知らぬ男性に 1 階まで避難誘導されたが、残りの 2 名は逃げ遅れて、消防隊に救助された。救助 されたのは、廊下に避難した際に階段入口の防火戸が閉鎖していたことと煙により避難口を見失っ た男性(93 歳 1)と歩行障がいのため玄関までしか避難できなかった女性(84 歳 2)である。 また、常用エレベーターを使用 住戸間取:3K して避難した 4 階の居住者の女性 (85 歳 3)が、3 階廊下で消防 バルコニー 隊に救助されている。エレベータ 住戸 住戸 ーが着床し、扉が開いたため、1 〃 〃 〃 住戸 〃 2 階に着いたと思い、エレベーター 3 から降りたところで煙により避難 開放廊下 1 できなくなったものである。 3 階平面略図 事例6 車いす使用の宿泊者を避難誘導した事例 用途・規模:複合用途(ホテル・集会場)耐火造 建 5,500 ㎡ 地上 10 階 地下 3 階 延 27,800 ㎡ 避難施設:屋内避難階段6系統、屋外避難階段 1 系統 非常用エレベーター:なし 出火月・出火時間・焼損程度:7 月 20 時ごろ 3 階機械室 ダンボール 2 ㎥等焼損 ぼや 火災概要 3 階機械室から出火したもの。出火原因は不明 避難状況 3 階の従業員が火災を発見し、自動火災報知設備の発報で 3 階に現場確認に来た防災センターの 勤務員に火災を知らせた。防災センターの勤務員は防災センターに 119 番通報を依頼し、消火器で 消火した。ホテルフロントの従業員は防災センターから 3 階の火災を知らされ、他の従業員と協力 し、10 階から順番に宿泊客の避難誘導を行った。なお、6 階には、車いす使用の宿泊者 4 名がおり、 従業員が介添えし、1階まで避難誘導(手段は不明)を行った。 凡例: 出火場所、 消防隊による救助者 - 28 - 事例7 避難器具を使用して避難した事例 用途・規模:複合用途(事務所・カラオケ・飲食店等) 建 140 ㎡ 耐火造 地上 8 階 地下 1 階 延 1,200 ㎡ 避難施設:屋内避難階段 1 系統 非常用エレベーター:なし 出火月・出火時間・焼損程度:6 月 0 時ごろ 2 階事務所 120 ㎡焼損 部分焼 火災概要 天井裏の電気配線が短絡し、出火したもの。2 階の出入口は施錠されていたため、初期消火は行 われていない。また、階段の防火戸(温度ヒューズ式 既存不適格)は閉鎖していない。 避難状況 営業中の各店舗の店長等が自動火災報知設備の鳴動で 2 階を確認し、火災を発見した。地下 1 階 飲食店の店長が 119 番通報した。 3~5 階のカラオケ店の従業員は客 40 名を 屋内避難階段で避難させた。 8階 トレーニングジム 不在 7階 飲食店 店長等 4 名・客 18 名 7 階飲食店の店長は従業員に客 18 名の避 難誘導を指示した。12 名の客は屋内避難階 6階 空室 屋内 避難 階段 段で避難させることができたが、残りの客 6 3~5 階 名と従業員 3 名については屋内避難階段を 4 1・2 階 事務所 不在 B1 階 飲食店 店長 1 名 階まで降りたところで、煙の充満が強くなっ 固定 はしご カラオケ 従業員 5 名・客 40 名 てきたことから、7 階まで戻った。7 階にい 避難 ロープ た店長の判断で避難はしご等を使用し避難 を行った。 事例8 ホテルにおいて宿泊客がエレベーターで避難した事例 用途・規模:複合用途(ホテル・飲食店等) 建 6,600 ㎡ 耐火造 地上 10 階 地下 3 階 延 66,600 ㎡ 避難施設:屋外避難階段 1 系統、屋内避難階段 2 系統 非常用エレベーター:なし 出火月・出火時間・焼損程度:6 月 0 時ごろ 地下1階排気ファン室 12 ㎡焼損等 部分焼 火災概要 地下 2 階厨房内の排気ダクトが延焼し地下 1 階に煙が拡散したもの。発火源は不明 避難状況 マネージャーが自動火災報知設備の鳴動で地下1階を 確認したところ、厨房内に煙が充満していたため、PHS で 119 番通報した。マネージャーは、防災センターに行き、 非常放送設備で宿泊客 257 名を避難誘導した。その際、宿 9~2 階 客室 1階 ロビー B1 階 飲食店 B2 階 飲食店 泊客の一部が常用エレベーターを使用して避難を行った。 凡例: 出火場所 - 29 - 257 名 排気ダクト 排気 ファン室 事例9 住宅型有料老人ホームで避難誘導のあった事例 用途・規模:複合用途(住宅型有料老人ホーム・事務所) 建 100 ㎡ 耐火造 地上 8 階 延 900 ㎡ 避難施設:屋外避難階段1系統 非常用エレベーター:なし 出火月・出火時間・焼損程度:2 月 14 時ごろ 5 階住戸 23 ㎡焼損等 部分焼 火災概要 電気ストーブに紙くずが接触し、出火したもの。 避難状況 1 階事務所の従業員が自動火災報知設備の鳴動で 5 階に行き、合鍵で玄関扉を開けたところ、煙 が噴き出してきたため、1 階事務所の電話で 119 番通報した。5 階出火住戸の居住者(75 歳男性 ) は消防隊に救助されたが、搬送先の病院で死亡が確認された。 住戸間取:1K また、5 階の他の居住者(1 名)及び 7 階の居住 バルコニー 者(2 名)は消防隊により、2~4 階の居住者(計 6 名)は 1 階事務所の従業員 7 名により避難誘導 された。 住戸 〃 〃 住戸 なお、1 階は運営会社とその関連会社(介護支 屋内廊下 援センター)の事務所であり、1 名が 24 時間常駐 5階 している。 事例10 平面略図 シルバーピアで避難行動のあった事例 用途・規模:共同住宅 耐火造 地上 3 階 建 300 ㎡ 延 900 ㎡ 避難施設:屋内階段1系統、屋外階段1系統 非常用エレベーター:なし 出火月・出火時間・焼損程度:1 月 10 時ごろ 3 階住戸 30 ㎡焼損等 部分焼 火災概要 電気ストーブに着衣又は上掛けが接触し、出火したもの。 避難状況 1 階に居住する生活協力員(57 歳女性)が自動火災報知設備の鳴動で 3 階に行き、扉から煙が出 ているのを発見した。扉を開けて消火器で消火しようとしたが、煙で中に入ることができず効果が なかった。119 番通報は、近隣の居住者が行った。出火時、17 世帯 22 名が在住しており、出火住戸 の居住者を除く 21 名が自動火災報知設備の鳴動や臭気で火災に気付き、階段や常用エレベーターで 避難を行った。 住戸間取:1DK 出火住戸の居住者(83 歳女性 ) バルコニー は、消防隊がベランダの隔板付近で発 見したが、既に死亡している状態であ 住戸 〃 〃 〃 った。出火住戸の居住者は身の回りの 開放廊下 不自由はない状態であった。 3階 凡例: 出火場所、 消防隊による救助者 - 30 - 平面略図 〃 住戸 4 まとめ ⑴ 平成 12 年から平成 22 年までにおける中高層建築物の火災件数は、毎年増減しながらも、 やや増加傾向にある。特に 15 階建て以上では 10 年間で火災件数は約 2.4 倍となっている。 出火階の階層別でみると、4 階以上の階の火災件数は、いずれの階層でも増加しており、 高層階での火災が増加傾向にあると言える。 ⑵ 平成 18 年から平成 22 年までの 5 年間で発生した中高層建築物の火災 7,583 件を建物用 途別にみると、共同住宅及び特定用途複合が圧倒的に多く、次いで、非特定用途複合及び 事務所が比較的多い。 出火階の用途をみると、半数以上が共同住宅からの出火であるが、他の用途では飲食店 及び事務所からの出火が多い。出火階の階層ごとでみると、10 階以下の階では飲食店も多 くみられるが、11 階以上の階では、共同住宅からの出火が約 6 割を占めており、次いで事 務所、ホテルの順となっている。 ⑶ 自損を除いた死傷者の発生状況をみると、平成 18 年から平成 22 年の 5 年間で、死者は 毎年 20 人前後、負傷者は 400 人前後発生しており、そのうち 65 歳以上の高齢者は、死者 では約半数、負傷者では 2 割近くを占めている。 死傷者が死傷時にいた階をみると、4 階以上の階は約 5 割で、平成 21 年では 11 階以上 の高層階での死傷者の割合が増加している。 ⑷ 平成 18 年から平成 22 年までの 5 年間に発生した火災の主な出火原因は、「放火」、「ガ ステーブル等」、 「たばこ」であり、東京消防庁管内のすべての火災の出火原因と同様の傾 向にある。 ⑸ 平成 18 年から平成 22 年までの 5 年間で発生した火災のうち、避難行動があった火災は、 830 件であり、いずれの階層でも、避難誘導人員が 100 人を超える火災も発生している。 避難上支障のあった火災は 78 件であり、支障理由としては「火災に気づくのが遅れた」 及び「廊下が火煙で使用できなかった」が多い。支障のあった階としては出火階が 7 割以 上を占めている。 - 31 -
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